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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-27
(45)【発行日】2023-01-11
(54)【発明の名称】外壁のリフォーム方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20221228BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20221228BHJP
【FI】
E04G23/02 H
E04F13/08 101S
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019025478
(22)【出願日】2019-02-15
(65)【公開番号】P2020133164
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000004673
【氏名又は名称】パナソニックホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 寛
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 曜
【審査官】清水 督史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0083040(US,A1)
【文献】特開平10-115070(JP,A)
【文献】特開2000-045490(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/02
E04F 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装材を有する建物の外壁のリフォーム方法であって、
前記外装材の外側に、断熱材からなる面材を固着する第1工程と、
前記面材の外側にタイルを固着する第2工程とを含み、
前記面材は、建物外側を向く下地面に、支持部が形成されており、
前記支持部は、前記下地面から突出して垂直方向に延びている第2支持部を含み、
前記第2工程に先立ち、前記面材に、前記第2支持部を固着する第3工程をさらに含み、
前記第2工程では、前記タイルを、その一部が前記支持部と接触するように前記下地面に固着する、
外壁のリフォーム方法。
【請求項2】
前記支持部は、前記下地面から突出して水平方向に延びている第1支持部を含む、請求項1に記載の外壁のリフォーム方法。
【請求項3】
前記第1支持部が、垂直方向に複数設けられている、請求項2に記載の外壁のリフォーム方法。
【請求項4】
前記第2工程では、前記タイルを、その荷重の一部が、前記第1支持部で支持されるように固着する、請求項2又は3記載の外壁のリフォーム方法。
【請求項5】
前記第2工程では、前記タイルを、その一部が、前記第2支持部と接触するように固着する、請求項1ないし4のいずれかに記載の外壁のリフォーム方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の外壁をリフォームするための方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1は、建物の外壁をリフォームするための方法を提案している。この方法は、リフォーム前の外壁部材及び断熱部材を除去する工程と、建物の柱部材間に、新たな断熱壁材を挿入する工程とを含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-089581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の方法では、上記の除去する工程により、既存の外壁が有していた機能(例えば、断熱性能等)を低下させるため、居住者が建物に住みながらリフォームすることができないという問題があった。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、居住者が建物に住みながらリフォームすることが可能な外壁のリフォーム方法、及び、外壁の構造を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、外装材を有する建物の外壁のリフォーム方法であって、前記外装材の外側に、断熱材からなる面材を固着する第1工程と、前記面材の外側にタイルを固着する第2工程とを含み、前記面材は、建物外側を向く下地面に、支持部が形成されており、前記第2工程では、前記タイルを、その一部が前記支持部と接触するように前記下地面に固着することを特徴とする。
