(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-27
(45)【発行日】2023-01-11
(54)【発明の名称】連続鋳造用浸漬ノズル
(51)【国際特許分類】
B22D 11/10 20060101AFI20221228BHJP
B22D 41/50 20060101ALI20221228BHJP
【FI】
B22D11/10 330G
B22D11/10 330H
B22D41/50 520
(21)【出願番号】P 2022556659
(86)(22)【出願日】2022-03-03
(86)【国際出願番号】 JP2022009018
【審査請求日】2022-09-27
(31)【優先権主張番号】P 2021069066
(32)【優先日】2021-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001971
【氏名又は名称】品川リフラクトリーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】新妻 宏泰
(72)【発明者】
【氏名】藤田 佳吾
【審査官】藤長 千香子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-300699(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01854571(EP,A1)
【文献】特開平07-236953(JP,A)
【文献】特開平11-123509(JP,A)
【文献】特開昭62-197252(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/10
B22D 41/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路と開口部とを備え、基端側から順に、第一部分、接続部分、および第二部分が設けられている連続鋳造用浸漬ノズルであって、
前記第一部分において、前記流路の横断面形状は円形であり、
前記第二部分において、前記流路の
横断面形状が、
長手方向の幅が短手方向の幅の1.5倍以上である扁平状であり、
前記接続部分において、前記流路の形状は、前記第一部分の前記流路と前記第二部分の前記流路とを連続的に接続する形状であり、
前記開口部は、前記第二部分の先端側に設けられ、かつ前記扁平状の面方向に沿って延びており、
前記第一部分における前記流路の断面積の最大値をS1とし、前記第二部分における前記流路の断面積の最大値をS2とし、前記第一部分と前記接続部分との境界部から上流側にかけての前記第一部分の長さの20%の範囲内における前記流路の断面積の最小値をS3として、
S2は、S1より大きく、
S1とS3との比S1/S3は、1.10以上2.00以下であり、かつ、
S2とS3との比S2/S3は、1.20以上2.50以下であ
り、
全長に対する前記第一部分の長さの割合が、8%以上42%以下であり、
全長に対する前記第二部分の長さの割合が、8%以上50%以下であり、
全長に対する前記接続部分の長さの割合が、8%以上50%以下である連続鋳造用浸漬ノズル。
【請求項2】
前記第二部分における前記流路の幅は、300mm以下である請求項
1に記載の連続鋳造用浸漬ノズル。
【請求項3】
前記第一部分の基端側に接続される接合部分をさらに有し、
前記接合部分において、前記流路の断面積は、基端側から先端側に漸減する請求項1
または2に記載の連続鋳造用浸漬ノズル。
【請求項4】
前記開口部が、前記第二部分の先端側の二つの長手方向側面に一つずつ設けられている請求項1~3のいずれか一項に記載の連続鋳造用浸漬ノズル。
【請求項5】
前記開口部が、前記第二部分の先端の面に設けられている請求項1~4のいずれか一項に記載の連続鋳造用浸漬ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続鋳造用浸漬ノズルに関する。本発明に係る浸漬ノズルは、モールド厚さが200mm未満のスラブの連続鋳造用に特に好適である。
【背景技術】
【0002】
近年、圧延工程の省力化のため、モールド厚さが200mm以下のスラブ(薄スラブまたは中厚スラブと称される。)の連続鋳造が導入されている。それに合わせて従来の円筒型の浸漬ノズル(以下、円筒型ノズルと称する。)に替えて、吐出部が扁平な浸漬ノズル(以下、扁平型ノズルと称する。)が採用されている。しかし、扁平型ノズルには、従来の円筒型ノズルに比べ、扁平型ノズルの上流にあるストッパーやスライディングノズルなどを溶鋼が通過する際に発生した偏流が収まりにくいという問題点がある。そのため、鋳型内の溶鋼が不均一となり鋼品質の悪化を招いていた。そこでこの問題点を解消すべく、偏流を抑制することを指向した種々の扁平型ノズルが考え出された。
【0003】
