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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-27
(45)【発行日】2023-01-11
(54)【発明の名称】運転支援装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20221228BHJP
   G01C 3/06 20060101ALI20221228BHJP
【FI】
G08G1/16 C
G01C3/06 110V
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018182084
(22)【出願日】2018-09-27
(65)【公開番号】P2020052784
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076233
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 進
(74)【代理人】
【識別番号】100101661
【氏名又は名称】長谷川 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100135932
【弁理士】
【氏名又は名称】篠浦 治
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼▲橋▼ 一輝
(72)【発明者】
【氏名】吉村 礁太
(72)【発明者】
【氏名】由川 輝
(72)【発明者】
【氏名】茂木 啓輔
(72)【発明者】
【氏名】皆川 雅俊
【審査官】西中村 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-001179(JP,A)
【文献】特開平11-039596(JP,A)
【文献】特開2017-151048(JP,A)
【文献】特開2007-164549(JP,A)
【文献】特開2008-269494(JP,A)
【文献】特開2011-203238(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G01C 3/00- 3/32
B60R 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の前方を異なる視点から撮像するカメラとして、車幅方向に沿って互いに離間した位置に直線状に順次配置された第1のカメラ、第2のカメラ、第3のカメラ、及び、第4のカメラを備えたカメラ群と、
自車両が走行中の道路地図情報に基づいて自車両の前方において注視すべき監視領域を選択する監視領域選択手段と、
前記第1のカメラ、前記第2のカメラ、前記第3のカメラ、及び、前記第4のカメラの選択的な組合せからなる複数通りのカメラ対のうち、前記監視領域において撮像領域が重畳する1組または2組以上の前記カメラ対を選択し、選択した前記カメラ対がステレオ撮像した画像対に基づき、自車両の前方の対象までの距離情報の分布からなる距離画像を生成する距離画像生成手段と、
前記距離画像に基づき、前記監視領域の走行環境情報を認識する走行環境認識手段と、
を備えたことを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
前記走行環境情報に基づいて自車両の走行制御を行う車両制御手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記第1のカメラ、前記第2のカメラ、前記第3のカメラ、及び、前記第4のカメラは、互いに同一性能のカメラであることを特徴とする請求項1に記載の運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステレオ撮像した画像を用いて自車両の走行を制御する運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両においては、ドライバの負担を軽減して快適且つ安全な走行を実現するための運転支援装置が開発され、一部は実用化されている。この種の運転支援装置では、自車両の前方を異なる視点からステレオ撮像することで、自車前方の道路形状や各種障害物等の情報を含む走行環境情報を認識する車外環境認識装置を用いたものが実用化されている。
【0003】
