(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-27
(45)【発行日】2023-01-11
(54)【発明の名称】ポリエステルベースのポリマー物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/00 20060101AFI20221228BHJP
B29C 49/06 20060101ALI20221228BHJP
【FI】
B29C45/00
B29C49/06
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021065883
(22)【出願日】2021-04-08
(62)【分割の表示】P 2018500682の分割
【原出願日】2016-07-11
【審査請求日】2021-04-08
(32)【優先日】2015-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518004211
【氏名又は名称】ケイリョー パッケージング ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】Keiryo Packaging SA
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ロブレヒト,ヨハン
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-074846(JP,A)
【文献】国際公開第2010/060641(WO,A2)
【文献】特表2010-527821(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
B29C 49/00-49/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
融解ポリエステルベースポリマーを(半)最終形状へと変換するための融解ポリエステルベースポリマーの射出成形を含んでなるポリマー物品の製造方法であって、
前記
融解ポリエステルベースポリマ
ーが、所与の局部圧力および所与の加工温度において変換され、前記加工温度が、ポリマー樹脂の対応するPVTグラフから決定される周囲圧力における前記ポリマー樹脂の結晶化温度よりも高く、前記
融解ポリエステルベースポリマ
ーにおいて適用された、流路の少なくとも一部における局部圧力プロフィールが、前記結晶化温度を、前記所与
の加工温度の方へ上昇させるように選択され、前記
融解ポリエステルベースポリマ
ーの前記流路が、前記流路の少なくとも一部における局部圧力プロフィールの作用として変更されることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記所与の加工温度が、前記
ポリマー樹脂の対応するPVTグラフから決定される周囲圧力における前記ポリマー樹脂の前記結晶化温度よりも5~40℃高い範囲内にあることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、前記局部圧力プロフィールが、前記
融解ポリエステルベースポリマ
ーの前記結晶化温度を、少なくとも前記所与の融解加工温度まで上昇させるように、0~500MPaの範囲内で選択されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載のポリマー物品の製造方法において、ブローし、それによって容器を形成することによるプレフォームの二軸延伸をさらに含んでなることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、融解ポリエステルベースポリマーを(半)最終形状へと変換するための融解ポリエステルベースポリマーの射出成形を含んでなるポリマー物品の製造方法において、前記ポリマーが、射出成形に関しては、少なくとも0.375の適用されたワイセンベルク数、および射出成形に関しては、少なくとも0.75のデボラ数を有し、前記ポリエステルベースポリマーが35000~143000g/molのMWを有することを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、ホットランナーシステム内において前記融解
ポリエステルベースポリマーの前記流路を選択的に変更することを含んでなることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、前記局部圧力プロフィールが、前記流路の少なくとも一部において適用された局部剪断および/または伸長変形に対する前記
融解ポリエステルベースポリマ
ーの最適化された応答の作用として決定されることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項6または7に記載の方法において、前記局部圧力プロフィールが、前記流路の少なくとも一部において必要とされる臨界剪断の作用として決定されることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項6、7または8に記載の方法において、前記ポリマー材料が、得られるブレンドまたはコンパウンドのMWの実質的な増加を生じることなく、より低いω1を得るために、異なるMWを有する複数のポリマー材料をブレンドするか、またはコンパウンドすることから得られることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法において、ポリエステルベースのポリマー融解物において剪断および/または伸長変形を適用しながら、それをプレフォームへと変換するためのプレフォームモールドにおけるポリエステルベースポリマーの射出成形を含んでなるポリマー物品の製造方法において、前記ポリエステルベースのポリマー融解物における剪断および/または伸長変形の適用が、前記流路の少なくとも一部における局部圧力プロフィールの作用として前記融解
ポリエステルベースポリマーの前記流路を選択的に変更することを含んでなり、前記局部圧力プロフィールが、前記流路の少なくとも一部において適用された局部剪断および/または伸長変形に対する前記ポリエステルベースのポリマー融解物の最適化された応答の作用として決定されることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法において、前記局部圧力プロフィールが、前記流路の少なくとも一部において必要とされる臨界剪断の作用として決定されることを特徴とする方法。
【請求項12】
-多様な食品および非食品適用のための容器
-パッケージング、建築および建設、自動車、電気およびエレクトロニクス適用における使用のための射出ポリマー物品のいずれかの形態
の製造における、請求項1乃至11の何れか一項に記載の方法の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、射出延伸ブロー成形(ISBM)による、ポリエステルベースの熱可塑性物品の製造における新規開発に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックの、特にパッケージング製品としての商業的な成功は、汎用性(フィルムおよびバッグから、硬質のトレーおよび容器まで)、強度、軽量性、安定性、不透過性および殺菌の容易さの組合せによる。これらの特徴のため、プラスチックは、全ての種類の商業的および工業的利用者にとって理想的なパッケージング材料である。例えば、食品パッケージングにおいて、プラスチックは、一般に食品の味および品質に影響を与えず、そしてプラスチックのバリア特性のため、外部汚染から食品を保護しながら、食品の本来の味を保持することが保証されるため、で広く使用されている。
【0003】
脂肪族および芳香族ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン)からハロゲン化ポリマー(ポリ塩化ビニール、ポリ塩化ビニリデン(PVDC))および脂肪族ポリアミド(ナイロン)、芳香族ポリエステルの範囲のいくつかの種類のプラスチックが使用されている。厳格な食品および飲料パッケージング部門が関係する限り、ポリエチレンテレフタレート(PET)、芳香族ポリエステルが最も広く使用される樹脂であり、ポリプロピレン(PP)およびポリエチレン(PE)がそれに続く。
【0004】
一般的にパッケージング供給連鎖、特にポリマーパッケージング供給連鎖は、そのカーボンフットプリントの減少を通して、その全体的な持続可能性を増加させることが絶え間なく要求されている。次に、このことは、これらの軽量ポリマー物品の全体的な機能的性能を維持しながら、特に原料消費量の継続中の減少を要求する。
【0005】
同時に、(ポリマー)パッケージング供給連鎖は、重要な収益面での課題に直面する。これは、これらの生態的および経済的な課題の両方を同時に可能にすることができる費用効率的なパッケージング製造技術への到達を必要とする。これは、しばしば、「3BL原理」と呼ばれる。「トリプルボトムライン」は、全てのステークホルダー(人々、地球、利益)にとって改善が有益であることを記載している。
【0006】
本発明は、(ポリマー)パッケージング供給連鎖内で、より好ましい3BLを達成することへの実質的な寄与を提供することができる。
【0007】
