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特許7202049マイクロレンズアレイの成形型の加工方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-27
(45)【発行日】2023-01-11
(54)【発明の名称】マイクロレンズアレイの成形型の加工方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 3/00 20060101AFI20221228BHJP
   B29C 33/38 20060101ALI20221228BHJP
【FI】
G02B3/00 Z
B29C33/38
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022539364
(86)(22)【出願日】2022-02-24
(86)【国際出願番号】 JP2022007560
【審査請求日】2022-06-27
(31)【優先権主張番号】63/153,435
(32)【優先日】2021-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】597073645
【氏名又は名称】ナルックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105393
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 直哉
(72)【発明者】
【氏名】西尾 幸暢
(72)【発明者】
【氏名】濱谷 俊希
(72)【発明者】
【氏名】桑垣内 智仁
【審査官】池田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-289566(JP,A)
【文献】特開2012-101291(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0027032(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 3/00
B29C 33/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが同一方向の光軸を備え、ほぼ同一形状の複数のマイクロレンズを備えたマイクロレンズアレイの成形型を、回転軸の周りに回転する刃を備えた工具によって切削する切削加工方法であって、それぞれのマイクロレンズの光軸に対応する該成形型の一つの面の中心軸の方向をz軸として、互いに直交するx軸、y軸及びz軸を備えた(x、y、z)座標系において、それぞれのマイクロレンズの面に対応する該成形型の一つの面を切削加工する際に、該工具の回転軸と該工具の回転軸上の点を通る該z軸の方向の直線とのなす角度θの値及び該工具の回転軸と該直線とを含む平面の該直線の周りの角度Φの値をそれぞれ所定の範囲内の一定値として加工点の(x、y、z)座標を変化させながら切削加工し、該複数のマイクロレンズの面に対応する該成形型の複数の面を切削加工する際に、該成形型の複数の面において角度θ及び角度Φの値を同じ値とした場合に該工具の刃の摩耗により該成形型の複数の面内のほぼ同じ位置に生じる形状誤差によって、該成形型によって成形されたマイクロレンズアレイを使用して照射した面において、該成形型の複数の面内のほぼ同じ位置に対応する位置に生じる照度変化が十分に小さくなるように、該成形型の複数の面に対して該角度θの値及び該角度Φの値の少なくとも一方を分散がそれぞれ所定値以上となるように分布させるマイクロレンズアレイの成形型の切削加工方法。
【請求項2】
該工具の加工点が該成形型の一つの面上の、交わることのない連続した線上に位置するように加工が実施される請求項1に記載のマイクロレンズアレイの成形型の切削加工方法。
【請求項3】
該複数のマイクロレンズの面に対応する該成形型の複数の面を加工する際に、角度θの値を0ではない一つの定数または少なくとも一つの0ではない値を含む複数の定数とし、角度Φの値を、分散が所定値以上となるように分布させる請求項1に記載のマイクロレンズアレイの成形型の切削加工方法。
【請求項4】
Nが10以下の自然数として、隣接するN個のマイクロレンズの面に対応する該成形型の隣接するN個の面ごとに角度θ及び角度Φの少なくとも一方の値を、分散が所定値以上となるように分布させる請求項1に記載のマイクロレンズアレイの成形型の切削加工方法。
【請求項5】
角度θは3度以上で15度以下である請求項1に記載のマイクロレンズアレイの成形型の切削加工方法。
【請求項6】
5軸加工機を使用し、該x軸、該y軸及び該z軸を該5軸加工機の三つの直線軸に対応させ、該角度θ及び該角度Φを該多軸加工機の二つの回転軸の周りの角度に対応させ加工を実施する請求項1に記載のマイクロレンズアレイの成形型の切削加工方法。
【請求項7】
該複数のマイクロレンズの面に対応する該成形型の複数の面を加工する際に、角度θ及び角度Φの少なくとも一方の面ごとの一定値をそれぞれ所定の範囲内で一様に分布させる請求項1に記載のマイクロレンズアレイの成形型の切削加工方法。
【請求項8】