【0007】
本発明に係る前記外壁のリフォーム方法において、前記支持部は、前記下地面から突出して水平方向に延びている第1支持部を含んでもよい。
【0008】
本発明に係る前記外壁のリフォーム方法において、前記第1支持部が、垂直方向に複数設けられていてもよい。
【0009】
本発明に係る前記外壁のリフォーム方法において、前記第2工程では、前記タイルを、その荷重の一部が、前記第1支持部で支持されるように固着してもよい。
【0010】
本発明に係る前記外壁のリフォーム方法において、前記支持部は、前記下地面から突出して垂直方向に延びている第2支持部を含んでもよい。
【0011】
本発明に係る前記外壁のリフォーム方法において、前記第2工程に先立ち、前記面材に、前記第2支持部を固着する第3工程をさらに含んでもよい。
【0012】
本発明に係る前記外壁のリフォーム方法において、前記第2工程では、前記タイルを、その一部が、前記第2支持部と接触するように固着してもよい。
【0013】
本発明は、建物の外壁の構造であって、外装材を有する第1部分と、前記第1部分の外側に固着された第2部分とを一体に含み、前記第2部分は、前記外装材の外側に固着され、かつ、断熱材からなる面材と、前記面材の外側に固着されたタイルとを含み、前記面材は、建物外側を向く下地面に、支持部が形成されており、前記タイルの一部は、前記支持部と接触するように前記下地面に固着されていることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る前記外壁の構造において、前記支持部は、前記下地面から突出して水平方向に延びている第1支持部を含んでもよい。
【0015】
本発明に係る前記外壁の構造において、前記第1支持部は、垂直方向に複数設けられていてもよい。
【0016】
本発明に係る前記外壁の構造において、前記第1支持部は、前記タイルの荷重の一部を支持していてもよい。
【0017】
本発明に係る前記外壁の構造において、前記支持部は、前記下地面から突出して垂直方向に延びている第2支持部を含んでもよい。
【0018】
本発明に係る前記外壁の構造において、前記第2支持部は、前記タイルの一部と接触していてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本願の第1発明の外壁のリフォーム方法は、建物の外装材の外側に、断熱材からなる面材とタイルとが固着されるため、既存の外壁を維持したまま、リフォームすることができる。したがって、本願の第1発明の方法は、既存の前記外壁が有していた機能を低下させることがないため、居住者が前記建物に住みながらリフォームすることができる。さらに、本願の第1発明の方法は、前記外装材の外側に前記面材が固着されることにより、既存の外壁が有する断熱性能に、前記面材が有する断熱性能を加えることができるため、前記外壁の断熱性能を効果的に高めることができる。
【0020】
また、本願の第1発明の方法は、前記タイルの一部が、前記面材の下地面に形成された支持部と接触するように、前記タイルが前記下地面に固着されるため、例えば、前記支持部が前記タイルの位置決めや、支持として用いられることで、作業者の熟練を必要とすることなく、前記タイルを前記下地面に短期間で固着することができる。
【0021】
本願の第2発明の外壁の構造は、外装材を有する第1部分の外側に、断熱材からなる面材とタイルとを含む第2部分が固着されるため、第1部分が有する断熱性能に、前記面材が有する断熱性能を加えることができる。したがって、本願の第2発明の構造は、前記外壁の断熱性能を効果的に高めることができる。
【0022】
本願の第2発明の構造は、前記タイルの一部が、前記面材の下地面に形成された支持部と接触するように、前記タイルが前記下地面に固着されているため、例えば、前記支持部が前記タイルの位置決めや、支持として構成されることで、前記タイルの配列を維持しつつ、前記タイルの剥落を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】建物の外壁の構造の一例を示す断面図である。
図2】第1部分の外装材及び第2部分の一例を示す斜視図である。
図3】第1工程の一例を説明する斜視図である。
図4】第2工程の一例を説明する斜視図である。
図5】目地材を充填する工程の一例を説明する斜視図である。
図6】本発明の他の実施形態の外壁の構造の一例を示す斜視図である。
図7】第3工程の一例を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。なお、各図面は、発明の内容の理解を高めるためのものであり、誇張された表示が含まれる他、各図面間において、縮尺等は厳密に一致していない点が予め指摘される。図1は、建物の外壁の構造(以下、単に「外壁の構造」ということがある。)1の一例を示す断面図である。
