IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フルクラム・バイオエナジー・インコーポレーテッドの特許一覧

特許7202182再生可能な有機原料に由来する高い生物起源含量を有する燃料及び燃料添加剤
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-27
(45)【発行日】2023-01-11
(54)【発明の名称】再生可能な有機原料に由来する高い生物起源含量を有する燃料及び燃料添加剤
(51)【国際特許分類】
   C10L 1/04 20060101AFI20221228BHJP
   C10G 2/00 20060101ALI20221228BHJP
   C10G 47/00 20060101ALI20221228BHJP
【FI】
C10L1/04
C10G2/00
C10G47/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018530482
(86)(22)【出願日】2015-12-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-11-01
(86)【国際出願番号】 US2015067950
(87)【国際公開番号】W WO2017039741
(87)【国際公開日】2017-03-09
【審査請求日】2018-12-26
【審判番号】
【審判請求日】2021-05-18
(31)【優先権主張番号】14/842,729
(32)【優先日】2015-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】14/947,820
(32)【優先日】2015-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518012722
【氏名又は名称】フルクラム・バイオエナジー・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴン・エイチ・ルーカス
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・ジー・ティヴェリオス
(72)【発明者】
【氏名】ルイス・エル・リッチ
【合議体】
【審判長】門前 浩一
【審判官】瀬下 浩一
【審判官】関根 裕
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-526323(JP,A)
【文献】特開2008-260832(JP,A)
【文献】特開昭62-169887(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0250862(US,A1)
【文献】特開2007-211097(JP,A)
【文献】国際公開第2014/001580(WO,A1)
【文献】Philip Nuss,Environmental Implications and Costs of Municipal Solid Waste-Derived Ethylene,Journal of Industrial Ecology,2013年,Volume 17, Number 6,p.912-915
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
他の非炭素質材料と共に比較的高い濃度の生物起源炭素(植物に由来する炭素)及び(炭素の化石源からの)比較的低い濃度の非生物起源炭素を含む都市固形廃棄物(MSW)の処理された原料に由来する高い生物起源炭素濃度のフィッシャートロプシュ(F-T)液体を製造するためのシステムであって、前記フィッシャートロプシュ液体が、以下の炭素特性を有し:
炭素数4から9の炭化水素が8.7から23モル%であり、炭素数10から19の炭化水素が18から36モル%であり、炭素数20から29の炭化水素が17から22モル%であり、炭素数30から39の炭化水素が9から11モル%であり、炭素数40以上の炭化水素が7から18モル%であり、炭素数10以上の炭化水素が70モル%以上であり、
前記システムが、
a)再生可能な原料からの前記比較的高い濃度の生物起源炭素及び前記比較的低い濃度の非生物起源炭素を維持しつつ、前記処理された原料をフィッシャー-トロプシュ液体に変換するためのバイオ精製所と;
b)前記バイオ精製所内の、比較的高い濃度の生物起源炭素を含む処理された原料の少なくともガス化準化学量論的酸化、及び炭化水素改質を提供してシンガスを提供するガス化アイランド(GI)であって、前記GIが:
過熱された蒸気及びO を受け取り、前記処理された原料を乾燥、揮発及び気化して、CO、H、HO及びCO 、未反応の炭化物、不活性固体、並びに、未反応の炭化水素を含むシンガスを生成し;
前記未反応の炭化物を気化し
再循環された炭化水素生成物及び中間生成物をシンガスに変換する;前記GIと、
を含み、
前記再生可能な原料は、前記再生可能な原料における炭素に基づいて80から100%の範囲における高い濃度の生物起源炭素を含む、システム。
【請求項2】
シンガス調整システム、及び、前記シンガス調整システムからシンガスを受け取るF-T反応器をさらに含み;必要に応じて
前記シンガス調整システムは、前記COの再循環を前記ガス化アイランドに提供する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記F-T反応器は、重質FT液体留分(HFTL)及び中質液体留分MFTL含むFT液体とF-T排ガスとを提供し、
前記MFTLの炭素数は4から26であり、前記HFTLの炭素数は7から102であり;必要に応じて
前記F-T排ガスは、前記F-T反応器に再循環される;又は、
本システムが、前記F-T液体を受け取るための水素化分解装置をさらに必要に応じて含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
本システムが、前記F-T液体を受け取るための水素化分解装置を含み、前記水素化分解装置から重質分解物と軽質分解物とを受け取るための分留装置をさらに含み、必要に応じて、前記分留装置は、前記再循環された高い生物起源の炭化水素生成物を提供し;さらに必要に応じて、前記分留装置が、SPKの、若しくはナフサの、若しくはディーゼルの、又は、3つすべての組み合わせの、高い生物起源濃度を提供する、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記液体が燃料を含み;必要に応じて
前記液体がディーゼル燃料を含む;又は
前記液体が合成パラフィン系ケロシン(SPK)を含む;又は
前記液体がナフサを含む;又は
前記液体が少なくともナフサ、ディーゼル燃料及び合成パラフィン系ケロシン(SPK)を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
a)CO、H及びCOが、ナフサ及びメタンを含む前記再循環され選択された炭化水素生成物と共に再循環され;必要に応じて、前記再循環され選択された炭化水素生成物及び中間生成物が、フィッシャー-トロプシュプロセスからの排ガスを含む;又は
