(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-27
(45)【発行日】2023-01-11
(54)【発明の名称】グリコアルカロイド組み合わせ及びそれらの多様な使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/706 20060101AFI20221228BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20221228BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20221228BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20221228BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20221228BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221228BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20221228BHJP
A61P 33/00 20060101ALI20221228BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20221228BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20221228BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20221228BHJP
【FI】
A61K31/706
A61K47/36
A61K47/12
A61K47/18
A61P17/00
A61P35/00
A61P31/00
A61P33/00
A61P29/00
A61K9/06
A61K9/107
(21)【出願番号】P 2018565441
(86)(22)【出願日】2017-03-03
(86)【国際出願番号】 AU2017050188
(87)【国際公開番号】W WO2017147659
(87)【国際公開日】2017-09-08
【審査請求日】2020-02-28
(32)【優先日】2016-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】518312127
【氏名又は名称】チャム,ビル エリオット
(73)【特許権者】
【識別番号】518312138
【氏名又は名称】チェイス,タニア ロビン
(73)【特許権者】
【識別番号】518312149
【氏名又は名称】チャム,カイ エリオット
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】チャム,ビル エリオット
(72)【発明者】
【氏名】チェイス,タニア ロビン
(72)【発明者】
【氏名】チャム,カイ エリオット
【審査官】大島 彰公
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2000/061153(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/013197(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0246098(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0053857(US,A1)
【文献】米国特許第08158138(US,B1)
【文献】European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics,2014年,Vol. 88, No. 1,p. 28-33
【文献】European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics,2014年,Vol. 88, No. 1,p. 28-33
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K、A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一のグリコアルカロイド、少なくとも一の粘度調整剤及び少なくとも一の角質溶解剤を含む、局所組成物であって、少なくとも一のグリコアルカロイドは、
少なくとも一のソラソジングリコシドを含み、少なくとも一の粘度調整剤は、キサンタンガムであり、少なくとも一の角質溶解剤は、乳酸であり、
乳酸の濃度は、w/wで、4~10%であり、組成物は
、サリチル酸及び尿素を
さらに含む、組成物。
【請求項2】
組成物は、w/wで、サリチル酸5~10%を含む、請求項
1に記載の組成物。
【請求項3】
組成物は、w/wで、キサンタンガム0.2~2%、乳酸5~10%、サリチル酸5~10%、及び尿素3~5%を含み、又は組成物は、w/wで、キサンタンガム1%、乳酸10%、サリチル酸10%、及び尿素5%を含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
組成物は、式I:
【化1】
の任意のグリコアルカロイドを含む群から選択される少なくとも一のグリコアルカロイドをさらに含み、
式中:
点線のそれぞれは、単結合及び二重結合から個別に選択され;
A:は、一般式(II)から(V):
【化2】
を有するラジカルから選択されるラジカルを表し;
R
1のそれぞれは、水素、アミノ、オキソ及びOR
4からなる群より個別に選択されるラジカルであり;
R
2のそれぞれは、水素、アミノ及びOR
4からなる群より個別に選択されるラジカルであり;
R
3のそれぞれは、水素、アルキル及びR
4-アルキレンからなる群より個別に選択されるラジカルであり;
R
4のそれぞれは、水素、炭水化物及び炭水化物誘導体からなる群より個別に選択されるラジカルであ
り、ただし、すべてのR
4
は水素ではなく、かつ
前記少なくとも一のグリコアルカロイドは、少なくとも一のR
4を含み、
前記少なくとも一のR
4は、グリセルアルデヒド、グリセロース、エリトロース、トレオース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、アルトロース、アロース、グロース、マンノース、グルコース、イドース、ガラクトース、タロース、ラムノース、ジヒドロキシアクトン、エリトルロース、リブロース、キシルロース、プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトース、他のヘキソース類、ヘプトース類、オクトース類、ナノース類、デコース類、分岐鎖を有するデオキシ糖類、アピオース、ハマメロース、ストレプトース、コルジセポース、ミカロース、クラジノース
、糖アルコール類、糖酸類
、炭水化物のエノール塩、サッカリン酸及び糖リン酸塩からなる群より選択される、炭水化物又はその誘導体であ
り;かつ
「X」は、-N
+
H
2
-である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
組成物は、式Iから選択される複数のグリコアルカロイドを含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
組成物は、(i)有糸分裂阻害剤、アルキル化剤又は抗生物質である第2の成分
をさらに含む、及び/又は(ii)3-ヒドロキシプロピオン酸、ベータ-ヒドロキシ酪酸、ベータ-ヒドロキシ ベータ-メチルブチレート及びカルニチンから選択される少なくとも一のベータ ヒドロキシ酸;アゼライン酸、過酸化ベンゾイル、トリクロロ酢酸(TCA)、石炭酸(フェノール)、クロトン油、アセトン及び硫
黄からなる群より選択される、少なくとも一の角質溶解剤をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
組成物は、ゲル又はクリームである、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
組成物は、遊離ラムノース糖類を欠いている、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記少なくとも一のグリコアルカロイドは、(i
)ソラソニン
、ソラマルジン、及びソラソジンのモノ-及びジ-グリコシドの混合物、又は(ii)ソラソジンのモノ-及びジ-グリコシドを含まない
、ソラソニン及
びソラマルジンの、1:1の比での混合
物からなる、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記少なくとも一のグリコアルカロイドは、ソラソニン33%、ソラマルジン33%、ソラソジンのモノ-及びジ-グリコシド34%からなるグリコアルカロイドの混合
物からなる、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記少なくとも一のグリコアルカロイドは、グリコアルカロイドであるソラソニン及び/又はソラマルジ
ンからなる、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
組成物は、医薬組成物である、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物を調製する方法であって、前記方法は、治療上有効量のグリコアルカロイド又は複数の異なるグリコアルカロイド、ある量の少なくとも一の粘度調整剤、及びある量の少なくとも一の角質溶解剤を、組み合わせること及び/又は混合することを含む、方法。
【請求項14】
薬学的に許容可能な担体、希釈剤及び/又は添加剤中に、グリコアルカロイドを、溶解すること、組み合わせること又は混合することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
有糸分裂阻害剤、アルキル化剤又は抗生物質である第2の成分を組み合わせること又は混合することをさらに含み、及び/又は遊離糖類を除去することをさらに含む、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
がん、ウイルス感染、細菌感染、寄生虫感染、真菌感染、炎症及び/又は乾癬と関連する皮膚疾患を局所的に治療するための、請求項1~12のいずれか一項に記載の局所組成物。
【請求項17】
前記皮膚疾患が皮膚がん及び/又は皮膚腫瘍である、請求項16に記載の局所組成物。
【請求項18】
がん、ウイルス感染、細菌感染、寄生虫感染、真菌感染と関連する皮膚疾患、炎症及び/又は乾癬を、局所的に治療するための医薬の製造における、請求項1~12のいずれか一項に記載の局所組成物の使用。
【請求項19】
がん、ウイルス感染、細菌感染、寄生虫感染、真菌感染と関連する皮膚疾患、炎症及び/又は乾癬の局所治療のための医薬の製造における、少なくとも一のグリコアルカロイド、少なくとも一の粘度調整剤、少なくとも一の角質溶解剤、サリチル酸及び尿素の使用であって、少なくとも一のグリコアルカロイドは、ソラソジングリコシドを含み、少なくとも一の粘度調整剤は、キサンタンガムであり、少なくとも一の角質溶解剤は、乳酸であり、
乳酸の濃度は、w/wで、4~10%であり、医薬は、
ソラソジングリコシド、キサンタンガム
、乳酸、サリチル酸及び尿素を含む、使用。
【請求項20】
医薬は、w/wで、サリチル酸5~10%を含む、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
医薬は、w/wで、キサンタンガム0.2~2%、乳酸5~10%、サリチル酸5~10%、及び尿素3~5%を含み、又は医薬は、w/wで、キサンタンガム1%、乳酸10%、サリチル酸10%、及び尿素5%を含む、請求項19又は20に記載の使用。
【請求項22】
医薬は、式I:
【化3】
の任意のグリコアルカロイドを含む群から選択される少なくとも一のグリコアルカロイドをさらに含み、
式中:
点線のそれぞれは、単結合及び二重結合から個別に選択され;
A:は、一般式(II)から(V):
【化4】
を有するラジカルから選択されるラジカルを表し;
R
1のそれぞれは、水素、アミノ、オキソ及びOR
4からなる群より個別に選択されるラジカルであり;
R
2のそれぞれは、水素、アミノ及びOR
4からなる群より個別に選択されるラジカルであり;
R
3のそれぞれは、水素、アルキル及びR
4-アルキレンからなる群より個別に選択されるラジカルであり;
R
4のそれぞれは、水素、炭水化物及び炭水化物誘導体からなる群より個別に選択されるラジカルであ
り、ただし、すべてのR
4
は水素ではなく、かつ
前記少なくとも一のグリコアルカロイドは、少なくとも一のR
4基を含み、
前記少なくとも一のR
4は、グリセルアルデヒド、グリセロース、エリトロース、トレオース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、アルトロース、アロース、グロース、マンノース、グルコース、イドース、ガラクトース、タロース、ラムノース、ジヒドロキシアクトン、エリトルロース、リブロース、キシルロース、プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトース、他のヘキソース類、ヘプトース類、オクトース類、ナノース類、デコース類、分岐鎖を有するデオキシ糖類、アピオース、ハマメロース、ストレプトース、コルジセポース、ミカロース、クラジノース
、糖アルコール類、糖酸類
、炭水化物のエノール塩、サッカリン酸及び糖リン酸塩からなる群より選択される炭水化物又はその誘導体であ
り;かつ
「X」は、-N
+
H
2
-である、
請求項19~21のいずれか一項に記載の使用。