【0025】
本実施形態の外壁の構造1は、例えば、住宅やビル等の建物2に適用することができる。外壁の構造1は、第1部分3と、第2部分4とを含んで構成されている。第2部分4は、第1部分3の外側に固着されている。本実施形態の外壁の構造1は、第1部分3と第2部分4とが一体として構成されている。
【0026】
本実施形態の第1部分3は、建物2の既存の外壁5として構成されている。一方、本実施形態の第2部分4は、第1部分3(既存の外壁5)に固着(増し張り)されるリフォーム用の外壁として構成されている。なお、第1部分3及び第2部分4は、建物2の新築時から一体に構成された外壁として構成されてもよい。
【0027】
第1部分3は、外装材6を有している。本実施形態の第1部分3は、枠体7、外装材6、内装材8及び断熱材9を含んで構成されている。さらに、第1部分3には、外装材6と断熱材9との間に、上下方向に延びる通気層10が設けられている。本実施形態の第1部分3(外壁5)は、例えば、建物2の柱(図示省略)と梁11とを含む架構体12に固定されている。なお、第1部分3は、外装材6を有するものであれば、このような構成に限定されない。
【0028】
外装材6は、板状(パネル状)に形成されている。外装材6には、従来から知られているものを採用することができ、例えば、ALC等の発泡コンクリートパネル、スレートパネル、及び、NFC等のパルプ混入セメントパネル等を採用することができる。
【0029】
本実施形態の枠体7は、例えば、上枠材13、下枠材14、及び、上枠材13と下枠材14とを継ぐ一対の縦枠材(図示省略)を含んで構成されている。これにより、枠体7は、正面視において、矩形状に形成されている。各枠材には、例えば、スチール等の金属、木質材又は樹脂等で形成されたものを採用することができる。なお、枠体7は、このような態様に限定されない。
【0030】
内装材8は、板状(パネル状)に形成されている。内装材8には、従来から知られているものを採用することができ、例えば、石膏ボードや、合板等を採用することができる。内装材8の居室19側の内面には、例えば、壁紙等(図示省略)が固着されてもよい。
【0031】
断熱材9は、枠体7の内部に配置されている。断熱材9には、従来から知られているものを採用することができ、例えば、繊維系断熱材(ロックウール及びグラスウール等)や、有機系断熱材(ポリスチレンフォーム、フェノールフォーム及びウレタンフォーム等)等を採用することができる。
【0032】
断熱材9と内装材8との間には、防湿気密層15が設けられてもよい。このような防湿気密層15は、居室19から建物外側に向かって流れる空気や湿気を遮断でき、外壁の内部で結露するのを防ぐことができる。防湿気密層15には、従来から知られているものを採用することができ、例えば、ポリエチレンシート等を採用することができる。
【0033】
第2部分4は、面材16、及び、タイル17を含んで構成されている。図2は、第2部分4及び第1部分3の外装材6の一例を示す斜視図である。
【0034】
図1及び図2に示されるように、面材16は、断熱材で構成されている。本実施形態の面材16は、板状(パネル状)に形成されている。面材16を構成する断熱材には、従来から知られているものを採用することができ、例えば、上述の有機系断熱材、炭酸カルシウム系断熱材及び熱硬化性樹脂系断熱材等を採用することができる。本実施形態では、不燃性を有する断熱材(例えば、炭酸カルシウム系断熱材)が採用されるのが望ましい。
【0035】
面材16は、第1部分3の外装材6の外側に固着されている。面材16の固着方法については、従来から知られている方法を採用することができ、例えば、接着剤23(図3に示す)が用いられる。接着剤23については、特に限定されないが、例えば、耐久性及び耐候性に優れる変成シリコン系接着剤が採用されるのが望ましい。なお、面材16の固着には、例えば、ビス等の固着具(図示省略)が用いられてもよい。
【0036】
タイル17は、面材16の外側に固着されている。タイル17には、従来から知られているものを採用することができ、例えば、陶器質、せっ器質及び磁器質等の陶磁器製のものを採用することができる。本実施形態のタイル17は、正面部分17a、背面部分17b、及び、側面部分17cを含んで構成されている。正面部分17aには、例えば、凹凸面や艶消し等(図示省略)が施されてもよい。
【0037】
