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特許7202254プリフォームの製造方法およびプリフォームの成形機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-27
(45)【発行日】2023-01-11
(54)【発明の名称】プリフォームの製造方法およびプリフォームの成形機
(51)【国際特許分類】
   B29C 49/64 20060101AFI20221228BHJP
   B29C 49/06 20060101ALI20221228BHJP
   B29B 11/08 20060101ALN20221228BHJP
【FI】
B29C49/64
B29C49/06
B29B11/08
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019092772
(22)【出願日】2019-05-16
(62)【分割の表示】P 2019058668の分割
【原出願日】2018-10-19
(65)【公開番号】P2019147393
(43)【公開日】2019-09-05
【審査請求日】2021-10-13
(31)【優先権主張番号】P 2017202716
(32)【優先日】2017-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227032
【氏名又は名称】日精エー・エス・ビー機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】河村 遼
(72)【発明者】
【氏名】荻原 学
(72)【発明者】
【氏名】高橋 純治
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-509817(JP,A)
【文献】特開平05-185493(JP,A)
【文献】特開平07-117112(JP,A)
【文献】特開2008-279611(JP,A)
【文献】特開2006-346891(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/00-49/80
B29B 11/00-11/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製の有底のプリフォームを射出成形する射出成形工程と、
前記射出成形工程で製造された前記プリフォームを冷却する温調工程と、
を有するプリフォームの製造方法であって、
前記温調工程において、
前記プリフォームをキャビティ型に収容し、
前記プリフォームにエア導入部材を気密可能に当接し、
前記エア導入部材は、前記プリフォームの内壁面と気密可能に当接する嵌合コアと、前記嵌合コアの内部に設けられるロッド部材と、を備え、
前記ロッド部材に設けられる通風口および前記ロッド部材と前記嵌合コアとの隙間として形成される通風口のうち、一方が送風口であり、他方が排出口であり、前記送風口から前記プリフォームの内部にエアを送り、前記エア導入部材の前記排出口から前記エアを前記プリフォームの外部に排出することで、前記プリフォームを前記キャビティ型の内壁に密着させて前記プリフォームを冷却する、
プリフォームの製造方法。
【請求項2】
前記キャビティ型には温調媒体が流されており、
前記温調工程では前記キャビティ型との密着により前記プリフォームを外側から温調し、
前記エア導入部材からの前記エアの対流により前記プリフォームを内側から冷却する、
請求項1に記載のプリフォームの製造方法。
【請求項3】
射出成形部と、温調部とを備えるプリフォームの成形機であって、
前記温調部が、
樹脂製の有底のプリフォームを収容するキャビティ型と、
前記プリフォームに気密可能に当接されてエアを前記プリフォームの内部に送るエア導入部材と、を備える、プリフォームの温調工程に使用される金型ユニットを備え、
前記エア導入部材は、
前記プリフォームの内壁面と気密可能に当接する嵌合コアと、前記嵌合コアの内部に設けられるロッド部材と、を含み、
前記エアを前記プリフォームの内部に送る送風口と、
前記エアを前記プリフォームの外部へ排出する排出口と、を備え、
前記ロッド部材に設けられる通風口および前記ロッド部材と前記嵌合コアとの隙間として形成される通風口のうち、一方が前記送風口であり、他方が前記排出口である、
プリフォームの成形機。
【請求項4】
前記キャビティ型は割型ではない固定式の構造である、請求項3に記載のプリフォームの成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリフォームの製造方法およびプリフォームの成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
ホットパリソン式のブロー成形方法はプリフォームの射出成形時の保有熱を利用してブロー成形する方法であり、コールドパリソン式と比較して多様かつ美的外観に優れた容器の製造が可能である。ホットパリソン式のブロー成形機には、射出成形部とブロー成形部との間に温調部が設けられた機種(4ステーション式)と設けられない機種(2ステーション式と3ステーション式)が存在する。温調部が存在すると、一般的に、ブロー前のプリフォームの温度条件を最終容器の賦形に適したものに調整しやすい。また、ホットパリソン式ブロー成形機において、成形サイクルの短縮を目的とした種々の方法・装置が開発されている。例えば、特許文献1及び特許文献2では射出成形型の型開閉動作や延伸装置の昇降動作に係る時間の短縮、特許文献3では射出装置の制御方法の変更、特許文献4では早期離型可能なプリフォーム形状とその射出成形型の採用、等を行い、成形サイクルの短縮を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国特開2005-007797号公報
【文献】国際公開第2016-148189号
【文献】国際公開第2017-002150号
【文献】国際公開第2017-098673号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、ホットパリソン式のブロー成形機の更なる生産性の向上、具体的には、成形サイクル時間の一層の短縮化が切望されている。成形サイクル時間の短縮化には、特許文献1~3のように機械側の動作時間を短縮化させることも必要であるが、特許文献4のように、律速段階であるプリフォームの射出成形時間(冷却時間)を短縮化させることが肝要である。
