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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-27
(45)【発行日】2023-01-11
(54)【発明の名称】光レセプタクル
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/36 20060101AFI20221228BHJP
【FI】
G02B6/36
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021501449
(86)(22)【出願日】2019-02-27
(86)【国際出願番号】 JP2019007519
(87)【国際公開番号】W WO2020174602
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000243342
【氏名又は名称】本多通信工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大井 茂弘
(72)【発明者】
【氏名】吉崎 毅
(72)【発明者】
【氏名】吉村 宏一郎
(72)【発明者】
【氏名】大久保 靖明
(72)【発明者】
【氏名】後藤 直英
【審査官】井部 紗代子
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-054009(JP,U)
【文献】特表2000-502814(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/24
G02B 6/255 - 6/27
G02B 6/30 - 6/34
G02B 6/36 - 6/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバを保持する貫通孔が設けられたフェルールを有する光プラグと接続される光レセプタクルにおいて、
前記フェルールが挿入される挿入孔を有する受け部を備え、
前記挿入孔は、前記フェルールの先端が押し付けられる底面を有し、
前記底面は、第一当接部と、第二当接部とを有し、
前記第一当接部及び前記第二当接部は、前記挿入孔の中心軸に対して垂直な平面であり、
前記フェルールの先端にあり前記貫通孔の出口設けられ軸方向に対して垂直な垂直面を有する第一の光プラグと接続された場合に、前記第一当接部が前記フェルールの前記垂直面に当接し、
前記フェルールの先端にあり軸方向に対して垂直な垂直面と、前記貫通孔の出口が設けられ前記軸方向に対して斜めに傾斜した傾斜面を有する第二の光プラグと接続された場合に、前記第二当接部が前記フェルールの前記垂直面に当接し、
前記中心軸の軸方向における前記第一当接部と前記第二当接部との間の距離は、前記第二の光プラグの前記フェルールの軸方向における前記垂直面と前記貫通孔の出口との間の距離と等しい
光レセプタクル。
【請求項2】
光ファイバを保持する貫通孔が設けられたフェルールを有する光プラグと接続される光レセプタクルにおいて、
前記フェルールが挿入される挿入孔を有する受け部を備え、
前記挿入孔は、前記フェルールの先端が押し付けられる底面を有し、
前記底面は、第一当接部と、第二当接部と、溝部とを有し、
前記第一当接部は、前記挿入孔の中心軸に対して垂直な平面であり、
前記第二当接部は、前記挿入孔の中心軸に対して斜めに傾斜した平面であり、
前記フェルールの先端にあり前記貫通孔の出口設けられ軸方向に対して垂直な垂直面を有する第一の光プラグと接続された場合に、前記第一当接部が前記フェルールの前記垂直面に当接し、
前記フェルールの先端にあり前記貫通孔の出口が設けられ軸方向に対して斜めに傾斜した傾斜面を有する第二の光プラグと接続された場合に、前記第二当接部が前記フェルールの前記傾斜面に当接し、
前記第二当接部の傾斜角度は、前記第二の光プラグの前記フェルールの前記傾斜面の傾斜角度と等しく、
前記溝部は、前記第二当接部よりも窪み、これにより、前記第の光プラグの前記傾斜面のうち前記フェルールの先端にある部分に前記第二当接部が当接しない
光レセプタクル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバに接続された光プラグに接続される光レセプタクルに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバの先端面が軸方向に対して垂直であると、光ファイバを通過した光が先端面で反射して送信側に戻り、発光素子の発光状態が不安定になるので、伝送信号の品質が劣化する。
