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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-27
(45)【発行日】2023-01-11
(54)【発明の名称】清掃具
(51)【国際特許分類】
   A47L 13/11 20060101AFI20221228BHJP
   A01K 13/00 20060101ALI20221228BHJP
   A47L 11/32 20060101ALI20221228BHJP
【FI】
A47L13/11
A01K13/00 E
A47L11/32
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019191958
(22)【出願日】2019-10-21
(65)【公開番号】P2021065363
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2021-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000111638
【氏名又は名称】ドギーマンハヤシ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120341
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 勝弘
【審査官】新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】実公昭30-002067(JP,Y1)
【文献】特開2008-104440(JP,A)
【文献】登録実用新案第037299(JP,Z1)
【文献】特開2001-137045(JP,A)
【文献】実開昭53-023667(JP,U)
【文献】特開2019-24459(JP,A)
【文献】米国特許第8745807(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 11/32,13/11
A01K 13/00
A46B 9/00-9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物表面に付着した繊維状ゴミを捕集して取り除く捕集部と、前記捕集部を保持する清掃具本体と、を有する清掃具であって、
前記捕集部は、前記対象物表面に面する側に、前記対象物表面に面接触可能な捕集面を有しており、
前記清掃具本体には、前記捕集面が対象物表面に対して面接触する姿勢に、前記清掃具本体を保持する柄部が設けられており、
前記捕集面には、前記対象物表面側に向かって突出すると共に前記捕集面上の中心の周囲を周回する凸条部が、前記中心に対して同心状に且つ互いに平行となるように複数本に亘って形成されており、
前記清掃具本体は、前記柄部の長手方向に沿うように長く形成されており、
前記同心の中心は、前記清掃具本体の長手方向に沿って形成された曲線とされている
ことを特徴とする清掃具。
【請求項2】
前記清掃具本体は、前記対象物表面に面する下面に凹んだ凹部を有しており、
前記凹部には、前記捕集部が嵌め込み可能とされている
ことを特徴とする請求項1に記載の清掃具。
【請求項3】
前記同心の中心は、前記清掃具本体の長手方向に対して蛇行するS字の軌跡を描く曲線とされている
請求項1または2に記載の清掃具。
【請求項4】
前記同心の基準となる中心は、前記清掃具本体の長手方向に沿って円弧状に湾曲する曲線とされている
請求項1または2に記載の清掃具。
【請求項5】
前記捕集部がS字状または円弧状に湾曲した長円状の平板として形成されている
