(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-27
(45)【発行日】2023-01-11
(54)【発明の名称】動物用調剤情報管理システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20221228BHJP
G16H 20/10 20180101ALI20221228BHJP
【FI】
G06Q50/10
G16H20/10
(21)【出願番号】P 2020085515
(22)【出願日】2020-05-14
【審査請求日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】P 2019091984
(32)【優先日】2019-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519173897
【氏名又は名称】株式会社ブーリアン
(74)【代理人】
【識別番号】100132621
【氏名又は名称】高松 孝行
(74)【代理人】
【識別番号】100123364
【氏名又は名称】鈴木 徳子
(72)【発明者】
【氏名】西村 勇人
【審査官】菊池 伸郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/135341(WO,A1)
【文献】特開2014-092884(JP,A)
【文献】特開2016-139224(JP,A)
【文献】国際公開第2018/165200(WO,A1)
【文献】特開2018-081528(JP,A)
【文献】特開2005-196587(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物病院内に配置され、動物に関する動物情報、当該動物の診断に関する動物診断情報、当該動物に対して処方される処方箋情報および当該動物の飼い主の顧客情報が入力される動物調剤情報入力端末と、
前記動物調剤情報入力端末に入力された前記動物情報、前記動物診断情報、前記処方箋情報および前記顧客情報を格納する処方箋サーバと、
所定の調剤薬局や調剤を行う専用の施設内に配置され、前記顧客情報と共に前記処方箋情報を表示する処方箋情報表示端末と、
を具備
し、前記処方箋情報に基づいて前記所定の調剤薬局や調剤を行う専用の施設内で作製された動物用の薬を、前記顧客情報に基づいて前記動物の飼い主に、または前記動物病院に配送する動物調剤情報管理システムであって、
前記動物情報は、前記動物の種類、品種および体重に関する情報を含み、
前記顧客情報は、前記動物の飼い主の氏名および住所を含み、
前記処方箋サーバは、
前記動物情報、前記動物診断情報、前記
処方箋情報および前記顧客情報を格納する動物情報データベースと、
動物の疾病に対する医薬品に関する動物用医薬品情報を格納する動物用医薬品データベースと、
前記動物情報および動物診断情報に基づいて、前記動物用医薬品データベースから前記動物に対する提案処方箋情報を抽出する処方箋提案手段とを有し、
前記動物調剤情報入力端末は、
前記動物情報、前記動物診断情報、前記処方箋情報および顧客情報を入力する入力手段と、
前記処方箋提案手段によって抽出された提案処方箋情報を表示する表示手段とを有し、
前記処方箋情報表示端末は、
前記顧客情報と共に前記処方箋情報を表示する処方箋情報表示手段と、
前記動物用の薬の配送状況を含む調剤状況を入力する調剤状況入力手段とを有し、
前記調剤状況入力手段によって入力された
前記調剤状況を
前記動物調剤情報入力端末の
前記表示手段に表示させる
ことを特徴とする動物調剤情報管理システム。
【請求項2】
前記動物用医薬品情報には、動物の種類、品種および体重に応じた処方量が含まれることを特徴とする請求項1に記載の動物調剤情報管理システム。
【請求項3】
前記処方箋サーバは、前記動物調剤情報入力端末に入力された
前記処方箋情報が適切か否かを判断する処方箋判断手段をさらに有し、
前記動物調剤情報入力端末は、前記処方箋判断手段によって、前記動物調剤情報入力端末に入力された
前記処方箋情報が不適切と判断された場合に、その旨を
前記表示手段に表示させる
ことを特徴とする請求項1または2に記載の動物調剤情報管理システム。
【請求項4】
前記処方箋情報は、処方される動物用医薬品および当該動物用医薬品の処方量を含み、
