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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-27
(45)【発行日】2023-01-11
(54)【発明の名称】吸収体及び吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/53 20060101AFI20221228BHJP
   A61F 13/47 20060101ALI20221228BHJP
   A61F 13/532 20060101ALI20221228BHJP
   A61F 13/535 20060101ALI20221228BHJP
【FI】
A61F13/53 300
A61F13/53 100
A61F13/47
A61F13/532 200
A61F13/535 100
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018233630
(22)【出願日】2018-12-13
(65)【公開番号】P2020092905
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-09-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】糸井 奈美江
(72)【発明者】
【氏名】金子 将也
(72)【発明者】
【氏名】立川 裕美
【審査官】原田 愛子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-237952(JP,A)
【文献】特表2015-519186(JP,A)
【文献】特開2007-211367(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0141891(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/53
A61F 13/47
A61F 13/532
A61F 13/535
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
肌に直接又は間接に当てて使用され、使用時に使用者の肌から相対的に近い位置に配される肌対向面と、使用者の肌から相対的に遠い位置に配される非肌対向面とを有し、
使用者の前後方向に対応する縦方向とこれに直交する横方向とを有し、且つ使用時に使用者の排泄部に対向配置される排泄部対向領域と、該排泄部対向領域よりも縦方向前側に配される前方領域と、該排泄部対向領域よりも縦方向後側に配される後方領域とを有し、
合成繊維を含む繊維塊と、吸水性繊維と、吸水性ポリマーとを含むコア形成材料を含有し、複数の該繊維塊同士又は該繊維塊と該吸水性繊維とが互いに交絡している吸収体であって、
前記排泄部対向領域に、前記前方領域及び前記後方領域よりも横方向長さが短い括れ部を有し、少なくとも該括れ部に前記繊維塊が存在し、
前記繊維塊及び前記吸水性繊維の合計含有質量に対する前記繊維塊の含有質量の比率は、前記前方領域及び前記後方領域よりも前記排泄部対向領域の方が大きい吸収体。
【請求項2】
前記前方領域及び前記後方領域それぞれの横方向長さに対する前記括れ部の横方向長さの比率が、0.5以上1未満である請求項1に記載の吸収体。
【請求項3】
前記吸収体は、前記コア形成材料を含有する吸収性コアと、該吸収性コアの外面を被覆するコアラップシートとを具備し、該吸収性コアが、前記排泄部対向領域に前記括れ部を有しており、該コアラップシートが該括れ部の外面を被覆するとともに、該括れ部よりも横方向外方に延在している請求項1又は2に記載の吸収体。
【請求項4】
前記繊維塊及び前記吸水性繊維の合計含有質量に対する該繊維塊の含有質量の比率は、少なくとも前記排泄部対向領域では、前記非肌対向面側よりも前記肌対向面側の方が小さい請求項1~3のいずれか1項に記載の吸収体。
【請求項5】
前記排泄部対向領域の前記非肌対向面の面積は、前記吸収体の前記非肌対向面の面積の60%以下である請求項1~のいずれか1項に記載の吸収体。
【請求項6】
前記吸水性ポリマーは、少なくとも前記排泄部対向領域に存在し、且つ該排泄部対向領域において前記非肌対向面側よりも前記肌対向面側に多く存在する請求項1~のいずれか1項に記載の吸収体。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載の吸収体を具備する吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肌に直接又は間接に当てて使用され、吸収性物品用の吸収体として好適な吸収体に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつ、生理用ナプキン等の吸収性物品は、一般に、相対的に着用者の肌から近い位置に配される表面シートと、相対的に着用者の肌から遠い位置に配される裏面シートと、両シート間に介在する吸収体とを含んで構成される。この吸収体は、典型的には、木材パルプ等の吸水性繊維を主体とし、さらに吸水性ポリマー粒子を含んで構成される場合が多い。吸収性物品に使用される吸収体については、特許文献1に記載されているように、吸収性物品の着用時に着用者の両大腿部に挟まれる部分(外陰部などの排泄部が存在する部分)を、その前後に位置する部分よりも幅狭の括れ部として形成して、鼠蹊部の着用違和感の低減を図る場合がある。吸収性物品に使用される吸収体については、柔軟性、クッション性、圧縮回復性、保形性などの諸特性の向上が大きな課題である。
【0003】
吸収体の改良技術として、例えば特許文献2には、熱可塑性樹脂繊維とセルロース系吸水性繊維とを含有する吸収体であって、該熱可塑性樹脂繊維が、該吸収体の表面シート側の表面と該吸収体の裏面シート側の表面との両方に露出しているものが記載されている。特許文献2記載の吸収体によれば、熱可塑性樹脂繊維が、セルロース系吸水性繊維などの該吸収体の他の成分を保持するための骨格として機能するため、柔らかく且つヨレにくいとされている。
【0004】
特許文献3には、熱融着繊維を含み、予め繊維間を結合させて3次元構造を付与した不織布片と、吸水性繊維とを含有する吸収体が記載されており、該不織布片は吸収体全体に均一に分布している。この3次元構造の不織布片は、カッターミル方式などの粉砕手段を用いて不織布を細片状に粉砕して製造されるもので、斯かる製造方法に起因して、同文献の図1及び図3に記載されているように不定形状をなしていて、平面とみなせるような部分を実質的に有していない。特許文献3には、同文献記載の吸収体の好ましい形態として、不織布片同士を熱融着させたものが記載されている。特許文献3記載の吸収体によれば、不織布片が三次元構造を有するため、該吸収体内部に空隙が形成され、水分を吸収した時の復元性が向上し、その結果、吸水性能が向上するとされている。
【0005】
特許文献4には、吸収体の上部、下部、又は内部に、吸収体とは別体の弾力性を有するフィルム、繊維集合体に凹凸加工を施したシートなどからなるクッション性に優れる部材を具備する吸収性物品が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-131206号公報
【文献】特開2015-16296号公報
【文献】特開2002-301105号公報
【文献】特開2000-316902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
吸収性物品の着用感を高めるためには、特許文献1に記載されているように、吸収体に括れ部を形成して鼠蹊部の着用違和感を低減することの他に、吸収性物品が具備する吸収体のクッション性を高めることが有効であり、そのためには、特許文献2に記載されているような、構成繊維が個々独立に存在している吸収体よりも、特許文献3に記載の不織布片の如き、繊維塊を含有する吸収体を使用した方が効果的である。また、特許文献4に記載されているように、吸収体とは別にクッション性に優れる部材を併用することも、吸収性物品の着用感の向上には有効である。しかしながら、これらの従来技術を用いても、吸収体が吸収性物品の着用時に加えられる体圧などの外力に対してヨレやすいものであると、吸収性物品の着用感の向上には繋がらない。また、吸収体には一定レベル以上の吸液性を備えていることが要求されるが、例えば単に、吸収体に特許文献3に記載の不織布片を含有させただけでは吸液性の低下を招くおそれがある。また例えば、特許文献4に記載の如きクッション性に優れる部材を表面シートと吸収体との間に配置すれば、表面シートと吸収体との離間距離が長くなって液引き込み性が低下し、やはり吸液性の低下を招くおそれがある。吸収性物品の着用中にヨレ難く、クッション性及び液引き込み性に優れる吸収体は未だ提供されていない。
【0008】
従って本発明の課題は着用時にヨレにくく、鼠蹊部の違和感が少なく、着用感を向上させ得る吸収体、及び該吸収体を用いた吸収性物品を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、肌に直接又は間接に当てて使用され、使用時に使用者の肌から相対的に近い位置に配される肌対向面と、使用者の肌から相対的に遠い位置に配される非肌対向面とを有し、使用者の前後方向に対応する縦方向とこれに直交する横方向とを有し、且つ使用時に使用者の排泄部に対向配置される排泄部対向領域と、該排泄部対向領域よりも縦方向前側に配される前方領域と、該排泄部対向領域よりも縦方向後側に配される後方領域とを有し、合成繊維を含む繊維塊と、吸水性繊維と、吸水性ポリマーとを含むコア形成材料を含有し、複数の該繊維塊同士又は該繊維塊と該吸水性繊維とが互いに交絡している吸収体であって、前記排泄部対向領域に、前記前方領域及び前記後方領域よりも横方向長さが短い括れ部を有し、少なくとも該括れ部に前記繊維塊が存在する吸収体である。
また本発明は、前記の本発明の吸収体を具備する吸収性物品である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の吸収体は、クッション性が高く、液引き込み性に優れ、吸収性物品に適用された場合には、着用時にヨレにくく、鼠蹊部の違和感が少なく、着用感を向上させ得る。
また、本発明の吸収性物品は、斯かる高品質の吸収体を具備しているため、着用感及び防漏性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の吸収性物品の一実施形態である生理用ナプキンの肌対向面側(表面シート側)を一部破断して模式的に示す平面図である。
図2図2は、図1のI-I線断面を模式的に示す横断面図である。
図3図3は、図1に示す吸収性物品が具備する吸収体の肌対向面側を模式的に示す平面図である。
図4図4(a)は、図3のII-II線断面を模式的に示す横断面図、図4(b)は、図3のIII-III線断面を模式的に示す横断面図である。
図5図5は、図3のIV-IV線断面を模式的に示す縦断面図である。
図6図6(a)及び図6(b)はそれぞれ、本発明で用いる繊維塊の模式的な斜視図である。
図7図7は、本発明で用いる繊維塊の製造方法の説明図である。
図8図8は、股間部圧縮荷重の測定方法の説明図であり、図8(a)は、該測定方法で使用する測定機器の模式的な上面図(符号100で示す測定サンプルの上面側から見た図)、図8(b)は、該測定機器の模式的な側面図(符号100で示す測定サンプルの縦方向一端側からから見た図)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の吸収体を、これを具備する本発明の吸収性物品と共に、それらの好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1及び図2には、本発明の吸収性物品の一実施形態である生理用ナプキン1が示されている。ナプキン1は、体液を吸収保持する吸収体4と、該吸収体4の肌対向面側に配され、着用者の肌と接触し得る液透過性の表面シート2と、該吸収体4の非肌対向面側に配された液難透過性の裏面シート3とを具備する。ナプキン1は、図1に示すように、着用者の前後方向に対応し、着用者の腹側から股間部を介して背側に延びる縦方向Xと、これに直交する横方向Yとを有し、且つ縦方向Xにおいて、着用時に着用者の外陰部などの排泄部に対向配置される排泄部対向部(排泄ポイント)を含む排泄部対向領域Bと、該排泄部対向領域Bよりも縦方向前側(着用者の腹側)に配される前方領域Aと、該排泄部対向領域Bよりも縦方向後側(着用者の背側)に配される後方領域Cとを有し、その3つに区分される。