ことを特徴とする請求項3または4に記載の清掃具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物表面に付着した繊維状ゴミを捕集して取り除く清掃具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年は、猫や犬などのペットを室内で飼育するケースが増えており、それに伴って室内に落ちたペットの抜毛清掃が必要となっている。特に、室内にカーペットや絨毯などの敷物が敷かれている場合、あるいはキャットタワーのように用具自体に敷物が取り付けてある場合、このような敷物にペットの抜毛は絡みやすい。また、敷物に毛足の長いファーのような繊維が用いられている場合や、敷物に毛先がループ状になったカーペットなどが用いられている場合にも、掃除機などを用いて抜毛を敷物から抜き取って清掃することは非常に困難となる。それゆえ、主にペットの抜毛に代表される繊維状ゴミを清掃できるようにした清掃具が種々開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、粘着テープをコイル状に巻いて筒状に成形した粘着クリーナーが開示されている。この粘着クリーナーは、基材の第一面に粘着面を有する粘着テープを含んでおり、粘着テープは粘着面を外側に向けて巻回された粘着テープロールを構成している。つまり、特許文献1の粘着クリーナーは、清掃対象である敷物などの上で粘着テープロールを転がすことで、粘着テープの粘着面に抜毛ごと対象物表面を粘着させて、粘着されたテープを敷物から剥がす際に対象物表面から抜毛を粘着面に移し取って除去する構成となっている。
【0004】
また、特許文献2には、高摩擦係数を有する高摩擦材を本体下面に有し、該高摩擦材下面に連続凹凸部を形成したペット用毛取り具が開示されている。つまり、特許文献2のペット用毛取り具は、該高摩擦材下面に形成された連続凹凸部を対象物表面に擦り付けることで、対象物表面に絡みついた抜毛などを連続凹凸部に引っ掛け、対象物表面から抜毛を捕集する構成となっている。
【0005】
さらに、特許文献3には、猫の抜け毛を舞い散らさずに除去するためのブラシであって、ブラシ面をぎざぎざの山切り型にすることを特徴とするエチケットブラシが開示されている。この特許文献3のエチケットブラシも、ぎざぎざの山切り型にされたブラシ面が抜け毛などを引っ掛け、対象物表面から抜け毛などを捕集する構成となっている。
さらにまた、特許文献4には、下方に向いた開口に、軟質樹脂材料からなる板状の第1および第2のブレード部と、を備えた清掃具が開示されている。この第1のブレード部は、第2のブレード部よりも柔軟性が高く、第1のブレード部における基端から先端までの長さは、第2のブレード部における基端から先端までの長さよりも短くされている。そして、第1のブレード部および第2のブレード部それぞれの先端は、第1のブレード部から第2のブレード部に向かう方向に進むにつれて基端から遠ざかるように傾斜している。この特許文献4の清掃具は、敷物に絡んだ繊維状ゴミを第1のブレード部で掻き集め、掻き集めた繊維状ゴミを第1のブレード部と第2のブレード部との間から清掃具の内部に溜め置く構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-83090号公報
【文献】特開2004-313140号公報
【文献】特開2008-104440号公報
【文献】特許第6150549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1の粘着クリーナーは、カーペットや絨毯などのパイル及びループに絡んだ抜毛などの繊維状ゴミを、強い粘着力を備えた粘着テープで抜き取るものであり、繊維状ゴミを粘着面に粘着させて対象物から抜毛を確実に取り除くことができるようになっている。しかし、抜毛が対象物表面に広範囲に亘って広がった場合には、抜毛を捕集するために大量の粘着テープが必要となるし、使用済みの粘着テープが大量のゴミとなって出るという問題も抱えている。つまり、1回の清掃で大量な粘着クリーナーが必要となり、ランニングコストが良いものとは到底言えないし、ロール交換やごみ処理も頻繁となるため清掃の作業効率が良いとも言えない。
【0008】
