(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-27
(45)【発行日】2023-01-11
(54)【発明の名称】コンクリート強度試験供試体用の樹脂製型枠
(51)【国際特許分類】
G01N 1/28 20060101AFI20221228BHJP
G01N 3/00 20060101ALI20221228BHJP
B28B 7/34 20060101ALI20221228BHJP
【FI】
G01N1/28 E
G01N3/00 M
B28B7/34 F
(21)【出願番号】P 2018241238
(22)【出願日】2018-12-25
【審査請求日】2021-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000010065
【氏名又は名称】フクビ化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 徹
(72)【発明者】
【氏名】梅本 宗宏
(72)【発明者】
【氏名】井戸 康浩
(72)【発明者】
【氏名】大橋 英紀
(72)【発明者】
【氏名】藤沢 忠洋
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-255412(JP,A)
【文献】特開2012-020744(JP,A)
【文献】特開2000-085773(JP,A)
【文献】特開平09-145570(JP,A)
【文献】中国実用新案第202330118(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/28
G01N 3/00
B28B 7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート強度試験用供試体を形成するための箱型の樹脂製型枠であって、
合成樹脂で側面及び底面が一体成型の箱型に形成され、
前記箱型の上面外周部に幅の異なるフランジ部が形成されると共に、前記側面及び底面の外周部分には複数条のリブが所要間隔をもって連続的に形成され、
使用時において上面側となるフランジ部は他のフランジ部の幅より大きく形成すると共に複数の治具用孔を形成し
、
前記箱型外側四隅コーナ部に、V字状の切込み溝を設けてあること
を特徴とするコンクリート強度試験供試体用の軽量化した樹脂製型枠。
【請求項2】
前記合成樹脂は、コンクリートとの剥離性が良いポリエチレン樹脂またはポリプロピレン樹脂であること
を特徴とする請求項1に記載のコンクリート強度試験供試体用の軽量化した樹脂製型枠。
【請求項3】
前記箱型の上辺となる側面に、コンクリート打設時に空気溜りを生じさせない複数の空気抜き孔が形成されていること
を特徴とする請求項1乃至
2のいずれかに記載のコンクリート強度試験供試体用の軽量化した樹脂製型枠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造体コンクリートの強度を直接検査するための供試体(以下、ボス供試体という)を形成する樹脂製型枠に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の型枠として、複数の施設が公知技術として知られている。例えば、第1の公知技術としては、試験体採取筒は、コンクリート打設用の型枠に設けられた孔に該型枠の内側から外側に向けて筒体を突出させた状態で取り付けられるもので、該筒体の型枠取付側において試験体を筒内部空間に取り入れる開口部に、打設されたコンクリートのモルタル成分のみを取り込む選別網が設けられていることを特徴とする試験体採取筒、である(特許文献1)。
【0003】
この第1の公知技術に係る試験体採取筒によれば、筒体の型枠取付側において試験体を筒内部空間に取り入れる開口部に、打設されたコンクリートのモルタル成分のみを取り込む選別網が設けられているので、打設コンクリートのモルタル分のみの試験体を得ることが可能となる、というものである。
【0004】
