(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-27
(45)【発行日】2023-01-11
(54)【発明の名称】測位装置、測位方法、および、測位プログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 19/41 20100101AFI20221228BHJP
G01S 19/07 20100101ALI20221228BHJP
【FI】
G01S19/41
G01S19/07
(21)【出願番号】P 2018136592
(22)【出願日】2018-07-20
【審査請求日】2021-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000166247
【氏名又は名称】古野電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高山 洋史
【審査官】山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-525491(JP,A)
【文献】特開2016-194417(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0090888(US,A1)
【文献】特表2018-502276(JP,A)
【文献】特開平07-280913(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 19/00-19/55
G01S 5/00- 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信した測位信号を用いて、基準局と自装置との距離を算出する距離算出部と、
前記測位信号から局部的な領域に有効な局部測位補強情報を取得する局部測位補強情報取得部と、
前記局部的な領域よりも広域に有効な広域測位補強情報を取得する広域測位補強情報取得部と、
前記距離が切り替え用の閾値よりも大きいか否かを判定する判定部と、
前記判定部によって前記距離が前記閾値以下であることが判定されれば、前記局部測位補強情報を用いて測位演算を行い、前記判定部によって前記距離が前記閾値よりも大きいことが判定されれば、前記局部測位補強情報を用いずに
前記広域測位補強情報を用いて測位演算を行う演算部と、
を備え
、
前記判定部は、前記閾値として、前記距離が遠くなる場合に用いる第1閾値と、前記第1閾値と異なる値であり、前記距離が近くなる場合に用いる第2閾値と、を有し、
前記第1閾値は、前記局部測位補強情報のサービスエリアに基づく判定用の基本距離と、前記局部測位補強情報を用いた測位のばらつきと、を用いて算出され、
前記第2閾値は、前記基本距離と、前記広域測位補強情報を用いた測位のばらつきと、を用いて算出される、
測位装置。
【請求項2】
受信した測位信号を用いて、基準局と自装置との距離を算出し、
前記測位信号から局部的な領域に有効な局部測位補強情報を取得し、
前記局部的な領域よりも広域に有効な広域測位補強情報を取得し、
前記距離が切り替え用の閾値よりも大きいか否かを判定し、
前記距離が前記閾値以下であれば前記局部測位補強情報を用いて測位演算を行い、前記距離が前記閾値よりも大きければ前記局部測位補強情報を用いずに
前記広域測位補強情報を用いて測位演算を行
い、
前記閾値として、前記距離が遠くなる場合に用いる第1閾値と、前記第1閾値と異なる値であり、前記距離が近くなる場合に用いる第2閾値と、を有し、
前記第1閾値は、前記局部測位補強情報のサービスエリアに基づく判定用の基本距離と、前記局部測位補強情報を用いた測位のばらつきと、を用いて算出され、
前記第2閾値は、前記基本距離と、前記広域測位補強情報を用いた測位のばらつきと、を用いて算出される、
測位方法。
【請求項3】
受信した測位信号を用いて、基準局と自装置との距離を算出し、
前記測位信号から局部的な領域に有効な局部測位補強情報を取得し、
前記局部的な領域よりも広域に有効な広域測位補強情報を取得し、
前記距離が切り替え用の閾値よりも大きいか否かを判定し、
前記距離が前記閾値以下であれば前記局部測位補強情報を用いて測位演算を行い、前記距離が前記閾値よりも大きければ前記局部測位補強情報を用いずに
前記広域測位補強情報を用いて測位演算を行
い、
前記閾値として、前記距離が遠くなる場合に用いる第1閾値と、前記第1閾値と異なる値であり、前記距離が近くなる場合に用いる第2閾値と、を設定しており、
