(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-27
(45)【発行日】2023-01-11
(54)【発明の名称】車両用電源装置
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20221228BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20221228BHJP
【FI】
H02J7/00 N
B60L3/00 S
H02J7/00 P
(21)【出願番号】P 2019047381
(22)【出願日】2019-03-14
【審査請求日】2022-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100147913
【氏名又は名称】岡田 義敬
(74)【代理人】
【識別番号】100165423
【氏名又は名称】大竹 雅久
(74)【代理人】
【識別番号】100091605
【氏名又は名称】岡田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100197284
【氏名又は名称】下茂 力
(72)【発明者】
【氏名】中川 功
【審査官】下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-288899(JP,A)
【文献】特開2015-070627(JP,A)
【文献】特開2010-213500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 - 13/00
B60L 15/00 - 58/40
H01M 10/42 - 10/48
H02H 3/08 - 3/253
H02H 5/00 - 6/00
B60R 21/00 - 21/03
B60R 21/34 - 21/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリと、
電力供給正極ラインおよび電力供給負極ラインを有する電力供給ラインと、
前記電力供給ラインを介して、前記バッテリと接続されたパワーコントロールユニットと、
前記電力供給正極ラインに介装された第1メインスイッチと、
前記電力供給負極ラインに介装された第2メインスイッチと、
前記電力供給正極ラインと前記電力供給負極ラインとをバイパスするバイパスラインに直列接続されたプリチャージ用抵抗および抵抗用スイッチと、
前記電力供給ラインに介装され、前記バッテリから前記パワーコントロールユニットに電力が供給される電力供給状態と、前記電力の供給が遮断される遮断状態と、をとることができるサービスプラグと、を具備し、
前記サービスプラグが前記遮断状態となれば、前記抵抗用スイッチを導通状態とすることで、前記バッテリから前記プリチャージ用抵抗に電流を流すことを特徴とする車両用電源装置。
【請求項2】
前記サービスプラグが前記遮断状態となれば、前記サービスプラグが備える放電用抵抗に電流が流れることを特徴とする請求項1に記載の車両用電源装置。
【請求項3】
前記バッテリの充放電を制御する電源制御装置を具備し、
前記電源制御装置は、前記バッテリから前記プリチャージ用抵抗に電流を流す時間が一定以上となれば、
前記バッテリから前記プリチャージ用抵抗への電流の供給を遮断し、前記バッテリから前記電源制御装置に電流を供給することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用電源装置。
【請求項4】
前記バッテリの充放電を制御する電源制御装置を具備し、
前記電源制御装置は、前記バッテリの電圧が所定未満となれば、
前記バッテリから前記プリチャージ用抵抗への電流の供給を遮断し、前記バッテリから前記電源制御装置に電流を供給することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用電源装置。
【請求項5】
前記電源制御装置は、前記バッテリと共に車両から取り外し可能であることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の車両用電源装置。
【請求項6】
前記サービスプラグは、車両の前後方向に沿って変位可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1から請求項5の何れかに記載の車両用電源装置。
【請求項7】
前記第1メインスイッチ、前記第2メインスイッチおよび前記抵抗用スイッチは、各々が、リレーから成ることを特徴とする請求項1から請求項6の何れかに記載の車両用電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用電源装置に関し、特に、廃棄時または事故発生時に効果的にバッテリを放電することができる車両用電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用車等の車両として、ハイブリッド自動車や電気自動車が登場してきており、これらの車両には大型のバッテリが搭載されている。係るバッテリの構成は、例えば、特許文献1ないし特許文献5に記載されている。
【0003】
