(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-27
(45)【発行日】2023-01-11
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
F02D 45/00 20060101AFI20221228BHJP
E02F 9/20 20060101ALI20221228BHJP
E02F 9/26 20060101ALI20221228BHJP
F02D 29/00 20060101ALI20221228BHJP
【FI】
F02D45/00
E02F9/20 M
E02F9/26 B
F02D29/00 B
(21)【出願番号】P 2018114936
(22)【出願日】2018-06-15
【審査請求日】2020-11-06
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】久保 駿平
(72)【発明者】
【氏名】大野 孝之
(72)【発明者】
【氏名】神田 佳
(72)【発明者】
【氏名】生井 伸夫
【審査官】戸田 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-140688(JP,A)
【文献】特開2012-091751(JP,A)
【文献】特開平10-159604(JP,A)
【文献】特開平09-032596(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 45/00
E02F 9/20
E02F 9/26
F02D 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行体、前記走行体の上部に設けた旋回体、前記旋回体に設けた作業機、前記旋回体に設けた運転席、アクチュエータを駆動する圧油を吐出する油圧ポンプ、前記油圧ポンプを駆動する原動機、前記原動機を制御する制御装置、オペレータに伝達される振動を検出する振動検出器を備えた作業機械において、
前記制御装置は、
累積振動暴露量について設定した上限値を記憶した上限暴露量記憶部と、
前記振動検出器の検出値と前記原動機の回転数の相関マップを記憶した相関マップ記憶部と、
前記振動検出器の検出値を基にオペレータの現時点までの振動暴露量の累積値である累積振動暴露量を演算する暴露量演算部と、
前記暴露量演算部で演算された現時点までの前記累積振動暴露量を基にその後の規定時間経過時の予想累積振動暴露量を演算する暴露量予想部と、
前記暴露量予想部で演算された予想累積振動暴露量と前記上限値とを比較する上限値比較部と、
前記上限値比較部で前記規定時間経過時の前記予想累積振動暴露量が前記上限値を超えていると判定された場合、前記規定時間経過時の前記予想累積振動暴露量が減少するように前記相関マップに応じて現時点の前記原動機の目標回転数を補正する回転数制御部とを備え
、
前記制御装置は、前記暴露量演算部により前記振動検出器の検出値を基に現時点までの前記累積振動暴露量を演算し、前記暴露量予想部により前記累積振動暴露量を基に前記規定時間経過時の前記予想累積振動暴露量を演算し、前記上限値比較部により前記規定時間経過時の前記予想累積振動暴露量と前記上限値とを比較し、前記回転数制御部により、前記上限値比較部で前記規定時間経過時の前記予想累積振動暴露量が前記上限値を超えていると判定された場合、前記規定時間経過時の前記予想累積振動暴露量が減少するように前記相関マップに応じて現時点の前記原動機の前記目標回転数を補正する処理を、前記原動機が稼働して電源が投入されている間、繰り返し実行することを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械において、前記制御装置は、前記運転席の周囲に配置したモニタに前記予想累積振動暴露量と前記上限値を表示出力する表示部を備えていることを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項1に記載の作業機械において、
前記相関マップには
、前記振動検出器の検出値との関係で前記原動機の回転数について
前記原動機の振動が前記運転席を備えた運転室と共振を起こす回転数範囲として設定した制限範囲が設定されており、
前記回転数制御部は、前記上限値比較部で前記予想累積振動暴露量が前記上限値を超えていると判定された場合、前記目標回転数が前記
制限範囲内の値であるときに前記
制限範囲から外れるように前記目標回転数を補正する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項4】
請求項3に記載の作業機械において、
累積振動暴露量について前記上限値よりも低く設定した中間値を記憶した中間暴露量記憶部と、
前記振動検出器の検出値との関係で前記原動機の回転数について前記
制限範囲内で
前記制限範囲よりも狭く設定した
中間範囲を記憶した
中間範囲記憶部と、
前記上限値比較部で前記予想累積振動暴露量が前記上限値以下であると判定された場合、前記予想累積振動暴露量と前記中間値とを比較する中間値比較部とを備えており、
前記回転数制御部は、前記中間値比較部で前記予想累積振動暴露量が前記中間値を超えていると判定された場合、前記目標回転数が前記