特許文献1および特許文献2には、上流側が略円筒状に、下流側が扁平状に形成されたノズルが開示されている。特許文献3には、出口側が扁平状に形成されたノズルにおいて、入口側に径大化部および径小化部からなる溶鋼撹拌部が掲載されている例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本国特開平11-47897号公報
【文献】日本国特表2001-501132号公報(または米国特許第5785880号明細書)
【文献】日本国特開2001-300699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、これらの先行技術では、偏流を十分には抑制できなかった。特許文献1および特許文献2では、上流側の円筒部分の偏流が幾分解消されたとはいえ、下流側に扁平部分を設けてもなお、吐出される溶鋼流の偏流を抑制しきれなかった。また、特許文献3のノズルは、その複雑な形状ゆえ製造歩留まりが悪く、さらに径大化部と径小化部との境界に曲げ応力が集中して亀裂が発生しやすかった。
【0006】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、比較的単純な構造を有し、ノズル内の溶鋼流動が適正化された連続鋳造用浸漬ノズルを提供することにある。これによって、鋳片の品質および生産性の向上が図られる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
扁平型ノズル内の溶鋼流動について流体解析を行ったところ、扁平ノズルの内管の横断面形状が円形から扁平形状に遷移する部分において、横断面形状が円形の部分で少なくとも部分的に内径を絞り、一旦流れを内管中央部に寄せて整流化することによって、その後の扁平形状への遷移時に流れが左右に均等に分配させやすいことが明らかになった。また、内径を一旦絞ることによって生じる流速の上昇を緩和するために、吐出孔付近の内管断面積を絞っている部分の断面積の1.20倍以上にすることが有効であることも確認した。これらの知見をもとに、扁平型ノズル各部の形状の最適化を行った。
【0008】
本発明に係る連続鋳造用浸漬ノズルは、流路と開口部とを備え、基端側から順に、第一部分、接続部分、および第二部分が設けられている連続鋳造用浸漬ノズルであって、前記第一部分において、前記流路の横断面形状は円形であり、前記第二部分において、前記流路の横断面形状が、長手方向の幅が短手方向の幅の1.5倍以上である扁平状であり、前記接続部分において、前記流路の形状は、前記第一部分の前記流路と前記第二部分の前記流路とを連続的に接続する形状であり、前記開口部は、前記第二部分の先端側に設けられ、かつ前記扁平状の面方向に沿って延びており、前記第一部分における前記流路の断面積の最大値をS1とし、前記第二部分における前記流路の断面積の最大値をS2とし、前記第一部分と前記接続部分との境界部から上流側にかけての前記第一部分の長さの20%の範囲内における前記流路の断面積の最小値をS3として、S2は、S1より大きく、S1とS3との比S1/S3は、1.10以上2.00以下であり、かつ、S2とS3との比S2/S3は、1.20以上2.50以下であり、全長に対する前記第一部分の長さの割合が、8%以上42%以下であり、全長に対する前記第二部分の長さの割合が、8%以上50%以下であり、全長に対する前記接続部分の長さの割合が、8%以上50%以下であることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、ノズルの構造を比較的単純にしながらも、ノズル内の溶鋼流動が適正化されうる。第一に、略円筒状の第一部分の下端に少なくとも部分的に流路の内径を絞った部分を設けてあることによって、溶鋼流が接続部分に流入する前に整流されやすい。第二に、第二部分における流路の断面積の最大値を上記の内径を絞った部分における流路の断面積の最小値より大きくしてあることによって、第二部分において溶鋼流の流速を好適に減速するとともに、ノズルの左右に溶鋼流が均等に供給されやすい。
【0010】
以下、本発明の好適な態様について説明する。ただし、以下に記載する好適な態様例によって、本発明の範囲が限定されるわけではない。
【0013】
本発明に係る連続鋳造用浸漬ノズルは、一態様として、前記第二部分における前記流路の幅は、300mm以下であることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、溶鋼流の流速を減速する効果が十分な水準で得られやすい。
【0015】
本発明に係る連続鋳造用浸漬ノズルは、一態様として、前記第一部分の基端側に接続される接合部分をさらに有し、前記接合部分において、前記流路の断面積は、基端側から先端側に漸減することが好ましい。
【0016】
この構成によれば、ストッパー型の流量制御が採用される場合において、タンディッシュから鋳型まで溶鋼を酸化させる吸気の原因となる目地をなくすことができるので、鋼の品質が向上しやすい。
