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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-27
(45)【発行日】2023-01-11
(54)【発明の名称】人工礁及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A01K 61/77 20170101AFI20221228BHJP
   B09B 1/00 20060101ALI20221228BHJP
   B09B 3/40 20220101ALI20221228BHJP
   B09B 3/32 20220101ALI20221228BHJP
   C02F 11/10 20060101ALI20221228BHJP
【FI】
A01K61/77
B09B1/00 H
B09B3/40
B09B3/32
C02F11/10 Z ZAB
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022517755
(86)(22)【出願日】2022-01-31
(86)【国際出願番号】 JP2022003540
【審査請求日】2022-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】397029873
【氏名又は名称】株式会社大木工藝
(74)【代理人】
【識別番号】110002686
【氏名又は名称】協明国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】大木 武彦
(72)【発明者】
【氏名】大橋 明美
【審査官】櫻井 健太
(56)【参考文献】
【文献】特許第6998633(JP,B1)
【文献】特開2001-071987(JP,A)
【文献】実開昭52-103191(JP,U)
【文献】特開平2-261330(JP,A)
【文献】特開2011-078861(JP,A)
【文献】特開2003-169562(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0010292(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 61/70 - 61/78
B09B 1/00 - 5/00
C02F 11/00 - 11/20
C08J 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項9】
請求項7または請求項8において、
前記炭化工程では、タイヤも一緒に炭化することを特徴とする人工礁の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海中に沈めて設置され、藻礁・漁礁等として用いられサンゴ礁の白化を防ぐ人工礁及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化が深刻さを増し問題視されている。その解決策として、温室効果ガスの一つである二酸化炭素の排出量を抑制させるため、大気中の二酸化炭素の吸収源を増やすことが求められている。大気中の二酸化炭素の吸収源は、陸上の植物だけではなく、海などの水中に生息する海藻、草、サンゴ礁、植物プランクトンなどのブルーカーボン生態系も大気中の二酸化炭素の吸収源となる。また海藻類や微生物の減少、消失によって藻場が年2%~7%減少し磯焼けが世界的に起きており、このまま進めば今後20年でブルーカーボン生態系が失われるとされている。そこで、このブルーカーボン生態系を活性化させるため、海藻類や微生物等の生育、繁殖が行われる藻場の育成が重要視されている。また自然環境の変化・破壊により、サンゴ礁の白化が問題となっている。さらに上記のような環境問題への意識の高まりから、産業廃棄物、廃プラスチック、廃車、廃タイヤ、下水汚泥等の再利用促進が求められているが、リサイクル率が思うように上がらないことも問題視されている。
【0003】
従来、藻場・漁場を拡大させる手段の一つとして、人工漁礁を海中に設置することが行われている。下記特許文献1には、廃船となったFRP製漁船の全体を丸ごと炭化して人工礁として利用する技術が開示されている。また下記特許文献2では、製鋼スラグと酸性土壌とを混合したものを透水性の袋に詰めた土木資材を海中に設置することで、海藻類や魚介類への栄養源とすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-071987号公報
【文献】特開2013-215184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、FRP製漁船の全体を丸ごと炭化させる場合、大型の炭化炉が必要となる上、大型の炭化炉は、炉内を昇温させるのに時間がかかり、漁船を炭化させるのに時間がかかる。さらに、漁船は大型であるため、限られた台数しか一度に炭化炉で炭化させることができず、時間とコストがかかることが想定される。また、FRP製漁船に含まれるGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)を無酸素状態で加熱処理すると、熱分解により、本体に含まれる樹脂成分が炭化され、ガラス繊維の周囲に炭化物が固着したFRP炭化材となる。この加熱処理により得られたFRP炭化材は、タンカル・タルク等の石の粉等を主成分とするため、強度が低い。さらにFRP樹脂は無酸素炉で炭化しても、炭化物が2-3%しかできない上、長年、漁船として使用されていた本体は、紫外線の照射や海水に晒されることによりそもそも劣化しているため、海中では形状が保持できず、海藻類が根を張る人工礁として利用し難い課題があった。またFRP樹脂は無酸素炉で加熱処理するとほとんどが消失し炭化が難しい樹脂材といえる。上記特許文献2では酸性土壌を用いる必要があるが、土壌には海中に沈めて使用する際に汚染物質になり得る有機物が含まれている場合があるため、汚染物質が含まれてない土壌を使用する必要がある。