さらに、走行環境情報の認識精度を向上させるための技術として、例えば、特許文献1には、遠距離用の左右1組のカメラによって前方2mから20mまでの位置を計測し、遠距離用の左右1組のカメラによって前方10mから100までの位置を計測することで、近距離用カメラと遠距離用カメラとで前方10mから20mの間にオーバーラップを有して信頼性を確保しつつ、全ての範囲の距離画像を生成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-192199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年の運転支援制御は、所謂自動運転等を含む制御へと高度化する傾向にある。これに伴い、より精緻な運転支援制御を行うためには、単に遠距離用の距離画像と近距離用の距離画像からなる2種類の距離画像の組合せから得られる走行環境情報のみならず、自車走行路の道路種別や道路形状等の道路状況に応じた最適な領域の走行環境情報を認識することが望ましい。
【0006】
その一方で、走行環境情報を必要とする領域毎に個別のステレオカメラを設けることは構造の複雑化を招く虞がある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、簡単な構成により、道路状況に応じて適切な領域の走行環境画像情報を画像認識することができる運転支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様による運転支援装置は、自車両の前方を異なる視点から撮像するカメラとして、車幅方向に沿って互いに離間した位置に直線状に順次配置された第1のカメラ、第2のカメラ、第3のカメラ、及び、第4のカメラを備えたカメラ群と、自車両が走行中の道路地図情報に基づいて自車両の前方において注視すべき監視領域を選択する監視領域選択手段と、前記第1のカメラ、前記第2のカメラ、前記第3のカメラ、及び、前記第4のカメラの選択的な組合せからなる複数通りのカメラ対のうち、前記監視領域において撮像領域が重畳する1組または2組以上の前記カメラ対を選択し、選択した前記カメラ対がステレオ撮像した画像対に基づき、自車両の前方の対象までの距離情報の分布からなる距離画像を生成する距離画像生成手段と、前記距離画像に基づき、前記監視領域の走行環境情報を認識する走行環境認識手段と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の運転支援装置によれば、簡単な構成により、道路状況に応じて適切な領域の走行環境情報を画像認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態に係り、運転支援装置の概略構成図
図2】同上、車両に搭載したカメラユニットを示す正面図
図3】同上、各カメラ対による監視領域を示す図表
図4】同上、走行環境画像情報の監視領域として遠距離中央領域と近距離中央領域とを示す説明図
図5】同上、走行環境画像情報の監視領域として近距離左領域と近距離右領域とを示す説明図
図6】同上、走行環境画像情報の監視領域として中距離左領域と中距離右領域とを示す説明図
図7】同上、監視領域選択ルーチンを示すフローチャート
図8】第2の実施形態に係り、監視領域選択ルーチンを示すフローチャート(その1)
図9】同上、監視領域選択ルーチンを示すフローチャート(その2)
図10】同上、監視領域選択ルーチンを示すフローチャート(その3)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の形態を説明する。図1乃至図7は本発明の第1の実施形態に係り、図1は運転支援装置の概略構成図、図2は車両に搭載したカメラユニットを示す正面図、図3は各カメラ対による監視領域を示す図表、図4は走行環境画像情報の監視領域として遠距離中央領域と近距離中央領域とを示す説明図、図5は走行環境画像情報の監視領域として近距離左領域と近距離右領域とを示す説明図、図6は走行環境画像情報の監視領域として中距離左領域と中距離右領域とを示す説明図、図7は監視領域選択ルーチンを示すフローチャートである。
【0012】
図1に示す運転支援装置1は、自車両M(図4参照)に搭載されている。この運転支援装置1は、周辺の走行環境情報を検出するためのユニットとしてロケータユニット11と、カメラユニット21と、を有している。さらに、運転支援装置1は、車両制御手段としての車両制御ユニット22を有している。
【0013】
ロケータユニット11は、地図情報に基づく走行環境情報として、道路地図上の自車両Mの位置(自車位置)を推定すると共に、自車位置周辺の道路地図データを取得する。一方、カメラユニット21は、自車両Mの前方を撮像した画像に基づく走行環境情報として、走行車線の左右を区画する区画線、道路形状、先行車両の有無、及び信号機等を認識する。更に、カメラユニット21は、走行環境情報として、区画線中央の道路曲率、先行車両との車間距離及び相対速度等を認識する。
