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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-27
(45)【発行日】2023-01-11
(54)【発明の名称】被試験体支持装置および試験機
(51)【国際特許分類】
   G01M 1/02 20060101AFI20221228BHJP
【FI】
G01M1/02
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019051623
(22)【出願日】2019-03-19
(65)【公開番号】P2020153773
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000150729
【氏名又は名称】株式会社長浜製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西脇 清
(72)【発明者】
【氏名】北之防 俊文
【審査官】岩永 寛道
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-039376(JP,A)
【文献】特開平6-281525(JP,A)
【文献】特開2013-036952(JP,A)
【文献】特開平10-073518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 1/00- 1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連結軸と、前記連結軸を取り囲むテーパー状の内周面を有して拡縮可能であり、前記連結軸の軸線方向に相対移動不能に前記連結軸に連結され、被試験体の基準穴に嵌め込まれるコレットとを有し、前記コレットのサイズに応じて複数種類存在する交換セットと、
試験機において縦軸まわりに回転駆動されるスピンドルに固定され、前記交換セットが着脱されるベースユニットとを含み、
前記ベースユニットは、
被試験体が載せられるテーブルと、
前記軸線方向が縦になった状態の前記コレットの前記内周面と前記連結軸との間に差し込まれ、前記内周面に沿って上側へ向けて小径になるテーパー状の外周面を有する上筒と、
前記連結軸において前記上筒から下側へはみ出した部分を取り囲む下筒と、
前記上筒に対して前記下筒を昇降させる昇降部とを有し、
前記下筒の下降に応じて前記下筒と前記連結軸とを連結し、前記下筒の上昇に応じて前記下筒と前記連結軸との連結を解除する連結解除機構をさらに含む、被試験体支持装置。
【請求項2】
前記連結解除機構は、
前記下筒を径方向に貫通した貫通穴と、
前記径方向に移動可能となるように前記貫通穴に嵌め込まれた移動体と、
前記連結軸の外周面に設けられた凹部と、
上内周面と、前記上内周面よりも下側に配置されて前記上内周面よりも小径の下内周面と、前記上内周面と前記下内周面とをつないで下側へ向けて小径になるテーパー面とを有して前記下筒を取り囲むスリーブとを有し、
前記スリーブは、前記下筒の下降に応じて前記移動体を前記テーパー面によって前記径方向の内側へ移動させて前記凹部に嵌め込み、前記下筒の上昇に応じて前記移動体を前記テーパー面によって前記径方向の外側へ移動させて前記凹部から離脱させる、請求項1に記載の被試験体支持装置。
【請求項3】
縦軸まわりに回転駆動されるスピンドルと、
前記スピンドルに固定される請求項1または2に記載の被試験体支持装置と含む、試験機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被試験体支持装置、および、これを含む試験機に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1の動釣合い試験機では、係脱機構を有するコレットチャックが、主軸のテーパー部に挿入された状態で、供試体のハブ部にセットされる。ドローバーが、係合位置にある係脱機構に係合した状態で、コレットチャックをテーパー部に対して相対移動させると、コレットチャックが拡径して供試体を把持する。動釣合い試験機とは別に存在するロボットアームが係脱機構を解放位置に移動させると、係脱機構がドローバーに係合しなくなるので、供試体の種類変更に伴う段取り替えとして、コレットチャックを交換のために主軸に対して着脱することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-39376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の動釣合い試験機では、段取り替えの度に、ロボットアームといった外部装置を作動させてコレットチャックの係脱機構とドローバーとを係脱させる必要がある。そのため、段取り替えでは、外部装置の作動に起因したタイムロスが発生する。
