(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-27
(45)【発行日】2023-01-11
(54)【発明の名称】形質導入および細胞プロセシングのための方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/64 20060101AFI20221228BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20221228BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20221228BHJP
C12N 15/86 20060101ALN20221228BHJP
C12N 15/867 20060101ALN20221228BHJP
C12M 1/00 20060101ALN20221228BHJP
【FI】
C12N15/64 Z
C12N5/10
C12N5/0783
C12N15/86 Z
C12N15/867 Z
C12M1/00 A
(21)【出願番号】P 2020124934
(22)【出願日】2020-07-22
(62)【分割の表示】P 2017543300の分割
【原出願日】2015-11-04
【審査請求日】2020-08-20
(32)【優先日】2014-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516316897
【氏名又は名称】ジュノー セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】クリスマン ライアン エル.
(72)【発明者】
【氏名】ラムズボルグ クリス
(72)【発明者】
【氏名】ウッド トラビス
【審査官】竹内 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-048651(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02594632(EP,A1)
【文献】Hum. Gene Ther., 2001, 12(4), pp.333-346
【文献】J. Virol. Methods, 1995, 54(2-3), pp.131-143
【文献】Sci. Transl. Med., 2011, 3(95): 95ra73
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12N 1/00-7/08
C12M 1/00-3/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞と、組換えウイルスベクターを含有するウイルス粒子とを含むインプット組成物を遠心チャンバーの内部キャビティ内でインキュベーションする段階を含む形質導入方法であって、
該内部キャビティが、可変容積を有し、かつ、
該内部キャビティ内への液体の取り入れおよび該内部キャビティからの液体の圧出を可能にすることができる少なくとも1つの開口部
と、
可動部材であって、該可動部材により前記可変容積が生じ、ここで、該可動部材が、遠心チャンバー内を移動して内部キャビティの容積を変動させる、可動部材と、
をさらに含み、
該遠心チャンバーが、回転軸の周りを回転可能であり、かつ、該インキュベーションの少なくとも一部の間、該回転軸の周りを回転中であり、かつ
該方法が、該ウイルスベクターを形質導入された複数の該細胞を含むアウトプット組成物を生成する、
前記形質導入方法。
【請求項2】
前記遠心チャンバーまたは内部キャビティが実質的に剛性である、請求項
1記載の方法。
【請求項3】
前記回転が、
200gを上回るもしくは約200gを上回る、300gを上回るもしくは約300gを上回る、または500gを上回るもしくは約500gを上回る;
600gもしくは約600g、800gもしくは約800g、1000gもしくは約1000g、1100gもしくは約1100g、1600gもしくは約1600g、2000gもしくは約2000g、2100gもしくは約2100g、2200gもしくは約2200g、2500gもしくは約2500g、または3000gもしくは約3000g;
少なくとも、600gもしくは約600g、800gもしくは約800g、1000gもしくは約1000g、1100gもしくは約1100g、1600gもしくは約1600g、2000gもしくは約2000g、2100gもしくは約2100g、2200gもしくは約2200g、2500gもしくは約2500g、または3000gもしくは約3000g;または
500もしくは約500g~2500もしくは約2500g、500もしくは約500g~2000もしくは約2000g、500もしくは約500g~1600もしくは約1600g、500もしくは約500g~1000もしくは約1000g、600もしくは約600g~1600もしくは約1600g、600もしくは約600g~1000もしくは約1000g、1000もしくは約1000g~2000もしくは約2000g、または1000もしくは約1000g~1600もしくは約1600g
である前記細胞の表面層における相対遠心力での回転を含む、請求項
1または2一項記載の方法。
【請求項4】
前記回転が、約1100gまたは1100gを上回る、約1200gもしくは1200gを上回る、約1400gもしくは1400gを上回る、約1600gもしくは1600gを上回る、約1800gもしくは1800gを上回る、約2000gもしくは2000gを上回る、約2400gもしくは2400gを上回る、約2800gもしくは2800gを上回る、約3000gもしくは3000gを上回る、または約3200gもしくは3200gを上回る力での遠心によるものである、請求項
1~3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
前記遠心チャンバーが回転中である、前記インキュベーションの前記少なくとも一部が、
約5分間もしくは5分間を上回る、約10分間もしくは10分間を上回る、約15分間もしくは15分間を上回る、約20分間もしくは20分間を上回る、約30分間もしくは30分間を上回る、約45分間もしくは45分間を上回る、約60分間もしくは60分間を上回る、約90分間もしくは90分間を上回る、または約120分間もしくは120分間を上回る;あるいは
それぞれ境界値を含めて、5もしくは約5分間~60もしくは約60分間、10もしくは約10分間~60もしくは約60分間、15もしくは約15分間~60もしくは約60分間、15もしくは約15分間~45もしくは約45分間、30もしくは約30分間~60もしくは約60分間、または45もしくは約45分間~60もしくは約60分間である;
期間である、請求項
1~4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
前記方法が、前記インキュベーションの前または間に、前記可動部材の移動がもたらされ、それにより、前記内部キャビティの内部容積を増加させる段階をさらに含む、請求項
1~5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
前記可動部材の移動が、前記遠心チャンバー内の軸方向である、請求項
6記載の方法。
【請求項8】
前記可動部材がピストンである、請求項
1~7のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
前記インキュベーション中に前記内部キャビティ内に存在する前記インプット組成物の平均液体体積が、該インキュベーション中の該内部キャビティの内部表面積1平方インチあたり多くても約5ミリリットル(mL)であるか;
前記インキュベーション中の任意の一時点における前記内部キャビティ内に存在する前記インプット組成物の最大液体体積が、該内部キャビティの最大内部表面積1平方インチあたり多くても約5mLであるか;
前記インキュベーション中に前記キャビティ内に存在する前記インプット組成物の平均液体体積が、該インキュベーション中の該キャビティの内部表面積1平方インチあたり多くても約2.5ミリリットル(mL)であるか;または
前記インキュベーション中の任意の一時点における前記キャビティ内に存在する前記インプット組成物の最大液体体積が、該キャビティの最大内部表面積1平方インチあたり多くても約2.5mLである;
請求項
1~8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
前記インプット組成物中の前記細胞の数が、該細胞の表面層における1000gもしくは約1000gまたは2000gもしくは約2000gの力での前記遠心チャンバーの回転中に前記内部キャビティの表面上で単層を形成するのに十分な該細胞の数またはそれに近い数であり;かつ/あるいは
前記インプット組成物中の前記細胞の数が、該細胞の表面層における1000gもしくは約1000gまたは2000gもしくは約2000gの力での前記遠心チャンバーの回転中に前記内部キャビティの表面上で単層を形成するのに十分な該細胞の数の多くても1.5倍または2倍であり;かつ/あるいは
前記インプット組成物中の前記細胞の数が、回転中に前記内部キャビティの内部表面上で単層または二層を形成するのに十分な細胞数もしくはそれに近い細胞数である、
請求項
1~9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
前記内部キャビティ内の前記インプット組成物が、少なくとも1×10
6個もしくは少なくとも約1×10
6個の前記細胞を含むか、
前記内部キャビティ内の前記インプット組成物が、少なくとも5×10
6個もしくは少なくとも約5×10
6個の前記細胞を含むか、
前記内部キャビティ内の前記インプット組成物が、少なくとも1×10
7個もしくは少なくとも約1×10
7個の前記細胞を含むか、または
前記内部キャビティ内の前記インプット組成物が、少なくとも1×10
8個もしくは少なくとも約1×10
8個の前記細胞を含む、
請求項
1~10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
前記インプット組成物が、前記細胞1個あたり、少なくとも1感染単位(IU)もしくは約1IU、少なくとも2IUもしくは少なくとも約2IU、少なくとも3IUもしくは少なくとも約3IU、少なくとも4IUもしくは少なくとも約4IU、少なくとも5IUもしくは少なくとも約5IU、少なくとも10IUもしくは少なくとも約10IU、少なくとも20IUもしくは少なくとも約20IU、少なくとも30IUもしくは少なくとも約30IU、少なくとも40IUもしくは少なくとも約40IU、少なくとも50IUもしくは少なくとも約50IU、または少なくとも60IUもしくは少なくとも約60IUのウイルス粒子を含むか;あるいは
前記インプット組成物が、前記細胞1個あたり、1感染単位(IU)もしくは約1IU、2IUもしくは約2IU、3IUもしくは約3IU、4IUもしくは約4IU、5IUもしくは約5IU、10IUもしくは約10IU、20IUもしくは約20IU、30IUもしくは約30IU、40IUもしくは約40IU、50IUもしくは約50IU、または60IUもしくは約60IUのウイルス粒子を含む;
請求項
1~11のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
前記インキュベーション中の任意の一時点における前記内部キャビティ内に存在する前記インプット組成物の最大総液体体積が、該内部キャビティ内の前記細胞の総体積の多くても2倍、多くても10倍、もしくは多くても100倍であり、
前記インキュベーションの経過にわたる前記インプット組成物の平均体積が、前記キャビティ内の細胞の総体積の多くても2、10、もしくは100倍であり、および/または
前記インプット組成物の液体体積が、多くても20mL、多くても40mL、多くても50mL、多くても70mL、多くても100mL、多くても120mL、多くても150mL、または多くても200mLである、
請求項
1~12のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
前記遠心チャンバー内での前記インキュベーションの少なくとも一部の間または該遠心チャンバーの前記回転中に、前記インプット組成物の液体体積が、該遠心チャンバーの前記内部キャビティの容積の一部のみを占有し、該少なくとも一部の間または該回転中の該内部キャビティの容積が気体をさらに含み、該気体が、該インキュベーションの前または間に前記少なくとも1つの開口部を介して該内部キャビティ内に取り入れられる、請求項
1~13のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
前記遠心チャンバー内への気体の取り入れによって、該遠心チャンバーの前記内部キャビティの容積を増加させるように該可動部材の移動がもたらされ、それによって、該遠心チャンバーの回転中に該内部キャビティ内に存在する前記インプット組成物の、該内部キャビティの内部表面積1平方インチあたりの総液体体積が、該遠心チャンバー内に気体が存在しない場合に比べて減少する、請求項
14記載の方法。
【請求項16】
前記可動部材の移動が、前記遠心チャンバーの内部キャビティの容積を変動させ、それにより該内部キャビティへのまたは内部キャビティからの液体または気体の取り入れまたは圧出を引き起こす、請求項
14記載の方法。
【請求項17】
前記遠心チャンバーの外でかつ/または回転なしでインキュベーションのさらなる一部が行われ、該さらなる一部が、該チャンバー内でかつ/または回転ありで行われる前記少なくとも一部の後で行われる、請求項
1~16のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
前記インキュベーションが、IL-2、IL-15、およびIL-7の中から選択されるサイトカインである刺激剤の存在下で実施される、請求項
1~17のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
形質導入された細胞を含有する前記アウトプット組成物が、少なくとも1×10
7個もしくは少なくとも約1×10
7個の細胞、少なくとも5×10
7個もしくは少なくとも約5×10
7個の細胞、少なくとも1×10
8個もしくは少なくとも約1×10
8個の細胞、少なくとも2×10
8個もしくは少なくとも約2×10
8個の細胞、少なくとも4×10
8個もしくは少なくとも約4×10
8個の細胞、少なくとも6×10
8個もしくは少なくとも約6×10
8個の細胞、少なくとも8×10
8個もしくは少なくとも約8×10
8個の細胞、または少なくとも1×10
9個もしくは少なくとも約1×10
9個の細胞を含む、請求項
1~18のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
1細胞あたり約1IUまたは約2IUの比率でウイルスを含むインプット組成物に対して、前記方法が、該方法によって生成されるアウトプット組成物中の細胞のうちの少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、または少なくとも75%が前記組換えウイルスベクターを含みかつ/または該ベクター内に含まれた組換え核酸の産物を発現する、前記アウトプット組成物を産生することができるか、