b)前記プロセスにおいて製造された高い生物起源の二酸化炭素(CO)が、ガス流れから除去され、前記COの一部が、前記ガス化アイランドへ再循環される、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
他の非炭素質材料と共に比較的高い濃度の生物起源炭素(植物に由来する炭素)及び(炭素の化石源からの)比較的低い濃度の非生物起源炭素を含む都市固形廃棄物(MSW)の処理された原料に由来する高い生物起源炭素濃度のフィッシャートロプシュ(F-T)液体を製造するためのシステムであって、
前記システムが、
a)前記処理されたMSW原料からの比較的高い濃度の生物起源炭素及び比較的低い濃度の非生物起源炭素を含むフィッシャー-トロプシュ液体に、前記処理されたMSW原料からの比較的高い濃度の生物起源炭素及び比較的低い濃度の非生物起源炭素を維持しつつ、前記処理された原料を変換するためのバイオ精製所と;
b)前記バイオ精製所内の、比較的高い濃度の生物起源炭素を含む前記処理された原料の少なくともガス化、準化学量論的酸化、及び炭化水素改質を提供してシンガスを提供するガス化アイランド(GI)であって、前記ガス化アイランドが:
1)過熱された蒸気及びOを受け取り、前記処理された原料を乾燥、揮発及び気化して、CO、H、HO及びCO、未反応の炭化物、不活性固体、並びに、未反応の炭化水素を含むシンガスを製造するように構成された蒸気改質器と;
2)前記蒸気改質器からの前記未反応の炭化物を気化するように構成された準化学量論的炭素酸化ユニットと;
3)任意の残りの炭化物、炭化水素及びタールをシンガスに変換するように構成された炭化水素改質器ユニットと;
の3つの段階から成る、ガス化アイランドと;
c)前記ガス化アイランドからシンガスを受け取り且つ前記シンガスをF-T液体に変換する一以上のF-T反応器と、
を含み、
前記原料が、前記原料における炭素に基づいて80から100%の範囲における高い濃度の生物起源炭素を含む、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
主題は一般的に、高い生物起源含量を有し且つ再生可能な有機原料に由来する燃料及び燃料添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
温室効果ガスの多くの有害な影響がますます文書化されることによって、化石燃料からの、特に石油及び石炭由来の燃料源からのエネルギー生産を減少するための明らかな必要性が存在する。化石燃料使用の低下を促進するために、政府は化石系燃料源ではなく再生可能な有機源に由来する燃料の使用を促進している。
【0003】
米国において、環境保護庁(EPA)は、その下でセルロース系燃料がセルロース系RIN(再生可能な識別番号)を生成する再生可能な燃料規格(「RFS」)を義務付けている。RIN’sは、義務付けられた団体(例えば、製油所)に関するコンプライアンスクレジットの一形態である。RFSによると、義務付けられた団体は、増加する量のセルロース燃料を化石由来の燃料に混ぜる必要がある。
【0004】
燃料の生物起源含有率を決定するために、EPAは、放射性炭素年代測定法を用いる試験を要求する。より具体的には、現在のUSEPA規則は、セクション8.1426(f)(9)で、燃料の再生可能部分を決定するための放射性炭素年代測定法を行うために、団体にASTM D 6866の方法B又は方法Cを使用するように要求する。
【0005】
再生可能な有機材料からエネルギーを回収するための一つの既知の方法は、ガス化である。これは、再生可能な有機材料の少なくとも一部を、主に一酸化炭素、二酸化炭素、及び水素からなる合成ガス(「シンガス」)に変換することを含む。19世紀には、石炭及び泥炭はしばしば「都市ガス」にガス化され、料理、加熱及び照明に使用される一酸化炭素(CO)、メタン(CH)及び水素(H)の可燃混合物を提供していた。第1次及び第2次世界大戦の間は、バイオマス及び石炭ガス化装置を使用してCO及びHを製造し、輸送の必要性を満たしていた。第2次世界大戦の期間の間にはまた、フィッシャー-トロプシュ(F-T)プロセスを用いて、いくらかのシンガスは液体輸送燃料に変換され得たことが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、最も一般的には、MSW、木質バイオマス、トウモロコシ、サトウキビ、草、植物および種子油等の、しかしそれらに限定されない、再生可能な有機原料に由来する高い生物起源含量を有する燃料及び燃料添加剤に関する。一般的に言うと、原料は、比較的高い濃度の生物起源炭素(すなわち、植物に由来する炭素)、及び比較的低い濃度の非生物起源炭素(すなわち、化石源に由来する炭素)を含む。
【0007】
より具体的には、本開示は、高い生物起源濃度を有するフィッシャー-トロプシュ液体を提供し且つそれぞれのアップグレードされた燃料製品を提供するプロセスによって燃料及び燃料添加剤が製造され得ることを教示する。実際には、比較的高い濃度の生物起源炭素は、約100%まで生物起源炭素である。燃料及び燃料添加剤は、フィッシャー-トロプシュ液体と同じ高い生物起源濃度を本質的に有し、フィッシャー-トロプシュ液体は原料と同じ濃度の生物起源炭素を含む。
【0008】
上記実施形態への追加及び修正を含む様々な追加の実施形態が、本明細書で説明される。
【0009】
添付の図面は、1つ以上の例示的な実施形態を示し、詳細な説明と共に、本発明の原理及び例示的な実施を説明するための役割を果たす。当業者は、図面が例示的な目的のためのものに過ぎないことを理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、高い生物起源含量を有し、且つ、比較的高い濃度の生物起源炭素及び比較的低い濃度の非生物起源炭素を含むフィッシャー-トロプシュ液体に由来する、燃料及び燃料添加剤を製造するためのシステム全体の一実施形態を示す。
図2図2は、ガス化アイランドの一実施形態の例を示す。
図3-1】図3は、シンガス調整システムの一実施形態の例を示す。
図3-2】図3は、シンガス調整システムの一実施形態の例を示す。
図4A図4Aは、CO/HS除去システムの一実施形態の例を示す。
図4B図4Bは、CO/HS除去システムの他の一つの実施形態の例を示す。
図5図5は、フィッシャー-トロプシュ液体を生成するためのシステムの一実施形態の例を示す。
図6-1】図6は、図5のシステムからの精製されたフィッシャー-トロプシュ液体を製造するためのシステムの一実施形態の例を示す。
図6-2】図6は、図5のシステムからの精製されたフィッシャー-トロプシュ液体を製造するためのシステムの一実施形態の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の様々な例示的実施形態は、高い生物起源含量を有する燃料及び燃料添加剤へと原料の高い生物起源含量を変換する文脈において本明細書で説明される。
【0012】