【0006】
本発明は、このような事情を考慮して提案されたもので、その目的は、ブルーカーボン生態系の活性化、廃棄物等の再利用促進を図ることができる人工礁及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る人工礁は、海中に沈めて設置される人工礁であって、鉄材を含む廃棄物をブロック状に圧縮し炭化されてなる炭化ブロック体と、炭化された下水汚泥が袋詰めされてなる下水汚泥炭化体とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る人工礁の製造方法は、鉄材及び樹脂材を含む車等の廃棄物を圧縮してブロック体を形成するブロック化工程と、前記ブロック体を炭化炉で炭化処理し炭化ブロック体を生成する炭化工程と、下水汚泥を乾燥させて乾燥汚泥を生成する乾燥工程と、前記乾燥汚泥を炭化炉で炭化処理することで下水汚泥炭化物を生成する汚泥炭化工程とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は上述した構成とされているため、ブルーカーボン生態系の活性化、廃棄物等の再利用促進を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る人工礁の設置態様の一例を示す図である。
図2】同人工礁の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図3】同人工礁の製造方法の他の例を示すフローチャートである。
図4】同人工礁の製造方法で用いられる炭化炉とその周辺装置の外観模式図である。
図5】同炭化炉の内部構造を模式的に示す概略断面図である。
図6】同人工礁の製造方法で用いられる炭化炉の別例を模式的に示す概略断面図である。
図7】同人工礁の設置態様の他の例を示す図であり、(a)は枠体の模式的斜視図、(b)は枠体の変形例を示す模式的斜視図である。
図8図7(a)に示す枠体内に炭化ブロック体と下水汚泥炭化体とを設置した状態を示す模式的平面図である。
図9】同人工礁の設置態様の更なる他の例を示す図であり、(a)は同人工礁の模式的平面図、(b)は(a)のX-X’線断面図である。
図10】本発明の第2実施形態に係る人工礁の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施の形態について添付図面を参照しながら説明する。
【0012】
<第1実施形態>
本実施形態に係る人工礁1は、海中に沈めて設置され、藻礁・漁礁等、海藻、サンゴ、魚、カニ、エビ、産卵等を保護し育成するために用いられる。人工礁1は、鉄材を含む廃棄物20をブロック状に圧縮し炭化されてなる炭化ブロック体2と、炭化された下水汚泥が袋詰めされてなる下水汚泥炭化体3とを備える。
【0013】
人工礁1の態様は、限定されるものではなく、餌場、逃避場、休息場、産卵場となる態様に設置され、複数の炭化ブロック体2と下水汚泥炭化体3とがそれぞれ隣り合い近接させて配置される。図1の例では、炭化ブロック体2と炭化ブロック体2との間に下水汚泥炭化体3が配置されている。またこれら複数の炭化ブロック体2及び下水汚泥炭化体3は、連結部材4によって連結されている。
【0014】
炭化ブロック体2は、廃棄物20をブロック状に圧縮し炭化したものであり、その大きさは特に限定されないが、1辺が1m~2m程度の立方体とすれば、後記する炭化炉100に収容しやすく、海中に設置する際にも、取り扱いし易い。また図では炭化ブロック体2の角部はとがった状態に描かれているが、実際は、海中に沈めた際に魚、網、ごみ等が引っ掛からないように丸みを帯びた形状とし引っ掛かり部位がないようにブロック状に圧縮される。炭化する廃棄物20は、鉄材を含んでいれば、特に限定されず、樹脂材が接着される等して組み合わせて構成されたものでもよいし、ガラス製、陶製、石製、紙製、木製等のあらゆる各種材料を含んでいても、表面が塗装されているものでもよい。例えば、使用され不要品となった釜、金型、基板、工具、調理器具、洗濯機など家電製品でもよいし、トラクター、田植え機、耕うん機、コンバイン、籾すり機の農耕機械器具、クレーン車やシャベルカー等の重機、鉄道車両、航空機、船舶、各種車両、コンテナ、建具、建築資材、鉄鋼スラグでもよい。
【0015】
下水汚泥炭化体3の製造方法は特に限定されないが、下水処理施設の処理過程等で生じる泥状物を前後に脱水し、乾燥させ粒状化した後、約700~900℃で炭化処理し無機化された下水汚泥炭化物を麻袋などに詰めたものである。無くなることのない不要物である下水汚泥炭化物の活用法としては、肥料や火力発電の燃料にする取り組みがなされているが、リサイクル率は31%ほどにとどまっていると言われており、69%が未使用といわれているので、新たな下水汚泥の活用法として有用である。また腐葉土の場合は有機物を多く含み水に入れると富栄養化になり、赤潮、青潮の原因になるが、下水汚泥炭化体3は、下水汚泥を炭化することで無機物になり、土壌改良材としても使用されるものであるので、海中に沈めて使用するに際し、有害物質が溶出したり有害ガスが発生する等、海を汚す懸念がない。