前記アウトプット組成物中の、前記組換えウイルスベクターを含有する前記細胞もしくは該ウイルスベクターが組み込まれている該細胞の全てにおける、該組換えウイルスベクターの平均コピー数が、多くても約10、多くても約5、多くても約2.5、もしくは多くても約1.5であるか、または
前記アウトプット組成物中の前記細胞における、前記ベクターの平均コピー数が、多くても約2、多くても約1.5、もしくは多くても約1である、
請求項
1~19のいずれか一項記載の方法。
【請求項21】
前記遠心チャンバーが閉鎖システムに組み込まれており、該閉鎖システムが、該遠心チャンバーと、少なくとも1つのコネクタを介して前記少なくとも1つの開口部に機能的に連結された少なくとも1本の配管ラインとを含み、該システムの少なくとも1つの構成において、前記内部キャビティと該少なくとも1本の配管ラインとの間を液体および気体が移動することができる、請求項
1~20のいずれか一項記載の方法。
【請求項22】
前記少なくとも1本の配管ラインが、一連の配管ラインを含み;
前記少なくとも1つのコネクタが、複数のコネクタを含み;かつ
前記閉鎖システムが、該一連の配管ラインに機能的に連結された少なくとも1つの容器をさらに含み、前記コネクタによって、該一連の配管ラインを介して該少なくとも1つの容器と前記少なくとも1つの開口部との間を液体および/または気体が通過することができる;
請求項
21記載の方法。
【請求項23】
前記少なくとも1つの容器が、それぞれが前記一連の配管ラインおよび前記少なくとも1つの開口部を介して前記キャビティに接続された、前記ウイルスベクター粒子と前記細胞とを含む少なくとも1つのインプット容器、廃液容器、産物容器、および少なくとも1つの希釈液容器を含む、請求項
22記載の方法。
【請求項24】
前記方法が、
前記インキュベーションの前および/または間に、前記内部キャビティ内への前記インプット組成物の取り入れを実施する段階をさらに含み、該取り入れが、前記少なくとも1つのインプット容器から前記少なくとも1つの開口部を通じて前記内部キャビティ内へと液体が流入することを含む、および/または
前記インキュベーションの前および/または間に、無菌条件下での前記内部キャビティ内への気体の取り入れを提供するかまたは実施する段階を含み、該取り入れが、(a)気体を含む容器からの気体の流入、(b)微生物フィルターを介した、該閉鎖システムの外部にある環境からの気体の流入、または(c)シリンジポートにおいて該システムに接続されたシリンジからの気体の流入によって実施される、
請求項
23記載の方法。
【請求項25】
少なくとも1つの容器が、前記インキュベーション中の少なくとも一時点の前および/もしくは間に気体を含む容器をさらに含み、かつ/または前記閉鎖システムが、前記遠心チャンバーの前記内部キャビティに気体を取り入れ得る微生物フィルターをさらに含み、かつ/または該閉鎖システムが、気体の取り入れを実施するためのシリンジポートを含有する、請求項
23または24記載の方法。
【請求項26】
前記遠心チャンバーの前記内部キャビティ内への気体の取り入れを実施する段階が、該遠心チャンバーの該内部キャビティへの前記インプット組成物の取り入れを実施する段階と同時にまたは一緒に行われるか、または
前記気体の取り入れを実施する段階が、前記内部キャビティ内への前記インプット組成物の取り入れを実施する段階とは別個に、同時にまたは逐次的のいずれかで行われる、
請求項
24または25記載の方法。
【請求項27】
前記気体の取り入れが、該気体を含む無菌密閉容器から、外部環境から微生物フィルターを通じて、または該気体を含むシリンジから、気体が流入することを可能にするまたは引き起こすことによって実施される、請求項
24~26のいずれか一項記載の方法。
【請求項28】
前記気体が空気である、請求項
14~27のいずれか一項記載の方法。
【請求項29】
前記インキュベーションが連続的プロセスの一部であり、前記方法が、
該インキュベーションの少なくとも一部の間、前記遠心チャンバーの回転中に前記内部キャビティ内への前記インプット組成物の連続的取り入れを実施する段階;および
該インキュベーションの一部の間、該遠心チャンバーの回転中に前記少なくとも1つの開口部を通じての該内部キャビティからの液体の連続的圧出を実施する段階;
をさらに含む、請求項
1~28のいずれか一項記載の方法。
【請求項30】
前記インキュベーションが半連続的プロセスの一部であり、前記方法が、
該インキュベーションの前に、前記少なくとも1つの開口部を通じて前記内部キャビティ内への前記インプット組成物の取り入れを実施する段階;
該インキュベーションの後に、該内部キャビティからの液体の圧出を実施する段階;
該内部キャビティ内への、細胞と、組換えウイルスベクターを含有する前記ウイルス粒子とを含む別のインプット組成物の取り入れを実施する段階;ならびに
該内部キャビティ内で該別のインプット組成物をインキュベーションする段階;
をさらに含み、
該方法が、該ウイルスベクターを形質導入された該別のインプット組成物の複数の細胞を含む別のアウトプット組成物を生成する、
請求項
1~28のいずれか一項記載の方法。
【請求項31】
前記インキュベーションの前および/または間に前記遠心チャンバーの回転を実施する段階;
該インキュベーションの後に前記内部キャビティから前記廃液容器内への液体の圧出を実施する段階;
前記少なくとも1つの開口部を介して前記少なくとも1つの希釈液容器から該内部キャビティ内への液体の圧出を実施し、かつ該内部キャビティの内容物の混合を実施する段階;ならびに
該内部キャビティから前記産物容器内への液体の圧出を実施する段階であって、それによって、前記ウイルスベクターを形質導入された細胞が該産物容器内へと移される、段階
をさらに含む、請求項
24~30のいずれか一項記載の方法。
【請求項32】
前記方法が、前記遠心チャンバーの前記内部キャビティ内で行われる1つまたは複数のさらなる細胞プロセシング段階をさらに含むプロセスの一部であり、該1つまたは複数のさらなる細胞プロセシング段階が、細胞洗浄、細胞希釈、細胞選択、細胞単離、細胞分離、細胞培養、細胞刺激、細胞パッケージング、および細胞製剤化からなる群から選択される、請求項
1~31のいずれか一項記載の方法。
【請求項33】
(a)前記インキュベーションの前に、遠心チャンバーの内部キャビティ内で、前記細胞を含む生物学的サンプルを洗浄する段階;ならびに/または
(b)生物学的サンプルから前記細胞を単離する段階であって、該単離する段階の少なくとも一部が、前記インキュベーションの前に遠心チャンバーの内部キャビティ内で実施される、段階;ならびに/または
(c)前記インキュベーションの前および/もしくは間に細胞を刺激する段階であって、該刺激する段階が、該細胞を刺激条件に曝露することを含み、それによって前記インプット組成物の細胞の活性化および/または増殖が誘導され、該刺激する段階の少なくとも一部が遠心チャンバーの内部キャビティ内で実施される、段階;
をさらに含む、請求項
1~32のいずれか一項記載の方法。
【請求項34】
前記方法によって形質導入された細胞を、遠心チャンバーの内部キャビティ内で、薬学的に許容されるバッファー中で製剤化する段階をさらに含み、それによって、製剤化された組成物が産生される、請求項1~33のいずれか一項記載の方法。
【請求項35】
前記インプット組成物中の前記細胞が浮遊細胞を含み;
前記インプット組成物中の前記細胞が白血球を含み;かつ/または
前記インプット組成物中の前記細胞がT細胞もしくはNK細胞を含む、
請求項
1~34のいずれか一項記載の方法。
【請求項36】
前記インプット組成物中の前記細胞が、分画されていないT細胞、単離されたCD8
+ T細胞、または単離されたCD4
+ T細胞である、請求項
1~35のいずれか一項記載の方法。
【請求項37】
前記インプット組成物中の前記細胞がT細胞であり、形質導入の開始の前に、T細胞が、刺激条件または刺激剤の存在下でのインキュベーションにより活性化される、請求項
1~36のいずれか一項記載の方法。
【請求項38】
前記刺激条件または刺激剤が、TCR構成要素に特異的なITAM誘導性シグナルを惹起する、および/またはT細胞共刺激受容体の共刺激シグナルを促進する、請求項
37記載の方法。
【請求項39】
前記刺激剤が、抗CD3抗体および/または抗CD28抗体である、請求項
37または38記載の方法。
【請求項40】
前記刺激剤が、IL-2、IL-15、およびIL-7の中から選択されるサイトカインである、請求項
37または38記載の方法。
【請求項41】
前記インプット組成物が、形質導入効率を促進するために1種または複数種の付加的な作用物質をさらに含む、請求項
1~40のいずれか一項記載の方法。
【請求項42】
前記1種または複数種の付加的な作用物質が、ポリカチオン、臭化ヘキサジメトリン、またはCH-296である、請求項
41記載の方法。
【請求項43】
前記ポリカチオンが硫酸プロタミンであり、および/または
前記ポリカチオンの濃度が1μg/mL~100μg/mLである、
請求項
42記載の方法。
【請求項44】
前記遠心チャンバーが、該遠心チャンバーの回転速度または前記内部キャビティ内に含有される体積を測定することができるセンサーと関連付けられる、請求項
1~43のいずれか一項記載の方法。
【請求項45】
前記遠心チャンバーが、前記可動部材の位置を測定することができるセンサーと関連付けられる、請求項
1~44のいずれか一項記載の方法。
【請求項46】
前記センサーからの情報が制御回路により受信され、該情報に基づいて、該制御回路が、測定されたパラメーターに変化をもたらすように構成されている、請求項
44または45記載の方法。
【請求項47】
前記遠心チャンバーが、前記インキュベーション中にセンサーおよび制御回路と関連付けられ、該センサーが、前記可動部材の位置をモニターすることができ、該制御回路が、該センサーへのおよび該センサーからの情報を受信および送信することができ、かつ該可動部材の移動を引き起こすことができ、該制御回路が、該インキュベーション中に該遠心チャンバーの回転を引き起こすことができる遠心機とさらに関連付けられる、請求項
1~46のいずれか一項記載の方法。
【請求項48】
前記遠心チャンバーが、前記インキュベーション中に遠心機内に位置しかつセンサーおよび制御回路と関連付けられ、該センサーが、該可動部材の位置をモニターすることができ、該制御回路が、該センサーからの情報を受信および送信することができ、かつ該可動部材の移動、前記
少なくとも1本の配管ラインを介した前記キャビティへのおよび該キャビティからの液体および/または気体の取り入れおよび圧出、ならびに該遠心機による該遠心チャンバーの回転を引き起こすことができる、請求項
21~47のいずれか一項記載の方法。
【請求項49】
前記組換えウイルスベクターが組換え受容体をコードし、それによって該組換え受容体が前記アウトプット組成物の細胞によって発現される、請求項
1~48のいずれか一項記載の方法。
【請求項50】
前記組換え受容体が、キメラ抗原受容体(CAR)またはトランスジェニックT細胞受容体(TCR)である、請求項
49記載の方法。
【請求項51】
前記組換えウイルスベクターが組換えレンチウイルスベクターである、請求項
1~50のいずれか一項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、「Methods for Transduction and Cell Processing」と題された、2014年11月05日に提出された米国仮出願第62/075,801号、および「Methods for Transduction and Cell Processing」と題された、2015年3月05日に提出された米国仮出願第62/129,023号からの優先権を主張するものであり、その内容は参照によりそれらの全体として組み入れられる。
【0002】
分野
本開示は、治療(例えば養子細胞療法)に使用される細胞プロセシングに関する。提供される方法には概して形質導入方法が含まれ、当該方法では、ウイルスベクターによる細胞の形質導入をもたらす条件下で細胞とウイルスベクター粒子がインキュベーションされる。当該インキュベーションは、概ね剛性の遠心チャンバー(例えば硬質プラスチック製の円筒状チャンバー)の内部キャビティ内で行われ得る。当該方法は、そのようなチャンバー内で行われるものを含む他のプロセシング段階を含み、当該段階には、洗浄、選択、単離、培養、および製剤化が含まれる。特に、本開示は、利用可能なプロセシング方法(例えば、大規模なプロセシングに利用可能な方法)を上回る利点を提供する方法に関する。そのような利点には、例えば、コストの低下、能率化、有効性の向上、安全性の向上、ならびに種々の対象および病状の間での再現性の向上が含まれる。
【背景技術】
【0003】
背景
いくつかの方法が細胞プロセシングに利用可能であり、それには、大規模な方法、および養子細胞療法のための細胞の調製において使用するための方法が含まれる。例えば、ウイルスベクター導入(例えば形質導入)、選択、単離、刺激、培養、洗浄、および製剤化のための方法が利用可能である。利用可能な方法は、完全に満足のいくものにはなっていない。例えば、養子細胞療法のための細胞の大規模なプロセシング(例えば形質導入)のための改善された方法が必要とされている。例えば、効率および再現性を改善する、ならびに時間、コスト、取り扱い、複雑さ、および/またはそのような産生に関連する他のパラメーターを低下させる方法が必要とされる。提供される態様の中には、そのような必要性に対処する方法、システム、およびキットがある。
【発明の概要】
【0004】
概要
細胞プロセシングのための方法、例えば、ウイルスベクターの導入および/または免疫親和性に基づく細胞の選択のための方法が提供される。一部の態様では、当該細胞は、細胞療法において使用するためのものであり、例えば、(例えば養子細胞療法における)自己移入または同種移入のために調製される初代細胞である。当該方法は、細胞の洗浄、単離、分離など、付加的な細胞プロセシング段階を含み得る。
【0005】
一部の態様では、当該方法は、容器内、例えば遠心チャンバーの内部キャビティ内で、細胞と、組換えウイルスベクターを含有するウイルスベクター粒子とを含有する組成物(インプット組成物と見なされる)をインキュベーションすることによって行われ、それによって、該ウイルスベクターを形質導入された複数の細胞を含有するアウトプット組成物が生成される。当該遠心チャンバーは、典型的には、回転軸の周りを回転可能である。一部の態様では、当該回転軸は垂直である。当該チャンバーは、典型的には、端壁、該端壁から延びる側壁(例えば、実質的に剛性の側壁)、ならびに少なくとも1つの開口部(例えば、出入口または入口および出口)を含む。当該側壁の少なくとも一部は、概ね内部キャビティを取り囲む。当該少なくとも1つの開口部(例えば、出入口または入口および出口)は、内部キャビティ内への液体の取り入れおよび当該キャビティからの液体の圧出を可能にすることができる。当該少なくとも1つの開口部は、一部の態様ではチャンバーと同軸であり、かつ一部の態様ではチャンバーの端壁にある。当該側壁は、曲線状(例えば円筒状または概ね円筒状)であってもよい。