前記動物用医薬品情報は、動物の種類、品種および体重に基づいて処方できる処方量に関する処方量範囲情報を含み、
前記処方箋判断手段は、前記動物用医薬品の処方量が、前記処方量範囲情報の範囲に含まれるか否かを判断することを特徴とする請求項3に記載の動物調剤情報管理システム。
【請求項5】
前記処方箋サーバは、前記動物情報データベースに格納された
前記処方箋情報に基づいて、処方されるであろうと予想される予測処方箋情報を自動的に作成する予測処方箋作成手
段を有し、
前記
処方箋情報表示端末は、前記予測処方箋情報を表示することを特徴とする請求項1~
4の何れか1項に記載の動物調剤情報管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、獣医師に適切な情報を提供することができると共に、薬剤師による適切な調剤を行った動物用の薬を配送することができる動物調剤情報管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの場合と同様に、動物用の調剤も獣医師の処方箋に基づいて行われる。その処方箋は、従前のヒトの調剤と同様に紙に記載されるものである。そして、動物用の調剤は、動物病院で行われている。
【0003】
このような状況に対して、ヒトの場合には、所定の病院・調剤薬局毎に医療用医薬品ストックセンターを割当て、当該医療用医薬品ストックセンターに、製薬メーカーから直接、あるいは医療用医薬品卸を介して購入した医療用医薬品をストックし、前記病院・調剤薬局からの注文に応じて、入庫した医療用医薬品を小分けし、夫々に製造ロット番号および使用期限を付して、発注元の前記病院・調剤薬局に配送して納品することを特徴とする医療用医薬品の小分け販売システムが提案されている(特許文献1参照)。この医療用医薬品の小分け販売システムでは、今まで、各病院・調剤薬局の側で個別に行われた在庫管理、健康保険組合への請求処理、卸への支払処理等がストックセンター装置の側で一括処理できるという効果を奏する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した医療用医薬品の小分け販売システム等では、動物特有の調剤に対応することができないという問題点があった。特に、動物の場合は、動物の種類やその品種によって、処方できる薬やその量が異なるため、ヒトの場合と比較して、処方する際に大量の情報が必要となるという問題点があった。
【0006】
また、動物の調剤では、ヒト用の薬を用いることが多い。しかし、動物は品種が同じであっても個体による体重差が大きい。したがって、動物の品種およびその個体の体重に応じて薬(有効成分)の量を大幅に変える必要があるが、従来の調剤薬局ではその場でこのような調剤に対応することができないという問題点があった。
【0007】
さらに、動物病院にて調剤を行う必要があるため、動物病院は、調剤を行う従業員(薬剤師)を雇用する必要があるという問題点があった。
【0008】
本発明は上述した事情に鑑み、獣医師に適切な情報を提供することができ、医薬分業による効率化、医薬品ロスの軽減ができると共に、柔軟な動物の調剤およびそれを配送することができる動物調剤情報管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の発明者は、上述した問題点に関して鋭意研究・開発を続けた結果、以下のような画期的な動物調剤情報管理システムを見出した。
【0010】
上記課題を解決するための本発明の第1の態様は、動物に関する動物情報、動物の診断に関する動物診断情報、動物に対して処方される処方箋情報および動物の飼い主の顧客情報が入力される動物調剤情報入力端末と、動物調剤情報入力端末に入力された動物情報、動物診断情報、処方箋情報および顧客情報を格納する処方箋サーバと、顧客情報と共に処方箋情報を表示する処方箋情報表示端末と、を具備する動物調剤情報管理システムであって、処方箋サーバは、動物情報、動物診断情報、調剤情報および顧客情報を格納する動物情報データベースと、動物の疾病に対する医薬品に関する動物用医薬品情報を格納する動物用医薬品データベースと、動物情報および動物診断情報に基づいて、動物用医薬品データベースから動物に対する提案処方箋情報を抽出する処方箋提案手段とを有し、動物調剤情報入力端末は、動物情報、動物診断情報、処方箋情報および顧客情報を入力する入力手段と、処方箋提案手段によって抽出された提案処方箋情報を表示する表示手段とを有し、調剤情報表示端末は、顧客情報と共に調剤情報を表示する調剤情報表示手段を有することを特徴とする動物調剤情報管理システムにある。