【0013】
本明細書において、「肌対向面」は、吸収性物品又はその構成部材(例えば吸収体4)における、吸収性物品の着用時に着用者の肌側に向けられる面、すなわち相対的に着用者の肌に近い側であり、「非肌対向面」は、吸収性物品又はその構成部材における、吸収性物品の着用時に肌側とは反対側、すなわち相対的に着用者の肌から遠い側に向けられる面である。なお、ここでいう「着用時」は、通常の適正な着用位置、すなわち当該吸収性物品の正しい着用位置が維持された状態を意味する。
【0014】
ナプキン1は、図1に示すように、縦方向Xに長い形状の吸収性本体5と、吸収性本体5における排泄部対向領域Bの縦方向Xに沿う両側部それぞれから横方向Yの外方に延出する一対のウイング部5W,5Wとを有している。吸収性本体5は、ナプキン1の主体をなす部分であり、前記の表面シート2、裏面シート3及び吸収体4を具備し、縦方向Xにおいて前方領域A、排泄部対向領域B及び後方領域Cの3つに区分される。
【0015】
本発明の吸収性物品における排泄部対向領域は、ナプキン1のように吸収性物品がウイング部を有する場合には、該吸収性物品の縦方向(長手方向、図中のX方向)においてウイング部を有する領域である。ナプキン1を例にとれば、一対のウイング部5W,5Wそれぞれの縦方向Xの前方側の付け根を通って横方向Yに延びる仮想直線と、一対のウイング部5W,5Wそれぞれの後方側の付け根を通って横方向Yに延びる仮想直線とに挟まれた領域が、排泄部対向領域Bである。なお、ナプキン1においては、一対のウイング部5W,5Wは、ナプキン1を横方向Yに二分して縦方向Xに延びる縦中心線を基準として左右対称に形成されており、一方のウイング部5Wの前記前方側の付け根と他方のウイング部5Wのそれとは、縦方向Xにおいて同位置に存する。
【0016】
また、ウイング部を有しない吸収性物品(図示せず)における排泄部対向領域は、該吸収性物品を縦方向Xに三等分した際に、中間に位置する領域に相当する。
【0017】
図2に示すように、表面シート2は、吸収体4の肌対向面の全域を被覆している。一方、裏面シート3は、吸収体4の非肌対向面の全域を被覆し、さらに吸収体4の縦方向Xに沿う両側縁から横方向Yの外方に延出し、後述するサイドシート6と共にサイドフラップ部を形成している。前記サイドフラップ部は、ナプキン1における、吸収体4から横方向Yの外方に延出する部材からなる部分である。裏面シート3とサイドシート6とは、吸収体4の縦方向Xに沿う両側縁からの延出部において、接着剤、ヒートシール、超音波シール等の公知の接合手段によって互いに接合されている。表面シート2及び裏面シート3それぞれと吸収体4との間は接着剤によって接合されていてもよい。表面シート2、裏面シート3としては、生理用ナプキン等の吸収性物品に従来使用されている各種のものを特に制限なく用いることができる。例えば、表面シート2としては、単層又は多層構造の不織布や、開孔フィルム等を用いることができる。裏面シート3としては、透湿性の樹脂フィルム等を用いることができる。
【0018】
前記サイドフラップ部は、図1に示すように、排泄部対向領域Bにおいて横方向Yの外方に向かって大きく張り出しており、これにより吸収性本体5の縦方向Xに沿う左右両側に、一対のウイング部5W,5Wが延設されている。ウイング部5Wは、ショーツ等の着衣のクロッチ部の非肌対向面(外面)側に折り返されて用いられる。ウイング部5Wは、図1に示す如き平面視において、下底(上底よりも長い辺)が吸収性本体5の側部側に位置する略台形形状を有しており、その着衣対向面には、該ウイング部5Wをショーツ等の着衣に固定するウイング部粘着部(図示せず)が形成されている。前記ウイング部粘着部は、その使用前においてはフィルム、不織布、紙等からなる剥離シート(図示せず)によって被覆されている。また、吸収性本体5の肌対向面すなわち表面シート2の肌対向面における縦方向Xに沿う両側部には、平面視において吸収体4の縦方向Xに沿う左右両側部に重なるように、一対のサイドシート6,6が吸収性本体5の縦方向Xの略全長に亘って配されている。一対のサイドシート6,6は、それぞれ縦方向Xに延びる図示しない接合線にて、接着剤等の公知の接合手段によって表面シート2等の他の部材に接合されている。
【0019】
吸収体4は、図1に示すように、ナプキン1(吸収性本体5)の縦方向Xの略全長にわたっており、前方領域Aから排泄部対向領域Bを介して後方領域Cにわたって延在している。本発明の吸収体の一実施形態である吸収体4は、ナプキン1の如き吸収性物品に組み込まれることで、人の肌に間接に当てがわれて、すなわち表面シート2などの部材を介して間接的に肌に当てがわれて使用されるもので、使用時に使用者すなわちナプキン1の着用者の肌から相対的に近い位置に配される肌対向面(表面シート2との対向面)と、使用者の肌から相対的に遠い位置に配される非肌対向面(裏面シート3との対向面)とを有し、さらに、使用者の前後方向に対応する縦方向Xとこれに直交する横方向Yとを有し、且つ前方領域A、排泄部対向領域B及び後方領域Cを縦方向Xに有する。吸収体4の前方領域Aは、吸収体4におけるナプキン1の前方領域Aに位置する部分であり、吸収体4の排泄部対向領域Bは、吸収体4におけるナプキン1の排泄部対向領域Bに位置する部分であり、吸収体4の後方領域Cは、吸収体4におけるナプキン1の後方領域Cに位置する部分である。なお、本発明の吸収体は、このような肌に間接に当てて使用する形態の他、シートなどの部材を介さずに肌に直接当てて使用する形態を採ることも可能である。
【0020】
図3図5には吸収体4が示されている。本実施形態における吸収体4は、コア形成材料を含有する液吸収性の吸収性コア40と、該吸収性コア40の外面を被覆する液透過性のコアラップシート41とを具備している。このように、本実施形態においては、コア形成材料がコアラップシート41で包まれることで一体化されている。吸収性コア40は、吸収体4の主体をなすもので、図3に示す如き平面視において縦方向Xに長い形状を有している。吸収性コア40は、その長手方向をナプキン1の縦方向Xに一致させてナプキン1に配置されている。吸収性コア40とコアラップシート41との間は、ホットメルト型接着剤等の接着剤により接合されていてもよい。
【0021】
本実施形態においては、コアラップシート41は、吸収性コア40の横方向Yの長さの2倍以上3倍以下の幅を有する1枚の連続したシートであり、図3及び図4に示すように、吸収性コア40の肌対向面の全域を被覆し、且つ吸収性コア40の縦方向Xに沿う両側縁40S,40Sから横方向Yの外方に延出し、その延出部が、吸収性コア40の下方に巻き下げられて、吸収性コア40の非肌対向面の全域を被覆している。なお、本発明においては、コアラップシートはこのような1枚のシートでなくてもよく、例えば、吸収性コア40の肌対向面を被覆する1枚の肌側コアラップシートと、該肌側コアラップシートとは別体で、吸収性コア40の非肌対向面を被覆する1枚の非肌側コアラップシートとの2枚を含んで構成されていてもよい。また、本発明の吸収体はコアラップシートを具備していなくてもよく、本発明には、吸収性コアのみからなる吸収体が包含される。
【0022】
吸収性コア40は、実質的に吸収体4そのものとも言えるものであり、以下の吸収性コア40についての説明は、特に断らない限り、本発明の吸収体の説明として適宜適用される。本発明の吸収体には、コアラップシートを含まず吸収性コアのみで構成された形態が包含されるところ、斯かる形態の吸収体では、吸収体と吸収性コアとは同じ意味である。
【0023】
吸収性コア40は、コア形成材料を主体として構成され、典型的には、コア形成材料のみから構成される。コア形成材料には少なくとも、吸水性繊維12Fと、繊維11Fを含む繊維塊11と、吸水性ポリマー13とが含まれる。繊維塊11の構成繊維11Fは合成繊維である。
【0024】
本明細書において「繊維塊」とは、複数の繊維がまとまって一体となった繊維集合体のことである。本発明で用いる繊維塊はその製造方法を問わず、例えば、一定の大きさを有する合成繊維シートをカッター等により切断して得られたシート片の如き、定形の繊維集合体でもよく、あるいは、特許文献2に記載の不織布片の如き、合成繊維を主体とする不織布を細片状に粉砕し、あるいはむしり取ったり引きちぎり取ったりして製造された不定形の繊維集合体でもよい。ただし、このような不定形の繊維集合体は、その製造方法に起因して、構成繊維がランダムに配向しているために、表面のあちこちから繊維が突出するなどして表面が荒れており、そのため、不定形の繊維集合体をコア形成材料として用いた場合には、該繊維集合体同士がそれらの全面に亘って比較的強い結合力で絡み合い、その結果、各繊維集合体の動きの自由度が著しく制限されて柔軟性やクッション性が低下するおそれがあり、また、体液を通過させる隙間ができにくくなるために、吸液性の低下を招くおそれがある。この点、定形の繊維集合体はそのような不都合がなく、本発明で好ましく用いられる。本実施形態の繊維塊11は、後述するように定形の繊維集合体である。
【0025】
繊維塊11は、前述したとおり、複数の繊維11Fが塊状に集積されて一体化された繊維集合体であり、その形態を保持した状態で吸収性コア40中に複数存在する。そして繊維塊11は、その繊維集合体の形態に起因して主として、吸収性コア40の柔軟性、クッション性、圧縮回復性、保形性の向上に寄与する。
【0026】
吸水性繊維12Fは、吸収性コア40中に複数存在し、それら複数の吸水性繊維12Fは互いに交絡し得るものの、繊維塊11の構成繊維11Fのように集積されておらず、個々独立に存在する。吸水性繊維12Fは主として、吸収性コア40の液吸収性の向上に寄与し、また、吸収性コア40の保形性の向上にも寄与する。
【0027】
吸水性繊維12Fとしては、この種の吸収性物品の吸収体の形成材料として従来使用されている吸水性繊維を用いることができる。吸水性の繊維としては、例えば、針葉樹パルプや広葉樹パルプ等の木材パルプ、綿パルプや麻パルプ等の非木材パルプ等の天然繊維;カチオン化パルプ、マーセル化パルプ等の変性パルプ;キュプラ、レーヨン等の再生繊維等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。吸水性繊維12Fの主たる役割が吸収体4の液吸収性の向上である点に鑑みれば、吸水性繊維12Fとしては、天然繊維、再生繊維(セルロース系繊維)が好ましい。
【0028】
吸水性ポリマー13は、吸水性ポリマーの小片として吸収性コア40中に複数存在し、主として、吸収性コア40内の液吸収性の向上に寄与する。吸水性ポリマー13の小片の形状は特に制限されず、例えば、球状、塊状、俵状、繊維状、不定形状であり得る。吸水性ポリマー13の平均粒子径は、好ましくは10μm以上、さらに好ましくは100μm以上、そして、好ましくは1000μm以下、さらに好ましくは800μm以下である。吸水性ポリマー13としては、一般に、アクリル酸又はアクリル酸アルカリ金属塩の重合物又は共重合物を用いることができる。その例としては、ポリアクリル酸及びその塩並びにポリメタクリル酸及びその塩が挙げられ、具体的には、アクアリックCA、アクアリックCAW(ともに(株)日本触媒社製)等のアクリル酸重合体部分ナトリウム塩が挙げられる。
【0029】
吸収性コア40においては、複数の繊維塊11同士又は繊維塊11と吸水性繊維12Fとが互いに交絡している。本実施形態の吸収性コア40においては、複数の繊維塊11が吸収性コア40中の構成繊維(繊維11F,12F)との絡み合いによって結合して1つの繊維塊連続体を形成している。また、複数の繊維塊11同士が交絡していると共に、繊維塊11と吸水性繊維12Fとが交絡して結合していてもよい。さらに通常は、複数の吸水性繊維12F同士も互いに交絡している。吸収性コア40に含有されている複数の繊維塊11の少なくとも一部は、他の繊維塊11あるいは吸水性繊維12Fと交絡している。吸収性コア40においては、それに含有されている複数の繊維塊11の全部が互いに交絡して1つの繊維塊連続体を形成している場合があり得るし、複数の繊維塊連続体が互いに非結合の状態で混在している場合があり得る。
