IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 千住スプリンクラー株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-スプリンクラーヘッド 図1
  • 特許-スプリンクラーヘッド 図2
  • 特許-スプリンクラーヘッド 図3
  • 特許-スプリンクラーヘッド 図4
  • 特許-スプリンクラーヘッド 図5
  • 特許-スプリンクラーヘッド 図6
  • 特許-スプリンクラーヘッド 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-27
(45)【発行日】2023-01-11
(54)【発明の名称】スプリンクラーヘッド
(51)【国際特許分類】
   A62C 37/09 20060101AFI20221228BHJP
   A62C 37/12 20060101ALI20221228BHJP
   B05B 1/26 20060101ALI20221228BHJP
【FI】
A62C37/09
A62C37/12
B05B1/26 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021567569
(86)(22)【出願日】2020-12-23
(86)【国際出願番号】 JP2020048259
(87)【国際公開番号】W WO2021132382
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】P 2019232182
(32)【優先日】2019-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000199186
【氏名又は名称】千住スプリンクラー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106220
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 正悟
(72)【発明者】
【氏名】千葉 雅春
(72)【発明者】
【氏名】立石 豊
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 一真
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/120729(WO,A1)
【文献】特開2013-208146(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0374802(US,A1)
【文献】実開平6-77758(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 7/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に開口するスリットを有するボディと、
前記ボディに保持されており、前記ボディの下端から突出するヒートコレクターと、
前記ボディと係合する筒部と、前記筒部の下端から外方に広がる外周縁が天井面と接触可能な皿部とを有するエスカッションと
を備えるスプリンクラーヘッドであって、
さらに、前記筒部は、
前記筒部の周壁の一部が欠如する欠如部を有しており、
前記筒部は、前記ボディに対する差込深さに応じて第1の保持位置と第2の保持位置において前記ボディに対して保持可能であり、
さらに、前記スプリンクラーヘッドは、
前記第1の保持位置では、前記ボディの下端に開口する連通部が外気の第1の導入口となり、前記筒部の前記欠如部が前記ボディの前記スリットと重なることで前記ボディに流入した前記外気を天井裏に排出する第1の出口となる第1の気流経路を形成し、
前記第2の保持位置では、前記エスカッションと前記ヒートコレクターとの間に形成される間隙部が前記外気の第2の導入口となり、前記筒部の前記欠如部が前記天井裏に前記外気を排出する第2の出口とする第2の気流経路を形成する
スプリンクラーヘッド。
【請求項2】
前記ヒートコレクターの内部に収容される感熱要素を有し、
前記感熱要素には有底円筒状であり内部に可溶合金が充填されたシリンダーが含まれており、
前記シリンダーの底面から突出した牡ねじは、前記ヒートコレクターに設置されたナットと接続され、前記ナットは前記ヒートコレクター側の端が大径であり、前記シリンダー側の端が小径となっている請求項1記載のスプリンクラーヘッド。
【請求項3】
前記ナットの前記シリンダー側の外径は前記シリンダー底面の直径以下である請求項2記載のスプリンクラーヘッド。
【請求項4】
前記ナットの前記シリンダー側の外径は前記シリンダーにおける前記可溶合金が充填されている部分の内径以下である請求項2又は請求項3記載のスプリンクラーヘッド。