これを防ぐため、光ファイバの先端面を軸方向に対して斜めに傾斜させ、先端面で反射した光が送信側に戻るのを防止することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-294585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プラスチック製の光ファイバにおいて、先端面を軸方向に対して斜めにするため、光ファイバを光プラグに固定したのち、光ファイバを保持したフェルールの先端から露出した光ファイバの先端を斜めに切断することが考えられる。この加工を容易にするため、フェルールの先端に、軸方向に対して斜めに傾斜した傾斜面を設けることが考えられる。
一方、伝送損失を抑えるため、光ファイバの先端は、光レセプクルに設けられた光学系の焦点位置によって定まる所定の位置に配置される。これを確実にするため、光プラグを光レセプタクルに接続するとき、フェルールを先端方向へ向けて付勢し、光レセプタクルに押し付ける。
フェルールの先端に傾斜面を設けると、フェルールの最先端の部分が、光ファイバの先端よりも前に位置する。これに対し、フェルールの先端に傾斜面がない光プラグの場合は、フェルールの最先端の部分は、光ファイバの先端とほぼ同じ位置である。
したがって、フェルールの先端に傾斜面がある光プラグと、傾斜面がない光プラグとでは、光レセプタクルに接続したとき、光ファイバの先端の位置が異なる。いずれか一方の光プラグについて、伝送損失が最小になるよう、フェルールの位置を定めると、他方の光プラグについては、伝送損失が大きくなる。このため、いずれの光プラグを接続した場合も伝送損失が小さくなるようにすることは難しい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
光レセプタクルは、光ファイバを保持するフェルールを有する光プラグと接続される。光レセプタクルは、前記フェルールが挿入される挿入孔を有する受け部を備える。前記挿入孔は、前記フェルールの先端が押し付けられる底面を有する。前記底面は、第一当接部と、第二当接部とを有する。前記第一当接部は、前記フェルールの前記先端が軸方向に対して垂直である第一の光プラグと接続された場合に、前記フェルールの前記先端に当接する。前記第二当接部は、前記フェルールの前記先端に軸方向に対して斜めに傾斜した傾斜面を有する第二の光プラグと接続された場合に、前記フェルールの前記先端に当接する。前記第二当接部は、前記第二の光プラグの前記フェルールに保持された光ファイバの先端の位置が、前記第一の光プラグの前記フェルールに保持された光ファイバの先端の位置と同一になるよう配置されている。
前記第一当接部は、軸方向に対して垂直な平面を有してもよい。
前記第二当接部は、軸方向に対して垂直な平面を有し、前記第二の光プラグの前記フェルールの前記先端に設けられた軸方向に対して垂直な平面に当接してもよい。
前記第二当接部は、前記第二の光プラグの前記傾斜面の傾斜に沿って傾斜した面を有し、前記傾斜面に当接してもよい。
前記底面は、前記第二の光プラグの前記フェルールの前記先端のうち最先端の部分に当接しないよう回避する溝部を更に有してもよい。
【発明の効果】
【0006】
前記光レセプタクルによれば、前記第二の光プラグの前記フェルールに保持された光ファイバの先端の位置が、前記第一の光プラグの前記フェルールに保持された光ファイバの先端の位置と同一になるので、どちらの光プラグを接続した場合でも、同じように伝送損失を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】光プラグ80の一例を示す図。
図2】光レセプタクル10の一例を示す正面図。
図3】前記光レセプタクル10を示すIII-III断面図。
図4】底面32の一例を示す斜視図。
図5】フェルール81が底面32に当接しているところを示す断面図。
図6】光プラグ80aの別の例を示す図。
図7】前記光プラグ80aのフェルール81が底面32に当接しているところを示す断面図。
図8】光プラグ80bの別の例を示す図。
図9】底面32の別の例を示す断面図。
図10】前記光プラグ80bのフェルール81が底面32に当接しているところを示す断面図。
図11】光レセプタクル20の一例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1に示すとおり、光プラグ80は、光ファイバを保持するフェルール81を有する。フェルール81の先端は、概ね円柱状であり、中心を軸方向に貫通する貫通孔(不図示)を有する。フェルール81の先端には、軸方向に対して斜めに傾斜した傾斜面82と、軸方法に対して垂直な垂直面83とを有する。垂直面83は、フェルール81の最先端の部分にある。前記貫通孔の出口は、傾斜面82にある。前記貫通孔のなかに光ファイバを挿通し、傾斜面82から外側に露出した部分を切断することにより、前記光ファイバの先端を斜めに加工する。