【0011】
ここで、「動物」とは、犬、猫、牛および豚等の哺乳類だけではなく、鳥類、爬虫類、魚類、両生類等の哺乳類以外の動物をも含む概念である。また、「動物の疾病」とは、動物の疾病だけでなく、動物の怪我等の正常ではない状態を含む概念である。
【0012】
かかる第1の態様では、獣医師に適切な情報を提供することができると共に、医薬分業により動物病院の人手不足を解消することができる。
【0013】
本発明の第2の態様は、動物用医薬品情報には、動物の種類、品種および体重に応じた処方量が含まれることを特徴とする第1の態様に記載の動物調剤情報管理システムにある。
【0014】
ここで、「品種」とは、所定の動物の中で遺伝的に特定の形質を同じくする一群をいう。品種としては、例えば、「動物」が犬の場合には、秋田犬や柴犬等の犬種等をいう。
【0015】
かかる第2の態様では、動物用医薬品の処方量を含めて、より適切な情報を獣医師に提供することができる。
【0016】
本発明の第3の態様は、処方箋サーバは、動物調剤情報入力端末に入力された処方箋情報が適切か否かを判断する処方箋判断手段をさらに有し、動物調剤情報入力端末は、処方箋判断手段によって、動物調剤情報入力端末に入力された処方箋情報が不適切と判断された場合に、その旨を表示手段に表示させることを特徴とする第1または第2の態様に記載の動物調剤情報管理システムにある。
【0017】
かかる第3の態様では、獣医師による処方箋のミスを防止することができる。また、動物が珍しい疾病に罹患している場合(傷を負っている場合を含む)や経験が少ない獣医師の場合であっても、獣医師による処方箋のミスを防止することができる。
【0018】
本発明の第4の態様は、動物情報は、動物の種類、品種および体重に関する情報を含み、処方箋情報は、処方される動物用医薬品およびその動物用医薬品の処方量を含み、動物用医薬品情報は、動物の種類、品種および体重に基づいて処方できる処方量に関する処方量範囲情報を含み、処方箋判断手段は、動物用医薬品の処方量が、処方量範囲情報の範囲に含まれるか否かを判断することを特徴とする第3の態様に記載の動物調剤情報管理システムにある。
【0019】
かかる第4の態様では、獣医師による処方箋(処方量を含む)のミスを防止することができる。また、動物が珍しい疾病に罹患している場合(傷を負っている場合を含む)や経験が少ない獣医師の場合であっても、獣医師による処方箋(処方量を含む)のミスを防止することができる。
【0020】
本発明の第5の態様は、調剤情報表示端末は、顧客への調剤状況を入力する調剤状況入力手段をさらに有し、調剤状況入力手段によって入力された調剤状況を動物調剤情報入力端末の表示手段に表示させることを特徴とする第1~第4の態様の1つに記載の動物調剤情報管理システムにある。
【0021】
かかる第5の態様では、顧客に対して、調剤状況(配送状況を含む)を通知することができる。
【0022】
本発明の第6の態様は、処方箋サーバは、動物情報データベースに格納された処方箋情報に基づいて、処方されるであろうと予想される予測処方箋情報を自動的に作成する予測処方箋作成手段25を有し、調剤情報表示端末は、予測処方箋情報を表示することを特徴とする第1~第5の何れか1つに記載の動物調剤情報管理システムにある。
【0023】
かかる第6の態様では、獣医師の診察を受ける前に、処方されるであろうと予測される予測処方箋情報を作成すると共に、処方箋情報表示端末に表示させることができる。その結果、顧客は獣医師の診察後に、すぐにその動物用の薬を入手することができる。また、このような予測処方箋情報を活用することによって、動物病院は処方する確率が高い動物用の薬の一定数量を常に保有することができる。その結果、動物病院の動物用の薬品の在庫管理を行うことができる。
【0024】
