(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-27
(45)【発行日】2023-01-11
(54)【発明の名称】音響パネルを脱水するための方法
(51)【国際特許分類】
G10K 11/162 20060101AFI20221228BHJP
D21J 1/00 20060101ALI20221228BHJP
D21H 17/09 20060101ALI20221228BHJP
G10K 11/16 20060101ALI20221228BHJP
E04B 1/99 20060101ALN20221228BHJP
【FI】
G10K11/162
D21J1/00
D21H17/09
G10K11/16 120
E04B1/99 Z
(21)【出願番号】P 2019528625
(86)(22)【出願日】2017-12-13
(86)【国際出願番号】 US2017066033
(87)【国際公開番号】W WO2018112007
(87)【国際公開日】2018-06-21
【審査請求日】2020-11-24
(32)【優先日】2016-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512127109
【氏名又は名称】ユーエスジー・インテリアズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユーフェン・スー
【審査官】堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-316859(JP,A)
【文献】特開平08-066985(JP,A)
【文献】特表2011-503402(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/16-11/168
D21J 1/00
D21H 17/09
G10K 11/16
E04B 1/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響パネルベースマットを形成する方法であって、
アルキルエーテルサルフェート界面活性剤を含む未加工のボードスラリーを提供することであって、前記未加工のボードスラリーが、10
重量%~40重量%の固体を含み、前記固体は
、前記固体の総重量に基づき、10重量%~
50重量%の岩綿、
40重量%~
約80重量%の鉱物骨材、5重量%~30重量%のセルロース、0.5重量%~20重量%の結合剤、0.1重量%~3.0重量%の界面活性剤を含む、提供することと、
脱水された未加工のボードを形成するために、前記未加工のボードスラリーを脱水することであって、前記脱水することが、前記未加工のボードスラリーに、熱気を供給すること、および真空を適用することを含む、脱水することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記未加工のボード
スラリーに、前記熱気が供給され、同時に前記真空が適用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記
結合剤が
、デンプン
を含む、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項4】
脱水することが、プレスステップをさらに含む、請求項1~
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記未加工のボードが、プレス後に、約22重量%~約28重量%の固体を含む、請求項
4に記載の方法。
【請求項6】
前記熱気が、約250°F(約120℃)~約500°F(約260℃)の範囲の温度を有する、請求項1~
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
乾燥ベースマットを提供するために、脱水後に乾燥ステップをさらに含む、請求項1~
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
脱水することが、界面活性剤を含まずに周囲条件下で未加工のボードを脱水することによって形成された同等のベースマットと比較して、少なくとも約5%の水分の低減を達成する、請求項1~
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記乾燥ベースマットが、界面活性剤を含まない同等のベースマットと比較して、10%以下の破断係数(MOR)値の低減を実証する、請求項
7に記載の方法。
【請求項10】