当業者であれば、以下の詳細な説明が例示的なものに過ぎず、限定する意図ではないことを理解するであろう。他の実施形態は、関連技術において知られていることに照らして、本開示の恩恵を受けるこのような当業者には容易に示唆されるであろう。
【0013】
明瞭化のために、例示的な実施の繰り返しの特徴の全てが示され、説明されるわけではない。そのような実際の実装の開発では、開発者の特定の目標を達成するために、多数の実装固有の決定を為さなくてはならないことが理解されるであろう。
【0014】
本開示を通じて、関連する用語は、関連技術において確立されたそれらの典型的な意味と一致して理解されるべきである。しかしながら、本開示の範疇を限定することなく、以下に示すように、関連する用語及び概念のためにさらなる明確化及び説明が提供される。
【0015】
用語「都市固形廃棄物(MSW)」は、例えば、商業用及び家庭用ゴミの収集から得られる固形廃棄物を意味する。その未処理の形態では、MSWは完全に固形である必要はない。なぜなら、それは、同伴された若しくは吸収された液体、又は、容器又は他の閉鎖空間内における液体を含み得るからである。当業者は、MSWが広範囲の組成を有することになること、及び、MSWの供給源は必ずしも自治体からである必要はないことを理解するであろう。本開示の目的のために、他の有機廃棄物、及び、植物性物質などの様々なバイオマス材料は、MSWと同等であり得る。
【0016】
本明細書で使用される用語「流れ」は、任意の流体又は固体がある場所から別の場所まで直接的又は間接的に移動すること、又はその途中であることを意味する。流れは、任意の長さの時間に関して一時的に静止していても依然として流れである。
【0017】
流れ又は物質の一部への言及は、流れ又は物質全体を含む流れ又は物質の任意の部分を指す。流れ又は物質の一部は、他の物質の組成物と混合されてもよく、その混合物は、元々の流れ又は物質の一部を含むと考えられるだろう。
【0018】
本明細書で使用される用語「流体連通」には、直接的、及び、例えば中間処理ユニットを介するなど間接的な流体連通の両方を含むが、それらに限定されるものではない。
【0019】
本明細書で使用される用語「ユニット」は、システムの一部を意味し、例えば、単位操作、単位操作のシステム又はグループ、プラントなどを含むことができる。
【0020】
本明細書で使用される用語「シンガス(合成ガス)」は、その用語が当業者によって使用されるのと同じ意味を有する。例えば、シンガスは、一酸化炭素、水素、二酸化炭素、及び場合によっては、これらに限定されないが、水蒸気、硫黄又は窒素含有化合物、メタン及び他のアルカン、炭化水素、酸性ガス、ハロゲン及び微粒子などの他の成分の組み合わせを含むことができる。
【0021】
本明細書で使用される用語「分離器」は、分離プロセスを行うための当該技術分野で知られる任意の処理ユニットを指し、文脈に応じて、蒸留塔、膜分離システム、イオン交換吸着システム、熱吸着、圧力スイング吸着、モレキュラーシーブ、フラッシュドラム、吸収又は吸着塔、湿式スクラバ、ベンチュリスクラバ、遠心分離機、クロマトグラフ、又は結晶化装置を含むことができる。例えば、分離器は、液体から蒸気を、液体から液体を、固体からの液体から蒸気を、固体から液体又は固体を、又は固体から流体を分離し得る。
【0022】
本明細書で使用される用語「熱交換器」は、限定されることなく当該技術分野で知られる任意の熱交換器又は熱交換装置を含み、より広義には、物質の第1組成物のエンタルピー又は内部エネルギーを上昇させ、物質の第2組成物のエンタルピー又は内部エネルギーを低下させ、物質の第2組成物から物質の第1組成物に熱を移動させる任意の装置を含む。様々な熱交換手段が本明細書に開示されており、それらの全てがこの用語に包含される。この用語はまた、複数の熱交換手段の組み合わせ又は一連の複数の熱交換器を含む。それは、限定するものではないが、シェルアンドチューブ熱交換器、エアー又は「フィンファン」冷却器、冷却(refrigeration)ユニット、冷却装置(chiller)、冷却塔(cooling tower)、蒸気発生器、ボイラー、プレート熱交換器、断熱ホイール熱交換器、プレートフィン熱交換器、流体熱交換器、任意の種類の廃熱回収ユニット、又は任意の種類の相変化熱交換器を含む。それらは、向流、並行、クロスカレント形状、又は任意の他の流れ形状で動作してもよく、1つの流体から別の流体に熱を移動させるために、2つの流体の分離又は2つの流体間の直接的な接触、又は中間流体(水、高温油、溶融塩など)の使用を含み得る。
【0023】
本明細書で使用される用語「圧縮器」は、その用語の通常の意味において圧縮器として理解されるもの全てを含む。しかしながら、一般に、この用語は、断熱的に又は非断熱的に流体を第1の圧力から第2のより高い圧力に上昇させる任意の装置を含む。それは、遠心又は軸方向、又は正の変位(往復動、ダイヤフラム又は回転歯車など)を含むがこれらに限定されない、あらゆる種類の圧縮器又はポンプを含み得る。この用語はまた、1つ以上の段の多段式圧縮器を含むことができる。単数形で使用される用語「圧縮器」はまた、直列及び/又は並列に配置された複数の圧縮器を指すこともある。
【0024】
図1では、符号17によって一般的に示されるバイオ精製所は、他の非炭素質材料と共に比較的高い濃度の生物起源炭素及び比較的低い濃度の非生物起源炭素を含む流れ15によって供給される。好ましい実施では、比較的高い濃度の生物起源炭素は、約80%まで生物起源炭素である。他の生成物のなかで、バイオ精製所は、比較的高い濃度の生物起源炭素を含む原料に由来する高い生物起源濃度のフィッシャー-トロプシュ液体を製造する。
【0025】
示された実施形態では、一例として、原料は、再生可能な有機原料を提供する符号13によって一般的に示される設備によって提供される。装置13は、例えば、非生物起源由来炭素材料及び非炭素質材料が供給原料からバイオ精製所へ分離されるMSW処理施設であり得る。目的は、MSWにおいて見出される他の非炭素質材料と共に比較的高い濃度の生物起源炭素及び比較的低い濃度の非生物起源炭素を含む分離された原料を製造することである。
【0026】
例として、設備13は、入ってくるMSWを処理して、材料を以下のカテゴリーに分離し得る:
・燃料に変換するために使用される、MSW流から選別された原料物質;
・鉄及び非鉄金属、厚紙、プラスチック、紙、及び選別され商品市場に出荷され得るその他のリサイクル可能物質を含むがそれらに限定されない、回収可能材料;及び
・リサイクルされない、又は原料として使用されない物質の残りであり、埋立地に送られ得る、残留物質。
【0027】
生物起源含量が高い食品廃棄物又は農産物等のいくらかの湿った材料は乾燥され得て、他の材料と共に供給流れへ加え戻され得る。さらに、とりわけ高密度ポリエチレン(HDPE)及びポリエチレンテレフタレート(PET)等のプラスチックを回収することによって、原料における非生物起源炭素の割合は、低減される。なぜなら化石系プラスチックの割合が低減されるからである。原料の生物起源のパーセント含有量は、セルロース系燃料添加剤の経済的価値に大幅に影響を与え得る。