【請求項23】
前記
医薬が、患者における皮膚がん及び/又は皮膚腫瘍を局所的に治療するためのものである、請求項18~22のいずれか一項に記載の使用。
【請求項24】
患者が皮膚がん及び/又は皮膚腫瘍を有しており、前記医
薬が、前記皮膚がん及び/又は皮膚腫瘍を含む前記患者の皮膚領域に、治療上有効量の医薬を局所的に適用するためのものである、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
組成物がエマルション又はクリーム製剤である、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
医薬がエマルション又はクリーム製剤である、請求項18~24のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、皮膚がんなどのがんの治療における、ソラソニン及びソラマルジンなどのグリコアルカロイドの使用、並びにかかる治療における使用のための組成物に関する。より詳細には、本発明は、グリコアルカロイドのための、これらの活性分子のデグラデーションを最小化する又は減少させる、改良された、実質的に安定な製剤を提供することに関する。
【背景技術】
【0002】
背景
細胞傷害性化学療法は、依然として、がんと闘う最初の治療選択肢の一つである。しかしながら、全ての腫瘍が最適に応答するわけではないという事実により、化学療法の有効性は、限定されている。従って、既存の薬剤を用いたシングル-モダリティ化学療法は、めったに治癒をもたらさない。加えて、単一の剤が使用される場合、薬剤耐性腫瘍細胞がしばしば出現する。また、最もスタンダードな化学療法は、全ての、急速に分裂する正常細胞及びがん性細胞に作用し、そもそもは、無差別の細胞傷害性として知られるプロセスにより、それらが細胞を殺傷するため、同定された。結果として、スタンダードな化学療法は、無差別であり、低い安全性プロファイルを有する。
【0003】
アポトーシスは、プログラムされた一連のイベントにより、周辺の領域へ有害な物質を放出することなく細胞の排除を先導する細胞死の形態である。アポトーシスは、古い細胞、不必要な細胞及び不健康な細胞を排除する。ヒトにおいて、毎日、およそ500億個の細胞が、アポトーシスを経験する。すべての正常な細胞について、生きる時間と死ぬ時間がある。アポトーシスが正確に働かない場合、排除されるべき細胞が、生き残るかもしれず、例えば、がんにおいて不死になるかもしれない。がんは、体中のいたるところで開始し得る。細胞が制御不能に増殖し、正常な細胞を押しのける時に、それは開始する。がん細胞において、アポトーシスのプロセスは機能していないが、細胞分裂はそのままで体の他の部分に拡がる可能性がある過度の量のがん細胞をもたらす(転移)。
【0004】
アポトーシスを誘導する標的療法は、現在、多くの抗がん薬剤開発の焦点である。他の標的療法は、腫瘍症(虚血性細胞死)及び/又はネクローシスにより、細胞死を引き起こすものを含むかもしれない。
【0005】
従って、がんを治療するために、単独で又は組み合わせにより、がん細胞において細胞死を誘導できる物質が、探求される。
【0006】
グリコアルカロイドは、アルカロイド部分と結合した糖部分を有するステロイド性アルカロイドのコンジュゲートされた形態である。糖部分は、モノサッカリド、ジサッカリド、オリゴサッカリド又はポリサッカリドであり得る。植物に由来する特定のグリコアルカロイドは、毒性であるか抗がん特性を有することが観察されている。
【0007】
例えば、ソラソジン[(3β,22α,25R)-スピロソラ-5-エン-3-オール]は、Solanaceaeファミリーの植物において生じる、C27コレスタン骨格を持つ、ナス属(solanum)タイプのステロイドアルカロイド化学化合物である。ソラソジンの化学構造式を下記に示す。
【化1】
【0008】
ソラソニン[(22R,25R)-スピロ-5-エン-3β-イル-α-L-ラムノピラノシル-(l->2gal)-O-β-D-グルコピラノシル-(l->3gal)-β-D-ガラクトピラノース]及びソラマルジン[(22R,25R)-スピロ-5-エン-3β-イル-α-L-ラムノピラノシル-(l->2glu)-O-α-L-ラムノピラノシル-(l->4glu)-β-D-グルコ-ピラノース]のいずれも、ソラソジンのグリコアルカロイドコンジュゲート誘導体であり、ソラソジン ラムノシド(SR)からできている。
【0009】
ソラソニンは、ラムノース、グルコース及びガラクトース部分を有するトリグリコシドコンジュゲートである。ソラマルジンは、トリグリコシドコンジュゲートでもあるが、それは、2のラムノース部分及び1のグルコース部分を有する。
【0010】
本来は、ソラソジン由来グリコアルカロイドの糖(すなわち、グリコシド)部分は、モノ-、ジ-及びトリ-グリコシドからなり得る。かかる自然発生ソラソジン由来グリコアルカロイドの混合物は、デビルズアップルとして知られるナス科植物種であるSolanum Sodomaeum Lの果実において、同定された。この混合物は、デビルズアップルの果実から抽出され、BECと呼ばれている。このグリコアルカロイド混合物は、トリグリコシド ソラソニンである33%、トリグリコシド ソラマルジンである33%、及びそれらのモノ-及びジ-グリコシド相当物、すなわちソラソジンのモノ-及びジ-グリコシドである34%から成る。言い換えれば、混合物中の全てのグリコシドは、同一のアグリコン、ソラソジンを含有する。この混合物からのグリコアルカロイドは、動物におけるがん及びヒト皮膚腫瘍に対し活性であることが示されている。
【0011】
SRグリコアルカロイドは、ある範囲の細胞がん細胞上の、標的特異的変異体(変更された)タンパク質を標的とする。
【0012】
BEC(登録商標)及びCORAMSINE(登録商標)(例えば、Solbec Pharmaceuticals Ltd)は、抗がん特性を有するソラマルジン及びソラソニンの混合物である。CORAMSINE(登録商標)は、1:1(w/w)の割合の、2つのソラソジングリコアルカロイド、ソラソニン及びソラマルジンからできており、すなわち、BEC(登録商標)混合物において見出され得るソラソジンのモノ-及びジ-グリコシドを持たない。異なる作用様式で利用可能な様々な他の化学療法剤がある。これらとして、抗腫瘍抗生物質、抗有糸分裂剤、ホルモン、抗血管新生薬、サイトカイン、代謝拮抗剤及びアルキル化剤等がある。
【0013】
がん細胞の成長を阻害する、又は好ましくはがん細胞(例、殺傷することにより)を排除し、これ故有効にがんを治療するために使用され得る、新規のかつ有効な薬剤組み合わせのニーズが存在する。本発明は、例えば、SRグリコアルカロイドのものと異なる作用様式であるといった他の化学療法剤との組み合わせ療法を介して、CORAMSINE(登録商標)又はBEC(登録商標)単剤療法を用いて得られる有効性及び/又は患者転帰を改良することを探求する。
【0014】
がんの治療における抗がん/腫瘍剤の有効性は、使用される抗がん剤のタイプ及び/又は量のみに依存するわけではなく、使用される治療製剤の組成物にも依存する。例えば、皮膚について治療効果を獲得するのに必要な任意のグリコアルカロイドの濃度は、同一のグリコアルカロイドを用いて、がん細胞培養研究において治療効果を得るのに観察され得る濃度よりも数桁高いかもしれない。この理由の一つは、細胞培養研究において、採用される培地は、一般に懸濁液であるだろうし、患者の皮膚がんの場合、培地は、より半固形クリーム状のものであるかもしれないことである。
【0015】
細胞培養研究を用いて、活性成分のがん細胞への接触(バイオアベイラビリティ)は、クリーム形態における活性成分の、ヒトの体上の皮膚がん細胞への接触の場合よりも、はるかに高いことが認識されている。
【0016】
本発明は、従って、哺乳動物におけるがん及び腫瘍の効果を改善するために使用され得る、かつ上記不利益の1以上を少なくとも部分的に克服するか又は公衆に有用な代替手段を提供し得る、標的細胞との相互作用のための、グリコアルカロイド及びそれらの製剤を提供することを探求する。
【0017】
結晶性、半結晶性及び粉末ソラソジン ラムノシド類の保管の条件は、すでに取り組まれている(WO200061153A1)。しかしながら、溶液、ゲル及びクリーム中の、グリコアルカロイドの安定性は、報告されていない。
【0018】
以前の研究において、正常な保管条件下で、純又は半純結晶性又は半結晶性形態のグリコアルカロイドのデグラデーションがいくらか起こり得ることが示された。保管後、保管中に形成された遊離の糖は、抗がん有効性の減少を避けるために、保管されたグリコアルカロイドが治療組成物の製剤中に使用され得る前に、除去されなければならなかった。抗腫瘍性剤のデグラデーションは、ソラソジン ラムノシド類の短い保管期間にわたり低かったが、抗腫瘍有効性の顕著な減少が観察され、それは、ソラソジン ラムノシド類の分離により得られた遊離糖のためであった。
【0019】
その結果、本発明は、グリコアルカロイドコンジュゲートのための、製剤中に存在するこれらの活性分子のデグラデーションを減少させる、改良された、実質的に安定な製剤を提供することも探索する。
【発明の概要】
【0020】
本発明の概要
本発明を導く研究において、出願人は、例えば、皮膚がん及び/又は皮膚腫瘍性成長などの皮膚疾患の治療のための、局所適用に適したものであり得、かつ製剤中への、グリコアルカロイドからの遊離の(コンジュゲートされていない)糖(ラムノースサッカリドなどの)の放出をもたらす、製剤中のグリコアルカロイドの望ましくない加水分解を最小化する又は減少させることができる、グリコアルカロイド組成物の製剤を同定することを探索した。出願人は、かかる改良された製剤は、少なくとも2つの理由で改良された治療効果の恩恵を受けると推測した。第一に、製剤中のグリコアルカロイドの加水分解における減少は、製剤の保管の延長された期間の後でさえ、治療効果を獲得するのに十分な、製剤中の活性(加水分解されていない)グリコアルカロイドのレベル又は濃度を維持し得る。そして、第二に、製剤中の遊離糖部分の形成を最小化すること又は減少させることは、とりわけ、疾患細胞に発現しているかもしれない、グリコアルカロイド受容体結合タンパク質に対する、遊離糖の競合を減少させ、それによって遊離糖が有する、製剤中の、加水分解されていないグリコアルカロイドの治療効果に対する阻害効果を最小化する又は減少させることにより、製剤中に存在する加水分解されていないグリコアルカロイドの治療効果を増強し得る。
【0021】
また、本発明を導く研究において、出願人は、本発明のグリコアルカロイドと組み合わせて使用することができ、それにより、組み合わせが1つ以上のがん又は腫瘍関連の病気の療法への有利な相乗効果をもたらすであろう、化学療法剤を同定することを探索した。例えば、かかる化学療法剤は、本発明の治療組成物中で、付加的な成分として、グリコアルカロイドと組み合わせて使用され得る。
【0022】
その結果、一つの広い態様において、本発明は、グリコアルカロイドコンジュゲートのための、これらの活性分子のデグラデーションを最小化する又は減少させる、改良された、実質的に安定な局所製剤を提供する。この広い態様による本発明の組成物は、一般に、ゲル又はクリームとしての患者への投与に適しているであろうし、及び/又は、局所投与用に適合するであろう。
【0023】
その結果、一例において、本発明は、少なくともグリコアルカロイド、少なくとも一の粘度調整剤及び少なくとも一の角質溶解剤を含む、局所組成物提供する。
【0024】
本発明の組成物において使用されるグリコアルカロイドは、式Iの任意のグリコアルカロイドを含む群から選択されるであろう:
【化2】
式中:
点線の両方が二重結合を表すか、又は一方の点線が二重結合を表し、他方の点線が単結合を表すか、又は点線の両方が単結合を表すように、点線のそれぞれは単結合及び二重結合から個別に選択され;
A:は、一般式(II)から(V)を有する以下のラジカルから選択されるラジカルを表し:
【化3】
R
1のそれぞれは、水素、アミノ、オキソ及びOR
4からなる群より個別に選択されるラジカルであり;
R
2のそれぞれは、水素、アミノ及びOR
4からなる群より個別に選択されるラジカルであり;
R
3のそれぞれは、水素、アルキル及びR
4-アルキレンからなる群より個別に選択されるラジカルであり;
R
4のそれぞれは、水素、炭水化物及び炭水化物誘導体からなる群より個別に選択されるラジカルであり;
「X」は、-CH
2-、-O-及び-NH
2-を含む群から選択されるラジカルであり;かつ
グリコアルカロイド化合物は少なくとも一のR
4基を含み、R
4は、グリセルアルデヒド、グリセロース、エリトロース、トレオース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、アルトロース、アロース、グロース、マンノース、グルコース、イドース、ガラクトース、タロース、ラムノース、ジヒドロキシアクトン、エリトルロース、リブロース、キシルロース、プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトース及び他のヘキソース類、ヘプトース類、オクトース類、ナノース類、デコース類、分岐鎖を有するデオキシ糖類(例、アピオース、ハマメロース、ストレプトース、コルジセポース、ミカロース及びクラジノース)、アルデヒド、ケトン又はヒドロキシル基が置換された化合物(例、N-アセチル、アセチル、メチル、CH
2OHの交換)、糖アルコール類、糖酸類、ベンズイミダゾール類、炭水化物のエノール塩、サッカリン酸、及び糖リン酸塩からなる群より選択される炭水化物又はその誘導体である。
【0025】
一例において、組成物は、式1から選択される複数の異なるグリコアルカロイドを含有してもよい。組成物が単一のグリコアルカロイドのみを含む場合、グリコアルカロイドは、治療上有効量で、組成物中に存在するであろう。組成物中に、複数のグリコアルカロイドがある場合、各グリコアルカロイドは、サブ治療量で存在してもよいが、組み合わせ中、2以上のグリコアルカロイドは、治療効果を有するであろう。
