(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-27
(45)【発行日】2023-01-11
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04014 20160101AFI20221228BHJP
F24F 13/30 20060101ALI20221228BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20221228BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20221228BHJP
H01M 8/04089 20160101ALI20221228BHJP
H01M 8/0432 20160101ALI20221228BHJP
H01M 8/043 20160101ALI20221228BHJP
B60L 50/72 20190101ALI20221228BHJP
B60L 58/33 20190101ALI20221228BHJP
【FI】
H01M8/04014
F24F13/30
H01M8/00 Z
H01M8/04 Z
H01M8/04089
H01M8/0432
H01M8/043
B60L50/72
B60L58/33
(21)【出願番号】P 2019043575
(22)【出願日】2019-03-11
【審査請求日】2022-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野崎 雄一郎
【審査官】笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-251521(JP,A)
【文献】特開2006-240475(JP,A)
【文献】国際公開第2013/161010(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04014
F24F 13/30
H01M 8/00
H01M 8/04
H01M 8/04089
H01M 8/0432
H01M 8/043
B60L 50/72
B60L 58/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池と、
空調装置用コンデンサと、
電気系用ラジエータと、
前記燃料電池の冷却に用いられる冷媒を冷却する燃料電池用ラジエータと、
外気を吸入するコンプレッサと、
熱交換器と、
を備え、
前記コンプレッサは、前記燃料電池へ供給される空気の通風路に設けられ、
前記熱交換器は、前記通風路の前記コンプレッサより下流側に設けられ、
前記空調装置用コンデンサ又は前記電気系用ラジエータの少なくともいずれかは、前記通風路の前記コンプレッサより上流側に配置される、
車両。
【請求項2】
前記コンプレッサの動作を制御する制御装置をさらに備え、
前記コンプレッサは、エアベアリングを有し、
前記制御装置は、前記燃料電池が発電中であるか否かに関わらず前記コンプレッサを駆動させる、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記燃料電池の発電中に前記コンプレッサを駆動させる制御装置をさらに備え、
前記制御装置は、前記燃料電池における発電の停止時であっても、前記空調装置用コンデンサ及び前記電気系用ラジエータのうち前記通風路に配置されたものである冷却対象に対して冷却要求があった場合、前記コンプレッサを駆動させる、請求項1に記載の車両。
【請求項4】
前記制御装置は、前記冷却対象の現在の温度と、前記冷却対象の目標温度との差の大きさに応じて前記コンプレッサの動作を制御する、請求項3に記載の車両。
【請求項5】
前記燃料電池用ラジエータに接続される冷媒流路を流通する前記冷媒と、前記熱交換器を流通する前記空気との間で熱交換が行われ、
前記冷媒流路には前記冷媒を送出するポンプが設けられ、
前記制御装置は、前記燃料電池における発電の停止中、かつ、前記コンプレッサの駆動中に前記ポンプを駆動させる、請求項2~4のいずれか1項に記載の車両。
【請求項6】
前記燃料電池用ラジエータに風を供給するファンをさらに備え、
前記制御装置は、前記燃料電池における発電の停止中、かつ、前記コンプレッサの駆動中に前記燃料電池に流入する前記空気の温度と相関関係を有する指標値が基準値以下となるように前記ファンの動作を制御する、請求項5に記載の車両。
【請求項7】
