(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-27
(45)【発行日】2023-01-11
(54)【発明の名称】合成杭及び合成杭の構築方法
(51)【国際特許分類】
E02D 3/12 20060101AFI20221228BHJP
E02D 5/48 20060101ALI20221228BHJP
【FI】
E02D3/12 102
E02D5/48
(21)【出願番号】P 2019014725
(22)【出願日】2019-01-30
【審査請求日】2021-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】515326321
【氏名又は名称】株式会社CORE技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】518460303
【氏名又は名称】ケーエイチ イーアンドティ カンパニーリミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 英規
(72)【発明者】
【氏名】西 弘
(72)【発明者】
【氏名】ソン ギヨン
(72)【発明者】
【氏名】ジョミョンス
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-169615(JP,A)
【文献】特開2001-059217(JP,A)
【文献】特開平08-302346(JP,A)
【文献】特開2001-098269(JP,A)
【文献】特開2003-055018(JP,A)
【文献】特開2015-160169(JP,A)
【文献】特開2015-025137(JP,A)
【文献】特開平09-279142(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
E02D 5/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤中に垂直方向に構築される直径が大きな大型杭部と、該大型杭部より小さい直径を有するとともに、該大型杭部の下面から下方に延長される小型杭部とで構成される円筒形状であり、土と土質安定材とを混合した安定処理土で構成する合成杭を、
前記大型杭部及び前記小型杭部を地盤中に構築するための大型杭部用の大杭孔及び小型杭部用の小杭孔を地盤中に形成する削孔工程と、
前記土及び前記土質安定材を前記大杭孔及び前記小杭孔の内部に混合注入して前記大型杭部及び前記小型杭部を構築する杭形成工程とを行って構築し、
該杭形成工程で用いる前記土が、前記削孔工程で発生する発生土であ
り、
前記土質安定材は、
石灰石粉末、長石粉末、シリカ粉末、花崗岩粉末、及びドロマイト粉末のうちから選択された少なくとも1つの天然鉱物充填材と、高炉スラグ微粉末と、硬石こうと、石油コークス脱硫石こうとを有するとともに、
前記土質安定材が、
前記高炉スラグ微粉末(100重量部)に対して、
5~50重量部の前記硬石こうと、
0.5~500重量部の前記石油コークス脱硫石こうと、
5~500重量部の前記天然鉱物充填材とを含む
合成杭の構築方法。
【請求項2】
前記硬石こうが50μm以下の粒径である
請求項
1に記載の合成杭の構築方法。
【請求項3】
前記天然鉱物充填材が、
5μm以下の粒径である
請求項
1又は2に記載の合成杭の構築方法。
【請求項4】
前記石油コークス脱硫石こう(重量100%)に対して、40~70重量%のCaOを含む
請求項
1乃至3のうちいずれかに記載の合成杭の構築方法。
【請求項5】
前記石油コークス脱硫石こう(重量100%)に対して、10~30重量%のSO
3を含む
請求項
1乃至
4のうちいずれかに記載の合成杭の構築方法。
【請求項6】
前記土質安定材が、
前記高炉スラグ微粉末(100重量部)に対して、0.5~10重量部のアルミネート系急結促進剤をさらに含む
請求項
1乃至
5のうちいずれかに記載の合成杭の構築方法。
【請求項7】
前記土質安定材が、
前記高炉スラグ微粉末(100重量部)に対して、0.5~500重量部のフライアッシュをさらに含む
請求項
1乃至
6のうちいずれかに記載の合成杭の構築方法。
【請求項8】
前記土質安定材が、
該土質安定材(100重量部)に対して、0.01~10重量部の液状または粉末状の高流動化剤をさらに含む
請求項
1乃至
7のうちいずれかに記載の合成杭の構築方法。
【請求項9】
前記土質安定材が、
該土質安定材(100重量部)に対して、0.1~10重量部の短繊維をさらに含む
請求項
1乃至