【0026】
さらに、組成物は、核の作用メカニズムを有する少なくとも一の化学療法剤の形態で、第2の成分を含んでもよい。好ましくは、第2の成分は、有糸分裂阻害剤アルキル化剤又は抗生物質である。
【0027】
粘度調整剤は、任意の適した粘度調整剤であってもよく、或いはラムノースを含有しないゲル化剤並びに/又はグアーガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、ゼラチン、ポロキサマー、カルボマー及びセルロース誘導体からなる群より選択される粘度調整剤であってもよい。好ましい態様において、少なくとも一の粘度調整剤は、キサンタンガムである。
【0028】
少なくとも一の角質溶解剤は、任意の適した角質溶解剤であり得る。一実施形態において、角質溶解剤は、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸及び酒石酸から選択されるアルファ-ヒドロキシ酸;サリチル酸、3-ヒドロキシプロピオン酸、ベータ-ヒドロキシ酪酸、ベータ-ヒドロキシ ベータ-メチルブチレート及びカルニチンから選択されるベータヒドロキシ酸;アゼライン酸、過酸化ベンゾイル、尿素、トリクロロ酢酸(TCA)、石炭酸(フェノール)、クロトン油、アセトン並びに硫黄からなる群より選択される。好ましい実施形態において、少なくとも一の角質溶解剤は、乳酸、サリチル酸及び尿素からなる群より選択される。別の実施形態において、組成物は、少なくとも一の本明細書に記載のアルファ-ヒドロキシ酸を含む角質溶解剤を含み、さらに少なくとも一の本明細書に記載のベータヒドロキシ酸を含む角質溶解剤を含んでもよい。例えば、組成物は、乳酸、サリチル酸及び尿素を含んでもよい。
【0029】
例えば、使用において、組成物は、w/wキサンタンガム約0.2~2%、乳酸約5~10%、サリチル酸約5~10%、及び尿素約3~5%を含み得る。代わりの実施形態において、組成物は、w/wキサンタンガム約1%、乳酸約10%、サリチル酸約10%、及び尿素約5%を含み得る。
【0030】
一実施形態において、組成物はゲル又はクリームである、及び/又は局所投与用である。
【0031】
別の実施形態において、組成物は、グリコアルカロイド及びそれらの標的細胞間の相互作用を阻害し得るタイプの遊離糖類を本質的に含まない。例えば、組成物は、遊離のラムノース サッカリド又はラムノース様分子を本質的に欠いている。
【0032】
本明細書中で使用されるように、用語「遊離糖」は、アルカロイドと結合していない、モノ-、ジ-、トリ-、オリゴ-若しくはポリ-サッカリド又はそれらの誘導体などの任意のサッカリドに言及すると理解されるであろう。
【0033】
第二の広い態様において、本発明は、第一の広い態様により本明細書中に記載されるように、局所組成物を調製又は製造する方法を提供する。当該方法は、ある量の少なくとも一の粘度及びある量の少なくとも一の角質溶解剤と、治療上有効量のグリコアルカロイド又は複数の異なるグリコアルカロイドを、組み合わせる及び/又は混合する及び/又は溶解することを含み得る方法であって、例えば、各グリコアルカロイドは、本明細書中の上記の式Iのグリコアルカロイドの群から選択される、方法である。例えば、方法が単一のグリコアルカロイドのみを組み合わせる及び/又は混合する及び/又は溶解することを含む場合、グリコアルカロイドは、治療上有効量で、組み合わせられる及び/又は混合される及び/又は溶解されるであろう。或いは、複数の異なるグリコアルカロイドが組み合わせられる及び/又は混合される及び/又は溶解されて組成物を調製する場合、異なるタイプのグリコアルカロイドのそれぞれは、サブ治療量で、組み合わせられ及び/又は混合され及び/又は溶解され得るが、2以上の異なるグリコアルカロイドは、治療効果を有するであろう。
【0034】
例えば、この態様による方法は、組成物の局所送達に適した薬学的に許容可能な担体、希釈剤及び/又は添加剤中で、グリコアルカロイドを溶解すること、組み合わせること及び/又は混合することを含む。例えば、担体、希釈剤及び/又は添加剤は、水性又は非水性であってもよい。そのような一例において、薬学的に許容可能な担体、添加剤及び/又は希釈剤は、前記少なくとも一の粘度調整剤及び前記少なくとも一の角質溶解剤のいずれか一つ又はその両方を含む。
【0035】
一実施形態において、この態様による局所組成物を調製する方法は、少なくとも一の化学療法剤の形態で、核の作用メカニズムを有する第2の成分を組み合わせること及び/又は混合すること及び/又は溶解することをさらに含んでもよい。
【0036】
別の実施形態において、この態様による局所組成物を調製する方法は、例えば結果として得られる組み合わせ又は混合物又は組成物から、グリコアルカロイド及びそれらの標的細胞間の相互作用を阻害し得る遊離糖類を除去することをさらに含んでもよい。例えば、方法は、結果として得られる任意の組み合わせ又は混合物又は組成物から、遊離のラムノース サッカリド又はラムノース様分子を除去することを含んでもよい。
【0037】
第三の広い態様において、本発明は、本明細書中の上記の、この第二の広い態様による方法を行うことにより調製される局所組成物を提供する。
【0038】
第四の広い態様において、本発明は、治療上相乗的な有効量の本明細書中に記載された組成物を投与する工程を含む、腫瘍性成長を治療するための方法も提供する。
【0039】
第五の広い態様において、本発明は、がん、ウイルス感染、細菌感染、寄生虫感染、真菌感染と関連する皮膚疾患、炎症性疾患及び/又は乾癬を有するか罹患している患者を治療する方法をさらに提供する。方法は、本明細書中に記載された本発明のいずれかの態様による、治療上有効量の局所組成物を患者に局所的に投与することを含む。
【0040】
一実施形態において、投与工程は、治療上有効量の前記組成物を、患者における疾患状態に適用することを含む。例えば、方法は、組成物を、患者の皮膚に局所的に適用することを含む。そのような一例において、患者は、皮膚がん及び/又は皮膚腫瘍を有するか又は罹患しており、前記方法は、治療上有効量の組成物を、皮膚がん及び/又は皮膚腫瘍を含む、患者の皮膚領域に局所的にに適用することを含む。別の例において、患者は、ウイルス感染、細菌感染、寄生虫感染、真菌感染と関連する皮膚疾患、炎症性疾患及び/又は乾癬を有するか又は罹患しており、前記方法は、治療上有効量の組成物を、感染、炎症性疾患及び/又は乾癬の結果として、感染した、炎症を起こした及び/又は損傷した皮膚細胞を含む患者の皮膚領域に、局所的に適用することを含む。好ましくは、患者は、ヒトである。
【0041】
本明細書中に記載される本発明のいずれかの態様、実施形態及び/又は実施例による、本明細書中で使用される用語「患者」は、ヒト対象を含むことは理解されるであろう。
【0042】
第六の広い態様において、本発明は、がん、ウイルス感染、細菌感染、寄生虫感染、真菌感染と関連する皮膚疾患、炎症性疾患及び/又は乾癬を局所的に治療する、本明細書中に記載されたいずれかの態様による局所組成物の使用をさらに提供する。
【0043】
第七の広い態様において、本発明は、がん、ウイルス感染、細菌感染、寄生虫感染、真菌感染と関連する皮膚疾患、炎症性疾患及び/又は乾癬を局所的に治療するための局所医薬の製造における、本明細書中に記載されたいずれかの態様による組成物の使用も提供する。
【0044】
第八の広い態様において、本発明は、がん、ウイルス感染、細菌感染、寄生虫感染、真菌感染と関連する皮膚疾患、炎症性疾患及び/又は乾癬の治療のための局所医薬の製造における、少なくともグリコアルカロイド、少なくとも一の粘度調整剤及び少なくとも一の角質溶解剤の使用をさらに提供する。一例において、医薬は、前記皮膚疾患を有するか罹患しているヒト患者の皮膚への局所投与用に製剤化される。例えば、医薬は、患者における、皮膚がん及び/又は皮膚腫瘍の治療のためであり、医薬は、皮膚がん及び/又は皮膚腫瘍を含む、患者の皮膚の領域への適用のために製剤化される。
【0045】
一実施形態において、医薬に使用されるグリコアルカロイドは、式Iのグリコアルカロイドを含む群から選択される:
【化4】
式中:
点線の両方が二重結合を表すか、又は一方の点線が二重結合を表し、他方の点線が単結合を表すか、又は点線の両方が単結合を表すように、点線のそれぞれは単結合及び二重結合から個別に選択され;
A:は、一般式(II)から(V)を有する以下のラジカルから選択されるラジカルを表し:
【化5】
R
1のそれぞれは、水素、アミノ、オキソ及びOR
4からなる群より個別に選択されるラジカルであり;
R
2のそれぞれは、水素、アミノ及びOR
4からなる群より個別に選択されるラジカルであり;
R
3のそれぞれは、水素、アルキル及びR
4-アルキレンからなる群より個別に選択されるラジカルであり;
R
4のそれぞれは、水素、炭水化物及び炭水化物誘導体からなる群より個別に選択されるラジカルであり;
「X」は、-CH
2-、-O-及び-NH
2-を含む群から選択されるラジカルであり;かつ
グリコアルカロイド化合物は、少なくとも一のR
4基を含み、R
4は、グリセルアルデヒド、グリセロース、エリトロース、トレオース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、アルトロース、アロース、グロース、マンノース、グルコース、イドース、ガラクトース、タロース、ラムノース、ジヒドロキシアクトン、エリトルロース、リブロース、キシルロース、プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトース及び他のヘキソース類、ヘプトース類、オクトース類、ナノース類、デコース類、分岐鎖を有するデオキシ糖類(例、アピオース、ハマメロース、ストレプトース、コルジセポース、ミカロース及びクラジノース)、アルデヒド、ケトン又はヒドロキシル基が置換された化合物(例、N-アセチル、アセチル、メチル、CH
2OHの交換)、糖アルコール類、糖酸類、ベンズイミダゾール類、炭水化物のエノール塩、サッカリン酸並びに糖リン酸塩からなる群より選択される炭水化物又はその誘導体である。
【0046】
一実施形態において、医薬は、式Iから選択される複数のグリコアルカロイドを含む。
【0047】
別の実施形態において、医薬は、核の作用メカニズムを有する少なくとも一の化学療法剤の形態で第2の成分を含む。
【0048】
この態様によるの別の実施形態において、粘度調整剤は、グアーガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、ゼラチン、ポロキサマー、カルボマー及びセルロース誘導体からなる群より選択される。例えば、粘度調整剤は、キサンタンガムである。
【0049】
この態様による別の実施形態において、角質溶解剤は、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸及び酒石酸から選択されるアルファ-ヒドロキシ酸;サリチル酸、3-ヒドロキシプロピオン酸、ベータ-ヒドロキシ酪酸、ベータ-ヒドロキシ ベータ-メチルブチレート及びカルニチンから選択されるベータヒドロキシ酸;アゼライン酸、過酸化ベンゾイル、尿素、トリクロロ酢酸(TCA)、石炭酸(フェノール)、クロトン油、アセトン及び硫黄からなる群より選択される。例えば、組成物は、少なくとも一の本明細書に記載のアルファ-ヒドロキシ酸を含む角質溶解剤を含み、さらに少なくとも一の本明細書に記載のベータヒドロキシ酸を含む角質溶解剤を含んでもよい。例えば、角質溶解剤は、乳酸、サリチル酸及び尿素からなる群より選択される。一例において、組成物は、乳酸、サリチル酸及び尿素を含んでもよい。
【0050】
この態様による別の実施形態において、医薬は、w/wで、キサンタンガム約0.2~2%、乳酸約5~10%、サリチル酸約5~10%、及び尿素約3~5%を含む。
【0051】
この態様による別の実施形態において、医薬は、w/wで、キサンタンガム約1%、乳酸約10%、サリチル酸約10%、及び尿素約5%を含む。
【0052】
この態様によるまた別の実施形態において、医薬は、ゲル又はクリームとして製剤化され、及び/又は局所投与用である。
【0053】
この態様によるまた別の実施形態において、医薬は、グリコアルカロイド及びそれらの標的細胞間の相互作用を阻害するタイプの遊離糖類を本質的に含まない。例えば、医薬は、本質的に遊離のラムノースサッカリド又はラムノース様分子を欠いている。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】悪性メラノーマ細胞のパーセンテージ生存への、遊離のラムノース(5mM)の添加及び増加するBEC抽出物濃度(0、5、10、15及び20μM)製剤の効果を示す図式的な表現である。遊離のラムノースは、抗がんBEC化合物の有効性に対する、保護効果を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本発明の詳細な説明
一般
当業者は、本明細書中に記載された本発明が、その精神及び範囲から逸脱することなく具体的に記載されたもの以外の変形及び変更の影響を受けやすいことを理解するであろう。本発明は、全てのかかる変形及び変更を含む。本発明は、本明細書中に、個別に又は集合的に言及されるか示される、すべての工程、特徴、組成物、成分、態様実施例及び実施形態、並びに前記工程又は特徴の、任意の及び全ての組み合わせ又は2以上も含む。
【0056】
本明細書中の本明細書に引用された上記又は下記の各文献、参考文献、特許出願又は特許は、参照によりその全体が本明細書中に明示的に組み込まれ、それは、本明細書の一部として読者により読み考慮されるべきであることを意味する。本明細書中で引用された文献、参考文献、特許出願又は特許が本明細書中で繰り返されないことは、単に簡潔さの理由のためである。