【0009】
図2及び3に示すとおり、光レセプタクル10は、ハウジング11と、受け部12と、光学素子14と、レンズ15とを有する。
ハウジング11には、光プラグ80と嵌合する嵌合構造が設けられ、光プラグ80を光レセプタクル10に対して所定の位置に固定する。
受け部12には、光プラグ80のフェルール81が挿入される挿入孔13が設けられている。挿入孔13は、円筒状の側面31と、フェルール81の先端に当接する底面32とを有する。側面31は、フェルール81が挿入孔13に対して軸方向に自由に移動できるようにするため、フェルール81の外径よりもわずかに大きい内径を有する。底面32の中心には、光ファイバを通過する光が通る貫通孔33が設けられている。なお、光ファイバを通過する光を透過する透光材料で底面32を形成してもよく、その場合は、貫通孔33を設けなくてもよい。
光学素子14は、例えば発光素子であり、光学素子14から放射された光がレンズ15によって所定の焦点位置に焦点を結ぶ。あるいは、光学素子14は、受光素子であり、前記焦点位置から放射された光がレンズ15によって光学素子14に焦点を結ぶ。挿入孔13に挿入されたフェルール81によって保持された光ファイバの先端を前記焦点位置によって定まる所定の位置に合わせることにより、伝送損失を抑えることができる。
【0010】
図4に示すとおり、底面32には、第一当接部36が設けられている。第一当接部36は、挿入孔13の中心軸の上に中心を有する半円状である。第一当接部36は、中心軸に対して垂直な平面である。
底面32には、更に、第二当接部34が設けられている。第二当接部34は、挿入孔13の中心軸の上に中心を有する半円状である。第二当接部34は、中心軸に対して垂直な平面である。第二当接部34は、第一当接部36よりも窪んでいて、第一当接部36と第二当接部34との間には、段差が設けられている。
【0011】
図5に示すとおり、光プラグ80を光レセプタクル10に接続すると、光プラグ80に設けられた付勢機構により、フェルール81が先端方向に付勢され、フェルール81の先端が底面32に押し付けられる。このとき、垂直面83が第二当接部34に当接する。第一当接部36は、第二当接部34よりも上にあるが、傾斜面82が斜めに傾斜しているので、フェルール81の先端には当接しない。したがって、光レセプタクル10に対するフェルール81の位置は、第二当接部34に当接する垂直面83によって定まる。光レセプタクル10は、この状態でフェルール81に保持された光ファイバの先端が前記焦点位置によって定まる所定の位置にあるよう構成されている。
【0012】
図6に示すとおり、光プラグ80aは、光プラグ80とほぼ同じ構成であるが、フェルール81の先端の形状が異なる。光プラグ80aのフェルール81の先端には、軸方向に対して垂直な垂直面84のみが設けられ、傾斜面82は設けられていない。このため、光ファイバの先端は、斜めではない。
【0013】
図7に示すとおり、光プラグ80aを光レセプタクル10に接続すると、垂直面84が第一当接部36に当接する。第二当接部34は、第一当接部36よりも下にあるので、フェルール81の先端に当接しない。したがって、光レセプタクル10に対するフェルール81の位置は、第一当接部36に当接する垂直面84によって定まる。光レセプタクル10は、この状態でフェルール81に保持された光ファイバの先端が前記焦点位置によって定まる所定の位置にあるよう構成されている。
【0014】
すなわち、第一当接部36と第二当接部34との間の段差の高さは、光プラグ80におけるフェルール81に保持された光ファイバの先端の位置から垂直面83までの軸方向における距離と、光プラグ80aにおけるフェルール81に保持された光ファイバの先端の位置から垂直面84までの軸方向における距離との間の差に等しい。通常、フェルール81に保持された光ファイバの先端の位置は、フェルール81の貫通孔の出口の中心位置にほぼ等しい。したがって、第一当接部36と第二当接部34との間の段差の高さは、光プラグ80におけるフェルール81の貫通孔の出口の中心位置から垂直面83までの軸方向における距離とほぼ等しい。
これにより、光レセプタクル10に光プラグ80を接続した場合も、光プラグ80aを接続した場合も、同じように、伝送損失を小さくすることができる。
【0015】
図8に示すとおり、光プラグ80bは、光プラグ80とほぼ同じ構成であるが、フェルール81の先端の形状が異なる。光プラグ80bのフェルール81の先端には、軸方向に対して斜めに傾斜した傾斜面82のみが設けられ、垂直面83は設けられていない。
フェルール81の最先端の部分が尖っているので、底面32が図4で説明したような形状だと、フェルール81の最先端の部分が第二当接部34に当接することになり、応力が集中するので、フェルール81が変形したり破損したりする可能性がある。