8のうちいずれかに記載の合成杭の構築方法。
【請求項10】
前記短繊維が有機短繊維である
請求項
9に記載の合成杭の構築方法。
【請求項11】
前記地盤が下方に向かって軟弱層及び岩盤層が形成されている場合は、前記大型杭部の下端を該軟弱層の下部又は該岩盤層の上部に位置させ、前記小型杭部は該岩盤層の上方に位置させる
請求項1乃至
10のうちいずれかに記載の合成杭の構築方法。
【請求項12】
前記地盤が下方に向かって第1軟弱層、第1岩盤層、第2軟弱層及び第2岩盤層がこの順で形成されている場合は、
前記大型杭部の下端を該第1軟弱層の下部又は該第1岩盤層の上部に位置させ、
前記小型杭部の下端は該第2軟弱層の下部又は該第2岩盤層の上部に位置させる
請求項1乃至
10のうちいずれかに記載の合成杭の構築方法。
【請求項13】
地盤中に垂直方向に構築される直径が大きな大型杭部と、該大型杭部より小さい直径を有するとともに、該大型杭部の下面から下方に延長される小型杭部とで構成される円筒形状であり、土と土質安定材とが混合された安定処理土で構成され、
前記安定処理土を構成する前記土が、
前記大型杭部及び前記小型杭部を地盤中に構築するために削孔した際に発生した発生土であ
り、
前記土質安定材は、
石灰石粉末、長石粉末、シリカ粉末、花崗岩粉末、及びドロマイト粉末のうちから選択された少なくとも1つの天然鉱物充填材と、高炉スラグ微粉末と、硬石こうと、石油コークス脱硫石こうとを有するとともに、
前記土質安定材が、
前記高炉スラグ微粉末(100重量部)に対して、
5~50重量部の前記硬石こうと、
0.5~500重量部の前記石油コークス脱硫石こうと、
5~500重量部の前記天然鉱物充填材とを含む
合成杭。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、地盤中に垂直方向に構築される合成杭及び合成杭の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
構造物の建設においては、土の支持力を確保するために、通常、鋼杭やPHC杭のような直線状の支持杭が構築される。
ところで、これら従来の杭には以下の諸問題がある。
【0003】
第一に、地盤は、その深度方向において、軟弱層、及び岩などの岩盤層などの層構成をなしており、各層によって土の支持力が互いに異なり、深度全体にわたって土の支持力が一定でないにも関わらず、従来の杭は地盤の層に関わりなく断面サイズが同じである。
【0004】
第二に、杭孔の直径が、低深度でも高深度でも同じであるため、削孔するためのボーリング機に過負荷が掛かる。
杭基礎は大荷重が付与される高層建物のような構造において非常に効果的である一方、荷重が35~40tf/m2しかない低・中層構造においては風化岩を有する岩盤層まで達する杭の構築は効果的と言うよりもむしろ不経済である。
【0005】
上記問題を改善するために、低・中層構造の基礎には、無機薬液を地盤と混合注入することで地盤置換を行って土の支持力を向上させるポイント基礎工法が広く実施されている。
【0006】
この薬液注入工法は、適切な流動性を有していて一定時間後に硬化する懸濁液状または溶液状の薬液を注入材料として、軟弱地盤中にポンプで圧入することによって地盤中の細孔またはひび割れを充填して漏水を防止し、地盤の浸透性を低下させるというものである。
別の方法として、注入材料を軟弱地盤と攪拌混合し、その混合物を固化させて土の支持力を向上させ、それによって複合効果を期待する。
【0007】
このように注入材料として、セメント液、モルタル液、水ガラス液などが用いられる。
ことに、グラウチングのための薬液注入工法の場合、上記材料のうちからセメント液が注入材料として使用されるのが一般的である。
【0008】
しかし、セメント液は強アルカリ成分及び六価クロムの溶出を原因とした地盤の環境汚染を生じ、また、セメント液の水和反応中にはコンクリート液の過度の体積収縮が起こるという問題が生じるおそれがあった。
【0009】
セメントをグラウチング用の注入材料として使用する際に生じる既存の諸問題を解決するための先行技術が、例えば特許文献1乃至3で提案されている。
しかし、先行技術によれば、注入材料の費用が高額であったり、人体に悪影響を及ぼす危険があったりして、満足できる解決方法ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】韓国公開特許第10-0699430号公報
【文献】韓国公開特許第10-0886220号公報