前記鉱物骨材が石膏を含まない、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、未加工のボードを脱水するためのプロセスに関する。より具体的には、本開示は、界面活性剤を熱気および真空と組み合わせて使用することを含む、未加工のボードを脱水するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の天井タイルおよび音響パネル用のベースマットなどの繊維質のパネルは、典型的には、湿式形成プロセスを使用して作製されている。繊維質のパネルを構成するであろう構成要素を、まず水中で混合して分散体を形成し、次いで長網抄紙機のものなどの移動式支持ワイヤスクリーン上に流して未加工のボードを形成する。次いで、まず重力、および次いで真空吸引手段によって、未加工のボードを脱水し、続いて加熱した対流乾燥オーブン中で乾燥して、音響パネルの軽量ベースマットを形成する。加熱した対流乾燥オーブンでの乾燥は、典型的には、製造を制限するステップであり、同様に最も費用のかかる製造ステップである。
【発明の概要】
【0003】
本開示の一態様は、音響パネルベースマットを形成する方法であって、アルキルエーテルサルフェート界面活性剤を含む未加工のボードスラリーを提供することであって、未加工のボードスラリーが、10重量%~40重量%の固体を含み、前記固体は、前記固体の総重量に基づき、10重量%~50重量%の岩綿、40重量%~約80重量%の鉱物骨材、5重量%~30重量%のセルロース、0.5重量%~20重量%の結合剤、0.1重量%~3.0重量%の界面活性剤を含む、提供することと、未加工のボードスラリーを脱水して脱水された未加工のボードを形成することであって、脱水することが、未加工のボードスラリーに、熱気を供給すること、および真空を適用することを含む、脱水することと、を含む方法を提供する。
【0004】
さらなる態様および利点は、以下の詳細な説明を考察することにより当業者には明らかとなるであろう。方法および組成物は、様々な形態の実施形態において可能であるが、以下の説明は、本開示が説明的なものであり、本開示を本明細書に記載の特定の実施形態に限定することを意図しないという理解のもとに、特定の実施形態を含む。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本開示は、音響パネルベースマットを形成する方法であって、アルキルエーテルサルフェート界面活性剤を含む未加工のボードを提供することであって、未加工のボードが、約10~約40重量%の固体を含む、提供することと、未加工のボードスラリーを脱水して脱水された未加工のボードを形成することであって、脱水することが、未加工のボードに、熱気を供給すること、および真空を適用することを含む、脱水することと、を含む方法を提供する。
【0006】
有利なことに、未加工のボードを脱水することが、熱気および真空の両方と、本明細書に開示のアルキルエーテルサルフェート界面活性剤を組み合わせた使用を含むとき、得られる脱水された未加工のボードおよび/または乾燥ベースマットは、脱水後の未加工のボード中の水分含有量の低減を含む、1つ以上の利点を提供し、それによって未加工のボードを乾燥して、界面活性剤を含まず従来の工業的プロセスに従って脱水された未加工のボードから形成された同等のベースマットと比較して、改善されずとも同様の強度を実証するベースマットを形成する時間および費用を低減する。
【0007】
本明細書で使用する場合、「未加工のボード」とは、重力脱水ステップの開始時およびステップの間、ならびに組成物が乾燥されて最終ベースマットを形成するまでの、組成物スラリーを指す。したがって、本明細書で使用する場合、「脱水された未加工のボード」とは、真空脱水後の、およびオーブン乾燥前の未加工のボードを指し、「ベースマット」とは、オーブン乾燥後の乾燥組成物を指す。
【0008】
本明細書で使用するときの「同等のベースマット」または「同等の未加工のボード」は、例えば、「界面活性剤を添加されていない」、「本開示の界面活性剤を添加されていない」、および/または「従来の工業的プロセスに従って脱水された」などの修飾語句を含む。本明細書で使用する場合、「同等のベースマット」または「同等の未加工のボード」とは、未加工のボードおよび/もしくはベースマットの組成が、第1のものと比較して第2の未加工のボードおよび/もしくはベースマットと同じであることを意味し、ならびに/または未加工のボードおよび/もしくはベースマットを調製するプロセスが、特筆する変更条件を除いて第2の未加工のボードおよび/もしくはベースマットと同じであり、典型的にはその変更条件が、比較する同等のベースマットおよび/もしくは同等の未加工のボードに界面活性剤が含まれず、および/もしくアルキルエーテルサルフェートが比較する同等のベースマットおよび/もしくは同等の未加工のボードに含まれず、および/もしく比較する同等の未加工のボードの脱水中に熱気が適用されないことである。
