(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-27
(45)【発行日】2023-01-11
(54)【発明の名称】梱包箱、出荷ユニット
(51)【国際特許分類】
H04B 1/59 20060101AFI20221228BHJP
G06K 7/10 20060101ALI20221228BHJP
B41J 3/36 20060101ALI20221228BHJP
B41J 29/00 20060101ALI20221228BHJP
B65D 5/44 20060101ALI20221228BHJP
B41J 29/38 20060101ALI20221228BHJP
【FI】
H04B1/59
G06K7/10 248
B41J3/36 Z
B41J29/00 C
B41J29/00 E
B65D5/44 Z
B41J29/38 401
(21)【出願番号】P 2019514356
(86)(22)【出願日】2018-04-10
(86)【国際出願番号】 JP2018015001
(87)【国際公開番号】W WO2018198748
(87)【国際公開日】2018-11-01
【審査請求日】2021-03-08
(31)【優先権主張番号】P 2017086784
(32)【優先日】2017-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000130581
【氏名又は名称】サトーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】グローバル・アイピー東京特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】片山 将
(72)【発明者】
【氏名】太田 未来
【審査官】佐藤 敬介
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-115057(JP,A)
【文献】特開2017-001335(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/59
G06K 7/10
B41J 3/36
B41J 29/00
B65D 5/44
B41J 29/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器を梱包するための梱包箱であって、
前記電子機器は、周囲に露出したいずれかの面の第1領域の近傍に、非接触による短距離無線通信のためのアンテナを内蔵しており、
前記梱包箱は、
前記電子機器が前記梱包箱に挿入される場合に開放される第1外面と、
前記第1外面とは異なる外面であって、所定の位置に前記アンテナの位置を示す情報が付された第2外面と、を備え、
当該所定の位置は、前記電子機器を前記梱包箱内に配置させた場合に前記電子機器の前記第1領域に対応する位置である、
梱包箱。
【請求項2】
前記梱包箱の内部で前記第2外面に対応する内面に対向する規制部であって、前記電子機器を配置させた場合に前記電子機器の前記第1領域が前記梱包箱の内面に近接するように、前記内面と前記規制部の間で当該電子機器の前記梱包箱内での配置を規制する規制部、をさらに備えた、
請求項1に記載された梱包箱。
【請求項3】
前記梱包箱は、前記第2外面にラベルが貼付されており、
前記アンテナの位置を示す情報は、前記ラベルに印字されている、
請求項1又は2に記載された梱包箱。
【請求項4】
前記第1外面と前記第2外面とが垂直である、
請求項1に記載された梱包箱。
【請求項5】
前記電子機器が電源オンにしたときに前記電子機器の設定情報に基づいて設定を行うように、前記第2外面は、前記電子機器が電源オフ状態である場合に通信装置が前記設定情報を前記アンテナに送信可能となるように構成されている、
請求項1に記載された梱包箱。
【請求項6】
複数の電子機器を出荷するための出荷ユニットであって、
複数の梱包箱を備え、各梱包箱に1つの電子機器が梱包され、
前記電子機器は、周囲に露出したいずれかの面の第1領域の近傍に、非接触による短距離無線通信のためのアンテナを内蔵しており、
各梱包箱は、所定の位置に前記アンテナの位置を示す情報が付された外面を有し、当該所定の位置は、前記電子機器を前記梱包箱内に配置させた場合に前記電子機器の前記第1領域に対応する位置であり、
前記出荷ユニットはさらに、開放される面を有し、前記複数の梱包箱を収容する収容箱を備え、
前記複数の梱包箱は、前記アンテナの位置を示す情報が前記開放される面を向くように、前記収容箱内に配置されている、
出荷ユニット。