【0006】
一部の態様では、当該方法は、遠心チャンバーの内部キャビティ内で、細胞と、組換えウイルスベクターを含有するウイルス粒子とを含有するインプット組成物をインキュベーションする段階を含み、当該遠心チャンバーは、回転軸の周りを回転可能であり、かつ端壁、該端壁から延びる実質的に剛性の側壁、および少なくとも1つの開口部を含み、当該側壁の少なくとも一部は内部キャビティを取り囲み、かつ当該少なくとも1つの開口部は、内部キャビティ内への液体の取り入れおよび当該キャビティからの液体の圧出を可能にすることができ、当該遠心チャンバーは、インキュベーションの少なくとも一部の間、回転軸の周りを回転し、かつ当該方法は、ウイルスベクターを形質導入された複数の細胞を含有するアウトプット組成物を生成する。
【0007】
一部の態様では、当該遠心チャンバーは、可動部材(例えばピストン)をさらに含む。そのような態様では、当該内部キャビティは、概して容積可変のものであり、例えば、端壁、側壁、および可動部材(例えばピストン)によって画定される容積可変のキャビティであり、それによって、当該可動部材はチャンバー内を(例えば、チャンバー内を軸方向に)移動して、当該キャビティの内部容積を変動させ得る。一部の態様では、代替的に、ポンプ、シリンジ、および/もしくはモーター、または液体もしくは気体の取り入れおよび圧出を行う(例えば、キャビティから液体を引き込みかつ/またはキャビティ内に液体を押し込む)ための他の装置によって、液体がチャンバーの内外を移動し、一方でキャビティ自体の容積は一定のままである。
【0008】
一部の態様では、当該方法は、遠心チャンバーの内部キャビティ内で、細胞と、組換えウイルスベクターを含有するウイルス粒子とを含有するインプット組成物をインキュベーションする段階を含み、当該遠心チャンバーは、回転軸の周りを回転可能であり、かつ端壁、当該端壁から延びる実質的に剛性の側壁、および少なくとも1つの開口部を含み、当該側壁の少なくとも一部は内部キャビティを取り囲み、かつ当該少なくとも1つの開口部は、当該内部キャビティ内への液体の取り入れおよび当該キャビティからの液体の圧出を可能にすることができ、当該遠心チャンバーは、インキュベーションの少なくとも一部の間、回転軸の周りを回転しており、当該遠心チャンバーの回転中に当該キャビティ内に存在するインプット組成物の総液体体積は、当該キャビティの内部表面積1平方インチあたり多くても約5mLであり、かつ当該方法は、ウイルスベクターを形質導入された複数の細胞を含むアウトプット組成物を生成する。
【0009】
当該チャンバーは、2つの端壁を含み得る。そのような態様の一部では、一方の端壁は、他の特徴と共に内部キャビティを画定するが、他方はキャビティの外側にある。一部の態様では、キャビティは、両方の端壁によって境界を付けられている。
【0010】
少なくとも1つの開口部は、それぞれ取り入れおよび圧出を可能にすることができる入口および出口を含んでもよいし、または取り入れおよび圧出を可能にすることができる単一の出入口を含んでもよい。
【0011】
典型的には、インキュベーションは、少なくとも一部は、チャンバーの回転下(例えば、遠心力または加速の下)で行われる。したがって、当該方法は、一部の態様では、インキュベーションの少なくとも一部の間、遠心チャンバーの回転(例えば、当該チャンバーの回転軸の周りにおける回転)を実施する段階をさらに含む。
【0012】
任意のそのような態様の一部では、回転は、キャビティの側壁の内部表面および/または細胞の表面層における、200gを上回るもしくは約200gを上回る、300gを上回るもしくは約300gを上回る、または500gを上回るもしくは約500gを上回る相対遠心力(RCF)での回転を含む。任意のそのような態様の一部では、回転は、キャビティの側壁の内部表面および/または細胞の表面層における、1000gもしくは約1000g、1500gもしくは約1500g、2000gもしくは約2000g、2100gもしくは約2100g、2200gもしくは約2200g、2500gもしくは約2500g、または3000gもしくは約3000gである;あるいは少なくとも1000gもしくは少なくとも約1000g、少なくとも1500gもしくは少なくとも約1500g、少なくとも2000gもしくは少なくとも約2000g、少なくとも2100gもしくは少なくとも約2100g、少なくとも2200gもしくは少なくとも約2200g、少なくとも2500gもしくは少なくとも約2500g、または少なくとも3000gもしくは少なくとも約3000gである、相対遠心力での回転を含む。任意のそのような態様の一部では、回転は、キャビティの側壁の内部表面および/または細胞の表面層における、1000もしくは約1000g~3600もしくは約3600g、1000もしくは約1000g~3200もしくは約3200g、1000もしくは約1000g~2800もしくは約2800g、1000もしくは約1000g~2000もしくは約2000g、1000もしくは約1000g~1600もしくは約1600g、1600もしくは約1600g~3600もしくは約3600g、1600もしくは約1600g~3200もしくは約3200g、1600もしくは約1600g~2800もしくは約2800g、1600もしくは約1600g~2000もしくは約2000g、2000もしくは約2000g~3600もしくは約3600g、2000もしくは約2000g~3200もしくは約3200g、2000もしくは約2000g~2800もしくは約2800g、2800もしくは約2800g~3600もしくは約3600g、2800もしくは約2800g~3200もしくは約3200g、3200もしくは約3200g~3600もしくは約3600g(それぞれ境界値を含む);あるいは少なくとも、2000gもしくは約2000g、2100gもしくは約2100g、2200gもしくは約2200g、2400gもしくは約2400g、2600gもしくは約2600g、2800gもしくは約2800g、3000gもしくは約3000g、3200gもしくは約3200g、または3600gもしくは約3600g;あるいは2000gもしくは約2000g、2100gもしくは約2100g、2200gもしくは約2200g、2400gもしくは約2400g、2600gもしくは約2600g、2800gもしくは約2800g、3000gもしくは約3000g、3200gもしくは約3200g、または3600gもしくは約3600gである、相対遠心力での回転を含む。
【0013】
任意のそのような態様の一部では、チャンバーが回転中であるインキュベーションの少なくとも一部は、約5分間または5分間を上回る、例えば、約10分間もしくは10分間を上回る、約15分間もしくは15分間を上回る、約20分間もしくは20分間を上回る、約30分間もしくは30分間を上回る、約45分間もしくは45分間を上回る、約60分間もしくは60分間を上回る、約90分間もしくは90分間を上回る、または約120分間もしくは120分間を上回る期間であるか;あるいはそれぞれ境界値を含めて、5もしくは約5分間~60もしくは約60分間、10もしくは約10分間~60もしくは約60分間、15もしくは約15分間~60もしくは約60分間、15もしくは約15分間~45もしくは約45分間、30もしくは約30分間~60もしくは約60分間、または45もしくは約45分間~60もしくは約60分間である。
【0014】
一部の態様では、インキュベーション中の(例えば、インキュベーション全体のうちの任意の一時点における、もしくはインキュベーション全体の間の)、および/または当該方法によってプロセシングされた、キャビティ内のインプット組成物(または細胞の数)は、1×106個もしくは約1×106個もしくは少なくとも約1×106個、5×106個もしくは約5×106個もしくは少なくとも約5×106個、1×107個もしくは約1×107個もしくは少なくとも約1×107個、5×107個もしくは約5×107個もしくは少なくとも約5×107個、1×108もしくは約1×108もしくは少なくとも約1×108個、または5×108もしくは約5×108もしくは少なくとも約5×108個の細胞を含む。
【0015】
任意のそのような態様の一部では、キャビティ内のインプット組成物は、少なくとも、1×107個もしくは約1×107個、2×107個もしくは約2×107個、3×107個もしくは約3×107個、4×107個もしくは約4×107個、5×107個もしくは約5×107個、6×107個もしくは約6×107個、7×107個もしくは約7×107個、8×107個もしくは約8×107個、9×107個もしくは約9×107個、1×108個もしくは約1×108個、2×108個もしくは約2×108個、3×108個もしくは約3×108個、または4×108個もしくは約4×108個の細胞を含有する。
【0016】
一部の態様では、キャビティの内部表面積は、少なくとも1×109μm2もしくは少なくとも約1×109μm2または少なくとも1×1010μm2もしくは少なくとも約1×1010μm2であり、かつ/または端壁から延びる方向での側壁の長さは、少なくとも約5cmおよび/もしくは少なくとも約8cmであり;かつ/または内部キャビティは、少なくとも1つの横断面において少なくとも約2cmの半径を有する。
【0017】
一部の態様では、インプット組成物は、細胞1個あたり、少なくとも1感染単位(IU)もしくは約1IU、少なくとも2IUもしくは少なくとも約2IU、少なくとも3IUもしくは少なくとも約3IU、少なくとも4IUもしくは少なくとも約4IU、少なくとも5IUもしくは少なくとも約5IU、少なくとも10IUもしくは少なくとも約10IU、少なくとも20IUもしくは少なくとも約20IU、少なくとも30IUもしくは少なくとも約30IU、少なくとも40IUもしくは少なくとも約40IU、少なくとも50IUもしくは少なくとも約50IU、または少なくとも60IUもしくは少なくとも約60IUを含む。一部の態様では、インプット組成物は、細胞1個あたり、1感染単位(IU)もしくは約1IU、2IUもしくは約2IU、3IUもしくは約3IU、4IUもしくは約4IU、5IUもしくは約5IU、10IUもしくは約10IU、20IUもしくは約20IU、30IUもしくは約30IU、40IUもしくは約40IU、50IUもしくは約50IU、または60IUもしくは約60IUを含む。
【0018】
一部の態様では、インプット組成物、ウイルスベクター粒子および細胞を有する組成物、ならびに/またはインキュベーション中にキャビティ内に存在する任意の液体組成物の平均液体体積または最大液体体積は、インキュベーション中のキャビティの内部表面積1平方インチあたり多くても約10、5、または2.5ミリリットル(mL)である。一部の態様では、インキュベーション中の任意の一時点におけるキャビティ内に存在するそのような液体組成物の最大総体積は、細胞の総体積の多くても2倍、多くても10倍、多くても100倍、多くても500倍、または多くても1000倍である。一部の態様では、細胞の総体積は、細胞のペレットの総体積である。一部の態様では、細胞の総体積は、細胞の単層(例えば、遠心チャンバーの回転中にキャビティ内の内部表面に存在する細胞の単層)の体積である。
【0019】
一部の態様では、インプット組成物の液体体積は、インキュベーションの少なくとも一部の間、内部キャビティの容積の全てまたは実質的に全てを占有する。他の態様では、インキュベーションの少なくとも一部の間、インプット組成物の液体体積は、内部キャビティの容積の一部のみを占有し、この少なくとも一部の間のキャビティの容積は気体をさらに含み、当該気体は、インキュベーションの前または間に、例えば少なくとも一方の開口部またはもう一方の開口部を介して、キャビティ内に取り入れられる。
【0020】
任意のそのような態様の一部では、回転中にキャビティ内に存在するインプット組成物の、キャビティの内部表面積1平方インチあたりの液体体積(mL/sq.in.)は、0.5もしくは約0.5mL/sq.in.~5もしくは約5mL/sq.in.、0.5もしくは約0.5mL/sq.in.~2.5もしくは約2.5mL/sq.in.、0.5もしくは約0.5mL/sq.in.~1もしくは約1mL/sq.in.、1もしくは約1mL/sq.in.~5もしくは約5mL/sq.in.、1もしくは約1mL/sq.in.~2.5もしくは約2.5mL/sq.in.、または2.5もしくは約2.5mL/sq.in.~5もしくは約5mL/sq.in.である。
【0021】
任意のそのような態様の一部では、インキュベーション中の任意の一時点におけるキャビティ内に存在するインプット組成物の最大総液体体積は、キャビティ内の細胞の総体積の多くても2倍、多くても10倍、もしくは多くても100倍である、またはインキュベーションの経過にわたるインプット組成物の平均体積は、キャビティ内の細胞の総体積の多くても2、10、もしくは100倍である。
【0022】
任意のそのような態様の一部では、インキュベーション中の任意の一時点におけるキャビティ内に存在するインプット組成物の最大体積またはインキュベーションの経過にわたる平均体積は、側壁の内部表面における2000gまたは約2000gの力でのチャンバーの回転中にキャビティの内部表面上に形成される細胞の単層の体積の多くても、2倍もしくは約2倍、10倍もしくは約10倍、25倍もしくは約25倍、50倍もしくは約50倍、100倍もしくは約100倍、500倍もしくは約500倍、または1000倍もしくは約1000倍である。
【0023】
任意のそのような態様の一部では、インプット組成物の液体体積は、多くても20mL、多くても40mL、多くても50mL、多くても70mL、多くても100mL、多くても120mL、多くても150mL、または多くても200mLである。
【0024】
任意のそのような態様の一部では、チャンバー内でのインキュベーションの少なくとも一部の間またはチャンバーの回転中の、インプット組成物の液体体積は、チャンバーの内部キャビティの容積の一部のみを占有し、該少なくとも一部の間または該回転中のキャビティの容積は気体をさらに含み、当該気体は、インキュベーションの前または間に、少なくとも1つの開口部を介してキャビティ内に取り入れられる。
【0025】
一部の態様では、遠心チャンバーは可動部材を含み、遠心チャンバー内への気体の取り入れによって、チャンバーの内部キャビティの容積が増加するように当該可動部材の移動がもたらされ、それによって、遠心チャンバーの回転中にキャビティ内に存在するインプット組成物の、キャビティの内部表面積1平方インチあたりの総液体体積は、チャンバー内に気体が存在しない場合に比べて減少する。
【0026】
一部の態様では、インキュベーション中のキャビティ内の細胞の数は、2000gもしくは約2000gの力での遠心チャンバーの回転中にキャビティの内部表面上で単層を形成するのに十分な細胞数もしくはそれに近い細胞数であり、かつ/または細胞のそのような数の多くても1.5倍もしくは2倍である。
【0027】
任意のそのような態様の一部では、インプット組成物中の細胞の数は、側壁の内部表面における2000gもしくは約2000gの力での遠心チャンバーの回転中にキャビティの表面上で単層を形成するのに十分な細胞数もしくはそれに近い細胞数であり;かつ/またはインプット組成物中の細胞の数は、側壁の内部表面における2000gもしくは約2000gの力での遠心チャンバーの回転中にキャビティの表面上で単層を形成するのに十分な細胞数の多くても1.5倍もしくは2倍である。