【0014】
なお、以下の説明において、ロケータユニット11において認識される地図情報に基づく走行環境情報を適宜「走行環境地図情報」と称し、カメラユニット21において認識される画像情報に基づく走行環境情報を適宜「走行環境画像情報」と称す。
【0015】
ロケータユニット11は、地図ロケータ演算部12と、記憶手段としての高精度道路地図データベース18と、を有している。
【0016】
この地図ロケータ演算部12、後述する監視領域選択部21e、走行環境認識部21g、及び車両制御ユニット22は、CPU,RAM,ROM等を備える周知のマイクロコンピュータ、及びその周辺機器で構成されており、ROMにはCPUで実行するプログラムやベースマップ等の固定データ等が予め記憶されている。
【0017】
又、地図ロケータ演算部12の入力側には、自車両Mに作用する前後加速度を検出する前後加速度センサ13、前後左右各車輪の回転速度を検出する車輪速センサ14、自車両Mの角速度或いは角加速度を検出するジャイロセンサ15、複数の測位衛星から発信される測位信号を受信するGNSS(Global Navigation Satellite System / 全球測位衛星システム)受信機16、及び目的地情報入力装置17が接続されている。
【0018】
ここで、目的地情報入力装置17は、操作者である運転者が目的地情報(住所、電話番号、或いはモニタに表示された登録一覧からの選択等)を入力すると、対応する位置座標(緯度、経度)を取得し、この位置座標を目的地として設定する。
【0019】
地図ロケータ演算部12は、自車位置推定演算部12aと、道路地図情報取得部12bと、目標進行路設定演算部12cと、を備えている。
【0020】
自車位置推定演算部12aは、GNSS受信機16で受信した測位信号に基づき自車両Mの位置情報である位置座標(緯度、経度)を取得する。又、自車位置推定演算部12aは、GNSS受信機16の感度低下により測位衛星からの有効な測位信号を受信することができない環境では、加速度センサ13で検出した加速度、車輪速センサ14で検出した自車速、及び、ジャイロセンサ15で検出した角速度等基づいて移動距離と方向から自車両Mの位置座標を推定する。
【0021】
道路地図情報取得部12bは、自車両Mの位置座標と目的地情報入力装置17で設定した目的地の位置座標(緯度、経度)とを、高精度道路地図データベース18に記憶されている道路地図上にマップマッチングする。そして、両位置を特定し、現在の自車位置から目的地周辺の道路地図情報を目標進行路設定演算部12cに送信する。
【0022】
この高精度道路地図データベース18はHDD等の大容量記憶媒体であり、高精度な道路地図情報(ダイナミックマップ)が記憶されている。この高精度道路地図情報は、例えば、道路種別、道路の曲率、縦断面勾配、他の道路との交差の様子等の道路の形状を示す情報、道路白線種別、車線数、車線幅、車線中央位置座標、車線の進行方位角、制限速度等を保有しており、これらのデータは、道路地図上に数メートル間隔で格納されている。
【0023】
目標進行路設定演算部12cは、先ず、道路地図情報取得部12bでマップマッチングした現在位置と目的地とを結ぶ走行ルートを道路地図上に作成する。次いで、目標進行路設定演算部12cは、この走行ルート上に、自車両Mを自動走行させるための目標進行路(直進、交差点からの右左折、直進路であれば左車線、中央車線、右車線等の走行車線、及び車線内の横位置等)を、自車両Mの前方、数百~数キロ先までを逐次設定し更新する。そして、目標進行路設定演算部12cは、設定した目標進行路の情報とともに、目標進行路上における自車前方設定距離内の道路地図情報を、走行環境地図情報として認識する。尚、この走行環境地図情報は、監視領域選択部21e、及び、車両制御ユニット22で読込まれる。
【0024】
一方、カメラユニット21は、自車両Mの車室内前部の上部に固定されている(図2参照)。このカメラユニット21は、車幅方向中央を挟んで左右対称な位置に配設されている第1のカメラ21a、第2のカメラ21b、第3のカメラ21c、及び、第4のカメラ21dを備えたカメラ群と、監視領域選択手段としての監視領域選択部21eと、距離画像生成手段としての画像処理ユニット(IPU)21fと、走行環境認識手段としての走行環境認識部21gと、を有している。
【0025】
カメラ群を構成する第1~第4のカメラ21a~21dは、各々の撮像光学系の特性及び撮像素子の解像度等が互いに等しく設定された同一性能のカメラによって構成されている。これら第1~第4のカメラ21a~21dは、例えば、光軸が互いに平行となるように自車両Mの前方に指向された状態にて、自車両Mの右側から順に、車幅方向に沿って水平方向に、直線状となるよう一列に配置されている。