前記第1閾値は、前記局部測位補強情報のサービスエリアに基づく判定用の基本距離と、前記局部測位補強情報を用いた測位のばらつきと、を用いて算出され、
前記第2閾値は、前記基本距離と、前記広域測位補強情報を用いた測位のばらつきと、を用いて算出される、
処理を演算処理装置に実行させる測位プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測位用の補強情報を利用した測位技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に示すような測位補強システムが提案されている。この測位補強システムは、個別地域毎に測位補強情報を生成する。
【0003】
測位補強情報は、準天頂衛星を介して、測位装置に提供される。測位装置は、この測位補強情報を用いて、測位を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような測位補強システムでは、基準局の位置の応じたサービスエリアが設定されている。測位補強情報による測位の精度は、サービスエリア内に測位装置が存在する場合に保証されている。
【0006】
しかしながら、サービスエリア内であっても、測位装置が基準局から離れると、測位補強情報を用いても、測位精度が劣化する場合がある。
【0007】
したがって、本発明の目的は、測位装置が基準局から遠くなっても、測位精度の劣化を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の測位装置は、距離算出部、局部測位補強情報取得部、判定部、および、演算部を備える。距離算出部は、受信した測位信号を用いて、基準局と自装置との距離を算出する。局部測位補強情報取得部は、局部的な領域に有効な局部測位補強情報を取得する。判定部は、距離が切り替え用の閾値よりも大きいか否かを判定する。演算部は、判定部によって距離が閾値以下であることが判定されれば、局部測位補強情報を用いて測位演算を行い、判定部によって距離が閾値よりも大きいことが判定されれば、局部測位補強情報を用いずに測位演算を行う。
【0009】
この構成では、基準局と自装置との距離が遠くなる場合に、局部測位補強情報を用いた測位を行わない。これにより、距離が遠い位置で局部測位補強情報を用いることによる意図しない誤差は生じない。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、測位装置が基準局から遠くなっても、測位精度の劣化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る測位装置の機能ブロック図である。
【
図2】(A)、(B)は、本発明の実施形態に係る測位装置を含む測位システムの概要を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る測位方法の第1態様を示すフローチャートである
【
図4】本発明の実施形態に係る測位方法の第2態様を示すフローチャートである
【
図5】本発明の実施形態に係る測位方法の第3態様を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の実施形態に係る測位方法の第3態様の概念を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態に係る測位装置、測位方法、および、測位プログラムについて、図を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る測位装置の機能ブロック図である。
図2は、本発明の実施形態に係る測位装置を含む測位システムの概要を示す図である。
図2(A)は、基準局と測位装置との距離が閾値よりも小さい場合を示しており、
図2(B)は、基準局と測位装置との距離が閾値よりも大きい場合を示している。
図3は、本発明の実施形態に係る測位方法の概要を示すフローチャートである。
【0013】
(測位システム1の概要)
測位装置10は、
図2に示すような測位システム1で得られる各種の情報を用いて、測位を行う。
図2に示すように、測位システム1は、基準局91、測位衛星81、測位衛星82、および、測位衛星83を備える。なお、
図2では、測位衛星81、測位衛星82、および、測位衛星83は、それぞれ1機ずつしか記載していないが、測位衛星82は、複数機存在し、測位衛星81および測位衛星83は、複数機であることが好ましい。
【0014】