【0017】
本発明に係る連続鋳造用浸漬ノズルは、一態様として、前記開口部が、前記第二部分の先端側の二つの長手方向側面に一つずつ設けられていることが好ましい。
本発明に係る連続鋳造用浸漬ノズルは、一態様として、前記開口部が、前記第二部分の先端の面に設けられていることが好ましい。
本発明のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態に係る連続鋳造用浸漬ノズルの正面断面図である。
【
図2】実施形態に係る連続鋳造用浸漬ノズルの側面断面図である。
【
図3】実施形態に係る連続鋳造用浸漬ノズルの第一部分の横断面図である。
【
図4】実施形態に係る連続鋳造用浸漬ノズルの第二部分の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る連続鋳造用浸漬ノズルの実施形態について、図面を参照して説明する。以下では、本発明に係る連続鋳造用浸漬ノズルを、モールド厚さが200mm以下のスラブの連続鋳造に用いられる連続鋳造用浸漬ノズル1(以下、単にノズル1と称する。)に適用した例について説明する。
【0020】
〔連続鋳造用浸漬ノズルの全体構成〕
ノズル1は、耐火材料によって形成された筒状の部材である。内部には溶鋼を流通させるための流路が形成されており、先端部分には開口部が設けられている。ノズル1には、基端側から順に接合部分2、第一部分3、接続部分4、および第二部分5が設けられており、各部分の形状が異なる(
図1、
図2)。ノズル1は、接合部分2において、上流側の設備(ストッパー、スライディングノズルなど。不図示。)と接合されている。ノズル1の全長Lは1200mmである。なお、以下に説明するノズル1の各部の長さに係る記載と、
図1および
図2に示されている態様とが異なる場合があるが、これは、
図1および
図2においてノズル1の各部の構造を強調して示すべく上下方向の長さを変更して図示しているためである。したがって、各部の長さについては以下の説明における記載に基づいて理解されるべきである。
【0021】
ノズル1を構成する耐火材料の種類は特に限定されず、当分野において従来使用されている耐火材料を使用できる。かかる耐火材料としては、アルミナ-黒鉛質、マグネシア-黒鉛質、スピネル-黒鉛質、ジルコニア-黒鉛質、カルシウムジルコネート-黒鉛質、高アルミナ質、アルミナ-シリカ質、シリカ質、ジルコン質、スピネル質などが例示される。また、適宜ゾーンライニングを適用してもよい。
【0022】
以下の説明において方向について言及するときは、
図1に示す配置を基準とする。すなわち、上下方向について言及するときは、基端側(接合部分2側)を上(上部、上方、上側、上流など)と称し、先端側(第二部分5側)を下(下部、下方、下側、下流など)と称する。なお、ノズル1の全体および部分の長さについて言及するときは、特記しない限り、上記に定義した上下方向の長さをいう。
【0023】
また、流路の断面について言及するときは、特記しない限り、上記に定義した上下方向と直交する方向(
図1紙面と直交する方向)の断面をいうものとし、当該断面を横断面と称する。なお、ノズル1の使用時において、溶鋼は上記に定義した上側から下側に向けて流れるので、上記に定義した横断面は溶鋼の流れ方向に対する断面でもある。
【0024】
〔第一部分の構成〕
第一部分3は、ノズル1の基端側おける主たる部分である。本実施形態では、第一部分3の長さL
1は300mmであり、ノズル1の全長Lに対する第一部分3の長さL
1の割合は25%である(
図1)。
【0025】
第一部分3において、流路31の横断面形状は円形である(
図1~
図3)。本実施形態では、第一部分3の横断面の断面積は一定ではなく、第一部分上部3aにおいて流路31の断面積は3850mm
2であり、第一部分中部3bにおいて流路31の断面積は5000mm
2であり、第一部分下部3cにおいて流路31の断面積は3700mm
2である。
互いに流路31の断面積が異なる第一部分上部3aと第一部分中部3bとの境界部分において、流路31は、その直径が連続的に変化するテーパ状に形成されている。なお、第一部分中部3bと第一部分下部3cとの境界部分においても、流路31はテーパ状に形成されている。
【0026】
本実施形態では、第一部分中部3bにおいて第一部分3の流路31の断面積が最大となる。ここで、第一部分3における流路31の断面積の最大値をS1とし、本実施形態ではS1は5000mm2(第一部分中部3bにおける流路31の断面積)である。
【0027】
