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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-27
(45)【発行日】2023-01-11
(54)【発明の名称】ビールテイスト飲料
(51)【国際特許分類】
   C12G 3/02 20190101AFI20221228BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20221228BHJP
【FI】
C12G3/02
A23L2/00 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017198381
(22)【出願日】2017-10-12
(65)【公開番号】P2019071795
(43)【公開日】2019-05-16
【審査請求日】2020-10-09
(73)【特許権者】
【識別番号】303040183
【氏名又は名称】サッポロビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100176773
【弁理士】
【氏名又は名称】坂西 俊明
(72)【発明者】
【氏名】谷川 篤史
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/170814(WO,A1)
【文献】特開2016-093118(JP,A)
【文献】特開2017-079695(JP,A)
【文献】特開2012-105673(JP,A)
【文献】特開2006-006342(JP,A)
【文献】特開2015-223120(JP,A)
【文献】特開2016-182133(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12G、A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリン体含有量が0.5mg/100ml未満であり、
原料中の麦芽の比率が1.5質量%以下であり、
総ポリフェノール量が、100mg/L以下であり、
糖質含有量が0.5g/100ml未満であり、
発酵飲料である、ビールテイスト飲料。
【請求項2】
非麦芽ビールテイスト飲料である、請求項1に記載のビールテイスト飲料。
【請求項3】
pHが4.2以下である、請求項1又は2に記載のビールテイスト飲料。
【請求項4】
アルコール度数が1v/v%以上である、請求項1~のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料。
【請求項5】
カロリーが20kcal/100ml以下である、請求項1~のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料。
【請求項6】
原料として、大豆、エンドウ及びとうもろこしからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1~のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料。
【請求項7】
蒸留アルコールを含まない、請求項1~のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビールテイスト飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ビールテイスト飲料の香味を改善する様々な提案がなされている。例えば、特許文献1には、麦の使用比率を低くした場合であっても、添加した飲用アルコールのアルコール味が突出して感じられ難いビールテイスト飲料として、麦由来成分と飲用アルコールを含み、プリン体の含有量、アルコール度数及び苦味価が所定範囲内であるビールテイスト飲料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5861004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ビールテイスト飲料が有する香味の中でも、特に穀物臭には未だ改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、穀物臭が低減されたビールテイスト飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、プリン体含有量が0.5mg/100ml未満であり、原料中の麦芽の比率が1.5質量%以下である、ビールテイスト飲料に関する。本発明のビールテイスト飲料は、プリン体含有量及び原料中の麦芽の比率が上記範囲内であるため、穀物臭が低減している。
【0007】
上記ビールテイスト飲料の糖質含有量は、0.5g/100ml未満であってよい。
