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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-27
(45)【発行日】2023-01-11
(54)【発明の名称】鉄-銅合金鋳塊及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20221228BHJP
   C22C 33/00 20060101ALI20221228BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20221228BHJP
   B22F 3/16 20060101ALN20221228BHJP
【FI】
C22C38/00 304
C22C33/00
B22F1/00 T
C22C38/00 303S
B22F3/16
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020209090
(22)【出願日】2020-12-17
(62)【分割の表示】P 2019515753の分割
【原出願日】2017-02-06
(65)【公開番号】P2021063297
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2021-04-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518432757
【氏名又は名称】エムティーエー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】MTA Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】(Rodeo mall) #707, 30, Byeollaejungang-ro, Namyangju-si, Gyeonggi-do 12113 (KR)
(74)【代理人】
【識別番号】110001184
【氏名又は名称】弁理士法人むつきパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】李 光春
(72)【発明者】
【氏名】張 ▲福▼賢
【審査官】河口 展明
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-525998(JP,A)
【文献】特開平06-017163(JP,A)
【文献】特表2014-528888(JP,A)
【文献】特開平11-012698(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2016-0112149(KR,A)
【文献】韓国公開特許第2013-0078560(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00-38/60
B22F 1/00-1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄-銅合金鋳塊であって、
銅を5~13原子%含み、残部をFe及び不可避的不純物とする成分組成を有し、
(a)熱伝導率 70W/m・K以上、
(b)引張強度 300N/mm以上、
(c)ブリネル硬度 100HB以上
を呈することを特徴とする鉄-銅合金鋳塊。
【請求項2】
前記不可避的不純物の総量は0.1原子%以下であることを特徴とする請求項1記載の鉄-銅合金鋳塊。
【請求項3】
銅を5~13原子%含み、残部をFe及び不可避的不純物とする成分組成を有し、
(a)熱伝導率 70W/m・K以上、
(b)引張強度 300N/mm以上、
(c)ブリネル硬さ 100HB以上
を呈する鉄-銅合金鋳塊の製造方法であって、
ケイ酸ジルコニウム及びアルミニウムからなる炭素及び酸素を吸収する多孔性の不純物吸収層を内面に与えられた高周波溶解炉に合金原料である鉄及び銅を投入し1520~1650℃で攪拌を行わせながら溶解させ、前記高周波溶解炉の電源を遮断し1450~1520℃に維持しつつ放置し安定化させてからインゴットに鋳造することを特徴とする鉄-銅合金鋳塊の製造方法。
【請求項4】
l及び/又はTiからなる脱酸剤を含むフラックスを与えて溶解させることを特徴とする請求項3記載の鉄-銅合金鋳塊の製造方法。
【請求項5】
前記不純物吸収層は粉末状のケイ酸ジルコニウム及びアルミニウムに樹脂を加えて前記内面に与えられて、焼成されて樹脂を除去し前記多孔性を与えられることを特徴とする請求項3又は4に記載の鉄-銅合金鋳塊の製造方法。
【請求項6】