【文献】韓国公開特許第10-0804807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこでこの発明は、地盤を削孔するボーリング機に過負荷がかかることなく、効率的に構築できる合成杭及び合成杭の構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明は、地盤中に垂直方向に構築される直径が大きな大型杭部と、該大型杭部より小さい直径を有するとともに、該大型杭部の下面から下方に延長される小型杭部とで構成される円筒形状であり、土と土質安定材とを混合した安定処理土で構成する合成杭を、前記大型杭部及び前記小型杭部を地盤中に構築するための大型杭部用の大杭孔及び小型杭部用の小杭孔を地盤中に形成する削孔工程と、前記土及び前記土質安定材を前記大杭孔及び前記小杭孔の内部に混合注入して前記大型杭部及び前記小型杭部を構築する杭形成工程とを行って構築し、該杭形成工程で用いる前記土が、前記削孔工程で発生する発生土であり、前記土質安定材は、石灰石粉末、長石粉末、シリカ粉末、花崗岩粉末、及びドロマイト粉末のうちから選択された少なくとも1つの天然鉱物充填材と、高炉スラグ微粉末と、硬石こうと、石油コークス脱硫石こうとを有するとともに、前記土質安定材が、前記高炉スラグ微粉末(100重量部)に対して、5~50重量部の前記硬石こうと、0.5~500重量部の前記石油コークス脱硫石こうと、5~500重量部の前記天然鉱物充填材とを含む合成杭の構築方法であることを特徴とする。
【0013】
またこの発明は、地盤中に垂直方向に構築される直径が大きな大型杭部と、該大型杭部より小さい直径を有するとともに、該大型杭部の下面から下方に延長される小型杭部とで構成される円筒形状であり、土と土質安定材とが混合された安定処理土で構成され、前記安定処理土を構成する前記土が、前記大型杭部及び前記小型杭部を地盤中に構築するために削孔した際に発生した発生土であり、前記土質安定材は、石灰石粉末、長石粉末、シリカ粉末、花崗岩粉末、及びドロマイト粉末のうちから選択された少なくとも1つの天然鉱物充填材と、高炉スラグ微粉末と、硬石こうと、石油コークス脱硫石こうとを有するとともに、前記土質安定材が、前記高炉スラグ微粉末(100重量部)に対して、5~50重量部の前記硬石こうと、0.5~500重量部の前記石油コークス脱硫石こうと、5~500重量部の前記天然鉱物充填材とを含む合成杭であることを特徴とする。
【0014】
この発明により、効率的でかつ削孔するボーリング機に過負荷がかかることなく、合成杭を構築することができる。
また、有毒物質溶出及び土壌汚染のいかなる危険もない土質安定材を使用し、かつ、原料コストが低くてその商用化の加速を誘発することができる。
【0015】
またこの発明の態様として、前記硬石こうが、50μm以下の粒径であってもよい。
またこの発明の態様として、前記天然鉱物充填材が、5μm以下の粒径であってもよい。
【0016】
またこの発明の態様として、前記石油コークス脱硫石こう(重量100%)に対して、40~70重量%のCaOを含んでもよい。
またこの発明の態様として、前記石油コークス脱硫石こう(重量100%)に対して、10~30重量%のSO3を含んでもよい。
【0017】
またこの発明の態様として、前記土質安定材が、前記高炉スラグ微粉末(100重量部)に対して、0.5~10重量部のアルミネート系急結促進剤をさらに含んでもよい。
またこの発明の態様として、前記土質安定材が、前記高炉スラグ微粉末(100重量部)に対して、0.5~500重量部のフライアッシュをさらに含んでもよい。
【0018】
またこの発明の態様として、前記土質安定材が、該土質安定材(100重量部)に対して、0.01~10重量部の液状または粉末状の高流動化剤をさらに含んでもよい。
またこの発明の態様として、前記土質安定材が、該土質安定材(100重量部)に対して、0.1~10重量部の短繊維をさらに含んでもよい。
【0019】
またこの発明の態様として、前記短繊維が有機短繊維であってもよい。
【0020】
またこの発明の態様として、前記地盤が下方に向かって軟弱層及び岩盤層が形成されている場合は、前記大型杭部の下端を該軟弱層の下部又は該岩盤層の上部に位置させ、前記小型杭部は該岩盤層の上方に位置させてもよい。
【0021】
またこの発明の態様として、前記地盤が下方に向かって第1軟弱層、第1岩盤層、第2軟弱層及び第2岩盤層がこの順で形成されている場合は、前記大型杭部の下端を該第1軟弱層の下部又は該第1岩盤層の上部に位置させ、前記小型杭部の下端は該第2軟弱層の下部又は該第2岩盤層の上部に位置させてもよい。
【発明の効果】
【0022】