【0026】
この場合において、第1~第4のカメラ21a~21dは、例えば、光軸間距離である基線長Lが、隣接するカメラ間で互いに等しくなるよう(例えば、35cm程度)設定されている。
【0027】
なお、第1~第4のカメラ21a~21dの撮像光学系の特性や撮像素子の解像度等によっては、例えば、第1のカメラ21aと第2のカメラ21bとの基線長、及び、第3のカメラ21cと第4のカメラ21dの基線長と、第2のカメラ21bと第3のカメラ21cとの基線長と、を異なる長さに設定することも可能である。また、第1~第4のカメラ21a~21dの光軸方向は、必ずしも平行である必要はなく、例えば、第1,第4のカメラ21a,21dの光軸方向を、自車両Mの前方に対して車幅方向外側に僅かに傾けることも可能である。
【0028】
監視領域選択部21eは、自車両Mが走行中の道路地図情報を走行環境地図情報として目標進行路設定演算部12cから読み込む。そして、監視領域選択部21eは、読み込んだ自車前方の道路地図情報に基づき、以下に示す6通りの監視領域の中から、自車両Mの前方において注視すべき1または2以上の監視領域Aを選択する。
【0029】
すなわち、第1~第4のカメラ21a~21dの組合せからなるカメラ対は6通りとなる。そして、各カメラ対によって撮像される画像対は、自車両Mの前方において重なりあう撮像領域の相違によって、監視可能な領域が異なる。
【0030】
例えば、図4に示すように、第1のカメラ21aと第4のカメラ21dは、最も長い基線長3Lを有し、これらの撮像領域は自車両Mの前方の遠距離中央において重畳する。従って、第1のカメラ21aと第4のカメラ21dによってそれぞれ撮像された画像からなる画像対は、主として自車前方の遠距離中央の監視領域Alcに存在する対称を認識することが可能である。
【0031】
また、第2のカメラ21bと第3のカメラ21cは、最も短い基線長Lを有し、これらの撮像領域は自車両Mの前方の近距離中央において重畳する。従って、第2のカメラ21bと第3のカメラ21cによってそれぞれ撮像された画像からなる画像対は、主として自車前方の近距離中央の監視領域Ascに存在する対称を認識することが可能である。
【0032】
また、例えば、図5に示すように、第1のカメラ21aと第2のカメラ21bは、最も短い基線長Lを有し、これらの撮像領域は自車両Mの前方の近距離右側において重畳する。従って、第1のカメラ21aと第2のカメラ21bによってそれぞれ撮像された画像からなる画像対は、主として自車前方の近距離右側の監視領域Asrに存在する対称を認識することが可能である。
【0033】
また、例えば、図5に示すように、第3のカメラ21cと第4のカメラ21dは、最も短い基線長Lを有し、これらの撮像領域は自車両Mの前方の近距離左側において重畳する。従って、第3のカメラ21cと第4のカメラ21dによってそれぞれ撮像された画像からなる画像対は、主として自車前方の近距離左側の監視領域Aslに存在する対称を認識することが可能である。
【0034】
また、例えば、図6に示すように、第1のカメラ21aと第3のカメラ21cは、中程度の基線長2Lを有し、これらの撮像領域は自車両Mの前方の中距離右側において重畳する。従って、第1のカメラ21aと第3のカメラ21cによってそれぞれ撮像された画像からなる画像対は、主として自車前方の中距離右側の監視領域Amrに存在する対称を認識することが可能である。
【0035】
また、例えば、図6に示すように、第2のカメラ21bと第4のカメラ21dは、中程度の基線長2Lを終始、これらの撮像領域は自車両Mの前方の中距離左側において重畳する。従って、第2のカメラ21bと第4のカメラ21dによってそれぞれ撮像された画像からなる画像対は、主として自車前方の中距離左側の監視領域Amlに存在する対称を認識することが可能である。
【0036】
IPU21fは、第1~第4のカメラ21a~21dで撮像した自車両M前方の走行環境の画像を所定に画像処理する。
【0037】
具体的には、IPU21fは、第1~第4のカメラ21a~21dによって撮像された各画像の組合せからなる画像対のうち、監視領域選択部21eにおいて選択された領域Aに対応する画像対について、対応する対称を示す画素の位置のズレ量から距離情報を算出し、距離情報を含む画像情報である距離画像を生成する。
【0038】
走行環境認識部21gは、IPU21fで生成された距離画像を読込み、この距離画像に対して周知のパターンマッチング等を行うことにより走行環境画像情報を認識する。認識する走行環境画像情報には、自車両Mが走行する進行路(自車進行路)の道路形状(左右を区画する区画線の中央の道路曲率[1/m]、及び左右区画線間の幅(車幅))、交差点、信号機の点灯色、道路標識、歩行者や自転車等の横断者等が含まれている。