体積比で同量の鉄及び銅を溶解後、鉄を追加投入して溶解させて前記成分組成を与えることを特徴とする請求項3乃至5のうちの1つに記載の鉄-銅合金鋳塊の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鉄(Fe)をベースとして適量の銅(Cu)を含む新規な鉄-銅(Fe-Cu)合金に関し、より詳しくは、高い熱伝導性を有しながら、優れた機械的な物性、電磁気波遮蔽性及び軟磁性などを有する鉄-銅合金及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属関連製造産業において、鉄鋼材料はアルミニウム合金のような軽量材料に取り替えられている。アルミニウム合金は、軽量性のみならず、熱伝導性、耐食性及び軟性などが優れて各種の産業分野で様々な用途として幅広く用いられている。アルミニウム合金は高い熱伝導性で熱を迅速に冷却させて成形品の変形と撓みを最小化することができる。これにより、アルミニウム合金は射出形成やダイカスト(die casting)用の金型素材として有用に用いられている。
【0003】
例えば、韓国公開特許公報第10-2015-0046014号及び韓国登録特許公報第10-1606525号などにはダイカスト用のアルミニウム合金に関する技術が開示されている。アルミニウム合金はアルミニウム(Al)をベースとして、少量のシリコン(Si)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、及びマグネシウム(Mg)などを含有しており、アルミニウム-シリコン-マグネシウム(Al-Si-Mg)状の合金がダイカスト用の金型素材として多く用いられている。
【0004】
しかしながら、アルミニウム合金は強度及び耐磨耗性などの機械的な物性が低い。これに対して、高い熱伝導性及び耐食性を有するのみならず、強度及び耐摩耗性などの機械的な物性の優れたベリリウム-銅(Be-Cu)合金が金型素材としてスポットライトを浴びている。例えば、日本公開特許公報JP2003-003246号、韓国公開特許公報第10-2012-0048287号、韓国公開特許公報第10-2015-0053814号などには、ベリリウム-銅(Be-Cu)合金に関する技術が開示されている。
【0005】
ベリリウム-銅(Be-Cu)合金は、高強度及び高熱伝導性などを有する実用合金であって、これはダイカスト用の金型素材などとして有用である。ベリリウム-銅(Be-Cu)合金は、多くの場合、べリリウム(Be)と銅(Cu)を溶解鋳造した後、熱間や零間による塑性加工と焼鈍処理を繰り返す方法により得られ、機械的な物性の向上のためのコバルト(Co)が加えられている。しかしながら、ベリリウム-銅(Be-Cu)合金は連続鋳造が困難であり、ベリリウム(Be)と銅(Cu)の原料が高コストなので、経済性が良くない問題点がある。これにより、ベリリウム-銅(Be-Cu)合金は高コストにより高級製品に制限的に用いられて汎用性が劣るという問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、既存のベリリウム-銅(Be-Cu)合金を取り替える新規な鉄系合金組成であって、改善された特性を有する鉄-銅(Fe-Cu)合金、その製造方法、及び用途を提供することをその目的とする。
【0007】
詳しくは、本発明は、鉄(Fe)をベースとし適量の銅(Cu)を含んで高い熱伝導性及び機械的な物性を有すると共に、電磁気波遮蔽性及び軟磁性などを有する鉄-銅(Fe-Cu)合金及びその製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、前記鉄-銅(Fe-Cu)合金の用途として、前記鉄-銅(Fe-Cu)合金を含む素材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために本発明は、鉄55~95原子%と、銅5~45原子%と、を含むことを特徴とする鉄-銅合金を提供する。
【0009】
さらに、本発明は、鉄80.5~95原子%と、銅5~19.5原子%と、を含み、下記(a)乃至(c)の物性を有することを特徴とする鉄-銅合金を提供する。
(a) 熱伝導率70W/m・K以上
(b) 引張強度300N/mm以上
(c) 硬度100HB以上
【0010】
例示的な実施形態に従って、本発明による鉄-銅合金は球形の粒子状であり、0.1~150μmのサイズを有することができる。
【0011】
さらに、本発明は、溶解炉を用意する第1工程と、鉄-銅合金に鉄55~95原子%と、銅5~45原子%とを含むように、前記溶解炉に鉄と銅を投入、溶解して溶湯を形成する第2工程と、前記溶湯を安定化する第3工程と、前記安定化した溶湯を鋳造型に注入して鋳造する第4工程と、を含むことを特徴とする鉄-銅合金の製造方法を提供する。
【0012】
一実施形態に従って、本発明による鉄-銅合金の製造方法は、前記第4工程を通じて得られた鋳造物を再溶解した後、噴射させて粉末状の鉄-銅合金粒子を得る第5工程をさらに含む。
【0013】