この3BLの課題が明らかに目に見える1つのそのような領域は、射出延伸ブロー成形(ISBM)によって製造された、広範囲にわたる食品および非食品適用の両方での使用のためのポリエステルベースのポリマー材料から製造される容器の使用に関係する。ここでの重要な課題は、「少しのエネルギーでより多くのことを行う(do more with less)」ということになっており、これは、全体でより低いポリマー重量において全体的な性能仕様を維持するか、または同等のポリマー重量において改善された性能を達成することのいずれかを意味する。このようなポリマー材料消費の減少は、重要なことに、(ポリマー)パッケージング供給連鎖の生態的持続可能性(CO2排出減少など)、ならびに経済的利益(原材料費減少、より少ない輸送費、より少ない廃棄物取扱い費用など)の両方の要因になるであろうが、ただし、これらの改善が、運転費用の増加がないか、または受容できる増加において達成可能であることを条件とする。
【0008】
次に、これは、高度に洗練された、したがって高価な材料および/または製造変換技術に戻ることなく、ポリエステルベースのポリマー材料それ自体からの改善された使用または有効性を必要とする。
【0009】
全文が参照によって本文に組み込まれる、国際公開第2008145746号パンフレットでは、樹脂、油およびエネルギー価格が、それらのプラスチックパッケージングミックスの全所有費を減少させるようにパッケージ所有者に対して重要な圧力を与える課題に対処しており、そして特に固有の全性能特徴および設計の融通性を維持しながら、これらの(PETなどの)プラスチック容器の壁の厚さをさらに減少させる(軽量化する)ことを試みている。上記文献は、フロー誘導結晶化(Flow Induced Crystallization)の原理を記載している。これは、ポリエステルベースのポリマー融解物上に制御された局所的なひずみ(剪断)を導入することによって(半)結晶性ポリマーの内部形態的構造を変性する能力を教示する。上記文献は、制御された局部摩擦または剪断がホットランナーシステム内での変性の導入を通して適用され、それによって、ポリエステルベースのポリマー融解物において巨大分子の事前配列/配向が誘導され、そしてそれによって、所望の性能改善が得られ得る、容器を製造するための射出および延伸ブロー成形法をさらに開示する。
【0010】
しかしながら、国際公開第2008145746号パンフレットには、局部剪断の適用に対する種々のポリエステルベースのポリマー材料の反応性、または必要とされるであろう最小剪断曝露、あるいはポリエステルベースのポリマー融解物内での制御された剪断の適用により最適に反応し得る既存のポリマーを選択および/または変性するため、および/または新規ポリマーを作成するためのいずれの機構に関するいずれの教示も存在しない。
【0011】
さらに、国際公開第2008145746号パンフレットにおいて考慮されたポリマー加工操作のほとんどが剪断変形によって支配されるが、上記文献には、それらのポリマー加工および形成操作の間に一般に生じる収縮、分岐または絞り型のフローも伸長変形を伴うという事実に関するいずれの教示も存在しない。したがって、国際公開第2008145746号パンフレットにおけるポリマー材料の変形に関与する強調のほとんどが剪断変形に関する態様に焦点を当てていたが、そこに記載される融解物加工技術のより厳密な分析では、伸長変形に関する態様も考慮するであろう。伸長変形は、融解物においてポリマー鎖を配列、延伸および配向する傾向がある伸長フローを特徴とする。剪断におけるフローと同様に、伸長フローも、融解物加工間にフロー誘導結晶化を生じることができる。
【0012】
そのようなものとして、現在のところ、最小限の必要とされる剪断曝露、または伸長変形への最小限の必要とされる曝露、あるいはフロー誘導結晶化に影響のある適用における使用のために最も適切なポリマーについて、様々なポリエステルベースの材料の間で、およびそれを越えて、いずれかの予測評価およびその次の選択も不可能である。
【0013】
したがって、ポリマー製造技術におけるフロー誘導結晶化の適用に対するそれらの応答に関して、最も適切なポリエステルベースのポリマー材料の選択を可能にする方法を提供することが本発明の目的である。
【0014】
加えて、ポリエステルベースのポリマー融解物内の局部剪断および/または伸長変形の適用に対する最適な反応を提供する既存のポリマー樹脂組成物の変性方法および/または新規ポリエステルベースのポリマー樹脂組成物の製造方法を提供することが本発明の目的である。
【0015】
さらに、最先端と比較して、所与の使用されたポリマー重量に対して、より高い容器体積を得る方法を提供することも本発明の目的である。さらに、本発明の方法は、同一またはより高いポリマー重量を有する、最先端物品、特に容器と比較して、等しいか、またはより高い全機能的性能を有する物品、特に容器を達成し得る。
【0016】
なお別の目的は、高体積容器を製造することにおいて、頸部開口に関する設計制限を減少することである。
【0017】
本発明の方法は、別の目的として、最先端と比較して、熱曝露時に、例えば、ホットフィル適用において、収縮および/または眼に見える結晶化をあまり受けない容器ももたらし得る。
【0018】
ポリマー容器、特にプレフォームの製造方法、および同プレフォーム重量でより高いボトル体積を可能にすることによって、パッケージング費用が減少される、結果として得られる延伸ブロー成形容器を提供することが本発明のさらに別の目的である。
【0019】
本発明の別の目的は、多様な最終用途(一次、二次および三次パッケージング、建築および建設、自動車、電気およびエレクトロニクス)にわたる射出ポリマー物品の機能的性能の増加であり得、機能的改善の実証としては、限定されないが、より良好な寸法安定性(例えば、より少ない品質欠陥を導く、より少ない歪み)、より良好な気体および/または水バリア(二次バリアパッケージングの必要を避ける)、より高い耐衝撃性、またはより高い耐熱性が含まれる。
【0020】
本発明の別の目的は、ポリマー結晶化温度が、ポリマー製造技術におけるフロー誘導結晶化の効果を強化するために圧力変動に対してより反応的であるように、ポリエステルベースのポリマーアーキテクチャおよびモノマー含有量の変性であり得る。
【発明の概要】
【0021】
本発明は、射出延伸ブロー成形(ISBM)におけるポリエステルベースのポリマー融解物内での局部剪断および/または伸長変形の適用に対する改善された応答を提供し得る既存のポリマー材料の選択、変性、および/または新たに開発されたポリエステルベースのポリマー材料の製造のいずれかを可能にする方法に関する。
【0022】
本発明の使用によって、巨大分子配列、巨大分子配向、前駆体、核、球晶または種々の形態の結晶構造などの単一または組み合わせられた存在の種々の種類の形態学的構造が、ポリエステルベースのポリマー融解物内で生じ得る。
【0023】
第1の実施形態として、それをプレフォームへと変換するためのプレフォームモールドにおける融解ポリエステルベースポリマーの射出成形と、融解ポリエステルベースポリマーへの1500 1/秒の壁部における剪断速度の適用とを含んでなるポリマー物品の製造方法において、ポリエステルベースポリマーが少なくとも35,000~143,000g/molのMWを有し、かつ1.00E+07~2.70E+08(g.rad)/(mol.秒)のz値を有し、zが、275℃の温度において測定されたω1で掛けられたMWに等しい方法が提供される。そのような方法は、ブローし、それによって容器を形成することによるプレフォームの二軸延伸をさらに含んでなってもよい。
【0024】
別の実施形態において、それを(半)最終形状へと変換するための融解ポリエステルベースポリマーの射出成形を含んでなるポリマー物品の製造方法において、ポリマーが、射出成形に関しては、少なくとも0.375の適用されたワイセンベルク数、および射出成形に関しては、少なくとも0.75のデボラ数を有し、ポリエステルベースポリマーが35000~143000g/molのMWを有する方法が提供される。
【0025】
上記実施形態に加えて、今や、ポリエステルベースのポリマー融解物が流路において曝露される局部圧力は、単一または組み合わせられた存在の種々の種類の形態学的構造をポリエステルベースのポリマー融解物内で有効に形成するために必要とされる剪断レベルおよび/または伸長変形レベルに影響を与えることが認識された。したがって、ポリエステルベースのポリマー融解物の流路は、流路における剪断および/または伸長変形損失の作用として変更されてもよく、あるいは流路における剪断減粘性のための局部圧力損失の作用として変更されてもよい。
【0026】
好ましくは、ポリエステルベースのポリマー融解物の流路は、流路の少なくとも一部における局部圧力プロフィールの作用として変更されてもよく、上記局部圧力プロフィールは、上記流路の少なくとも一部において適用された局部剪断および/または伸長変形に対するポリエステルベースのポリマー融解物の最適化された応答の作用として決定される。
【0027】
加えて、ポリエステルベースのポリマー融解物の流路は、流路の少なくとも一部における局部圧力プロフィールの作用として変更されてもよく、上記局部圧力プロフィールは、上記流路の少なくとも一部において必要とされる臨界剪断の作用として決定される。
【0028】
特定の実施形態において、使用されるポリエステルベースのポリマー材料は、得られるブレンドまたはコンパウンドのMWの実質的な増加を生じることなく、より低いω1を得るために、異なるMWを有する複数のポリマー材料をブレンドするか、またはコンパウンドすることから得られてもよい。