【0005】
しかし、特許文献4では、特殊なプリフォーム形状の採用が必須条件となっている。プリフォームは容器形状に応じた最適な形状(肉厚分布)に設計する必要があるため、特許文献4は一部の容器成形にしか対応できず、汎用性が高いとは言えない。特に特許文献4の方式では、ホットパリソン式で有利な化粧品容器(肉厚が大きい容器)の成形に対応できない。このようにホットパリソン式のブロー成形方法では、様々な成形様態を踏まえた汎用性の高いサイクル短縮化法は、現在のところ考案されていない。
【0006】
本発明は、成形サイクルを短縮しつつプリフォームを良好に成形することが可能なプリフォームの製造方法およびプリフォームの成形機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決することのできる本開示のプリフォームの製造方法は、
樹脂製の有底のプリフォームを射出成形する射出成形工程と、
前記射出成形工程で製造された前記プリフォームを温調する温調工程と、
を有する樹脂製の容器の製造方法であって、
前記温調工程において、
前記プリフォームをキャビティ型に収容し、
前記プリフォームにエア導入部材を気密可能に当接し、
前記エア導入部材の送風口から前記プリフォームの内部にエアを送り、前記エア導入部材の排出口から前記エアを前記プリフォームの外部に排出することで、前記プリフォームを前記キャビティ型の内壁に密着させて前記プリフォームを冷却する。
【0008】
また、上記課題を解決することのできる本開示のプリフォームの成形機は、
射出成形部と、温調部とを備えるプリフォームの成形機であって、
前記温調部が、
樹脂製の有底のプリフォームを収容するキャビティ型と、
前記プリフォームに気密可能に当接されてエアを前記プリフォームの内部に送るエア導入部材と、を備える、プリフォームの温調工程に使用される金型ユニットを備え、
前記エア導入部材は、
前記エアを前記プリフォームの内部に送る送風口と、
前記エアを前記プリフォームの外部へ排出する排出口と、
を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、成形サイクルを短縮しつつプリフォームを良好に成形することが可能なプリフォームの製造方法およびプリフォームの成形機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】成形機のブロック図である。
図2】第一の実施形態の温調部におけるプリフォームの温調の様子(冷却ブローのエアの送風方向)を示す断面模式図である。
図3】第一の実施形態のブロー成形部におけるプリフォームから容器を製造するブロー成形の様子を(a)から(b)にかけて示す断面模式図である。
図4】樹脂製の容器の製造方法のフローチャートを示す図である。
図5】第一の実施形態および参考例におけるプリフォームの時間に対する温度の変化を示す図であり、(a)は第一の実施形態、(b)は参考例を示している。
図6】第一の実施形態の温調部におけるプリフォームの温調の変形例の様子(冷却ブローのエアの送風方向)を示す断面模式図である。
図7】実施形態で好適に用いられるプリフォームと参考例のプリフォームとの対比図であり、(a)は二つのプリフォーム(左側は薄肉、右側は通常の肉厚)と、それよりブロー成形される容器のイメージ図を示しており、(b)は肉厚が異なるプリフォームの熱交換のイメージ図である。
図8】第二の実施形態の温調部におけるプリフォームの温調の様子を(a)から(d)にかけて示す断面模式図である。
図9】第二の実地形態のブロー成形部におけるプリフォームから容器を製造するブロー成形の様子を(a)から(d)にかけて示す断面模式図である。
図10】第二の実施形態および参考例におけるプリフォームの時間に対する温度の変化を示す図であり、(a)は第二の実施形態、(b)は参考例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第一の実施形態)
以下、本発明の実施形態の一例(第一の実施形態)について、図面を参照して説明する。尚、本図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。まず、図1を参照して、樹脂製の容器10を製造するための成形機20について説明する。図1は成形機20のブロック図である。
【0012】
図1に示すように、成形機20は、プリフォーム11を製造するための射出成形部21と、製造されたプリフォーム11の温度を調整するための温調部22とを備えている。射出成形部21には、原材料である樹脂材料を供給する射出装置25が接続されている。また、成形機20は、プリフォーム11をブローして容器10を製造するためのブロー成形部(ブロー装置の一例)23と、製造された容器10を取り出すための取出部24とを備えている。
【0013】
射出成形部21と温調部22とブロー成形部23と取出部24とは、搬送手段26を中心として所定角度(本実施形態では90度)ずつ回転した位置に設けられている。搬送手段26は回転板等で構成されており、図2および図3に示すように、回転板に取付けられているネック型27によりネック部12が支持された状態のプリフォーム11又は容器10が、回転板の回転に伴って各部に搬送されるように構成されている。
【0014】
図1に示す射出成形部21は、図示を省略する射出キャビティ型、射出コア型、ネック型等を備えている。これらの型が型締めされることで形成されるプリフォーム形状の空間内に、射出装置25からポリエステル系樹脂(例えばPET:ポリエチレンテレフタレート)等の合成樹脂材料を流し込むことにより、有底のプリフォーム11が製造される。プリフォーム11は容器10に応じ最適な肉厚分布(形状)を有しており、その胴部の厚み(平均厚、肉厚)としては例えば1.0~5.0mm、好ましくは1.5~3.0mmとに設定される。
【0015】
温調部22は、射出成形部21で製造されたプリフォーム11の温度を、最終ブローするための適した温度に調整するように構成されている。
【0016】
