IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サッポロビール株式会社の特許一覧

特許7202093ビールテイスト飲料及びその製造方法並びにビールテイスト飲料の濁りを抑制する方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-27
(45)【発行日】2023-01-11
(54)【発明の名称】ビールテイスト飲料及びその製造方法並びにビールテイスト飲料の濁りを抑制する方法
(51)【国際特許分類】
   C12C 5/02 20060101AFI20221228BHJP
   C12G 3/021 20190101ALI20221228BHJP
   A23L 2/70 20060101ALI20221228BHJP
   C12C 7/14 20060101ALI20221228BHJP
   C12C 7/24 20060101ALI20221228BHJP
   C12C 7/26 20060101ALI20221228BHJP
【FI】
C12C5/02
C12G3/021
A23L2/00 K
C12C7/14
C12C7/24
C12C7/26
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018136082
(22)【出願日】2018-07-19
(65)【公開番号】P2020010655
(43)【公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】303040183
【氏名又は名称】サッポロビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100176773
【弁理士】
【氏名又は名称】坂西 俊明
(72)【発明者】
【氏名】佐野 友洋
(72)【発明者】
【氏名】片山 雄大
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-109795(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12C 1/00-13/10
C12G 3/00-3/08
FSTA/CAplus/AGRICOLA/BIOSIS/
MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料として、小麦麦芽及びでんぷん原料を含有し、
濁度が0.45以下であり、
前記小麦麦芽の含有量が、前記原料中の麦芽の全重量に対して、30重量%以上である、ビールテイスト発酵飲料。
【請求項2】
前記でんぷん原料がこしょうである、請求項1に記載のビールテイスト発酵飲料。
【請求項3】
前記小麦麦芽の含有量が、前記原料中の麦芽の全重量に対して、40重量%以上である、請求項1又は2に記載のビールテイスト発酵飲料。
【請求項4】
下面発酵ビールテイスト飲料である、請求項1~3のいずれか一項に記載のビールテイスト発酵飲料。
【請求項5】
小麦麦芽を含有する原料を糖化して麦汁を得る糖化工程と、前記糖化工程の後に麦汁をろ過する麦汁ろ過工程と、前記麦汁ろ過工程の後に麦汁を昇温して煮沸させる煮沸工程と、前記煮沸工程の後に麦汁を静置する静置工程と、前記静置工程の後に麦汁を冷却する冷却工程とを備え、
前記麦汁ろ過工程以降前記冷却工程までのいずれかで、前記麦汁にこしょうを添加することを含み、
前記小麦麦芽の含有量が、前記原料中の麦芽の全重量に対して、30重量%以上である、ビールテイスト飲料の製造方法。
【請求項6】
ビールテイスト飲料の濁りを抑制する方法であって、
小麦麦芽を含有する原料を糖化して麦汁を得る糖化工程と、前記糖化工程の後に麦汁をろ過する麦汁ろ過工程と、前記麦汁ろ過工程の後に前記麦汁を昇温して煮沸させる煮沸工程と、前記煮沸工程の後に麦汁を静置する静置工程と、前記静置工程の後に麦汁を冷却する冷却工程とを備えるビールテイスト飲料の製造方法において、
前記麦汁ろ過工程以降前記冷却工程までのいずれかで、前記麦汁にこしょうを添加することを含み、
前記小麦麦芽の含有量が、前記原料中の麦芽の全重量に対して、30重量%以上である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビールテイスト飲料及びその製造方法並びにビールテイスト飲料の濁りを抑制する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビールテイスト飲料の原料として、小麦麦芽が用いられる場合がある。しかしながら、原料として小麦麦芽を含有するビールテイスト飲料は、濁りが発生する場合があった(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-000038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