請求項1に記載の加工方法によって切削加工した成形型を使用するマイクロレンズアレイの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロレンズアレイの成形型の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロレンズアレイの成形型を多軸加工機などの加工機によって加工する場合に、マイクロレンズアレイの複数のマイクロレンズの面に対応する成形型の複数の面を順次加工する(たとえば、特許文献1)。したがって、マイクロレンズの数が多い場合には成形型の加工の進行にしたがって加工機の工具の摩耗が大きくなる。工具の摩耗に起因する成形型の面の形状誤差はマイクロレンズアレイの光学性能に大きな影響を与える。特に、複数のマイクロレンズの面に対応する成形型の複数の面を順次加工する場合には、加工機の工具の特定の箇所が摩耗しやすいので成形型の複数の面の該特定の箇所に対応する特定の位置の形状誤差が大きくなる。したがって、成形型を使用して製造したマイクロレンズアレイの複数のマイクロレンズの面においても特定の位置の形状誤差が大きくなる。この結果、一例としてマイクロレンズアレイを、光束の発散角を屈折によって増加させる光学素子として使用した場合に、マイクロレンズアレイを使用して照射した面の照度において、複数のマイクロレンズの面の特定の位置の形状誤差に起因する照度変化が加算されて照射面において特定の位置の照度変化が大きくなる傾向がある。
【0003】
このため、従来のマイクロレンズアレイの成形型の加工方法によって、マイクロレンズの微細化及びマイクロレンズアレイの大型化の影響に十分に対応することはできなかった。換言すれば、多数の微細なマイクロレンズを含む大面積の光学性能の高いマイクロレンズアレイの成形型の加工方法は開発されていない。したがって、多数の微細なマイクロレンズを含む大面積の光学性能の高いマイクロレンズアレイの成形型の加工方法に対するニーズがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-43444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、多数の微細なマイクロレンズを含む大面積の光学性能の高いマイクロレンズアレイの成形型の加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様のマイクロレンズアレイの成形型の加工方法は、それぞれが同一方向の光軸を備え、ほぼ同一形状の複数のマイクロレンズを備えたマイクロレンズアレイの成形型の加工方法である。一つのマイクロレンズの面に対応する該成形型の一つの面を加工する際に、該一つの面のマイクロレンズの光軸に対応する中心軸の方向をz軸として、互いに直交するx軸、y軸及びz軸を備えた(x、y、z)座標系において、回転する工具の加工点の(x、y、z)座標を変化させながら、該工具の回転軸と該工具の回転軸上の点を通る該z軸の方向の直線とのなす角度θの値及び該工具の回転軸と該直線とを含む平面の該直線の周りの角度Φの値を一定として加工し、該複数のマイクロレンズの面に対応する該成形型の複数の面を加工する際に、面ごとに角度θ及び角度Φの少なくとも一方の値を所定の範囲内に分布させる。
【0007】
本態様によれば、該複数のマイクロレンズの面に対応する該成形型の複数の面を加工する際に、面ごとに角度θ及び角度Φの少なくとも一方の値を所定の範囲内に分布させることによって、該複数の面の形状誤差の最大値が生じる位置が変化し、複数のマイクロレンズの形状誤差の最大値が生じる位置が重ならない。この結果、マイクロレンズアレイを使用して照射した面の照度分布において複数のマイクロレンズの形状誤差よる照度変化を小さくすることができる。したがって、本態様によれば、多数の微細なマイクロレンズを含む大面積の光学性能の高いマイクロレンズアレイの成形型を加工することができる。
【0008】
本発明の第1の態様の第1の実施形態のマイクロレンズアレイの成形型の加工方法においては、該工具の加工点が該成形型の一つの面上の、交わることのない連続した線上に位置するように加工が実施される。
【0009】
本発明の第1の態様の第2の実施形態のマイクロレンズアレイの成形型の加工方法においては、該複数のマイクロレンズの面に対応する該成形型の複数の面に関し、該工具の該回転軸上の基準点と加工点とを結ぶ直線と該回転軸とがなす角度(鋭角)が所定の値となる点からなるそれぞれの面上の曲線の位置が面ごとに変化するように、面ごとに角度θ及び角度Φの少なくとも一方の値を所定の範囲内範囲内に分布させる。
【0010】
本実施形態によれば、該工具の該回転軸上の基準点と加工点とを結ぶ直線と該回転軸とがなす角度(鋭角)により該工具の摩耗が最大となる点を規定し、該成形型の複数の面において形状誤差の最大となる位置を推定することができるので、角度θ及び角度Φの少なくとも一方の値を所定の範囲内範囲内の分布を適切に定めることができる。
【0011】
本発明の第1の態様の第3の実施形態のマイクロレンズアレイの成形型の加工方法においては、該複数のマイクロレンズの面に対応する該成形型の複数の面を加工する際に、角度θの値を0ではない一つの定数または少なくとも一つの0ではない値を含む複数の定数とし、角度Φの値を0度から360度の範囲内に分布させる。
【0012】