ここで、図2を参照して、温調部22について詳細に説明する。図2に示すように、温調部22は温調ブローを行うための、プリフォーム11を収容するキャビティ型(温調用キャビティ型)31と、プリフォーム11に気密可能に当接されてエアをプリフォーム11の内部に送る第一のエア導入部材32と、を備える金型ユニット30を備えている。キャビティ型31は、射出成形部21で製造されたプリフォーム11と略同じ形状の空間を規定する、開閉可能な割型ではない固定式(単一ユニット式)の構造を有している。キャビティ型31は、上下に2段に分かれた構成であり、上段型31aと下段型31bとを有している。なお、図6に示すキャビティ型31は、下段型31bの下部に支持台37を備えている。上段型31aおよび下段型31bのそれぞれの内部に温調媒体(冷却媒体)が流れており、温度を低く保っている。上段型31aおよび下段型31bのそれぞれの内部に流れる温調媒体の温度については特に限定されるものでは無いが、例えば5℃~80℃、好ましくは、30℃から60℃の間の範囲内で適宜選択することが可能である。なお、プリフォーム11の大きさおよび形状に合わせて、図2に示すキャビティ型31の下段型31bを中段型とし、支持台37にプリフォームに対応したキャビティを形成して下段型とし、その内部に温調媒体(冷却媒体)を流して、3段に分かれた構成としてもよい。
【0017】
第一のエア導入部材32は、中空で内部にエア流通孔が設けられた第一のロッド部材33と、第一の嵌合コア(第一のブローコア部材)34と、により構成されている。第一のロッド部材33は第一の嵌合コア34の内部に上下動可能に収容されている。第一のロッド部材33の先端にはエアを噴出または吸引可能な第一の内方流通口35が設けられている。エアの温度はプリフォーム11や容器10の肉厚に応じ、例えば約0℃~約20℃(常温)の範囲内で適宜設定される。第一の嵌合コア34は、第一のエア導入部材32がプリフォーム11に挿入されると(気密可能に当接されると)、ネック部12に嵌る(密接する)ように構成されている。これにより、プリフォーム11の内部のエアがネック部12から第一の嵌合コア34の外側に漏れることを防止できる。第一のロッド部材33と第一の嵌合コア34との間の隙間は、プリフォーム11に対しエアを給排するためのエア流通経路である。第一の嵌合コア34の先端と第一のロッド部材33とが形成する隙間が、エアを噴出または吸引可能な第一の外方流通口36を構成する。第一の内方流通口35および第一の外方流通口36は、それぞれ送風口および排出口となり得る。
【0018】
次に、図3を参照して、ブロー成形部23について説明する。図3に示すように、ブロー成形部23は、金型40と第二のエア導入部材50とを備える。金型(ブロー型)40は、底型42と、開閉可能な一対の割型(ブロー成形用キャビティ型)43と、により構成されている。底型42及び割型43が型締めされることにより、容器10の側面及び底面の外形が規定される。底型42は割型43の成形空間の下方中心に配置されている。
【0019】
ブロー成形部23が備える第二のエア導入部材50は、第二のロッド部材51と、第二の嵌合コア(第二のブローコア部材)52と、により構成されている。第二のロッド部材51は第二の嵌合コア52の内部に上下動可能に収容されている。第二のロッド部材51は延伸ロッドであり、先端にはプリフォーム11の内底面に接触して延伸時の芯ズレを防止する当接部55が設けられている。第二のロッド部材51の外周面には、エアを噴出または吸引可能な第二の内方流通口53が形成されている。第二の嵌合コア52は、第二のエア導入部材50がプリフォーム11に挿入されると(気密可能に当接されると)、ネック部12に嵌る(密接する)ように構成されている。これにより、プリフォーム11の内部のエアがネック部12から第二の嵌合コア52の外側に漏れることを防止できる。第二のロッド部材51と第二の嵌合コア52との間の隙間は、プリフォーム11に対しエアを給排するための流通経路である。第二の嵌合コア52の先端と第二のロッド部材51とが形成する隙間が、エアを噴出または吸引可能な第二の外方流通口54を構成する。
【0020】
第二のエア導入部材50は、第二の外方流通口54からプリフォーム11の内部にエアを送り、第二の内方流通口53からプリフォーム11の外部へ排出することもできるように構成されている。第二の内方流通口53および第二の外方流通口54は、それぞれ送風口および排出口となり得る。
【0021】
続いて、第一の実施形態に係る容器10の製造方法について説明する。図4は、樹脂製の容器の製造方法のフローチャートを示す図である。本実施形態の容器10は、プリフォーム11を射出成形する射出成形工程S1と、プリフォーム11を温調する温調工程S2と、温調されたプリフォーム11をブロー成形して容器10を製造するブロー成形工程S3と、を経て製造され、ネック部12をネック型27から開放することで容器10が取り出される。
【0022】
まず、射出成形工程S1について説明する。射出成形工程S1において、射出キャビティ型、射出コア型、ネック型等が型締めされることで形成されるプリフォーム形状の空間内に、射出装置25から樹脂材料を流し込むことにより、プリフォーム11を製造する。樹脂充填工程の終了直後または樹脂充填工程後に設けられた一定時間(最小限)の冷却工程後に射出成形部21から温調部22へとプリフォーム11を移動させる。
【0023】
射出成形工程S1では、始動時間t10(樹脂材料の射出が開始される時間)から第一の時間t11までの間、プリフォーム形状の空間内に樹脂材料を射出する(図5(a))。第一の時間t11(樹脂材料の流し込みを完了した時間)から第二の時間t12までの間、プリフォーム11を第一の温度T11から第二の温度T12まで冷却する(図5(a))。第一の温度T11は樹脂材料の融点以上の温度であり、例えばPET樹脂では270~300℃とされる。始動時間t10から第一の時間t11は充填時間(射出時間)、第一の時間t11から第二の時間t12は冷却時間、始動時間t10から第二の時間t12は射出成形時間IT11(充填時間(保圧時間を含む)+冷却時間)となる。また、第二の時間t12から第三の時間t13(温調工程S2の開始時間)までの間、プリフォーム11は第二の温度T12から第三の温度T13まで冷却される(図5(a))。第二の時間t12から第三の時間t13は各工程間のプリフォーム11または容器10の搬送時間DT11であり、図5では射出成形部21から温調部22にプリフォーム11を搬送する時間を示している。なお、成形機20の構造上、工程間の搬送時間DT11は全て同じ値になる。射出成形時間IT11と搬送時間DT11との合計時間が成形サイクル時間CT11である。
