(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-27
(45)【発行日】2023-01-11
(54)【発明の名称】ソケット
(51)【国際特許分類】
B25B 21/00 20060101AFI20221228BHJP
【FI】
B25B21/00 H
(21)【出願番号】P 2018129092
(22)【出願日】2018-07-06
【審査請求日】2021-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000201467
【氏名又は名称】TONE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】特許業務法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平尾 元宏
(72)【発明者】
【氏名】森沢 陽一
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-036074(JP,U)
【文献】実開昭56-094277(JP,U)
【文献】実開平06-050759(JP,U)
【文献】特開2016-147334(JP,A)
【文献】実開平02-039874(JP,U)
【文献】特開平07-009356(JP,A)
【文献】実開昭53-043600(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2007/0084314(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力工具の出力軸に装着して使用され、締結部材を締緩するソケットであって、
基端に前記出力軸が嵌まる差込角の形成された取付筒部、先端側に前記締結部材が嵌まるソケット孔の形成されたソケット筒部を具え、
前記ソケット孔は、前記ソケット筒部の先端から後退した位置に形成され、外周に向けて膨らんでおり、同心円上に配置された2つの頂角と、前記頂角間に形成された円弧状の内周面を含む複数の凹みを有しており、
前記ソケット筒部の先端には、前記内周面と前記頂角の同心円の直径と同じ直径であり、前記頂角及び前記内周面と段差なく連続する内径を有す
る環状
内面部を有
し、
前記ソケット筒部の先端面は内周側にテーパー面が形成されており、前記環状内面部は前記テーパー面に接続される、
ことを特徴とするソケット。
【請求項2】
動力工具の出力軸に装着して使用され、締結部材を締緩するソケットであって、
基端に前記出力軸が嵌まる差込角の形成された取付筒部、先端側に前記締結部材が嵌まるソケット孔の形成されたソケット筒部を具え、
前記ソケット孔は、
角丸の多角形であって、前記ソケット筒部の先端から後退した位置に形成され、外周に向けて円弧状に膨らみ、同心円上に
頂点を有しており、
前記ソケット筒部の先端には、前記
ソケット孔の前記頂
点の同心円の直径と同じ直径であり、前記頂
点と段差なく連続する内径を有す
る環状
内面部を有
し、
前記ソケット筒部の先端面は内周側にテーパー面が形成されており、前記環状内面部は前記テーパー面に接続される、
ことを特徴とするソケット。
【請求項3】
請求項1又
は請求項
2に記載の前記ソケットを出力軸に装着してなる動力工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力工具に装着され、ボルト、ナットなどの締結部材を締緩するソケットに関するものであり、より具体的には、ソケット孔の応力割れを低減できるソケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ボルトやナットなどの締結部材を締緩する動力工具では、締結部材に合わせたソケットを動力工具の出力軸に装着し、締結部材の締結を行なっている。
【0003】
ソケットは、締結部材が嵌まる六角形などの外周に向けて凹みが形成されたソケット孔が形成されている。ソケット孔は、ソケットの端面から面取りなしで形成したり、特許文献1に示すように締結部材を挿入し易くするためにソケットの端面からソケット孔に向けてテーパー形状の面取りを施して形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
動力工具の高出力や短時間締付のための高速化が進められており、また、締結部材には、より高い締付トルクが求められている。このような状況下において、締付けの際にソケットに割れやヒビが生じることがある。
【0006】
割れやヒビの生じたソケットを観察したところ、ソケット孔の外周に膨らんだ凹み、特に凹みに形成された頂角を起点にして割れなどが生じていることがわかった。そして、その原因は、締付時に頂角に応力が集中することによるものであり、凹みの外側、すなわち、ソケットの端面が頂角の外側にあるため、割れやヒビが生じ易いことを解明した。
【0007】
本発明の目的は、締付時にソケット孔の凹み、特に凹みの頂角の応力割れが生じ難いソケットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係るソケットは、
動力工具の出力軸に装着して使用され、締結部材を締緩するソケットであって、
基端に前記出力軸が嵌まる差込角の形成された取付筒部、先端側に前記締結部材が嵌まるソケット孔の形成されたソケット筒部を具え、
前記ソケット孔は、前記ソケット筒部の先端から後退した位置に形成され、外周に向けて膨らんでおり、同心円上に配置された2つの頂角と、前記頂角間に形成された円弧状の内周面を含む複数の凹みを有しており、
前記ソケット筒部の先端には、前記内周面と前記頂角の同心円の直径と同じ直径であり、前記頂角及び前記内周面と段差なく連続する内径を有する環状内面部を有し、
前記環状内面部と前記ソケット筒部の先端面は、テーパー面で連続している。