車両の廃棄に伴いバッテリを処分する際には、環境保護や安全保障のために一定の規則に従ってバッテリを放電する放電作業を行う必要がある。一般的には、この放電作業では、バッテリを車両から取り外し、取り外したバッテリを放電装置に接続し、放電装置の負荷にてバッテリの電力を吸収することで、バッテリの電圧が一定以下になるまで放電させる。
【0004】
また、ハイブリッド自動車や電気自動車に衝突事故が発生した際にも、乗員や救助者等を感電から保護するために、バッテリの放電作業が必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-164709号公報
【文献】特開平8-107601号公報
【文献】特開平4-145808号公報
【文献】特開2006-224772号公報
【文献】特開2006-246569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、整備工場に於いて、バッテリを車両から外して放電装置に接続することは、数百キログラムの重量体であるバッテリの移動を伴う重労働であるため、作業効率を向上することが簡単でない課題があった。
【0007】
また、バッテリの無力化のために専用の放電装置を利用すると、放電装置の導入や維持管理コストが発生するため、車両の廃棄コストを押し上げてしまう課題があった。
【0008】
更には、放電装置に接続することでバッテリの電圧を下げることは可能であるが、放電装置に備えられた負荷は、比較的抵抗値が高いものであるため、バッテリを完全に無力化することは簡単でない課題があった。
【0009】
更に、衝突事故が発生した際、バッテリを無力化するために、放電装置を持ち込んでバッテリを無力化させることは、事故発生時に救助活動が必要な場合があることを考慮すると現実的でない課題もあった。
【0010】
本発明は、このような問題点を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、簡素な構成で確実にバッテリを放電することができる車両用電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の車両用電源装置は、バッテリと、電力供給正極ラインおよび電力供給負極ラインを有する電力供給ラインと、前記電力供給ラインを介して、前記バッテリと接続されたパワーコントロールユニットと、前記電力供給正極ラインに介装された第1メインスイッチと、前記電力供給負極ラインに介装された第2メインスイッチと、前記電力供給正極ラインと前記電力供給負極ラインとをバイパスするバイパスラインに直列接続されたプリチャージ用抵抗および抵抗用スイッチと、前記電力供給ラインに介装され、前記バッテリから前記パワーコントロールユニットに電力が供給される電力供給状態と、前記電力の供給が遮断される遮断状態と、をとることができるサービスプラグと、を具備し、前記サービスプラグが前記遮断状態となれば、前記抵抗用スイッチを導通状態とすることで、前記バッテリから前記プリチャージ用抵抗に電流を流すことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の車両用電源装置では、前記サービスプラグが前記遮断状態となれば、前記サービスプラグが備える放電用抵抗に電流が流れることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の車両用電源装置では、前記バッテリの充放電を制御する電源制御装置を具備し、前記電源制御装置は、前記バッテリから前記プリチャージ用抵抗に電流を流す時間が一定以上となれば、前記バッテリから前記プリチャージ用抵抗への電流の供給を遮断し、前記バッテリから前記電源制御装置に電流を供給することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の車両用電源装置では、前記バッテリの充放電を制御する電源制御装置を具備し、前記電源制御装置は、前記バッテリの電圧が所定未満となれば、前記バッテリから前記プリチャージ用抵抗への電流の供給を遮断し、前記バッテリから前記電源制御装置に電流を供給することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の車両用電源装置では、前記電源制御装置は、前記バッテリと共に車両から取り外し可能であることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の車両用電源装置では、前記サービスプラグは、車両の前後方向に沿って変位可能に取り付けられていることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の車両用電源装置では、前記第1メインスイッチ、前記第2メインスイッチおよび前記抵抗用スイッチは、各々が、リレーから成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の車両用電源装置は、バッテリと、電力供給正極ラインおよび電力供給負極ラインを有する電力供給ラインと、前記電力供給ラインを介して、前記バッテリと接続されたパワーコントロールユニットと、前記電力供給正極ラインに介装された第1メインスイッチと、前記電力供給負極ラインに介装された第2メインスイッチと、前記電力供給正極ラインと前記電力供給負極ラインとをバイパスするバイパスラインに直列接続されたプリチャージ用抵抗および抵抗用スイッチと、前記電力供給ラインに介装され、前記バッテリから前記パワーコントロールユニットに電力が供給される電力供給状態と、前記電力の供給が遮断される遮断状態と、をとることができるサービスプラグと、を具備し、前記サービスプラグが前記遮断状態となれば、前記抵抗用スイッチを導通状態とすることで、前記バッテリから前記プリチャージ用抵抗に電流を流すことを特徴とする。