【0016】
連結部材4は特に限定されないが、海洋汚染を引き起こさない鉄製の鎖や結束バンド等が用いられ、潮流で人工礁1が流されないように連結される。また連結部材4による連結方法は図1の態様に限定されず、このように下水汚泥炭化体3が炭化ブロック体2に隣接して配置されることで、効率的に後述する腐植酸鉄を海中に供給することができる。また連結部材4による連結方法は、炭化ブロック体2の4か所に連結部材4を取り付けて炭化ブロック体2と下水汚泥炭化体3とが四方八方に並ぶように連結してもよいし、数百メートルにわたって人工礁1を構成することもできる。例えば平面視において十字状に連結してもよいし、径の異なる円形状が何重にも形成されるように連結してもよい。図1のように連結部材4を鎖とすれば、平地でない段差のある海底にも容易に設置でき、設置コストも抑制できる。
【0017】
上記構成によれば、炭化ブロック体2は、鉄材を含む廃棄物20を炭化してなるので、人工礁1として海中に設置すると、鉄分(二価鉄)が海中に溶出される。また下水汚泥炭化体3は、フルボ酸(窒素、リン、カリ)が腐葉土よりも豊富に含まれているため、袋体30を通じてフルボ酸が溶出され、炭化ブロック体2から溶出した鉄分と結合することにより、腐植酸鉄を海中に供給することができる。また炭化物は微生物との親和性に優れているため、炭化ブロック体2は微生物の住処に好適である。よって、上記構成とした人工礁1を海中に設置すると、ガラモ、アラメ、コンブなどの海藻類やサンゴの生育、繁殖が行われる理想的な育成環境を創出でき、海の生物の増加に繋がる。特に家電など、廃棄物に鉄以外にアルミニウムを含む場合、海中ではアルミニウムが鉄より早く溶解するため、電位差が生じ微弱電流が発生する。この微弱電流は、サンゴの増殖に好適とされており、海藻類が余り育たない温かい海域に人工礁1を設置すれば、サンゴの成長を促進させ白化を抑制することができる。また上記構成の人工礁1が海藻の藻礁となれば、光合成が加速しCo2吸着量を増加させることができるため、SDGsに繋がる取り組みになり、地球温暖化対策に貢献できる。またブルーカーボン生態系を活性化し、廃棄物・下水汚泥の再利用促進を図ることができる。
【0018】
次に図2を参照しながら、人工礁1の製造方法の一例を説明する。
人工礁1は炭化ブロック体2と下水汚泥炭化体3とを備えるが、これらは別々に製造される。まず炭化ブロック体2の製造方法は以下のとおりである。収集された廃棄物20から有価部品等を取り外す工程を行う(S100)。このとき、樹脂材、木材、紙材等の各種材料と鉄等の金属材とが組み合わさった廃棄物であっても、分離・解体することなく炭化可能であるので、特に中古部品として売買可能な部品やリサイクル事業が進んでいる部品がなければ、事前に取り外しをしなくてもよい。
【0019】
次に廃棄物20を1辺が1m~2m程度の立方体に圧縮・ブロック化する(S101)。圧縮・ブロック化する要領は特に限定されないが、例えば所望する大きさよりも大きく形成された型枠内に廃棄物20を収容し、型枠を内方向に締めていき、廃棄物20の側面を圧縮していくとともに上下方向から圧縮機で圧縮してもよい。この工程(S101)は廃棄物20の大きさが、圧縮しなくても1辺が1m~2m前後である場合は、必須ではない要は後記する炭化炉10に収容しやすい大きさにブロック化されていればよい。また廃棄物20をブロック化する際には、人工礁1として海中に沈めた際に魚、網、ごみ等が引っ掛からないように角張ったところや引っ掛かり部位がないように圧縮・ブロック化を行う。次に圧縮・ブロック化されたブロック体2Aを炭化炉10で炭化する炭化工程を行い(S102)、炭化ブロック体2を得る。炭化要領は後述の要領(S303)と同様に行うことができる。
【0020】
次に下水汚泥炭化体3の製造方法を説明する。まずは下水処理場で発生する脱水汚泥を収集する下水汚泥収集工程を行う(S200)。次に熱風装置等を用い、乾燥機で脱水汚泥を乾燥する乾燥工程を行う(S201)。そして炭化装置(不図示)で炭化を行い(S202)、炭化粒31を得る。こうして得た炭化粒31は、袋体30に袋詰めされ(S203)、下水汚泥炭化体3を得る。
【0021】
炭化装置での下水汚泥の炭化方法は特に限定されず、バッチ式でもロータリー式でもよい。例えばロータリー式とすれば、一日10トンから100トンの処理が可能である。また炭化炉10は、電気炉、ガス炉、水蒸気加熱炉を用いることができる。収集した下水汚泥を含水率30%程に乾燥させ、700℃~900℃の温度に加熱されたロータリーキルン炉(無酸素還元炉)内に乾燥させた下水汚泥をベルトコンベアで搬送し、約1~2時間炭化する。このとき、炭化装置内は基本無酸素状態に維持されるが、時々酸素を取り込むようにすると均質な炭化粒31を得ることができる。また下水汚泥だけでは自己発熱量が少ないので、時々木片やプラスチック等を投入するとよい。
【0022】