第2の公知技術としては、合成樹脂製で筒状の周壁と有孔の底板とを一体化した薄肉の筒状体からなるコンクリート供試体を成形するための型枠であって、該筒状体の周壁における上下端間に、引き裂き可能な極薄肉底で連結された複数の切り溝が設けられ、該筒状体の上部口縁の対向位置には周壁を上記切り溝において引き裂くための一対の摘みが設けられ、該筒状体の底部上に無孔の底板が圧嵌されている、ことを特徴とするコンクリート供試体用型枠、である(特許文献2)。
【0005】
この第2の公知技術に係る供試体型枠によれば、コンクリート供試体用型枠を、簡単な構成で軽量・安価な合成樹脂成形品として構成することができ、しかも、その型枠からの供試体の取り出しに工具等を必要とせず、手作業で簡単に取り出すことができ、廃棄物となる使用済み型枠も少量の合成樹脂材だけにすることができる。また、筒状体を熱伝導率の低い合成樹脂により形成しているので、硬化あるいは養生中の供試体を適切な環境に置き、品質の良い供試体を製造することができる、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第3357316号の特許公報
【文献】特開2009-190225号の公開公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記第1の公知技術の発明においては、試験体採取用の型枠は筒体であって、該筒体の型枠取付側において試験体を筒内部空間に取り入れる開口部に、打設されたコンクリートのモルタル成分のみを取り込む選別網が設けられている構成であるため、採取されたコンクリート供試体についてはモルタル成分のみであり、コンクリートの強度に寄与するジャリ(小石)が除かれていることによって、日本工業規格に基づく実質的な試験結果を得ることができないという問題点(課題)を有している。
【0008】
また、前記第2の公知技術のコンクリート供試体用型枠は、筒状の周壁と有孔の底板とを一体化した薄肉の筒状体であり、該筒状体の底部に圧嵌された底板が設けられると共に、高強度の外套体を外嵌させており、二重の構造を必要とするものであるから、供試体を作成する上で構造が複雑であって実質的に操作性が悪くコストも高くなるという問題点(課題)を有している。
【0009】
本発明は、前記課題を解決するために、合成樹脂による成型手段により形成され所要の強度があり構造的にも簡単で安価で、使い捨て可能な軽量化した樹脂製型枠を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は前述の課題を解決する具体的手段として、コンクリート強度試験用供試体を形成するための箱型の樹脂製型枠であって、合成樹脂で側面及び底面が一体成型の箱型に形成され、前記箱型の上面外周部に幅の異なるフランジ部が形成されると共に、前記側面及び底面の外周部分には複数条のリブが所要間隔をもって連続的に形成され、使用時において上面側となるフランジ部は他のフランジ部の幅より大きく形成すると共に複数の治具用孔を形成し、前記箱型外側四隅コーナ部に、V字状の切込み溝を設けてあることを特徴とするコンクリート強度試験供試体用の軽量化した樹脂製型枠を提供するものである。
【0011】
上記発明において、前記合成樹脂は、剥離性が良い高密度のポリエチレン樹脂またはポリプロピレン樹脂であること;および前記箱型の上辺となる側面に、コンクリート打設時に空気溜りを生じさせない複数の空気抜き孔が形成されていること;を付加的要件として含むものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るコンクリート強度試験供試体用の軽量化した樹脂製型枠によれば、樹脂による一体成型品であるため、従来の鋼製型枠のような組立作業が不要であると共に、鋼製型枠のような隙間がないのでコンクリートの漏れが生じないばかりでなく、軽量であって持ち運びが容易で、作業性が良く大幅なコストダウンが図れるという優れた効果を奏する。
また、剥離性の良い樹脂で形成され、外側四隅コーナ部にV字状の切込み溝を設けてあることにより、離型作業が容易であると共に、使い捨てで廃棄しても、ポリエチレン樹脂またはポリプロピレン樹脂という環境にやさしい製品であるという優れた効果も奏する。