【0030】
吸収性コア40においては、柔軟性などに優れる繊維塊11が含有されていることに加え、繊維塊11同士又は繊維塊11と吸水性繊維12Fとの間も互いに交絡によって結合しているため、吸収性コア40は外力への応答性が一層優れ、柔軟性、クッション性、圧縮回復性に優れる。吸収性コア40は、ナプキン1の着用時に様々な方向から受ける外力(例えばナプキン1の着用者の体圧)に対してしなやかに変形し、ナプキン1を着用者の身体にフィット性よく密着させ得る。このような吸収性コア40の優れた変形-回復特性は、吸収性コア40が圧縮された場合のみならず、ねじれた場合でも同様に発現し得る。すなわち、ナプキン1に組み込まれた吸収性コア40は、ナプキン1の着用時において着用者の両大腿部間に挟まれた状態で配置されるため、着用者の歩行動作の際の両大腿部の動きによって、縦方向Xに延びる仮想的な回転軸周りにねじられる場合があるが、そのような場合でも、吸収性コア40は高い変形-回復特性を備えているため、両大腿部からのねじれを促すような外力に対して容易に変形・回復し、従ってヨレにくく、ナプキン1に着用者の身体に対する高いフィット性を付与し得る。
【0031】
吸収性コア40では、繊維塊11同士又は繊維塊11と吸水性繊維12Fとが交絡しているところ、ここでいう、繊維塊11同士等の「交絡」には、下記形態A及びBが包含される。
形態A:繊維塊11同士等が、融着ではなく、繊維塊11の構成繊維11F同士の絡み合いによって結合している形態。
形態B:吸収性コア40の自然状態(外力が加わっていない状態)では、繊維塊11同士等は結合していないが、吸収性コア40に外力が加わった状態では、繊維塊11同士等が構成繊維11F同士の絡み合いによって結合し得る形態。ここでいう、「吸収性コア40に外力が加わった状態」とは、例えば、吸収性コア40が適用された吸収性物品(本実施形態ではナプキン1)の着用中において、吸収性コア40に変形力が加わった状態である。
【0032】
このように、吸収性コア40においては、形態Aのように、繊維塊11は、他の繊維塊11又は吸水性繊維12Fと、繊維同士の絡み合いすなわち「交絡」によって結合している他、形態Bのように、他の繊維塊11又は吸水性繊維12Fと交絡し得る状態でも存在している。斯かる繊維の交絡による結合が、前述した吸収性コア40の作用効果を一層有効に発現するのに重要なポイントの1つとなっている。特に、吸収性コア40は、形態Aの「交絡」を有している方が保形性の点から好ましい。繊維の交絡による結合は、接着成分や融着が無く、繊維同士の絡み合いのみによってなされているため、繊維の融着による結合に比して、交絡している個々の要素(繊維塊11、吸水性繊維12F)の動きの自由度が高く、そのためその個々の要素は、それらからなる集合体としての一体性を維持し得る範囲で移動し得る。このように、吸収性コア40は、それに含有されている複数の繊維塊11同士あるいは繊維塊11と吸水性繊維12Fとが比較的ゆるく結合していることで、外力を受けたときに変形が可能な、緩やかな保形性を有しており、保形性とクッション性及び圧縮回復性等とが高いレベルで両立されている。そして、斯かる高品質の吸収性コア40を具備するナプキン1は、着用者の身体にフィット性良く密着し、着用感に優れる。
【0033】
吸収性コア40における繊維塊11を介した結合態様の全てが「交絡」である必要はなく、吸収性コア40の一部に交絡以外の他の結合態様、例えば接着剤による接合などが含まれていてもよい。
【0034】
ただし、例えば公知の防漏溝等、吸収性物品の他の部材と一体となった結果として吸収性コア40に形成された「繊維塊11を介した融着」を吸収性コア40から排除した残りの部分、すなわち、未加工の吸収性コア40そのものでは、繊維塊11同士の結合、又は繊維塊11と吸水性繊維12Fとの結合が「繊維の交絡」のみでなされていることが望ましい。
【0035】
前述した吸収性コア40の作用効果をより一層確実に発現させる観点から、形態Aである「交絡によって結合している繊維塊11」と形態Bである「交絡し得る状態の繊維塊11」との合計数は、吸収性コア40中の繊維塊11の全数に対して、好ましくは半数以上、さらに好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上である。
同様の観点から、形態Aの「交絡」を有する繊維塊11の数は、他の繊維塊11又は吸水性繊維12Fとの結合部を有する繊維塊11の全数の70%以上、特に80%以上あることが好ましい。
【0036】
吸収性コア40は、図3に示すように、排泄部対向領域Bに、前方領域A及び後方領域Cよりも横方向Yの長さ(幅)が短い括れ部40Nを有している。括れ部40Nは、吸収性コア40の排泄部対向領域Bの全部又は一部が、その縦方向Xの前後に位置する部分よりも幅狭に形成された部分である。
【0037】
本実施形態においては、吸収性コア40の排泄部対向領域Bの全部が括れ部40Nとなっている。括れ部40Nの横方向Yの長さすなわち幅W1は、図3に示すように、括れ部40Nの縦方向Xの全長にわたって一定であり、吸収性コア40の両側縁40S,40Sは、それぞれ、括れ部40N(排泄部対向領域B)と前方領域A及び後方領域Cそれぞれの括れ部40N寄りの部分とにおいては縦方向Xに延び、括れ部40Nと該領域A,Cとの境界においては横方向Yに延びている。吸収性コア40は、該吸収性コア40を横方向Yに二等分する縦中心線を基準として対称に形成され、図3に示す如き平面視においてダンベル状をなしている。
【0038】
なお、括れ部40Nの平面視形状は図示の形態に制限されず、例えば、括れ部40Nの幅W1が部分的に異なる形状でもよく、より具体的には、括れ部40Nの縦方向Xの中央部が、その前後に位置する部分(括れ部40Nにおける領域A,C寄りの部分)に比して、幅W1が短い形状でもよい。また、括れ部40Nの輪郭線(側縁40S)は、図3に示す如き縦方向Xに延びる直線のみから構成されていなくてもよく、例えば横方向Yの内方に向かって凸状の弧状をなす曲線でもよい。また、吸収性コア40の排泄部対向領域Bの一部のみが括れ部40Nであってもよい。
【0039】
吸収性コア40の排泄部対向領域Bは、ナプキン1の着用時に着用者の両大腿部に挟まれる部分であることから、着用者に対して鼠蹊部の着用違和感を与えやすい部分であるところ、該排泄部対向領域Bにその前後領域A,Cよりも幅狭に形成された括れ部40Nが存在することで、両大腿部から横方向Yに受ける圧力が効果的に低減され、それによって鼠蹊部の着用違和感の低減が図られる。また、吸収性コア40の排泄部対向領域Bは、着用者の歩行動作の際の両大腿部の動きによって、縦方向Xに延びる仮想的な回転軸周りにねじられやすく、前方領域Aや後方領域Cに比して、外力が強く作用しやすく、ヨレが生じやすい部分でもあるところ、括れ部40Nの存在はこのようなヨレの防止にも有効である。
【0040】
吸収性コア40は、単に排泄部対向領域Bに括れ部40Nを有しているだけでなく、図4(a)に示すように、括れ部40Nに繊維塊11が存在する点で特徴付けられる。吸収性コア40の排泄部対向領域Bに括れ部40Nを形成することで、着用感の向上やヨレ防止に一定の効果は見られるものの、括れ部40Nは吸収性コア40の他の部分に比して幅狭な分、コア形成材料が少なく強度的に弱い面があるため、括れ部40Nの存在自体が却って吸収性コア40のヨレの原因となり得、括れ部40Nの形成によるヨレ防止効果には限界がある。これに対し、本実施形態のように、吸収性コア40の排泄部対向領域Bの括れ部40Nに、圧縮回復性などに優れる繊維塊11が存在することで、括れ部40N自体の保形性、クッション性などの諸特性が向上するため、括れ部40Nの形成によるヨレ防止効果と相俟って、ヨレ防止効果が向上し、鼠蹊部の着用違和感の低減効果も向上し得る。
【0041】
特に本実施形態においては、図3及び図4(a)に示すように、吸収体4が吸収性コア40とコアラップシート41とを含んで構成され、且つ吸収性コア40の排泄部対向領域Bが括れ部40Nを有し、コアラップシート41が括れ部40Nの外面を被覆するとともに、括れ部40Nよりも横方向Yの外方に延在している。図示の形態では、コアラップシート41は、括れ部40N(排泄部対向領域B)のみならず、前方領域A及び後方領域Cそれぞれの外面(肌対向面及び非肌対向面)の全域を被覆している。そして、括れ部40Nの横方向Yの両外方には、吸収性コア40が存在せず吸収体4の構成部材としてはコアラップシート41のみが存在する、吸収性コア非存在部Sが形成されている。吸収性コア非存在部Sには吸収性コア40が存在しないが、ここでいう「吸収性コアが非存在」には、吸収性コア40の形成材料が完全に存在しない形態と、吸収性コア40から意図せずに漏れ出した形成材料が存在する形態とが包含され、後者の形態においては通常、吸収性コア非存在部Sに存在する吸収性コア40の形成材料は、その縦方向Xの両外方と比較して極めて少量である。なお、図4では、理解容易の観点から、吸収性コア非存在部Sにおいて、吸収性コア40とコアラップシート41との間に空間が存在するように記載しているが、吸収体4の実物においてこのような空間が必ずしも形成されるわけではない。例えば、吸収体4がナプキン1の如き吸収性物品に組み込まれた場合には、吸収性コア非存在部Sにおけるコアラップシート41(コアラップシート41における、括れ部40Nから横方向Yの外方に延出する部分)は、典型的には図2に示すように、その周辺部にサイドシート6等の他の部材が存在することもあって、吸収性コア40に密着した状態となる。
【0042】
吸収性コア非存在部Sは、それよりも縦方向Xの前後に位置する領域(吸収体4における吸収性コア40とコアラップシート41との組み合わせが存在する領域)よりも大きく変形し易いため、例えば、ナプキン1の着用中にナプキン1が着用者の両大腿部で挟まれることによって吸収体4が横方向Yからの外力を受けた場合には、吸収性コア非存在部Sが周辺部よりも大きく変形することでその外力を干渉し、その結果、括れ部40Nの予期せぬ変形が効果的に防止され得る。そのため、本実施形態のナプキン1によれば、着用時における吸収性コア40の予期せぬ変形すなわちヨレがより一層効果的に防止される。
【0043】
前述した吸収性コア40の排泄部対向領域Bの括れ部40Nによる作用効果をより確実に奏させるようにする観点から、図3を参照して、前方領域A及び後方領域Cそれぞれの横方向Yの長さ(幅W2)に対する括れ部40Nの横方向Yの長さ(幅W1)の比率、すなわちW1/W2は、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.7以上、そして、好ましくは1.0未満、より好ましくは0.9未満である。なお、両領域A,Cにおいて、幅W2が一定でなく部分的に異なる場合は、幅W2の最大値を採用して前記比率を求める。
【0044】
排泄部対向領域Bの幅W1は、吸収性コア40が生理用ナプキン用途の場合には、好ましくは40mm以上、より好ましくは50mm以上、そして、好ましくは75mm以下、より好ましくは70mm以下である。
前方領域A及び後方領域Cそれぞれの幅W2は、吸収性コア40が生理用ナプキン用途の場合には、好ましくは60mm以上、より好ましくは65mm以上、そして、好ましくは100mm以下、より好ましくは90mm以下である。前方領域Aと後方領域Cとで、幅W2は同じでもよく、異なっていてもよい。
図3に示す吸収性コア40は幅W1が一定であるが、幅W1が一定でない場合は、幅W1の最小値が前記範囲にあることが好ましい。
【0045】
本発明において、繊維塊11は前述したとおり、少なくとも吸収性コア40の排泄部対向領域Bの括れ部40Nに存在していればよく、括れ部40Nに繊維塊11が存在することを前提として、繊維塊11は、吸収性コア40の全体に均一に分布していてもよく、一部に偏在していてもよい。
【0046】
本実施形態においては、図4(a)に示すように、吸収性コア40の排泄部対向領域Bすなわち括れ部40Nにおいて、繊維塊11は、肌対向面側B1よりも非肌対向面側B2に比較的多く存在している。
【0047】