【0057】
本明細書中で、或いは本明細書中に参照により組み込まれた任意の文献中で、言及された任意の製品の任意の製造業者の指示、説明、製品仕様及び製品シートは、本明細書により参照により本明細書に組み込まれ、本発明の実施において採用してもよい。
【0058】
本発明は、本明細書に記載された特定の態様、実施形態又は実施例のいずれかによる範囲に限定されるべきではなく、それらは、例示のみを目的とすることを意図している。機能的に同等な製品、物の組成物、配合物及び方法は、本明細書中に記載された本発明の範囲内にあることは明らかである。
【0059】
本明細書中で使用される選択された用語の定義は、本発明の詳細な説明の中に見出され、全体にわたり適用され得る。他に定義されない限り、本明細書中で使用される他のすべての科学及び技術用語は、本発明が属する分野の当業者に一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0060】
他に特段の記載のない限り、本明細書中に記載された各実施例、実施形態及び態様は、他のすべての実施例、実施形態及び態様に、準用されるものである。
【0061】
定義
本明細書及び特許請求の範囲にわたり、文脈が他に必要としない限り、「含む(comprise)」という単語又は「含む(comprising)」などの変形は、言及された工程若しくは要素若しくは完全体又は工程若しくは要素若しくは完全体のグループを含むが、いかなる他の工程若しくは要素若しくは完全体又は工程若しくは要素若しくは完全体のグループを排除するものではないことを意味すると理解されるであろう。、修正及び変更が、本明細書に記載された本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、そこに記載された実施形態に対して行われ得ることが理解されるであろう。
【0062】
本明細書にわたり、他に言及されない限り又は文脈が他に必要としない限り、単一の工程、組成物又は物、工程の群又は物質の組成物の群への言及は、一及び複数(すなわち、1以上)、又はそれらの工程、組成物若しくは物質、物質の群若しくは物質の組成物の群を包含するものと解釈されるべきである。本明細書中及び付属の請求項においてで使用されるように、単数形「a」、「or」及び「the」は、、文脈が明らかに他を指示しない限り、複数の言及を含むことに留意すべきである。従って、例えば、「グリコアルカロイド」又は「グリコアルカロイドコンジュゲート」又は「ソラソジンコンジュゲート」への言及は、複数のかかるグリコアルカロイド、グリコアルカロイドコンジュゲート又はソラソジンコンジュゲートなどを含む。
【0063】
本発明の組成物、製剤及び医薬の安定性に関して本明細書にわたり使用されるように、用語「実質的に安定な」は、少なくとも3カ月、より好ましくは4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18カ月又は少なくとも2年又は少なくとも3年又は少なくとも4年後に製剤化される場合に、記載された活性成分の割合又は濃度と比較して、製剤又は組成物又は医薬中の、記載された活性成分の割合又は濃度の少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%が、それらの構造的完全性を保ち、及び、製剤又は組成物又は医薬中、加水分解されていない又はデグラデーションされないままであるということを意味することが理解されるであろう。特定の実施形態において、実質的に安定な組成物又は製剤は、製剤又は組成物又は医薬における記載された活性成分の少なくとも約90%の濃度又は割合が、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18カ月又は少なくとも2年又は少なくとも4年後に製剤化される場合の活性成分の濃度の割合に対して、製剤又は組成物又は医薬中で加水分解されていない又はデグラデーションしていないままである場合のものである。
【0064】
例えば、製剤又は組成物又は医薬中で加水分解されていない又はデグラデーションしていないままである製剤又は組成物又は医薬中の記載された活性成分の濃度又は割合は、製剤又は組成物又は医薬の、室温又は25℃、任意選択で60%相対湿度で、製剤又は組成物又は医薬の製造の時から少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18カ月又は少なくとも2年又は少なくとも4年の保管後に決定される。
【0065】
例えば、「実質的に安定な」、本発明の組成物、製剤及び医薬は、それによる、製剤、組成物又は医薬中に含まれるグリコアルカロイドの約70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の割合又は濃度が、少なくとも3カ月後、より好ましくは4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18カ月又は少なくとも2年又は少なくとも3年又は少なくとも4年後に、それらのそれぞれのソラソジン アグリコン及び遊離糖(s)部分に加水分解されないように又は分解しないように又はデグラデーションされない(すなわち、グリコアルカロイドの少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%が、分解されておらず遊離ラムノースサッカリド又はラムノース様分子などの遊離糖類を放出していない)ようにそれらのコンジュゲート形態のままである、それらの組成物、製剤及び医薬を含むことが理解されるであろう。特定の例において、製剤、組成物又は医薬中に含まれるグリコアルカロイドの少なくとも約90%の濃度又は割合が、少なくとも3カ月後、より好ましくは4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18カ月又は少なくとも2年又は少なくとも3年又は少なくとも4年後に、それらのコンジュゲート形態のままである。例えば、それらのコンジュゲート形態のままであるグリコアルカロイドの割合又は濃度は、上記特定された期間の間の室温又は25℃での、組成物、製剤又は医薬の保管後に決定される。
【0066】
或いは、又は加えて、本発明の組成物、製剤及び医薬について言及する場合に、用語「実質的に安定な」は、遊離のラムノースサッカリド又はラムノース様分子などの、グリコアルカロイド及びそれらの標的細胞間の相互作用を阻害するタイプの遊離糖類を本質的に欠いている、それらの組成物、製剤及び医薬を包含することが理解されるであろう。例えば、医薬は、遊離のラムノースサッカリド又はラムノース様分子を本質的に欠いている。
【0067】
本明細書にわたり使用されるように、用語「誘導体」又は「から誘導される」は、特定の完全体が特定のソースから得られ得るが、必ずしも当該ソースから得る必要はないことを示すとされるべきである。
【0068】
本発明の説明を単純化するために、用語「グリコアルカロイド」、「ソラソジンコンジュゲート」及び「ソラソジン ラムノシド(SR)」は、交換可能に使用されることを意図される。それらは、ソラソジン分子及び少なくとも一のラムノース残基を含む任意の化合物を含むように本明細書中で使用される。
【0069】
用語「ラムノース」は、一般式C6H12O5のサッカリドベースのデオキシ糖を意味することを意図する。本説明及び特許請求の範囲の目的のために、他に明示的に言及しない限り、用語「ラムノース」は、式C6H12O5のラムノース及びその官能性誘導体を含むことを意図する。
【0070】
用語「置換されたラムノース」は、少なくとも一のアルキル基で置換された、少なくとも一のヒドロキシ基を有していたラムノース残基を意味することを意図する。例えば、ヒドロキシ基は、メチル基で置換されていてもよい。用語「置換されたソラソジン ラムノシド」は、少なくとも一の置換されたラムノースを含む、本発明のソラソジンコンジュゲートを意味することを意図する。
【0071】
本発明の説明を簡略化するために、用語「炭水化物」及び「サッカリド」は、実験式CnH2nOn(式中、nは正の数である)を含むと合理的に解釈され得る任意の化合物を含むよう本明細書中で使用されるであろう。それらは、糖、スターチ及びセルロースなどの、モノサッカリド、ジサッカリド、オリゴサッカリド及びポリサッカリドを含むことを意図する。
【0072】
用語「粘度調整剤」は、液体、クリーム又はゲルなどの(しかしこれらに限定されない)、物質の粘度を調節する、作用する又は制御することができる任意の剤を意味することを意図する。用語「粘度」は、「濃厚(thickness)」の非公式な概念に相当することを意図する。
【0073】
本明細書及び特許請求の範囲において、用語「遊離糖」は、アルカロイドと結合していない、モノ-、ジ-、トリ-、オリゴ-若しくはポリ-サッカリド又はそれらの誘導体などの、任意のサッカリドに言及する。
【0074】
特異性
WO2000061153A1において議論されている本発明者の以前の研究において、抽出された半結晶性BECグリコアルカロイド調製物における遊離糖(グリコアルカロイドにコンジュゲートされていない糖)は、抗がん有効製剤への包含の前に調製物から除去しなければならないことが報告された。これは、とりわけ、半結晶性BEC調製物の保管の間に、遊離ラムノース部分の放出をもたらすグリコアルカロイドの加水分解が生じたために、必要であった。これは、(i)活性グリコアルカロイド化合物(すなわち、活性グリコアルカロイド分子は利用可能であった)及び(ii)遊離のラムノースが、残存する加水分解されていないグリコアルカロイドの抗がん有効性を妨げることを意味した。
【0075】
例えば、クリーム又はゲルなどの局所投与用製剤などの、抗がん及び/又は他の治療用途のための製剤中に組込まれた場合に、遊離の糖を含有しない、洗浄されたBEC半結晶性調製物がどのように振る舞うかは知られていなかった。
【0076】
追随する実施例において提示された出願人のデータは、局所投与用に製剤化された組成物(例、クリーム)などのグリコアルカロイドの治療組成物において、それらの製剤における、グリコアルカロイドの加水分解及び遊離糖(ラムノースなど)の放出を防止することが最も望ましいことを実証する。
【0077】
その結果、本明細書中に提示された出願人の研究に基づいて、出願人は、例えば、皮膚がん及び/又は皮膚腫瘍の療法における局所製剤(例、クリーム又はゲル)の使用について言及する場合、それら自身について、局所製剤中のグリコアルカロイドの抗がん有効性を改良し、かつ分解を防止してグリコアルカロイドの抗がん活性を安定化する特定の成分は、皮膚がん及び/又は皮膚腫瘍の改良された及び有効な治療を獲得するように、例えば、臨床的に時機の良い期間において、かかる製剤における包含に最も有益であるであろうと推論した。
【0078】
その結果、本明細書中に提示された研究に基づいて、出願人は、グリコアルカロイドの局所製剤(例、クリーム)などの、治療上有効な製剤を獲得するために2の必要条件が存在すると結論付けた。第一に、製剤は、製剤中で適切な治療上有効(例、抗がん)量又は濃度で活性グリコアルカロイドを保つように、製剤中の治療上活性なグリコアルカロイドの加水分解を減少させる又は最小化する必要があるであろう。第二に、製剤が患者に投与された場合に又は疾患細胞(例、がん又は腫瘍細胞)と接触する状態になった場合に、ラムノースなどの遊離糖は、疾患細胞(例、がん又は腫瘍細胞)上の受容体に対して、加水分解されていないグリコアルカロイドと競合し、それによってグリコアルカロイドの治療効果を阻害するため、製剤は、遊離ラムノースなどの遊離糖の放出(すなわち、グリコアルカロイドの加水分解による)を減少させる又は最小化する又はなくす必要があるであろう。
【0079】
追随する実施例において提示された結果は、遊離のラムノース糖部分(例えば、それはグリコアルカロイドの抗がん製剤中に存在してもよい)が、内在性エンドサイトーシスレクチン(EEL)として最初に記載されたラムノース結合タンパク質(RBP)への、グリコアルカロイドの結合を妨げることを実証する。RBPは、特定のがん細胞の表面に存在することを以前に示されている変異体タンパク質である。正常な非がん細胞は、RBPを欠くかもしれず、RBPをがん細胞上に存在するよりもはるかに少なく含有するかもしれない。いかなる理論又は特定の作用モードに結び付けられることなく、出願人は、本発明のソラソジン ラムノシド(SR)グリコアルカロイドは、がん細胞上のRBPに特異的に結合し、それはSRグリコアルカロイドのがん細胞への内在化をもたらすことを信じる。一度がん細胞において内在化すると、SRのソラソジン部分は、その後、その抗腫瘍性活性を発現して、がん細胞死、例えば、アポトーシス、虚血性細胞死(腫瘍症としても知られる)又はネクローシス媒介経路を開始する。その結果、出願人は、RBP受容体を標的とする抗がん薬剤開発は、がん療法を駆動し得ることを考慮する。
【0080】
その結果、本発明を導く研究において、出願人は、本発明のSRグリコアルカロイドが、例えば、RBP受容体を有するがん及び/又は腫瘍細胞のための、標的された抗がん及び/又は抗腫瘍療法として、採用され得ると考えた。本発明を導く研究において、出願人は、さらに、本発明のSRグリコアルカロイドは、抗腫瘍抗生物質、抗有糸分裂剤、ホルモン、抗血管新生薬、サイトカイン、代謝拮抗剤及びアルキル化剤などの現在使用される化学療法剤と異なる作用の抗がんモードを有すると考えた。従って、出願人は、本発明のグリコアルカロイドは、とりわけ、がんに対する単剤療法として又は上記抗腫瘍剤と組み合わせて、使用され得ると考えた。
【0081】