さらに、樹脂製型枠を割り取りした後、箱型の型枠を樹脂ボックスとしてそのまま梱包材に使用し、運搬作業の際に活用できるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態に係る構造体コンクリートの強度を直接検査できる供試体を得るための樹脂製型枠の平面図である。
【
図5】同樹脂製型枠の上面側から見た斜視図である。
【
図6】同樹脂製型枠の底面側から見た斜視図である。
【
図7】(a)、(b)は、同樹脂製型枠における外側四隅コーナ部に設けられた引き剥せる一対のV字状の切込み溝の短部側をそれぞれ拡大して示した説明図である。
【
図8】同樹脂製型枠を構造体コンクリート構築用の型枠に取付けた状況を示した断面図である。
【
図9】同樹脂製型枠を構造体から離脱させる状況を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を図示の実施の形態に基づいて詳しく説明する。
まず、好ましい一実施例を示した
図1~4について説明すると、構造体コンクリートの強度を直接検査できる供試体を得るための箱型の樹脂製型枠1であって、例えば、材料として好ましくは剥離性が良く、高密度のポリエチレン樹脂またはポリプロピレン樹脂等の合成樹脂を使用し、上面に開口部2を形成し、少なくとも肉厚が3mm程度の側面3(長辺側3a、短辺側3b)及び底面4が一体成型された長方形の箱型に形成される。
【0015】
また、前記箱型の樹脂製型枠1の全体の剛性(強度)を向上させるために、上面外周部に所要幅のフランジ部5が一体に成型(形成)されると共に、前記側面3及び底面4の外周表面には所要幅で所要高さの複数条のリブ6が所要間隔をもって連続させて一体的にそれぞれ成型(形成)される。この場合に、
図1に示したように、樹脂製型枠1の使用時に上下辺となる側面3、つまり長辺側3aに形成されるフランジ部5a、5bは、短辺側3bに形成されるフランジ部5cよりも数倍幅広く形成されるのであり、例えば、下辺となる側面に形成されるフランジ部5bは、短辺側3bに形成されるフランジ部5cの約2倍の広さに形成され、上辺となる長辺側3aに形成されるフランジ部5aはフランジ部5cの約4倍の広さに形成される。なお、
図2に示したように、上辺となる長辺側3aには、コンクリート打設時に空気溜りを無くすための空気抜き孔10が複数個形成され、また、コンクリート硬化後に構造体から供試体を分離するための治具を保持または挿通する複数の治具用孔11がフランジ部5aに設けられている。
【0016】
さらに、リブ6の形成について、箱型の一方の側面3から対抗する他方の側面3まで、底面4の外周表面を通して連続させて形成する。この場合、対抗する他方の側面というのは、要するに、長辺側3aの場合は対抗する他方の長辺側3aまで、短辺側3bの場合は対抗する他方の端辺側3bまでのことであり、それぞれ底面4の外周表面を通して連続させて形成するので、箱型の長辺側3aに設けられるリブ6aと短辺側3bに設けられるリブ6bとが、
図4に示したように、底面4の外周表面においては、クロスする状態で一体的に成型(形成)されることになり、コンクリート打設時に変形しないように側面3及び底面4の強度・剛性が大幅に増強される。なお、箱型の樹脂製型枠1においては、表現していないが、底面4よりも開口部2側が僅かに広くなるように、側面3(3a、3b)に僅かな型抜き勾配とも言うべきテーパーを付けて形成してある。
【0017】
また、
図5~6には、前記箱型外側四隅コーナ部の側面3a、3bからフランジ部5に掛けて、打設して硬化したコンクリートを容易に脱型できるように、一対のV字状の切込み溝7、8を近接して設けて四隅を引き剥せるように形成し、各切込み溝7、8の各端部は、ある程度の強度を維持するために、
図7(a)(b)に示したように、浅くなるように形成される。なお、各四隅の引き剥し作業の際及び樹脂製型枠1としての使用時に、手助けとなる鉤状の治具及び取付ネジまたはボルトが差し込める小孔9をフランジ部5a、5bに設けてある。なお、前記実施例に係る箱型の樹脂製型枠1おいて、使用される材料として、剥離性の良いリサイクル樹脂でなくても使用可能である。
【0018】
このように形成された樹脂製型枠1は、