測位衛星81は、例えば、準天頂衛星であり、測位信号SSを送信している。測位衛星81の測位信号SSには、局部的な領域に有効な測位の補強用である局部測位補強情報DNが重畳されている。測位衛星82は、一般的なGNSS(Grobal Navigation Satellite System)の衛星であり、航法メッセージを重畳させた測位信号SSを送信している。測位衛星83は、所謂、広域ディファレンシャル測位用の衛星であり、測位信号SSを送信している。測位衛星83の測位信号SSには、局部的な領域よりも広域に有効な測位の補強用である広域測位補強情報DWが重畳されている。広域測位補強情報DWは、例えば、SBAS(Satellite-ばせd augmentation system)によって得られる補強情報である。
【0015】
基準局91は、サブメータ級測位補強サービス(例えば、みちびき)の基準局である。基準局91の設置位置は、サービスの仕様に基づいて決まっている。したがって、基準局91の位置は、システムの仕様等に基づいて既知である。基準局91は、測位衛星82からの測位信号に基づいて測位を行う。基準局91は、測位信号を用いて測位した位置と既知の位置とを用いて、擬似距離補正値を含む測位の補強情報DN91を生成する。擬似距離補正値は、例えば、測位衛星の時計誤差、電離層遅延誤差、対流圏遅延誤差を含む誤差に基づく補正値として設定されている。基準局91は、補強情報DN91を、測位衛星81に送信する。
【0016】
なお、
図2では、基準局は、測位装置10の最も近い1局しか記載していないが、例えば、サブメータ級測位補強サービス(例えば、みちびき)の仕様書等に記載のように、基準局は複数局存在し、各基準局は予め決められた位置に配置されている。そして、各基準局は、補強情報を生成し、測位衛星81に送信している。測位衛星81は、各基準局の識別データと各基準局の補強情報とを用いて、局部測位補強情報DNを生成する。なお、局部測位補強情報DNには、基準局の位置を含んでいてもよい。
【0017】
測位装置10は、概略的には、測位衛星81、測位衛星82、および、測位衛星83からの測位信号SSを受信して、測位を行う。この際、測位装置10は、後述の判定に応じて、測位衛星81からの局部測位補強情報DNを利用して測位(ディファレンシャル測位)を行うか、局部測位補強情報DNを利用せずに測位を行う。測位装置10は、局部測位補強情報DNを利用しない場合には、広域測位補強情報DWを利用して測位を行うか、広域測位補強情報DWも利用せずに測位を行う。
【0018】
(測位装置10の構成および処理)
図1に示すように、測位装置10は、アンテナ20、受信部30、測位部40、局部測位補強情報取得部51、および、広域測位補強情報取得部52を備える。受信部30は、例えば、電子部品、IC等によって実現される。測位部40、局部測位補強情報取得部51、および、広域測位補強情報取得部52は、例えば、それぞれの機能を実現するプログラムと、プログラムを記憶する記憶媒体と、プログラムを実行するCPU等の演算処理装置とによって実現される。
【0019】
アンテナ20は、測位衛星81、測位衛星82、および、測位衛星83からの測位信号SSを受波して、受信部30に出力する。上述のように、測位衛星81からの測位信号SSには、局部測位補強情報DNが重畳されている。また、測位衛星83からの測位信号SSには、広域測位補強情報DWが重畳されている。また、測位衛星81、測位衛星82、および、測位衛星83からの測位信号SSには、航法メッセージが重畳されている。
【0020】
受信部30は、測位衛星81、測位衛星82、および、測位衛星83の測位信号SSを捕捉、追尾する。受信部30は、測位衛星81、測位衛星82、および、測位衛星83の測位信号SSのコードを、測位部40に出力する。受信部30は、測位衛星81の測位信号SSのコードを、局部測位補強情報取得部51に出力する。受信部30は、測位衛星83の測位信号SSのコードを、広域測位補強情報取得部52に出力する。
【0021】
局部測位補強情報取得部51は、測位衛星81の測位信号SSのコードから、局部測位補強情報DNを復調する。局部測位補強情報取得部51は、局部測位補強情報DNを、測位部40に出力する。
【0022】
広域測位補強情報取得部52は、測位衛星83の測位信号SSのコードから、広域測位補強情報DWを復調する。広域測位補強情報取得部52は、広域測位補強情報DWを、測位部40に出力する。
【0023】
測位部40は、距離算出部41、判定部42、および、演算部43を備える。測位衛星81、測位衛星82、および、測位衛星83の測位信号SSのコードは、距離算出部41に入力される。局部測位補強情報DNおよび広域測位補強情報DWは、演算部43に入力される。
【0024】