好ましい実施形態に従って、前記第1工程は溶解炉の内面に多孔性の不純物吸収層を形成する表面処理段階を含む。この際、前記多孔性の不純物吸収層は、ケイ酸ジルコニウム(Zirconium Silicate)を含むことがよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の実施形態によれば、既存のベリリウム-銅(Be-Cu)合金を取り替える新規な鉄系合金を提供する。本発明は、鉄(Fe)に適量の銅(Cu)が溶融合金された非晶質の完全な合金であって、熱伝導性及び機械的な物性などが優れ、高い生産性及び経済性を有する鉄-銅合金を提供する効果がある。また、本発明は、高い熱伝導性と共に電磁気波遮蔽性及び軟磁性などを有し、金型素材のみならず、電子部品及び機械部品などとして汎用的に用いられる記鉄-銅合金を提供する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は本発明の実施形態に従って製造されたFe-Cu合金のB-H曲線である。
図2図2は本発明の実施形態に従って製造されたFe-Cu合金粒子の倍率別のSEM写真である。
図3図3は本発明の実施形態に従って製造されたFe-Cu合金粒子のEDS分析結果である。
図4図4は本発明の実施形態に従って製造されたFe-Cu合金粒子のEDS分析結果である。
図5図5は本発明の実施形態に従って製造されたFe-Cu合金粒子のEDS分析結果である。
図6図6は比較例による粒子試片のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明において用いられる用語“及び/又は”はその前後に並べた構成要素のうち、少なくとも一つ以上を含むことをいう。本発明において用いられる用語“一つ以上”は一つまたは二つ以上の複数をいう。
【0017】
本発明は、第1形態に従って、鉄(Fe)を主成分とする鉄系合金であって、新規な合金組成を有する鉄-銅合金を提供する。本発明は、第2形態に従って、前記鉄-銅合金の合金製造方法を提供する。また、本発明は、第3形態に従って、前記鉄-銅合金の用途として、前記鉄-銅合金を少なくとも含む素材を提供する。前記素材は、例えば、金型素材及び3Dプリンター用の素材などから選ばれることができる。
【0018】
本発明による鉄-銅合金は、鉄(Fe)と銅(Cu)を含み、銅(Cu)より鉄(Fe)の含量が高い鉄系合金であって、鉄(Fe)と銅(Cu)の全体基準として鉄(Fe)55~95原子%(atomic %)と銅(Cu)5~45原子%(atomic %)のとを含む。本発明において用いられる含量単位“原子%”は鉄(Fe)と銅(Cu)の原子(atoms)全体(FeとCuとの和)を基準としたのであり、これは当該業界において周知されたように、“体積%”とも表現され得る。即ち、本発明によいて、原子%は体積%とも表現されることができる。
【0019】
好ましい実施形態に従って、本発明による鉄-銅合金は鉄と銅以外の他の金属元素は含まない。また、本発明による鉄-銅合金は不可避な不純物として炭素(C)や酸素(O)などの不純物を含むことがあるが、このような不純物は極少量に過ぎない。不純物は、例えば、0.1原子%(0.1体積%)以下又は0.01原子%以下であって、不可避に含まれる。
【0020】
本発明による鉄-銅合金は鉄に適量の銅を含ませて鉄の利点と銅の利点を組み合わせて改善した特性を有する。本発明による鉄-銅合金は、少なくとも高い熱伝導性及び機械的な物性などを有する。具体的に、既存の鉄合金に比べて高い熱伝導性及び弾性などを有する。また、既存の銅合金に比べて、高い硬度及び耐磨耗性などを有する。さらに、低コストの鉄をベース(主成分)として高い経済性があり、鉄と銅の適定な組成(含量)により電磁気波遮蔽性及び軟磁性などをもち、様々な用途としても用いられることができる。例えば、ソレノイドなどの精密部品、電磁気波遮蔽材及び3Dプリンター用の素材としても使用が可能である。
【0021】
以下、本発明による鉄-銅合金の製造方法を説明しながら、本発明による鉄-銅合金の実施形態を説明する。以下後述する製造方法は、本発明による鉄-銅合金の製造を容易に具現する。しかしながら、本発明による鉄-銅合金は、後述する製造方法により製造されるものに限定されない。
【0022】
本発明による鉄-銅合金の製造方法(以下、“製造方法”と略称する)は、溶解炉を用意する第1工程、前記溶解炉に鉄と銅を投入、溶解して溶湯を形成する第2工程、前記溶湯を安定化させる第3工程、及び前記安定化した溶湯を鋳造型に注入して鋳造する第4工程と、を含む。また、本発明による製造方法は、選択的な工程として、前記第4工程を通じて得られた鋳造物から粉末状の鉄-銅合金粒子を得る第5工程をさらに含むことができる。各工程別の実施形態を説明すると、次の通りである。
【0023】
[1]溶解炉の準備(第1工程)
【0024】