【請求項5】
前記皿部は、内縁側がテーパー状である請求項1~請求項4いずれか1項記載のスプリンクラーヘッド。
【請求項6】
前記欠如部が谷状に形成されている請求項1~請求項5いずれか1項記載のスプリンクラーヘッド。
【請求項7】
前記欠如部において前記筒部の下端に最も近い底部から前記筒部の下端までの高さは、前記皿部の外縁から前記筒部の下端までの高さよりも短い請求項1~請求項6いずれか1項記載のスプリンクラーヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火用のスプリンクラーヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
スプリンクラーヘッドは火災時に自動的に作動して水を散布する。常時においてノズルは弁により閉止されており、弁は感熱作動部により本体下端に支持されている。感熱作動部に組み込まれた感熱要素が火災の熱により作用することで感熱作動部が分解作動する。弁は感熱作動部によりノズル側に押圧されていたが、弁がノズルから離れてノズルが開放される。ノズルから放出された水はノズルの軸の延長方向に設置された板状のデフレクターに衝突して四方に飛散され火災を消し止める。
【0003】
上記のスプリンクラーヘッドの一例としてフラッシュ型スプリンクラーヘッドがある。フラッシュ型スプリンクラーヘッドは給水配管と接続する本体が天井に埋め込まれて設置されており、感熱作動部の下方のみが天井面より室内側に突出して設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-27929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フラッシュ型スプリンクラーヘッドは、天井面から室内側に突出する部分が小さく目立たないほうが意匠的に好ましい。しかしながら、感熱作動部が天井の内部に配置されると、火災の熱が感熱要素に伝わりにくくなり、スプリンクラーヘッドの作動に時間を要するおそれがある。
【0006】
また、感熱要素への熱の伝播を促すために感熱要素を覆っている部品に穴を設けて構成したものがある(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、設けられた穴によって、スプリンクラーヘッドの意匠性が損なわれたと受け止める顧客もいる。また、感熱要素と感熱要素を覆っている部品との接合強度が弱くなることによって、スプリンクラーヘッドの輸送時、施工時等における当該部品の損傷、脱落等が危惧される。
【0007】
そこで、本出願の目的は、スプリンクラーヘッドの意匠性を損なわずに感度性能を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本出願で開示する一つの態様では、外周面に開口するスリットを有するボディと、前記ボディに保持されており、前記ボディの下端から突出するヒートコレクターと、前記ボディと係合する筒部と、前記筒部の下端から外方に広がる外周縁が天井面と接触可能な皿部とを有するエスカッションとを備えるスプリンクラーヘッドであって、さらに、前記筒部は、前記筒部の周壁の一部が欠如する欠如部を有しており、前記筒部は、前記ボディに対する差込深さに応じて第1の保持位置と第2の保持位置において前記ボディに対して保持可能であり、さらに、前記スプリンクラーヘッドは、前記第1の保持位置では、前記ボディの下端に開口する連通部が外気の第1の導入口となり、前記筒部の前記欠如部が前記ボディの前記スリットと重なることで前記ボディに流入した前記外気を天井裏に排出する第1の出口となる第1の気流経路を形成し、前記第2の保持位置では、前記エスカッションと前記ヒートコレクターとの間に形成される間隙部が前記外気の第2の導入口となり、前記筒部の前記欠如部が前記天井裏に前記外気を排出する第2の出口とする第2の気流経路を形成する。
【0009】
本開示の一態様では、スプリンクラーヘッドは、そのボディに対する差込深さに応じて第1の保持位置と第2の保持位置においてボディに対して保持可能である筒部と、筒部の下端から外方に広がる外周縁が天井面と接触可能な皿部とを有するエスカッションを備える。このため本開示の一態様によれば、皿部が天井とスプリンクラーヘッドとの間の穴を覆い隠すとともに、筒部がその内部にヒートコレクターを収容することができるので、室内側からスプリンクラーヘッドが目立たず、スプリンクラーヘッドの意匠性を高めることができる。
【0010】