また、特許文献2のペット用毛取り具や特許文献3のエチケットブラシは、高摩擦材下面に形成された連続凹凸部やぎざぎざの山切り型のブラシ面で繊維状ゴミを捕集するだけの簡単な構造であり、簡単な構造であるため製造コストも安くて済む。加えて、敷物の表面を擦るだけで良いので、操作も簡単である。しかし、これらの清掃具(ペット用毛取り具やブラシ)は、連続凹凸部やブラシ面の形成方向が一方向に揃っているため、形成方向と交差する向きに清掃具を動かす場合には抜毛は効果的に捕集されるが、誤って形成方向と平行となる向きに清掃具を動かしてしまうと、抜毛を十分に捕集できず繊維状ゴミの捕集率が低減してしまうという問題を有している。
【0009】
さらに、特許文献4の清掃具は、複雑な構造であるため、製造コストが高いものとなってしまう可能性がある。また、この清掃具も、ブレード部の向きが決まっているため、ブレード部と交差する向きであれば繊維状ゴミを捕集できるが、清掃具を動かす方向を誤ると繊維状ゴミを漏らさず捕集することはできず、繊維状ゴミの捕集率は低くなってしまう。さらに、特許文献4の清掃具は、ブレード部が一重しか設けられていないので、このブレード部で繊維状ゴミの捕集漏れが起こると、繊維状ゴミが捕集されずに対象物表面に残ってしまう可能性がある。
【0010】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、簡単な構造でありながら、カーペットや絨毯などの対象物表面に付着した抜毛などの繊維状ゴミを、コストを高騰させることなく、確実に捕集して取り除くことができ、どのような方向にスライドさせた場合であっても良好な捕集率を発揮することができる清掃具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の清掃具は以下の技術的手段を講じている。
即ち、本発明の清掃具は、対象物表面に付着した繊維状ゴミを捕集して取り除く捕集部と、前記捕集部を保持する清掃具本体と、を有する清掃具であって、前記捕集部は、前記対象物表面に面する側に、前記対象物表面に面接触可能な捕集面を有しており、前記清掃具本体には、前記捕集面が対象物表面に対して面接触する姿勢に、前記清掃具本体を保持する柄部が設けられており、前記捕集面には、前記対象物表面側に向かって突出すると共に前記捕集面上の中心の周囲を周回する凸条部が、前記中心に対して同心状に且つ互いに平行となるように複数本に亘って形成されており、前記清掃具本体は、前記柄部の長手方向に沿うように長く形成されており、前記同心の中心は、前記清掃具本体の長手方向に沿って形成された曲線とされている。
【0012】
好ましくは、前記清掃具本体は、前記対象物表面に面する下面に凹んだ凹部を有しており、前記凹部には、前記捕集部が嵌め込み可能とされているとよい
【0013】
好ましくは、前記同心の中心は、前記清掃具本体の長手方向に対して蛇行するS字の軌跡を描く曲線とされているとよい。
好ましくは、前記同心の中心は、前記清掃具本体の長手方向に沿って円弧状に湾曲する曲線とされているとよい。
ましくは、前記捕集部がS字状または円弧状に湾曲した長円状の平板として形成されているとよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の清掃具によれば、簡単な構造でありながら、カーペットや絨毯などの対象物表面に付着した抜毛などの繊維状ゴミを、コストを高騰させることなく、確実に捕集して取り除くことができ、どのような方向にスライドさせた場合であっても良好な捕集率を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態の清掃具の使用態様を示した図である。
図2】第1実施形態の清掃具の分解図である。
図3】第1実施形態の清掃具の平面図及び底面図である。
図4】第1実施形態の清掃具の側面図及び断面図である。
図5】第2実施形態の清掃具の平面図及び底面図である。
図6】第3実施形態の清掃具の平面図及び底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1実施形態]