この発明により、地盤を削孔するボーリング機に過負荷がかかることなく、効率的に構築できる合成杭及び合成杭の構築方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明による合成杭の構築方法よって構築される合成杭の第一例を示す断面図。
【
図2】本発明による合成杭の構築方法よって構築される合成杭の第二例を示す断面図。
【
図3】本発明による合成杭の構築方法よって構築される合成杭の第三例を示す断面図。
【
図4】本発明による合成杭の構築方法よって構築される合成杭の第四例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
まず、
図1乃至
図4を参照しながら、本発明の合成杭1及び合成杭の構築方法について説明する。
【0025】
なお、
図1は、本発明による合成杭の構築方法よって構築される合成杭1の第一例を示す断面図であり、
図2は、本発明による合成杭の構築方法よって構築される合成杭1の第二例を示す断面図である。
【0026】
また、
図3は、本発明による合成杭の構築方法よって構築される合成杭1の第三例を示す断面図であり、
図4は、本発明による合成杭の構築方法よって構築される合成杭1の第四例を示す断面図である。
【0027】
本発明は、地盤100に垂直方向に構築する合成杭1及び合成杭の構築方法に関するものであり、
図1~
図4に示すとおり、合成杭1は、地盤100に垂直方向に構築される大型杭部10及び、大型杭部10より小さい直径を有するように大型杭部10の下面から下方に延長される小型杭部20とで構成している。
詳細には、本発明の合成杭1は、互いに異なる断面サイズを有するように垂直方向に配置される大型杭部10及び小型杭部20で構成している。
【0028】
このような合成杭1は、以下の効果を得ることができる。
第一に、地盤100はその深度方向に層構成(軟弱層、及び岩などの岩盤)しており、各層によって土の支持力が互いに異なり、深度全体にわたって土の支持力が一定でない。そこで、本発明の合成杭1は、互いに異なる断面サイズを有する杭部10,20を地盤100の層に応じて構築するため、合成杭1を効率的に構築することができる。
【0029】
第二に、小型杭部20を構築するために高深度に削孔する小杭孔32は、低深度に形成される大型杭部10の大杭孔31よりも小さい直径である。これにより、杭孔30を削孔するボーリング機(図示省略)に過負荷がかかることを防止できる。
【0030】
大型杭部10及び小型杭部20は円筒形状であり、それによって杭孔30を容易に形成することができる。
地盤100から下方に向かって順に軟弱層a及び岩盤層bが構成されている場合は、大型杭部10の下端は、軟弱層aの下部又は岩盤層bの上部に位置し、小型杭部20は、岩盤層bの上方に位置する(
図2を参照)。
【0031】
詳しくは、
図2に示すように、大型杭部10は、土の支持力の弱い軟弱層aに設置され、小型杭部20は、岩盤層bの上部の風化土や風化岩の上部に設置されている。
【0032】
この場合、岩盤層b中に構築された小型杭部20は大型杭部10から発生する土の支持力を補強するように作用し、小型杭部20を備えていることで、大型杭部10の断面は、小型杭部20を備えていない場合の大型杭部10の断面よりも小径とすることができる。
さらに、強度の高い高深度で岩盤層bを形成する小杭孔32の直径が小さいため、杭孔30を削孔するボーリング機に過負荷がかかることを防止することができる。
【0033】
地盤100が、下方に向かって順に第1軟弱層a1、第1岩盤層b1、第2軟弱層a2及び第2岩盤層b2がこの順で構成されている場合は、大型杭部10の下端は、第1軟弱層a1の下部又は第1岩盤層b1の上部に位置し、小型杭部20の下端は、第2軟弱層a2下部又は第2岩盤層b2の上部に位置する(
図3を参照)。
【0034】
地盤100が上述のような層構成である場合、合成杭1に小型杭部20が存在しなければ、第2軟弱層a2の存在のため、大型杭部10に安定した土の支持力を期待することはできない。しかし、本発明の合成杭1では、小型杭部20が第2軟弱層a2を貫通し、最終的に第2岩盤層b2に対して支持されており、これによって、合成杭1の全体にわたって優れた構造安定性を得ることができる。
【0035】
なお、合成杭1が、土と土質安定材とを混合して構成した安定処理土により大型杭部10及び小型杭部20を構築している。そのため、プレキャスト杭の搬送や搬入や現場打ちによる杭形成は全て不要となり、したがって、杭部10,20を容易に構築することができる。
【0036】