その上で、本開示の一態様では、スプリンクラーヘッドは、外周面に開口するスリットを有するボディと、ボディの下端から突出するヒートコレクターと、筒部の周壁の一部が欠如する欠如部を有してボディと係合する筒部を有するエスカッションとを備える。そして、第1の保持位置では、ボディの下端に開口する連通部が外気の第1の導入口となり、筒部の欠如部がボディのスリットと重なることでボディに流入した外気を天井裏に排出する第1の出口となる第1の気流経路を形成し、第2の保持位置では、エスカッションとヒートコレクターとの間に形成される間隙部が外気の第2の導入口となり、筒部の欠如部が天井裏に外気を排出する第2の出口とする第2の気流経路を形成する。
【0011】
このため本開示の一態様によれば、第1の保持位置では第1の気流経路を形成し、第2の保持位置では第2の気流経路を形成することによって、いずれの保持位置においても外気の天井裏への排出を促すことで、連続した気流を発生させることができる。よって、本開示の一態様によれば、火災による室内側の気流の熱を効率よくヒートコレクターに伝播させてスプリンクラーヘッドの早期の作動を促進することができる。
【0012】
本開示の一態様では、感熱要素と、お椀形状であり側面に複数の開口が設けられているヒートコレクターとを有しており、前記間隙部は、前記開口へ気流が通過可能に構成することができる。
【0013】
これによれば、ヒートコレクターは、側面に、間隙部から気流が通過可能な複数の開口が設けられているので、火災の熱で暖められた気流が開口からヒートコレクターの内部に容易に流入することができる。そして、ヒートコレクターの内部に流入した気流によって、ヒートコレクターは内側からも熱を吸収できる。よって、感熱要素はヒートコレクターから伝わった熱の他に、感熱要素の表面からも熱を吸収するので、スプリンクラーヘッドの作動を促進することができる。
【0014】
上記の構成に加えて、ヒートコレクターの内部に収容される感熱要素を有し、感熱要素には有底円筒状であり内部に可溶合金が充填されたシリンダーが含まれており、このシリンダーの底面から突出した牡ねじをヒートコレクターに設置されたナットと接続するように構成することができる。さらに、ナットはヒートコレクター側の端が大径であり、シリンダー側の端が小径となる構成とすることができる。本開示の一態様によれば、感熱要素をヒートコレクターの内部に収容可能であるので、スプリンクラーヘッドの意匠性を損なわない構成とすることができる。さらに、ナットを介してヒートコレクターとシリンダーとを接続したことで、安定した接合強度を確保することができる。
【0015】
さらに、本開示の一態様では、ナットのシリンダー側の端面はシリンダーの底面と面接触しており、ナットからシリンダー底面を介して可溶合金に伝わる熱の損失が最小となるように構成することができる。より詳しくは、ナットのシリンダー側の外径をシリンダー底面の直径以下とすると、ナットのシリンダー側の端面からシリンダー底面へ損失なく熱を伝えることができる。さらに、ナットのシリンダー側の外径をシリンダーにおける可溶合金が充填されている部分の内径以下にすると、シリンダーの側面への熱の伝播を抑えて可溶合金に熱をより効率的に伝えることができる。
【0016】
また、本開示の一態様では、ナットは、ヒートコレクター側の端とシリンダー側の端との間に段を有するように構成することができる。本開示の一態様によれば、ナットが筒状の場合と比較して段によって表面積が増加するので、より多くの熱を吸収することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように本開示の一態様によれば、スプリンクラーヘッドの意匠性を損なわずに感度性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態によるスプリンクラーヘッドの断面図。
図2】デフレクターユニットの斜視図。
図3】感熱作動部とヒートコレクターの拡大断面図。
図4】感熱作動部の分解斜視図。
図5図1のスプリンクラーヘッドの散水時の断面図。
図6】エスカッションの断面図。
図7】エスカッションとスプリンクラーヘッドとの位置関係を示しており、図7(a)は、エスカッションに対するスプリンクラーヘッドの室内側への突出量が最小の場合の部分断面図。図7(b)は、エスカッションに対するスプリンクラーヘッドの室内側への突出量が最大の場合を示す部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の「スプリンクラーヘッド」の一実施形態について図1図5を参照して説明する。スプリンクラーヘッドSは、ボディ1と、デフレクターユニット2と、閉止部材3と、感熱作動部4と、ヒートコレクター5とを有している。
【0020】