本実施形態によれば、角度θの値を0ではない一つの定数または少なくとも一つの0ではない値を含む複数の定数とするので容易に加工経路を定めることができる。
【0013】
本発明の第1の態様の第4の実施形態のマイクロレンズアレイの成形型の加工方法においては、Nが10以下の自然数として、隣接するN個のマイクロレンズの面に対応する該成形型の隣接するN個の面ごとに角度θ及び角度Φの少なくとも一方の値を所定の範囲内に分布させる。
【0014】
本実施形態によれば、マイクロレンズアレイの入射光束によって照射されるマイクロレンズアレイの面積を単一のマイクロレンズの有効面積で除した値をNとした場合に、入射光束がマイクロレンズアレイのどの位置に入射しても照射されるマイクロレンズアレイの面積内で複数のマイクロレンズの角度Φが適切に分布するようにすることができる。
【0015】
本発明の第1の態様の第5の実施形態のマイクロレンズアレイの成形型の加工方法においては、角度θは3度以上で15度以下である。
【0016】
本発明の第1の態様の第6の実施形態のマイクロレンズアレイの成形型の加工方法は、5軸加工機を使用し、該x軸、該y軸及び該z軸を該5軸加工機の三つの直線軸に対応させ、該角度θ及び該角度Φを該多軸加工機の二つの回転軸の周りの角度に対応させ加工を実施する。
【0017】
本実施形態によれば、5軸加工機を使用して容易にマイクロレンズアレイの成形型を加工することができる。
【0018】
本発明の第2の態様のマイクロレンズアレイの製造方法は、上記のいずれかのマイクロレンズアレイの成形型の加工方法によって加工した成形型を使用する。
【0019】
本態様のマイクロレンズアレイの製造方法によれば、多数の微細なマイクロレンズを含む大面積の光学性能の高いマイクロレンズアレイが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の加工方法に使用する加工装置の一例としての5軸加工機を示す図である。
図2】工具を示す図である。
図3】5軸加工機によってレンズ面に対応する成形型の面を加工する場合の工具の加工経路Sの一例を示す図である。
図4】工具の回転軸を含む断面を示す図である。
図5】工具の回転軸を含む断面を示す図である。
図6】レンズ面に対応する成形型の面を加工する従来の加工方法の場合の切れ刃の円弧の中心Oの加工経路S’を示す図である。
図7】切れ刃の摩耗を説明するための図である。
図8】レンズ面に対応する成形型の面の切れ刃の摩耗による形状誤差を示す図である。
図9】面の摩耗による形状誤差のない成形型によって成形されたマイクロレンズアレイによる照度の一例を示す図である。
図10図9の円の中心を通る水平方向断面の照度円の中心を通る水平方向断面の照度を示す図である。
図11図8に示すような摩耗による形状誤差を有する成形型によって成形されたマイクロレンズアレイによる照度の一例を示す図である。
図12図11の円の中心を通る水平方向断面の照度を示す図である。
図13】工具の傾きを説明するための図である。
図14】z軸と工具の回転軸とがなす角度(鋭角)がθの場合において工具と工具の加工経路との位置関係を示す図である。
図15】z軸と工具の回転軸とがなす角度(鋭角)θの最大値の定め方を説明するための図である。
図16】y軸と工具の回転軸及び工具の回転軸を通るz軸方向の直線を含む面とがなす角度(鋭角)Φを説明するための図である。
図17】角度θが0の場合に、面において形状誤差の最大値が生じる位置を説明するための図である。
図18】角度θが0ではない一定値の場合に、面において形状誤差の最大値が生じる位置を説明するための図である。
図19】θ=0度の場合に面の形状誤差の最大値が生じる位置を表す閉じた曲線の形状C1を示す図である。
図20】θ=15度、Φ=90度の場合に面の形状誤差の最大値が生じる位置を表す閉じた曲線の形状C2を示す図である。
図21】θ=15度、Φ=180度の場合に面210の形状誤差の最大値が生じる位置を表す閉じた曲線の形状C3を示す図である。
図22】角度θの確率密度関数f(θ)を示す図である。
図23】角度Φの確率密度関数g(Φ)を示す図である。
図24】θ=0の従来の方法で加工した1個のマイクロレンズを使用して照射した面の照度分布を示す図である。
図25図24の水平方向の断面の照度分布を示す図である。
図26図24の鉛直方向の断面の照度分布を示す図である。
図27】6個のマイクロレンズのグループの平均の照度分布を示す図である。
図28図27の水平方向の断面の照度分布を示す図である。
図29図27の鉛直方向の断面の照度分布を示す図である。
図30】20個のマイクロレンズのグループの平均の照度分布を示す図である。
図31図30の水平方向の断面の照度分布を示す図である。に対応する面
図32図30の鉛直方向の断面の照度分布を示す図である。
図33】50個のマイクロレンズのグループの平均の照度分布を示す図である。
図34図33の水平方向の断面の照度分布を示す図である。
図35図33の鉛直方向の断面の照度分布を示す図である。
図36】N=4の場合の、隣接する4個のマイクロレンズに対応する面の角度Φの一例を示す図である。
図37図36の隣接する4個のマイクロレンズを組み合わせた配置を示す図である。
図38】N=9の場合の、隣接する9個のマイクロレンズに対応する面の角度Φの一例を示す図である。