「全体構成」
以下、本発明の清掃具1の第1実施形態を、図面に基づき詳しく説明する。
図1図4は、第1実施形態の清掃具1の使用態様を模式的に示したものである。
図1に示すように、第1実施形態の清掃具1は、対象物表面Rに付着した繊維状ゴミFを捕集して取り除く捕集部2と、捕集部2を保持する清掃具本体3と、を有するものとなっている。この清掃具1は、特にカーペットなどの敷物の対象物表面Rに絡み合っているペットの抜毛などの繊維状ゴミFを捕集して取り除くものであり、対象物表面Rに散らばった繊維状ゴミFを棒状のペレットPに纏めることが可能となっている。つまり、この清掃具1では、捕集部2を対象物表面Rに沿ってスライドさせると、捕集部2が対象物表面Rに散らばった繊維状ゴミFを棒状のペレットPに纏め上げ、纏められたペレットPをつまんで破棄すれば繊維状ゴミFを簡単に破棄することができる。また、清掃具本体3には、捕集部2の下面(捕集面4)が対象物表面Rに対して面接触可能な姿勢に、清掃具本体3を保持する柄部5も設けられている。
【0017】
次に、第1実施形態の清掃具1を構成する清掃具本体3、柄部5、及び捕集部2について説明する。
「方向の定義」
以降の説明において、図3の平面図における上下方向を、清掃具1を説明する際の右左方向という。また、図3の平面図における左右方向を、清掃具1を説明する際の前後方向という。さらに、図4の側面図における上下方向を、清掃具1を説明する際の上下方向という。これらの方向については、適宜図中に記載している。
「清掃具本体」
図2及び図3に示すように、清掃具本体3は、上述した捕集部2を保持する部材であり、本実施形態の場合は角が丸まった細長い板状に形成されている。清掃具本体3は、対象物表面Rに面する下面に、対象物表面Rから離れる方向(上方)に向かって凹んだ凹部6を有しており、この凹部6に捕集部2を嵌め込み可能となっている。
【0018】
具体的には、清掃具本体3は、上方または下方から見た場合に、前後方向に沿って細長い長円状の平板を、長手方向に対して左右に蛇行するようにS字状(波ダッシュ字状)に曲げたような形状に形成されている。本実施形態の場合、清掃具本体3の外形形状は、ペットのシルエットを模した形状としてあり、また使用者Uに近い側の清掃具本体3の端部には、使用者Uが握るための柄部5が設けられている。
【0019】
また、清掃具本体3は、ABSやPETなどといった合成樹脂で形成されている。具体的には、図例の清掃具本体3は、上方から見た場合に前端側が右側に向かって湾曲し、後端側が左側に向かって湾曲しており、長手方向に対して蛇行するように湾曲した形状とされている。
さらに、清掃具本体3の下面中央には、上方に向かって凹んだ凹部6が形成されている。この凹部6は、上述した捕集部2より寸法が大きくて相似な外形形状(S字の平板形状)に形成されている。また、この凹部6は、捕集部2の外縁から開口縁までの間隔が周方向のいずれの箇所でも等しくなるように下面中央に形成されている。なお、本実施形態の場合であれば清掃具本体3の外寸に対して凹部6の開口幅は5%程度小さくなるように形成されている。
「柄部」
清掃具本体3の長手方向の一端側(後端側)には、上述した柄部5が設けられている。この柄部5は、清掃具本体3に対して着脱自在に連結されていても良いし、清掃具本体3に対して一体物として分離不可なように形成されていても良い。
【0020】
本実施形態では、一体物として分離不可な清掃具1を例に挙げて、本発明の清掃具1を
説明する。
柄部5は、清掃具本体3の捕集部2の捕集面4(下面)を対象物表面Rに押し当てることを可能とする部材であり、使用者Uが握りやすいように長尺棒状に形成されている。具体的には、柄部5の長手方向の中途側は上下方向に湾曲しており、使用者Uが把持する後端側に対して捕集部2が設けられた前端側の方が下方に位置するように曲がった形状とされている。
【0021】
また、柄部5の長手方向の中途側は、前端や後端に比べて左右方向に狭幅に形成されており、くびれた形状とされている。そして、柄部5の長手方向の後端は、使用者Uが把持しやすいように角が丸まった棒状に形成されている。