その結果、一例において、本発明は、少なくともグリコアルカロイド、少なくとも一の粘度調整剤及び少なくとも一の角質溶解剤を含む、局所組成物に存在する。より詳細には、本発明は、例えば、これらのグリコアルカロイド活性分子のデグラデーションを最小化する又は減少させる、グリコアルカロイドコンジュゲートのための改良された、実質的に安定な局所製剤を提供する。本発明の組成物は、一般に、ゲル又はクリームとしての患者への投与に適しているであろうし、及び/又は局所投与用に適合されるであろう。
【0082】
本発明の組成物において使用されるグリコアルカロイドは、式Iの任意のグリコアルカロイドを含む群から選択されるであろう:
【化6】
式中:
点線の両方のが二重結合を表すか、点線のうちの一方が二重結合を表しかつ点線のもう一方が単結合を表すか、或いは点線の両方が単結合を表すように、点線のそれぞれは、個別に単結合又は二重結合であり;
A:は、一般式(II)から(V)を有する以下のラジカルから選択されるラジカルを表し:
【化7】
R
1のそれぞれは、水素、アミノ、オキソ及びOR
4からなる群より個別に選択されるラジカルであり;
R
2のそれぞれは、水素、アミノ及びOR
4からなる群より個別に選択されるラジカルであり;
R
3のそれぞれは、水素、アルキル及びR
4-アルキレンからなる群より個別に選択されるラジカルであり;
R
4のそれぞれは、水素、炭水化物及び炭水化物誘導体からなる群より個別に選択されるラジカルであり;
「X」は、-CH
2-、-O-及び-NH
2-を含む群から選択されるラジカルであり;及び
グリコアルカロイド化合物は、少なくとも一のR
4基を含み、R
4は、グリセルアルデヒド、グリセロース、エリトロース、トレオース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、アルトロース、アロース、グロース、マンノース、グルコース、イドース、ガラクトース、タロース、ラムノース、ジヒドロキシアクトン、エリトルロース、リブロース、キシルロース、プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトース及び他のヘキソース類、ヘプトース類、オクトース類、ナノース類、デコース類、分岐鎖を有するデオキシ糖類(例、アピオース、ハマメロース、ストレプトース、コルジセポース、ミカロース及びクラジノース)、アルデヒド、ケトン又はヒドロキシル基が置換された化合物(例、N-アセチル、アセチル、メチル、CH
2OHの交換)、糖アルコール類、糖酸類、ベンズイミダゾール類、炭水化物のエノール塩、サッカリン酸及び糖リン酸塩を含む群から選択される炭水化物又はその誘導体である。
【0083】
本実施例によれば、組成物は、式Iから選択される複数の異なるグリコアルカロイドを含有してもよい。組成物が単一のグリコアルカロイドのみを含む場合、グリコアルカロイドが組成物中に治療上有効量で存在するであろう。組成物中に複数のグリコアルカロイドが存在する場合、それぞれのグリコアルカロイドは、サブ治療量内で存在してもよいが、組み合わせ中の2以上のグリコアルカロイドは、治療効果を有するであろう。
【0084】
組成物において使用されるグリコアルカロイドは、変更されてもよい。好ましくは、グリコアルカロイドは、トリグリコシド グリコアルカロイド、ソラソジン グリコシドであり、又はソラマルジン、ソラソニン、ソラニン、トマチン、ソラノカプシン及び26-アミノフロスタンからなるグリコアルカロイドの群から選択される。
【0085】
グリコアルカロイドは、エナンチオマー及び/又はジアステレオ異性体を含む、キラル、立体異性体及びそれらの混合物であってもよい。また、グリコアルカロイドは、天然のソースから得てもよく、他のグリコアルカロイドを化学に修飾することにより合成し又は製造してもよい。
【0086】
使用されるグリコアルカロイドの数は、組成物におけるそれらの相対割合と同様に、変更されてもよい。しかしながら、組成物が、2のグリコアルカロイドを含む場合、それらは、およそ、1:6~1:0.5;1:5;1:4;1:3;1:2、1:1.5及び1:1からなる割合の群から選択される割合で存在してもよい。
【0087】
好ましくは、グリコアルカロイドは、約1:6から6:1の割合の、又はより好ましくは約1:4から4:1の割合の、1:3から3:1の割合の若しくは1:2から2:1の割合の、ソラマルジン及びソラソニンである。
【0088】
グリコアルカロイドがソラマルジン及びソラソニンであり、かつそれらが1:1割合で存在する場合、グリコアルカロイドは単離されていることが好ましい。或いは、グリコアルカロイドがソラソニン及びソラマルジンである場合、それらは、組成物においてグリコシドの66%未満を構成しないことが好ましい。本実施例によるの一実施形態において、グリコアルカロイド組成物は、ソラソニン33%、ソラマルジン33%及びそれらのモノ-及びジ-グリコシド相当物34%の割合で含み、アグリコンはソラソジンである。本実施例によるの一実施形態において、グリコアルカロイド組成物はBEC(商標)又はCORAMSINE(登録商標)(例、Solbec Pharmaceuticals Ltd)である。
【0089】
本発明の好ましい形において、グリコアルカロイド組成物は、後期溶出デグラデーション物を本質的に含まない。
【0090】
好ましくは、グリコアルカロイドは、組成物のグリコシドの70%~90%より多く、より好ましくは組成物のグリコシドの91~95%、及びさらにより好ましくは96~100%の割合を構成する。
【0091】
本発明の組成物中のグリコアルカロイドの量は、それらの意図される最終用途に応じて変更されてもよい。組成物は、好ましくは約0.001%~5%又は10%グリコアルカロイド、より好ましくは0.01%~5%又は10%、及びさらにより好ましくは0.1%~5%又は10%グリコアルカロイドを含む。
【0092】
組成物中のグリコアルカロイドの実際の濃度は、変更されてもよく、少なくとも治療される病気及び治療される対象の条件の特性に依存し得る。熟練した実務家は、彼らの技術常識を用いてかつかかる状況に適用される多様なパラメーターを考慮に入れて最も適切な投与量を決定することができる。例えば、病気が腫瘍性成長である場合、特定の患者において癌負荷が高いほど、投与することができ、患者によりよく寛容される、グリコアルカロイドの投与量がより高くなる。好ましくは、組み合わせ療法の一部として投与されるグリコアルカロイドの濃度は、その状況においてそれが単剤療法として投与されるべき匹敵する状況よりも少ない。最終組成物におけるグリコアルカロイドの量又は濃度(w/w)は、約0.1mg/kg~100mg/kg、1mg/kg~80mg/kg、5mg/kg~60mg/kg又は10mg/kg~40mg/kg又は0.5~5mg/kg又は0.75~4mg/kg又は1~3mg/kgであってもよい。好ましくは、最終組成物におけるグリコアルカロイドの量又は濃度(w/w)は、約0.5~5mg/kg、0.75~4mg/kg又は1~3mg/kgである。一例において、組成物は、0.005%(w/w)グリコアルカロイドを含むクリーム製剤である。
【0093】
組成物は、少なくとも一の、がん、ウイルス感染、細菌感染、寄生虫感染、真菌感染、炎症性疾患及び/又は乾癬を治療することに適した治療剤の形態で、第2の成分も含んでもよい。
【0094】
組成物が腫瘍性の病気を治療するのに使用される範囲内で、組成物は、核の作用メカニズムを有する少なくとも一の化学療法剤の形態で、第2の成分も含んでもよい。本発明の目的のために、「核の作用メカニズム」は、がん細胞の核の中で、核で又は核の近くで、化学療法剤が作用することを意味する。例えば、当該剤は、チューブリン、微小管、セントリオール及びスピンドルなどの有糸分裂に関連する1以上のタンパク質若しくは構造の形成、これらへの結合を阻害することにより、又はさもなければ機能を障害することにより、有糸分裂を妨げてもよい。或いは、又は加えて、当該剤は、核酸を損傷する、破壊する、架橋する若しくは核酸に結合することにより、又はさもなければDNA又はRNAの機能を障害する、例えば、転写及び/又は翻訳を阻害することにより又はさもなければ妨げることにより、核内の核酸に又は核酸付近に作用してもよい。或いは、又は加えて、当該剤は、DNA構造と関連する1以上の酵素又は補因子に作用してもよく、例えば、当該剤がトポイソメラーゼに作用してもよく、それによって、DNAが適切なコイル構造をとるのを防止する。
【0095】
組成物は、核の作用メカニズムを有する少なくとも一の化学療法剤の形態で、第2の成分も含んでもよい。好ましくは、第2の成分は、有糸分裂阻害剤、アルキル化剤又は抗生物質である。
【0096】
第2の成分が有糸分裂阻害剤である場合、それはビンカアルカロイド、タキサン、ポドフィロトキシン及びカンプトテシンアナログからなる群より選択されるアルカロイドなどの植物アルカロイドであってもよい。本発明の1つの特定の形において、第2の成分は、ビノレルビン、ビノレルビン タートレート若しくはパクリタキセル又はその機能的同等物である。
【0097】
第2の成分がアルキル化剤である場合、それは、金属塩、ニトロソウレア、マスタードガス誘導体、エチレンイミン、アルキルスルホネート、ヒドラジン及びトリアジンからなる群より選択されてもよい。本発明の1つの特定の形において、第2の成分は、メクロレタミン若しくはダカルバジン又はその機能的同等物である。
【0098】
第2の成分が抗生物質である場合、それは、アントラサイクリン及びクロモマイシンからなる群より選択されてもよい。本発明の1つの特定の形において、第2の成分は、ドキソルビシン又はその機能的同等物である。
【0099】
望ましい一例において、第2の成分は、ドキソルビシン、ナイトロジェンマスタード、トポテカン及びゲムシタビン、5-フルオロウラシル、CAMP、オキサリプラチン、マイトマイシンC、タキソール、トリメトレキサート、トポテカン、オキサリプラチンと結合した5-フルオロウラシル及びCAMPと結合した5-フルロロウラシル(flurorouracil)、シスプラチン、ゲムシタビン、イレッサ、ナバルビン、タキソール、トリメトレキサート及びトポテカン、カルムスチン、シスプラチン、ダカルバジン、ナバルビン、ナイトロジェンマスタード、タキソール及びテモゾロミドの群から選択される核の作用メカニズムを有する、少なくとも一の化学療法剤を含む。
【0100】
本発明の目的のため、「機能的同等物」は、本明細書中に記載されたグリコアルカロイド化合物と組み合わせて使用される場合に、名称の化合物と同様の有利な効果を有することが予期される、構造的に及び/又は機能的に関連する化合物である。
【0101】
粘度調整剤
用語「粘度調整剤」は、液体、クリーム又はゲルなどの(しかしこれらに限定されない)、物質の粘度を調節する、作用する又は制御することができる任意の剤を意味することを意図する。用語「粘度」は、「濃厚(thickness)」の非公式な概念に相当することを意図する。
【0102】
粘度調整剤は、任意の適した粘度調整剤であってもよく、或いはグアーガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、ゼラチン、ポロキサマー、カルボマー及びセルロース誘導体からなる群より選択される、ラムノースを含有しないゲル化剤及び/又は粘度調整剤であってもよい。
【0103】
一態様において、ゲル化剤又は粘度調整剤はキサンタンガムである。
【0104】
キサンタンガムは、細菌発酵又は合成により製造される物質であり、ゲル化剤及び増粘剤として食品中に使用される。それは、グルコース、マンノース及びグルクロン酸からできているポリサッカリドである。
【0105】
角質溶解剤
角質溶解剤は、多くのクリーム製剤において、重要な役割を果たす。それらは、皮膚の外層を緩めて剥がすことを引き起こすことにより、皮膚を剥離するために使用される。
【0106】
少なくとも一の角質溶解剤は、任意の適した角質溶解剤であってよい。一実施形態において、角質溶解剤は、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸及び酒石酸から選択されるアルファ-ヒドロキシ酸;サリチル酸、3-ヒドロキシプロピオン酸、ベータ-ヒドロキシ酪酸、ベータ-ヒドロキシ ベータ-メチルブチレート及びカルニチンから選択されるベータヒドロキシ酸;アゼライン酸、過酸化ベンゾイル、尿素、トリクロロ酢酸(TCA)、石炭酸(フェノール)、クロトン油、アセトン及び硫黄からなる群より選択される。組成物は、少なくとも一の本明細書に記載のアルファ-ヒドロキシ酸を含む角質溶解剤を含み、さらに少なくとも一の本明細書に記載のベータヒドロキシ酸を含む角質溶解剤を含んでもよい。
【0107】
好ましい実施形態において、少なくとも一の角質溶解剤は、乳酸、サリチル酸及び尿素からなる群より選択される。例えば、組成物は、乳酸、サリチル酸及び尿素を含んでもよい。
【0108】
一実施形態において、角質溶解剤は、ベータ-ヒドロキシ酸サリチル酸である。サリチル酸は、皮膚における水分量を増加させ、皮膚をくっつけさせる物質を溶解することことにより皮膚で働く(catherins)。これは、皮膚細胞を剥がすのをより容易にし、細胞懸濁液を模倣する。
【0109】
一実施形態において、角質溶解剤は尿素である。尿素は、皮膚細胞の最上層を共に保持する角質物質(ケラチン)を軟化させる/溶解することにより、皮膚において水分を増加させる。この効果は、グリコアルカロイドに起因する死んだがん細胞を含む死んだ皮膚細胞が剥がれ落ちるのを助け、皮膚が水分を保つを助ける。
【0110】
動物における、特にヒトにおける使用に適した本発明の医薬は、典型的には、製造及び保管条件下で実質的に安定でなければならない。ソラソジン ラムノシド類を含む本発明の医薬は、固形、溶液、マイクロエマルション、リポソーム又は高い薬剤濃度に適した他の規則構造として製剤化することができる。
【0111】
本発明の医薬におけるソラソジン ラムノシド類の実際の投与量レベルは、生物学的に活性な材料の特性、並びにソラソジン ラムノシド類を提供すること及び投与することの利益のために潜在的に増加された有効性(例、増加された溶解性)に従って変更してもよい。