【0029】
加えて、ポリエステルベースのポリマー融解物において剪断および/または伸長変形を適用しながら、それをプレフォームモールドに変換するためのプレフォームモールドにおける融解ポリエステルベースポリマーの射出成形を含んでなるポリマー物品の製造方法において、ポリエステルベースのポリマー融解物における剪断および/または伸長変形の適用が、流路の少なくとも一部における局部圧力プロフィールの作用として融解半結晶性ポリマーの流路を選択的に変更することを含んでなり、上記局部圧力プロフィールが、上記流路の少なくとも一部において適用された局部剪断および/または伸長変形に対するポリエステルベースのポリマー融解物の最適化された応答の作用として決定される方法が提供される。好ましくは、上記局部圧力プロフィールは、追加的に、上記流路の少なくとも一部において必要とされる臨界剪断の作用として決定されてもよい。そのような方法は、ブローし、それによって容器を形成することによるプレフォームの二軸延伸をさらに含んでなってもよい。
【0030】
本発明による特定の実施形態において、ポリエステルベースのポリマー融解物の流路は、流路の少なくとも一部における局部圧力プロフィールの作用として変更され、かつポリエステルベースのポリマー融解物は、所与の加工温度において変換され、上記加工温度は、樹脂の対応するPVTグラフから決定される周囲圧力におけるポリマー樹脂の結晶化温度よりも高く、かつポリエステルベースのポリマー融解物において適用された上記局部圧力プロフィールは、結晶化温度を、所与の融解加工温度の方へ、または好ましくは少なくとも所与の融解加工温度まで上昇させるように選択される。
【0031】
一般的な実施形態において、ポリエステルベースのポリマー融解物は、所与の局部圧力および所与の加工温度において変換され、上記加工温度は、周囲圧力におけるポリマー樹脂の結晶化温度よりも高く、かつポリエステルベースのポリマー融解物において適用された上記局部圧力は、結晶化温度を、所与の融解加工温度の方へ、または好ましくは少なくとも所与の融解加工温度まで上昇させるように選択される。加えて、ポリエステルベースのポリマー融解物は、加工温度および圧力条件の所与の組合せにおいて微結晶核形成が可能であるような分子配列を達成するために十分変形していてもよい。
【0032】
好ましくは、上記所与の加工温度は、樹脂の対応するPVTグラフから決定される周囲圧力におけるポリマー樹脂の結晶化温度よりも5~40℃、または10~40℃、または20~40℃高い範囲内にあってよい。周囲圧力における結晶化温度は、樹脂の比体積が、周囲圧力における温度に対して最大増加するPVTグラフ上の温度として理解される。
【0033】
好ましくは、適用された局部圧力は、ポリエステルベースのポリマー融解物の結晶化温度を、所与の融解加工温度の方へ、または好ましくは少なくとも所与の融解加工温度まで上昇させるように、0~500MPa、または0~400MPa、または好ましくは、0~200MPaの範囲内で選択されてよい。
【0034】
好ましくは、ポリエステルベースのポリマー融解物の結晶化温度は、融解物加工温度より0~5℃の範囲内で高い温度まで、または融解物加工温度より0~3の範囲内で高い温度まで上昇させてよい。
【0035】
上記実施形態のいずれかによる方法は、
-多様な食品および非食品適用のための容器
-パッケージング、建築および建設、自動車、電気およびエレクトロニクス適用における使用のための射出ポリマー物品のいずれかの形態
-フィルムを含む押出成形ポリマー物品のいずれかの形態
の製造において使用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】
図1は、PETベースポリマー融解物において、局部適用圧力を0から1600バールまで上昇させることによって、どのようにポリマー融解物の融解物結晶化温度の増加が得られるかを示す。
【
図2】
図2は、PETベースポリマー融解物において、局部適用圧力を0から1600バールまで上昇させることによって、どのようにポリマー融解物の融解物結晶化温度の増加が得られるかを示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の第1の実施形態として、融解ポリエステルベースポリマーをプレフォームへと変換するためのプレフォームモールド中での融解ポリエステルベースポリマーの射出と、融解ポリエステルベースポリマー上での1500 1/秒、または少なくとも2,000、または少なくとも5,000、または少なくとも10,000、または少なくとも25,000、または少なくとも50,000、または少なくとも75,000、または少なくとも100,000、かつ160,000 1/秒未満、かつ好ましくは、2,000~50,000 1/秒の壁部における剪断速度の適用を含んでなるポリマー物品の製造方法において、ポリエステルベースポリマーが少なくとも35,000~143,000g/mol、好ましくは、46,000~68,000g/molのMWを有し、かつ1.00E+07~2.70E+08(g.rad)/(mol.秒)、好ましくは、3E+07~21E+07(g.rad)/(mol.秒)のz値を有し、zが、275℃の温度において測定されたω1で掛けられたMWに等しい方法が提供される。この方法は、ブローし、それによって容器を形成することによるプレフォームの二軸延伸をさらに含んでなってもよい。
【0038】
上記実施形態におけるポリエステルベースポリマーの分子量(MW)値は、次の条件下でのゲル透過クロマトグラフィー(GPC)分析によって決定される平均分子量値である:
実験
カラム: PSS PFG LinearM
溶媒: HFIP
温度: 30℃
流量: 1.0ml/min
射出量: 25μl
検出器: M-150-C
データモジュール:GPCPRO3.13
【0039】
ω1(rad/秒)値は、Rheometrics RDA iiまたは同等のものを使用しての動的機械分析(DMA)によって、所与の温度におけるポリマーの周波数掃引応答を測定することによって決定される。動的機械試験には、材料への振動歪みの適用、および結果の応力の測定が含まれる。相シフトならびに応力振幅および歪み振幅の比率によって、周波数の作用としての動的弾性率、貯蔵弾性率(G’(ω))および損失弾性率(G’’(ω))ならびに複素粘性率の計算が可能となる。G’(ω)およびG’’(ω)間の交差点からω1値が決定される。これは、いずれかの理論に拘束されることなく、貯蔵弾性率が損失弾性率を超過し始める点として理解され、粘弾性ポリマーが、「液体」としてではなく、「固体」として作用することを意味する。この交差点が、使用された測定装置によって提供される測定範囲外にある場合、交差点の対応する値は、測定範囲内で得られたデータ点の(非)直線外挿の適用によって決定されるべきである。これは、特に、しかし非排他的に、ポリエステルベース材料の交差点に有効であろう。
【0040】
ポリエステルベース材料の適切な測定プロトコルは、添付書類Aに含まれる。
【0041】
円形断面を有し、かつニュートン性材料(すはわち、一定粘度を有する)による融解物流路(すなわち、チャネル)の単純な場合において、壁部における剪断速度(1/秒)は、次の方程式に従って、ボリュームレートおよびチャネル半径から得られる:
式中、
Q=ボリュームレート
R=チャネルの半径
【0042】
いずれかの非ニュートン性材料(例えば、剪断減粘性を有する)に関して、および/または非円形断面チャネルに関して、壁部における剪断速度は、チャネル内の速度分布から得られる。これは、数値モデル化を使用し、偏微分方程式を解くことによって決定される。本文中で記載される壁部における剪断速度値は、いわゆる、Carreauモデルを使用して決定される。ここでは、Carreau流体が、一般化されたニュートン性流体の一種であり、粘度μ
effは、次の方程式によって、剪断速度
に依存する:
式中、μ
0、μ
inf、λおよびnは、材料係数である。
μ
0=ゼロ剪断速度における粘度(Pa.秒)
μ
inf=無限剪断速度における粘度(Pa.秒)
λ=緩和時間(秒)
n=パワー指数
【0043】
流路(すなわち、チャネル)幾何構造および流路を通るポリエステルベースのポリマーメルトボリュームレートを知ること、ならびに上記4つの材料係数を知ることによって、壁部における剪断速度を誘導することができる。
【0044】
剪断を適用することは、断面視点から、かつその長さに関連して、ポリエステルベースのポリマー融解物が、ポリエステルベースのポリマー融解物内で必要とされる形態構造または種々の形態構造の混合物を生じ得る必要な剪断曝露を受けるような様式で、融解ポリマーの流路を変更することによって実行されてよい。流路は、融解ポリマーの、融解状態で射出成形装置に入る場所からプレフォームモールドキャビティまで続く全経路として理解される。
【0045】
剪断に加えて、融解ポリマーの流路を変更することは、しばしば、伸長フローを必要とすることは指摘されるべきである。伸長フロー、または粘稠材料の延伸を必要とする変形は、典型的なポリマー加工操作で生じるフローを集中および絞ることにおいて最有力の種類の変形である。剪断におけるフローと同様に、伸長フローは、融解物におけるポリマー鎖を配列、延伸および配向する傾向があり、また、融解プロセス間にフロー誘導結晶化を生じることも可能である。
