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特許7201967ペプチドもしくはその薬学的に許容される塩、またはそれらのプロドラッグ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-27
(45)【発行日】2023-01-11
(54)【発明の名称】ペプチドもしくはその薬学的に許容される塩、またはそれらのプロドラッグ
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/06 20060101AFI20221228BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20221228BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20221228BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20221228BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20221228BHJP
   A61P 5/06 20060101ALI20221228BHJP
   A61P 5/08 20060101ALI20221228BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20221228BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221228BHJP
   A61P 15/08 20060101ALI20221228BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20221228BHJP
   A61P 15/10 20060101ALI20221228BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20221228BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20221228BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20221228BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221228BHJP
【FI】
C07K7/06 ZNA
A61K38/08
A61P3/04
A61P3/10
A61P3/00
A61P5/06
A61P5/08
A61P25/16
A61P35/00
A61P15/08
A61P15/00
A61P15/10
A61P35/02
A61P21/00
A61P9/00
A61P43/00 111
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018562463
(86)(22)【出願日】2018-01-19
(86)【国際出願番号】 JP2018001651
(87)【国際公開番号】W WO2018135641
(87)【国際公開日】2018-07-26
【審査請求日】2021-01-06
(31)【優先権主張番号】P 2017008301
(32)【優先日】2017-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592068200
【氏名又は名称】学校法人東京薬科大学
(73)【特許権者】
【識別番号】510094724
【氏名又は名称】国立研究開発法人国立循環器病研究センター
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】林 良雄
(72)【発明者】
【氏名】高山 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】宮里 幹也
(72)【発明者】
【氏名】寒川 賢治
(72)【発明者】
【氏名】森 健二
(72)【発明者】
【氏名】山本 昌
(72)【発明者】
【氏名】坂根 稔康
【審査官】小金井 悟
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/116752(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/109135(WO,A2)
【文献】J. Med. Chem.,2014年08月14日,Vol.57, No.15,pp.6583-6593
【文献】有機合成化学協会誌,2015年07月01日,Vol.73, No.7,pp.737-748
【文献】ACS Med. Chem. Lett.,2015年01月28日,Vol.6, No.3,pp.302-307
【文献】Pept. Sci.,2015年03月,Vol.2014,pp.59-60,特に要約等
【文献】Biopolymers,2016年11月04日,Vol.106, No.4,pp.440-445
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(1)で表され、2型ニューロメジンU受容体の選択的アゴニスト活性を有する、ペプチドまたはその薬学的に許容される塩:
【化1】

上記式(1)において、
は、3-シクロヘキシルアラニン残基、または欠損であり;
は、Leu、Val、Ile、Thr、Asn、Gln、ノルバリン、イソバリン、ノルロイシン、2-シクロヘキシルグリシン、3-シクロヘキシルアラニン、2,4-ジアミノブタン酸、および2-アミノ酪酸からなる群から選択されるアミノ酸残基であり;
は、Leu、Val、Ile、ノルバリン、イソバリン、ノルロイシンおよび2-シクロヘキシルグリシンからなる群から選択されるアミノ酸残基であり;
は、2,4-ジアミノブタン酸残基であり;
は、Pro残基またはホモプロリン残基であり;
は、Arg残基であり;
は、Asn残基であり;
は、水素原子またはR-(R-CO-であり;Rは、水素原子もしくはヒドロキシ基であり、または置換もしくは非置換の、鎖式炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基もしくは複素環式基であり;Rは、アルキレン基、オキシアルキレン基またはアルキレンオキシ基であり;nは、0または1であり;
は、アミノ基、水素原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、炭化水素基またはポリアルキレングリコール基である。
【請求項2】
前記Xが欠損である、請求項1に記載のペプチドまたはその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
前記Zにおいて、Rが、置換または非置換の、炭素数3~12の脂環式炭素水素基または炭素数6~20の芳香族炭化水素基であり;Rが、炭素数1~3のアルキレン基、炭素数1~3のオキシアルキレン基または炭素数1~3のアルキレンオキシ基であり;nが、1である、請求項1または2に記載のペプチドまたはその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
前記XがLeu、Ile、ノルバリン、ノルロイシンおよび2-シクロヘキシルグリシンからなる群から選択されるアミノ酸残基である、請求項1~3のいずれか1項に記載のペプチドまたはその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
前記XがLeu、Val、Ile、Thr、Asn、ノルバリン、ノルロイシン、2-シクロヘキシルグリシンおよび3-シクロヘキシルアラニンからなる群から選択されるアミノ酸残基である、請求項1~4のいずれか1項に記載のペプチドまたはその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
前記式(1)で表されるペプチドが配列番号1、3~18および36~50で表されるアミノ酸配列のいずれか1つを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のペプチドまたはその薬学的に許容される塩。
【請求項7】
前記式(1)で表されるペプチドが配列番号1、3~18で表されるアミノ酸配列のいずれか1つを含む、請求項6に記載のペプチドまたはその薬学的に許容される塩。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のペプチドまたはその薬学的に許容される塩を含む、2型ニューロメジンU受容体の選択的アゴニスト剤。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載のペプチドまたはその薬学的に許容される塩を含む、メタボリックシンドローム、肥満症または糖尿病の予防および/または治療剤。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか1項に記載のペプチドまたはその薬学的に許容される塩を含む、プロラクチン分泌に関連する疾患の予防および/または治療剤。
【請求項11】
前記プロラクチン分泌に関連する疾患が、パーキンソン症候群、末端肥大症、下垂体性巨人症、高プロラクチン血性下垂体腺腫、プロラクチノーマ、間脳腫瘍、高プロラクチン血性排卵障害、産褥性乳汁分泌抑制、乳汁漏出症、乳汁漏出無月経症候群、不妊症、月経異常、周産期心筋症、レストレスレッグス症候群、自己免疫疾患、インポテンス、キアリ・フロンメル症候群、アルゴンツ・デル・カスティロ症候群、フォーベス・アルブライト症候群、リンパ腫、シーハン症候群および精子形成異常からなる群から選択される、請求項10に記載の予防および/または治療剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペプチドもしくはその薬学的に許容される塩、またはそれらのプロドラッグに関する。
【背景技術】
【0002】
ニューロメジンU(NMU)は、摂食抑制やエネルギー代謝亢進、体温上昇、体重減少などの作用を有する生理活性ペプチドであり、抗肥満薬としての応用が期待されている(特許文献1、非特許文献1)。また最近ではグルコースホメオスタシスにも関与していることが明らかとなり、糖尿病治療薬としても注目されている(非特許文献2)。
【0003】
各動物で同定されているNMUのアミド化されたC末端7残基(Phe-Leu-Phe-Arg-Pro-Arg-Asn-NH)は、哺乳類で完全に同一であり、1型および2型NMU受容体(NMUR1およびNMUR2)活性化のために重要であるとされている。主に、NMUR1は、末梢組織(主に腸管、肺など)に、そしてNMUR2は、中枢(主に視床下部室傍核)に高発現していることが知られている。そのため、NMUR1およびNMUR2それぞれに選択的なアゴニストが求められている。
【0004】
例えば、非特許文献3には、NMUR2を選択的に活性化するペプチドとして、3-シクロヘキシルプロピオニル-Leu-Leu-Dpr-Pro-Arg-Asn-NH(Dpr:2,3-ジアミノプロピオン酸)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2015/095719号
【非特許文献】
【0006】
【文献】E.D.Micewiez、他7名、“Small lipidated anti-obesity compounds derived from neuromedin U”、European Journal of Medical Chemistry(2015)101、616-626
【文献】P.Ingallinella、他13名、“PEGylation of neuromedin U yields a promising candidate for the treatment of obesity and diabetes”、Bioorganic & Medical Chemistry(2012)20、4751-4759
【文献】K.Takayama、他8名、“Discovery of selective hexapeptide agonists to human neuromedin U receptors types 1 and 2”、Journal of Medicinal Chemistry(2014)57、6583-6593
【発明の概要】
【0007】
確かに、非特許文献3に記載のペプチドにより、NMUR2を選択的に活性化できる。しかし、本発明者らは、非特許文献3に記載のペプチドが生理的条件下で化学的に不安定であることを見出した。
【0008】
したがって、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、NMUR2を選択的に活性化でき、かつ生理的条件下で化学的に安定したペプチドを提供することを目的とする。
【0009】
本発明者らは、上記の問題を解決すべく、鋭意研究を行った。その結果、下記式(1)で表されるペプチドもしくはその薬学的に許容される塩、またはそれらのプロドラッグによって上記課題を解決することを見出し、本発明の完成に至った。
【0010】
【化1】
【0011】
上記式(1)において、
は、脂環式基、芳香族炭化水素基、アラルキル基および複素環基からなる群から選択される置換基を側鎖に有していてもよいAla残基、または欠損であり;
は、Leu、Val、Ile、Thr、Asn、Gln、Ala、ノルバリン、イソバリン、ノルロイシン、2-シクロヘキシルグリシン、3-シクロヘキシルアラニン、2,4-ジアミノブタン酸、2,3-ジアミノプロピオン酸、2-アミノ酪酸および2-アミノイソ酪酸からなる群から選択されるアミノ酸残基であり;
は、Leu、Val、Ile、ノルバリン、ノルロイシンおよび2-シクロヘキシルグリシンからなる群から選択されるアミノ酸残基であり;
は、2,4-ジアミノブタン酸、オルニチン、2-ピリジルアラニン、3-ピリジルアラニンおよび4-ピリジルアラニンからなる群から選択されるアミノ酸残基であり;
は、Pro残基またはホモプロリン残基であり;
は、Arg残基であり;
は、Asn残基であり;
は、水素原子またはR-(R-CO-であり;Rは、水素原子もしくはヒドロキシ基であり、または置換もしくは非置換の、鎖式炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基もしくは複素環式基であり;Rは、アルキレン基、オキシアルキレン基またはアルキレンオキシ基であり;nは、0または1であり;