【0024】
樹脂材料の射出が完了してから樹脂材料を冷却する時間(第一の時間t11から第二の時間t12までの時間)は、樹脂材料を射出する時間(始動時間t10から第一の時間t11までの時間)に対して1/2以下であることが好ましい。また、樹脂材料の重量に応じて、射出成形工程において樹脂材料を冷却する時間は、樹脂材料を射出する時間に対してより短くすることができる。樹脂材料を冷却する時間は、樹脂材料を射出する時間に対して1/3以下であるとより好ましく、1/4以下であるとさらに好ましく、1/5以下であると特に好ましい。
【0025】
次に、図2を参照して温調工程S2について説明する。まず、プリフォーム11をキャビティ型31のプリフォーム形状の空間内に収容する。続いて、キャビティ型31に収容されたプリフォーム11の内部に第一のエア導入部材32を挿入する(気密可能に当接する)。そして、第一の内方流通口35を閉栓した状態で第一のエア導入部材32の第一の外方流通口36からプリフォーム11の内部にエアを送り、プリフォーム11をキャビティ型31の内壁に密着させる予備ブローを行う。次いで、第一の内方流通口35を開栓し、第一の内方流通口35からエアを導入しつつ、第一の外方流通口36を介してプリフォーム11の外部にエアを排出する冷却ブロー(クーリングブロー)を行う(図2)。このように、予備ブローと冷却ブローでは、エアの流れる方向を逆に設定するのが好ましい。この時、第一の内方流通口35からエアが噴出し続けているため、プリフォーム11は内部を流れるエアの対流により、内側から冷却される。また、プリフォーム11はキャビティ型31と接触し続けるため、外側からブロー成形に適した温度以下にならないように温度調整され、さらに、射出成形時に生じた偏温も低減される。なお、キャビティ型31がプリフォーム形状の空間を有しているため、プリフォーム11の形状は大きく変化しない。一定時間の冷却の後に、冷却されたプリフォーム11をブロー成形部23に移動させる。
【0026】
なお、第一のエア導入部材32のエアの流通方向は適宜変えることができる。例えば、図6に示すように、冷却ブローにおいて、第一の外方流通口36からエアを送り、第一の内方流通口35から排出するようにしてもよい。この際の予備ブローは、第一の外方流通口36を閉栓させた状態で、第一の内方流通口35からプリフォーム11の内部にエアを送るのが好ましい。プリフォーム11の下方側(底部側)の冷却強度を上げたい場合は、第一の内方流通口35から第一の外方流通口36の方向にエアを流す。プリフォーム11の上方側(胴部側)の冷却強度を上げたい場合は、第一の外方流通口36から第一の内方流通口35の方向にエアを流す。なお、プリフォーム11の特定部分を強く冷却し容器10の特定部分の肉厚を大きくさせたい場合等には、予備ブローと冷却ブローとのエアの送風方向を同じに設定しても構わない。
【0027】
ここで、再び図5を参照して、プリフォームの時間に対する温度の変化について説明する。温調工程S2では、第三の時間t13から第四の中間時間t14’までの間、プリフォーム11を第三の温度T13から第四の温度T14まで冷却し、その後第四の時間t14までの間、第四の温度T14でプリフォーム11の温度を維持する(図5(a))。第四の温度T14はブローに適した温度であり、例えばPET樹脂の場合は90℃~105℃とされる。第三の時間t13から第四の時間t14までの時間は温調時間TT11である。また、第四の温度T14はプリフォームのブロー適温を示す。第四の中間時間t14’後第四の時間t14までの間、射出成形工程S1でのプリフォーム11の成形(冷却)が完了するまで、温調工程S2での温調を続ける。なお、第四の温度T14への到達時間が短くなった際は、第四の中間時間t14’の時点で冷却ブローを停止させても良い。なお、第四の温度T14は低温の方がプリフォーム11の延伸配向性が良好になり容器10の強度(物性)を高めることができるため、90~95℃とするのが望ましい。
【0028】
次に、図3を参照してブロー成形工程S3について説明する。まず、底型42が静止しており、割型43が開いている状態の金型40にプリフォーム11を収容する。続いて、割型43を閉じて(図3(a))、第二のエア導入部材50を挿入する(気密可能に当接する)。この際、第二のロッド部材51によりプリフォーム11を図3における下方向に延伸する。そして、第二の外方流通口54からプリフォーム11の内部にエアを送る最終ブローにより、プリフォーム11を容器10の形状まで膨らませ、容器10を製造する(図3(b))。金型40とプリフォーム11との接触のみでは冷却不足となる場合は、第二の内方流通口53からプリフォーム11の内部にエアを送り、第二の外方流通口54からプリフォームの外部にエアを排出するクーリングブローを最終ブロー後に行ってもよい。最終ブローが完了した後に、割型43を開き容器10を金型40から開放する。
【0029】
金型40から引き抜かれた容器10を、取出部24(図1)に移動し、ネック部12をネック型27から開放することで容器10を取り出す。以上の方法により、容器10が製造される。
【0030】
ところで、ホットパリソン式のプリフォーム11を結晶性の熱可塑性樹脂(透明の非晶質状態と白濁した結晶質状態とになり得る樹脂)を材料として成形するとき、材料によっては冷却不足により白化してしまう場合がある。例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)を材料とした場合、結晶化が促進される温度帯(120℃から200℃)で徐冷(例えば室温で数十秒冷却)してしまうと、球晶生成による結晶化が生じ、白化(白濁)する傾向を示す。そのため、従来は射出成形型(射出キャビティ型や射出コア型、ネック型)を急冷(例えば10℃で5秒)して、上記結晶化温度帯の通過時間を短くして射出成形工程において十分に冷却させる手段をとり、PET製プリフォーム11の結晶化(白化)を抑制していた。つまり、図5(b)に示すように、従来の樹脂製の容器の製造方法では、射出成形工程において、第一の時間t21から第二の時間t22までの間、プリフォームを第一の温度T21から第四の温度T24(ブロー成形のための適当な温度で、例えば90~105℃)よりも低いか略同程度の第二の温度T22まで冷却していた。そして、温調工程において、第三の時間t23から第四の中間時間t24’までの間、プリフォームを第三の温度T23から第四の温度T24まで昇温して、その後第四の時間t24までの間、第四の温度T24でプリフォーム11の温度を維持していた(図5(b))。このため、射出成形工程における冷却時間が長くなり、結果的に容器の成形サイクル時間CT21が長くなっていた。また肉厚が大きい容器を成形する場合には、プリフォームの冷却に時間がさらに必要となり、より容器の成形サイクル時間CT21が長くなっていた(図5(b))。また、結晶化しづらいように改質された特殊なPET樹脂(コポリエステル:コポリマー)を用いれば、プリフォーム11の射出成形部での冷却時間をある程度短縮しつつ、白化が抑制されたプリフォームや容器の製造が可能である。しかし、この特殊なPET樹脂は汎用的な(通常の)PET樹脂と比べて価格が非常に高く、汎用的な容器を大規模生産する場合は好ましくない。
