IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ジャパンエンジンコーポレーションの特許一覧

<>
  • 特許-舶用ディーゼルエンジン 図1
  • 特許-舶用ディーゼルエンジン 図2
  • 特許-舶用ディーゼルエンジン 図3
  • 特許-舶用ディーゼルエンジン 図4
  • 特許-舶用ディーゼルエンジン 図5
  • 特許-舶用ディーゼルエンジン 図6
  • 特許-舶用ディーゼルエンジン 図7
  • 特許-舶用ディーゼルエンジン 図8
  • 特許-舶用ディーゼルエンジン 図9
  • 特許-舶用ディーゼルエンジン 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-27
(45)【発行日】2023-01-11
(54)【発明の名称】舶用ディーゼルエンジン
(51)【国際特許分類】
   F02D 19/12 20060101AFI20221228BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20221228BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20221228BHJP
   F02D 21/08 20060101ALI20221228BHJP
   F02D 43/00 20060101ALI20221228BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20221228BHJP
   F02M 25/025 20060101ALI20221228BHJP
   F02M 25/03 20060101ALI20221228BHJP
   F02M 26/06 20160101ALI20221228BHJP
   F02M 26/08 20160101ALI20221228BHJP
【FI】
F02D19/12 A
F01N3/08 G
F01N3/24 R
F02D21/08 301Z
F02D43/00 301N
F02D43/00 301T
F02D43/00 301Z
F02D45/00
F02M25/025 K
F02M25/03
F02M26/06
F02M26/08 321
F02M26/08 351
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017160629
(22)【出願日】2017-08-23
(65)【公開番号】P2019039324
(43)【公開日】2019-03-14
【審査請求日】2020-06-05
【審判番号】
【審判請求日】2021-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】303047034
【氏名又は名称】株式会社ジャパンエンジンコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平岡 直大
(72)【発明者】
【氏名】三柳 晃洋
(72)【発明者】
【氏名】辻 陽平
(72)【発明者】
【氏名】樋口 純
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 和久
【合議体】
【審判長】水野 治彦
【審判官】河端 賢
【審判官】木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-25773(JP,A)
【文献】国際公開第2016/103398(WO,A1)
【文献】特許第5908636(JP,B1)
【文献】特開平9-144606(JP,A)
【文献】特許第5886356(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 13/00-45/00
F02M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ内の燃料燃焼によるピストンの往復運動を、推進力を発生させる回転軸の回転運動に変換するエンジン本体と、
前記シリンダ内の燃焼室へ燃料および水を噴射する噴射部と、
前記エンジン本体から排出された排ガス中の窒素酸化物を低減するNOx低減装置と、
前記噴射部の動作期間、前記エンジン本体の負荷であるエンジン負荷に応じて、前記噴射部による水添加率を可変に制御し、前記NOx低減装置の動作期間、前記エンジン負荷に応じて、前記NOx低減装置による窒素酸化物の低減の程度を示す低減パラメータを可変に制御し、前記噴射部の動作期間と前記NOx低減装置の動作期間とが重複する場合において、前記水添加率と、前記エンジン負荷の変化に対して極大値を有するように変化する前記低減パラメータとの組み合わせを、前記エンジン負荷毎に異なる組み合わせとなるように一義的に決定する制御部と、
を備えることを特徴とする舶用ディーゼルエンジン。
【請求項2】
前記NOx低減装置は、前記エンジン本体から排出された排ガスの一部を前記エンジン本体に再循環するEGRシステムであり、
前記NOx低減装置による前記低減パラメータは、前記EGRシステムによるEGR率であることを特徴とする請求項1に記載の舶用ディーゼルエンジン。
【請求項3】
前記制御部は、前記エンジン負荷と前記水添加率との関係を示す水添加率制御マップと、前記エンジン負荷と前記EGR率との関係を示すEGR率制御マップとを用い、前記エンジン負荷に応じて、前記水添加率と前記EGR率とを可変に制御することを特徴とする請求項2に記載の舶用ディーゼルエンジン。
【請求項4】
前記制御部は、前記エンジン負荷が所定値未満である場合、前記噴射部による前記水添加率を可変に制御し、前記エンジン負荷が前記所定値以上である場合、前記水添加率の制御に加えて更に、前記NOx低減装置による前記低減パラメータを可変に制御することを特徴とする請求項1~のいずれか一つに記載の舶用ディーゼルエンジン。
【請求項5】
前記噴射部は、前記シリンダ内の燃焼室へ燃料および水を層状に噴射することを特徴とする請求項1~のいずれか一つに記載の舶用ディーゼルエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶に搭載される舶用ディーゼルエンジンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、船舶の分野においては、舶用ディーゼルエンジンのエンジン本体から排出される排ガス中の窒素酸化物(NOx)を低減する手法の一つとして、水技術が公知である。この水技術は、エンジン本体のシリンダ内の燃焼室へ水を添加することにより、燃焼温度を下げてNOxの排出量を低減するものである。このような水技術として、例えば、燃料に水を混合して乳化させた水エマルジョン燃料を燃焼室へ導入するものや、燃料噴射後の燃焼室に発生した火炎に向けて水を単独で噴射するもの等が挙げられる。
【0003】
また、エンジン本体からの排ガス中のNOxを低減する別の手法として、排ガス再循環(EGR:Exhaust Gas Recirculation)システム、および、選択式触媒還元(SCR:Selective Catalytic Reduction)システムという二つのNOx低減技術が公知である。EGRシステムは、エンジン本体からの排ガスの一部を空気と混合してエンジン本体に再循環することにより、燃焼によるNOxの生成を抑制してNOxの排出量を低減する。SCRシステムは、エンジン本体からの排ガスに対して還元剤を噴射し、この排ガス中のNOxと還元剤との還元反応を促進させることにより、NOxの排出量を低減する。
【0004】
また、上述した水技術とEGRシステムとを組み合わせたディーゼルエンジンも開示されている(例えば、特許文献1~3参照)。特許文献1~3に開示されている技術では、エンジン負荷が低い状態と高い状態とで可変のEGR率に応じて、シリンダ内の燃焼室へ噴射される燃料の流れに水が添加されている。または、燃料に対する水添加率が、実用的なエンジン負荷によらず一定の目標値となるように制御されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5014516号公報
【文献】特許第5886356号公報
【文献】特許第5908636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、舶用ディーゼルエンジンに要求されるNOxの排出規制には、国際海事機関の海洋汚染防止条約附属書VIに基づいて、現状、2次規制(Tier II)および3次規制(Tier III)がある。2次規制は、一般海域(Global Area)を航行する船舶に搭載される舶用ディーゼルエンジンのNOxの排出量を規制するものである。3次規制は、2次規制に比べ極めて強化されたNOxの排出規制であり、排出規制海域(ECA:Emission Control Area)を航行する船舶に搭載される舶用ディーゼルエンジンのNOxの排出量を規制するものである。
【0007】
2次規制は、上述した水技術、EGRシステムまたはSCRシステムのいずれかを単独で舶用ディーゼルエンジンに採用すれば、満足し得るレベルである。一方、3次規制は、舶用ディーゼルエンジンへの水技術の単独採用では満足することが困難なレベルである。このような3次規制によるNOxの排出規制の強化に対応するために、近年、舶用ディーゼルエンジンに水技術とEGRシステムまたはSCRシステムのNOx低減技術とを採用し、舶用ディーゼルエンジンの燃費(以下、エンジン燃費という)の悪化を抑制しながら、これらNOx低減技術の組み合わせによってエンジン本体からのNOxの排出量を低減することが要望されている。
【0008】
しかしながら、上述した従来技術では、要求されるNOxの排出規制を満足し得るレベルにエンジン本体からのNOxの排出量を低減しながら、エンジン燃費の悪化を抑制すべく水技術および他のNOx低減技術を効率よく制御することは困難である。特に、特許文献1に記載の従来技術では、たとえエンジン負荷が互いに異なる状態に変化してもEGR率は同じ値となる場合があり、この場合、EGR率と燃料に対する水添加率とが一義的に決まらないことから、EGR率に応じた水添加率の制御が困難になる場合が多い。また、特許文献2、3に記載の従来技術では、シリンダ内の燃焼室に対する水添加率をエンジン負荷に応じて柔軟に制御することは困難である。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、エンジン燃費の悪化を抑制するとともに、エンジン本体からのNOxの排出量を低減することができる舶用ディーゼルエンジンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る舶用ディーゼルエンジンは、シリンダ内の燃料燃焼によるピストンの往復運動を、推進力を発生させる回転軸の回転運動に変換するエンジン本体と、前記シリンダ内の燃焼室へ燃料および水を噴射する噴射部と、前記エンジン本体から排出された排ガス中の窒素酸化物を低減するNOx低減装置と、前記噴射部の動作期間、前記エンジン本体の負荷であるエンジン負荷に応じて、前記噴射部による水添加率を可変に制御し、前記NOx低減装置の動作期間、前記エンジン負荷に応じて、前記NOx低減装置による窒素酸化物の低減の程度を示す低減パラメータを可変に制御する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る舶用ディーゼルエンジンは、上記の発明において、前記NOx低減装置は、前記エンジン本体から排出された排ガスの一部を前記エンジン本体に再循環するEGRシステムであり、前記NOx低減装置による前記低減パラメータは、前記EGRシステムによるEGR率であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る舶用ディーゼルエンジンは、上記の発明において、前記制御部は、前記エンジン負荷と前記水添加率との関係を示す水添加率制御マップと、前記エンジン負荷と前記EGR率との関係を示すEGR率制御マップとを用い、前記エンジン負荷に応じて、前記水添加率と前記EGR率とを可変に制御することを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