さらに、柄部5の長手方向の前端は、捕集部2との接触面積を大きく取れるように、前方に向かうにつれて広がるような形状とされており、後端や中途側よりも広幅に形成されている。なお、本実施形態の柄部5は、柄部5の前端が清掃具本体3の長手方向の後端に一体物として一体化(連結)させられており、柄部5が清掃具本体3に分離できない状態とされている。
【0022】
しかし、本発明の柄部5は、柄部5と清掃具本体3とを別部材として形成した上で、清掃具本体3に対して柄部5を着脱自在としたものであっても良い。また、清掃具本体3の前端と後端とに差し込み口を設けておき、柄部5を前端と後端とのいずれかに選択的に取付可能としても良い。このように柄部5を清掃具本体3に着脱自在に連結すれば、清掃の際に柄部5が邪魔になるときは柄部5を外すことができ、清掃具1の利便性を向上させることが可能となる。また、清掃具本体3の前端と後端とに柄部5を選択的に取付可能とすれば、清掃箇所の形状や使用者Uの利き手に合わせて柄部5の取り付け位置を任意に変更でき、清掃具1の利便性をさらに向上させることが可能となる。
【0023】
また、本実施形態の柄部5の後端には、柄部5を上下方向に貫通する柄部挿通孔8が形成されている。この柄部挿通孔8に紐を括り付けたり、柄部挿通孔8に直接フックを刺し通したりすれば、清掃具1を吊り下げ状態で保管でき、清掃具1の使い勝手を向上させることができる。
「捕集部」
捕集部2は、下面に形成された捕集面4を対象物表面R(敷物の表面)に擦り合わせることで対象物表面Rに付着した繊維状ゴミFを捕集する機能を備えており、本実施形態では上述した清掃具本体3の凹部6に下方から嵌め込まれた状態とされている。
【0024】
捕集部2は、上述した清掃具本体3よりも高弾性な熱可塑性の弾性素材(TPR(Thermoplastic Rubber))で形成されている。このような弾性素材としては、SBR、NBR、BR、NRなどのゴム、シリコンゴム、EPDM、さらにはポリオレフィン成分と粘着付与樹脂とを架橋等することで弾性特性を付与した一般にエラストマーなどの名称で呼称される樹脂などを用いる。このような熱可塑性の弾性材料を捕集部2に用いれば、捕集面4の弾性材料が繊維状ゴミFを強く捕集して対象物表面Rから引き離すため、繊維状ゴミFを確実に捕集することができる。また、このような弾性材料は、捕集面4を対象物表面Rに擦り合わせても激しい摩耗を起こすことがないため、長期間に亘って繊維状ゴミFを安定して捕集することが可能となる。
【0025】
上述した捕集部2を清掃具本体3の凹部6に嵌め込まれた状態とするには、凹部6を予め形成しておいて嵌め込むこともできるが、捕集部2を金型内にインサートしておいて清掃具本体3を射出成形してもよい。つまり、清掃具本体3の外形に対応した金型中に上述したTPRの捕集部2を挿入しておき、ABSなどを金型内に射出すれば、凹部6に捕集部2が嵌め込まれた状態とされた清掃具本体3を容易に成形することができる。
【0026】
また、上述した凹部6を予め形成しておいて、捕集部2を清掃具本体3の凹部6に嵌め込む場合には、凹部6に嵌め込み可能なように、凹部6の内形と相似で、且つやや小さいS字の平板形状に捕集部2を形成しておき、接着剤を用いて捕集部2を清掃具本体3に接着しても良い。
この場合、図例のように、上述した捕集部2の外縁には、水平方向の外周側に向かって庇状に突出したフランジ部9を、全周に亘って連続して形成するのが好ましい。そして、
上述した清掃具本体3の凹部6には、凹部6の開口縁に沿ってフランジ部9を差し込む段部10を形成するのが好ましい。このようなフランジ部9及び段部10を設ければ、フランジ部9や段部10を設けた分だけ清掃具本体3と捕集部2との接触面積が広くなり、凹部6の表面に予め接着剤を塗布しておき、凹部6に捕集部2を嵌め込んで接触剤で接着する場合に、接触面積が広くなった分だけ高い接着強度を発揮することができ、長期間に亘って対象物表面Rに擦りつけても凹部6から捕集部2が脱落することを防止することが可能となる。