ここで用いられる袋体30は、特に限定されないが、海中に沈めて設置し炭化粒31の養分を溶出させるため、通気性があり、自然素材で長期使用に耐えられる強い素材が好適である。袋体30としては、例えばジュート製の袋が適しており、海中では10倍以上強くなるとされている。コーヒーの生豆を詰めて運搬用に使用されていたジュート製の袋は、生豆特有のにおいが付着しているため、安価で入手可能であり、リサイクルできる。また袋体30の大きさや袋詰めされる炭化粒31の量は、限定されないが、海中に沈めた際に流されることなく、設置する際に取り扱いしやすい大きさ・量であればよい。例えば袋体30の大きさは高さ25~35cm、厚み10~20cm、幅40~60cm程度とし、重量が5~10Kg程度とすると持ち運びし易く取り扱い性がよい。
【0023】
こうして製造された炭化ブロック体2と下水汚泥炭化体3とを図1に示すように隣接させて配置し、連結部材4で連結すれば、ひとまとまりの人工礁1を構成することができる。
【0024】
続いて図3図5を参照しながら、人工礁1の製造方法の別例を説明する。
ここでは、廃棄物20として廃自動車(普通車)を用いて炭化ブロック体2を構成する例について説明する。
【0025】
まずは廃自動車20の有価部品等の取り外す工程を行う(S300)。
自動車は、鉄、アルミニウム、マグネシウム等の金属材、ゴム材、合成高分子等の樹脂材、あらゆる各種材料からなり、カーエアコンにはフロン系の冷媒が使用されているが、廃自動車20は、エンジン、シャフトを含め、丸ごと炭化することができる。すなわち、フロント・サイド・バックに配されたガラスやシート、内装材、車載マット、エアバック、ハンドル、機械部分、車体22の表面に塗装された塗装材、ランプカバー、ダッシュボード、ハンドル、センターコンソール、天井、窓枠、内部塗装等、すべての有機部材を炭化することができる。よってこの取り外し工程(S300)は必須の工程ではないが、エンジンやシャフトなど中古部品として売買可能な部品やリサイクル事業が進んでいる部品は事前に取り外してもよい。
【0026】
次に車体22に穴を開け切断する工程を行う(S301)。この工程(S301)も必須の工程ではないが、車体22に適宜間隔を空けて貫通孔22aを規則的にもしくはランダムに工具等で形成し、車体22を真ん中あたりでふたつに切断機等により切断する。このように車体22に貫通孔22aを設ければ、炭化工程(S303)においてガスが放出しやすくなり、温度も伝わりやすくなるため、均一に良好に炭化でき、良質な炭化ブロック体2を得ることができる。また炭化ブロック体2は炭化物であるので、微細な孔が複数形成され、微生物や卵が付着し留まりやすくなり、海藻類の仮根部(付着器)が絡みやすい効果を有するが、貫通孔22aを形成することで一層その効果の向上を図ることができる。切断機等による切断は廃自動車20の大きさに応じて切断され、廃自動車20が普通車の場合は半分に切断すれば、1辺が1m~1m50cm程度の立方体に圧縮しやすく取り扱い性がよい。例えば普通車の場合、1台約600~900Kgであるので、半分に切断することで、ブロック体2Aは300~500Kgとなり、運搬時に取扱いし易い。
【0027】
なお、この穴開け・切断工程(S301)は、上記要領に限定されず、先に車体22を切断してから貫通孔22aを形成してもよい。また先に車体22を圧縮してから切断してもよい。
【0028】
そして圧縮・ブロック化工程を行う(S302)。
この工程では切断した廃自動車20を1辺が1m~1m50cm程度の立方体に圧縮・ブロック化する(S302)。圧縮・ブロック化する要領は特に限定されないが、例えば所望する大きさよりも大きく形成された型枠内に切断された廃自動車20を収容し、型枠を内方向に締めていくことで側面を圧縮していくとともに上下方向から圧縮機で圧縮してもよい。特に半分に切断した廃自動車20を1辺が1m50cm程度の立方体に圧縮すると、ブロック体2Aの密度が低くなり、隙間が形成されるので、炭化工程(S303)においてガスの抜け道となり、ブロック体2Aの中心部まで炭化することができる。またこの隙間に、微生物や卵が付着し留まり、海藻類の仮根部(付着器)を絡ませることができる。さらに車体22を圧縮・ブロック化することで、ガラスやシート、内装材、車載マット、車体22の表面に塗装された塗装材、ランプカバー、ダッシュボード、ハンドル、センターコンソール、天井、窓枠、ボンネット、屋根、ドア等が入り混じってブロック体2Aになるので、炭化しやすく炭化により崩れ落ちやすいものが、崩れ落ちにくいものに保持され、炭化ブロック体2としての外形が維持できる。例えば後記する車体22を丸ごと炭化する場合、車体22の外郭は残るが、シートは炭化されると外郭なく崩れてしまい、魚が回遊する漁礁としてはよいが、藻礁とする場合やサンゴ礁育成のための栄養礁とする場合には好適とはいえない。また後記する図10に示す例のように車体22を丸ごと炭化炉10で炭化することもできるが、ブロック体2Aにすることで、炭化炉10の大型化を防ぎ、炭化効率の向上を図ることができる。さらに廃自動車20をブロック化する際も、人工礁1として海中に沈めた際に魚、網、ごみ等が引っ掛からないように角張ったところや引っ掛かり部位がないように圧縮・ブロック化を行うとよい。
【0029】
次に圧縮・ブロック化されたブロック体2Aを炭化炉10で炭化する炭化工程を行い(S303)、炭化ブロック体2を得る。