【0005】
この発明は、かかる課題を解決するためになされたもので、段取り替えにおけるタイムロスの低減を図れる被試験体支持装置、および、これを含む試験機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、連結軸(22)と、前記連結軸を取り囲むテーパー状の内周面(21C)を有して拡縮可能であり、前記連結軸の軸線方向(K)に相対移動不能に前記連結軸に連結され、被試験体(4)の基準穴(4A)に嵌め込まれるコレット(21)とを有し、前記コレットのサイズに応じて複数種類存在する交換セット(20)と、試験機(1)において縦軸(J)まわりに回転駆動されるスピンドル(7)に固定され、前記交換セットが着脱されるベースユニット(30)とを含み、前記ベースユニットが、被試験体が載せられるテーブル(32D)と、前記軸線方向が縦になった状態の前記コレットの前記内周面と前記連結軸との間に差し込まれ、前記内周面に沿って上側へ向けて小径になるテーパー状の外周面(36A)を有する上筒(36)と、前記連結軸において前記上筒から下側へはみ出した部分を取り囲む下筒(35)と、前記上筒に対して前記下筒を昇降させる昇降部(38)とを有し、前記下筒の下降に応じて前記下筒と前記連結軸とを連結し、前記下筒の上昇に応じて前記下筒と前記連結軸との連結を解除する連結解除機構(42)をさらに含む、被試験体支持装置(6)である。なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
【0007】
この構成によれば、被試験体支持装置では、コレットと連結軸との間に上筒が差し込まれると、連結軸において上筒から下側へはみ出した部分が、下筒によって取り囲まれる。この状態で昇降部が下筒を下降させると、連結解除機構によって連結軸(つまり、連結軸およびコレットを有する交換セット)と下筒(つまり、ベースユニット)とが連結される。テーブルに載せられた被試験体の基準穴にコレットが嵌め込まれた状態で、昇降部が下筒をさらに下降させると、コレットが上筒に対して下降することによって拡径して基準穴に圧入されるので、被試験体がコレットによって強力に保持される。逆に、昇降部が下筒を上昇させると、コレットが縮径して基準穴に圧入されなくなり、その後に下筒がさらに上昇すると、連結解除機構によって交換セットとベースユニットとの連結が解除される。このように、外部装置を作動させなくても、交換セットとベースユニットとの連結や、その解除を被試験体支持装置内で達成できる。そのため、交換セットを交換するための段取り替えにおけるタイムロスの低減を図れる。
【0008】
また、本発明は、前記連結解除機構が、前記下筒を径方向(R)に貫通した貫通穴(35C)と、前記径方向に移動可能となるように前記貫通穴に嵌め込まれた移動体(39)と、前記連結軸の外周面に設けられた凹部(22B)と、上内周面(37A)と、前記上内周面よりも下側に配置されて前記上内周面よりも小径の下内周面(37B)と、前記上内周面と前記下内周面とをつないで下側へ向けて小径になるテーパー面(37C)とを有して前記下筒を取り囲むスリーブ(37)とを有し、前記スリーブが、前記下筒の下降に応じて前記移動体を前記テーパー面によって前記径方向の内側へ移動させて前記凹部に嵌め込み、前記下筒の上昇に応じて前記移動体を前記テーパー面によって前記径方向の外側へ移動させて前記凹部から離脱させることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、スリーブによって取り囲まれた下筒が下降すると、下筒の貫通穴に嵌め込まれた移動体が、スリーブのテーパー面に沿って径方向の内側へ移動することによって連結軸の凹部に嵌め込まれるので、移動体を介して下筒と連結軸とが連結される。逆に、下筒が上昇すると、移動体が、スリーブのテーパー面に沿って径方向の外側へ移動することによって連結軸の凹部から離脱するので、下筒と連結軸との連結が解除される。