これにより、本発明の車両用電源装置によれば、バッテリを廃棄する際または車両事故が発生した際に、サービスプラグが遮断状態となれば、抵抗用スイッチを導通状態とすることで、バッテリからプリチャージ用抵抗に電流が流れる。これにより、バッテリ放電用の専用設備にバッテリを接続することなく、バッテリを放電することができる。
【0019】
また、本発明の車両用電源装置では、前記サービスプラグが前記遮断状態となれば、前記サービスプラグが備える放電用抵抗に電流が流れることを特徴とする。これにより、本発明の車両用電源装置によれば、サービスプラグが備える放電用抵抗に電流が流れることで、放電時における放電用回路の全体的な抵抗値を増加させることができ、より効率的に放電することができる。
【0020】
また、本発明の車両用電源装置では、前記バッテリの充放電を制御する電源制御装置を具備し、前記電源制御装置は、前記バッテリから前記プリチャージ用抵抗に電流を流す時間が一定以上となれば、前記バッテリから前記プリチャージ用抵抗への電流の供給を遮断し、前記バッテリから前記電源制御装置に電流を供給することを特徴とする。これにより、本発明の車両用電源装置によれば、一定時間が経過した後に、バッテリから電源制御装置に電流を流すことで、バッテリをより確実に放電することができる。
【0021】
また、本発明の車両用電源装置では、前記バッテリの充放電を制御する電源制御装置を具備し、前記電源制御装置は、前記バッテリの電圧が所定未満となれば、前記バッテリから前記プリチャージ用抵抗への電流の供給を遮断し、前記バッテリから前記電源制御装置に電流を供給することを特徴とする。これにより、本発明の車両用電源装置によれば、バッテリの電圧が所定以下となった後に、バッテリから電源制御装置に電流を流すことで、バッテリをより確実に放電することができる。
【0022】
また、本発明の車両用電源装置では、前記電源制御装置は、前記バッテリと共に車両から取り外し可能であることを特徴とする。これにより、本発明の車両用電源装置によれば、電源制御装置をバッテリと共に車両から取り外して廃棄できるので、廃棄後であってもバッテリを放電することができる。
【0023】
また、本発明の車両用電源装置では、前記サービスプラグは、車両の前後方向に沿って変位可能に取り付けられていることを特徴とする。これにより、本発明の車両用電源装置によれば、サービスプラグが前後方向に沿って変位可能であることで、車両に衝突事故が発生した際に、バッテリ等が前方に移動することで、サービスプラグが遮断状態に成り、バッテリを放電することができる。よって、車両衝突事故が発生した際に、人力による操作がなくても、バッテリを放電することができる。更には、車両の整備時に於いて、メカニックが手動でサービスプラグに衝撃を与えることで、バッテリを放電することができる。
【0024】
また、本発明の車両用電源装置では、前記第1メインスイッチ、前記第2メインスイッチおよび前記抵抗用スイッチは、各々が、リレーから成ることを特徴とする。これにより、本発明の車両用電源装置によれば、簡素な構成で各スイッチを構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施の形態に係る車両用電源装置を示す図であり、(A)は車両用電源装置を備えた車両を示す斜視図であり、(B)は車両用電源装置を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る車両用電源装置を示す回路図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る車両用電源装置を示す図であり、(A)は電源制御装置等の接続構成を示すブロック図であり、(B)および(C)はサービスプラグの構成を示す模式図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る車両用電源装置を用いてバッテリを放電する方法を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の実施の形態に係る車両用電源装置の走行状態を示す回路図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係る車両用電源装置の放電状態を示す回路図である。
【
図7】本発明の実施の形態に係る車両用電源装置の、他の放電状態を示す回路図である。
【
図8】本発明の実施の形態に係る車両用電源装置を示す図であり、(A)および(B)は電池パックとサービスプラグとの構成を示す模式図であり、(C)は衝突時の車両を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態に係る車両用電源装置10を図面に基づき詳細に説明する。