以下おいて、本発明による合成杭1の構築方法について説明する。
大型杭部10と小型杭部20との両方が安定処理土で作られる本発明の合成杭1は、大型杭部10及び小型杭部20を地盤100に構築するための大型杭部10用の大杭孔31及び小型杭部20用の小杭孔32を地盤100に形成する削孔工程を行ってから、土及び土質安定材を大杭孔31及び小杭孔32の内部に混合注入して構築する大型杭部10及び小型杭部20を形成する杭形成工程とを行う。
【0037】
なお、上述の説明では、土と土質安定材とを混合して構成した安定処理土で構築した大型杭部10と小型杭部20とで合成杭1を構築したが、
図4に示すように、土と土質安定材とを混合した安定処理土で構築した大型杭部10と、鋼またはコンクリート材料で作られたコア体21で構成した小型杭部20とで合成杭1aを構築してもよい。
【0038】
この合成杭1aの小型杭部20を構成するコア体21は、鋼棒、鋼管、H杭、PHC杭または同様の構造を有する、高い構造安定性及び建設性を有するものを使用する。
なお、合成杭1aは、コア体21は、安定処理土で作られた大型杭部10の中央部分を貫通しているため、高い構造安定性を達成する。
【0039】
図4に示すような、小型杭部20が別体のコア体21で構成された合成杭1aは、大型杭部10及び小型杭部20を地盤100に構築するための大型杭部10用の大杭孔31及び小型杭部20用の小杭孔32を地盤100に形成し(削孔工程)、コア体21を小杭孔32に挿置して小型杭部20を形成する(杭形成工程)。
【0040】
その後、土及び土質安定材を大杭孔31の内部に混合注入して大型杭部10を構築する。
当然ながら、最初に大杭孔31内に大型杭部10を構築し、大型杭部10の養生前に、コア体21を小杭孔32に挿置する方法でもよい。
【0041】
続いて、大型杭部10及び小型杭部20で構成する合成杭1を構築する土質安定材について以下で詳細に説明する。
大型杭部10及び小型杭部20を構築する安定処理土を土質安定材と混合して構成する土は、原位置土を使用すればよく、杭孔30を削孔する削孔工程において発生する発生土を使用する。
【0042】
土質安定材は、石灰石粉末、長石粉末、シリカ粉末、花崗岩粉末、及びドロマイト粉末のうちから選択された少なくとも1つを有する天然鉱物充填材と、高炉スラグ微粉末と、硬石こうと、石油コークス脱硫石こうとで構成している。
【0043】
土質安定材は低・中層構造の基礎のための土の支持力を向上させるように作用するものであり、無機薬液を地盤100と混合することで地盤置換を行って土の支持力を向上させるポイント基礎工法に適用することができる。
【0044】
土質安定材は有毒物質の溶出や土壌汚染の危険を回避し、良好な建設性、急結性、耐久性及び高い靭性を有する。
詳述すると、結合材として一般的に用いられるポルトランドセメントはその製造中に炉内において高温まで加熱されるが、それによって大きなエネルギー消費が生じる。石灰石の焼成や化石燃料の燃焼のような焼成工程において膨大な量の二酸化炭素が排出され、深刻な環境問題を起こしている。
【0045】
したがって、上記土質安定材は結合材としてポルトランドセメントではなく高炉スラグを使用する。
高炉スラグ微粉末は、溶鉱炉工程の副産物として発生する高温溶融状態にあるスラグを水中で急速冷却し、その後、スラグを3,000cm2/g超の比表面積を有する粒子に粉砕することによって得られる。
【0046】
高炉スラグ微粉末は水と接触すると非晶膜を形成し、水和反応のない潜在水硬性物質になる。このため、長期材齢では強度を増すが、非常に早期の材齢においてはその養生特性は劣っている。
【0047】
しかしながら、この土質安定材は、高炉スラグ微粉末の水との接触によって形成される非晶膜を、硬石こう及び石油コークス脱硫石こうの複合刺激効果によって、破壊するように構成しており、その結果、高炉スラグ微粉末の潜在水硬性を初期に活性化することができる。
【0048】
硬石こうは高炉スラグ微粉末のための硫酸刺激剤として作用するものであり、硬石こうは有毒成分が全くなく、土質安定材の毒性を大幅に低減することができる。硬石こうは50μm以下の粒径を有する。
【0049】
高炉スラグ微粉末の水和反応の初期活性化のために、硬石こうは50μm以下の粒径まで粉砕する。
石油コークス脱硫石こうは、石油コークスを主材料として石灰石と混燃させて炉内脱硫を行うための設備である循環流動層ボイラから排出される物質である。
【0050】