【0009】
本明細書で使用する場合、パネルおよびタイルという用語は、互換的であるとみなされるべきである。
【0010】
実施形態では、未加工のボードは、岩綿、セルロース、鉱物骨材、およびデンプンをさらに含む。実施形態では、脱水中に適用される熱気は、約250°F(約120℃)~約500°F(約260℃)の範囲の温度を有する。実施形態では、脱水は、界面活性剤を含まないおよび/またはアルキルエーテルサルフェートを含まない同等の条件下で未加工のボードを脱水することによって形成された同等のベースマットと比較して、少なくとも約5%の水分の低減を達成する。
【0011】
実施形態では、方法は、乾燥ベースマットを形成するための乾燥ステップをさらに含む。任意選択的に、脱水された未加工のボードは、約300°F(約204℃)~約600°F(約316℃)の温度で乾燥される。実施形態では、乾燥ベースマットは、界面活性剤を含まない同等のベースマットと比較して、以下記載のASTM C367によって決定された場合、約10%以下の破断係数(MOR)値の低減を実証する。理論に拘束されることを意図しないが、未加工のボードを脱水する効率を顕著に改善するのに十分な量で、未加工のボードスラリーに界面活性剤が含まれるとき、最終ベースマットの、MOR値によって特徴付けられる強度が劇的に低下すると思われる。有利なことに、熱気の使用が脱水プロセスでの界面活性剤の効率を大きく増大し、未加工のボードを本開示に従って脱水することから形成されたベースマットが、界面活性剤を含まない同等のベースマットと比較して、顕著なMOR値の低下を実証せず(例えば、MOR値の低減が10%以下である)、場合によっては、改善されたMOR値を実証するのに十分な少ない量で、界面活性剤を使用することを可能にするような、本開示のアルキルエーテルサルフェート界面活性剤と、真空脱水ステップ中の熱気の適用との間の相乗関係が見出された。
【0012】
任意選択的に、未加工のボードは、実質的に無機酸を含まない。任意選択的に、未加工のボードは、実質的に樹脂ラテックスを含まない。本明細書で使用する場合、「実質的に無機酸を含まない」および「実質的に樹脂ラテックスを含まない」とは、未加工のボード組成物が、顕著な量の無機酸または樹脂ラテックスを含有しないことを意味する。したがって、本開示に従ったコーティング組成物中に、偶発的な量または自然界に存在する量(例えば、合計固体含有量に基づいて0.5重量%未満)の無機酸または樹脂ラテックスが存在する場合があり、これは本開示の範囲内である。
【0013】
未加工のボードの組成
一般に、本開示の未加工のボードは、水、岩綿、鉱物骨材、セルロース、結合剤、および界面活性剤を含む。
【0014】
岩綿は、バサルト、スラグ、グラナイト、または他のガラス質の鉱物成分の溶融流を捕捉することによって調製された従来の鉱物繊維のうちのいずれかであり得る。最終パネル製品の合計乾燥固体含有量の重量パーセントの観点で表現すると、岩綿成分は、約10%~約60%、約10%~約50%、約12%~約40%、約12%~約30%、約15%~約25%、約17%~約23%、または約18%~約22%の範囲の量、例えば、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、または約60%の量で存在し得る。
【0015】
鉱物骨材は、発泡パーライト、バーミキュライト、発泡バーミキュライト、粘土、剥離粘土、および軽石が挙げられるが、これらに限定されない剥離されたガラスもしくは発泡ガラスが源である軽量無機骨材であり得るか、または鉱物骨材は、スタッコ(硫酸カルシウム半水和物)、石膏、および大理石が挙げられるがこれらに限定されない高密度鉱物骨材であり得る。実施形態では、鉱物骨材は、発泡パーライト、バーミキュライト、粘土、軽石、スタッコ、石膏、大理石、およびそこの組み合わせからなる群から選択される。実施形態では、鉱物骨材は、発泡パーライト、バーミキュライト、粘土、軽石、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。実施形態では、鉱物骨材は、発泡パーライトを含む。実施形態では、鉱物骨材は、実質的に石膏を含まない。
【0016】