濁りのない製品を提供するために、ろ過を行ってから製品を販売することが知られている。しかし、ろ過を行っても、濁度が高いことがあった。また、時間経過と共に濁りが生じてしまうという課題があった。
【0005】
そこで、本発明は、原料として小麦麦芽を含有しながら、濁りが抑制されたビールテイスト飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、原料として、小麦麦芽及びでんぷん原料を含有し、濁度が0.45以下である、ビールテイスト飲料を提供する。本発明に係るビールテイスト飲料は、上記構成を有することにより、濁りが抑制されたものとなっている。
【0007】
本発明のビールテイスト飲料において、でんぷん原料は、こしょうであってよい。この場合、本発明による効果がより顕著に奏されると共に、ビールテイスト飲料が好ましい香りを付与されたものとなる。
【0008】
小麦麦芽の含有量は、原料中の麦芽全量に対して、40重量%以上であってよい。また、本発明のビールテイスト飲料は、下面発酵ビールテイスト飲料であってよい。
【0009】
本発明は、小麦麦芽を含有する原料を糖化して麦汁を得る糖化工程と、糖化工程の後に麦汁をろ過する麦汁ろ過工程と、麦汁ろ過工程の後に麦汁を昇温して煮沸させる煮沸工程と、煮沸工程の後に麦汁を静置する静置工程と、静置工程の後に麦汁を冷却する冷却工程とを備え、麦汁ろ過工程以降冷却工程までのいずれかで、麦汁にでんぷん原料を添加することを含む、ビールテイスト飲料の製造方法を提供する。
【0010】
本発明は、ビールテイスト飲料の濁りを抑制する方法であって、小麦麦芽を含有する原料を糖化して麦汁を得る糖化工程と、糖化工程の後に麦汁をろ過する麦汁ろ過工程と、麦汁ろ過工程の後に麦汁を昇温して煮沸させる煮沸工程と、煮沸工程の後に麦汁を静置する静置工程と、静置工程の後に麦汁を冷却する冷却工程を備えるビールテイスト飲料の製造方法において、麦汁ろ過工程以降冷却工程までのいずれかで、麦汁にでんぷん原料を添加することを含む、方法と捉えることもできる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、原料として小麦麦芽を含有しながら、濁りが抑制されたビールテイスト飲料を提供することが可能となる。更に、本発明のビールテイスト飲料は、物理的耐久性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0013】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料として、小麦麦芽及びでんぷん原料を含有し、濁度が0.45以下である。本実施形態に係るビールテイスト飲料は、上記構成を有するため、濁りが抑制されている。
【0014】
本実施形態に係るビールテイスト飲料の濁りが抑制されている理由は明らかではないが、本発明者等は、次のように推察している。まず、麦汁ろ過工程以降冷却工程までの間で、でんぷん原料を麦汁に含有させることにより、麦汁中ででんぷん原料に由来するゲル状物が形成される。形成されたゲル状物が、麦汁に含まれる濁りのもととなる物質を吸着することにより、ビールテイスト飲料の濁りが抑制されることになると考えられる。
【0015】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、物理的耐久性(「混濁耐久性」及び「濁りの物理的耐久性」ともいう。)にも優れている。すなわち、本実施形態に係るビールテイスト飲料は、濁りが抑制されていることに加えて、温度及び時間経過等に伴う濁度の上昇が抑制されている。
【0016】
本明細書において、ビールテイスト飲料とは、ビール様の香味を有する飲料を意味する。ビールテイストアルコール飲料としては、例えば、酒税法(平成二九年三月三一日法律第四号)上のビール、発泡酒、その他の醸造酒、リキュールに分類されるものが挙げられる。
【0017】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、アルコール度数(濃度)が1.0v/v%以上であるビールテイストアルコール飲料であってもよく、アルコール度数が1.0v/v%未満であるノンアルコールビールテイスト飲料であってもよい。なお、本明細書においてアルコールとは、特に言及しない限りエタノールを意味する。
【0018】
本実施形態に係るビールテイスト飲料のアルコール度数は、例えば、1.0v/v%以上であってよく、2.0v/v%以上であってよく、3.0v/v%以上であってよく、4.0v/v%以上であってよい。アルコール度数の上限は、例えば、20.0v/v%未満であってよく、10.0v/v%以下であってよく、9.0v/v%以下であってよく、8.0v/v%以下であってよく、7.0v/v%以下であってよく、6.0v/v%以下であってよく、5.0v/v%以下であってもよい。
【0019】
本明細書において、原料とは、ビールテイスト飲料の製造に用いられる全原料のうち、水及びホップ以外のものを意味する。