循環流動層ボイラの脱硫について詳しく説明する。石灰石を燃焼室に投入して燃料と燃焼させると、燃焼ガス内の二酸化硫黄が炉内で石灰石と反応し、その結果、燃焼ガスの硫黄が除去されて、石油コークス脱硫石こうが生じる。硫黄と反応しなかった石灰石は二酸化炭素を奪われて生石灰となり、排出される。
【0051】
上述したように、発生した石油コークス脱硫石こうはpH12.0を超える強アルカリ物質で、高炉スラグ微粉末の刺激剤として優れた性能を有する。
高炉スラグ微粉末に水を注入すると、一般に、水と混合した高炉スラグ微粉末の表面に非晶膜が形成され、粉末内部に存在するCa2+及びAl3+は溶出しない。
【0052】
しかし、水と混合した高炉スラグ微粉末に石油コークス脱硫石こうを注入すると、その成分であるCaOが水と反応してCa(OH)2を生成し、発生したOH-及び脱硫中に発生したSO4
2-が高炉スラグ微粉末の非晶膜を破壊するように作用する。この結果、粉末内部に存在するCa2+及びAl3+が容易に溶出することができる。溶出したイオンはCaO-SiO2-H2O水和物を生じるため、土質安定材の内部組織が緻密になり、圧縮土質安定材の強度を発現、向上させることができる。
【0053】
充填材は、注入された材料の内部に形成された微細な細孔を充填するように作用するものであるが、毒性を低減するために、本発明では天然鉱物充填材が使用される。
天然鉱物充填材は50μm以下の粒径を有する。
【0054】
微細な内部細孔を天然鉱物充填材で緻密に充填するために、天然鉱物充填材は粉砕して50μm以下の粒径を有する微粉末にする。
土質安定材は、高炉スラグ微粉末(100重量部)に対して、5~50重量部の硬石こう、0.5~500重量部の石油コークス脱硫石こう、及び5~500重量部の天然鉱物充填材を含む。
【0055】
硬石こうの含有量が5重量部未満の場合は硫酸刺激効果は発揮されず、逆に、その含有量が50重量部を超える場合は、高炉スラグ微粉末と反応しない硬石こうが多量に存在するため、土質安定材の強度が大きく低下する。
【0056】
石油コークス脱硫石こうの含有量が0.5重量部未満の場合は石油コークス脱硫石こうは高炉スラグ微粉末の刺激剤としての機能を十分に発揮せず、逆に、その含有量が500重量部を超える場合は、高炉スラグ微粉末の相対的な含有量が減少して刺激剤の含有量が過剰に増加するため、土質安定材の強度が大きく低下する。
【0057】
天然鉱物充填材の含有量が5重量部未満の場合は天然鉱物充填材の充填効果が低下して流動性及び土質安定材の強度が低下し、逆に、その含有量が500重量部を超える場合は、天然鉱物充填材は水和反応のない単なる鉱物として存在するため、土質安定材の強度が大きく低下する。
【0058】
また、土質安定材は、高炉スラグ微粉末(100重量部)に対して、0.5~10重量部のアルミネート系急結促進剤をさらに含む。
アルミネート系急結促進剤が含有される場合は、冬季や高含水量でも土質安定材の圧縮強度が早期に発揮される。
【0059】
アルミネート系急結促進剤は市販の一般製品として使用されるが、鋼スラグの還元工程において得られる副産物として使用してもよく、このような使用によれば経済的である。
アルミネート系急結促進剤の含有量が0.5重量部未満の場合は促進効果は期待できず、逆に、その含有量が10重量部を超える場合は、早期過膨張及び急結により、スラリーを運ぶ移送管が閉塞するおそれがある。
【0060】
さらに、土質安定材は、高炉スラグ微粉末(100重量部)に対して、0.5~500重量部のフライアッシュをさらに含む。
フライアッシュは、高炉スラグ微粉末の刺激剤として作用する。
【0061】
脱硫施設を有する一般の火力発電所から排出される微粉炭ボイラ灰とは異なり、フライアッシュは石灰石と混燃されて炉内脱硫を受けるため、フライアッシュ中のCaO及びSO3の含有量は高くなる。したがって、フライアッシュをコンクリート混合物として使用するのは難しいが、フライアッシュは高含水土を硬化させる作用がある。
【0062】
フライアッシュの含有量が0.5重量部未満の場合はフライアッシュの効果は期待できず、逆に、その含有量が500重量部を超える場合は、高炉スラグ微粉末の相対的な含有量が低下するため、土質安定材の強度が大きく低下する。
【0063】
さらに、土質安定材は、土質安定材(100重量部)に対して、0.01~10重量部の液状または粉末状の高流動化剤をさらに含む。
液状または粉末状の高流動化剤は、含水量の高い土や多量の地下水が湧出する施工現場では、土質安定材の流動性及びワーカビリティを向上させる作用がある。
【0064】
液状または粉末状の高流動化剤は、ナフタレン系、メラミン系、アミン系、リグニン系及びポリカーボネート系高流動化剤のうち選択されたいずれか1つ、または、その2つ以上の混合物である。