上述したように、本発明による鉄-銅合金は鉄55~95原子%と銅5~45原子%を含む。本発明において特定する前記合金組成は理論的な溶融合金組成ではない。すなわち、鉄の含量が理論的に合金されうる量を超える比率である。このような合金組成は焼結による母合金の製造時には具現が可能であるが、溶解(溶湯)による溶融方法では、非晶質の完全な合金を得ることは困難である。一般に、鉄と銅は、銅より鉄の含量が低い場合(例えば、Fe含量2.5体積%未満)、溶融合金を得ることができる。しかしながら、本発明において特定する前記合金組成の場合には、溶湯でFe-rich相とCu-rich相との二相分離が発生し、偏析(ある一金属が一箇所に偏る)が発生して均一な分布の完全な溶融合金を得ることが困難である。
【0025】
本発明者は鉄の含量が高く完全な溶融合金を得るための各種の研究を繰り返した結果、銅の含量が適定で不純物の含量を最小化した場合及び/又は溶解過程を変化させた場合、偏析(偏重)無しに完全な溶融合金を得ることをわかった。本発明によれば、一つの実施形態に従って溶解炉の改善及び/又は溶解過程における原料投入方法を改善した場合、完全な溶融合金を得ることがわった。
【0026】
第1工程においては、上述した課題を解決するための一つの実施形態を提供する。第1工程によって、鉄と銅の溶湯を形成するための溶解炉を用意し、、前記溶解炉は急激な昇温により速い溶解が可能な高周波誘導熱の溶解炉を用いる。また、前記溶解炉はマグネシウムを主成分とするセラミック溶解炉を用いることがよい。前記セラミック溶解炉としては、例えば、酸化マグネシウムを主成分とするセラミックを高温、焼成を通じて製造したものを用いることができる。
【0027】
好ましい実施形態によって、前記溶解炉は内面に多孔性の不純物吸収層を形成させて用いる。詳しくは、第1工程は、高周波誘導熱のセラミック溶解炉を用意し、前記セラミック溶解炉の内面に多孔性の不純物吸収層を形成する表面処理段階を含む。この際、前記不純物吸収層は溶解炉の内面全体又は一部に形成され、具体的には、溶湯と当たる面である、溶解炉の少なくとも内部底面及び/又は壁体の内部面に形成されることができる。
【0028】
また、前記不純物吸収層は少なくとも不純物吸収剤を含む。詳しくは、前記表面処理段階では、不純物吸収剤、樹脂及び溶媒を含む吸収層組成物を溶解炉の内面に塗布した後、焼成して多孔性の不純物吸収層を形成することができる。本発明によれば、前記多孔性の不純物吸収層により、鉄-銅の溶湯内に含まれた不純物(例えば、C、Oなど)が吸収、除去されて、前記非理論的な合金の組成時にも偏析(偏重)無しに完全な合金を得ることができる。このような多孔性の不純物吸収層は、例えば、0.5~2mmの厚さを有することがあるが、これに限定されない。
【0029】
前記不純物吸収剤は、鉄-銅の溶湯内に含まれる不純物(例えは、C、Oなど)が吸収、除去できるものなら、特に限定されない。前記不純物吸収剤は粉末状であって、例えば、50~500μmの大きさを有するものが用いられる。前記不純物吸収剤は金属酸化物及び/又は金属から選ばれるが、好ましくは、ケイ酸ジルコニウム(Zirconium Silicate)及びアルミニウム(Al)のうち選ばれた少なくとも一つ以上を含むことがよい。前記不純物吸収剤は、より好ましくは、ケイ酸ジルコニウムとアルミニウム(Al)の両方を用いることがよい。この際、前記アルミニウム(Al)は99.8重量%以上の高純度を有するものを用いることができる。前記不純物吸収剤としての前記ケイ酸ジルコニウムとアルミニウム(Al)は、他の金属酸化物や金属に比べて、溶湯内の不純物を完全に効果的に除去することができるので、本発明において好ましい。前記ケイ酸ジルコニウムとアルミニウム(Al)は、詳しくは、溶湯内の不純物を完全に除去して鉄と銅のみを含む高純度の合金溶湯を形成することができる。これは、以下の実施形態によっても確認が可能である。
【0030】
さらに、前記樹脂は接着性を有するものなら、特に限定されず、粉末状の不純物吸収剤の相互間を結集させながら、溶解炉の内面と不純物吸収層との初期接着力を提供できるものなら、いずれもよい。さらに、前記樹脂は焼成による高温の熱により除去され、不純物吸収層に多孔性を与える。前記樹脂は合成樹脂及び/又は天然樹脂などから選ばれることができる。前記樹脂は固状及び/又は液状となり得、例えば、アクリル系、ビニル系、エポキシ系、ウレタン系、シリコン系、オレフィン系、エステル系及びゴム系などから選ばれたいずれか一つ以上の重合体及び/又はこれらの共重合体などから選ばれることができる。
【0031】
前記樹脂は、好ましくは、ブタジエン-スチレン-アルキルメタクリレート共重合体(Butadiene-Styrene-Alkyl Methacrylate copolymer)を用いることができる。前記ブタジエン-スチレン-アルキルメタクリレート共重合体は、具体的な例として、ブタジエン-スチレン-メチルメタクリレート共重合体、ブタジエン-スチレン-エチルメタクリレート共重合体及び/又はブタジエン-スチレン-ブチルメタクリレート共重合体などから選ばれることができる。一例として、前記ブタジエン-スチレン-アルキルメタクリレート共重合体は50nm~500nmの粒子サイズを有するものを用いることができる。このように樹脂として、ブタジエン-スチレン-アルキルメタクリレート共重合体を選び、ナノサイズを有するものを使用する場合、この樹脂が焼成により迅速に除去されることができ、粉末状の不純物吸収剤の間に均一に分散される。従って、不純物吸収剤間の結集力を改善するのみならず、不純物吸収層に均質かつ微細な多孔構造を形成させて不純物の吸収除去能が向上される。