第一部分下部3cは、接続部分4に連設されており、長さL1cが60mmである。したがって、第一部分下部3cの長さL1cは、第一部分3の長さL1の20%である。ここで、第一部分下部3cにおける流路31の断面積の最小値をS3とし、本実施形態では、S3は3700mm2である。ここで、第一部分下部3cにおける流路31の断面積の最小値は、第一部分と接続部分との境界部から上流側にかけての第一部分の長さの20%の範囲内における流路の断面積の最小値の例である。なお、本実施形態では、第一部分下部3cが第一部分中部3bと接続されているテーパ状部分を除いて円筒状に形成されているので、S3は、第一部分下部3cの当該テーパ状部分以外の部分における流路31の断面積と一致する。
【0028】
〔第二部分の構成〕
第二部分5は、ノズル1の先端側における主たる部分である。本実施形態では、第二部分5の長さL
2は600mmであり、ノズル1の全長Lに対する第二部分5の長さL
2の割合は50%である(
図1)。
【0029】
第二部分5において、流路51の形状は扁平状である(
図1、
図2、および
図4)。なお、流路51の扁平状の形状について、
図1のXZ平面方向を「面方向」と定義し、
図2のY軸方向を「厚さ方向」と定義する。ここで、扁平状の形状とは、当業者が扁平状であると認識する範囲で特に限定されないが、たとえば流路51の幅W
2(
図1のX軸方向)が厚さ(
図2のY軸方向)の1.5倍以上である形状をいう。
【0030】
流路51の先端側には、開口部52が設けられている。本実施形態では四つの開口部52が設けられており、二つはノズル1の長手方向の先端の面に、残りの二つはノズル1の長手方向側面に、それぞれ設けられている。いずれの開口部52も、流路51の扁平状の形状の面方向(
図1のXZ平面方向)に延びている。なお、開口部52を設ける数は特に限定されないが、いずれの開口部52も流路51の扁平状の形状の面方向に沿って設けられることが好ましい。
【0031】
本実施形態では、開口部52が設けられていない範囲において流路51の断面積が一定であり、5400mm2である。したがって本実施形態では、第二部分5における流路51の断面積の最大値S2は5400mm2である。なお、流路51の断面積は必ずしも一定でなくてもよいが、この場合、断面積が互いに異なる領域同士の境界部分をテーパ状に形成し、第二部分5の長手方向に沿って断面積が連続的に変化するように構成することが好ましい。
【0032】
本実施形態では、開口部52が設けられていない範囲において流路51の幅W2も一定であり、300mmである。流路51の幅W2は、300mm以下であることが好ましい。
【0033】
〔接続部分の構成〕
接続部分4は、第一部分3と第二部分5とを連続的に接続する部分である。本実施形態では、接続部分4の長さL
3は250mmであり、ノズル1の全長Lに対する接続部分4の長さL
3の割合は21%である(
図1)。
【0034】
接続部分4では、断面形状が円形である第一部分3の流路31と、断面形状が扁平状である第二部分5の流路51とを連続的に接続する形状の流路41が設けられている。したがって、流路41の断面形状は、上端42において円形であり、下端43において扁平状である。第一部分3と接続部分4との境界(すなわち接続部分4の上端42)における流路41の断面積は、第一部分下部3cにおける流路31の断面積と一致し、3700mm2である。
【0035】
〔接合部分の構成〕
接合部分2は、ノズル1を上流側の設備(ストッパー、スライディングノズルなど。不図示。)と接合するための部位である。接合部分2では、流路21の断面積が、基端側から先端側(すなわち第一部分3の側)に漸減するように構成されている。ノズル1に接合部分2が設けられていることによって、ストッパー型の流量制御が採用される場合において、タンディッシュから鋳型まで溶鋼を酸化させる吸気の原因となる目地をなくすことができるので、鋼の品質が向上しやすい。
【0036】
〔各部の寸法関係〕
続いて、第一部分3、接続部分4、および第二部分5の寸法関係について説明する。
【0037】
上記に説明したように、ノズル1の全長Lに対して、第一部分3の長さL1の割合は25%であり、接続部分4の長さL3の割合は21%であり、第二部分5の長さL2の割合は50%である。このように、ノズル1の全長Lに対する第一部分3、接続部分4、および第二部分5のそれぞれの長さの割合が、いずれも10%以上であることが好ましい。特に、ノズル1の全長Lに対する第二部分5の長さL2の割合は、20%以上であることがより好ましい。
【0038】
第一部分3における流路31の断面積の最大値S1は5000mm2であり、第二部分5における流路51の断面積の最大値S2は5400mm2である。したがって、S2はS1より大きい。
【0039】
第一部分3における流路31の断面積の最大値S1は5000mm2であり、第一部分下部3cにおける流路31の断面積の最小値S3は3700mm2であるので、S1とS3との比S1/S3は1.35である。本実施形態では、S1とS3との比S1/S3は、1.10以上2.00以下の範囲にある。S1とS3との比S1/S3は、1.15以上であることが好ましく、1.25以上であることがより好ましい。また、S1とS3との比S1/S3は、1.90以下であることが好ましく、1.80以下であることがより好ましい。
