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  • 特許-化粧板 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-27
(45)【発行日】2023-01-11
(54)【発明の名称】化粧板
(51)【国際特許分類】
   B32B 13/00 20060101AFI20221228BHJP
   B32B 13/12 20060101ALI20221228BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20221228BHJP
【FI】
B32B13/00
B32B13/12
E04F13/08 F
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019035245
(22)【出願日】2019-02-28
(65)【公開番号】P2020138406
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】515301409
【氏名又は名称】アイカテック建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169960
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 貴光
(72)【発明者】
【氏名】山田 洋介
【審査官】櫛引 明佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-144068(JP,A)
【文献】特開2007-009473(JP,A)
【文献】特開平08-281897(JP,A)
【文献】特開2000-263736(JP,A)
【文献】特開2007-119295(JP,A)
【文献】特開2004-300682(JP,A)
【文献】特開2006-083269(JP,A)
【文献】特開2009-154474(JP,A)
【文献】特開平07-125114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
E04F 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面が平滑に形成されて繊維強化セメント板から成る押出成形セメント板上に、プライマー層、下地層及びパール層が下からこの順で積層され、
前記パール層のパール添加量は、0.5~1.0重量%に設定されていることを特徴とする化粧板。
【請求項2】
前記パール層上に、上塗層が積層されていることを特徴とする請求項1記載の化粧板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、石膏ボード、珪酸カルシウム板、繊維強化セメント板などの無機質板を基材とする内装材(化粧板)が知られている。押出成形セメント板は、セメント・珪酸カルシウム・無機質繊維を原料とし、中空板状に押出成形したパネルである。押出成形セメント板は、軽量でありながら、強度、耐候性、耐火性、耐震性に優れ、かつ美観と意匠性も兼ね備えた建築材料である。押出成形セメント板は、フラットな形状に限らず、押し出す際の口金の形状に応じて表面にリブ形状やエンボス模様を施すことが出来る等、設計の自由度が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-43185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の押出成型セメント板に意匠性を付与する場合には、その表面に単色塗装を施すのが一般的であった。
【0005】
そこで、化粧板に高い意匠性を付与するという解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明は、この課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る化粧板は、表面が平滑に形成されて繊維強化セメント板から成る押出成形セメント板上に、プライマー層、下地層及びパール層が下からこの順で積層され、前記パール層のパール添加量は、0.5~1.0重量%に設定されている。
【0007】
この構成によれば、パールが適量配合されたパール層を化粧板が備えていることにより、パール特有の光沢感を化粧板に付与することができる。
【0008】
また、本発明に係る化粧板は、前記パール層上に、上塗層が積層されていることが好ましい。
【0009】
この構成によれば、パール層上に上塗層を積層することにより、化粧板に奥行き感と光沢感を付与することができる。
【発明の効果】
【0011】
これまで単色塗装のみであった無機質板表面に、パール特有の光沢感という意匠性を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の化粧板の構成断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。なお、以下では、構成要素の数、数値、量、範囲等に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも構わない。
【0014】
また、構成要素等の形状、位置関係に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含む。
【0015】
また、図面は、特徴を分かり易くするために特徴的な部分を拡大する等して誇張する場合があり、構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。また、断面図では、構成要素の断面構造を分かり易くするために、一部の構成要素のハッチングを省略することがある。