なお、吸収性コア40の排泄部対向領域Bの肌対向面側B1は、吸収性コア40の排泄部対向領域Bを厚み方向に二等分した場合の肌対向面寄りの部位、非肌対向面側B2は、斯かる場合の非肌対向面寄りの部位である。吸収性コア40の前方領域A及び後方領域Cそれぞれの肌対向面側及び非肌対向面側についても同様である。
【0048】
このような本実施形態における吸収性コア40における繊維塊11の偏在を、繊維塊11とともに吸収性コア40のコア形成材料として併用される吸水性繊維12Fとの合計含有質量と対比して、「繊維塊11及び吸水性繊維12Fの合計含有質量に対する繊維塊11の含有質量の比率」(以下、「繊維塊占有率」ともいう。)として規定すると、吸収性コア40の繊維塊占有率は、少なくとも排泄部対向領域B(括れ部40N)では、非肌対向面側B2よりも肌対向面側B1の方が小さいということになる。
【0049】
繊維塊占有率は、吸収性コア40(吸収体4)の所定の測定対象部位について、該測定対象部位に存する繊維塊11及び吸水性繊維12Fそれぞれの含有量を質量で測定し、そうして測定された繊維塊11の含有質量を、吸水性繊維12F及び繊維塊11それぞれの含有質量の合計値で除して100分率で表したものである。すなわち、繊維塊占有率(質量%)={繊維塊11の含有質量/(吸水性繊維12Fの含有質量+繊維塊11の含有質量)}×100である。
【0050】
通常の吸収性コアは吸水性繊維が主体となっており、排泄部対向領域で体液を吸収すると、体液を吸収していないか吸収量が僅かである前後領域と比較してヘタり易くなり、これに起因したヨレが生じやすくなる。これに対して本実施形態の吸収性コア40では、肌対向面側B1と厚み方向において隣接する吸収性コア40の非肌対向面側B2は、前述したとおり、繊維塊占有率が肌対向面側B1よりも大きく、それ故に、合成繊維を含む繊維塊11が偏在し湿潤状態でも保形性に優れる部位であり、且つ肌対向面側B1と非肌対向面側B2との界面及びその近傍では、前述したとおり、繊維塊11と吸水性繊維12Fとが交絡しているため、吸収性コア40の排泄部対向領域Bが体液を吸収して湿潤状態となった場合でもヨレが防止される。また、吸収性コア40の排泄部対向領域B(括れ部40N)は、繊維塊占有率に関して前記のとおり、「肌対向面側B1<非肌対向面側B2」とすることによって、吸収性コア40は液引き込み性に優れ、排泄された体液を速やかに内部に引き込んで吸収保持し得る。
【0051】
また、本実施形態においては、図4及び図5に示すように、吸収性コア40において、繊維塊11は、前方領域A及び後方領域Cよりも排泄部対向領域B(括れ部40N)に比較的多く存在している。すなわち本実施形態においては、吸収性コア40の繊維塊占有率は、前方領域A及び後方領域Cよりも排泄部対向領域B(括れ部40N)の方が大きい。
【0052】
このように、繊維塊占有率に関して、「前方領域A、後方領域C<排泄部対向領域B(括れ部40N)」なる大小関係が成立することで、ナプキン1の着用時に吸収体4がヨレる不都合が効果的に防止される。また、吸収性コア40の排泄部対向領域Bの繊維塊占有率がその前後領域A,Cよりも高められることで、該領域Bは周辺部に比して肉厚の構造となりやすく、そのため、着用者の排泄部に密着性よくフィットし得る。一方、前方領域A及び後方領域Cは、排泄部対向領域Bよりも繊維塊占有率が低い分、排泄部対向領域Bよりも肉薄の構造となりやすく、そのため、ショーツなどの着用者の着衣になじんで追従しやすい。このように、吸収性コア40に関して、「繊維塊占有率が、前方領域A及び後方領域Cよりも排泄部対向領域Bの方が大きい」という構成を採用することで、ナプキン1の着用時における吸収体4のヨレが効果的に防止されるとともに、ナプキン1の縦方向Xの全体にわたって着用感が大幅に向上し得る。
【0053】
前述した繊維塊11の偏在による作用効果をより確実に奏させるようにする観点から、吸収性コア40の各部の繊維塊占有率は以下のように設定することが好ましい。
吸収性コア40の排泄部対向領域B(括れ部40N)の非肌対向面側B2の繊維塊占有率は、吸収性コア40の他の部位(前方領域A、後方領域C)のそれよりも高いことを前提として、好ましくは50質量%以上、より好ましくは90質量%以上であり、100質量%、すなわち繊維塊11を含有する代わりに吸水性繊維12Fを全く含有しなくてもよい。
吸収性コア40の排泄部対向領域B(括れ部40N)の肌対向面側B1の繊維塊占有率は、非肌対向面側B2のそれよりも低いことを前提として、好ましくは50質量%以下、より好ましくは10質量%以下であり、0質量%、すなわち吸水性繊維12Fを含有する代わりに繊維塊11を全く含有しなくてもよい。
吸収性コア40の排泄部対向領域B(括れ部40N)の非肌対向面側B2の繊維塊占有率と肌対向面側B1の繊維塊占有率との差は、前者から後者を差し引いた場合に、好ましくは50質量%以上、より好ましくは90質量%以上であり、100質量%、すなわち非肌対向面側B2に繊維塊11のみを含有し、肌対向面側B1に繊維塊11を全く含有しなくてもよい。
吸収性コア40の前方領域A及び後方領域Cの繊維塊占有率は、典型的にはそれぞれ、吸収性コア40の排泄部対向領域Bの肌対向面側B1のそれと同様に設定される。
【0054】
前述した繊維塊11の排泄部対向領域Bでの偏在による作用効果をより確実に奏させるようにする観点から、排泄部対向領域B(括れ部40N)に、吸収性コア40が含有する全ての繊維塊11の90質量%以上、特に95質量%以上が存在することが好ましい。
【0055】
吸収性コア40の排泄部対向領域Bにおいては、肌対向面側B1及び非肌対向面側B2それぞれにおいて、1)繊維塊占有率は厚み方向に変化せずに一定でもよく、あるいは、2)肌対向面側B1から非肌対向面側B2に向かうに従って繊維塊占有率が漸次増加してもよい。前記2)の形態では、吸収性コア40の厚み方向において、吸収性コア40の肌対向面及びその近傍では、繊維塊11は存在しないか又は吸収性コア40の排泄部対向領域Bにおいて最低の繊維塊占有率で存在し、吸収性コア40の非肌対向面及びその近傍では、繊維塊11は吸収性コア40の排泄部対向領域Bにおいて最高の繊維塊占有率で存在する。吸収性コア40の前方領域A及び後方領域Cについても、前記1)又は2)の形態があり得る。
【0056】
前記1)の形態に特有の利点として、吸収体(吸収性コア)の肌対向面側と非肌対向面側とで、各々独立した機能に設計し易い点が挙げられる。また、前記2)の形態に特有の利点として、吸水性繊維と繊維塊との混合比率が吸収体の厚み方向で緩やかに変化するため、吸収体に外力が加わった場合でも繊維塊を介在する交絡状態が厚み方向に亘って維持され易く、使用中において吸収体のクッション性が良好に維持され易い点が挙げられる。
【0057】
また、繊維塊占有率は、吸収性コア40の前方領域A及び後方領域Cそれぞれから排泄部対向領域Bに向かうに従って漸次増加してもよい。例えば、前方領域A及び後方領域Cそれぞれにおいては、縦方向Xの外方から内包に向かうに従って繊維塊占有率が漸次増加し、排泄部対向領域Bは前記1)又は2)の形態であってもよい。
【0058】
本実施形態においては、吸収性コア40の排泄部対向領域B(括れ部40N)は、図4(a)に示すように、繊維塊占有率が好ましくは50質量%以上、より好ましくは90質量%以上の部位(以下、「繊維塊リッチ部位」ともいう。)11Pと、繊維塊占有率が好ましくは50質量%未満、より好ましくは10質量%以下の部位(以下、「吸水性繊維リッチ部位」ともいう。)12Pとを厚み方向に有し、より具体的には、非肌対向面側B2の全体が繊維塊リッチ部位11P、肌対向面側B1の全体が吸水性繊維リッチ部位12Pとなっている。したがって、図4(a)に示す吸収性コア40の排泄部対向領域Bにおいては、肌対向面側B1(吸水性繊維リッチ部位12P)と非肌対向面側B2(繊維塊リッチ部位11P)との境界で、繊維塊占有率が大きく変化している。
【0059】
吸水性繊維リッチ部位12Pは、吸水性繊維占有率が好ましくは50質量%以上、より好ましくは90質量%以上の部位である。ここでいう「吸水性繊維占有率」とは、繊維塊11及び吸水性繊維12Fの合計含有質量に対する吸水性繊維12Fの含有質量の比率であり、前述した繊維塊占有率の算出式の分子を「繊維塊11の含有質量」から「吸水性繊維の含有質量」に置き換えて算出される。
【0060】
本実施形態においては、吸収性コア40の前方領域A及び後方領域Cは、それぞれ図4(b)及び図5に示すように、繊維塊11はほとんど含有されておらず、両領域A,Cの繊維塊占有率は0質量%か又はそれに近く、その全体が吸水性繊維リッチ部位12Pとなっている。
【0061】
繊維塊リッチ部位11Pは、繊維塊11が主体をなし、典型的には、吸水性繊維12Fは実質的に含有されていない程度であることから、繊維塊11の特性が強く反映され、主として、吸収性コア40の柔軟性、クッション性、圧縮回復性、保形性などの向上に寄与する。繊維塊リッチ部位11Pにおいては、その全体に繊維塊11が高密度且つ均一に分布していることが好ましい。一方、吸水性繊維リッチ部位12Pは、吸水性繊維12Fが主体をなし、典型的には、繊維塊11は実質的に含有されていない程度であることから、吸水性繊維12Fの特性が強く反映され、主として、吸収性コア40の液引き込み性の向上に寄与する。吸水性繊維リッチ部位12Pにおいては、その全体に吸水性繊維12Fが高密度且つ均一に分布していることが好ましい。
【0062】
本実施形態においては、吸収性コア40の各部の繊維塊占有率に関して、前述したとおり、「前方領域A、後方領域C<排泄部対向領域B」なる大小関係と、「排泄部対向領域Bの肌対向面側B1<非肌対向面側B2」なる大小関係とが成立することを前提として、繊維塊リッチ部位11P及び吸水性繊維リッチ部位12Pの位置は特に制限されず、吸収性コア40の排泄部対向領域Bの肌対向面側B1に繊維塊リッチ部位11Pが存在してもよく、非肌対向面側B2に吸水性繊維リッチ部位12Pが存在してもよい。
【0063】
なお、本実施形態においては前述したとおり、吸収性コア40の前方領域A及び後方領域Cはいずれも全体が吸水性繊維リッチ部位12Pであり、両領域A,Cに繊維塊11はほとんど含有されていないが、両領域A,Cに繊維塊11が含有されていてもよい。その場合、両領域A,Cにおいて、繊維塊11は均一に分布していてもよく、偏在していてもよいが、本実施形態における排泄部対向領域Bと同様に、非肌対向面側に偏在していることが好ましい。すなわち、両領域A,Cそれぞれにおける繊維塊占有率は、非肌対向面側よりも肌対向面側の方が小さいことが好ましい。つまり、吸収性コア40の好ましい一実施形態として、吸収性コア40の全体において、繊維塊占有率について「非肌対向面側>肌対向面側」なる大小関係が成立する形態が挙げられる。斯かる好ましい形態において、両領域A,Cそれぞれにおける繊維塊11及び吸水性繊維12Fの分布は、排泄部対向領域Bにおけるそれと同様にすることができる。斯かる好ましい形態は、吸収性コア40の肌対向面側の全体が吸水性繊維リッチ部位12Pであるため、特に液引き込み性に優れ、吸液性能が高い。
【0064】
吸水性繊維リッチ部位12Pは、吸収性コア40の肌対向面から該吸収性コア40の厚み方向内方に該吸収性コア40の厚みの20~80%にわたって存在することが好ましく、該厚みの30~70%にわたって存在することがより好ましい。
繊維塊リッチ部位11Pは、吸収性コア40の非肌対向面から該吸収性コア40の厚み方向内方に該吸収性コア40の厚みの20~80%にわたって存在することが好ましく、該厚みの30~70%にわたって存在することがより好ましい。
吸水性繊維リッチ部位12P、繊維塊リッチ部位11Pそれぞれの厚みは、好ましくは0.5mm以上、さらに好ましくは1mm以上、そして、好ましくは5mm以下、さらに好ましくは4mm以下である。
吸収性コア40の各部の厚みは、以下の方法で測定される。なお、吸収性コア40(吸収体4)全体の厚み、ナプキン1の厚みなども以下の方法に準じて測定することができる。
【0065】
<厚みの測定方法>
吸収性コア(吸収体)を水平な場所にシワや折れ曲がりがないように静置し、該吸収性コアから測定対象部位(例えば、吸収性コアの肌対向面側又は非肌対向面側)を切り出して測定サンプルとする。そして、測定サンプルにおける5cN/cmの荷重下での厚みを測定する。具体的には、厚みの測定に、例えば、厚み計PEACOCK DIAL UPRIGHT GAUGES R5-C(OZAKI MFG.CO.LTD.製)を用いる。このとき、厚み計の先端部と測定サンプルとの間に、荷重が5cN/cmとなるように大きさを調整した平面視円形状又は正方形状のプレート(厚み5mm程度のアクリル板)を配置して、厚みを測定する。厚み測定は、10点測定し、それらの平均値を算出して厚みとする。