【0046】
一軸外延的変形におけるポリマーフローの挙動は、典型的に、所与の温度および伸長速度に関する時間の作用として瞬間的(または一時的)伸長粘度を示すグラフである伸長粘度成長曲線において示され、典型的に、ログ-ログスケールでプロットされる。成長曲線は、定速伸長における時間の作用として材料のフロー抵抗(粘度)の進展をグラフ化することによって、制御された変形に対する材料応答の反映を提供する。成長プロットは、微小歪みが、Linear Viscoelastic Envelope(LVE)と呼ばれる単一ベース曲線に重なる傾向がある異なる伸長速度に対する複数の伸長粘度成長曲線から構成される。融解状態のLVEからのわずかな偏差を示す樹脂に対する伸長粘度成長曲線は、典型的に、フロー誘導結晶化(FIC)の結果としての結晶化温度付近の温度でのLVEからの顕著な上昇偏差を示す。温度の減少によって、FIC挙動は、LVEからの偏差点において次第に減少してより低い歪みを伴って、LVEからの次第に増加するより大きい伸長粘度偏差によってあらわれる。したがって、一軸伸長におけるポリマー樹脂のFIC挙動は、ピーク融解結晶化温度付近および直下の進歩的により冷たい試験温度における成長プロット上のLVEに対するその伸長フロー挙動を評価することによって、典型的に特徴づけられる。
【0047】
融解物結晶化温度の付近で実行された伸長フロー測定は、所望の試験温度まで徐々に冷却される前に、ピーク融解温度よりも10~20℃高い温度でポリマー樹脂が最初に融解しなければならないことを要求する。これは、所与のポリマー樹脂に対する適切な融解温度範囲を決定するために示差走査熱量測定(DSC)または示差熱分析(DTA)などの技術を使用して、あらかじめ温度の作用としてポリマーの融解物結晶化挙動を特徴づけるために有用である。伸長フロー実験は、その上にSERフィクスチャーが提供される市販の回転レオメーターのオーブンチャンバー中に収容させることができるSentmanat Extensional Rheometer(SER)取付具などの二重ワインドアップドラム伸長レオメーターにおいて典型的に実行される。FIC実験は、試料冷却プロトコルおよび延伸実験の間、試料およびオーブンチャンバー内での厳しい温度制御および正確さおよび最小温度勾配を要求する。一軸伸長におけるポリマー融解物のFIC測定の適切な測定プロトコルは、添付書類Bに含まれる。
【0048】
したがって、流路変更および多くのポリマー加工操作には、剪断および伸長フローの両方の組合せを伴うため、材料の流動学的挙動を特徴づけるためにしばしば使用されるデボラおよびワイセンベルク数などのより一般化された無次元項においてフロー変形を特徴づけることは有用である。
【0049】
デボラ数(De)は、剪断または伸長であるかにかかわらず、一時的な変形に応じる弾性を表す度合いを決定する。正式には、デボラ数は、流体の特有の緩和時間対流体の応答を探査する観測の継続時間の比率として定義される。より低いデボラ数において、材料は、関連ニュートン粘性フローによって、より流体のような様式を作用する。より高いデボラ数において、材料挙動は、ますます弾性によって支配され、かつ固体のような挙動を示す非ニュートン性レジームに入る。
【0050】
ワイセンベルク数(Wi)は、剪断または伸長であるかにかかわらず、適用された変形の結果としての流体の弾性力に対して粘性力を比較する。正式には、ワイセンベルク数は、流体の特有の緩和時間および適用された変形の速度の積として定義される。低いワイセンベルク数において、変形は非常に小さいか、または非常に遅く、かつ剪断また伸長変形に対する流体の応力応答は直線粘弾性挙動を示し、直接釣り合う。より高いワイセンベルク数において、変形は大きいか、または速く、かつ剪断または伸長変形に対する流体の応力応答は非直線粘弾性挙動を示し、釣り合わない。
【0051】
一緒にこれらの2つの無次元数は、材料変形条件の所与の組合せに関するデボラ数に対してのワイセンベルク数のプロットであるPipkinダイヤグラムを使用して、流体の流動学的挙動を特徴づけるために役立つ。形成動作において一般的である収縮フローに関して、ワイセンベルクおよびデボラ数は、しばしば、
Wi=λγ・
w
De=λ/t’
として記載される。式中、λ(=1/ω1)は、ポリエステルベースのポリマー融解物の特有の緩和時間であり、かつt’(=πR3/[8Q])は、4つのフローチャネル直径と等しいアキシアル距離における収縮によるフローのために必要とされる時間である。
【0052】
ここで、ポリエステルベースポリマーに関して、射出成形に関しては、少なくとも0.375の適用されたワイセンベルク数、および射出成形に関しては、少なくとも0.75のデボラ数、あるいは少なくとも0.4および0.8、または少なくとも0.5および1.0、または少なくとも0.6および1.2、または少なくとも0.75および1.5のワイゼンベルグおよびデボラ数を有する(半)最終形状へと変換するための融解ポリエステルベースポリマーの射出成形を含んでなるポリマー物品の製造方法において、ポリエステルベースポリマーが35000~143000g/molのMWを有する方法が提供される。
【0053】
ポリエステルベースのポリマー物品の製造方法において、重要な加工パラメーターの適切な選択は、ポリマーの結晶化特性:変形速度、加工温度、局部圧力および分子配向に影響を与えることが可能となる。
【0054】
流路におけるポリマー融解物流の変形速度は、材料が、ポリマー物品形成プロセスの間に粘着性であるよりも、より弾性に作用することを可能にする結晶化反応を誘引するために十分迅速であるべきである。したがって、ポリエステルベースのポリマー融解物の変形速度は、その特有の緩和時間の逆スケールであるべきであり、言い換えると、材料は、その緩和速度のスケールでの加工速度で形成されなければならない。
【0055】
単純剪断条件における周波数掃引実験を使用して、加工と関連する所与の温度におけるポリマー融解物の分割周波数を決定する。この分割周波数は、液体様(粘着性)ではなく、より固体様(弾性)にポリマーが作用し始める変形速度の指標を提供する。
【0056】
さらに、ポリエステルベースのポリマー融解物は、ポリマー樹脂の圧力依存結晶化温度の付近の温度で加工されるべきであり、言い換えると、材料は、加工圧力および分子配向条件の所与の組合せの下で微結晶核形成が可能である温度において加工されなければならない。根本的な物理的現象は、ポリマー鎖が凍結し始めると、その分子可動性が制限され、それによって、結晶質状態への転換を促進するその立体配置的エントロピー状態が減少することであり得る。したがって、材料が凍結し始める温度は、操作条件の所定の組合せの下でのポリマー鎖の分子可動性の欠如によって規定される。
【0057】
圧力の作用としての融解物結晶化温度は、所与のポリマー樹脂の特有のPVTデータから決定される。このようなPVTグラフは、典型的に、融解物膨張計実験を使用して測定される。
【0058】
加えて、課された分子配向の時点におけるポリエステルベースのポリマー融解物における局部圧力は、微結晶核形成を促進するために融解物加工温度の付近またはすぐ上まで結晶化温度を増加させるために十分高くあるべきである。ポリマー樹脂の結晶化温度における圧力依存シフトが形成操作の加工温度の付近であるように、ポリエステルベースのポリマー融解物は十分に高い圧力において加工されるべきであり、言い換えると、材料は、加工温度および分子配向条件の所与の組合せの下で微結晶核形成が可能である圧力において加工されなければならない。根本的な物理的現象は、圧力増加が、ポリマー鎖の周囲の自由体積の減少を引き起こし、それによって、立体配置的エントロピー状態の減少がもたらされ、そして結晶状態への転換が促進されることであり得る。融合の全エントロピーにおけるこのような減少は、結晶化が、無活動条件下で生じ得るよりも高い温度で生じることを可能にする。
【0059】
図1および2は、PETベースポリマー融解物において、局部適用圧力を0から1600バールまで上昇させることによって、どのようにポリエステルベースのポリマー融解物の融解物結晶化温度の増加が得られるかを示す。局部圧力が増加するようにポリエステルベースのポリマー融解物の流路を変更することによって、結晶化温度は、それが代表的なポリマー加工操作の融解物加工温度の付近またはすぐ上になるように増加し得る。
【0060】
試料は、PVT測定用の2つのバレルのうちの1つを使用して、Rheograph 75ツインボア(twin bore)15mmを使用して測定された。等温試験法が選択された。
【0061】
RamaPETに関しては、結晶化温度は、周囲圧力において250℃および1600バールにおいて287℃の間で決定された。Turbo LTに関しては、結晶化温度は、周囲圧力においてわずかにより高く、かつ1600バールにおいて287℃であった。
【0062】
最終的に、課された分子配向は、結晶化速度を促進し、かつ加速するために、分子配列を促進するために十分大きくあるべきである。ポリマー物品形成プロセスは、フロー誘導/増強結晶化を促進するために、ポリマー鎖の間で十分な度合いの分子配向を課すべきであり、言い換えると、材料は、微結晶核形成が加工温度および圧力条件の所与の組合せの下で可能となるように、十分な度合いの分子配列を達成する様式で変形されなければならない。根本的な物理的現象は、高度のポリマー鎖延伸および配向を生じる高い剪断歪みおよび伸長フロー変形が、それらの最もありそうな形態(ランダムコイル)からポリマーの有意な変形を引き起こし、そして結晶状態への転換を促進する立体配置的エントロピー状態の減少をもたらすことであり得る。融合の全エントロピーにおけるこのような減少は、結晶化が、無活動条件下で生じ得るよりも高い温度で生じることを可能にする。ポリマー鎖の配向および配列の増加は、等方性ポリマー鎖と比較して、結晶化速度の増加ももたらす。