【0028】
設備13は、図1に示されるシステムの他の部分から物理的に別の設備であり得ることが理解されるべきである。また、設備13は、同時係属中の米国特許出願番号第14/842,729に記載されるようであり得ることが理解されるべきである。
【0029】
上述のように、図1に示されるバイオ精製所17は、フィッシャー-トロプシュ液体の流れ520及び540に、処理された原料の流れ15を変換するためである。特に注目に値するのは、高い生物起源濃度のフィッシャー-トロプシュ液体が、入力流れ15と同じく比較的高い濃度の生物起源炭素を含むことである。言い換えると、割合で表すと、非生物起源炭素は生産システムにおけるフィッシャー-トロプシュ液体に追加されず、実際には、いくらかは除去され得る。
【0030】
図示された実施形態では、バイオ精製所17は、一般的に符号21によって示され、場合によっては本明細書において、再生可能な有機原料に由来する原料をシンガスに変換し、さらに、そのシンガスを、以下で説明するように、炭化水素改質器(HR)を介して処理して高い生物起源の含量のシンガスを生成するための、ガス化アイランド(GI)と呼ばれる、ガス化システムを含む。ガス化システム21は、再循環された炭化水素生成物及び中間生成物をそれぞれHRに運ぶ流れ231及び233を受け取ることに留意されたい。また、GI21は、GI21における段階1及び段階2へ、再循環されたCOを運ぶ流れ27を受け取ることに留意されたい。以下で説明するように、再循環されたCOは、GI21における蒸気改質器内の水性ガスシフト反応を緩和するために、及び計器及び計器システム並びに供給システムのためのパージガスとして使用される。
【0031】
また、GI21は、酸素の流れ273及びF-T排ガスの流れ25を受け取る。
【0032】
ガス化アイランド21では、一般的に言えば、生物起源炭素は、蒸気改質、準化学量論的炭素酸化及び炭化水素改質の組み合わせによって、生物起源シンガスに変換され、一方でCO、H及びCOを含むシンガスを生成する。シンガス生成物は、図示された実施形態では流れ29によって運ばれる。
【0033】
GI21において生じるガス化反応は、以下でさらに説明されることになり、また、同時係属中の米国特許出願番号第14/138,635号において記載され、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。GI21における単位操作は原料に応じて異なり得ることが理解されるべきである。
【0034】
シンガス流29は、シンガス調整システム41で処理され、以下でより詳細に説明するように、シンガス供給流31をF-T反応器システム33に提供する。シンガス調整システム41は、COをGI21に再循環し戻すためのCO再循環流27を提供することに留意されたい。
【0035】
F-T反応器システム33からの出力は、その両方がF-T炭化水素である重質フィッシャートロプシュ液体(HFTL)流れ540及び中質フィッシャートロプシュ液体(MFTL)流れ520を含むF-T流体を含む。以下に説明するように、任意の未反応のシンガスはF-T反応器33において再循環され得る。さらに、F-T反応器システム33の出力は、前述のF-T排ガスの流れ25を含む。
【0036】
バイオ精製所は、調整されたシンガスからのアップグレーディングに必要とされる水素を除去するための水素回収システムを含む。調整されたシンガスの一部は、コンビネーション膜/PSAユニットを通って流れ、アップグレーディングユニット用の高純度水素流を生み出す。膜からの回収された水素(透過物)はPSAユニットに供給され、残留物はバイパスシンガスと組み合わされ、FT反応器に向かって供給される。回収された水素は、比較的純粋な水素流(>99.5% H)が製造されるPSAユニットに供給され、PSAリジェクト流は、リジェクトシンガスを回収するために、シンガス圧縮器の吸入口に送られる。
【0037】
図1におけるバイオ精製所17は、F-Tシステム33からF-T流体を受け取るためのアップグレーディングシステム54をさらに含む。つまり、重質フィッシャートロプシュ液体(HFTL)流れ540及び中質フィッシャートロプシュ液体(MFTL)流れ520が、アップグレーディングシステム54に供給される。アップグレーディングシステム54からの出力液体は、図示された実施形態において流れ58によって運ばれる。実際には、F-T液体は、ナフサ、ディーゼル、合成パラフィン系ケロシン(SPK)、イソアルカンを伴う重質アルカン、酸素化物及びオレフィン、又はすべてのこれらの成分の組み合わせを含むことができる。
【0038】
ガス化アイランドシステム21は、図2に詳細に示すように、3段階ガス化プロセスを実施する。好ましい実施形態では、3段階ガス化プロセスは以下を含む:
a.段階1-蒸気改質;
b.段階2-蒸気改質からの未反応炭素をガス化するための準化学量論的炭素酸化プロセス;及び
c.段階3-炭化水素改質。
【0039】
図2におけるガス化アイランドシステム21の、図示された実施形態では、段階1のガス化は、符号251によって一般的に示される蒸気改質器ユニットに設けられる。段階1のガス化からの未反応炭素は、符号271によって一般的に示される準化学量論的炭素酸化ユニットにおいてシンガスに変換される。このシステムではまた、炭化水素改質は、符号215によって一般的に示される炭化水素改質器ユニットによってガス化の第3の段階において設けられる。
【0040】
図示された実施形態では、段階1のガス化ユニット251は、処理された原料の流れ15を選択的に受け取り、シンガスの流れ254を製造する。ガス化ユニット271は、ガス化ユニット251から未反応の炭素を受け取り、シンガスの流れ277を製造する。シンガス蒸気254及び277は組み合わされ、シンガス流219を形成する。そして、ガス化ユニット211は、再循環されたCOの流れ27を受け取る。ガス化ユニット211では、流れ27における回収された高い生物起源のCOは、準化学量論的炭素酸化ユニットにおいて及び炭化水素改質器において、床材料(bed material)を流動化させ、水性ガスシフト反応を緩和し、蒸気改質器における器具をパージする手助けをするために使用され得る。また、流れ27における回収された高い生物起源COは、処理された原料の流れ15に添加することができる。
【0041】
図2の実施形態におけるガス化ユニット211は、一般的に符号251によって示される蒸気改質器、及び準化学量論的炭素酸化ユニット271を含む。処理された原料の流れ15を最初に受け取るのは蒸気改質器251である。また、酸素の流れ273を最初に受け取るのは蒸気改質器251である。
【0042】
示されるように、蒸気改質器251は、好ましくは、間接熱源253を含む。蒸気改質器251からの出力流は、シンガスの流れ254及び固体の流れ256を含む。シンガス流れ254は、炭化水素改質器ユニット215に運ばれる。主として灰分と細かい炭化物(char)からなる固体流256は、準化学量論的炭素酸化ユニット271に運ばれる。
【0043】