本発明の第7の態様は、動物に関する動物情報、動物の診断に関する動物診断情報、動物に対して処方される処方箋情報および動物の飼い主の顧客情報が入力される動物調剤情報入力端末と、動物調剤情報入力端末に入力された動物情報、動物診断情報、処方箋情報および顧客情報を格納する処方箋サーバと、顧客情報と共に処方箋情報を受信する処方箋情報受信手段と、を具備する動物調剤情報管理システムであって、処方箋サーバは、動物情報、動物診断情報、調剤情報および顧客情報を格納する動物情報データベースと、動物の疾病に対する医薬品に関する動物用医薬品情報を格納する動物用医薬品データベースと、動物情報および動物診断情報に基づいて、動物用医薬品データベースから動物に対する提案処方箋情報を抽出する処方箋提案手段とを有し、動物調剤情報入力端末は、動物情報、動物診断情報、処方箋情報および顧客情報を入力する入力手段と、処方箋提案手段によって抽出された提案処方箋情報を表示する表示手段とを有することを特徴とする動物調剤情報管理システムにある。
【0025】
かかる第7の態様では、獣医師に適切な情報を提供することができると共に、医薬分業により動物病院の人手不足を解消することができる。
【0026】
なお、本発明において、「手段」、「データベース」、「システム」とは、単に物理的手段を意味するものではなく、その「手段」、「データベース」、「システム」が有する機能をソフトウェアによって実現する場合も含む。また、1つの「手段」、「データベース」、「システム」が有する機能が2つ以上の物理的手段や装置により実現されても、2つ以上の「手段」、「データベース」、「システム」の機能が1つの物理的手段や装置により実現されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は実施形態1に係る動物調剤情報管理システムの概略図である。
【
図2】
図2は実施形態1に係る動物調剤情報入力端末の概略概念図である。
【
図3】
図3は実施形態1に係る処方箋サーバの概略概念図である。
【
図4】
図4は実施形態1に係る処方箋提案手段に用いられる処方量の表である。
【
図5】
図5は実施形態1に係る処方箋情報表示端末の概略概念図である。
【
図6】
図6は実施形態1に係る動物調剤情報管理システムの動作フローチャートである。
【
図7】
図7は実施形態3に係る処方箋サーバの概略概念図である。
【
図8】
図8は実施形態6に係る処方箋サーバの概略概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る動物調剤情報管理システムの実施形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
(実施形態1)
【0029】
図1に示すように、本実施形態に係る動物調剤情報管理システム1は、ネットワーク50を介して、複数の動物調剤情報入力端末10と、処方箋サーバ20と、複数の処方箋情報表示端末30とがそれぞれ接続されて構成されている。なお、本実施形態では、1つの処方箋サーバ20を用いて動物調剤情報管理システム1を構成しているが、複数の処方箋サーバ20を用いて動物調剤情報管理システム1を構成してもよい。
【0030】
動物調剤情報入力端末10は、
図2に示すように、入力手段11と表示手段12とを有する。入力手段11は、診断する動物に関する動物情報211、その動物の診断に関する動物診断情報212、その動物に対して処方される処方箋情報213およびその動物の飼い主の顧客情報214を入力することができるものであれば特に限定されず、例えばキーボードや、後述する表示手段12を兼ねたタッチパネル等が挙げられる。
【0031】
ここで、「動物情報」とは、動物の種類、品種(例えば犬の場合は犬種)、年齢、性別、体重、名前等の情報である。「動物診断情報」とは、例えば犬の場合は、外耳炎、心不全のように、獣医師によって診断される動物の疾病等の情報である。「処方箋情報」とは、例えば犬の場合には、「体重3キロのチワワが膿皮症にかかっている場合には、75mgのリレキシペット(登録商標)薬 1錠」というように、獣医師によって処方される処方箋に関する情報である。なお、動物情報211には、過去に投与等された動物用医薬品に関する情報(動物用医薬品名、時期および処方量等)の情報が含まれていてもよい。これらの情報が含まれることにより、最終的に動物調剤情報入力端末10に、これらの情報が表示されることになるので、獣医師により多くの情報を提供することができる。その結果、獣医師は、より適切な診断を行うことができる。
【0032】