【0065】
液状または粉末状の高流動化剤の含有量が0.01重量部未満の場合は流動性の向上効果は得られず、逆に、その含有量が10重量部を超える場合は、流動性が高くなり過ぎるため、材料分離が起こり、経済的効果が減少する。
【0066】
また、土質安定材は、土質安定材(100重量部)に対して、0.1~10重量部の短繊維をさらに含む。この場合、短繊維は有機短繊維である。
短繊維は、耐震補強が必要なまたは大きな液状化挙動が想定される施工現場において、せん断応力への対応及び高い靭性を提供するために混合される。
【0067】
有機短繊維は、炭素、油、塩、アルカリなどを含有する溶剤に対して、非常に高い抵抗を有する。
また、有機短繊維は、その表面にヒドロキシルラジカルを有する親水性構造を有しており、液相における高い分布、高い弾性係数、及び粉末成分への優れた付着性能を提供する。
【0068】
そのうえ、有機短繊維は直径が小さいため、短いひび割れを抑制できて安定化でき、また、架橋によりその力学特性の増加に非常に効果的である。さらに、疲労及び衝撃荷重により発生するひび割れを抑制するうえで効果的である。
【0069】
短繊維は、比重が1.1~1.3g/cm2、直径が9~12μm、引張強度が7,000~9,000kgf/cm2、及び長さが3~8cmであるビニルアルコール系短繊維である。
短繊維の含有量が0.1重量部未満の場合は焼成によって生じる短いひび割れの抑制効果が悪く、逆に、その含有量が10重量部を超える場合は、土との結合力の低下のため、土質安定材の圧縮強度及び経済的効果が低下する。
【0070】
次に、土質安定材によって得られる効果を確認した効果確認試験の結果について説明する。
本発明品として、まず、比表面積が4,360cm2/gの高炉スラグ微粉末(100重量部)に対して、5重量部のアルミネート促進剤と、10重量部の硬石こうと、平均粒径が23μmであり20重量部の石灰石微粉末と、炉内脱硫を行う循環流動層ボイラから排出され58.8重量%のCaO及び25.8重量%のSO3を有する、50重量部の石油コークス脱硫石こうと、炉内脱硫を行う循環流動層ボイラから排出され38.9重量%のCaO及び13.8重量%のSO3を有する、30重量部のフライアッシュとを、互いに乾燥混合した。
【0071】
次に、水(100重量部)を上記混合物(100重量部)と湿潤混合し、一様なスラリー混合物を作成した。このスラリー混合物を用いて、寸法がΦ10cm×20cmである本発明の試験体を9体作成し、温度20°Cで養生した後、材齢7日、28日及び90日における強度を測定した。
【0072】
これらに対し、比較例として、水(100重量部)を普通セメント(100重量部)と湿潤混合して、一様なスラリー混合物を作成した。このスラリー混合物を用いて、Φ10cm×20cmの寸法を有する比較例の試験体を9体作成し、温度20°Cで養生した後、材齢7日、28日及び90日における強度を測定した。
【0073】
表1に示すように、KSF2343一軸圧縮強度試験により試験体の圧縮強度試験を行った。また、材齢28日における圧縮強度を測定した後、各試験体の一部分を採取し、pH試験及び重金属溶出試験を行った。
【0074】
【0075】
【0076】
比較例及び本発明の試験体の一軸圧縮強度を示す表2から分かるように、高炉スラグ微粉末、アルミネート促進剤、硬石こう、天然鉱物充填材、循環流動層ボイラの石油コークス脱硫石こう、及び循環流動層ボイラのフライアッシュを使用した本発明の試験体は、材齢7日及び28日においても材齢90日においても、普通セメントを使用した比較例より高い圧縮強度値を有することがわかった。
【0077】
したがって、本発明で使用されている土質安定材は優れた性能を有しており、地盤補強のために使用される普通セメントを本発明の土質安定材に置き換えることが可能であると評価される。
【0078】
続いて、重金属溶出試験の試験結果を列記する表3に基づいて、実施した重金属溶出試験の結果について説明する。
【0079】
【0080】
表3に示すとおりpH及び重金属溶出試験に関しては、比較例はpHが許容基準の12.5を超えていることを示している。これに対して、本発明の試験体はpHが11.8であることを示しており、許容基準を満足している。
なお、このことから、セメントを使用する場合、強アルカリ成分の溶出による土壌汚染の高い可能性があると考えられる。
【0081】
さらに、比較例は、重金属溶出値は許容基準を満足しているものの、六価クロム量が許容基準値の50%を超えていることがわかった。これに対し、本発明の試験体は六価クロムを含む全ての重金属が全く検出されていないことがわかった。