【0066】
吸収性コア40の厚みは、排泄部対向領域B(括れ部40N)の横方向Yの中央よりも前方領域A及び後方領域Cの方が薄いことが好ましい。これにより、ナプキン1の着用時において吸収性コア40の前後領域A,Cがショーツ等の着衣になじんで追従しやすくなり、着用者の前身頃や臀部側の着用感がより一層向上し得る。また、吸収性コア40では、少なくとも排泄部対向領域Bの横方向Yの中央及びその近傍、すなわち中央部が、前後領域A,Cと比べて肉厚の構造となっている。そのため、前後領域A,Cよりも排泄部対向領域Bで繊維塊占有率が大きいことと相まって、ナプキン1の着用時において、吸収性コア40における排泄部対向領域Bの横方向Yの中央部と平面視で重複する部分が、着用者の排泄部に一層密着性よくフィットし得る。斯かる吸収性コア40の縦方向Xにおける厚み差は、前述したように、吸収性コア40の排泄部対向領域Bの繊維塊占有率が前方領域A及び後方領域Cのそれよりも高められることで実現し得る。
【0067】
なお、吸収性コア40は、典型的には、排泄部対向領域Bにおいて厚みが横方向Yの全長(全幅)にわたって均一の形態であるか、又は横方向Yの中央部がその両側部よりも厚みが大きい肉厚の構造の形態であるところ、いずれの形態でも、前記の大小関係すなわち、「排泄部対向領域Bにおける吸収性コア40の横方向Yの中央(中央部)の厚み>前方領域Aにおける吸収性コア40の厚み、後方領域Cにおける吸収性コア40の厚み」の関係が成立する場合には、「排泄部対向領域Bにおける吸収性コア40の横方向Yの両側部の厚み>前方領域Aにおける吸収性コア40の厚み、後方領域Cにおける吸収性コア40の厚み」の関係も成立する。
【0068】
吸収性コア40において、前方領域Aの厚みと排泄部対向領域B(括れ部40N)の横方向Yの中央(又は領域Bにおいて厚みが最大の部分)の厚みとの比率は、前者<後者を前提として、前者/後者として、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.3以上、そして、好ましくは0.9以下、より好ましくは0.8以下である。後方領域Cの厚みと排泄部対向領域Bの横方向Yの中央(又は領域Bにおいて厚みが最大の部分)の厚みとの比率についても、前記と同様に設定することが好ましい。
吸収性コア40の排泄部対向領域B(括れ部40N)の横方向Yの中央(又は領域Bにおいて厚みが最大の部分)の厚みは、好ましくは3mm以上、より好ましくは4mm以上、そして、好ましくは10mm以下、より好ましくは8mm以下である。
吸収性コア40の前方領域A及び後方領域Cの厚みは、それぞれ、好ましくは1mm以上、より好ましくは2mm以上、そして、好ましくは8mm以下、より好ましくは6mm以下である。
【0069】
前述した繊維塊11の偏在による作用効果及び括れ部40Nによる作用効果をより確実に奏させるようにする観点から、排泄部対向領域B(括れ部40N)の非肌対向面の面積は、吸収性コア40の非肌対向面の面積の60%以下、特に50%以下、更には40%以下が好ましい。本実施形態の吸収性コア40の排泄部対向領域Bは、前方領域A及び後方領域Cよりも繊維塊占有率が高い部位であり、特にその非肌対向面側B2は繊維塊占有率が高いことから、該領域B全体として、繊維塊11が有するクッション性が強く反映された「クッション部」とも言える部位である。特に本実施形態においては、非肌対向面側B2が、繊維塊11が主体をなし吸水性繊維12Fをほとんど含有しない繊維塊リッチ部位11Pであるため、該部位11Pを具備する排泄部対向領域Bは、クッション部として有効に機能し得る。つまり、前記の「吸収性コア40の非肌対向面の面積に対する、排泄部対向領域Bの非肌対向面の面積の割合」は、「吸収性コア40(吸収体4)の非肌対向面の面積に対する、クッション部(吸収性コア40において繊維塊11が該吸収性コア40の非肌対向面側に偏在している部位)の非肌対向面の面積の割合」(以下、「クッション部面積率」ともいう。)に言い換えることができる。クッション部面積率が60%以下、すなわち繊維塊11が非肌対向面側B2に偏在している排泄部対向領域Bの面積率が60%以下であることにより、前方領域Aと後方領域Cにおいて体の前身頃やおしり側の装着感を高められるという効果が奏される。なお、クッション部面積率の下限は、排泄部対向領域Bのフィット性を確実に高め、装着感を向上させる観点から、好ましくは20%以上、より好ましくは25%、更に好ましくは30%以上である。クッション部面積率は下記式により算出される。
クッション部面積率(%)=(クッション部の非肌対向面の面積/吸収性コアの非肌対向面の面積)×100
【0070】
前述したとおり、吸収性コア40には吸水性ポリマー13が含有されるところ、吸収性コア40における吸水性ポリマー13の存在部位は特に制限されず、吸収性コア40の全体に均一に分布していてもよく、吸収性コア40の一部に偏在していてもよいが、少なくとも吸収性コア40の排泄部対向領域B(括れ部40N)に存在していることが好ましい。これにより、前述した繊維塊11の偏在による作用効果(特に液引き込み性の向上効果)と相俟って、吸液性がより一層向上し得る。更に、吸収性コア40の排泄部対向領域Bにおいては、非肌対向面側B2よりも肌対向面側B1に吸水性ポリマー13が多く存在するとより効果的である。
【0071】
また、吸収性コア40の排泄部対向領域B(括れ部40N)の非肌対向面側B2には、繊維塊11のみならず、吸水性繊維12F及び/又は吸水性ポリマー13が含有されていることが好ましい。斯かる構成により、非肌対向面側B2に体液が導入されやすくなり、非肌対向面側B2に体液を効率的に固定することが可能となり、吸収性コア40の吸液性がより一層向上し得る。
【0072】
吸収性コア40において、繊維塊11と吸水性繊維12Fとの含有質量比は、前述した繊維塊占有率の特定範囲を満たすことを前提として特に限定されず、繊維塊11の構成繊維(合成繊維)11F及び吸水性繊維12Fの種類等に応じて適宜調整すればよい。例えば、繊維塊11の構成繊維11Fが熱可塑性繊維(非吸水性の合成繊維)、吸水性繊維12Fがセルロース系の吸水性繊維である場合、本発明の所定の効果をより確実に奏させるようにする観点から、繊維塊11と吸水性繊維12Fとの含有質量比は、前者(繊維塊11)/後者(吸水性繊維12F)として、好ましくは20/80~80/20、さらに好ましくは40/60~60/40である。
【0073】
吸収性コア40における繊維塊11の含有量は、乾燥状態の吸収性コア40の全質量に対して、好ましくは20質量%以上、より好ましくは40質量%以上、そして、好ましくは80質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。
吸収性コア40における吸水性繊維12Fの含有量は、乾燥状態の吸収性コア40の全質量に対して、好ましくは20質量%以上、より好ましくは40質量%以上、そして、好ましくは80質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。
吸収性コア40における吸水性ポリマー13の含有量は、乾燥状態の吸収性コア40の全質量に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、そして、好ましくは80質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。
なお、ここでいう「乾燥状態の吸収性コア」とは、体液を吸収する前の吸収性コアを意味する。
【0074】
吸収性コア40における繊維塊11の坪量は、好ましくは32g/m以上、より好ましくは80g/m以上、そして、好ましくは640g/m以下、より好ましくは480g/m以下である。
吸収性コア40における吸水性繊維12Fの坪量は、好ましくは32g/m以上、より好ましくは80g/m以上、そして、好ましくは640g/m以下、より好ましくは480g/m以下である。
吸収性コア40における吸水性ポリマー13の坪量は、好ましくは5g/m以上、より好ましくは10g/m以上、そして、好ましくは200g/m以下、より好ましくは100g/m以下である。
【0075】
吸収性コア40は、回転ドラムを備えた公知の積繊装置を用いて常法に従って製造することができる。積繊装置は、典型的には、外周面に集積用凹部が形成された回転ドラムと、該集積用凹部にコア形成材料(繊維塊11、吸水性繊維12F、吸水性ポリマー13)を搬送する流路を内部に有するダクトとを備え、該回転ドラムをそのドラム周方向に沿って回転軸周りに回転させつつ、該回転ドラムの内部側からの吸引によって該流路に生じた空気流に乗って搬送されたコア形成材料を、該集積用凹部に積繊させるようになされている。斯かる積繊工程によって集積用凹部内に形成される積繊物は、吸収性コア40である。前述した吸収性コア40におけるコア形成材料の特定配置は、前記積繊装置を用いた製造方法において、各コア形成材料の回転ドラム上での積繊順序などを適宜調整することで実現可能である。吸収性コア40の坪量は、好ましくは100g/m以上、より好ましくは200g/m以上、そして、好ましくは800g/m以下、より好ましくは600g/m以下である。
【0076】
以下、繊維塊11について更に説明する。図6には、繊維塊11の典型的な外形形状が2つ示されている。図6(a)に示す繊維塊11Aは四角柱形状より具体的には直方体形状をなし、図6(b)に示す繊維塊11Bは円盤形状をなしている。繊維塊11A,11Bは、相対向する2つの基本面(base plane)111と、該2つの基本面111を連結する骨格面(body plane)112とを備えている点で共通する。基本面111及び骨格面112はいずれも、この種の繊維を主体とする物品における表面の凹凸度合いを評価する際に適用されるレベルで、実質的に凹凸が無いと認められる部分である。
【0077】
図6(a)の直方体形状の繊維塊11Aは、6つの平坦面を有しているところ、その6面のうち、最大面積を有する相対向する2面がそれぞれ基本面111であり、残りの4面がそれぞれ骨格面112である。基本面111と骨格面112とは互いに交差、より具体的には直交している。
図6(b)の円盤形状の繊維塊11Bは、平面視円形状の相対向する2つの平坦面と、両平坦面を連結する湾曲した周面とを有しているところ、該2つの平坦面がそれぞれ基本面111であり、該周面が骨格面112である。
繊維塊11A,11Bは、骨格面112が平面視において四角形形状、より具体的には長方形形状をなしている点でも共通する。
【0078】
吸収性コア40に含有される複数の繊維塊11は、それぞれ、図6に示す繊維塊11A,11Bのような、2つの対向する基本面111と両基本面111を連結する骨格面112とを備えた「定形の繊維集合体」である点で、前述した従来技術における不定形の繊維集合体と異なる。換言すれば、吸収性コア40中の任意の1個の繊維塊11を透視した場合(例えば電子顕微鏡で観察した場合)、その繊維塊11の透視形状はその観察角度によって異なり、1個の繊維塊11につき多数の透視形状が存在するところ、吸収性コア40中の複数の繊維塊11それぞれは、その多数の透視形状の1つとして、2つの対向する基本面111と両基本面111を連結する骨格面112とを備えた特定透視形状を有する。前述した従来技術における不定形の繊維集合体は、基本面111や骨格面112のような「面」、すなわち広がりのある部分を実質的に有しておらず、互いに外形形状が異なっていて「定形」ではない。
【0079】
このように、吸収性コア40に含まれている複数の繊維塊11が、基本面111と骨格面112とで画成された「定形の繊維集合体」であると、不定形の繊維集合体である場合に比して、吸収性コア40における繊維塊11の均一分散性が向上するため、繊維塊11の如き繊維集合体を吸収性コア40に配合することで期待される効果(吸収体の柔軟性、クッション性、圧縮回復性などの向上効果)がより安定的に発現するようになる。また特に、図6(a)に示す如き直方体形状の繊維塊11の場合、その外面が2つの基本面111と4つの骨格面112との6つの面からなるため、他の繊維塊11あるいは吸水性繊維12Fとの接触機会を比較的多く持つことが可能となり、交絡性が高まって、保形性等の向上にも繋がり得る。