好ましい実施形態では、蒸気改質器211は、流動床設計であり、流動床媒体として過熱された蒸気、CO及びOを利用する。別の実施形態では、蒸気及びOのみが流動床媒体として使用される。好ましくは、外部燃焼間接ヒーター253は、改質器の床温度を維持し、ガス化プロセスにおいて必要とされる吸熱反応を支援するためのエネルギーの大部分を提供する。プロセスガス流は、一連のサイクロンを介して蒸気改質器211を出ることができる。好ましくは、内部サイクロンが、任意の同伴された床媒体の大部分を分離して改質器の流動床に戻しつつ、第2の外部サイクロンが、準化学量論的炭素酸化ユニット271においてシンガスにさらに変換するために未反応の炭化物を集める。実際には、蒸気改質器の間接ヒーターからの煙道ガスは、煙管ボイラーにおいて使用され、プラントで使用するための蒸気を生成する。
【0044】
図示された炭化水素改質器ユニット215は、シンガス流219を受け取り、他の微量成分と共にCO、H及びCOを含むシンガスの上述の一次流29を製造する。さらに、炭化水素改質器ユニット215は、酸素の流れ273及びF-T排ガスの流れ25を受け取る。最後に、炭化水素改質器ユニット215は、ナフサの流れ231及びオフガスの流れ233を受け取る。
【0045】
炭化水素改質器ユニット215は、2200°Fを超える温度で炭化水素を熱解離させることによって生物起源炭素を回収するように動作する。炭化水素改質器のための熱は、すべて発熱反応である、一酸化炭素、並びに水素及び炭化水素の準化学量論的酸化によって提供される。
【0046】
図2の実施形態における炭化水素改質器ユニット215は、シンガス冷却セクション225を含む。シンガス冷却セクションは、放射スラッギング冷却器設計又は再循環シンガススラッギングクエンチ設計のいずれかを含むことができる。
【0047】
好ましい実施例では、炭化水素改質器ユニット215は、ガス流におけるすべての炭化水素化合物を保証するために1800°Fから3000°Fの範囲で作動する酸素ガスバーナー/ミキサーを備える耐火物内張容器であり、タールがシンガスに変換され、硫黄化合物がHSに変換され、水性ガスシフト反応が平衡に近づくことを含む。F-T反応ループからパージされたF-T排ガス、純化システムのオフガス、及び、蒸発したナフサの流れ231は、炭化水素改質器ユニット215においてCO及びHに変換され戻される。
【0048】
準化学量論的炭素酸化ユニット271は、固体流256を受け取ることに加えて、再循環されたCO流の流れ27及び酸素の流れ273を受け取る。炭素準化学量論的酸化ユニット271における加熱は、未反応炭素の準化学量論的酸化によって提供される。低圧蒸気の流れ275は、炭素準化学量論的酸化ユニットにおいて過熱され、段階1及び段階2の両方のガス化のための流動化蒸気として使用される。炭素準化学量論的酸化ユニット271の出力は、シンガス流277であり、図示された実施形態では、蒸気改質器251からのシンガス流254と合流して、炭化水素改質器ユニット215に供給されるシンガス流219を形成する。
【0049】
好ましい実施形態では、準化学量論的炭素酸化ユニット271は、酸素が流動化蒸気及びCOと共に加えられて細かい炭化物をさらにシンガスに変換する流動床を利用する。炭素準化学量論的酸化ユニット271内で生成され、それを通過したガスは、外部サイクロンを通過して、炭化水素改質器ユニット215へ供給されるメインシンガス流219に再び入る。サイクロンにおいて除去された灰分は、現地外処分のために冷却され、収集サイロに輸送される。準化学量論的炭素酸化ユニット271の流動床において沈められた熱交換器は、流動床蒸気改質器251及び準化学量論的炭素酸化ユニット271の流動床における使用のために、低圧蒸気を1100°Fに過熱することによっていくらかの熱を除去する。
【0050】
図2のシステムの動作では、蒸気改質器251の流動床内で、外部燃焼ヒーターが、循環床媒体及び容器に入る原料を急速に加熱する。原料はほぼ直ちに、乾燥及び熱分解を受け、ガス状及び固体(炭化物)生成物を生成する。ガス状の熱分解生成物は、水性ガスシフト反応を受け、固体炭化物質の同時の蒸気改質と共に、主にH、CO、CO、及び幾つかの炭化水素からなるシンガスを製造する。残りのほとんどの炭化物は、その後、過熱蒸気及び酸素と反応してシンガスを製造する。蒸気改質器を出る炭化物は、サイクロンを介して分離され、追加のガス化及び変換のために準化学量論的炭素酸化ユニット内に落とされる。蒸気改質器及び炭素準化学量論的酸化ユニットは、内部及び外部のサイクロンを利用して、プロセスガス流において同伴されるようになる床媒体を分離して保持する。蒸気改質器及び炭素準化学量論的酸化ユニットから、シンガスは炭化水素改質器ユニットに流れ、任意の残りの炭化物、炭化水素及びタールをシンガスに変換する。
【0051】
上述したように、炭化水素改質器ユニット215の出力は、シンガス調整システム41に供給されるシンガス流29である。シンガス調整システム41は、図3と共に説明されるであろう。
【0052】
図3に示すように、一般的に符号41で示されている例示的なシンガス調整システムは、一次シンガス流29を受け取り、その流れを調整してF-T反応器へのガス状供給流31を生成する。図示された実施形態では、シンガス調整システム41は、連続的に流体連通で、廃熱回収のためのシンガス熱回収蒸気発生器(HRSG)ユニット411と、シンガススクラバユニット421と、シンガス圧縮器431と、一次ガード床436と、水性ガスシフト反応器441と、アンモニア除去446と、二次ガード床451と、CO/HS除去システム461と、を含む。CO/HS除去システム461の1つの出力は、図示された実施形態では、シンガス供給流470である。CO/HS除去システム461の別の出力は、再循環されたCOの流れ27である。
【0053】
蒸気は、プロセス内部の幾つかの供給源から生成される。HRSGは、蒸気改質器ユニット251における間接燃焼ヒーターユニット253において生成された煙道ガスから蒸気を回収する。蒸気はまた、ガス化アイランドを離れるシンガス流29から熱を回収するHRSGユニット411で生成され、蒸気は発電ボイラーにおいて生成される。全ての3つの供給源からの蒸気は組み合わされて過熱され、シンガス圧縮器(ユニット431)蒸気タービン又は蒸気タービン発電機(図1)の何れかにおける動力流体として使用される中圧蒸気を提供する。組み合わされた中圧蒸気は、外部ヒーターを燃焼するのに使用される天然ガスの量に応じて、原料に等しい生物起源含量を有することができる。好ましい実施形態では、生成されたシンガスの一部は、ガスタービン/蒸気タービン(複合サイクル発電プラント)に供給されて、プラントの電気需要を供給するために使用される高い生物起源の含量の動力を生成する。他の一つの実施形態は、すべてのシンガス生成流れを使用することになり、生物起源の動力を生成し、蒸気タービン駆動によってシンガス圧縮器ユニット431を駆動する。
【0054】