本実施形態では、面材16の外側に、複数のタイル17が固着されている。図2に示されるように、複数のタイル17は、芋目地状に並べられているが、このような態様に限定されるわけではなく、例えば、馬目地状等に並べられてもよい。本実施形態では、垂直方向で隣り合うタイル17、17間、及び、水平方向で隣り合うタイル17、17間に、目地18が設けられている。タイル17の固定には、例えば、接着剤24(図4で色付けして示している)が用いられる。接着剤24には、従来から知られているものを採用することができ、例えば、シリコン系接着剤等を用いることができる。
【0038】
このように、本実施形態の外壁の構造1は、図1に示されるように、第1部分3の外側に、第2部分4が固着されるため、第1部分3(例えば、断熱材9(図1に示す))が有する断熱性能に、第2部分4の面材16が有する断熱性能を加えることができる。したがって、本実施形態の外壁の構造1は、断熱性能を効果的に高めることができる。さらに、本実施形態の外壁の構造1は、第2部分4の面材16により、第1部分3の建物外側が効果的に断熱されるため、第1部分3の内部において相対湿度が高くなるのを防ぐことができる。これにより、本実施形態では、外壁の内部で結露するのを防ぐことができる。
【0039】
そして、本実施形態の外壁の構造1は、面材16の建物外側を向く下地面16sに、支持部20が形成されている。本実施形態では、タイル17の一部が、支持部20と接触するように、タイル17が下地面16sに固着されている。
【0040】
本実施形態の支持部20は、第1支持部21を含んで構成されている。図2に示されるように、第1支持部21は、下地面16sから突出して水平方向に延びている。第1支持部21は、面材16と一体に形成されているが、面材16とは独立して形成されてもよい。
【0041】
本実施形態の第1支持部21は、一対の側面部21a、21aと、外面部21bとを含んで構成されている。一対の側面部21a、21aは、面材16の下地面16sから建物外側に延びている。外面部21b、一対の側面部21a、21aの建物外側の外端の間を垂直方向に延びている。これらの一対の側面部21a、21a及び外面部21bにより、第1支持部21は、断面略矩形状に形成されている。
【0042】
本実施形態では、第1支持部21の側面部21aに、タイル17の側面部分17c(垂直方向の下側の側面部分17c)が接触している。これにより、タイル17の荷重の一部が、第1支持部21によって支持される。したがって、本実施形態の外壁の構造1は、接着剤24(図4に示す)による接着力と、第1支持部21によるタイル17の荷重の支持とによって、タイル17が下地面16sに安定して固着されうる。
【0043】
第1支持部21は、垂直方向に複数設けられているのが望ましい。これにより、本実施形態の外壁の構造1は、垂直方向に並べられた複数のタイル17について、それらのタイル17の荷重の一部を、第1支持部21に支持させることができる。したがって、本実施形態の外壁の構造1では、垂直方向に並べられた複数のタイル17が、下地面16sに安定して固着されうる。
【0044】
第1支持部21は、垂直方向で隣り合うタイル17、17の間に形成される目地18(横目地18b)に対応する位置に設けられるのが望ましい。これにより、第1支持部21は、横目地18bに沿って、複数のタイル17を支持することができるため、タイル17の剥落を防ぎつつ、横目地18bを維持することができる。さらに、第1支持部21は、タイル17の側面部分17cとの当接により、タイル17の背面部分17bと、面材16の下地面16sとの間の接着剤24(図4に示す)が露出するのを抑えることができるため、例えば、紫外線による接着剤24の劣化を防ぐことができる。
【0045】
垂直方向で隣り合う一対の第1支持部21、21の間隔D1については、適宜設定することができる。本実施形態の間隔D1は、タイル17の垂直方向の長さL1と同一に設定されている。これにより、一対の第1支持部21、21の間に、タイル17を配置することができる。なお、本明細書において、寸法上の「同一」には、製造上の軽微なバラツキ(誤差)等が許容されるものとする。
【0046】
一方、一対の第1支持部21、21の間隔D1は、タイル17を圧入可能な程度に、タイル17の垂直方向の長さL1よりも小さく設定されてもよい。これにより、一対の第1支持部21は、タイル17を垂直方向から挟み込んで安定して保持することができる。
【0047】
第1支持部21の下地面16sからの高さH1については、適宜設定することができる。本実施形態の高さH1は、タイル17の厚さW1よりも小さく設定されている。これにより、第1支持部21が、タイル17の正面部分17aよりも建物外側に突出するのを防ぐことができるため、タイル17、17の間に形成される目地18(本例では、横目地18b)を形成することができる。
【0048】