【0040】
第二部分5における流路51の断面積の最大値S2は5400mm2であり、第一部分下部3cにおける流路31の断面積の最小値S3は3700mm2であるので、S2とS3との比S2/S3は1.46である。本実施形態では、S2とS3との比S2/S3は、1.20以上2.50以下の範囲にある。S2とS3との比S2/S3は、1.25以上であることが好ましく、1.30以上であることがより好ましい。また、S2とS3との比S2/S3は、2.40以下であることが好ましく、2.20以下であることがより好ましい。
【0041】
〔その他の実施形態〕
最後に、本発明に係る連続鋳造用浸漬ノズルのその他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0042】
本発明に係る連続鋳造用浸漬ノズルに係る第一部分、接続部分、および第二部分のいずれにおいても、上記に例示した第一部分3、接続部分4、および第二部分5の構造に限定されず、各部の構造に対して特定の機能を付与するための公知の変更が加えられてもよい。たとえば、拡径部位および縮径部位、段差、凹凸部、ならびに溝などの偏流防止策が、第一部分、接続部分、および第二部分のいずれにおいても設けられうる。
【0043】
上記の実施形態では、ノズル1の基端側の端部に接合部分2が設けられている構成を例として説明した。しかし、本発明に係る連続鋳造用浸漬ノズルの基端側には、接合部分が設けられていなくてもよい。この場合、連続鋳造用浸漬ノズルの基端側の端部は第一部分であり、したがってその流路は略円筒状(断面積が略一定)に構成される。
【0044】
上記の実施形態では、第一部分下部3cにおける流路31が、上端のテーパ状部分を除いて円筒状に形成されている構成を例として説明した。しかし本発明において、第一部分下部における流路の形状は、流路の横断面形状が円形である限りにおいて限定されない。たとえば、第一部分下部の流路の中途に局所的な縮径部を設ける構成や、第一部分下部の流路をテーパ状に形成する構成などが採用されうる。また、上記の実施形態では第一部分下部3cの長さL1cが第一部分3の長さL1の20%である構成を例として説明したが、第一部分下部の長さは任意である。なお、いずれの場合においても、第一部分と接続部分との境界部から上流側にかけての第一部分の長さの20%の範囲内における流路の断面積の最小値をS3と定義する。ここで、上記の範囲外、すなわち第一部分長さの20%を超えて境界部から離れている部分に流路の断面積を絞った箇所を設けても、偏流を防止する効果は得られにくい。
【0045】
上記の実施形態では、第一部分下部3cにおける流路31の断面積の最小値をS3とし、S1とS3との比S1/S3は、1.10以上2.00以下の範囲にあり、S2とS3との比S2/S3は、1.20以上2.50以下の範囲にある発明について説明した。しかし、本発明の別態様として、第一部分と接続部分との境界における流路の断面積をS3として定義し、当該S3についてS1とS3との比S1/S3およびS2とS3との比S2/S3がそれぞれ上記の数値範囲にある発明を特定できる。すなわち本発明の別態様は、流路と開口部とを備え、基端側から順に、第一部分、接続部分、および第二部分が設けられている連続鋳造用浸漬ノズルであって、前記第一部分において、前記流路の横断面形状は円形であり、前記第二部分において、前記流路の形状が扁平状であり、前記接続部分において、前記流路の形状は、前記第一部分の前記流路と前記第二部分の前記流路とを連続的に接続する形状であり、前記開口部は、前記第二部分の先端側に設けられ、かつ前記扁平状の面方向に沿って延びており、前記第一部分における前記流路の断面積の最大値をS1とし、前記第二部分における前記流路の断面積の最大値をS2とし、前記第一部分と前記接続部分との境界における前記流路の断面積をS3として、S2は、S1より大きく、S1とS3との比S1/S3は、1.10以上2.00以下であり、かつ、S2とS3との比S2/S3は、1.20以上2.50以下である連続鋳造用浸漬ノズルである。この別態様によっても、上記の実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0046】
その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の範囲はそれらによって限定されることはないと理解されるべきである。当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜改変が可能であることを容易に理解できるであろう。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された別の実施形態も、当然、本発明の範囲に含まれる。
【実施例】
【0047】
以下では、実施例を示して本発明をさらに説明する。ただし、以下の実施例は本発明を限定しない。
