(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-27
(45)【発行日】2023-01-11
(54)【発明の名称】ラチェットレンチのトグル構造
(51)【国際特許分類】
B25B 13/46 20060101AFI20221228BHJP
【FI】
B25B13/46 C
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021079286
(22)【出願日】2021-05-07
【審査請求日】2021-05-13
(32)【優先日】2020-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】511314186
【氏名又は名称】優鋼機械股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】謝 智慶
【審査官】大光 太朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-016506(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0135909(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0145075(US,A1)
【文献】特開2011-073098(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1317395(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 13/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラチェットレンチのトグル構造であって、
頭部と、前記頭部に形成された、収容空間と、前記頭部の上壁に設けられ、前記収容空間と連通している、貫通孔と、
周面に歯部が設けられており、前記頭部の収容空間内に回転可能に取り付けられた、ラチェットと、
前側周面に歯部を備える、歯部材と、前記歯部材の後側周面に上下を呈して設けられた凹溝及び陥入部と、を含み、前記歯部材は前記収容空間内に取り付けられ、前記収容空間の2つの側を移動可能であり、前記トグル構造はさらに、
本体、前記本体頂端に設けられたトグル部、及び前記本体から前方向に延在するトグルカムを有する、トグルを含み、前記トグルは前記収容空間内に回転可能に取り付けられ、前記トグル部は前記貫通孔から前記頭部の外に露出しており、前記トグルカムは前記歯部材の前記陥入部内に延び入り、前記トグルの回転時に、前記トグルカムが前記歯部材を押動して移動せしめ、前記トグル構造はさらに、
前記歯部材の後側と前記トグルの前側との間に設けられた、弾性位置決め要素を含み、
前記弾性位置決め要素の前端は前記歯部材の凹溝に延び入っており、
前記弾性位置決め要素の弾性により前記歯部材の前側と前記ラチェットとの噛合接続を維持せしめ
、
前記トグルカムの幅は、自由端に向かって逓減しており、前記陥入部の開口部分の2つの側の間隔は陥入部内部の2つの側の間隔よりも大きく、前記トグルカムの2つの側面は弧面であり、前記陥入部の2つの側面は弧面である、トグル構造。
【請求項2】
前記トグルカムの2つの側面は内に引っ込んだ弧面であり、前記陥入部の2つの側面は外に張り出した弧面である、
請求項1に記載のトグル構造。
【請求項3】
前記凹溝は前記陥入部の上方に位置し、前記トグルカムは前記トグルの本体の底側に位置する、請求項1に記載のトグル構造。
【請求項4】
前記収容空間の底側は開いており、カバープレートが前記頭部底面に取り付けられて、前記収容空間が閉じられ、前記トグルの底端が前記カバープレートに枢設される、請求項1に記載のトグル構造。
【請求項5】
前記トグルの底端に設けられた、軸部と、前記カバープレートに設けられた、枢着部と、をさらに含み、前記トグルの軸部が前記カバープレートの枢着部に枢着される、
請求項4に記載のトグル構造。
【請求項6】
前記トグルの底端に設けられた、枢着部と、前記カバープレートに設けられた、軸部と、をさらに含み、前記カバープレートの軸部が前記トグルの枢着部に枢着される、
請求項4に記載のトグル構造。
【請求項7】
前記トグルは第1位置と第2位置との間で回転可能であり、前記収容空間の後側周壁に第1位置決め部と第2位置決め部が設けられ、前記トグルの後側に弾性位置決め要素が設けられ、前記トグルが前記第1位置に位置するとき、前記弾性位置決め要素が前記第1位置決め部と弾性的に結合し、前記トグルが前記第2位置に位置するとき、前記弾性位置決め要素が前記第2位置決め部と弾性的に結合する、請求項1から