【0027】
さらに、上述した本実施形態の捕集部2は、外縁が湾曲した長板状に形成されている。具体的には、捕集部2は、S字状に湾曲した長円状の平板として形成されており、長手方向に沿った外縁が波状に湾曲したものとなっている。このように捕集部2の外縁を波状(波線状)に形成すれば、捕集部2を湾曲した清掃箇所に沿わせることができ、繊維状ゴミFを漏らさず除去することが可能となる。例えば、一般にキャットタワーと呼ばれる猫用玩具(猫用運動具)には、円柱状の支柱が用いられることが多い。このような支柱の根元のように狭隘且つ曲がりくねった清掃箇所であっても、本実施形態の清掃具1であれば、捕集部2の外縁が支柱の湾曲した外周面に沿うように湾曲しているため、捕集部2を清掃箇所に密着させて繊維状ゴミFを漏れなく除去することが可能となる。
【0028】
なお、第1実施形態の清掃具1は、上述したペットの抜毛の除去を主目的とする清掃具1であるため、ペットのシルエット(本実施形態の場合であれば耳がある頭部を前端側に向けたペットが体をくねらせているシルエット)となるような外形形状に形成されている。しかし、本発明の清掃具1においては、このような外形形状は必須ではなく、別の外形形状であっても良い。
「捕集面」
図3及び図4に示すように、上述した捕集部2は、対象物表面R(敷物)に対面する側(本実施形態の場合であれば下面)が、対象物表面Rに面接触可能な捕集面4とされている。この捕集面4は捕集部2の下面に形成されており、捕集面4には上述した凸条部11が略同心円状に複数条に亘って形成されている。そして、本発明の清掃具1は、上述した捕集部2を対象物表面R(敷物)に対してどの方向にスライドさせた場合でも、この凸条部11で繊維状ゴミFが捕集できるように、凸条部11が略同心状に配備されていることを特徴としている。
【0029】
具体的には、上述した凸条部11は、捕集面4の中心に対して同心状(同心円状)に、複数条に亘って捕集面4の表面に形成されており、捕集部2の外縁と平行となるように湾曲した軌跡に沿って形成されている。
図4の断面図に示すように、一つ一つの凸条部11は、A-A線(上述した軌跡を横断する方向)に沿って切断した場合に、略波状の断面を有している。この凸条部11の断面は、本実施形態の場合であれば、左右方向に沿った横幅が2mm~5mm、上下方向の幅が2mm~5mmであり、凸条部11の頂部11T及び谷部11Bはいずれも丸形に面取りされたものとなっている。このように凸条部11の頂部11Tを面取りすれば、対象物表面Rに接触した場合に、尖った頂部11Tに比べて対象物表面Rに対する接触面積を広くできるようになり、繊維状ゴミFをより確実に捕集できるようになる。また、凸条部11間の谷部11Bをなだらかに窪むように面取りすれば、対象物表面Rから捕集した繊維状ゴミFが凸条部11と凸条部11との間に嵌まり込んで残ることがなくなり、繊維状ゴミFを漏らさず棒状ペレットPに纏めることが可能となる。
【0030】
なお、本実施形態では凸条部11の頂部11T及び谷部11Bはいずれも丸形に面取りされているが、面取りの形状は角面取り(直線状や折れ線状の断面を有する面取り角面取り)とされていても良い。
図3の底面図に示すように、上述した凸条部11は、捕集部2の外縁から等間隔をあけて、外縁の内周側に位置する軌跡に沿うように形成されている。本実施形態の場合であれば、捕集部2はS字の平板形状に形成されているため、波状に湾曲した外縁から等間隔の軌跡を有する凸条部11も、波状に湾曲した軌跡に沿って捕集面4の中心を周回している。そして、複数条の凸条部11は、ほぼ等しい間隔をあけて、互いに平行となるように並んで配備されている。
【0031】
具体的には、上述した凸条部11は、捕集面4の中心に対して同心円状または同心状に、複数条に亘って形成されている。この「同心」の基準となる捕集面4の中心は、本実施形態の場合、点というよりは、曲線となっている。