【0027】
図1(A)は、車両用電源装置10を搭載した車両30を説明する斜視図である。
図1(B)は、車両30の接続構成を示すブロック図である。
【0028】
図1(A)に示す如く、自動車や電車等の車両30には、モータや様々な電装部品に電力を供給するための車両用電源装置10が搭載されている。車両30が自動車の場合には、近年、EV(Electric Vehicle)車、HEV(Hybrid Electric Vehicle)車やPHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)車等が普及している。そして、これらの車両30にも、高い蓄電機能を有した車両用電源装置10が搭載されている。
【0029】
車両30は、車体31と、車両30の底面38の近傍に規定されたバッテリ配置領域32に配設された車両用電源装置10と、車両用電源装置10から供給される電力により駆動されるモータ23(
図1(B)参照)と、モータの駆動力で回転するタイヤ(図示せず)と、を有している。ここで、バッテリ配置領域32は、底面38以外の領域に配置することも可能であり、例えば、後部座席の後方にバッテリ配置領域32を設定することもできる。
【0030】
図1(B)に示す如く、本実施形態では、バッテリ11と、パワーコントロールユニット15とを有する。バッテリ11は、例えば、リチウムイオンバッテリやニッケル水素バッテリであり、板状の複数のバッテリセルから構成される。
【0031】
パワーコントロールユニット15は、バッテリ11から供給される直流電力を所定の周波数の交流電力に変換するインバータ回路を有している。パワーコントロールユニット15で生成された交流電力によりモータ23は回転し、これにより車両30のタイヤが回転する。
【0032】
図2は車両用電源装置10を示すブロック図である。車両用電源装置10では、バッテリ11とパワーコントロールユニット15とは、電力供給ライン14を介して接続している。電力供給ライン14は、バッテリ11の正極と接続する電力供給正極ライン12と、バッテリ11の負極と接続する電力供給負極ライン13と、を有する。
【0033】
電力供給正極ライン12には第1メインスイッチ16が介装されており、電力供給負極ライン13には第2メインスイッチ17が介装されている。第1メインスイッチ16および第2メインスイッチ17が導通状態となることで、バッテリ11からパワーコントロールユニット15に直流電力が供給される。一方、第1メインスイッチ16および第2メインスイッチ17が遮断状態となることで、バッテリ11からパワーコントロールユニット15へ直流電力は供給されない。第1メインスイッチ16および第2メインスイッチ17としては、例えばリレー(システム・メイン・リレー)が採用される。リレーを採用することで、小さな制御電力で大電流のスイッチングを行うことができる。係る事項は、後述する他のスイッチに関しても同様である。
【0034】
電力供給正極ライン12と電力供給負極ライン13と間には、バイパスライン18が形成されている。バイパスライン18には、プリチャージ用抵抗19と抵抗用スイッチ20とが直列に接続されている。プリチャージ用抵抗19は、プリチャージの為の抵抗であり、プリチャージ用スイッチ24を介してパワーコントロールユニット15と接続している。抵抗用スイッチ20は、プリチャージ用抵抗19を用いてバッテリ11を放電するためのスイッチである。ここで、プリチャージとは、バッテリ11とパワーコントロールユニット15とを接続し、パワーコントロールユニット側コンデンサ部への充電を行う際に、第1メインスイッチ16および第2メインスイッチ17へ突入電流が流れて接点が溶着しないように予備充電することである。
【0035】
電力供給負極ライン13には、サービスプラグ21が介装されている。サービスプラグ21は、バッテリ11からパワーコントロールユニット15に電力が供給される電力供給状態と、電力の供給が遮断される遮断状態と、をとることができる。電力供給状態と遮断状態との切替は、サービスプラグ21を変位させることで行うことができる。例えば、サービスプラグ21をスライドさせることで、電力供給状態と遮断状態とを切り替えることができる。また、サービスプラグ21には、放電用抵抗25が内蔵されている。放電用抵抗25は、サービスプラグ21が電力供給状態の際には、電力供給負極ライン13に接続されていない。一方、放電用抵抗25は、サービスプラグ21が遮断状態の際には、電力供給負極ライン13に接続される。また、サービスプラグ21には、NTCサーミスタも内蔵されており、後述するように、放電時に於いてNTCサーミスタの抵抗値が一定以上に大きくなったら、放電用回路を切り替えている。
【0036】
電源制御装置22は、バッテリ11の正極および負極を含む全バッテリセルに接続されている。電源制御装置22は、BCU(Battery Control Unit)とも称され、車両用電源装置10の各部位の動作を制御する。上記した各スイッチの導通および遮断は、電源制御装置22が制御する。
【0037】
図3を参照して、上記した電源制御装置22およびサービスプラグ21を詳述する。
