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  • 特許-仮設足場形成冶具及び仮設足場形成方法 図1
  • 特許-仮設足場形成冶具及び仮設足場形成方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-27
(45)【発行日】2023-01-11
(54)【発明の名称】仮設足場形成冶具及び仮設足場形成方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 1/24 20060101AFI20221228BHJP
【FI】
E04G1/24 301Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018129007
(22)【出願日】2018-07-06
(65)【公開番号】P2020007766
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-06-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000150615
【氏名又は名称】株式会社長谷工コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100067448
【弁理士】
【氏名又は名称】下坂 スミ子
(74)【代理人】
【識別番号】100167117
【弁理士】
【氏名又は名称】打越 佑介
(72)【発明者】
【氏名】川口崇政
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-185211(JP,A)
【文献】特開2002-004571(JP,A)
【文献】特開平10-018577(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 1/00-7/34
E04G 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面に敷設された敷板と、
建物に併設される仮設足場を支持する支柱と前記敷板との間に
配設された滑り支承体と、を備え、
前記滑り支承体は、矩形状の底面と、底面の各辺から起立する側面を備える
ことを特徴とする仮設足場形成冶具。
【請求項2】
前記敷板に対する前記滑り支承体の静止摩擦係数が、0.4以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の仮設足場形成冶具。
【請求項3】
前記支柱が、前記仮設足場を形成する少なくとも4本の支柱のうち隣接する2本の支柱である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の仮設足場形成冶具。
【請求項4】
前記仮設足場形成冶具は、さらに、
前記建物に対して前記仮設足場を固定する固定部材
を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の仮設足場形成冶具。
【請求項5】
地面に敷板を敷設し、
建物に併設される仮設足場を支持する少なくとも4本の支柱のうち隣接する2本の支柱と前記敷板との間に容器状の滑り支承体を履かせるように配設し、
前記建物に対して前記仮設足場を固定部材で固定する
ことを特徴とする仮設足場形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、集合住宅等の建物の建設や修繕等の際に併設される仮設足場を形成するための仮設足場形成冶具及び仮設足場形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集合住宅等の建物の建設や修繕を行う場合、室外側から施工作業を行うために仮設足場が設けられるが、近年、地震発生時における仮設足場の倒壊防止のニーズが高まってきた。特に、免震設備を備える建物においては、地面の揺れと異なるように建物が揺れるため、建物が地面に設置された仮設足場に衝突して損傷を与えるだけでなく、仮設足場を倒壊させる恐れがあった。したがって、地震時に建物が仮設足場に衝突しないよう、建物に仮設足場を支持し、地面から仮設足場を浮かせる必要があった。
【0003】