請求項6のいずれか1項に記載のトグル構造。
【請求項8】
前記頭部の貫通孔の孔縁に設けられた、リミット溝と、前記トグルの本体の周面の間に設けられた凸部と、をさらに含み、前記凸部は前記リミット溝内に延び入っており、前記凸部が前記リミット溝の2つの端に接触すると、前記トグルの回転の止め点となる、請求項1から
請求項6のいずれか1項に記載のトグル構造。
【請求項9】
前記凹溝の幅は前記陥入部の幅よりも大きい、請求項1から
請求項6のいずれか1項に記載のトグル構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は手工具に関し、具体的にはラチェットレンチのトグル構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
2方向の操作が可能なラチェットレンチには方向切替トグルが備えられており、方向切替トグルを操作することでラチェットレンチのラチェットの回転方向が変わる。
【0003】
特許文献1のラチェットレンチ(ラチェット工具)では、トグル122と歯部材94が開示されており、トグル122はレンチの円柱形凹部24に回転可能に取り付けられ、歯部材94はレンチの収容部16内にラチェット48とともに取り付けられている。押圧部材138とバネ136がトグル122の前周面の止まり穴134内に取り付けられ、押圧部材138の前端は歯部材94の凹部104に延び入っており、バネ136の弾性力により、押圧部材138の前端が歯部材94を前に向かって押圧し、歯部材の前周面の歯102をラチェット48の歯52と噛合接続させる。トグル122を回転させたとき、トグル122が押圧部材138とバネ136を介して歯部材94をレンチの左側又は右側の位置へ移動するよう駆動し、且つ歯部材94を収容部16の左側又は右側に弾性的に付勢して、歯部材94が左右の異なる位置でラチェット48と噛合接続するようにし、これによりラチェットレンチの操作方向が時計回り又は反時計回りに変わる。
【0004】
上述の公知のラチェットレンチは、トグル122が押圧部材138とバネ136により歯部材94を収容部16の2つの側に移動するよう駆動するものであり、押圧部材138とバネ136は弾性的な組み合わせ部材であるがゆえに屈曲しやすく、トグル122が歯部材94を駆動して移動させるのが確実ではない。
【0005】
また、トグル122の底縁部はそれぞれ前方向にリップ144が突出し、後方向にリップ145が突出しており、前方向に突出したリップ144は歯部材94底側の弧形凹溝118内に延び入り、後方向に突出したリップ145は凹部24底部の溝内まで延在し、これによりトグル122が凹部24に掛止されている。2つのリップ144、145は、トグル122が凹部24から外れるのを防ぐことができ、トグル122の回転時の安定性にも役立つものの、トグル122の回転を安定させるこの構造はやや複雑で製造しにくく、その安定効果も理想的ではない。
【0006】
また、上述の公知のラチェットレンチは、バネ136の弾性伸長作用をトグル122の位置決め機構としているが、言い換えると、押圧部材138とバネ136は連動部材と位置決め部材の作用を兼ね備えており、トグル122が歯部材94の移動を駆動し、且つトグル122に位置決めを提供するというこの状況は、トグル122の位置決めが確実ではないという問題を生じさせ、ひいては歯部材94の位置決めにも影響し、歯部材94とラチェット48の噛合接続を好ましくない状態にしてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の欠点を解決することを意図しており、ラチェットレンチのトグルが歯部材の移動を駆動する安定性を向上させ得る、ラチェットレンチのトグル構造を提供することを主な目的としている。
【0009】
本発明の別の目的は、トグル回転時の安定性に資するうえに、構造が簡単である、ラチェットレンチのトグル構造を提供することである。
【0010】
本発明のもう1つの目的は、ラチェットレンチのトグルを操作位置に確実に位置決めし得る、ラチェットレンチのトグル構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明が提供するラチェットレンチのトグル構造は、
頭部と、頭部に形成された、収容空間と、