【0031】
本実施形態の樹脂製の容器10の製造方法によれば、射出成形工程S1においてプリフォーム11の冷却工程をほとんど無くし、温調工程S2にプリフォーム11の冷却工程を移している。温調工程S2では、プリフォーム11をキャビティ型31に密着させてプリフォーム11の外面を効果的に温調できる。さらに、エアがプリフォーム11の内部に閉じ込められずに流れ続けることで対流が生じるため、プリフォーム11の内面を同時に冷却することができる。温調工程S2でプリフォーム11の温調と冷却を行えるため、射出成形工程S1においてプリフォーム11を高温の状態でも離形することができ、次のプリフォーム11の成形を早く開始することができる。すなわち、成形サイクル時間CT11を短縮しつつ最終成形品を良好に成形することができる。また、特殊なPET樹脂を用いずに汎用的なPET樹脂を用いても、短い成形サイクルで白化していない容器を成形することができる。
【0032】
ところで、特許文献4では、射出成形工程での早期離型を可能にするため、プリフォームの胴部形状を薄く設計している。これは、温調工程が無いブロー成形機において成形サイクルを短縮化する策としては効果的である。しかし、プリフォーム形状を薄くすると、容器10の物性や外観が悪くなる虞がある。ここで、同一の重量で胴部の肉厚が異なるプリフォームから同一形状の容器を製造する場合を説明する。図7(a)は40gの二つのプリフォーム(左側は薄肉、右側は通常の肉厚)と、それぞれのプリフォームよりブロー成形される容器の外形(二点鎖線)のイメージ図を示している。薄肉のプリフォームは胴部を薄くした分、縦軸方向に長くなる(図7(a)の左側)。この結果、薄いプリフォームの縦軸方向の延伸倍率は、通常の肉厚のプリフォームと比べて小さくなる。一般的に、延伸倍率(配向延伸度)が高いほど、容器の強度(落下等に対する衝撃強度、剛性度、引っ張り強さ、等)やバリア性は高くなる。つまり、薄肉プリフォームから成形された容器は、通常の肉厚のプリフォームから成形される容器と比べて物性が悪くなる。また、延伸倍率が小さくなると容器の肉厚調整も難しくなり、容器の偏肉度合や外観も悪くなり易い。薄肉プリフォーム(図7(a)の左側)はプリフォームの均温化の面でも、通常の肉厚のプリフォーム(図7(a)の右側)より劣る。図7(b)は肉厚が異なるプリフォームの熱交換のイメージ図である。通常の肉厚のプリフォームに比べ、薄肉プリフォームの内層部(コア部)の熱量は小さいため、温度の低い表面層(スキン層)との熱の移動度合(熱交換性)が悪くなる。この結果、薄肉プリフォームは通常の肉厚のプリフォームと比べて均温化しづらく、容器の偏肉度合が大きくなり易い。
【0033】
これに対し、本実施形態では、温調部22で効率的にプリフォーム11を冷却させることができるため、特許文献4と異なり容器形状に合わせ最適な肉厚分布を持つように設計されたプリフォームを用いても、成形サイクル時間CT11を短縮させることができる。また、容器の物性の低下や白化の虞も小さく、汎用性が高い。
【0034】
なお、本発明で用いられるプリフォーム11は、胴部の平均肉厚が2.0mm以上10.0mm以下(好ましくは2.0mm以上5.0mm以下)となるように設定されるのが望ましい。また、容器10のプリフォーム11に対する縦延伸倍率が1.1倍以上4.0倍以下(好ましくは1.1倍以上1.2倍以下または1.9倍以上4.0倍以下)、横延伸倍率が1.1倍以上4.0倍以下(好ましくは1.1倍以上1.8倍以下または3.0倍以上4.0倍以下)となるように設定されるのが望ましい。また、容器10の縦軸中心線を含む断面の面積の、プリフォーム11の縦軸中心線含む断面の面積に対する面積倍率(縦断面の面積倍率)が1.2倍以上16.0倍以下(好ましくは1.2倍以上10.0倍以下)となるように設定されるのが望ましい。特に、縦延伸倍率が約2.5倍、横延伸倍率が約4.0倍、面積倍率が約10.0倍に設定されるとなお好ましい。プリフォーム11の成形条件の値を上記のように設定することにより、汎用的な(通常の)PET樹脂からプリフォーム11を成形して上記の温調方法を実施することで、強度(物性)が高く白化(白濁化)が抑制された容器10を好適に製造することが可能になる。
【0035】
(第一の実施形態の実施例)
以下、第一の実施形態の実施例について説明する。なお、本発明の技術的範囲は本実施例に限定されない。本発明の技術的範囲は、請求の範囲に記載の範囲またはそれと均等の範囲において定められる。
【0036】
第一の実施形態において説明された構成を備える成形機20を使用して、例1、例2および例3のPET製の容器の製造試験を実施した。それぞれの例における、プリフォームの肉厚(胴部の平均厚)、サイクル時間、容器の重量および容器の内容量は、表1に示すとおりである。それぞれの例における、射出成形工程の樹脂材料を射出する時間、射出完了後に金型内でプリフォームを冷却する時間および射出成形部の射出キャビティ型内のチラー温度(冷却媒体(チラー水)の温度)は、表1に示すとおりである。それぞれに例における、温調工程のプリフォームのブロー時間ならびにキャビティ型の上段温調POT、中段温調POTおよび下段温調POTの温度は表1に示すとおりである。なお、例1においては中段温調POTを設けない2段式のキャビティ型を使用し、例2および例3では3段式のキャビティ型を使用した。
【0037】
【表1】
【0038】