そこで、建物のベランダの先端部分が分厚いコンクリート製の躯体である場合(躯体製の手摺の場合)、ベランダの先端部分に固定された所定のブラケットを介して仮設足場を浮かせる手法を採用し、建物と仮設足場との衝突を回避している。また、建物の側壁部分に固定された所定のブラケットを介して仮設足場を浮かせる手法も開示されている(例えば、特許文献1)。この手法によれば、工事の進捗状況に応じて仮設足場の下方部分を解体撤去することで、建造中の躯体周囲の下方空間を通路や資材置場等として有効利用できるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-323654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、所定のブラケットをベランダの先端部分に固定できない場合もある。例えば、ベランダの先端部分が所定のブラケットを固定できない高さである場合(アルミやガラス製の手摺の場合)やベランダがない場合である。また、特許文献1で開示された手法を採用するにしても、はじめは地面に仮設足場を設置しなければならないため、免震設備を備える建物では地震のとき仮設足場に衝突する恐れがある。
【0006】
一般的な仮設足場は、骨組み状で細長く地面に自立しにくいため、倒壊しないよう少なくとも建物に支持されている。しかしながら、地震による揺れの大きさによっては、免震設備の有無に関わらず、建物と仮設足場との揺れ方が異なり、建物が仮設足場に衝突したり仮設足場が倒壊したりする恐れがある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、建物の構造環境や工事の進捗等に関わらず、仮設足場の耐震性を高める仮設足場形成冶具及び仮設足場形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による仮設足場形成冶具は、地面に敷設された敷板と、建物に併設される仮設足場を支持する支柱と上記敷板との間に配設された滑り支承体とを備えることを特徴とする。
【0009】
上記敷板に対する上記滑り支承体の静止摩擦係数が、0.4以下であることが望ましい。
【0010】
上記支柱が、上記仮設足場を形成する少なくとも4本の支柱のうち隣接する2本の支柱であることが望ましい。
【0011】
上記仮設足場形成冶具は、さらに、上記建物に対して上記仮設足場を固定する固定部材
を備えることが望ましい。
【0012】
本発明による仮設足場形成方法は、地面に敷板を敷設し、建物に併設される仮設足場を支持する少なくとも4本の支柱のうち隣接する2本の支柱と上記敷板との間に滑り支承体を配設し、上記建物に対して上記仮設足場を固定部材で固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明による仮設足場形成冶具及び仮設足場形成方法では、建物の構造環境や工事の進捗等に関わらず、仮設足場の耐震性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態における仮設足場形成冶具が建物に併設された状態を示す図である。
図2】本発明の一実施形態における滑り支承体の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図1及び図2を参照しつつ、本発明の一実施形態における仮設足場形成冶具の構造及び使用方法について説明する。
【0016】
仮設足場形成冶具は、耐震設備又は免震設備の有無や工事の進捗状況等に関わらず、あらゆる建物の建設時や修繕時にその作業スペースを確保するために設けられる仮設足場の耐震性を向上させるものであり、種々の建造物の工事用足場として設置される仮設足場に広く適用が可能である。
【0017】
図1に示すように、仮設足場形成冶具は、地面に敷設された敷板5と、建物6に併設される仮設足場1を支持する支柱2と敷板5との間に配設された滑り支承体4とを備えている。仮設足場1は、建物6に沿って作業者が往来できるよう、少なくとも4本1組とする棒状の支柱2と、支柱2に対して階層毎に設けられた足場部3とから構成される。
このような構成により、建物の構造環境や工事の進捗等に関わらず、仮設足場1の耐震性を高めることができる。すなわち、地震の揺れに応じて、仮設足場1が配置された滑り支承体4が敷板5をスライドし、仮設足場1の支柱2はそのまま滑り支承体4上にて保持されるので、仮設足場1の損傷や倒壊の危険を回避することができる。したがって、建物6の挙動や躯体製の手摺の有無、工事の進捗状況等に関わらず、仮設足場1の耐震性を高めることができる。
なお、仮設足場1は、地面、敷板5、及び/又は建物6に対して所定の手段で支持されていてもよい。敷板5は、建物6に接していてもいなくてもよく、固定されていてもされていなくてもよい。地面が敷板5と同等の性質である場合、敷板5は敷設されなくてもよい。
