(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-27
(45)【発行日】2023-01-11
(54)【発明の名称】部品挿入口を塞ぐ保護装置と引抜装置
(51)【国際特許分類】
G06F 1/18 20060101AFI20221228BHJP
H01R 13/52 20060101ALI20221228BHJP
【FI】
G06F1/18 E
H01R13/52 B
(21)【出願番号】P 2019155089
(22)【出願日】2019-08-27
【審査請求日】2021-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】511190281
【氏名又は名称】テクノベインズ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高久 直也
【審査官】豊田 真弓
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-161294(JP,A)
【文献】登録実用新案第3135047(JP,U)
【文献】特開2019-121585(JP,A)
【文献】特開2010-027379(JP,A)
【文献】登録実用新案第3137476(JP,U)
【文献】特開2017-228015(JP,A)
【文献】特表2014-524134(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0249484(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0036266(US,A1)
【文献】特開2007-66678(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0340812(US,A1)
【文献】米国特許第6309247(US,B1)
【文献】特開2017-41349(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/18
H01R 13/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入口を持ったコネクタなどの部品に挿入し、コネクタ内部にロックすることでコネクタ挿入口を塞ぐ保護装置
(1)であって、
主装置のコネクタに装着した状態時に、主装置の筐体内部に完全に納まる突出した部分がない保護装置前面(11)と、
前記保護装置前面の裏側よりコネクタ挿入口奥側へと連結されたフレーム(12F、12B、12L、12R)と、
前記フレームの背面(12B)から前記保護装置の内側に向かって片持ち梁の状態で結合し、それぞれが独立して動作可能な複数のブロッキングアーム(14R、14L)と、
前記ブロッキングアーム上にあり、主装置のコネクタに装着した状態時に、コネクタの穴や溝、切欠きなどの引っかかる部分に対応する位置に設けられた複数の独立したストッパ(15R、15L)と、
前記ブロッキングアーム上にあり、前記保護装置前面に設けられた引抜装置挿入口(18)から引抜装置(2)を一番奥まで差し込んだ状態時に、当該引抜装置に係合し、引き抜き可能となるように配置した複数の独立した引抜カプラ(16R、16L)と、
からなることを特徴とする保護装置。
【請求項2】
前記複数の独立したストッパは、
素材の弾性により板バネのような効果をもたらす前記複数の独立したブロッキングアーム上に配置され、
それぞれが垂直方向に圧力がかかると押し込まれ、圧力を取り除くと復帰する動作が可能であり、
前記保護装置を前記コネクタへ挿入することにより、前記複数の独立したストッパの傾斜面側が、USBソケットの周囲金具によって内部方向に押し込まれ、ストッパの先端がUSBソケットの周囲金具を乗り超え、切欠き溝に到達した時点で押し込みから復帰し、コネクタ内部の穴や溝、切欠きなどの引っかかる部分に前記ストッパが係合し、
当該ストッパの係合により、前記保護装置の引き抜き動作をブロックすること、
を特徴とする請求項1に記載の保護装置。
【請求項3】
コネクタ挿入口を塞ぐ保護装置
(1)を取り除くことができる引抜装置(
2)であって、
先端に引抜キャッチ(21R、21L)を有し、
保護装置の引抜装置挿入口から差し込み、ブロッキングアーム(14R、14L)に設けられたアンロッカ(17R、17L)の斜面を通過して、引抜装置先端がアンロッカ斜面の頂点まで到達すると、複数の独立した全てのストッパ(15R、15L)が同時にコネクタの周囲金属板より内側に押し込まれてロックを解除し、