例1、例2および例3の製造試験において、プリフォームの白化は発生せず、良好な形状の容器を製造することができた。また、温調工程において予備ブローおよび冷却ブローによる冷却を行わない条件で、プリフォームの白化が発生しないように射出成形工程での冷却を行った場合と比較して、例1では24.3%、例2では13.0%、例3では37.5%のサイクル時間の短縮が実現できた。プリフォームの肉厚が大きく、重量が大きい場合は射出成形工程での冷却の時間が長くなるところ、例3では特にサイクル時間の短縮が実現できた。
【0039】
(第二の実施形態)
続いて、本発明の実施形態の別の例(第二の実施形態)について、図1図4および図8図10を参照して説明する。第二の実施形態に係る成形機120(図1)は、温調部122の金型ユニット130のキャビティ型131の構成と、ブロー成形部123が備える金型140および第二のエア導入部材150の構成と、が異なる以外は第一の実施形態に係る成形機20と同一の又は似た構成である。したがって、同一の又は似た構成については同一の符号を付して説明を省略する。以下では、第一の実施形態と相違する温調部122とブロー成形部123のみを抜粋して説明する。
【0040】
まず図8を参照して、温調部122について詳細に説明する。図8は、温調部122におけるプリフォーム11の温調の様子を(a)から(d)にかけて示す断面模式図である。図8(a)~図8(d)の各段階の詳細は後述する。温調部122は温調ブローを行うための、プリフォーム11を収容するキャビティ型131と、第一のエア導入部材32と、を備える金型ユニット130を備えている。キャビティ型131は、射出成形部21で製造されたプリフォーム11よりも大きい空間を規定する割型である。キャビティ型131は、その内部に温調媒体(冷却媒体)が流れており、温度を低く保っている。温調媒体(冷却媒体)の温度については特に限定されるものでは無いが、例えば5℃~80℃の間、好ましくは5℃~30℃の間、更に好適には10℃±5℃の範囲内で適宜選択することが可能である。第一のエア導入部材32の構成は、第一の実施形態と同様である。
【0041】
続いて図9を参照して、ブロー成形部123について詳細に説明する。図9は、ブロー成形部123におけるプリフォーム11から容器10を製造するブロー成形の様子を(a)から(d)にかけて示す断面模式図である。(a)~(d)の各段階の詳細は後述する。ブロー成形部123が備える金型(ブロー型ユニット)140は、肩型141と、底型142と、ベース型(胴部型)143と、により構成されている。底型142及びベース型143は互いに連結されており、容器10の側面及び底面の外形を規定する。底型142およびベース型143はそれらの下端部において第二の固定板145に連結されている。ベース型143は略円筒状の成形空間を有する割型でない単一構造の金型として構成されており、図9における上下方向に移動可能である。また、ベース型143の成形空間の内壁面はテーパー状になっており、上部空間の直径の方が下部空間の直径より大きい。肩型141は一対の割型からなり、それらは各々、図9における左右何れかの端部で第一の固定板144に連結されている。第一の固定板144は図示しない型開閉機構に連結されており、肩型141は図9における左右方向に移動可能である。肩型141は、閉じた状態でネック型27に嵌合してプリフォーム11の肩に接するかまたは近づき、容器10の肩の外形を規定する。また、肩型141の両側(図9の紙面の手前と奥の側)には図示しない圧受部材が配され、おのおの第一の固定板144に連結されている。
【0042】
ブロー成形部23が備える第二のエア導入部材150は、第二のロッド部材151を除き、第一の実施形態と同じである。第二のロッド部材151は内部にエア流通孔をそなえている点は第一の実施形態と同じであるが、その先端にはプリフォーム11の内底面と接触する当接部がなく、代わりにエアを噴出または吸引可能な第二の内方流通口153が設けられている。
【0043】
本実施形態の成形機120は、上げ底で肉厚が大きい容器10を製造する。プリフォーム11から容器10への延伸倍率は意図的に低く設定されている。プリフォーム11は肉厚が大きく、その胴部の厚みとしては例えば3.0~12.0mm、好ましくは4.0~8.0mmとしてもよい。また、容器10の充填容量は例えば30~100mLとしてもよい。
【0044】
続いて、第二の実施形態に係る容器10の製造方法について説明する。第二の実施形態に係る容器10の製造方法は、第一の実施形態と同様に、プリフォーム11を射出成形する射出成形工程S101と、プリフォーム11を温調する温調工程S102と、温調されたプリフォーム11をブロー成形して容器10を製造するブロー成形工程S103と、を経て製造され(図4)、ネック部12をネック型27から開放することで容器10が取り出される。
【0045】
射出成形工程S101は、第一の実施形態の射出成形工程S1と同様の操作に従う。ここで、図10を参照して、射出成形工程S101におけるプリフォームの時間に対する温度の変化について説明する。図10は第二の実施形態および参考例におけるプリフォームの時間に対する温度の変化を示す図であり、(a)は第二の実施形態、(b)は参考例を示している。射出成形工程S101では、第一の時間t31(樹脂材料の流し込みを完了した時間)から第二の時間t32までの間、プリフォーム11を第一の温度T31から第二の温度T32まで冷却する(図10(a))。第一の温度T31は樹脂材料の融点以上の温度であり、例えばPET樹脂では270~300℃とされる。始動時間t30から第一の時間t31は充填時間(射出時間)、第一の時間t31から第二の時間t32は冷却時間、始動時間t30から第二の時間t32は射出成形時間IT31(充填時間(保圧時間を含む)+冷却時間)となる。また、第二の時間t32から第三の時間t33(温調工程S102の開始時間)までの間、プリフォーム11は第二の温度T32から第三の温度T33まで冷却される(図10(a))。第二の時間t32から第三の時間t33は各工程間のプリフォーム11または容器10の搬送時間DT31であり、図10では射出成形部21から温調部121にプリフォーム11を搬送する時間を示している。なお、成形機120の構造上、工程間の搬送時間DT31は全て同じ値になる。射出成形時間IT31と搬送時間DT31との合計時間が成形サイクル時間CT31である。
【0046】