【0010】
また、本発明は、縦軸(J)まわりに回転駆動されるスピンドル(7)と、前記スピンドルに固定される前記被試験体支持装置(6)と含む、試験機(1)である。この構成によれば、試験装置では、段取り替えにおけるタイムロスの低減を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、この発明の一実施形態に係る試験機の全体図である。
図2図2は、試験機の支持装置に含まれる交換セットの断面図である。
図3図3は、図2の交換セットとは種類が異なる交換セットの断面図である。
図4図4は、交換セットを構成するコレットの平面図である。
図5図5は、図4のA-A矢視断面図である。
図6図6は、支持装置の縦断面図である。
図7図7は、図6のB-B矢視断面図である。
図8図8は、支持装置の縦断面図である。
図9図9は、図8のC-C矢視断面図である。
図10図10は、支持装置の要部の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、この発明の実施形態について詳細に説明する。図1は、この発明の一実施形態に係る試験機1の全体図である。試験機1は、ロータやタイヤ付きホイール等の被試験体4のユニフォーミテイ試験や動釣合い試験を行うための装置である。試験機1は、ユニフォーミテイ試験の際に被試験体4に横から接地荷重を与える負荷装置(図示せず)と、被試験体4のユニフォーミテイや動不釣合いを測定する計測装置5とを含む。
【0013】
計測装置5は、横になった状態の被試験体4を支持する被試験体支持装置6(以下では「支持装置6」という)と、上下に延びるスピンドル7とを含む。支持装置6は、スピンドル7の上端部7Aに固定されている。スピンドル7において上端部7Aよりも下側の部分には、プーリ8が固定されている。
【0014】
計測装置5は、マシンベース9に固定された基台10と、基台10の上端部に固定され、スピンドル7を振動可能に保持する保持フレーム11と、マシンベース9に固定された駆動装置12とをさらに含む。駆動装置12は、モータ13を含み、モータ13において駆動装置12から上側へ突出した出力軸14にはプーリ15が固定されていて、プーリ15とスピンドル7のプーリ8とは、ベルト16によって連結されている。モータ13が駆動されて出力軸14が回転すると、出力軸14の回転がベルト16を介してスピンドル7に伝達されるので、スピンドル7が、その中心を通る縦軸Jまわりに回転駆動される。これにより、支持装置6によってスピンドル7に固定された被試験体4は、支持装置6およびスピンドル7と一体となって、所定の回転速度で回転する。
【0015】
動釣合い試験を行う場合には、被試験体4が、モータ13によって所定速度で駆動回転される。この状態における被試験体4の振動が計測装置5に検出されることによって、動釣合い試験が実施される。
【0016】
次に、支持装置6について詳しく説明する。図2は、支持装置6に含まれる交換セット20の断面図である。交換セット20は、被試験体4の種類変更に伴う試験機1での段取り替えの際に交換される部品であって、コレット21と連結軸22と把持部23とを有する。なお、図2以降の各図では、説明の便宜上、連結軸22を断面で図示していない。
【0017】
コレット21は、円筒状であり、その軸線Hが延びる方向(以下では「軸線方向K」という)が縦になった状態で支持装置6において使用される。コレット21は、上部分21Aと、上部分21Aよりも下側に配置された下部分21Bとを一体的に有する。コレット21の外周面は、上部分21Aと下部分21Bとの間の領域や、上部分21Aよりも上側の上端部において一段小径になっている。交換セット20には、対応する被試験体4に応じて複数の種類があり、各種類の交換セット20では、コレット21の上部分21Aの外径サイズが少なくとも異なる(図2および図3を参照)。支持装置6から外された交換セット20は、試験機1の近くの保管場所で保管される。コレット21の内部空間は、上部分21Aおよび下部分21Bを貫通していて、下側へ向けて広くなっている。そのため、コレット21の内部空間を区画する内周面21Cは、上側へ向けて小径になるテーパー状である。内周面21Cの上端部には、軸線Hまわりの周方向Pに延びる環状溝21Dが形成されている。
