(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-27
(45)【発行日】2023-01-11
(54)【発明の名称】スプリンクラーヘッドの被水防止装置
(51)【国際特許分類】
A62C 35/68 20060101AFI20221228BHJP
A62C 37/08 20060101ALI20221228BHJP
B05B 1/28 20060101ALI20221228BHJP
【FI】
A62C35/68
A62C37/08
B05B1/28
(21)【出願番号】P 2019049252
(22)【出願日】2019-03-18
【審査請求日】2021-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000199186
【氏名又は名称】千住スプリンクラー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 一真
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-272201(JP,A)
【文献】特開2006-110187(JP,A)
【文献】特開2000-279547(JP,A)
【文献】特開2001-204846(JP,A)
【文献】米国特許第04739934(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 2/00-99/00
B05B 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井面に設けられた開口から室内側に先端が露出して設置されたスプリンクラーヘッドに用いられる被水防止装置であり、
前記開口を覆うシーリングプレートは、前記天井面に接する皿部の中心側に前記スプリンクラーヘッドが挿通される穴を有しており、
前記穴の縁に被水防止部材が設置される差込み穴が所定間隔で複数設置されており、
前記差し込み穴は前記開口の内側に配置され、
前記被水防止部材は一端が前記差込み穴に挿通される係止部であり、他端には前記スプリンクラーヘッドから散布される水を下方へ向ける遮水部が設置されて
おり、
前記遮水部と前記係止部の間に前記皿部の表面に沿って配置される支持部を設置したことを特徴とするスプリンクラーヘッドの被水防止装置。
【請求項2】
前記皿部は、中心側が前記室内側へ突出しており周縁に向かうに従い天井面に近づく傾斜を備える請求項1に記載のスプリンクラーヘッドの被水防止装置。
【請求項3】
前記係合部は前記差込み穴を通過して皿部の裏面と係合する爪を有しており、該爪は前記スプリンクラーヘッドに対向して係合される請求項1または請求項2に記載のスプリンクラーヘッドの被水防止装置。
【請求項4】
前記差込み穴は前記穴の縁に沿った円弧状または短冊状であり、前記係合部は前記差込み穴の形状と同じ断面形状を有する請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のスプリンクラーヘッドの被水防止装置。
【請求項5】
前記差込み穴は、前記穴と同芯である仮想円上に設置されている請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のスプリンクラーヘッドの被水防止装置。
【請求項6】
前記被水防止部材には複数の前記係合部が設置されている請求項1~請求項
5のいずれか1項に記載のスプリンクラーヘッドの被水防止装置。
【請求項7】
前記差込み穴に複数の前記係合部が挿通される請求項1~請求項
6のいずれか1項に記載のスプリンクラーヘッドの被水防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井に埋め込んで設置されるスプリンクラーヘッドの被水防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スプリンクラーヘッドは火災の熱を感知して自動的に水を散布して消火を行うものである。スプリンクラーヘッドは主に天井面に所定の間隔で設置されている。
【0003】
被水防止装置は、主に住宅等の室内空間が狭い場所に設置されたスプリンクラーヘッドに用いられるものであり、被水防止装置が設置されたスプリンクラーヘッドが作動して散水を行う場合に、近隣に設置されたスプリンクラーヘッドへの被水を防ぐために設置されている。
【0004】
従来の被水防止装置として、天井から室内に露出しているスプリンクラーヘッドに設置されたプロテクタに被水防止のための規制体を設置しているものがある(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1ではスプリンクラーヘッドの周囲に設置された規制体によってスプリンクラーヘッドから散布される水の方向を斜め下方に向けて散水距離を抑制している。
【0005】
このように被水防止装置はスプリンクラーヘッドを外的衝撃から保護するプロテクタに設置されたり、あるいはスプリンクラーヘッドを天井裏から室内側に挿通させる穴を隠すシーリングプレートに設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年において、室内の意匠に対する要求が高くなり、上記のプロテクタを設置すると天井からの突出が目立つとの意見があり、被水防止装置をより目立たなくして欲しいとの要望が出てきた。
【0008】
特許文献1のように、従来の被水防止部材はプロテクタのガードの枠の中に固定して設置されており、スプリンクラーヘッドからの散水の勢いで外れないように構成されていたが、シーリングプレートに被水防止部材を設置する場合には、スプリンクラーヘッドからの散水の勢いで被水防止部材が外れるおそれがある。