図39図38の隣接する9個のマイクロレンズに対応する面に対応する面に対応する面を組み合わせた配置を示す図である。
図40】複数のマイクロレンズによる照度分布においてそれぞれのマイクロレンズによる照度の変化の大きな部分が重なる状態を示す図である。
図41】θ=10度、Φ=0の場合の面に対応するマイクロレンズの照度分布を示す図である。
図42】θ=0の場合のレンズ面に対応するマイクロレンズの照度分布を示す図である。
図43】θ=10度、Φ=90度の場合の面に対応するマイクロレンズの照度分布を示す図である。
図44図41-43の照度分布を平均した照度分布を示す図である。
図45】従来技術の加工方法で加工したマイクロレンズアレイ用成形型の2か所のマイクロレンズに対応する部分のうちの一つに対応する部分の形状誤差を示す図である。
図46】従来技術の加工方法で加工したマイクロレンズアレイ用成形型の2か所のマイクロレンズに対応する部分のうちの一つに対応する部分の形状誤差を示す図である。
図47】本発明の加工方法で加工したマイクロレンズアレイ用成形型の2か所のマイクロレンズに対応する部分のうちの一つの形状誤差を示す図である。
図48】本発明の加工方法で加工したマイクロレンズアレイ用成形型の2か所のマイクロレンズに対応する部分のうちの一つの形状誤差を示す図である。
図49】従来の加工方法によって加工した成形型によって製造した上記の仕様のマイクロレンズアレイを使用して照射した面の照度分布を示す図である。
図50図49の断面の照度分布を示す図である。
図51】本発明の加工方法によって加工した成形型によって製造した上記の仕様のマイクロレンズアレイを使用して照射した面の照度分布を示す図である。
図52図51の断面の照度分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の加工方法に使用する加工装置の一例としての5軸加工機100を示す図である。5軸加工機100は三つの直線軸(X,Y,Z)及び二つの回転軸(B,C)を備える。加工対象200は工具110によって加工される。工具110は、一例としてボールエンドミルである。
【0022】
図2は、工具110を示す図である。工具110は切れ刃115を備え、回転軸の周りに回転することによって加工対象200を切削する。工具110の回転軸を含む断面の切れ刃115の輪郭は円弧状である。
【0023】
図3は、5軸加工機100によってレンズ面に対応する成形型の面210を加工する場合の工具110の加工点の位置を示す加工経路Sの一例を示す図である。レンズ面及び面210は、球面、非球面、自由曲面などである。加工経路は、一例として成形型の面の中心軸の周りの渦巻状である。一般的に、工具の加工点は成形型の面210上の、交わることのない連続した線上に位置するように加工が実施されるのが好ましい。工具110の加工点の位置は5軸加工機100の直線軸(X,Y,Z)によって制御される。加工経路の定め方については後で説明する。
【0024】
図4及び図5は、工具110の回転軸を含む断面を示す図である。図5は、図4の点線で囲んだ部分の拡大図である。図5の断面において、切れ刃115の輪郭の設計上の円弧をCで示し、円弧Cの中心をOで示す。中心Oは回転軸上に位置する。実際の切れ刃115の輪郭C’と設計上の円弧Cとの間には、工具の取り付け誤差及び切れ刃の輪郭のうねりに起因する円弧の半径方向の誤差がある。そこで、テスト切削を実施して円弧の半径方向の誤差を検出し、その誤差を円弧Cの中心Oの周りの角度αの関数Δ(α)として表す。
【0025】
円弧Cの中心Oを基準点とも呼称する。切れ刃の断面形状が完全な円弧ではない場合においても中心軸上の基準点を定め、基準点の周りの角度によって加工点の位置を規定することができる。
【0026】
図6は、レンズ面に対応する成形型の面210を加工する従来の加工方法の場合の切れ刃115の円弧の中心Oの加工経路S’を示す図である。図6は面210の中心軸及び工具110の回転軸を含む断面を示す。加工経路S’は、円弧Cの半径及び円弧の半径方向の誤差Δ(α)から定まる。工具110の回転軸はレンズ面の光軸に対応する面210の中心軸と常に平行である。ここで留意すべき点は、円弧Cの中心Oと加工点Mとを結ぶ直線と工具110の中心軸とがなす角度(鋭角)は加工点Mにおける面210の断面の接線と面210の中心軸に直交する直線とがなす角度(鋭角)αに等しいことである。
【0027】
図7は、切れ刃115の摩耗を説明するための図である。図7は工具110の回転軸を含む断面を示す。切れ刃115の摩耗は、円弧Cの中心Oと加工点Mとを結ぶ直線と工具110の中心軸とがなす角度(鋭角)γの位置で最大値を示す。
【0028】
図8は、レンズ面に対応する成形型の面210の切れ刃115の摩耗による形状誤差を示す図である。加工された形状プロファイルと設計値との差である。図8の横軸は面210上の点の中心軸からの距離を示し、図8の縦軸はその点における切れ刃115の摩耗による形状誤差を示す。同じ工具を使用して複数のマイクロレンズ面に対応する複数の面210を加工する場合に、後で加工される面210の形状誤差はより大きくなる。図6を使用して説明したように、円弧Cの中心Oの周りの角度は加工点Mにおける面210の断面の接線と面210の中心軸に直交する直線とがなす角度(鋭角)に等しいので、切れ刃115の摩耗の最大値を示す円弧Cの中心Oと加工点Mとを結ぶ直線と工具110の中心軸とがなす角度(鋭角)γに対応する、面210の断面の接線角度の位置で形状誤差は最大値を示す。