【0080】
繊維塊11において、2つの基本面111の総面積は、骨格面112の総面積よりも大きいことが好ましい。すなわち、図6(a)の直方体形状の繊維塊11Aにおいては、2つの基本面111それぞれの面積の総和は、4つの骨格面112それぞれの面積の総和よりも大きく、また、図6(b)の円盤形状の繊維塊11Bにおいては、2つの基本面111それぞれの面積の総和は、円盤形状の繊維塊11Bの周面を形成する骨格面112の面積よりも大きい。繊維塊11A,11Bのいずれにおいても、基本面111は、繊維塊11A,11Bが有する複数の面のうちで面積が最大の面である。
【0081】
このような、2つの基本面111と両基本面111に交差する骨格面112とで画成された「定形の繊維集合体」である繊維塊11は、従来技術とは異なる製造方法で製造されるものである。繊維塊11の好ましい製造方法は、図7に示すように、原料となる原料繊維シート10bsを、カッターなどの切断手段を用いて定形に切断する工程を有する。原料繊維シート10bsは、繊維塊11と同組成で且つ繊維塊11よりも寸法が大きいシートであり、好ましくは不織布である。斯かる工程を経て製造された複数の繊維塊11は、その形状及び寸法が、従来技術によって製造された不定形の繊維集合体と比較して、より定形的に揃っている。図7は、図6(a)の直方体形状の繊維塊11Aの製造方法を説明した図であり、図7中の点線は切断線を示している。吸収性コア40には、このように繊維シートを定形に切断して得られた、形状及び寸法が均一な複数の繊維塊11が配合されている。
【0082】
図6(a)の直方体形状の繊維塊11Aは、図7に示すように原料繊維シート10bsを、第1方向D1と該第1方向D1に交差(より具体的には直交)する第2方向D2とに所定の長さで切断することで製造される。両方向D1,D2は、それぞれ、シート10bsの面方向における所定の一方向であり、シート10bsは該面方向と直交する厚み方向Zに沿って切断される。このように、原料繊維シート10bsをいわゆる賽の目状に切断して得られる複数の直方体形状の繊維塊11Aにおいては通常、その切断面すなわちシート10bsの切断時においてカッターなどの切断手段と接触する面が、骨格面112であり、非切断面すなわち該切断手段と接触しない面が、基本面111である。基本面111は、シート10bsにおける表裏面(厚み方向Zと直交する面)であり、また前述したとおり、繊維塊11Aが有する複数の面のうちで面積が最大の面である。
【0083】
なお、以上の繊維塊11Aについての説明は、図6(b)の円盤形状の繊維塊11Bにも基本的に当てはまる。繊維塊11Aとの実質的な違いは、原料繊維シート10bsの切断パターンのみであり、シート10bsを定形に切断して繊維塊11Bを得る際には、繊維塊11Bの平面視形状に合わせて、シート10bsを円形状に切断すればよい。
【0084】
また、繊維塊11の外形形状は図6に示すものに限定されず、基本面111及び骨格面112はいずれも、図6(a)の各面111,112のように湾曲していない平坦面でもよく、あるいは図6(b)の骨格面112(円盤形状の繊維塊11Bの周面)のように湾曲面でもよい。また、基本面111と骨格面112とは互いに同形状同寸法であってもよく、具体的には例えば、繊維塊11Aの外形形状は立方体形状であってもよい。
【0085】
繊維塊11のサイズは特に制限されず、吸収性コア40のクッション性、通液性などを考慮して適宜設定し得る。繊維塊11が有する複数の面のうちで面積が最大の面である、基本面111の面積は、繊維塊11のサイズの指標となり得る。繊維塊11の基本面111の面積は、好ましくは1mm以上、より好ましくは5mm以上、そして、好ましくは100mm以下、より好ましくは50mm以下である。
【0086】
好ましい繊維塊11として、基本面111のアスペクト比が1又は1に近いもの、すなわち基本面111の平面視形状が正方形又はそれに準じる形状のものが挙げられる。斯かる繊維塊11を吸収性コア40に用いると、吸収性コア40が嵩高くなる傾向があり、クッション性等が向上し得る。
【0087】
基本面111のアスペクト比は、基本面111の平面視形状が四角形の場合は、その四角形の基本面111を画成する互いに直交する2辺の長さの比率として求められる。その2辺の長さが同じであれば、平面視四角形形状の基本面111のアスペクト比は1となり、2辺の長さが互いに異なる場合、すなわち基本面111の平面視形状が図6(a)に示す如き長方形の場合は、短辺111aの長さL1に対する長辺111bの長さL2の比率(L2/L1)として求められる。また、図6(b)に示す繊維塊11Bのように、基本面111の平面視形状が四角形でない場合は、基本面111の中心(重心)を通って互いに直交する2本の軸の長さの比率として求められる。その2本の軸の長さが同じであれば、平面視非四角形形状の基本面111のアスペクト比は1となり、2本の軸の長さが互いに異なる場合、すなわち相対的に長さの短い短軸と相対的に長さの長い長軸とが存在する場合は、短軸の長さに対する長軸の長さ(図6(b)の符号L2で示す長さ)の比率(後者/前者)として求められる。
【0088】
繊維塊11(11A,11B)の各部の寸法等は、例えば、以下のように設定することができる。繊維塊11の各部の寸法は、繊維塊11の電子顕微鏡写真などに基づいて測定することができる。
基本面111が図6(a)に示す如き平面視長方形形状の場合、その短辺111aの長さL1は、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.3mm以上、更に好ましくは0.5mm以上、そして、好ましくは10mm以下、より好ましくは6mm以下、更に好ましくは5mm以下である。
平面視長方形形状の基本面111の長辺111bの長さL2は、好ましくは0.3mm以上、より好ましくは1mm以上、更に好ましくは2mm以上、そして、好ましくは30mm以下、より好ましくは15mm以下、更に好ましくは10mm以下である。
なお、基本面111が図6に示すように、繊維塊11が有する複数の面のうちで最大面積を有する面である場合、長辺111bの長さL2は、繊維塊11の最大差し渡し長さ(長軸の長さ)に一致し、該最大差し渡し長さは、円盤形状の繊維塊11Bにおける平面視円形状の基本面111の直径に一致する。
繊維塊11の厚みT、すなわち2つの対向する基本面111間の長さTは、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.3mm以上、そして、好ましくは10mm以下、より好ましくは6mm以下である。
【0089】
前述したように、繊維塊11(11A,11B)が有する2種類の面(基本面111、骨格面112)は、繊維塊11を製造する際のカッターなどの切断手段による原料繊維シート10bsの切断によって形成される切断面(骨格面112)と、シート10bsが本来的に有する面であって該切断手段とは接触しない非切断面(基本面111)とに分類される。そして、この切断面か否かの違いに起因して、切断面である骨格面112は、非切断面である基本面111に比して、繊維端部の単位面積当たりの数が多いという特徴を有する。ここでいう「繊維端部」とは、繊維塊11の構成繊維11Fの長さ方向端部を意味する。通常、非切断面である基本面111にも繊維端部は存在するが、骨格面112は、原料繊維シート10bsの切断によって形成された切断面であることに起因して、その切断によって形成された構成繊維11Fの切断端部からなる繊維端部が、骨格面112の全体に多数存在しており、つまり、繊維端部の単位面積当たりの数が基本面111のそれよりも多くなっている。
【0090】
繊維塊11の各面(基本面111、骨格面112)に存在する繊維端部は、該繊維塊11が、吸収性コア40に含まれる他の繊維塊11や吸水性繊維12Fとの間に交絡を形成するのに有用である。また一般に、繊維端部の単位面積当たりの数が多いほど交絡性が向上し得るので、吸収性コア40の保形性などの諸特性の向上に繋がり得る。そして前述したように、繊維塊11の各面における繊維端部の単位面積当たりの数は均一ではなく、斯かる繊維端部の単位面積当たりの数に関しては「骨格面112>基本面111」なる大小関係が成立することから、繊維塊11を介した他の繊維(他の繊維塊11、吸水性繊維12F)との交絡性は該繊維塊11の面によって異なり、骨格面112は基本面111に比して交絡性が高い。すなわち、骨格面112を介しての他の繊維との交絡による結合の方が、基本面111を介してのそれよりも結合力が強く、1個の繊維塊11において、基本面111と骨格面112とで他の繊維との結合力に差が生じ得る。一般に、斯かる結合力が強いほど、その結合されている繊維の動きの自由度が制限され、吸収性コア40全体として強度(保形性)が向上する反面、柔らかさが低下する傾向がある。
【0091】
このように、吸収性コア40においてはそれに含まれている複数の繊維塊11それぞれが、その周辺の他の繊維(他の繊維塊11、吸水性繊維12F)に対して、2種類の結合力を持って交絡しており、これにより吸収性コア40は、適度な柔らかさと強度(保形性)とを兼ね備えたものとなる。そして、このような優れた特性を有する吸収性コア40を、吸収性物品の吸収体として常法に従って用いた場合には、該吸収性物品の着用者に快適な着用感を提供することができると共に、着用時における着用者の体圧等の外力によって吸収性コア40が破壊される不都合が効果的に防止される。
【0092】
特に、図6に示す繊維塊11(11A,11B)は、前述したように、2つの基本面111の総面積が骨格面112の総面積よりも大きい。このため、繊維端部の単位面積当たりの数が相対的に少なく、それ故に他の繊維との交絡性が相対的に低い基本面111の方が、これとは反対の性質を有する骨格面112よりも、総面積が大きいことを意味する。従って、図6に示す繊維塊11(11A,11B)は、表面全体に繊維端部が均一に存在する繊維塊に比して、周辺の他の繊維(他の繊維塊11、吸水性繊維12F)との交絡が抑制されやすく、また、周辺の他の繊維と交絡するとしても、比較的弱い結合力でもって交絡しやすく、それ故、大きな固まりになり難く、吸収性コア40に優れた柔軟性を付与し得る。
【0093】
繊維塊11の構成繊維11Fは合成繊維を含む。繊維11Fとして使用される合成繊維は、吸水性繊維12Fよりも吸水性が低いもの(弱吸水性)が好ましく、特に非吸水性の合成繊維が好ましい。繊維塊11の構成繊維11Fは合成繊維以外の繊維成分(例えば天然繊維)を含み得るが、繊維塊11の構成繊維11Fが弱親水性の繊維、好ましくは非吸水性繊維を含むことにより、吸収性コア40が乾燥状態である場合のみならず、水分(尿や経血などの体液)を吸収して湿潤状態にある場合でも、前述した繊維塊11の存在に起因する作用効果(保形性、柔軟性、クッション性、圧縮回復性、ヨレにくさなどの向上効果)が安定的に奏されるようになる。繊維塊11における構成繊維11Fとしての合成繊維の含有量は、繊維塊11の全質量に対して、好ましくは90質量%以上であり、100質量%すなわち繊維塊11が合成繊維のみから形成されていることが最も好ましい。特に、構成繊維11Fとしての合成繊維が非吸水性のものである場合に、前述した繊維塊11の存在に起因する作用効果が一層安定的に奏される。
【0094】
本明細書において、「吸水性」という用語は、例えば、パルプは吸水性と言ったように、当業者にとって容易に理解できるものである。同様に、熱可塑性繊維は弱吸水性(特に、非吸水性)であることも、容易に理解され得る。一方で、繊維の吸水性の程度は下記方法により測定される水分率の値によって、相対的な吸水性の違いが比較できるとともに、より好ましい範囲も規定できる。斯かる水分率の値が大きいほど、繊維の吸水性が強い。吸水性繊維としては、斯かる水分率が6%以上であることが好ましく、さらに10%以上が好ましい。一方で、合成繊維は、斯かる水分率が6%未満であることが好ましく、さらに4%未満であることが好ましい。なお、水分率が6%未満の場合、当該繊維は非吸水性繊維と判定できる。
【0095】
<水分率の測定方法>