は、アミノ基、水素原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、炭化水素基またはポリアルキレングリコール基である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施例および比較例のペプチドによる、hNMUR1およびhNMUR2に対するアゴニスト活性を示す。
図2図2は、実施例および比較例のペプチドによる、hNMUR1およびhNMUR2に対するアゴニスト活性を示す。
図3図3は、実施例のペプチドによる、hNMUR1およびhNMUR2に対するアゴニスト活性を示す。
図4図4は、実施例および比較例のペプチドによる、hNMUR1およびhNMUR2に対するアゴニスト活性を示す。
図5図5は、実施例のペプチドによる、hNMUR1およびhNMUR2に対するアゴニスト活性を示す。
図6図6は、実施例のペプチドによる、mNMUR1およびmNMUR2に対するアゴニスト活性を示す。
図7図7は、実施例のペプチドによる、リン酸緩衝液中での安定性評価の結果を示す。
図8図8は、実施例のペプチドによる、リン酸緩衝液中での安定性評価の結果を示す。
図9図9は、比較例のペプチドによる、リン酸緩衝液中での安定性評価の結果を示す。
図10図10は、比較例のペプチドによる、リン酸緩衝液中での安定性評価の結果を示す。
図11図11は、実施例のペプチドによる、ラット血漿中での安定性評価の結果を示す。
図12図12は、比較例のペプチドによる、ラット血漿中での安定性評価の結果を示す。
図13図13は、実施例および比較例のペプチドによる、ラット血中動態評価の結果を示す。
図14図14は、実施例のペプチドによる、マウス鼻腔内投与における体重増加抑制活性評価の結果を示す。
図15図15は、実施例のペプチドによる、マウス鼻腔内投与における摂餌量評価の結果を示す。
図16図16は、実施例および比較例のペプチドによる、脳移行性の評価を示す。
図17図17は、実施例のペプチドによる、血中コルチコステロン濃度変動の評価を示す。
図18図18は、実施例のペプチドによる、血中プロラクチン濃度上昇抑制活性の評価を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上述したように、本発明者らは、非特許文献3に記載のペプチドが生理的条件下で化学的に不安定であることを見出した。具体的には、非特許文献3に記載のペプチドは、Dpr残基のαおよびβアミノ基間でのアシル基(3-シクロヘキシルプロピオニル-Leu-Leu)転移反応が、生理的条件下で起こること(化学的不安定性)が判明した。そして、本発明者らは、Dpr残基のβ位アミノ基にアシル基が転移することで、前記ペプチド誘導体が有するアゴニスト活性が失われることを見出した。そして、本発明者らは、驚くべきことに、非特許文献3に記載のペプチドにおいて、Dpr残基を、2,4-ジアミノブタン酸残基、オルニチン残基またはピリジルアラニン残基などに変換することにより、生理的条件下で化学的に安定となることを見出した。
【0014】
かかるペプチドは、NMUR2を選択的に活性化でき、かつ生理的条件下で化学的に安定して存在できる。
【0015】
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。
【0016】
本明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20~25℃)/相対湿度40~50%RHの条件で行う。
【0017】
本明細書において、「式(1)で表されるペプチドもしくはその薬学的に許容される塩」を、単に「本発明に係るペプチド」とも称する。また、「2型ニューロメジンU受容体」を、単に「NMUR2」、および「1型ニューロメジンU受容体」を、単に「NMUR1」とも称する。
【0018】
本明細書において、「NMUR2選択的アゴニスト」または「NMUR2を選択的に活性化」とは、NMUR1への相対アゴニスト活性が1000nMにおいて18%以下であり、かつNMUR2への相対アゴニスト活性が100nMにおいて48%以上であることを意味する。
【0019】
本発明における「アミノ酸残基」とは、ペプチドまたはタンパク質分子上で、ペプチドまたはタンパク質を構成しているアミノ酸の一単位に当たる部分を意味する。より具体的には、以下の式(2)のように表される、α-アミノ酸から誘導される2価の基を意味する:
【0020】
【化2】
【0021】
ただし、上記Rはアミノ酸の側鎖であり、例えばGlyであれば水素原子、Alaであればメチル基である。
【0022】
「アミノ酸残基」は、天然もしくは非天然のα-アミノ酸に由来し、光学活性体があり得る場合、L体、D体の何れであってもよいが、L体が好ましい。より具体的には、「アミノ酸残基」は、Arg、Lys、Asp、Asn、Glu、Gln、His、Pro、Tyr、Trp、Ser、Thr、Gly、Ala、Met、Cys、Phe、Leu、Val、およびIle、ならびにこれらの類縁体が例示できる。上記の類縁体としては、例えば上記20種のアミノ酸残基の側鎖が任意の置換基で置換された誘導体等であってもよく、例えば、上記20種のアミノ酸残基のハロゲン化誘導体(例えば、3-クロロアラニン)、2-アミノ酪酸、ノルロイシン、ノルバリン、イソバリン、2-アミノイソ酪酸、ホモフェニルアラニン、2,3-ジアミノプロピオン酸、2,4-ジアミノブタン酸、オルニチン、2-ヒドロキシグリシン、ホモセリン、ヒドロキシリジン、ヒドロキシプロリン、3,4-ジデヒドロプロリン、ホモプロリン、ホモシステイン、ホモメチオニン、アスパラギン酸エステル(例えば、アスパラギン酸-メチルエステル、アスパラギン酸-エチルエステル、アスパラギン酸-プロピルエステル、アスパラギン酸-シクロヘキシルエステル、アスパラギン酸-ベンジルエステルなど)、グルタミン酸エステル(グルタミン酸-シクロヘキシルエステル、グルタミン酸-エチルエステル、グルタミン酸-プロピルエステル、グルタミン酸-メチルエステル、グルタミン酸-ベンジルエステルなど)、ホルミルトリプトファン、2-シクロペンチルグリシン、2-シクロヘキシルグリシン、2-フェニルグリシン、2-ピリジルアラニン、3-シクロペンチルアラニン、3-シクロヘキシルアラニン、3-ピリジルアラニン、3-ピラゾリルアラニン、3-フラニルアラニン、3-チエニルアラニン、メトキシフェニルアラニン、3-ナフチルアラニン、および4-ピリジルアラニン等のアミノ酸に由来するアミノ酸残基が例示できるが、これらに制限されない。また、IleやThrのように、側鎖に不斉炭素を有するジアステレオマーが存在するものについては、天然型(例えば、(2R,3R)-2-アミノ-3-メチルペンタン酸、および(2R,3S)-2-アミノ-3-ヒドロキシブタン酸)および非天然型(例えば、(2R,3S)-2-アミノ-3-メチルペンタン酸、および(2R,3R)-2-アミノ-3-ヒドロキシブタン酸)が特に区別なく使用され得る。すなわち、「Ile」は(2R,3R)-2-アミノ-3-メチルペンタン酸および(2R,3S)-2-アミノ-3-メチルペンタン酸の両方を含む意味として使用され、「Thr」は(2R,3S)-2-アミノ-3-ヒドロキシブタン酸および(2R,3R)-2-アミノ-3-ヒドロキシブタン酸の両方を含む意味として使用される。好ましくは、天然型ジアステレオマー(すなわち、Ileであれば(2R,3R)-2-アミノ-3-メチルペンタン酸、Thrであれば(2R,3S)-2-アミノ-3-ヒドロキシブタン酸)が使用される。
【0023】
本明細書に記載のアミノ酸配列は、特に言及がない限り、慣例に従ってN末端(アミノ末端)側からC末端(カルボキシル末端)側への方向に表記される。
【0024】
各アミノ酸残基は、その側鎖の相違に基づいて、類似の性質を有するアミノ酸残基と置換し得ることが本技術分野において知られている(保存的置換)。例えば、脂肪族疎水性アミノ酸であるVal、Leu、Ile、2-アミノ酪酸(Abu)、ノルロイシン(Nle)、ノルバリン(Nva)、およびイソバリン(Iva)は相互に置換し得る。側鎖が水素原子またはメチル基であるGly、Alaおよび2-アミノイソ酪酸(Aib)は相互に置換し得る。中性極性アミノ酸であるAsnおよびGlnは相互に置換し得る。2,4-ジアミノブタン酸(Dbu)、およびオルニチン(Orn)は相互に置換し得る。Proと、ホモプロリン(homoPro)とは、相互に置換し得る。
【0025】
本明細書において「薬学的に許容される塩」は、患者や被験体へ投与された後、望ましくない生理学的効果を生じさせない、金属塩、アンモニウム塩、有機酸塩、無機酸塩、または有機塩基もしくは無機塩基との塩である。より具体的には、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩、アルミニウム塩、亜鉛塩、アンモニウム塩、メチルアミン塩、エチルアミン塩、アニリン塩、ジメチルアミン塩、ジエチルアミン塩、ピロリジン塩、ピペリジン塩、モルホリン塩、ピペラジン塩、トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、フタル酸塩、フマル酸塩、シュウ酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、リンゴ酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、およびp-トルエンスルホン酸塩等が例示できるが、これらに限定されない。
【0026】
本発明に係るペプチドのプロドラッグ(以下、「本発明に係るペプチドのプロドラッグ」を、単に「プロドラッグ」とも称する。)は、生体内における生理的条件下で胃酸や酵素等による酸化、還元、加水分解等を起こして本発明に係るペプチドに変化するペプチドを指す。これらのペプチドは、例えばBundgard, H., Design of Prodrugs, pp. 7-9, 21-24, Elsevier, Amsterdam 1985等に記載の従来公知の方法によって、本発明に係るペプチドから製造することができる。
【0027】
プロドラッグとしては、本発明に係るペプチドのアミノ酸残基の側鎖がカルボキシル基を有する場合には、当該カルボキシル基とアルコールとを反応させることによって得られるエステル誘導体、または当該カルボキシル基とアミンとを反応させることによって得られるアミド誘導体が例示できる。より具体的には、例えば、ペプチド側鎖のカルボキシル基を-COOR(Rは、炭素数1~20のアルキル基)で表されるエステル、または-CONHRもしくは-CONRR’(RおよびR’は、それぞれ独立に、炭素数1~20のアルキル基)で表されるアミド基に誘導体化したペプチドが挙げられる。
【0028】
プロドラッグとしては、本発明に係るペプチドのアミノ酸残基の側鎖が水酸基を有する場合には、当該水酸基と酸無水物等を反応させてアシル化させたアシルオキシ誘導体が例示できる。より具体的には、例えば、ペプチド側鎖の水酸基を-OCOR(Rは、炭素数1~20のアルキル基)で表されるアシルオキシ基に誘導体化したペプチドが挙げられる。
【0029】
プロドラッグとしては、本発明に係るペプチドのアミノ酸残基の側鎖がアミノ基を有する場合には、当該アミノ基がアシル化、N-オキシド化、アルキル化、またはリン酸化された誘導体が例示できる。より具体的には、例えば、側鎖のアミノ基を-NHCOR(Rは、炭素数1~20のアルキル基)や-NHCOCH(NH)CHで表されるアミド基に誘導体化したペプチドが挙げられる。
【0030】
本明細書において、アミノ酸またはアミノ酸残基についての「脂環式基、芳香族炭化水素基、複素環基およびアラルキル基からなる群から選択される置換基」は、アミノ酸またはアミノ酸残基のα炭素に結合した側鎖の置換基である。置換基の数は、通常、アミノ酸当たり0~3個であり、好ましくは0~1個である。
【0031】
上記脂環式基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、およびアダマンチル基等の、炭素数3~12の脂環式基が例示でき、好ましくはシクロヘキシル基である。
【0032】
上記芳香族炭化水素基としては、単環または縮合環構造の芳香族炭化水素に由来する基であり、より具体的には、フェニル基、ナフチル基、トリル基、およびフェナントリル基等の、炭素数6~20の芳香族炭化水素基が例示でき、好ましくはフェニル基またはナフチル基である。
【0033】
上記複素環基としては、環内に窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択されるヘテロ原子を1~3個含む、単環、縮合二環式または縮合三環式構造の置換基が例示でき、より具体的には、ピロリジル基、ピロール基、ピペリジル基、ピリジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、モルホリル基、インドリル基、ベンゾイミダゾリル基、キノリル基、カルバゾリル基、オキセタニル基、チエタニル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロチエニル基、フラニル基、チエニル基、テトラヒドロピラニル基、およびテトラヒドロチオピラニル基等が例示できる。
【0034】
上記アラルキル基としては、炭素数1~4のアルキル基が上記の炭素数6~20の芳香族炭化水素基で置換された基であり、より具体的には、ベンジル基、フェネチル基、ベンズヒドリル基等の炭素数7~24のアラルキル基が例示できる。
【0035】
これらのアミノ酸またはアミノ酸残基についての置換基は、炭素数1~6の直鎖または分岐鎖のアルキル基、炭素数1~6の直鎖または分岐鎖のアルコキシ基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エステル基、カルバモイル基、アミド基、アシル基、ニトロ基、スルホン基、スルホンアミド基、および/またはハロゲン等のさらなる置換基によって置換されていてもよい。
【0036】
上記のような置換基で置換されたアミノ酸またはアミノ酸残基としては、特に制限されるものでは無いが、例えば、2-シクロペンチルグリシン、2-シクロヘキシルグリシン、2-フェニルグリシン、2-ピリジルアラニン、3-シクロペンチルアラニン、3-シクロヘキシルアラニン、3-ピリジルアラニン、3-ピラゾリルアラニン、3-フラニルアラニン、3-チエニルアラニン、メトキシフェニルアラニン、3-ビフェニルアラニン、3-(3-ベンゾチエニル)-アラニン、3-ナフチルアラニン(例えば、3-(1-ナフチル)-アラニン、3-(2-ナフチル)-アラニン)、および4-ピリジルアラニン等が例示できる。