【0029】
図9は、面210の摩耗による形状誤差のない成形型によって成形されたマイクロレンズアレイを使用して照射した面の照度の一例を示す図である。
【0030】
図10は、図9の円の中心を通る水平方向断面の照度を示す図である。図10の横軸は水平方向の位置を示し、図10の縦軸は照度の相対値を示す。
【0031】
図9及び図10によれば、照度は照射される面上でほぼ一様である。
【0032】
図11は、図8に示すような摩耗による形状誤差を有する成形型によって成形されたマイクロレンズアレイを使用して照射した面の照度の一例を示す図である。
【0033】
図12は、図11の円の中心を通る水平方向断面の照度を示す図である。図12の横軸は水平方向の位置を示し、図12の縦軸は照度の相対値を示す。
【0034】
切れ刃115の摩耗は、円弧Cの中心Oと加工点Mとを結ぶ直線と工具110の中心軸とがなす角度(鋭角)γの位置で最大値を示すので、複数のマイクロレンズの面に対応する成形型の複数の面においてほぼ同じ位置にほぼ円形の形状の誤差の相対的に大きな部分が生じる。したがって、成形型を使用して製造したマイクロレンズアレイの複数のマイクロレンズの面においても特定の位置の形状誤差が大きくなる。この結果、マイクロレンズアレイを使用して照射した面の照度において、複数のマイクロレンズの面の特定の位置の形状誤差に起因する照度変化が加算されて、図11及び図12に示すように特定の位置の照度変化が大きくなる。
【0035】
発明者は、切れ刃115の摩耗に起因して、複数のマイクロレンズの面に対応する成形型の複数の面においてほぼ同じ位置にほぼ円形の形状の誤差の相対的に大きな部分が生じることによって、マイクロレンズアレイによって照射される面において上記のほぼ円形の形状の誤差の相対的に大きな部分に対応する照度の変化の大きな部分が生じることに着目し、マイクロレンズごとに誤差の相対的に大きな部分の位置を適切に変化させることによってマイクロレンズアレイを使用して照射した面の照度の変化を小さくすることに想到した。
【0036】
図13は、工具110の傾きを説明するための図である。工具110の回転軸上の一点を原点として原点を通り、マイクロレンズの面の光軸に対応する面210の中心軸に平行な直線をz軸とする。z軸に直交する平面内に互いに直交するx軸及びy軸を定める。z軸と工具110の回転軸とがなす角度(鋭角)をθとする。y軸とz軸及び工具110の回転軸を含む面とがなす角度(鋭角)をΦとする。
【0037】
図14は、z軸と工具110の回転軸とがなす角度(鋭角)がθの場合において工具110と工具の加工経路との位置関係を示す図である。図6を使用して説明した従来の加工方法の場合にはz軸と工具110の回転軸とがなす角度(鋭角)は0である。
【0038】
図15は、z軸と工具110の回転軸とがなす角度(鋭角)θの最大値の定め方を説明するための図である。図15は、工具110の中心軸及び面210の中心軸を含む断面を示す。角度θの最大値は、工具の側面と面210とが干渉しないように定める。
【0039】
図16は、y軸と工具110の回転軸及び工具110の回転軸を通るz軸方向の直線を含む面とがなす角度(鋭角)Φを説明するための図である。図16においてz軸はマイクロレンズの面に対応する成形型の面210の中心軸と一致する。z軸を含む面をPLで示す。角度Φは、面210の中心軸の周りの角度に対応する。図16において角度Φはy軸を基準として反時計回りに測定した角度である。
【0040】
ここで、面210において形状誤差の最大値が生じる位置について説明する。図8を使用して説明したように形状誤差の最大値が生じる位置は、切れ刃115の摩耗が最大となる、円弧Cの中心Oと加工点Mとを結ぶ直線と工具110の中心軸とがなす角度(鋭角)γの位置によって定まる。
【0041】
以下において、マイクロレンズの面に対応する成形型の面210が球面である場合について説明する。この場合に、以下に説明する図17及び図18の断面は、図16で説明した、角度Φに対応する面PLである。
【0042】
図17は、角度θが0の場合に、面210において形状誤差の最大値が生じる位置を説明するための図である。図17は面210の中心軸及び工具110の回転軸を含む断面を示す。図17の断面は図6の断面と同じである。図6を使用して説明したように、円弧Cの中心Oと加工点Mとを結ぶ直線と工具110の中心軸とがなす角度(鋭角)は加工点における面210の断面の接線と面210の中心軸に直交する直線とがなす角度(鋭角)に等しいので、切れ刃115の摩耗が最大となる、円弧Cの中心Oと加工点Mとを結ぶ直線と工具110の中心軸とがなす角度(鋭角)γの位置によって加工される面210の位置は、加工点M1及びM2における面210の断面の接線と面210の中心軸に直交する直線とがなす角度(鋭角)がγの位置である。面210が球面であるとして切れ刃115のγの位置によって加工される面210の位置は、加工点M1及びM2を含み中心軸に垂直な平面上にあり、中心軸からの距離がaの面210上の円上である。