【0112】
本明細書中で使用されるように「治療上有効量」は、ヒト又は動物対象において治療応答に作用するのに必要な量のグリコアルカロイド又はヒト又は動物対象において治療応答に作用するのに必要な量のグリコアルカロイドを含む本発明の治療組成物、製剤若しくは医薬に言及するであろう。かかる使用のための有効量は、所望の治療効果;投与経路;ソラソジン ラムノシド類の有効性;望ましい治療期間;治療される疾患のステージ及び重症度;患者の体重及び一般的な健康状態;及び処方医師の判断に依存するであろう。
【0113】
一実施形態において、ソラソジン ラムノシド類は、別の生物学的に活性な材料と組み合わせて医薬にしてもよい。
【0114】
例えば、使用において、組成物は、w/wキサンタンガム0.2~2%、乳酸5~10%、サリチル酸5~10%、及び尿素3~5%を含んでもよい。別の実施形態において、組成物は、w/wキサンタンガム1%、乳酸10%、サリチル酸10%及び尿素5%を含んでもよい。
【0115】
一実施形態において、組成物は、ゲル又はクリームであり、及び/又は局所投与用である。
【0116】
一例において、組成物は、例えば、クリーム基材として、乳化ワックス、白色軟パラフィン、流動パラフィン、プロピレングリコール及び水のうち1以上を含むクリームである。任意選択で、クリーム組成物は、クロロクレゾールをさらに含む。
【0117】
第二の実施形態において、組成物は、グリコアルカロイド及びそれらの標的細胞間の相互作用を阻害し得るタイプの遊離糖類を本質的に含まない。
【0118】
本発明の好ましい形において、組成物は、本質的にサッカリドを含まない。特に、用語「遊離糖」は、アルカロイドに結合してない、モノ-、ジ-、トリ-、オリゴ-若しくはポリ-サッカリド又はそれらの誘導体などの任意のサッカリドに言及する。本発明の高度に好ましい形態において、組成物は、ラムノース又はラムノース様分子を含まない。
【0119】
いかなる具体的な理論又は具体的な作用モードに結び付けられることなく、本発明者は、本発明の局所組成物の場合、皮膚がん又は腫瘍を治療するために使用される場合、少なくとも一の角質溶解剤(例えば、サリチル酸、乳酸及び尿素から選択される)は、例えば、皮膚の表面にまだ押し上げられていない上記皮膚がん又は皮膚腫瘍を積み重ね得る、例えばケラチン層の細胞を含む皮膚上の死細胞塊を除去し得るよう作用するスクラブ剤(exfoliant(s))として機能するかもしれないと考えた。この作用は、本発明の組成物中のグリコアルカロイドが、正常な非感染性又は非がん性細胞をも殺傷することなく、皮膚上のがん又は腫瘍細胞と接触し、相互作用し、殺傷するのを助け得る。
【0120】
調製の方法
本発明の薬学組成物及び医薬は、本発明のグリコアルカロイドを、例えば、薬学的に許容可能な担体、添加剤及び/又は希釈剤として、少なくとも一の粘度調整剤及び少なくとも一の角質溶解剤と共に含んでもよい。任意選択で、本発明の薬学組成物又は医薬は、さらに1以上の付加的な薬学的に許容可能な担体、添加剤又は希釈剤、並びに薬学的許容可能な組成物の調製において一般に使用される他の剤を含んでもよい。
【0121】
1以上の活性成分を含む本発明の組成物又は医薬の調製のための方法は、当該分野で一般に知られている。かかる組成物は、一般に使用されるべき送達のモードのために製剤化されるであろうし、通常、1以上の薬学的に許容可能な担体、添加剤及び/又は希釈剤を含むであろう。
【0122】
一例において、本発明の組成物又は医薬を調製する方法は、本発明による式Iのグリコアルカロイド1以上を薬学的に許容可能な担体、希釈剤及び/又は添加剤と、組み合わせること及び/又は混合すること及び/又は溶解することを含む。
【0123】
別の例において、方法は、複数の異なるグリコアルカロイドを含む組成物又は医薬を調製することを含み、それにより、方法は、それぞれの異なるグリコアルカロイドの別々の投与のための別個の投与単位を作り出すように、異なるグリコアルカロイドのそれぞれを、薬学的に許容可能な担体、希釈剤及び/又は添加剤と、個別に組み合わせること及び/又は混合すること及び/又は溶解することを含む。
【0124】
例えば、本発明の組成物又は医薬を調製する方法は、組成物の局所送達に適した薬学的に許容可能な担体、希釈剤及び/又は添加剤と、グリコアルカロイドとを溶解すること、組み合わせること及び/又は混合することを含んでもよい。そのような一例において、担体、希釈剤及び/又は添加剤は、水性又は非水性であってもよい。別の例において、薬学的に許容可能な担体、添加剤及び/又は希釈剤は、本発明の前記少なくとも一の粘度調整剤及び前記少なくとも一の角質溶解剤のいずれか一つ又は両方を含むであろう。任意選択で、方法は、1以上の付加的な薬学的に許容可能な担体、添加剤又は希釈剤、及び薬学的に許容可能な組成物の調製に一般に使用される他の剤と、グリコアルカロイド及び/又は少なくとも一の粘度調整剤及び/又は少なくとも一の角質溶解剤を溶解すること及び/又は組み合わせること及び/又は混合することをさらに含んでもよい。
【0125】
「薬学的に許容可能な担体」又は「薬学的に許容可能な添加剤」又は「薬学的に許容可能な希釈剤」は生物学的な又はさもなければ望ましくないものでない材料であり、すなわち、当該材料は、許容不可能な生物学的効果を引き起こすことなく、又はそれが含有される組成物の他の成分のいずれかと有害な様式で相互作用するなく、活性剤と共に個体に適用され得る。
【0126】
一例において、本発明の組成物及び医薬は、担体、添加剤及び/又は希釈剤として、本明細書中に上記されたように、本発明の、1以上の粘度調整剤及び1以上の角質溶解剤を含む。
【0127】
或いは、又は加えて、本発明の組成物又は医薬は、薬学的に許容可能な及び活性成分と適合性のある、適した担体、添加剤及び希釈剤をさらに含んでもよい。適した担体、添加剤及び希釈剤のいくつかの例としては、水、生理食塩水、エタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、デキストロース、ヒドロキシプロピルベータ-シクロデキストリンなどのシクロデキストリン、グリセロール、テリック及びエコテリック脂肪酸エトキシレート、ラクトース、スクロースソルビトール、マンニトール、スターチ、ガムアカシア、リン酸カルシウム類、アルギネート、トラガカント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、マイクロ結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水シロップ、メチルセルロース、メチル及びプロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウム及びミネラルオイル又はそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0128】
本発明の組成物及び医薬は、潤滑剤、pH緩衝剤、湿潤剤、乳化及び懸濁化剤又は保存剤を付加的に含むことができる。かかる適した付加的な剤の例としては、
a) ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール、クロスポビドン、ポリビニルピロリドン-ポリビニルアクリレートコポリマー、セルロース誘導体、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリアクリレート類及びポリメタクリレート類、尿素、糖、ポリオール及びそれらのポリマー、乳化剤、糖ガム、スターチ、有機酸及びそれらの塩、ビニルピロリドン及び酢酸ビニルを含むがこれらに限定されない界面活性剤及びポリマー;及び/又は
b) 多様なセルロース及び架橋ポリビニルピロリドン、マイクロ結晶性セルロースなどの結合剤;及び/又は
c) コロイド状二酸化ケイ素、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、カルシウムステアレート、シリカゲルを含む、圧縮される粉末の流動性に作用する剤などの潤滑剤;及び/又は
d) ソルビン酸カリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸及びその塩、ブチルパラベンなどのパラヒドロキシ安息香酸の他のエステル、エチル若しくはベンジルアルコールなどのアルコール、フェノールなどのフェノール系化学薬品、又は塩化ベンザルコニウムなどの四級化合物などの保存料;及び/又は
e) バッファー;及び/又は
f) マイクロ結晶性セルロース、ラクトース、二塩基性リン酸カルシウム類、サッカリド、及び/又は前述のもののいずれかの混合物などの、薬学的に許容可能な不活性充填剤などの希釈剤;及び/又は
g) コーンスターチ、ポテトスターチ、メイズスターチ及び加工スターチ類、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、グリコール酸ナトリウムスターチ並びにそれらの混合物などの湿潤剤;及び/又は
h)グアーガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、ゼラチン及びセルロース誘導体(ヒドロキシエチルセルロースなど)などのゲル化(エマルション安定化)剤
が挙げられる。
【0129】
本明細書中に記載された組成物又は医薬に含まれ得る構成要素の特定の選択は、一般に、活性剤及び治療される病気に依存するであろう。
【0130】
本発明の組成物及び医薬は、局所送達に適合する。好ましい治療レジメンに依存して、任意の局所送達システムが、本発明の組成物を投与するのに適切であり得る。
【0131】
上記の局所製剤は、水性又は非水性担体中で活性剤を溶解すること又は組み合わせること又は混合することにより製造してもよい。一般に、任意の液体、クリーム若しくはゲル、又は活性又は組成物に導入され得る他の任意の成分と感知できるほどには反応しない類似物質であって非刺激性であるものは適している。局所適用に適合性のある担体を含み、好ましくは水より大きい動的粘性を有する、適切な非噴霧可能粘性、半固形又は固形形態を採用することもできる。
【0132】
適した製剤は、当業者によく知られており、溶液、懸濁液、エマルション、クリーム、ゲル、軟膏(ointment)、粉末、塗布薬、軟膏(salve)、エアロゾル、経皮貼布などを含むがこれらに限定されず、それらは、所望される場合、滅菌され、又は例えば、保存料、安定剤、乳化剤、湿潤剤、香料、着色剤、臭気制御剤、天然ガムなどの増粘剤などといった助剤と混合される。とりわけ好ましい局所製剤としては、軟膏(ointment)、クリーム又はゲルが挙げられる。
【0133】
軟膏は、一般に、(1)油性基剤、すなわち、固定油又はホワイトペトローリアム又はミネラルオイルなどの炭化水素からなるもの、又は(2)吸収性基材、すなわち、例えば無水ラノリンといった、無水物質又は水を吸収することができる物質からなるもの、のいずれかを用いて調製される。慣習的に、基材の形成の後、油性であろうと吸収性であろうと、活性剤は所望の濃度を与える量で添加される。
【0134】
クリームは、オイル/水エマルションである。それらは、典型的には、固定油、炭化水素及び同類のもの、ワックス、ペトローリアム、ミネラルオイル及び同類のものを含む油相(内相)、並びに、水及び添加塩などの水溶性物質を含む水相(連続相)からなる。当該二つの相は、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムなどの界面活性剤;アカシアコロイド状クレイ、veegum及び同類のものなどの親水コロイドといった、乳化剤の使用により安定化される。エマルションの形成の際、活性剤は、所望の濃度を獲得する量で、習慣的に添加される。一例において、本発明による安定なクリーム製剤は、クリーム製剤の製造後少なくとも3カ月又は少なくとも6カ月又は少なくとも12カ月又は少なくとも24カ月又は少なくとも36カ月又は少なくとも48カ月後に、室温又は25℃において製剤の保管後、クリームの油相及び水相が実質的にほとんど分離しないか全く分離しない、グリコアルカロイドを含むクリーム製剤を包含する。
【0135】
ゲルは、油性基剤、水又はエマルション懸濁液基材から選択される基材を含む。基材中でマトリックスを形成し、その粘度を増加させるゲル化剤が基材に対し添加される。ゲル化剤の例としては、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボマー、アクリル酸ポリマー及び同類のものが挙げられる。習慣的に、活性は、ゲル化剤の添加前の時点で所望の濃度で製剤に添加される。
【0136】
影響された組織に適用される局所製剤の慣習となっている量は、影響された組織サイズ及び製剤中の活性の濃度に依存するであろう。
【0137】
放出制御性局所製剤は、望ましいかもしれない。組成物は、拡散又は浸出のいずれかのメカニズムにより放出を可能とする不活性のマトリックスすなわち、ガムに組込まれ得る。緩やかに変性するマトリックスを薬学組成物に組込んでもよい。放出制御性の別の形態は、Oros治療システム(Alza Corp)に基づく方法により、すなわち、組成物は、浸透性効果のため、単一の小孔を介して、水が入りこみ、組成物を押し出すことができる、半透過性膜に封入される。いくつかの腸溶性コーティングも、遅延放出効果を有する。
【0138】
材料の混合物は、最適なフィルムコーティングを提供するのに使用され得る。フィルムコーティングは、パンコーター又は流動床で、又は圧縮コーティングによって実施してもよい。
【0139】