【0037】
<ペプチド>
本発明の一形態によれば、以下の式(1)で表されるペプチドもしくはその薬学的に許容される塩、またはそれらのプロドラッグを提供する:
【0038】
【化3】
【0039】
本発明に係るペプチドにおいて、Xは、脂環式基、芳香族炭化水素基、アラルキル基および複素環基からなる群から選択される置換基を側鎖に有していてもよいAla残基、または欠損である。
【0040】
本発明の一実施形態では、NMUR2選択的アゴニスト活性の観点から、Xは、好ましくは脂環式基で置換されたAla残基または欠損であり、より好ましくは3-シクロヘキシルアラニン残基または欠損である。
【0041】
本発明の一実施形態では、NMUR2選択的アゴニスト活性の観点から、Xは、欠損である。
【0042】
本発明に係るペプチドにおいて、Xは、Leu、Val、Ile、Thr、Asn、Gln、Ala、ノルバリン、イソバリン、ノルロイシン、2-シクロヘキシルグリシン、3-シクロヘキシルアラニン、2,4-ジアミノブタン酸、2,3-ジアミノプロピオン酸、2-アミノ酪酸および2-アミノイソ酪酸からなる群から選択されるアミノ酸残基である。
【0043】
NMUR2選択的アゴニスト活性の観点から、好ましくは、Xは、Leu、Val、Ile、Thr、Asn、ノルバリン、ノルロイシン、2-シクロヘキシルグリシン、3-シクロヘキシルアラニン、および2,4-ジアミノブタン酸からなる群から選択されるアミノ酸残基である。より好ましくは、Xは、Leu、Val、Ile、Thr、Asn、ノルバリン、ノルロイシン、2-シクロヘキシルグリシン、および3-シクロヘキシルアラニンからなる群から選択されるアミノ酸残基である。
【0044】
本発明に係るペプチドにおいて、Xは、Leu、Val、Ile、ノルバリン、イソバリン、ノルロイシンおよび2-シクロヘキシルグリシンからなる群から選択されるアミノ酸残基である。
【0045】
NMUR2選択的アゴニスト活性の観点から、好ましくは、Xは、Leu、Val、Ile、ノルバリン、ノルロイシンおよび2-シクロヘキシルグリシンからなる群から選択されるアミノ酸残基である。より好ましくは、Xは、Leu、Ile、ノルバリン、ノルロイシンおよび2-シクロヘキシルグリシンからなる群から選択されるアミノ酸残基である。さらに好ましくは、Xは、Leu、ノルバリンまたはノルロイシンから選択されるアミノ酸残基である。
【0046】
本発明に係るペプチドにおいて、Xは、2,4-ジアミノブタン酸、オルニチン、2-ピリジルアラニン、3-ピリジルアラニンおよび4-ピリジルアラニンからなる群から選択されるアミノ酸残基である。Xがこれらのアミノ酸残基から選択されることで、NMUR2選択的なアゴニスト活性を高く維持しつつ、生理的条件下での化学的安定性が得られる。
【0047】
は、生理的条件下での化学的安定性の観点から、好ましくは2,4-ジアミノブタン酸残基またはオルニチン残基である。より好ましくは、Xは、2,4-ジアミノブタン酸残基である。
【0048】
本発明に係るペプチドにおいて、Xは、Pro残基またはホモプロリン残基である。
【0049】
本発明に係るペプチドにおいて、Xは、Arg残基である。
【0050】
本発明に係るペプチドにおいて、Xは、Asn残基である。
【0051】
本発明の一実施形態では、上記式(1)において、Xは、3-シクロヘキシルアラニン残基または欠損であり;Xは、Leu、Val、Ile、Thr、Asn、ノルバリン、ノルロイシン、2-シクロヘキシルグリシン、3-シクロヘキシルアラニン、および2,4-ジアミノブタン酸からなる群から選択されるアミノ酸残基であり;Xは、Leu、Val、Ile、ノルバリン、ノルロイシンおよび2-シクロヘキシルグリシンからなる群から選択されるアミノ酸残基であり;Xは、2,4-ジアミノブタン酸、オルニチン、2-ピリジルアラニン、3-ピリジルアラニンおよび4-ピリジルアラニンからなる群から選択されるアミノ酸残基であり;Xは、Pro残基またはホモプロリン残基であり;Xは、Arg残基であり;Xは、Asn残基である。
【0052】
本発明の好ましい実施形態では、NMUR2選択的アゴニスト活性の観点から、上記式(1)において、Xは、欠損であり;Xは、Leu、Val、Ile、Thr、Asn、ノルバリン、ノルロイシン、2-シクロヘキシルグリシン、3-シクロヘキシルアラニン、および2,4-ジアミノブタン酸からなる群から選択されるアミノ酸残基であり;
は、Leu、Ile、ノルバリン、ノルロイシンおよび2-シクロヘキシルグリシンからなる群から選択されるアミノ酸残基であり;Xは、2,4-ジアミノブタン酸、オルニチン、2-ピリジルアラニン、3-ピリジルアラニンおよび4-ピリジルアラニンからなる群から選択されるアミノ酸残基であり;Xは、Pro残基またはホモプロリン残基であり;Xは、Arg残基であり;Xは、Asn残基である。
【0053】
本発明の好ましい実施形態では、NMUR2選択的アゴニスト活性の観点から、上記式(1)において、Xは、欠損であり;Xは、Leu、Val、Ile、Thr、Asn、ノルバリン、ノルロイシン、2-シクロヘキシルグリシン、3-シクロヘキシルアラニン、および2,4-ジアミノブタン酸からなる群から選択されるアミノ酸残基であり;Xは、Leu、Ile、ノルバリン、ノルロイシンおよび2-シクロヘキシルグリシンからなる群から選択されるアミノ酸残基であり;Xは、2,4-ジアミノブタン酸残基またはオルニチン残基であり;Xは、Pro残基またはホモプロリン残基であり;Xは、Arg残基であり;Xは、Asn残基である。
【0054】
本発明のより好ましい実施形態では、NMUR2選択的アゴニスト活性の観点から、上記式(1)において、Xは、欠損であり;Xは、Leu、Val、Ile、Thr、Asn、ノルバリン、ノルロイシン、2-シクロヘキシルグリシン、および3-シクロヘキシルアラニンからなる群から選択されるアミノ酸残基であり;Xは、Leu、Ile、ノルバリン、ノルロイシンおよび2-シクロヘキシルグリシンからなる群から選択されるアミノ酸残基であり;Xは、2,4-ジアミノブタン酸残基またはオルニチン残基であり;Xは、Pro残基またはホモプロリン残基であり;Xは、Arg残基であり;Xは、Asn残基である。
【0055】
本発明に係るペプチドにおいて、Zは、本発明に係るペプチドのN末端の構造である。Zは、水素原子またはR-(R-CO-であり;Rは、水素原子もしくはヒドロキシ基であり、または置換もしくは非置換の、鎖式炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基もしくは複素環式基であり;Rは、アルキレン基、オキシアルキレン基またはアルキレンオキシ基であり;nは、0または1である。
【0056】
において、鎖式炭化水素基は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等の、炭素数1~18の鎖式炭化水素基が例示でき、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基である。
【0057】
において、脂環式炭化水素基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、およびアダマンチル基等の、炭素数3~12の脂環式基が例示でき、好ましくはシクロペンチル基またはシクロヘキシル基である。
【0058】
において、芳香族炭化水素基としては、単環または縮合環構造の芳香族炭化水素に由来する基であり、より具体的には、フェニル基、ナフチル基、トリル基、およびフェナントリル基等の、炭素数6~20の芳香族炭化水素基が例示でき、好ましくはフェニル基またはナフチル基である。
【0059】
において、複素環式基としては、環内に窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択されるヘテロ原子を1~3個含む、単環、縮合二環式または縮合三環式構造の置換基が例示でき、より具体的には、ピロリジル基、ピロール基、ピペリジル基、ピリジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、モルホリル基、インドリル基、ベンゾイミダゾリル基、キノリル基、カルバゾリル基、オキセタニル基、チエタニル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロチエニル基、フラニル基、チエニル基、テトラヒドロピラニル基、およびテトラヒドロチオピラニル基等が例示できる。
【0060】
上記鎖式炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基および複素環式基は、置換されていてもよく、置換基としては、炭素数1~6の直鎖または分岐鎖のアルキル基、炭素数1~6の直鎖または分岐鎖のアルコキシ基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エステル基、カルバモイル基、アミド基、アシル基、ニトロ基、スルホン基、スルホンアミド基、および/またはハロゲン等が例示できる。置換基は、好ましくは、メチル基、メトキシ基または塩素原子である。
【0061】
nが1の場合、Rにおいて、アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基およびプロピレン基等の、炭素数1~3のアルキレン基が例示でき、好ましくはエチレン基またはトリメチレン基である。
【0062】
において、オキシアルキレン基としては、オキシメチレン基、オキシエチレン基、オキシトリメチレン基およびオキシプロピレン基等の、炭素数1~3のオキシアルキレン基が例示でき、好ましくはオキシメチレン基またはオキシエチレン基である。
【0063】
において、アルキレンオキシ基としては、メチレンオキシ基、エチレンオキシ基、トリメチレンオキシ基およびプロピレンオキシ基等の、炭素数1~3のアルキレンオキシ基が例示できる。
【0064】
本発明の好ましい実施形態では、Zは、NMUR2選択的アゴニスト活性の観点から、Rが、置換または非置換の、炭素数3~12の脂環式炭素水素基または炭素数6~20の芳香族炭化水素基であり;Rが、炭素数1~3のアルキレン基、炭素数1~3のオキシアルキレン基または炭素数1~3のアルキレンオキシ基であり;nが、1である。
【0065】
本発明のより好ましい実施形態では、Zは、NMUR2選択的アゴニスト活性の観点から、3-シクロヘキシルプロピオニル基、3-シクロペンチルプロピオニル基、4-シクロヘキシルブタノイル基、3-(2-メトキシフェニル)プロピオニル基、3-(3-メトキシフェニル)プロピオニル基、3-(4-メトキシフェニル)プロピオニル基、3-(4-クロロフェニル)プロピオニル基、3-(4-メチルフェニル)プロピオニル基、4-フェニルブタノイル基、3-フェノキシプロピオニル基、4-(4-メトキシフェニル)ブタノイル基、2-ナフトキシアセチル基および1-ヘキサノイル基からなる群から選択される。
【0066】
本発明に係るペプチドにおいて、Zは、本発明に係るペプチドのC末端の構造であり、-CO-Zで表される。Zは、アミノ基、水素原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、炭化水素基またはポリアルキレングリコール基であり、好ましくはアミノ基である。
【0067】
において、アミノ基は、-NH、-NHR11およびNR1112で表され、好ましくは-NHである。R11およびR12としては、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、アミル基、イソアミル基、tert-アミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等の炭素数1~6のアルキル基;フェニル基、ナフチル等の炭素数6~10のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、ベンズヒドリル基等の炭素数7~18のアラルキル基;グルコース等の糖;炭素数1~6のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、アミル基、イソアミル基、tert-アミル基、ヘキシル基)で修飾されていてもよいポリエチレングリコール基などが挙げられる。
【0068】
がヒドロキシ基の場合、ペプチドのC末端は、カルボキシル基(-COOH)の構造であってもよく、カルボキシレート基(-COO)の構造であってもよい。
【0069】
において、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基およびヘキシルオキシ基等の、炭素数1~6のアルコキシ基が例示できる。
【0070】
において、炭化水素基としては、上記R11またはR12と同じ置換基が例示できる。
【0071】
において、ポリアルキレングリコール基は、ポリメチレングリコール基、ポリエチレングリコール基、ポリプロピレングリコール基およびポリブチレングリコール基等の、炭素数1~4のポリアルキレングリコール基が例示でき、好ましくはポリエチレングリコール基である。ポリアルキレングリコール基は、炭素数1~6のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、アミル基、イソアミル基、tert-アミル基、ヘキシル基)で修飾されていてもよい。また、ポリアルキレングリコール基において、末端がアミノ基で置換されていてもよい。
【0072】
本発明に係るペプチドにおいて、NMUR2選択的アゴニスト活性および生理的条件下での化学的安定性の観点から、上記式(1)で表されるペプチドが配列番号1~66で表されるアミノ酸配列のいずれか1つを含む。
【0073】
より好ましくは、NMUR2選択的アゴニスト活性および生理的条件下での化学的安定性の観点から、上記式(1)におけるペプチドが配列番号1~21で表されるアミノ酸配列のいずれか1つを含む。さらに好ましくは、上記式(1)で表されるペプチドが配列番号1~12および配列番号14~21で表されるアミノ酸配列のいずれか1つを含む。よりさらに好ましくは、上記式(1)で表されるペプチドが配列番号1~10、配列番号12および配列番号14~18で表されるアミノ酸配列のいずれか1つを含む。
【0074】
本発明の好ましい実施形態では、NMUR2選択的アゴニスト活性および生理的条件下での化学的安定性をより高めるとの観点から、本発明に係るペプチドが下記式(1-1)~式(1-32)からなる群から選択されるペプチドである。
【0075】
【化4】
【0076】
<ペプチドの製造方法>