【請求項7】
前記電子機器が電源オンにしたときに前記電子機器の設定情報に基づいて設定を行うように、前記アンテナは、前記電子機器が電源オフ状態である場合に通信装置から前記設定情報を受信可能となるように構成されている、
請求項6に記載された出荷ユニット。
【請求項8】
前記電子機器は、プリンタであって、
前記設定情報は、前記プリンタの設定に関する情報、前記プリンタの言語設定の情報、前記プリンタのインタフェース設定の情報のうち少なくともいずれかの情報である、
請求項7に記載された出荷ユニット。
【請求項9】
前記電子機器は、携帯用プリンタである、
請求項6から8のいずれか一項に記載された出荷ユニット。
【請求項10】
前記通信装置は、前記電子機器から、前記電子機器の型式名称、バージョン情報、シリアルナンバーのうち少なくともいずれかの情報を受信する、
請求項
7又は8に記載された出荷ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触による短距離無線通信方式を利用した通信装置と電子機器の間の通信技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、近距離無線通信用の通信タグを備えた電子機器が知られている。例えば、特開2017-1335号公報には、かかる電子機器として、前面カバーの周辺に設けられた電源ボタンを囲むように通信タグが配置されたプリント装置が開示されている。このプリント装置が直方体の梱包箱に梱包された場合に、梱包箱の上面を開梱することで、通信端末をプリント装置の通信タグと通信可能な位置まで近付けることができる。そのため、プリント装置の出荷時にプリント装置の通信タグに対して情報の書き込み、又は読み出しを行う際にプリント装置全体を梱包箱から出すことなく作業を行うことができ、作業性が向上する、とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし上述した電子機器では、通信装置と通信タグとを通信可能とするために梱包箱の一部を開梱する必要があることから、未だ作業性を向上させる余地がある。
【0004】
そこで、本発明は、梱包箱に電子機器が梱包されている場合に、梱包箱を開梱することなく当該電子機器と外部の通信装置との間で非接触による短距離無線通信を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のある態様は、電子機器を梱包するための梱包箱であって、前記電子機器は、周囲に露出したいずれかの面の第1領域の近傍に、非接触による短距離無線通信のためのアンテナを内蔵している。前記梱包箱は、
前記電子機器が前記梱包箱に挿入される場合に開放される第1外面と、
前記第1外面とは異なる外面であって、所定の位置に前記アンテナの位置を示す情報が付された第2外面と、を備える。
当該所定の位置は、前記電子機器を前記梱包箱内に配置させた場合に前記電子機器の前記第1領域に対応する位置である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のある態様によれば、梱包箱に電子機器が梱包されている場合に、梱包箱を開梱することなく当該電子機器と外部の通信装置との間で非接触による短距離無線通信が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態に係る製品パッケージを収容する出荷ユニットを、上面を開放した状態で示す斜視図である。
【
図2】実施形態に係る製品パッケージの斜視図である。
【
図3】実施形態に係る製品パッケージの側面図である。
【
図4】実施形態に係る製品パッケージを、上面を開放した状態で示す平面図である。
【
図5】実施形態に係る梱包箱と、電子機器としてのプリンタとを示す斜視図である。
【
図6】梱包箱内のプリンタと外部の通信装置との間で通信が行われている状態を示す図である。
【
図7】実施形態に係る梱包箱の内装部材の組立て前の状態の一形態を示す平面図である。
【
図8】実施形態に係る梱包箱の内装部材の組立て前の状態の一形態を示す斜視図である。
【
図9】実施形態に係る梱包箱の内装部材の組立て前の状態の一形態を示す斜視図である。
【
図10】実施形態に係る梱包箱の外装部材の組立て前の状態の一形態を示す斜視図である。
【
図11】実施形態に係る梱包箱の外装部材の組立て前の状態の一形態を示す平面図である。
【
図12】実施形態においてプリンタおよび通信装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、2017年4月26日に日本国特許庁に出願された特願2017-86784の特許出願に関連しており、この出願のすべての内容が本願の明細書に参照によって組み込まれる。