活性剤は、粒子サイズ約1mmの顆粒又は小粒の形態で微細な多粒子として組成物に含まれ得る。カプセル投与のための製剤は、粉末として、軽く圧縮されたプラグとして又はタブレットとしてあり得る。活性剤は、製剤化され吸入者に適用される粉末固定用量吸入カプセルとして、組成物に含まれてもよく、例えば、ULTIBRO(登録商標)BREEZHALER(登録商標)により利用されるそれらの粉末カプセルと類似する。活性剤は、圧縮により調製され得る。例えば、溶媒蒸発、脱溶媒和、複合コアセルベーション、ポリマー/ポリマー非相溶性、界面重合などといった、当業者に知られた様々な方法によりマイクロ粒子が作製されてもよい。
【0140】
マイクロ粒子を形成する親水性ポリマーは、マイクロ粒子が標的分子(例、特性マーカー)を有する選択された標的細胞又は組織に特異的に結合することができるよう振る舞う、標的タンパク質に結合してもよい。例えば、親水性ポリマーは、抗体のFab’断片にコンジュゲートされてもよい。超可変領域又は特異的細胞表面リガンドと相互作用する別のペプチドからのより小さなペプチドが複合体にコンジュゲートされてもよい。抗体又は抗体断片が、がん性組織又は細胞と関連する標的分子を対象とすることが最も好ましい。
【0141】
治療用途
本発明の組成物及び医薬の治療用途は、例えば、がん、ウイルス感染、細菌感染、寄生虫感染、真菌感染、炎症性疾患及び/又は乾癬の治療におけるなどの多様な疾患の局所治療といった治療を含む。
【0142】
一実施形態において、本発明の組成物及び医薬は、例えば、皮膚がん及び/又は皮膚腫瘍の局所治療といった治療のためである。
【0143】
治療の方法
本発明の組成物及び医薬は、がん、ウイルス感染、細菌感染、寄生虫感染、真菌感染、炎症性疾患及び/又は乾癬の治療におけるなどの、多様な疾患の治療のため臨床適用され得る。従って、本発明の組成物及び医薬は、様々な疾患のための新規の治療の開発につながり得る。
【0144】
その結果、本発明は、がん、ウイルス感染、細菌感染、寄生虫感染、真菌感染と関連する皮膚疾患、炎症性疾患及び/又は乾癬を有するか罹患している患者を治療する方法を提供し、前記方法は、治療上有効量の組成物を本明細書中に記載されたように疾患状態に適用する工程を含む。
【0145】
好ましい形態において、本発明は、本明細書中に記載されたように、治療上相乗的に有効な量の組成物を投与する工程を含む腫瘍性成長を治療するための方法も提供する。別の好ましい形態において、本発明は、前記皮膚がん及び/又は皮膚腫瘍性成長を含む皮膚の領域に、治療上有効量の本明細書中に記載された組成物を局所的に適用する工程を含む、皮膚がん及び/又は皮膚腫瘍性成長を治療するための方法も提供する。
【0146】
いかなる理論及び提案された作用のメカニズムにより結び付けられることなく、出願人は、本明細書中に記載された組成物は、それらがグリコアルカロイド活性剤の減少した又は最小限の分解を伴い、実質的に安定な製剤を送達するため、有利であると考える。これに関し、グリコアルカロイド組成物は、感染した又は標的疾患細胞(例、がん細胞、腫瘍性成長を形成する細胞、細菌、ウイルス、寄生虫又は真菌に感染した細胞、乾癬及び/又は皮膚における炎症性応答と関連する皮膚細胞などの皮膚疾患状態の細胞)を、例えば膜、とりわけ核膜、透過性を増加させることにより、組成物により接触しやすい状態にすると仮定する。
【0147】
本発明のとりわけ好ましい形態において、組成物は、腫瘍性病気を治療するのに使用される。この例において、組成物は、核の作用メカニズムを有する少なくとも一の化学療法剤の形態で第2の成分も含んでもよい。
【0148】
本明細書中に記載されたグリコアルカロイド及び化学療法剤の組み合わせは、がん性細胞とex vivoで接触した場合に、興味深い特性を示す。患者に投与される場合、組成物は、それぞれの単剤療法と比較して、かつそれぞれの単剤療法の追加の効果と比較して、より良い患者の転帰を提供する。これに関し、単剤療法のために使用される認められた投与量が投与された場合、より低い投与量は、化学療法剤と関連する、1以上の副作用を避ける又は改善する。
【0149】
腫瘍性成長は、メラノーマ及び非メラノーマ皮膚を含むリグニンメラノーマ、日光性角化症、ケラトアカントーマ、基底細胞癌、扁平細胞癌(例えば、皮膚表在性扁平細胞癌)及び光線性角化症からなる群より選択されるがんを含む様々ながんと関連し得る。
【0150】
本発明の方法において使用される組成物は、薬学的に許容可能な担体を含んでもよい。
【0151】
組成物が、同定されたグリコアルカロイド以外の化合物を含む場合、当該他の化合物は、別の投与形態で投与されてもよい。個別に投与される場合、組成物は、同時に又は連続的に投与されてもよい。本発明の目的のために、「同時に」は、同時に又は互いに1時間以内に組成物が投与されることを意味する。組成物が1時間以上離れて投与される場合、それらは連続的に投与されるとみなされる。
【0152】
本発明の組成物は、治療上有効である、投与量単位形態で投与されるべきである。本明細書中で使用される投与量単位形態は、治療される対象のための単位の投与量として適した物理的に分離した単位に言及し、各単位は、必要とされる薬学担体と関連する所望の治療効果を生み出すために計算された活性材料の量を含有する。本発明の投与量単位形態について本明細書は、少なくとも(a)活性材料の固有の特性及び獲得される特定の治療効果、並びに(b)求められる治療のためそのような活性材料を配合する分野における固有の制限によって決まり直接的に依存する。従って、投与される活性化合物の量は、化合物の毒性及び特異的活性、治療される対象並びに必要とされる治療の程度に大きく依存するであろう。投与に必要とされる化合物の正確な量は、実務家の判断に依存するかもしれず、各対象に特有であるかもしれない。好ましくは、本発明の組み合わせ療法により投与される活性剤の投与量は、単剤療法において使用される場合の同じ活性剤の従来の投与量よりも低い。
【0153】
本発明の組成物及び医薬は、例えば、局所投与といった、毎日の又は定期的な投与のため製剤化してもよい。例えば、組成物及び医薬を少なくとも約3日又は少なくとも4日又は少なくとも5日又は少なくとも6日、又は少なくとも1週又は少なくとも約2週又は少なくとも約3週又は少なくとも約4週又は少なくとも約5週又は少なくとも約6週又は少なくとも約7週又は少なくとも約8週又は少なくとも約9週又は少なくとも約10週又は少なくとも約11週又は少なくとも約12週又は少なくとも約13週又は少なくとも約14週又は少なくとも約15週又は少なくとも約16週又は少なくとも約17週又は少なくとも約18週又は少なくとも約19週又は少なくとも約20週又は少なくとも約21週又は少なくとも約22週又は少なくとも約23週又は少なくとも約24週又は少なくとも約25週又は少なくとも約6カ月又は少なくとも約1年又は1年より長い期間毎日投与してもよい。好ましい一例において、組成物は、少なくとも3日の期間投与される。別の好ましい例において、組成物は、少なくとも約13週又は少なくとも約3カ月の期間投与される。
【0154】
別の例において、1日2回又は1日3回又は1日3回よりも多く、又は2日ごと又は3日ごと又は4日ごと又は5日ごと又は6日ごと又は2週ごとに、少なくとも約2週又は少なくとも約3週又は少なくとも約4週又は少なくとも約5週又は少なくとも約6週又は少なくとも約7週又は少なくとも約8週又は少なくとも約9週又は少なくとも約10週又は少なくとも約11週又は少なくとも約12週又は少なくとも約13週又は少なくとも約14週又は少なくとも約15週又は少なくとも約16週又は少なくとも約17週又は少なくとも約18週又は少なくとも約19週又は少なくとも約20週又は少なくとも約21週又は少なくとも約22週又は少なくとも約23週又は少なくとも約24週又は少なくとも約25週又は少なくとも約6カ月又は少なくとも約1年又は1年より長い期間などの定期的に、組成物を投与してもよい。
【0155】
好ましい一例において、組成物は、少なくとも1日2回又は少なくとも12時間ごとに、少なくとも3日連続した日数の期間、投与される。代わりの例において、組成物は、治療効果(例、がん又は腫瘍皮膚病変を除去するため)をより急速に獲得するため、毎日、少なくとも0.5時間にわたり、最高10回の投与がされ得る。
【0156】
別の例において、組成物は、少なくとも約1週又は少なくとも約2週又は少なくとも約3週又は少なくとも約4週又は少なくとも約5週又は少なくとも約6週又は少なくとも約7週又は少なくとも約8週又は少なくとも約9週又は少なくとも約10週又は少なくとも約11週又は少なくとも約12週又は少なくとも約13週又は少なくとも約14週又は少なくとも約15週又は少なくとも約16週又は少なくとも約17週又は少なくとも約18週又は少なくとも約19週又は少なくとも約20週又は少なくとも約21週又は少なくとも約22週又は少なくとも約23週又は少なくとも約24週又は少なくとも約25週又は少なくとも約6カ月又は少なくとも約1年又は1年より長い投与期間で投与し、その後中止期間が続き、その後、少なくとも約1週又は少なくとも約2週又は少なくとも約3週又は少なくとも約4週又は少なくとも約5週又は少なくとも約6週又は少なくとも約7週又は少なくとも約8週又は少なくとも約9週又は少なくとも約10週又は少なくとも約11週又は少なくとも約12週又は少なくとも約13週又は少なくとも約14週又は少なくとも約15週又は少なくとも約16週又は少なくとも約17週又は少なくとも約18週又は少なくとも約19週又は少なくとも約20週又は少なくとも約21週又は少なくとも約22週又は少なくとも約23週又は少なくとも約24週又は少なくとも約25週又は少なくとも約6カ月又は少なくとも約1年又は1年より長い投与期間、投与してもよい。
【0157】
一例において、本発明の組成物又は医薬は、約0.005%(w/w)グリコアルカロイドを含む。別の例において、本発明の組成物又は医薬は、少なくとも毎日2回、少なくとも連続3日間、例えば、毎日2回又は12時間ごとに連続3日間など、閉塞性包帯を用いて、影響された皮膚の領域に局所的に適用してもよい。しかし、例えば、0.5時間ごと最大10連続投与といった、より頻繁な投与は、可能であり得る。
【0158】
好ましくは、(例えば、組成物又は医薬がクリーム又はゲル製剤である場合)組成物又は医薬は、皮膚の治療領域にわたり薄く均等に適用され、皮膚に一度適用された医薬又は組成物が乾燥するのを避けるため、病変又は皮膚疾患状態が閉塞性包帯で覆われる。好ましくは、医薬又は組成物は、病変又は影響された皮膚の領域の縁周辺の、一見したところ正常な皮膚に0.5cmよりも多くの組成物又は医薬の適用を延ばすために、大量には適用されない。
【0159】
一例において、本発明の組成物又は医薬はがん/腫瘍病変が消える、及び/又は細菌、ウイルス、真菌感染及び/又は炎症及び/又は乾癬が消えるまで適用され、好ましくは、皮膚病変/皮膚についての疾患条件が正常な健康な皮膚(例、視覚的に決定されるように)で置き換えられるまで、適用される。
【0160】
実施例
実施例1:糖を含まないのソラソジングリコシドの調製
本実施例は、グリコアルカロイド及びそれらの標的細胞間の相互作用を阻害するタイプの遊離糖を本質的に欠いている(すなわち、持たない)グリコアルカロイドの調製物を作製するための方法を実証する。
【0161】
以下のとおりの糖遊離のソラソジングリコシド調製物を調製した:50kg Solanum Sodomaeumベリーを3mmのふるいサイズを有する商業用ミートミンサー(l.HP electric motor 1425 rpmに取り付けられた)に通過させた。
【0162】
スラリーを3%酢酸(pH2.5)(食品グレード)で200Lの体積に希釈した。この半固形溶液をSilversonホモジナイザーで15分間処理した。混合を、アームミキサーを有するSSロッドを用いて室温、30rpmで(Flamingo CMG 0.75kw 可変速度コントロールメーター)、さらに4時間続けた。
【0163】
溶液を混合することなく一晩放置した。溶液を、その後、モスリン布でろ過した。ろ過物を、その後、フロースルー遠心分離機(3.5HP)1455rpmに付した。透明なろ過物をステンレススチールダブルジャケットボウル中で50℃に加熱した。濃縮アンモニア(LRグレード)をおよそpH10まで添加した。沈殿物を観察した。沈殿物を静置し冷却した(およそ24時間)。上清を注意深くデカンテーションした。沈殿物を25Lの3%水性酢酸に溶解した。溶液を上記フロースルー遠心分離機を介して遠心分離した。上清をSSダブルジャケットボウルに回収し、連続撹拌しながら(30rpm、30分)50℃に加熱した。
【0164】
およそpH10までの濃縮アンモニア溶液の添加により、グリコアルカロイドを再沈殿させた。溶液を冷却し沈殿物を静置した(およそ24時間)。上清を注意深くデカンテーションし沈殿物を50Lの水を用いて洗浄し、前のように24時間静置した。上清をデカンテーションした。この工程を4回繰り返した。
【0165】
沈殿物を75℃で最終的に10Lアルコールに溶解し、熱いうちにWhatman No.1ろ紙を介してろ過した。上清を50℃で乾燥した。これにより微細な半結晶性粉末が生じた。産物は505gであり、それは1.01%であった。
【0166】
抽出物をクロロホルムで洗浄することにより、アグリコンソラソジンを除去した。ソラソジンはクロロホルム相中に溶解性であり、糖は、水性相に溶解性であった。グリコアルカロイドは、これら全ての条件下で、不溶性のままであった。
【0167】
実施例2:ソラソジングリコシドの安定性分析
本実施例は、粘度調整剤(例、添加剤及び/又は担体として)を伴う又は伴わない、少なくとも一の角質溶解剤を含む、グリコアルカロイドの異なる局所クリーム製剤の調製を実証し、それらの製剤中のグリコアルカロイド活性剤の安定性を評価した。提供された結果は、療法における使用のための、長い保存可能期間を有する、新規の実質的に安定な、効果のある、少なくともグリコアルカロイド、少なくとも一の粘度調整剤及び少なくとも一の角質溶解剤、局所組成物の調製を実証する。
【0168】