中間範囲内の値であるときに、前記
中間範囲から外れるように前記目標回転数を補正することを特徴とする作業機械。
【請求項5】
請求項1に記載の作業機械において、前記目標回転数を補正する際に前記回転数制御部が前記目標回転数を上昇方向に補正するか低下方向に補正するかを選択設定する選択装置を備えていることを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油圧ショベル等の作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えばEC指令2002/44/ECに規定されているように、作業機械の運転中におけるオペレータの振動暴露量を管理する必要がある。オペレータの振動暴露量の計測器としては、ISO10326-1、ISO5008、ISO7096等に記載されている座席用の振動検出器、ISO2630-1に準拠した携帯型振動検出装置等が知られている。また、特許文献1に記載されているようにオペレータの累積振動暴露量を評価して推定作業可能時間を報知する作業機械が知られている。同文献に記載された作業機械では、推定作業可能時間が0以下になった場合に作業用アクチュエータの作動が禁止される。作業機械のエンジン由来の振動や走行時の振動を抑制する方法については特許文献2,3等に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の作業機械においては、オペレータの累積振動暴露量が許容値を超えた時点でそのオペレータによる操作が禁止されてしまう。例えば1日8時間の作業時間を予定していて始業後5時間でオペレータAの推定作業可能時間が0以下になった場合、残り3時間オペレータAは作業機械を運転できない。残り3時間は別のオペレータBでなければ作業機械を運転できず、オペレータBが確保できなければ3時間は無駄時間となってしまう。無駄時間が発生すれば現場に工期の遅れが生じ得る。無駄時間の発生を回避するために、必要が生じた場合にのみ短時間だけ作業機械を運転する人材を確保することも非効率である。
【0007】
本発明の目的は、オペレータを保護しつつも1人のオペレータで規定作業時間の運転を完遂でき、作業効率を向上させることができる作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、走行体、前記走行体の上部に設けた旋回体、前記旋回体に設けた作業機、前記旋回体に設けた運転席、アクチュエータを駆動する圧油を吐出する油圧ポンプ、前記油圧ポンプを駆動する原動機、前記原動機を制御する制御装置、オペレータに伝達される振動を検出する振動検出器を備えた作業機械において、前記制御装置は、累積振動暴露量について設定した上限値を記憶した上限暴露量記憶部と、前記振動検出器の検出値と前記原動機の回転数の相関マップを記憶した相関マップ記憶部と、前記振動検出器の検出値を基にオペレータの現時点までの振動暴露量の累積値である累積振動暴露量を演算する暴露量演算部と、前記暴露量演算部で演算された現時点までの前記累積振動暴露量を基にその後の規定時間経過時の予想累積振動暴露量を演算する暴露量予想部と、前記暴露量予想部で演算された予想累積振動暴露量と前記上限値とを比較する上限値比較部と、前記上限値比較部で前記規定時間経過時の前記予想累積振動暴露量が前記上限値を超えていると判定された場合、前記規定時間経過時の前記予想累積振動暴露量が減少するように前記相関マップに応じて現時点の前記原動機の目標回転数を補正する回転数制御部とを備え、前記制御装置は、前記暴露量演算部により前記振動検出器の検出値を基に現時点までの前記累積振動暴露量を演算し、前記暴露量予想部により前記累積振動暴露量を基に前記規定時間経過時の前記予想累積振動暴露量を演算し、前記上限値比較部により前記規定時間経過時の前記予想累積振動暴露量と前記上限値とを比較し、前記回転数制御部により、前記上限値比較部で前記規定時間経過時の前記予想累積振動暴露量が前記上限値を超えていると判定された場合、前記規定時間経過時の前記予想累積振動暴露量が減少するように前記相関マップに応じて現時点の前記原動機の前記目標回転数を補正する処理を、前記原動機が稼働して電源が投入されている間、繰り返し実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、オペレータを保護しつつも1人のオペレータで規定作業時間の運転を完遂でき、作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る作業機械の一例である油圧ショベルの左側面図
【
図2】本発明に係る作業機械の一例である油圧ショベルの一部透視斜視図
【
図7】第1実施形態に係る作業機械に備えられた制御装置の機能ブロック図
【
図8】
図7の制御装置による振動暴露量の制御手順を表すフローチャート
【
図9】
図7の制御装置のメモリに格納された相関マップを表す図
【
図10】オペレータの振動暴露量の経時変化で第1実施形態の効果を示す図
【
図12】第2実施形態に係る作業機械に備えられた制御装置の機能ブロック図
【
図13】
図12の制御装置による振動暴露量の制御手順を表すフローチャート
【
図14】第3実施形態に係る作業機械に備えられた制御装置の機能ブロック図
【
図15】