【0063】
伸長レオロジー実験を使用して、所与のポリマー樹脂の融解物結晶化温度の付近の温度におけるフロー誘導結晶化挙動を決定してもよい。
【0064】
加えて、今や、ポリエステルベースのポリマー融解物が曝露される局部圧力が、単一または組み合わせられた存在の種々の種類の形態学的構造のいずれかをポリエステルベースのポリマー融解物内で効果的に生じるために必要とされる剪断レベルおよび/または伸長変形レベルに影響を与えることが認識された。ポリエステルベースのポリマー融解物内の局部圧力は、ポリエステルベースのポリマー融解物内に存在する巨大分子間の分子間摩擦を増加させることに役立ち得、したがって、局部的に適用されたせん断曝露および/または伸長変形への曝露がより効果的になる。必要とされる剪断レベル曝露は、剪断および/または伸長変形が適用される圧力によって影響を受けるため、剪断および/または伸長変形は、好ましくは、ポリマーの形態学的性質が、(半)最終ポリマー物品において望ましい考慮された機能的性能との関連で最適に変化し得るように、最も適切な局部圧力下で適用されてよい。
【0065】
したがって、ポリエステルベースのポリマー融解物の流路は、剪断損失または流路における伸長変形上昇の作用としてさらに変更されてもよく、かつ/あるいは剪断減粘による局部圧力損失または流路における伸長歪み硬化による局部圧力上昇の作用として変更されてもよい。
【0066】
好ましくは、ポリエステルベースのポリマー融解物の流路は、流路の少なくとも一部における局部圧力プロフィールの作用として変更されてもよく、上記局部圧力プロフィールは、上記流路の少なくとも一部において適用された局部剪断および/または伸長変形に対するポリエステルベースのポリマー融解物の最適化された応答の作用として決定される。ポリエステルベースのポリマー融解物の最適化された応答は、適用された局部剪断および/または伸長変形の最適化された有効性として理解される。
【0067】
ポリマー流路の上記変更は、流路の断面点ならびに全長さの両方から剪断および/または伸長曝露を実行するであろう、ポリエステルベースのポリマー融解物内部に存在する局部圧力の制御を可能にするいずれの種類の寸法構成も含み得る。
【0068】
射出延伸ブロー成形の場合、流路を変更することは、特に、ランナーノズルハウジングおよび/またはショットオフニードルバルブのプロファイリングなどの特に設計されたホットランナー変更を通して融解ポリマーを通過させること、あるいはホットランナーシステム内に挿入部(例えば、幾何学的構成、例えば、限定されないが、同心チューブ、スターホイールまたは他の種類の断面幾何構造、あるいは直径変動を有する領域)をホットランナー中の選択された位置に配置することによって達成され得る。これは、高い射出圧力、あるいは反復的圧縮および減圧サイクルと組み合わせられてもよい。押出成形(押出ブロー成形、シート押出成形またはブローンフィルム押出成形)の場合、融解ポリマーの流路は、押出成形ダイの前または中または後で変更されてもよい。
【0069】
驚くべきことに、より高いMWのポリエステルベースポリマーを有するポリマーは、局部剪断の適用に対して改善された応答を示すことが見出された。いずれかの理論によって拘束されないが、局部剪断の適用に対して改善された応答を示す、より高いMWのポリエステルベースポリマーを有するポリマーが、ポリエステルベースのポリマー融解物内部にあることが予想される。
【0070】
さらに、局部剪断を受ける時にポリエステルベースのポリマー融解物の粘度が減少する流動学的現象である剪断減粘が役割を果たすことも観察された。粘度の減少は、製造工程に起因するポリエステルベースのポリマー融解物の局部圧力を低減する。局部圧力の減少がポリマー巨大分子間の分子摩擦の有効性に影響を与えるため、選択されたポリマーの剪断減粘特徴に比例して、より高い剪断レベルが必要とされ得る。
【0071】
したがって、本発明のさらなる実施形態において、ポリエステルベースのポリマー融解物の流路は、ポリエステルベースのポリマー融解物の剪断減粘挙動を考慮に入れて、流路内での好ましい圧力低下プロフィールを達成するために、流路制限によって変更されてもよい。例えば、流路に沿って特定の圧力低下プロフィールが、モールドに向かってのチャネル断面における規定の減少によって、またはポリエステルベースのポリマー融解物流路内部、好ましくは、(半)最終物品のために使用されるモールドキャビティ付近に高い制限領域を導入することによって達成可能であるように、ホットランナーシステム内に取り付けられる挿入部が設計されてもよい。
【0072】
加えて、全てのポリマーが等しく剪断減粘に感応性であるわけではないため、本発明による方法において、ポリマーは、MWおよびそれぞれの対応するω1値、あるいはワイセンベルクおよびデボラ数のみに基づいてではなく、加えて、剪断減粘性対するポリマーの感応性も考慮に入れて、選択、変性または新たに作成されてもよい。
【0073】
ポリエステルベースポリマーは、例えば、PET、高IV PETまたは変性PET、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PGA、PEN、あるいはその組合せをベースにしていてもよく、かつ任意に、物品の物理的特徴を変性するために適切であるコポリマーを含んでなってもよい。ポリエステルベースポリマーは、芳香族熱可塑性ポリエステル、または脂肪族熱可塑性ポリエステルであってよい。加えて、ポリエステルベースポリマーは、例えば、ポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリエチレンフラノエート(PEF)、ポリブチレンスクシネート(PBS)またはポリグリコール酸(PGA)などの生分解性プラスチックであってもよい。
【0074】
ポリプロピレン、ポリエチレンまたはポリエステルベース材料は、ブレンド、コンパウンディング、マスターバッチ処理、または共重合によって達成されてもよく、かつ天然資源から部分的に、または完全に誘導されてもよい。
【0075】
加えて、本発明で使用されるポリマーは、限定されないが、酸化防止剤、UV吸収剤、染料、着色剤、核形成剤、充てん剤およびその混合物などの添加剤を含めて、個々に、または種々の形態の組合せのいずれかで使用される種々の種類の添加剤を含んでなってもよい。
【0076】
第1の利益として、本発明による方法は、今や、局部剪断および/または伸長変形曝露の適用時にポリエステルベースのポリマー融解物において生じ得る形態学的変化に関して改善された応答を示すように選択されるポリマー材料上での局部剪断および/または伸長を適用することを可能にする。これらの形態学的変化は、増加した巨大分子配列、巨大分子鎖配向、前駆体および/または核、球晶の形成、種々の結晶形態学の形成の単一または組み合わせられた利益を含み得る。
【0077】
さらに、本発明による方法は、最先端と比較して、所与の使用されたポリマー重量に対して、より高い容器体積を得ることを可能にする。さらに、本発明の方法は、同一またはより高い壁厚を有する最先端物品と比較して、等しいか、またはより高い寸法安定性、等しいか、またはより良好な気体および/または水バリア特性(補足的なバリア溶液の必要を回避する)、等しいか、またはより高い耐衝撃性、あるいは等しいか、またはより高い耐熱性を有する物品、特に容器を達成し得る。
【0078】
本発明の方法は、最先端と比較して、例えば、ホットフィル適用において、熱曝露時に少ない収縮および/またはより少ない結晶化を受ける容器の製造も可能にし得る。
【0079】
上記実施形態において記載されるように、適切な(半)結晶性ポリマーとの組合せで適切な局部圧力において適切な剪断および/または伸長変形レベルを適用した場合、得られる(半)最終物品が、巨大分子配列、巨大分子鎖非晶質配向、前駆体および/または核、球晶の形成、種々の結晶形態学の形成の単一および/または組み合わせられた存在などの様々な形態学的構造のフラクションを示し得るように、ポリエステルベースのポリマー融解物分子は、(部分的に)それ自体で配列および/または配向し、そして/または結晶化を示し得る。言い換えると:適用された局部圧力および/または適用された局部剪断および/または伸長変形の組合せは、言及される種々の形態学的フラクションを生じるために十分高い必要があり、最も適切な樹脂における適切な選択は、ポリマーが最適に局部剪断および/または伸長変形曝露の適用に反応することを確実にするべきである。
【0080】
フロー誘導結晶化の原理に従って、漸進的により高い応力は、限定されないが、巨大分子配列、巨大分子鎖配向、前駆体、核、球晶および種々の結晶形態学の形成などのポリエステルベースのポリマー融解物内の種々の形態学的構造の漸進的形成を導くことが予想される。
【0081】
ポリマー鎖は、配列または配向されることが可能である。温度ならびに変形および/または外力次第で、配向度は変動可能であり、かつ結晶化を導くことが可能である。しかしながら、配向は結晶化度を暗示しない。ポリマーは、非晶質で、なおかつ配向されることが可能である。
【0082】