【0009】
本開示において、「梱包箱に情報を付す」とは、梱包箱自体、又は、梱包箱に貼付したもの、若しくは梱包箱に取り付けたものに情報を表示させ、あるいは記述することを意味する。例えば、梱包箱自体に情報を記すことは「梱包箱に情報を付す」ことである。また、梱包箱に貼付したラベル、若しくは梱包箱に取り付けたタグに情報を印字することや記述することも「梱包箱に情報を付す」ことに含まれる。
本開示において、「通信装置を所定の位置に近接する(させる)」とは、通信装置が所与の通信規格に従って通信可能となる程度にまで通信装置を所定の位置に近付ける(近付けさせる)ことを意味し、必ずしも接触させることまでは要しない。通信装置が通信可能となるような所定の位置までの距離は、通信装置の性能や適用する通信規格等のファクタによって変動しうる事項である。
以下、本発明に係る、電子機器が梱包された梱包箱の一実施形態である製品パッケージについて説明する。本実施形態では電子機器の一例として携帯用プリンタを挙げるが、その限りではなく、デジタルカメラ、ビデオカメラ、あるいはパーソナルコンピュータ等の他の電子機器であってもよい。
【0010】
(1)出荷ユニット
以下、本実施形態の出荷ユニット1について
図1~3を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る製品パッケージを収容する出荷ユニット1を、上面を開放した状態で示す斜視図である。
図2は、本実施形態に係る製品パッケージ4の斜視図である。
図3は、本実施形態に係る製品パッケージ4の側面図である。
出荷ユニット1は、電子機器としての携帯用プリンタを、例えば製造工場や集荷倉庫から出荷する場合の出荷単位となるものである。
図1に示すように、出荷ユニット1には、収容箱5の中に複数(
図1の例では、10個)の製品パッケージ4が整列されて収納されている。出荷ユニット1に含まれる製品パッケージ4の数は、収容箱5のサイズに応じて適宜決定されうる。
【0011】
図2および
図3に示すように、本実施形態の製品パッケージ4は、概ね立方体形状をなしており、外面にラベルPLが貼付されている。
図2に示す例では、ラベルPLは製品パッケージ4の一側面に貼付されているが、ラベルPLが貼付される面は側面でなくてもよい。
図3に示すように、ラベルPLには、製品パッケージ4に含まれるプリンタの型名(MODEL NAME)、型番(MODEL CODE)、シリアル番号(SERIAL No.)、数(QTY)が表示されている。ラベルPLにはさらに、通信用マークM1が印字されている。通信用マークM1は、作業者が通信装置MTを利用して製品パッケージ4内のプリンタから情報を読み出す、あるいはプリンタに情報を書き込むために設けられている。後述するように、本実施形態では、作業者の通信装置MTを通信用マークM1に近接させることで、当該通信装置MTと製品パッケージ4内のプリンタとが非接触による近距離無線通信を行うことができるように構成されている。非接触による近距離無線通信として、例えばISO/IEC18092で規定される規格(狭義のNFC(Near Field Communication))、あるいはISO/IEC14443(近接型RFID)が挙げられる。
通信装置MTは、例えばスマートフォン、タブレット端末、ラップトップ型コンピュータ装置等である。
【0012】
図1に示すように、出荷ユニット1の上面を開放した状態では、収容箱5内の各製品パッケージ4のラベルPLが貼付された面が出荷ユニット1の上面を向くように、製品パッケージ4が配置されていることが好ましい。このように配置されている場合には、作業者は、出荷ユニット1の上面を開放するだけで、出荷ユニット1内のすべての製品パッケージ4に設けられている通信用マークM1に対して通信装置MTを近接させることができる。そのため、製品パッケージ4を収容箱5から取り出すことなく、各製品パッケージ4内のプリンタから情報を読み出す、あるいはプリンタに情報を書き込むことができる。
【0013】
(2)プリンタおよび製品パッケージ
次に、本実施形態のプリンタ10および製品パッケージ4について、
図4~6を参照して説明する。
図4は、本実施形態に係る製品パッケージ4を、上面を開放した状態で示す平面図である。
図5は、本実施形態に係る梱包箱2と、電子機器としてのプリンタ10とを示す斜視図である。
図6は、梱包箱2内のプリンタ10と外部の通信装置MTとの間で通信が行われている状態を示す図である。
【0014】