距離算出部41は、コードを用いて測位を行う。距離算出部41で行われる測位は、距離算出用の単独測位である。距離算出部41は、算出した位置と基準局91の位置とから、測位装置10と基準局91との距離DISを算出する。距離算出部41は、距離DISを判定部42に出力する。
【0025】
判定部42は、閾値Dthを予め記憶している。閾値Dthは、サブメータ級測位補強サービスのサービスエリアを定義する距離に基づいて決定されている。閾値Dthは、サービスエリアを定義する距離Lsよりも小さく設定されている。例えば、閾値Dthは、距離Lsの約80%から約90%に設定されている。この値は、一例であり、例えば、局部測位補強情報DNを用いた測位の精度と、測位位置から基準局までの距離との関係を予め取得しておき、測位の精度が所望値よりも低下する距離、または、低下率が大幅に大きくなる距離等を、閾値Dthに設定してもよい。このような閾値Dthは、基準局毎に異なり、判定部42は、基準局毎に閾値Dthを記憶している。
【0026】
判定部42は、距離DISと切り替え用の閾値Dthとを比較する。
図2(A)に示すように、判定部42は、距離DISが閾値Dth以下であれば、局部測位補強情報DNを利用することを、演算部43に指示する。
図2(B)に示すように、判定部42は、距離DISが閾値Dthよりも大きければ、局部測位補強情報DNを利用しないことを、演算部43に指示する。
【0027】
演算部43は、判定部42の指示に応じて、測位を行う。具体的には、演算部43は、局部測位補強情報DNを利用する態様であれば、局部測位補強情報DNを利用して、ディファレンシャル測位を行う。これにより、局部測位補強情報DNに応じた高精度な測位が実現される。
【0028】
また、演算部43は、局部測位補強情報DNを利用しない態様であれば、局部測位補強情報DNを利用せずに、測位を行う。この際、演算部43は、広域測位補強情報DWを取得していれば、広域測位補強情報DWを利用して、ディファレンシャル測位を行う。一方、演算部43は、広域測位補強情報DWを取得していなければ、単独測位を行う。これによって、局部測位補強情報DNを利用することによる不所望な測位の精度の低下を防止できる。また、例えば、広域測位補強情報DWを利用することによって、測位装置10が基準局91から遠く離れても、測位の精度の低下をさらに抑制できる。
【0029】
上述の説明では、局部測位補強情報DNの利用の有無の切り替えと測位演算を、それぞれ別の機能部で実現する態様を示した。しかしながら、これらの処理をプログラム化して記憶媒体に記憶しており、CPU等の演算処理装置で実行するようにしてもよい。この場合、
図3または
図4に示すフローチャートに基づいて、測位は実行される。
図3は、本発明の実施形態に係る測位方法の第1態様を示すフローチャートである。
図4は、本発明の実施形態に係る測位方法の第2態様を示すフローチャートである。なお、フローの各処理の具体的な内容は上述しているので、詳細な説明は省略する。
【0030】
(第1態様)
演算処理装置は、単独測位等によって測位した位置と、最も近い基準局91の位置とから、距離DISを算出する(S11)。
【0031】
演算処理装置は、距離DISと閾値Dthとを比較する。演算処理装置は、距離DISが閾値Dth以下であれば(S12:NO)、局部測位補強情報DNを利用して、ディファレンシャル測位を行う(S14)。
【0032】
演算処理装置は、距離DISが閾値Dthよりも大きければ(S12:YES)、広域測位補強情報DWを利用して、ディファレンシャル測位を行う(S13)。
【0033】
(第2態様)
演算処理装置は、単独測位等によって測位した位置と、最も近い基準局91の位置とから、距離DISを算出する(S11)。
【0034】
演算処理装置は、距離DISと閾値Dthとを比較する。演算処理装置は、距離DISが閾値Dth以下であれば(S12:NO)、局部測位補強情報DNを利用して、ディファレンシャル測位を行う(S14)。
【0035】
演算処理装置は、距離DISが閾値Dthよりも大きければ(S12:YES)、広域測位補強情報DWが取得できているか否かを検出する。演算処理装置は、広域測位補強情報DWがあれば(S101:YES)、広域測位補強情報DWを利用して、ディファレンシャル測位を行う(S13)。演算処理装置は、広域測位補強情報DWがなければ(S101:NO)、補強情報を利用せずに、測位を行う(S102)。
【0036】
上述の説明では、測位装置10が基準局91から遠ざかる場合も近づく場合も関係なく、測位装置10と基準局91との位置関係(距離DIS)のみを用いて、局部測位補強情報DNの利用の有無を判定している。しかしながら、次に示すように、測位装置10が基準局91から遠ざかる場合と、測位装置10が基準局91に近づく場合とで、判定方法を異ならせてもよい。