ボディ1は中空筒状であり、その内部がノズル11となっている。ノズル11は、ボディ1の一端側と他端側との間を筒軸方向(高さ方向、上下方向)として伸長している。ボディ1の一端側には、給水配管Pと接続する牡ねじ12が設置されている。ボディ1はその他端側に外側に拡張された鍔部13を有しており、鍔部13には筒状のフレーム14がねじ接続されている。フレーム14の内部の下端部(フレーム14において鍔部13と接続している側とは反対側の端部)には、内周に向かって伸長する段15が設置されている。この段15には、後述する感熱作動部4のレバー41が係止される。フレーム14の外周面(側面)には、フレーム14の内部と外部との間を貫通して外周面に開口する「第1の出口」としてのスリット16が形成されている。スリット16は、フレーム14の内部における「第1の導入口」としての連通部17とつながっている。連通部17は、フレーム14の下端に開口している。そして、連通部17は、スリット16と後述の開口55との間で気流が通過可能に構成されている。
【0021】
図2のデフレクターユニット2は、デフレクター21と、ピン22と、ガイドリング23とを有して構成されている。デフレクターユニット2は、フレーム14の内部に収容されている。デフレクター21は円板状であり、周縁には複数のスリット24を有する。デフレクター21は、その中心が板厚方向(ボディ1の筒軸方向)に貫通する穴となっており、その穴には閉止部材3が回転可能に設置されている。
【0022】
ピン22は、デフレクター21とガイドリング23との間に複数設置されている。ピン22は、デフレクター21の周縁付近においてその板厚方向(ボディ1の筒軸方向)に貫通して形成された穴に挿通されている。ピン22の一端は円環状のガイドリング23に固定接続されており、ピン22の他端は鍔25となっている。これによって、デフレクター21は、ガイドリング23と鍔25との間を摺動自在に構成されている。
【0023】
ガイドリング23は、前述のようにピン22の一端が固定接続されている。ガイドリング23の外径は、フレーム14の内径よりも小さく、段15の内径よりも大きい。そのため、ガイドリング23は、感熱作動部4の作動によって脱落した後には、段15に係止されるように構成されている。
【0024】
閉止部材3は、ノズル11側に突起を有する円盤状に形成されている。閉止部材3とレバー41との間には、板状のサドル31が設けられている。レバー41が段15と係合されてサドル31を介して閉止部材3を押圧してノズル11の出口位置に保持することによって、閉止部材3がノズル11の出口端を閉塞している。
【0025】
閉止部材3とノズル11の出口端との間には、シール部材32が設置されている。シール部材32は、例えばフッ素樹脂から構成される。本実施形態ではシール部材32がノズル11の出口端に設置されているものの、シール部材32は閉止部材3に設置されていても良い。この状態において閉止部材3を載せた形態で設けられたデフレクター21は、ガイドリング23と近接した位置でフレーム14内に配置されている。ガイドリング23と鍔部13との間には、ばね33が付勢されて設置されている。そして、感熱作動部4の作動時において、ばね33は、ガイドリング23、デフレクター21及び閉止部材3のフレーム14からの外部への移動を促す。なお、ばね33の荷重は、閉止部材3をノズル11の出口端に押圧する荷重よりも低い。
【0026】
図3及び図4に示す感熱作動部4は、一対のレバー41と、サポートプレート42と、バランサー43と、セットスクリュー44と、シリンダー45と、プランジャー46と、可溶合金47とを有して構成される。感熱作動部4の構成の内で公知の部分は、例えば特開2005-27929号公報等に記載されている。
【0027】
シリンダー45は有底円筒状に形成されており、その底面から牡ねじ45aが突出している。シリンダー45の内部には可溶合金47が充填されており、さらに、可溶合金47の上(シリンダー45の底面とは反対側)には、プランジャー46が載置されている。これらの部材により感熱要素が構成されている。図3に示すように、牡ねじ45aには、ヒートコレクター5が接続されている。これによって、ヒートコレクター5は、ボディ1の下端から突出するようにボディ1に保持されている。
【0028】
ヒートコレクター5は、中心にナット51が取り付けられたお椀形状とされている。ナット51は、シリンダー45の牡ねじ45aと螺合されている。ナット51は、ヒートコレクター5側の端52が大径に、シリンダー45側の端53が小径に形成されている。これによって、ナット51の中間には、段54が形成されている。ナット51をシリンダー45と接続した後のナット51と牡ねじ45aとのねじ接合部には、流し込まれた接着剤が固化している。
【0029】