第2部分4の目地18(縦目地18a及び横目地18b)には、目地材27(図5で色付けして示している)が充填されてもよい。目地材27には、従来から知られているものを採用することができ、例えば、セメント系や、モルタル系等の目地材を採用することができる。このような目地材27により、タイル17の剥落や、紫外線による接着剤24(図4に示す)の劣化を、より効果的に防ぐことができる。
【0049】
次に、建物の外壁のリフォーム方法(以下、単に「リフォーム方法」ということがある。)について説明する。本実施形態のリフォーム方法では、先ず、外装材6の外側に、断熱材からなる面材16を固着する(第1工程)。図3は、第1工程の一例を説明する斜視図である。
【0050】
本実施形態の第1工程では、先ず、第1部分3の外装材6の外面6sに、接着剤23を塗布する。次に、第1工程では、接着剤23が塗布された外装材6の外面6sに、面材16を押し付ける。これにより、第1工程では、外装材6の外側に、面材16を固着することができる。接着剤23については、上述のとおりである。
【0051】
接着剤23の塗布手順については、従来から知られている手順を採用することができる。本実施形態の接着剤23は、外装材6の外面6sに、例えば、紐状(ビード状)又は櫛目状に塗布される。接着剤23の厚さ(図示省略)については、適宜設定することができる。本実施形態では、外装材6の外面6sに形成された凹凸(図示省略)の大きさに応じて、接着剤23の厚さを大きくしている。これにより、面材16と外装材6との間において、外面6sの凹凸を接着剤23で吸収することができるため、例えば、モルタルを用いた不陸調整をしなくても、外装材6の外側に面材16を安定して固着することができる。
【0052】
次に、本実施形態のリフォーム方法では、面材16の外側にタイル17を固着する(第2工程)。図4は、第2工程の一例を説明する斜視図である。図4において、接着剤24を色付けして示している。
【0053】
第2工程では、先ず、面材16の下地面16sに、接着剤24が塗布される。本実施形態の第2工程では、下地面16sのみに接着剤24が塗布されているが、第1支持部21の側面部21aにも接着剤24が塗布されてもよい。接着剤24については、上述のとおりである。
【0054】
次に、第2工程では、接着剤24が塗布された面材16の下地面16sに、タイル17を固着する。第2工程では、垂直方向で隣り合うタイル17、17間、及び、水平方向で隣り合うタイル17、17間に、目地18(縦目地18a及び横目地18b)が設けられるように、タイル17を下地面16sに固着している。
【0055】
本実施形態の第2工程では、タイル17の一部が支持部20と接触するように、タイル17を下地面16sに固着している。本実施形態の支持部20は、下地面16sから突出して水平方向に延びている第1支持部21を含んでいる。このため、本実施形態の第2工程では、第1支持部21の側面部21aに、タイル17の側面部分(垂直方向に設けられた側面部分)17cが接触するように、タイル17の背面部分17bを下地面16sに固着している。これにより、第2工程では、タイル17の荷重の一部を、第1支持部21に支持させつつ、タイル17を、接着剤24を介して下地面16sに固着することができる。したがって、第2工程では、接着剤24が完全に硬化していない状態(即ち、接着剤24が接着力を完全に発揮できていない状態)においても、タイル17を下地面16sに安定して固着することができるため、施工性を高めることができる。
【0056】
本実施形態の第1支持部21は、垂直方向に複数設けられている。これにより、第2工程では、垂直方向に並べられた複数のタイル17について、それらのタイル17の荷重の一部を、第1支持部21にそれぞれ支持させることができる。したがって、第2工程では、接着剤24が完全に硬化していない状態においても、それらのタイル17を下地面16sに安定して固着することができるため、施工性を高めることができる。
【0057】
さらに、本実施形態の第1支持部21は、垂直方向で隣り合うタイル17、17の間に形成される目地18(横目地18b)に設けられている。これにより、第2工程では、横目地18bに沿って、複数のタイル17を第1支持部21に安定して支持させることができる。さらに、第1支持部21は、タイル17の垂直方向の位置決めとして構成することができる。したがって、本実施形態のリフォーム方法は、作業者の熟練を必要とすることなく、タイル17を下地面16sに短期間で固着することができる。
【0058】
一対の第1支持部21、21の間隔D1(図2に示す)が、タイル17を圧入可能な程度に、タイル17の垂直方向の長さL1(図2に示す)よりも小さく設定されている場合には、一対の第1支持部21、21に、タイル17を垂直方向から挟み込んで保持させることができる。これにより、第2工程では、タイル17を下地面16sに安定して固着することができる。