図14の制御装置による振動暴露量の制御手順を表すフローチャート
【
図16】
図14の制御装置のメモリに格納された相関マップを表す図
【
図17】オペレータの振動暴露量の経時変化で第3実施形態の効果を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0012】
<第1実施形態>
-作業機械-
本発明は油圧ショベルに限らずクレーン等の他種の作業機械にも適用可能であるが、以下においては油圧ショベルに本発明を適用した場合を例に挙げて説明する。
【0013】
図1は本発明に係る作業機械の一例である油圧ショベルの左側面図、
図2は左斜め後から見た一部透視図である。本実施形態では
図1中の左右を前後として扱う。これらの図に示した作業機械は、走行体1、走行体1上に設けた旋回体2、及び旋回体2に取り付けた作業機(フロント作業機)3を備えている。
【0014】
走行体1は作業機械の基部構造体であり、左右の履帯4により走行するクローラ式の走行体であるが、ホイール式の走行体が用いられる場合もある。走行体1は左右の走行モータ5により左右の履帯4をそれぞれ駆動して走行する。
【0015】
旋回体2は旋回輪6を介して走行体1の上部に設けられ、左側前部にオペレータが搭乗する運転室7を備えている。旋回体2のベースフレームである旋回フレームには旋回モータ8が取り付けられている。旋回モータ8には、電動モータを用いる場合、油圧モータを用いる場合、双方を用いる場合がある。旋回体2における運転室7の後側には動力室9、最後部にはカウンタウェイト10が設けられている。運転室7には、オペレータが座る運転席11が設けられている。運転席11の左右には旋回体2の旋回動作や作業機3の動作を指示する左右の操作レバー16a,16bが配置されている。動力室9には、油圧アクチュエータを駆動する圧油を吐出する油圧ポンプ12や、油圧ポンプ12を駆動する原動機13(本例ではエンジン)、油圧ポンプ12から油圧アクチュエータに供給される圧油の流れを制御する制御弁装置14等が収容されている。旋回体2には、原動機13を含む各作動装置を制御する制御装置40も備えられている。制御装置40は例えば車載コンピュータであり、本実施形態では運転席11の後側の位置に配置され、後述する振動検出器31と原動機13に結線されている。原動機13には電動モータが用いることもあるが、多くの場合エンジン(内燃機関)が採用される。電動モータを原動機13とする作業機械にも本発明は適用できるが、本発明の適用対象としてはエンジンを原動機13とする作業機械がより好適である。エンジンはそれ自体が前後左右に揺れるいわゆるロールにより機体振動に影響するためである。本実施形態では原動機13としてエンジンが用いてあり、エンジンの回転数を制御するエンジンコントローラ34(
図7)が備わっている。制御装置40はエンジンコントローラ34を含んで構成しても良いが、本実施形態では別構成としてメインコントローラである制御装置40とサブコントローラであるエンジンコントローラ34とを結線してある。
【0016】
作業機3は、旋回体2の前部(本実施形態では運転室7の右側)に連結されている。作業機3は、ブーム21、アーム22、及びアタッチメント23(本実施形態ではバケット)を備えた多関節型のフロント作業装置である。ブーム21は旋回フレームに上下に回動可能に直接連結されると共に、ブームシリンダ24を介して旋回体フレームと連結されている。アーム22はブーム21の先端に回動可能に直接連結されると共に、アームシリンダ25を介してブーム21に連結されている。アタッチメント23はアーム22の先端に回動可能に直接連結されると共に、アタッチメントシリンダ26を介してアーム22に連結されている。ブームシリンダ24、アームシリンダ25及びアタッチメントシリンダ26は、油圧シリンダである。
【0017】
図1の作業機械においては、旋回モータ8、ブームシリンダ24、アームシリンダ25及びアタッチメントシリンダ26に対し、油圧ポンプ12から吐出された圧油が左右の操作レバー16a,16bの操作に応じて制御弁装置14を介して供給される。旋回モータ8が駆動されると旋回体2が旋回する。ブームシリンダ24、アームシリンダ25及びアタッチメントシリンダ26が駆動されるとそれぞれブーム21、アーム22及びアタッチメント23が回動し、アタッチメント23の位置と姿勢が変化する。特に図示していないが、走行体1は走行操作用のレバーにより操作される。
【0018】
-運転席-
図3は運転席11の斜視図である。運転席11の左右には、前述した操作レバー16a,16b、コンソール17a,17b等が設けられている。同図には示していないが、運転室7の内部における運転席11の周囲(例えば斜め前)にはモニタ35(
図7)が備えられている。運転席11は、座面11a、背もたれ11b、ヘッドレスト11c、アームレスト11d,11e等から構成され、座席スタンド18の上部に設置されている。座面11aには、オペレータに伝達される振動を検出する振動検出器31が埋設されている。振動検出器31は運転席11に取り付けるものに限らず、オペレータが携帯する携帯型のものでも良い。この場合は振動検出器31を制御装置40に無線接続することが考えられる。
図3には図示していないが、運転席11の付近(例えばコンソール17a,17bやモニタ35)には、原動機13(本例ではエンジン)の目標回転数Ntを設定するエンジンコントロールダイヤル32(