【0032】
前記溶媒は分散性と塗布性のためのものであって、炭化水素系から選ばれることができる。前記溶媒は、例えば、アルコール類及び/又はケトン類などから選ばれることができる。
【0033】
さらに、前記吸収層組成物は一例として不純物吸収剤50~80重量%、樹脂5~20重量%、及び溶媒15~40重量%を含むことができる。この際、不純物吸収剤の含量が50重量%未満である場合、不純物の吸収除去能が減少することがあり、80重量%を超える場合、多孔性と塗布性が低下することもある。また、前記樹脂の含量が5重量%未満である場合、多孔性と接着性が低下することがあり、20重量%を超える場合、相対的に不純物吸収剤の含量が減って不純物の吸収除去能が減少することもある。また、溶媒は分散性と塗布性を考慮して上述した範囲がよい。
【0034】
上述したように第1工程を通じて溶解炉の内面に多孔性の不純物吸収層を形成した場合、溶解過程で溶湯内に含まれれる不純物が吸収、除去されて均質状の完全な鉄-銅合金を生成することができると共に、不純物をほとんど含まない高純度の鉄-銅合金を効果的に得ることができる。
【0035】
[2]溶解(第2工程)
【0036】
前記溶解炉に鉄と銅の合金原料を投入する。この際、鉄は高純度の純鉄を用いることができ、前記銅は高純度の電解銅を用いることができる。溶解炉は電源の印加による高周波誘導熱により加温されうる。溶解炉は、鉄と銅の溶解可能温度で維持するとよい。例えば、高周波誘導熱を通じて溶解炉を迅速に昇温させて約1520~1650℃で維持して鉄と銅を溶解することがよい。このような溶解過程においては、攪拌が行われることができる。
【0037】
さらに、第2工程においては、最終生成された鉄-銅合金の全体を基準として鉄55~95原子% (又は体積%)と銅5~45原子%(又は体積%)を含むように、前記溶解炉に鉄と銅を投入、溶解して溶湯を形成する。詳しくは、溶解炉に鉄と銅の総投入量を鉄55~95体積%と銅5~45体積%(即ち、鉄:銅=55~95:5~45の体積比)とする場合、前記合成組成を有するようにすることができる。この際、銅の含量が5原子%(5体積%)未満の場合、例えば、熱伝導性、耐食性及び/又は電磁気波遮蔽性などがわずかになることがある。また、銅の含量が45原子%(45体積%)を超える場合、相対的に鉄の含量が減り、例えば、硬度及び/又は耐磨耗性などの機械的強度が低下することかある。
【0038】
本発明の好ましい実施形態に従って、上述した点を考慮して、第2工程においては、最終生成された鉄-銅合金の全体を基準として鉄80.5~95原子%と銅5~19.5原子%を含むように、前記溶解炉に鉄と銅を投入、溶解して溶湯を形成することがよい。即ち、溶解炉に鉄と銅の総投入量を鉄80.5~95体積%と銅5~19.5体積%(即ち、鉄:銅=80.5~95:5~19.5の体積比)とする場合、前記合成組成を有するようにすることが好ましい。このような好ましい合金組成を有する場合、優れた熱伝導性、機械的な物性、電磁気波遮蔽性及び/又は軟磁性などを有する。
【0039】
一実施形態に従って、前記溶解炉に鉄と銅を投入するときに、鉄と銅を初期に1:1の体積比で投入し、攪拌をしながら迅速に溶解させた後、鉄を追加に投入して前記合金組成を有するようにすることができる。即ち、一回の投入によって前記合成組成を有させることより、初期に鉄と銅を1:1の体積比で投入し、その後、鉄を追加に投入することにより、前記合金組成を有するようにすることが均質な鉄-銅の合金組成に好ましい。さらに、鉄の追加投入時には間欠的に少しずつ投入することがより好ましい。即ち、少量で数回にかけて鉄を追加投入することが均質な合金組成に有利である。
【0040】
また、第2工程(溶解過程)においては、溶解炉に通常のように脱酸剤を添加して脱酸(酸化防止)させながら工程を行わせる。さらに、第2工程(溶解過程)においては、通常のようにフラックスをさらに添加することができる。この際、前記脱酸剤とフラックスは通常用いられるものを用いることができる。前記脱酸剤は、例えば、99.8重量%以上の高純度Al及び/又は高純度Tiなどを用いることができ、前記フラックスはAl、CaO及び/又はSiOなどを用いることができる。
【0041】
[3]安定化(第3工程)
【0042】
前記溶解によって生成された溶湯を安定化させる。安定化は溶解炉の電源供給を遮断し、溶湯を溶解路に所定の時間放置する方法で行われることができる。この際、安定化は、溶湯の温度を、例えば、1450~1520℃で維持して放置する方法によって行われることができる。このような安定化によって、鉄と銅の均質化が行われることができる。
【0043】
[4]鋳造(第4工程)
【0044】