【0028】
一部の態様では、遠心の持続時間は、120~7200秒間、例えば120~3600秒間である(当該範囲内の値、例えば分単位での値を含む)。
【0029】
一部の態様では、当該方法は、(a)少なくとも1×109μm2もしくは少なくとも約1×109μm2、または少なくとも1×1010μm2もしくは少なくとも約1×1010μm2の内部表面積を有する遠心チャンバーの内部キャビティに、(i)細胞と、組換えウイルスベクターを含有するウイルス粒子とを含むインプット組成物であって、該インプット組成物中の細胞の数は少なくとも1×107個であり、かつ該ウイルス粒子は、細胞1個あたり少なくとも1感染単位(IU)もしくは少なくとも約1IUでインプット組成物中に存在し、かつ該インプット組成物は、遠心チャンバーの内部キャビティの最大容積未満である液体体積を含有する、インプット組成物;および(ii)最大でも遠心チャンバーの内部キャビティの最大容積の残りまでである体積の気体;を供給する段階、ならびに(b)該インプット組成物をインキュベーションする段階であって、該インキュベーションの少なくとも一部は、遠心チャンバーの回転を実施しながら、遠心チャンバーの内部キャビティ内で行われる、段階、を含み、かつ該方法は、ウイルスベクターを形質導入された複数の細胞を含有するアウトプット組成物を生成する。
【0030】
一部の態様では、細胞の数は、少なくとも50×106個もしくは少なくとも約50×106個、少なくとも100×106個もしくは少なくとも約100×106個、または少なくとも200×106個もしくは少なくとも約200×106個であり;かつ/あるいはウイルス粒子は、少なくとも、1.6IU/細胞、1.8IU/細胞、2.0IU/細胞、2.4IU/細胞、2.8IU/細胞、3.2IU/細胞、もしくは3.6IU/細胞、4.0IU/細胞、5.0IU/細胞、6.0IU/細胞、7.0IU/細胞、8.0IU/細胞、9.0IU/細胞、もしくは10.0IU/細胞で存在する。
【0031】
任意のそのような態様の一部では、インプット組成物の液体体積は、200mL以下、100mL以下、または50mL以下、または20mL以下である。任意のそのような態様の一部では、気体の体積は、最大200mL、最大180mL、最大140mL、または最大100mLである。
【0032】
任意のそのような態様の一部では、回転は、キャビティの側壁の内部表面または細胞の表面層における、少なくとも、1000gもしくは約1000g、1500gもしくは約1500g、2000gもしくは約2000g、2400gもしくは約2400g、2600gもしくは約2600g、2800gもしくは約2800g、3000gもしくは約3000g、3200gもしくは約3200g、または3600gもしくは約3600gの相対遠心力での回転である。
【0033】
一部の態様では、当該方法は、大規模なプロセシングのための方法である。
【0034】
一部の態様では、キャビティ内の組成物(例えば、インプット組成物)は、インキュベーションの少なくとも一部の間、少なくとも50mL、少なくとも100mL、もしくは少なくとも200mLの液体体積、および/またはキャビティの内部表面積1cm2あたり少なくとも100万もしくは約100万個の細胞を含む。
【0035】
一部の態様では、インキュベーション中の任意の一時点におけるキャビティ内に存在するインプット組成物の最大液体体積は、例えば2000gまたは約2000gの力(例えば有効力)でのチャンバーの回転中にキャビティの内部表面上に形成される細胞の単層の体積の多くても、2倍もしくは約2倍、10倍もしくは約10倍、25倍もしくは約25倍、50倍もしくは約50倍、100倍もしくは約100倍、500倍もしくは約500倍、または1000倍もしくは約1000倍である。
【0036】
一部の態様では、インキュベーションの少なくとも一部の間のチャンバーの回転は、遠心チャンバーのキャビティの内部壁および/または細胞の層(例えば表面層)における、200gを上回るもしくは約200gを上回る、300gを上回るもしくは約300gを上回る、または500gを上回るもしくは約500gを上回る力での回転であり、例えば、1000gを上回るもしくは約1000gを上回る、1500gを上回るもしくは約1500gを上回る、2000gを上回るもしくは約2000gを上回る、2500gを上回るもしくは約2500gを上回る、3000gを上回るもしくは約3000gを上回る、または3200gを上回るもしくは約3200gを上回る力での回転である。一部の態様では、当該力は、少なくとも、1000gもしくは約1000g、1500gもしくは約1500g、2000gもしくは約2000g、または2500gもしくは約2500g、3000gもしくは約3000g、または3200gもしくは約3200gである。一部の態様では、当該力は、2100gもしくは約2100g、2200gもしくは約2200g、または3000gもしくは約3000gである。
【0037】
一部の態様では、当該方法は、細胞と、組換えウイルスベクターを含有するウイルス粒子とを含有するインプット組成物をインキュベーションする段階を含み、該インキュベーションする段階の少なくとも一部は回転条件下で行われ、それによって、ウイルスベクターを形質導入された複数の細胞を含有するアウトプット組成物が生成され、該インプット組成物は、約20mLもしくは20mLを上回る、約50mLもしくは50mLを上回る、少なくとも100mL、または少なくとも150mLの体積を含有し、かつ/あるいは該インプット組成物は少なくとも1×108個の細胞を含み;かつ該回転条件は、細胞の表面層における約1500gを上回る相対遠心力を含む。
【0038】
当該方法の一部の態様では、アウトプット組成物中の細胞のうちの少なくとも25%もしくは50%がウイルスベクターを形質導入されており;かつ/またはアウトプット組成物中の細胞のうちの少なくとも25%もしくは50%が、ウイルスベクター内に含有された異種核酸の産物を発現する。
【0039】
任意のそのような態様の一部では、インキュベーションは遠心チャンバーのキャビティ内で行われ、かつインプット組成物中の細胞の数は、回転中にキャビティの内部表面上で単層または二層を形成するのに十分な細胞数もしくはそれに近い細胞数である。
【0040】
一部の態様では、遠心チャンバーは、端壁、該端壁から延びる実質的に剛性の側壁、および少なくとも1つの開口部を含み、該側壁の少なくとも一部は内部キャビティを取り囲み、かつ該少なくとも1つの開口部は、該内部キャビティ内への液体の取り入れおよび該キャビティからの液体の圧出を可能にすることができる。
【0041】
一部の態様では、遠心チャンバーは可動部材をさらに含み、かつ内部キャビティは、端壁、実質的に剛性の側壁、および該可動部材によって画定される容積可変のキャビティであり、該可動部材は、該キャビティの内部容積を変動させるようにチャンバー内を移動することができる。
【0042】
任意のそのような態様の一部では、キャビティ内のインプット組成物は、インキュベーションの少なくとも一部の間、少なくとも20mLまたは50mLの液体体積、およびキャビティの内部表面積1cm2あたり100万または約100万個の細胞を含有する。
【0043】
任意のそのような態様の一部では、インキュベーションのさらなる一部は、遠心チャンバーの外でかつ/または回転なしで行われ、該さらなる一部は、チャンバー内でかつ/または回転ありで行われる少なくとも一部の後に行われる。
【0044】
任意のそのような態様の一部では、遠心チャンバーのキャビティ内で行われるインキュベーションの少なくとも一部および/またはインキュベーションのさらなる一部は、37℃±2℃または約37℃±2℃で実施される。
【0045】
任意のそのような態様の一部では、インキュベーションは、インキュベーション中に少なくとも複数の細胞を容器に移す段階をさらに含み、該容器内でインキュベーションのさらなる一部が実施される。一部の態様では、前記移す段階は閉鎖システム内で実施され、遠心チャンバーおよび容器は該閉鎖システムに組み込まれている。
【0046】
任意のそのような態様の一部では、インキュベーションは、1もしくは約1時間~96もしくは約96時間、4もしくは約4時間~72もしくは約72時間、8もしくは約8時間~48もしくは約48時間、12もしくは約12時間~36もしくは約36時間、6もしくは約6時間~24もしくは約24時間、36もしくは約36時間~96もしくは約96時間行われる(境界値を含む)か;またはインキュベーションのさらなる一部は、1もしくは約1時間~96もしくは約96時間、4もしくは約4時間~72もしくは約72時間、8もしくは約8時間~48もしくは約48時間、12もしくは約12時間~36もしくは約36時間、6もしくは約6時間~24もしくは約24時間、36もしくは約36時間~96もしくは約96時間行われる(境界値を含む)。
【0047】
任意のそのような態様の一部では、インキュベーションまたはインキュベーションのさらなる一部は、最長で48時間、最長で36時間、もしくは最長で24時間行われるか;またはインキュベーションのさらなる一部は、最長で48時間、最長で36時間、もしくは最長で24時間行われる。
【0048】
任意のそのような態様の一部では、インキュベーションは刺激剤の存在下で実施され;かつ/またはインキュベーションのさらなる一部は刺激剤の存在下で実施される。
【0049】
任意のそのような態様の一部では、インキュベーションは最長で24時間行われ;組成物中の細胞は、24時間を上回る時間、30℃を上回る温度に供されることはなく;かつ/またはインキュベーションは刺激剤の存在下では実施されない。
【0050】
任意のそのような態様の一部では、刺激剤は、T細胞、CD4+ T細胞、および/またはCD8+ T細胞の増殖を誘導することができる作用物質である。
【0051】
任意のそのような態様の一部では、刺激剤は、IL-2、IL-15、およびIL-7の中から選択されるサイトカインである。
【0052】
任意のそのような態様の一部では、形質導入された細胞を含有するアウトプット組成物は、少なくとも1×107個または少なくとも5×107個の細胞を含有する。
【0053】
任意のそのような態様の一部では、形質導入された細胞を含有するアウトプット組成物は、少なくとも1×108個、2×108個、4×108個、6×108個、8×108個、または1×109個の細胞を含有する。
【0054】
任意のそのような態様の一部では、細胞はT細胞である。一部の態様では、T細胞は、分画されていないT細胞、単離されたCD4+ T細胞、および/または単離されたCD8+ T細胞である。
【0055】
任意のそのような態様の一部では、当該方法は、アウトプット組成物中の少なくとも複数の細胞のうちの1つもしくは複数の宿主ゲノムへの、および/あるいはアウトプット組成物中の少なくとも20%もしくは少なくとも約20%、または少なくとも30%もしくは少なくとも約30%、または少なくとも40%もしくは少なくとも約40%の細胞の宿主ゲノムへの、ウイルスベクターの組み込みをもたらす。
【0056】
任意のそのような態様の一部では、インプット組成物中の細胞のうちの少なくとも2.5%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも8%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、もしくは少なくとも75%は、当該方法によってウイルスベクターを形質導入され;かつ/またはアウトプット組成物中の細胞のうちの少なくとも2.5%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも8%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、もしくは少なくとも75%は、ウイルスベクターを形質導入されており;かつ/またはアウトプット組成物中の細胞のうちの少なくとも2.5%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも8%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、もしくは少なくとも75%は、ウイルスベクター内に含有された異種核酸の産物を発現する。
【0057】
特定の態様は、細胞およびウイルスベクター粒子を含むインプット組成物を回転条件下でインキュベーションすることによって行われる形質導入の方法を含み、当該方法では、ウイルスベクターによる形質導入のために複数の細胞が播種され、該インプット組成物は、50mLを上回る総体積、例えば、少なくとも100mLまたは少なくとも150mLを含み、かつ/または該インプット組成物は少なくとも1×108個の細胞を含み;かつ該回転条件は、約1500gを上回る遠心力を含む。一部のそのような態様では、インキュベーションは、遠心チャンバーのキャビティ内で行われ、かつインプット組成物中の細胞の数は、回転中にキャビティの内部表面上で単層を形成するのに十分な細胞数もしくはそれに近い細胞数である。一部のそのような態様では、細胞のうちの少なくとも25%または少なくとも50%がウイルスベクターを形質導入される。
【0058】
一部の態様では、当該方法は、インプット組成物中の細胞のうちの少なくとも2.5%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも8%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、もしくは少なくとも75%のについてウイルスベクターによる形質導入をもたらし、かつ/または当該細胞のうちの少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、もしくは少なくとも75%がベクターにより形質導入されておりかつ/もしくはベクターによってコードされる組換え産物を発現する、アウトプット組成物を産生する。一部の態様では、形質導入効率は、特定のインプット量またはウイルスの相対量について表現される。例えば、一部の態様では、そのような効率は、当該方法によって、1細胞あたり約1IUまたは約2IUの比率でウイルスを含むインプット組成物について達成される。
【0059】
一部の態様では、当該方法によって産生されたアウトプット組成物中の全細胞における組換えウイルスベクターの平均コピー数は、多くても約10、多くても約5、多くても約2.5、または多くても約1.5である。一部の態様では、アウトプット組成物中の組換えウイルスベクターを含有する細胞における該ベクターの平均コピー数は、多くても約5、多くても約2、多くても約1.5、または多くても約1である。
【0060】
任意のそのような態様の一部では、アウトプット組成物中の、組換えウイルスベクターを含有する細胞もしくはウイルスベクターが組み込まれている細胞の全てにおける該組換えウイルスベクターの平均コピー数は、多くても約10、多くても約5、多くても約2.5、もしくは多くても約1.5であるか;またはアウトプット組成物中の細胞における該ベクターの平均コピー数は、多くても約2、多くても約1.5、もしくは多くても約1である。
【0061】