【0016】
これを防ぐため、底面32の形状を、図9に示すとおり変更してもよい。
すなわち、第二当接部34は、傾斜面82の傾斜に沿って傾斜した平面である。第二当接部34の法線が中心軸との間になす角は、傾斜面82の法線が中心軸との間になす角と等しい。
底面32には、更に、溝部35が設けられている。溝部35は、第二当接部34よりも窪んでいる。
【0017】
図10に示すとおり、光プラグ80bを光レセプタクル10に接続すると、傾斜面82が第二当接部34に当接する。また、溝部35が第二当接部34よりも窪んでいるので、フェルール81の最先端の部分は、底面32から離れ、当接しない。したがって、光レセプタクル10に対するフェルール81の位置は、第二当接部34に当接する傾斜面82によって定まる。光レセプタクル10は、この状態でフェルール81に保持された光ファイバの先端が前記焦点位置によって定まる所定の位置にあるよう構成されている。
【0018】
これにより、光レセプタクル10に光プラグ80bを接続した場合も、光プラグ80aを接続した場合と同じように、伝送損失を小さくすることができる。
光レセプタクル10に光プラグ80を接続した場合は、傾斜面82が第二当接部34に当接することで、フェルール81の位置が位置決めされるので、光プラグ80bを接続した場合と同様に、伝送損失を小さくすることができる。
【0019】
図10に示すとおり、光レセプタクル20は、ハウジング21と、受け部22とを有する。光レセプタクル20は、二つの光ファイバを接続するためのアダプタとして機能する。
ハウジング21には、光プラグ80と嵌合する嵌合構造が二つ設けられている。それぞれの嵌合構造に光プラグ80を嵌合させることにより、二つの光プラグ80を互いに対向する位置に固定する。
受け部22には、光プラグ80のフェルール81が挿入される二つの挿入孔23a,23bが設けられている。受け部22は、光プラグ80を通過する光を透過する透光材料で形成されている。なお、挿入孔23a,23bの底面以外の部分は、光プラグ80を通過する光を透過しない不透光材料で形成してもよい。
挿入孔23a,23bの形状は、光レセプタクル10の挿入孔13と同様である。ただし、貫通孔33の代わりに、有底穴33a,33bが設けられている。有底穴33a,33bの底面は、例えば、軸方向に対して垂直な平面である。
また、受け部22には、有底穴の先に凸部25a,25bが設けられている。凸部25a,25bは、例えば球面状であり、有底穴33a,33bの底面と協働して、レンズの役割を果たす。なお、所望のレンズとして機能するのであれば、有底穴33a,33bはなくてもよい。
挿入孔23aに挿入されたフェルール81によって保持された光ファイバの先端から放射された光は、凸部25a,25bによって、挿入孔23bに挿入されたフェルール81によって保持された光ファイバの先端に焦点を結ぶ。
なお、光レセプタクル10と同様、レンズ15を設けてもよく、その場合は、凸部25a,25bを設けなくてもよいし、有底穴33a,33bではなく貫通孔33を設けてもよい。貫通孔33を設ける場合は、光プラグ80を通過する光を透過しない不透光材料で受け部22を形成してもよい。
【0020】
すなわち、光レセプタクル20は、上述した光レセプタクル10を背中合わせに二つ結合したものであり、光学素子14を設ける代わりに、光学素子14の位置にもう一つの光ファイバの先端を配置することにより、二つの光ファイバを接続し、一方の光ファイバを通過した光を、他方の光ファイバに入射させる。
光レセプタクル20は、上述した光レセプタクル10と同様、フェルールの形状が異なっていても、光ファイバの先端を同じ位置にすることができるので、いずれの形状のフェルールを使用した場合でも、同じように伝送損失を小さくすることができる。
【0021】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例である。本発明は、これに限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって定義される範囲から逸脱することなく様々に修正し、変更し、追加し、又は除去したものを含む。これは、以上の説明から当業者に容易に理解することができる。
【符号の説明】
【0022】
10,20 光レセプタクル、11,21 ハウジング、12,22 受け部、13,23a,23b 挿入孔、14 光学素子、15 レンズ、25a,25b 凸部、31 側面、32 底面、33 貫通孔、33a,33b 有底穴、34 第二当接部、35 溝部、36 第一当接部、80,80a,80b 光プラグ、81 フェルール、82 傾斜面、83,84 垂直面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11