水分率は、JIS P8203の水分率試験方法を準用して算出した。すなわち、繊維試料を温度40℃、相対湿度80%RHの試験室に24時間静置後、その室内にて絶乾処理前の繊維試料の重量W(g)を測定した。その後、温度105±2℃の電気乾燥機(例えば、株式会社いすゞ製作所製)内にて1時間静置し、繊維試料の絶乾処理を行った。絶乾処理後、温度20±2℃、相対温度65±2%の標準状態の試験室にて、旭化成(株)製サランラップ(登録商標)で繊維試料を包括した状態で、Siシリカゲル(例えば、豊田化工(株))をガラスデシゲータ内(例えば、(株)テックジャム製)に入れて、繊維試料が温度20±2℃になるまで静置する。その後、繊維試料の恒量W’(g)を秤量して、次式により繊維試料の水分率を求める。水分率(%)=(W-W’/W’)×100
【0096】
また同様に、吸収性コア40が乾燥状態及び湿潤状態のいずれの状態でも保形性、柔軟性、クッション性、圧縮回復性、ヨレにくさなどにおいて優れた効果を発現し得るようにする観点から、繊維塊11は、複数の熱可塑性繊維が互いに熱融着した3次元構造を有することが好ましい。
【0097】
複数の熱融着部が3次元的に分散した繊維塊11を得るためには、その原料繊維シート10bs(図7参照)が同様に構成されていればよく、また、そのような複数の熱融着部が3次元的に分散した原料繊維シート10bsは、前述したように、熱可塑性繊維を主体とするウエブや不織布に、熱風処理などの熱処理を施すことによって製造することができる。
【0098】
繊維塊11の構成繊維11Fの素材として好適な非吸水性の合成樹脂(熱可塑性樹脂)としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド;ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸アルキルエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、繊維11Fは、1種類の合成樹脂(熱可塑性樹脂)又は2種類以上の合成樹脂を混合したブレンドポリマーからなる単一繊維でもよく、あるいは複合繊維でもよい。ここでいう複合繊維は、成分の異なる2種類以上の合成樹脂を紡糸口金で複合し、同時に紡糸して得られる合成繊維(熱可塑性繊維)で、複数の成分がそれぞれ繊維の長さ方向に連続した構造で、単繊維内で相互接着しているものをいう。複合繊維の形態には、芯鞘型、サイドバイサイド型等があり、特に制限されない。
【0099】
また、繊維塊11は、水との接触角が90度未満、特に70度以下であることが、初期排泄での体液の引き込み性を一層向上させる観点から好ましい。このような繊維としては、前述した非吸水性の合成繊維を、常法に従い親水化剤で処理することによって得られる。親水化剤としては、通常の界面活性剤を使用することができる。
【0100】
<接触角の測定方法>
測定対象(吸収性コア)から繊維を取り出し、その繊維に対する水の接触角を測定する。測定装置として、協和界面科学株式会社製の自動接触角計MCA-Jを用いる。接触角の測定には脱イオン水を用いる。インクジェット方式水滴吐出部(クラスターテクノロジー社製、吐出部孔径が25μmのパルスインジェクターCTC-25)から吐出される液量を20ピコリットルに設定して、水滴を、繊維の真上に滴下する。滴下の様子を水平に設置されたカメラに接続された高速度録画装置に録画する。録画装置は後に画像解析をする観点から、高速度キャプチャー装置が組み込まれたパーソナルコンピュータが望ましい。本測定では、17msec毎に画像が録画される。録画された映像において、繊維に水滴が着滴した最初の画像を、付属ソフトFAMAS(ソフトのバージョンは2.6.2、解析手法は液滴法、解析方法はθ/2法、画像処理アルゴリズムは無反射、画像処理イメージモードはフレーム、スレッシホールドレベルは200、曲率補正はしない、とする)にて画像解析を行い、水滴の空気に触れる面と繊維とのなす角を算出し、接触角とする。測定対象物から取り出した繊維は、繊維長1mmに裁断し、該繊維を接触角計のサンプル台に載せて、水平に維持する。繊維1本につき異なる2箇所の接触角を測定する。N=5本の接触角を小数点以下1桁まで計測し、合計10箇所の測定値を平均した値(小数点以下第2桁で四捨五入)を、当該繊維の水との接触角と定義する。測定環境は、室温22±2℃、湿度65±2%RHとする。
【0101】
なお、測定対象の吸収体(吸収性コア)が吸収性物品等の他の物品の構成部材として用いられており、該吸収体を取り出して評価測定する場合において、該吸収体が、接着剤、融着などによって他の構成部材に固定されている場合には、その固定部分を、繊維の接触角に影響を与えない範囲で、コールドスプレーの冷風を吹き付ける等の方法で接着力を除去してから取り出す。この手順は、本願明細書中の全ての測定において共通である。
【0102】
以上、本発明をその実施形態に基づいて説明したが、本発明は、前記実施形態に制限されることなく適宜変更が可能である。
例えば、吸収性コア40は、排泄部対向領域Bに、周辺部よりもナプキン1の着用者の肌側に向かって隆起した隆起部を有していてもよい。前記隆起部は、典型的には、吸収性コア40の排泄部対向領域Bの横方向Yの少なくとも中央部が、周辺部よりも着用者の肌側に凸状に隆起して形成されており、周辺部に比してコア形成材料の坪量が大きく、厚みも厚い。
本発明の吸収性物品は、人体から排出される体液(尿、軟便、経血、汗等)の吸収に用いられる物品を広く包含し、前述した生理用ナプキンの他、生理用ショーツ、止着テープを有するいわゆる展開型の使い捨ておむつ、パンツ型の使い捨ておむつ、失禁パッド等が包含される。
【0103】
前述した本発明の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
<1> 肌に直接又は間接に当てて使用され、使用時に使用者の肌から相対的に近い位置に配される肌対向面と、使用者の肌から相対的に遠い位置に配される非肌対向面とを有し、使用者の前後方向に対応する縦方向とこれに直交する横方向とを有し、且つ使用時に使用者の排泄部に対向配置される排泄部対向領域と、該排泄部対向領域よりも縦方向前側に配される前方領域と、該排泄部対向領域よりも縦方向後側に配される後方領域とを有し、合成繊維を含む繊維塊と、吸水性繊維と、吸水性ポリマーとを含むコア形成材料を含有し、複数の該繊維塊同士又は該繊維塊と該吸水性繊維とが互いに交絡している吸収体であって、前記排泄部対向領域に、前記前方領域及び前記後方領域よりも横方向長さが短い括れ部を有し、少なくとも該括れ部に前記繊維塊が存在する吸収体。
<2> 前記前方領域及び前記後方領域それぞれの横方向長さに対する前記括れ部の横方向長さの比率が、0.5以上1未満である、前記<1>に記載の吸収体。
<3> 前記吸収体は、前記コア形成材料を含有する吸収性コアと、該吸収性コアの外面を被覆するコアラップシートとを具備し、該吸収性コアが、前記排泄部対向領域に前記括れ部を有しており、該コアラップシートが該括れ部の外面を被覆するとともに、該括れ部よりも横方向外方に延在している、前記<1>又は<2>に記載の吸収体。
<4> 前記繊維塊及び前記吸水性繊維の合計含有質量に対する該繊維塊の含有質量の比率は、少なくとも前記排泄部対向領域では、前記非肌対向面側よりも前記肌対向面側の方が小さい、前記<1>~<3>のいずれか1に記載の吸収体。
<5> 前記吸収体(吸収性コア)の前記括れ部での、前記繊維塊及び前記吸水性繊維の合計含有質量に対する該繊維塊の含有質量の比率の、前記非肌対向面側と前記肌対向面側との間の差は、前者から後者を差し引いた場合に、50質量%以上、好ましくは90質量%以上である、前記<4>に記載の吸収体。
<6> 前記吸収体(吸収性コア)は前記括れ部において、前記非肌対向面側に繊維塊のみを含有し、前記肌対向面側に繊維塊を全く含有しない、前記<4>に記載の吸収体。
<7> 前記繊維塊及び前記吸水性繊維の合計含有質量に対する該繊維塊の含有質量の比率は、前記前方領域及び前記後方領域よりも前記排泄部対向領域の方が大きい、前記<1>~<6>のいずれか1に記載の吸収体。
<8> 前記括れ部では、前記繊維塊及び前記吸水性繊維の合計含有質量に対する該繊維塊の含有質量の比率は前記非肌対向面側よりも前記肌対向面側の方が小さく、且つ、該括れ部には前記吸収体(吸収性コア)が含有する全ての繊維塊の90質量%以上、好ましくは95質量%以上が存在する、前記<7>に記載の吸収体。
<9> 前記排泄部対向領域の前記非肌対向面の面積は、前記吸収体の前記非肌対向面の面積の60%以下である、前記<1>~<8>のいずれか1に記載の吸収体。
<10> 前記吸水性ポリマーは、少なくとも前記排泄部対向領域に存在し、且つ該排泄部対向領域において前記非肌対向面側よりも前記肌対向面側に多く存在する、前記<1>~<9>のいずれか1に記載の吸収体。
<11> 前記<1>~<10>のいずれか1に記載の吸収体を具備する吸収性物品。
【0104】
<12> 前記吸収性物品は、前記吸収体の前記肌対向面側に配された表面シートと前記非肌対向面側に配された裏面シートとを具備した、縦長形状の吸収性本体を備える、前記<11>に記載の吸収性物品。
<13> 前記吸収性物品は、前記吸収性本体における前記排泄部対向領域の縦方向に沿う両側部それぞれから横方向の外方に延出する一対のウイング部を有している、前記<12>に記載の吸収性物品。
<14> 前記ウイング部は、前記吸収性物品を着衣のクロッチ部の肌対向面に固定する際に該クロッチ部の非肌対向面側に折り返される部分であり、該ウイング部の着衣対向面に、該ウイング部を該クロッチ部に固定するウイング部粘着部を備えている、前記<13>に記載の吸収性物品。
<15> 前記吸収体(吸収性コア)は、前記排泄部対向領域に、周辺部よりも前記吸収性物品の着用者の肌側に向かって隆起した隆起部を有している、前記<11>~<14>のいずれか1に記載の吸収性物品。
<16> 前記隆起部は、前記周辺部に比してコア形成材料の坪量が大きい、前記<15>に記載の吸収性物品。
<17> 前記吸収性物品は生理用ナプキンである、前記<11>~<16>のいずれか1に記載の吸収性物品。
【実施例
【0105】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は斯かる実施例に限定されるものではない。
【0106】
〔実施例1〕
図3に示す吸収体4(吸収性コア40)と同様の平面形状を有する吸収体を製造し、実施例1の吸収体とした。具体的には、繊維塊11、吸水性繊維12F及び吸水性ポリマー13をコア形成材料として用い、公知の積繊装置を用いて常法に従って吸収性コア40を得、該吸収性コア40の外面全体を坪量16g/mのコアラップシート41で被覆して、吸収体4を製造した。繊維塊11の製造は図7に準じ、原料繊維シートを賽の目状に切断して製造した。前記繊維塊の原料繊維シートとして、ポリエチレン樹脂繊維及びポリエチレンテレフタラート樹脂繊維(非吸水性繊維、繊維径18μm)からなる非吸水性の熱可塑性繊維を構成繊維とする坪量21g/m、厚み0.6mmのエアスルー不織布(構成繊維同士の熱融着部を有する繊維シート)を用いた。吸水性繊維12Fとして、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)を用いた。吸水性ポリマー13として、アクリル酸重合体部分ナトリウム塩を用いた。
【0107】
実施例1の吸収体4は、縦方向長さが216mmであり、横方向長さすなわち幅については、図3を参照して、排泄部対向領域Bすなわち括れ部40Nの幅W1が60mm、前方領域A及び後方領域Cそれぞれの括れ部40N寄りの部分の幅W2が70mmであった。実施例1の吸収体4の厚みは、前方領域A、排泄部対向領域B及び後方領域Cはそれぞれ5.7mmであり、前方領域Aから後方領域Cにわたってほぼ同じ厚みであった。また、実施例1の吸収性コアは、該吸収性コアの非肌対向面側の全体が繊維塊リッチ部位11P、該吸収性コアの肌対向面側の全体が吸水性繊維リッチ部位12Pであり、前方領域Aの縦方向長さ46mm、排泄部対向領域Bの縦方向長さ80mm、後方領域Cの縦方向長さ90mmであった。また、実施例1の吸収体の前記クッション部面積率(吸収体の非肌対向面の全面積に占める排泄部対向領域Bの非肌対向面の面積の割合)は、吸収体の非肌対向面の全域がクッション部で形成されているので、100%であった。実施例1では、吸収性コア40の繊維塊の坪量は140g/m、吸水性繊維の坪量は210g/mとした。また、吸収性コア40には、吸水性ポリマー13が50g/m含まれており、その90質量%以上が吸水性繊維リッチ部位12Pに含まれる。また、繊維塊リッチ部位11Pと吸水性繊維リッチ部位12Pとの界面では、繊維塊11と吸水性繊維12との交絡が存在するが、該界面とその近傍領域以外では、繊維塊リッチ部位11Pには吸水性繊維12は含まれず、吸水性繊維リッチ部位12Pには繊維塊11は含まれていない。前記「繊維塊占有率」の値は、当該界面領域以外の部分における値である。