一部の態様では、遠心チャンバーは閉鎖システムに組み込まれており、当該閉鎖システムは、例えば、チャンバーと、少なくとも1つのコネクタを介して少なくとも1つの開口部に機能的に連結された少なくとも1本の配管ラインとを含み、そのため、当該システムの少なくとも1つの構成において、キャビティと少なくとも1本の配管ラインとの間を液体および気体が移動することができる。少なくとも1本の配管ラインは、典型的には一連の配管ラインを含む。少なくとも1つのコネクタは、典型的には複数のコネクタを含む。当該閉鎖システムは、一連の配管ラインに機能的に連結された少なくとも1つの容器をさらに含んでもよく、そのため、この少なくとも1つの接続関係によって、該一連の配管ラインを介して、該少なくとも1つの容器と少なくとも1つの開口部との間を液体および/または気体が通過することができる。
【0062】
少なくとも1つのコネクタは、バルブ、ルアーポート、およびスパイク、例えば、停止コックもしくはマルチ回転式ポートなどの回転式バルブ、ならびに/または無菌コネクタからなる群より選択される1つまたは複数のコネクタを含み得る。
【0063】
少なくとも1つの容器は、1つまたは複数のバッグ、バイアル、および/またはシリンジを含み得、かつ希釈液容器、廃液容器、産物回収容器、アウトプット容器、および/またはインプット容器として指定された容器を含み得る。
【0064】
一部の態様では、少なくとも1つの容器は、それぞれが一連の配管ラインおよび少なくとも1つの開口部を介してキャビティに接続された、ウイルスおよび/または細胞を含む少なくとも1つのインプット容器(ウイルスおよび細胞を含む単一のインプット容器、またはそれぞれウイルスおよび細胞を含む2つのインプット容器であり得る)、廃液容器、産物容器、ならびに少なくとも1つの希釈液または洗浄溶液を含有する容器を含む。
【0065】
任意のそのような態様の一部では、少なくとも1つの容器は、インキュベーション中の少なくともある時点の前および/もしくは間に気体を含有する容器をさらに含み、かつ/または閉鎖システムは、遠心チャンバーの内部キャビティに気体を取り入れ得る微生物フィルターをさらに含み、かつ/または閉鎖システムは、気体の取り入れを実施するためのシリンジポートを含有する。
【0066】
一部の態様における方法は、インキュベーションの前および/または間に、キャビティ内へのインプット組成物の取り入れを実施する段階をさらに含む。当該取り入れは、少なくとも1つのインプット容器から少なくとも1つの開口部を通じてキャビティ内へと液体が流入することを含み得る。当該取り入れは、一方のインプット容器からのウイルスの取り入れおよびもう一方からの細胞のインプットを含み、インキュベーション用のインプット組成物を産生し得る。
【0067】
一部の態様では、当該方法は、インキュベーションの前および/または間に、無菌条件下でキャビティ内への気体の取り入れを提供するまたは実施する段階を含み、該取り入れは、(a)気体を含む容器からの気体の流入、(b)微生物フィルターを介した、閉鎖システムの外部にある環境からの気体の流入、または(c)シリンジポートにおいて該システムに接続されたシリンジからの気体の流入によって実施される。
【0068】
一部の態様では、遠心チャンバーの内部キャビティ内への気体の取り入れを実施する段階は、遠心チャンバーの内部キャビティへのインプット組成物の取り入れを実施する段階と同時にまたは一緒に行われる。
【0069】
任意のそのような態様の一部では、インプット組成物および気体は、遠心チャンバーの内部キャビティ内へのインプット組成物および気体の取り入れの前に、チャンバーの外で無菌条件下にて単一容器内で混ぜ合わされる。
【0070】
一部の態様では、気体の取り入れを実施する段階は、キャビティ内へのインプット組成物の取り入れを実施する段階とは別個に、同時にまたは逐次的のいずれかで行われる。
【0071】
任意のそのような態様の一部では、気体の取り入れは、気体を含有する無菌密閉容器から、微生物フィルターを通じて外部環境から、または該気体を含有するシリンジから、気体が流入することを可能にするまたは引き起こすことによってもたらされる。
【0072】
任意のそのような態様の一部では、気体は空気である。
【0073】
提供されるプロセシング方法の一部の態様では、インキュベーションは連続的プロセスの一部であり、当該方法は、インキュベーションの少なくとも一部の間(典型的にはチャンバーの回転中)にキャビティ内へのインプット組成物の連続的取り入れを実施する段階、およびインキュベーションの一部の間(典型的にはチャンバーの回転中)に少なくとも1つの開口部を通じてキャビティからの液体の連続的圧出(すなわち、取り出し)を実施する段階をさらに含む。一部の態様における連続的な取り入れおよび取り出しは、同時に行われる。
【0074】
一部の態様では、当該方法は、インキュベーションの一部の間、チャンバーの回転中にキャビティ内への気体の連続的取り入れを実施する段階;および/またはインキュベーションの一部の間、キャビティからの気体の連続的圧出を実施する段階を含む。
【0075】
一部の態様では、当該方法は、キャビティからの液体の圧出および気体の圧出を含み、これらはそれぞれ、異なる容器に同時にまたは逐次的に圧出される。
【0076】
任意のそのような態様の一部では、連続的取り入れおよび連続的圧出の少なくとも一部は、同時に行われる。
【0077】
一部の態様では、インキュベーションは半連続的プロセスの一部であり、例示的なプロセスでは、当該方法は以下の段階をさらに含む:少なくとも1つの開口部を通じてキャビティ内へのインプット組成物の取り入れを実施する段階;インキュベーションの全てまたは一部(例えば遠心)を実行する段階;および次にキャビティからの液体の圧出を実施する段階;ならびに次に、当該プロセスを繰り返す段階であって、別のインプット組成物がキャビティに取り入れられ、続いて遠心が、続いて圧出が行われる、段階。当該プロセスは反復的であってもよく、取り入れ、プロセシング、および圧出のさらに数回のラウンドを含んでもよい。
【0078】
任意のそのような態様の一部では、インキュベーションは半連続的プロセスの一部であり、当該方法は、インキュベーションの前に、少なくとも1つの開口部を通じてキャビティ内へのインプット組成物および任意で気体の取り入れを実施する段階;インキュベーションの後に、該キャビティからの液体および/または任意で気体の圧出を実施する段階;該内部キャビティ内への、細胞と、組換えウイルスベクターを含有するウイルス粒子とを含む別のインプット組成物、および任意で気体の取り入れを実施する段階;ならびに該内部キャビティ内で該別のインプット組成物をインキュベーションする段階をさらに含み、当該方法は、ウイルスベクターを形質導入されている当該別のインプット組成物の複数の細胞を含有する別のアウトプット組成物を生成する。
【0079】
任意のそのような態様の一部では、キャビティ内へのインプット組成物の供給または取り入れは、細胞と、組換えウイルスベクターを含有するウイルス粒子とを含む単一組成物の取り入れを含むか;または細胞を含む組成物と、組換えウイルスベクターを含有するウイルス粒子を含有する別個の組成物との取り入れであって、これらの組成物が混合されてインプット組成物の取り入れが実施される、取り入れを含む。
【0080】
取り入れには、細胞とウイルスとを含有する単一組成物の取り入れ;または、細胞を含有する組成物と、ウイルスを含有する別個の組成物との取り入れであって、これらの組成物が混合されてインプット組成物の取り入れが実施される、取り入れが含まれ得る。連続的または半連続的プロセスの一部の態様では、合計で、少なくとも1×108個もしくは1×109個もしくは1×1010個またはそれらを上回る数の細胞が、多数回ラウンドまたは連続的プロセスにわたってプロセシングされる。
【0081】
一部の態様では、当該方法は、インキュベーションの前および/または間に遠心チャンバーの回転を実施する段階、およびインキュベーションの後にキャビティから廃液容器内への液体の圧出を実施する段階;少なくとも1つの開口部を介して少なくとも1つの希釈液容器からキャビティ内への液体の圧出を実施する段階、およびキャビティの内容物の混合を実施する段階;ならびにキャビティから産物容器内への液体の圧出を実施する段階であって、それによって、ウイルスベクターを形質導入された細胞を産物バッグ内へ移す段階;を含む。
【0082】
一部の態様では、当該方法は、同じチャンバーおよび/または閉鎖システム内で、他のプロセシング段階、または1つもしくは複数の他のプロセシング段階の少なくとも一部を行う段階をさらに含む。一部の態様では、1つまたは複数のプロセシング段階は、同じチャンバーおよび/または閉鎖システム内で、細胞が、単離(例えば、分離または選択)され、刺激され、かつ製剤化される、プロセスを含み得る。一部のケースでは、1つまたは複数のさらなるプロセシング段階は、細胞を洗浄する段階、細胞を懸濁する段階、および/または細胞を希釈もしくは濃縮する段階も含み得、それらは、細胞を単離(例えば、分離もしくは選択)し、刺激し、形質導入し、かつ/または製剤化するためのプロセシング段階のうちの任意の1つまたは複数の前または後に行われ得る。一部の態様では、1つまたは複数の他のプロセシング段階は、形質導入の方法において、細胞とウイルスベクター粒子とのインキュベーションの前、同時、または後に行われ得る。一部の態様では、1つもしくは複数のさらなるプロセシング段階、または1つもしくは複数のさらなるプロセシング段階の一部は、細胞とウイルスベクター粒子とのインキュベーションにおいて採用される遠心チャンバーのキャビティと同じまたは異なる遠心チャンバーのキャビティ内で行われ得る。
【0083】
単離(例えば選択)方法、刺激方法、製剤化方法、および他のプロセシング方法を含む、提供されるプロセシング方法の中には、上記の態様のいずれかに従って行われるものがある。
【0084】
例えば、一部の態様では、当該方法は、(a)細胞を単離する(例えば選択する)ためのインキュベーションの前に、および/もしくは細胞とウイルスベクター粒子とをインキュベーションするためのインキュベーションの前に、チャンバーのキャビティ内で、細胞を含有する生物学的サンプル(例えば、全血サンプル、バフィーコートサンプル、末梢血単核細胞(PBMC)サンプル、分画されていないT細胞サンプル、リンパ球サンプル、白血球サンプル、アフェレーシス産物、または白血球アフェレーシス産物)を洗浄する段階;(b)そのような細胞とウイルスベクター粒子とのインキュベーションの前に、キャビティ内で、サンプル(例えば、全血サンプル、バフィーコートサンプル、末梢血単核細胞(PBMC)サンプル、分画されていないT細胞サンプル、リンパ球サンプル、白血球サンプル、アフェレーシス産物、または白血球アフェレーシス産物)由来の細胞を単離する(例えば選択する)段階;ならびに/または(c)例えば細胞を刺激条件に曝露することによって、そのような細胞とウイルスベクター粒子とのインキュベーションの前および/もしくは間に、キャビティ内で細胞を刺激する段階であって、それによってインプット組成物の細胞の増殖が誘導される、段階;をさらに含む。一部の態様では、単離する段階は、免疫親和性に基づく選択を含む。
【0085】
任意のそのような態様の一部では、当該方法は、(a)インキュベーションの前に、遠心チャンバーの内部キャビティ内で、細胞を含有する生物学的サンプルを洗浄する段階;ならびに/または(b)生物学的サンプルから細胞を単離する段階であって、該単離段階の少なくとも一部は、インキュベーションの前に遠心チャンバーの内部キャビティ内で実施される、段階;ならびに/または(c)インキュベーションの前および/もしくは間に細胞を刺激する段階であって、該刺激する段階は、細胞を刺激条件に曝露し、それによってインプット組成物の細胞の増殖が誘導され、細胞を刺激する段階の少なくとも一部は、遠心チャンバーの内部キャビティ内で実施される、段階;を含む。
【0086】
一部の態様では、当該方法は、例えば免疫親和性に基づく選択による、チャンバー内での細胞の単離(例えば選択)をさらに含み得る。一部の態様では、細胞の単離(例えば選択)は、形質導入の方法における細胞とウイルスベクター粒子とのインキュベーションの前に行われ、それにより、単離された細胞(例えば、選択された細胞)は、インプット組成物中に存在しかつ/またはウイルスベクター粒子と共にインキュベーションされた細胞である。一部の態様では、単離(例えば選択)は、細胞と免疫親和性試薬などの選択試薬とのインキュベーションを含む。一部の態様では、細胞と、選択試薬(例えば免疫親和性試薬)とのインキュベーションなど、単離(例えば選択)段階の少なくとも一部は、チャンバーのキャビティ内で行われ、一部のケースではそれは、例えば試薬と細胞との混合のために、チャンバーの回転を含み得る。
【0087】
一部の態様では、当該方法は、細胞とウイルスベクター粒子とのインキュベーションの前、間、および/または後に細胞を刺激する段階をさらに含み得、刺激の少なくとも全てまたは一部は、遠心チャンバーのキャビティ内で行われ得る。一部の態様では、刺激条件は、TCR複合体の1つまたは複数の構成要素の1つまたは複数の細胞内シグナル伝達ドメインを活性化することができる作用物質(例えば、TCR複合体のメンバー(例えばCD3)に特異的に結合する第一の作用物質)、およびT細胞共刺激分子(例えばCD28、CD137(4-1-BB)、OX40、またはICOS)に特異的に結合する第二の作用物質(抗体、例えば、固体支持体(例えばビーズ)の表面に存在する抗体を含む)の存在下での細胞のインキュベーションを含み得る。一部の態様では、刺激条件の存在下での細胞のインキュベーションなど、刺激の少なくとも一部は、チャンバーのキャビティ内で行われ、一部のケースではそれは、例えば試薬と細胞との混合のために、チャンバーの回転を含み得る。
【0088】
任意のそのような態様の一部では、当該方法は、遠心チャンバーの内部キャビティ内で、薬学的に許容されるバッファー中に、方法によって形質導入された細胞を含む、提供される方法に従って産生または生成された細胞などの細胞を製剤化する段階を含み、それによって、製剤化された組成物が産生される。一部の態様では、当該方法は、1つまたは複数の容器への製剤化された組成物の圧出を実施する段階をさらに含む。一部の態様では、当該方法は、製剤化された組成物の圧出を実施する段階を含み、当該段階には、1つまたは複数の容器のうちの1つまたはそれぞれへの、単回単位用量で存在する多数の細胞の圧出を実施する段階が含まれる。
【0089】
任意のそのような態様の一部では、遠心チャンバーのキャビティのそれぞれは、他の段階のうちの1つもしくは複数において、ならびに/または細胞とウイルス粒子とを含有するインプット組成物をインキュベーションするプロセスおよび/もしくは回転させるプロセスにおいて採用される遠心のキャビティと同じであるまたは異なる。
【0090】
任意のそのような態様の一部では、遠心チャンバーのそれぞれは閉鎖システムに組み込まれており、該閉鎖システムは、チャンバーと、少なくとも1つのコネクタを介して少なくとも1つの開口部に機能的に連結された少なくとも1本の配管ラインとを含み、該システムの少なくとも1つの構成において、キャビティと少なくとも1本の配管ラインとの間を液体および気体移動することができる。
【0091】