本発明に係るペプチドは、化学的合成法や組換え技術を含む従来公知の手法によって製造することができる。本発明に係るペプチドを化学合成により調製するには、各アミノ酸をペプチド化学において通常用いられる方法、例えば、「ザ ペプチド(The Peptides)」第1巻〔Schroder and Luhke著, Academic Press, New York, U.S.A.(1966年)〕、「ペプチド合成の基礎と実験」(泉屋信夫ら著丸善株式会社、1985年)等に記載されている方法によって製造することが可能であり、液相法および固相法のいずれによっても製造できる。さらに、カラム法、バッチ法のいずれの方法も用いることができる。
【0077】
本発明に係るペプチドはまた、例えば下記のCurrent Protocols in Molecular Biology、Chapter 16に記載されるような手法により、動物細胞、昆虫細胞、または微生物等を利用した組み換え技術により製造してもよい。ペプチドは、培養細胞や微生物によって生成された後、従来公知の方法によって精製し得る。ペプチドの精製および単離法は当分野の技術者に公知であり、例えばCurrent Protocols in Molecular Biology、Chapter 16(Ausubelら、John Wiley and Sons、2006年)等に記載の手法により行うことができる。
【0078】
ペプチド結合を形成するための縮合方法として、アジド法、酸ハライド法、酸無水物法、カルボジイミド法、カルボジイミド-アディティブ法、活性エステル法、カルボニルイミダゾール法、酸化還元法、酵素法、ウッドワード試薬K、HATU試薬、Bop試薬を用いる方法等を例示することができる。なお、固相法での縮合反応は上記した方法のうち、酸無水物法、カルボジイミド法、および活性エステル法が主な方法として挙げられる。
【0079】
さらに、固相法でペプチド鎖を延長するときは、用いる有機溶媒に対して不溶な樹脂等の支持体に、C末端アミノ酸を結合する。かような樹脂としては、アミノ酸を樹脂に結合させる目的で官能基を導入した樹脂や、樹脂と官能基の間にスペーサーを挿入したもの等を目的に応じて用いることもできる。より具体的には、例えば、クロロメチル樹脂などのハロメチル樹脂、オキシメチル樹脂、4-(オキシメチル)-フェニルアセトアミドメチル樹脂、4-(オキシメチル)-フェノキシメチル樹脂、Rinkアミド樹脂などを挙げることができる。なお、これらの縮合反応を行う前に、通常公知の手段によって当該縮合反応に関与しないカルボキシル基やアミノ基や水酸基やアミジノ基等の保護手段を施すことができる。また逆に当該縮合反応に直接関与するカルボキシル基やアミノ基を活性化することもできる。
【0080】
各ユニットの縮合反応に関与しない官能基の保護手段に用いる保護基としては有機化学において通常用いられている保護基、例えば、「Protective Groups in Organic Synthesis(Greene著、John Wiley & Sons, Inc.(1981年))」等に記載されている保護基によって保護することが可能である。より具体的には、カルボキシル基の保護基としては、例えば、各種のメチルエステル、エチルエステル、ベンジルエステル、p-ニトロベンジルエステル、t-ブチルエステル、シクロヘキシルエステル等の通常公知の保護基を挙げることができる。アミノ基の保護基としては、例えば、ベンジルオキシカルボニル基、t-ブトキシカルボニル基、イソボルニルオキシカルボニル基、9-フルオレニルメトキシカルボニル基(Fmoc基)等を挙げることができる。
【0081】
カルボキシル基の活性化されたものとしては、例えば、当該カルボキシル基に対応する酸無水物;アジド;ペンタフルオロフェノール、2,4-ジニトロフェノール、シアノメチルアルコール、p-ニトロフェノール、N-ヒドロキシコハク酸イミド、N-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシミド、N-ヒドロキシフタルイミド、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール等との活性エステル等が挙げられる。アミノ基の活性化されたものとしては、当該アミノ基に対応する燐酸アミド等を挙げることができる。
【0082】
ペプチド合成の際の縮合反応は、通常溶媒中で行われる。当該溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、酢酸エチル、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ピリジン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、N-メチルピロリドン、水、メタノール等、または、これらの混合物を挙げることができる。また、当該縮合反応の反応温度は、通常の場合と同様に、-30℃~50℃の範囲で行なうことができる。
【0083】
さらに、ペプチドの製造工程における保護基の脱離反応の種類は、ペプチド結合に影響を与えずに保護基を脱離させることができる限りにおいて、用いる保護基の種類に応じて選択することができる。例えば、塩化水素、臭化水素、無水フッ化水素、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、またはこれらの混合物等による酸処理、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ヒドラジン、ジエチルアミン、ピペリジン等によるアルカリ処理、液体アンモニア中におけるナトリウム処理やパラジウム炭素による還元および、トリメチルシリルトリフラート、トリメチルシリルブロマイド等のシリル化処理等が挙げられる。なお、上記の酸またはシリル化剤処理による脱保護基反応においては、アニソール、フェノール、クレゾール、チオアニソール、エタンジチオール等のカチオン捕捉剤を添加するのが、脱保護基反応が効率的に行われるという観点から好ましい。
【0084】
なお、固相法で合成した本発明のペプチドの固相からの切断方法も通常公知の方法に従う。例えば、上記の酸またはシリル化剤による処理等を当該切断方法として挙げることができる。このようにして製造された本発明のペプチドに対しては、上記の一連の反応の終了後に通常公知の分離、精製手段を駆使することができる。例えば、抽出、分配、再沈澱、再結晶、固相抽出、カラムクロマトグラフィー等によって、より高純度で本発明のペプチドを収得することができる。
【0085】
本発明に係るペプチドにおいて、ペプチドのN末端およびC末端の修飾は、従来公知の方法によって行うことができる。N末端の修飾では、ペプチドを固相法で合成する場合、最後のアミノ酸残基の脱保護の後、N末端を上述のZにより修飾するために、3-シクロヘキシルプロピオン酸などを導入することで得ることができる。また、C末端の修飾では、例えば、アミド体合成用樹脂であるRinkアミド樹脂を用いて固相合成することで、ペプチドのアミド体を得ることができる。
【0086】
本発明に係るペプチドは、単離または精製されていてもよい。「単離または精製」とは、目的とする成分以外の成分を除去する操作が施されていることを意味する。単離または精製された本発明に係るペプチドの純度は、通常50%以上(例えば、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、98%以上、99%以上、100%)である。
【0087】
<NMUR2選択的アゴニスト剤、予防・治療剤、予防・治療方法>
本発明の一実施形態では、本発明に係るペプチドまたはそのプロドラッグを含む、2型ニューロメジンU受容体の選択的アゴニスト剤(本明細書中、「本発明に係るペプチドまたはそのプロドラッグを含む、2型ニューロメジンU受容体の選択的アゴニスト剤」を、単に「NMUR2選択的アゴニスト剤」とも称する)が提供される。
【0088】
本発明の一実施形態は、2型ニューロメジンU受容体の選択的アゴニストとして用いられる、本発明に係るペプチドまたはそのプロドラッグに関する。
【0089】
本発明の一実施形態は、本発明に係るペプチドまたはそのプロドラッグの有効量を患者に投与することを含む、NMUR2の選択的活性化方法に関する。
【0090】
上記NMUR2選択的アゴニスト剤の有効量を対象に投与することにより、摂食抑制、エネルギー代謝亢進、体温上昇、体重減少などの効果を達成できる。NMUR2選択的アゴニスト剤は、本発明に係るペプチドの1種以上、もしくはそのプロドラッグの1種以上、またはこれらの混合物から構成されてもよい。NMUR2選択的アゴニスト剤は、通常、本発明に係るペプチドおよびそのプロドラッグから選択される1種以上、ならびに薬学的に許容される担体を含む医薬組成物である。
【0091】
本発明の一実施形態では、本発明に係るペプチドまたはそのプロドラッグを含む、メタボリックシンドローム、肥満症または糖尿病の予防および/または治療剤(本明細書中、「本発明に係るペプチドまたはそのプロドラッグを含む、メタボリックシンドローム、肥満症または糖尿病の予防および/または治療剤」を、単に「肥満症・糖尿病の予防・治療剤」とも称する)が提供される。上記肥満症・糖尿病の予防・治療剤の有効量を患者に投与することにより、摂食抑制、エネルギー代謝亢進、体温上昇、体重減少などの作用より、メタボリックシンドローム、肥満症または糖尿病の予防および/または治療という効果を達成できる。肥満症・糖尿病の予防・治療剤は、本発明に係るペプチドの1種以上、もしくはそのプロドラッグの1種以上、またはこれらの混合物から構成されてもよい。肥満症・糖尿病の予防・治療剤は、通常、本発明に係るペプチドおよびそのプロドラッグから選択される1種以上、ならびに薬学的に許容される担体を含む医薬組成物である。
【0092】
本発明の一実施形態では、肥満症・糖尿病の予防・治療剤を体内に投与されるように用いることができる。
【0093】
本発明の一実施形態では、肥満症・糖尿病の予防・治療剤を局所、好ましくは静脈内、鼻腔内、または皮下、より好ましくは鼻腔内に投与されるように用いることができる。
【0094】
本発明に係るペプチドまたはそのプロドラッグの投与量は、投与対象、投与ルート、対象疾患、症状などによって適宜選択することができる。前記投与量は、1回量として、通常5μg~100mg/単位体重、好ましくは500μg~50mg/単位体重であり、より好ましくは1~10mg/単位体重である。また、製剤化の工夫により、前記投与量を低減することが可能である。1日あたりの投与回数も特に制限されず、例えば1日あたり1回~3回投与することができる。
【0095】
本発明の好ましい実施形態では、1~10mg/単位体重の本発明に係るペプチドまたはそのプロドラッグが鼻腔内に投与されるように用いられる、肥満症・糖尿病の予防・治療剤を提供する。
【0096】
本発明に係るペプチドは、NMUR2選択的なアゴニスト活性を有する。また、本発明に係るペプチドは、生理的条件下、たとえば血中においても化学的に安定であり、血中動態が良好である。
【0097】
よって、本発明の肥満症・糖尿病の予防・治療剤は、良好な血中動態を基盤として、体内への投与、具体的には静脈内、鼻腔内、皮下など局所への投与により、摂食抑制、エネルギー代謝亢進、体温上昇、体重減少などの作用を発揮できるため、メタボリックシンドローム、肥満症または糖尿病の予防および/または治療という効果を達成できる。
【0098】
本発明の一実施形態では、本発明に係るペプチドまたはそのプロドラッグの有効量を患者に投与することを含む、メタボリックシンドローム、肥満症または糖尿病の予防および/または治療方法を提供する。また、本発明の一実施形態は、メタボリックシンドローム、肥満症または糖尿病の予防および/または治療に使用するための、本発明に係るペプチドまたはそのプロドラッグに関する。
【0099】
メタボリックシンドロームとは、内臓肥満、インスリン抵抗性・高血糖、脂質代謝異常(高トリグリセライド血症、低HDLコレステロール血症)、血圧上昇といった、動脈硬化性疾患とII型糖尿発症とのリスク因子が集積した病態である。
【0100】
上記肥満症としては、特に限定するものではないが、単純性肥満に基づく肥満症、症候性肥満、肥満に伴う病態または疾患などが例示できる。
【0101】
症候性肥満としては、内分泌性肥満(Cushing症候群、甲状腺機能低下症、インスリノーマ、肥満II型糖尿病、偽性副甲状腺機能低下症、性腺機能低下症など)、中枢性肥満(視床下部性肥満、前頭葉症候群、Kleine-Levin症候群など)、遺伝性肥満(Prader-Willi症候群、Laurence-Moon-Biedl症候群など)、薬剤性肥満(ステロイド剤、フェノチアジン、インスリン、スルホニルウレア(SU)剤、β-ブロッカーによる肥満など)などが例示できる。
【0102】
肥満に伴う病態または疾患としては、耐糖能障害、糖尿病(特にII型糖尿病、肥満型糖尿病など)、脂質代謝異常(高コレステロール血症、高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症、食後高脂血症、高トリグリセリド血症など)、高血圧、心不全、高尿酸血症・痛風、脂肪肝(non-alchoholic steato-hepatitisを含む)、冠動脈疾患(心筋梗塞、狭心症など)、脳梗塞(脳血栓症、一過性脳虚血発作など)、骨・関節疾患(変形性膝関節症、変形性股関節症、変形性脊椎症、腰痛症など)、睡眠時無呼吸症候群・Pickwick症候群、月経異常(月経周期の異常、月経量と周期の異常、無月経、月経随伴症状の異常など)、メタボリックシンドロームなどが例示できる。
【0103】
糖尿病としては、上述のII型糖尿病、肥満型糖尿病などが例示できる。また、糖尿病には、糖尿病の合併症も含まれる。前記合併症としては、神経障害、腎症、網膜症、糖尿病性心筋症、白内障、大血管障害、骨減少症、糖尿病性高浸透圧昏睡、感染症(呼吸器感染症、尿路感染症、消化器感染症、皮膚軟部組織感染症、下肢感染症など)、糖尿病性壊疽、口腔乾燥症、聴覚の低下、脳血管障害、末梢血行障害などが例示できる。
【0104】
本発明の一実施形態では、本発明に係るペプチドまたはそのプロドラッグを含む、プロラクチン分泌に関連する疾患の予防剤および/または治療剤(本明細書中、「本発明に係るペプチドまたはそのプロドラッグを含む、プロラクチン分泌に関連する疾患の予防剤および/または治療剤」を、単に「プロラクチン分泌関連疾患の予防剤・治療剤」とも称する)が提供される。上記プロラクチン分泌関連疾患の予防剤・治療剤を患者に投与することにより、プロラクチンの分泌を調整できる、特に過剰なプロラクチンの分泌を抑制できる。よって、プロラクチン分泌に関連する疾患の予防および/または治療という効果を達成できる。プロラクチン分泌関連疾患の予防剤・治療剤は、本発明に係るペプチドの1種以上、もしくはそのプロドラッグの1種以上、またはこれらの混合物から構成されてもよい。プロラクチン分泌関連疾患の予防剤・治療剤は、通常、本発明に係るペプチドおよびそのプロドラッグから選択される1種以上、ならびに薬学的に許容される担体を含む医薬組成物である。