る舶用ディーゼルエンジンは、上記の発明において、前記NOx低減装置は、前記エンジン本体から排出された排ガスに還元剤を噴射するSCRシステムであり、前記NOx低減装置による前記低減パラメータは、前記SCRシステムによる還元剤噴射率であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る舶用ディーゼルエンジンは、上記の発明において、前記制御部は、前記エンジン負荷と前記水添加率との関係を示す水添加率制御マップと、前記エンジン負荷と前記還元剤噴射率との関係を示す還元剤噴射率制御マップとを用い、前記エンジン負荷に応じて、前記水添加率と前記還元剤噴射率とを可変に制御することを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る舶用ディーゼルエンジンは、上記の発明において、前記制御部は、前記エンジン負荷が所定値未満である場合、前記噴射部による前記水添加率を可変に制御し、前記エンジン負荷が所定値以上である場合、前記水添加率の制御に加えて更に、前記NOx低減装置による前記低減パラメータを可変に制御することを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る舶用ディーゼルエンジンは、上記の発明において、前記噴射部は、前記シリンダ内の燃焼室へ燃料および水を層状に噴射することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る舶用ディーゼルエンジンよれば、エンジン燃費の悪化を抑制するとともに、エンジン本体からのNOxの排出量を低減することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の実施形態1に係る舶用ディーゼルエンジンの一構成例を示す模式図である。
図2図2は、本発明の実施形態1におけるエンジン負荷に応じた水添加率およびEGR率の制御の一具体例を説明する図である。
図3図3は、本発明の実施形態2に係る舶用ディーゼルエンジンの一構成例を示す模式図である。
図4図4は、本発明の実施形態3に係る舶用ディーゼルエンジンの一構成例を示す模式図である。
図5図5は、本発明の実施形態4に係る舶用ディーゼルエンジンの一構成例を示す模式図である。
図6図6は、本発明の実施形態5に係る舶用ディーゼルエンジンの一構成例を示す模式図である。
図7図7は、本発明の実施形態5におけるエンジン負荷に応じた水添加率および還元剤噴射率の制御の一具体例を説明する図である。
図8図8は、本発明の実施形態6に係る舶用ディーゼルエンジンの一構成例を示す模式図である。
図9図9は、本発明の実施形態7に係る舶用ディーゼルエンジンの一構成例を示す模式図である。
図10図10は、本発明の実施形態8に係る舶用ディーゼルエンジンの一構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、添付図面を参照して、本発明に係る舶用ディーゼルエンジンの好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本実施形態により、本発明が限定されるものではない。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、各図面において、同一構成部分には同一符号が付されている。
【0020】
(実施形態1)
本発明の実施形態1に係る舶用ディーゼルエンジンの構成について説明する。図1は、本発明の実施形態1に係る舶用ディーゼルエンジンの一構成例を示す模式図である。図1に示すように、本実施形態1に係る舶用ディーゼルエンジン10は、エンジン本体1と、エンジン本体1に対する燃料供給および水添加のための噴射部5と、エンジン本体1の回転数検出のための回転数検出部9とを備える。また、舶用ディーゼルエンジン10は、過給機11と、EGRシステム12と、過給機11からの圧縮ガスを冷却するための冷却器13と、逆止弁14と、補助ブロワ15と、燃焼用ガスの酸素濃度を検出するための酸素濃度検出部16と、操作部17と、制御部18とを備える。また、図1に示すように、舶用ディーゼルエンジン10は、給気用の配管としての給気ラインG1、G6およびバイパスラインG7と、排気用の配管としての排気ラインG2、G3と、排ガス再循環(EGR)用の配管としての排ガス再循環ラインG4、G5とを備える。
【0021】
なお、図1において、ガスの流通および配管は、実線矢印によって適宜図示される。液体の流通および配管は、破線矢印によって適宜図示される。電気信号線は、一点鎖線によって適宜図示される。このことは、以下、同様である。
【0022】
エンジン本体1は、図示しないが、プロペラ軸を介して船舶の推進用プロペラを駆動回転させる推進用の機関(主機関)である。このエンジン本体1は、ユニフロー掃排気式のクロスヘッド式ディーゼルエンジン等の2ストロークディーゼルエンジンである。例えば、図1に示すように、エンジン本体1は、複数(実施形態1では6つ)のシリンダ2と、掃気トランク3と、排気マニホールド4とを備える。また、エンジン本体1は、図示しないが、各シリンダ2の内部に沿って往復運動(例えば上下動)するピストン、ピストンの往復運動に伴ってプロペラ軸を回転させるためのクランク、クランクシャフトおよびクロスヘッド等を備える。
【0023】
複数のシリンダ2の各々は、ピストンを往復運動させるための吸排気および燃料燃焼等が行われる燃焼室を形成する。掃気トランク3は、エンジン本体1内における掃気ポート(図示せず)を介して各シリンダ2内の燃焼室と連通している。排気マニホールド4は、エンジン本体1内における排気流路(図示せず)を介して各シリンダ2内の燃焼室と連通している。エンジン本体1は、各シリンダ2内の燃焼室における燃料燃焼によるピストンの往復運動を、船舶の推進力を発生させる回転軸(具体的にはプロペラ軸またはクランクシャフト等)の回転運動に変換する。この際、エンジン本体1は、各シリンダ2内の吸排気の流れを下方から上方への一方向として、排気の残留を無くすようにしている。具体的には、掃気トランク3から各シリンダ2内の燃焼室へ燃焼用ガスが給気され、燃焼後の排ガスが各シリンダ2内の燃焼室から排気マニホールド4へ排出される。このようなエンジン本体1において、図1に示すように、掃気トランク3には給気ラインG1およびバイパスラインG7が連結され、排気マニホールド4には排気ラインG2が連結されている。なお、排ガスとは、エンジン本体1から排気ラインG2等を通じて外部に排出されるガスである。
【0024】
噴射部5は、各シリンダ2内の燃焼室へ燃料および水を噴射するものである。図1に示すように、噴射部5は、複数の燃料噴射ポンプ6と、複数の注水ポンプ7と、複数の燃料噴射弁8とを備え、エンジン本体1に設けられる。本実施形態1において、燃料噴射ポンプ6および注水ポンプ7は、上述したシリンダ2の数量に対応して、各々6つずつ、エンジン本体1に設けられている。燃料噴射弁8は、例えば図1に示すように、燃焼室内の互いに違う方向に噴射口を向ける態様で2つずつ、各シリンダ2に設けられている。
【0025】
複数の燃料噴射ポンプ6の各々は、燃料用の配管を介して各燃料噴射弁8に燃料を送り込む。複数の注水ポンプ7の各々は、水用の配管を介して各燃料噴射弁8に蒸留水などの水を注入して、例えば、各燃料噴射弁8の流通経路内の燃料間に水を割り込ませる。噴射部5は、各燃料噴射ポンプ6による燃料の圧送作用により、各燃料噴射弁8から各シリンダ2内の燃焼室へ、燃料および水を層状に(例えば図1に示す燃料6aと水7aとが噴射方向に交互に並ぶように)噴射する。この結果、各燃料噴射ポンプ6からの燃料6aは、各シリンダ2内の燃焼室へ噴射されて燃焼し、各注水ポンプ7からの水7aは、各燃焼室内に添加されて燃焼温度を低下させる。噴射部5は、この水噴射(水添加)によって、エンジン本体1からの排ガス中のNOxの排出量を低減する。
【0026】
このような噴射部5による燃料噴射量、注水量、燃料および水の噴射タイミング等は、制御部18による各燃料噴射ポンプ6の駆動制御、各注水ポンプ7の駆動制御、各燃料噴射弁8の開閉制御を通じて、各々制御される。
【0027】
回転数検出部9は、エンジン本体1の回転数を検出するものであり、エンジン本体1に設けられる。回転数検出部9は、例えば、プロペラ軸と接続された回転軸(クランクシャフト等)の回転数を、エンジン本体1の回転数として検出する。回転数検出部9は、回転数を検出する都度、検出した回転数を示す電気信号を制御部18に送信する。なお、回転数検出部9は、上記の回転軸の回転数を検出してもよいが、プロペラ軸の回転数を検出してもよい。
【0028】
過給機11は、エンジン本体1からの排ガスを利用して、燃焼用ガスを圧縮してエンジン本体1に送り込むための一段式過給機である。本実施形態1において、図1に示すように、過給機11は、圧縮機(コンプレッサ)11aと、タービン11bと、回転軸11cとを備え、エンジン本体1とEGRシステム12との間に設けられる。圧縮機11aおよびタービン11bは、羽根車等によって各々構成され、回転軸11cを中心軸にして一体に回転するように、回転軸11cによって互いに連結されている。また、圧縮機11aのガス入側には、外部(大気)からの新たな空気(新気ともいう)等のガスを吸入する給気ラインG6が連結されている。圧縮機11aのガス出側には、エンジン本体1の掃気トランク3に通じる給気ラインG1が連結されている。タービン11bのガス入側には、エンジン本体1の排気マニホールド4に通じる排気ラインG2が連結されている。タービン11bのガス出側には、外部へ排ガスを排出する煙突(図示せず)等に通じる排気ラインG3が連結されている。
【0029】
このような構成を有する過給機11において、タービン11bは、エンジン本体1の排気マニホールド4から排気ラインG2を通じて排出された高温高圧の排ガスを受ける。タービン11bは、この受けた排ガスによって回転しながら、この回転に使用されて圧力および温度が低下した排ガスを排気ラインG3へ排出する。このタービン11bの回転は、回転軸11cによって圧縮機11aに伝達される。これにより、圧縮機11aは、このタービン11bの回転に伴い回転して、給気ラインG6から空気等の燃焼用ガスを吸入し、吸入した燃焼用ガスを圧縮して給気ラインG1からエンジン本体1の掃気トランク3へ供給する。
【0030】
EGRシステム12は、エンジン本体1から排出された排ガスの一部を空気と混合してエンジン本体1に再循環するものである。EGRシステム12は、この排ガスの再循環により、各シリンダ2内の燃料燃焼によるNOxの生成を抑制して、エンジン本体1からの排ガス中のNOxの排出量を低減する。すなわち、本実施形態1において、EGRシステム12は、エンジン本体1から排出された排ガス中のNOxを低減するNOx低減装置として機能する。
【0031】
図1に示すように、EGRシステム12は、排ガス再循環ラインG4、G5と、EGR洗浄装置12aと、EGRブロワ12bと、EGR入口弁12cと、EGR出口弁12dとを備える。
【0032】
排ガス再循環ラインG4、G5は、エンジン本体1からの排ガスの一部をエンジン本体1に再循環するための配管である。排ガス再循環ラインG4は、一端が排気ラインG3の中途部に接続され且つ他端がEGR洗浄装置12aに接続されており、エンジン本体1からの排ガスの一部を、再循環ガスとして排気ラインG3から分離してEGR洗浄装置12aに向け流通させる。排ガス再循環ラインG5は、一端がEGR洗浄装置12aに接続され且つ他端が給気ラインG6の中途部に接続されており、EGR洗浄装置12aによる洗浄後の再循環ガスを、燃焼用ガスの一部として給気ラインG6と合流するように流通させる。
【0033】
なお、再循環ガスとは、エンジン本体1からの排ガスのうち、エンジン本体1へ再循環される排ガスである。例えば、本実施形態1において、再循環ガスは、排気ラインG3から排ガス再循環ラインG4へ分流(抽気)された一部の排ガスである。
【0034】