前記保護装置の前記引抜装置挿入口から一番奥まで差し込んだ状態時に、前記引抜キャッチ(21R、21L)が、前記ブロッキングアーム上の複数の独立した全ての引抜カプラ(16R、16L)に結合し、結合した状態で引き抜くと保護装置も連結して引き抜くことができること、
を特徴とする引抜装置。
【請求項4】
請求項1に記載の保護装置と、請求項3に記載の引抜装置と、により構成される構造物であって、
保護装置のフレーム背面(12B)と引抜装置先端に設けられた形状が、互いに対応する場合にのみ、前記引抜装置の引抜キャッチ(21R、21L)は前記保護装置の引抜カプラ(16R、16L)に結合でき、それにより前記保護装置をコネクタから引抜くことができること、
を特徴とする構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、挿入口を持ったコネクタなどの部品を塞ぎ、ロックする保護装置及びアンロックする引抜装置であり、特にUSBスタンダード-A レセプタクルなどのコネクタに好適に利用できるようなものである。
【背景技術】
【0002】
パソコンやパソコン機能を内蔵した機器(主装置)は、USB規格に対応したOSにより動作し、USBインターフェースの搭載が事実上の標準(デファクトスタンダード)となっている。
それら主装置では、USBコネクタにUSB対応の周辺機器を接続し、主装置の操作や記憶装置・周辺機器などの操作を行う。
【0003】
USBについては、全ての規格はUSB-IF(米国非営利団体 USB Implementers Forum, Inc.)により策定され、仕様書として公開されている。(非特許文献3など)
【0004】
主装置のUSBコネクタに、キーボードやマウス、USBメモリといった、汎用のUSB対応装置を接続することで、主装置の操作や記憶情報の出し入れなど、主装置にとって重要な操作を行うことができる。
【0005】
簡単・便利に使用できるUSBの機能であるが、主装置の動作に大きな影響を及ぼす事ができるこのようなコネクタを開放した状態で運用すると、セキュリティ面などで重大な問題を発生しやすい。
また、セキュリティ対策以外でも目的以外での利用の禁止や、コネクタへの異物挿入防止など、コネクタを使用させたくない場合がある。
【0006】
従来の防止方法として、主装置のコネクタの挿入口に蓋をする保護装置がある。
【0007】
主装置のコネクタに差し込み、装置の弾性により留まり、装置表面につまみや突起を持たない形状とすることで、容易に取りはずしにくい構造を持つ保護装置が存在する。(例えば、非特許文献1)
【0008】
差し込まれた主装置のコネクタ内部に固着(ロック)する機能を備える、もしくは固化や粘着する素材を用いることで、恒久的に固着する保護装置が存在する。(例えば、非特許文献2)
【0009】
コネクタ保護装置にロックを解除する構造(アンロック)を組み込むために、小型・精密な複数の部品の組み合わせで作成される場合がある。
保護装置を主装置のコネクタ外まで広げ、その中にアンロック機構を設け、取り外しを可能とすることで主装置のコネクタの再利用が行えるような保護装置が存在する。(例えば、特許文献1、特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】実用新案登録第3135047号
【文献】特開2017-228015号
【非特許文献】
【0011】
【文献】テクノベインズ株式会社 「USB Aタイプコネクタキャップ [つまみなし]」 USBCAPK-B0カタログインターネット<URL: https://www.technoveins.co.jp/y/products/portcap/products/pdf/USBCAPK-B0_G0.pdf > 2013.03発行[online][2019.08.13検索]
【文献】テクノベインズ株式会社 「USB-A用 コネクタ はめ殺し専用キャップ(黒) つまみなし」 USBALCK-B0カタログインターネット<URL: https://www.technoveins.co.jp/y/products/portcap/products/pdf/USBALCK-B0.pdf> 2015.04発行[online][2019.08.13検索]
【文献】USB Implementers Forum, Inc. 「Universal Serial Bus Specification Revision 2.0」(米国)Apr.27.2000発行「Figure 6-7. USB Series "A" Receptacle Interface and Mating Drawing」 P.95
【文献】USB Implementers Forum, Inc. 「USB 3.1 Legacy Cable & Connector Compliance Document Revision 1.1」(米国)Apr.03.2018発行 「USB 3.1 Standard-A Receptacle (Page 2 of 2)」 15項 接地用板バネ(Grounding Springs) P.28