【0043】
図18は、角度θが0ではない一定値の場合に、面210において形状誤差の最大値が生じる位置を説明するための図である。図18の断面は、工具110の回転軸及び面210の中心軸を含む断面である。図18の場合に工具110の回転軸の面210の中心軸に対する傾き角度はθであるので、切れ刃115の摩耗が最大となる、円弧Cの中心Oと加工点Mとを結ぶ直線と工具110の中心軸とがなす角度(鋭角)γの位置によって加工される面210の位置は、加工点における面210の断面の接線と面210の中心軸に直交する直線とがなす角度(鋭角)がγ+θ及びγ‐θの位置である。図18の断面において、中心軸から角度がγ+θ及びγ‐θの加工点M3及びM4までの距離をそれぞれb及びcとすると、bはaよりも大きくcはaよりも小さい。また、b及びcの和は2aよりも小さい。面210が球面であるとして上記の切れ刃115のγの位置によって加工される面210の位置は、加工点M3及びM4を含み、図18の断面において中心軸に対する角度θの直線に垂直な平面上にあり、面210上のほぼ円形の形状上である。なお、上記のほぼ円形の形状の中心の面210の中心軸からの距離は角度θにしたがって増加する。換言すれば、面210において形状誤差の最大値が生じる位置を表す閉じた曲線の形状の位置は、角度θにしたがって中心軸から角度Φの方向に移動し、その移動の大きさは角度θにしたがって増加する。
【0044】
図19は、θ=0度の場合に面210の形状誤差の最大値が生じる位置を表す閉じた曲線の形状C1を示す図である。形状C1の中心は面210の中心軸の位置と一致する。
【0045】
図20は、θ=15度、Φ=90度の場合に面210の形状誤差の最大値が生じる位置を表す閉じた曲線の形状C2を示す図である。Φは水平方向を基準として反時計回りに測定した角度である。形状C2の中心は面210の中心軸の位置からΦ=90度の方向へ移動している。
【0046】
図21は、θ=15度、Φ=180度の場合に面210の形状誤差の最大値が生じる位置を表す閉じた曲線の形状C3を示す図である。形状C3の中心は面210の中心軸の位置からΦ=180度の方向へ移動している。
【0047】
図19-21において面210は球面とする。C1は円形である。C2及びC3は楕円に類似した曲線である。
【0048】
一般的に、面210の形状誤差の最大値が生じる位置を表す曲線は閉じない場合もある。
【0049】
このように、複数のマイクロレンズの面に対応する成形型の複数の面210ごとに角度θ及び角度Φの少なくとも一方を変化させることによって、マイクロレンズごとに面210の形状誤差の最大値が生じる位置を変化させることができる。また、複数の面210に対する角度θ及び角度Φの少なくとも一方を所定の範囲内に分布させることによって、複数の面210の形状誤差の最大値が生じる位置が変化し、複数のマイクロレンズの形状誤差の最大値が生じる位置が重ならないのでマイクロレンズアレイを使用して照射した面の照度分布において複数のマイクロレンズの形状誤差よる照度変化が小さくなる。
【0050】
ここで、角度を所定の範囲内に分布させるとは、角度を所定の範囲内に一様に分布させること、角度を所定の範囲内である確率密度関数にしたがって分布させること、所定の範囲で角度を一定の間隔で分布させることなどを含む。一般的に、所定の範囲内に分布させた角度の値の分散が適切な値以上となるようする。上記の適切な値は、マイクロレンズアレイを使用して照射した面の照度分布において形状誤差の最大値が生じる位置による照度変化が十分に小さくなるように定める。
【0051】
つぎに、複数のマイクロレンズに対応する複数の面210ごとに角度θ及び角度Φを変化させた場合のマイクロレンズアレイを使用して照射した面の照度分布をシミュレーションによって求める。角度θ及び角度Φは以下に示す確率密度関数にしたがって分布させる。
【0052】
図22は、角度θの確率密度関数f(θ)を示す図である。f(θ)は以下の式で表せる。
【数1】
θの期待値は最大値θmaxの2/3である。
【0053】
図23は、角度Φの確率密度関数g(Φ)を示す図である。g(Φ)は以下の式で表せる。
【数2】
【0054】
シミュレーションにおいては、マイクロレンズの数が6個、20個及び50個の3個のグループにおいて、角度θ及び角度Φをそれぞれ確率密度関数f(θ)及びg(Φ)に従って変化させ、それぞれのマイクロレンズの面の形状誤差の最大値が生じる位置を求めた。角度θの最大値θmaxは10度とした。つぎに、それぞれのマイクロレンズアレイを使用して照射した面の照度分布を求めグループごとに平均値を求めた。上記の平均値によって、マイクロレンズアレイの照度分布を推定した。
【0055】
図24は、θ=0の従来の方法で加工した1個のマイクロレンズを使用して照射した面の照度分布を示す図である。
【0056】
図25は、図24の水平方向の断面の照度分布を示す図である。図25の横軸は水平方向の位置を示し、図25の縦軸は照度の相対値を示す。
【0057】
図26は、図24の鉛直方向の断面の照度分布を示す図である。図26の横軸は鉛直方向の位置を示し、図26の縦軸は照度の相対値を示す。
【0058】
図27は、6個のマイクロレンズのグループの平均の照度分布を示す図である。
【0059】