EGR洗浄装置12aは、再循環ガスに含まれる有害物質を洗浄によって除去するものである。EGR洗浄装置12aは、特に図示しないが、再循環ガスを水噴射によって洗浄するスクラバユニット、水噴射による洗浄後の再循環ガスと洗浄廃水とを分離するデミスタユニット、この洗浄廃水から有害物質を分離して得た水を上記スクラバユニットへ再循環する水循環ユニット等によって構成される。本実施形態1において、EGR洗浄装置12aは、排ガス再循環ラインG4から再循環ガスを受け入れ、受け入れた再循環ガスを流通させながら、この再循環ガスに対して水を噴射する。EGR洗浄装置12aは、このような水噴射によって再循環ガスを洗浄し、硫黄酸化物(SOx)や煤塵等の微粒子(PM)といった有害物質を再循環ガスから除去する。これと同時に、EGR洗浄装置12aは、この再循環ガスを冷却する。ついで、EGR洗浄装置12aは、洗浄後の再循環ガスと、除去した有害物質を含む洗浄廃水とを分離し、この洗浄廃水に対して所定の廃水処理および水循環処理を行いながら、洗浄後の再循環ガスを排ガス再循環ラインG5へ送出する。
【0035】
EGRブロワ12bは、EGR洗浄装置12aによる洗浄後の再循環ガスを給気ラインG6へ導くものである。本実施形態1において、EGRブロワ12bは、送風機等によって構成され、図1に示すように、排ガス再循環ラインG5の中途部に設けられる。EGRブロワ12bは、EGR洗浄装置12aから排ガス再循環ラインG5へ送出された再循環ガス(洗浄後の再循環ガス)を、排ガス再循環ラインG5から給気ラインG6に向けて流通させる。これにより、EGRブロワ12bは、この再循環ガスを給気ラインG6内の空気(新気)と混合する。このように空気と混合された再循環ガスは、過給機11の圧縮機11aによって圧縮された後、燃焼用ガスとしてエンジン本体1へ再循環される。
【0036】
EGR入口弁12cは、排ガス再循環ラインG4における再循環ガスの流通状態を開閉によって調整するものである。本実施形態1において、EGR入口弁12cは、自動式の開閉弁等によって構成され、図1に示すように、排ガス再循環ラインG4の中途部に設けられる。EGR入口弁12cは、EGRシステム12が稼働する場合、開状態となって、排気ラインG3から排ガス再循環ラインG4への排ガスの分流を可能とする。この場合、排気ラインG3内の排ガスの一部は、循環ガスとして排ガス再循環ラインG4内へ抽気される。一方、EGR入口弁12cは、EGRシステム12が稼働停止する場合、閉状態となって、排気ラインG3から排ガス再循環ラインG4への排ガスの分流を不可とする。
【0037】
EGR出口弁12dは、排ガス再循環ラインG5における再循環ガスの流通状態を開閉によって調整するものである。本実施形態1において、EGR出口弁12dは、自動式の開閉弁等によって構成され、図1に示すように、排ガス再循環ラインG5の中途部であってEGRブロワ12bの下流側に設けられる。EGR出口弁12dは、EGRシステム12が稼働する場合、開状態となって、排ガス再循環ラインG5から給気ラインG6への再循環ガスの流通(合流)を可能とする。一方、EGR出口弁12dは、EGRシステム12が稼働停止する場合、閉状態となって、排ガス再循環ラインG5から給気ラインG6への再循環ガスの流通を不可とする。
【0038】
なお、上述したEGR入口弁12cおよびEGR出口弁12dは、各々、流量調整弁とし、排ガス再循環ラインG4、G5内を流通する再循環ガスの流量を調整するようにしてもよい。
【0039】
冷却器13は、圧縮された燃焼用ガスを冷却するものである。本実施形態1において、冷却器13は、図1に示すように、給気ラインG1の中途部であって、過給機11における圧縮機11aの後段(圧縮機11aによる圧縮ガスの流通方向の下流側)に設けられる。冷却器13は、圧縮機11aによって圧縮されて高温となった燃焼用ガスを、例えば冷却水との熱交換等によって冷却する。この冷却器13によって冷却される燃焼用ガスは、EGRシステム12が稼働している場合、新気と再循環ガスとの混合ガスである。この場合、燃焼用ガスは、冷却器13によって冷却された後、給気ラインG1内を流通し、逆止弁14を通過して、エンジン本体1の掃気トランク3に給気される。一方、EGRシステム12が稼働停止している場合、この冷却器13によって冷却される燃焼用ガスは、新気である。この場合、燃焼用ガスは、冷却器13によって冷却された後、給気ラインG1からバイパスラインG7内を流通し、補助ブロワ15によって圧縮されて、エンジン本体1の掃気トランク3に給気される。
【0040】
逆止弁14は、エンジン本体1側からの燃焼用ガスの逆流を防止するものである。本実施形態1において、逆止弁14は、図1に示すように、給気ラインG1の中途部であってバイパスラインG7の分岐部とエンジン本体1側の端部との間に設けられる。逆止弁14は、給気ラインG1内における燃焼用ガス(例えば過給機11の圧縮機11aによって圧縮され且つ冷却器13によって冷却された燃焼用ガス)の流通方向を、冷却器13側からエンジン本体1の掃気トランク3側に向かう一方向に規制して、掃気トランク3側から冷却器13側への燃焼用ガスの逆流を防止する。
【0041】
補助ブロワ15は、過給機11の代わりに燃焼用ガスを圧縮してエンジン本体1の掃気トランク3へ送り込むものである。本実施形態1において、補助ブロワ15は、例えば、圧縮機およびモータ等によって構成され、図1に示すように、バイパスラインG7の中途部に設けられる。補助ブロワ15は、例えば、過給機11が起動してから安定稼働するまでの期間に駆動して、過給機11の代わりに、給気ラインG1、G6および圧縮機11a等を介して外部からバイパスラインG7内に空気(新気)を吸入し、吸入した空気を、燃焼用ガスとして圧縮して掃気トランク3側へ圧送する。また、補助ブロワ15は、この燃焼用ガスの圧送を終了した後、掃気トランク3側からバイパスラインG7内への燃焼用ガスの流れを阻害する程度に駆動して、バイパスラインG7内における燃焼用ガスの逆流を防止する。
【0042】
バイパスラインG7は、補助ブロワ15が過給機11の代わりに機能するための給気ラインである。本実施形態1において、バイパスラインG7は、図1に示すように、一端が給気ラインG1の中途部であって冷却器13と逆止弁14との間に接続され、且つ、他端がエンジン本体1の掃気トランク3に接続されている。バイパスラインG7は、逆止弁14を迂回するように給気ラインG1から分岐して補助ブロワ15側へ空気等の燃焼用ガスを導き、補助ブロワ15による圧縮後の燃焼用ガスを掃気トランク3内へ流通させる。
【0043】
酸素濃度検出部16は、エンジン本体1に給気される燃焼用ガスの酸素濃度を検出するものである。本実施形態1において、酸素濃度検出部16は、図1に示すように、給気ラインG1の中途部であってバイパスラインG7の分岐部と冷却器13との間に設けられる。酸素濃度検出部16は、給気ラインG1内の燃焼用ガスの酸素濃度を検出し、その都度、検出した酸素濃度を示す電気信号を制御部18に送信する。
【0044】
操作部17は、船舶の航行速度等を操作するためのものである。本実施形態1において、操作部17は、例えば操縦ハンドル等によって構成される。操作部17は、操作者による操作に応じて、船舶の航行速度(全速や停止等)を航行方向(前進や後進等)とともに切り替え可能に指定する。操作部17は、航行速度の指定を切り替える操作が行われる都度、切り替え後の航行速度(現航行速度)を指定する電気信号を制御部18に送信する。
【0045】
制御部18は、エンジン本体1の運転を制御するエンジン制御機能と、エンジン本体1から排出される排ガス中のNOxの低減を制御するNOx低減制御機能とを兼ね備える。制御部18は、各種プログラムを実行してデータ処理を行うCPUおよびメモリ等によって構成され、図1中の一点鎖線(電気信号線)で示されるように、噴射部5の各燃料噴射ポンプ6および各注水ポンプ7と、EGRシステム12のEGRブロワ12bとを制御する。また、制御部18は、特に電気信号線は図示しないが、噴射部5の各燃料噴射弁8と、EGRシステム12のEGR入口弁12cおよびEGR出口弁12dと、冷却器13と、補助ブロワ15とを制御することが可能である。
【0046】
本実施形態1において、制御部18は、操作部17によって切り替え可能に指定される船舶の航行速度に応じて、エンジン本体1の運転を制御する。詳細には、制御部18は、操作部17からの電気信号を受信し、受信した電気信号に基づいて、船舶の指定された航行速度を把握する。制御部18は、この把握した航行速度で船舶を航行させるために必要なエンジン本体1の回転数を導出し、得られた回転数でエンジン本体1を稼働させるために必要な燃料投入量、例えば、エンジン本体1の1回転あたりに必要な燃料投入量を算出する。制御部18は、この燃料投入量分の燃料を各シリンダ2内の燃焼室へ噴射するように、各燃料噴射ポンプ6および各燃料噴射弁8を駆動制御し、これにより、各シリンダ2内の燃焼室に対する燃料噴射量および燃料噴射タイミングを制御する。制御部18は、これらの制御を通してエンジン本体1の回転数を制御し、これにより、上記指定された航行速度で船舶が航行または停止するようにエンジン本体1の出力を制御する。
【0047】
また、制御部18は、エンジン本体1の負荷であるエンジン負荷に応じて、上述した噴射部5による水添加率と、NOx低減装置としてのEGRシステム12による窒素酸化物(NOx)の低減パラメータ(以下、NOx低減パラメータという)とを可変に制御する。詳細には、制御部18は、噴射部5が各シリンダ2の燃焼室に対する燃料および水の噴射(本実施形態1では層状噴射)を行う動作期間(以下、燃料・水噴射動作期間という)、各シリンダ2内の燃焼室に対する水添加率をエンジン負荷に応じて可変に制御する。また、制御部18は、EGRシステム12がエンジン本体1からの排ガスの一部(再循環ガス)を空気と混合してエンジン本体1に再循環する動作、すなわちEGR動作を行う期間(以下、EGR動作期間という)、EGRシステム12によるEGR率をエンジン負荷に応じて可変に制御する。
【0048】
ここで、水添加率は、エンジン本体1の1回転毎に各シリンダ2内の燃焼室へ噴射される燃料および水の合計噴射量に対する水の噴射量(添加量)の比率である。EGR動作期間は、NOx低減装置がエンジン本体1からの排ガス中のNOxの低減を行う動作期間の一例である。NOx低減パラメータは、NOx低減装置による上記NOxの低減の程度を示すパラメータである。本実施形態1において、NOx低減パラメータは、EGRシステム12によるEGR率である。EGR率は、エンジン本体1の1回転毎に各シリンダ2内の燃焼室へ給気される燃焼用ガス中に占める再循環ガスの比率である。これらの水添加率およびEGR率は、各々、質量比(質量%)であってもよいし、体積比(体積%)であってもよい。
【0049】
燃料・水噴射動作期間において、制御部18は、エンジン負荷と水添加率との関係を示す水添加率制御マップを用い、エンジン負荷に応じて、各シリンダ2内の燃焼室に対する水添加率を可変に制御する。詳細には、水添加率制御マップは、図1に示す制御マップ19の1つとして、データ入力等により制御部18のメモリに予め記憶されている。制御部18は、回転数検出部9からの電気信号を受信し、受信した電気信号に基づいて、エンジン本体1の上記運転制御による回転数を取得する。制御部18は、この取得した回転数と上記運転制御時の燃料噴射量とを乗算する等して、エンジン本体1の現在のエンジン負荷を算出する。ついで、制御部18は、水添加率制御マップを参照して、現在のエンジン負荷に対応する水添加率を導出する。制御部18は、この導出した水添加率に基づいて、各注水ポンプ7による注水量を制御する。これにより、制御部18は、各シリンダ2内の燃焼室に対する水添加率が現在のエンジン負荷に応じた水添加率となるように、各燃料噴射弁8から各シリンダ2内の燃焼室への水の噴射量を制御する。その後、制御部18は、この噴射量の水が燃料に伴って各シリンダ2内の燃焼室へ噴射されるように、各燃料噴射ポンプ6および各燃料噴射弁8を駆動制御する。このようにして、制御部18は、噴射部5の作用によるNOxの低減(例えば単位時間あたりのNOxの低減量)を制御する。
【0050】