当該方法によってプロセシングされる細胞は、典型的には初代細胞であり、例えば対象(典型的にはヒト)から得られた細胞である。当該細胞は、治療法が施されるべき対象に由来してもよく、例えば、形質導入されたベクターによって発現される組換え分子(例えば、キメラ抗原受容体またはトランスジェニックTCRなどの組換え抗原受容体)によって標的とされる疾患または病状を有する対象に由来してもよい。あるいは、当該細胞は、異なる対象に由来するものであってもよい。したがって、当該方法は、自己移入および同種移入のためのプロセシングを包含する。当該細胞には、浮遊細胞、例えば白血球、例えば単離されたCD8+ T細胞もしくは単離されたCD4+ T細胞、またはそれらの部分集合などのT細胞、あるいはNK細胞が含まれ得る。
【0092】
一部の態様では、インキュベーション中に、遠心チャンバーは、センサー(例えば、可動部材の位置をモニターし得るセンサー)ならびに制御回路(例えば、該センサーへのおよび該センサーからの情報を受信および送信することができ、かつ該可動部材の移動を引き起すことができる、回路)と関連付けられ、かつ/または、遠心機とさらに関連付けられ、それしたがって、インキュベーション中にチャンバーの回転を引き起こすことができる。
【0093】
一部の態様では、チャンバーは、可動部材を含有し、かつ、インキュベーション中は遠心機内に位置し、かつ、該可動部材の位置をモニターすることができセンサー、ならびに該センサーからの情報を受信および送信することができ、かつ該可動部材の移動、1本または複数本の配管ラインを介したキャビティへのおよびキャビティからの液体の取り入れおよび圧出、ならびに遠心機によるチャンバーの回転を引き起こし得る制御回路、と関連付けられる。
【0094】
一部の態様では、チャンバー、制御回路、遠心機、および/またはセンサーは、例えばインキュベーション中に、キャビネット内に収納されている。
【0095】
ウイルス導入(例えば形質導入)方法のいずれかの一部の態様では、組換えウイルスベクターは組換え受容体をコードし、それによってアウトプット組成物の細胞によって当該組換え受容体が発現される。一部の態様では、組換え受容体は、組換え抗原受容体であり、例えば、機能的非T細胞受容体、例えば、キメラ抗原受容体(CAR)、またはトランスジェニックT細胞受容体(TCR)である。一部の態様では、組換え受容体は、リガンドに特異的に結合する細胞外部分と、活性化ドメインおよび共刺激ドメインを含有する細胞内シグナル伝達部分とを含有するキメラ受容体である。
【0096】
任意のそのような態様の一部では、当該細胞にはヒト対象から得られた初代ヒトT細胞が含まれ、かつウイルスベクター粒子とのインキュベーションの前および/もしくは形質導入の完了前に、ならびに/または方法が製剤化を含む場合には製剤化の前に、該初代ヒトT細胞は、1時間を上回る、6時間を上回る、24時間を上回る、または48時間を上回る時間、30℃を上回る温度で対象の外部に存在しておらず、あるいはインキュベーションの前および/もしくは形質導入の完了前に、ならびに/または方法が製剤化を含む場合には製剤化の前に、該初代ヒトT細胞は、CD3に特異的な抗体および/またはCD28に特異的な抗体および/またはサイトカインの存在下で、1時間を上回る、6時間を上回る、24時間を上回る、または48時間を上回る時間インキュベーションされていない。
【0097】
本明細書において、(a)混合条件下にて、遠心チャンバーの内部キャビティ内で選択試薬と初代細胞とをインキュベーションする段階であって、それにより複数の初代細胞が該選択試薬に結合する、段階;および(b)該選択試薬への結合性に基づいて、該複数の初代細胞を該初代細胞のうちの別の1つまたは複数から分離する段階であって、それによって該選択試薬への結合性に基づいて該初代細胞を濃縮する、段階;を含む、細胞の単離(例えば選択)のための方法であって、該遠心チャンバーは回転軸の周りを回転可能であり、かつ該内部キャビティは、少なくとも50mL、少なくとも100mL、または少なくとも200mLの最大容積を有する、方法が提供される。一部の態様では、単離(例えば選択)のための方法は、閉鎖システム内で行われる。一部の態様では、複数の細胞を分離する段階の前に、選択試薬と共にインキュベーションされた細胞は、チャンバーから圧出されるまたは移されるが、閉鎖システム内に維持される。一部の態様では、任意で、選択試薬とのインキュベーションの後かつ細胞を分離する前に、当該方法は、1回または複数回の洗浄段階をさらに含み、一部のケースではそれは、提供される方法に従ってチャンバーのキャビティ内で実施され得る。一部の態様では、細胞を分離する段階は、閉鎖システム内に含有され得る免疫親和性カラム等の固体支持体(磁気分離用のものを含む)を用いて実施されることができる。
【0098】
本明細書において、複数の初代細胞によって発現される分子に刺激剤が結合して該複数の細胞が活性化または刺激される条件下で、刺激剤と初代細胞とをインキュベーションする段階であって、該インキュベーションの少なくとも一部が、混合条件下で遠心チャンバーの内部キャビティ内で行われる、段階を含む、細胞を刺激するための方法であって、該遠心チャンバーが回転軸の周りを回転可能であり、かつ該内部キャビティが、少なくとも50mL、少なくとも100mL、または少なくとも200mLの最大容積を有する、方法が提供される。
【0099】
一部の態様では、刺激の方法は、細胞を形質導入する段階を含むプロセスの一部として実施され、そのため、そのようなプロセスの全てまたは一部は、遠心チャンバー内でかつ/または同じ閉鎖システムの一部として実施される。一部の態様では、刺激剤で刺激される初代細胞は、(例えば、提供される方法による)生物学的サンプル由来の細胞の単離(例えば選択)の後に得られた細胞を含むかまたはその細胞である。一部の態様では、刺激の少なくとも一部は、細胞とウイルスベクター粒子とのインキュベーションと同時にまたはその間に行われ、そのため、初代細胞は、インプット組成物中に存在する細胞を含むかもしくはその細胞であり、かつ/または形質導入が生じているかもしくは開始される細胞である。一部の態様では、刺激の少なくとも一部は、細胞とウイルスベクター粒子とのインキュベーションの前に行われ、そのため、ウイルスベクター粒子と共にインキュベーションされる細胞は刺激された細胞であり、それは一部のケースでは増殖中の細胞を含む。
【0100】
一部の態様では、チャンバー内で行われる当該方法の1つまたは複数の他のプロセシング段階の少なくとも一部(単離(例えば選択)、刺激、洗浄、および/または製剤化を含む)は、チャンバーが端壁、該端壁から延びる実質的に剛性の側壁、および少なくとも1つの開口部を含み、該側壁の少なくとも一部は内部キャビティを取り囲み、かつ該少なくとも1つの開口部は、該内部キャビティ内への液体の取り入れおよび該キャビティからの液体の圧出を可能にすることができる場合を含む。
【0101】
本明細書において、上記の態様のいずれかの方法によって産生される形質導入された細胞を含有する組成物が提供される。任意のそのような態様の一部では、組成物は、初代細胞および/もしくはヒト細胞でありかつ/または白血球、および/もしくはT細胞、および/もしくはNK細胞を含む、細胞を含有する。任意のそのような態様の一部では、組成物は、少なくとも5×107個、1×108個、2×108個、4×108個、6×108個、8×108個、または1×109個の細胞を含有する。任意のそのような態様の一部では、組成物は、養子T細胞療法において使用するための治療上有効な数の細胞を含有する。任意のそのような態様の一部では、細胞はT細胞であり、かつ形質導入の後、組成物中の細胞は刺激剤の存在下での細胞増殖に供されず、かつ/または細胞は30℃を上回る温度で24時間を上回る時間インキュベーションされず、または組成物はサイトカインを含有せず、または組成物は、CD3もしくはTCR複合体に特異的に結合する刺激剤を含有しない。
【0102】
本明細書において、少なくとも1×107個または少なくとも5×107個のT細胞を含有する組成物であって、当該細胞の少なくとも複数が組換えウイルスベクターを形質導入されており、形質導入の後に組成物中の細胞が刺激剤の存在下で細胞増殖に供されておらず、かつ/または細胞が30℃を上回る温度で24時間を上回る時間インキュベーションされておらず、かつ/または組成物中のT細胞のうちの少なくとも30、40、50、60、70、もしくは80%が、CD69もしくはTGF-β-IIの高い表面発現を含有する、組成物が提供される。一部の態様では、当該組成物は、少なくとも1×108個、2×108個、4×108個、6×108個、8×108個、または1×109個の細胞を含有する。
【0103】
任意のそのような態様の一部では、T細胞は、分画されていないT細胞、単離されたCD8+ T細胞、または単離されたCD4+ T細胞である。
【0104】
任意のそのような態様の一部では、組成物中の細胞のうちの少なくとも2.5%、5%、6%、8%、10%、20%、25%、30%、40%、50%、または75%は、ウイルスベクターを形質導入されている。
【0105】
任意のそのような態様の一部では、ウイルスベクターは組換え受容体をコードし、かつ組成物中の形質導入された細胞は、該組換え受容体を発現する。一部の態様では、組換え受容体は組換え抗原受容体である。一部の態様では、組換え抗原受容体は機能的非T細胞受容体である。一部の態様では、機能的非T細胞受容体はキメラ抗原受容体(CAR)である。一部の態様では、組換え受容体は、リガンドに特異的に結合する細胞外部分と、活性化ドメインおよび共刺激ドメインを含有する細胞内シグナル伝達部分とを含有するキメラ受容体である。一部の態様では、組換え抗原受容体はトランスジェニックT細胞受容体(TCR)である。
【0106】
任意のそのような態様の一部では、組成物中の全細胞における組換えウイルスベクターの平均コピー数は、多くても約10、多くても8、多くても6、多くても4、もしくは多くても約2であるか、または組成物中の組換えウイルスベクターを形質導入された細胞における該ベクターの平均コピー数は、多くても約10、多くても8、多くても6、多くても4、もしくは多くても約2である。
【0107】
任意のそのような態様の一部では、組成物は、薬学的に許容される賦形剤を含有する。
【0108】
本明細書において、疾患または病状を有する対象に、上記の態様のいずれかの組成物を投与する段階を含む、治療方法が提供される。一部の態様では、組成物中の形質導入されたT細胞は、形質導入後に組成物中の細胞が刺激剤の存在下で細胞増殖に供されておりかつ/または細胞が30℃を上回る温度で24時間を上回る時間インキュベーションされている組成物中の形質導入されたT細胞よりも、対象において増加したまたはより長い増殖性および/または持続性を呈する。
【0109】
任意のそのような態様の一部では、組換え受容体、キメラ抗原受容体、またはトランスジェニックTCRは、疾患または病状と関連する抗原に特異的に結合する。一部の態様では、疾患または病状は、癌、自己免疫性の疾患もしくは障害、または感染性疾患である。
【0110】
本明細書において、少なくとも1×107個の細胞と、1細胞あたり少なくとも1感染単位(IU)または少なくとも約1IUの、組換えウイルスベクターを含有するウイルス粒子とを含有する組成物が提供される。一部の態様では、細胞は、少なくとも50×106個もしくは少なくとも約50×106個、少なくとも100×106個もしくは少なくとも約100×106個、または少なくとも200×106個もしくは少なくとも約200×106個の細胞を含有し、かつ/あるいはウイルス粒子は、少なくとも1.6IU/細胞、1.8IU/細胞、2.0IU/細胞、2.4IU/細胞、2.8IU/細胞、3.2IU/細胞、3.6IU/細胞、4.0IU/細胞、5.0IU/細胞、6.0IU/細胞、7.0IU/細胞、8.0IU/細胞、9.0IU/細胞、もしくは10.0IU/細胞である量で組成物中に存在する。
【0111】
そのような態様のいずれかにおいて、組成物の液体体積は、220mL以下、200mL以下、100mL以下、50mL以下、または20mL以下である。
【0112】
任意のそのような態様の一部では、細胞は初代細胞である。任意のそのような態様の一部では、細胞はヒト細胞である。任意のそのような態様の一部では、細胞には浮遊細胞が含まれ、細胞には白血球が含まれ、かつ/または細胞にはT細胞もしくはNK細胞が含まれる。一部の態様では、細胞はT細胞であり、かつT細胞は、分画されていないT細胞、単離されたCD8+ T細胞、または単離されたCD4+ T細胞である。
【0113】
任意のそのような態様の一部では、ウイルスベクターは組換え受容体をコードする。一部の態様では、組換え受容体は組換え抗原受容体である。一部の態様では、組換え抗原受容体は機能的非T細胞受容体である。一部の態様では、機能的非T細胞受容体はキメラ抗原受容体(CAR)である。一部の態様では、組換え受容体は、リガンドに特異的に結合する細胞外部分と、活性化ドメインおよび共刺激ドメインを含有する細胞内シグナル伝達部分とを含有するキメラ受容体である。一部の態様では、組換え抗原受容体はトランスジェニックT細胞受容体(TCR)である。
【0114】
本明細書において、上記の態様のいずれかの組成物を含有する内部キャビティを含む、回転軸の周りを回転可能な遠心チャンバーが提供される。
【0115】
本明細書において、(a)組換えウイルスベクターを形質導入された少なくとも5×107個の初代T細胞を含有する組成物、ならびに/または(b)少なくとも5×107個の初代T細胞と、組換えウイルスベクターを含有するウイルス粒子とを含有する組成物、を含有する内部キャビティを含有する、回転軸の周りを回転可能な遠心チャンバーが提供される。
【0116】
任意のそのような態様の一部では、チャンバーは、端壁、該端壁から延びる実質的に剛性の側壁、および少なくとも1つの開口部をさらに含有し、該側壁の少なくとも一部は内部キャビティを取り囲み、かつ該少なくとも1つの開口部は、該内部キャビティ内への液体の取り入れおよび該キャビティからの液体の圧出を可能にすることができる。
【0117】
任意のそのような態様の一部では、キャビティ内の組成物は、少なくとも1×108個、2×108個、4×108個、6×108個、8×108個、または1×109個の細胞を含有する。
【0118】
任意のそのような態様の一部では、T細胞は、分画されていないT細胞、単離されたCD8+ T細胞、または単離されたCD4+ T細胞である。
【0119】
チャンバーについての任意のそのような態様の一部では、組成物中の細胞のうちの少なくとも2.5%、5%、6%、8%、10%、20%、25%、30%、40%、50%、または75%は、ウイルスベクターを形質導入されている。
【0120】
チャンバーについての任意のそのような態様の一部では、ウイルスベクターは組換え受容体をコードし、かつ組成物中の細胞は該組換え受容体を発現する。一部の態様では、組換え受容体は組換え抗原受容体である。一部の態様では、組換え抗原受容体は機能的非T細胞受容体である。一部の態様では、機能的非T細胞受容体はキメラ抗原受容体(CAR)である。一部の態様では、組換え受容体は、リガンドに特異的に結合する細胞外部分と、活性化ドメインおよび共刺激ドメインを含有する細胞内シグナル伝達部分とを含有するキメラ受容体である。一部の態様では、組換え抗原受容体はトランスジェニックT細胞受容体(TCR)である。