【0018】
連結軸22は、円柱状であり、コレット21の内周面21Cによって取り囲まれた状態でコレット21と同軸状に配置されている。連結軸22の上端部には、その径方向の外側へ張り出したフランジ部22Aが設けられており、連結軸22の下半分は、コレット21の内部空間から下側へはみ出している。フランジ部22Aは、コレット21の内周面21Cの環状溝21Dに嵌っている。これにより、コレット21と連結軸22とは、軸線方向Kに相対移動不能に連結されている。連結軸22は、コレット21に対して周方向Pに相対移動可能であってもよいし、相対移動不能であってもよい。連結軸22の下半分の外周面の下端部には、周方向Pに延びる環状の凹部22Bが設けられている。連結軸22には、その下端から下側へ突出するストッパー22Cが設けられている。ストッパー22Cの一例は、連結軸22に対して下から組み付けられたボルトである。
【0019】
把持部23は、連結軸22の上端に連結されてコレット21の内部空間を上側から塞ぐ下円盤部23Aと、下円盤部23Aの中央から上側へ突出する軸部23Bと、軸部23Bの上端に連結された上円盤部23Cとを有する。
【0020】
図4は、コレット21の平面図である。図5は、図4のA-A矢視断面図である。コレット21には、軸線方向Kに沿って上下に延びる複数の割溝21Eが形成されている。割溝21Eは、スリットであり、この実施形態では12本存在する。12本のうち、6本の割溝21Eは、コレット21の周方向Pに等間隔で並んでいて、コレット21の上端から下端の手前まで延びてコレット21を径方向に切断した上割溝21EAである。残りの6本の割溝21Eは、周方向Pに等間隔で並んでいて、コレット21の下端から上端の手前まで延びてコレット21を径方向に切断した下割溝21EBである。上割溝21EAと下割溝21EBとは、周方向Pにおいて交互に並んでいる。各割溝21Eが狭まることによって、コレット21全体が縮径し、各割溝21Eが広がることによって、コレット21全体が拡径する。
【0021】
図6は、支持装置6の全体の縦断面図である。支持装置6を構成する複数の部品のうち、図6以降の各図において黒く塗り潰して図示されたシール部材以外の部品は、全て金属製である。また、図6以降の各図では、連結軸22に加えて、後述するボルトや、移動体39等も断面で図示していない。支持装置6は、前述した交換セット20と、スピンドル7の上端部7Aに固定されて交換セット20が着脱されるベースユニット30とを含む。ベースユニット30は、その筐体をなす下ハウジング31および上ハウジング32と、下ハウジング31内に収容された下ピストン33および上ピストン34と、上ピストン34に固定された下筒35と、上ハウジング32内に収容された上筒36およびスリーブ37とを含む。
【0022】
下ハウジング31は、ボルトB1によってスピンドル7の上端部7Aに上から固定された円板状の底壁31Aと、ボルトB2によって底壁31Aに上から固定された円筒状の周壁31Bと、ボルトB3によって周壁31Bに上から固定された円環状の天壁31Cとを含む。下ハウジング31は、スピンドル7に固定されることによって、上下方向の位置が固定されている。下ハウジング31は、周壁31Bの上下方向における途中に一体的に設けられた円板状の仕切壁31Dをさらに含む。底壁31A、周壁31B、天壁31Cおよび仕切壁31Dは、スピンドル7の縦軸Jと同軸状に配置されている。下ハウジング31の内部空間は、底壁31Aと仕切壁31Dとの間の下空間S1と、天壁31Cと仕切壁31Dとの間の上空間S2とに仕切られている。
【0023】
上ハウジング32は、ボルトB4によって下ハウジング31の天壁31Cに上から固定された円環状の底壁32Aと、ボルトB5によって底壁32Aに上から固定された円筒状の下周壁32Bと、ボルトB6によって下周壁32Bに上から固定された円筒状の上周壁32Cとを含む。上ハウジング32は、ボルトB7によって上周壁32Cに上から固定された円環状のテーブル32Dをさらに含む。上ハウジング32は、下ハウジング31を介してスピンドル7に固定されることによって、上下方向の位置が固定されている。