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特にコネクタを使用させたくない事を目的とする場合、「容易に取り外すことができない」構造だけでは保護として不十分で、「能動的なロック」が行える保護装置の構造が必要となる。
また、保護装置の不用意な取り外しを防ぐ為には、一般的な道具などで容易に解除できないロックの構造など、より高い保護機能が必要である。
【0013】
また装置としては、コネクタに恒久的にロックする保護装置ではなく、利用用途の変更や保守作業など設置者の都合により、アンロックが行えて除去できる保護装置である事が都合がよい。
装置の着脱作業について、取り扱いが不慣れな行為者であっても容易で安全に操作でき、装置の装着、除去作業は短時間に行えることが求められる。
【0014】
従来の保護装置では、ロック/アンロック機構を組み込む為に、主装置から突出した部分を持つものがある。
装着した際に主装置から突出した部分ができると、人の往来がある場所では人体への傷害の危険性、携帯型主装置においては、落下による突出部分への衝撃による主装置への損傷の恐れがある。
また、突出した部分からの保護装置の強制除去が行われる可能性がある。
【0015】
アンロック機構を備えた従来の保護装置の構造では、小型・精密な複数の部品を組み合わせて作成するなど、製造の複雑さやコストが上昇する問題もあった。
したがって、データセンターなどの大量に必要とするようなところでは導入コストが高くなる問題で採用しづらい。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明では、以下のような構造の装置により上記課題を解決する。
保護装置1は、ストッパ15による確実なロック(固着)機構を持ち、主装置のコネクタに差し込む事でコネクタ内部にロックしコネクタの使用を防止する。
また、ロックした保護装置1は、アンロックして取り外しを行う引抜装置2を使用してコネクタから外す。
アンロックによりコネクタの再利用が可能である。
簡単に取り外しができない構造を提供することで、より高いセキュリティ効果を提供する。
また、保護装置と引抜装置の機能を分離することで、小型で安全性が高く、安価な装置として提供できる。
これら構造により、着脱作業は習熟を伴わず、簡単・安全・短時間に操作ができる装置となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の保護装置1を主装置の既存コネクタに差し込むことで、装置自身の構造によりコネクタ内部にロックし蓋となる。
これにより、既存のコネクタは使用できなくなり、接続や異物の挿入を防止する。
保護装置1の利用に際し、既存の主装置側への加工や補助器具などは必要としない。
また、保護装置1を主装置のコネクタに装着した状態は、主装置の筐体内部に完全に納まるため、突出した部分がある場合に引き起こされる障害は発生しない。
【0018】
本発明の着脱方法については、装着操作は保護装置1を差し込むだけ、保護装置1の除去は引抜装置2を差込み、そのまま引き抜くだけ、と簡便な操作方法である。
だれでも短時間で装着や除去の作業ができる。
【0019】
本発明では、ロック/アンロック機能を保護装置1と引抜装置2とに分離しており、引抜装置2を持つ者のみが、アンロックを行うことができる。
細いドライバなど一般的な工具を使用した不正なアンロック操作でも、複数のブロッキングアーム14を同時に押し込む事は困難であり、ロックは解除できない。
引抜装置を分離した構造は、不正な操作に対して、より安全性を高める効果があるほか、より簡素で小型となり、多くの個数が必要とされる保護装置1の製造コストを下げる利点を持つ。
【0020】
主装置のコネクタの電気的接点は、保護装置1の絶縁性が高い樹脂材料で覆われるため、通電された状態の主装置に対してでも安全に挿抜作業ができる。
【0021】
保護装置1はプラスチック樹脂の射出成型機により製造可能な形状であり、成型後の組み立てや追加加工、他の組合せ部品を必要としない構造である。
引抜装置はプレス金型による機械的切断方法や NCレーザーカット方法や射出成型などにより大量生産が可能な形状である。
【0022】
本発明の保護装置1、引抜装置2のいずれも、簡素な形状で、また他の部品を伴わない構造であるが為に、壊れにくく、丈夫であるというメリットがある。
また、装置の形状に組合せの構造を設けることで、鍵のように形状の組合せが合致した場合のみ取り外すことができるができ、セキュリティ効果を高めることができる。