前記安定化された溶湯を鋳造型に注入して一定な形態の合金鋳造物を鋳造する。第4工程(鋳造)は通常の工程に従う。前記鋳造型は特に限定されず、鋳塊(ingot)及び鋳造片の形状を有したり、場合によっては、実際の適用製品の形状を有することができる。さらに、前記鋳造型は通常のように冷却機能を有することができる。
【0045】
また、第4工程から得られた鋳造物は通常の熱処理及び/又は冷却などの工程によって後処理されうる。前記鋳造物は、具体例として、焼鈍(annealing)、焼ならし(normalizing)、焼入れ(quenching)及び/又は焼戻し(tempering)などの工程を通じて後処理されうる。このような後処理は適用用途及び製品によって適宜に選ばれることができる。例えば、機械的強度(引張強度及び硬度など)が求められる製品の場合、焼入れ及び焼戻しが行われる。さらに、前記鋳造物は再溶解及び/又は後加工を通じて様々な形状を有し、実際の適用製品や半製品などとして加工されうる。
【0046】
[5]粒子化(第5工程)
【0047】
第5工程は選択的な工程であって、これを通じて粉末状の鉄-銅合金を得ることができる。第5工程に従って、前記第4工程(鋳造)から得られた鋳造物を再溶解した後、噴射させて粉末状の鉄-銅合金粒子を得る。具体的に、第5工程は前記鋳造物を再溶解する再溶解段階と、前記再溶解された溶解物を噴射させて粉末状の鉄-銅粒子を得る粒子化段階と、を含むことができる。
【0048】
この際、前記再溶解段階では第1工程でのような溶解炉を用いることができる。また、第5工程の再溶解段階では、鉄-銅合金の酸化を防止するために、真空の溶解炉で再溶解させることがよい。すなわち、溶解炉は真空炉を用いることができる。このような真空炉において、前記鋳造物を1600~1700℃で再溶解させ得る。前記粒子化段階は再溶解された溶解物を1400~1500℃で噴射して粉末状で粒子化することができる。この際、粒子化した粉末は、例えば、0.1~150μmのサイズを有することができる。このように得られた粉末状の鉄-銅合金粒子は、好ましくは、球形の粒子状を有することができる。
【0049】
上述した本発明の製造方法によれば、鉄55~95原子%と銅5~45原子%を含む非理論的な合金組成であるが、偏析(偏重)なしに完全な合金を得ることができる。また、本発明によって製造された鉄-銅合金は鉄の利点と銅の利点とを適宜に合わせて、上述したような高い熱伝導性及び機械的な物性(引張強度、硬度及び耐摩耗性など)を有すると共に、電磁気波遮蔽性及び軟磁性などを有するので、各種の用途としても使用が可能である。
【0050】
好ましい実施形態に従って、本発明による鉄-銅合金は鉄80.5~95原子%(又は体積%)と銅5~19.5原子%(又は体積%)を含む。より詳しくは、鉄82.5~90.5原子%と銅9.5~17.5原子%を含むことができる。このような合成組成を有する場合、熱伝導性、機械的な物性、電磁気波遮蔽性及び/又は軟磁性などの特性が効果的に改善される。
【0051】
さらに、本発明による鉄銅合金は下記(a)乃至(c)の物性を有することがよい。下記(a)乃至(c)の物性を有する場合、射出成形及びダイカスト用などの金型素材のみならず、3Dプリンター用の素材として汎用的な使用が可能である。
【0052】
(a) 熱伝導率70W/m・K以上
(b) 引張強度300N/mm以上
(c) 硬度100HB以上
【0053】
前記熱伝導率、引張強度及び硬度は通常の測定方法に基づいて測定される。熱伝導率は、例えば、ASTM E1461(Laser flash: Thru-plane)に準じて常温(20~25℃)で測定された値となり得る。また、引張強度はKS B 0801に準じて測定され、硬度はKS B 0805に準じて測定された値となり得る。
【0054】
前記熱伝導率は、具体例として、70~150W/m・Kを有することができる。また、前記引張強度は、具体例として、300~1350N/mmを有することができる。さらに、前記硬度は、ブリネル硬度(Brinell Hardness)であって、その具体例としては、100~400HBを有することができる。上述した各物性は適用用度に従って最適化され得る。例えば、引張強度及び硬度の場合、上述したような後処理(焼ならし、焼入れ及び焼戻しなど)を通じて増えることがあり、このような後処理によって引張強度は500N/mm以上、硬度は200HB以上を有することができる。
【0055】
例示的な実施形態に従って、本発明による鉄-銅合金は、前記(a)乃至(c)の物性ととも(d)45~650mの透磁率(magnetic permeability)を有することができる。前記透磁率は磁性体(金属など)に対する通常の測定方法に基づいて測定され、これは50Hzの低周波数で測定された値である。
【0056】