図8に示したように、コンクリート構造体を形成する型枠12に所要大きさの孔13を開け、該孔13に樹脂製型枠1の側面3(3a,3bからなる胴部)を嵌め込み、フランジ部5a、5b、5cを型枠12の内側に当接させて、型枠12の外側に側面3(胴部)が突出するように取り付けられる。この取り付けに当たって、樹脂製型枠1のフランジ部5a、5b、5cの表面側に金属製の成形板14を配設すると共に上面側のフランジ部5aに対応する位置に金属製のスリット板15を配設する。前記成形板14の外径は、樹脂製型枠1のフランジ部5a、5b、5cの外径と略一致する大きさで、樹脂製型枠1の開口部2よりも全体的に少し小さめの開口部16が形成されたものであり、前記スリット板15は、成形板14より少し厚手でフランジ部5aより少し巾広に形成されると共に、下端部17は尖鋭に形成されている。そして、予め治具用孔11を介して成形板14に螺合させると共に先端の小径部をスリット板15に係合させてボルト18を取り付けてある。
【0019】
このように構造体を形成する型枠12に取り付けられた樹脂製型枠1は、構造体を形成するコンクリート19を型枠12内に打設すると、必然的に成形板14の開口部16から樹脂製型枠1内に流入し、空気抜き孔10の存在によって樹脂製型枠1内には空気溜りが存在せず、打設したコンクリート19が樹脂製型枠1内の隅々まで充満するのである。打設したコンクリート19は、型枠12内及び樹脂製型枠1内で同じ環境の下で所要期間に亘って養生され硬化することになる。
【0020】
そして、構造体コンクリートが硬化して型枠12を取り外す際に、
図9に示したように、まず、スパナ又はラチェットレンチ20を用いて、ボルト18を締め付ける方向に回すと成形板14がスリット板15から離隔する方向に作用する強い力が付与される。この離隔する作用によって、成形板14における開口部16のコンクリートに上下方向のひび割れ(亀裂)21が入り、該ひび割れ21によって成形板14と共に樹脂製型枠1が型枠12と一緒に構造体コンクリートから割り取り(分離)することができるのであり、樹脂製型枠1内のコンクリートは、樹脂製型枠1から脱型させて構造体コンクリートの試験用の供試体として同じ構造体の内部で保存するのである。なお、運搬の際には、そのまま樹脂ボックスの梱包材として使用することもできる。
【0021】
前記実施例における箱型の樹脂製型枠1は、軽量でありながらコンクリートの打ち込みや締固め、および運搬などの作業によっても変形せず、予定した寸法の供試体が精度よく形成できるのである。前記箱型の樹脂製型枠1については、供試体が長方形であり、例えば、縦・横・長さが75mm×75mm×150mm、100mm×100mm×100mm、100mm×100mm×200mmや、125mm×125mm×250mm用の樹脂製型枠を軽量化することである。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明に係るコンクリート強度試験用供試体を形成するための箱型の樹脂製型枠1であって、合成樹脂で側面3及び底面4が一体成型の箱型に形成され、前記箱型の上面外周部に幅の異なるフランジ部5(5a、5b、5c)が形成され、前記側面3及び底面4の外周部分には複数条のリブ6が所要間隔をもって連続的に形成され、使用時において上面側となるフランジ部5aは他のフランジ部5b、5cの幅の数倍の幅に形成すると共に複数の治具用孔を形成してある構成であることから、樹脂製型枠1としての剛性(強度)に優れると共に、従来の鋼製型枠のような組立作業が不要であると共に、鋼製型枠のような隙間がないのでコンクリートの漏れが生じないばかりでなく、軽量であって持ち運びが容易で、作業性が良く大幅なコストダウンが図れるので、この種の業界における供試体の作成に広く使用可能である。
【符号の説明】
【0023】
1 樹脂製型枠
2 開口部
3 側面
3a 長辺側
3b 短辺側
4 底面
5、5a、5b、5c フランジ部
6 リブ
6a 長辺側に設けられたリブ
6b 短辺側に設けられたリブ
7、8 一対のV字状の切込み溝
9 小孔
10 空気抜き孔
11 治具用孔
12 コンクリート構造体を形成する型枠
13 所要大きさの孔
14 成形板
15 スリット板
16 成形板
17 下端部
18 ボルト
19 コンクリート
20 ラチェットレンチ
21 ひび割れ