金型にて製造するのに適した形状を持ち、金型による生産方法を用いることで、均一な品質が得られ、大量生産によるコスト低減が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本書類は、発明をUSB-Aソケットに対して適用した保護装置についての図面及び説明である。 本発明の利用において、装置を使用する方向は問わないが、説明の便宜上として
図1の利用形態を基準方向とし、前後左右上下を一部の図面に付して説明する。 図面において、方向矢印と方向に対する英1文字を記して、以下のように表示する。 F:Front 前面(主装置表面側), B:Back 背面(挿入奥側), L:Left 左側面, R:Right 右側面, U:Up 天面, D:Down 底面 同じ構成の部品が複数ある場合、符号に続く数字の後に、位置や向きを示す英1文字を付して用いる。 単に部品を説明する場合、部品符号の数字のみ記述し、位置や向きが重要となる場合、部品名左、部品名右などに対し、数字L、数字Rのように英1文字を付して表記する。
図1は装置及びそれを利用する装置を示す図である。
図1aは、本発明をUSB-Aソケット用に適用した保護装置を示した説明図である。 左からUSB-Aソケット3に保護装置1を差し込んだ状態、保護装置1を差し込む直前の状態、USB-Aソケット3自体を示している。 USB-Aソケット3の手前にある一部を切り欠かれた板5は、主装置の表面パネル又は筐体(ケース)の一部を表している。
図1bはUSB-Aプラグ4の例を示している。 USB-Aプラグ4は、主装置のUSBソケットに接続されるUSBメモリやUSBケーブルなどの先端部品として使用される。
【
図2】保護装置1の各部詳細を示す正投影図である。(
図2)
図2の各図は、
図2a:正面図、
図2b:背面図、
図2c:平面図、
図2d:底面図、
図2e:左側面図、
図2f:右側面図 を示す。
【
図3】
図3は保護装置1の構造を示すための補助図である。 本発明を説明する為、等角投影図を用い3方向から保護装置を示している。
図3a背面、左側面及び平面を表す図(等角投影図)である。
図3b,
図3cはロック/アンロックの機構を詳細に表示するために、
図3aの保護装置の天地を入れ替え示した図である。
図3b背面、平面及び右側面、
図3c正面、底面及び左側面 を表す図である。 なお、
図3b以降の図は、説明のために底面を上にして描画している。
図3d以降は、保護装置1の内部構造を説明する為に、
図3cを機能的なブロックにて切断分解して表示した図である。
図3dは、切断位置を示す為、保護装置1の内部を左側面から見た図である。
図3eは、A-B位置切断による、ブロッキングアーム14とそれを固定する仮想的なフレーム12を示す為の参考図である。
図3fは、A-B位置切断による、保護装置1をUSB-Aソケットに安定して固定する為の保護装置前面11および側面壁13を示す参考図である。
図3gは、特に重要となるブロッキングアーム14を明示する為、
図3eの参考図からフレーム12の手前の一部を取り除き、ブロッキングアーム14が奥のフレーム12Bに結合する事を示す説明図である。
【
図4】
図4は保護装置1と引抜装置2を示す図である。
図4aは、引抜装置2を示す図である。
図4bは、左から保護装置1、主装置の表面パネル5、USB-Aソケット3を示す図である。
図4a、
図4bのC-C'、D-D'は、
図5における断面位置を示す。 C-C'はストッパ15、D-D'はアンロッカ17と引抜カプラ16の断面を図示する。
図4cは、保護装置1に引抜装置2を差し込む図である。
図4dは、保護装置1に引抜装置2を引き抜き位置まで差し込んだ図である。
【
図5】
図5は保護装置1の差し込みと、引き抜き時の内部を示す図である。 ロック、アンロックの動作を、
図4a、
図4bのC-C',D-D’位置で分割した断面図を用いて動作を説明する。
図5aは引抜装置2、保護装置1、USB-Aソケット3をストッパ15上(
図4 中C-C')で切断した際の断面参考図である。
図5bは、
図5aの保護装置1をUSB-Aソケット3に差し込んでロックした状態の図である。
図5cは、保護装置1とUSB-Aソケット3をアンロッカ17と引抜カプラ16上(
図4 D-D')で切断した断面参考図である。
図5dは、
図5cの保護装置1をUSB-Aソケット3に差し込んだ状態と引抜装置2の図である。
図5eは、
図5dに引抜装置2を、引き抜き可能位置まで差し込んだ図である。
図5fは、
図5eに引き抜き可能位置まで差し込んだ引抜装置2により、保護装置1を連結し途中まで引き抜いた図である。 (引き抜き可能位置については、
図7説明を参照)
【
図6】