前記空調装置用コンデンサ及び前記電気系用ラジエータのうち、少なくとも前記空調装置用コンデンサが前記通風路の前記コンプレッサより上流側に配置される、請求項1~6のいずれか1項に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料電池を搭載した車両が開発されている。このような車両は、空調装置用コンデンサと、電気系用ラジエータと、燃料電池の冷却に用いられる冷媒を冷却する燃料電池用ラジエータとを備える(例えば、特許文献1を参照)。ここで、電気系用ラジエータが冷却する対象は、例えば、車両の駆動輪を駆動するモータ、バッテリ、又はDC/DCコンバータ等である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、燃料電池の発電効率は、燃料電池の温度によって変化する。したがって、燃料電池の発電効率を高めるためには、燃料電池の発電効率が高くなるように燃料電池の温度を適切に制御することが望ましい。しかし、燃料電池の温度を適切に制御することが困難となる場合がある。
【0005】
例えば、空調装置用コンデンサ、電気系用ラジエータ及び燃料電池用ラジエータがフロントグリルの内側に重なって配置されている車両では、燃料電池用ラジエータの周囲の通風抵抗が大きくなりやすい。また、このような車両では、空調装置用コンデンサや電気系用ラジエータの排熱の影響を燃料電池用ラジエータが受けることがある。このような場合、燃料電池の温度を十分に下げることが困難となる場合がある。
【0006】
また、例えば、空調装置用コンデンサ、電気系用ラジエータ及び燃料電池用ラジエータがフロントグリルの内側に重なって配置されている車両において、空調装置用コンデンサ、電気系用ラジエータ及び燃料電池用ラジエータに風を供給するための共通のファンが設けられることがある。このような場合、燃料電池用ラジエータに風を供給する必要がないときにファンが駆動され、燃料電池の温度が過度に低下することがある。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、燃料電池の温度を適切に制御することが可能な、新規かつ改良された車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、燃料電池と、空調装置用コンデンサと、電気系用ラジエータと、前記燃料電池の冷却に用いられる冷媒を冷却する燃料電池用ラジエータと、外気を吸入するコンプレッサと、熱交換器と、を備え、前記コンプレッサは、前記燃料電池へ供給される空気の通風路に設けられ、前記熱交換器は、前記通風路の前記コンプレッサより下流側に設けられ、前記空調装置用コンデンサ又は前記電気系用ラジエータの少なくともいずれかは、前記通風路の前記コンプレッサより上流側に配置される、車両が提供される。
【0009】
前記コンプレッサの動作を制御する制御装置をさらに備え、前記コンプレッサは、エアベアリングを有し、前記制御装置は、前記燃料電池が発電中であるか否かに関わらず前記コンプレッサを駆動させてもよい。
【0010】
前記燃料電池の発電中に前記コンプレッサを駆動させる制御装置をさらに備え、前記制御装置は、前記燃料電池における発電の停止時であっても、前記空調装置用コンデンサ及び前記電気系用ラジエータのうち前記通風路に配置されたものである冷却対象に対して冷却要求があった場合、前記コンプレッサを駆動させてもよい。
【0011】
前記制御装置は、前記冷却対象の現在の温度と、前記冷却対象の目標温度との差の大きさに応じて前記コンプレッサの動作を制御してもよい。
【0012】
前記燃料電池用ラジエータに接続される冷媒流路を流通する前記冷媒と、前記熱交換器を流通する前記空気との間で熱交換が行われ、前記冷媒流路には前記冷媒を送出するポンプが設けられ、前記制御装置は、前記燃料電池における発電の停止中、かつ、前記コンプレッサの駆動中に前記ポンプを駆動させてもよい。
【0013】
前記燃料電池用ラジエータに風を供給するファンをさらに備え、前記制御装置は、前記燃料電池における発電の停止中、かつ、前記コンプレッサの駆動中に前記燃料電池に流入する前記空気の温度と相関関係を有する指標値が基準値以下となるように前記ファンの動作を制御してもよい。
【0014】
前記空調装置用コンデンサ及び前記電気系用ラジエータのうち、少なくとも前記空調装置用コンデンサが前記通風路の前記コンプレッサより上流側に配置されてもよい。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように本発明によれば、燃料電池の温度を適切に制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る車両の概略構成を示す模式図である。
【
図2】同実施形態に係る車両の制御装置が行う処理の流れを示すフローチャートである。
【
図3】本発明の第2の実施形態に係る車両の概略構成を示す模式図である。