ナット51は、ヒートコレクター5側の端52においてシリンダー45の底面とダイレクトに接触している。ナット51は、ヒートコレクター5側の端52がシリンダー45側の端53よりも大径であり、ヒートコレクター5とナット51との接触面積が大きいので、ヒートコレクター5とナット51との安定した接合強度が得られる。さらに、ヒートコレクター5とナット51との接触面積がシリンダー側の端53よりも大きいので、ヒートコレクター5が吸収した熱をナット51に効率よく伝えることができる。
【0030】
ナット51の端53の外径は、シリンダー45の底面の直径以下となるように構成されている。ナット51の端53の外形は、より好ましくはシリンダー45の内径以下となるように構成される。こうすることで、ヒートコレクター5で吸収された熱は、例えばシリンダー45の側面を経由することなくナット51と、シリンダー45の底面とを介して可溶合金47に伝わり、熱が伝わる際の損失が抑えられる。
【0031】
ヒートコレクター5は、側面に複数の開口55が形成されている。開口55は、それぞれ均等な長さ及び間隔でヒートコレクター5の側面全周にわたって配置されている。図1に示す実施形態では6箇所の開口55が設けられている。開口55の数は、レバー41の数よりも多い。開口55は、ある程度の大きさを有することで、ヒートコレクター5への気流の通過効率を向上させることができる。具体的には、開口55の高さは2~5mm、開口55の幅は8~12mmとなっている。このような構成によれば、火災によって加熱された気流が開口55からヒートコレクター5の内部に流入するので、ヒートコレクター5は内側からも熱を吸収することができる。
【0032】
図1及び図3に示すように、開口55とシリンダー45とが略同じ高さに配置されているので、シリンダー45は、その表面において、開口55を通過してヒートコレクター5の内部に流入してきた気流から熱を吸収しやすい構成となっている。そして、スプリンクラーヘッドSは、ヒートコレクター5の内部に流入した気流が更に上昇してフレーム14の連通部17を経由してスリット16から外部に排出されるという一連の熱気流の動きが連続的に行われるように構成されている。
【0033】
火災の熱による可溶合金47の溶融を早めるためには、ヒートコレクター5で吸収した熱をより短い経路で可溶合金47に伝えることが重要である。このため、本実施形態のスプリンクラーヘッドSは、ヒートコレクター5の内部において、そのヒートコレクター5に近接して配置されたシリンダー45が、ナット51を介して接続されるように構成されている。
【0034】
また、ヒートコレクター5の高さがシリンダー45の全長よりも長いので、シリンダー45の全体がヒートコレクター5によって覆い隠されている。さらに、前述したピン22の鍔25側の端部も、ヒートコレクター5によって覆い隠されている。それゆえ、室内側から見ると、天井Cに対してヒートコレクター5のみが露出しているので、意匠性が良好である。
【0035】
スプリンクラーヘッドSの作動時において感熱作動部4及びヒートコレクター5が図中下方に脱落すると、デフレクター21は、ピン22及びガイドリング23によってフレーム14の下端から更に下方に離れた位置に係留される(図5参照)。このため、フレーム14が天井Cから室内側に露出していない配置であっても、スプリンクラーヘッドSの作動時にデフレクター21は室内側に配置されるように露出して、正規の散水パターンが得られる。このように構成することによって、室内に設置されるスプリンクラーヘッドSは、天井Cからのヒートコレクター5(感熱作動部4)の突出量に多少のばらつきがあっても、意匠性及び機能に差異が生じることを抑制することができる。
【0036】
エスカッションEは、天井CとスプリンクラーヘッドSとの間の穴Hを覆い隠す皿部E1と、皿部E1の内縁から延出してフレーム14に係合する筒部E2とを有して構成されている。皿部E1は、筒部E2の下端から外方に広がる外周縁が天井面C1と接触可能に構成されている。筒部E2は、フレーム14に対する差込深さに応じて、図7(b)で示す「第1の保持位置」と、図7(a)で示す「第2の保持位置」とにおいてフレーム14に対して保持可能に構成されている。図7(a)で示すように、筒部E2とヒートコレクター5との間には、所定間隔の空間である「第2の導入口」としての間隙部E3が形成されている。図7(a)で示すように、筒部E2の内周径は、ヒートコレクター5の外周径よりも大きく、フレーム14の外周径と略同じか僅かに大きい。
【0037】
筒部E2は、筒部E2の周壁の一部が欠如する「第1の出口」及び「第2の出口」としての欠如部61を有する。図6で示す筒部E2には、谷状の複数の欠如部61が形成されている。欠如部61は、筒部E2の筒軸方向における下向きに筒部E2の上端から下方に向けて欠如するようにして形成されている。本実施形態では、欠如部61は、筒部E2の周方向に均等間隔で5箇所に設けられている。
【0038】