最終パネル製品の合計乾燥固体含有量の重量パーセントの観点で表すと、鉱物骨材は、約35%~約85%、約40%~約80%、約45%~約75%、約50%~約70%、約55%~約65%、約55%~約61%の範囲の量、または約55%~約60%、例えば、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、または約85%の量で存在し得る。
【0017】
有機繊維の例であるセルロース繊維は、最終ベースマットの構造的要素として機能する。セルロース繊維は、典型的には、再生された新聞用紙の形態で提供される。過剰発行された新聞紙(OIN)および古雑誌(OMG)が、新聞用紙に加えて、または新聞用紙の代わりとして使用されてもよい。最終パネル製品の合計乾燥固体含有量の重量パーセントの観点で表すと、セルロースは、約5%~約30%、約5%~約25%、約10%~約20%、約10%~約15%、約11%~約27%、または約12%~約16%の範囲の量、例えば、約5%、約10%、約12%、約14%、約16%、約18%、約20%、約25%、または約30%の量で存在し得る。
【0018】
結合剤としては、デンプン、ラテックス、および水で戻した紙製品が挙げられ得る。デンプンなどの有機結合剤は、多くの場合、得られるパネルに構造的な接着を提供する主要な構成要素である。他の理由の中でも、比較的廉価なので、デンプンは、好ましい有機結合剤である。典型的なデンプンとしては、非修飾トウモロコシデンプンが挙げられるがこれに限定されない、非修飾デンプンが挙げられる。実施形態では、結合剤は、実質的にラテックスを含まない。
【0019】
最終パネル製品の合計乾燥固体含有量の重量パーセントの観点で表すと、結合剤は、約0.5%~約20%、約1%~約16%、約2%~約14%、約4%~約12%、約5%~約11%、約5%~約15%、約6%~約10%、または約7%~約9%の範囲の量、例えば、約0.5%、約1%、約2%、約4%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約12%、約16%、または約20%の量で存在し得る。
【0020】
界面活性剤としては、GEO Specialty ChemicalsからのHyonic(登録商標)25AS、カプリレスサルフェートとカプレスサルフェートアンモニウム塩との組み合わせなどの、アルキルエーテルサルフェート界面活性剤が挙げられ得る。アルキルエーテルサルフェート界面活性剤は、これらの構造にポリエチレングリコール単位を含有するエトキシル化アルキルサルフェートの塩である。好適なアルキルエーテルサルフェート界面活性剤としては、C6~C26-アルキルエーテルサルフェート、C6~C20-アルキルエーテルサルフェート、C6~C16-アルキルエーテルサルフェート、またはC6~C12-アルキルエーテルサルフェートが挙げられるが、これらに限定されない。好適なアルキルエーテルサルフェート塩の例としては、ラウレスサルフェート(すなわち、ラウリルエーテルサルフェート)、カプリレスサルフェート、カプレスサルフェート、パレスサルフェート、ミレスサルフェート、ドリデセス(drideceth)サルフェート、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。実施形態では、アルキルエーテルサルフェートは、カプリレスサルフェートアンモニウム塩、カプレスサルフェートアンモニウム塩、およびこれらの組み合わせから選択される。アルキルエーテルサルフェート塩としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、およびアンモニウムが挙げられるが、これらに限定されない任意の好適な対カチオンが挙げられ得る。実施形態では、アルキルエーテルサルフェート界面活性剤は、ナトリウム塩である。実施形態では、アルキルエーテルサルフェート界面活性剤は、アンモニウム塩である。最終パネル製品の合計固体含有量の重量パーセントの観点で表すと、未希釈または100%の活性界面活性剤溶液として界面活性剤は、約0.10%~約3.00%、約0.15%~約2.50%、約0.20%~約2.0%、または約0.1%~約0.5%の範囲の量で未加工のボードスラリーに提供され得る。界面活性剤が希釈溶液として、例えば、30%の活性物質含有量で提供される場合、含まれる界面活性剤溶液の量は、活性界面活性剤が前述の範囲で添加されるように調節されるべきであることを、当業者は容易に認識するであろう。界面活性剤は、脱水中に水分と共に除去され、例えば、最大50%、最大75%、最大80%、最大90%、または90%を超える界面活性剤が脱水中に除去されるため、最終乾燥ベースマットに存在する界面活性剤の量は、未加工のボードスラリーに最初に提供される量未満であることを、当業者は理解するであろう。脱水中に除去された界面活性剤は、収集され、再使用されてもよい。