【
図4】同実施形態に係る車両の制御装置が行う処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0018】
<1.第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態に係る車両1について説明する。
【0019】
(1-1.車両の構成)
まず、
図1を参照しながら、本実施形態に係る車両1の概略構成について説明する。
図1は、本実施形態に係る車両1の概略構成を示す模式図である。
【0020】
図1に示されるように、車両1は、燃料電池10と、空調装置用コンデンサ20と、電気系用ラジエータ30と、燃料電池用ラジエータ40と、コンプレッサ60と、熱交換器70とを備える。コンプレッサ60は、燃料電池10へ供給される空気の通風路50に設けられている。また、熱交換器70は、通風路50のコンプレッサ60より下流側に設けられている。また、空調装置用コンデンサ20又は電気系用ラジエータ30の少なくともいずれかは、通風路50のコンプレッサ60より上流側に配置されている。さらに、車両1は、ポンプ42と、ファン80と、温度センサ72と、制御装置100とを備える。
【0021】
本実施形態では、通風路50のコンプレッサ60より上流側に配置される対象は、空調装置用コンデンサ20である。したがって、
図1に白抜きの矢印で示されるように、通風路50に吸入された空気は、上流側から順に、空調装置用コンデンサ20、コンプレッサ60及び熱交換器70を経由し、燃料電池10へ供給される。
【0022】
燃料電池10は、燃料ガスとしての水素ガス及び酸化ガスとしての空気を反応させて発電を行う。燃料電池10は、具体的には、燃料極と、空気極と、燃料極及び空気極により挟まれる電解質膜とを備える。燃料極に水素ガスが供給され、空気極に空気が供給されることにより、各電極において反応が進行する。それにより、燃料電池10における発電が実現される。燃料電池10により発電された電力は、例えば、車両1の駆動輪を駆動するモータ等の車両1に搭載される各装置へ供給される。
【0023】
燃料電池10には、燃料電池10へ供給される空気の通路である通風路50が接続されている。通風路50には外気吸入口50aが設けられている。燃料電池10へ供給される空気は、外気吸入口50aから取り込まれる。具体的には、外気吸入口50aには、異物を取り除くフィルターが設けられている。
【0024】
空調装置用コンデンサ20は、車両1の空調装置に用いられる冷媒を冷却する装置である。空調装置用コンデンサ20は、上記の冷媒が循環する冷媒循環路上に設けられる。このような冷媒循環路上には、空調装置用コンプレッサ、膨張弁及びエバポレータがさらに設けられ、周知の空調処理が行われる。すなわち、空調装置用コンプレッサにより圧縮された冷媒が空調装置用コンデンサ20において外気と熱交換して冷却され、当該冷却された冷媒が膨張弁により膨張された後にエバポレータにおいて気化してエバポレータ周辺の空気を冷却し、当該冷却された空気が車両1の車室に送出されることで車両1の空調が実現される。空調装置用コンデンサ20における冷媒の冷却は、コンプレッサ60により通風路50に吸入された外気が空調装置用コンデンサ20の近傍を通過することにより効果的に行われる。
【0025】
コンプレッサ60は、通風路50に外気を吸入し、吸入した外気を圧縮して通風路50の下流側へ吐出する。コンプレッサ60は、例えば、電動モータを備え、当該電動モータにより駆動される。コンプレッサ60は、具体的には、エアベアリング62と、エアベアリング62により支持される羽根車64とを有する。ここで、通風路50には、通風路50を流れる空気の一部をエアベアリング62へ還流させるための還流路52が設けられている。還流路52は、通風路50の熱交換器70より下流側と、エアベアリング62とを接続する。通風路50を流れる空気の一部が還流路52を介してエアベアリング62へ供給されることにより、エアベアリング62と羽根車64との間に空気膜が発生する。それにより、エアベアリング62による羽根車64の回転支持及び羽根車64の高速回転が可能となる。なお、エアベアリング62へ空気が供給されない場合、エアベアリング62と羽根車64とが接触する。エアベアリング62と羽根車64とが接触する回数が増えると、コンプレッサ60の寿命が縮まるおそれがある。したがって、エアベアリング62を有するコンプレッサ60を備える車両1では、後述するように、燃料電池10が発電中であるか否かに関わらずコンプレッサ60を駆動させる処理が行われる。
【0026】
