(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-27
(45)【発行日】2023-01-11
(54)【発明の名称】包装用容器
(51)【国際特許分類】
B65D 81/34 20060101AFI20221228BHJP
【FI】
B65D81/34 U
(21)【出願番号】P 2018094565
(22)【出願日】2018-05-16
【審査請求日】2021-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【氏名又は名称】中塚 岳
(74)【代理人】
【識別番号】100133307
【氏名又は名称】西本 博之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 稜
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3028400(JP,U)
【文献】特開2007-191161(JP,A)
【文献】登録実用新案第3138601(JP,U)
【文献】特開2015-131649(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体と、該容器本体に嵌合させて容器本体開口部を塞ぐ蓋とから構成され、該蓋には穿孔部と非穿孔部が交互に連続したミシン目状の破断部を設け、該破断部を破断させることで、蒸気抜け用開口部が形成され、
前記蓋の穿孔部とこれに隣接する穿孔部との距離が0.10~0.25mmであり、
前記蓋の厚さは0.1~1.0mmであ
り、
前記穿孔部は、楕円形または外側に膨らんだ連続した曲線で囲まれた略楕円形状であり、前記楕円形または前記略楕円形状の短径は0.70mm以下である、包装用容器。
【請求項2】
前記破断部の端点に裂延阻止部を設けた請求項1に記載の包装用容器。
【請求項3】
前記破断部は半円端伸長形であり、
前記破断部の両方の端点にそれぞれ前記裂延阻止部が設けられており、
前記裂延阻止部は、途中で前記破断部の端点に交わる直線状である請求項2に記載の包装用容器。
【請求項4】
前記裂延阻止部の一部は、前記破断部の両方の前記端点の間に形成されている、請求項3に記載の包装用容器。
【請求項5】
前記裂延阻止部がハーフカット線で形成された請求項2~4のいずれか一項に記載の包装用容器。
【請求項6】
前記破断部が、X字形、H字形、円弧形または半円端伸長形である請求項1または2に記載の包装用容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気抜け用開口部を形成可能な包装用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
加工食品の中には、包装用容器に収容されて、スーパーやコンビニエンスストアといった店舗で常温もしくはそれ以下の温度で販売され、電子レンジで加熱調理して食するものが数多くある。
【0003】
加工食品を包装用容器に収容したまま電子レンジで加熱した場合、加工食品から発生する蒸気により包装用容器の内圧が上昇して、包装用容器の蓋が本体から離脱したり、包装用容器自体が破損して、加工食品が外部に流出したり、電子レンジの破損を招く恐れがある。
【0004】
前記問題を解決するため、電子レンジでの加熱調理を想定した包装用容器は、一般的に、蒸気を容器外部に排出するための蒸気抜け用開口部を有している(例えば、特許文献1参照)。
しかし、前記蒸気抜け用開口部があることで、包装用容器が開放状態となるため、輸送中や店舗での販売時に異物が混入する恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明では、包装用容器内の加工食品を加熱する前には異物の混入を阻止でき、容易に加熱直前または加熱時に蒸気抜け用開口部を形成でき、加熱時に食品などから発生する蒸気を包装用容器の外部に排出できる包装用容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の包装用容器は、以下の構成を有するものである。
(1)容器本体と、該容器本体に嵌合させて容器本体開口部を塞ぐ蓋とから構成され、該蓋には穿孔部と非穿孔部が交互に連続したミシン目状の破断部を設け、該破断部を破断させることで、蒸気抜け用開口部が形成される包装用容器。
(2)前記破断部の端点に裂延阻止部を設けた(1)に記載の包装用容器。
(3)前記蓋の穿孔部とこれに隣接する穿孔部との距離が0.10~0.30mmである(1)又は(2)に記載の包装用容器。
(4)前記蓋の厚さが0.2~0.3mmである(1)~(3)のいずれかに記載の包装用容器。
(5)前記裂延阻止部がハーフカット線で形成された(2)~(4)のいずれかに記載の包装用容器。
(6)前記破断部が、X字形、H字形、円弧形または半円端伸長形である(1)~(5)のいずれかに記載の包装用容器。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、包装用容器内の食品を加熱する前には異物の混入を阻止でき、容易に加熱直前または加熱時に蒸気抜け用開口部を形成できる。また、加熱時に食品などから発生する蒸気を包装用容器の外部に排出できる包装用容器が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態について以下に説明する。但し、本発明の実施形態は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0011】