また、EGR動作期間において、制御部18は、エンジン負荷とEGR率との関係を示すEGR率制御マップを用い、エンジン負荷に応じて、EGRシステム12によるEGR率を可変に制御する。詳細には、EGR率制御マップは、上述した水添加率制御マップに加え、図1に示す制御マップ19の1つとして、データ入力等により制御部18のメモリに予め記憶されている。制御部18は、上述した水添加率の制御の場合と同様に、エンジン本体1の現在のエンジン負荷を算出する。ついで、制御部18は、EGR率制御マップを参照して、現在のエンジン負荷に対応するEGR率を導出する。また、制御部18は、酸素濃度検出部16からの電気信号を受信し、受信した電気信号に基づいて、エンジン本体1に給気される燃焼用ガスの現在の酸素濃度を取得する。制御部18は、この取得した酸素濃度に基づいて、EGRブロワ12bの羽根車を回転させるモータ(図示せず)の周波数を制御する。これにより、制御部18は、EGRシステム12からエンジン本体1に供給する再循環ガスの量を制御し、この制御を通して、現在の燃焼用ガス中に占める再循環ガスの比率、すなわち、EGR率を、現在のエンジン負荷に応じたものに制御する。このようにして、制御部18は、EGRシステム12の作用によるNOxの低減量(例えば単位時間あたりのNOxの低減量)を制御する。
【0051】
なお、制御部18は、このEGR動作期間において、上述したEGRブロワ12bの駆動制御以外に、EGR入口弁12cおよびEGR出口弁12dの開閉と、EGR洗浄装置12aの運転とを制御する。
【0052】
つぎに、本実施形態1におけるエンジン負荷に応じた水添加率およびEGR率の制御について、具体的に説明する。図2は、本発明の実施形態1におけるエンジン負荷に応じた水添加率およびEGR率の制御の一具体例を説明する図である。
【0053】
図2において、水添加率制御マップ19aは、エンジン本体1のエンジン負荷と噴射部5による水添加率との関係を示す制御マップの一例である。水添加率制御マップ19aは、例えば、実験やシミュレーションの結果をもとに、エンジン本体1からのNOxの排出量が対象の舶用ディーゼルエンジン(本実施形態では図1に示す舶用ディーゼルエンジン10)に要求される2次規制等のNOxの排出規制(以下、NOx排出規制と略記する)を満足するようなエンジン負荷と燃焼室に対する水添加率との関係のうち、エンジン燃費が最適となる関係を求めることにより、設定可能である。EGR率制御マップ19bは、エンジン本体1のエンジン負荷とEGRシステム12によるEGR率との関係を示す制御マップの一例である。EGR率制御マップ19bは、例えば、実験やシミュレーションの結果をもとに、エンジン本体1からのNOxの排出量がNOx排出規制を満足するようなエンジン負荷とエンジン本体1に給気される燃焼用ガスのEGR率との関係のうち、エンジン燃費が最適となる関係を求めることにより、設定可能である。
【0054】
特に、水添加率制御マップ19aとEGR率制御マップ19bとの間でエンジン負荷が重複する範囲の水添加率およびEGR率については、燃焼室に対する水の噴射(添加)によるNOxの低減効果と、EGR動作によるNOxの低減効果と、エンジン燃費の最適値とを加味して、エンジン本体1からのNOxの排出量がNOx排出規制を満足するようなエンジン負荷との関係を示すように設定されることが好ましい。
【0055】
これらの水添加率制御マップ19aおよびEGR率制御マップ19bは、図1に示す制御マップ19として制御部18のメモリに記憶されている。なお、水添加率制御マップ19aに示されるエンジン負荷と水添加率との関係、および、EGR率制御マップ19bに示されるエンジン負荷とEGR率との関係は、各々一例であって、本発明を限定するものではない。
【0056】
図2に示すように、エンジン負荷がA1以上である場合、エンジン本体1からのNOxの排出量(以下、NOx排出量と適宜略記する)がNOx排出規制を満足するという観点からは、各シリンダ2内の燃焼室への水噴射およびEGR動作の少なくとも一方が行われることが望ましい。すなわち、このA1以上というエンジン負荷範囲は、NOx排出量をNOx排出規制に基づいて管理すべき範囲(以下、管理範囲という)である。この管理範囲のうち、エンジン負荷がA1以上、A2未満である場合、各シリンダ2内の燃焼室への水噴射またはEGR動作の何れかが行われれば、NOx排出量はNOx排出規制を満足する。この場合、エンジン燃費(具体的にはエンジン本体1の燃費)を向上させるという観点から、EGR動作に比べてエンジン燃費の悪化が少ない水噴射を行うことが好ましい。したがって、制御部18は、A1以上というエンジン負荷範囲(管理範囲)において、エンジン負荷が所定値(本実施形態1ではA2)未満である場合、噴射部5による水添加率をエンジン負荷に応じて可変に制御する。例えば、制御部18は、水添加率制御マップ19aに基づき、エンジン負荷(A1)に対応する水添加率(R11)を一義的に決定し、噴射部5の制御を通して各シリンダ2内の燃焼室に対する水添加率をR11に制御する。また、制御部18は、エンジン負荷が変化すれば、水添加率制御マップ19aに基づき、エンジン負荷に応じて水添加率を可変に制御する。一方、制御部18は、このエンジン負荷がA2未満という管理範囲において、EGRブロワ12bを停止させてEGRシステム12による燃焼用ガスのEGR率を零値に制御する。
【0057】
エンジン負荷がA2以上である場合、NOx排出量がNOx排出規制を満足するという観点からは、各シリンダ2内の燃焼室への水噴射およびEGR動作の双方が行われることが望ましい。したがって、制御部18は、エンジン負荷が所定値(本実施形態1ではA2)以上である場合、すなわち、エンジン負荷がA2以上という管理範囲において、上述した水添加率の制御に加えて更に、NOx低減装置によるNOx低減パラメータを可変に制御する。具体的には、制御部18は、この管理範囲において、噴射部5による水添加率をエンジン負荷に応じて可変に制御し、且つ、EGRシステム12による燃焼用ガスのEGR率を同エンジン負荷に応じて可変に制御する。
【0058】
例えば、エンジン負荷がA2である場合、制御部18は、水添加率制御マップ19aに基づき、エンジン負荷(A2)に対応する水添加率(R12)を一義的に決定し、且つ、EGR率制御マップ19bに基づき、同エンジン負荷(A2)に対応するEGR率(R1)を一義的に決定する。このようにして、制御部18は、エンジン負荷(A2)に応じて、目標とする水添加率とEGR率との組み合わせ(R12,R1)を一義的に決定し、噴射部5の制御を通して各シリンダ2内の燃焼室に対する水添加率をR12に制御するとともに、EGRシステム12の制御を通して燃焼用ガスのEGR率をR1に制御する。
【0059】
エンジン負荷がA3、A4またはA5である場合も、上述したA2の場合と同様に、制御部18は、水添加率制御マップ19aに基づき、エンジン負荷に対応する水添加率を一義的に決定し、且つ、EGR率制御マップ19bに基づき、同エンジン負荷に対応するEGR率を一義的に決定する。これにより、目標とする水添加率とEGR率との組み合わせが、エンジン負荷に応じて一義的に決定される。具体的には、上記水添加率とEGR率との組み合わせは、エンジン負荷がA3である場合に(R13,R2)となり、エンジン負荷がA4である場合に(R14,R3)となり、エンジン負荷がA5である場合に(R15,R2)となる。特に、エンジン負荷が互いに異なる値A3、A5であるにも拘らずEGR率が同じ値R2になる場合であっても、制御部18は、エンジン負荷A3、A5の各々に応じて、上記水添加率とEGR率との組み合わせを互いに異なる組み合わせ(R13,R2)、(R15,R2)に一義的に決定する。その後、制御部18は、上述したA2の場合と同様に、水添加率およびEGR率を、エンジン負荷に応じて一義的に決定した水添加率とEGR率との組み合わせと同じになるように制御する。
【0060】
なお、本実施形態1のエンジン負荷範囲において、下限は0%以上であり、上限は100%以下である。すなわち、上述した管理範囲の上限は100%以下である。また、この管理範囲は、噴射部5の燃料・水噴射動作期間に相当する。この管理範囲のうちのエンジン負荷がA2以上である範囲は、上記燃料・水噴射動作期間と、EGRシステム12のEGR動作期間とが重複する期間に相当する。
【0061】
以上、説明したように、本発明の実施形態1に係る舶用ディーゼルエンジン10では、エンジン本体1の各シリンダ2内の燃焼室へ燃料および水を噴射する噴射部5を設け、エンジン本体1から排出された排ガス中のNOxを低減するNOx低減装置として、エンジン本体1からの排ガスの一部(再循環ガス)を空気と混合してエンジン本体1に再循環するEGRシステム12を設け、制御部18により、エンジン本体1の負荷(エンジン負荷)に応じて、噴射部5の燃料・水噴射動作期間における水添加率と、NOx低減装置の動作期間におけるNOx低減パラメータ(具体的にはEGRシステム12のEGR動作期間におけるEGR率)と、を可変に制御している。
【0062】
このため、気温や湿度等の環境条件に影響されず、操作者によって切り替え可能に指定された航行速度に基づき明確に決まるエンジン負荷に応じて、排ガス中のNOxの低減に寄与する水添加率およびEGR率を各々一義的に決定することができる。これにより、エンジン燃費の悪化がEGR動作に比べて少ない水噴射による燃焼室への水添加率と、NOx低減効果が水噴射に比べて大きいEGR動作によるEGR率との組み合わせを、エンジン負荷の増減変化に伴って増減するNOx排出量とエンジン燃費の悪化抑制とを加味した好適な組み合わせに制御して、NOx排出量を低減することができる。この結果、NOx排出量を、要求されるNOx排出規制に対応して効率よく低減できることから、エンジン燃費の悪化を抑制して燃費性能を向上させるとともに、要求されるNOx排出規制を満足するレベルにNOx排出量を低減することができる。
【0063】
また、本発明の実施形態1に係る舶用ディーゼルエンジン10では、エンジン負荷と水添加率との関係を示す水添加率制御マップと、エンジン負荷とEGR率との関係を示すEGR率制御マップとを用い、エンジン負荷に応じて、上記の水添加率およびEGR率を可変に制御している。このため、NOx排出量の低減とエンジン燃費の悪化抑制とに好適な水添加率、EGR率、さらには、これらの組み合わせを、エンジン負荷に応じて一義的且つ簡易に決定して、NOx排出量を低減することができる。これにより、エンジン本体1の燃費性能の向上を確保しつつ、要求されるNOx排出規制にNOx排出量の低減を対応させることを簡易に行うことができる。
【0064】
また、本発明の実施形態1に係る舶用ディーゼルエンジン10では、エンジン負荷が所定値未満である場合、噴射部5による水添加率を可変に制御し、エンジン負荷が所定値以上である場合、この水添加率の制御に加えて更に、NOx低減装置によるNOx低減パラメータ、具体的には、EGRシステム12によるEGR率を可変に制御している。このため、エンジン負荷が低いことからNOx排出量が比較的少ない場合には、エンジン負荷に応じて一義的に制御した水添加率での水噴射をEGR動作に優先して行い、エンジン負荷の増加に伴ってNOx排出量が水噴射単独では抑制しきれないレベルに増加した場合には、エンジン負荷に応じて一義的に制御した水添加率およびEGR率の組み合わせに基づき水噴射とEGR動作とを併用することができる。これにより、NOx排出量の低減およびエンジン燃費の悪化抑制の各必要度に応じて、水噴射とEGR動作とを効率よく使い分けて、NOx排出量を低減することができ、この結果、エンジン本体1の燃費性能の向上と、要求されるNOx排出規制に合ったNOx排出量の低減とを効率よく両立させることができる。
【0065】
また、本発明の実施形態1に係る舶用ディーゼルエンジン10では、噴射部5によって、エンジン本体1の各シリンダ2内の燃焼室へ燃料および水を層状に噴射(すなわち層状水噴射)している。このため、燃料とともに燃焼室内に添加する水の噴射量を簡易に制御することができ、これにより、水エマルジョン燃料などの場合に比べ、NOx排出量の低減に寄与する水添加率の制御を簡易に行うことができる。さらには、NOx低減の水技術として層状水噴射を採用した場合、注水ポンプ7の故障や誤動作等に起因して適正な量の水が燃料噴射弁8に供給されないとしても、注水ポンプ7からのエラー信号に基づいて、燃料噴射ポンプ6からの燃料の送給量(突き出し量)および供給タイミングを、不適正な水量(例えば水量が零(水無し)の状態)の発生を補い得る適正なものに即座に制御することができる。これにより、注水ポンプ7のエラーの有無に関わらず、シリンダ2の燃焼室に対する燃料噴射量を最適な状態に保つことができ、この結果、エンジン本体1の安定した運転が可能となる。このことから、層状水噴射を採用したエンジン本体1は、水エマルジョン燃料の噴射や水の単独噴射の場合に比べて、信頼性およびフェールセーフ等の観点から優位性があるという効果を奏する。