図28は、図27の水平方向の断面の照度分布を示す図である。図28の横軸は水平方向の位置を示し、図28の縦軸は照度の相対値を示す。
【0060】
図29は、図27の鉛直方向の断面の照度分布を示す図である。図29の横軸は鉛直方向の位置を示し、図29の縦軸は照度の相対値を示す。
【0061】
図30は、20個のマイクロレンズのグループの平均の照度分布を示す図である。
【0062】
図31は、図30の水平方向の断面の照度分布を示す図である。図31の横軸は水平方向の位置を示し、図31の縦軸は照度の相対値を示す。
【0063】
図32は、図30の鉛直方向の断面の照度分布を示す図である。図32の横軸は鉛直方向の位置を示し、図32の縦軸は照度の相対値を示す。
【0064】
図33は、50個のマイクロレンズのグループの平均の照度分布を示す図である。
【0065】
図34は、図33の水平方向の断面の照度分布を示す図である。図34の横軸は水平方向の位置を示し、図34の縦軸は照度の相対値を示す。
【0066】
図35は、図33の鉛直方向の断面の照度分布を示す図である。図35の横軸は鉛直方向の位置を示し、図35の縦軸は照度の相対値を示す。
【0067】
図24-26によると、θ=0の従来の方法で加工した場合には、複数のマイクロレンズの面210の形状誤差の最大値が生じる位置に対応する位置がほぼ同じになるのでマイクロレンズアレイを使用して照射した面の照度分布において面210の形状誤差の最大値が生じる位置に対応する位置の照度の変化が大きくなることが推定される。図27-35によると、マイクロレンズの数を増加して面210の形状誤差の最大値が生じる位置を変化させることによってマイクロレンズアレイを使用して照射した面の照度の変化はθ=0の従来の方法で加工した場合と比較して小さくなることが推定される。
【0068】
図1に示した5軸加工機100によって本発明の加工方法をどのように実施するかを説明する。図3他に示したx軸、y軸及びz軸は図1のX軸、Y軸及びZ軸にそれぞれ対応させることができる。角度θは回転軸Cの周りの角度に、角度Φは回転軸Bの周りの角度に対応させることができる。
【0069】
マイクロレンズごとに角度θを変化させると、加工開始位置のx、y、z座標がマイクロレンズごとに異なり計算及び加工時の位置出し作業が煩雑となる。また、加工経路(軌跡)も角度θ毎に誤差Δ(α)を反映させた計算が必要となる。したがって、繁雑な計算を避けるには角度θを変化させず一定として角度Φのみを変化させるのが好ましい。
【0070】
以下において、マイクロレンズアレイの複数のマイクロレンズの面に対応する複数の面210に対して角度Φをどのように変化させるべきかを検討する。角度θは、別途記載した場合以外は0ではない一定値とする。角度θが0であると、角度Φは成形型の面210の中心軸の周りの角度となるので角度Φを変化させても面210の形状誤差の最大値が生じる位置は変化しない。面210の形状誤差の最大値が生じる位置を変化させるには角度θが3度以上であるのが好ましい。上述のように角度θの最大値は、工具の側面と面210とが干渉しないように定めるが、実際には角度θを15度以下とするのが好ましい。また、角度θを10度以下とするのがさらに好ましい。その理由は、工具回転軸の回転振れ量を調整する際に、工具回転軸の軸方向及び軸方向に垂直な方向の両方の振れ量を良好に調整することが難しい場合が有るが、角度θが小さい方場合には軸方向の振れ量を優先的に調整することによって加工後の面粗さを減少させることができるからである。
【0071】
マイクロレンズアレイの入射光束によって照射されるマイクロレンズアレイの面積を単一のマイクロレンズの有効面積で除した値をNとする。一般的にNが10以下の場合には、角度を分布させる際に、確率密度関数などを使用するよりも一定の間隔で一様に分布させる方が簡単である。
【0072】
図36は、N=4の場合の、隣接する4個のマイクロレンズに対応する面の角度Φの一例を示す図である。隣接する4個のマイクロレンズに対応する面の角度Φは、たとえば水平方向に対して45度、135度、225度及び315度のように90度の間隔で定められる。
【0073】
図37は、図36の隣接する4個のマイクロレンズに対応する面を組み合わせた配置を示す図である。N=4の場合に、図37の配置によれば、入射光束がマイクロレンズアレイのどの位置に入射しても照射されるマイクロレンズアレイの面積内で複数のマイクロレンズの角度Φが適切に分布する。
【0074】
図38は、N=9の場合の、隣接する9個のマイクロレンズに対応する面の角度Φの一例を示す図である。図40の黒い丸は角度θを0とすることを示す。
【0075】
図39は、図38の隣接する9個のマイクロレンズに対応する面に対応する面に対応する面を組み合わせた配置を示す図である。N=9の場合に、図41の配置によれば、入射光束がマイクロレンズアレイのどの位置に入射しても照射されるマイクロレンズアレイの面積内で複数のマイクロレンズの角度Φが適切に分布する。
【0076】