【0021】
驚くべきことに、アルキルエーテルサルフェート界面活性剤が、上述の量で未加工のボード組成物に提供され、脱水中に熱気が適用されると、未加工のボード組成物から調製された乾燥ベースマットは、従来の工業的プロセスに従って界面活性剤が添加されなかった未加工のボードから形成された同等のベースマット、またはアルキルエーテルサルフェート界面活性剤以外の界面活性剤が添加された未加工のボードから形成されたベースマットと比較して、改善されずとも同様の強度を実証することが見出された。界面活性剤は、得られる乾燥ベースマットの、MOR値によって特徴付けられる強度を低下させると予測されるため、典型的には、界面活性剤は未加工のボード組成物に含まれない。乾燥ベースマットが、工業的な基準に従って界面活性剤が添加されていない未加工のボードから形成された同等のベースマットのMOR値の10%以下のMOR値の低減を実証する場合、本開示の未加工のボード組成物から形成された乾燥ベースマットは、従来の未加工のボード組成物、および従来の工業的プロセスに従ったベースマット調製方法を使用して調製されたベースマットと同様の許容可能な強度を有すると考えられる。
【0022】
未加工のボードスラリーを調製するとき、岩綿、セルロース、鉱物骨材、結合剤、および界面活性剤の添加順序は特に限定されない。実施形態では、岩綿、セルロース、鉱物骨材、および結合剤は、水分と混合され、界面活性剤は、均質な分布を達成するために脱水の直前に添加および混合される。実施形態では、真空脱水の前に、未加工のボードは、約10重量%~約45重量%の固体、約10%~約30%、約15重量%~約35重量%の固体、または約15重量%~約25重量%の固体を含む。
【0023】
実施形態では、本開示の未加工のボードは、固体の合計重量に基づいて、約15%~約25%の岩綿、約10%~約15%のセルロース、約50%~約70%の鉱物骨材、約6%~約10%の結合剤、および約0.1%~約0.5%の界面活性剤を含む。実施形態では、未加工のボードは岩綿を含み、セルロースは再生された新聞紙繊維によって提供され、鉱物骨材は発泡パーライトを含み、結合剤は非修飾トウモロコシデンプンを含み、界面活性剤はアルキルエーテルサルフェート界面活性剤を含む。
【0024】
脱水
音響パネルは、例えば、湿式フェルト製造プロセスに従って、本開示の未加工のボード組成物を使用して調製することができる。このプロセスのうちの1つのバージョンについては、その全体が参照により本明細書に援用される、米国特許第5,911,818号に記載されている。一般に、未加工のボード組成物の水性希釈分散液を含む水性スラリーは、長網抄紙機タイプのマット形成機の、小さな孔の開いた移動式ワイヤ上に送達される。未加工のボードスラリーは、最初に重力によって脱水され、未加工のボードは、真空吸引の手段によってさらに脱水される。本開示のプロセスでは、脱水プロセスは、熱気の適用をさらに含む。次いで、脱水された未加工のボードは、加熱したオーブンまたはキルンで乾燥させて残留湿気を除去し、乾燥ベースマットを形成する。乾燥ベースマットを仕上げることによって、パネルの許容可能なサイズ、外観、および音響特性が得られる。仕上げとしては、表面の研磨、切断、穿孔、ヒビ入れ、ロール/スプレーコーティング、縁の切断、および/またはスクリムもしくはスクリーン上へのパネルの積層が挙げられる。
【0025】
実験室規模の試料を提供するために、未加工のボード組成物の水性希釈分散液の水性スラリーをTappi形成機に提供してもよい。未加工のボードスラリーは、重力、続いて真空吸引によって脱水される。本開示のプロセスでは、脱水プロセスは、熱気の適用をさらに含む。次いで、脱水された未加工のボードは、加熱したオーブンまたはキルンで乾燥させて、研究室規模の乾燥ベースマットを提供する。
【0026】
本開示は、音響パネルベースマットを形成する方法であって、界面活性剤を含む未加工のボードを提供することと、未加工のボードスラリーを脱水して脱水された未加工のボードを形成することであって、脱水することが、未加工のボードに、熱気を供給すること、および真空を適用することを含む、脱水することと、を含む方法を提供する。
【0027】