頭部の収容空間内に回転可能に取り付けられた、ラチェットと、
歯部材と、歯部材の後側周面に設けられた、陥入部と、を含み、歯部材は収容空間内に取り付けられ、収容空間の2つの側を移動可能であり、トグル構造はさらに、
本体、本体頂端に設けられたトグル部、及び本体から前方向に延在するトグルカムを有する、トグルを含み、トグルは収容空間内に回転可能に取り付けられ、トグル部は頭部から露出しており、トグルカムは歯部材の陥入部内に延び入り、トグルの回転時に、トグルカムが歯部材を押動して移動せしめ、トグル構造はさらに、
歯部材の後側とトグルの前側との間に設けられた、弾性位置決め要素を含み、その弾性により歯部材の前側に設けられた歯部とラチェットの歯部との噛合接続を維持せしめる。
【0012】
トグルが屈曲しないトグルカムにより歯部材の移動を駆動するようにし、トグルが歯部材の移動を駆動する安定性を向上させている。
【0013】
好適には、トグルのトグルカムの幅はその自由端に向かって逓減しており、陥入部の2つの側の間隔はその内部から開口部へ向かって逓増している。
【0014】
好適には、トグルカムの2つの側面及び陥入部の2つの側はいずれも孤面になっており、トグルカムと陥入部との滑らかな接触を可能にする。
【0015】
好適には、収容空間の底側は開いており、カバープレートが頭部底面に取り付けられて、収容空間が閉じられ、トグルの底端がカバープレートに枢設され、トグルに回転支点を持たせて、トグルの回転時の安定性を向上させる。
【0016】
好適には、弾性位置決め要素はトグルの後側に設けられ、且つ収容空間の後側周面を弾性的に押圧して、トグルを位置決めせしめる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明の目的、特徴及び達成される効果は、下記の好ましい実施例の説明及び図面から理解することができる。
【0018】
【
図1】本発明の好ましい実施例におけるラチェットレンチの立体図である。
【
図4】本発明の好ましい実施例におけるトグルと歯部材の底面斜視図である。
【
図6】
図5の6-6断面の断面図であり、トグルが第1位置に切り替えられたことを示している。
【
図7】
図5の7-7断面の断面図であり、トグルと歯部材が第1位置に位置決めされたことを示している。
【
図8】
図5の8-8断面の断面図であり、トグルと歯部材の第1位置における作動関係を示している。
【
図9】
図6と概ね同じであり、トグルが第2位置に切り替えられたことを示している。
【
図10】
図7と概ね同じであり、トグルと歯部材が第2位置に位置決めされたことを示している。
【
図11】
図8と概ね同じであり、トグルと歯部材の第2位置における作動関係を示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
実施例
図1~
図3を参照して、本発明の好ましい実施例において提供されるラチェットレンチのトグル構造であって、ラチェットレンチの頭部はトグル構造の一部分である。
図1に示す好ましい実施例のラチェットレンチ10は、頭部20及び頭部後端に接続されたシャフト22を含む。ラチェットレンチ10は単独で使用するレンチでよく、シャフト22は使用者の把持に供する。ラチェットレンチ10はトルクの調節が可能なトルクラチェットレンチの一部分にしてもよく、トルクラチェットレンチにする場合、シャフト22は管体(
図1の想像線が示す通り)に通して枢着する。本発明の特徴は、下記のトグルと関係する構造にあり、トグル構造と関係のないもの、本発明の発明目的ではないものについては説明を省略する。
【0020】
ラチェットレンチ10は、頭部20、ラチェット30、歯部材40、トグル50及びカバープレート60を含む。収容空間23は、互いに連通する前収容部24と後収容部25を含み、頭部20に設けられて、ラチェット30、歯部材40及びトグル50を収容して設けるのに用いられ、頭部20の底面には収容空間23と連通する開口201が設けられ、収容空間の底側を開いた状態にさせている。貫通孔26は、頭部20の上壁に設けられ、後収容部25と連通している。
図7を参照して、後収容部25の後側周壁には第1位置決め部27と第2位置決め部28が設けられており、後収容部の2つの側に対称に位置している。リミット溝29は、貫通孔26の孔縁に凹設され、適当な弧長を有しており、リミット溝29の両端はどちらも止め点である。
【0021】
図5及び