次に、図8を参照して温調工程S102について説明する。まず、プリフォーム11を開いているキャビティ型131の間に移動させ、キャビティ型131を閉じてキャビティ型131にプリフォーム11を収容する(図8(a))。続いて、キャビティ型131に収容されたプリフォーム11の内部に第一のエア導入部材32を挿入する(気密可能に当接する)(図8(b))。そして、第一の外方流通口36を閉栓した状態で第一のエア導入部材32の第一の内方流通口35からプリフォーム11の内部にエアを送り、プリフォーム11を膨らませてキャビティ型131の内壁に密着させる予備ブローを行う。次いで、第一の外方流通口36を開栓し、第一のエア導入部材32の第一の外方流通口36からエアをプリフォーム11の外部に排出して冷却ブローを行う(図8(c))。この時、第一の内方流通口35からエアが噴出し続けているため、プリフォーム11は内部を流れるエアにより、内側からも冷却される。一定時間の冷却の後にキャビティ型131を開き(図8(d))、膨らんだプリフォーム11をブロー成形部123に移動させる。
【0047】
ここで、再び図10を参照して、プリフォームの時間に対する温度の変化について説明する。温調工程S102では、第三の時間t33から第四の中間時間t34’までの間、プリフォーム11を第三の温度T33から第四の温度T34まで冷却し、その後第四の時間t34までの間、第四の温度T34でプリフォーム11の温度を維持する(図10(a))。第四の温度T14はブロー成形に適した温度であり、例えばPET樹脂の場合は90℃~105℃とされる(第一の実施形態と同様に、90~95℃とさせるのが望ましい)。第四の時間t34後、射出成形工程S101でのプリフォームの冷却が完了するまで、温調工程S102での冷却を続ける。
【0048】
次に、図9を参照してブロー成形工程S103について説明する。まず、底型142及びベース型143が静止しており、肩型141が開いている状態の金型140にプリフォーム11を収容する(図9(a))。続いて、肩型141を閉じてネック型27に嵌合させて、第二のエア導入部材150を挿入する(気密可能に当接する)(図9(b))。そして、第二の外方流通口54からプリフォーム11の内部にエアを送る最終ブローにより、プリフォーム11を容器10の形状まで膨らませる。その後、第二の内方流通口153からプリフォーム11の内部にエアを送り、第二の外方流通口54からプリフォームの外部にエアを排出するクーリングブローにより、容器10を製造する(図9(c))。最終ブローおよびクーリングブローが完了した後に、底型142とベース型143を若干下降させ、次いで、肩型141を開き容器10を金型140から引き抜く。なお、金型140とプリフォーム11との接触のみで冷却が十分にされる場合は、クーリングブローを省略してもよい。
【0049】
金型140から引き抜かれた容器10を、取出部24に移動し、ネック部12をネック型27から開放することで容器10を取り出す。以上の方法により、容器10が製造される。
【0050】
ところで、図10(b)に示すように、従来の樹脂製の容器の製造方法では、射出成形工程において、第一の時間t41(樹脂材料の流し込みを終えた時間)から第二の時間t42までの間、プリフォームを第一の温度T41から第四の温度T44よりも低いか略同程度の第二の温度T42まで冷却していた。そして、温調工程において、第三の時間t43から第四の時間t44までの間、プリフォームを第三の温度T43から第四の温度T44まで昇温していた。このため、射出成形工程における冷却時間が長くなり、結果的に容器の成形サイクル時間CT41が長くなっていた。また肉厚が大きい容器を成形する場合には、プリフォームの冷却に時間がさらに必要なり、より容器の成形サイクル時間CT41が長くなっていた。
【0051】
本実施形態の樹脂製の容器10の製造方法によれば、射出成形工程S101においてプリフォーム11を冷却するだけでなく、温調工程S102においてもプリフォーム11を冷却することができる。特に、温調工程S102において、プリフォーム11の内部にエアを送ることでプリフォーム11を膨らませてキャビティ型131に密着させることができ、プリフォーム11の外面を効果的に冷却させつつ、適切な外形のプリフォーム11を得ることができる。さらに、エアがプリフォーム11の内部に閉じ込められずに流れ続けることで対流が生じるため、プリフォーム11の内面も同時に冷却することができ、従来に比べて早くプリフォーム11を冷却することができる。そして、温調工程S102における冷却により射出成形工程S101においてプリフォーム11を高温の状態でも離形することができ、次のプリフォーム11の成形を早く開始することができる。すなわち、射出成形工程S101と温調工程S102とにより協働してプリフォーム11を効果的に冷却することができ、成形サイクル時間CT31を短縮しつつ最終成形品を良好に成形することができる。
【0052】
また、肉厚が大きいプリフォーム11は、片側からプリフォーム11の外壁を冷却しても、外壁の内部及び冷却されている側の反対側が冷却されにくく、ブロー成形のための適温まで冷却するために長い時間を必要としていた。本実施形態の樹脂製の容器10の製造方法によれば、温調工程S102にてプリフォーム11の外面を効果的に冷却させつつ、適切な外形(容器10に近い外形)の薄肉化されたプリフォーム11を得ることができ、さらに、プリフォーム11の内面も同時に冷却することができるので、従来に比べて肉厚が大きいプリフォーム11を効果的に早く冷却することができる。そして、温調工程S102における冷却により射出成形工程S101においてプリフォーム11を高温の状態で離形して次工程に移すことができ、次のプリフォーム11の成形を早く開始して成形サイクルを短縮しつつ最終成形品を良好に成形することができる。
【0053】
また、本実施形態の金型ユニット130によれば、第一の内方流通口35と第一の外方流通口36とを備える第一のエア導入部材32を備えることにより、エアをプリフォーム11の内部に閉じ込めずに流れ続けさせることで対流を生じさせることができる。これにより、プリフォーム11の内面から効果的にプリフォーム11を冷却することができる。また、エアによりプリフォーム11を膨らませてキャビティ型131に密着させることができ、プリフォーム11の外面を効果的に冷却させつつ、適切な外形のプリフォーム11を得ることができる。
【0054】