【0008】
上記ビールテイスト飲料は、非麦芽ビールテイスト飲料であってよい。この場合、穀物臭がより一層低減されると共に、酸味の強度がより強く、酸味のキレ及び甘味のキレがより優れ、口に入れた瞬間に感じる雑味がより弱くなる。
【0009】
上記ビールテイスト飲料において、pHは4.2以下であってよい。この場合、酸味の強度がより強く、かつ、酸味のキレ及び甘味のキレがより優れたものとなる。
【0010】
上記ビールテイスト飲料の総ポリフェノール量は、100mg/L以下であってよい。この場合、酸味のキレ及び甘味のキレに優れ、かつ口に入れた瞬間に感じる雑味がより低減されたものとなる。
【0011】
上記ビールテイスト飲料は、発酵飲料であってよい。
【0012】
上記ビールテイスト飲料において、アルコール度数は1v/v%以上であってよい。
【0013】
上記ビールテイスト飲料のカロリーは20kcal/100mlであってよい。
【0014】
上記ビールテイスト飲料は、原料として、大豆、エンドウ及びとうもろこしからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてよい。
【0015】
上記ビールテイスト飲料は、蒸留アルコールを含んでいなくてよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、穀物臭が低減されたビールテイスト飲料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0018】
本明細書において「原料」とは、ビールテイスト飲料の製造に用いられる全原料のうち、水及びホップ以外のものを意味する。
【0019】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、プリン体含有量が、0.5mg/100ml未満であり、原料中の麦芽の比率が1.5質量%以下である。
【0020】
本明細書において、ビールテイスト飲料とは、ビール様の香味を有する飲料を意味する。ビールテイスト飲料は、アルコール度数が1v/v%以上であるビールテイストアルコール飲料であってもよく、アルコール度数が1v/v%未満であるノンビールテイストアルコール飲料であってもよい。本実施形態に係るビールテイスト飲料は、ビールテイスト飲料としてのアルコール感を担保する観点から、アルコール度数が1v/v%以上であるビールテイストアルコール飲料であることが好ましい。なお、アルコール度数とは、ビールテイスト飲料に含まれるエタノールの含有量を意味する。
【0021】
ビールテイストアルコール飲料としては、例えば、酒税法(平成二八年三月三一日法律第一六号)上のビール、発泡酒、その他の発泡性酒類、リキュールに分類されるものが挙げられる。
【0022】
ビールテイストアルコール飲料のアルコール度数は、例えば、1v/v%以上、2v/v%以上、3v/v%以上、4v/v%以上、又は5v/v%以上であってもよい。また、ビールテイストアルコール飲料のアルコール度数は、例えば、20v/v%以下、15v/v%以下、10v/v%以下、9v/v%以下、8v/v%以下、7v/v%以下、6v/v%以下、5v/v%以下、4v/v%以下、又は3v/v%以下であってもよい。
【0023】
ビールテイストアルコール飲料は、例えば、ビールテイスト飲料の製造工程において、蒸留アルコールを別途添加したものであってもよく、発酵工程を介してアルコールを含むものとなったものであってもよい。本実施形態に係るビールテイスト飲料は、蒸留アルコールを使用したものでなくてよい。つまり、当該ビールテイスト飲料は、蒸留アルコール(別途添加したアルコール)を含んでいなくてよい。蒸留アルコールとしては、例えば、焼酎、ブランデー、ウォッカ等の各種スピリッツ、原料用アルコール等が挙げられる。
【0024】
ノンアルコールビールテイスト飲料は、実質的にアルコールを含有しないビールテイスト飲料である。ノンアルコールビールテイスト飲料のアルコール度数は、1v/v%未満であればよく、0.5v/v%以下であってよく、0.1v/v%以下であってよく、0.005v/v%未満(0.00v/v%)であってもよい。また、ノンアルコールビールテイスト飲料のアルコール度数は、0.1v/v%以上、0.3v/v%以上、又は0.5v/v%以上であってもよい。
【0025】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、発泡性であってもよく、非発泡性であってもよい。本実施形態に係るビールテイスト飲料は、発泡性であることが好ましい。つまり、当該ビールテイスト飲料は、発泡性飲料(発泡性ビールテイスト飲料)であってよい。本明細書において発泡性とは、20℃におけるガス圧が0.049MPa(0.5kg/cm)以上であることをいい、非発泡性とは、20℃におけるガス圧が0.049MPa(0.5kg/cm)未満であることをいう。発泡性とする場合、ガス圧の上限は0.294MPa(3.0kg/cm)程度であってもよく、0.235MPa(2.4kg/cm)程度であってもよい。