図7)の他、選択装置33(同)等が設けられている。以下、エンジンコントロールダイヤルはエンコンダイヤルと略称する。選択装置33は、原動機13の目標回転数Ntを補正する際に制御装置40が回転数制御部49(後述)で目標回転数Ntを上昇方向に補正するか低下方向に補正するかを選択設定するための操作装置(物理的なスイッチ類の他、タッチパネルを含む)である。
【0019】
図4は座面11aの平面図、
図5は振動検出器31の平面図、
図6はその側面図である。同図に示すように、座面11aのウレタン後部から水平前方にスリット11fが切り込まれ、このスリット11fの内部に振動検出器31が設置されている。振動検出器31は、加速度計31a、加速度計31aが固定される金属製円板31b、ケーブル31cを備え、運転席11のx方向,y方向、z方向の振動を検出する。なお、z方向は振動検出器31の設置面に直交する方向、x,y方向はz方向に直交する面内における作業車両の前後方向、左右方向である。
【0020】
-制御装置-
図7は本発明の第1実施形態に係る作業機械に備えられた制御装置40の機能ブロック図である。制御装置40は例えばCPUやメモリを持つコンピュータであり、加速度検出部41、加速度三軸合成部42、暴露量演算部43、暴露量予想部44、上限暴露量記憶部45、上限値比較部46、表示部47、相関マップ記憶部48、回転数制御部49を備えている。図示していないが、制御装置40には、作業機械のオペレータを識別するオペレータ識別部も備わっている。運転室7には、例えばICカードの挿入部、或いはパスワードの入力装置等が備わっており、オペレータ識別部はICカード(不図示)から読み取った情報やパスワードでオペレータを識別する。制御装置40は上記の暴露量演算部43で演算した日毎の累積振動暴露量をICカード、或いは自らに備えられたメモリに記憶する。加速度検出部41、加速度三軸合成部42、暴露量演算部43、暴露量予想部44、上限暴露量記憶部45、上限値比較部46、表示部47、相関マップ記憶部48、回転数制御部49の機能について順次説明する。
【0021】
・加速度検出部
加速度検出部41は例えばCPUを構成する回路であり、振動検出器31に接続している。この加速度検出部41は、振動検出器31の加速度計31aから出力されるxyz各方向の電圧信号を基にxyz各方向の加速度ax,ay,azを演算し、演算した加速度ax,ay,azを加速度三軸合成部42に出力する。
【0022】
・加速度三軸合成部
加速度三軸合成部42は例えばCPUを構成する回路であり、加速度検出部41で演算されたx方向、y方向、z方向の加速度を次式により合成して加速度実効値a[m/s2]を演算する。
a=(ax2+ay2+az2)1/2
加速度三軸合成部42は、演算した加速度実効値aを暴露量演算部43に出力する。
【0023】
・暴露量演算部
暴露量演算部43は例えばCPUを構成する回路であり、振動検出器31の検出値(本例では加速度三軸合成部42で演算された加速度実効値a)を基に次式によりオペレータの累積振動暴露量Aを演算し、演算した累積振動暴露量Aを暴露量予想部44に出力する。
A=a×(T/T1)1/2
T1:規定時間(1日の規定作業時間、例えば8時間)
T:1日のオペレータの運転時間(現在までの経過時間)
ここで演算される累積振動暴露量Aは、当日における現時点までの振動暴露量の累積値であり、前日以前の値は含まない。
【0024】
・暴露量予想部
暴露量予想部44は例えばCPUを構成する回路であり、暴露量演算部43で演算された累積振動暴露量Aを基にその後規定時間T1が経過した場合の予想累積振動暴露量A’を演算し、上限値比較部46に出力する。規定時間T1は設定時間であって必ずしも特定の値である必要はないが、振動暴露量が人体に対して与える影響を把握する観点から1日当たりの一般的な作業時間(例えば7~8時間)が例示できる。予想累積振動暴露量A’は、現時点までの振動暴露量(累積振動暴露量A)を平均化して時間当たりの振動暴露量を求め、比率計算で求めることができる。また、運転開始から累積振動暴露量をプロットし、例えば最小二乗法を用いて予想累積振動暴露量A’を求めることもできる。
【0025】
・上限暴露量記憶部
上限暴露量記憶部45はメモリ又はその一領域であり、累積振動暴露量Aについて設定した上限値A1(設定値)を予め記憶している。上限暴露量記憶部45に記憶された上限値A1は上限値比較部46に読み込まれる。上限値A1は人体の健康に影響を与えない範囲で設定され、EC指令2002/44/ECで規定されている1日8時間暴露限界値1.15m/s2が一例として挙げられる。但し、作業効率とオペレータの健康の観点から、同規定に規定されている1日8時間暴露対策値0.5m/s2を上限値A1に設定することが好ましい。
【0026】
・上限値比較部
上限値比較部46は例えばCPUを構成する回路であり、暴露量予想部44で演算された予想累積振動暴露量A’と上限暴露量記憶部45から読み込んだ上限値A1とを比較し、両者の大小関係を判定する。この上限値比較部46は、上限値A1よりも予想累積振動暴露量A’が大きい場合に原動機13の目標回転数Ntの補正制御を指令する信号を回転数制御部49に出力し、比較した結果(本例では上限値A1及び予想累積振動暴露量A’)を表示部47に出力する。