【0018】
敷板5に対する滑り支承体4の静止摩擦係数が、0.4以下である。詳細には、滑り支承体4は、鉄製の敷板5に対する静止摩擦係数が0.4以下となる亜鉛鋼板で形成されている。図2に示すように、滑り支承体4は、長方形状の底面4aと4つの側面4b,4c,4d,4eとで構成された容器状のものである。滑り支承体4のサイズは、単数の支柱2の底面積又は複数の支柱2で形成される範囲の面積と同程度で、単数又は複数の支柱2が4つの側面4b,4c,4d,4eで囲まれる程度である。
このような構成により、地面に応じて揺れる敷板5に対して滑り支承体4が追従せず滑るため、滑り支承体4上の仮設足場1は建物6に対して静止した状態を維持できる。一方、滑り支承体4の静止摩擦係数が0.4を超えると、敷板5に対して滑り支承体4が滑らない、仮設足場1が倒れてしまう恐れがある。
なお、滑り支承体4は、平面状の板材でもよく、支柱4の裏面に接着されてもよい。滑り支承体4は、4つの側面4b,4c,4d,4eではなく、底面4aの四つ角からL字状に立ち上がった角部分を有していてもよい。滑り支承体4及び敷板5は、上述した静止摩擦係数の条件を満たす限り、いずれの金属や樹脂でもよい。敷板5は、地面に対して滑らない形状や静止摩擦係数の素材が好ましい。
【0019】
滑り支承体4に配置する支柱2は、仮設足場を形成する少なくとも4本の支柱のうち隣接する2本の支柱である。隣接する2本の支柱は、各々の間隔が狭い支柱2同士であり、滑り支承体4の4つの側面4b,4c,4d,4eで囲まれている。
このような構成により、敷板5に対する滑り支承体4の摩擦抵抗が大きくならないように抑えると共に、容易に搬送したり転用したりすることができる。支柱2の1本1本に滑り支承体4が設けられると、滑り支承体4にかかる圧力が高まる分、摩擦抵抗が大きくなるからである。一方、各々の間隔が広い支柱2同士や4本全ての支柱2に滑り支承体4が設けられると、滑り支承体4のサイズが大き過ぎて不便だからである。
【0020】
図1に示すように、仮設足場形成冶具は、さらに建物6に対して仮設足場1を固定する固定部材7を備えている。固定部材7は、金属製で、棒状部材7aと、棒状部材7aと直角に交わるように固定された棒状部材7bと、補強用として棒状部材7a及び棒状部材7bと斜めに交わるように各々の先端部分に固定された棒状部材7cとで略三角形状に形成されている。固定部材7は、建物6及び仮設足場1の下方に位置し、棒状部材7aが建物6に固定され、棒状部材7bが仮設足場1に固定されている。
このような構成により、建物6に対して仮設足場1が強固に連結され、地震に応じた建物6の揺れに対して仮設足場1が追従するため、建物6と滑り支承体4上の仮設足場1との挙動が一致することから、仮設足場の耐震性をさらに高めることができる。
なお、固定部材7は、建物6に対して仮設足場1を固定できる限り、いずれの形状でも素材でもよい。
【0021】
次に、図1を参照しつつ、仮設足場形成方法を説明する。
【0022】
地面に敷設した敷板5の上かつ建物6に併設するように、仮設足場1を組み立てる。仮設足場1としては、少なくとも4本の支柱2と足場3とを備えたものとする。仮設足場1の組み立て後、敷板5と隣接する2本の支柱2との間に滑り支承体4を履かせるように配設する。さらに、建物6と仮設足場1との下方部分同士が連結するように、固定部材7を双方に固定する。
このような仮設足場1の形成方法により、地震の揺れに応じて、仮設足場1が配置された滑り支承体4が敷板5をスライドし、仮設足場1の支柱2はそのまま滑り支承体4上にて保持されるので、仮設足場1に損傷や倒壊の危険を回避することができ、建物の構造環境や工事の進捗等に関わらず、仮設足場1の耐震性を高めることができる。また、仮設足場1の支柱2は滑り支承体4を介して敷板5の上に保持されるため、一般的な仮設足場に適用することができる。また、地震等により免震設備を有する建物が揺動した際には、滑り支承体4によって仮設足場1も建物本体に呼応するため、建物本体や仮設足場に損傷を与えることもなく、損傷によって仮設足場が倒壊することも防止することができる。
なお、仮設足場形成方法は、本発明の目的を達して所望の効果を得られれば、いずれの方法や手順でもよい。
【0023】
本発明は、以上に述べた実施形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で種々の構成又は実施形態を取ることができる。
【符号の説明】
【0024】
1 仮設足場
2 支柱
3 足場部
4 滑り支承体
5 敷板
6 建物
7 固定部材
図1
図2