また、本実施形態の金型ユニット130によれば、プリフォーム11の外面を効果的に冷却させつつ、適切な外形のプリフォーム11を得ることができ、さらに、プリフォーム11の内面も同時に冷却することができるので、従来に比べて肉厚が大きいプリフォーム11を効果的に早く冷却することができる。
【0055】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0056】
上記実施形態のブロー成形部において、クーリングブローに使用される第二のロッド部材51を説明したが、プリフォーム11を容器10へ適切に膨らませることができる態様のブロー装置であれば使用することができる。例えば、第二の内方流通口53と第二の外方流通口54とでエアの送風と排出とが入れ替わる態様でなくてもよい。
【0057】
なお、射出成形部の金型の型開閉方向は鉛直方向(縦方向)が望ましい。仮に型開閉方向が水平方向(横方向)であると、射出成形部で離型されるプリフォームが従来より高温で高い軟化状態にある関係上、温調部への搬送途中で水平方向に延在するプリフォームの底部側が重心の関係から鉛直下方側に曲り、正常な形状で冷却ブローが実施できない可能性があるからである。一方、射出成形部の金型の型開閉方向が鉛直方向(縦方向)である場合は、このような曲り変形が生じず、正常な形状のプリフォームに対して冷却ブローが実施できる。
【0058】
以下に本開示の態様を列記する。
(1)本開示の一側面に係る樹脂製の容器の製造方法は、
樹脂製の有底のプリフォームを射出成形する射出成形工程と、
前記射出成形工程で製造された前記プリフォームを温調する温調工程と、
温調された前記プリフォームをブロー成形して樹脂製の容器を製造するブロー成形工程と、を有する樹脂製の容器の製造方法であって、
前記温調工程において、
前記プリフォームをキャビティ型に収容し、
前記プリフォームにエア導入部材を気密可能に当接し、
前記エア導入部材の送風口から前記プリフォームの内部にエアを送り、前記エア導入部材の排出口から前記エアを前記プリフォームの外部に排出することで、前記プリフォームを前記キャビティ型の内壁に密着させて前記プリフォームを冷却する。
上記構成によれば、温調工程においてプリフォームを内側から冷却することができ、成形サイクルを短縮しつつ最終成形品を良好に成形することができる。
(2)本開示の一側面に係る樹脂製の容器の製造方法において、
前記キャビティ型には温調媒体が流されており、
前記温調工程では前記キャビティ型との密着により前記プリフォームを外側から温調し、
前記エア導入部材からのエアの対流により前記プリフォームを内側から冷却する、と好ましい。
上記構成によれば、プリフォームの内側と外側とで相対的に冷却強度を異ならせて、温調と冷却と両立することができ、より効果的に成形サイクルを短縮しつつ最終成形品を良好に成形することができる。
(3)また、本開示の別側面に係る樹脂製の容器の製造方法は、
樹脂製の有底のプリフォームを射出成形する射出成形工程と、
前記射出成形工程で製造された前記プリフォームを温調する温調工程と、
温調された前記プリフォームをブロー成形して樹脂製の容器を製造するブロー成形工程と、を有する樹脂製の容器の製造方法であって、
前記射出成形工程において、
射出成形用金型が型締めされることで形成される前記プリフォームの形状の空間内に樹脂材料を射出し、
前記樹脂材料の射出が完了してから前記空間内で前記樹脂材料を冷却し、
樹脂材料の射出が完了してから前記空間内で前記樹脂材料を冷却する時間が、前記樹脂材料を射出する時間に対して1/2以下である。
上記構成によれば、射出成形工程での冷却時間を短縮することができるため、射出成形部でのプリフォームの射出成形時間を短縮することができ、容器自体の成形サイクル時間を短縮することができる。
(4)また、本開示の一側面に係る金型ユニットは、
樹脂製の有底のプリフォームを収容するキャビティ型と、
前記プリフォームに気密可能に当接されてエアを前記プリフォームの内部に送るエア導入部材と、を備える、プリフォームの温調工程に使用される金型ユニットであって、
前記エア導入部材は、
前記エアを前記プリフォームの内部に送る送風口と、
前記エアを前記プリフォームの外部へ排出する排出口と、
を備える。
上記構成によれば、温調工程においてプリフォームを内側から冷却することができ、成形サイクルを短縮しつつ最終成形品を良好に成形することができる。
(5)本開示の一側面に係る金型ユニットにおいて、
前記キャビティ型は割型ではない固定式の構造である、と好ましい。
(6)また、本開示の一側面に係る成形機は、
射出成形部と、温調部と、ブロー成形部とを備え、
前記温調部が、上記金型ユニットを備える。
(7)また、本開示の別の側面に係る樹脂製の容器の製造方法は、
樹脂製の有底のプリフォームを射出成形する射出成形工程と、
前記射出成形工程で製造された前記プリフォームを温調する温調工程と、
温調された前記プリフォームをブロー成形して樹脂製の容器を製造するブロー成形工程と、を有する樹脂製の容器の製造方法であって、
前記プリフォームが、2.0mm以上10.0mm以下である肉厚を有し、
前記容器の縦軸中心線を含む断面の面積の、前記プリフォームの縦軸中心線を含む断面の面積に対する面積倍率が、1.2倍以上10.0倍以下であり、
前記温調工程において、前記プリフォームを内側から冷却する。
【0059】
なお、本願は、2017年10月19日付で出願された日本国特許出願(特願2017-202716)に基づいており、その全体が引用により援用される。また、ここに引用されるすべての参照は全体として取り込まれる。
【符号の説明】
【0060】
10:容器、11:プリフォーム、12:ネック部、20,120:成形機、21:射出成形部、22,122:温調部、23,123:ブロー成形部、24:取出部、25:射出装置、26:搬送手段、27:ネック型、30,130:金型ユニット、31,131:キャビティ型、32:第一のエア導入部材、33:第一のロッド部材、34:第一の嵌合コア(第一のブローコア部材)、35:第一の内方流通口、36:第一の外方流通口、40,140:金型、141:肩型、42,142:底型、43:割型、143:ベース型、50,150:第二のエア導入部材、51,151:第二のロッド部材、52:第二の嵌合コア(第二のブローコア部材)、53,153:第二の内方流通口、54:第二の外方流通口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10