【0027】
・表示部
表示部47は例えばCPUを構成する回路であり、上限値比較部46から入力された比較結果の情報を基に表示信号を生成してモニタ35に出力し、モニタ35に比較結果(本例では予想累積振動暴露量A’と上限値A1)を表示させる。この表示出力により、オペレータは現在の作業状況で上限値A1に到達することなく自分自身が規定作業時間の作業を完遂できるかを知ることができる。なお、モニタ35に相関マップ(後述)が表示できるようにすることも考えられ、この場合は容易に制限範囲を避けて目標回転数Ntを設定できる。また、後で
図10で説明する振動暴露量の基準速度と実際の累積振動暴露量A(又は予想累積振動暴露量A’)のデータをテキスト、グラフ又はその双方で表示することも考えられる。
【0028】
・相関マップ記憶部
相関マップ記憶部48はメモリ又はその一領域であり、振動検出器31の検出値(本例ではこれに基づく加速度実効値a)と原動機13の回転数Nの相関マップを記憶している。相関マップは、例えば機体毎に最低回転数から最高回転数まで原動機13の回転数Nを変化させ、振動検出器31の値をプロットして予め得られた加速度実効値aと回転数Nとの既知の相関関係である。この相関マップには、
図9に示すように振動検出器31の検出値との関係で原動機13の回転数Nについて制限範囲(同図ではN0~N2,N5~N8)の情報が付加されている。N0は原動機13の最低回転数である。制限範囲は、振動量が増大する範囲(原動機13の振動が運転室7と共振を起こす回転数範囲)であり、機体毎に異なり得る。本実施形態では加速度実効値aについて定めた制限値a1を超える回転数範囲(回転数N0~N1,N6~N7)に対してマージンをとって広めに制限範囲が設定してある。その他、制限範囲の最も近くで振動が極小値をとる回転数N3,N4,N9の情報を相関マップに付加しても良い。相関マップは相関マップ記憶部48から回転数制御部49に読み込まれる。
【0029】
・回転数制御部
回転数制御部49は例えばCPUを構成する回路であり、エンコンダイヤル32や選択装置33に接続し、通常はエンコンダイヤル32で設定された目標回転数Ntに従って原動機13の回転数Nを制御する。本実施形態の場合、回転数制御部49からエンジンコントローラ34に目標回転数Ntが指令され、エンジンコントローラ34によって原動機13の回転数Nが目標回転数Ntに制御される。回転数制御部49が特徴的である点は、原動機13の目標回転数Ntの補正機能である。回転数制御部49は、上限値比較部46から指令信号が入力された場合、その信号に従って相関マップ記憶部48から相関マップを読み込み、予想累積振動暴露量A’が減少するように相関マップに応じて原動機13の目標回転数Ntを補正する。即ち、上限値比較部46で予想累積振動暴露量A’が上限値A1を超えていると判定されている間、エンコンダイヤル32で設定された原動機13の目標回転数Ntが回転数制御部49によって補正される。
【0030】
回転数制御部49による補正は、相関マップに従って運転席11の振動(加速度実効値a)を下げる補正であり、例えば現在の目標回転数Ntが
図9に示す制限範囲内の値である場合に制限範囲から外れるように目標回転数Ntを変更するような補正である。本実施形態の場合、回転数制御部49は、選択装置33で回転数の上昇が選択されていれば目標回転数Ntを上げて制限範囲を外し、選択装置33で回転数の低下が選択されていれば目標回転数Ntを下げて制限範囲を外す。但し、回転数N1~N2の制限範囲は上昇方向にしか制限範囲を外すことができないため、回転数制御部49は選択装置33の選択によらず目標回転数Ntを下げて制限範囲を避ける。目標回転数Ntの補正の程度としては、代表的には制限範囲の上限値N2,N8若しくは下限値N5(又は上限値若しくは下限値に対してマージンをとった値)に目標回転数Ntを変更する例が挙げられる。振動が極小値をとる値N3,N4,N9のうち選択装置33の設定条件下で現在の目標回転数Ntから最も近い値に目標回転数Ntを変更する例を採用することもできる。また、制限範囲の設定に関係なく、加速度実効値aが一定量減少するように相関マップに従って目標回転数Ntが補正されるようにすることも考えられる。
【0031】
-振動暴露量の制御手順-
図8は制御装置40による振動暴露量の制御手順を表すフローチャートである。同図に示した一連の処理は、原動機13が稼働して電源が制御装置40に投入されている間、制御装置40によって所定のサイクルタイム(例えば5~10min)で繰り返し実行される。
【0032】
オペレータがキースイッチ(不図示)により作業機械の原動機13を始動すると、制御装置40はメモリから振動暴露量低減プログラムをCPUにロードして起動する。同プログラムを起動すると、まず制御装置40はオペレータの当日の累積作業時間T、振動検出器31から出力された現在の加速度ax,ay,az等の情報を入力する(ステップS01)。情報を入力したら制御装置40は、加速度三軸合成部42、暴露量演算部43、暴露量予想部44で現時点の加速度実効値a(ステップS02)、累積振動暴露量A(ステップS03)、予想累積振動暴露量A’(ステップS04)を順次演算する。続いて、制御装置40は上限値比較部46で予想累積振動暴露量A’と上限値A1とを比較し、A’≦A1であるかを判定する(ステップS05)。制御装置40は、上限値比較部46でA’≦A1と判定されるとステップS01に手順を戻し、A’>A1と判定されるとステップS06,S07に手順を進める。ステップS05からステップS01に手順を移す場合、制御装置40は回転数制御部49によりエンコンダイヤル32で設定された目標回転数Ntをエンジンコントローラ34に指令し、オペレータが設定した目標回転数Ntで原動機13を駆動する。