【0026】
本実施形態に係るビールテイスト飲料のプリン体含有量は、0.5mg/100ml未満である。ビールテイスト飲料のプリン体含有量は、0.4mg/100ml以下、0.3mg/100ml以下、0.2mg/100ml以下、又は、0.1mg/100ml以下であってもよい。また、ビールテイスト飲料のプリン体含有量は、0.1mg/100ml以上、0.2mg/100ml以上、又は、0.3mg/100ml以上であってもよい。
【0027】
プリン体含有量は、アデニン、キサンチン、グアニン、及びヒポキサンチンのプリン体塩基4種の含有量の総量である。ビールテイスト飲料中のプリン体含有量は、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定することができる。
【0028】
プリン体含有量は、例えば、原料の種類及び使用量、後述する活性炭処理等により調整することができる。
【0029】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料中の麦芽の比率が1.5質量%以下である。すなわち原料中の麦芽の含有量は、1.5質量%以下である。原料中の麦芽の比率は、1.0質量%以下、0.5質量%以下、0.3質量%以下、又は0.1質量%以下であってもよい。原料中の麦芽の比率は、0.0質量%であってもよい。つまり、当該ビールテイスト飲料は、非麦芽ビールテイスト飲料であってよい。原料中の麦芽の比率が低いほど、当該ビールテイスト飲料の、酸味の強度、酸味のキレ、及び、甘味のキレがより強く、かつ、口に入れた瞬間に感じる雑味、及び、穀物臭がより弱く感じられるようになる。原料中の麦芽の比率は、例えば、0.1質量%以上、0.3質量%以上、0.5質量%、1.0質量%以上又は1.5質量%以上であってもよい。
【0030】
麦芽は、麦を発芽させることにより得ることができる。麦としては、例えば、大麦、小麦、ライ麦、カラス麦、オート麦、ハト麦、エン麦等であってよく、大麦であることが好ましい。麦芽にはモルトエキスが含まれる。
【0031】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料として麦芽以外の麦原料を含んでいてよい。麦芽以外の麦原料としては、例えば、大麦、小麦、ライ麦、カラス麦、オート麦、ハト麦、エン麦等の麦;麦エキス等の麦加工物が挙げられる。麦エキスは、麦から糖分及び窒素分を含む麦エキスを抽出することにより得られる。麦芽以外の麦原料としては、1種を単独で使用してもよく、複数種を併用してもよい。
【0032】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料として麦原料以外の植物原料を含んでもよい。言い換えれば、当該ビールテイスト飲料は、原料として、植物原料を使用したものであってよい。麦原料以外の植物原料としては、例えば、とうもろこし、米類、コウリャン等の穀類;馬鈴薯、サツマイモ等のイモ類;大豆、エンドウ等の豆類等が挙げられる。麦原料以外の植物原料としては、1種を単独で使用してもよく、複数種を併用してもよい。本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料としてスターチ、グリッツ等の澱粉原料を含んでいてもよい。本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料として、大豆、エンドウ及びとうもろこしからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、原料として、大豆及びエンドウからなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料として、上記植物原料に由来するタンパク質(例えば、エンドウタンパク)を含んでいてよい。
【0033】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料として糖類(糖質原料)を含んでいてもよい。糖類(糖質原料)としては、平成11年6月25日付けの酒税法及び酒類行政関係法令等解釈通達第3条において規定される「糖類」であれば特に制限されない。糖類は、単糖類、二糖類、三糖類又はこれらの組み合わせであってよく、四糖以上の糖類を更に含んでいてもよい。単糖類としては、例えば、ブドウ糖、果糖、ガラクトース、キシロース、アラビノース、タガトース等が挙げられる。二糖類としては、例えば、ショ糖、ラクトース、麦芽糖、イソマルトース、トレハロース、セロビオース等が挙げられる。三糖類としては、例えば、マルトトリオース、イソマルトトリオース、ラフィノース等が挙げられる。四糖以上の糖類としては、例えば、スタキオース、マルトテトラオース等が挙げられる。糖類の形態は、例えば、粉末状、顆粒状、ペースト状、液状等であってよい。液状の糖類としては、例えば、ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖、高果糖液糖、砂糖混合異性化液糖等の液糖であってもよい。糖類はグラニュー糖又は上白糖であってもよい。