【0059】
本実施形態のリフォーム方法では、接着剤24が硬化することで、図1及び図2に示した外壁の構造1を形成することができ、外壁をリフォームすることができる。このように、本実施形態のリフォーム方法では、上記特許文献1のように、既存の外壁5(第1部分3)を除去しないため、既存の外壁5(第1部分3)を維持したまま、リフォームすることができる。したがって、本実施形態のリフォーム方法は、既存の外壁5(第1部分3)が有していた機能を低下させることがないため、居住者が建物2に住みながらリフォームすることができる。
【0060】
また、本実施形態のリフォーム方法では、既存の外壁5(第1部分3)が有する断熱性能に、面材16が有する断熱性能を加えることができる。したがって、本実施形態のリフォーム方法は、外壁の断熱性能を効果的に高めることができる。さらに、本実施形態のリフォーム方法では、第2部分4の面材16により、第1部分3の建物外側が効果的に断熱されるため、第1部分3の内部において相対湿度が高くなるのを防ぐことができる。これにより、本実施形態のリフォーム方法では、例えば、外壁の内部で結露するのを防ぐために、防湿気密層15(図1に示す)をより性能の高いものに交換する必要がないため、施工期間の短縮、及び、施工コストの低減を実現することができる。
【0061】
図5は、目地材27を充填する工程の一例を説明する斜視図である。図5において、目地材27を色付けして示している。本実施形態のリフォーム方法では、第2工程の後に、タイル17の目地18(縦目地18a及び横目地18b)に、目地材27が充填されてもよい。目地材27については、上述のとおりである。これにより、本実施形態のリフォーム方法は、タイル17の剥落や、紫外線による接着剤24の劣化を効果的に防ぐことが可能な外壁5にリフォームすることができる。
【0062】
これまでの実施形態では、支持部20に第1支持部21のみが含まれる態様が例示されたが、このような態様に限定されない。支持部20には、第2支持部がさらに含まれてもよい。図6は、本発明の他の実施形態の外壁の構造の一例を示す斜視図である。この実施形態において、これまでの実施形態と同一の構成については、同一の符号を付し、説明を省略することがある。
【0063】
第2支持部22は、下地面16sから突出して垂直方向に延びている。この実施形態の第2支持部22は、面材16に固定されている。なお、第2支持部22は、第1支持部21と同様に、面材16と一体に形成されてもよい。
【0064】
この実施形態の第2支持部22は、面材16に固定された状態において、面材16の下地面16sから突出している。第2支持部22は、第1支持部21と同様に、一対の側面部22a、22aと、外面部22bとを含んで構成されている。一対の側面部22a、22aは、面材16の下地面16sから建物外側に延びている。外面部22bは、一対の側面部22a、22aの建物外側の外端の間を水平方向に延びている。これらの一対の側面部22a、22a及び外面部22bにより、第2支持部22は、断面略矩形状に形成されている。
【0065】
第2支持部22は、タイル17の一部と接触している。この実施形態では、第2支持部22の側面部22aに、タイル17の側面部分17cが接触している。これにより、第2支持部22は、水平方向において、タイル17を位置決めすることができるため、タイル17の配列を長期に亘って維持することができる。
【0066】
第2支持部22は、水平方向に複数設けられているのが望ましい。これにより、この実施形態の外壁の構造1は、水平方向に並べられた複数のタイル17を位置決めすることができるため、タイル17の配列を長期に亘って維持することができる。
【0067】
第2支持部22は、水平方向で隣り合うタイル17、17の間に形成される目地18(縦目地18a)に対応する位置に設けられるのが望ましい。これにより、第2支持部22は、縦目地18aに沿って、複数のタイル17を位置決めすることができるため、縦目地18aを維持することができる。さらに、第2支持部22は、タイル17の背面部分17bと、面材16の下地面16sとの間の接着剤24(図4に示す)が露出するのを防ぐことができるため、例えば、紫外線による接着剤24の劣化を防ぐことができる。
【0068】
水平方向で隣り合う一対の第2支持部22、22の間隔D2については、第1支持部21の間隔D1と同様に、下地面16sに固着されるタイル17の水平方向の長さL2と同一に設定されるのが望ましい。一方、一対の第2支持部22、22の間隔D2は、タイル17を圧入可能な程度に、タイル17の水平方向の長さL2よりも小さく設定されてもよい。これにより、一対の第2支持部22は、タイル17を水平方向から挟み込んで保持することができる。