【0033】
A’>A1である場合、制御装置40は、相関マップ記憶部48から回転数制御部49に相関マップをロードし(ステップS06)、表示部47で上限値比較部46の比較結果をモニタ35に表示出力する(ステップS07)。モニタ35を介して現時点で予想累積振動暴露量A’が上限値A1を超える見込みであることを報知することにより、エンコンダイヤル32による原動機13の目標回転数Ntの調節をオペレータに促す。その後制御装置40は、エンコンダイヤル32で設定されている目標回転数Ntが制限範囲内の値であるかを回転数制御部49で判定する(ステップS08)。目標回転数Ntが制限範囲から外れていれば、制御装置40は目標回転数Ntを補正することなく手順をステップS08からステップS01に戻す。目標回転数Ntが制限範囲内の値であれば、制御装置40は目標回転数Ntを制限範囲から外れるように補正して(ステップS09)手順をステップS01に戻す。
【0034】
-効果-
(1)本実施形態によれば、基本的にはオペレータが設定した目標回転数Ntで原動機13を稼働させて作業を遂行することができる。但し、規定作業時間中に規定作業時間が経過した場合の予想累積振動暴露量A’を演算し、これが上限値A1を超えていれば予想累積振動暴露量A’が減少するように相関マップに応じて目標回転数Ntが補正される。つまり現状の目標回転数Ntでは規定作業時間の経過前に累積振動暴露量Aが上限値A1に達する見込みで、そのオペレータが規定作業時間の作業を完遂できそうにない場合に、
図10のように振動暴露量の累積速度が遅くなるように目標回転数Ntが補正される。
図10に示した例では、規定作業時間T1の経過時に累積振動暴露量Aが上限値A1に到達する振動暴露量の累積速度を線形的な基準線L0で表している。例えば規定作業時間中の時刻Txに目標回転数Ntの補正が実行された場合、振動暴露量の実際の累積速度は時刻Tx以降低下し、その後累積振動暴露量Aが基準線L0を下回る。
【0035】
このようにオペレータが任意に設定した目標回転数Ntで稼働する一方で、振動暴露量の累積ペースが速い場合には機体振動を低減してオペレータを保護することができる。また、規定作業時間の経過前に累積振動暴露量Aが上限値A1に到達することを抑制できるので、運転不可の無駄時間の発生を抑制し1人のオペレータで規定作業時間の運転を完遂でき、作業効率を向上させることができる。これにより工期遅れの発生が抑制できる。オペレータの振動暴露量も適正も管理できる。加えて、必要が生じた場合にのみ短時間だけ作業機械を運転する人材を確保する必要がなくなり、現場の費用対効果の向上にも貢献し得る。
【0036】
また、
図11に示したように走行の際に接地面を介して運転席11に伝達される振動が強まる走行速度(共振領域)があるが、
図1のようなクローラ式の作業機械では一般に走行速度は原動機回転数に依存する。従って、本実施形態によれば走行動作に由来する振動暴露量も自ずと抑制される。
【0037】
(2)振動暴露量の大きな回転数範囲の情報を制限範囲として相関マップに付加し、補正時には制限範囲内の値を避けて目標回転数Ntを変更するようにしたので、累積振動暴露量Aを効率的に抑えることができる。但し、上記の基本的な効果(1)を得る限りにおいて、相関マップに従って現在よりも振動暴露量(加速度実効値a)が減少するように目標回転数Ntが補正されれば良く、制限範囲の設定は必ずしも必要ない。
【0038】
(3)モニタ35に例えば予想累積振動暴露量A’や上限値A1を表示出力することで、オペレータは振動暴露量の観点で現在の目標回転数Ntの設定の妥当性を把握することができる。これによりオペレータの判断で目標回転数Ntを自主的に変更し、振動暴露量の累積速度を考慮しつつ制限範囲を避けて所望の目標回転数Ntで作業することができる。但し、上記効果(1)を得る限りにおいては制御装置40による目標回転数Ntの補正機能が働けば足り、モニタ35への振動暴露量に関する情報表示は必ずしも必要ではなく省略可能である。
【0039】
(4)目標回転数Ntを補正する際に上昇方向に補正するか低下方向に補正するかが選択装置33で任意に選択できる。原動機13の回転数が低下すれば燃費が向上し、上昇すれば作業効率が向上し得る。燃費と作業効率のどちらを重視するかで目標回転数Ntの補正態様を柔軟に選択できる。但し、上記効果(1)を得る限りにおいては目標回転数Ntの補正態様の選択機能は必ずしも必要ではない。
【0040】
<第2実施形態>
図12は本発明の第2実施形態に係る作業機械に備えられた制御装置の機能ブロック図である。同図に示したように、本実施形態の制御装置40’には、第1実施形態の制御装置40の全構成要素に加え、暴露量再予想部44’及び上限値再比較部46’が追加されている。その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0041】