また、「顧客情報」とは、その動物の飼い主の氏名、住所、電話番号、メールアドレス等の顧客を特定することができる情報である。
【0033】
表示手段12は、処方箋サーバ20や処方箋情報表示端末30から送信された情報を表示することができるものであれば特に限定されず、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等が挙げられる。
【0034】
なお、動物調剤情報入力端末10としては、上述した機能を有するものであれば特に限定されず、例えば動物病院内に配置されるパーソナルコンピュータ、タブレット型端末や携帯端末等が挙げられる。
【0035】
次に、処方箋サーバ20について説明する。
図3に示すように、処方箋サーバ20は、動物情報データベース21と、動物用医薬品データベース22と、処方箋提案手段23とを有している。
【0036】
動物情報データベース21は、動物調剤情報入力端末10から送信された動物情報211、動物診断情報212、処方箋情報213および顧客情報214を格納および抽出することができるものであれば特に限定されず、例えば市販のデータベースマネジメントシステムであってもよい。
【0037】
同様に、動物用医薬品データベース22も動物用医薬品情報221を格納および抽出することができるものであれば特に限定されず、例えば市販のデータベースマネジメントシステムであってもよい。
【0038】
ここで、動物用医薬品情報221とは、動物用医薬品(動物に投与できるヒト用の医薬品を含む。)に関する情報であって、例えば、「結膜炎の場合、ティアローズ点眼液」、名称、単位体重(重量)当たりの許容摂取量、薬として有効成分およびその量、またはその動物用医薬品の取扱説明書に記載されている事項等の情報である。なお、動物用医薬品情報221には、この動物調剤情報管理システム1を利用する獣医師によって、その動物用医薬品が実際に処方された処方数(所定の期間に処方されたものの処方数(件数)でもよい)が含まれていることが好ましい。
【0039】
また、処方箋提案手段23とは、動物情報211および動物診断情報212に基づいて、動物用医薬品データベース22からその動物に対する提案処方箋情報を抽出することができるものであれば特に限定されない。ここで、「提案処方箋情報」とは、獣医師による処方箋ではなく、獣医師に対して動物調剤情報管理システム1が提案する処方箋案をいう。具体的な提案処方箋情報としては、例えば「ティアローズ点眼液 10mL」等が挙げられる。
【0040】
処方箋提案手段23としては、例えば、動物調剤情報入力端末10に入力された動物情報211および動物診断情報212に基づいて、提案処方箋情報として、適切と考えられる(処方可能と判断される)動物用医薬品情報221を動物用医薬品データベース22から複数抽出するプログラム等が挙げられる。
【0041】
具体的には、このようなプログラムとしては、例えば動物診断情報212に含まれる疾病等の情報に基づいて、その疾病等に対して多く使用されている(処方数が大きい)、上位3つの動物用医薬品の動物用医薬品情報221を抽出するものや、動物診断情報212(例えば動物は犬、品種はチワワとする)に含まれる疾病等(例えば、特発性てんかん)の情報に基づいて、まずその疾病等に対する有効成分(例えば、ゾニサミド)を含有する動物用医薬品情報221(例えば、動物用医薬品のコンセーブ(登録商標)25mg錠、動物用医薬品のエピレス(登録商標)錠10mg、ヒト用医薬品のエクセグラン(登録商標)錠100mg等)を抽出し、それらの中から多く使用されている(処方数が大きい)、上位3つの動物用医薬品の動物用医薬品情報221を抽出するもの等が挙げられる。ここでは、3つの動物用医薬品情報221を抽出するようにしたが、最も処方数が大きいもののみを抽出するようにしてもよい。
【0042】
なお、処方箋提案手段23によって抽出された各動物用医薬品の処方量については、例えば動物情報211に含まれるその動物の体重に基づいて、
図4に示す表から処方量を算出することができる。
【0043】
処方箋サーバ20としては、上述した機能を有するものであれば特に限定されず、パーソナルコンピュータ等が挙げられる。なお、処方箋サーバ20が配置される場所は特に限定されず、所定の地域に設置された計算機センター内に配置される、いわゆるクラウドサーバであってもよい。