【0009】
また、上記課題を解決するために、本発明に係るソケットは、
動力工具の出力軸に装着して使用され、締結部材を締緩するソケットであって、
基端に前記出力軸が嵌まる差込角の形成された取付筒部、先端側に前記締結部材が嵌まるソケット孔の形成されたソケット筒部を具え、
前記ソケット孔は、角丸の多角形であって、前記ソケット筒部の先端から後退した位置に形成され、外周に向けて円弧状に膨らみ、同心円上に頂点を有しており、
前記ソケット筒部の先端には、前記ソケット孔の前記頂点の同心円の直径と同じ直径であり、前記頂点と段差なく連続する内径を有する環状内面部を有し、
前記環状内面部と前記ソケット筒部の先端面は、テーパー面で連続している。
【0010】
(削除)
【0011】
本発明の動力工具は、上記ソケットを出力軸に装着して構成することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るソケットによれば、ソケット孔は、凹みは環状内面部に接している構成である。凹み及び凹みの頂角、又は、頂点は先行技術の如く端面に設けられたものではなく、環状内面部に連続しているから、応力が集中しても凹みや凹みの頂角又は頂点を起点とする割れやヒビなどの応力割れを生じ難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係るソケットの斜視図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係るソケットの正面図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係るソケットの一部を断面した側面図である。
【
図7】
図7は、本発明の第2実施形態に係るソケットの斜視図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態に係るソケットの正面図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態に係るソケットの一部を断面した側面図である。
【
図10】
図10は、本発明の第3実施形態に係るソケットの斜視図である。
【
図11】
図11は、第3実施形態に係るソケットの正面図である。
【
図12】
図12は、第3実施形態に係るソケットの一部を断面した側面図である。
【
図13】
図13は、本発明の第4実施形態に係るソケットの斜視図である。
【
図14】
図14は、第4実施形態に係るソケットの正面図である。
【
図16】
図16は、第4実施形態に係るソケットの一部を断面した側面図である。
【
図18】
図18は、本発明の第5実施形態に係るソケットの斜視図である。
【
図19】
図19は、第5実施形態に係るソケットの正面図である。
【
図20】
図20は、第5実施形態に係るソケットの一部を断面した側面図である。
【
図21】
図21は、本発明の第6実施形態に係るソケットの斜視図である。
【
図22】
図22は、第6実施形態に係るソケットの正面図である。
【
図23】
図23は、第6実施形態に係るソケットの一部を断面した側面図である。
【
図24】
図24は、本発明の第7実施形態に係るソケットの斜視図である。
【
図25】
図25は、第7実施形態に係るソケットの正面図である。
【
図26】
図26は、第7実施形態に係るソケットの一部を断面した側面図である。
【
図27】
図27は、本発明の第8実施形態に係るソケットの斜視図である。
【
図28】
図28は、第8実施形態に係るソケットの正面図である。
【
図29】
図29は、第8実施形態に係るソケットの一部を断面した側面図である。
【
図30】
図30は、本発明の第9実施形態に係るソケットの斜視図である。
【
図31】
図31は、第9実施形態に係るソケットの正面図である。
【
図32】
図32は、第9実施形態に係るソケットの一部を断面した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係るソケット10について、図面を参照しながら説明を行なう。なお、図は本発明に係るソケット筒部20の構成以外の部分、具体的には取付筒部30を適宜点線で示している。
【0015】
図1は、本発明の第1実施形態に係るソケット10の斜視図、
図2は先端側から見た正面図、
図3は側面図、
図4は一部を断面した側面図、
図5は基端側から見た底面図である。また、
図6は、
図1の丸囲み部Aを拡大した斜視図である。図に示すように、ソケット10は、先端側にボルトやナットなどの締結部材が挿入されるソケット孔21が形成されたソケット筒部20と、基端側に締付機などの動力工具の出力軸が差し込まれる矩形の差込角32が形成された取付筒部30が形成されている。ソケット孔21と差込角32との間は断面略矩形の貫通孔11によって連通している。
【0016】
ソケット筒部20に形成されるソケット孔21は、
図1、
図2、
図4及び
図6に示すように、締結部材を挿入可能な凹みであって、ソケット筒部20よりも僅かに後退した位置に形成される。図示のソケット孔21は、所謂ダブル六角の一山飛ばし構造であり、外周に向けて膨らんだ断面略台形形状の凹み22が6つ形成されている。凹み22,22間に形成される端面27は、後述する
環状内面部28から内向きに突出している。この端面27は、ソケット10の軸心に直交する形状や、
図4に示すようにテーパー形状
のテーパー面23を有している。
【0017】
各凹み22は、角部となる頂角24,24と、頂角24,24間に形成された円弧状の内周面26を有する。頂角24,24と内周面26は、ソケット孔21と同心円に形成されている。
【0018】
そして、本発明のソケット10は、図に示すように、ソケット筒部20の先端に、ソケット孔21よりも先端側に環状
内面部28を形成している。