【0034】
本実施形態に係るビールテイスト飲料の糖質含有量は、0.5g/100ml未満であってよい。本明細書における糖質とは、食品の栄養表示基準(平成15年厚生労働省告示第176号)に基づく糖質をいう。具体的には、糖質は、食品から、タンパク質、脂質、食物繊維、灰分、水分及びアルコール分を除いたものをいう。また、食品中の糖質の量は、当該食品の重量から、タンパク質、脂質、食物繊維、灰分、水分及びアルコール分の量を控除することにより算定される。タンパク質、脂質、灰分、水分の量は、栄養表示基準に掲げる方法により測定する。アルコール分の量は、水分量とともに測定することができる。具体的には、タンパク質の量は改良デュマ法による全窒素(タンパク質)の定量法で測定し、脂質の量はエーテル抽出法、クロロホルム・メタノール混液抽出法、ゲルベル法、酸分解法又はレーゼゴットリーブ法で測定し、灰分の量は酢酸マグネシウム添加灰化法、直接灰化法又は硫酸添加灰化法で測定し、水分及びアルコール分の量はカールフィッシャー法、乾燥助剤法、減圧加熱乾燥法、常圧加熱乾燥法又はプラスチックフィルム法で測定する。
【0035】
本実施形態に係るビールテイスト飲料の糖質含有量は、0.4g/100ml未満、0.3g/100ml未満、0.2g/100ml未満、又は、0.1g/100ml未満であってもよい。本実施形態に係るビールテイスト飲料の糖質含有量は0.1g/100ml以上、0.2g/100ml以上、又は、0.3g/100ml以上であってもよい。糖質含有量が上記範囲内であると、香味がより良好なものとなる。ビールテイスト飲料の糖質含有量は、公知の方法によって調整することができ、例えば、製造工程における酵素(特に多糖分解酵素)の添加量、原料の種類及び使用量等を調整することによって所望の程度に低減することができる。
【0036】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、食物繊維を含んでいてもよい。本実施形態に係るビールテイスト飲料の食物繊維含有量は、例えば、0.5g/100ml以上、1.0g/100ml以上、又は1.5g/100ml以上であってもよく、3.0g/100ml以下、2.0g/100ml以下、1.5g/100ml以下、又は1.0g/100ml以下であってもよい。食物繊維含有量が上記範囲であると、味の厚みがより良好なものとなる。食物繊維含有量は、高速液体クロマトグラフ法又はプロスキー法で測定することができる。食物繊維含有量は、原料の種類、使用量等によって調整することができる。
【0037】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、植物原料由来の食物繊維のほか、原料として別途用いた食物繊維を含んでいてもよい。このような食物繊維としては、例えば難消化性デキストリン、ポリデキストロース、難消化性グルカンが挙げられる。
【0038】
本実施形態に係るビールテイスト飲料のエキス分は、0.5w/v%以上、1.0w/v%以上、若しくは、1.5w/v%以上、2.0w/v%以上、又は、4.0w/v%以下、3.0w/v%以下、若しくは、2.5w/v%以下であってよい。エキス分が上記範囲であると、ビールテイスト飲料の味の厚みがより良好なものとなる。本明細書においてエキス分とは、糖分(炭水化物)、タンパク質、アミノ酸、苦味質、不揮発性有機酸、ミネラル、ポリフェノール、色素成分等からなる不揮発性固形分をいう。エキス分は、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集、2013年増補改訂)の「8.4 真正(性)エキス」に記載の方法によって測定することができる。エキス分は、原料の種類及び使用量等によって調整することができる。本実施形態に係るビールテイスト飲料においては、酵母エキス特有の香りをビールテイスト飲料に持ち込まない観点から、原料として酵母エキスを用いないことが好ましい。
【0039】
本実施形態に係るビールテイスト飲料の苦味価は、5.0以上、又は10以上であってもよい。また、上記ビールテイスト飲料の苦味価は、30以下、又は20以下であってもよい。苦味価は、例えば改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集、2013年増補改訂)の「8.15 苦味価」に記載されている方法によって測定することができる。苦味価は、原料の種類及び使用量、ホップ(乾燥ホップ、ホップペレット、ホップエキス等)の種類及び使用量等によって調整することができる。