図4に示すように、製品パッケージ4は、プリンタ10の流通業者や購入者に引き渡されるものであり、梱包箱2内にプリンタ10と、プリンタ10の付属品15とが梱包された状態で構成されている。付属品15は、例えばプリンタ10の充電ケーブルなどである。
梱包箱2は、梱包箱2の外面を構成する直方体状の外装部材30と、外装部材30の内部に配設されている内装部材20とを含む。
図4に示すように、好ましくは、梱包箱2内では、プリンタ10と付属品15は内装部材20によって仕切られた状態で配置されており、梱包箱2内でのプリンタ10および付属品15の移動の自由度は非常に少ない。なお、梱包箱2内でのプリンタ10の移動の自由度をさらに少なくするために、プリンタ10の周囲の少なくとも一部にクッション材(例えばエアクッション)を設けてもよい。
【0015】
図5は、製品パッケージ4を作製するときにプリンタ10を梱包箱2に挿入するときの状態を示している。
図5に示すように、プリンタ10の周囲に露出したハウジング側部の面11には、ラベルPLに表示されている通信用マークM1と同じ形態の通信用マークM2が設けられている。この通信用マークM2は、プリンタ10との間で近距離無線通信を行うための好適な位置であることを作業者に認識させるために表示されている。プリンタ10には、通信用マークM2が設けられた領域(第1領域の例)の近傍に回路基板111が内蔵されている。回路基板111には、ICチップとアンテナを含む通信タグ112が実装されている。
なお、「第1領域の近傍」とは、例えば、プリンタ10のハウジング側部の面上の第1領域から少なくとも当該ハウジングの板厚分だけ離間していることを意味する。あるいは、プリンタ10のハウジング面に直交する方向から見たときに、第1領域(例えば、通信用マークM2が設けられた領域)と通信タグ112とが重複する領域を有するように配置されていてもよい。
【0016】
製品パッケージ4を作製するときには、プリンタ10は電源オフの状態で、かつ
図5に示す向きの状態を維持して梱包箱2に収納される。それによって、製品パッケージ4では、プリンタ10のハウジング側部の面11に設けられた通信用マークM2が、梱包箱2のラベルPLに表示されている通信用マークM1と近接するように位置決めされる。従って、プリンタ10を収納して梱包箱2を閉じた状態(つまり、製品パッケージ4の状態)であっても、通信装置MTによってプリンタ10の通信タグ112と近距離無線通信が可能となる位置を作業者が外部から認識することができる。
【0017】
なお、通信用マークM1と通信用マークM2を精度良く位置決めするために、ラベルPLの梱包箱2に対する貼付位置の精度が高いことが好ましい。その観点から、
図3に示すように、梱包箱2にラベルPLの貼付用の位置決めマークARを設けることが好ましい。
図3では、矩形のラベルPLの4頂点に対応して4箇所の位置決めマークARが設けられる例を示しているが、その限りではなく、ラベルPLの2頂点に対応した2箇所の位置決めマークARのみを設けてもよい。
【0018】
図6に示すように、製品パッケージ4の状態では、ラベルPLの通信用マークM1の位置と、プリンタ10に表示されている通信用マークM2とが図に示す側面視で一致しているため、通信装置MTを通信用マークM1に近接させることは、通信装置MTを通信用マークM2に近接させることに等しい。そのため、製品パッケージ4を作製した後、作業者は、通信装置MTを製品パッケージ4に貼付されたラベルPLの通信用マークM1に近接させることで、通信装置MTと、製品パッケージ4に含まれるプリンタ10との間で近距離無線通信を開始させることができる。
特に本実施形態で例示するプリンタ10は比較的小型の携帯型プリンタであるため、通信タグ112のアンテナサイズを大きく設定できない場合があるが、その場合でも通信用マークM1と通信用マークM2を精度良く一致させることができる。そのため、安定的な近距離無線通信を実現することができる。
【0019】
(3)梱包箱の構造
次に、本実施形態の梱包箱2の構造について、
図7~11を参照して説明する。
図7は、本実施形態に係る梱包箱2の内装部材20の組立て前の状態の一形態を示す平面図である。
図8および
図9は、それぞれ異なる視点から見た、本実施形態に係る梱包箱2の内装部材20の組立て前の状態の一形態を示す斜視図である。
図10は、本実施形態に係る梱包箱2の外装部材30の組立て前の状態の一形態を示す斜視図である。
図11は、本実施形態に係る梱包箱2の外装部材30の組立て前の状態の一形態を示す平面図である。
【0020】