言い換えれば、上述した捕集面4の中心とは、凹部6の中央を長手方向に走る、凹部6を左側と右側とに二分する中心線Cに他ならない。この中心線Cは本実施形態の場合は捕集部2の長手方向に対して蛇行したS字の軌跡を描くものとなる。そして、上述した捕集部2の外形は、中心線C上に設けられた中心点を中心とする円を、中心点を中心線Cに沿って移動させながら、同じ半径の円を重ね合わせるように描いたときに得られる図形となっている。また、上述した凸条部11は、捕集部2よりも半径が小さい円を、同様に重ね合わせるように描いたものである。
【0032】
一例を挙げれば、中心線Cから半径約2mmの位置に描かれたS字状に曲がった長円の軌跡に沿って頂部11Tが並ぶように1番目の凸条部11が形成され、中心線Cから半径約6mm(2mm×3)の位置に描かれたS字状に曲がった長円の軌跡に頂部11Tが並ぶように2番目の凸条部11が形成される。さらに、この2番目の凸条部11の外周側、つまり中心線Cから半径約10mm(2mm×5)の位置に描かれる軌跡に頂部11Tが並ぶように3番目の凸条部11が形成され、中心線Cから半径約14mm(2mm×7)の位置に描かれる軌跡に頂部11Tが並ぶように4番目の凸条部11が形成される。このようにして、中心線Cの周囲に内側から外側に向かって約4mmの間隔をあけて等間隔に5条の凸条部11を連続して形成したものなどを、本発明の捕集面4として用いることができる。
「作用効果」
上述したようにエラストマーなどの弾性部材を用いて同心状に配備された複数条の凸条部11を形成すれば、対象物表面Rに捕集部2の捕集面4を擦り付けた場合に、凸条部11が複数回に亘って繊維状ゴミFに接触し、弾性部材の凸条部が強固に対象物表面Rに絡みついた繊維状ゴミFであっても確実に引き抜くため、繊維状ゴミFを漏らさず対象物表面Rから除去することが可能となる。
【0033】
特に、上述した凸条部11は、中心線Cの周囲を全方位に亘って囲むように形成されている。つまり、捕集面4の左側や右側だけでなく前側や後側にも、凸条部11が連続して形成される構造が設けられており、清掃具1を対象物表面Rに沿ってどの方向にスライドさせても、繊維状ゴミFを捕集することが可能となっている。
例えば、清掃具1の前端を狭隘な壁際や隅などに差し入れて、清掃具1を前後方向に動かせば、通常の清掃具1であれば狭隘で取りにくい場所に散らばった繊維状ゴミFをも捕集して取り除くことができる。
【0034】
具体的には、対象物表面Rから抜き取られた繊維状ゴミFは、対象物表面Rに対する捕集部2の相対移動によって凸条部11の頂部11T間に形成される谷部11Bに入り込み、さらに谷部11Bから隣の凸条部11の頂部11Tを経て隣の谷部11Bというように、複数条の凸条部11を順に通過する。この凸条部11を通過する間に、捕集された繊維状ゴミFは棒状に丸め込まれ棒状のペレットPとなる。そのため本実施形態の清掃具1で対象物表面Rを擦ると、繊維状ゴミFは対象物表面Rから抜き取られ、抜き取られた繊維状ゴミFが纏められてペレットPとなって、捕集部2がスライドした後の対象物表面Rに残る。そのため、対象物表面Rに残った繊維状ゴミFを摘んで簡単に取り去ることが可能となる。
【0035】
上述した本実施形態の清掃具1に対して、従来の毛取り具(例えば、特許文献2のペット用毛取り具)やブラシでは、捕集した毛がブラシの先端などに絡みつくため、捕集した毛を清掃具本体3から取り外すことが非常に手間となる。また、上述した清掃具では、捕集した毛がまとまっていないので、再び空気中に舞い上がったり、舞い上がった毛が清掃後の床に落ちて、かえって清掃に手間がかかったりするという問題を起こす可能性がある。この点、本実施形態の清掃具1は、捕集した繊維状ゴミFをペレットPにまとめるため、空気中に舞い上がったり、再び散らばったりすることがない。加えて、ペレットPを摘み上げるだけで捕集した繊維状ゴミFを容易に取り去ることが可能となる。
[第2実施形態]
次に、図5を用いて第2実施形態の清掃具1について説明する。
【0036】
図5に示すように、第2実施形態の清掃具1は、捕集部2の外形が第1実施形態のようにS字状に湾曲したものではなく、C字状に湾曲したものとなっている。