【0020】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料として、小麦麦芽を含有する。麦芽は、麦を発芽させることにより得ることができる。麦芽にはモルトエキスが含まれる。モルトエキスは、麦芽から糖分及び窒素分を含むエキス分を抽出することにより得られる。
【0021】
原料中の麦芽の比率は、例えば、20重量%以上、40重量%以上、50重量%以上、70重量%以上又は95重量%以上であってよい。
【0022】
原料中の小麦麦芽の含有量は、原料中の麦芽全量に対して、20重量%以上、30重量%以上又は45重量%以上であってよく、90重量%以下、80重量%以下、70重量%以下又は60重量%以下であってよい。
【0023】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料として、小麦以外の麦麦芽(他の麦芽)を更に含有することが好ましい。小麦以外の麦としては、例えば、大麦、ライ麦、オーツ麦、ハト麦、等が挙げられる。他の麦芽は、大麦麦芽を含むことが好ましい。他の麦芽は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料として、麦芽以外の麦原料を含んでいてもよい。麦芽以外の麦原料としては、例えば、大麦、小麦、ライ麦、オーツ麦及びハト麦等の麦、並びに麦エキス等の麦加工物が挙げられる。麦エキスは、麦から糖分及び窒素分を含む麦エキス分を抽出することにより得られる。麦芽以外の麦原料は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料として、でんぷん原料を含有する。でんぷん原料とは、でんぷんを含有する原料であって、麦原料以外の原料を意味する。でんぷん原料は、麦芽を含有する原料を糖化して得られる麦汁に添加される。でんぷん原料は、煮沸した麦汁に添加されるものであってよい。でんぷん原料は、例えば、こしょう等のでんぷんを含有する香辛料又はその原料、かんしょ、かぼちゃ等の野菜(野菜を乾燥させ、又は煮つめたものを含む。)、そば、ごま、スターチ、グリッツ等であってよい。でんぷん原料としては、でんぷんを含有する含糖質物を使用してもよい。でんぷん原料は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
こしょうは、コショウ科に属する蔓性の植物の果実を加工した香辛料又はその原料である。こしょうは、黒こしょう(ブラックペッパー)であってもよく、白こしょう、赤こしょう、青こしょうであってもよい。でんぷん原料は、濁りの抑制効果がより顕著に奏されると共に、ビールテイスト飲料に、好ましい香りを付与しやすい観点から、好ましくはこしょうであり、より好ましくは黒こしょう(ブラックペッパー)である。
【0027】
原料中のでんぷん原料の含有量は、原料全量に対して、0.1重量%以上、1重量%以上、3重量%以上又は4重量%以上であってよく、10重量%以下又は5重量%以下であってよい。
【0028】
本実施形態に係るビールテイスト飲料の濁度は、0.45以下である。ビールテイスト飲料の濁度は、濁度計により測定された90°散乱光濁度である。ビールテイスト飲料の濁度は、0.42以下、0.40以下、0.39以下、0.38以下、0.37以下、0.36以下、0.35以下又は0.34以下であってよく、0.05以上、0.10以上、0.15以上、0.20以上、0.25以上又は0.30以上であってよい。
【0029】
なお、ビールテイスト飲料の濁度は、文献(「改訂 BCOJビール分析法 2013年増補改訂、ビール酒造組合国際技術委員会(分析委員会)編、公益財団法人日本醸造協会発行」の「8.17 混濁度-濁度計の校正-」)に記載の方法に従い校正された濁度計により測定される。
【0030】
ビールテイスト飲料の濁度は、原料の種類及び使用量を制御することにより、調整することができる。具体的には、ビールテイスト飲料の濁度は、原料として使用する小麦麦芽の使用量を制御することにより調整することができるし、原料として使用するでんぷん原料の種類及びその使用量を制御することにより調整することもできる。
【0031】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料として、麦芽及びでんぷん原料以外の原料(他の原料)を含んでいてもよい。他の原料は、例えば、食塩、果実(果実を乾燥させたもの、若しくは煮つめたもの、又は濃縮させた果汁を含む)であってもよい。果実は、例えば、果皮であってよく、柑橘類の果皮(ピール)であってよい。
【0032】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、発酵飲料(ビールテイスト発酵飲料)であってよい。発酵飲料は、酵母等による発酵を経て製造されるものである。使用される酵母としては、上面発酵酵母、又は下面発酵酵母が挙げられる。ビールテイスト飲料は、上面発酵酵母及び下面発酵酵母からなる群より選択される少なくとも1種による発酵飲料であってよく、上面発酵酵母及び下面発酵酵母のいずれか一方による発酵飲料であってもよい。本実施形態に係るビールテイスト飲料は、下面発酵酵母による発酵飲料である下面発酵ビールテイスト飲料であってよい。