【0016】
本発明に関わる化粧板1は、無機質系基材2上に、プライマー層3、下地層4及びパール層5が積層されている。
【0017】
無機質系基材2の材料は、セメント板、繊維強化セメント板、火山性ガラス質複層板、ケイ酸カルシウム板、ケイ酸マグネシウム板などがあげられ、これら基材は難燃性能が高く、強度に優れる。
【0018】
特に、無機質系基材2の材料としては、強度、耐衝撃性、寸法安定性に優れる繊維強化セメント板が好ましい。繊維強化セメント板は、セメントをマトリックスとし、補強繊維、シリカ粉末、顔料を配合し、水を加えて混錬した後、押出成形し、次いで、オートクレーブ養生することにより得ることができる。
【0019】
セメントは、特に限定されるものではなく、例えば、普通ポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント等の混合セメント、アルミナセメント等が挙げられる。
【0020】
補強繊維としては、ガラス繊維、カーボン繊維、ワラストナイトなどの無機繊維、パルプ繊維の如き天然有機繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ビニリデン繊維、アラミド繊維などの有機合成繊維が挙げられる。
【0021】
シリカ微粉末のシリカ成分は、オートクレーブ養生時にセメント中のカルシウム成分と水熱反応によりカルシウム・シリケート系の結晶質となって強度を向上させる。
【0022】
無機質系基材2の押出成形は、例えばスクリュー式押出成形機を用いて行う。オートクレーブ養生条件は、110~200℃、保持時間1~24時間とすれば、軽量かつ高強度の繊維強化セメント板になる。
【0023】
無機質系基材2の厚みは、強度、取扱易さから50mm~100mmが好ましい。また無機質系基材2の密度は、0.5~2.0g/cm3が好ましい。密度が下限に満たないとプライマー層2が吸い込まれやすく、上限を超えると重くなり取扱性が劣りやすくなる。
【0024】
無機質系基材2の表面は、サンドブラスト、ショットブラスト、ダイヤロール、サンドペーパーなどにより表面研削されて平滑に形成されている。
【0025】
無機質系基材2上に積層されたプライマー層3は、無機質系基材2のアルカリ成分が溶出することを防止する。プライマー層3は、無機質系基材2上にプライマー塗料を塗布して形成される。
【0026】
プライマー塗料は、ナイロン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、アクリル変性シリコーン樹脂、塩化ゴム樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂およびメラミン樹脂、アルキルシリケート又はその加水分解縮合物等が採用可能である。また、プライマー塗料には、隠蔽性を向上させるため酸化チタンを配合しても良い。
【0027】
プライマー塗料の塗布量は、膜厚で10~100μm程度であれば良く、公知のロールコーター、フローコーター、スプレー塗布などで行う。塗布量が下限に満たないと下地層4との密着が劣りやすく、上限を超えると発泡しやすく仕上がった製品の外観が劣りやすくなる。
【0028】
プライマー層3上には、下地層4が積層される。下地層4は、プライマー層3上に調色された下地塗料を塗布して形成される。
【0029】
下地塗料は、オルガノポリシロキサン系樹脂塗料、フッ素樹脂塗料、2液硬化型アクリルウレタン樹脂塗料、アクリル樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、ポリウレタン樹脂塗料、塩化ビニル樹脂塗料、塩化ビニリデン樹脂塗料、アクリルシリコーン樹脂塗料などが挙げられ、塗膜乾燥性、塗膜表面硬度、プライマー層3との密着性、塗膜の耐薬品性や耐汚染性を考慮して適宜選択する。
【0030】
下地塗料の塗布量は、膜厚で10~100μm程度であれば良く、公知のロールコーター、フローコーター、スプレー塗布などで行う。塗布量が下限に満たないとプライマー層3との密着が劣りやすく、上限を超えると発泡しやすく仕上がった製品の外観が劣りやすくなる。
【0031】
下地層4上には、パール層5が積層される。パール層5は、下地層4上にパールパウダーを適量配合したパール塗料を塗布して形成される。
【0032】
パール塗料は、オルガノポリシロキサン系樹脂塗料、フッ素樹脂塗料、2液硬化型アクリルウレタン樹脂塗料、アクリル樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、ポリウレタン樹脂塗料、塩化ビニル樹脂塗料、塩化ビニリデン樹脂塗料、アクリルシリコーン樹脂塗料などが挙げられ、塗膜乾燥性、塗膜表面硬度、下地層4との密着性、塗膜の耐薬品性や耐汚染性、さらにパールの分散度合を考慮して適宜選択する。
【0033】
パール塗料の塗布量は、膜厚で10~100μm程度であれば良く、公知のロールコーター、フローコーター、スプレー塗布などで行う。塗布量が下限に満たないと下地層4との密着が劣りやすく、上限を超えると発泡しやすく仕上がった製品の外観が劣りやすくなる。
【0034】
また、パールパウダーの添加量は、パール層5がパール特有の光沢感を得られ、且つパールがパール層5内で沈降しない範囲内で任意に調整可能である。なお、パール層5は半透明であるため、下地層4の色調に応じて化粧板1の発色を調整することができる。
【0035】
パール層5上には、化粧板1の耐薬品性を向上させる目的で上塗層6を積層するのが好ましい。また、上塗層6を積層することにより、パール層5に奥行き感を付与できる。上塗層6は、パール層5上に上塗塗料を塗布して形成される。
【0036】