暴露量再予想部44’は例えばCPUを構成する回路であり、回転数制御部49による目標回転数Ntの補正後の条件で予想累積振動暴露量A’を再演算する。予想累積振動暴露量A’の処理内容は暴露量予想部44の処理内容と同様であり、目標回転数Ntの補正後に加速度検出部41、加速度三軸合成部42、暴露量演算部43の処理を経て演算された累積振動暴露量Aを基に予想累積振動暴露量A’を改めて演算する。
【0042】
上限値再比較部46’は例えばCPUを構成する回路であり、暴露量再予想部44’で再演算された予想累積振動暴露量A’と上限値A1とを比較する。上限値再比較部46’の処理内容は上限値比較部46の処理内容と同様である。
【0043】
制御装置40’は、上限値再比較部46’で予想累積振動暴露量A’が上限値A1以下であると判定されるまで同一処理サイクルで(ステップS01に手順を戻さず)回転数制御部49で目標回転数Ntを繰り返し補正する。
【0044】
図13は制御装置40’による振動暴露量の制御手順を表すフローチャートである。同図に示したフローチャートのステップS01~S07の手順は
図8のフローチャートの対応する手順と同一であるため説明を省略する。本実施形態の場合、ステップS07で相関マップを読み込むと、制御装置40’は加速度三軸合成部42で演算された加速度実効値aが閾値(例えば
図9の制限値a1)を超えているかを回転数制御部49で判定する(ステップS09)。ステップS09において、回転数制御部49は、加速度実効値aが閾値を超えていれば相関マップに従って加速度実効値aが減少するように目標回転数Ntを補正して原動機13の回転数を調整し、閾値以下であれば目標回転数Ntは据え置く。目標回転数Ntの補正概念については第1実施形態と同様である。このように相関マップの横軸(回転数)に代えて縦軸(加速度)で目標回転数Ntの補正の要否を判定しても良い。
【0045】
目標回転数Ntの補正後、制御装置40’は、ステップS01と同じ要領で、累積作業時間T、振動検出器31から出力された現在の加速度ax,ay,az等の情報を改めて入力する(ステップS10)。制御装置40’は、その後ステップS02,S03と同様の処理を経て、ステップS04と同様にして暴露量再予想部44’で目標回転数Ntの補正後の予想累積振動暴露量A’を改めて演算する(ステップS11)。制御装置40’は、上限値再比較部46’でステップS05と同様の処理を実行し、目標回転数Ntを補正した結果、A’≦A1になっていれば手順をステップS01に戻す。この間、オペレータはモニタ35の表示を見て自主的に目標回転数Ntを変更することもできる。反対にA’>A1のままであれば、制御装置40’は手順をS10に戻して目標回転数Ntを相関マップに従って補正して原動機13の回転数を再度調整し、A’≦A1となるまでステップS10~S13の処理を繰り返す。
【0046】
本実施形態においても第1実施形態と同様の効果が得られる。加えて、第1実施形態においては目標回転数Ntを補正してA’≦A1となったかどうかは次の処理サイクルで判定されることになるが、本実施形態においてはA’≦A1にした上で各処理サイクルを終える。従って第1実施形態に比べて振動暴露量の制御の応答性及び妥当性が高く、処理サイクルを長く(例えば30分)設定した場合には本実施形態の優位性が増す。
【0047】
<第3実施形態>
図14は本発明の第3実施形態に係る作業機械に備えられた制御装置の機能ブロック図である。同図に示したように、本実施形態の制御装置40”には、第1実施形態の制御装置40の全構成要素に加え、中間暴露量記憶部45”、中間値比較部46”及び中間範囲記憶部48”が追加されている。その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0048】
中間暴露量記憶部45”はメモリ又はその一領域であり、累積振動暴露量Aについて上限値A1よりも低く設定した中間値A2を記憶している。中間暴露量記憶部45”に記憶された上限値A1は中間値比較部46”に読み込まれる。本実施形態の場合、例えば上限値A1としてEC指令2002/44/ECで規定されている1日8時間暴露限界値1.15m/s2を設定し、中間値A2として1日8時間暴露対策値0.5m/s2を設定することが例示できる。
【0049】
中間範囲記憶部48”はメモリ又はその一領域であり、振動検出器の検出値との関係で原動機13の回転数Nについて制限範囲内で設定した中間範囲を記憶している。中間範囲記憶部48”には例えば
図16に示したような相関マップが記憶されている。同図の相関マップは
図9の相関マップに対応させて図示してある。
図16の相関マップは相関マップ記憶部48に格納する相関マップと共用しても良い。相関マップ記憶部48で中間範囲記憶部48”を兼ねても良い。
図16の相関マップには、原動機13の回転数Nについて制限範囲(同図ではN0~N2,N5~N8)に加えて、中間範囲(同図ではN0~N1,N6~N7)の情報が付加してある。同図に示したように、中間範囲(N0~N1,N6~N7)は制限範囲(N0~N2,N5~N8)に含まれ、制限範囲よりも狭い回転数範囲として設定してある。中間範囲は中間範囲記憶部48”から回転数制御部49に読み込まれる。
【0050】