図3(A)は電源制御装置22を詳しく示すブロック図であり、
図3(B)は電力供給状態のサービスプラグ21を示す模式図であり、
図3(C)は遮断状態のサービスプラグ21を示す模式図である。
【0038】
図3(A)を参照して、電源制御装置22は、電圧検出回路33、放電回路34および放電切替回路35を有する。また、電源制御装置22はコネクタ27を介してバッテリ11と接続される。更に、電源制御装置22はコネクタ28を介してサービスプラグ21と接続される。
【0039】
電圧検出回路33は、バッテリ11を構成する全てのバッテリセルの電圧を検出する回路である。放電切替回路35は、後述するように、バッテリ11の放電時間または放電に伴う電圧変化に基づいて、電力の径路を切り替える回路である。放電回路34は、上記したプリチャージ用抵抗19よりも抵抗値が小さい抵抗を備えており、バッテリ11の追加的な放電を行う回路である。
【0040】
図3(B)を参照して、サービスプラグ21は、サービスプラグベース37とサービスプラググリップ36とを有する。サービスプラググリップ36は、サービスプラグベース37に対してスライド移動可能に組み合わされている。
図3(B)には、通常走行を行う状態、即ちバッテリ11からパワーコントロールユニット15に電力が供給される電力供給状態を示している。ここで、車両制御装置26は、サービスプラググリップ36の内部回路を経由して導通している。車両制御装置26は、ECU(Electric Control Unit)とも称される。
【0041】
図3(C)に、遮断状態、即ち放電状態のサービスプラグ21を示している。サービスプラググリップ36を紙面上に於いて左方にスライドさせることで、
図3(B)に示す走行状態から
図3(C)に示す放電状態に移行される。放電状態では、電源制御装置22の内部の放電用抵抗25(
図2参照)に導通可能になる。
【0042】
図4に基づいて、上記した各図および
図5ないし
図8も参照しつつ、本実施形態の車両用電源装置10を用いたバッテリ11の放電方法を説明する。
図4は放電方法を示すフローチャートであり、
図5は通常走行状態(電力供給状態)における車両用電源装置10の動作を示し、
図6は放電の前半段階における車両用電源装置10の動作を示し、
図7は放電の後半段階における車両用電源装置10の動作を示し、
図8はサービスプラグ21の挙動を示している。
【0043】
図5を参照して、通常走行状態(電力供給状態)では、電力供給正極ライン12および電力供給負極ライン13から成る電力供給ライン14を介して、バッテリ11から直流電力がパワーコントロールユニット15に供給される。パワーコントロールユニット15は、直流電力を所定の周波数の交流電力に変換し、この交流電力を
図1(B)に示したモータ23に供給する。
【0044】
図5では、導通状態となっているスイッチにハッチングを付しており、遮断状態となっているスイッチにはハッチングを付していない。ここでは、第1メインスイッチ16および第2メインスイッチ17が導通状態であり、抵抗用スイッチ20およびプリチャージ用スイッチ24が遮断状態である。係るハッチングに関する事項は、
図6および
図7に関しても同様である。また、サービスプラグ21は導通状態となっており、サービスプラグ21は電力供給負極ライン13を流れる電力を遮断しない。
【0045】
次に、ステップS10では、サービスプラグ21が導通状態から遮断状態に遷移するように操作される。サービスプラグ21の操作は、乗員、作業員または救助者が行っても良い。更には、後述するように、車両30が衝突したことにより生じる衝撃により、サービスプラグ21が変位しても良い。
【0046】
図8を参照して、車両30に衝突事故が発生した際の衝撃を用いてサービスプラグ21を操作する方法を説明する。
図8(A)は走行時に於けるバッテリパック29とサービスプラグ21の構成を示す上面図であり、
図8(B)は衝突事故が発生することで遮断状態(放電状態)となったバッテリパック29およびサービスプラグ21を示す上面図であり、
図8(C)は衝突事故が発生した車両30を示す側面図である。
【0047】
先ず、
図8(A)に示すように、車両30の走行状態ではサービスプラグ21の前端部分は、バッテリパック29の前面よりも前方に配置されている。ここで、サービスプラグ21は前後方向に変位することで、導通状態から遮断状態に遷移する。
【0048】
図8(C)に示すように、車両30に後方から他の車両40が衝突すると、バッテリパック29を前方に移動させようとする力が作用する。
【0049】
これにより、
図8(B)を参照して、バッテリパック29が前方に向かって移動する一方、サービスプラグ21は例えばシートバック等の車体側部品の一部と接触して、サービスプラグ21がバッテリパック29に押し込まれる形となる。これにより、サービスプラグ21を、
図5に示す電力供給状態から、
図6に示す遮断状態に移行できる。
【0050】
ステップS11では、サービスプラグ21の12V系のインターロック回路を遮断し、放電切替回路35が導通する。具体的には、サービスプラグ21の状態を、
図3(B)に示す走行状態から、