上塗塗料は、オルガノポリシロキサン系樹脂塗料、フッ素樹脂塗料、2液硬化型アクリルウレタン樹脂塗料、アクリル樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、ポリウレタン樹脂塗料、塩化ビニル樹脂塗料、塩化ビニリデン樹脂塗料、アクリルシリコーン樹脂塗料などが挙げられ、塗膜乾燥性、塗膜表面硬度、パール層5との密着性、塗膜の耐薬品性や耐汚染性を考慮して適宜選択する。
【0037】
上塗塗料の塗布量は、膜厚で10~100μm程度であれば良く、公知のロールコーター、フローコーター、スプレー塗布などで行う。塗布量が下限に満たないとパール層5との密着が劣りやすく、上限を超えると発泡しやすく仕上がった製品の外観が劣りやすくなる。
【実施例
【0038】
次に、本発明に係る実施例及び比較例を挙げて詳細に説明する。
【0039】
[実施例1]
実施例1に係る化粧板1は、以下の手順で構築される。
[無機質系基材(繊維強化セメント板)]
押出成型セメント板としてメース(登録商標)MHN-6060A(アイカテック建材(株)製、厚み60mm)を用意する。
【0040】
[プライマー層]
無機質系基材2の表面をダイヤロール、サンドペーパーにより研削し、プライマー層3の膜厚を30~40μmとなるようにプライマー塗料をスプレーで無機質系基材2上に塗布した後に、150℃で20分乾燥した。
・主剤:#130プライマーIII(AGCコーテック(株)製、エポキシ樹脂系)
・硬化剤:#130プライマーIII(AGCコーテック(株)製、アミン系)
・混合比: 主剤:硬化剤=4:1
【0041】
[下地層]
下地層4の膜厚を30~40μmとなるように下地塗料をスプレーでプライマー層3上に塗布した後に、150℃で20分乾燥した。
・主剤:ボンフロンGT5200主剤(AGCコーテック(株)製、フッ素系樹脂)
・硬化剤:ボンフロンGT5200硬化剤(AGCコーテック(株)製、イソシアネート系)
・混合比: 主剤:硬化剤=13:1
【0042】
[パール層]
パール層5の膜厚を30~40μmとなるようにパール塗料をスプレーで下地層4上に塗布した後に、150℃で20分乾燥した。
・主剤:ボンフロン5200パールA(AGCコーテック(株)製、フッ素系樹脂)、パール添加量1.0%
・硬化剤:ボンフロン5200パールA硬化剤(AGCコーテック(株)製、イソシアネート系)
・混合比: 主剤:硬化剤=13:1
【0043】
[実施例2]
実施例2に係る化粧板1は、実施例1のパール層5上に以下の上塗層6を積層したものであり、それ以外は実施例1と同様に実施した。
【0044】
[上塗層]
上塗層6の膜厚を30~40μmとなるように上塗塗料をスプレーでパール層5上に塗布した後に、150℃で20分乾燥した。
・主剤:ボンフロン5200クリヤー主剤(AGCコーテック(株)製、フッ素系樹脂)
・硬化剤:ボンフロン5200クリヤー硬化剤(AGCコーテック(株)製、イソシアネート系)
・混合比: 主剤:硬化剤=13:1
【0045】
[実施例3]
実施例3に係る化粧板1は、実施例1のパール添加量を0.5%に設定したものであり、それ以外は実施例1と同様に実施した。
【0046】
[実施例4]
実施例4に係る化粧板1は、実施例3のパール層5上に実施例2と同様の上塗層6を積層したものであり、それ以外は実施例3と同様に実施した。
【0047】
[実施例5]
実施例5に係る化粧板1は、実施例1のパール添加量を10%に設定したものであり、それ以外は実施例1と同様に実施した。
【0048】
[実施例6]
実施例6に係る化粧板1は、実施例5のパール層5上に実施例2と同様の上塗層6を積層したものであり、それ以外は実施例5と同様に実施した。
【0049】
実施例1~6の比較対象として以下の比較例1~6を用意した。
【0050】
[比較例1]
比較例1は、実施例1のプライマー層3を省略したものであり、それ以外は実施例1と同様に実施した。
【0051】
[比較例2]
比較例2は、実施例2のプライマー層3を省略したものであり、それ以外は実施例2と同様に実施した。
【0052】
[比較例3]
比較例3は、実施例1のパール添加量を0.2%に設定したものであり、それ以外は実施例1と同様に実施した。
【0053】
[比較例4]
比較例4は、実施例2のパール添加量を0.2%に設定したものであり、それ以外は実施例2と同様に実施した。
【0054】
[比較例5]
比較例5は、実施例1のパール添加量を15%に設定したものであり、それ以外は実施例1と同様に実施した。
【0055】
[比較例6]
比較例6は、実施例2のパール添加量を15%に設定したものであり、それ以外は実施例2と同様に実施した。
【0056】
実施例1~6及び比較例1~6の評価結果を表1に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
なお、実施例1~6及び比較例1~6に対する試験方法、評価方法は以下の通りである。
【0059】
[外観試験]
目視にて割れやフクレ等の外観異常がないかを確認し、外観の異常が無ければ○、異常があれば×とした。
[密着性試験]
JIS K5600-5-4に準拠したクロスカット法で行った。4mm間隔の25マスで剥離が生じていなければ○、剥離が生じていれば×とした。
【0060】
表1によれば、実施例1~6については、外観試験及び密着性試験において異常は見当たらなかった。一方、比較例3~6より、パール添加量には品質上好ましい範囲が存在することが分かる。具体的には、上述したパール層の成分において、パール添加量が0.2%まで低下するとパール特有の光沢感が乏しくなり、一方で、パール添加量が15%まで増大するとパール層内で過剰なパール沈降して塗装不良が生じる。
【符号の説明】
【0061】
1 ・・・ 化粧板
2 ・・・ 無機質系基材
3 ・・・ プライマー層
4 ・・・ 下地層
5 ・・・ パール層
6 ・・・ 上塗層
図1