図7を参照して、ラチェット30、歯部材40及びトグル50は頭部20の収容空間23内に前から後ろへ配列して取り付けられ、ラチェット30は前収容部24内で回転することができる。ラチェット30は角ドライブ33を凸設するか又は多角形スリーブ孔を設けることができ、ラチェット30がこれによりソケット又は螺合部材(ボルト又はナット)を駆動できるようにさせる。
【0022】
歯部材40は前収容部24の2つの側に移動することができ、その前端面は歯部42を幾らか有し、ラチェット30の周面に設けられた歯部32と噛合接続されている。
図4を参照して、歯部材40の後周面には弧形を呈する凹溝44と陥入部46が上下を呈して設けられており、凹溝44が陥入部46の上方に位置し、44、46の両者は互いに連通してもよい。好ましい本実施例では、両者は隔壁45によって分けられている。凹溝44の幅は陥入部46の幅よりも大きい。陥入部46の2つの側には外に張り出した弧面が設けられており、それぞれ第1弧面461と第2弧面462とし、2つの外に張り出した弧面461、462の設計と、陥入部46の2つの側の弧面が弧形を呈して開き、陥入部の2つの側の間隔(即ち2つの弧面461、462どうしの間隔)が内から外へ向かって逓増していることにより、陥入部の開口部分の間隔を陥入部内部の間隔よりも大きくさせている。
【0023】
トグル50は本体51、本体51の頂端に設けられたトグル部52、本体51の底側から前方向に突出したトグルカム54を有しており、好適には、トグルカム54の幅は自由端に向かって逓減しており、その2つの側面にはどちらも内側へ引っ込んだ弧面541、542が設けられている。軸部55は、本体51の底面に設けられ、トグル50の回転する軸心となる。凸部53は、本体51の上側の周面に凸設され、トグル50は頭部20の貫通孔26から頭部内に差し込まれ、本体51は後収容部25に取り付けられて、後収容部25内で回転する。トグル部52は頭部20から露出している。トグルカム54は歯部材40の後端面の陥入部46内に延び入っており、
図8に示す通り、トグル50を回転させると、トグルカム54を介して歯部材40を駆動して移動させることができる。トグル50の凸部53は頭部20のリミット溝29内に延び入っている。
【0024】
弾性押圧要素80は、圧縮バネ82と玉体84により形成され、その両端はそれぞれ歯部材40の後端面の凹溝44と、トグル50の本体51の前側周面の孔56内とに差し込まれ、その弾性力が歯部材40にラチェット30との弾性的な噛合接続を維持させる。
【0025】
弾性位置決め要素85も圧縮バネ86と玉体88により形成され、その一端はトグル50の本体51の後側周面の孔57内に差し込まれ、他端は2つの位置決め部27、28の1つと弾性的に結合され、トグル50を第1位置又は第2位置(後で説明する)に位置決めさせる。
【0026】
カバープレート60は螺合部材又はその他の方法で頭部20の開口201に取り外し可能に覆設し、収容空間23を密閉する。カバープレート60は、ラチェット30の角ドライブ33を突出させるための孔62を有する。枢着部64がカバープレート60に設けられ、トグル50の軸部55は枢着部64と枢着され、軸部55と枢着部64の枢着位置がトグル50の回転中心となる。なお、軸部55と枢着部64は凹(例えば孔)凸(例えば突出部位)の係合形態であり、そのうちの一方が凹形態、もう一方が凸形態である。例えば、軸部55は円形凸部に作られ、枢着部は円形孔に作られる。又は、軸部55は円形孔に作られ、枢着部は円形凸部に作られる。
【0027】
以下は、本発明の使用及び作動関係について説明するが、以下で述べる時計回り、反時計回り及び左・右方向は、各図面の方向を基準としている。使用者がトグル50を時計回りに回転させると、トグル50のトグルカム54が歯部材40を前収容部24の右側へ押動して移動させ、これによりトグル50と歯部材40を
図6~
図8に示す第1位置に移動させるが、
図6を参照して、トグル50が時計回りに回転すると、凸部53がリミット溝29の右端に阻まれ、トグル50の回転の止め点となる。このとき、
図7に示す通り、歯部材40がトグルカム54の駆動を受け、前収容部24の右側壁面に当接し、弾性位置決め要素85が第1位置決め部27に弾性的に結合され、トグル50を第1位置に位置決めされたままにし、弾性押圧要素80が歯部材40とラチェット30との噛合接続を維持させる。この状態下で、レンチ10を時計回りに回したとき、歯部材40とラチェット30が噛合接続状態を維持しているため、ラチェット30を連動させて時計回りに回転せしめる。逆に、レンチ10を反時計回りに回したとき、歯部材40はラチェット30の外周を跳動し、レンチ10がラチェット30を有効に連動させて回転させることはできない。