さらに、本発明による鉄-銅合金は球形の粒子状を有することが好ましい。球形の粒子状は第5工程によって具現が可能である。この際、本発明による鉄-銅合金は球形の粒子状として、例えば、0.1~150μmの大きさを有することができる。このように、球形の粒子状である場合、3Dプリンター用の素材として有用に用いられることができる。本発明において、“球形”とは、完全な球形のみをいうのではなく、完全な球形(spherical)のみならず、準-球形(quasi-spherical)を含む。
【0057】
本発明において、“球形の粒子”は、鉄-銅の合金が非理論的な合金組成であっても、偏析(偏重)無しに鉄と銅が合金内に均一に分布し、完全な溶融合金がなされたことをいう。この点において、“球形の粒子”は技術的な意義を有する。即ち、完全な溶融合金がなされない場合、噴射を通じて球形の粒子状を有することが困難である。また、本発明において、“球形の粒子”は再溶解を通じて均一な組成の鉄-銅合金成形物が加工できるという点からも、技術的な意義を有する。
【0058】
一方、本発明による鉄-銅合金は様々な分野及び用途として用いられることができ、適用分野及び用途は特に限定されない。本発明による鉄-銅合金は、上述したように、金型素材のみならず、電子部品、精密機械、高熱機械部品及び3Dプリンター用の素材などとしても用いられる。また、本発明による鉄-銅合金は、弾性材料、遮蔽材料、抗菌材料、センサ材料及び手術用の医療道具などのみならず、エネルギー分野や塗料分野などに広く適用されうる。
【0059】
以下、本発明の実施例及び比較例を例示する。下記の実施例は本発明の理解のために例示的に提供されるが、これにより本発明の技術的な範囲が限定することではない。また、下記の比較例は従来の技術を意味することではなく、ただ実施例と比較するために提供される。
【0060】
[実施例1]
【0061】
<溶解炉>
【0062】
高周波誘導熱溶解炉として、マグネシウムを主成分とするセラミック溶解炉を用意した。その後、用意した溶解炉の内部壁面と底に多孔性の不純物吸収層を形成した。前記多孔性の不純物吸収層は、組成物の全体重量を基準として不純物吸収剤65重量%、樹脂15重量%及び溶媒30重量%を混合した吸収層組成物を約1mmの厚さで塗布した後、約1150℃の温度で加熱、焼成して形成した。この際、前記不純物吸収剤としては、ケイ酸ジルコニウム(ZrSiO)とアルミニウム(Al)粉末を用い、前記樹脂としては、ブタジエン-スチレン-メチルメタクリレート共重合体を用い、前記溶媒としては、イソプロピルアルコールを用いた。
【0063】
<溶湯/安定化/鋳造>
【0064】
前記溶解炉に鉄(純度、約99.9重量%の純鉄)と銅(純度、約99.9重量%の電解銅)を初期に1:1の体積比で投入し攪拌をしながら、出力を高めて迅速に溶解させた。この際、溶解過程では脱酸剤(Al)を間欠的に添加して脱酸を行って進行させた。また、肉眼観察に通じて投入された鉄と銅の完全な溶解を確認した後、鉄の含量を高めるために溶解炉に鉄を少しずつ追加投入し、溶湯の温度約1550℃で完全に溶解させた。その後、溶解炉の電源を遮断し、溶湯の温度が約1500℃になるまで放置して安定化させた。次に、安定化した溶湯を鋳造型に注入した後、冷却させてFe-Cu合金鋳塊(ingot)を得た。
【0065】
[実施例2及び実施例3]
【0066】
前記実施例1に比べて、最終合金組成(FeとCuの原子%)を異にするために、溶解過程において鉄の追加投入量を異に設定したことを除いては、実施例1と同様に実施して各実施例によるFe-Cu合金鋳塊(ingot)を得た。
【0067】
[比較例1]
【0068】
溶解炉の内面に多孔性の不純物吸収層を形成するのにおいて、不純物吸収剤の種類を異にしたことを除いては、実施例1と同様に実施した。具体的に、不純物吸収剤として、ケイ酸ジルコニウム(ZrSiO)とアルミニウム(Al)の代わりに、酸化ジルコニウム(ZrO)を用いたことを除いては、実施例1と同様に実施した。
【0069】
[比較例2]
【0070】
前記実施例1に比べて、溶解炉に鉄と銅を投入するときに9:1の体積比で一回に投入し、また、溶解炉の内面には多孔性の不純物吸収層を形成せず溶解して製造されたものを比較例2による試片として用いた。
【0071】
このように得られたFe-Cu合金試片に対して、次のように成分を分析し、その結果を[表1]に示した。また、各合金試片に対して、熱伝導率、引張強度、硬度及び透磁率(magnetic permeability)を評価し、その結果を次の[表1]に示した。熱伝導率は、金属試料の熱伝導度測定方法として、各合金試片の密度、比熱及び熱拡散係数を測定した後、ASTM E1461(Laser flash: Thru-plane)に準じて評価した。この際、すべてのテストは25℃の温度で行った。また、引張強度はKS B 0801に準じて評価し、硬度はKS B 0805に準じてブリネル硬度(Brinell Hardness)として評価した。さらに、透磁率は透磁率測定器(日本、理研電子(株)の製品、モデル名BHU-60)を用いて周波数50Hzで評価した。
【0072】
<成分分析>