熱交換器70は、コンプレッサ60から吐出された空気を冷却する装置である。後述する冷媒流路44bを流通する冷媒と、熱交換器70を流通する空気との間で熱交換が行われる。上記の熱交換が行われることにより、コンプレッサ60で圧縮されることにより温度が上昇した空気が冷却される。このように熱交換器70で冷却された空気は、燃料電池10へ送られる。
【0027】
電気系用ラジエータ30は、車両1に搭載される機器であって、電気による発熱を伴う機器(例えば、車両1の駆動輪を駆動するモータ、バッテリ、又はDC/DCコンバータ等)の冷却に用いられる冷媒を冷却する装置である。電気系用ラジエータ30は、上記の冷媒が循環する冷媒循環路上に設けられる。このような冷媒循環路上には、ポンプがさらに設けられる。電気系用ラジエータ30において外気と熱交換して冷却された冷媒がポンプにより送出され、当該冷媒と上記の機器との間で熱交換が行われることにより、上記の機器の冷却が実現される。
【0028】
燃料電池用ラジエータ40は、燃料電池10の冷却に用いられる冷媒を冷却する装置である。燃料電池用ラジエータ40には、燃料電池10の冷却に用いられる冷媒が流通する冷媒流路44が接続される。冷媒流路44は、燃料電池10の近傍を通る冷媒流路44aと、熱交換器70の近傍を通る冷媒流路44bとを含む。冷媒流路44には、冷媒流路44を流通する冷媒を送出するポンプ42が設けられる。ポンプ42は、例えば、電動モータを備え、当該電動モータにより駆動される。燃料電池用ラジエータ40において外気と熱交換して冷却された冷媒は、ポンプ42により送出される。冷媒流路44aを流通する冷媒と燃料電池10との間で熱交換が行われることにより、燃料電池10の冷却が実現される。また、上述したように、冷媒流路44bを流通する冷媒と、熱交換器70を流通する空気との間で熱交換が行われることにより、コンプレッサ60で圧縮されることにより温度が上昇した空気が冷却される。
【0029】
電気系用ラジエータ30及び燃料電池用ラジエータ40は、フロントグリルの内側に車両1の進行方向に沿って配置されている。電気系用ラジエータ30及び燃料電池用ラジエータ40には、車両1の走行時に車外から流入する走行風が当たる。ここで、車両1には、電気系用ラジエータ30及び燃料電池用ラジエータ40に風を供給するファン80が設けられている。ファン80は、例えば、電動モータを備え、当該電動モータにより駆動される。ファン80により供給される風が電気系用ラジエータ30及び燃料電池用ラジエータ40の近傍を通過することにより、電気系用ラジエータ30及び燃料電池用ラジエータ40における冷媒の冷却が効果的に行われる。
【0030】
温度センサ72は、燃料電池10に流入する空気の温度を検出し、検出結果を制御装置100へ出力する。
【0031】
制御装置100は、ポンプ42、コンプレッサ60及びファン80に対して動作指令を出力し、ポンプ42、コンプレッサ60及びファン80の動作を制御する。このような制御装置100による制御については詳細に後述する。
【0032】
制御装置100は、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)、CPUが使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する記憶素子であるROM(Read Only Memory)及びCPUの実行において適宜変化するパラメータ等を一時記憶する記憶素子であるRAM(Random Access Memory)等で構成される。
【0033】
また、制御装置100は、車両1に搭載される各装置と通信を行う。制御装置100と各装置との通信は、例えば、CAN(Controller Area Network)通信を用いて実現される。例えば、制御装置100は、ポンプ42、コンプレッサ60、ファン80及び温度センサ72と通信を行う。制御装置100が有する機能は複数の制御装置により分割されてもよく、その場合、当該複数の制御装置は、CAN等の通信バスを介して、互いに接続されてもよい。また、制御装置100は、下記で説明する以外の他の機能を追加的に有していてもよい。
【0034】
上記のように、本実施形態に係る車両1では、空調装置用コンデンサ20が通風路50に配置されている。したがって、例えば、空調装置用コンデンサ20、電気系用ラジエータ30及び燃料電池用ラジエータ40がフロントグリルの内側にまとめて配置される場合に比べて、燃料電池用ラジエータ40の周囲の通風抵抗を減少させることができる。また、空調装置用コンデンサ20の排熱による燃料電池用ラジエータ40への影響を抑制することができる。それにより、燃料電池用ラジエータ40の冷却性能の低下を抑制することができる。
【0035】