熱気は、例えば、長網抄紙機タイプのマット形成機またはTappi形成機の小さな孔の開いたワイヤの上に熱源を置くなど、任意の好適な様式で供給することができる。熱気は、約250°F(約120℃)~約500°F(約260℃)、または約350°F(約177℃)~約400°F(約204℃)の範囲の温度、例えば、約250°F、300°F、350°F、400°F、450°F、または約500°Fの温度で供給され得る。熱気の温度は、特に限定されないが、熱気の温度は、長網抄紙機タイプのマット形成機の小さな孔の開いたワイヤの融解温度未満であるべきである。
【0028】
実施形態では、未加工のボードへの真空の適用は、第1の真空ステップと、第2の真空ステップとを含む。任意選択的に、第1の真空ステップと第2の真空ステップとの間に、プレスステップが設けられ得る。未加工のボードは、所望の厚さを達成するようにプレスされ得る。好適には、未加工のボードの厚さは、約0.50インチ(約1.3cm)~約0.75インチ(約1.9cm)、約0.60インチ(約1.5cm)~約0.70インチ(約1.8cm)の範囲、例えば、約0.55インチ、約0.60インチ、約0.65インチ、約0.70インチ、または約0.75インチであり得る。実施形態では、未加工のボードは、プレス後に、約22重量%~約28重量%の固体含有量を有し得る。実施形態では、未加工のボードは、第2の真空ステップの後で、約25重量%~約40重量%、または約28重量%~約38重量%の固体含有量を有し得る。
【0029】
熱気は、真空の前または同時に供給されてもよい。実施形態では、熱気は、真空の適用と同時に供給される。2つの真空ステップを含む実施形態では、熱気は、両方の真空ステップにおける真空の適用と同時に供給されてもよい。2つの真空ステップを含む実施形態では、熱気は、少なくとも第2の真空ステップにおける真空の適用と同時に供給されてもよい。
【0030】
水銀柱インチ(inHg)で約3インチ~約15水銀柱インチの真空が、未加工のボードに適用され得る。実施形態では、約3水銀柱インチ(約0.10バール)~約7水銀柱インチ(約0.23バール)、または約4水銀柱インチ(約0.13バール)~約6水銀柱インチ(約0.20バール)、例えば、約3水銀柱インチ、約4水銀柱インチ、約5水銀柱インチ、約6水銀柱インチ、または約7水銀柱インチの第1の真空、続いて約5水銀柱インチ(約0.17バール)~約15水銀柱インチ(約0.51バール)、約6水銀柱インチ~約14水銀柱インチ(約0.47)、約7水銀柱インチ~約13水銀柱インチ(約0.44バール)、約8水銀柱インチ(約0.27バール)~約12水銀柱インチ(約0.41バール)、または約9水銀柱インチ(約0.30バール)~約11水銀柱インチ(約0.37バール)、例えば、約5水銀柱インチ、約6水銀柱インチ、約7水銀柱インチ、約8水銀柱インチ、約9水銀柱インチ、約10水銀柱インチ、約11水銀柱インチ、約12水銀柱インチ、約13水銀柱インチ、約14水銀柱インチ、または約15水銀柱インチの第2のより高い真空が適用され得る。
【0031】
実施形態では、界面活性剤または熱気を含まない周囲条件下で未加工のボードを脱水することによって形成された同等のベースマットと比較して、脱水は、少なくとも約5%、少なくとも約6%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、または少なくとも約30%、例えば、約5%~約30%、または約6%~約25%の範囲の水分の低減を達成する。水分低減の百分率は、脱水された未加工のボードの含水量における差を比較することによって決定することができる。
【0032】
乾燥
本開示の方法は、乾燥ステップをさらに含み得る。脱水された未加工のボードは、加熱したオーブンまたはキルンで乾燥され得る。脱水ステップは、一般に、最も時間を消費し費用のかかる、ベースマット製造のステップである。脱水された未加工のボードは、オーブンまたはクリンでの乾燥に数時間かかり得るため、製造されるベースマットの量は、乾燥することができるベースマットの数によって制限される。したがって、脱水ステップ中に除去することができる水が多いほど、未加工のボードがオーブンで乾燥されるのに必要であろう時間がより少なく、ベースマットが製造されるにかかる費用がより少なく、製造されるベースマットの数を有利に増加することができる。
【0033】
脱水された未加工のボードは、任意の好適な温度で乾燥され得る。実施形態では、脱水された未加工のボードは、約300°F(約150℃)~約600°F(約315℃)、約400°F(約205℃)~約600°F、または約450°F(約230℃)~約550°F(約290℃)、例えば、約300°F、約250°F、約400°F、約450°F、約500°F、約550°F、または約600°Fの温度で乾燥され得る。
【0034】