ポリマーの結晶化は、それらの分子鎖の部分的配列に関連するプロセスである。前駆体または核の形成は、自己アセンブリまたは自己形成による新たな熱力学的相または新たな構造のいずれかの形成における第1ステップである。核形成は、熱移動の結果としていくつかの鎖またはそれらのセグメントが並列に生じる、小さい、ナノメートルサイズの領域から開始する。それらのシードは、熱移動が分子順列を破壊する場合、切り離されることができるか、または粒径が特定の臨界値を超える場合、さらに成長することができる。
【0083】
結晶質領域の成長は、好ましくは、最も大きい温度勾配の方向において生じ、かつそれらの表面の非晶質折畳み部分によってラメラの上部および下部において抑制される。強い勾配に関しては、成長は一方向性樹状特徴を有する。しかしながら、温度分布が等方性であり、かつ一定である場合、ラメラは放射状に成長し、そして球晶と呼ばれるより大きい準球形凝集体を形成する。球晶は、約1~100マイクロメートルの径を有し、かつ光学的顕微鏡において交差偏光子間で観察される場合、様々な種類の着色パターンを形成し、それは、しばしば、「マルタ十字」パターンおよび球晶の個々のラメラ内の分子配列によって引き起こされる他の分極現象を含む。
【0084】
フロー誘導結晶化の重要なパラメーターは、その上で周囲圧力および所与の参照温度においてポリマー主鎖の完全延伸が達成される、いわゆる自然臨界剪断レベルと関連する。科学文献の組合せを通して、この臨界剪断のための一般式:Cs=3*Mw*ω1/Meが誘導された。式中、Mwはポリマーの重量平均分子量であり、ω1は貯蔵モジュラスG’(ω)および損失モジュラスG’’(ω)’間の交差点であり、かつMeは、絡み合い分子量である。
【0085】
異なる強度の剪断レベルを適用した場合、異なる形態学的構造を有する物品が生じ得ることがさらに観察される。一例として、臨界剪断レベルより(十分に)高い剪断レベルにポリエステルベースのポリマー融解物を暴露することで、得られる物品は、(配向された)非晶質ポリマーマトリックス内の準球形半結晶質凝集体である球晶のフラクション、および/またはロッド様結晶質構造のフラクション、および/またはシシカバブ様結晶質構造のフラクションも含んでなり得る形態学的構造を得ることが観察される。
【0086】
さらなる実施形態において、本発明は、最も適切なポリマーの選択、存在するポリマーの変性または新たに設計されたポリマーの作成を通して、種々の形態的構造がポリマー融解物内部に形成される、剪断レベルにより容易に達するために臨界剪断を減少させようと試みる方法を提案する。
【0087】
上記で説明されるように、臨界剪断に関する新たに誘導された一般式は、Cs=3*MW*ω1/MEであり、分子量の増加によってω1が減少することを考慮して、MWおよびz値の適切な窓領域を有し、任意に剪断減粘性に対するポリマー融解物の感応性、ならびにポリエステルベースのポリマー融解物が流路において曝露される局部圧力も考慮に入れてのポリエステルベースポリマー材料の選択は、巨大分子配列、巨大分子鎖配向、前駆体および/または核、球晶ならびに種々の結晶形態学の形成の単一または組み合わせられたフラクションを誘導するために臨界剪断未満または臨界剪断より高い適切な剪断レベルに、選択されたポリマーを曝露する製造方法をもたらし得る。
【0088】
加えて、ポリエステルベースのポリマー融解物の流路は、流路の少なくとも一部における局部圧力プロフィールの作用として変更されてもよく、上記局部圧力プロフィールは、上記流路の少なくとも一部において必要とされる臨界剪断の作用として決定される。好ましくは、局部圧力プロフィールは、ポリマー製造技術の使用可能な境界内で入手可能な臨界剪断の作用として決定される。
【0089】
射出延伸ブロー成形の場合、製造されたプレフォームが、局部剪断、およびプレフォームをその最終ボトル形状に延伸ブロー成形する能力の適用によって誘導された種々の形態学的フラクション間の最適なバランスを提供する形態学的構造を得るように、剪断レベルは選択されるべきである。
【0090】
表1は、PET樹脂の数に関して、ポリエステルベースのポリマー融解物流路における適用された局部圧力の作用としての臨界剪断を示す。例えば、Turbo LT融解物が1000バールの流路において局部圧力に曝露される場合、少なくとも3512 1/秒の壁部における剪断速度を適用することによって、ポリエステルベースのポリマー融解物はその臨界剪断より高くに暴露され得、かつ巨大分子配列、巨大分子鎖配向、前駆体および/または核、球晶ならびに種々の結晶形態学の形成の組み合わせられたフラクションを誘導し得る。
【0091】
配向された非晶質または(半)結晶質構造などの形態学的フラクションの存在および種類の決定は、例えば、光散乱ベース法、キャピラリーレオロジー、示差走査熱量測定、X線分析(WAXS、SAX)、密度分析、複屈折分析などの単一または組み合わせられた使用のいずれかにおいて、当該技術において既知のいずれかの適切な方法によって実行されてよい。必要であれば、利用可能な分析的特徴決定法は、最終ポリマー物品に存在する種々の形態学的構造の存在を示すために組み合わせられる必要がある。
【0092】
本発明によるさらなる実施形態において、MW及びz値に関して適切な特徴を有さないポリエステルベースポリマー材料は、(半)最終ポリマー物品において望ましい形態学的変化を達成する作用において、局部剪断の適用に対して改善された応答を得るための適切な特徴を得るように変性されてもよい。
【0093】
Mwを変更することは、異なる分子量フラクションを有するポリマーをブレンドすることによって実行され得る。特に、ポリエステルベース材料に関して、高Mwフラクションをより低いMwポリマーにスパイクすることによって、得られたブレンドのMWを有意に増加させることなく、ω1を有意に減少させることが予想される。このようにして、適切な二峰性または多峰性ポリマーが開発され得る。
【0094】
上記で説明された臨界剪断式から誘導することができるように、MWを有意に増加させることなくω1を減少させることは、ポリマーブレンドの臨界剪断を有意に減少させ、それによって、ポリマー物品において望ましい形態学的構造を得るために必要とされる剪断レベルがより容易に達成可能となる。当該技術で既知であるように、ポリマー材料のブレンドは、マスターバッチ処理、種々のポリマーを一緒にコンパウンドすることなどによって、射出成形装置に入る前に単純に混合することによって実行され得る。
【0095】
既存のポリマーを変性させることに加えて、増加した巨大分子配列、ポリマー鎖配向、前駆体および/または核、球晶の形成、ならびに種々の結晶形態学の形成の単一および/または組み合わせられた利益を含めて、局部剪断曝露の適用時にポリエステルベースのポリマー融解物において生じ得る形態学的変化に関して改善された応答を得るために、MWおよびω1、剪断減粘感応性などに関しての必要条件を満たすように新規ポリマー材料が設計される得ることは明確である。
【0096】
驚くべきことに、臨界剪断レベルより高い、および実質的に高い剪断レベルへのポリエステルベースのポリマー融解物の曝露が、前駆体、核、球晶または結晶などとして特徴づけられる形態学的フラクションのより支配的な存在を導き得ることも見出された。例えば、直接射出成形の場合、高い熱安定性、バリア性能および機械的剛性を有する最終物品が得られ得る。しかしながら、極端な場合、結果として生じるポリマー半最終物品は、上記形態学的フラクションの過度の存在に達し得、プレフォームの場合、ブロー成形などの最終ステップが実質的に妨げられ得るか、または従来の操作上の製造条件下でこれ以上実行不可能とさえなり得る。
【0097】
本発明に従って製造されるポリマー物品は、同種の最先端物品と比較して、相当するか、またはより良好な熱安定性、バリア性能および機械的剛性を有し得る。
【0098】
例えば、500mlの炭酸飲料(CSD)型ボトルの場合、本発明に従って選択されるPETからの射出延伸ブロー成形によって製造されるボトルの仕様は、次のとおりであってよい:
-重量24以下、したがって、0.0480g/ml以下の重量/体積比を有するが、次の特徴を満たす:
-上部荷重:+/-20kg以上(ISBT procedures:International Society of Beverage Technologistsを参照)
-破壊圧力:+/-10バール以上
-CO2:周囲(22℃)温度において10週間にわたって17.5%以下の損
-2.5%以下の熱膨張(ISBT熱安定性試験を参照)
【0099】
1500mlのPETから製造された炭酸飲料(CSD)型ボトルの場合の同仕様は、次のとおりである:
-重量40g以下、したがって、0.0267g/ml以下の重量/体積比を有するが、次の特徴を満たす:
-上部荷重:+/-20kg以上(ISBT procedures:International Society of Beverage Technologistsを参照)
-破壊圧力:+/-10バール以上
-CO2:周囲(22℃)温度において12週間にわたって17.5%以下の損失
-2.5%以下の熱膨張(ISBT熱安定性試験を参照)
【0100】