また、本実施形態に係る車両1では、空調装置用コンデンサ20が通風路50に配置されるため、空調装置用コンデンサ20を冷却するためにファン80を駆動させことが必要となる状況がなくなる。したがって、燃料電池用ラジエータ40を冷却する必要がないときにファン80が駆動され、燃料電池用ラジエータ40が過度に冷却されることを抑制することができる。
【0036】
(1-2.車両の動作)
続いて、
図2を参照しながら、車両1の動作について説明する。
図2は、本実施形態に係る車両1の制御装置100が行う処理の流れを示すフローチャートである。
図2に示される制御フローは、繰り返される。
【0037】
図2に示される制御フローが開始されると、まず、ステップS101において、制御装置100は、燃料電池10を発電させるか否かを判定する。燃料電池10を発電させると判定された場合(ステップS101/YES)、ステップS101の判定処理が繰り返される。一方、燃料電池10を発電させないと判定された場合(ステップS101/NO)、ステップS103へ進む。
【0038】
例えば、制御装置100は、車両1の駆動輪を駆動するモータへ供給する電力の要求値等に基づいて、燃料電池10を発電させるか否かを判定する。上記の要求値は、例えば、アクセル開度等の各パラメータを用いて計算される。
【0039】
制御装置100は、燃料電池10を発電させる場合、燃料電池10へ酸化ガスとしての空気を供給するためにコンプレッサ60を駆動させる。また、制御装置100は、燃料電池10へ燃料ガスとしての水素ガスを供給させる。それにより、燃料電池10における発電が実現される。また、制御装置100は、燃料電池10における発電を停止させる場合、燃料電池10に対する燃料ガスとしての水素ガスの供給を基本的には停止させる。それにより、燃料電池10における発電が停止される。なお、制御装置100は、燃料電池10における発電を停止させる場合、燃料電池10へ微量の水素ガスを供給することにより燃料電池10をアイドリングさせてもよい。また、制御装置100は、燃料電池10の発電中には、燃料電池10を冷却するためにポンプ42及びファン80を燃料電池10の温度に応じて駆動させる。
【0040】
ここで、制御装置100は、燃料電池10が発電中であるか否かに関わらずコンプレッサ60を駆動させる。それにより、還流路52を介してエアベアリング62に空気が供給され、エアベアリング62と羽根車64との間に空気膜が発生する。したがって、燃料電池10が発電中であるか否かに関わらずエアベアリング62と羽根車64とが接触し、エアベアリング62の寿命が縮まるおそれを低減することができる。
【0041】
コンプレッサ60が駆動されることにより、通風路50には外気が吸入される。したがって、燃料電池10が発電中であるか否かに関わらず空調装置用コンデンサ20の近傍を空気が通過し、車両1の空調装置に用いられる冷媒が効果的に冷却される。
【0042】
また、制御装置100は、燃料電池10における発電の停止中であっても、ポンプ42を駆動させる。ポンプ42が駆動されることにより、燃料電池用ラジエータ40で冷却された冷媒が冷媒流路44内を循環し、冷媒流路44bを流通する冷媒と、熱交換器70を流通する空気との間で熱交換が行われる。したがって、コンプレッサ60が駆動されている燃料電池10における発電の停止中であっても、燃料電池10に流入する空気の温度が高くなり過ぎることを抑制することができる。
【0043】
ステップS103において、制御装置100は、燃料電池10に流入する空気の温度が基準値より高いか否かを判定する。燃料電池10に流入する空気の温度が基準値より高いと判定された場合(ステップS103/YES)、ステップS105へ進む。一方、燃料電池10に流入する空気の温度が基準値より高くないと判定された場合(ステップS103/NO)、ステップS107へ進む。
【0044】
上記の基準値は、具体的には、燃料電池10に流入する空気の温度が熱による燃料電池10の損耗が生じ得る程度に高いか否かを判断し得る値に設定される。
【0045】
なお、ステップS103における燃料電池10に流入する空気の温度は、本発明に係る燃料電池10に流入する空気の温度と相関関係を有する指標値の一例に相当する。ただし、燃料電池10に流入する空気の温度と相関関係を有する指標値は、このような例に特に限定されない。例えば、燃料電池10に流入する空気の温度と相関関係を有する指標値は、熱交換器70の温度であってもよい。
【0046】
ステップS105において、制御装置100は、ファン80を駆動させる。ファン80が駆動されることにより、燃料電池用ラジエータ40を流通する冷媒の冷却が促進される。それにより、指標値を基準値以下にすることができる。
【0047】
一方、ステップS107において、制御装置100は、ファン80を停止させる。それにより、ファン80が不必要に駆動されることを抑制することができる。