【0105】
本発明の一実施形態は、本発明に係るペプチドまたはそのプロドラッグを含む、プロラクチン分泌抑制剤に関する。
【0106】
本発明の一実施形態では、プロラクチン分泌関連疾患の予防剤・治療剤またはプロラクチン分泌抑制剤を体内に投与されるように用いることができる。
【0107】
本発明の一実施形態では、プロラクチン分泌関連疾患の予防剤・治療剤またはプロラクチン分泌抑制剤を局所、好ましくは静脈内、鼻腔内、または皮下、より好ましくは鼻腔内に投与されるように用いることができる。
【0108】
本発明に係るペプチドまたはそのプロドラッグの投与量は、投与対象、投与ルート、対象疾患、症状などによって適宜選択することができる。前記投与量は、1回量として、通常5μg~100mg/単位体重、好ましくは500μg~50mg/単位体重であり、より好ましくは1~10mg/単位体重である。また、製剤化の工夫により、前記投与量を低減することが可能である。1日あたりの投与回数も特に制限されず、例えば1日あたり1回~3回投与することができる。
【0109】
本発明の好ましい実施形態では、1~10mg/単位体重の本発明に係るペプチドまたはそのプロドラッグが鼻腔内に投与されるように用いられる、プロラクチン分泌関連疾患の予防剤・治療剤を提供する。
【0110】
上述のとおり、本発明に係るペプチドは、NMUR2選択的なアゴニスト活性を有する。また、本発明に係るペプチドは、生理的条件下、たとえば血中においても化学的に安定であり、血中動態が良好である。さらに、本発明に係るペプチドまたはそのプロドラッグは、脳移行性(例えば、嗅球への移行性)に優れている。
【0111】
よって、本発明のプロラクチン分泌関連疾患の予防剤・治療剤およびプロラクチン分泌抑制剤は、良好な血中動態および脳移行性を基盤として、体内への投与、具体的には静脈内、鼻腔内、皮下など局所への投与により、プロラクチンの分泌を調整できる、特に過剰なプロラクチンの分泌を抑制できると考えられる。
【0112】
本発明の一実施形態では、本発明に係るペプチドまたはそのプロドラッグを含む、プロラクチン分泌に関連する疾患の予防および/または治療方法が提供される。また、本発明の一実施形態は、プロラクチン分泌関連疾患の予防および/または治療に使用するための、本発明に係るペプチドまたはそのプロドラッグに関する。
【0113】
プロラクチン分泌に関連する疾患(プロラクチン分泌関連疾患)とは、過剰なプロラクチン産生を伴う疾患やプロラクチンとの反応性が高まっている疾患を意味する。プロラクチン分泌関連疾患としては、パーキンソン症候群、末端肥大症、下垂体性巨人症、高プロラクチン血性下垂体腺腫、プロラクチノーマ、間脳腫瘍、高プロラクチン血性排卵障害、産褥性乳汁分泌抑制、乳汁漏出症、乳汁漏出無月経症候群、不妊症、月経異常、周産期心筋症、レストレスレッグス症候群、自己免疫疾患、インポテンス、キアリ・フロンメル症候群、アルゴンツ・デル・カスティロ症候群、フォーベス・アルブライト症候群、リンパ腫、シーハン症候群、精子形成異常などが例示できる。なかでも、プロラクチン分泌関連疾患の予防剤・治療剤は、パーキンソン症候群、末端肥大症、下垂体性巨人症、高プロラクチン血性下垂体腺腫、プロラクチノーマ、間脳腫瘍、高プロラクチン血性排卵障害、産褥性乳汁分泌抑制、乳汁漏出症、乳汁漏出無月経症候群、不妊症、月経異常、周産期心筋症およびレストレスレッグス症候群からなる群から選択される疾患に対して用いることが好ましい。
【0114】
本明細書において、治療上の「有効量」とは、合理的な利益/リスク比に見合う、なんらかの望ましい治療効果を生じさせるのに有効な量である。
【0115】
本明細書において、「対象」および「患者」とは、ヒトおよび魚類を含む非ヒト動物が挙げられるが、好ましくは、ヒト、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウマ(競走馬を含む)、ウシ、ブタ、ウサギ、およびヒツジ等の哺乳動物、ならびにニワトリ、ウズラ、および七面鳥等の家禽から選択され、ヒトであることがより好ましい。
【0116】
上記の薬学的に許容される担体としては、特に限定されないが、乳糖、ショ糖、マンニトール、デンプン、コーンスターチ、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸等の賦形剤;シリカ、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤;ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、結晶セルロース、デキストリン、ゼラチン等の結合剤;アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、トコフェロール等の酸化防止剤;エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等のキレート剤;ホウ酸塩、重炭酸塩、Tris-HCl、クエン酸塩、リン酸塩、他の有機酸等の緩衝剤;注射用水、生理食塩水、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、マクロゴール、オリーブ油、トウモロコシ油等の溶媒;プルロニック(登録商標)、ポリエチレングリコール、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリソルベート、トリトン(登録商標)、レシチン、コレステロール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、モノステアリン酸グリセリン等の界面活性剤または湿潤剤;塩化ナトリウム、塩化カリウム、グリセリン、ブドウ糖、ソルビトール、マンニトール等の等張化剤;安息香酸、サリチル酸、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン等の保存剤;錯化剤;アミノ酸;抗菌剤;着色剤;フレーバー剤および希釈剤;乳化剤;ナトリウム等の塩形成対イオン;搬送ビヒクル;希釈剤などが挙げられる(Remington’s Pharmaceutical Sciences, 第18版, A.R. Gennaro監修, Mack Publishing Company, 1990)。
【0117】
本発明に係るペプチドまたはそのプロドラッグの薬剤中の含有量は、薬剤全体に対して0.01~100重量%であり得る。
【0118】
<実施形態>
以下に、本発明の実施形態を例示する。
1.以下の式(1)で表されるペプチドもしくはその薬学的に許容される塩、またはそれらのプロドラッグ:
【0119】
【化5】
【0120】
上記式(1)において、
は、脂環式基、芳香族炭化水素基、アラルキル基および複素環基からなる群から選択される置換基を側鎖に有していてもよいAla残基、または欠損であり;
は、Leu、Val、Ile、Thr、Asn、Gln、Ala、ノルバリン、イソバリン、ノルロイシン、2-シクロヘキシルグリシン、3-シクロヘキシルアラニン、2,4-ジアミノブタン酸、2,3-ジアミノプロピオン酸、2-アミノ酪酸および2-アミノイソ酪酸からなる群から選択されるアミノ酸残基であり;
は、Leu、Val、Ile、ノルバリン、イソバリン、ノルロイシンおよび2-シクロヘキシルグリシンからなる群から選択されるアミノ酸残基であり;
は、2,4-ジアミノブタン酸、オルニチン、2-ピリジルアラニン、3-ピリジルアラニンおよび4-ピリジルアラニンからなる群から選択されるアミノ酸残基であり;
は、Pro残基またはホモプロリン残基であり;
は、Arg残基であり;
は、Asn残基であり;
は、水素原子またはR-(R-CO-であり;Rは、水素原子もしくはヒドロキシ基であり、または置換もしくは非置換の、鎖式炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基もしくは複素環式基であり;Rは、アルキレン基、オキシアルキレン基またはアルキレンオキシ基であり;nは、0または1であり;
は、アミノ基、水素原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、炭化水素基またはポリアルキレングリコール基である。
2.前記Xが3-シクロヘキシルアラニン残基または欠損である、上記1.に記載のペプチドもしくはその薬学的に許容される塩。
3.前記Zにおいて、Rが、置換または非置換の、炭素数3~12の脂環式炭素水素基または炭素数6~20の芳香族炭化水素基であり;Rが、炭素数1~3のアルキレン基、炭素数1~3のオキシアルキレン基または炭素数1~3のアルキレンオキシ基であり;nが、0である、上記1.または2.に記載のペプチドもしくはその薬学的に許容される塩、またはそれらのプロドラッグ。
4.前記XがLeu、Ile、ノルバリン、ノルロイシンおよび2-シクロヘキシルグリシンからなる群から選択されるアミノ酸残基である、上記1.~3.のいずれか一つに記載のペプチドもしくはその薬学的に許容される塩、またはそれらのプロドラッグ。
5.前記Xが2,4-ジアミノブタン酸残基またはオルニチン残基である、請求項1~4のいずれか1項に記載のペプチドもしくはその薬学的に許容される塩、またはそれらのプロドラッグ。
6.前記XがLeu、Val、Ile、Thr、Asn、ノルバリン、ノルロイシン、2-シクロヘキシルグリシンおよび3-シクロヘキシルアラニンからなる群から選択されるアミノ酸残基である、上記1.~5.のいずれか一つに記載のペプチドもしくはその薬学的に許容される塩、またはそれらのプロドラッグ。
7.前記式(1)で表されるペプチドが配列番号1~66で表されるアミノ酸配列のいずれか一つを含む、上記1.~3.のいずれか一つに記載のペプチドもしくはその薬学的に許容される塩、またはそれらのプロドラッグ。
8.前記式(1)で表されるペプチドが配列番号1~21で表されるアミノ酸配列のいずれか一つを含む、上記7に記載のペプチドもしくはその薬学的に許容される塩、またはそれらのプロドラッグ。
9.上記1.~8.のいずれか一つに記載のペプチドもしくはその薬学的に許容される塩、またはそれらのプロドラッグを含む、2型ニューロメジンU受容体の選択的アゴニスト剤。
10.上記1.~8.のいずれか一つに記載のペプチドもしくはその薬学的に許容される塩、またはそれらのプロドラッグを含む、メタボリックシンドローム、肥満症または糖尿病の予防および/または治療剤。
11.上記1.~8.のいずれか一つに記載のペプチドもしくはその薬学的に許容される塩、またはそれらのプロドラッグの有効量を患者に投与することを含む、メタボリックシンドローム、肥満症または糖尿病の予防および/または治療方法。
12.上記1.~8.のいずれか1項に記載のペプチドもしくはその薬学的に許容される塩、またはそれらのプロドラッグを含む、プロラクチン分泌に関連する疾患の予防剤および/または治療剤。
13.前記プロラクチン分泌に関連する疾患が、パーキンソン症候群、末端肥大症、下垂体性巨人症、高プロラクチン血性下垂体腺腫、プロラクチノーマ、間脳腫瘍、高プロラクチン血性排卵障害、産褥性乳汁分泌抑制、乳汁漏出症、乳汁漏出無月経症候群、不妊症、月経異常、周産期心筋症、レストレスレッグス症候群、自己免疫疾患、インポテンス、キアリ・フロンメル症候群、アルゴンツ・デル・カスティロ症候群、フォーベス・アルブライト症候群、リンパ腫、シーハン症候群および精子形成異常からなる群から選択される、上記12.に記載の予防剤および/または治療剤。
14.上記1.~8.のいずれか1項に記載のペプチドもしくはその薬学的に許容される塩、またはそれらのプロドラッグの有効量を患者に投与することを含む、プロラクチン分泌に関連する疾患の予防および/または治療方法。
15.前記プロラクチン分泌に関連する疾患が、パーキンソン症候群、末端肥大症、下垂体性巨人症、高プロラクチン血性下垂体腺腫、プロラクチノーマ、間脳腫瘍、高プロラクチン血性排卵障害、産褥性乳汁分泌抑制、乳汁漏出症、乳汁漏出無月経症候群、不妊症、月経異常、周産期心筋症、レストレスレッグス症候群、自己免疫疾患、インポテンス、キアリ・フロンメル症候群、アルゴンツ・デル・カスティロ症候群、フォーベス・アルブライト症候群、リンパ腫、シーハン症候群および精子形成異常からなる群から選択される、上記14.に記載の予防および/または治療方法。
【実施例
【0121】
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
【0122】
<ペプチドの合成>
(合成例1)
配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチド:CPN-219の合成
3-シクロヘキシルプロピオニル-Leu-Leu-Dbu-Pro-Arg-Asn-NH(CPN-219;Dbu:2,4-ジアミノブタン酸)
CPN-219は以下に示すFmoc固相ペプチド合成法により合成した。
【0123】