(容器の基本構成)
図1に示すとおり、本発明に係る包装用容器は、容器本体100と、該容器本体100に嵌合させて容器本体開口部を塞ぐ蓋200とから構成される。該蓋200には、加熱時に内容物から発生する蒸気を排出するための蒸気抜け用開口部311を形成するため、ミシン目状の破断部310が設けられている。また、前記容器本体100と前記蓋200は、別体であっても、一体に成型され或いは連結手段を用いて連結されていてもよい。
【0012】
(破断部の位置、数)
破断部310は、
図1では蓋200の天面201の中央に設けてあるが、蓋200の側面など、天面201以外の場所に設けてもよく、また、蓋200ではなく、容器本体100に設けてもよい。また、破断部310は、
図4の(A)に示すように2カ所以上設けてもよく、
図4の(B)に示すように異なる形状を組み合わせてもよい。
【0013】
(破断部と蒸気抜け用開口部)
破断部310は、加熱調理の直前に、容器内側に向かって押し込んだり、容器外側に向かって引き上げたり、加熱調理時に発生した容器内部の蒸気圧によって開口して、蒸気抜け用開口部311となる。
図1の(B)は、加熱調理の直前に、手の指等で
図2におけるミシン目状の破断部310内側の押込み部315を容器内側に押し込むことにより、蒸気抜け用開口部311を形成した例である。
【0014】
(破断部の構成等)
破断部310は、
図2に示すとおり、穿孔部312と非穿孔部313が交互に連続した、ミシン目状に構成される。
図2に示す破断部310を形成する穿孔部312の数は問わない。異物が混入しない範囲であればその大きさや形状も問わないが、短径が0.70mm以下の楕円形であることが好ましく、短径が0.60mm以下の楕円形がより好ましい。0.70mmを越えると、虫や異物が穿孔部を通過して包装用容器の内部に侵入する恐れがある。ここで、楕円形とは、2定点からの距離の和が一定となる点からなる形状であるが、本発明では、前記楕円形の定義の形状に厳密に限定されるわけではなく、外側に膨らんだ連続した曲線で囲まれた略楕円形状でもよい。
また、穿孔部312は、直径0.70mm以下の孔としてもよいし、異なる大きさの孔や異なる形状の孔の組合せであってもよい。前記穿孔部とこれに隣接する穿孔部との距離は、0.1~0.25mm以下が好ましい。0.1mmを下回ると、生産的に穿孔部とこれに隣接する穿孔部が繋がってしまう可能性があり、0.25mmを超えると蒸気抜け用開口部を形成する際に過大な力が必要になり、蓋200が変形したり、破損する恐れがある。
【0015】
破断部310の形状は、
図1及び
図2に示す半円端伸長型破断部310Aの他に、例えば、
図3の(A)のX字形破断部310a、
図3の(B)のH字形破断部310b、
図3の(C)の渦状破断部310c、
図3の(D)の平行線形破断部310d、
図3の(E)の矢印形破断部310e、
図3の(F)の円弧形破断部310f、
図3の(G)の円状破断部310g等が挙げられる。
破断部310の形状は、破断部を形成する位置の状態、加熱する食品の種類や破断部310を破断する方法、破断部310自体の意匠性、包装用容器自体の形状など、様々な要素を総合的に加味して決定すればよく、これらの形状に限定されるものではないが、半円端伸長形が、破断容易であるため好ましい。
【0016】
(穿孔部の形状)
穿孔部312を形成するには、特に限定するものではないが、レーザーを使用した穿孔、針を刺すことによる穿孔、刃を使用した裁断、熱加工による溶融などの方法を用いればよい。これらの中でも、レーザーを使用して穿孔すれば、孔形状や穿孔位置を容易に設定可能であり、バリが発生しないため好ましい。
【0017】
(穿孔方法)
レーザー法には、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、半導体レーザー、アルゴンレーザー等の各種レーザーがある。これらの内でも、波長領域9~11μmの炭酸ガスレーザーを用いることが好ましい。炭酸ガスレーザーの照射出力は、特に限定するものではないが、10~100Wとすることが好ましい。炭酸ガスレーザーの照射出力をこの範囲に調整すると、効率よく所望の径の孔を蓋に穿孔することができる。
【0018】
また、レーザーの移送速度については、樹脂表面に5~30000mm/sの移送速度で照射光線を動作することで行われるものであれば、穿孔を円滑に形成することができる。レーザー光の移動速度をこの範囲に調整すると、効率よく所望の径の孔を蓋に穿孔することができる。
【0019】
(裂延阻止部)
破断部310の端点314には、
図2に示すように、ハーフカット線で形成した裂延阻止部400を付与してもよい。裂延阻止部400とは、破断部310を破断させたときに、破断部310の延長線上を不必要に切り裂くことを防ぐためのものである。裂延阻止部400は、ハーフカット線ではなく、貫通していてもよく、その大きさ、形状及び破断部に対する設置角度は、特に限定するものではない。ここで、ハーフカット線とは、蓋、本体の厚さよりも浅い切込み深さの溝をいう。
【0020】
(蓋の素材)