【0048】
このように、制御装置100は、燃料電池10における発電の停止中、かつ、コンプレッサ60の駆動中に燃料電池10に流入する空気の温度と相関関係を有する指標値が基準値以下となるようにファン80の動作を制御する。それにより、燃料電池10に流入する空気の温度が高くなり過ぎることをより適切に抑制することができる。
【0049】
ステップS105又はステップS107の後、
図2に示される制御フローは終了する。
【0050】
(1-3.車両の効果)
続いて、本実施形態に係る車両1の効果について説明する。
【0051】
本実施形態に係る車両1は、燃料電池10と、空調装置用コンデンサ20と、電気系用ラジエータ30と、燃料電池用ラジエータ40とを備え、空調装置用コンデンサ20又は電気系用ラジエータ30の少なくともいずれか(例えば、空調装置用コンデンサ20)は、通風路50のコンプレッサ60より上流側に配置される。それにより、燃料電池用ラジエータ40の周囲の通風抵抗を減少させることができる。また、空調装置用コンデンサ20や電気系用ラジエータ30の排熱による燃料電池用ラジエータ40への影響を抑制することができる。また、燃料電池用ラジエータ40に風を供給する必要がないときにファン80が駆動され、燃料電池10の温度が過度に低下することを抑制することができる。したがって、燃料電池10の温度を適切に制御することができる。具体的には、燃料電池10の発電効率が高くなるように燃料電池10の温度を制御することができる。
【0052】
なお、本実施形態に係る車両1では、コンプレッサ60が駆動されることにより、通風路50には外気が吸入される。それにより、空調装置用コンデンサ20及び電気系用ラジエータ30のうち通風路50に配置されたもの(例えば、空調装置用コンデンサ20)を通風路50に吸入された外気によって適切に冷却することができる。
【0053】
好ましくは、車両1では、コンプレッサ60は、エアベアリング62を有し、制御装置100は、燃料電池10が発電中であるか否かに関わらずコンプレッサ60を駆動させる。それにより、燃料電池10が発電中でない場合であっても、エアベアリング62と羽根車64とが接触し、エアベアリング62の寿命が縮まるおそれを低減することができる。また、燃料電池10が発電中であるか否かに関わらず駆動しているコンプレッサ60を有効に利用して、空調装置用コンデンサ20及び電気系用ラジエータ30のうち通風路50に配置されたもの(例えば、空調装置用コンデンサ20)を適切に冷却することができる。
【0054】
好ましくは、車両1では、制御装置100は、燃料電池10における発電の停止中、かつ、コンプレッサ60の駆動中にポンプ42を駆動させる。それにより、燃料電池10における発電の停止中、かつ、コンプレッサ60の駆動中に燃料電池10に流入する空気の温度が高くなり過ぎることを抑制することができる。
【0055】
好ましくは、車両1では、制御装置100は、燃料電池10における発電の停止中、かつ、コンプレッサ60の駆動中に燃料電池10に流入する空気の温度と相関関係を有する指標値が基準値以下となるようにファン80の動作を制御する。それにより、燃料電池10における発電の停止中、かつ、コンプレッサ60の駆動中に、燃料電池10に流入する空気の温度が高くなり過ぎることをより適切に抑制することができる。
【0056】
好ましくは、車両1では、空調装置用コンデンサ20及び電気系用ラジエータ30のうち、少なくとも空調装置用コンデンサ20が通風路50のコンプレッサ69より上流側に配置される。一般的に、空調装置用コンデンサ20に強制的に風を供給することが要求される頻度は、電気系用ラジエータ30に強制的に風を供給することが要求される頻度よりも高い。したがって、空調装置用コンデンサ20が通風路50のコンプレッサ60より上流側に配置されることにより、燃料電池用ラジエータ40に風を供給する必要がないときにファン80が駆動され、燃料電池10の温度が過度に低下することを抑制することができる。したがって、燃料電池の温度をより適切に制御することができる。
【0057】
<2.第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態に係る車両2について説明する。以下では、基本的に、第1の実施形態の説明と重複する内容は省略し、第1の実施形態との差分について説明する。
【0058】
(2-1.車両の構成)
まず、
図3を参照しながら、本実施形態に係る車両2の概略構成について説明する。
図3は、本実施形態に係る車両2の概略構成を示す模式図である。本実施形態に係る車両2では、上述した車両1と比較して、コンプレッサの構成について異なる。
【0059】