【0033】
本実施形態に係るビールテイスト飲料の苦味価(BU)は、例えば、1~50であってよい。苦味価の下限は、5以上であってよく、10以上であってもよく、15以上であってよく、20以上であってよい。苦味価の上限は40以下であってよく、30以下であってよい。
【0034】
苦味価は、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集、2013年増補改訂)の「8.15 苦味価」に記載されている方法により測定することができる。
【0035】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、本発明による効果を阻害しない限り、飲料に通常配合される着色料、酸化防止剤、酸味料、苦味料等の添加剤を含有してもよい。
【0036】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、非発泡性であってもよく、発泡性であってもよい。ここで、非発泡性とは、20℃におけるガス圧が0.049MPa(0.5kg/cm)未満であることをいい、発泡性とは、20℃におけるガス圧が0.049MPa(0.5kg/cm)以上であることをいう。発泡性とする場合、ガス圧の上限は0.294MPa(3.0kg/cm)程度としてもよい。
【0037】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、容器に入れて提供することができる。容器は密閉できるものであればよく、金属製(アルミニウム製又はスチール製など)のいわゆる缶容器・樽容器を適用することができる。また、容器は、ガラス容器、ペットボトル容器、紙容器、パウチ容器等を適用することもできる。容器の容量は特に限定されるものではなく、現在流通しているどのようなものも適用することができる。なお、気体、水分及び光線を完全に遮断し、長期間常温で安定した品質を保つことが可能な点から、金属製の容器を適用することが好ましい。
【0038】
本実施形態に係るビールテイスト飲料の製造方法は、小麦麦芽を含有する原料を糖化して麦汁を得る糖化工程と、糖化工程の後に麦汁をろ過する麦汁ろ過工程と、麦汁ろ過工程の後に麦汁(ろ過した麦汁)を昇温して煮沸させる煮沸工程と、煮沸工程の後に麦汁を静置する静置工程と、静置工程の後に麦汁を冷却する冷却工程とを備え、麦汁ろ過工程以降冷却工程までのいずれかで、麦汁にでんぷん原料を添加することを含む。麦汁とは、麦等の原料の糖化を経て得られる液体であり、未発酵のものである。麦汁には、糖化工程を経て得られる液(糖化液)に加えて、煮沸した麦汁(熱麦汁)等も含まれる。
【0039】
糖化工程には、準備段階として、小麦麦芽を含有する原料と水とを混合する工程も含まれる。糖化工程は、例えば、原料と水とを混合して原料を糖化して麦汁を得るものであってよい。麦汁ろ過工程では、糖化工程の後に、得られた麦汁のろ過を行う。
【0040】
煮沸工程では、麦汁ろ過工程で得られる麦汁を昇温して煮沸させる。静置工程では、煮沸後不溶物を除去するために静置を行う。また、冷却工程では、静置工程後に麦汁の冷却を行う。
【0041】
本実施形態に係るビールテイスト飲料の製造方法において、麦汁にでんぷん原料を添加するタイミングは、麦汁ろ過工程以降冷却工程までのいずれかであればよく、煮沸工程であってよい。
【0042】
でんぷん原料を麦汁ろ過工程以降冷却工程までの間で麦汁に添加することにより、麦芽に含まれる酵素等により分解される前に、でんぷんをゲル化することができる。でんぷん原料は、煮沸させた状態の麦汁に添加してもよく、昇温の過程(昇温開始後煮沸前)で麦汁に添加してもよく、煮沸後静置中に添加してもよい。でんぷん原料は、ビールテイスト飲料の濁りがより抑制されると共に、ビールテイスト飲料に好ましい香りを付与可能な観点から、こしょうであることが好ましい。
【0043】
でんぷん原料の添加量は、原料全量に対して、原料全重量に対して、0.1重量%以上、1重量%以上、3重量%以上又は4重量%以上であってよく、10重量%以下又は5重量%未満であってよい。
【0044】
一実施形態に係るビールテイスト飲料の製造方法は、発酵工程を更に備える。発酵工程では、麦汁を酵母により発酵させる。発酵工程では、酵母を添加してアルコール発酵が行われる。より具体的には、発酵前液に酵母を接種して発酵させ、酵母により生成するアルコールを含む発酵後液を得る。発酵工程における酵母は、好ましくは下面発酵酵母である。
【0045】
本実施形態に係る製造方法では、発酵工程後の発酵後工程として、発酵工程で得られた発酵後液に対してろ過、加熱(殺菌)、各種添加剤(例えば、着色料、酸化防止剤、酸味料、苦味料、香料)の添加、アルコールの添加、カーボネーション等を行ってもよい。発酵後工程で添加するアルコールとしては、例えば、スピリッツを用いることができる。