上記のように、本開示の乾燥ベースマットは、界面活性剤が添加されていない未加工のボードから形成された同等のベースマットのMOR値の10%以下のMOR値の低減を実証する。
【0035】
含水量の決定
未加工のボードの含水量とは、lbs/MSFで表される、1000平方フィートの未加工のボード中の水分のポンド数を指す。含水量を決定するために、約1.5フィート2のサイズを有する未加工のボードの重量を、秤を使用して決定した。次いで、1000平方フィートの面積を有する対応する未加工のボードの含水量を計算し、得られる含水量をlbs/MSFで報告する。
【0036】
MOR値および硬さ値の決定
MOR値および硬さ値は、Instron機または同等物を使用してASTM C367に従って決定する。簡潔には、試験試料片は、幅約3インチおよび長さ10インチである。支持表面の範囲は、約8インチである。失敗が発生するまで、約1.97インチ/分のクロスヘッド速度で試料片の中心に負荷を適用した。破断係数を、
MOR=3PL/(2bd2)
式中、Pがlbfでの最大負荷であり、Lがインチでのスパン長であり、bがインチでの試料片の幅であり、dがインチでの試料片の厚さである等式に従って、計算する。
【0037】
固体含有量の決定
脱水された未加工のボードの固体含有量は、以下のように計算される。
固体含有量=(乾燥した未加工のボードの重量/脱水後の未加工のボードの重量)×100
真空脱水前および真空脱水後の未加工のボードの重量は、少なくとも0.1gの精度を有するスケールを使用して決定した。
【0038】
本開示のパネルおよび方法を単に説明することを意図し、決してこれらの範囲を限定することを意味しない以下の実施例を考慮して、本開示に従った組成物、パネル、および方法は、より良好に理解されることができる。
【実施例】
【0039】
実施例1
湿式形成プロセスを使用して、固体材料の合計重量に基づいて、20重量%の岩綿、14重量%の再生された新聞用紙繊維、58重量%の発泡パーライト、および8重量%の非修飾トウモロコシデンプンから天井タイルを形成した。材料を水中で混合して、スラリーを提供し、これをTappi形成機を使用して脱水して未加工のボードを形成した。未加工のボードを、Tappi形成機を使用した真空適用によって脱水し、真空を適用せずに液圧プレスを使用しておよそ0.65インチ(約1.67cm)にプレスし、Tappi形成機を使用した2度目の真空適用によってさらに脱水した。界面活性剤を含む実証実験では、本開示のアルキルエーテルサルフェートアニオン性界面活性剤(GEO Specialty ChemicalsからのHyonic(登録商標)25AS)を30重量%の界面活性剤溶液として適用したベースマットの乾燥固体の合計重量に基づいて、Tappiボードの形成の前に約0.40重量%の未希釈の界面活性剤をスラリー中に含んだ。真空と同時に熱気を使用する実証実験では、500°F(約260℃)に加熱したオーブンを、熱源として使用し、断熱した可撓性ホースを通じて熱気をオーブンからTappi形成機に引き、Tappi形成機の最上部にキャップを置いた。Tappi形成機に入る熱気の温度は、約385°F(約196℃)であると計測された。熱気を使用しない実証実験では、オーブンをTappi形成機に接続せず、周囲温度の空気(「冷気」)を使用した。2度目の真空適用後に、脱水した未加工のボードを約500°F(約260℃)のオーブンに1時間、次いで300°F(約150℃)で4時間置いて乾燥ベースマットを形成した。
【0040】
以下の表1は、脱水条件、および界面活性剤がスラリー組成物中に含まれているかを記載している。条件の各セットは、少なくとも3回試験され、界面活性剤を含まず熱気を使用せず脱水された同等の対照ボードと比較した、脱水された未加工のボードの固体含有量の平均値(すなわち、2度目の真空適用ステップ後)、脱水された未加工のボードの含水量、本開示に従った脱水プロセスからの未加工のボードの水分低減、および密度、MOR値、弾性係数(MOE)値、および脱水された未加工のボードを1時間オーブンで乾燥後に得られたベースマットの硬さ値、が以下に提供される。
【0041】
【0042】
表1に示されるように、真空脱水中にのみ加熱された未加工のボード(条件B)、または本開示のアルキルエーテルサルフェート界面活性剤を含むのみの未加工のボード(条件C)のいずれかは、加熱されず、界面活性剤を含まなかった未加工のボード(対照A)と比較して脱水プロセス中に改善された水分低減を実証し、それぞれ約1%および6%の水分低減の増加を示した。さらに、真空脱水中の加熱、および本開示のアルキルエーテルサルフェート界面活性剤の包含の両方の未加工のボード(条件D)は、対照の未加工のボードと比較して約22%の顕著な水分低減を実証し、熱気のみの未加工のボード(条件B、約21%)または界面活性剤のみの未加工のボード(条件C、約16%)によって実証された水分の低減を超える、顕著に増加した水分低減を示した。