【0039】
車両制御ユニット22は、入力側に、地図ロケータ演算部12の目標進行路設定演算部12c、カメラユニット21の走行環境認識部21g、及び走行情報検出部31等が接続されている。走行情報検出部31は、自車両Mの車速(自車速)、加減速度、停止線までの到達時間、先行車と自車両Mとの車間距離及び相対車速等、自動運転に必要な自車両Mの走行情報を検出する各種センサ類の総称である。
【0040】
更に、この車両制御ユニット22の出力側に、自車両Mを目標進行路に沿って走行させる操舵制御部32、強制ブレーキにより自車両Mを減速及び停車させるブレーキ制御部33、自車両Mの車速を制御する加減速制御部34、及び警報装置35が接続されている。
【0041】
車両制御ユニット22は、操舵制御部32、ブレーキ制御部33、加減速制御部34を所定に制御して、GNSS受信機16で受信した自車位置を示す測位信号に基づき、自車両Mを目標進行路設定演算部12cで設定した道路地図上の目標進行路に沿って自動走行させる。その際、車両制御ユニット22は、走行環境認識部21gで認識した前方走行環境に基づき、周知の追従車間距離制御(ACC制御)、及び車線維持(ALK:Active Lane Keep)制御等を行い、先行車が検出された場合は先行車に追従し、先行車が検出されない場合は制限速度内で、自車両Mを走行車線に沿って走行させる。さらに、車両制御ユニット22は、道路上の落下物や停止車両、歩行者の飛び出し等が走行環境認識部21gで認識さえている場合、これらに対する衝突回避制御を必要に応じて行う。
【0042】
次に、上述の監視領域選択部21eにおいて行われる監視領域選択制御について、図7に示す監視領域選択ルーチンのフローチャートに従って説明する。
【0043】
このルーチンは、監視領域選択部21eにおいて設定時間毎に繰り返し実行されるものであり、ルーチンがスタートすると、監視領域選択部21eは、先ず、ステップS101において、目標進行路設定演算部12cにおいて走行環境地図情報として認識した自車走行路前方の道路地図情報を読み込む。
【0044】
続くステップS102において、監視領域選択部21eは、読み込んだ道路地図情報に基づき、自車両Mが幹線道路を走行中であるか否かを調べる。ここで、幹線道路とは、例えば、歩車道の区別があり、車道幅員が片側2車線以上と広めで、車両が高速で走行するような交通量の多い国道や一部の県道を指すものであり、高速道路も含まれる。
【0045】
そして、ステップS102において、自車両Mが幹線道路を走行中であると判断した場合、監視領域選択部21eは、ステップS103に進み、自車走行路の前方に所定の曲率以上のカーブが存在するか否かを調べる。
【0046】
そして、ステップS103において、自車走行路の前方に所定の曲率以上のカーブが存在せず、自車走行路が略直線路であると判断した場合、監視領域選択部21eは、ステップS104に進み、監視領域として、近距離中央の監視領域Asc、及び、遠距離中央の監視領域Alcを選択した後、ルーチンを抜ける。
【0047】
すなわち、略直線路となる幹線道路の走行中においては、自車両Mは所定の車速(例えば、60Km/h)以上の高速で走行することが想定される。そこで、監視領域選択部21eは、近距離中央の監視領域Ascを選択することによって自車両Mの直前方を含む比較的広範囲の走行環境情報を取得しつつ、遠距離中央の監視領域Alcを選択することによって自車両Mの遠方についても精度よく走行環境情報を取得する。
【0048】
一方、ステップS103において、自車走行路の前方に所定の曲率以上のカーブが存在すると判断した場合、監視領域選択部21eは、ステップS105に進み、監視領域として、中距離左の監視領域Aml、及び、中距離右の監視領域Amrを選択した後、ルーチンを抜ける。
【0049】
すなわち、幹線道路であっても前方にカーブが存在する場合、自車両Mはカーブへの侵入に備えて減速するため、直線路ほど高速で走行することは考えにくく、必要以上に遠距離の走行環境情報を取得する必然性は乏しい。その一方で、前方のカーブにおける走行環境情報を精度よく取得する必要がある。そこで、監視領域選択部21eは、中距離左右の監視領域Aml,Amrを選択する。
【0050】
また、ステップS102において、自車両Mが幹線道路を走行中ではないと判断した場合、すなわち、自車両Mが市街地の道路や山道等を走行中であると判断した場合、監視領域選択部21eは、ステップS106に進み、監視領域として、近距離左の監視領域Asl、及び、近距離右の監視領域Asrを選択した後、ルーチンを抜ける。