【0121】
チャンバーについての任意のそのような態様の一部では、組成物中の全細胞における組換えウイルスベクターの平均コピー数は、多くても約10、多くても8、多くても6、多くても4、もしくは多くても約2であるか、または組成物中の組換えウイルスベクターを形質導入された細胞における該ベクターの平均コピー数は、多くても約10、多くても8、多くても6、多くても4、もしくは多くても約2である。
【0122】
本明細書において、上記の態様のいずれかの組成物を含有する内部キャビティを含む、回転軸の周りを回転可能な遠心チャンバーが提供される。一部の態様では、チャンバーは、該チャンバーの内部キャビティの最大容積までの体積の気体をさらに含有する。一部の態様では、気体は空気である。
【0123】
チャンバーについての任意のそのような態様の一部では、チャンバーは回転軸の周りを回転可能であり、かつ端壁、該端壁から延びる実質的に剛性の側壁、および少なくとも1つの開口部を含み、該側壁の少なくとも一部は内部キャビティを取り囲み、かつ該少なくとも1つの開口部は、該内部キャビティ内への液体の取り入れおよび該キャビティからの液体の圧出を可能にすることができる。一部の態様では、側壁は曲線状である。一部の態様では、側壁は概ね円筒状である。
【0124】
チャンバーについての任意のそのような態様の一部では、少なくとも1つの開口部は、それぞれ取り入れおよび圧出を可能にすることができる入口および出口を含む、または少なくとも1つの開口部は、取り入れおよび圧出を可能にすることができる単一の出入口を含む。チャンバーについての任意のそのような態様の一部では、少なくとも1つの開口部は、チャンバーと同軸でありかつ端壁内に位置する。
【0125】
任意のそのような態様の一部では、チャンバーは可動部材をさらに含み、かつ内部キャビティは、端壁、実質的に剛性の側壁、および該可動部材によって画定される容積可変のキャビティであり、該可動部材は、該キャビティの内部容積を変動させるようにチャンバー内を移動することができる。一部の態様では、可動部材はピストンであり、かつ/または可動部材は、キャビティの内部容積を変動させるようにチャンバー内を軸方向に移動することができる。
【0126】
任意のそのような態様の一部では、キャビティの内部表面積は少なくとも1×109μm2もしくは少なくとも約1×109μm2であり、キャビティの内部表面積は少なくとも1×1010μm2もしくは少なくとも約1×1010μm2であり、端壁から延びる方向での剛性の壁の長さは少なくとも約5cmであり、端壁から延びる方向での剛性の壁の長さは少なくとも約8cmであり、かつ/またはキャビティは、少なくとも1つの横断面において少なくとも約2cmの半径を含有する。
【0127】
チャンバーについての任意のそのような態様の一部では、キャビティ内に存在する組成物の、キャビティの内部表面積1平方インチあたりの液体体積(mL/sq.in.)は、0.5もしくは約0.5mL/sq.in.~5もしくは約5mL/sq.in.、0.5もしくは約0.5mL/sq.in.~2.5もしくは約2.5mL/sq.in.、0.5もしくは約0.5mL/sq.in.~1もしくは約1mL/sq.in.、1もしくは約1mL/sq.in.~5もしくは約5mL/sq.in.、1もしくは約1mL/sq.in.~2.5もしくは約2.5mL/sq.in.、または2.5もしくは約2.5mL/sq.in.~5もしくは約5mL/sq.in.である。任意のそのような態様の一部では、キャビティ内に存在する組成物の液体体積は、少なくとも0.5mL/sq.in.、1mL/sq.in.、2.5mL/sq.in.、または5mL/sq.in.である。
【0128】
本明細書において、上記の態様のいずれかの遠心チャンバーを含有する閉鎖システムが提供される。閉鎖システムについての任意のそのような態様の一部では、遠心チャンバーは最大で8000gの速度での回転が可能であり、該遠心チャンバーは、該チャンバーを実質的に凹ませることも、曲げることも、壊すことも、別様に損傷をもたらすこともなしに、500、1000、1500、2000、2500、3000、もしくは3200gの力に耐えることができ、かつ/または一方でそのような力の下で、概ね円筒状の形状を実質的に保つ。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【
図1A】
図1Aは、実施例1に記載されている様々な条件下でのインキュベーション後の、ウイルスベクターによってコードされるキメラ抗原受容体(CAR)の表面発現を有するCD3
+ T細胞の割合(%)として算出された形質導入効率を示している。
【
図1B】
図1Bは、実施例1に記載されている形質導入調査中の6日間にわたる集団倍加を示している。
【
図2】
図2は、実施例2に記載されている表示された条件下でのインキュベーション後の、ウイルスベクターによってコードされるCARの表面発現を有するCD3
+ T細胞の割合(%)として算出された形質導入効率を示している。
【
図3】
図3は、実施例3に記載されている様々な条件下でのインキュベーション後の、ウイルスベクターによってコードされるCARの表面発現を有するCD3
+ T細胞の割合(%)として算出された形質導入効率を示している。
【
図4】
図4は、実施例4に記載されている様々な条件下での形質導入後の、表示された細胞集団におけるウイルスベクターの平均ベクターコピー数(VCN)を示している。
【
図5】
図5は、提供される方法の態様において使用するための、閉鎖システム(プロセシングキット)の態様についての概略図を提供している。図示されている例示的なシステムは、回転軸の周りを回転可能であり、かつチャンバーの内部キャビティ(7)を画定する端壁(13)、剛性の側壁(14)、およびピストン(2)を含む、概ね円筒状の遠心チャンバー(1)を含む。当該チャンバーは、システムの少なくとも一部の構成において、キャビティへのおよびキャビティからの液体および気体の流れを可能にする出入口開口部(6)をさらに含む。開口部(6)は、一連の配管ライン(3)、コネクタ(停止コックバルブ(4)を含む)、および様々な付加的な容器と機能的に連結されている。クランプ(5)も図示されている。
【
図6A】
図6Aは、実施例6に記載されている調査中の10日間にわたる集団倍加を示している。
【
図6B】
図6Bは、実施例6に記載されている調査中の10日間にわたる細胞の生存率(%)を示している。
【
図7】
図7は、提供される方法の態様において使用するための、閉鎖システム(プロセシングキット)の態様についての概略図を提供している。図示されている例示的なシステムは、回転軸の周りを回転可能であり、かつチャンバーの内部キャビティ(7)を画定する端壁(13)、剛性の側壁(14)、およびピストン(2)を含む、概ね円筒状の遠心チャンバー(1)を含む。当該チャンバーは、システムの少なくとも一部の構成において、キャビティへのおよびキャビティからの液体および気体の流れを可能にする出入口開口部(6)をさらに含む。開口部(6)は、一連の配管ライン(3)、コネクタ(停止コックバルブ(4)を含む)、様々な付加的な容器、および取り外し可能なキャップ(16)につながれた空気フィルター(15)と機能的に連結されている。クランプ(5)も図示されている。
【
図8A】
図8Aは、実施例8Aに記載されている表示された条件下でのインキュベーション後の、ウイルスベクターによってコードされるCARの表面発現を有するCD3
+ T細胞の割合(%)として算出された形質導入効率を示している。
【
図8B】
図8Bは、実施例8Bに記載されている表示された条件下でのインキュベーション後の、ウイルスベクターによってコードされるCARの表面発現を有するCD3
+ T細胞の割合(%)として算出された形質導入効率を示している。
【
図8C】
図8Cは、実施例8Bに記載されている様々な条件下での形質導入後の、表示された細胞集団におけるウイルスベクターの平均ベクターコピー数(VCN)を示している。
【
図9】
図9Aは、実施例9に記載されている表示された条件下でのインキュベーション後の、ウイルスベクターによってコードされるCARの表面発現を有するCD3
+ T細胞の割合(%)として算出された形質導入効率を示している。
図9Bは、実施例9に記載されている様々な条件下での形質導入後の、表示された細胞集団におけるウイルスベクターの平均ベクターコピー数(VCN)を示している。
【
図10】
図10は、実施例10に記載されている表示された条件下でのインキュベーション後の、ウイルスベクターによってコードされるCARの表面発現を有するCD3
+ T細胞の割合(%)として算出された形質導入効率を示している。
【
図11】
図11は、提供される方法の態様において使用するための、閉鎖システム(プロセシングキット)の態様についての概略図を提供している。図示されている例示的なシステムは、回転軸の周りを回転可能であり、かつチャンバーの内部キャビティ(7)を画定する端壁(13)、剛性の側壁(14)、およびピストン(2)を含む、概ね円筒状の遠心チャンバー(1)を含む。チャンバーは、システムの少なくとも一部の構成において、キャビティへのおよびキャビティからの液体および気体の流れを可能にする出入口開口部(6)をさらに含む。開口部(6)は、一連の配管ライン(3)、コネクタ(停止コックバルブ(4)およびポート(18)を含む)、ならびに様々な付加的な容器(複数のアウトプットバッグ(17)を含む)と機能的に連結されている。クランプ(5)も図示されている。
【発明を実施するための形態】
【0130】
詳細な説明
別様に定義されていない限り、本明細書において用いられる、技術分野の全ての用語、表記、ならびに他の技術的および科学的な用語または専門用語は、主張される対象物が関連する技術分野における当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有することを意図される。一部のケースでは、一般に理解される意味を有する用語は、明確さのためにおよび/または容易な参照のために本明細書において定義され、かつ本明細書におけるそのような定義の内包は、必ずしも、当技術分野において一般的に理解されるものと比較した実質的な違いを表すと解釈されるべきではない。
【0131】
本出願において言及される特許文献、科学論文、およびデータベースを含む全ての刊行物は、あたかもそれぞれ個々の刊行物が参照により個々に組み入れられるのと同じ度合に、全ての目的のために参照によりそれらの全体として組み入れられる。本明細書において明示される定義が、参照により本明細書に組み入れられる特許、出願、公開された出願、および他の刊行物において明示される定義に反しているかまたはそうでなくても矛盾する場合は、本明細書において明示される定義が、参照により本明細書に組み入れられる定義よりも優先される。
【0132】
本明細書において用いられる節の見出しは、体系化目的のみのためのものであり、記載されている対象物を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0133】
I.細胞プロセシングの方法、ならびに関連するシステム、キット、および装置
例えば、養子細胞療法において使用するための細胞の組成物を生成するための、細胞をプロセシングするための方法が提供される。当該方法には、ウイルス形質導入などによって細胞に組換えウイルスベクターを導入するための方法が含まれる。ウイルスベクターは、概して、例えば細胞療法において使用するための、細胞内で発現される組換え分子をコードする。当該方法のプロセシング段階は、細胞の洗浄、希釈、選択、単離、分離、培養、刺激、パッケージング、および/または製剤化の全てまたは一部も含んでもよいし、または代替的に含んでもよい。当該方法は、概して、大規模での(例えば、50または約50mLを上回る体積の組成物における)細胞のプロセシング(例えば、選択または分離および/または形質導入)を可能にする。細胞プロセシング段階のうちの1つまたは複数は、概して、形状が概ね円筒状でありかつ回転軸の周りを回転可能である遠心チャンバー(例えば、実質的に剛性のチャンバー)の内部キャビティ内で行われ、それは、他の利用可能な方法と比較して特定の利点を提供し得る。一部の態様では、全てのプロセシング段階が同じ遠心チャンバー内で行われる。一部の態様では、1つまたは複数のプロセシング段階は、異なる遠心チャンバー(例えば、同じタイプの複数の遠心チャンバー)内で行われる。
【0134】
提供される方法は、細胞プロセシング(形質導入および選択を含む)に利用可能な方法、特に大規模な細胞プロセシングに利用可能な方法と比較して、様々な利点を付与する。特定の利用可能な方法は、例えば最適に満たない有効性、精度、再現性、コストおよび時間の消費、エラーのリスク、複雑さ、ならびにユーザーによる取り扱いおよびバイオセーフティー設備の必要性が原因で、完全に満足のいくものにはなっていない。一部の態様では、提供される方法は、大規模かつ/または臨床グレードの細胞産生に適しており、一方で小規模な産生方法でのみ別様に利用可能な望ましい特質をさらに提供し、かつ利用可能な方法によっては提供されない付加的な利点を付与する。例えば、細胞形質導入および/または親和性に基づく選択のための方法は、柔軟性のあるプラスチック製バッグまたはプラスチック製マルチウェルプレートにおいて実施される利用可能な方法と比較した利点を付与する。
【0135】
一部の態様では、その中で細胞がプロセシングされる遠心チャンバーおよび/またはその内部キャビティは、少なくとも一部は、剛性または実質的に剛性の材料によって取り囲まれるかまたは画定される。そのような材料(例えば、硬質プラスチック)によって境界を付けられたキャビティ内でのインキュベーションは、特定の条件下(他の大規模な細胞プロセシング方法において用いられるバッグと共に用いられ得るものよりも大きな力)での遠心を可能にする。例えば、一部の態様では、チャンバーおよびキャビティは、細胞を保持するチャンバーまたはキャビティを実質的に凹ませることも、曲げることも、壊すことも、別様に損傷をもたらすこともなしに、例えばチャンバーもしくはキャビティの内部もしくは外部壁または1つもしくは複数の細胞(例えば、細胞の層)において測定される、少なくとも、500gもしくは約500g、1000gもしくは約1000g、1500gもしくは約1500g、2000gもしくは約2000g、2500gもしくは約2500g、3000gもしくは約3000g、または3200gもしくは約3200gの力(例えば相対遠心力)での遠心に耐え、その結果、該チャンバーおよび/またはキャビティは、そのような力の下でそれらの形状を実質的に保つ。
【0136】
したがって、チャンバーおよび/またはその内部キャビティは、典型的には、加えられる遠心力の下でその形状を保つ、剛性または半剛性の側壁(例えば、硬質プラスチック製の側壁)の全てまたは一部によって取り囲まれている。側壁は、概ね曲線状(例えば、円筒状または概ね円筒状)であり、かつ典型的にはチャンバーの1つまたは2つの端壁から延び、当該端壁の一方または両方の内側面も内部キャビティの境界を画定し得る。端壁も、一部の態様では、剛性の材料から作製され、かつ一部の態様では、より柔軟性のある材料を含み得る。一部の態様では、壁は、剛性または実質的に剛性の材料から作製されるものの、それにもかかわらずそれは、方法の条件の間にキャビティが全体としてその全体的形状を維持する限り、柔軟性のある材料で裏打ちされ得かつ/もしくはコーティングされ得、かつ/またはより柔軟であるごく一部を含有し得る。