図7に示すように、梱包箱2の内装部材20は、平板部21~27,281~282,291~292からなる平坦な部材によって構成されている。当該部材の材料は特に限定しないが、例えば紙である。
【0021】
図8に示すように、平板部25と平板部26の境界を谷折りにし、平板部26と平板部27の境界を谷折りにすることで、平板部26を底面とし、平板部25,27を側壁面とする空間SP1が形成される。空間SP1は、プリンタ10が収納される空間である(
図4を参照)。
図9に示すように、平板部21と平板部22の境界を谷折りにし、平板部22と平板部23の境界を谷折りにし、平板部22と平板部281,282の境界を谷折りにすることで、平板部22を底面とし、平板部21,23,281,282を側壁面とする空間SP2が形成される。空間SP2は、付属品15が収納される空間である(
図4を参照)。なお、平板部23の折り曲げ片23aは、空間SP2を二分するために設けられている(
図11参照)。
【0022】
図8、9に示すように、平板部23と平板部24の境界を山折りにし、平板部24と平板部25を山折りにすることで、規制部RSが形成される。規制部RSは、プリンタ10を空間SP1に配置させた場合にプリンタ10の通信用マークM2が梱包箱2の内面(より具体的には、平板部27の面)に近接するように、プリンタ10の梱包箱2内での配置を規制する。
規制部RSでは、平板部291,292と平板部24との境界を山折りにし、それによって、平板部291,292の両側の側端部が平板部23と平板部25に当接する。そのため、プリンタ10に強い力が加わった場合でも平板部25がプリンタ10を効果的に支持する。例えば、製品パッケージ4の運搬時の振動や製品パッケージ4の落下時の衝撃によってプリンタ10に強い力が加わった場合でも、プリンタ10の梱包箱2内での位置が変化しない。
【0023】
図10に示すように、梱包箱2の外装部材30は、蓋部31、平板部32,33、底部34、および、側部35を含み、全体として、収容空間30hが形成された直方体状をなしている。
図11に示すように、組み立てた内装部材20を外装部材30の収容空間30h内に収容することで梱包箱2が完成する。梱包箱2を閉じるには、蓋部31,平板部32,33をそれぞれ側部35に対して山折りにし、蓋部31の端部31aが側部35に内面に接するようにし、側部35の係合部35aを蓋部31の切り欠き部31hに係合させる(
図2も参照)。
【0024】
(4)プリンタ10および通信装置MTの構成
次に、
図12を参照して、プリンタ10および通信装置MTの構成について説明する。
図12は、本実施形態においてプリンタ10および通信装置MTの構成を示すブロック図である。
本実施形態の例では、プリンタ10は、複数のラベルが連続する連続紙がロール状となったロール紙を収容し、当該ラベルを印字して発行するプリンタである。
図12に示すように、プリンタ10は、制御部12、搬送部13、印字部14、操作入力部16、表示部17、ストレージ18、および、通信タグ112を備える。
【0025】
制御部12は、マイクロコントローラを主体として構成され、プリンタ10の全体を制御する。例えば、制御部12に含まれるマイクロプロセッサは、ストレージ18に記録されているファームウェアをロードして実行することで、様々な機能を実現する。例えば、制御部12は、印字データの生成、印字のための搬送部13および印字部14に対する制御等を行う。
【0026】
ストレージ18は、不揮発性の記憶装置であり、例えばフラッシュメモリ等のSSD(Solid State Drive)であってもよい。ストレージ18には、上述したファームウェアが記録されている。
ストレージ18には、プリンタ10の設定情報が記録されている。プリンタ10の設定情報は、プリンタ10の設定に関する情報、プリンタ10の言語設定の情報、プリンタ10のインタフェース設定の情報のうち少なくともいずれかの情報である。プリンタ10の設定情報は、ファームウェアをロードするときに同時に制御部12に転送され、ファームウェアに設定される。
【0027】
プリンタ10の設定は限定するものではないが、例えば、印字速度、印字濃度、ラベルサイズ(縦横のサイズ)、印字方式、センサ種類、表示言語、タイムゾーン、パワーセーブ時間、ピッチ補正、オフセット補正、ラベルニアエンド、リボンニアエンド、優先設定、単位等である。
プリンタ10の言語設定は、プリンタ10に対して描画を支持するためのプログラム言語(ページ記述言語)であり、複数の異なる言語の設定を含む。
プリンタ10のインタフェース設定は限定するものではないが、例えば、USB、RS232C、IEEE1284、Bluetooth(登録商標)、LAN、WLANのいずれか1つである。