【0024】
下ピストン33は、下ハウジング31の周壁31Bの内径とほぼ同じ外径を有する円板状の本体部33Aと、本体部33Aの中央から上側へ突出した円柱状の突出部33Bとを一体的に有する。本体部33Aは、下空間S1に配置されている。下ピストン33は、本体部33Aが仕切壁31Dに下から接触する上限位置(図6参照)と、本体部33Aが底壁31Aに上から接触する下限位置(図示せず)との間で昇降可能である。
【0025】
上ピストン34は、下ハウジング31の周壁31Bの内径とほぼ同じ外径を有する円環状であり、上空間S2に配置されている。上ピストン34は、天壁31Cに下から接触する上限位置(図6参照)と、仕切壁31Dに上から接触する下限位置(図示せず)との間で昇降可能である。上ピストン34の中心穴には、下ピストン33の突出部33Bが下から挿通されている。突出部33Bの上端部は、上ピストン34から上にはみ出している。突出部33Bの途中部に設けられた段部33Cが、上ピストン34に下から係合している。これにより、上ピストン34および下ピストン33は、一体となって、それぞれの上限位置および下限位置へ昇降可能である。
【0026】
下筒35は、ボルトB8によって上ピストン34に上から固定された円環状の基部35Aと、基部35Aの内周部から上に突出した円管状の管部35Bとを一体的に有する。上ピストン34および下ピストン33は、下筒35を昇降させる昇降部38として機能する。管部35Bには、その径方向Rに管部35Bを貫通した複数(例えば6つ)の貫通穴35Cが形成されている。これらの貫通穴35Cは、縦軸Jまわりの周方向に等間隔で並んでいる。各貫通穴35Cは、移動体39が1つずつ嵌め込まれている。移動体39の一例は、ボールである。各移動体39は、貫通穴35Cから外れ不能な状態で、径方向Rに移動可能である。
【0027】
上筒36は、上下に延びる中空の円錐台形状であり、その外周面36Aは、上側へ向けて小径になるテーパー状に形成されている。上筒36は、縦軸Jと同軸状に配置されている。外周面36Aの上部は、上ハウジング32のテーブル32Dよりも上側に突出している。上筒36の下端部は、径方向Rの外側へ張り出したフランジ状に形成され、ボルトB9によって上ハウジング32の下周壁32Bの内周部に上から固定されている。そのため、上筒36の上下方向の位置は、固定されている。
【0028】
スリーブ37は、円筒状に形成され、上ハウジング32の下周壁32Bによって取り囲まれた状態で、下筒35の管部35Bを取り囲んでいる。スリーブ37は、下周壁32Bの内周部の上端部と上ハウジング32の底壁32Aとの間に挟まれることによって、上下方向の位置が固定されている。スリーブ37の内周面は、上内周面37Aと、上内周面37Aよりも下側に配置されて上内周面37Aよりも小径の下内周面37Bと、上内周面37Aと下内周面37Bとをつないで下側へ向けて小径になるテーパー面37Cとを有する。
【0029】
支持装置6は、下ハウジング31の下空間S1に配置された流路部材40を含む。流路部材40は、下ハウジング31の底壁31A上に同軸状で配置されてボルトB10によって底壁31Aに固定された円板状のベース部40Aと、ベース部40Aの中心から上側へ突出して下ピストン33の中心穴に下から挿通された円管状の挿通部40Bとを一体的に含む。支持装置6には、底壁31Aを上下に貫通してからベース部40A内を斜め上側へ延びて下空間S1に下側からつながった第1流路Q1と、底壁31Aを上下に貫通してからベース部40A内を斜め上側へ延びて挿通部40B内および下ピストン33の突出部33B内を順に通ってから下空間S1および上空間S2のそれぞれの上領域につながった第2流路Q2とが設けられている。支持装置6には、下ハウジング31の仕切壁31Dに形成されて上空間S2の下領域を外部に連通させる第3流路Q3も設けられている。
【0030】
第1流路Q1および第2流路Q2に関連して、試験機1のスピンドル7の下端部には、エアホース(図示せず)に接続されたロータリージョイント41が設けられている(図1参照)。ロータリージョイント41は、試験機1に設けられた制御部(図示せず)の制御に応じてエア(圧縮空気)を供給したり、エアの供給を停止したりするエア供給部である。スピンドル7には、ロータリージョイント41から上側に延びて第1流路Q1および第2流路Q2にそれぞれ接続された第1流路7Bおよび第2流路7Cが設けられている。なお、第1流路7Bおよび第2流路7Cの配置は任意に変更でき、これらの流路は、スピンドル7の内に設けられてもよいし、スピンドル7の外に設けられてもよい。