図3(C)に示す放電状態に移行する。これにより、ステップS12に於いて、インターロック回路遮断と放電切替導通を示す信号が、電源制御装置22および車両制御装置26に入力される。
【0051】
ステップS13では、
図6を参照して、電源制御装置22の指示に基づいて、第1メインスイッチ16および第2メインスイッチ17が遮断状態とされる。また、ステップS14では、電源制御装置22の指示に基づいて、抵抗用スイッチ20が導通状態となる。この時、サービスプラグ21に内蔵された放電用抵抗25が、電力供給負極ライン13に介装されている。このようにすることで、ステップS15では、プリチャージ用抵抗19および放電用抵抗25を電流が通過することで、バッテリ11が放電される。また、ステップS15では、サービスプラグ21が温度上昇することで、サービスプラグ21に内蔵されるNTCサーミスタも温度上昇することで抵抗値が下がり、放電が進行する。
【0052】
ここで、本実施形態では、プリチャージ用抵抗19および放電用抵抗25を用いて放電を行っているが、プリチャージ用抵抗19のみに電流を通過させることで放電を進行させることもできる。更には、放電用抵抗25のみに電流を通過させることで放電を進行させることもできる。
【0053】
ステップS16では、上記した放電を続けると、プリチャージ用抵抗19および放電用抵抗25を通過する電流が少なくなることで、サービスプラグ21の温度が低下する。よって、ステップS17では、NTCサーミスタも温度低下することで抵抗値が上がり、徐々にバッテリ11の放電ができなくなる。
【0054】
ステップS18では、電源制御装置22は、
図3(A)に示した電圧検出回路33にて、バッテリ11の電池セルの電圧をモニタし、その電圧が閾値である2V未満であるか否かを判断する。電源制御装置22は、その電圧が2V未満であれば、即ちステップS18がYESであれば、ステップS19に移行する。一方、電源制御装置22は、その電圧が2V以上であれば、即ちステップS18がNOであれば、ステップS15に戻り、放電を続行する。ステップS19では、電源制御装置22の放電切替回路35でもバッテリ11の電池セルの電圧をモニタすることで、より正確なモニタが可能となる。
【0055】
ステップS20では、電源制御装置22は、モニタした電圧が一定未満となったことで放電用回路を切り替える。具体的には、
図7に示すように、電源制御装置22は、第1メインスイッチ16、第2メインスイッチ17および抵抗用スイッチ20を遮断状態とする。そして、電源制御装置22は、バッテリ11からの電流を電源制御装置22の内部抵抗に流す。具体的には、
図3(A)を参照して、電源制御装置22の放電切替回路35が、バッテリ11からの電流を、放電回路34に流す。
【0056】
電源制御装置22の内部抵抗の抵抗値は、プリチャージ用抵抗19および放電用抵抗25の合算抵抗値よりも小さい。または、電源制御装置22の内部抵抗の抵抗値は、プリチャージ用抵抗19および放電用抵抗25の各々の抵抗値よりも小さい。よって、ステップS21で、バッテリ11の電圧値が2V未満と低い場合でも、電源制御装置22にバッテリ11から電流を流すことで、バッテリ11をほぼ完全に放電することができる。
【0057】
ここで、ステップS20では、電源制御装置22は、バッテリ11の電池セルの電圧が一定未満となったことで放電用回路を切り替えるが、放電時間に基づいて切替を行うこともできる。具体的には、電源制御装置22は、プリチャージ用抵抗19および放電用抵抗25を用いた放電時間をモニタし、この放電時間が一定以上になれば、放電用回路を切り替えてもよい。更には、電源制御装置22は、上記した電圧および放電時間の両方をモニタし、電圧が閾値未満であり、且つ、放電時間が一定以上になれば、放電用回路を切り替えることも出来る。
【0058】
ステップS22では、車両30からバッテリ11を外して破棄する。この時、電源制御装置22とバッテリ11とを接続した状態で破棄すれば、破棄後もバッテリ11から電源制御装置22に電流が流れることでバッテリ11が放電される。よって、破棄後にバッテリ11の電圧が回復してしまうことが防止され、破棄後に於けるバッテリ11を取り扱う作業者の安全性を向上できる。
【0059】
以上が、バッテリ11の放電方法に関する説明である。
【0060】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更が可能である。また、上記した各形態は相互に組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0061】
10 車両用電源装置
11 バッテリ
12 電力供給正極ライン
13 電力供給負極ライン
14 電力供給ライン
15 パワーコントロールユニット
16 第1メインスイッチ
17 第2メインスイッチ
18 バイパスライン
19 プリチャージ用抵抗
20 抵抗用スイッチ
21 サービスプラグ
22 電源制御装置
23 モータ
24 プリチャージ用スイッチ
25 放電用抵抗
26 車両制御装置
27 コネクタ
28 コネクタ
29 バッテリパック
30 車両
31 車体
32 バッテリ配置領域
33 電圧検出回路
34 放電回路
35 放電切替回路
36 サービスプラググリップ
37 サービスプラグベース
38 底面
40 車両