【0037】
(第3態様)
図5は、本発明の実施形態に係る測位方法の第3態様を示すフローチャートである。
図6は、本発明の実施形態に係る測位方法の第3態様の概念を説明する図である。なお、
図5では、測位装置が局部測位補強情報DNを利用する領域内にいる状態をスタート状態としているが、測位装置が局部測位補強情報DNを利用しない領域内にいる状態をスタート状態としてもよい。この場合、処理は、ステップS25から開始される。
【0038】
まず、測位装置10(演算処理装置)は、局部測位補強情報DNを利用した測位を開始する(S21)。
【0039】
測位装置10の距離算出部41は、距離DISを算出する(S22)。測位装置10の判定部42は、距離DISと閾値Dth1とを比較する。閾値Dth1は、測位装置10が基準局91から遠ざかる場合の閾値であり、上述のサービスエリアに基づく閾値(判定用の基本距離に基づく閾値)Dthと、局部測位補強情報DNを用いた測位のばらつきとによって決定されている。例えば、判定部42は、局部測位補強情報DNを用いた測位のばらつきとして、局部測位補強情報DNを用いた測位の標準偏差σ1を算出する。判定部42は、閾値Dthと標準偏差σ1との加算値を、閾値Dth1に設定する。なお、測位のばらつきは、標準偏差に限るものではなく、分散等、他の統計的な値であってもよい。閾値Dth1が、本発明の第1閾値である。
【0040】
判定部42は、距離DISが閾値Dth1以下であれば(S23:NO)、局部測位補強情報DNを利用した測位を継続する(S201)。判定部42は、距離DISが閾値Dth1よりも大きければ(S23:YES)、局部測位補強情報DNの利用の停止を演算部43に指示する(S24)。そして、演算部43は、局部測位補強情報DNの利用を停止して、広域測位補強情報DWを利用した測位を開始する(S25)。
【0041】
局部測位補強情報DNの利用の停止後で、広域測位補強情報DWの利用の開始後、距離算出部41は、距離DISを算出する(S26)。
【0042】
判定部42は、距離DISと閾値Dth2とを比較する。閾値Dth2は、測位装置10が基準局91に近づく場合の閾値であり、上述のサービスエリアに基づく閾値(判定用の基本距離に基づく閾値)Dthと、広域測位補強情報DWを用いた測位のばらつきとによって決定されている。例えば、判定部42は、広域測位補強情報DWを用いた測位のばらつきとして、広域測位補強情報DWを用いた測位の標準偏差σ2を算出する。判定部42は、閾値Dthから標準偏差σ2を減算した値を、閾値Dth2に設定する。なお、測位のばらつきは、標準偏差に限るものではなく、分散等、他の統計的な値であってもよい。閾値Dth2が、本発明の第2閾値である。
【0043】
判定部42は、距離DISが閾値Dth2以上であれば(S27:NO)、広域測位補強情報DWを利用した測位を継続する(S202)。判定部42は、距離DISが閾値Dth2よりも小さければ(S27:YES)、広域測位補強情報DWの利用の停止を演算部43に指示する(S28)。そして、演算部43は、広域測位補強情報DWの利用を停止して、局部測位補強情報DNを利用した測位を開始する(S21)。
【0044】
このような処理を行うことで、
図6に示すように、測位装置10が基準局91から遠ざかる場合の閾値Dth1は、測位装置10が基準局91に近づく場合の閾値Dth2よりも大きくなる。したがって、測位装置10が基準局91から遠ざかる時に、局部測位補強情報DNの利用から広域測位補強情報DWの利用に切り替わった後に、測位の誤差によって、局部測位補強情報DNの利用に戻ってしまうことを抑制できる。また、測位装置10が基準局91に近づく時に、広域測位補強情報DWの利用から局部測位補強情報DNの利用に切り替わった後に、測位の誤差によって、広域測位補強情報DWの利用に戻ってしまうことを抑制できる。
【0045】
これにより、測位装置10は、閾値Dthの近くにいても、測位の演算を安定して行うことができる。すなわち、測位装置10は、サブメータ級測位補強サービスのサービスエリアにおける測位装置10の位置に関係なく、高精度で安定した測位を行うことできる。
【符号の説明】
【0046】
1:測位システム
10:測位装置
20:アンテナ
30:受信部
40:測位部
41:距離算出部
42:判定部
43:演算部
51:局部測位補強情報取得部
52:広域測位補強情報取得部
81、82、83:測位衛星
91:基準局