【0051】
すなわち、市街地の道路や山道等を走行する場合、自車両Mは所定の車速未満の中低速で走行することが想定されるため、比較的近距離での走行環境情報を精度よく取得できればよい。その一方で、市街地の道路や山道等では、歩行者や動物等の飛び出しにも注意する必要があるため、幹線道路に比べて監視領域を幅広く設定することが望ましい。そこで監視領域選択部21eは、近距離左右の監視領域Asl,Asrを選択する。
【0052】
このような実施形態によれば、自車両Mの前方を異なる視点から撮像するカメラとして、車幅方向に沿って互いに離間した位置に直線状に順次配置された第1のカメラ21a、第2のカメラ21b、第3のカメラ21c、及び、第4のカメラ21dを備えたカメラ群と、自車両Mが走行中の道路地図情報に基づいて自車両Mの前方において注視すべき監視領域を選択する監視領域選択部21eと、選択した監視領域において撮像領域が重畳する1組または2組以上のカメラ対をカメラ群から選択し、選択したカメラ対がステレオ撮像した画像対に基づき、自車両の前方の対称までの距離画像を生成するIPU21fと、距離画像に基づいて監視領域の走行環境情報を認識する走行環境認識部21gと、を備えたことにより、簡単な構成により道路状況に応じて適切な領域の走行環境情報を画像認識することができる。
【0053】
すなわち、第1~第4のカメラ21a~21dを車幅方向に沿って互いに離間した位置に直線状に順次配置することにより、4つのカメラにより、互いの撮像領域の重畳領域が異なる6通りのカメラ対を得ることができる。そして、監視領域選択部21eで選択した監視領域に応じて、第1~第4のカメラ21a~21dから1組または2組以上のカメラ対を選択することにより、監視領域毎に専用のカメラ対を設けることなく簡単な構成により、道路状況に応じて適切な領域の走行環境情報を画像認識することができる。
【0054】
この場合において、第1~第4のカメラ21a~21dを互いに同一性能とすることにより、選択した任意のカメラ対がステレオ撮像した画像対に基づき、適切な距離画像を生成することができる。
【0055】
次に、図8乃至図10は、本発明の第2の実施形態に係り、図8乃至図10は監視領域選択ルーチンを示すフローチャートである。なお、本実施形態は、監視領域の選択を上述の第1の実施形態に対し、より詳細に行うものである。このため、上述の第1の実施形態と同様の構成については、同符号を付して適宜説明を省略する。
【0056】
本実施形態において、監視領域選択部21eは、図8乃至図10に示す監視領域選択ルーチンのフローチャートに従って監視領域選択制御を行う。
【0057】
このルーチンは、設定時間毎に繰り返し実行されるものであり、ルーチンがスタートすると、監視領域選択部21eは、先ず、ステップS201において、目標進行路設定演算部12cにおいて走行環境地図情報として認識した自車走行路前方の道路地図情報を読み込む。
【0058】
続くステップS202において、監視領域選択部21eは、例えば、車輪速センサ14からの信号に基づいて地図ロケータ演算部12で算出された自車両Mの車速を読み込む。
【0059】
続くステップS203において、監視領域選択部21eは、読み込んだ道路地図情報に基づき、自車両Mが幹線道路を走行中であるか否かを調べる。
【0060】
そして、ステップS203において、監視領域選択部21eは、自車両Mが幹線道路を走行中であると判断した場合にはステップS204に進み、自車両Mが幹線道路を走行中出ないと判断した場合にはステップS215に進む。
【0061】
ステップS203からステップS204に進むと、監視領域選択部21eは、自車両Mの前方に所定の曲率以上のカーブが存在するか否かを調べる。
【0062】
そして、ステップS204において、監視領域選択部21eは、自車走行路の前方に所定の曲率以上のカーブが存在しないと判断した場合にはステップS205に進み、自車走行路の前方に所定の曲率以上のカーブが存在すると判断した場合にはステップS208に進む。
【0063】
ステップS204からステップS205に進むと、監視領域選択部21eは、自車両Mの車速が所定の車速未満の中低速であるか否かを調べる。
【0064】
そして、ステップS205において、自車両Mの車速が中低速でないと判断した場合、すなわち、自車両Mの車速が所定の車速以上の高速であると判断した場合、監視領域選択部21eは、ステップS206に進み、監視領域として、近距離中央の監視領域Asc、及び、遠距離中央の監視領域Alcを選択した後、ルーチンを抜ける。
【0065】