【0044】
さらに、処方箋情報表示端末30について説明する。
図5に示すように、処方箋情報表示端末30は、獣医師によって動物調剤情報入力端末10に入力された処方箋情報213および顧客情報214を表示する処方箋情報表示手段31を有する。ここで、処方箋情報とは、診察した動物に対する処方箋に関する情報であり、例えば「受診日:2020年11月1日 ティアローズ点眼液 10mL」等の情報である。処方箋情報表示手段31としては、処方箋情報213を表示することができるものであれば特に限定されず、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等が挙げられる。
【0045】
処方箋情報表示端末30は、上述した機能を有するものであれば特に限定されず、例えば所定の調剤薬局や調剤を行う専用の施設内に配置されるパーソナルコンピュータ、タブレット型端末や携帯端末等が挙げられる。
【0046】
なお、ネットワーク50は情報を送信することができるものであれば特に限定されず、例えばインターネットやイントラネットであってもよい。ネットワーク50の接続方法も特に限定されず、有線でも無線であってもよい。
【0047】
次に、動物調剤情報管理システム1の動作について説明する。
図6は、動物調剤情報管理システム1の動作を示すフローチャートである。
【0048】
まず、顧客が動物を連れて動物病院に来院する。すると、動物病院のスタッフ等がその動物の動物情報211および顧客情報214を動物調剤情報入力端末10に入力する(S1)。ただし、既にこれらの情報が動物情報データベース21に格納されている場合には、入力する必要はない。
【0049】
その後、獣医師がその動物を診察し(S2)、その動物診断情報212を動物調剤情報入力端末10に入力する(S3)。すると、動物調剤情報入力端末10は、その動物診断情報212とその動物情報211(その動物の動物情報211を特定するための情報を含む)を処方箋サーバ20に送信する。
【0050】
そして、処方箋サーバ20は、これらの情報に基づいて、提案処方箋情報として、適切と考えられる動物用医薬品情報221を動物用医薬品データベース22から複数抽出し(S4)、動物調剤情報入力端末10に送信する。なお、処方箋サーバ20は、提案処方箋情報として、最も適切と考えられる動物用医薬品情報221を動物用医薬品データベース22から抽出してもよい。
【0051】
送信された提案処方箋情報は、動物調剤情報入力端末10に表示される(S5)。それを見た獣医師は、処方箋情報213を動物調剤情報入力端末10に入力する(S6)。ここで、入力される処方箋情報213は、獣医師が独自に判断するもので、提案処方箋情報を参考にしたものであってもよいし、全く異なるものであってもよい。また、この処方箋情報213は、動物情報データベース21に格納され、次回の診察の際に活用することができるようになっている。
【0052】
入力された処方箋情報213は、顧客情報214と共に処方箋情報表示端末30に表示される(S7)。そして、その情報を見た薬剤師が動物用調剤(動物用薬)を作製(S8)する。この時に、動物の品種およびその個体の体重に応じて薬(有効成分)量や投与方法等を大幅に変えることができるので、従来の薬局では難しかった動物用の調剤をスムーズに行うことができる。例えば、動物用調剤では、同一症状の動物に投与する薬であっても、その個体の体重に応じて投与する量を1/4、1/8、1/16に調整したり、錠剤を粉砕して粉末薬にしたり、ヒト用の注射薬を動物用のシロップに混ぜることで動物用の経口薬に変える(調剤する)ことができる。このような調剤は、通常の調剤薬局で行うことはできない。
【0053】
その後、作製された動物用調剤を顧客の住所やその獣医師が勤務する動物病院に配送する(S9)。
【0054】
動物用調剤を受け取った顧客等は、その代金を支払う(S10)ことで、動物調剤情報管理システム1の一連の動作が終了する。代金の支払い方法は、クレジットカード払いや代引き等を利用することができる。なお、調剤状況(配送状況を含む)は、動物調剤情報入力端末10に逐次表示され、顧客や獣医師が調剤状況を把握することができるようになっている。
【0055】