図3に示されるように、車両2は、車両1のコンプレッサ60に代えて、コンプレッサ69を備える。ここで、コンプレッサ69は、上述したコンプレッサ60と異なり、通風路50を流れる空気の一部を還流させることなく羽根車を支持可能なベアリング(例えば、転がり軸受等)を有する。したがって、車両2では、車両1と異なり通風路50を流れる空気の一部をエアベアリングへ還流させるための還流路が省略されている。なお、コンプレッサ69におけるベアリング以外の部分の構成については、上述したコンプレッサ60と同様であるので、ここでの詳細な説明を省略する。
【0060】
(2-2.車両の動作)
続いて、
図4を参照しながら、車両2の動作について説明する。
図4は、本実施形態に係る車両2の制御装置100が行う処理の流れを示すフローチャートである。
図4に示される制御フローは、繰り返される。
【0061】
図4に示される制御フローが開始されると、まず、ステップS101において、制御装置100は、燃料電池10を発電させるか否かを判定する。燃料電池10を発電させると判定された場合(ステップS101/YES)、ステップS101の判定処理が繰り返される。一方、燃料電池10を発電させないと判定された場合(ステップS101/NO)、ステップS201へ進む。
【0062】
制御装置100は、第1の実施形態と同様に、燃料電池10を発電させる場合、燃料電池10へ酸化ガスとしての空気を供給するためにコンプレッサ69を駆動させる。また、制御装置100は、燃料電池10へ燃料ガスとしての水素ガスを供給させる。それにより、燃料電池10における発電が実現される。また、制御装置100は、燃料電池10における発電を停止させる場合、燃料電池10に対する燃料ガスとしての水素ガスの供給を基本的には停止させる。それにより、燃料電池10における発電が停止される。なお、制御装置100は、燃料電池10における発電を停止させる場合、燃料電池10へ微量の水素ガスを供給することにより燃料電池10をアイドリングさせてもよい。また、制御装置100は、燃料電池10の発電中には、燃料電池10を冷却するためにポンプ42及びファン80を燃料電池10の温度に応じて駆動させる。
【0063】
ここで、制御装置100は、第1の実施形態と異なり、燃料電池10における発電の停止時に、後述する空調装置用コンデンサ20に対する冷却要求の有無に応じてコンプレッサ69及びポンプ42を制御する。
【0064】
ステップS201において、制御装置100は、空調装置用コンデンサ20に対して冷却要求があるか否かを判定する。空調装置用コンデンサ20に対して冷却要求があると判定された場合(ステップS201/YES)、ステップS203へ進む。一方、空調装置用コンデンサ20に対して冷却要求がないと判定された場合(ステップS201/NO)、ステップS205へ進む。
【0065】
例えば、制御装置100は、空調装置の動作を制御する空調制御装置(空調ECU)から出力される情報に基づいて、空調装置用コンデンサ20に対して冷却要求があるか否かを判定する。例えば、制御装置100は、空調装置の冷媒循環路上に設けられた空調装置用コンプレッサを駆動させる旨の情報を空調ECUから取得した場合、空調装置用コンデンサ20に対する冷却要求があると判定する。
【0066】
ステップS203において、制御装置100は、コンプレッサ69及びポンプ42を駆動させる。コンプレッサ69が駆動されることにより、通風路50に外気が吸入される。通風路50に外気が吸入されることにより、通風路50に配置された空調装置用コンデンサ20の近傍を空気が通過する。したがって、燃料電池10における発電の停止時であっても、空調装置用コンデンサ20に対して冷却要求がある場合、車両1の空調装置に用いられる冷媒が効果的に冷却される。
【0067】
ここで、制御装置100は、空調装置用コンデンサ20の現在の温度と、空調装置用コンデンサ20の目標温度との差の大きさに応じてコンプレッサ69の動作を制御することが好ましい。空調装置用コンデンサ20の目標温度とは、空調装置用コンデンサ20がその温度になった状態で空調装置が動作した場合に、車両2の車室がドライバの要求する温度になる温度である。制御装置100は、空調装置用コンデンサ20の現在の温度と、空調装置用コンデンサ20の目標温度との差の大きさが大きいほどコンプレッサ69の出力を増加させる。それにより、通風路50に吸入される外気の量を空調装置用コンデンサ20の現在の温度と、空調装置用コンデンサ20の目標温度との差の大きさに見合った量にすることができる。
【0068】
図4に示される制御フローでは、ステップS203の後、ステップS103へ進む。
【0069】