【0066】
(実施形態2)
つぎに、本発明の実施形態2について説明する。上述した実施形態1では、過給機11のタービン11bの回転に使用されて圧力が低下した排ガスから再循環ガスを抽気して、EGR動作(低圧のEGR動作)を行っていたが、本実施形態2では、タービン11bを回転させる前の高圧の排ガスから再循環ガスを抽気して、EGR動作(高圧のEGR動作)を行っている。
【0067】
図3は、本発明の実施形態2に係る舶用ディーゼルエンジンの一構成例を示す模式図である。図3に示すように、本実施形態2に係る舶用ディーゼルエンジン20は、上述した実施形態1に係る舶用ディーゼルエンジン10のEGRシステム12に代えてEGRシステム22をエンジン本体1と過給機11との間に備える。その他の構成は実施形態1と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0068】
EGRシステム22は、エンジン本体1から排出された排ガス(具体的には過給機11のタービン11bを回転させる前の高圧の排ガス)の一部を空気と混合してエンジン本体1に再循環するものである。すなわち、本実施形態2において、EGRシステム22は、エンジン本体1から排出された排ガス中のNOxを低減するNOx低減装置として機能する。
【0069】
図3に示すように、EGRシステム22は、排ガス再循環ラインG4、G5と、EGR洗浄装置12aと、EGRブロワ12bと、EGR入口弁12cと、EGR出口弁12dと、EGR冷却器22aとを備える。このEGRシステム22において、排ガス再循環ラインG4は、一端がエンジン本体1からの排気ラインG2の中途部に接続され且つ他端がEGR洗浄装置12aに接続されている。排ガス再循環ラインG4は、エンジン本体1から排出された高圧の排ガスの一部を、再循環ガスとして排気ラインG2から分離してEGR洗浄装置12aに向け流通させる。ここでいう高圧の排ガスとは、エンジン本体1の排気マニホールド4から排出された排ガスであって、過給機11のタービン11bを回転させる前の高圧の排ガスを意味する。排ガス再循環ラインG5は、一端がEGR冷却器22aに接続され且つ他端がエンジン本体1への給気ラインG1の中途部に接続されている。排ガス再循環ラインG5は、EGR冷却器22aによる冷却後の再循環ガスを、燃焼用ガスの一部として給気ラインG1と合流するように流通させる。なお、EGR洗浄装置12a、EGRブロワ12b、EGR入口弁12cおよびEGR出口弁12dは、上述した実施形態1におけるEGRシステム12と同様である。
【0070】
EGR冷却器22aは、EGRシステム22による高圧のEGR動作において再循環ガスを冷却するものである。具体的には、図3に示すように、EGR冷却器22aは、排ガス再循環ラインG5の中途部であってEGR洗浄装置12aとEGRブロワ12bとの間に設けられる。EGR冷却器22aは、EGR洗浄装置12aによって洗浄された再循環ガスを、例えば冷却水との熱交換等によって冷却する。ついで、EGR冷却器22aは、冷却後の再循環ガスを排ガス再循環ラインG5へ送出する。その後、この再循環ガスは、EGRブロワ12bの作用等により、排ガス再循環ラインG5内を流通して、給気ラインG1内の空気(例えば過給機11の圧縮機11aによって圧縮された空気)と混合し、燃焼用ガスとしてエンジン本体1の掃気トランク3に給気される。
【0071】
なお、本実施形態2において、排気ラインG3は、排ガス再循環ラインG4と接続されておらず、過給機11のタービン11bの回転に使用されて圧力および温度が低下した排ガスを煙突側へ流通させる。また、給気ラインG6は、排ガス再循環ラインG5と接続されておらず、外部から吸引された空気を過給機11の圧縮機11aへ導く。
【0072】
以上、説明したように、本発明の実施形態2に係る舶用ディーゼルエンジン20では、エンジン本体1と過給機11との間にEGRシステム22を設け、このEGRシステム22により、エンジン本体1からの高圧の排ガスの一部を、再循環ガスとして空気と混合した後、エンジン本体1に再循環するようにし、その他を実施形態1と同様に構成している。このため、EGRシステム22が高圧のEGR動作を行うものでありながら、上述した実施形態1と同様の作用効果を享受することができる。
【0073】
(実施形態3)
つぎに、本発明の実施形態3について説明する。上述した実施形態1では、一段式過給機(過給機11)によって燃焼用ガス(具体的には新気または新気と再循環ガスとの混合ガス)を圧縮していたが、本実施形態3では、二段式過給機によって燃焼用ガスを圧縮している。
【0074】
図4は、本発明の実施形態3に係る舶用ディーゼルエンジンの一構成例を示す模式図である。図4に示すように、本実施形態3に係る舶用ディーゼルエンジン30は、上述した実施形態1に係る舶用ディーゼルエンジン10の過給機11に代えて二段式過給機31を備える。その他の構成は実施形態1と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0075】
二段式過給機31は、エンジン本体1からの排ガスを利用して、空気等の燃焼用ガスを段階的に圧縮してエンジン本体1に送り込むための過給機である。本実施形態3において、図4に示すように、二段式過給機31は、低圧段過給機32と、高圧段過給機33と、中間冷却器34と、給気バイパス弁35と、排気バイパス弁36と、給気ラインG11と、排気ラインG12と、給気バイパスラインG13と、排気バイパスラインG14とを備える。例えば、二段式過給機31は、エンジン本体1に対する吸排気を行う給気ラインG1および排気ラインG2と、外部に対する吸排気を行う給気ラインG6および排気ラインG3と、の間に設けられている。
【0076】
低圧段過給機32は、二段式過給機31における一段階目の過給を行うものである。本実施形態3において、低圧段過給機32は、図4に示すように、低圧段圧縮機32aと、低圧段タービン32bと、回転軸32cとを備え、給気ラインG6および排気ラインG3と高圧段過給機33との間に設けられる。低圧段圧縮機32aおよび低圧段タービン32bは、羽根車等によって各々構成され、回転軸32cを中心軸にして一体に回転するように、回転軸32cによって互いに連結されている。また、低圧段圧縮機32aのガス入側には、給気ラインG6が連結されている。低圧段圧縮機32aのガス出側には、高圧段過給機33等に通じる給気ラインG11が連結されている。低圧段タービン32bのガス入側には、高圧段過給機33等に通じる排気ラインG12が連結されている。低圧段タービン32bのガス出側には、排気ラインG3が連結されている。
【0077】
高圧段過給機33は、二段式過給機31における二段階目の過給を行うものである。本実施形態3において、高圧段過給機33は、図4に示すように、高圧段圧縮機33aと、高圧段タービン33bと、回転軸33cとを備え、給気ラインG1および排気ラインG2と低圧段過給機32との間に設けられる。高圧段圧縮機33aおよび高圧段タービン33bは、羽根車等によって各々構成され、回転軸33cを中心軸にして一体に回転するように、回転軸33cによって互いに連結されている。また、高圧段圧縮機33aのガス入側には、低圧段圧縮機32aに通じる給気ラインG11が連結されている。高圧段圧縮機33aのガス出側には、給気ラインG1が連結されている。高圧段タービン33bのガス入側には、排気ラインG2が連結されている。高圧段タービン33bのガス出側には、低圧段タービン32bに通じる排気ラインG12が連結されている。
【0078】
中間冷却器34は、低圧段過給機32(詳細には低圧段圧縮機32a)によって圧縮された燃焼用ガスを冷却するものである。本実施形態3において、中間冷却器34は、図4に示すように、給気ラインG11の中途部であって、高圧段圧縮機33aと給気ラインG11からの給気バイパスラインG13の分岐部分との間に設けられる。中間冷却器34は、低圧段圧縮機32aによって圧縮されて高温となった燃焼用ガスを、例えば冷却水との熱交換等によって冷却する。この中間冷却器34によって冷却される燃焼用ガスは、EGRシステム12が稼働している場合、新気と再循環ガスとの混合ガスであり、EGRシステム12が稼働停止している場合、新気である。いずれの場合も、燃焼用ガスは、中間冷却器34によって冷却された後、給気ラインG11内を流通して、高圧段圧縮機33aへ導かれる。
【0079】
給気バイパスラインG13、排気バイパスラインG14、給気バイパス弁35および排気バイパス弁36は、二段式過給機31による燃焼用ガスの過給を一段階の過給と二段階の過給とに切り替えるためのものである。本実施形態3において、図4に示すように、給気バイパスラインG13は、一端が給気ラインG11の中途部に接続され且つ他端が給気ラインG1の中途部に接続されている。これにより、給気バイパスラインG13は、給気ラインG11から分岐し高圧段過給機33を迂回して給気ラインG1に合流する迂回給気経路を形成する。この給気バイパスラインG13には、給気バイパス弁35が設けられている。給気バイパス弁35は、開閉駆動によって給気バイパスラインG13の開閉を行う。排気バイパスラインG14は、一端が排気ラインG2の中途部に接続され且つ他端が排気ラインG12の中途部に接続されている。これにより、排気バイパスラインG14は、排気ラインG2から分岐し高圧段過給機33を迂回して排気ラインG12に合流する迂回排気経路を形成する。この排気バイパスラインG14には、排気バイパス弁36が設けられている。排気バイパス弁36は、開閉駆動によって排気バイパスラインG14の開閉を行う。
【0080】
上述したような構成を有する二段式過給機31は、エンジン負荷が所定値に比べて低いためにエンジン本体1からの排ガスの排出量が所定量未満である場合、エンジン本体1に対して燃焼用ガスの一段階の過給を行う。この場合、給気バイパス弁35および排気バイパス弁36は、各々開状態となって、給気バイパスラインG13および排気バイパスラインG14を各々開く。エンジン本体1の排気マニホールド4から排出された排ガスは、排気ラインG2から排気バイパスラインG14を経て排気ラインG12に流入し、その後、排気ラインG12から低圧段タービン32bへ導かれる。低圧段タービン32bは、この排気ラインG12からの排ガスを受けて回転しながら、この回転に使用されて圧力および温度が低下した排ガスを排気ラインG3へ排出する。この低圧段タービン32bの回転は、回転軸32cによって低圧段圧縮機32aに伝達される。これにより、低圧段圧縮機32aは、この低圧段タービン32bの回転に伴い回転して、給気ラインG6から空気等の燃焼用ガスを吸入し、吸入した燃焼用ガスを圧縮して給気ラインG11へ送出する。この低圧段圧縮機32aの圧縮作用によって高圧化された燃焼用ガスは、給気ラインG11から給気バイパスラインG13を経て給気ラインG1に流入し、冷却器13によって冷却された後、給気ラインG1を通じてエンジン本体1の掃気トランク3に給気される。
【0081】