HRSGユニット411は、廃熱回収を提供するように機能する。HRSGユニット411の出力は、シンガスの流れ420及び高圧蒸気の流れである。好ましい実施形態では、HSRG及び他の供給源からの生成された蒸気の一部は、全体として約40%の生物起源である動力を生成する蒸気タービンを駆動するために用いられる。他の実施形態では、シンガス生成蒸気は、生物起源の熱出力を生成するために、又は、直接ガスタービン発電機において生成シンガスを用いて生物起源の動力を生成するために用いられるであろう。これらの2つの実施形態では、生成された動力の生物起源の含量は、シンガスの生物起源の含量と同じであるので、原料と同じであろう。
【0055】
シンガススクラバユニット421は、シンガス流420、及び腐食性又は他の適切なアルカリ性溶液の流れ424を受け取る従来のガススクラビング装置である。スクラバユニット421から除去された液体は、廃水処理システムに搬送され得る酸性水流426を含む。酸性水は、例えば、灰分粒子、酸、水銀、及び、シンガスから除去される塩酸(HCl)及び硫化水素(HS)などの酸性化合物などの望ましくない汚染物質を含み得る。シンガススクラビングは、同時係属中の米国特許出願番号第14/138,635号においてさらに記載され、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。スクラブされたシンガスは、流れ428において搬送される。
【0056】
シンガススクラバユニット421は、下流の設備に潜在的にダメージを与え得、F-T合成触媒性能に影響を及ぼし得る汚染物質を除去するために設けられる。好ましくは、シンガススクラバユニットは、3つの主要なセクション:ベンチュリスクラバ、充填塔セクション、及び直接接触冷却器セクション、を有する。シンガスクエンチ冷却器が利用される場合、シンガススクラバユニットを離れる洗浄されたシンガスの約半分は、クエンチブロワーを介して炭化水素改質器クエンチ冷却器に循環し戻されることになり、一方、残りの半分は、F-T合成プロセスの要件を満たすために、シンガス圧縮器431において圧縮されるであろう。放射スラッギング冷却器が採用される場合、再循環ガスブロワーは必要とされなくなり、スクラバからのスクラバ内への流れはガス化アイランド21を離れる流れに等しい。
【0057】
図示された実施形態では、シンガス圧縮器段431は、シンガス流の少なくとも一部を含む圧縮器入口流の圧力を所定のレベルへ上昇させるために直列に配置された1つ以上の従来の圧縮器段433を含み、それによって、圧縮されたシンガス流434を出力する。実際には、シンガス流の最終圧力は、F-T合成プロセスのプロセス要件を満たすために、約400psigから約600psigの範囲であり得る。好ましくは、各々の圧縮の最終段を除く全ての段の後で圧縮の熱は中間冷却器によって除去される;全ての凝縮水は集められ得、回収のために廃水処理プラントに送られ得る。圧縮器の出口は、一次ガード床436に高温で送られ、ここで任意のCOS及びHCNが、HS及びNHに加水分解され、次いでシフト反応器441に送られる。
【0058】
一実施形態では、シンガス圧縮器駆動部は、プロセス要件のために低圧で抽出された蒸気の一部で、過熱された高圧蒸気によって駆動される抽出/凝縮タービンである。また、F-T再循環圧縮器は、シンガス圧縮器シャフト上にあり得、シンガス圧縮器蒸気タービン駆動部によって駆動され得る。別の実施形態では、シンガス圧縮器は、高い生物起源の動力を製造するために燃料としてシンガスを使用する複合サイクル発電プラントで生成される動力からエネルギーを与えられる電気モーターによって駆動される。
【0059】
水性ガスシフト反応器441は、加圧された一次シンガス流440の一部を受け取る。水性ガスシフト反応器441は、出口流450における必要とされるH/CO比率が満たされるまで、水性ガスシフト反応を介して、蒸気及びCOの一部をH及びCOにシフトするように動作する。続いて、加圧された一次シンガスの副流442は、水性ガスシフト反応器441をバイパスすることができ、水性ガスシフト反応器441からの出口流450と再び組み合わさることができる。水性ガスシフトユニットにおいて高圧蒸気が生成されて、シフト反応の熱を除去する。生成された蒸気は、反応器に供給するシンガス流440内に供給し戻され、シフト反応用の水素源を提供する。任意の追加の蒸気の要求は、プラント蒸気システムから来る。
【0060】
図3の実施形態では、水性ガスシフト反応器441からのシンガスの出口流450は、従来のアンモニア除去ユニット446に搬送される。アンモニア除去ユニット446では、シンガスは、スクラブされ吸収されたアンモニアと共に過剰の水が凝縮するまで冷却される。次いで、シンガスは、流れ448として凝縮器446を離れる。凝縮器446からの酸性水は、廃水処理システムに搬送することができる。流れ448は、二次ガード床451の入口に搬送され、そこで任意の揮発したHgが除去される。
【0061】
二次ガード床451からの加圧された一次シンガスは、流れ460としてCO/HS除去システム461に搬送される。CO/HS除去システム461は、図4A及び図4Bと共にさらに説明されるであろう。CO/HS除去システム461の1つの出力は、硫黄の流れ464である。別の出力は、そこから硫黄が除去されたシンガスの流れ470である。第3の出力は、CO再循環流27である。
【0062】
図示された実施形態では、シンガス供給流470は、HS及びアルシン(Arsine)ガード床471に、次いでH回収ユニット481に搬送される。
【0063】
S/アルシンガード床からのシンガスは、水素回収ユニット481内に流入する。水素回収ユニット481は、以下に説明するように、水素化分解アップグレーディングプロセスに必要とされる高純度Hの蒸気482を抽出する。H回収ユニット481の出力は、F-T反応器33へのシンガス供給流31である。水素回収ユニット481からの第3の出力は、リジェクトされたシンガスの流れ483である。流れ483は、流れ428に合流するように再循環することができる。
【0064】
好ましい実施形態では、水素回収ユニット(HRU)481は、膜と圧力スイング吸着(「PSA」)の組み合わせシステムを用いてHを抽出する。HRU膜保持ガスは、バルクシンガス流と再混合され、F-T反応器に送られる。HRU PSAパージガスは、シンガス圧縮器431の吸引口に送られ、純化されたH流は、アップグレーディングに送られる。
【0065】
図5に示すように、F-T液体を生成するためのシステムは、シンガス供給流31を受け取る。システムは、1つ以上のF-T反応器533を含み、上述したように、F-T液体及びF-T排ガスを含む流体出力流535を提供する。FT反応器出力流535は、一般的に符号500で示される熱分離システム内に供給され、F-T液体をその重質F-T液体(HFTL)、中質FT液体(MFTL)、水及びF-T排ガスに分離する。
【0066】
図5に示すような好ましい実施形態では、熱分離システム500は、2つの凝縮器501及び531、並びに2つの分離器503及び504を含む。HFTL分離器503は、それぞれ出口518及び520を有する。実際には、凝縮器501は、冷却媒体として温水(tempered hot water)ループを用いて作動し、F-T水及びMFTL液体留分からHFTL液体留分を凝縮及び分離する。MFTL、水及びFT排ガスはともに、蒸気相のままである。HFTL流は、さらなる処理のためのタンク521における貯蔵のために、出口520によって運ばれる。実際には、HFTL流520は、室温で固体である重質炭化水素ワックスから主になる。これらのワックスは、固化を防ぐために230°Fを超えて温かく保たれる。