【0108】
〔実施例2〕
図3図5に示す吸収体4を製造し、実施例2の吸収体とした。吸収体の縦方向の各領域の寸法は実施例1の吸収体4と同じであった。実施例2の吸収体4の厚みは、前方領域A及び後方領域Cはそれぞれ3.2mm、排泄部対向領域Bは5.7mmであり、排泄部対向領域Bに、周辺部よりも使用者の肌側に向かって隆起した隆起部を有していた。実施例2の吸収性コア40は、排泄部対向領域Bの非肌対向面側B2の全体が繊維塊リッチ部位11P、それ以外の部位は全て吸水性繊維リッチ部位12Pであった。また、実施例2の吸収体の前記クッション部面積率は33%であった。実施例2の吸収体4は、以上の点以外は、実施例1の吸収体4と同じであった。
【0109】
〔参考例1〕
吸収性コア40が繊維塊を非含有である点以外は、実施例1の吸収体と基本構成が同じである吸収体を製造し、参考例1の吸収体とした。参考例1の吸収体の厚みは5.7mm均一であった。吸水性繊維の坪量は350g/mとした。
【0110】
〔比較例1〕
吸収性コアが繊維塊を非含有である点、及び括れ部を有していない点以外は、実施例1の吸収体と基本構成が同じである吸収体を製造し、比較例1の吸収体とした。比較例1の吸収体の厚みは5.7mm均一であった。吸水性繊維の坪量は350g/mとした。
【0111】
〔比較例2〕
吸収性コア及びコアラップシートを具備する吸収要素の非肌対向面側に、弾力性に富むクッションシートを積層してなる積層体を製造し、比較例2の吸収体とした。比較例2の吸収体の厚みは5.7mm均一であった。比較例2の吸収要素は、比較例1の吸収体と基本構成が同じであり、すなわち、吸収性コアが繊維塊を非含有であり且つ括れ部を有していなかった。クッションシートとして、吸収要素と平面視において同形状同寸法のシート状の坪量40g/mのエアスルー不織布を用い、クッションシートを3枚重ねて吸収要素の非肌対向面に固定してクッション部とした。クッションシートは、吸収要素の非肌対向面の全域を被覆するように固定し、クッションシート同士及びクッションシートと吸収要素との固定にはホットメルト接着剤を用いた。比較例2の吸収体においては、吸収体の非肌対向面の全域がクッション部で形成されているので、前記クッション部面積率は100%である。吸水性繊維の坪量は210g/mとした。
【0112】
〔性能評価〕
各実施例及び比較例の吸収体について、下記方法により、幅圧縮荷重、動的ヨレ率、回復仕事量、圧縮ひずみ率をそれぞれ測定した。結果を下記表1に示す。
【0113】
なお、測定対象として吸収性物品を用いる場合には、各実施例及び比較例の吸収体を用い、図1に示すナプキン1と基本構成が同様の生理用ナプキンを作製し、該生理用ナプキンを測定に用いた。生理用ナプキンにおける表面シートとして、坪量30g/mのエアスルー不織布を用い、裏面シートとして、37g/mのポリエチレン樹脂フィルム(FL-KDJ100nN、大化工業製)を用いた。
【0114】
<幅圧縮荷重の測定方法>
実施例1、2、参考例1、比較例1、2のナプキンが着用者に及ぼす接触荷重を評価するため、各ナプキンの幅圧縮荷重を測定した。幅圧縮荷重は、測定サンプルの吸収性物品(生理用ナプキン)の横(幅)方向の圧縮荷重であり、生理用ナプキンの着用時に、着用者の大腿部から吸収性物品に横方向の外力が付加された場合の、吸収性物品が着用者に及ぼす接触荷重に相当する。幅圧縮荷重は、吸収性物品あるいはその構成部材である吸収体の横方向ないし幅方向の柔軟性の指標となり、幅圧縮荷重の数値が小さいほど、当該吸収性物品は柔軟性に優れ、着用時にヨレにくく、鼠蹊部の違和感が少なく、着用感を向上させ得るものとして、高評価となる。
図8には、幅圧縮荷重の測定方法の概要が示されている。測定機器として、オリエンテック社製TENSILON RTC-1210S(測定装置K)と治具Jを用いた。治具Jは、測定サンプル100(生理用ナプキン)に幅圧縮荷重を付加する一対の弧J11,J12と、一方の弧J11に取り付けられた紐J3を引っ張る滑車J2と、を有する。
測定サンプル100とする生理用ナプキンが、ウイング部や後方フラップ部の如き、吸収性本体から横方向外方に延出する延出部を有する場合、該生理用ナプキンの吸収性本体における裏面シートの粘着部全面にティッシュペーパーを貼りつけ、該延出部を裏面シート側に折り返した状態のものを測定サンプル100とした。このとき、測定サンプル100の幅(横方向長さ)が、当該測定サンプル100の構成部材であるコアラップシートの幅(横方向長さ)と同じになるように調整した。
測定サンプル100は、図8(a)に示すように、縦(長手)方向の中間部(排泄部対向領域)が治具Jの一対の弧J11,J12の頂点と同じ水平位置になり、且つ滑車J2側の弧J12に接するようにして、固定紐J4の下に配置した。このとき、左右の弧J11,J12それぞれの頂点間の距離は100mmに合わせた。
測定時には、図8(b)に示すように、弧J11に取り付けられた紐J3を測定装置Kと滑車J2とで引張して、測定サンプル100をその幅が30mmになるまで圧縮していき、その圧縮過程でサンプル100の幅が50mmとなった時点での荷重を、当該サンプル100の幅圧縮荷重として測定した。測定条件は、引張速度50mm/分とし、測定サンプル100の載置面からの固定紐J4の高さを22mmとした。
【0115】
(幅圧縮荷重の測定結果)
表1に示すように、実施例1の幅圧縮荷重は166cN、実施例2の幅圧縮荷重は180cNであった。
一方、比較例1、2の幅圧縮荷重はいずれも223cN、比較例2の幅圧縮荷重は307cNであり、各実施例の幅圧縮荷重の値より大きかった。また、比較例3は、座屈してしまい測定不可能であった。
この結果から、実施例1、2のナプキンは、排泄部対向領域にその前後の領域よりも幅狭に構成された括れ部を有し、且つ該括れ部に繊維塊が存在するため、幅圧縮荷重を低減でき、横方向の柔軟性が高いことが確認された。
【0116】
<動的ヨレ率の測定方法>
生理用ナプキンを測定サンプルとし、測定サンプルの動的ヨレ率を、駆動式の女性用下半身人体モデルを用いて評価した。まず、測定対象のナプキンの中央幅(ナプキンの縦方向中央における横方向長さ)(歩行前の中央幅)を測定し、該ナプキンをショーツに貼りつけて女性用人体モデルに装着させた。次に、人体モデルを100歩/分の速度で30分間歩行させ、その人体モデルの歩行中において、3分歩行後に装着状態のナプキンに脱繊維馬血を15秒間で1.5g注入する操作を6回繰り返し、合計9gの脱繊維馬血をナプキンに注入した。そして、ナプキンをショーツから外してその中央幅(歩行後の中央幅)を測定し、歩行前の中央幅と歩行後の中央幅とから、次式により動的ヨレ率(%)を算出した。動的ヨレ率の数値が小さいほど、ナプキンがヨレ難く、高評価となる。なお、測定対象に注入した脱繊維馬血は、日本バイオテスト(株)製脱繊維馬血で且つ液温25℃における粘性が8cpに調整されたものであり、また、斯かる粘度は、東機産業株式会社製TVB-10M形粘度計において、ロータ名称L/AdP(ロータコード19)のロータで回転速度12rpmにて測定した場合の粘度である。
動的ヨレ率(%)=[{(歩行前の中央幅)-(歩行後の中央幅)}÷(歩行前の中央幅)]×100
【0117】
<圧縮仕事量及び回復仕事量の測定方法>
測定対象物(吸収体)の回復仕事量(以下、「WC’」ともいう。)は、カトーテック株式会社製のKES(カワバタ・エバリュエーション・システム)での測定値で表し得ることが一般的に知られている(参考文献:風合い評価の標準化と解析(第2版)、著者 川端季雄、昭和55年7月10日発行)。具体的には、カトーテック株式会社製の圧縮試験装置KES-G5を用いてWC’を測定することができる。測定手順は以下のとおりである。なお、WC’の測定の際には、圧縮仕事量(以下、「WC」ともいう。)も併せて測定可能であるので、以下ではWC及びWC’の測定方法を併記する。
240mm×70mmの平面視四角形形状の試料(コアラップシートで包まれている吸収体)を用意し、下記(湿潤状態の吸収体を備えた吸収性物品の調製方法)に従い、該吸収体を湿潤状態として、測定サンプルとする。測定サンプルを圧縮試験装置の試験台に取り付け、測定サンプルの非凹陥部、すなわち圧搾加工などが施されておらず測定サンプルの姿が残っている部分を、面積2cmの円形平面を持つ鋼板間で圧縮する。斯かる圧縮工程において、圧縮速度は0.2cm/sec、圧縮最大荷重は2450mN/cmとする。回復過程も同一速度で測定を行う。WCは下記式(1)、WC’は下記式(2)で表され、単位は「mN・cm/cm」である。下記式中、Tは、2450mN/cm荷重時の厚み、Tは、4.902mN/cm荷重時の厚みを示す。また、下記式(1)中のP及び下記式(2)中のPは、それぞれ、圧縮過程時の測定荷重(mN/cm)、回復過程時の測定荷重(mN/cm)を示す。
【0118】
【数1】
【0119】
【数2】
【0120】
なお、WC’は、KES-G5の測定結果画面には表示されず、該測定結果画面に表示されるのは、WCと、WC’から算出される圧縮回復率ないし圧縮レジリエンス(以下、「RC」ともいう。)である。このような場合には、測定装置に表示されるパラメータ(WC,RC)を用い、次式によりWC’を算出する。
【0121】
【数3】
【0122】
(湿潤状態の吸収体を備えた吸収性物品の調製方法)
脱繊維馬血を注入する前の吸収性物品を気温23℃、相対湿度50%RHの環境下で24時間放置して、乾燥状態の吸収性物品を調製する。当該乾燥状態の吸収性物品を、表面シート側(肌対向面側)が上側となるようにして水平に置き、その表面シート上に、楕円形注入口(長径50mm、短径23m)を置き、該注入口から脱繊維馬血を3.0g注入し、1分静置した後にさらに脱繊維馬血3.0gを注入し、注入後1分間その状態を保持して、湿潤状態の吸収体を備えた吸収性物品を得る。なお、吸収性物品に注入した脱繊維馬血は、前述の<動的ヨレ率の測定方法>で調製したものと同じものである。
【0123】
<圧縮ひずみ率(ΔT/T)の測定方法>
試料の圧縮ひずみ率(ΔT/T)は、前述したKESを用いて測定することができる。具体的には、カトーテック株式会社製の自動化圧縮試験装置KES-G5を用いて圧縮ひずみ率(ΔT/T)を測定した。測定手順は以下のとおりである。
試料としての「吸収体を備えた吸収性物品(生理用ナプキン)」を圧縮試験装置の試験台に取り付ける。次に、その試料を面積2cmの円形平面を持つ鋼板間で圧縮し、その圧縮時の荷重を徐々に大きくしていって、該荷重が所定の最大値(最大荷重)となった時点での測定対象物の厚み(圧縮厚み)Tを測定する。測定対象物にシワや折れ曲がりがないように留意する。圧縮試験機の測定条件は下記のとおり。
・圧縮速度:0.2mm/sec
・最大荷重:2450mN/cm
・SENS:10
・DEF:20
また、測定対象物の初期厚み(T)は、前記荷重が103.9mN/cmの時点での厚みとした。次式により圧縮ひずみ率(%)を算出する。
圧縮ひずみ率(ΔT/T)={(T-T)/T)}×100
【0124】
【表1】
【符号の説明】
【0125】
1 生理用ナプキン(吸収性物品)
A 前方領域
B 排泄部対向領域
C 後方領域
2 表面シート
3 裏面シート
4 吸収体
40 吸収性コア
40N 括れ部
11 繊維塊
11F 繊維塊の構成繊維(合成繊維)
111 基本面
112 骨格面
12F 吸水性繊維
11P 繊維塊リッチ部位
12P 吸水性繊維リッチ部位
13 吸水性ポリマー
41 コアラップシート
10bs 繊維塊の原料繊維シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8