【0073】
重さを測定した合金試片をグラス(glass)材質のビーカーに入れ、王水(塩酸+硫酸水溶液)10mLを加えて溶解させた。下記の測定条件による高周波誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES)を通じてFeとCuを定量して試料中の濃度に換算して分析した。
【0074】
*ICP-AESの測定条件
測定装置: PerkinElmer Optima 5300DV
測定波長: 238.204nm(Fe), 327.398nm(Cu)
定量方法: 内部標準法
【0075】
【表1】
前記[表1]に示したように、実施例によるFe-Cu合金の場合、比較例に比べて、70W/m・K以上の高い熱伝導率を有することがわかる。また、実施例によるFe-Cu合金は320N/mm以上の引張強度及び140HB以上の硬度を有することがわかる。この際、320N/mm以上の高い引張強度は、鉄と銅が偏析(偏重)無しに均一な分布で完全な合金がなされたことを意味する。さらに、約600m程度の透磁率を示すことがわかり、これは電磁気波遮蔽能を有することを示す。添付した図1は実施例1による合金のB-H曲線(磁化曲線magnetization curve)を示し、これは軟磁性を有することをいう。
【0076】
しかしながら、比較例1及び2の場合、完全な合金が行われなく、偏析が発生することがわかる。また、引張強度の測定時、偏析によりクラックが発生して引張強度の測定が不可能であった。さらに、比較例1及び2の場合、偏析により成分が不均一になるので、正確な評価が困難で[表1]に表記しなかった。硬度及び透磁率の場合にも同様な理由から表記しなかった。
【0077】
下記の[表2]は後処理による物性評価結果であって、これは前記実施例2と同じ合金試片に対して処理前と処理後の結果を示したものである。後処理は通常的な方向に従って、焼鈍(annealing)、焼ならし(normalizing)、焼入れ(quenching)、及び焼戻し(tempering)を行った。
【0078】
【表2】
【0079】
前記[表2]に示したように、Fe-Cu合金は後処理により物性が変わることがわかる。例えば、温度1050℃で焼入れ(及び焼戻し)を行った場合、1300N/mm以上の引張強度と370HB以上の硬度であって、処理前に比べて機械的な強度が向上したことがわかる。このように純粋単一金属(純鉄など)のように熱処理によって機械的強度が向上したことから、これは完全な合金がなされたことを意味する。
【0080】
[実施例4~6]
【0081】
上述した実施例1に比べて、最終合金組成(FeとCuの原子%)を異に設定するために、溶解過程において鉄の追加投入量を異にしたことを除いては、実施例1と同様な方法で実施して各実施例(4~6)によるFe-Cu合金鋳塊(ingot)を得た。また、本実施例においては鋳造によって得られたFe-Cu合金鋳塊を次のように粒子化させて粉末状のFe-Cu合金粒子を製造した。
【0082】
まず、鋳造によって得られた各実施例(4~6)によるFe-Cu合金鋳塊を高周波誘導熱の溶解炉に入れ、最大出力を加えて約1650℃の温度で再溶解させた。この際、溶解炉は酸化防止のために真空状態を維持した。その後、噴射機を用いて前記再溶解された溶解物を噴射させて粒子化させた。この際、噴射チャンバーは酸化防止のためにアルゴン(Ar)ガス雰囲気で維持し、前記溶解物を1450℃の温度で噴射させて製造した。
【0083】
添付した図2乃至図5は、前記各実施例(4~6)に従って製造された粉末状のFe-Cu合金粒子に対するSEM写真とEDS分析結果を示している。図2は実施例4によるFe-Cu合金粒子の倍率別のSEM写真を示し、図3は実施例4によるFe-Cu合金粒子のEDS分析結果を示し、図4は実施例5によるFe-Cu合金粒子のEDS分析結果を示し、また、図5は実施例6によるFe-Cu合金粒子のEDS分析結果を示している。
【0084】
図2乃至図5に示したように、各実施例(4~6)に従って製造されたFe-Cu合金粒子は30mμ以下の微粒子であって、ほとんど完全な球形の形態を有することがわかる。また、図3の下段に示した三つの写真はFeとCuの分布を示しているが(Feは赤色、Cuは緑色)、FeとCuが偏析(偏重)無しに均一に分布していることがわかる。この際、図3の下段に示した三つの写真のうち、真ん中の写真は Feの分布(赤色)を示し、右側の写真はCuの分布(緑色)を示し、また、左側の写真はFeとCuの分布を示している。このように、Fe-Cu合金粒子が完全な球形の形態を有し均一な分布を示すということは、FeとCuが完全な合金をなすということをいう。
【0085】
一方、添付した図6は比較例2による焼塊(ingot)を用いて噴射させた粒子試片のSEM写真である。図6に示したように、比較例2の場合には、偏析により粒子の形状が不均一な切れ形を示した。これは完全な合金がなされなかったことをいう。

図1
図2
図3
図4
図5
図6