図19-21に示す、面210の形状誤差の最大値が生じる位置に対応するほぼ円形の形状の中心位置は角度Φにしたがって面210の中心軸の周りを移動する。また、上記のほぼ円形の形状の中心位置と面210の中心軸との間の距離は角度θにしたがって増加する。他方、上記のほぼ円形の形状の半径は図7を使用して説明した、円弧Cの中心Oと加工点Mとを結ぶ直線及び工具110の中心軸がなす角度(鋭角)γによって定まる。成形型において上記のほぼ円形の形状の中心位置及び面210の中心軸間の距離と、上記のほぼ円形の形状の半径と、が等しいと、複数のマイクロレンズの面に対応する成形型の複数の面210ごとに角度θ及び角度Φを変化させても、このような成形型によって製造した複数のマイクロレンズを使用して照射した面の照度分布においてそれぞれのマイクロレンズによる照度の変化の大きな部分が重なる恐れがある。
【0077】
図40は、複数のマイクロレンズによる照度分布においてそれぞれのマイクロレンズによる照度の変化の大きな部分が重なる状態を示す図である。
【0078】
したがって、複数のマイクロレンズによる照度分布においてそれぞれのマイクロレンズによる照度の変化の大きな部分が重なる状態を避けるように角度θを定める必要がある。
【0079】
図41は、θ=10度、Φ=0の場合のレンズ面210に対応するマイクロレンズの照度分布を示す図である。
【0080】
図42は、θ=0の場合のレンズ面210に対応するマイクロレンズの照度分布を示す図である。
【0081】
図43は、θ=10度、Φ=90度の場合のレンズ面210に対応するマイクロレンズの照度分布を示す図である。
【0082】
図44は、図41-図43の照度分布を平均した照度分布を示す図である。図44の平均した照度分布における照度変化は、図41-図43のそれぞれの照度分布における照度変化よりも小さい。
【0083】
図45及び図46は、それぞれ、従来技術の加工方法で加工したマイクロレンズアレイ用成形型の2か所のマイクロレンズに対応する部分のうちの一つに対応する部分の形状誤差を示す図である。
【0084】
図47及び図48は、それぞれ、本発明の加工方法で加工したマイクロレンズアレイ用成形型の2か所のマイクロレンズに対応する部分のうちの一つの形状誤差を示す図である。具体的な加工方法は、以下に説明する実施例の加工方法である。
【0085】
図45及び図46によれば、2か所のマイクロレンズに対応する部分の形状誤差の大きな位置はほぼ同じである。他方、図47及び図48によれば、2か所のマイクロレンズに対応する部分の形状誤差の大きな位置は顕著に異なっている。
【0086】
以下において実施例について説明する。マイクロレンズアレイの仕様は以下のとおりである。
マイクロレンズの形状 半径0.3ミリメータの球面
マイクロレンズの有効径 0.3ミリメータ
マイクロレンズの配列 有効レンズ径の円に内接する正六角形を底面の隙間のない配置(底面積は0.0585平方ミリメータ)
マイクロレンズの個数 418個
なお、複数のマイクロレンズの光軸及び底面の位置関係は、個々のマイクロレンズの開口の回折に起因するものを含む光の強度分布のむらを低減する目的で、出願人によるWO2015/182619に開示した方法で調整している。
【0087】
面210の加工に使用した工具の円弧の半径は0.2ミリメータである。一般的に、工具の円弧の半径はレンズの曲率半径の最小値の0.7倍以上、かつ0.8倍以下であるのが好ましい。
【0088】
図49は、従来の加工方法によって加工した成形型によって製造した上記の仕様のマイクロレンズアレイを使用して照射した面の照度分布を示す図である。入射光束の径は1ミリメータである。
【0089】
図50図49の断面の照度分布を示す図である。
【0090】
図51は、本発明の加工方法によって加工した成形型によって製造した上記の仕様のマイクロレンズアレイを使用して照射した面の照度分布を示す図である。入射光束の径は1ミリメータである。
【0091】
図53図51の断面の照度分布を示す図である。
【0092】
図49及び図50によると、従来の加工方法によって加工した成形型によって製造したマイクロレンズアレイを使用して照射した面の照度分布には矢印で示した照度が局所的に低い部分が存在する。他方、図51及び図52によると、本発明の加工方法によって加工した成形型によって製造したマイクロレンズアレイを使用して照射した面の照度分布には照度が局所的に低い部分は存在しない。
【要約】
それぞれが同一方向の光軸を備え、ほぼ同一形状の複数のマイクロレンズを備えたマイクロレンズアレイの成形型の加工方法を提供する。一つのマイクロレンズの面に対応する該成形型の一つの面を加工する際に、該一つの面のマイクロレンズの光軸に対応する中心軸の方向をz軸として、互いに直交するx軸、y軸及びz軸を備えた(x、y、z)座標系において、回転する工具の加工点の(x、y、z)座標を変化させながら、該工具の回転軸と該工具の回転軸上の点を通る該z軸の方向の直線とのなす角度θの値及び該工具の回転軸と該直線とを含む平面の該直線の周りの角度Φの値を一定として加工し、該複数のマイクロレンズの面に対応する該成形型の複数の面を加工する際に、面ごとに角度θ及び角度Φの少なくとも一方の値を所定の範囲内に分布させる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15
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図17
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