【0040】
本実施形態に係るビールテイスト飲料の総ポリフェノール量は100mg/L以下であってよい。ポリフェノールとしては、例えば、レスベラトロール、フラボノール、イソフラボン、タンニン、カテキン、ケルセチン、アントシアニンが挙げられる。本明細書において総ポリフェノール量とは、ビールテイスト飲料に含まれるこれらポリフェノールの総量をいう。総ポリフェノール量は、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集、2013年増補改訂)の「8.19 総ポリフェノール」に記載の方法によって測定することができる。
【0041】
本実施形態に係るビールテイスト飲料の総ポリフェノール量は、酸味のキレ及び甘味のキレがより優れ、口に入れた瞬間に感じる雑味がより弱くなるという観点から、100mg/L以下、84mg/L以下、82mg/L以下、81mg/L以下、50mg/L以下、又は44mg/L以下であってよい。総ポリフェノール量は、10mg/L以上、20mg/L以上、30mg/L以上、又は、40mg/L以上であってもよい。総ポリフェノール量は、原料(例えば、麦芽)の種類及び使用量、ホップ(乾燥ホップ、ホップペレット、ホップエキス等)の種類及び使用量、後述の活性炭処理等によって調整することができる。また、総ポリフェノール量は、例えば、製造工程においてレスベラトロール、赤ワインエキス等を添加する方法によって調整してもよい。総ポリフェノール量が上記範囲である場合、例えば、原料中の麦芽の比率を抑えつつ、ポリフェノールの有する健康機能を発揮すると共に、味の厚みも良好なものとなる。
【0042】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、pHが4.2以下、4.0以下、又は、3.7以下であってよく、3.0以上、3.5以上、3.8以上、又は3.9以上であってよい。pHが上記範囲であると、ビールテイスト飲料の酸味の強度がより強く、酸味のキレ及び甘味のキレがより優れたものとなる。pHは、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集、2013年増補改訂)の「8.7 pH」に記載の方法によって測定することができる。pHは、原料の種類及び使用量、添加する酸味料の種類及び使用量等によって調節することができる。
【0043】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、酸味料を更に含んでいてもよい。酸味料としては例えば、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、リン酸、乳酸ナトリウムが挙げられる。
【0044】
本実施形態に係るビールテイスト飲料のカロリーは、20kcal/100ml以下、15kcal/100ml以下、10kcal/100ml以下、又は、5kcal/100ml以下であってよく、1kcal/100ml以上、3kcal/100ml以上、5kcal/100ml以上、又は、10kcal/100ml以上であってもよい。カロリーが上記範囲であると、香味のスッキリさとドリンカビリティの両方がより良好なものとなる。
【0045】
ビールテイスト飲料は、発酵飲料(ビールテイスト発酵飲料)であってよい。ここで、発酵飲料(ビールテイスト発酵飲料)は、酵母等による発酵工程を経て製造されたビールテイスト飲料である。
【0046】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、飲料に通常配合される酸化防止剤、香料、塩類等の添加剤を含んでいてもよい。
【0047】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、容器に入れて提供することができる。容器は密閉できるものであればよく、金属製(アルミニウム製又はスチール製など)のいわゆる缶容器・樽容器を適用することができる。また、容器は、ガラス容器、ペットボトル容器、紙容器、パウチ容器等を適用することもできる。容器の容量は特に限定されるものではなく、現在流通しているどのようなものも適用することができる。なお、気体、水分及び光線を完全に遮断し、長期間常温で安定した品質を保つことが可能な点から、金属製の容器を適用することが好ましい。
【0048】
本実施形態に係るビールテイスト飲料の製造方法は、麦芽の比率が1.5質量%以下である原料を用い、ビールテイスト飲料のプリン体が0.5mg/100未満となるように調整することを含む。