ここで、動物用調剤の代金は、動物調剤情報管理システム1を運営している者や調剤を行った調剤薬局に支払ってもよいし、診察料と共に動物病院に支払ってもよい。なお、顧客が動物病院に動物用調剤の代金を支払った場合には、動物病院が、動物調剤情報管理システム1を運営している者や調剤薬局に、動物用調剤の代金を支払うことになる。
【0056】
このように、動物調剤情報管理システム1によれば、獣医師に適切な情報を提供することができると共に、薬剤師による適切な調剤で動物用の薬を配送することができる。また、動物病院にて調剤を行う必要がなくなるため、動物病院の人手不足を解消することができる。
(実施形態2)
【0057】
動物用医薬品情報は上述した情報としたが、本発明はこれに限定されない。例えば、動物用医薬品情報に、動物の種類、品種および体重に応じた処方量が含まれていてもよい。
【0058】
この場合には、処方箋提案手段23は、動物情報(動物の種類、品種および体重を含む)および動物診断情報に基づいて、動物用医薬品データベースからその動物に対する提案処方箋情報(適切な処方量を含む)を抽出し、その提案処方箋情報を動物調剤情報入力端末10に表示させることができる。
【0059】
このように動物調剤情報管理システムを構成することにより、動物用医薬品の処方量を含めて、より適切な情報を獣医師に提供することができる。
(実施形態3)
【0060】
上述した実施形態では、提案処方箋情報を獣医師に提供するようにしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、獣医師が入力した処方箋が適切でない場合には、その旨を動物調剤情報入力端末に表示して、獣医師に注意を喚起するようにしてもよい。
【0061】
図7は、本実施形態に係る動物調剤情報管理システムを構成する処方箋サーバ20Aの概略図である。この図に示すように、処方箋サーバ20Aは、処方箋判断手段24を有している。その他の構成要素は、実施形態1と同様である。
【0062】
処方箋判断手段24とは、動物情報および動物用医薬品情報と、獣医師が入力した処方箋情報とを比較し、不適切な処方箋情報を入力していた場合には、その旨を動物調剤情報入力端末10に表示させる機能を有するものである。ここで、「不適切な処方箋情報」とは、動物用医薬品の使用できる範囲(処方量を含む)を超えた処方箋情報をいい、動物の品種によっては処方してはいけない等の情報を含む概念である。
【0063】
処方箋判断手段24とは、次に説明するようなものであるが、その前提条件として、動物情報には動物の種類、品種および体重を少なくとも含み、処方箋情報には処方される動物用医薬品の処方量が含まれている。また、動物用医薬品情報には、動物の種類、品種および体重に基づいて処方できる処方量に関する処方量範囲情報が含まれているものとする。
【0064】
この前提条件において、処方箋判断手段24とは、例えば、動物情報に含まれる動物の体重と、獣医師が指定した動物用医薬品の単位、品種体重当たりの許容摂取量(処方量範囲情報)とを比較し、獣医師が動物調剤情報入力端末10に入力した動物用医薬品の処方量がその最大値を超えていた場合には、そのことを動物調剤情報入力端末10に表示させるプログラム等が挙げられる。
【0065】
このように、動物調剤情報管理システムを構成することにより、獣医師による処方箋のミスを防止することができる。また、動物が珍しい疾病に罹患している場合(傷を負っている場合を含む)や経験が少ない獣医師の場合であっても、獣医師による処方箋のミスを防止することができる。
(実施形態4)
【0066】
上述した実施形態では、顧客情報と共に処方箋情報を処方箋情報表示端末に表示させるようにしたが、本発明はこれに限定されない。
【0067】
処方箋情報表示端末に、調剤状況を入力する調剤状況入力手段をさらに設け、その調剤状況入力手段によって入力された調剤状況(配送状況を含む)を動物調剤情報入力端末の表示手段に表示させるようにしてもよい。
【0068】
ここで、調剤状況入力手段は、調剤状況(配送状況を含む)を入力することができるものであれば特に限定されず、例えばキーボードや処方箋情報報表示手段を兼ねたタッチパネル等が挙げられる。
【0069】
このように、動物調剤情報管理システムを構成することにより、獣医師や顧客に対して、調剤状況(配送状況を含む)を通知することができる。
(実施形態5)
【0070】