【0082】
したがって、本発明に用いる土質安定材は、循環流動層ボイラから大量に発生する産業副産物を高炉スラグ微粉末の刺激剤として利用することによって、強度を発現させることができ、また、施工現場でもっとも広く使用されている普通セメントに換えて本発明の土質安定材を使用できるように天然鉱物を刺激剤及びその充填材として利用することによって、普通セメントの使用量を最低限にすることを可能にするものである。
【0083】
セメント使用量の削減によって、さらに、生産コストを削減でき、二酸化炭素の排出、強アルカリの溶出、及び有毒重金属の溶出によって生じる天然資源及びエネルギーの消耗及び環境汚染を軽減できるため、土質安定材は環境にやさしいグラウチング材料として提供することができる。
【0084】
なお、石油コークス脱硫石こうは、その重量100%に対して、40~70重量%のCaOを含む。
石油コークス脱硫石こうのCaO含有量が40重量%未満の場合、CaCO3及びCaSO4の形で存在する約20重量%のCaOを除く純CaOの全含有量は非常に小さい。
【0085】
詳しくは、この純CaOが水と反応してCa(OH)2に変わるときに生成されるイオンOH-の数はわずかであるため、高炉スラグ微粉末の非晶膜を短期間で破壊することは難しく、そのため、土質安定材の初期強度は非常に低いものとなる。
【0086】
さらに、石油コークス脱硫石こうに存在する純CaOと水との反応は、以下の反応式により、吸収、加熱及び膨張を起こすため、Ca(OH)2に変化する際に、体積が約1.99倍膨張する。
(反応式) CaO+H2O→Ca(OH)2+15.6kcal/mol
【0087】
純CaO成分は水と反応してCa(OH)2となり、その温度が上昇し、その後、潜在水硬性とポゾラン反応促進効果、及び土質安定材の体積収縮補償効果を奏する。しかし、CaOの含有量が小さいと、これらの効果は期待できない。
【0088】
石油コークス脱硫石こうのCaOの含有量が70重量%を超える場合、純CaOの含有量が過剰となるため、純CaOが水を大量に吸収して過熱、過膨張し、その結果、ひび割れを引き起こす。
石油コークス脱硫石こうは、その重量100%に対して、10~30重量%のSO3を含む。
【0089】
石油コークス脱硫石こうのSO3の含有量が10重量%未満の場合は、高炉スラグ微粉末を刺激するSO3の含有量が少なすぎて、土質安定材の強度発現を提供することが難しくなる。
石油コークス脱硫石こうのSO3の含有量が30重量%を超える場合は、高炉スラグ微粉末と反応しない余剰SO3が多くなりすぎて、土質安定材の強度が低下する。
【0090】
以上に加え、本発明によれば、合成杭1は地盤100に垂直方向に構築され、地盤100に垂直方向に構築される大型杭部10及び大型杭部10より小さい直径を有するように大型杭部10の下面から下方に延長される小型杭部20を有し、これら大型杭部10及び小型杭部20は、土と土質安定材とを混合することによって構成した安定処理土を用いて構築される。
【0091】
また、合成杭1は、大型杭部10及び小型杭部20を地盤100に構築するための大型杭部10用の大杭孔31及び小型杭部20用の小杭孔32を地盤100に形成する削孔工程と、大型杭部10を構築するための大杭孔31の内部及び小型杭部20を構築するための小杭孔32の内部に土及び土質安定材を混合注入する杭形成工程とを行い、土質安定材とともに安定処理土を構成する土は杭孔30を形成する削孔工程において発生する発生土である。
【0092】
また、土質安定材は、石灰石粉末、長石粉末、シリカ粉末、花崗岩粉末、及びドロマイト粉末のうちから選択された少なくとも1つを有する天然鉱物充填材と、高炉スラグ微粉末と、硬石こうと、石油コークス脱硫石こうとを含む。
【0093】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、この発明の地盤は地盤100に対応し、
以下同様に、
大型杭部は大型杭部10に対応し、
小型杭部は小型杭部20に対応し、
合成杭は合成杭1に対応し、
大杭孔は大杭孔31に対応し、
小杭孔は小杭孔32に対応するも、この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではなく、請求項に示される技術思想に基づいて応用することができ、多くの実施の形態を得ることができる。
【符号の説明】
【0094】
1…合成杭
10…大型杭部
20…小型杭部
31…大杭孔
32…小杭孔
100…地盤