環状内面部28は、ソケット筒部20の先端の内周側を拡径した形状であり、頂角24,24と内周面26が接している。すなわち、
図4及び
図6に示されるように、
環状内面部28は、同心円上に配置された頂角24,24と内周面26の直径と同じ直径であり、頂角24,24及び内周面26と段差なく連続している。
環状内面部28とソケット筒部20の先端面は、図4等に示すように、テーパー面23を介して連続している。すなわち、環状内面部28は、ソケット孔21とテーパー面23の間の領域(図4にBで示す範囲)である。
【0019】
環状内面部28の深さ(ソケット孔21からソケット筒部20の先端までの長さ)は、1mm~5mmが好適であり、2mm~3mmが望ましい。
【0020】
然して、本発明のソケット10は、動力工具(図示せず)のドライブ軸を差込角32に挿入し、
図6に示すように、締結部材40を挿入した状態で、締付作業を行なう。このとき、締結部材40に加わるトルクに比例した応力Fがソケット10に作用する。そして、その応力Fはソケット孔21の内壁を構成する凹み22のうち、特に頂角24に集中的に作用する。
【0021】
本発明のソケット10は、ソケット孔21の凹み22のうち、特に応力割れの起点となりやすい頂角24,24が環状内面部28に接している。そして、頂角24に応力Fが作用しても、頂角24が環状内面部28と段差なく連続しているから割れやヒビを生じ難くすることができる。
【0022】
すなわち、環状内面部28に頂角24及び内周面25が接した構成であるから、頂角24は端面に位置せず、先行技術のような端面がない構成であるから、頂角24が割れやヒビの起点となり難く、割れやヒビの発生を抑えることができる。
【0023】
図7乃至
図32は、本発明のソケット10のソケット孔21の形状を変えた実施形態である。何れもソケット孔21に頂角24が形成されており、当該頂角24がソケット筒部20の先端に
環状内面部28に接している。なお、第1実施形態と同じ符号は、同じ部材又は同等の部材を意味し、適宜説明を省略している。
【0024】
図7乃至
図9は、第2実施形態であり、略六角星形の孔形状(所謂E型ヘックスローブ:トルクス(登録商標))のソケット孔21のソケット10である。ソケット孔21の凹み22は円弧状であり、
角丸の頂
点24
aが
環状内面部28に接している。側面図及び底面図は、第1実施形態の
図3及び
図5と同じである。
【0025】
図
10乃至
図12は、第3実施形態であり、略六角星形の孔(所謂トルクスプラス(登録商標))であって、凹み22の頂角24,24間に円弧状の内周面26が形成されている。頂角24,24及び内周面26が
環状内面部28に接している。側面図及び底面図は、第1実施形態の
図3及び
図5と同じである。
【0026】
図13乃至
図17は、第4実施形態であり、六角形状のソケット孔21を有する。そして、6つの頂
点24
aが
環状内面部28に接している。
【0027】
図18乃至
図20は、第5実施形態であり、四角形状のソケット孔21を有し、各頂
点24
aが
環状内面部28に接している。側面図及び底面図は、第4実施形態の
図15及び
図17と同じである。
【0028】
図21乃至
図23は、第6実施形態であり、円弧状の凹み22が螺旋状に形成されたツイストタイプである。各凹み22の円弧状の頂
部が頂
点24
aとなり、
環状内面部28に外接している。側面図及び底面図は、第4実施形態の
図15及び
図17と同じである。
【0029】
図24乃至
図26は、第7実施形態であり、12個の凹み22が形成された12角形状のソケット孔21を有している。各凹み22の頂
部が頂
点24
aとなり、
環状内面部28に接している。側面図及び底面図は、第4実施形態の
図15及び
図17と同じである。
【0030】
図27乃至
図29は、第8実施形態であり、8つの凹み22が形成された8角形状(所謂ダブル4角)のソケット孔21を有するソケット10である。各凹み22は、2つの頂
点24
a,24
aを有
している。頂
点24
a,24
aは環状内面部28に接している。側面図及び底面図は、第4実施形態の
図15及び
図17と同じである。
【0031】
図30乃至
図32は、第9実施形態であり、十文字形状の凹み22(所謂フォームタイ(登録商標))が形成されたソケット孔21を有する。各凹み22は、2つの頂角24,24と頂角24,24間に円弧状の内周面26を有している。そして、頂角24,24と内周面26は
環状内面部28に接している。側面図及び底面図は、第4実施形態の
図15及び
図17と同じである。
【0032】
何れの実施形態も、頂角24、頂角24と内周面26、又は、頂点24aが環状内面部28に接しており、段差なく繋がっているから、第1実施形態と同様、締付時の応力が作用しても、頂角24又は頂点24aに割れやヒビを生じ難くすることができる。
【0033】
そして、上記実施形態のソケット10を装着した動力工具は、締結部材を締め付ける際に、割れやヒビの発生を抑えることができるから、長期に亘って安定した性能を発揮することができる。
【0034】
上記説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或いは範囲を限縮するように解すべきではない。また、本発明の各部構成は、上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【0035】
たとえば、ソケット孔21の形状は、一例であり、他の形状とすることができることは勿論である。また、ソケット孔21の内径、差込角32の形状に応じて、ソケット筒部20の直径、取付筒部30の直径は適宜変更できることも理解されるべきである。
【符号の説明】
【0036】
10 ソケット
20 ソケット筒部
21 ソケット孔
22 凹み
24 頂角
24a 頂点
26 内周面
28 環状内面部