Rink Amide resin(0.58mmol/g、渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)をPrelude 6チャンネルペプチド合成装置(Protein Technologies社)用反応容器に量りとり、装置にセットした。以下の反応はすべて窒素雰囲気下で行った。ジメチルホルムアミド(DMF)溶液中室温(25℃)で30分間樹脂を膨潤させた後、20%(v/v)ピペリジン/DMF溶液(2.5mL)中室温(25℃)で20分間反応させることで樹脂上の保護基Fmoc(9-フルオレニルメトキシカルボニル)基を除去した。DMF(2.5mL)で10回樹脂を洗浄し、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)34mg(0.22mmol、5eq.)、N,N-ジイソプロピルカルボジイミド(DIPCD)0.034mL(0.22mmol、5eq.)存在下で、Fmoc-Asn(Trt)-OH(0.20mmol、5eq.)を室温(25℃)で1時間DMF(1mL)中にて反応させ、樹脂上にアミノ酸を導入した。次のアミノ酸を縮合させるため、20%(v/v)ピペリジン/DMF溶液(2.5mL)中にて20分間反応させることで樹脂上のFmoc基を除去した。以下、Fmoc-Asn(Trt)-OHの場合と同様にして順次C末端側からFmoc-Arg(Pbf)-OH(0.22mmol、5eq.)、Fmoc-Pro-OH(0.22mmol、5eq.)、Fmoc-Dbu(Boc)-OH(0.22mmol、5eq.)、Fmoc-Leu-OH(0.22mmol、5eq.)、Fmoc-Leu-OH(0.22mmol、5eq.)、3-シクロヘキシルプロピオン酸(0.22mmol、5eq.)を導入してペプチド鎖を伸長させた。DMF(2.5mL、6回)およびメタノール(2.5mL、3回)、およびジエチルエーテル(2.5mL、3回)洗浄後、窒素パージにより樹脂を乾燥させた。各種側鎖保護基の除去及び脱樹脂のため、m-クレゾール(0.125mL)、チオアニソール(0.125mL)、1,2-エタンジチオール(0.050mL)存在下でトリフルオロ酢酸(TFA)5.0mL中にて2時間反応させた。ガラスフィルター付きロートを用いてフィルターろ過することで樹脂を除去した後、窒素噴霧によりTFAを留去し、ジエチルエーテル40mLを加えて粗精製ペプチドを析出させた。粗精製ペプチドを1M酢酸に溶解し、高速液体クロマトグラフィーを用いて精製することにより、白色固体を得た(39.9mg、収率79%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+H)849.5674,found 849.5676。
【0124】
(合成例2)
配列番号2のアミノ酸配列を含むペプチド:CPN-221の合成
3-シクロヘキシルプロピオニル-Leu-Leu-Orn-Pro-Arg-Asn-NH(CPN-221;Orn:オルニチン)
CPN-221は、Rink Amide resin(0.58mmol/g、渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(32.8mg、収率65%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+H)863.5831,found 863.5829。
【0125】
(合成例3)
配列番号3のアミノ酸配列を含むペプチド:CPN-227の合成
3-シクロヘキシルプロピオニル-Leu-Leu-Dbu-homoPro-Arg-Asn-NH(CPN-227;homoPro:ホモプロリン)
CPN-227は、Rink Amide resin(0.58mmol/g、渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(21.2mg、収率44%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+H)863.5831,found 863.5831。
【0126】
(合成例4)
配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチド:CPN-228の合成
3-シクロペンチルプロピオニル-Leu-Leu-Dbu-Pro-Arg-Asn-NH(CPN-228)
CPN-228は、Rink Amide resin(0.58mmol/g、渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(12.4mg、収率26%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+H)835.5518,found 835.5530。
【0127】
(合成例5)
配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチド:CPN-229の合成
4-シクロヘキシルブタノイル-Leu-Leu-Dbu-Pro-Arg-Asn-NH(CPN-229)
CPN-229は、Rink Amide resin(0.58mmol/g、渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(13.2mg、収率27%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+H)863.5831,found 863.5838。
【0128】
(合成例6)
配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチド:CPN-230の合成
3-(2-メトキシフェニル)プロピオニル-Leu-Leu-Dbu-Pro-Arg-Asn-NH(CPN-230)
CPN-230は、Rink Amide resin(0.58mmol/g、渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(8.5mg、収率18%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+H)873.5310,found 873.5308。
【0129】
(合成例7)
配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチド:CPN-231の合成
3-(3-メトキシフェニル)プロピオニル-Leu-Leu-Dbu-Pro-Arg-Asn-NH(CPN-231)
CPN-231は、Rink Amide resin(0.58mmol/g、渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(11.6mg、収率24%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+H)873.5310,found 873.5309。
【0130】
(合成例8)
配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチド:CPN-232の合成
3-(4-メトキシフェニル)プロピオニル-Leu-Leu-Dbu-Pro-Arg-Asn-NH(CPN-232)
CPN-232は、Rink Amide resin(0.58mmol/g、渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(14.6mg、収率30%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+H)873.5310,found 873.5309。
【0131】
(合成例9)
配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチド:CPN-233の合成
3-(4-クロロフェニル)プロピオニル-Leu-Leu-Dbu-Pro-Arg-Asn-NH(CPN-233)
CPN-233は、Rink Amide resin(0.58mmol/g、渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(14.7mg、収率30%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+H)877.4815,found 877.4824。
【0132】
(合成例10)
配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチド:CPN-234の合成
3-(4-メチルフェニル)プロピオニル-Leu-Leu-Dbu-Pro-Arg-Asn-NH(CPN-234)
CPN-234は、Rink Amide resin(0.58mmol/g、渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(9.2mg、収率19%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+H)857.5361,found 857.5354。
【0133】
(合成例11)
配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチド:CPN-235の合成
4-フェニルブタノイル-Leu-Leu-Dbu-Pro-Arg-Asn-NH(CPN-235)
CPN-235は、Rink Amide resin(0.58mmol/g、渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(6.9mg、収率14%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+H)857.5361,found 857.5355。
【0134】
(合成例12)
配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチド:CPN-236の合成
3-フェノキシプロピオニル-Leu-Leu-Dbu-Pro-Arg-Asn-NH(CPN-236)
CPN-236は、Rink Amide resin(0.58mmol/g、渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(16.3mg、収率34%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+H)859.5154,found 859.5163。
【0135】
(合成例13)
配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチド:CPN-237の合成
4-(4-メトキシフェニル)ブタノイル-Leu-Leu-Dbu-Pro-Arg-Asn-NH(CPN-237)
CPN-237は、Rink Amide resin(0.58mmol/g、渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(14.7mg、収率30%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+H)887.5467,found 887.5473。
【0136】
(合成例14)
配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチド:CPN-238の合成
2-ナフトキシアセチル-Leu-Leu-Dbu-Pro-Arg-Asn-NH(CPN-238)
CPN-238は、Rink Amide resin(0.58mmol/g、渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(14.2mg、収率29%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+H)895.5154,found 895.5153。
【0137】
(合成例15)
配列番号4のアミノ酸配列を含むペプチド:CPN-239の合成
3-シクロヘキシルプロピオニル-Val-Leu-Dbu-Pro-Arg-Asn-NH(CPN-239)
CPN-239は、Rink Amide resin(0.58mmol/g、渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(25.0mg、収率53%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+H)835.5518,found 835.5530。
【0138】
(合成例16)
配列番号5のアミノ酸配列を含むペプチド:CPN-240の合成
3-シクロヘキシルプロピオニル-Nva-Leu-Dbu-Pro-Arg-Asn-NH(CPN-240;Nva:ノルバリン)
CPN-240は、Rink Amide resin(0.58mmol/g、渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(35.0mg、収率75%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+H)835.5518,found 835.5519。
【0139】
(合成例17)
配列番号6のアミノ酸配列を含むペプチド:CPN-241の合成
3-シクロヘキシルプロピオニル-Ile-Leu-Dbu-Pro-Arg-Asn-NH(CPN-241)
CPN-241は、Rink Amide resin(0.58mmol/g、渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(30.0mg、収率63%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+H)849.5674,found 849.5677。
【0140】
(合成例18)
配列番号7のアミノ酸配列を含むペプチド:CPN-242の合成
3-シクロヘキシルプロピオニル-Nle-Leu-Dbu-Pro-Arg-Asn-NH(CPN-242;Nle:ノルロイシン)
CPN-242は、Rink Amide resin(0.58mmol/g、渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(30.9mg、収率65%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+H)849.5674,found 849.5682。
【0141】
(合成例19)
配列番号8のアミノ酸配列を含むペプチド:CPN-243の合成
3-シクロヘキシルプロピオニル-Chg-Leu-Dbu-Pro-Arg-Asn-NH(CPN-243;Chg:2-シクロヘキシルグリシン)
CPN-243は、Rink Amide resin(0.58mmol/g、渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(30.6mg、収率63%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+H)875.5831,found 875.5843。
【0142】
(合成例20)
配列番号9のアミノ酸配列を含むペプチド:CPN-244の合成
3-シクロヘキシルプロピオニル-Cha-Leu-Dbu-Pro-Arg-Asn-NH(CPN-244;Cha:3-シクロヘキシルアラニン)
CPN-244は、Rink Amide resin(0.58mmol/g、渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(30.0mg、収率61%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+H)889.5987,found 889.5991。