図6は引抜装置2の各部詳細を示す正投影図である。
図6a:背面図、
図6b:平面図、
図6c:正面図、
図6d:側面図、
図6e:底面図 を示す。 側面図は左右同じである。
【
図7】
図7は保護装置1と引抜装置2の組合せの構造を示す参考図である。
図7a、
図7b、
図7cはその構造の実例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
最初に保護装置1について説明を行う。
【0025】
世界で販売されている主装置のほぼ全数において、装置のインターフェースとしてUSBがデファクトスタンダードとして採用されている。(
図1a) (出願時点)
【0026】
USB-Aソケット3はコネクタ部品として、主装置の表面を覆うパネルやケース5などの内側に配置される。
USB-Aプラグ4は、USBメモリやUSBケーブルなどの先端部品として、主装置の開口部58を通して、USB-Aソケット3のプラグ挿入口38に差し込むことができる。(
図1b)
主装置のパネルやケース5には、USBプラグ4を差し込むための挿入口として開口部58が設けられている。
保護装置1を装着する場合においても、主装置のパネルやケース5を開く必要は無く、USBプラグ4と同様に、主装置のパネル開口部58を通して差し込み装着できる。
【0027】
USB-Aソケットには、グランド接地用(Grounding Springs)と呼ばれる、コネクタ周囲の鉄板を切り抜いた構造の板バネ31が存在する。(非特許文献4図中)
USB-Aプラグには、この板バネ31の先端を受けるための穴41が存在し、その配置や寸法は仕様書(非特許文献3)にて規定されている。(
図1b)
【0028】
本発明では、主装置のコネクタ内部の穴や溝、切欠きなどの引っかかる部分(USB-Aソケット 板バネ31の切欠き溝)に対し、ストッパ15を押し当てることで、保護装置1への引き抜き動作をブロックし、主装置のコネクタ内部に固着する。(
図5b)
【0029】
特許文献1や特許文献2などの従来装置では、装置の外側から延ばしたフック(かぎ爪など)をUSB-Aソケット 板バネ31の切欠き溝に引っ掛け、引き抜けなくするものであり、本発明とは構造を異にする。
また、従来装置では固定爪となるフックを薄く硬い金属などで精密に作る必要があるが、本発明のストッパ15は、樹脂成型に適した形状である。
【0030】
ブロッキングアーム14は奥に位置するフレーム12Bに片持ち梁の状態で結合して、素材の弾性(たわみ)により板バネのような効果をもたらす。
ブロッキングアーム14上の、ラッチ構造を持つストッパ15と引抜カプラ16は、ドアラッチなどの動作と同じく、ラッチ構造に対し垂直方向に圧力がかかると押し込まれ、圧力を取り除くと復帰する。
【0031】
本発明で用いる
ストッパ15は半正三角形形状であり、
保護装置1が差し込まれる際に傾斜面側から挿入される。(
図3g)
挿入により傾斜面が押されることで、
ストッパは
内部方向(図5aでは上方向)に押し込まれる。
傾斜面の反対側は垂直となっており、
ストッパの頂点が
USBソケットの周囲金具を乗り超え
、切欠き溝に到達した時点で押し込みから復帰し、ストッパとして機能
し、コネクタにロックする。
【0032】
保護装置1は樹脂材料によりすべてが構成される。
金型作成の際には
図3のように、フレーム12、ブロッキングアーム14など、装置を構成するすべての部品を上下両面から挟みこめる(他の部品と立体的に交差しない)形状が適しており、射出成型による製造方法との相性も良い。
必要なすべての構造を1つの形状として構成することで、追加の加工や組み合わせる部品が不要となる。
全工程に金型を用いた製造方法を用いることは、大量生産によるコストの低減を図ることができる。
※保護装置1は一体として製造されることを想定している為に、説明にあるフレーム12などは、個別に分解できる部品としては存在しない。
【0033】
次に引抜装置2について説明する。
【0034】
USB-Aソケット3にロックした保護装置1の引抜装置挿入口18に、引抜装置2を挿入する。(
図4c)
引抜装置2
先端がアンロッカ17の斜面を通過して
斜面の頂点まで到達すると、ブロッキングアーム14は内側に押し込まれた状態となる。(
図4d) (
図5e)
引抜装置2
先端とアンロッカ17が重なる高さは、ストッパ15よりも高いため、ストッパ15はUSB-Aソケット3の周囲金属板より内側に潜りこむ。
これにより、両側のロックが同時に解除され、保護装置1はアンロック状態となる。
【0035】
さらに引抜装置2が引抜カプラ16を乗り越える (引き抜き可能位置) と、引抜装置2の引抜キャッチ21は保護装置1の引抜カプラ16に掛かる。(
図4,
図5,
図7a参照)