本発明の容器における蓋200は、強度・透明性・耐熱性・加工性、経済性等の点でバランスのとれた素材であるという観点から、ポリスチレンを主成分とした合成樹脂シートを成型加工したものが好ましい。ここで、主成分とは50質量%以上含有することをいう。合成樹脂は、スチレンの他、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸から選ばれる少なくとも一種のモノマーとの共重合体であってもよい。特に延伸加工したシートは剛性が高いため容器の蓋に適している。を使用すると良い。延伸した合成樹脂シートを用いる場合は、その厚さを0.1~1.0mmとすると、蒸気抜け用開口部311を形成しやすく、かつ、不必要に破断部310が開口することがないため好ましい。特に、0.2~0.5mmのシートが強度及び経済性の点からより好ましい。
【0021】
(蓋の成形方法)
蓋200の成型方法としては、熱盤成型や真空圧空成型が一般的であるが、射出成型などでもよく、これらに限定するものではない。
【0022】
(加熱調理方法)
容器内に入った食品を加熱調理する方法としては、電子レンジを用いる方法が一般的であるが、湯煎やスチーム加熱等でも良く、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0023】
以下に実施例及び比較例を示して、本発明の具体的な実施態様をより詳細に説明するが、本発明は、この実施例のみに限定されるものではない。
<実施例1>
【0024】
蒸気抜け用開口部311を形成する際に、押し込み部315に加えた力により容器が破損する限界を確認するため、蓋材として一般的に使用されているシート中で最薄である厚み0.20mmのものを使用して蓋200を作成した。具体的には、二軸延伸ポリスチレンシート(デンカサーモシート高耐熱BOPS(R反))を熱盤成形して、蓋200を得て、その天面201に、
図2に示す半円端伸長型破断部310Aを形成した。半円端伸長型破断部310Aは、直径15mmの半円の両端部のそれぞれから、接線方向に17.5mmの直線を設けた形状をしており、半円端伸長型破断部310Aの端点314には、半円端伸長型破断部310Aと中点で垂直に交わる長さ10mmのハーフカット線からなる裂延阻止部400を設けた。また、半円端伸長型破断部310Aは、炭酸ガスレーザー装置を使用して、長径1mm、短径0.5mmの楕円孔からなる穿孔部312を穿孔して形成した。隣接する穿孔部間の距離を0.20mmとし、下記に示す評価を行った結果を表1に示す。
【0025】
<実施例2~
3、比較例1
、2>
厚み0.20mmのシートを使用して、実施例1と同様の蓋を成型し、穿孔部312を形成し、隣接する穿孔部間の距離を0.10mmとしたものを実施例2とした。厚み0.25mmのシートを使用して、実施例1と同様の蓋を成型し、穿孔部312を形成し、隣接する穿孔部間の距離を0.25mmとしたものを実施例3とした。厚み0.20mmのシートを使用して、実施例1と同様の蓋を成型し、穿孔部312を形成し、隣接する穿孔部間の距離を0.30mmとしたものを
比較例2とした。厚み0.20mmのシートを使用して、実施例1と同様の蓋を成型し、
図5に示すような穿孔部312が連続したU字形切込みによる蒸気抜け用開口部を形成したものを比較例1とした。
実施例2~
3及び比較例1
、2について、実施例1と同様に評価結果を表1に示す。
【0026】
【0027】
[評価]
実施例及び比較例で得られた蓋について、以下の評価を行った。
【0028】
<破断試験>
破断試験は、押し込み部315を指で押した際に、ミシン目状の破断部310が容易に破断して蒸気抜け用開口部311を形成できたものを○、蒸気抜け用開口部が容易に形成できずに蓋が変形又は破損したものを△と評価した。
<虫の侵入試験>
虫の侵入試験には、食品容器内に侵入する可能性のある日本に生息する最小サイズの虫とされるショウジョウバエを使用した。
図1に記載した形状で、容器本体に蓋体を嵌合したものを用いた。容器本体の中にショウジョウバエの好む匂いを発するとされる納豆を誘導剤として入れた。25℃に維持された室内で、密封された樹脂製アズワン社デシケータ内に放置し、ショウジョウバエ100匹をデシケータ内に放置した。24時間後、ショウジョウバエの容器内への侵入の有無で評価した。1匹以上侵入した場合、有と評価した。
【0029】
[考察]
前記評価に基づいて、以下の考察を行った。
【0030】
<破断の容易性>
本発明の蓋は、穿孔部と非穿孔部が交互に連続したミシン目状の破断部を設けることにより、破断部を容易に破断して蒸気抜け用開口部を形成できることを確認した。その際、蓋材の厚みが0.2mm以上あれば、実施例1~2に示すとおり、隣接する穿孔部間の距離が0.20mm以下とすることによって、蓋が破損することなく破断部を容易に破断できることを確認した。また、蓋材の厚みを増せば、実施例3に示すとおり、隣接する穿孔部間の距離が0.20mm以上であっても、蓋が破損することなく破断部を容易に破断できることを確認した。一方、
比較例2では、蓋材の厚みが0.2mm以上であるが、隣接する穿孔部間の距離が0.25mmを超えるため、破断部が容易には破断しなかった。
<虫の侵入>
実施例1~3
、及び比較例2の蓋では虫の侵入がないことを確認した。一方、
図5に示すような比較例1のU字形切込みによる蒸気抜け用開口部では、U字形切込みが浮き上がって隙間ができ、虫が侵入した。
【符号の説明】
【0031】
100 容器本体
200 蓋
201 天面
310 破断部
310A 半円端伸長型破断部
311 蒸気抜け用開口部
312 穿孔部
313 非穿孔部
314 端点
315 押し込み部
400 裂延阻止部