【0028】
搬送部13は、図示しないプラテンローラ、モータ駆動回路、および、ステッピングモータを含み、ロール紙から連続紙を引き出して搬送を行う。例えば、制御部12による搬送要求に基づき、モータ駆動回路が、プラテンローラの回転を制御するステッピングモータを駆動することによって、連続紙を搬送させる。制御部12による搬送要求では、搬送方向(順方向あるいは逆方向)および搬送量が指定される。
【0029】
印字部14は、図示しないサーマルヘッドおよびヘッド駆動回路を含む。サーマルヘッドは上記プラテンローラとの間で連続紙を挟む。ヘッド駆動回路は、制御部12によって順次送出されるラインデータに基づき、サーマルヘッドの各発熱素子に選択的に電流を流す(発熱させる)ことで、印字を行う。
【0030】
操作入力部16は、ユーザからプリンタ10に対する操作入力を受け入れる部分であり、例えば、入力ボタンおよび入力インタフェース回路を含む。表示部17は、制御部12による処理結果に基づき、ユーザに対して通知すべき情報の表示出力を行う。
【0031】
通信タグ112は、前述したようにICチップとアンテナを含み、通信装置MTのリーダライタ45から送られる電磁波によって起電力を得て、リーダライタ45との間で近距離無線通信を行う。そのため、通信タグ112を動作させるのにプリンタ10が起動している(つまり、電源オンの状態である)必要はない。
通信タグ112のICチップには、プリンタ10の型式名称、バージョン情報、シリアルナンバーのうち少なくともいずれかの情報が記録されている。これらの情報は、通信装置MTのリーダライタ45によって読み取られる。
【0032】
通信タグ112のICチップには、通信装置MTのリーダライタ45から、プリンタ10の設定情報が書き込まれうる。制御部12は、電源オン時などの起動シーケンスにおいて、通信タグ112に書き込まれたプリンタ10の設定情報を読み出し、当該読み出した設定情報によってファームウェアを動作させる。制御部12は、電源オン時の起動時のシーケンス、あるいは電源オフ時の終了時のシーケンスにおいて、通信タグ112から読み出した設定情報によりストレージ18に記載されている設定情報を更新してもよい。
【0033】
通信装置MTは、制御部41と、ストレージ42、操作入力部43、表示部44、および、リーダライタ45とを備える。操作入力部43は、好ましくはタッチパネルに対するタッチ入力を受け付けるが、他の入力手段による入力を受け付けてもよい。
制御部41は、マイクロコントローラを備え、ストレージ42に記録されているアプリケーションプログラムをRAMにロードして実行する。
制御部41は、操作入力部43を介した作業者の指示入力に基づいて、リーダライタ45を動作可能となるように構成してもよい。
【0034】
リーダライタ45は、プリンタ10の通信タグ112から情報を読み出す、あるいは通信タグ112に対して情報を書き込む。制御部41は、リーダライタ45が読み出した情報を表示部44に表示させてもよい。制御部41は、通信タグ112に記録された情報をストレージ42に記録してもよい。
【0035】
(5)通信方法
次に、本実施形態の通信方法について説明する。本実施形態の通信方法は、プリンタ10を含む製品パッケージ4を開梱することなく、通信装置MTによりプリンタ10の情報を読み出し、あるいはプリンタ10に情報を書き込むための通信方法である。
【0036】
製品パッケージ4は、配送のためにプリンタ10を含み、当然ながらプリンタ10の電源はオフ状態となっている。そのような場合、例えば、プリンタ10の在庫状況を確認する、あるいは既に製品パッケージ4に収納したプリンタ10の設定を変更する、といった目的のために、作業者が製品パッケージ4内のプリンタ10の情報を読み出したい、あるいはプリンタ10に情報を書き込みたいという要請がある。このとき、特に製品パッケージ4の数が非常に多い場合には、製品パッケージ4を1つ1つ開梱し、必要であればプリンタ10の電源を起動して情報を読み出し、書き込みをしなければならないとしたならば、極めて多大な工数を要する。
そこで、本実施形態に係る通信方法では、製品パッケージ4を開梱することなく短時間で、プリンタ10の情報を読み出す、あるいはプリンタ10に情報を書き込むことを可能とする。
【0037】
本実施形態の具体的な通信方法の手順は以下のとおりである。