中間値比較部46”は例えばCPUを構成する回路であり、上限値比較部46で予想累積振動暴露量A’が上限値A1以下であると判定された場合、予想累積振動暴露量A’と中間暴露量記憶部45”から読み込んだ中間値A2とを比較する。中間値比較部46”は予想累積振動暴露量A’と中間値A2の大小関係を判定し、中間値A2よりも予想累積振動暴露量A’が大きい場合(A2<A’≦A1)に原動機13の目標回転数Ntの補正制御を指令する信号を回転数制御部49に出力する。同時に、中間値比較部46”は比較結果(本例では中間値A2及び予想累積振動暴露量A’)を表示部47に出力する。
【0051】
回転数制御部49は第1実施形態と同様の処理に加え、中間値比較部46”でA’>A2(A2<A’≦A1)と判定された場合、目標回転数Ntが中間範囲内の値であるときに中間範囲から外れるように目標回転数Ntを補正する。補正後の目標回転数Ntは制限範囲内の値であっても良い。
【0052】
図15は制御装置40”による振動暴露量の制御手順を表すフローチャートである。同図に示したフローチャートのステップS01~S09の手順は、A’≦A1である場合にS05からS15に手順が移る点を除き、
図8のフローチャートと同一の手順であるため説明を省略する。本実施形態の場合、制御装置40”はA’≦A1である場合にS05からS15に手順を移し、中間値比較部46”で予想累積振動暴露量A’と中間値A2とを比較し、A’≦A2であるかを判定する(ステップS15)。制御装置40”は、中間値比較部46”でA’≦A2と判定されるとステップS01に手順を戻し、A’>A2と判定されるとステップS16,S07に手順を進める。ステップS15からステップS01に手順を移す場合、制御装置40”は回転数制御部49によりエンコンダイヤル32で設定された目標回転数Ntをエンジンコントローラ34に指令し、オペレータが設定した目標回転数Ntで原動機13を駆動する。
【0053】
次に制御装置40”は、中間範囲記憶部48”から回転数制御部49に中間範囲をロードし(ステップS16)、表示部47で中間値比較部46”の比較結果をモニタ35に表示出力する(ステップS07)。モニタ35を介して現時点で予想累積振動暴露量A’が中間値A2を超える見込みであることを報知することにより、エンコンダイヤル32による原動機13の目標回転数Ntの調節をオペレータに促す。その後制御装置40”は、エンコンダイヤル32で設定されている目標回転数Ntが中間範囲内の値であるかを回転数制御部49で判定する(ステップS18)。目標回転数Ntが中間範囲から外れていれば、制御装置40”は目標回転数Ntを補正することなく手順をステップS18からステップS01に戻す。目標回転数Ntが中間範囲内の値であれば、制御装置40”は目標回転数Ntを中間範囲から外れるように補正して(ステップS19)手順をステップS01に戻す。
【0054】
本実施形態においては、第1実施形態と同様の効果に加え、以下の効果が得られる。予想累積振動暴露量A’を単一の閾値(上限値A1)との比較のみで目標回転数Ntの補正の要否を判断する場合、目標回転数Ntを一律に制限範囲外の値に変更する補正態様を採用すると、目標回転数Ntがオペレータによる設定から必要以上に離れ得る。それに対し、本実施形態の場合、予想累積振動暴露量A’を複数の閾値(上限値A1、中間値A2)と比較し、予想累積振動暴露量A’の程度に応じて補正量を変えている。つまりA2<A1<A’の場合、振動暴露量の累積速度が基準を超える程度が大きいとして目標回転数Ntの補正量を大きくし(制限範囲から外し)振動暴露量の累積速度の制限の程度を大きくする。一方A2<A’≦A1の場合、振動暴露量の累積速度が基準を超える程度は小さいとして目標回転数Ntの補正量を小さくし(制限範囲内で中間範囲から外し)振動暴露量の累積速度の制限の程度を抑える。このように振動暴露量の累積速度に応じた段階的な補正をすることにより、
図17に示したように累積振動暴露量Aの制御の応答性が第1実施形態と比較して良くなる。基準との偏差も小さくなり作業効率や燃費の面でバランスのとれた運転状態を維持することができる。
【0055】
なお、本実施形態の段階的補正は、本実施形態と同様の要領で第2実施形態にも適用できる。つまり
図13のステップS05の後にステップS15を追加し、同図のステップS06~S13のフローにおける上限値A1と制限範囲を中間値A2と中間範囲に置換したフローがステップS15に後続するフローチャートとすることができる。
【符号の説明】
【0056】
1…走行体、2…旋回体、3…作業機、5…走行モータ(アクチュエータ)、8…旋回モータ(アクチュエータ)、11…運転席、12…油圧ポンプ、13…原動機、24…ブームシリンダ(アクチュエータ)、25…アームシリンダ(アクチュエータ)、26…アタッチメントシリンダ(アクチュエータ)、31…振動検出器、33…選択装置、35…モニタ、40,40’,40”…制御装置、43…暴露量演算部、44…暴露量予想部、44’…暴露量再予想部、45…上限暴露量記憶部、45”…中間暴露量記憶部、46…上限値比較部、46’…上限値再比較部、46”…中間値比較部、47…表示部、48…相関マップ記憶部、48”…中間範囲記憶部、49…回転数制御部、A…累積振動暴露量、A’…予想累積振動暴露量、A1…上限値、A2…中間値、Nt…目標回転数、T1…規定時間