すなわち、ステップS206に進む場合とは、自車両Mが略直線路となる幹線道路を高速走行している場合であり、この場合、自車両Mの直前方から遠方にかけての広い範囲を監視する必要がある。そこで、監視領域選択部21eは、近距離中央の監視領域Ascを選択することによって自車両Mの直前方を含む比較的広範囲の走行環境情報を取得しつつ、遠距離中央の監視領域Alcを選択することによって自車両Mの遠方についても精度よく走行環境情報を取得する。
【0066】
一方、ステップS205において、自車両Mの車速が中低速であると判断した場合、監視領域選択部21eは、ステップS207に進み、監視領域として近距離中央の監視領域Ascを選択した後、ルーチンを抜ける。
【0067】
すなわち、ステップS207に進む場合とは、自車両Mが略直線路となる幹線道路を中低速走行している場合であり、この場合、渋滞等が予想されるため、遠方の走行環境情報は不要である。そこで、監視領域選択部21eは、IPU21f及び走行環境認識部21gにおける演算負担の軽減等を図るべく、監視領域として近距離中央の監視領域Ascのみを選択する。
【0068】
ステップS204からステップS208に進むと、監視領域選択部21eは、自車走行路の前方のカーブが左カーブであるか否かを調べる。
【0069】
そして、ステップS208において、監視領域選択部21eは、自車走行路の前方のカーブが左カーブであると判断した場合にはステップS209に進み、自車走行路の前方のカーブが右カーブであると判断した場合にはステップS212に進む。
【0070】
ステップS208からステップS209に進むと、監視領域選択部21eは、自車両Mの車速が所定の車速未満の中低速であるか否かを調べる。
【0071】
そして、ステップS209において、自車両Mの車速が中低速でないと判断した場合、すなわち、自車両Mの車速が所定の車速以上の高速であると判断した場合、監視領域選択部21eは、ステップS210に進み、監視領域として、中距離左の監視領域Aml、及び、遠距離中央の監視領域Alcを選択した後、ルーチンを抜ける。
【0072】
すなわち、自車両Mが自車走行路の前方に左カーブが存在する幹線道路を高速で走行している場合、自車両Mの遠方を監視しつつ、カーブ方向である左側の領域の監視を重点的に行うことが望ましい。そこで、監視領域選択部21eは、中距離左の監視領域Amlを選択することによって自車両Mの前方の左側の領域における走行環境情報を精度よく取得するとともに、遠距離中央の監視領域Alcを選択することによって自車両Mの遠方についても精度よく走行環境情報を取得する。
【0073】
一方、ステップS209において、自車両Mの車速が中低速であると判断した場合、監視領域選択部21eは、ステップS211に進み、監視領域として、近距離左の監視領域Asl、及び、近距離中央の監視領域Ascを選択した後、ルーチンを抜ける。
【0074】
すなわち、自車両Mが自車走行路の前方に左カーブが存在する幹線道路を中低速で走行している場合、自車両Mの直近を監視しつつ、カーブ方向である左側の領域の監視を重点的に行うことが望ましい。そこで、監視領域選択部21eは、近距離左の監視領域Aslを選択することによって自車両Mの前方の左側の領域における走行環境情報を精度よく取得するとともに、近距離中央の監視領域Ascを選択することによって自車両Mの直前についても精度よく走行環境情報を取得する。
【0075】
また、ステップS208からステップS212に進むと、監視領域選択部21eは、自車両Mの車速が所定の車速未満の中低速であるか否かを調べる。
【0076】
そして、ステップS212において、自車両Mの車速が中低速でないと判断した場合、すなわち、自車両Mの車速が所定の車速以上の高速であると判断した場合、監視領域選択部21eは、ステップS213に進み、監視領域として、中距離右の監視領域Amr、及び、遠距離中央の監視領域Alcを選択した後、ルーチンを抜ける。
【0077】
すなわち、自車両Mが自車走行路の前方に右カーブが存在する幹線道路を高速で走行している場合、自車両Mの遠方を監視しつつ、カーブ方向である右側の領域の監視を重点的に行うことが望ましい。そこで、監視領域選択部21eは、中距離右の監視領域Amrを選択することによって自車両Mの前方の右側の領域における走行環境情報を精度よく取得するとともに、遠距離中央の監視領域Alcを選択することによって自車両Mの遠方についても精度よく走行環境情報を取得する。
【0078】
一方、ステップS212において、自車両Mの車速が中低速であると判断した場合、監視領域選択部21eは、ステップS214に進み、監視領域として、近距離右の監視領域Asr、及び、近距離中央の監視領域Ascを選択した後、ルーチンを抜ける。
【0079】