【0143】
(合成例21)
配列番号10のアミノ酸配列を含むペプチド:CPN-245の合成
3-シクロヘキシルプロピオニル-Thr-Leu-Dbu-Pro-Arg-Asn-NH(CPN-245)
CPN-245は、Rink Amide resin(0.58mmol/g、渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(29.3mg、収率63%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+H)837.5310,found 837.5311。
【0144】
(合成例22)
配列番号11のアミノ酸配列を含むペプチド:CPN-246の合成
3-シクロヘキシルプロピオニル-Dbu-Leu-Dbu-Pro-Arg-Asn-NH(CPN-246)
CPN-246は、Rink Amide resin(0.58mmol/g、渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(47.7mg、収率84%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+H)836.5470,found 836.5474。
【0145】
(合成例23)
配列番号12のアミノ酸配列を含むペプチド:CPN-247の合成
3-シクロヘキシルプロピオニル-Asn-Leu-Dbu-Pro-Arg-Asn-NH(CPN-247)
CPN-247は、Rink Amide resin(0.58mmol/g、渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(35.7mg、収率75%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+H)850.5263,found 850.5260。
【0146】
(合成例24)
配列番号13のアミノ酸配列を含むペプチド:CPN-249の合成
3-シクロヘキシルプロピオニル-Leu-Val-Dbu-Pro-Arg-Asn-NH(CPN-249)
CPN-249は、Rink Amide resin(0.58mmol/g、渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(34.4mg、収率74%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+H)835.5518,found 835.5516。
【0147】
(合成例25)
配列番号14のアミノ酸配列を含むペプチド:CPN-250の合成
3-シクロヘキシルプロピオニル-Leu-Nva-Dbu-Pro-Arg-Asn-NH(CPN-250)
CPN-250は、Rink Amide resin(0.58mmol/g、渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(19.1mg、収率41%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+H)835.5518,found 835.5522。
【0148】
(合成例26)
配列番号15のアミノ酸配列を含むペプチド:CPN-251の合成
3-シクロヘキシルプロピオニル-Leu-Ile-Dbu-Pro-Arg-Asn-NH(CPN-251)
CPN-251は、Rink Amide resin(0.58mmol/g、渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(21.8mg、収率46%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+H)849.5674,found 849.5673。
【0149】
(合成例27)
配列番号16のアミノ酸配列を含むペプチド:CPN-252の合成
3-シクロヘキシルプロピオニル-Leu-Nle-Dbu-Pro-Arg-Asn-NH(CPN-252)
CPN-252は、Rink Amide resin(0.58mmol/g、渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(27.9mg、収率59%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+H)849.5674,found 849.5671。
【0150】
(合成例28)
配列番号17のアミノ酸配列を含むペプチド:CPN-253の合成
3-シクロヘキシルプロピオニル-Leu-Chg-Dbu-Pro-Arg-Asn-NH(CPN-253)
CPN-253は、Rink Amide resin(0.58mmol/g、渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(18.8mg、収率39%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+H)875.5831,found 875.5831。
【0151】
(合成例29)
配列番号18のアミノ酸配列を含むペプチド:CPN-272の合成
1-ヘキサノイル-Cha-Leu-Leu-Dbu-Pro-Arg-Asn-NH(CPN-272)
CPN-272は、Rink Amide resin(0.58mmol/g、渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(33.4mg、収率64%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+H)962.6515,found 962.6522。
【0152】
(合成例30)
配列番号19のアミノ酸配列を含むペプチド:CPN-302の合成
3-シクロヘキシルプロピオニル-Leu-Leu-Ala(2-Pyri)-Pro-Arg-Asn-NH(CPN-302;Ala(2-Pyri):2-ピリジルアラニン)
CPN-302は、Rink Amide resin(0.58mmol/g、渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(6.1mg、収率12%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+H)897.5674,found 897.5673。
【0153】
(合成例31)
配列番号20のアミノ酸配列を含むペプチド:CPN-303の合成
3-シクロヘキシルプロピオニル-Leu-Leu-Ala(3-Pyri)-Pro-Arg-Asn-NH(CPN-303;Ala(3-Pyri):3-ピリジルアラニン)
CPN-303は、Rink Amide resin(0.58mmol/g、渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(37.4mg、収率74%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+H)897.5674,found 897.5677。
【0154】
(合成例32)
配列番号21のアミノ酸配列を含むペプチド:CPN-304の合成
3-シクロヘキシルプロピオニル-Leu-Leu-Ala(4-Pyri)-Pro-Arg-Asn-NH(CPN-304;Ala(4-Pyri):4-ピリジルアラニン)
CPN-304は、Rink Amide resin(0.58mmol/g、渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(40.2mg、収率80%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+H)897.5674,found 897.5673。
【0155】
(合成例33)
配列番号67のアミノ酸配列を含むペプチド(比較例):CPN-220の合成
3-シクロヘキシルプロピオニル-Leu-Leu-Dpr-Pro-Arg-Asn-NH(CPN-220;Dpr:2,3-ジアミノプロピオン酸)
CPN-220の構造を下記式(3)に示す。
【0156】
【化6】
【0157】
CPN-220は、Rink Amide resin(0.58mmol/g、渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(39.9mg、収率81%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+H)835.5512,found 835.5518。
【0158】
(合成例34)
配列番号68のアミノ酸配列を含むペプチド(比較例):CPN-248の合成
3-シクロヘキシルプロピオニル-Asp-Leu-Dbu-Pro-Arg-Asn-NH(CPN-248)
CPN-248は、Rink Amide resin(0.58mmol/g、渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(35.2mg、収率74%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+H)851.5103,found 851.5104。
【0159】
(合成例35)
配列番号69のアミノ酸配列を含むペプチド(比較例):CPN-255の合成
3-シクロヘキシルプロピオニル-Leu-Thr-Dbu-Pro-Arg-Asn-NH(CPN-255)
CPN-255は、Rink Amide resin(0.58mmol/g、渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(20.8mg、収率81%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+H)837.5310,found 837.5309。
【0160】
(合成例36)
配列番号70のアミノ酸配列を含むペプチド(比較例):CPN-256の合成
3-シクロヘキシルプロピオニル-Leu-Dbu-Dbu-Pro-Arg-Asn-NH(CPN-256)
CPN-256は、Rink Amide resin(0.58mmol/g、渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(37.8mg、収率66%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+ H)836.5470,found 836.5470。
【0161】
(合成例37)
配列番号71のアミノ酸配列を含むペプチド(比較例):CPN-257の合成
3-シクロヘキシルプロピオニル-Leu-Asn-Dbu-Pro-Arg-Asn-NH(CPN-257)
CPN-257は、Rink Amide resin(0.58mmol/g、渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(29.8mg、収率63%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+H)850.5263,found 850.5262。
【0162】
(合成例38)
配列番号72のアミノ酸配列を含むペプチド(比較例):CPN-258の合成
3-シクロヘキシルプロピオニル-Leu-Asp-Dbu-Pro-Arg-Asn-NH(CPN-258)
CPN-258は、Rink Amide resin(0.58mmol/g、渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(35.2mg、収率74%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+H)851.5103,found 851.5101。
【0163】
(合成例39)
配列番号67のアミノ酸配列を含むペプチド(比較例):CPN-116の合成
3-シクロヘキシルプロピオニル-Leu-Leu-Dpr-Pro-Arg-Asn-NH(CPN-116)
CPN-116の構造を下記式(4)に示す。
【0164】
【化7】
【0165】
CPN-116は、Boc-Dpr(Fmoc)-OHをFmoc-Dpr(Boc)-OHに変更したこと以外は、合成例33と同様の手法により、合成および精製した(37.9mg、収率81%)。
【0166】
<ヒトニューロメジンU受容体に対するin vitroアゴニスト活性評価>
(試験例1)
合成例1で合成したCPN-219について、1型および2型のヒトニューロメジンU受容体(hNMUR1およびhNMUR2)に対するアゴニスト活性評価を以下の手法により実施した。その結果を図1に示す。CPN-219は100nMの濃度においてNMUR2選択的なアゴニスト活性を示した。
【0167】
図1中、「hNMU」は、ヒトニューロメジンUについての結果を示す。
【0168】
(1)細胞培養
hNMUR1またはhNMUR2を安定発現するチャイニーズハムスター卵巣由来CHO細胞は、1mg/mLのG418(ナカライテスク株式会社)と10%(v/v)ウシ胎児血清(FCS)とヌクレオシド(アデノシン10mg/L、シチジン10mg/L、グアノシン10mg/L、ウリジン10mg/L、2’-デオキシアデノシン10mg/L、2’-デオキシシチジン塩酸塩11mg/L、2’-デオキシグアノシン10mg/L、チミジン10mg/L)とを含むMEM alpha(GIBCO(登録商標)、サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社)培地を用いて、37℃の5%(v/v)COインキュベータ内で培養した。
【0169】
(2)in vitroアゴニスト活性評価
96 well black-walled plate with clear bottom(Iwaki:AGCテクノグラス株式会社)にCHO細胞を1ウェルあたり2.0×10 cells(150μL DMEM+10%(v/v)FBS)播種し、18時間培養した。
【0170】