引抜装置挿入口18から、引抜装置2を一番奥まで差し込んだ状態が、引き抜き可能位置となるように設計されているため、差し込む深さに調整の必要は無い。
引抜キャッチ21が引抜カプラ16に結合した状態(一番奥まで差し込んだ状態)で引抜装置2を引き抜くと、保護装置1は引抜装置2に連結された状態で引き抜くことができる。(
図5f)
【0036】
引抜装置2は、平板を切断することで必要な機能をすべて実現できる形状で設計されている。
引抜装置2は追加の加工や組み合わせる部品が不要であり、簡素な構造である。
これら大量生産に適した製造方法を用いることで、コスト低減を行うことができる。
本説明では薄板などへの切断加工を想定しているが、装置を引抜く力に対して充分な強度が得られる素材であれば製造可能であり、本発明は素材を限定するものではない。
また、打抜金型によるプレス加工、NCレーザーによる切断加工など切断による製造方法、鋳造成型や射出成型など切断によらない製造などもあり、本発明は製造方法について限定するものではない。
【0037】
本発明で、組合せ機能を組み込んだ装置においては、合致する組合せ形状を持つ保護装置1と引抜装置2を用いた場合のみ、引抜きが行える。
その組合せの機構の構造について、例図により提示する。(
図7)
この組合せ機構は、常に必要とするものではないが、本機構を用いることで、アンロックを行うためには合致する組合せ形状を持つ必要があるため、より高いセキュリティ性能を持つことができる。
【0038】
組合せ機能を組み込んだ装置は、フレーム背面12Bと引抜装置2先端に合致する組合せの形状を持たせた場合のみ、引抜装置2は引抜カプラ16まで達することができ、引抜くことができる。
引抜装置2のEラインが、保護装置1のFライン(引き抜き可能位置)を超えた場合(組合せ状態)に、引抜キャッチ21は引抜カプラ16を捕捉・連結することで引き抜きが可能となる。(
図7a)
合致しない組み合わせ形状同士で使用した場合、引抜装置2は組合せ機構A61もしくは組合せ機構B62により阻害され(組違い状態)、引抜キャッチ21にまで引抜カプラ16が達することはできず、結果として引き抜きができない。
組合せ/組違い構造を用いる場合、Fラインの右位置に組合せの形状を配置する。
組合せ機構A61もしくは組合せ機構B62の形状については、本例のようにさまざまな形状が使用できる。
また、組み合わせ機構の形状は引抜装置2の中心線に対称として設計することで、引抜装置2をいずれの面でも使用できる構造となる。(
図7)
本発明は、組合せ/組違い構造の形状や配置について限定するものではない。
【0039】
保護装置1は樹脂材料を用い、装置全体は単一の樹脂部品として製造される。
本書類の説明図や符号は、説明の為に装置を機能ごとに説明したものであり、個別の部品で構成されているものではなく、個別の部品は存在しない。
【0040】
本発明はUSB-Aソケットに限定するものではなく、同様な構造を持つコネクタ部品などに適用ができる。
また本発明は、同様構造であれば、コネクタに限らない。
本書説明は、本発明を実現するための製造方法の1つを表現したものであり、本発明が素材や製造方法、単一の樹脂部品として製造であることを限定するものではない。
また、本発明は保護や引抜のための装置への、追加の加工や他の部品との組み合わせを否定するものではない。
【符号の説明】
【0041】
符号番号において数字の後に付された英字は、基本的に上記の向きを基準にしたものである。
F:Front 前面(主装置表面側), B:Back 背面(挿入側奥), L:Left 左側面, R:Right 右側面, U:Up 上面, D:Down 底面
1 保護装置
2 引抜装置
3 USB-Aソケット (USBスタンダード-A レセプタクルコネクタ)
4 USB-Aプラグ (USBスタンダード-A プラグコネクタ)
5 主装置の表面パネル、筐体・ケースなど
11 保護装置前面
12 フレーム
12F フレーム前面
12B フレーム背面
12L フレーム左面
12R フレーム右面
13 側面壁
13L 左側面壁
13R 右側面壁
14 ブロッキングアーム
14L 左ブロッキングアーム
14R 右ブロッキングアーム
15 ストッパ
15L 左ストッパ
15R 右ストッパ
16 引抜カプラ
16L 左引抜カプラ
16R 右引抜カプラ
17 アンロッカ
17L 左アンロッカ
17R 右アンロッカ
18 引抜装置挿入口
21 引抜キャッチ
21L 左引抜キャッチ
21R 右引抜キャッチ
31 USB-Aソケット 板バネ(グランド接地用 Grounding Springs)
38 USB-Aソケット プラグ挿入用口
41 USB-Aプラグ 板バネ受け穴
58 パネル開口部
61 組合せ機構A[保護装置側]
62 組合せ機構B[引抜装置側]