一方、エンジン負荷が所定値以上に高いためにエンジン本体1からの排ガスの排出量が所定量以上である場合、二段式過給機31は、エンジン本体1に対して燃焼用ガスの二段階の過給を行う。この場合、給気バイパス弁35および排気バイパス弁36は、各々閉状態となって、給気バイパスラインG13および排気バイパスラインG14を各々閉じる。エンジン本体1の排気マニホールド4から排出された排ガスは、排気ラインG2を通じて高圧段タービン33bへ導かれる。高圧段タービン33bは、この排気ラインG2からの高温高圧の排ガスを受けて回転しながら、この回転に使用されて圧力および温度が低下した排ガスを排気ラインG12へ排出する。この高圧段タービン33bの回転は、回転軸33cによって高圧段圧縮機33aに伝達される。これにより、高圧段圧縮機33aは、この高圧段タービン33bの回転に伴い回転して、給気ラインG6からの燃焼用ガスの吸入に寄与する。一方、高圧段タービン33bから排気ラインG12へ排出された排ガスは、この排気ラインG12を通じて低圧段タービン32bへ導かれる。低圧段タービン32bは、上述した一段階の過給の場合と同様に、この排気ラインG12からの排ガスを受けて回転しながら排気ラインG3へ排ガスを排出する。低圧段圧縮機32aは、この低圧段タービン32bの回転に伴い回転する。このように回転した状態の低圧段圧縮機32aは、給気ラインG6から空気等の燃焼用ガスを吸入し、吸入した燃焼用ガスを圧縮して給気ラインG11へ送出する。この低圧段圧縮機32aの圧縮作用によって高圧化された燃焼用ガスは、給気ラインG11を通じて中間冷却器34へ導かれ、中間冷却器34によって冷却された後、給気ラインG11を通じて高圧段圧縮機33aへ導かれる。高圧段圧縮機33aは、上述した高圧段タービン33bの回転に伴い回転した状態にあり、給気ラインG11から、低圧段圧縮機32aによる圧縮後の燃焼用ガスを吸入し、吸入した燃焼用ガスを更に圧縮する。この高圧段圧縮機33aの圧縮作用によって更に高圧化された燃焼用ガスは、給気ラインG1に送出され、冷却器13によって冷却された後、給気ラインG1を通じてエンジン本体1の掃気トランク3に給気される。
【0082】
なお、上述した給気バイパス弁35および排気バイパス弁36の開閉駆動および開閉タイミングは、制御部18によって制御されてもよいし、制御部18以外に別途設けられた制御部(図示せず)によって制御されてもよい。
【0083】
以上、説明したように、本発明の実施形態3に係る舶用ディーゼルエンジン30では、二段式過給機31により、燃焼用ガスを段階的に圧縮してエンジン本体1に送り込むようにし、その他を実施形態1と同様に構成している。このため、エンジン本体1に対して燃焼用ガスの一段階または二段階の過給をエンジン負荷に応じて適宜行いながらも、上述した実施形態1と同様の作用効果を享受することができる。
【0084】
(実施形態4)
つぎに、本発明の実施形態4について説明する。上述した実施形態3では、低圧段過給機32の低圧段タービン32bの回転に使用されて圧力が低下した排ガスから再循環ガスを抽気して、低圧のEGR動作を行っていたが、本実施形態4では、低圧段過給機32の低圧段タービン32bまたは高圧段過給機33の高圧段タービン33bを回転させる前の高圧の排ガスから再循環ガスを抽気して、高圧のEGR動作を行っている。
【0085】
図5は、本発明の実施形態4に係る舶用ディーゼルエンジンの一構成例を示す模式図である。図5に示すように、本実施形態4に係る舶用ディーゼルエンジン40は、上述した実施形態3に係る舶用ディーゼルエンジン30のEGRシステム12に代えてEGRシステム22をエンジン本体1と高圧段過給機33との間に備える。その他の構成は実施形態3と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0086】
EGRシステム22は、上述した実施形態2と同様のもの(図3参照)であり、エンジン本体1から排出された排ガス(具体的には、低圧段タービン32bまたは高圧段タービン33bを回転させる前の高圧の排ガス)の一部を空気と混合してエンジン本体1に再循環する。これにより、各シリンダ2内の燃料燃焼によるNOxの生成が抑制される。
【0087】
なお、本実施形態4において、排気ラインG3は、排ガス再循環ラインG4と接続されておらず、低圧段タービン32bの回転に使用された後の排ガスを煙突側へ流通させる。また、給気ラインG6は、排ガス再循環ラインG5と接続されておらず、外部から吸引された空気を低圧段圧縮機32aへ導く。
【0088】
以上、説明したように、本発明の実施形態4に係る舶用ディーゼルエンジン40では、エンジン本体1と高圧段過給機33との間にEGRシステム22を設け、このEGRシステム22により、エンジン本体1からの高圧の排ガスの一部を、再循環ガスとして空気と混合した後、エンジン本体1に再循環するようにし、その他を実施形態3と同様に構成している。このため、EGRシステム22が高圧のEGR動作を行うものでありながら、上述した実施形態3と同様の作用効果を享受することができる。
【0089】
(実施形態5)
つぎに、本発明の実施形態5について説明する。上述した実施形態1では、エンジン本体1から排出された排ガス中のNOxを低減するNOx低減装置としてEGRシステム12が設けられていたが、本実施形態5では、上記NOx低減装置としてSCRシステムが設けられている。
【0090】
図6は、本発明の実施形態5に係る舶用ディーゼルエンジンの一構成例を示す模式図である。図6に示すように、本実施形態5に係る舶用ディーゼルエンジン50は、上述した実施形態1に係る舶用ディーゼルエンジン10のEGRシステム12に代えてSCRシステム52を備え、制御部18に代えて制御部58を備える。また、この舶用ディーゼルエンジン50は、上述した実施形態1における酸素濃度検出部16を備えていない。その他の構成は実施形態1と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0091】
SCRシステム52は、エンジン本体1から排出された排ガスに還元剤を噴射して、この排ガス中のNOxを低減するものである。すなわち、本実施形態5において、SCRシステム52は、エンジン本体1から排出された排ガス中のNOxを低減するNOx低減装置として機能する。図6に示すように、SCRシステム52は、SCR反応器52aと、還元剤供給装置52bと、混合器52cと、SCR入口弁52dと、SCR出口弁52eと、抽気ラインG15と、抽気弁53と、排気バイパスラインG16と、排気バイパス弁54とを備える。
【0092】
SCR反応器52aは、触媒反応容器等によって構成され、図6に示すように、排気ラインG3の中途部に設けられる。SCR反応器52aは、還元剤が噴射された排ガス中のNOxと当該還元剤との還元反応を触媒作用によって選択的に進行(促進)させ、これにより、排ガス中のNOxを除去して低減する。
【0093】
還元剤供給装置52bは、エンジン本体1からの排ガスに還元剤を供給するものである。本実施形態5において、還元剤供給装置52bは、還元剤の流通管である液体供給ラインL1と、水の流通管である液体供給ラインL2とを有する。液体供給ラインL1の出口端には、噴射ノズル(図示せず)が設けられており、この噴射ノズルは、混合器52cの内部に噴射口を向けた状態となっている。一方、液体供給ラインL2は、上記の液体供給ラインL1と合流するように構成されている。還元剤供給装置52bは、一方の液体供給ラインL1内に還元剤を流通させるとともに、他方の液体供給ラインL2内に水を流通させて、この還元剤を希釈し、希釈後の還元剤を液体供給ラインL1から混合器52c内の流路全面に噴射する。これにより、還元剤供給装置52bは、混合器52c内を流通する排ガス、すなわち、エンジン本体1からの排ガスに対し還元剤を噴射して供給する。なお、この還元剤としては、例えば、尿素水等を用いることができる。
【0094】
混合器52cは、排ガスと還元剤とを混合するものである。本実施形態5において、図6に示すように、混合器52cは、排気ラインG3の中途部であって、SCR反応器52aよりも排ガスの流通方向の上流側に設けられている。混合器52cは、エンジン本体1からの排ガスと還元剤供給装置52bからの還元剤とを混合しながら、この排ガスをSCR反応器52aに向けて流通させる。
【0095】
SCR入口弁52dおよびSCR出口弁52eは、SCRシステム52によるNOx低減対象の排ガスの流通状態を開閉によって調整するものである。本実施形態5において、図6に示すように、SCR入口弁52dは、排気ラインG3の中途部であって、混合器52cと排気ラインG3からの排気バイパスラインG16の分岐部分との間に設けられる。SCR出口弁52eは、排気ラインG3の中途部であって、SCR反応器52aと排気ラインG3への排気バイパスラインG16の合流部分との間に設けられる。SCR入口弁52dおよびSCR出口弁52eは、SCRシステム52が稼働する場合、開状態となって、排気ラインG3を通じて混合器52cとSCR反応器52aとをこの順に順次通過する排ガスの流通を可能とする。一方、SCR入口弁52dおよびSCR出口弁52eは、SCRシステム52が稼働停止する場合、閉状態となって、上記の排気ラインG3における排ガスの流通を不可とする。
【0096】
抽気ラインG15および抽気弁53は、SCRシステム52による排ガス中のNOx除去に必要な排ガス温度を確保するためのものである。本実施形態5において、図6に示すように、抽気ラインG15は、一端が排気ラインG2の中途部に接続され且つ他端が排気ラインG3の中途部(例えば、過給機11のタービン11bと排気ラインG3からの排気バイパスラインG16の分岐部分との間)に接続されている。このような抽気ラインG15は、排気ラインG2から分岐し過給機11を迂回して排気ラインG3に合流する抽気経路を形成する。抽気ラインG15は、この抽気経路に沿って、排気ラインG2から高温高圧の排ガスの一部を抽気し、この抽気した排ガスを排気ラインG3内の排ガス(タービン11bの回転に使用された排ガス)と混合する。これにより、排気ラインG3内の排ガス温度は、SCRシステム52によって排ガス中のNOxを効率よく除去するために必要な反応温度(すなわち、触媒作用による排ガス中のNOxと還元剤との還元反応の必要温度)以上に維持される。抽気弁53は、抽気ラインG15に設けられ、開閉駆動によって抽気ラインG15の開閉を行う。
【0097】
排気バイパスラインG16および排気バイパス弁54は、SCRシステム52が稼働停止している場合に、外部に対する排ガスの排気経路を確保するためのものである。本実施形態5において、図6に示すように、排気バイパスラインG16の一端は、排気ラインG3の中途部であって、SCR入口弁52dと排気ラインG3への抽気ラインG15の合流部分との間に接続される。排気バイパスラインG16の他端は、排気ラインG3の中途部であって、SCR出口弁52eよりも排ガスの流通方向の下流側に接続される。このような排気バイパスラインG16は、排気ラインG3のうち、SCR入口弁52dから混合器52cとSCR反応器52aとを順次経てSCR出口弁52eに至る排気経路を迂回する迂回排気経路を形成する。排気バイパス弁54は、排気バイパスラインG16に設けられ、開閉駆動によって排気バイパスラインG16の開閉を行う。
【0098】
制御部58は、エンジン本体1の運転を制御するエンジン制御機能と、エンジン本体1から排出される排ガス中のNOxの低減を制御するNOx低減制御機能とを兼ね備える。制御部58は、各種プログラムを実行してデータ処理を行うCPUおよびメモリ等によって構成され、図6中の一点鎖線(電気信号線)で示されるように、噴射部5の各燃料噴射ポンプ6および各注水ポンプ7と、SCRシステム52の還元剤供給装置52bとを制御する。また、制御部58は、特に電気信号線は図示しないが、噴射部5の各燃料噴射弁8と、SCRシステム52のSCR入口弁52d、SCR出口弁52e、抽気弁53および排気バイパス弁54と、冷却器13と、補助ブロワ15とを制御することが可能である。
【0099】
本実施形態5において、制御部58は、エンジン本体1の負荷(エンジン負荷)に応じて、上述した噴射部5による水添加率と、NOx低減装置としてのSCRシステム52によるNOx低減パラメータとを可変に制御する。詳細には、制御部58は、噴射部5の燃料・水噴射動作期間、各シリンダ2内の燃焼室に対する水添加率をエンジン負荷に応じて可変に制御する。また、制御部58は、SCRシステム52がエンジン本体1からの排ガス中のNOxを還元剤の噴射および還元作用によって除去する動作、すなわちSCR動作を行う期間(以下、SCR動作期間という)、SCRシステム52による還元剤噴射率をエンジン負荷に応じて可変に制御する。
【0100】
ここで、SCR動作期間は、NOx低減装置がエンジン本体1からの排ガス中のNOxの低減を行う動作期間の一例である。本実施形態5において、NOx低減パラメータは、SCRシステム52による還元剤噴射率である。還元剤噴射率は、エンジン本体1からの排ガス量に対する還元剤の噴射量の比率である。例えば、排ガス量は、単位時間あたりにエンジン本体1から排出される排ガスの排出量である。還元剤の噴射量は、この排ガス中のNOxを除去するために必要な還元剤の噴射量である。この還元剤噴射率は、質量比(質量%)であってもよいし、体積比(体積%)であってもよい。