すなわち、自車両Mが自車走行路の前方に右カーブが存在する幹線道路を中低速で走行している場合、自車両Mの直近を監視しつつ、カーブ方向である右側の領域の監視を重点的に行うことが望ましい。そこで、監視領域選択部21eは、近距離右の監視領域Asrを選択することによって自車両Mの前方の右側の領域における走行環境情報を精度よく取得するとともに、近距離中央の監視領域Ascを選択することによって自車両Mの直前についても精度よく走行環境情報を取得する。
【0080】
また、ステップS203からステップS215に進むと、監視領域選択部21eは、自車走行路の前方に所定の曲率以上のカーブが存在するか否かを調べる。
【0081】
そして、ステップS215において、自車走行路の前方に所定の曲率以上のカーブが存在せず、自車走行路が略直線路であると判断した場合、監視領域選択部21eは、ステップS104に進み、監視領域として、近距離左の監視領域Asl、及び、近距離右の監視領域Asrを選択した後、ルーチンを抜ける。
【0082】
すなわち、市街地の道路や山道等を走行する場合、自車両Mは所定の車速未満の中低速で走行することが想定されるため、比較的近距離での走行環境情報を精度よく取得できればよい。その一方で、市街地の道路や山道等では、歩行者や動物等の飛び出しにも注意する必要があるため、幹線道路に比べて監視領域を幅広く設定することが望ましい。そこで監視領域選択部21eは、近距離左右の監視領域Asl,Asrを選択する。
【0083】
一方、ステップS215において、自車走行路の前方に所定の曲率以上のカーブが存在すると判断した場合、監視領域選択部21eは、ステップS217に進み、自車走行路の前方のカーブが左カーブであるか否かを調べる。
【0084】
そして、ステップS217において、自車走行路の前方のカーブが左カーブであると判断した場合、監視領域選択部21eは、ステップS218に進み、監視領域として、近距離左の監視領域Asl、及び、近距離中央の監視領域Ascを選択した後、ルーチンを抜ける。
【0085】
すなわち、自車両Mが自車走行路の前方に左カーブが存在する市街地の道路や山道等を中低速で走行している場合、自車両Mの直近を監視しつつ、カーブ方向である左側の領域の監視を重点的に行うことが望ましい。そこで、監視領域選択部21eは、近距離左の監視領域Aslを選択することによって自車両Mの前方の左側の領域における走行環境情報を精度よく取得するとともに、近距離中央の監視領域Ascを選択することによって自車両Mの直前についても精度よく走行環境情報を取得する。
【0086】
一方、ステップS217において、自車走行路の前方のカーブが右カーブであると判断した場合、監視領域選択部21eは、ステップS219に進み、監視領域として、近距離右の監視領域Asr、及び、近距離中央の監視領域Ascを選択した後、ルーチンを抜ける。
【0087】
すなわち、自車両Mが自車走行路の前方に右カーブが存在する市街地の道路や山道等を中低速で走行している場合、自車両Mの直近を監視しつつ、カーブ方向である右側の領域の監視を重点的に行うことが望ましい。そこで、監視領域選択部21eは、近距離右の監視領域Aslを選択することによって自車両Mの前方の右側の領域における走行環境情報を精度よく取得するとともに、近距離中央の監視領域Ascを選択することによって自車両Mの直前についても精度よく走行環境情報を取得する。
【0088】
このような実施形態によれば、上述の第1の実施形態に比べ、現在の走行状態等により適した走行環境情報を取得することができる。
【0089】
なお、本発明は、以上説明した各実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明の技術的範囲内である。
【符号の説明】
【0090】
1 … 運転支援装置
11 … ロケータユニット
12 … 地図ロケータ演算部
12a … 自車位置推定演算部
12b … 道路地図情報取得部
12c … 目標進行路設定演算部
13 … 前後加速度センサ
14 … 車輪速センサ
15 … ジャイロセンサ
16 … GNSS受信機
17 … 目的地情報入力装置
18 … 高精度道路地図データベース
21 … カメラユニット
21a … 第1のカメラ
21b … 第2のカメラ
21c … 第3のカメラ
21d … 第4のカメラ
21e … 監視領域選択部(監視領域選択手段)
21f … 画像処理ユニット(距離画像生成手段)
21g … 走行環境認識部(走行環境認識手段)
22 … 車両制御ユニット(車両制御手段)
31 … 走行情報検出部
32 … 操舵制御部
33 … ブレーキ制御部
34 … 加減速制御部
35 … 警報装置
M … 自車両
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図10