【0028】
トグル50を反時計回りに回転させると、トグル50と歯部材40を
図9~
図11に示す第2位置に移動させることができる。
図9を参照して、トグル50の凸部53がリミット溝29の左端に阻まれ、トグル50の反時計回り回転の止め点となる。
図8を参照して、トグル50が第1位置から歯部材40を駆動して左側へ移動させるとき、トグル50のトグルカム54の左側の弧面541が歯部材40の陥入部46の左側の第1弧面461に接触するが、2つの弧面541、461が良好に接触するため、トグル50が反時計回りに回転して歯部材40を左へ押動して移動させる作動過程中、トグルカム54の弧面541と陥入部46の弧面461が実質的かつ滑らかな接触を維持し、トグル50が歯部材40を確実に駆動して左へ移動せしめ、誤動作が生じない。
【0029】
トグル50と歯部材40が
図10及び
図11に示す第2位置まで移動したとき、歯部材40が前収容部24の左側の壁面に当接し、弾性位置決め要素85が第1位置決め部27を離れて第2位置決め部28に弾性的に結合され、トグル50を第2位置に位置決めされたままにし、弾性押圧要素80が歯部材40とラチェット30との噛合接続を維持させる。この状態下で、レンチ10を反時計回りに回したとき、ラチェット30を連動させて反時計回りに回転せしめる。逆に、レンチ10を時計回りに回したとき、歯部材40はラチェット30の外周を跳動し、レンチ10がラチェット30を有効に連動させて回転させることはできない。
【0030】
トグル50と歯部材40を第2位置から再び第1位置に切り替えたい場合、
図11を参照して、トグル50のトグルカム54の右側の弧面542が歯部材40の陥入部46の右側の第2弧面462に接触するため、トグル50を時計回りに回転させるとき、トグルカム54が歯部材40を右へ駆動して移動させ、且つ作動過程中、トグルカム54の弧面542と陥入部46の弧面462が実質的かつ滑らかな接触を維持し、トグル50が歯部材40を確実に駆動して右へ移動せしめ、誤動作が生じない。
【0031】
本発明が提供するラチェットレンチは、トグル50が屈曲しないトグルカム54により歯部材40の移動を駆動するようにし、歯部材の移動を確実且つ安定的に駆動せしめるとともに、トグルカム54の形態(幅が自由端に向かって逓減している)、陥入部46の形態(間隔が内から開口部分に向かって逓増している)並びにその弧面541、542、461及び462の係合により、トグル50と歯部材40が広い角度で移動する過程中、トグルカム54と陥入部46が確実且つ良好に接触することができる。
【0032】
トグル50は、その底端の軸部55によりカバープレートの枢着部64と枢着されるため、トグルに非常に優れた回転安定性を具備させるとともに、トグルの回転支点の構造が簡便で製造しやすい。
【0033】
弾性押圧要素80は、歯部材40を弾性的に押圧することだけを担う。本発明は、トグル50を第1位置又は第2位置に位置決めする弾性位置決め要素85をさらに提供しているため、トグル50を操作位置に確実に位置決めすることができ、ひいては歯部材40の操作位置も確実に位置決めせしめ、歯部材40とラチェット30に安定した噛合接続を維持させることができる。
【0034】
トグル50の回転時には、リミット溝29の制限を受け、第1位置及び第2位置まで正確に回転することができる。
【0035】
本発明が提供するトグル構造は、2方向ラチェットレンチの使用における利便性を確実に向上させることができ、効果的である。上述の実施例は本発明の特徴の説明に過ぎず、限定するものではなく、本発明の等価的修正はすべて本発明の保護範囲に属すると解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0036】
10 ラチェットレンチ
20 頭部
201 開口
22 シャフト
23 収容空間
24 前収容部
25 後収容部
26 貫通孔
27 第1位置決め部
28 第2位置決め部
29 リミット溝
30 ラチェット
32 歯部
33 角ドライブ
40 歯部材
42 歯部
44 凹溝
45 隔壁
46 陥入部
461 第1弧面
462 第2弧面
50 トグル
51 本体
52 トグル部
53 凸部
54 トグルカム
541、542 弧面
55 軸部
56 孔
57 孔
60 カバープレート
62 孔
64 枢着部
80 弾性押圧要素
82 バネ
84 玉体
85 弾性位置決め要素
86 バネ
88 玉体