炭化炉10は、酸素を遮断した状態で有機化合物などの炭素化合物を加熱して熱分解する装置である。炭素化合物は熱分解により、一部はガス化し、一部は炭化して減容される。炭化炉10は過熱水蒸気を用いて加熱するバッチ型炉でもよく、ローラ式の載置部17と密閉扉16と側枠18を含んで構成されている。載置部17、密閉扉16及び側枠18は一体とされており、載置部17にブロック体2Aを乗せた状態で、台車15により炭化炉10の真空炭化室11に対し搬入出されるようになっている。載置部17の上には、複数のブロック体2A,2A・・・を並列に配列させ複数段に積み上げて載置されており、ブロック体2Aとブロック体2Aとの間にはタイヤ21を複数段に積み上げて載置してもよい。側枠18は、これら積み上げられたブロック体2Aとタイヤ21とが倒れて崩れないように側面を支持するように設けられている。また炭化炉10の真空炭化室11を密閉するために密閉扉16が設けられているが、これに使用するパッキンとしては、ゴムではなく、加熱により変形しにくい膨張黒鉛を用いることが望ましい。
【0030】
炭化炉10はボイラー13に接続された過熱水蒸気発生装置(不図示)に連結され、炭化炉10の真空炭化室11内に過熱水蒸気が供給される構成とされ、真空炭化室11内は過熱水蒸気の対流により温度が略一定に保たれる。図5に示すように真空炭化室11は二次燃焼室19とガス流通路19aを介して連通接続されている。真空炭化室11で発生する乾留ガスは二次燃焼室19に導かれ、そこで加熱燃焼され、水蒸気が排気筒14から排出される一方、排ガスは炭化炉10の加熱用に利用された後、炭化炉10より排出され、ガス冷却器12aを有するガス処理装置12で冷却および除塵がされ無害化されて大気に放出される。
【0031】
炭化炉10は、真空炭化室11内を炭化に最適な温度設定が可能とされていればよく、例えば200℃に昇温加熱して一定時間維持しておき、そこにブロック体2A,2A・・・及びタイヤ21,21・・・を搬入した後、無酸素状態で、350~400℃に昇温加熱して一定時間維持し、さらにその後、500~600℃前後に昇温加熱して炭化してもよい。また段階昇温せず、400~600℃に加熱された真空炭化室11で1~2時間炭化処理を行うようにしてもよい。
【0032】
例えば真空炭化室11内を200℃ぐらいから複数回、段階的に加熱する場合は、熱可塑性、熱硬化性などを問わず種々の内外装材を炭化することができる。例えば、後述するEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)の炭化条件は、炭化温度が約500℃であり、維持時間が約1時間とされる。
【0033】
真空炭化室11での炭化は熱分解であっても、加熱温度によっては、樹脂材のうちの一部は、ガスを発生するも炭化はせず溶融するおそれがあるため、急激に高温で加熱しないなどの温度制御が必要とされる。特に、車体22の塗装については溶けて車体22の表面から流れ落ちないように炭化させることが望ましい。車体22の塗装は例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂が用いられ、さらに種類の異なるものが複数層に塗装されている場合もあるが、段階的に昇温し加熱する場合は良好に炭化することができる。窓枠やハンドルなどの内外装材に用いられる樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、PET、EPDM、PA、PP、PE、アルキド樹脂、オレフィン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、AS樹脂、ABS樹脂などが含まれる。
【0034】
真空炭化室11に複数のブロック体2A,2A・・・を搬入し、常温から加熱処理を行ってもよいが、所定の温度まで室内を加熱するのには時間を要するため、空の状態で事前加熱することが望ましい。例えば、事前にバーナーなどで加熱しておき、その後、廃自動車20を炭化炉10内に搬入するほうが、効率的な加熱処理を行うことができる。炭化工程(S303)における加熱処理には1~2時間を要し、冷却処理には1~2時間を要する。よって、炭化炉10を複数基用意し、炭化工程(S303)で発生する熱を別の炭化炉10の予熱に使用する等し時間差で加熱処理すれば、効率化を図ることができる。例えば、普通車の車体22を5~6台収容できる大きさの炭化炉の場合、炉内を温めるのに2時間かかり、1日2回で10台~12台を炭化できる。一方、上記のように廃自動車20を圧縮しブロック体2Aにすることで、同じ大きさの炉に1回で40~50台分、同時に炭化でき、1日2回で計80~100台を炭化することができる。よって炭化炉10を2基とすれば、1日計4回炭化が可能となり、計160~200台を炭化することができる。
【0035】
また、熱分解により炭化ブロック体2とともに生成された乾留ガスを熱エネルギーとして利用できる構成としてもよい。具体的には、乾留ガスを電気に変換できるスターリングエンジンやマイクロガスタービンに再利用すればよい。乾留ガスのこのような利用により、熱分解処理のランニングコストを低減化することもできる。また発生した乾留ガスを油化して生成油を生成することもできる。つまり、ケミカルリサイクル(合成樹脂を石油に戻す)を実現することができる。これらの生成油はディーゼルエンジン、レシプロエンジン、ロータリーエンジンなど内燃機関の燃料や、その他機械燃料、ボイラー燃料、発電などに使用することができる。さらに炭化炉10での加熱処理は熱分解処理であるため二酸化炭素の発生が抑制されるが、熱分解処理により発生した二酸化炭素は、水素や窒素と反応させてメタンガスやエタノールを生成するようにしてもよい。このようにすることで、メタンガスなどの有用な物質を分離回収することができ、かつ二酸化炭素の排出を低減化することができる。
【0036】