【0046】
ビールテイスト飲料の製造工程において、必要に応じ、麦汁又は発酵後液にホップを添加してよい。ホップは、煮沸工程前の麦汁に添加してもよく、煮沸工程で麦汁に添加してもよく、静置工程で添加してもよく、発酵前液に添加してもよく、発酵工程で添加してもよく、発酵後工程において、発酵後液に添加してもよい。添加するホップとしては、例えば、乾燥ホップ、ホップペレット、ホップエキスを用いることができる。ホップは、ローホップ、ヘキサホップ、テトラホップ、イソ化ホップエキス等のホップ加工品であってもよい。
【0047】
ノンアルコールビールテイスト飲料を製造する場合、発酵を行わずに製造してもよいし、通常のビール等のビールテイスト飲料と同様に発酵を行ってアルコールを生成させた後に、蒸留又は希釈によりアルコールを除去又は低減させる方法、または発酵期間を短くすることによってアルコールの生成を抑える方法等を実施してもよい。
【0048】
本実施形態に係るビールテイスト飲料の原麦汁エキス濃度は、10~15g/100cmであることが好ましい。原麦汁エキス濃度は、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集、2013年増補改訂)の「8.5 エキス関係計算法」に記載されている方法により測定することができる。
【0049】
本実施形態に係るビールテイスト飲料の製造方法によれば、濁りが抑制され、物理的耐久性(濁りの物理的耐久性)に優れたビールテイスト飲料を得ることができる。したがって、本発明の一実施形態として、ビールテイスト飲料の濁りを抑制する方法であって、小麦麦芽を含有する原料を糖化して麦汁を得る糖化工程と、糖化工程の後に麦汁をろ過する麦汁ろ過工程と、麦汁ろ過工程の後に麦汁を昇温して煮沸させる煮沸工程と、煮沸工程の後に麦汁を静置する静置工程と、静置工程の後に麦汁を冷却する冷却工程とを備えるビールテイスト飲料の製造方法において、麦汁ろ過工程以降冷却工程までのいずれかで、麦汁にでんぷん原料を添加することを含む、方法が提供される。
【実施例
【0050】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0051】
〔試験例1:ビールテイスト飲料の製造及び官能評価〕
ビールテイスト飲料を以下の方法により調製した。まず、大麦麦芽及び小麦麦芽と、水とを混合した後、常法により糖化して、麦汁(糖化液)を得た(糖化工程)。麦汁をろ過した後(麦汁ろ過工程)、麦汁を昇温して煮沸させた(煮沸工程)。煮沸工程において、でんぷん原料であるこしょう及びホップを、煮沸させた状態の麦汁に添加した。煮沸工程後の麦汁(熱麦汁)に対し、沈殿による不溶物の除去(静置工程)、冷却(冷却工程)等を行って、冷麦汁(発酵前液)を得た。次いで、冷麦汁に、下面発酵酵母(ビール酵母)を添加して発酵させ、発酵後液を得た(発酵工程)。貯酒して、発酵後液を熟成させた。貯酒後の液(貯酒液)をろ過して、実施例1のビールテイスト飲料を得た。ビールテイスト飲料は、アルコール濃度が5.0v/v%であり、苦味価(BU)が24であった。原料中の麦芽全量に対する原料中の小麦麦芽及び大麦麦芽の含有量は、表1に示すとおりであった。実施例1のビールテイスト飲料において、原麦汁エキス(主バイ)濃度は、約12.0g/100cmとなるように調整した。
【0052】
比較用のビールテイスト飲料として、比較例1及び2のビールテイスト飲料を常法により、調製した。比較例1のビールテイスト飲料では、発酵工程における酵母として上面発酵酵母を使用した。比較例1及び2のビールテイスト飲料において、原料中の麦芽全量に対する、原料中の小麦麦芽及び大麦麦芽の含有量は、表1に示すとおりであった。比較例1及び比較例2のビールテイスト飲料は、いずれもビールテイスト飲料の製造過程ででんぷん原料を添加されたものではない。比較例1及び2のビールテイスト飲料は、苦味価がそれぞれ19及び20であり、原麦汁エキス濃度が、それぞれ約12.5g/100cm及び約12.0g/100cmであった。
【0053】
苦味価は、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集、2013年増補改訂)の「8.15 苦味価」に記載されている方法によって測定した。
【0054】
濁度の測定は、液温約20℃の条件で、濁度計(Haffmans社製)を用いて90°散乱光濁度を測定することにより、実施した。
【0055】
また、物理的耐久性(混濁耐久性)の指標であるFT-3を実施した。すなわち、60℃の水浴中に3日間浸漬し、次いで0℃に1日保持した後、濁度計(Haffmans社製、90°散乱光を測定)で濁度を測定した。
【0056】
【表1】
【0057】
実施例1のビールテイスト飲料は、原料として、でんぷん原料を含有しない比較例1~2のビールテイスト飲料と比べて、濁度が低く、濁りが抑制されていた。更に、実施例1のビールテイスト飲料は、比較例1~2のビールテイスト飲料と比べて、物理的耐久性にも優れていた。