【0067】
また図5に示すように、熱分離システム500は、HFTL分離器503から流れ518を介して、F-T水及びMFTLを受け取る第2凝縮器531を含む。実際には、第2凝縮器531は、未反応シンガス及び非凝縮性炭化水素(メタンなど)からF-T水及びMFTLを凝縮及び分離するために冷却水を使用して、動作する。凝縮されたF-T水及びMFTL流の相は、第2分離器504において分けられ、MFTL流は、流れ540を介するように貯蔵ユニット522に送られ、F-T水は流れ542を介して廃水処理に送られる。
【0068】
さらに図5に示すように、F-T排ガスは、流れ537を介してF-T反応器533に再循環することができる。図示された実施形態では、F-T排ガスは、MFTL分離器504で分離され、流れ550によって圧縮器511に運ばれ、その出力はシンガス再循環ライン537に搬送される。再循環圧縮器511の前に、パージ流552が流れ550から分岐する。パージ流552は、再循環シンガスにおける炭化水素含量を制御するために流れ25を介して炭化水素改質器215に向かい、且つ、再循環シンガスからの不活性物をパージするために発電ボイラーに向かう。
【0069】
図6は、図1のアップグレーディングシステム54の一実施形態の例を示す。より詳細には、図6は、図5のシステムからの精製されたF-T液体を製造するシステムを示す。図6に示されるシステムは、タンク521及び522によって供給される水素化分解装填容器560から液体を受け取る水素化分解装置反応器ユニット643を含む。好ましい実施形態では、水素化分解装置反応器ユニット643は、HFTL及びMFTL炭化水素流を輸送燃料(SPK又はディーゼル)にアップグレードする高温、高圧触媒プロセスを採用する。アップグレーディングの低い過酷さに起因して、水素化処理及び水素化分解は1つの反応器で生じる。オレフィン及びアルコールは、最初に飽和化され、次いでアルカンがSPK範囲の製品に分解される。プロトン化されたシクロプロパン中間体を含む水素化分解機構は、直鎖状生成物と共に異性体生成物を形成する。水素化分解装置反応器ユニット643において、供給混合物は、より短い鎖状炭化水素への変換のための一連の触媒床を通過する。しかしながら、他の一つの実施形態は、MFTLを予め分留し、炭化水素改質器へ軽質留分オーバーヘッドを除去することになり、重質留分をHFTLと共に、アップグレーディングのために水素化分解装置に送るであろう。この実施形態は、水素化分解装置に流れる流れから大部分の酸素化物を除去し、水素化分解装置の水素化処理負荷を軽減する。
【0070】
図6にさらに示すように、水素化分解装置反応器ユニット643は、一般的に符号701で示される炭化水素熱分離システムに供給される出力流れ644を提供し、ここで分解物は、一連の熱交換器及び分離容器を用いて、冷却され、凝縮され、2つの流れ;重質及び軽質分解物に分離される。
【0071】
炭化水素熱分離システム701の図示された実施形態では、分解物は供給/流出熱交換器702において冷却され、重質分解物は重質分解物分離器703において軽質分解物から分離される。重質分解物分離器703から、重質分解物及び軽質分解物は、流れ704及び750によって分留装置853に送られる。加えて、いくつかの重質分解物は、水素化分解装置643に再循環され得て、始動中及び分別塔が機能不良であるときに水素化分解装置内へ流れる材料を維持し得る。
【0072】
図示された実施形態では、生成された水及び水素から軽質分解物を分離するために、軽質分解物分離器705が設けられる。分離された軽質分解物は、流れ750によって分留装置853に送られる。水は、ライン706によって、処理用のバイオ精製所の廃水処理プラントに送られる。分離された水素ガスは、流れ708によって再循環するために送られる。新鮮な水素は、流れ741によってシステム内に導入される。
【0073】
ここで、分別プロセスが、より詳細に説明されるであろう。前述したように、分留装置853は、重質分解物液体の流れ704及び軽質分解物液体の流れ750を受け取る。分留装置853の目的は、重質分解物留分及びナフサ留分からカットされたSPK又はディーゼルを分離することである。副ドロー流856は、ストリッパー塔857内に供給され、SPK/ディーゼル供給から軽質部を除去し、SPK/ディーゼル生成物の最終的な清浄化及び回収を提供する。分留装置853では、流入する重質及び軽質分解物流が組み合わされ、分留塔における最初の分離のために天然ガス燃焼ヒーターによって加熱される。好ましくは、分留装置853は、直接蒸気注入を使用して、高温リボイラー構造を利用することなく、高沸点炭化水素から低沸点炭化水素を除去する。
【0074】
分留装置853からの出力は、再循環可能な炭化水素生成物を運ぶ塔頂流231を含む。好ましくは、塔頂流823は凝縮器ユニット860に供給され、そこでその流れは、3つの流れ:主分留装置(「MF」)水流862、並びに、前述の軽質相(ナフサ)流231、及びオフガス流233、に凝縮及び分離される。実際には、ナフサの一部は、分留装置53内に還流し戻され、一部は、炭化水素改質器内への注入のためにナフサ気化器に送られる。オフガス流233は、再処理のために、オフガス圧縮器によって炭化水素改質器に再循環される。分留塔853からの底部は、追加の水素化分解のために、流れ855によって、水素化分解充填容器524にくみ上げられる。水は、処理用のバイオ精製所の廃水処理プラントに送られる。
【0075】
分留装置OH分離器からのナフサは、ナフサ気化器内にくみ上げられ、そこでそれは、低圧蒸気を用いて気化される。次いで、ナフサ蒸気は、回収のために図2の炭化水素改質器215内に流れる。分別塔の塔頂圧力は、オフガスの圧縮器排出速度で浮動する。オフガス圧縮器は、分留装置の塔頂分離器のオフガスをナフサ気化器の排出部に移動するための原動力を提供する。次いで、組み合わされた流れは、炭化水素改質器内に流入する。
【0076】
分留装置853の上部からの流れ856によって引き出されるSPK生成物は、最終生成物の分離のための生成物ストリッパー塔857に送られる。生成物ストリッパー塔857への熱は、例えば、天然ガス燃焼の生成物ストリッパーリボイラーによって提供される。生成物ストリッパーの塔頂流は、分留装置853に再循環し戻される。底流800は冷却され、流れ58を介して、SPK生成物として貯蔵ユニット803に送られる。
【0077】
図4Aに示すように、例示的なCO/HS除去システム461の一実施形態は、流れ460を受け取る硫黄除去ユニット463を含む。硫黄除去ユニット463の1つの出力は、硫黄の流れ464である。除去ユニット463の別の出力は、そこから硫黄が除去されたシンガスの流れ466である。
【0078】