【0043】
表1はさらに、条件B、C、およびDに従って脱水された得られた乾燥ベースマットは、対照ベースマットAと比較して強度の損失がほとんどないことを実証したことを実証している。具体的には、条件B、C、およびDに従って脱水されたベースマットのMOR値(MOR:それぞれ87.7、80.4、93.72psi、)によって特徴付けられる強度は、対照A(MOR:89.11psi)と比較して顕著に低下しない。
【0044】
したがって、実施例1は、本開示に従って脱水された未加工のボードが、従来の工業的プロセスに従って脱水された未加工のボードと比較して低減された水分含有量を実証し、さらに、本開示に従って脱水された未加工のボードから得られるベースマットが、従来の工業的プロセスに従って脱水された未加工のボードから得られるベースマットと比較して、少なくとも匹敵する強度を実証することを実証している。
【0045】
実施例2
湿式形成プロセスを使用して、固体材料の合計重量に基づいて、20重量%の岩綿、12重量%の再生された新聞用紙繊維、60重量%の発泡パーライト、および8重量%の非修飾トウモロコシデンプンから天井タイルを形成した。材料を水中で混合して、スラリーを提供し、これをTappi形成機を使用して脱水して未加工のボードを形成した。未加工のボードを、Tappi形成機を使用した真空適用によって脱水し、真空を適用せずに液圧プレスを使用しておよそ0.65インチ(約1.67cm)にプレスし、Tappi形成機を使用した2度目の真空適用によってさらに脱水した。界面活性剤を含んだ実証実験では、Tappiボードの形成の前に、固体の合計重量に基づいて約0.27重量%の、本開示に従ったアニオン性アルキルエーテルサルフェートアンモニウム塩界面活性剤(GEO Specialty ChemicalsからのHyonic 25AS)、または本開示に従っていない非イオン性脂肪族ポリオキシエチレンエーテル界面活性剤(BASFからのHydropalat WE3322)を、スラリー中に含んだ。真空と同時に熱気を使用する実証実験では、500°F(約260℃)に加熱したオーブンを、熱源として使用し、パイプ、断熱した可撓性ホースを通じて熱気をオーブンからTappi形成機に引き、Tappi形成機の最上部にキャップを置いた。Tappi形成機に入る熱気の温度は、385°F(約196℃)であると計測された。熱気を使用しない実証実験では、オーブンをTappi形成機と接続せず、周囲温度の空気(「冷気」)を使用した。2度目の真空適用後に、脱水した未加工のボードを約500°F(約260℃)のオーブンに1時間、次いで300°F(約150℃)で4時間置いて乾燥ベースマットを形成した。
【0046】
以下の表2は、脱水条件、および界面活性剤がスラリー組成物中に含まれているかを記載している。界面活性剤を含まず熱気を使用せず脱水された同等の対照ボードと比較した、脱水された未加工のボードの平均固体含有量(すなわち、2度目の真空適用ステップ後)、脱水された未加工のボードの含水量、本開示に従った脱水プロセスからの未加工のボードの水分低減、および密度、MOR値、弾性係数(MOE)値、および脱水された未加工のボードをオーブンで乾燥後に得られたベースマットの硬さ値、が以下に提供される。
【0047】
【0048】
表2に示されるように、真空脱水中の加熱、および界面活性剤の包含の両方の未加工のボード(条件FおよびG)は、加熱されず界面活性剤を含まなかった未加工のボード(対照E)と比較して、脱水プロセス中に改善された水分低減を実証した。
【0049】
表1はさらに、本開示のアルキルエーテルサルフェート界面活性剤の使用を含んで得られる乾燥ベースマット(条件F)は、対照ベースマットEと比較して、MORの損失がほとんどないことを実証した。しかしながら、本開示のものではない非イオン性脂肪族ポリオキシエチレンエーテル界面活性剤が含まれると(条件G)、ベースマットのMORは、83.6psi~62.2psiと、約25%低減された。
【0050】
本発明の範囲内の変更は、当業者には明らかであり得るため、前述の記述は、理解を明確にするためにのみ与えられており、この記述による不必要な限定と理解されるべきではない。
【0051】
本明細書で引用される全ての特許、出版物、および参考文献は、参照により本明細書に完全に援用される。本開示と、援用される特許、出版物、および参考文献との間に矛盾が生じる場合は、本開示が、優先される。