ステップS103において、制御装置100は、燃料電池10に流入する空気の温度が基準値より高いか否かを判定する。燃料電池10に流入する空気の温度が基準値より高いと判定された場合(ステップS103/YES)、ステップS105へ進む。一方、燃料電池10に流入する空気の温度が基準値より高くないと判定された場合(ステップS103/NO)、ステップS107へ進む。
【0070】
ステップS105において、制御装置100は、ファン80を駆動させる。
【0071】
ステップS107において、制御装置100は、ファン80を停止させる。
【0072】
ステップS205において、制御装置100は、コンプレッサ69、ポンプ42及びファン80の駆動を停止させる。
【0073】
ステップS105、ステップS107又はステップS205の後、
図4に示される制御フローは終了する。
【0074】
上記では、空調装置用コンデンサ20が通風路50のコンプレッサ69より上流側に配置される場合について、制御装置100が行う処理の流れを説明した。ここで、電気系用ラジエータ30が通風路50のコンプレッサ69より上流側に配置される場合には、制御装置100は、燃料電池10における発電の停止時に、電気系用ラジエータ30に対して冷却要求があった場合にコンプレッサ69を駆動させる。このような場合、制御装置100は、電気系用ラジエータ30の現在の温度と、電気系用ラジエータ30の目標温度との差の大きさに応じてコンプレッサ69の動作を制御することが好ましい。電気系用ラジエータ30の目標温度とは、電気系用ラジエータ30がその温度になった状態で、電気系用ラジエータ30が設けられた冷媒循環路を冷媒が循環したときに、当該冷媒により冷却される機器が適切に冷却される温度である。また、空調装置用コンデンサ20及び電気系用ラジエータ30が通風路50のコンプレッサ69より上流側に配置される場合には、制御装置100は、燃料電池10における発電の停止時に、空調装置用コンデンサ20及び電気系用ラジエータ30のうちいずれかに対して冷却要求があった場合にコンプレッサ69を駆動させる。つまり、制御装置100は、燃料電池10における発電の停止時であっても、空調装置用コンデンサ20及び電気系用ラジエータ30のうち通風路50に配置されたものである冷却対象に対して冷却要求があった場合、コンプレッサ69を駆動させる。また、制御装置100は、上記の冷却対象の現在の温度と、冷却対象の目標温度との差の大きさに応じてコンプレッサ69の動作を制御することが好ましい。
【0075】
(2-3.車両の効果)
続いて、本実施形態に係る車両2の効果について説明する。
【0076】
本実施形態に係る車両2では、制御装置100は、燃料電池10における発電の停止時であっても、空調装置用コンデンサ20及び電気系用ラジエータ30のうち通風路50に配置されたものである冷却対象(例えば、空調装置用コンデンサ20)に対して冷却要求があった場合、コンプレッサ69を駆動させる。コンプレッサ69が駆動されることにより、通風路50には外気が吸入される。それにより、冷却対象(例えば、空調装置用コンデンサ20)の近傍を空気が通過する。したがって、車両2においても車両1と同様に、燃料電池10における発電の停止時に、冷却対象(例えば、空調装置用コンデンサ20)を適切に冷却することができる。
【0077】
好ましくは、車両2では、制御装置100は、冷却対象(例えば、空調装置用コンデンサ20)の現在の温度と、当該冷却対象の目標温度との差の大きさに応じてコンプレッサ69の動作を制御する。それにより、通風路50に吸入される外気の量を冷却対象の現在の温度と、冷却対象の目標温度との差の大きさに見合った量にすることができる。
【0078】
<3.むすび>
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0079】
例えば、本明細書においてフローチャートを用いて説明した処理は、必ずしもフローチャートに示された順序で実行されなくてもよい。いくつかの処理ステップは、並列的に実行されてもよい。また、追加的な処理ステップが採用されてもよく、一部の処理ステップが省略されてもよい。
【0080】
また、例えば、上記実施形態では、熱交換器70の近傍に冷媒流路44bが設けられ、冷媒流路44bを流通する冷媒と、熱交換器70を流通する空気との間で熱交換が行われる例について説明したが、熱交換器70の近傍に冷媒流路が設けられず、熱交換器70の周囲の外気と、熱交換器70を流通する空気との間で熱交換が行われてもよい。
【符号の説明】
【0081】
1 車両
10 燃料電池
20 空調装置用コンデンサ
30 電気系用ラジエータ
40 燃料電池用ラジエータ
42 ポンプ
50 通風路
60,69 コンプレッサ
70 熱交換器
72 温度センサ
80 ファン
100 制御装置