【0049】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、例えば、原料、水、及び必要に応じて各種添加剤(酵素等)を混合して原料を糖化し、糖化液を濾過して得られた液に、必要に応じて、ホップの添加、煮沸、冷却等を行って発酵前液を得る仕込工程、発酵前液にビール酵母を添加して発酵させる発酵工程を経ることで製造することができる。
【0050】
発酵工程後の発酵後工程として、発酵工程で得られた発酵後液を貯酒して貯酒液を得る工程(貯酒工程)、発酵後液又は貯酒液を濾過する工程(濾過工程)を行ってもよい。当該ビールテイスト飲料の製造方法では、必要に応じて、製造工程において、加熱(殺菌)、蒸留アルコールの添加、希釈、カーボネーション等を行ってもよい。
【0051】
本実施形態に係るノンアルコールビールテイスト飲料の製造方法は、上記発酵工程を含まなくてもよい。当該ノンアルコールビールテイスト飲料の製造方法は、発酵工程において、発酵期間を短くしてアルコールの生成を抑制することを含んでもよく、発酵工程で得られた発酵後液を蒸留又は希釈することによりアルコールを除去又は低減させることを含んでもよい。当該ノンアルコールビールテイスト飲料の製造方法は、製造工程において更に濾過、加熱(殺菌)、カーボネーション等を行う工程を含んでもよい。
【0052】
仕込工程で添加するホップとしては、例えば、乾燥ホップ、ホップペレット、ホップエキスを用いることができる。ホップは、ローホップ、ヘキサホップ、テトラホップ、イソ化ホップエキス等のホップ加工品であってもよい。
【0053】
発酵後工程で添加する蒸留アルコールとしては、例えば、スピリッツ(例えば、大麦スピリッツ)を用いることができる。蒸留アルコールの添加量は、発酵後液の総量に対して1v/v%未満、0.5v/v%未満、0.1v/v%未満、又は0.05v/v%未満であってよい。発酵後工程では、蒸留アルコールを添加しなくてもよい。
【0054】
ビールテイスト飲料のプリン体含有量の調整は、例えば、仕込工程後の溶液に対して、活性炭を添加して活性炭処理を行うこと(活性炭処理工程)により実施することができる。
【0055】
活性炭処理工程で使用する活性炭の平均細孔直径、原料、平均粒径、比表面積等はビールテイスト飲料の製造に使用する原料の種類等に応じて適宜選択するものであってよいが、例えば、後述するものであってよい。
【0056】
活性炭の平均細孔直径は、4.5nm以下、3.6nm以下、3.0nm以下、2.8nm以下、2.4nm以下、又は2.0nm以下であってもよく、1.0nm以上、1.2nm以上、1.5nm以上、又は1.8nm以上であってもよい。上記活性炭の平均細孔直径は、好ましくは1.0nm以上3.6nm以下であり、より好ましくは1.0nm以上2.0nm以下である。
【0057】
平均細孔直径は、具体的には、BET法により測定される比表面積(A)及び全細孔容積(V)から下記式(1)に基づいて算出される。
平均細孔直径=4×[細孔容積(V)]/[比表面積(A)] (1)
【0058】
活性炭の原料(活性炭原料)は、例えば、やし(やし殻)、木質(木材)等が挙げられる。上記活性炭は、好ましくはやしに由来するものである。
【0059】
活性炭の細孔容積は、好ましくは1.5ml/g以上2.2ml/g以下である。活性炭の細孔容積は、1.6ml/g以上、1.7ml/g以上、又は1.8ml/g以上であってもよく、3.6ml/g以下、2.8ml/g以下、2.2ml/g以下、又は1.9ml/g以下であってもよい。
【0060】
活性炭の平均粒径は好ましくは40μm以上70μm以下である。上記活性炭の平均粒径は、70μm以下、又は60μm以下であってもよい。なお、平均粒径は「JIS K 1474:2014 活性炭試験方法 7.5 有効径,均等係数及び平均粒径」に準拠して測定することができる。
【0061】
活性炭の比表面積は、好ましくは1700m/g未満である。活性炭の比表面積は、1000m/g以上、又は1100m/g以上であってもよい。
【0062】
活性炭の添加量は、使用する原料の種類及び最終製品に求められる品質特性等に応じて適宜調節することができる。本実施形態に係る製造方法は、上記活性炭の添加量が、仕込工程以降の溶液に対して、100ppm以上2000ppm以下であってよく、300ppm以上700ppm以下であることが好ましい。上記活性炭の添加量は、仕込工程以降の溶液に対して、100ppm以上、200ppm以上、又は300ppm以上であってもよい。また、上記活性炭の添加量は、仕込工程以降の溶液に対して、2000ppm以下、1000ppm以下、900ppm以下、800ppm以下、又は700ppm以下であってもよい。ここで、「ppm」とは、10-4w/v%を意味する。
【0063】
また、接触時間及び接触温度等の活性炭処理の条件は、使用する原料の種類及び最終製品に求められる品質特性に応じて適宜決定することができる。活性炭処理における接触時間は、例えば1~5時間であってもよく、1~3時間であってもよい。また、活性炭処理における接触温度は、例えば5~20℃であってもよく、5~15℃であってもよい。