欠如部61において最も深く欠如している箇所、すなわち、高さ方向において筒部E2の下端に最も近い箇所が底部62である。底部62から筒部E2の下端までの高さh2は、皿部E1の外縁から筒部E2の下端までの高さh1よりも短い。つまり欠如部61は、底部62において皿部E1の外縁よりも下方の位置まで深く欠如するように構成されている。これは、エスカッションEが天井Cに取り付けられた際に、高さ方向において底部62が天井Cよりも室内側に位置することを意味している。これにより、室内側の空気(外気)が間隙部E3から底部62の付近を通過して天井裏へ排出されやすくなる。このように、スプリンクラーヘッドSは、間隙部E3及び欠如部61を気流が通過可能な第2の気流経路F2を有する。
【0039】
エスカッションEは、スプリンクラーヘッドSと天井Cとの位置関係によりフレーム14との係合位置を調整可能に構成されている。より詳しく説明すると、図1及び図7(a)では、天井Cから室内側に突き出た感熱作動部4及びヒートコレクター5の突出量が最小となっており、開口55は筒部E2の内部に収容されている。このとき、皿部E1の外縁は天井Cと接触しており、筒部E2の上部はフレーム14の側面下部と係合している。このように、スプリンクラーヘッドSは、筒部E2と係合するフレーム14の高さが最小限であっても安定して設置できるように、筒部E2の高さが長い構成が用いられた場合には、ヒートコレクター5、特に開口55を筒部E2の内部に収容することができる。このため、室内側から開口55が目立たず、スプリンクラーヘッドSの意匠性を高めることができる。
【0040】
一方、図7(b)に示すように、スプリンクラーヘッドSの位置を図7(a)よりも下方に配置した場合においても、皿部E1の外縁は天井Cと接触して配置されるので、エスカッションEの位置は変わらない。他方で、感熱作動部4及びヒートコレクター5は、天井Cから室内側へ更に突き出る。ヒートコレクター5の高さは皿部E1の外縁から筒部E2の下端までの高さh1よりも長いので、例えば皿部E1の外縁と天井Cとの接触面と、フレーム14の下端とが同じ高さに配置される場合には、ヒートコレクター5の一部は室内側に露出する。さらに、本実施形態のように、筒部E2の高さと、それに係合するフレーム14の高さとが略同じに形成されている場合には、ヒートコレクター5は皿部E1よりも下方に配置され、開口55が筒部E2の外へ配置されて室内側に露出する。このとき、筒部E2の上部はフレーム14の側面上部と係合している。
【0041】
図7(b)の状態では、筒部E2は、「第1の保持位置」としてその全高にわたってフレーム14が係合しているので、間隙部E3は存在しない。しかしながら、火災の熱気流は、ヒートコレクター5の開口55を通過してヒートコレクター5の内部の感熱作動部4に熱を伝える。そして、ヒートコレクター5の内部の気流は、フレーム14のスリット16(図3参照)からスプリンクラーヘッドSの外部に排出される。このとき、気流はスリット16と重なることによって連通するエスカッションEの欠如部61を「第1の出口」として通過するので、エスカッションEが流れの妨げとなることを防止することができる。
【0042】
スプリンクラーヘッドSは、このような開口55からヒートコレクター5の内部及びフレーム14の下端に開口する「第1の導入口」としての連通部17を経由してスリット16及び欠如部61を気流が通過可能な第1の気流経路F1を有する。したがって、スプリンクラーヘッドSは、間隙部E3が存在しない状態においても、火災による室内側の熱気流の天井裏への排出を促すことで、連続した気流を発生させることができる。これによって、熱を効率よくヒートコレクター5、シリンダー45等に伝播させて感熱作動部4の早期の作動を促進することができる。
【0043】
本実施形態によれば、筒部E2が「第1の保持位置」では第1の気流経路F1を形成し、「第2の保持位置」では第2の気流経路F2を形成することによって、いずれの保持位置においても外気の天井裏への排出を促して、連続した気流を発生させることができる。よって、本実施形態によれば、火災による室内側の気流の熱を効率よくヒートコレクター5に伝播させてスプリンクラーヘッドSの早期の作動を促進することができる。
【0044】
ここで、上記のエスカッションEでは、筒部E2の高さは、鍔部13の下端からフレーム14の下端までの長さよりも長い。このような構成が用いられた場合には、筒部E2は、その下端が常にフレーム14の下端よりも下方に配置されることとなる。特に、図7(a)の状態で感熱作動部4を作動させると、一対のレバー41の下端がお互いに離れる方向に回動する。そのとき、回動したレバー41は、筒部E2との干渉を間隙部E3によって回避することができる。
【0045】