作業者は、起動させた通信装置MTを梱包箱2に貼付されたラベルPLの通信用マークM1に近接させる(つまり、通信装置MTを通信用マークM1にかざす)。前述したように、通信用マークM1と通信タグ112は、梱包箱の平板部を隔てて極めて近接しており、この近接状態は規制部RSにより維持されているため、非接触による近距離無線通信を行うことができる。すなわち、リーダライタ45によって発信される所定周波数の電磁波によってプリンタ10の通信タグ112に起電力が生じ、プリンタ10を起動させることなく、リーダライタ45と通信タグ112の間で近距離無線通信が開始する。
【0038】
リーダライタ45と通信タグ112の間の通信が開始すると、通信装置MTのリーダライタ45は、通信タグ112に記録されている、プリンタ10の型式名称、バージョン情報、シリアルナンバーのうち少なくともいずれかの情報を読み出して、通信タグ112内に記録する。このとき、制御部41は、通信タグ112に記録された情報を表示部44に表示させる。それによって、作業者は、通信装置MTの画面を見ることでプリンタ10についての情報を得ることができる。また、特定のロットのプリンタ10の情報が一括して得られる利点がある。
【0039】
また、リーダライタ45と通信タグ112の間の通信が開始すると、通信装置MTのリーダライタ45は、通信タグ112にプリンタ10の設定情報を書き込む。プリンタ10の設定情報、前述したように、プリンタ10の設定に関する情報、プリンタ10の言語設定の情報、プリンタ10のインタフェース設定の情報のうち少なくともいずれかの情報である。
その後、製品パッケージ4からプリンタ10が取り出され、プリンタ10を電源オンにしたときには、起動シーケンスにおいて、通信タグ112に書き込まれたプリンタ10の設定情報を読み出し、当該読み出した設定情報によってファームウェアを動作させる。そのため、リーダライタ45による設定情報の書き込みによって、プリンタ10の設定を変更することができる(つまり、プリンタ10の設定を行う)。
なお、制御部41は、通信タグ112に書き込まれたプリンタ10の設定情報をストレージ42に記録しておくことが好ましい。
【0040】
本実施形態では、電子機器の例として携帯用プリンタを挙げたが、携帯用プリンタを本発明に適用する場合には、以下の効果がある。
大型のプリンタの場合には梱包箱に収納させる際に、耐衝撃性の観点からプリンタの周囲に発泡スチロール等の分厚い緩衝材が必要となるため、梱包箱の表面からプリンタの外面までの距離が長くなる傾向にある。そのため、開梱することなく外部から通信装置により近距離無線通信を行う場合に、通信装置から見てプリンタ内の通信タグが通信可能範囲を超え、通信できない場合がある。
それに対して、携帯用プリンタの場合には高い耐衝撃性が必要ないため、例えば周囲にエアクッションを要しないか、エアクションを周囲に取り付ける場合でも薄型のもので済み、梱包箱の表面から携帯用プリンタ内の通信タグまでの距離を短くすることができる。そのため、携帯用プリンタの場合には本実施形態で説明したような近距離無線通信を実現させやすいという効果がある。
【0041】
以上、本発明の通信方法、梱包箱、電子機器が梱包された梱包箱の一実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されない。また、上記の実施形態は、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更が可能である。
例えば、通信タグに記録し、あるいは通信タグから読み出す情報について、実施形態で言及したものは一例に過ぎず、対象とする電子機器に応じて適宜設定してよい。
【0042】
上述した実施形態では、通信用マークM1を含むラベルPLが貼付される面が梱包箱2の側面で場合について説明したが、その限りではない。ラベルPLは梱包箱2のいずれの面に貼付してもよい。ラベルPLが貼付される面、すなわち通信用マークM1が表示される位置に応じて、当業者であれば、梱包箱2内の内装部材の構成を、プリンタ10の通信用マークM2が通信用マークM1と一致するように改変することができる。
【符号の説明】
【0043】
1…出荷ユニット
2…梱包箱
4…製品パッケージ
5…収容箱
10…プリンタ
11…ハウジング側部の面
111…回路基板
112…通信タグ
12…制御部
13…搬送部
14…印字部
15…付属品
16…操作入力部
17…表示部
20…内装部材
21,22,23,24,25,26,27,281,282,291,292…平板
部
30…外装部材
31…蓋部
32,33…平板部
34…底部
35…側部
31a…端部
35a…係合部
30h…収容空間
31h…切り欠き部
MT…通信装置
41…制御部
42…ストレージ
43…操作入力部
44…表示部
45…リーダライタ
PL…ラベル
AR…位置決めマーク
M1,M2…通信用マーク