上述した実施形態では、顧客情報および処方箋情報は、調剤薬局内に配置される処方箋情報表示端末に表示されるようにしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、処方箋サーバに処方箋情報受信手段であるFAX等を接続すると共に、調剤薬局に処方箋情報表示端末に代えてFAXを設置する。そして、そのFAXを用いて処方箋サーバから処方箋情報が調剤薬局に送信されるようにしてもよい。
【0071】
ここで、処方箋情報受信手段は、顧客情報および処方箋情報を調剤薬局に送信することができるものであれば特に限定されない。
【0072】
このように、動物調剤情報管理システムを構成しても、上述した実施形態と同様の効果が得られる。
(実施形態6)
【0073】
上述した実施形態では、動物を診察した後で獣医師が入力した処方箋情報が処方箋情報表示端末に表示されるようにしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、過去の処方箋情報に基づいて、処方されるであろうと予測される処方箋情報が処方箋情報表示端末に自動的に表示されるようにしてもよい。すなわち、獣医師の指示によらずに、処方されるであろうと予測される処方箋情報(予測処方箋情報)を作成し、それを処方箋情報表示端末に表示するようにしてもよい。
【0074】
図8は、本実施形態に係る動物調剤情報管理システムを構成する処方箋サーバ20Bの概略図である。この図に示すように、処方箋サーバ20Bは、予測処方箋作成手段25を有している。その他の構成要素は、実施形態1と同様である。
【0075】
予測処方箋作成手段25とは、動物情報データベース21に格納された過去の処方箋情報に基づいて、予測処方箋情報を自動的に作成する機能を有するものである。ここで、「予測処方箋情報」とは、各動物に対して、次回の獣医師の診察によって処方されるであろうと想定される処方箋に関する情報である。予測処方箋情報としては、例えば「受診日:2020年12月1日 ティアローズ点眼液 10mL」等の情報である。
【0076】
予測処方箋作成手段25としては、過去の処方箋情報に基づいて、予測処方箋情報を自動的に作成するプログラム等が挙げられる。具体的には、例えば、同一動物に関する直近の処方箋情報に含まれる受診日とその前の処方箋情報に含まれる受診日とから、次の受診日となる日を算出(予測)すると共に、直近の処方箋情報に含まれる動物用の薬品の種類とその量とから、処方されると予測される動物用医薬品とその量を自動的に作成するプログラムが挙げられる。
【0077】
そして、このように作成された予測処方箋情報が処方箋情報表示端末に表示されることになる。その結果、その予測処方箋情報に基づいて作製される動物用の薬を動物病院や薬局に配送することができるので、顧客は獣医師の診察後に、すぐにその動物用の薬を入手することができる。
【0078】
このように、動物調剤情報管理システムを構成することにより、獣医師の診察を受ける前に、処方されるであろうと予測される予測処方箋情報を作成すると共に、処方箋情報表示端末に表示させることができる。その結果、顧客は獣医師の診察後に、すぐにその動物用の薬を入手することができる。また、このような予測処方箋情報を活用することによって、動物病院は処方する確率が高い動物用医薬品の一定数量を常に保有することができる。その結果、動物病院の動物用医薬品の在庫管理を行うことができる。
(他の実施形態)
【0079】
実施形態1では、動物用調剤の配送が完了した後に動物用調剤の料金を支払うようにしたが、本発明はこれに限定されない。顧客は、診察後や調剤を行う前に、動物病院、動物調剤情報管理システムを運営している者および調剤薬局の何れかに動物用調剤の料金を支払ってもよいのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0080】
1 動物調剤情報管理システム
10 動物調剤情報入力端末
11 入力手段
12 表示手段
20、20A、20B 処方箋サーバ
21 動物情報データベース
22 動物用医薬品データベース
23 処方箋提案手段
24 処方箋判断手段
25 予測処方箋作成手段
30 処方箋情報表示端末
31 処方箋情報表示手段
50 ネットワーク
211 動物情報
212 動物診断情報
213 処方箋情報
214 顧客情報
221 動物用医薬品情報