【0069】
第2支持部22の下地面16sからの高さH2については、第1支持部21と同様に、タイル17の厚さW1(図2に示す)よりも小さく設定されるのが望ましい。また、第2部分4の目地(縦目地18a及び横目地18b)には、目地材27(図5で色付けして示している)が充填されてもよい。目地材27については、上述のとおりである。
【0070】
図7は、面材16に第2支持部22を固着する第3工程の一例を説明する斜視図である。この実施形態の第2支持部22は、面材16に固定される前の状態において、基部25と、凸部26とを含んで構成されている。
【0071】
基部25は、板状に形成されており、垂直方向に延びている。この基部25の建物外側の外面が、第2支持部22の外面部22b(図6に示す)を構成している。基部25には、例えば、木質材、樹脂及びスチール等の金属等で形成されたものを採用することができる。
【0072】
凸部26は、基部25の厚さ方向の一方側に向かって、基部25から突出している。凸部26は、少なくとも1つ、本実施形態では複数設けられている。凸部26は、例えば、面材16や第1支持部21と同一の断熱材で構成することができるが、このような態様に限定されるわけではなく、例えば、基部25と同一の材質で一体に形成されてもよい。
【0073】
垂直方向で隣り合う凸部26の間隔D3については、適宜設定することができる。本実施形態の間隔D3は、第1支持部21の外面部21bの垂直方向の幅W2と同一、又は、やや大きく形成されている。これにより、第2支持部22は、凸部26を面材16側に向けた状態で、一対の凸部26、26間に第1支持部21を配置し、かつ、基部25の内面25iを、第1支持部21の外面部21bに接触させることができる。第2支持部22は、ビス等の固着具28を用いて、面材16に固着されている。固着具28は、基部25及び面材16を貫通して、外装材6まで到達する長さを有するのが望ましい。これにより、固着具28は、第2支持部22及び面材16を一体として、外装材6に固着することができる。
【0074】
次に、本発明の他の実施形態のリフォーム方法について説明する。この実施形態のリフォーム方法では、先ず、図3に示したように、外装材6の外側に、断熱材からなる面材16を固着する(第1工程)。第1工程の手順については、上述のとおりである。
【0075】
次に、この実施形態のリフォーム方法では、面材16の外側にタイル17を固着する第2工程に先立ち、面材16に、第2支持部22を固着する(第3工程)。なお、第2支持部22が面材16と一体に形成される場合、第3工程は省略される。
【0076】
図7に示されるように、第3工程では、先ず、第2支持部22の凸部26を、面材16側に向けた状態で、一対の凸部26、26間に第1支持部21を配置する。これにより、基部25の内面25iを、第1支持部21の外面部21bに接触させることができる。次に、第3工程では、面材16に、第2支持部22を、ビス等の固着具28で固着する。これにより、第3工程では、一対の側面部22a、22aと、外面部22bとを含む第2支持部22を、面材16に形成することができる。
【0077】
この実施形態の固着具28は、基部25及び面材16を貫通して、外装材6まで到達する長さを有している。これにより、第3工程では、第2支持部22及び面材16を一体として、外装材6に固着することができる。なお、第2支持部22と面材16との固着には、接着剤(図示省略)が用いられてもよい。
【0078】
第3工程では、第2支持部22を水平方向に複数設けられている。この実施形態の第3工程は、水平方向で隣り合うタイル17、17の間に形成される縦目地18a(図6に示す)に対応する位置に、第2支持部22を固着している。これにより、第3工程では、縦目地18a及び横目地18b(図6に示す)に対応する位置に、第1支持部21及び第2支持部22を形成することができる。
【0079】
次に、この実施形態のリフォーム方法では、面材16の外側にタイル17を固着する(第2工程)。第2工程では、これまでの実施形態と同様に、面材16の下地面16sに、接着剤24(図4に示す)が塗布される。第2工程では、第1支持部21の側面部21a、及び、第2支持部22の側面部22aにも、接着剤24が塗布されてもよい。
【0080】
次に、第2工程では、接着剤24(図4に示す)が塗布された面材16の下地面16sに、タイル17を固着する。この実施形態の第2工程では、タイル17の一部が支持部20と接触するように、タイル17を下地面16sに固着している。
【0081】