培養後、最終濃度が4μMとなるようにアッセイバッファー(HBSS、10mM HEPES、2.5mMプロベネシド(probenecid)、1%(v/v)FCS:pH7.4)にて調製した細胞内カルシウム濃度蛍光指示薬 Fluo-4 AM(プロメガ社)溶液100μLを各ウェルに添加した。これらの細胞を37℃、40分間培養したのち、前記アッセイバッファーにて4回洗浄した後、fluorometric imaging plate reader(モレキュラーデバイス社)へセットした。
【0171】
試験試料であるペプチドは、ストック溶液として20mMになるようジメチルスルホキシド(DMSO)を用いて溶解させて、4℃で保存した。細胞に添加する1時間前に、0.05%(v/v)ウシ血清アルブミン(BSA)および0001%(v/v) Triton(登録商標) X-100を添加したアッセイバッファーを用いて任意の最終濃度(10-12~10-6M)に調製し、fluorometric imaging plate readerにてペプチドの細胞内カルシウム動員活性(アゴニスト活性)による蛍光を測定した。
【0172】
(試験例2)
合成例39で合成したCPN-116について、試験例1の試験方法により、hNMUR1およびhNMUR2に対するアゴニスト活性を評価した。その結果を図1に示す。
【0173】
(試験例3)
合成例2で合成したCPN-221および合成例33で合成したCPN-220について、試験例1の試験方法に準じて、hNMUR1およびhNMUR2に対するアゴニスト活性を評価した。その結果を図2に示す。CPN-221は、100nMの濃度においてhNMUR2選択的なアゴニスト活性を示した。一方、CPN-220は、100nMの濃度においてhNMUR2選択的なアゴニスト活性を示さなかった。
【0174】
図2中、「hNMU」は、ヒトニューロメジンUについての結果を示す。
【0175】
(試験例4)
合成例3~32および34~38において調製したペプチドについて、試験例1の試験方法に準じて、hNMUR1およびhNMUR2に対するアゴニスト活性を評価した。結果を図3~5に示す。
【0176】
比較例である、CPN-248およびCPN-255~258では、100nMの濃度においてhNMUR2選択的なアゴニスト活性を示さなかった。
【0177】
一方、実施例である、CPN-219、CPN-227~247およびCPN-249~253では、100nMの濃度において、hNMUR2選択的なアゴニスト活性を示した。中でも、CPN-219、CPN-227~247およびCPN-250~253では、優れたhNMUR2選択的なアゴニスト活性を示し、さらにCPN-219、CPN-227~245、CPN-247およびCPN-250~253では、より優れたhNMUR2選択的なアゴニスト活性を示した。
【0178】
図3~5中、「hNMU」は、ヒトニューロメジンUについての結果を示す。
【0179】
<マウスニューロメジンU受容体に対するin vitroアゴニスト活性評価>
(試験例5)
合成例1で合成したCPN-219について、1型および2型のマウスニューロメジンU受容体(mNMUR1およびmNMUR2)に対するアゴニスト活性評価を以下の手法により実施した。
【0180】
(1)細胞培養
ヒト胎児腎由来HEK293細胞は、10%(v/v)FCSを含むDMEM-high glucose(GIBCO(登録商標)、サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社)培地を用いて、37℃の5%(v/v)COインキュベータ内で培養した。
【0181】
(2)in vitroアゴニスト活性評価
100mmディッシュに5.0×10 cells(10mL DMEM+10%FBS)播種し、18時間培養した。その後、FuGENE6(プロメガ社)を用いて、培養した細胞にmNMUR1またはmNMUR2をコードした発現プラスミド(2.5μg)をトランスフェクションした。これらの細胞を18時間培養した後、あらかじめポリD-リジンでコートした96 well black-walled plate with clear bottom(Iwaki:AGCテクノグラス株式会社)にHEK293細胞を1ウェルあたり3.0×10 cells(150μL DMEM+10%(v/v)FBS)播種し、18時間培養した。
【0182】
その翌日、最終濃度が4μMとなるようにアッセイバッファー(HBSS,10mM HEPES、2.5mMプロベネシド(probenecid)、1%FCS:pH7.4)にて調製した細胞内カルシウム濃度蛍光指示薬 Fluo-4 AM(プロメガ社)溶液100μLを各ウェルに添加した。これらの細胞を37℃、40分間培養したのち、前記アッセイバッファーにて4回洗浄した後、fluorometric imaging plate reader(モレキュラーデバイス社)へセットした。
【0183】
試験試料であるペプチドは、ストック溶液として20mMになるようDMSOを用いて溶解させ、4℃で保存した。培地に添加する1時間前に、0.05%(v/v)BSAおよび0.001%(v/v) Triton(登録商標) X-100を添加したアッセイバッファーを用いて任意の最終濃度(10-12-10-6M)に調製し、fluorometric imaging plate readerにてペプチドの細胞内カルシウム動員活性(アゴニスト活性)による蛍光を測定した。
【0184】
結果を図6に示す。CPN-219は100nMの濃度において、mNMUR2選択的なアゴニスト活性を示した。
【0185】
<リン酸緩衝液中での安定性評価>
(試験例6)
合成例1で合成したCPN-219について、リン酸緩衝液中での安定性を検証するため以下の手法により評価した。
【0186】
ペプチド溶液は、最終濃度1mMとなるように100mMリン酸緩衝液(pH7.4)を用いて調製(1mL)し、ペプチド溶液を37℃水浴上で任意の時間(1~72時間)インキュベートした。任意の時間経過後サンプリングし、20μLを逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(カラム:COSMOSIL(登録商標)Cholester Packed Column 4.6mmI.D.×150mm;グラジエント:%B 25-35、30min[A:HO-0.1%(v/v)TFA;B:MeCN];流速:1.0mL/min;測定波長:220nm)に注入し、得られた面積値を指標に、化合物の回収率(%)から、安定性を解析した。
【0187】
結果を図7に示す。CPN-219は、72時間、100mMリン酸緩衝液中において、98%以上の回収率であり、リン酸緩衝液中で安定に存在できることがわかる。
【0188】
(試験例7)
合成例9で合成したCPN-233のリン酸緩衝液中での安定性は、試験例6と同様の手法により評価した。結果を図8に示す。CPN-233は72時間、100mMリン酸緩衝液中において、97%以上の回収率であり、リン酸緩衝液中で安定に存在できることがわかる。
【0189】
(試験例8)
合成例16で合成したCPN-240のリン酸緩衝液中での安定性は、試験例6と同様の手法により評価した。結果を図8に示す。CPN-240は72時間、100mMリン酸緩衝液中において、97%以上の回収率であり、リン酸緩衝液中で安定に存在できることがわかる。
【0190】
(試験例9)
合成例25で合成したCPN-250のリン酸緩衝液中での安定性は、試験例6と同様の手法により評価した。結果を図8に示す。CPN-250は72時間、100mMリン酸緩衝液中において、95%以上の回収率であり、リン酸緩衝液中で安定に存在できることがわかる。
【0191】
(試験例10)
合成例27で合成したCPN-252のリン酸緩衝液中での安定性は、試験例6と同様の手法により評価した。結果を図8に示す。CPN-252は72時間、100mMリン酸緩衝液中において、92%以上の回収率であり、リン酸緩衝液中で安定に存在できることがわかる。
【0192】
(試験例11)
合成例39で合成したCPN-116(比較例)のリン酸緩衝液中での安定性は、試験例6と同様の手法により評価した。結果を図9に示す。CPN-116は48時間後には、100mMリン酸緩衝液中において、70%以上がCPN-220に変換された。
【0193】
(試験例12)
合成例33で合成したCPN-220(比較例)のリン酸緩衝液中での安定性は、試験例6と同様の手法により評価した。結果を図10に示す。CPN-220は48時間後には、100mMリン酸緩衝液中において25%以上がCPN-116に変換された。
【0194】
試験例11および12から、CPN-116の70%以上が、hNMUR2選択的アゴニスト活性を示さないCPN-220に変換されるため、CPN-116は、化学的に不安定であることがわかる。
【0195】
<ラット血漿中での安定性評価>
(試験例13)
合成例1で合成したCPN-219のラット血漿中での安定性を検証するため以下の手法により評価した。
【0196】
ペプチド溶液を、ペプチドの最終濃度が50μg/mLとなるようにラット血漿に対して添加し、37℃で任意の時間(0.5~6時間)インキュベートした。任意の時間経過後サンプリングし、以下の条件で高速液体クロマトグラフィー質量分析(LC/MS)を行い、安定性を解析した。
【0197】
LC/MSシステム:LC-MS2020(株式会社島津製作所)
カラム:TSKgel ODS-100V(東ソー株式会社、3.0μm、2.0mm×75mm)
移動層:0.1%トリフルオロ酢酸(pH2.5):アセトニトリル=2:1
流速:0.2mL/min
カラム温度:40℃
検出:ESI、m/z=425。
【0198】
結果を図11に示す。CPN-219は、ラット血漿中において、2時間後では、80%以上の回収率、6時間後では、60%以上の回収率であり、ラット血漿中で安定に存在できることがわかる。
【0199】
(試験例14)
合成例39で合成したCPN-116(比較例)について、試験例48の試験方法により、ラット血漿中での安定性を評価した。
【0200】
結果を図12に示す。CPN-116のラット血漿中からの回収率は、2時間後には、3%以下であった。
【0201】
<ラット血中動態評価>
(試験例15)
合成例1で合成したCPN-219および合成例39で合成したCPN-116(比較例)において、ラット血中動態を以下の手法により評価した。
【0202】
ペプチド溶液(500μg/200μL)は、Wistarラット頸静脈より投与し、任意の時間(1~240分)経過後、あらかじめカニュレーションした大腿部動脈より採血し、LC/MS分析によりペプチドの血中動態を解析した。LC/MS分析は、上記と同様の条件で行った。
【0203】
結果を図13に示す。CPN-219はラット血中においてCPN-116に比較して良好な血中動態を示した。
【0204】
<マウス体内投与による体重増加抑制活性評価>
(試験例16)
合成例1で合成したCPN-219のマウス体内投与による体重増加抑制効果を検証するため以下の手法により評価を行った。
【0205】
CPN-219を、それぞれ64μgまたは213μg溶解した生理食塩水(5μL)を麻酔下にあるddy雄性マウスの鼻腔内に1回投与した。対照として生理食塩水(5μL)を鼻腔内に1回投与した。各投与群において、マウスの体重および摂餌量を、投与直前および投与直後から1日ごとに5日目まで測定した。
【0206】
マウスの体重は、64μg鼻腔内投与群では、29.0±0.83gであり、213μg鼻腔内投与群では、27.7±1.29gであった。
【0207】
結果を図14および図15に示す。CPN-219は、体内投与時に有意にマウスの体重増加および摂餌を抑制した。
【0208】
<脳移行性評価>
(試験例17)
合成例1で合成したCPN-219および合成例39で合成したCPN-116(比較例)において、マウス鼻腔内投与時の脳移行性を以下の手法により評価した。
【0209】
ペプチド溶液(200μg/5μL)をddY雄性マウス鼻腔内に投与し、5分経過後剖検し、脳組織を摘出した。LC/MS分析にてペプチドの血漿中および脳内濃度を解析し、血漿中濃度に対する脳内濃度比を解析した。LC/MS分析は、上記と同様の条件で行った。
【0210】
結果を図16に示す。CPN-219はマウス鼻腔内投与時においてCPN-116に比較して良好な嗅球への移行を示した。
【0211】
<血中コルチコステロン濃度変動評価>
(試験例18)
合成例1で合成したCPN-219において、マウス鼻腔内投与(i.n.)時における血中コルチコステロン濃度に与える影響を検証するため以下の手法により評価を行った。対照実験として、CPN-219のマウス腹腔内投与(i.p.)を行った。
【0212】
ペプチド溶液(200μg/5μL)または生理食塩水(5μL)をddY雄性マウス鼻腔内または腹腔内に投与し、5分経過後、大静脈より採血し、LC/MS分析にて血漿中コルチコステロン濃度を解析した。また、コントロールとして、ペプチド溶液(200μg/5μL)または生理食塩水(5μL)を投与せず、5分経過後、大静脈より採血し、LC/MS分析にて血漿中コルチコステロン濃度を解析した。LC/MS分析は、上記と同様の条件で行った。
【0213】
結果を図17に示す。CPN-219は、鼻腔内投与時に有意に血中コルチコステロン濃度を上昇させたことが分かる。本結果は、CPN-219が脳内のNMUR2受容体を活性化し、CRHを介して作用発現している可能性を示している。
【0214】
<血中プロラクチン濃度上昇抑制活性評価>
(試験例19)
合成例1で合成したCPN-219において、マウス鼻腔内投与(i.n.)の血中プロラクチン(PLT)濃度に与える影響を検証するため以下の手法により評価を行った。対照実験として、生理食塩水投与を行った。
【0215】
ペプチド溶液(200μg/5μL)または生理食塩水(5μL)をddY雄性マウス鼻腔内に投与し、20分経過後、拘束ストレス(チューブの中に入れる)を20分間与えて断頭採血し、Mouse Prolactin DuoSet ELISA(R&D systems)にて血漿中PLT濃度を解析した。
【0216】
また、ペプチド溶液(200μg/5μL)または生理食塩水(5μL)を投与せず、ストレスを与えていないddY雄性マウスにおいても同様に、血漿中PLT濃度を解析した。
【0217】
結果を図18に示す。CPN-219は、鼻腔内投与によりプロラクチン分泌を抑制したことが分かる。
【0218】
本出願は、2017年1月20日に出願された日本国特許出願第2017-008301号に基づいており、その開示内容は、参照により全体として引用されている。
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【配列表】
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