【0031】
図6に示すように待機状態にあるベースユニット30では、エアが第1流路Q1に供給されている一方で、第2流路Q2のエアが排出されている。このとき、下ピストン33は、第1流路Q1から下空間S1に供給されたエアに押し上げられることによって上限位置にあり、上ピストン34は、下ピストン33の段部33Cに押し上げられることによって上限位置にある。上ピストン34に固定された下筒35の貫通穴35Cに嵌め込まれた各移動体39は、上下方向において、スリーブ37の上内周面37Aとテーパー面37Cとの境界付近にあって、下筒35の管部35Bの内周面よりも径方向Rの外側にある。
【0032】
次に、ベースユニット30に対する交換セット20の着脱について説明する。装着手順として、まず、交換セット20は、作業者による手動またはロボット(図示せず)による自動によって、把持部23の上円盤部23Cが把持された状態でベースユニット30の上方の待機位置まで搬送されてから下降し、図6に示すように、待機状態のベースユニット30に仮セットされる。その際、連結軸22のストッパー22Cが下ピストン33の突出部33Bの上端に接触することによって、交換セット20の下降が停止する。
【0033】
仮セットされた交換セット20は、スピンドル7の縦軸Jと同軸状に配置される。具体的には、交換セット20では、上筒36が、交換セット20において軸線方向Kが縦になった状態のコレット21の内周面21Cと連結軸22との間に下から差し込まれ、上筒36の外周面36Aは、コレット21の内周面21Cに沿う。コレット21は、上部分21Aの少なくとも上端部がテーブル32Dよりも上側に配置されるように、テーブル32Dによって取り囲まれている。コレット21の下部分21Bは、上周壁32Cによって取り囲まれている。連結軸22では、上筒36内に挿通された略上半分よりも下側の部分が、上筒36から下側へはみ出して下筒35によって取り囲まれている。連結軸22の凹部22Bは、下筒35の貫通穴35C内の各移動体39よりも少し下側にずれている。このときの各移動体39は、凹部22Bに嵌まり込んでいない(図6のB-B矢視断面図である図7も参照)。
【0034】
次に、第1流路Q1へのエアの供給が停止される一方で、エアが第2流路Q2に供給される。すると、下空間S1において下ピストン33よりの下側の領域に存在するエアが、第1流路Q1を通って排出され、上空間S2において上ピストン34よりの下側の領域に存在するエアが、第3流路Q3を通って排出される。これと同時に、下ピストン33および上ピストン34は、第2流路Q2から下空間S1および上空間S2の各上側領域に供給されたエアによって押し下げられる。すると、図8に示すように、上ピストン34に固定された下筒35が、交換セット20の連結軸22と上筒36とスリーブ37とに対して下降する。これにより、下筒35の貫通穴35C内の各移動体39は、スリーブ37のテーパー面37Cによって、径方向Rの内側へ移動させられる。また、下筒35の貫通穴35Cは、上下方向において連結軸22の凹部22Bに一致する。すると、各移動体39が凹部22Bに嵌め込まれて凹部22Bの下側隅部22Dに引っ掛かるので、連結軸22(つまり交換セット20の全体)と下筒35とが、各移動体39を介して連結され、一体的に下降可能になる(図8のC-C矢視断面図である図9も参照)。
【0035】
以上により、ベースユニット30への交換セット20の装着が完了する。このときの下ピストン33および上ピストン34は、図8で示す位置よりも若干高い位置にある。なお、下ピストン33の突出部33Bの上端は、凹部22Bにおける移動体39の遊びの分だけ、連結軸22のストッパー22Cから下側に離れている。
【0036】