本発明の第1の例は、より厳しい環境条件の地域での炭酸飲料製品用のPET容器の使用に関する。そのような製品の商業的貯蔵寿命は、典型的に、その「気が抜けた」味のため、製品を受け付けない消費者を導く二酸化炭素(CO2)の損失によって制限される。従来の解決策は、多様な内部および/または外部コーティングの適用などのバリア性能を改善する他の製造技術と組み合わせて、性能設計されたポリマーの使用を含むであろう。しかしながら、そのような解決策が、高い生態学的および経済的なコストの両方によってもたらされ、したがって、直面する持続可能性の課題から好ましくないことは明確である。より最適な解決策は、バリア性能の増加に有益である、PET形態学的構造に対する制御された変化の導入を伴うであろう。それによって、従来の専門的な解決策の必要性は減少するか、またはさらには除去される。
【0101】
上記のとおり、本発明の利益は、射出延伸ブロー成形において高体積容器を製造することにおける頸部開口部に関する設計の制約を減少することである。それぞれのポリマーは、最終的に得られた容器における過延伸および微小欠陥の形成による潜在的問題の観点から考慮されなければならない最大延伸比を有するため、所与の頸部開口部直径に対して達成することが可能である最大容器径に関しての限界がある。ブロー成形時に達成可能な延伸比は変更可能であり、かつ現在直面する制限を低減することができるように、本発明は、ポリマー物品の形態学的構造を変化させることを可能にし得る。
【0102】
上記実施例は実例として提供されて、そして(半)最終ポリマー物品内で改善された形態学的構造を達成することから潜在的に生じる利益に対して限定するように意図されないことは明確である。
【0103】
以下の表2は、ポリエステルベースポリマー材料ならびに種々のポリマー物品製造法に関する適切な剪断レベル、MWおよびz値に関して、本発明による特定の実施形態を例示する。この表は、本発明によるポリマー物品製造法において使用するために選択される、商業的に入手可能なポリマー樹脂の例も言及する。
【0104】
添付書類A:ポリマー融解物における周波数掃引実験:測定プロトコル
【0105】
1.範囲
このプロトコルは、融解状態における半結晶質ポリマー、特にポリエステルベースの融解状態における半結晶質ポリマーに対して使用することができる。
【0106】
2.試料調製
a.吸湿性ポリマー樹脂の乾燥:
融解プロセスの間の過度の気泡および空隙形成を回避するために、本質的に吸湿性であるポリマー樹脂は、融解前に最初に乾燥させなければならない。そのようなポリマー試料は、140℃の温度において、かつ25mバール未満の圧力において、少なくとも20時間、真空オーブン中で乾燥される。真空オーブンから取り出した後、樹脂試料はデシケーター中に配置および貯蔵される。
【0107】
b.フラット試料フィルム:
フラットポリマーフィルムは、フィルム押出成形または圧縮成形によって製造される。押出成形フィルムは、樹脂のピーク融解温度より5~20℃低い温度においてオーブン中12時間焼鈍しされる。圧縮成形フィルムは、20000ポンドの圧縮負荷において、5~10分間、ポリマー樹脂のピーク融解温度より10~30℃高い温度において水圧プレスにおいてプレスされる。試料フィルムは、PTFEまたは類似材料の高温成形剥離フィルムの間のサンドウィッチ型フラットモールドにおいて形成される。典型的なモールドキャビティは、厚さ2mmおよび直径4cmである。試料樹脂でモールドを装てんした後、サンドウィッチ型モールドを水圧プレスの加熱プラテンの間に約1分間配置し、その後、モールドに圧力をかけて、ポリマー樹脂を融解させ、軟化させる。次いで、プラテンの圧力を、少なくとも10,000ポンドの負荷まで次第に増加させる。10分後に、プレスを開放し、そしてサンドウィッチ型モールドを取り出し、室温まで冷却させる。
【0108】
c.試験片切断:
円形ダイカッターを使用して、直径25mmの試料をフラット試料フィルムから切断する。試料がいずれかの不純物または気泡も含まないことを確認する。
【0109】
3.回転レオメーターにおける周波数掃引のための並列プラテン幾何構造の使用
利用者は訓練され、かつ回転レオメーターの安全および操作上の手順に精通していなければならない。剪断周波数掃引実験は、並列プレート取付具を用いて、あるいはコーン-アンド-プレート取付具を用いて実行される。次の試験プロトコルは、オーブンチャンバーによって構成された市販の回転レオメーター上で使用される直径25mm並列プレート取付具を用いる操作を記載する。利用者は、取付具およびオーブンチャンバーの熱表面による傷害を防ぐために適切な手および皮膚保護を着用しなければならない。
【0110】
試験構成:
・オーブンチャンバーを開放し、そして回転レオメーターにおいて上下の直径25mmの並列プレート試験幾何構造を注意深く設置する。プレート表面を点検し、そしてそれらがクリーンで、かつほこりおよび他のそのような残留汚染がないことを確認する。
・レオメーター制御ソフトウェアにおいて、計測器モーターおよび試験プロトコルが動的振動モードで作動し、そして直径25mmの並列プレート試験幾何構造が試験幾何構造オプションにおいて選択されたことを確認する。
・レオメーター制御ソフトウェアにおいて、歪みが制御された動的周波数掃引を可能にする試験プロトコルを選択する。所望の周波数の範囲(例えば、0.1~200rad/秒)、歪み振幅(例えば、10%以下)および周波数10あたり回収されたデータ点の数(例えば、10あたり少なくとも5点)を入力することによって、試験プロトコルのパラメーターを編集する。
・上下のプレート間に約1mmのギャップがあるように、上部プレートを注意深く下げる。
・オーブンチャンバーを閉じ、そしてレオメーター制御ソフトウェアにおいて、ポリエステルベースのポリマー融解物のための所望の試験温度を設定する(例えば、ポリエステル樹脂融解物に関しては、265℃、275℃および285℃の試験温度が一般的に使用される)。溶融ポリマー樹脂が、所望の試験温度または温度の組合せにおける試験過程で、あるいは長時間の融解状態において、酸化および/または分解を受ける場合、窒素ガスなどの不活性気体環境が試験間のオーブンチャンバー中で使用されるべきである。
・試験プロトコルを続ける前の少なくとも10分間、望ましい試験温度で取付具が均衡化させる。
【0111】
ゼロギャップ設定および試料装てん:
・上下プレート取付具を所望の試験温度において均衡化させた後、上下プレート取付具間のギャップ基準を確立するために、レオメーター制御ソフトウェアにおいて自動ゼロギャップ特徴を選択する。ゼロギャップ基準を確立した後、制御ソフトウェアがそのように設定される場合、ソフトウェアが、異なる温度において実行される次の試験のためのギャップ基準におけるいずれの熱膨張の差異も自動的に埋め合わせることができるように、試験取付具の温度補償オプションを選択する。
・ゼロギャップ基準によって、上下プレート間のギャップを3mmの距離に設定する。
・オーブンチャンバーを開放し、そして一組のピンセットを用いて、直径25mmの試料ディスクを下部プレート上に注意深く中心に配置する。
・オーブンチャンバーを閉じ、そしてオーブン温度を均衡化させる。
・ポリマー試料が絞られる間、過度の垂直抗力を避けるために注意深く徐々にギャップを1.025mmの距離に設定する。レオメーター制御ソフトウェアにおいてギャップ設定制御が自動化される場合、必ず、計測器および変換器へのダメージを回避するために変換器力範囲の規定スケール内で垂直抗力限界を確立する。
・1.025mmのギャップに達したら、垂直抗力を完全に緩和させる。
・垂直抗力を完全に緩和させたら、オーブンチャンバーを開放し、そしてトリミング用具を使用してプレートの端部周囲で注意深く過剰材料をトリミングする。真ちゅうまたはアルミニウム製の平坦で柔軟な金属トリミング用具は、トリミング手順の間にプレートの端部にダメージを回避するために推奨される。トリミング後、融解試料の端部は、上下の円形プレートの端部と同一平面であるべきである。
・トリミング手順の完了時、オーブンチャンバーを閉じ、そしてオーブンチャンバー温度を均衡化させる。
・温度が均衡化し、そして垂直抗力を完全に緩和させたら、ギャップを1.000mmの距離に設定し、次いで、垂直抗力を完全に緩和させる。
【0112】
試験の実行:
・温度が均衡化し、そして垂直抗力を完全に緩和させたら、レオメーター制御ソフトウェアを使用して試験を開始する。
・周波数掃引実験を所望の試験温度で完了させる。同一試料上で別の試験温度において次の試験を実行する場合、試験温度を変更する前に、垂直抗力を完全に緩和させる。垂直抗力を完全に緩和させたら、同一材料試料上で次の試験を開始する前に、試験温度を変更し、次いで、温度を少なくとも10分均衡化させ、そして垂直抗力を完全に緩和させる。
【0113】
試験終了後:
・試験完了後、オーブンを開放する。
・変換器の垂直抗力容量を超えないように特に注意しながら、上部プレートを注意深く上げる。
・プレートが完全に分離されたら、真ちゅうまたはアルミニウム削り落し用具を使用していずれの残留材料もプレートから注意深く除去し、次いで、布または研究所ティッシュでプレート表面を清潔にふき取る。クリーニングの間、レオメーター変換器に負荷をかけ過ぎないように注意する。
【0114】
4.参照
ISO 6721-10:1997(E):“Plastics-Determination of dynamic mechanical properties-Part 10:Complex shear viscosity using a parallel-plate oscillatory rheometer”Zeichner,G.R.,Patel,P.D.,Proc.2nd World Congr.Chem.Eng.6,373(1981).