上記の間隙部E3に加えて、皿部E1と筒部E2の下端との接続部分における形状を曲面状とする構成、図1に破線で示すような筒部E2の下端部をテーパー状とする構成等によって、レバー41と筒部E2との干渉をより効果的に回避することができる。より具体的には、図1に示すように、スプリンクラーヘッドSにエスカッションEを装着した状態において、曲面部分(又はテーパー部分)と筒部E2との境がレバー41の下端よりも筒部E2の上端側に配置される構成とする。テーパー部分の角度Dを天井Cにおける下側の平面(水平面)である天井面C1に対して5°~45°とすることが好ましい。上記の形状は、曲面及びテーパーに限定されるものではなく、凹み、段差部等によって構成してもよい。
【0046】
なお、筒部E2の高さは、鍔部13の下端からフレーム14の下端までの長さよりも短く構成することもできる。これによって、筒部E2が「第1の保持位置」としてフレーム14が係合する範囲をより広げることができる。
【0047】
続いて火災時における本発明の一実施形態によるスプリンクラーヘッドSの作動過程を説明する。
【0048】
図1に示すように、スプリンクラーヘッドSは、ボディ1が給水配管Pとねじ接続されており、ヒートコレクター5が天井Cから室内側に露出した状態で設置されている。天井CにはスプリンクラーヘッドSを室内側に挿通可能な穴Hが形成されており、穴Hを覆い隠すためにエスカッションEが設置されている。
【0049】
火災が発生すると、火災の熱で室内の空気が暖められ、上昇気流が生じて暖められた空気が天井Cの下にたまる。この上昇気流を原動力とする空気は、エスカッションEの皿部E1に沿って流れ、筒部E2とヒートコレクター5との間に位置する間隙部E3に流れ込む。さらに、気流は、開口55を通過してヒートコレクター5の内部に到達する。この気流の熱は、ヒートコレクター5、ナット51、シリンダー45の表面から吸収されて可溶合金47に伝わり、可溶合金47の溶融を促す。
【0050】
可溶合金47が溶融すると、プランジャー46がシリンダー45の底面の方向に移動してバランサー43とレバー41との係合が緩み、レバー41の下端が回動してバランサー43から外れる。レバー41は、更に回動してフレーム14の段15から脱落する。さらに、レバー41に載置されていたサドル31及び閉止部材3も、フレーム14の外部に脱落する。
【0051】
閉止部材3が組み込まれているデフレクターユニット2は、ガイドリング23の外縁側が段15と係合するようにばね33の作用により段15の方向に移動する。デフレクター21及び閉止部材3は、ピン22に沿って図中下方に移動して鍔25に係止される。これによって、デフレクター21及び閉止部材3は、ピン22によりフレーム14の下方に吊り下げられた状態となる。閉止部材3がノズル11の出口端から離れると、給水配管P内の水がノズル11から放出されてデフレクター21に衝突する。デフレクター21に衝突した水は、四方に飛散して火災を抑制、鎮圧する。
【0052】
上記の実施形態の変形例として、ナット51の側面に複数の溝、突起等を設けて表面積を大きくすると、ナット51を介してヒートコレクター5は、より多くの熱を吸収できる。また、シリンダー45の底面がバランサー43の上面に位置するように構成してもよい。そうすることで、シリンダー45は、側面が露出することによってより多くの熱を吸収することができる。
【0053】
図1に示すように、スプリンクラーヘッドSでは、開口55が筒部E2に収容された状態においても、筒部E2とヒートコレクター5との間に位置する間隙部E3によって、開口55に気流の導入が可能である。この気流の導入を促すために、図中に破線で示すように、皿部E1の内縁側をテーパー状にしておくと、気流が開口55に向かいやすくなる。
【0054】
さらに、前述の欠如部61の構成により、火災による室内側の熱気流の天井裏への排出を促すことで、連続した気流を発生させることができる。これにより、熱を効率よくヒートコレクター5、シリンダー45等に伝播させて感熱作動部4の早期の作動を促進することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 ボディ
2 デフレクターユニット
3 閉止部材
4 感熱作動部
5 ヒートコレクター
11 ノズル
14 フレーム
15 段
16 スリット(第1の出口)
17 連通部(第1の導入口)
21 デフレクター
22 ピン
23 ガイドリング
31 サドル
32 シール部材
33 ばね
41 レバー
43 バランサー
45 シリンダー
46 プランジャー
47 可溶合金
51 ナット
55 開口
61 欠如部(第1の出口、第2の出口)
C1 天井面
E エスカッション
E1 皿部
E2 筒部
E3 間隙部(第2の導入口)
F1 第1の気流経路
F2 第2の気流経路
S スプリンクラーヘッド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7