【0101】
SCR動作期間において、制御部58は、エンジン負荷と還元剤噴射率との関係を示す還元剤噴射率制御マップを用い、エンジン負荷に応じて、SCRシステム52による還元剤噴射率を可変に制御する。詳細には、還元剤噴射率制御マップは、上述した水添加率制御マップに加え、図6に示す制御マップ59の1つとして、データ入力等により制御部58のメモリに予め記憶されている。制御部58は、上述した実施形態1における水添加率の制御の場合と同様に、エンジン本体1の現在のエンジン負荷を算出する。ついで、制御部58は、還元剤噴射率制御マップを参照して、現在のエンジン負荷に対応する還元剤噴射率を導出する。制御部58は、この導出した還元剤噴射率をもとに、混合器52c内を順次通過する排ガス中のNOxを除去するために必要な還元剤の噴射量を算出し、この算出した噴射量での還元剤の噴射(供給)を行うように還元剤供給装置52bを制御する。この制御を通して、制御部58は、単位時間あたりのエンジン本体1からの排ガス量に対する還元剤供給装置52bからの還元剤の噴射量の比率、すなわち、還元剤噴射率を、現在のエンジン負荷に応じたものに制御する。このようにして、制御部58は、SCRシステム52の作用によるNOxの低減量(例えば単位時間あたりのNOxの低減量)を制御する。
【0102】
また、このSCR動作期間において、制御部58は、排気バイパス弁54を閉じるよう駆動制御するとともに、SCR入口弁52d、SCR出口弁52eおよび抽気弁53を開くよう駆動制御する。これにより、排気バイパスラインG16が閉じた状態となるとともに、排気ラインG3の混合器52cおよびSCR反応器52aに通じる排気経路と、抽気ラインG15とが開いた状態となる。この状態において、エンジン本体1からの排ガスは、排気ラインG2を通じて過給機11のタービン11bに流入する排ガスと、排気ラインG2から抽気ラインG15に抽気される排ガスとに分かれて流れる。その後、タービン11bの回転に使用された排ガスと抽気ラインG15に抽気された排ガスとは、排気ラインG3内で合流して、高温状態を維持しながら排気ラインG3の上記排気経路に沿って流れる。
【0103】
一方、SCR動作期間以外において、制御部58は、排気バイパス弁54を開くよう駆動制御するとともに、SCR入口弁52d、SCR出口弁52eおよび抽気弁53を閉じるよう駆動制御する。これにより、排気バイパスラインG16が開いた状態となるとともに、排気ラインG3の上記排気経路と抽気ラインG15とが閉じた状態となる。この状態において、SCRシステム52は稼働停止しており、エンジン本体1からの排ガスは、排気ラインG2を通じて過給機11のタービン11bに流入し、タービン11bを回転させた後、排気ラインG3から排気バイパスラインG16に流入する。その後、この排気ガスは、排気バイパスラインG16に沿って混合器52cおよびSCR反応器52aを迂回して流れ、排気バイパスラインG16から排気ラインG3に流入する。
【0104】
なお、本実施形態5において、制御部58は、上述した実施形態1と同様に、エンジン本体1の運転を制御する。また、制御部58は、噴射部5の燃料・水噴射動作期間において、上述した実施形態1と同様に、水添加率制御マップを用い、エンジン負荷に応じて、各シリンダ2内の燃焼室に対する水添加率を可変に制御する。一方、給気ラインG6は、実施形態1における排ガス再循環ラインG5(図1参照)と接続されておらず、外部から吸引された空気を過給機11の圧縮機11aへ導く。
【0105】
つぎに、本実施形態5におけるエンジン負荷に応じた水添加率および還元剤噴射率の制御について、具体的に説明する。図7は、本発明の実施形態5におけるエンジン負荷に応じた水添加率および還元剤噴射率の制御の一具体例を説明する図である。
【0106】
図7において、還元剤噴射率制御マップ19cは、エンジン本体1のエンジン負荷とSCRシステム52による還元剤噴射率との関係を示す制御マップの一例である。還元剤噴射率制御マップ19cは、例えば、実験やシミュレーションの結果をもとに、エンジン本体1からのNOxの排出量がNOx排出規制を満足するようなエンジン負荷とエンジン本体1からの排ガス量に対する還元剤の噴射量の比率(還元剤噴射率)との関係のうち、エンジン燃費が最適となる関係を求めることにより、設定可能である。
【0107】
特に、水添加率制御マップ19aと還元剤噴射率制御マップ19cとの間でエンジン負荷が重複する範囲の水添加率および還元剤噴射率については、燃焼室に対する水の噴射(添加)によるNOxの低減効果と、SCR動作によるNOxの低減効果と、エンジン燃費の最適値とを加味して、エンジン本体1からのNOxの排出量がNOx排出規制を満足するようなエンジン負荷との関係を示すように設定されることが好ましい。なお、水添加率制御マップ19aは、上述した実施形態1と同様である。
【0108】
これらの水添加率制御マップ19aおよび還元剤噴射率制御マップ19cは、図6に示す制御マップ59として制御部58のメモリに記憶されている。なお、水添加率制御マップ19aに示されるエンジン負荷と水添加率との関係、および、還元剤噴射率制御マップ19cに示されるエンジン負荷と還元剤噴射率との関係は、各々一例であって、本発明を限定するものではない。
【0109】
図7に示すように、エンジン負荷がA1以上である場合、NOx排出量がNOx排出規制を満足するという観点からは、各シリンダ2内の燃焼室への水噴射およびSCR動作の少なくとも一方が行われることが望ましい。すなわち、このA1以上というエンジン負荷範囲は、NOx排出量をNOx排出規制に基づいて管理すべき管理範囲である。この管理範囲のうち、エンジン負荷がA1以上、A2未満である場合、各シリンダ2内の燃焼室への水噴射またはSCR動作の何れかが行われれば、NOx排出量はNOx排出規制を満足する。この場合、エンジン燃費を向上させるという観点から、SCR動作に比べてエンジン燃費の悪化が少ない水噴射を行うことが好ましい。したがって、制御部58は、エンジン負荷がA1以上という管理範囲において、エンジン負荷が所定値(本実施形態5ではA2)未満である場合、噴射部5による水添加率をエンジン負荷に応じて可変に制御する。例えば、制御部58は、水添加率制御マップ19aに基づき、エンジン負荷(A1)に対応する水添加率(R11)を一義的に決定し、噴射部5の制御を通して各シリンダ2内の燃焼室に対する水添加率をR11に制御する。また、制御部58は、エンジン負荷が変化すれば、水添加率制御マップ19aに基づき、エンジン負荷に応じて水添加率を可変に制御する。一方、制御部58は、このエンジン負荷がA1以上A2未満という管理範囲において、還元剤供給装置52bを停止させてSCRシステム52による還元剤噴射率を零値に制御する。この際、制御部58は、上述したように、排気バイパス弁54を開くよう駆動制御するとともに、SCR入口弁52d、SCR出口弁52eおよび抽気弁53を閉じるよう駆動制御する。
【0110】
エンジン負荷がA2以上である場合、NOx排出量がNOx排出規制を満足するという観点からは、各シリンダ2内の燃焼室への水噴射およびSCR動作の双方が行われることが望ましい。したがって、制御部58は、エンジン負荷が所定値(本実施形態5ではA2)以上である場合、すなわち、エンジン負荷がA2以上という管理範囲において、上述した水添加率の制御に加えて更に、NOx低減装置によるNOx低減パラメータを可変に制御する。具体的には、制御部58は、この管理範囲において、噴射部5による水添加率をエンジン負荷に応じて可変に制御し、且つ、SCRシステム52による還元剤噴射率を同エンジン負荷に応じて可変に制御する。
【0111】
例えば、エンジン負荷がA2である場合、制御部58は、水添加率制御マップ19aに基づき、エンジン負荷(A2)に対応する水添加率(R12)を一義的に決定し、且つ、還元剤噴射率制御マップ19cに基づき、同エンジン負荷(A2)に対応する還元剤噴射率(R21)を一義的に決定する。このようにして、制御部58は、エンジン負荷(A2)に応じて、目標とする水添加率と還元剤噴射率との組み合わせ(R12,R21)を一義的に決定し、噴射部5の制御を通して各シリンダ2内の燃焼室に対する水添加率をR12に制御するとともに、SCRシステム52の制御を通して、還元剤供給装置52bから混合器52c内の排ガスに対する還元剤噴射率をR21に制御する。
【0112】
エンジン負荷がA3、A4またはA5である場合も、上述したA2の場合と同様に、制御部58は、水添加率制御マップ19aに基づき、エンジン負荷に対応する水添加率を一義的に決定し、且つ、還元剤噴射率制御マップ19cに基づき、同エンジン負荷に対応する還元剤噴射率を一義的に決定する。これにより、目標とする水添加率と還元剤噴射率との組み合わせが、エンジン負荷に応じて一義的に決定される。具体的には、上記水添加率と還元剤噴射率との組み合わせは、エンジン負荷がA3である場合に(R13,R22)となり、エンジン負荷がA4である場合に(R14,R23)となり、エンジン負荷がA5である場合に(R15,R24)となる。その後、制御部58は、上述したA2の場合と同様に、水添加率および還元剤噴射率を、エンジン負荷に応じて一義的に決定した水添加率と還元剤噴射率との組み合わせと同じになるように制御する。
【0113】
なお、本実施形態5のエンジン負荷範囲において、エンジン負荷がA1以上という管理範囲は、噴射部5の燃料・水噴射動作期間に相当する。この管理範囲のうちのエンジン負荷がA2以上である範囲は、上記燃料・水噴射動作期間と、SCRシステム52のSCR動作期間とが重複する期間に相当する。
【0114】
以上、説明したように、本発明の実施形態5に係る舶用ディーゼルエンジン50では、エンジン本体1から排出された排ガス中のNOxを低減するNOx低減装置として、エンジン本体1から排出された排ガスに還元剤を噴射するSCRシステム52を設け、制御部58により、エンジン負荷に応じて、噴射部5の燃料・水噴射動作期間における水添加率と、NOx低減装置の動作期間におけるNOx低減パラメータ(具体的にはSCRシステム52のSCR動作期間における還元剤噴射率)と、を可変に制御するようにし、その他を実施形態1と同様に構成している。このため、NOx低減装置として、EGRシステム12をSCRシステム52に置き換えたとしても、上述した実施形態1と同様の作用効果を享受することができる。
【0115】
(実施形態6)
つぎに、本発明の実施形態6について説明する。上述した実施形態5では、過給機11のタービン11bの回転に使用されて圧力が低下した排ガスに還元剤を噴射してNOxを除去するSCR動作を行っていたが、本実施形態6では、タービン11bを回転させる前の高温の排ガスに還元剤を噴射してNOxを除去するSCR動作(高温のSCR動作)を行っている。
【0116】
図8は、本発明の実施形態6に係る舶用ディーゼルエンジンの一構成例を示す模式図である。図8に示すように、本実施形態6に係る舶用ディーゼルエンジン60は、上述した実施形態5に係る舶用ディーゼルエンジン50のSCRシステム52に代えてSCRシステム62をエンジン本体1と過給機11との間に備え、更に、排気ラインG2を開閉する排気弁63を備える。その他の構成は実施形態5と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0117】
SCRシステム62は、エンジン本体1から排出された排ガス(具体的には過給機11のタービン11bを回転させる前の高温の排ガス)に還元剤を噴射して、この排ガス中のNOxを低減するものである。すなわち、本実施形態6において、SCRシステム62は、エンジン本体1から排出された排ガス中のNOxを低減するNOx低減装置として機能する。
【0118】
図8に示すように、SCRシステム62は、SCR反応器52aと、還元剤供給装置52bと、混合器52cと、SCR入口弁52dと、SCR出口弁52eと、排気ラインG17とを備える。
【0119】