【0064】
活性炭処理は、仕込工程後の溶液に対して行うものであってよい。当該製造方法が発酵工程を備える場合、活性炭処理は、仕込工程後かつ発酵工程前の溶液(発酵前液)、発酵工程中の溶液(発酵液)、発酵工程後かつ貯酒工程前の溶液(発酵後液)、貯酒工程中の溶液(貯酒液)、貯酒工程後かつ濾過工程前の溶液(貯酒後液)、又は濾過工程中の溶液(濾過前液)に対して行ってもよい。
【0065】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、穀物臭が低減されるという効果を奏する。したがって、本発明の一実施形態として、麦芽の比率が1.5質量%以下である原料を用い、ビールテイスト飲料のプリン体が0.5mg/100未満となるように調整することを含むビールテイスト飲料の穀物臭を低減する方法が提供される。
【実施例
【0066】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。
【0067】
[試験例1:麦芽比率及びプリン体含有量による効果]
表1に示す比率(原料中の比率)の麦芽、水、エンドウタンパクを仕込槽に投入し、常法に従って糖化液を製造した。得られた糖化液を濾過して得た液にホップを添加して煮沸し、沈殿物を分離、除去した後、冷却した。得られた発酵前液にビール酵母を添加し、所定期間発酵させた。得られた発酵後液を所定期間貯酒してから、貯酒液に活性炭を添加して活性炭処理を行った。その後、遠心分離により活性炭を除去し、実施例1及び2のビールテイスト飲料(アルコール度数2.5v/v%)を得た。
【0068】
常法により、活性炭処理は行わず、試験用ビールテイスト飲料を調製し、当該試験用ビールテイスト飲料と、実施例2のビールテイスト飲料とを混合して、原料中の麦芽の比率が表1に示すとおりである、比較例1のビールテイスト飲料(アルコール度数2.6v/v%)を得た。
【0069】
実施例1~2及び比較例1のビールテイスト飲料について、プリン体含有量、糖質含有量、pH及び総ポリフェノール量を測定した。結果を表1に示す。
【0070】
得られたビールテイスト飲料について、訓練された2名のパネルにより官能評価を行った。官能評価は、穀物臭、酸味の強度、酸味のキレ、口に入れた瞬間に感じる雑味、及び甘味のキレについて、それぞれ1~7の7段階で行い、その平均値を評価スコアとした。官能評価では、実施例2を評価基準として用いた。具体的には、実施例2のビールテイスト飲料を、各評価項目の評点が4点(穀物臭、酸味のキレ及び口に入れた瞬間の雑味)、又は6点(酸味の強度及び甘味のキレ)となるようにした。結果を表1に示す。
【0071】
穀物臭の評価項目では、数値が低いほど、穀物臭が弱く、好ましく感じられることを示す。酸味の強度の項目では、数値が高いほど、酸味の強度が強く好ましく感じられることを示す。酸味のキレの評価項目では、数値が高いほど酸味のキレに優れていることを示す。口に入れた瞬間に感じる雑味の評価項目では、数値が低いほど弱く、好ましく感じられることを示す。甘味のキレの評価項目では、数値が高いほど、甘味のキレに優れていることを示す。
【0072】
【表1】
【0073】
プリン体含有量が、0.5mg/100ml未満であり、原料中の麦芽比率が1.5質量%以下である、実施例1~2のビールテイスト飲料は、穀物臭が低減されていた(実施例1~2と比較例1との比較)。原料中の麦芽の比率及びプリン体含有量が低くなるにつれて、穀物臭がより低減し、更に、酸味の強度、酸味のキレ、及び甘味のキレがより強くなり、口に入れた瞬間に感じる雑味がより弱くなった。
【0074】
[試験例2:pHによる効果]
実施例2のビールテイスト飲料に、乳酸ナトリウムを表2に示すpHとなるように添加し、実施例3~4のビールテイスト飲料を調製した。得られたビールテイスト飲料について、プリン体含有量、糖質含有量、pH及び総ポリフェノール量を測定し、試験例1と同様にして、官能評価を行った。結果を表2に示す。
【0075】
【表2】
【0076】
pHが低くなるにつれて、穀物臭及び口に入れた瞬間に感じる雑味が維持されながら、酸味の強度がより強く、酸味のキレ及び甘味のキレに優れることが示された。
【0077】
[試験例3:総ポリフェノール量による効果]
実施例2のビールテイスト飲料にレスベラトロールを、総ポリフェノール量が表3に示す含有量となるように添加して、実施例5及び6のビールテイスト飲料を調製した。得られたビールテイスト飲料について、プリン体含有量、糖質含有量、pH及び総ポリフェノール量を測定し、試験例1と同様にして、官能評価を行った。結果を表3に示す。
【0078】
【表3】
【0079】
総ポリフェノール量が低くなるにつれて、酸味のキレ及び甘味のキレがより優れたものとなり、口にいれた瞬間に感じる雑味がより低減されたものとなることが示された。