このようにして炭化されて得た炭化ブロック体2は、車体22に付随した塗装、タイヤ21、内装材のうちの合成樹脂等の炭素化合物は、炭化炉10における所定の温度での熱分解により、炭化物(炭素)として残存する。合成樹脂等が炭化すると、樹木等の炭と違い不純物がなく、表面に微細孔が形成されるため、微生物のよい住処になる。一方、鋼板製である車体22や、金属製の内外装材は、炭化炉10の600℃程度の加熱によっても形状がほとんど変化することはなく、ブロック体2Aの外形はおおむね保持される。
【0037】
タイヤ21はゴム製品であるため炭化され、しかも収率は48%と高く、熱分解により多くのカーボンブラックが得られるため、活性炭として再利用してもよい。 またタイヤ21は成分として硫黄を含んでおり、熱分解により硫黄系のガスが発生する。そのため、加熱する前にタイヤ21の表面に粉末状の石膏を配しておくことで、硫黄成分を石膏に吸着させ固体化させれば、石化し安全になる。またそうすることで容易に硫黄成分をゴム成分と分離することができる。さらに、タイヤ21の構成部材であるワイヤーもゴム成分と容易に分離できる。
【0038】
そして上述(S201~S203)と同様に製造された下水汚泥炭化体3と炭化ブロック体2とを連結部材4で連結し海中に沈めて設置すれば、人工礁1を構成することができる。これによれば、上述と同様に炭化ブロック体2には、車体22の鋼板が含まれているので、上述と同様の効果を奏する。具体的には、炭化ブロック体2から鉄分(二価鉄)が海中に溶出される。二価鉄は生物の生育に欠かせない要素であり、さまざまな海中生物の生育に寄与する。下水汚泥炭化体3は、フルボ酸(窒素、リン、カリ)が腐葉土よりも豊富に含まれているため、袋体30を通じてフルボ酸が溶出され、炭化ブロック体2から溶出した鉄分と結合することにより、腐植酸鉄を海中に供給することができる。人工礁1の炭化ブロック体2からは鉄分が溶出するため鉄分豊富な海水とすることができるが、腐植酸鉄になるとより水に溶けやすいため、栄養豊富な海水となり、そこに育つ海藻類の葉部や茎部が栄養分を吸収し、良好に生育できる。そうすると海藻類の光合成が活発化し、二酸化炭素の吸収量を増加させることができる。近年、国内の森林における広葉樹の減少にともなう腐葉土の減少により、川に流れる鉄分が少なくなってきており、その結果、海中の鉄分も減少している。そのため植物プランクトン、動物プランクトンなどの微生物が減少し、上述したブルーカーボン生態系が崩れる傾向にあるが、上記構成の人工礁1によれば、これら問題解決に貢献することができる。また特に廃棄物20として、アルミニウムが使用された廃自動車を用いた場合は、炭化ブロック体2を海中に沈めると、イオン化し易いアルミニウムの成分が、鉄材の成分より先に溶出し、プラスイオンになり、この電位差を利用し、炭化ブロック体2から微弱電流(50~100mA/m2)を発生させることができる。近年の研究で海中に微弱電流を流すとサンゴの着床・成長促進に有効であることがわかっている。また、上述のとおり、鉄に上述の微弱電流が流れると、海水中のカルシウムイオン、マグネシウムイオンが集まり、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウムが結晶化して炭化ブロック体2の表面に凹凸が形成される。よって赤道付近など、サンゴ礁の海域に人工礁1を設置すれば、この凹凸にサンゴの卵が着床しやすく、サンゴの生育を促すことができ、サンゴ礁の白化を防ぐことができる。人工礁1を漁礁とすれば、上記凸凹が微生物の住処となり、藻礁とすれば、上記凸凹が海藻類の仮根部等が絡みやすいものとなる。また、炭化ブロック体2は主に鋼板製が多く含まれるため、その外形は海中において長期間にわたりほとんど形が崩れることなく維持される。よって、人工礁1の長寿命化を図ることができる。
【0039】
<各種試験について>
発明者が廃自動車20の炭化試験を行ったところ、サンプル品156.5Kgのブロック体2Aと、152.5Kgのブロック体2Aとを100℃に加熱した炭化炉を段階的に5時間かけて500~550℃に昇温し炭化したところ、均一に良好に炭化することができた。このとき、156.5Kgのブロック体2Aは134.0Kgの炭化ブロック体2となり、収率85.62%であった。また152.5Kgのブロック体2Aは137.5Kgの炭化ブロック体2となり、収率90.16%であった。
【0040】
また発明者は炭化した廃自動車を海中に沈めた際に有害物質が発生しないかの試験も行った。実験方法は以下のとおりである。炭化した廃自動車の塗装部を0.28g削り取って検体とし、3.5wt%の濃度の塩水に48時間浸漬させビニール袋を被せて室内に置き、ビニール袋の膨れによりガスの発生の有無を確認するとともに、浸漬後、検体と塩水とをろ過分離し元素分析を行った。観察した結果、ビニール袋に膨れは見られず、ガスの発生は認められなかった。また浸漬後の塩水を分析した結果、ブランクの塩水よりも増加した元素は、B、Ni、Si、Al、Mn、Zn、Ba、Biで、有害性のある元素は検出されなかった。
【0041】
<炭化炉の別例>
炭化炉10の構成は図3図4に示すものに限定されず、図6に示すような炭化炉10としてもよい。ここに示す例では、枠体状のトレイ25の上にブロック体2Aを載置し、載置部17に設けられた回転する円筒体のローラ17aで矢印方向に搬送する連続搬送式の炭化炉10とした例を示している。なお、図6に示す炭化炉10において、共通する構成は上述の例と同じ符号を付し、共通する点の説明は省略する。炭化方式、炭化要領は上記と同様である。
【0042】