この実施形態の第2工程では、第1支持部21の側面部21a及び第2支持部22の側面部22aに、タイル17の側面部分17c(図6に示す)が接触するように、タイル17を下地面16sに固着している。これにより、第2工程では、図6に示されるように、タイル17の荷重の一部を、第1支持部21に支持させつつ、タイル17を下地面16sに固着することができる。
【0082】
図7に示されるように、第1支持部21及び第2支持部22は、図6に示した縦目地18a及び横目地18bに対応する位置にそれぞれ設けられているため、タイル17の垂直方向及び水平方向の位置決めとして構成することができる。したがって、この実施形態のリフォーム方法では、第1支持部21及び第2支持部22に、タイル17の一部を支持部20に接触させることで、タイル17を容易に位置決めすることができる。これにより、の実施形態のリフォーム方法では、作業者の熟練を必要とすることなく、タイル17を下地面16sに短期間で固着することができる。
【0083】
一対の第1支持部21、21の間隔D1(図2に示す)、及び、一対の第2支持部22、22の間隔D2(図6に示す)が、タイル17を圧入可能な程度に設定されている場合には、タイル17を垂直方向及び水平方向から挟み込んで保持させることができる。これにより、第2工程では、タイル17を下地面16sに安定して固着することができる。
【0084】
この実施形態のリフォーム方法では、第2工程の後に、タイル17の目地18(縦目地18a及び横目地18b)に、目地材27(図5に示す略)が充填されてもよい。目地材27については、上述のとおりである。
【0085】
これまでの実施形態の支持部20は、図4に示した第1支持部21のみが含まれる態様や、図7に示した第1支持部21と第2支持部22とが含まれる態様が例示されたが、このような態様に限定されない。支持部20は、例えば、第2支持部22のみが含まれていてもよい。
【0086】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例
【0087】
外装材を有する建物の外壁がリフォームされた(実施例)。実施例では、外装材の外側に、断熱材からなる面材を固着する第1工程と、面材の外側にタイルを固着する第2工程とが実施され、図1に示した構造を有する外壁にリフォームされた。実施例の第2工程では、タイルを、その一部が支持部と接触するように、断熱材の下地面に固着された。
【0088】
比較のために、外装材の外側に塗装のみを施した外壁リフォーム(比較例1)と、外装材の外側にタイルのみが固着された外壁リフォーム(比較例2)とがそれぞれ実施された。そして、リフォーム前の外壁、並びに、実施例、比較例1及び比較例2でリフォームされた外壁について、外壁内に設けられた外装材裏面での相対湿度及び温度がそれぞれ測定された。相対湿度及び温度は、省エネ基準地域区分の4地域及び6地域において測定された。共通仕様は、次のとおりである。
【0089】
室内:
温度:10℃
湿度:70%RH
4地域の外気:-1.5℃
6地域の外気:0.9℃
リフォーム前の外壁(第1部分):
外装材(スレート)
厚さ:6mm
熱伝導率:1.5W/mK
湿気伝導率:1.62ng/msPa
通気層:
厚さ:10mm
熱伝導率:0.09W/mK
断熱材(グラスウール16K):
厚さ:25mm
熱伝導率:0.045W/mK
湿気伝導率:170ng/msPa
防湿気密層(ポリエチレンシート):
厚さ:18μm
湿気伝導率:0.000947ng/msPa
内装材(合板):
厚さ:12mm
熱伝導率:0.16W/mK
湿気伝導率:1.11ng/msPa
実施例の面材(第2部分):
厚さ:50mm
熱伝導率:0.038W/mK
湿気伝導率:0.79114ng/msPa
テスト結果を表1に示す。
【0090】
【表1】
【0091】
テストの結果、実施例は、既存の外壁を維持したままリフォームすることができるため、居住者が建物に住みながらリフォームすることができた。また、実施例の外壁は、リフォーム前の外壁に比べて、外装材裏面の温度を高くすることができた。したがって、実施例は、外壁の断熱性能を高めることができた。
【0092】
実施例では、比較例1及び比較例2に比べて、外装材裏面の相対湿度を低くすることができ、外装材裏面での結露を防ぐことができた。
【0093】
さらに、実施例は、タイルの一部が支持部と接触するように、タイルを下地面に固着することができるため、支持部がタイルの位置決めや、支持として用いられることで、支持部が設けられていない比較例2に比べて、作業者の熟練を必要とすることなく、タイルを下地面に短期間で固着することができた。
【符号の説明】
【0094】
1 外壁の構造
7 外装材
16 面材
17 タイル
20 支持部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7