つまり、第2実施形態の清掃具1は、捕集部2が、円弧状に湾曲した長円状の平板として形成されており、長手方向に沿った外縁は円弧状に湾曲したものとなっている。より正確には、第2実施形態の清掃具1の捕集部2は、右側の外縁が右方に向かって大きく膨らむように湾曲しており、逆に左側の外縁は右方に向かって大きく凹むように湾曲していて、外縁は波状ではなく円弧状に湾曲している。
【0037】
なお、第2実施形態の捕集部2は、第1実施形態の曲率半径R1に比べて外縁が大きな曲率半径R2で湾曲している。そのため、上述したキャットタワーなどに設けられる支柱が太い場合などに対して好ましくは用いることができる。
第2実施形態の清掃具1は、上述した構成以外の点について、第1実施形態の清掃具1と相違しない。そのため、第1実施形態と同じ構成については、説明を割愛する。
[第3実施形態]
次に、図6を用いて第3実施形態の清掃具1について説明する。
【0038】
図6に示すように、第3実施形態の清掃具1は、捕集部2の外形が第1実施形態や第2実施形態のように長円状の平板ではなく、略ひょうたん型の平板となっている。
つまり、第3実施形態の清掃具1は、捕集部2の外縁が、第1実施形態と同様に波状に湾曲したものである。しかし、第1実施形態の捕集部2の場合、前端側の外縁については左側の外縁も右側の外縁も右側に向かって湾曲しており、後端側の外縁については左側の外縁も右側の外縁も左側に向かって湾曲していた。しかし、第3実施形態の捕集部2の場合、前端側の外縁においても後端側の外縁においても、左側の外縁が左側に向かって湾曲する場合は、右側の外縁も右側に向かって湾曲している。また、前後方向の中途側の外縁においては、左側の外縁が右側に向かって湾曲する場合は、右側の外縁も左側に向かって湾曲している。
【0039】
なお、第3実施形態の捕集部2は、左右両側の外縁が中心側に向かって凹むように湾曲しているため、使用者Uの利き手によらずに上述したキャットタワーなどの支柱際を清掃することができる。
第3実施形態の清掃具1は、上述した構成以外の点について、第1実施形態や第2実施形態の清掃具1と相違しない。そのため、第1実施形態や第2実施形態と同じ構成については、説明を割愛する。
【0040】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
【0041】
例えば、上述した実施形態はいずれも猫などのペットの抜毛を清掃する清掃具1を例示したものであった。しかし、本発明の清掃具1は、ペットの抜毛に限らず、人の髪の毛、糸くずなどの繊維状ゴミFを清掃対象とする業務用あるいは家庭用の清掃用具であっても良い。例えば、本発明の清掃具1は、一般家庭の絨毯やカーペットの表面の繊維状ゴミFを清掃する清掃具1であって、ハンディモップや箒の代わりとなる清掃具1などに用いることもできる。
【0042】
例えば、上述した実施形態では、凸条部11が捕集面4上に同心状に、且つ等しい距離をあけて並んだものを開示した。しかし、本発明の清掃具1の捕集面4は、凸条部11間の距離がさまざまに変化するものであってもよい。例えば、捕集面4の中心から離れるに従って凸条部11間の距離が広くなったり、あるいは狭くなったりするものを、本発明の清掃具1の捕集面4に採用しても良い。
【0043】
また、捕集面4の中心から見てある方向に位置する凸条部11間の距離と、別の方向に
位置する凸条部11間の距離とが異なるように構成することもできる。このような例としては、レーストラック状の軌跡に沿って頂部11Tが並ぶ凸条部11において、軌跡が円弧状に曲がるコーナ部と、軌跡が直線状に伸びる直線部とで、凸条部11間の距離が異なるものを挙げることができる。
【符号の説明】
【0044】
1 清掃具
2 捕集部
3 清掃具本体
4 捕集面
5 柄部
6 凹部
7 デザイン部
8 柄部挿通孔
9 フランジ部
10 段部
11 凸条部
11T 凸条部の頂部
11B 凸条部の谷部
C 中心線
F 繊維状ゴミ
P ペレット
R 対象物表面
図1
図2
図3
図4
図5
図6