シンガス流466は、一般的に符号491で示されるアミン溶媒システムに供給される。図示された実施形態では、アミン溶媒システム491Aは、向流関係で接続された吸収ユニット493及び再生ユニット495を含む。再生ユニット493の出力は、上述したシンガス供給流470である。吸収ユニット495の出力は、上述した再循環COの流れ27である。
【0079】
図4Aの好ましい実施形態では、吸収ユニット493は、循環アミン/水溶液との接触によってCOが除去される塔である。この実施形態では、アミン吸収体は、硫黄除去ユニットが実行されている場合に、流れ466からHSを除去することができる。処理されたシンガスは、水洗されて、任意の同伴されたアミン溶液を除去する。好ましい実施形態では、溶媒吸収体493を離れる洗浄されたシンガスは、中圧(MP)飽和蒸気を用いて加熱され、流れ470として、ガード床に送られて、F-T合成プロセス内への導入の前に微量HS及びヒ素触媒毒を除去する。
【0080】
図4Bに示すように、別の例示的なCO/HS除去システム461はアミンユニットを含み、そこで、シンガス流460は、一般的に符号491Bで示されるアミン溶媒システムに供給される。図示された実施形態では、アミン溶媒システム491Bは、向流関係で接続された吸収ユニット493及び再生ユニット495を含む。再生ユニット495の出力は、硫黄除去ユニット463に供給される。吸収ユニット493の出力は、上述したシンガス供給流470である。この実施形態では、吸収ユニット493は、循環アミン/水溶液との接触によってCO及びHSが除去される塔である。次いで、処理されたシンガスは、任意の同伴されたアミン溶液を除去するために水洗されて、流れ470として、最終ガード床471に送られる。
【0081】
図4Bの実施形態では、再生器の塔頂出力流466は、硫黄除去ユニット463に供給され、そこで、HSはリジェクトCO流から除去される。硫黄除去ユニット463の1つの出力は、上述した再循環COの流れ27及び硫黄の流れ464である。硫黄除去ユニットからの塔頂COリジェクト流の一部は、圧縮され、ガス化アイランドに再循環し戻され、過剰分は大気に排出される。
【0082】
図4A及び図4BにおけるCO/HS除去システムの動作において、吸収塔からの「リッチ」アミン(すなわち、CO吸収後のアミン)は、リーン/リッチ交換器を通過し、次いでリッチ溶媒フラッシュドラム内に勢いよく流れる。CO及びHに富む勢いよく流れたガスは、プロセスで再利用されるためにシンガス圧縮器の吸引口に流入する。勢いよく流れたリッチ液体流は、溶媒再生器塔に流入する。溶媒再生器では、リッチ溶媒を蒸気リボイラーで加熱し、吸収されたCO/HSを追い出す。溶媒再生器の底部から流出する「リーン」溶媒は、リーン/リッチ交換器及び溶媒冷却器を介して、再利用のために吸収体に再循環し戻される。溶媒再生器からの塔頂COリジェクト流の一部は、圧縮され、ガス化アイランドに再循環し戻され、過剰分は大気に排出される。好ましくは、システムは、CO及びHの損失を最小限に抑えつつ、シンガス流中のCO含量を<1mol%に、HS含量を5ppmv未満に低下させるように設計される。
【0083】
上記システムの全体的な動作において、原料がガス化される際に複数の反応が起こる。主な反応は、炭化物(炭素)が蒸気と反応して水素(H)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO)及びいくらかの炭化水素から主になるシンガスを製造するときに、高温で生じる:
C+HO→H+CO
2C+O→2CO
C+O→CO
【0084】
同時に、可逆的「水性ガスシフト」反応は、ガス化動作温度での平衡定数に基づくCO/HO及びCO/H比を有する平衡状態に近づく:
CO+HO⇔CO+H
ガス化システムが構成され得、条件は、少なくとも以下のガス化反応が生じるように提供され得る:
C+HO⇔H+CO。
【0085】
同時に、条件は、好ましくは、以下の可逆的な「水性シフト」反応が、ガス化装置の温度によって主に決定される平衡状態に到達し、圧力が好ましくは大気圧付近であるように、提供され得る:
CO+HO⇔CO+H
【0086】
一次FT反応は、触媒の存在下で、より高い分子量の炭化水素及び水にシンガスを変換する:
nCO+(2n+1)H→C2n+2+nHO。
【0087】
さらに、システムの全体的な動作に関し、ガス化アイランド21で製造されたシンガスは、F-T液体の効果的な製造及びアップグレーディングに関して不十分な水素量を有することに留意されたい。酸性シフト反応器441は、追加の水素を生成して、シンガス中のH:CO比を約0.8から約2.0に増加させる。水性ガスシフト反応は、シンガス中のCO及びHOの一部をH及びCOに変換する。この反応は、発熱性であり、酸性シフト触媒上で起こる。この反応は、HSがシンガス流中に依然として存在するので、「酸性シフト」である。多用途の蒸気及びシフト反応器441によって生成された蒸気は、シンガスと混合されて、水性ガスシフト反応のための水を提供し、反応器における温度上昇を抑える。水素製造及びシンガスのH:CO比は、シフト反応器周りのシンガス流の一部をバイパスすることによって制御される。シフト反応器の流出熱は、反応器流入シンガスと交換し、シフト反応器蒸気を生成し、且つボイラー給水を予熱することによって回収される。
【0088】
好ましい実施形態では、フィッシャートロプシュシステムによって製造される典型的な液体は、以下の特徴を有する:
【0089】
【表1】
【0090】
MFTLは、透明且つ明るい液体である。HFTLは室温で白色ワックスであるが、通常はその溶融状態において貯蔵され出荷される。
【0091】
上述のシステムによる再生可能な有機原料からの燃料の生成は、顕著な優位点を有する。それは、非常に低い排出プロファイルを備えたエネルギー効率の高いシステムを提供し、石油及び石炭由来の燃料生成物の使用に関連した温室効果ガスを、置換によって、減少する。
【0092】
高い生物起源含量を有する燃料添加剤は、化石系燃料の生物起源の含量を増加させるように用いられ得るので、このような燃料の価値は実質的に増加し得る。添加剤の割合は、少量からかなりの部分まで幅広く変わり得る。例えば、ジェット燃料としての使用のために、高い生物起源含量の添加剤は、50%程度であり得、残りは、化石系ジェット燃料である。ディーゼル燃料の場合では、高い生物起源含量を有する燃料添加剤は、100%に近づく割合であり得る。
【0093】
さらに、再生可能な有機原料がMSWに由来する場合では、埋立地に入るMSWの量が減少するので、埋立地からの有害なメタンガス放出を劇的に減少させ、新しい又は拡張される埋立地に関する必要性を緩和する。
【0094】
例示的な実施形態は、特定の構成を参照して記載された。特定の実施形態及び実施例の前述の記載は、例示及び説明のみの目的で提示されており、本発明は先の特定の実施例によって例示されているが、それによって本発明を制限することは意図していない。
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図4A
図4B
図5
図6-1】
図6-2】