以前のヒト皮膚がん研究の場合において、グリコアルカロイドを含むクリーム製剤はクリームの製造後5カ月以内に試験された。結果は、卓越したものであった。これらの研究を用い、活性グリコアルカロイドの存在のみが示された。しかしながら、それらの濃度は示されなかった。例えばWO2000061153A1を参照のこと。
【0169】
本研究において、例えば、実施例1における方法により調製されるように、糖を含まないソラソジングリコシド半結晶性調製物からクリーム製剤を調製した。WO2000061153A1(それは参照によりその全体が本明細書中に組込まれる)に詳細に説明されるとおり、実際のクリーム製剤を作製した。乳化ワックス、白色軟パラフィン(10%w/w)、液体パラフィン(10%w/w)、プロピレングリコール(5%)及び水をクリーム基材を提供するのに使用し、クロロクレゾール(1%)は、を保存料として含まれた。
【0170】
重量で5%尿素及び10%サリチル酸を含有するが乳酸及びエマルション-安定化剤を含有しないクリーム製剤中のソラソジングリコシドの安定性を製剤の調製時から48カ月の期間にわたり試験し、表1に示す結果を伴った。視覚的外観をスタンダードな商業的に利用可能なソラマルジンクリーム組成物との比較により行った。実質的にWO2000061153A1に記載されたようなクリーム中のソラマルジンの量を決定するため高速液体クロマトグラフィー(HPLC)。
【0171】
我々は、組成物におけるソラソジンラムノシド類の包含の前に、(例えば、実施例1において概説されるように)半結晶性ソラソジンラムノシド類を洗浄することにより遊離の(コンジュゲートされていない)糖を除去し、クリーム製剤中の組成物を用いて皮膚がんを治療した後でさえ、ソラソジンラムノシド類の不安定性が持続することをここに報告する。
【表1】
【0172】
また、このクリーム製剤が延長された期間にわたり臨床状況において使用される場合、クリーム製剤の経年に伴い、クリーム製剤の有効性が時間に伴い減少するようであることが観察された。
【0173】
それと同時に、クリームの安定性は非常に温度依存的であり、室温で油相及び水相の分離をもたらすことが分かった。
【0174】
さらに研究により、クリーム製剤における2つの確認できる欠陥があったことが決定された:
・室温でさえのクリーム製剤の熱不安定性;及び
・クリーム製剤中のグリコアルカロイドのデグラデーション。
【0175】
これらの2つの欠陥は、それらが克服可能かどうかを決定するためにさらに調査した。
【0176】
ソラソジン ラムノシド類のデグラデーションを阻害するために、1から10%(w/w)の範囲の様々な濃度での乳酸をクリーム製剤に添加した。一つの差し迫った問題が生じた。クリームのエマルションは、4%(w/w)を超えた乳酸の濃度で、不安定になった。
【0177】
クリーム製剤の安定性の上記に文書化された欠陥を克服するために、オリジナルの製剤化されるクリームは、変更しなければならなかった。
【0178】
多様なエマルション安定化剤を調査した。最終的に、エマルション安定性の目的のためにキサンタンガムを選択した。様々な量のキサンタンガム(Xg)を用いてBECクリーム製剤を研究した。製剤中の0.2%(w/w)のXgにより、わずかに濃くなった。クリーム中の最適な濃度は、1.0%のXgであった。濃い熱安定的なエマルションを得た。より大きなXgは、クリームの望ましくない粘り強いテクスチャをもたらした。
【0179】
これらの成果に基づき、その後、クリーム製剤中の、漸増濃度の乳酸及び/又は他の成分を研究し、これらの濃度が、クリーム中のソラソジンラムノシド類の安定性、及び加水分解によるデグラデーションの防止とどのように関連するかを決定することができた。
【0180】
クリーム製剤中の4重量%を超える濃度での乳酸は、クリームの安定性に最適であったことを決定した。
【0181】
これらの濃度での乳酸及び10%(w/w)サリチル酸(角質溶解剤としてクリーム中に存在する)は高い酸性度を有し非常に低いpHをもたらすであろうし、従って、BECグリコアルカロイドの加水分解を引き起こすであろうことが予測されたため、これは驚くべきことであった。これは、当該状況ではないことが示された。
【0182】
低濃度(1重量%未満)でのHClは、グリコアルカロイドを加水分解することが知られている。HClは強酸であり、-2未満のpka値を有する。乳酸は弱酸であり、3.86のpka値を有する。弱酸は、水中でおよそ-2から12の範囲でのpka値を有する。強酸は、-2未満のpka値を有する。水に非常に溶解性であるわけではないが、サリチル酸は、クリームエマルションに溶解性であり、2.97のpka値を有する。従って、乳酸及びサリチル酸と比較した場合、HClの酸性度の差は、5桁近くである。これは、何故、重量で最大10%乳酸及び最大10%サリチル酸の濃度での弱酸の存在下で、クリーム形態中のBECグリコアルカロイドが実質的に安定であるかを説明し得る。
【0183】
細胞懸濁培地の特性を模倣するため、非常に低い濃度のこれらのグリコアルカロイドが効果のある抗がん特性を有する場合、表2に示すとおり、特定の添加剤をグリコアルカロイド含有クリーム製剤に添加して、最初に調製されたもの又は上記のものよりも新しくより安定な製剤を作製した。
【表2】
【0184】
特に、サリチル酸、尿素及びキサンタンガムの添加の、結果として生じる製剤の安定性への効果を表3に示すとおり調査した。
【表3】
【0185】
実際に、局所クリーム製剤中の、サリチル酸(10%w/w)、尿素(5%w/w)及びキサンタンガム(1%w/w)の存在は、がん細胞培養研究において高い効果のあることが示されているBECのレベルを近似する非常に低い濃度のBECを用いて、皮膚がんの卓越した治療結果を得るのに有利であった。
【0186】
上述のとおり、皮膚がんの治療のための、5%尿素、10%サリチル酸を含有し、乳酸及びエマルション-安定化剤を含有しないオリジナルのグリコアルカロイドエマルションクリーム製剤の安定性及び完全有効性は、その治療使用を限定した多くの制限を有する。
【0187】
キサンタンガム及び乳酸を用いた研究に基づき、クリーム製剤中での、オリジナルのエマルションの不安定性及びBECグリコアルカロイドの不安定性の欠陥を克服する特異的添加剤を含有する、表2に示す、特定の例となる製剤を考案した。
【0188】
適切な添加剤を有するこの新規の局所クリーム製剤は、臨床に使用される場合に4年超の保存可能期間を有する、実質的に安定な、効果のある新規の局所クリーム製剤をもたらした。
【0189】
実施例3:グリコアルカロイドの治療活性への遊離(コンジュゲートされていない)糖の効果
本実施例は、遊離ラムノースなどの遊離(コンジュゲートされていない)糖部分は、本発明のSRグリコアルカロイドの治療抗がん/腫瘍有効性を減少させることを実証する。
【0190】
遊離糖部分の、本発明のSRグリコアルカロイドの抗がん活性への効果を決定するために、漸増濃度のBECグリコアルカロイド抽出物の抗がん活性が、遊離ラムノースの非存在細胞培養条件下で、及び別に5mMラムノースの存在細胞培養条件下で、決定された。この効果に対し、メラノーマがん細胞を、漸増濃度(0~20μg/mL)のBEC抽出物(それは、ソラマルジン、ソラソニン並びにソラソジンのジ-及びモノ-グリコシドの、一定量の混合物からなる)の遊離ラムノース存在下で又は非存在下でインキュベートした。結果を
図1に示す。
【0191】
図1に示すとおり、漸増濃度のBECは、BEC12μg/mLのLD
50及びBECおよそ20μg/mLのLD
100の、メラノーマ細胞の生存を減少させることをもたらした。メラノーマがん細胞に対して、遊離のラムノース5mMがBECと共投与された場合、事実上、全てのメラノーマ細胞が生存する。
【0192】
その結果、本実施例は、ラムノースなどの遊離の糖が、本発明のグリコアルカロイド化合物の抗がん及び/又は抗腫瘍治療効果に対する保護効果を発揮することを実証する。
【0193】
これらのデータは、W2000061153A1に記載された、Sarcoma180マウスを用いたin vivo研究を補足する。
【0194】
実施例4:多様な薬剤組み合わせの、ex-vivo腫瘍細胞への効果
本実施例は、例えば、核の作用メカニズムを有する剤といった他の化学療法剤と組み合わせて試験した時の、がん又は腫瘍細胞の(アポトーシスによる)細胞死を測定するex-vivoアッセイにより決定される、本発明のグリコアルカロイドを含む組成物の相乗的な抗がん効果を実証する。
【0195】
データは、EVA(ex vivo分析)からの実験結果は、臨床所見とよく相関するという提案を支持する。このアプローチは、表4に要約された、650を超える出版された臨床相関(例えば、Principles and Practice of Oncology Updates: Vol. 7, No. 12, 1993を参照のこと)を含むいくつかの同業者による審査を受けた記事により支持されている。表4に示すとおり、これらの出版された臨床相関は、EVAが96.1%の感受性及び87.1%の特異性(表4)を有することを示す。さらに、EVAケモ-感受性アッセイは、応答、増悪までの時間及び生存と相関することが示されている。腫瘍特異的陽性及び陰性予測精度を、下記表4に、より詳細に提供する。
【表4】
【0196】
がん細胞は、正常な健康細胞より大きくなるとかつては考えられた。現在は、がん細胞は実際は正常な細胞より長生きすると知られている;それらが過剰に増殖するということではなく、それらは事実長く生き過ぎる。Ex vivo分析は、細胞増殖/成長よりむしろ、細胞死のプロセスを考慮し、測定した。プリンシパルex vivoアッセイ技術は、in vivoでの化学療法の効果をより反映する、アポトーシスエンドポイントを測定する。ex vivoアッセイは、さらなる細胞死エンドポイントとして、ATP含量(発光性)、MTT(ミトコンドリア活性)及び膜完全性方法論を含む非アポトーシスのエンドポイントを測定することもできる。Coramsine(登録商標)は作用の非アポトーシスモードを以前に提示されており、Coramsine(登録商標)を試験するex vivo研究を非アポトーシスのエンドポイントを用いて行った。
【0197】
ヒト腫瘍の新鮮な試料を機械的に及び酵素的にバラバラにし、一般にNagourney R.A.ら(2003)に明記された方法に従ってスフェロイドを改変RPMA1640に再懸濁した。
【0198】
再懸濁したスフェロイドを、一般にNagourney R.A.ら(2003)に明記された方法に従い、多様な他の化学療法剤と組み合わせて、CORAMSINE(登録商標)[これは、2つのソラソジングリコアルカロイド、ソラソニン及びソラマルジン、1:1(w/w)の割合からできている]で処理した。いくつかの例において、複数の他の化学療法剤と組み合わせて、CORAMSINE(登録商標)を試験した。
【0199】
Chou and Talalay(1987)のメジアン効果技術を用いて、一般にNagourney R.A.ら(2003)に明記された方法に従い、相乗効果を決定した。
【0200】
結果を下記の表に記載する。「活性」情報は、濃度50%細胞生存として関連した。関連する略称/同等の用語は、:5FU=5-フルオロウラシル;BCNU=カルムスチン(BiCNU(登録商標));CAMP=シクロホスファミド(Cytoxan(登録商標))、ドキソルビシン(Adriamycin(登録商標))、メトトレキサート(Mexate(登録商標))及びプロカルバジン(Matulane(登録商標)の組み合わせ);CDDP=シスプラチン;DOX=ドキソルビシン(Adriamycin(登録商標)、ヒドロキシルダウノルビシン);DTIC((登録商標))=ダカルバジン(DIC、イミダゾールカルボキサミド);GEM=ゲムシタビン(Gemzar(登録商標));IRES=イレッサ(登録商標)(ゲフィチニブ);L-OHP=オキサリプラチン(Eloxatin(登録商標));MMC=マイトマイシンC;NAV=Navelbine(登録商標)(ビノレルビン);NM=ナイトロジェンマスタード(メクロレタミン、クロルメチン、ムスチン、Mustargen(登録商標));TAX=タキソール(登録商標)(パクリタキセル);TMTX=トリメトレキサート;TMZ=テモゾロミド(Temodar(登録商標)、Temodal(登録商標));TOPO=トポテカン(ハイカムチン)及びCOR=Coramsine(登録商標)である。
【0201】
【0202】
【0203】
3.非小細胞肺4がん
【表11】
【表12】
【表13】
【0204】
4.メラノーマ
【表14】
【表15】
【表16】
【0205】
前述の表から理解できるように、CORAMSINEは、代表的ながんの種類に関して、核の作用メカニズムを有する様々な化学療法剤と相乗的に作用する。
【0206】
参考文献
Nagourney R.A., Sommers B.L., Harper S.M., Radecki S., Evans S.S. (2003) Ex vivo analysis of topotecan: advancing the application of laboratory-based clinical therapeutics. British Journal of Cancer 89, 1789-1795.
Chou T-C., Talalay P. (1987) Applications for the median-effect principle for the assessment of low-dose risk of carcinogens and for the quantitation of synergism and antagonism of chemotherapeutic agents. In New Avenues in Developmental Cancer Chemotherapy. Harrap K.R., Conneros T.A. (eds) pp 37-64, Orlando, FL: Academic Press Inc.