【0048】
〔ノズル形状〕
以下の各条件を変更したノズルを作成した。各例において選択された条件は、後掲する表中に記載している。
【0049】
(S1とS2との大小関係)
上記の実施形態と同様にS2>S1とした例、および、上記の実施形態と反対にS1>S2とした例を作成した。
【0050】
(S1とS3との比S1/S3)
S1とS3との比S1/S3を、1.00~2.10の範囲で変更した例を作成した。
【0051】
(S2とS3との比S2/S3)
S2とS3との比S2/S3を、0.75~2.80の範囲で変更した例を作成した。
【0052】
(第二部分5の幅W2)
上記の実施形態と同様に第二部分5の幅W2を300mmとした例、および上記の実施形態と異なる320mmとした例を作成した。
【0053】
〔評価〕
実施例および比較例の各例のノズルについて水モデル試験を行った。モールドサイズは1200×1400mmとし、スループットは溶鋼換算で毎分4.0トンとした。各ノズルから吐出させた水について、メニスカス流速およびノズル左右の湯面変動量の差を3分間にわたって測定し、その平均値および時間変化を記録した。
【0054】
(メニスカス流速)
メニスカス流速の3分間の平均値について、A~Cの三段階で評価した。評価BおよびCの例については、+または-の符号を併記して、最も好ましい範囲(評価Aの範囲)に対する大小を表した。なお、評価B以上であれば実使用上好ましく、評価Aは特に好ましい。
A :メニスカス流速の3分間の平均値が毎秒20cm以上30cm以下である。
B(-):メニスカス流速の3分間の平均値が毎秒10cm以上20cm未満である。
B(+):メニスカス流速の3分間の平均値が毎秒30cmを超えて40cm以下である。
C(-):メニスカス流速の3分間の平均値が毎秒10cm未満である。
C(+):メニスカス流速の3分間の平均値が毎秒40cmを超える。
【0055】
(左右の湯面変動量の差)
ノズル左右の湯面の差について、A~Cの四段階で評価した。なお、評価B以上であれば実使用上好ましく、評価Aは特に好ましい。
A:左右の湯面の液位の差が常に7mm未満である。
B:左右の湯面の液位の差が常に7mm以上10mm未満である。
C:左右の湯面の液位の差が常に10mm以上である。
【0056】
〔結果〕
実施例および比較例の各例について、寸法条件および評価結果を以下の表1~表3に示す。S2がS1より大きく(条件1)、S1とS3との比S1/S3が1.10以上2.00以下であり(条件2)、かつ、S2とS3との比S2/S3が1.20以上2.50以下である(条件3)実施例1~9は、メニスカス流速および左右の湯面変動量の差の双方について、実用上好ましい水準(評価B以上)だった(表1)。一方、条件1~3の少なくとも一つを満たさない比較例1~6は、メニスカス流速および左右の湯面変動量の差のいずれかについて評価Cであり、実用上好ましくない水準だった。
【0057】
表3には、第一部分3、接続部分4、および第二部分5の長さの割合を変更した例を示している。いずれの例も実用上好ましい水準(評価B以上)であったが、ノズル1の全長Lに対する第一部分3、接続部分4、および第二部分5のそれぞれの長さの割合が、いずれも10%以上である実施例10~13は、10%に満たない部分が存在する実施例14~16に比べてより良好な評価だった。
【0058】
【0059】
【0060】
表3:第一部分3、接続部分4、および第二部分5の長さの割合を変更した例
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、連続鋳造用浸漬ノズルとして用いることができ、特に、モールド厚さが200mm未満のスラブの連続鋳造用に特に好適である。
【符号の説明】
【0062】
1 :連続鋳造用浸漬ノズル
2 :接合部分
21 :流路
3 :第一部分
3a :第一部分上部
3b :第一部分中部
3c :第一部分下部
31 :流路
4 :接続部分
41 :流路
42 :接続部分の上端
43 :接続部分の下端
5 :第二部分
51 :流路
52 :開口部
【要約】
第一部分3において、流路31の横断面形状は円形であり、第二部分5において、流路51の形状が扁平状であり、接続部分4において、流路41の形状は、第一部分3の流路31と第二部分5の流路51とを連続的に接続する形状であり、開口部52は、第二部分5の先端側に設けられ、かつ扁平状の面方向に沿って延びており、第一部分3における流路31の断面積の最大値をS1とし、第二部分5における流路51の断面積の最大値をS2とし、第一部分3と接続部分4との境界部42から上流側にかけての第一部分3の長さL1の20%の範囲内における流路31の断面積の最小値をS3として、S2は、S1より大きく、S1とS3との比S1/S3は、1.10以上2.00以下であり、かつ、S2とS3との比S2/S3は、1.20以上2.50以下である。