【0009】
また、一つのシーリングプレートに対して被水防止部材を複数設置するケースがあり、その場合に、被水防止部材の位置調整・着脱を容易に行いたいとの要望もある。
【0010】
そこで本発明では、上記問題に鑑み、スプリンクラーヘッドに用いられる被水防止装置において、スプリンクラーヘッドからの散水の勢いで被水防止部材が外れることが無く、且つ被水防止部材の位置調整・着脱を容易にすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明は以下のスプリンクラーヘッドの被水防止装置を提供する。すなわち、天井面に設けられた開口から室内側に先端が露出して設置されたスプリンクラーヘッドに用いられる被水防止装置であり、前記開口を覆うシーリングプレートは、前記天井面に接する皿部の中心側に前記スプリンクラーヘッドが挿通される穴を有しており、前記穴の縁に被水防止部材が設置される差込み穴が所定間隔で複数設置されており、前記差し込み穴は前記開口の内側に配置され、前記被水防止部材は一端が前記差込み穴に挿通され前記シーリングプレートと係合する爪を備える係止部であり、他端には前記スプリンクラーヘッドから散布される水を下方へ向ける遮水部が設置されていることを特徴とするスプリンクラーヘッドの被水防止装置である。
【0012】
これによれば、被水防止部材をシーリングプレートの皿部の中心側に設置して、スプリンクラーヘッドに沿わせて配置させたことで、被水防止部材を目立たなくすることで意匠性が向上する。また、スプリンクラーヘッドが挿通される穴の縁に差込み穴を複数形成したことで被水防止部材を着脱可能に設置できるとともに任意の位置に設置可能となる。
【0013】
上記構成の被水防止装置において、差込み穴を天井面の開口の内側に設置したことで、差込み穴の長さと被水防止部材の係止部の長さを天井裏方向に伸長して構成できる。差込み穴の長さが短い場合、遮水部はスプリンクラーヘッドからの流水を受けた際に、水の勢いによって天井面と略平行な方向に力を受けて、係止部が差込み穴から抜け出てしまうおそれがある。これに対して差込み穴の長さ(深さ)と係止部の長さを増やすと、差込み穴の内面と係止部の表面との接触面積が増える。接触面積が増加する程、差込み穴の内面と係止部の表面との摩擦抵抗が増えることから差込み穴から係止部が抜けないように構成できる。摩擦抵抗を増やすために係止部の表面に凸部を付けて構成してもよい。
【0014】
また、皿部について中心側を室内側へ突出させて周縁に向かうに従い天井面に近づく傾斜を備えるように構成すると、差込み穴の長さと被水防止部材の係止部の長さを室内側にも伸長することができる。
【0015】
また、係合部は前記差込み穴を通過して皿部の裏面と係合する爪を有して構成でき、さらに該爪を前記スプリンクラーヘッドに対向して係合されるように構成できる。爪を設置したことで、スプリンクラーヘッドが作動して散水が開始された際に、水流の勢いによって被水防止部材が皿部から外れることを防止できる。さらに、爪を前記スプリンクラーヘッドに対向して係合させると、遮水部がスプリンクラーヘッドからの水流を受けた際に、爪が皿部の裏面に食い込むように作用させることができる。
【0016】
また、差込み穴の形状を皿部の穴の縁に沿った円弧状または短冊状とし、これに対応して係合部の断面形状を差込み穴の形状と同じにした。これによって係合部の側面と差込み穴の内面が当接してスプリンクラーヘッドからの水流の力に耐える強度を確保できる。
【0017】
さらに、遮水部と係止部の間に皿部の表面に沿って配置される支持部を設置して構成可能である。支持部によって、被水防止部材がスプリンクラーヘッドからの水流を受けた際に、差込み穴から係止部が外れるのを防止するとともに被水防止部材の変形・破損を防止することができる。
【0018】
また、1つの被水防止部材には複数の係合部が設置されている。これに対して1つの係合部は1つの差込み穴に設置される。これにより被水防止部材の位置調整が容易になる。あるいは1つの差込み穴に対して複数の係合部を挿通するように構成してもよい。
【発明の効果】
【0019】
以上、説明したように本発明によれば、スプリンクラーヘッドからの散水の勢いで被水防止部材が外れることが無く、且つ被水防止部材の位置調整・着脱が容易に可能な被水防止装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】給水配管と接続されたスプリンクラーヘッドに本発明の被水防止装置を装着した状態の断面図。
【
図3】
図2のX-X線におけるシーリングプレートの断面図。
【
図4】(a)は被水防止部材の正面図であり、(b)は被水防止部材の側面図。
【
図5】
図2において被水防止部材を複数設置した状態。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の被水防止装置について
図1~
図6を参照して説明する。本発明の被水防止装置Hは、スプリンクラーヘッドSに装着されるシーリングプレート10と、被水防止部材20から構成される。
【0022】
図1及び
図2には、天井面Cから露出して設置されたスプリンクラーヘッドSが図示されている。スプリンクラーヘッドSは本体1が天井裏の給水配管Pと接続されており、感熱分解部2が天井面Cから室内側に突出して配置されている。天井面CにはスプリンクラーヘッドSを室内側に露出するための開口3が穿設されている。この開口3を塞ぐためにシーリングプレート10が設置される。
【0023】
シーリングプレート10は樹脂から形成され、筒部11と皿部12により構成される。皿部12には中心にスプリンクラーヘッドSを挿通するための穴13が形成されている。穴13の縁から天井裏側に向かって筒部11が伸延して設置されている。