炭化炉10は、ブロック体2Aが搬送される搬送入口側(搬送口扉40a側)に設けられる待機室40と、中央に設けられ真空炭化室11と、搬送出口側(搬送口扉40d側)に設けられる冷却室41とを備え、待機室40と真空炭化室11、真空炭化室11と冷却室41とはそれぞれ隣接に設けられる。炭化炉10が、ガス処理装置12の他、ボイラー、排気筒、二次燃焼室等を備えている点は上述と同様である。搬送入口及び搬送出口には、真空炭化室11内を密閉し開閉自在に構成された搬送口扉40a,40dがそれぞれ設けられている。また待機室40と真空炭化室11との間、真空炭化室11と冷却室41との間にも、真空炭化室11を真空状態に密閉し開閉自在に構成された密閉扉体40b,40cが設けられている。このように密閉扉体40b,40cに加え、搬送口扉40a,40dを設けることで真空炭化室11の密閉状態が保ちやすく、搬送時に温度が極端に下がってしまうことを防ぐことができる。待機室40、冷却室41と同じ大きさに設けられているが、真空炭化室11は一度に複数のブロック体2Aが収容され、順次搬送されてくるブロック体2Aを時間差で炭化できるように長手方向に大きく形成されている。ここではトレイ25単位で搬送される例を示しているが、ブロック体2Aを載置部17に乗せて炭化、搬送してもよいし、複数段に積み重ねてもよい。また図10に示す例のように車体22を一台ずつ丸ごと炭化、搬送するようにしてもよい。さらに搬送手段も図例に限定されず、ベルトコンベアでもよい。炭化炉10の全長は10メートル~100メートル等、特に限定されず、設定温度が異なる真空炭化室11を複数設け、順次送り出す方式を採用してもよい。もちろん真空炭化室11をしっかり密閉できれば、待機室40,冷却室41を備えていなくてもよい。また図ではブロック体2Aのみを示しているが、タイヤ21を一緒に乗せて炭化処理してもよい。なお、ブロック体2Aは炭化しても、上述のとおり、外形を維持でき、炭粉も少ないが、タイヤ21の場合は、ほとんどが炭粉となるため、トレイ25に乗せて炭化することが好ましい。
【0043】
この炭化炉10では炭化処理が順次行われるように、所定の温度に加熱された真空炭化室11内に収容可能な数のブロック体2A,2A・・・が搬送され、待機室40には、次に炭化処理を行うものを待機させておく。そして真空炭化室11内で順次移動し、炭化処理が完了した炭化ブロック体2は、冷却室41に搬送される。すなわち真空炭化室11内においては、炭化度合いの異なるものが収容され真空炭化室11内での炭化処理時間の合計が所定の時間(例えば2時間)になったときに、冷却室41に移動し、冷却工程に移行できるよう構成されている。炭化処理が完了し、冷却室41から搬出された炭化ブロック体2は、その後、自然冷却されればよいため、引き続き搬送されながら、冷却するようにしてもよいし、どこか場所を移動させて冷却してもよい。このように順送りの搬送式とすれば、効率よく炭化処理を行うことができる。またトレイ25に乗せて炭化処理を行えば、炭化処理によって発生する炭粉が回収しやすい。ここで発生する炭粉は、後記するコンクリートブロック24やコンクリート台23に混ぜる材料としてもよいし、人工礁1設置時に周辺に散布してもよい。この炭粉の散布と近くに設置される人工礁1の作用によって、人工礁1の設置周辺領域が栄養豊富な砂泥となり、アマモ等の海草類は根から栄養を吸収するので生育に好適とすることができる。
【0044】
<設置態様について>
次に図7図9を参照しながら、人工礁1の設置態様についてさらに説明する。
図1では、炭化ブロック体2と下水汚泥炭化体3とを連結部材4で連結した態様について説明したが、人工礁1の設置態様はこれに限定されない。設置場所の水深、潮流によっても、また魚類を集めるためか、海藻類を増やすためか、魚類を増殖させるためか等、目的や集めたい魚種よっても、その態様は異なる。
【0045】
図7(a)には、異なる一例として、略方形状で上方が開口した鉄製の枠体からなる角型枠5内に炭化ブロック体2と下水汚泥炭化体3とを詰めて固定するタイプのものを示している。角型枠5は、海底に直置きされる略方形状の底面50と、底面50の四周から立設された側面部51と、側面部51の上縁部の角部に設けられたループ部52とを備えている。ループ部52は海底に設置する際にクレーン等で角型枠5を吊るすためのフックが係止されるように構成されている。図7(b)には、図7(a)を大型化した角型枠5Aを示しており、海底に設置される脚部55側の空間が、魚等の回遊空間54を構成する例を示している。図7(a)の例と共通する箇所には共通の符号を付し、共通する箇所の説明は省略する。角型枠5Aは、略方形状で上方が開口した枠体からなり、図7(b)に示すものは、仕切り板53が設けられ、1つの枠に4個の炭化ブロック体2が配置できるように複数区画されている。
【0046】
図8は、図7(a)に示す角型枠5内に炭化ブロック体2と、下水汚泥炭化体3とを隙間なく詰めて収容した状態を示している。このように4個の炭化ブロック体2を角型枠5内に設置することで、1枠に普通車2台分の重量(1200Kg~2000Kg)になり、これに複数の下水汚泥炭化体3の重量と角型枠5の重量が加わるので、潮流によって流されず、安定して海底に設置することができる。図7(b)に示す角型枠5Aも、仕切り板53で仕切られた1区画ごとに図8に示すように炭化ブロック体2と、下水汚泥炭化体3とを詰めて収容すれば、大型の人工礁1を構成することができる。なお、側面部51の高さ寸法は一例であって、図例に限定されるものではない。また角型枠5,5Aの角部は魚、網、ごみ等が引っ掛からないように丸みを帯びた形状とすることが望ましい。