【0115】
添付書類B:一軸延伸におけるポリマー融解物上のフロー誘導結晶化測定-測定プロトコル
【0116】
1.範囲
このプロトコルは、融解状態における半結晶質ポリマーに対して使用することができる。
【0117】
2.試料調製
a.吸湿性ポリマー樹脂の乾燥:
融解プロセスの間の過度の気泡および空隙形成を回避するために、本質的に吸湿性であるポリマー樹脂は、融解前に最初に乾燥させなければならない。そのようなポリマー試料は、140℃の温度において、かつ25mバール未満の圧力において、少なくとも20時間、真空オーブン中で乾燥される。真空オーブンから取り出した後、樹脂試料はデシケーター中に配置および貯蔵される。
【0118】
b.フラット試料フィルム:
フラットポリマーフィルムは、フィルム押出成形または圧縮成形によって製造される。押出成形フィルムは、樹脂のピーク融解温度より5~20℃低い温度においてオーブン中12時間焼鈍しされる。圧縮成形フィルムは、20000ポンドの圧縮負荷において、5~10分間、ポリマー樹脂のピーク融解温度より10~30℃高い温度において水圧プレスにおいてプレスされる。試料フィルムは、PTFEまたは類似材料の高温成形剥離フィルムの間のサンドウィッチ型フラットモールドにおいて形成される。モールドは、厚さ0.5~0.8mmであり、最小キャビティ直径は100mm×100mmである。試料樹脂でモールドを装てんした後、サンドウィッチ型モールドを水圧プレスの加熱プラテンの間に約1分間配置し、その後、モールドに圧力をかけて、ポリマー樹脂を融解させ、軟化させる。次いで、プラテンの圧力を、少なくとも10,000ポンドの負荷まで次第に増加させる。10分後に、プレスを開放し、そしてサンドウィッチ型モールドを取り出し、室温まで徐々に冷却させる。
【0119】
c.試験片切断:
研究所剪断を使用して、フラット試料フィルムから約15~18インチ幅のストリップを切断する。次いで、二重並列ブレードギロチンカッターを使用して、典型的な試験片幅が3~13mmの範囲となるような幅で試験片を切断する。切断された試験片にいずれかの不純物または気泡が含まれないことを確認する。
【0120】
3.一時的伸長粘度測定のためのSERの使用
SERは、環境オーブンチャンバーが備えられた市販の回転レオメーターで使用するための取り外し可能な取付具である。利用者は訓練され、かつホストレオメーターシステムおよびSER取付具の安全および操作上の手順に精通していなければならない。次のステップは、ポリマー融解物を用いて、安定/一定Hencky歪み速度条件下でSERを操作する方法を概説する。
【0121】
試験構成:
・レオメーター制御ソフトウェアにおいて、計測器モーターおよび試験プロトコルが安定回転速度モードで作動することを確認する。
・試験幾何構造オプションにおいて、SER試験幾何構造が選択されることを確認する。
・制御ソフトウェアにおいて、所望の伸長速度を入力し、延伸実験間に試験が少なくとも1回の完全ドラム回転を持続することを確認する。
・ソフトウェアにおけるデータ収集が、全実験期間中の時間、速度、トルクおよび伸長粘度データを含むことを確認する。
【0122】
試験片装てん:
・オーブンチャンバーを開放し、そしてSERワインドアップドラムおよび緊締クランプが新しい試験片を受け取るように適切にクリーニングされ、用意が整っていることを確認する。それらがドラム表面から十分に延在するように緊締クランプをワインドアップドラムのそれぞれに挿入し、試料装てんを促進し、次いでオーブンチャンバーを閉じる。あるいは、経験豊富な利用者は、緊締クランプがない状態で、試験片装てんの間、ポリマー試験片を直接的にドラム上に融解させるように、緊締クランプの必要性を排除してもよい。これによって、試験片装てん時間およびオーブンチャンバーを開放するために必要な時間が大幅に削減される。
・レオメーター制御ソフトウェアにおいて、オーブンをポリマー樹脂のピーク融解物温度より10~20℃高い温度に設定する。
・所望の温度設定が達成されるまで、測定されたオーブン温度を注意深く監視する。装置が新しい温度で操作されるか、または室温から加熱される場合、所望の操作温度に達してから少なくとも15分間待ってから、装置を「浸漬」させる。
・試験片装てんの前に、試験片の幅および厚さ寸法を測定および記録する。試験片の伸長粘度を計算することが可能となるように、試験片寸法をレオメーター制御ソフトウェアに入力する。
・利用者は、SERおよびオーブンチャンバーの熱表面による傷害を防ぐために適切な手および皮膚保護を着用しなければならない。試験片は、試験片装てんプロセスの間、常にピンセットで取り扱われるべきである。オーブンチャンバーを開放し、そして試験片の長さ寸法が水平に配向されるように、予熱されたSERドラムに試験片を注意深く装てんする。利用者は、ピンセットによる試験片の取扱いおよび装てんに熟練しており、試験片装てん手順は10~20秒程度のみとなるべきである。したがって、良好に実行された装てん手順によって、オーブンおよびSER取付具によって非常にわずかな熱のみが損失する。
・試験片が適切に装てんされたら、オーブンを閉じ、そしてチャンバーを再加熱させる。
・オーブンを閉じた後、20秒待ち、次いで、計測器制御ソフトウェアにおけるオーブン温度設定を伸長試験の所望の試験温度まで下げる。オーブン内での急冷は、オーブンおよびその中に含まれるポリマー試験片中での大きい温度勾配を防ぐために回避されるべきである。オーブンチャンバー温度が徐々に所望の試験温度まで冷却されることが望ましい。
・試料がSER上に装てんされた後、所望の試験温度(設定点の±0.2℃)が200秒以内に達成されなければならない。
・伸長試験は、試料がSER上に装てんされた240秒後に開始される。
【0123】
試験の実行:
・オーブン温度を監視し、±0.2℃以内で所望の試験温度に達していることを確認する。
・制御ソフトウェアにおいて、試験片延伸実験を開始するための試験を開始する。
・可能であれば、試験間に、オーブンビューポートによって試験片を視覚的に監視し、均質フロー変形を確認するか、または延伸実験の間に生じ得るいずれもの試料ネッキングを観察する。
・試験片が破裂するまで、または試験片が、巻き上げた試験片の端部をオーバーラップし始めるまで、延伸実験を確実に継続する。
【0124】
試験終了後:
・延伸実験完成時に、オーブンチャンバーを開放し、そして試験片残留物をワインドアップドラムから注意深く取り出す。
・試験片残留物が除去されたら、注意深く、ドラム表面からいずれの残留物も取り除くため、クリーンクロスまたは研究所ティッシュでワインドアップドラムをふき取る。
・クリーニング手順の完了時に、オーブンを閉じ、SERを次の測定のための温度まで戻す。
【0125】
4.参照
Sentmanat,M.L.,“Miniature universal testing platform:From extensional melt rheology to solid-state deformation behavior,”Rheol.Acta 43,657-669(2004).
Sentmanat,M;Wang,BN;McKinley,GH,“Measuring the transient extensional rheology of polyethylene melts using the SER universal testing platform,”J.Rheol..,49(3),585-606(2005)