試験機1で試験が実施される場合には、被試験体4の中央の基準穴4Aに、コレット21の上部分21Aが嵌め込まれる。被試験体4における基準穴4Aの周辺部は、テーブル32Dに載せられる。この状態で、エアが第2流路Q2に供給され、下ピストン33および上ピストン34は、第2流路Q2から供給されたエアによって押し下げられる。その際、上ピストン34に固定された下筒35が、交換セット20を伴ってさらに下降する。そのため、交換セット20のコレット21が、上筒36の外周面36Aに対して下側へ相対移動する。これにより、各割溝21Eが広がることによってコレット21が拡径し、コレット21の上部分21Aが基準穴4Aに圧入される。上ピストン34および下ピストン33の両方の下降がコレット21の拡径に作用するので、被試験体4が強力にチャックされる。図8は、上ピストン34および下ピストン33の下降が停止して被試験体4がチャックされている状態を示す。この状態において、例えば動釣合い試験が実施されると、スピンドル7が回転して、そのときの被試験体4の振動が検出される。
【0037】
試験後には、第2流路Q2へのエアの供給が停止される一方で、エアが第1流路Q1に供給される。すると、下ピストン33および上ピストン34が、交換セット20を伴って上昇する。これにより、コレット21が上筒36の外周面36Aに対して上昇しながら縮径して基準穴4Aに圧入されなくなるので、被試験体4がアンチャックされる。その際、連結軸22のストッパー22Cが下ピストン33の突出部33Bに押し上げられることによって、コレット21が上筒36の外周面36Aから強制的に分離される。
【0038】
アンチャックされた被試験体4は、取り外しが可能になる。この状態で、さらにエアが第1流路Q1に供給され、下ピストン33および上ピストン34は、第1流路Q1から供給されたエアによって、それぞれの上限位置まで押し上げられる。その際、図6に示すように、上ピストン34とともに上筒36に対して上昇する下筒35の貫通穴35C内の各移動体39は、スリーブ37のテーパー面37Cによって、径方向Rの外側へ移動させられる。これにより、各移動体39が連結軸22の凹部22Bから離脱するので、連結軸22を有する交換セット20と下筒35との連結が解除される。そのため、フリーになった交換セット20を手動または自動によって上昇させれば、交換セット20がベースユニット30から離脱される。基準穴4Aの大きさが異なる被試験体4を次に試験する場合には、この被試験体4の基準穴4Aに合ったサイズの交換セット20が、前述した手順によって、図10に示すようにベースユニット30に装着される。フリーになった交換セット20が装着されたままの状態で、被試験体4の着脱が行われてもよい。
【0039】
連結軸22の凹部22Bと、下筒35の各貫通穴35Cと、各貫通穴35Cに嵌め込まれて凹部22Bに嵌まり込んだり凹部22Bから外れたりする移動体39と、テーパー面37Cを有するスリーブ37とは、下筒35と連結軸22とを連結したり、その連結を解除したりする連結解除機構42を構成する。支持装置6では、外部装置を作動させなくても、交換セット20とベースユニット30との連結や、その解除を支持装置6内の連結解除機構42によって達成できる。そのため、交換セット20を交換するための段取り替えにおけるタイムロスの低減を図れる。
【0040】
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、請求項に記載の範囲内において種々の変更が可能である。
【0041】
例えば、前述した実施形態では、試験機1は、ユニフォーミテイ試験および動釣合い試験の両方を行う複合試験装置であるが、ユニフォーミテイ試験および動釣合い試験の少なくとも一方を行えればよい。
【0042】
下筒35を昇降させる昇降部38は、前述したようにエアを用いた構成に限らず、例えばモータの駆動力を用いた構成であってもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 試験機
4 被試験体
4A 基準穴
6 被試験体支持装置
7 スピンドル
20 交換セット
21 コレット
21C 内周面
22 連結軸
22B 凹部
30 ベースユニット
32D テーブル
35 下筒
35C 貫通穴
36 上筒
36A 外周面
37 スリーブ
37A 上内周面
37B 下内周面
37C テーパー面
38 昇降部
39 移動体
42 連結解除機構
J 縦軸
K 軸線方向
R 径方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10