【0047】
図9は、人工礁1の設置態様の更なる他の例を示す。図9(a)及び図9(b)には更に異なる例として、連結部材4を略U字状の鉄製の楔で連結した例を示している。この例では、炭化ブロック体2と、下水汚泥炭化体3を介して隣り合う炭化ブロック体2とを図9(b)に示すように連結部材4で上方から突き刺して連結し、人工礁1を構成している。この例では炭化ブロック体2,2同士の間に2つの下水汚泥炭化体3が挟まれるように設けられる。この構成においても、図1に示す例のように、炭化ブロック体2と下水汚泥炭化体3とが四方八方に並ぶように連結してもよいし、数百メートルにわたって人工礁1を構成することもできる。例えば平面視において十字状に連結してもよいし、径の異なる円形状が何重にも形成されるように連結してもよい。また図9に示す楔形の連結部材4によっても、平地でない段差のある海底にも容易に設置でき、設置コストも抑制できる。
【0048】
<第2実施形態>
次に図10を参照しながら、第2実施形態に係る人工礁の製造方法を説明する。ここでは、図3を参照しながら説明した製造方法と共通する箇所の説明を省略し、第1実施形態に係る製造方法とは、主に異なる点を説明する。
【0049】
有価部品等の取り外し工程(S400)は、上記した有価部品等の取り外し工程(S300)と同様である。また炭化工程(S402)においては、車体22を圧縮ブロック化したブロック体2Aとすることなく、車体22を丸ごと炭化している以外、炭化炉10での炭化方法は同様である。図3に示した製造方法と異なる点は、タイヤ21を車体22内に収容して一緒に炭化する点、穴開け工程(S401)で切断が不要である点、車体22を圧縮ブロック化する圧縮・ブロック化工程(S302)がなく、セメント一体化工程(S403)がある点である。
【0050】
本実施形態は、廃棄物としての廃自動車20を圧縮・ブロック化、切断せず、丸ごと炭化し、自動車の外郭自体を人工礁1に活用するものである。この例でも炭化ブロック体2及び下水汚泥炭化体3を用いる点は上述の実施形態と共通であり、これらによる効果(腐植酸鉄を海中に供給すること、アルミニウムの成分や錆び止めの成分が、鉄材の成分より先に溶出し微弱電流を発生させること等)も同様である。穴開け工程(S401)では、車体22の屋根、ボンネット、ドアに貫通孔(3mm~5mm)を形成する。
【0051】
ここでは、漁礁や藻礁等の人工礁1によく用いられるセメントに粉末状の炭化物である炭粉を20~30%混合し車体22と一体化する。ここで用いる炭粉は、特に限定されないが、下水汚泥の炭化粒31とすれば、リサイクル率の向上に貢献できる。また炭化炉10での炭化処理時に発生する炭粉を混合してもよい。セメント一体化工程(S403)では、炭化体である車体20Aを車体20Aの大きさに合わせた未硬化で炭粉が混ざったセメントの中に10cm~30cm程度沈ませ、図10に示すようなコンクリート台23になるように炭粉入りセメントを固化させる。別途、炭粉が20~30%混合されたセメントで複数のコンクリートブロック24を複数作成しておき、車体20Aの屋根、ボンネット等に炭粉入りのコンクリートブロック24を10cm~20cm間隔で接着する。車体20Aのドアに接着してもよい。コンクリートブロック24の大きさは特に限定されないが、200×100×60cm程度のレンガサイズのものとすれば、取扱性がよく好適である。上記構成によれば、第1実施形態における人工礁1と同様の効果を奏する上、炭化された車体20Aの形状そのものを人工礁1に活かすことができる。またコンクリート台23及びコンクリートブロック24の表面には、気泡ができ微細穴が多数形成され、車体20Aの表面にも、炭化されるので、微細孔が多数形成される。よって微生物が付着し易く海藻類は根を生やしやすい。また車体20Aのみを海中に設置するよりもコンクリート台23及びコンクリートブロック24と一体化することで、人工礁1としての重量が増し潮流などで流れにくくできる。
【0052】
以上、図を参照しながら、説明した実施形態に係る人工礁1は、図例に限定されるものではない。また炭化炉10の構成についても、上記では、加熱手段が過熱水蒸気による炭化炉10について説明したが、これには限定されず、電気炉やガス炉であってもよく、さらにマイクロ波を用いる方式のものであってもよい。また人工礁1の態様も図例に限定されず、角型、円形型、筒型でもよく、これらを積み重ねたものでよい。また角型枠5,5Aの素材も上述の鉄製に限定されず、コンクリート製や木製であってもよい。さらに人工礁1を設置する海底に、下水汚泥の炭化粒31や炭化処理時に発生する炭粉を散布してから、人工礁1を設置してもよい。そうすると、人工礁1が設置された周辺に海草類を根付かせることができる。
【符号の説明】
【0053】
1 人工礁
2 炭化ブロック体
2A ブロック体
20 廃棄物(廃自動車)
20A 車体(炭化体)
21 タイヤ
22 車体
3 下水汚泥炭化体
30 袋体
31 炭化粒
4 連結部材
10 炭化炉
【要約】
藻礁・漁礁等として用いられ、サンゴ礁の白化を防ぎ、ブルーカーボン生態系を活性化させる人工礁1であって、鉄材を含む廃棄物20を炭化してなる炭化体2と、炭化された下水汚泥が袋詰めされてなる下水汚泥炭化体3とを備える。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10