このSCRシステム62において、排気ラインG17は、一端がエンジン本体1の排気マニホールド4に接続され且つ他端が排気ラインG2の中途部に接続されている。この排気ラインG17には、エンジン本体1からの排ガスの流通方向に向かって、SCR入口弁52dと、混合器52cと、SCR反応器52aと、SCR出口弁52eとが、この順に配置されている。SCR入口弁52dおよびSCR出口弁52eは、SCRシステム62が稼働する場合、開状態となって、排気ラインG17を通じて混合器52cとSCR反応器52aとをこの順に順次通過する高温の排ガスの流通を可能とする。この高温の排ガスは、エンジン本体1の排気マニホールド4から排出された排ガスであって、過給機11のタービン11bを回転させる前の排ガスである。この高温の排ガスは、還元剤の噴射および還元作用による排ガス中のNOx除去に必要な排ガス温度以上に維持されたものである。SCRシステム62によってNOxが除去された排ガスは、この排気ラインG17から排気ラインG2を通じてタービン11bに流入する。一方、SCR入口弁52dおよびSCR出口弁52eは、SCRシステム62が稼働停止する場合、閉状態となって、上記の排気ラインG17における高温の排ガスの流通を不可とする。なお、SCR反応器52a、還元剤供給装置52bおよび混合器52cは、上述した実施形態5におけるSCRシステム52と同様である。
【0120】
排気弁63は、開閉駆動によって排気ラインG2の開閉を行うものである。図8に示すように、排気弁63は、排気ラインG2のうち、排気マニホールド4と排気ラインG2への排気ラインG17の合流部分との間に設けられている。排気弁63は、SCRシステム62が稼働停止する場合、開状態となって、排気マニホールド4から排気ラインG2を通じてタービン11bに至る排ガスの流通を可能とする。一方、排気弁63は、SCRシステム62が稼働する場合、閉状態となって、この排気ラインG2を通じての排ガスの流通を不可とする。なお、排気弁63の開閉駆動および開閉タイミングは、制御部58によって制御されてもよいし、制御部58以外に別途設けられた制御部(図示せず)によって制御されてもよい。
【0121】
以上、説明したように、本発明の実施形態6に係る舶用ディーゼルエンジン60では、エンジン本体1と過給機11との間にSCRシステム62を設け、このSCRシステム62の還元剤の噴射および還元作用により、エンジン本体1からの高温の排ガスからNOxを除去するようにし、その他を実施形態5と同様に構成している。このため、タービン11bを回転させる前の高温の排ガスの一部を抽気して、タービン11bを回転させた後の排ガスに混合しなくとも、排ガス温度をSCRシステム62に必要な温度以上に維持できるとともに、SCRシステム62が高温のSCR動作を行うものでありながら、上述した実施形態5と同様の作用効果を享受することができる。
【0122】
(実施形態7)
つぎに、本発明の実施形態7について説明する。上述した実施形態5では、一段式過給機(過給機11)によって燃焼用ガスを圧縮していたが、本実施形態7では、二段式過給機によって燃焼用ガスを圧縮している。
【0123】
図9は、本発明の実施形態7に係る舶用ディーゼルエンジンの一構成例を示す模式図である。図9に示すように、本実施形態7に係る舶用ディーゼルエンジン70は、上述した実施形態5に係る舶用ディーゼルエンジン50の過給機11に代えて二段式過給機31を備える。その他の構成は実施形態5と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0124】
本実施形態7において、図9に示すように、SCRシステム52の抽気ラインG15は、一端が排気バイパスラインG14の中途部に接続され且つ他端が上述の実施形態5と同様に排気ラインG3の中途部に接続されている。このような抽気ラインG15は、排気バイパスラインG14から分岐し低圧段過給機32を迂回して排気ラインG3に合流する抽気経路を形成する。抽気ラインG15は、この抽気経路に沿って、排気バイパスラインG14から高温高圧の排ガスの一部を抽気し、この抽気した排ガスを排気ラインG3内の排ガス(低圧段タービン32bの回転に使用された排ガス)と混合する。これにより、排気ラインG3内の排ガス温度は、SCRシステム52によって排ガス中のNOxを効率よく除去するために必要な反応温度以上に維持される。
【0125】
なお、本実施形態7において、二段式過給機31の中間冷却器34、給気バイパス弁35および排気バイパス弁36の動作は、制御部58によって制御されてもよいし、制御部58以外に別途設けられた制御部(図示せず)によって制御されてもよい。
【0126】
以上、説明したように、本発明の実施形態7に係る舶用ディーゼルエンジン70では、実施形態3と同様の二段式過給機31により、燃焼用ガスを段階的に圧縮してエンジン本体1に送り込むようにし、その他を実施形態5と同様に構成している。このため、エンジン本体1に対する燃焼用ガスの一段階または二段階の過給をエンジン負荷に応じて適宜行いながらも、上述した実施形態5と同様の作用効果を享受することができる。
【0127】
(実施形態8)
つぎに、本発明の実施形態8について説明する。上述した実施形態7では、二段式過給機31の低圧段タービン32bから送出された排ガスに還元剤を噴射してNOxを除去するSCR動作を行っていたが、本実施形態8では、二段式過給機31の高圧段タービン33bから送出された排ガスに還元剤を噴射してNOxを除去するSCR動作を行っている。
【0128】
図10は、本発明の実施形態8に係る舶用ディーゼルエンジンの一構成例を示す模式図である。図10に示すように、本実施形態8に係る舶用ディーゼルエンジン80は、上述した実施形態7に係る舶用ディーゼルエンジン70のSCRシステム52に代えて、実施形態6と同様のSCRシステム62を二段式過給機31の低圧段過給機32と高圧段過給機33との間に備え、更に、排気ラインG12を開閉する排気弁73を備える。その他の構成は実施形態7と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0129】
本実施形態8において、SCRシステム62の排気ラインG17は、一端が二段式過給機31の排気ラインG12における高圧段タービン33b側の中途部に接続され且つ他端が排気ラインG12における低圧段タービン32b側の中途部に接続されている。SCRシステム62が稼働する場合、SCR入口弁52dおよびSCR出口弁52eが開状態となることにより、この排気ラインG17は、高温の排ガスを、混合器52cとSCR反応器52aとをこの順に順次通過する方向に流通させることができる。この高温の排ガスは、高圧段タービン33bから排気ラインG12に送出された排ガスと、エンジン本体1の排気マニホールド4から排気ラインG2および排気バイパスラインG14を介して抽気された高温の排ガスと、を混合したものである。すなわち、この高温の排ガスは、還元剤の噴射および還元作用による排ガス中のNOx除去に必要な排ガス温度以上に維持されたものである。SCRシステム62によってNOxが除去された排ガスは、この排気ラインG17から排気ラインG12を通じて低圧段タービン32bに流入する。
【0130】
排気弁73は、開閉駆動によって排気ラインG12の開閉を行うものである。図10に示すように、排気弁73は、排気ラインG12の中途部であって排気ラインG12、G17の分岐部分と合流部分との間に設けられている。排気弁73は、SCRシステム62が稼働停止する場合、開状態となって、高圧段タービン33bから排気ラインG12を通じて低圧段タービン32bに至る排ガスの流通を可能とする。一方、排気弁73は、SCRシステム62が稼働する場合、閉状態となって、この排気ラインG12を通じての排ガスの流通を不可とする。なお、排気弁73の開閉駆動および開閉タイミングは、制御部58によって制御されてもよいし、制御部58以外に別途設けられた制御部(図示せず)によって制御されてもよい。
【0131】
以上、説明したように、本発明の実施形態8に係る舶用ディーゼルエンジン80では、二段式過給機31の低圧段過給機32と高圧段過給機33との間にSCRシステム62を設け、このSCRシステム62の還元剤の噴射および還元作用により、エンジン本体1からの高温の排ガスからNOxを除去するようにし、その他を実施形態7と同様に構成している。このため、高圧段タービン33bを回転させる前の高温の排ガスの一部を抽気して、高圧段タービン33bを回転させた後の排ガスに混合したものを、NOx低減対象の排ガスとすることができるから、排ガス温度をSCRシステム62に必要な温度以上に維持し易くなるとともに、SCRシステム62が高温のSCR動作を行うものでありながら、上述した実施形態7と同様の作用効果を享受することができる。
【0132】
なお、上述した実施形態1~8では、各シリンダ2内の燃焼室に対して燃料および水を層状に噴射していたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、噴射部5は、各シリンダ2内の燃焼室に対して、燃料とは別に単独で水を噴射(添加)してもよいし、燃料と水とを混合してエマルジョン化した液体(水エマルジョン燃料)を噴射してもよい。
【0133】
また、上述した実施形態1~8では、6つのシリンダ2が設けられたエンジン本体1(6気筒エンジン)を例示したが、本発明は、これに限定されるものではない。エンジン本体1に設けられるシリンダ2の配置数は、所望数(1つ以上)であってもよい。同様に、噴射部5の燃料噴射ポンプ6、注水ポンプ7および燃料噴射弁8の各配置数は、上述したものに限定されず、シリンダ2の配置数に合わせて必要数(1つ以上)であってもよい。すなわち、本発明において、シリンダ2および噴射部5の各構成部の配置数は、特に問われない。
【0134】
さらに、上述した実施形態1~8では、エンジン負荷の増加に伴い、水添加率を先に制御し、エンジン負荷が所定値以上に増加した場合、水添加率の制御に加えて更にEGR率または還元剤噴射率を制御していたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、エンジン負荷の増加に伴い、EGR率または還元剤噴射率を先に制御し、エンジン負荷が所定値以上に増加した場合、この制御に加えて更に水添加率を制御してもよいし、エンジン負荷が所定値以上に増加した時点から水添加率の制御とEGR率または還元剤噴射率の制御とを同時に開始してもよい。
【0135】
また、上述した実施形態1~8により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。その他、上述した実施形態1~6に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例および運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0136】
1 エンジン本体
2 シリンダ
3 掃気トランク
4 排気マニホールド
5 噴射部
6 燃料噴射ポンプ
6a 燃料
7 注水ポンプ
7a 水
8 燃料噴射弁
9 回転数検出部
10、20、30、40、50、60、70、80 舶用ディーゼルエンジン
11 過給機
11a 圧縮機
11b タービン
11c 回転軸
12、22 EGRシステム
12a EGR洗浄装置
12b EGRブロワ
12c EGR入口弁
12d EGR出口弁
13 冷却器
14 逆止弁
15 補助ブロワ
16 酸素濃度検出部
17 操作部
18、58 制御部
19、59 制御マップ
19a 水添加率制御マップ
19b EGR率制御マップ
19c 還元剤噴射率制御マップ
22a EGR冷却器
31 二段式過給機
32 低圧段過給機
32a 低圧段圧縮機
32b 低圧段タービン
32c、33c 回転軸
33 高圧段過給機
33a 高圧段圧縮機
33b 高圧段タービン
34 中間冷却器
35 給気バイパス弁
36、54 排気バイパス弁
52、62 SCRシステム
52a SCR反応器
52b 還元剤供給装置
52c 混合器
52d SCR入口弁
52e SCR出口弁
53 抽気弁
63、73 排気弁
G1、G6、G11 給気ライン
G2、G3、G12、G17 排気ライン
G4、G5 排ガス再循環ライン
G7 バイパスライン
G13 給気バイパスライン
G14、G16 排気バイパスライン
G15 抽気ライン
L1、L2 液体供給ライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10