【0024】
筒部11の内側には、スプリンクラーヘッドSの外周面に形成された溝4と係合する複数の突起14が設置されている。溝4は螺旋状に形成されており、シーリングプレート10を中心軸まわりに回動させると溝4に沿ってシーリングプレート10が上下方向に移動する。
【0025】
筒部11において隣り合う突起14、14の間には欠如部15が形成されている。これにより筒部11は樹脂の弾性による変形が容易となる。シーリングプレート10をスプリンクラーヘッドSに取付ける際に、スプリンクラーヘッドSの感熱分解部2側から筒部11を挿通させると、筒部11は弾性変形して突起14が溝4を乗り越える。皿部12の縁が天井面Cに近づいたら、シーリングプレート10を回転させて突起14を溝4に沿わせて移動して皿部12の縁を天井面Cに接触させる。
【0026】
皿部12には被水防止部材20を取付けるための差込み穴16が設置されている。差込み穴16は穴13の縁に沿って均等間隔で配置される。差込み穴16の数は8~24個程度設置が可能であり、
図2においては16箇所の差込み穴16があり、差込み穴16の角度間隔は22.5度で配置されている。尚、全ての差込み穴16は穴13と同芯である二点鎖線で示す仮想円上に配置されている。
【0027】
皿部12は穴13付近が室内側に突出しており、縁に向かうに従い天井面に近づく傾斜が付されている。このような構成としたことで、差込み穴16の深さを確保して被水防止部材20と差込み穴16との係合強度を向上させることができる。また差込み穴16は、天井面Cに穿設された開口3の内側に配置されており、
図3に破線で示すように差込み穴16の長さを天井裏側にさらに伸ばすことができる。
【0028】
被水防止部材20は、
図4に示すように一端に係止部21を有しており、他端には遮水部22が形成されている。
【0029】
係止部21の断面形状は、差込み穴16の形状と略同じであり、その大きさは差込み穴16よりも僅かに小さく構成される。係止部21の端には爪23が設置されている。爪23は先端が楔形状をしており、スプリンクラーヘッドSと対向する側に段部24が設置されている。
【0030】
段部24は皿部12の裏面と係合する。段部24をスプリンクラーヘッドSと対向するように構成したことで、スプリンクラーヘッドSが作動して散水が開始された際に、水流の勢いによって被水防止部材20が皿部12から外れることを防止できる。より具体的にはスプリンクラーヘッドSからの水流は遮水部22に衝突して水流の向きを下方に変られることから、
図1において被水防止部材20は矢印の方向に力を受ける。このとき段部24は皿部12の裏面に食い込むように作用して被水防止部材20が差込み穴16から外れることを防止する。
【0031】
遮水部22は、複数の板25を層状に配置して構成される。遮水部22には筒部11の軸と平行な方向に伸びる柱部26が設置されており、柱部26に複数の板25が所定間隔で設置されている。板25は斜め下方に傾いて設置されており、スプリンクラーヘッドSからの水流を下方へ向ける作用を有する。
【0032】
係止部21と遮水部22の間には支持部27が設置されている。支持部27は皿部12の表面に沿って配置される。支持部27は皿部12に隣接する板25に設置される。図中において支持部27は板25よりも小さく目立たないように構成されている。支持部27はスプリンクラーヘッドSからの水流によって被水防止部材20が差込み穴16から外れるのを防止するとともに、被水防止部材20の変形・破損を防止する作用を有する。
【0033】
ところで、差込み穴16が設置されている円周上において被水防止部材20の位置を少しだけ右に移動したい場合、シーリングプレート10を右に回転させて位置を調整できるが、
図5に示すように複数の被水防止部材20A、20Bが設置される場合はシーリングプレート10を回転させると全ての被水防止部材20A、20Bが移動してしまう。本発明では、移動させたい被水防止部材20Bを右隣りの差込み穴16に差し込むことで位置の変更が容易に行える。
【0034】
具体的に説明すると、
図5のシーリングプレート10では、差込み穴16は均等間隔で16個設置されており、隣り合う2つの差込み穴16a、16bに対して1つの被水防止部材20Bが設置される。被水防止部材20Bの位置を少し右に移動したい場合、係止部21を差込み穴16a、16bから取外して、差込み穴16b、16cに取付ける。このとき差込み穴16が配置されている円周(
図2に示す二点鎖線の円)上において、被水防止部材20Bの幅W1は差込み穴16の幅W2に対して約2倍であることから、前記円周上において被水防止部材20の幅寸法W1に対して約半分の距離だけ右に移動するので微量な位置調整が可能となる。
【0035】
差込み穴16の変形例として、2つの差込み穴16を連結して差込み穴の数を半分にして構成したものを
図6に示す。シーリングプレート10Aの差込み穴16Aには、1つの被水防止部材20に設置された2つの係止部21が挿通可能である。また、被水防止部材20の2つの係止部21、21の間の隙間21aに2つの差込み穴16Aの間の仕切り17を嵌め込むように係止部21を差込み穴16Aに挿通すると、隣接する2つの差込み穴16A、16Aの間の位置に被水防止部材20を取付けることができる。
【符号の説明】
【0036】
C 天井面
H 被水防止装置
S スプリンクラーヘッド
1 本体
2 感熱分解部
3 開口
4 溝
10 シーリングプレート
11 筒部
12 皿部
13 穴
16 差込み穴
17 仕切り
20 被水防止部材
21 係止部
22 遮水部
23 爪
24 段部
25 板
26 柱部
27 支持部