【0137】
遠心チャンバーは、概して回転軸の周りを回転可能であり、かつキャビティは、典型的にはチャンバーと同軸である。一部の態様では、遠心チャンバーは、ピストンなどの可動部材をさらに含み、それは概して、キャビティの容積を変動させる、チャンバー内の移動(例えば、軸方向の移動)が可能である。したがって、特定の態様では、内部キャビティは、チャンバーの側壁および端壁ならびに可動部材によって境界を付けられ、かつ可動部材を移動させることによって調整され得る可変容積を有する。可動部材は、剛性の、実質的にもしくは概ね剛性の、柔軟性のある材料、またはそれらの組み合わせから作製され得る。
【0138】
チャンバーは、概して、1つもしくは複数の入口、1つもしくは複数の出口、および/または1つもしくは複数の出入口など、1つまたは複数の開口部も含み、それは、キャビティへのおよびキャビティからの液体および/または気体の取り入れおよび圧出を可能にすることができる。一部のケースでは、開口部は、液体および/または気体の取り入れおよび圧出の両方が行われる出入口であり得る。一部のケースでは、1つまたは複数の入口は、1つまたは複数の出口とは別個であり得るまたは異なり得る。1つまたは複数の開口部は、端壁の1つにあり得る。一部の態様では、液体および/または気体は、キャビティの容積を増加および/または減少させる可動部材の移動によって、キャビティ内に取り入れられかつ/またはキャビティから圧出される。他の態様では、液体および/または気体は、例えば、ラインまたはチャネルをポンプ、シリンジ、または他の機械と接続しかつ制御して置くことによって、開口部に接続しているまたは接続して置かれる配管ラインまたは他のチャネルを通じて、キャビティ内に取り入れられ得かつ/またはキャビティから圧出され得、それは自動化された方式で制御され得る。
【0139】
一部の態様では、チャンバーは、様々な付加的な構成要素(例えば、配管ラインおよびコネクタおよびキャップ)を有する閉鎖システム(例えば無菌システム)の一部であり、その中でプロセシング段階が行われる。したがって、一部の態様では、提供される方法および/またはその段階は、完全な閉鎖環境または半閉鎖環境(例えば、閉鎖型または半閉鎖型の無菌システム)内で行われ、別個の無菌環境(例えば、バイオセーフティーのキャビネットまたはルーム)を必要とすることなく、対象への治療的投与用の細胞の産生を容易にする。一部の態様における方法は、自動化されたまたは部分的に自動化された方式で行われる。
【0140】
一部の態様では、チャンバーは遠心機と関連付けられ、当該遠心機は、(例えば、チャンバーの回転軸の周りなどにおける)チャンバーの回転をもたらすことができる。回転は、プロセシング段階のうちの1つまたは複数におけるインキュベーションの前、間、および/または後に行われ得る。したがって、一部の態様では、様々なプロセシング段階のうちの1つまたは複数は、(例えば特定の力での)回転下で行われる。チャンバーは、典型的には垂直または概ね垂直の回転が可能であり、その結果、遠心中、該チャンバーは垂直のままであり、かつ側壁および軸は垂直または概ね垂直であり、端壁は水平または概ね水平である。1つの例示的なチャンバーが、
図5、
図7、または
図11に図示されている例示的な閉鎖システム内に図示されている。
【0141】
当該方法のプロセシング段階(例えば、チャンバー内で全体としてまたは一部として行われる段階)は、単独または組み合わせで、いくつかの細胞プロセシング段階のうちの任意の1つまたは複数を含み得る。特定の態様では、プロセシング段階は、レトロウイルスベクターを含有するウイルスベクター粒子(例えば、細胞内での発現のための組換え産物をコードするもの)による細胞の形質導入を含み、ウイルスベクター粒子とのインキュベーションの少なくとも一部がチャンバー内で実施されて、形質導入が開始される。当該方法は、細胞の単離、分離、選択、培養(例えば細胞の増殖および/または活性化を誘導する、例えば細胞の刺激)、洗浄、懸濁、希釈、濃縮、および/または製剤化のための段階など、他のプロセシング段階をさらにかつ/または代替的に含み得る。一部の態様では、当該方法は、まず、生物学的サンプルから細胞(例えば初代細胞)を単離(例えば、選択もしくは分離)し;得られた単離もしくは選択された細胞を刺激試薬の存在下で刺激し;刺激された細胞を、形質導入のためにウイルスベクター粒子と共にインキュベーションし;形質導入された細胞を組成物に製剤化する、という順序で行われるプロセシング段階を含む。一部の態様では、刺激は、ウイルスベクター粒子とのインキュベーションの少なくとも一部の間に、付加的にまたは代替的に実施される。一部のケースでは、刺激は、細胞とウイルスベクター粒子とのインキュベーションの後に、付加的にまたは代替的に行われる。一部のケースでは、当該方法は、細胞を刺激する段階を含まない。一部の態様では、当該方法は、単離(例えば、分離もしくは選択)、刺激、形質導入、および/または製剤化の段階のうちの1つまたは複数の前、間もしくは同時、または後に行われ得る、細胞の洗浄、懸濁、希釈、および/または濃縮段階のうちの1つまたは複数のプロセシング段階を含み得る。プロセシング段階のそれぞれのうちの全てまたは一部は、遠心チャンバー内などの閉鎖システム内で実施され得る。当該方法の局面において、プロセスは、同じ閉鎖システム内(例えば、同じ遠心チャンバー内)で実施される必要はないが、異なる閉鎖システムの下(例えば、異なる遠心チャンバー内)で実施されてもよく;一部の態様では、そのような異なる遠心チャンバーは、同じシステムと関連付けして配置された(例えば、同じ遠心機と関連付けして配置された)当該方法におけるそれぞれの位置にある。一部の態様では、全てのプロセシング段階は閉鎖システム内で実施され、当該閉鎖システム内で、1つまたは複数の各プロセシング段階の全てまたは一部が、同じまたは異なる遠心チャンバー内で実施される。
【0142】
一部の態様では、当該方法は、例えばより大きな遠心力/速度で形質導入の全てもしくは一部を行うことによって、ならびに/あるいは試薬の体積もしくは量、速度、および/または温度などの様々なパラメーターの簡易な、自動化された、かつ/または独立した制御もしくは調整を可能にすることによって、利用可能な方法と比較して、より高い形質導入効率で細胞を形質導入し得る能力を提供する。一部の態様では、当該方法は、ユーザー相互作用および/または取り扱いの段階の数を能率化しかつ/または減少させることによって、例えば、様々な段階の自動化されたまたは半自動化された制御を提供することによって、有効性を増加させかつ/または可変性を低下させる(再現性を向上させる)。
【0143】
一部の態様では、提供される方法は、プロセシング段階のうちの1つまたは複数(例えば、全てまたは全てのうちの一部)を閉鎖システム(例えば、無菌閉鎖システム)内で行うことにより、細胞を非無菌条件に曝露することなく、かつ別個の無菌ルームまたはキャビネットを使用することなく、臨床用の細胞の大規模な調製を可能にする。一部の態様では、細胞は、閉鎖システム内で、例えば自動化された方式で、単離され、分離または選択され、刺激され、形質導入され、洗浄され、かつ製剤化される。一部の態様では、当該方法は、それらが、例えば単一の閉鎖システム内でかつ/または自動化された方式で行われることによって能率化される、例えばより少ない段階、より少ないユーザーによる取り扱いまたは介入を要するという点において有利である。例えば、一部の態様では、当該方法は、臨床適用において使用するための細胞をプロセシングするための方法であって、遠心機におけるバッグ内またはプレート内での形質導入を要し得、バイオセーフティーキャビネット内でウイルスベクター粒子と細胞とを適当な比率で混合し、続いて当該プレートまたはバッグを形質導入または他のプロセシング段階のために遠心機に運び、取り扱いも要し得る付加的段階を実施することによる、前記方法を上回る改善を提供する。一部の態様では、提供される方法は、そのような利用可能な方法と比較して、手作業がより少なくかつ/または必要な労働力がより少なく、低下した程度または分量の取り扱いおよびユーザー相互作用を要する。
【0144】
一部の態様では、当該方法は、利用可能な方法と比較して、より大きな程度のプロセス制御を可能にする。例えば、一部の態様における方法は、例えば自動化された方式で、様々なパラメーターの独立した制御を可能にする。例えば、当該方法は、プロセスまたは方法のうちの1つまたは複数において用いられる方法または様々な条件において用いられかつそれと共にプロセシングされる様々な構成要素および試薬の体積、量、および/または濃度の独立した制御を可能にし得る。それらは、概して、方法のうちの1つもしくは複数の様々な段階の持続時間の制御、ならびに/あるいは特定のインキュベーションもしくは組成物における細胞の比率、液体体積、および/またはチャンバーもしくはキャビティなど、プロセシングに用いられる容器の表面積の制御を可能にする。そのようなパラメーターを独立して、特に自動化された方式でかつ互いに独立して制御し得る能力は、ユーザーが、個々の条件に対して方法を簡易に最適化しかつ行うことを可能にし得る。
【0145】
そのような方法と共に使用するためのシステム、装置、および機器、それを含有するキット、ならびに組成物の使用方法、ならびに方法によって産生された細胞も提供される。例えば、治療方法、ならびに方法によって産生された細胞および組成物の治療(例えば、養子細胞療法)における使用が提供される。そのような治療法において使用するための薬学的組成物および製剤も提供される。
【0146】
II.遠心チャンバー、ならびに関連するシステムおよび装置
一部の態様では、プロセシング段階のうちの1つもしくは複数の全てもしくは一部、例えば、形質導入を開始もしくはもたらすためのウイルスとのインキュベーション、および/または免疫親和性に基づく分離のためのビーズとのインキュベーション、ならびに/あるいは記載されている1つまたは複数の他のプロセシング段階は、遠心チャンバー内で行われる。特に、そのような段階およびインキュベーションは、概してそのようなチャンバーの内部キャビティ内で行われ、当該チャンバーは、1つまたは複数のプロセスのそれぞれに対して同じまたは異なる遠心チャンバーであり得る。
【0147】
遠心チャンバーは、概して、例えばインキュベーション中にチャンバーと関連付けられ得る遠心機によって、回転され得る。一部の態様では、遠心チャンバーは、回転軸(例えば、垂直または概ね垂直または実質的に垂直な回転軸)の周りを回転可能である。一部の態様では、遠心チャンバーは1つの端壁および1つの側壁を含み、当該側壁の少なくとも一部がチャンバーの内部キャビティを取り囲むまたは取り巻く。遠心チャンバーは概してもう1つの端壁も含み、当該もう1つの端壁から当該側壁が反対方向に延びる。
【0148】
内部キャビティは、概して、その外側が、チャンバーの端壁の全てもしくは一部、側壁の全てもしくは一部、およびもう1つの端壁の全てもしくは一部の内側面によって、または別の表面もしくは物体(例えば、チャンバー内の可動部材(例えばピストン))によって、境界を付けられている。一部の局面では、キャビティは中空である。他の局面では、チューブまたはチャネルなど、キャビティの内部空間の一部の中に、中実または中空の物体が含有される。
【0149】
一部の局面では、キャビティは容積可変であり、このことは、例えば液体または気体によって占有され得るキャビティ内の利用可能な総容積が、例えば可動部材(例えばピストン)の移動によって、変動し得ることを意味する。一部の態様では、そのような移動は、形質導入を開始もしくはもたらすインキュベーションまたは選択、あるいはその後および/またはその前の段階の間など、方法の様々な段階の間に可能である。一部の態様における移動は、可動部材の位置およびプロセスの他の局面を検知しかつ制御するセンサーおよびモーター、ならびにセンサーと1つまたは複数の構成要素との間を通信するための回路など、チャンバーと関連付けられた回路および機械による事前に指定されたプログラムの実施などによって、自動化された方式で実施され得る。
【0150】
チャンバーの内部キャビティを取り囲む、チャンバーの側壁またはその一部(したがって、キャビティの形状)は、典型的には曲線状であり、例えば、円筒状、実質的に円筒状、または概ね円筒状である。円筒状という用語は、一般的に、円筒状の形状の軸と見なされる、所定の線分から固定した距離にある複数の点によって形成される、特定のタイプの曲線状表面を指すと当業者に理解される。「概ね円筒状」とは、目には円筒状に見えるまたはほぼ円筒状であるものなど、形状または構造がおおよそ円筒状である構成を有する形状または表面を指すが、ある程度の可変性を許容する。例えば、該用語は、そのあらゆる点が軸から同じ距離にあるわけではない形状および表面を包含し、そして当該形状または表面が円筒状に見えかつ/または主に円筒状の形状を有する限り、ある程度の輪郭削りおよび/または先細化を容認する。それは、遠心チャンバーの外壁の大部分が、形状が円筒状または実質的に円筒状であるが、その比較的少ない部分は別の構成を取り、例えば壁の1つまたは複数の端を先細化するまたはそこで輪郭を削るまたはそこへ近づく場合など、形状の大部分が円筒状である形状も包含する。一部の態様では、キャビティを取り囲むチャンバーの側壁の一部は円筒状であり、一方で該壁の他の部分は円筒状でない場合がある。
【0151】
一部の態様では、チャンバーおよび/またはキャビティの全てまたは一部は、剛性または実質的に剛性である。例えば、側壁の全てまたは一部は剛性または実質的に剛性であり、例えばチャンバーおよびキャビティが、例えば高速での、例えばキャビティの側壁の内部表面および/または細胞の表面層における、200gを上回るもしくは約200gを上回る、300gを上回るもしくは約300gを上回る、または500gを上回るもしくは約500gを上回る、例えば、600gを上回るもしくは約600gを上回る、800gを上回るもしくは約800gを上回る、1100gを上回るもしくは約1100gを上回る、1000gを上回るもしくは約1000gを上回る、1500gを上回るもしくは約1500gを上回る、1600gを上回るもしくは約1600gを上回る、2000gを上回るもしくは約2000gを上回る、2200gを上回るもしくは約2200gを上回る、2500gを上回るもしくは約2500gを上回る、3000gを上回るもしくは約3000gを上回る、または3200gを上回るもしくは約3200gを上回る;あるいは、少なくとも、600gもしくは約600g、800gもしくは約800g、1000gもしくは約1000g、1100gもしくは約1100g、1500gもしくは約1500g、1600gもしくは約1600g、2000gもしくは約2000g、2200gもしくは約2200g、2500gもしくは約2500g、3000gもしくは約3000g、または3200gもしくは約3200g、例えば、2100gもしくは約2100g、または2200gもしくは約2200gの力(相対遠心力(RCF))での、遠心中に加えられる力に耐えるのを可能にし得る。一部の態様では、キャビティの側壁の内部表面および/または細胞の表面層におけるRCFは、1100gを上回るもしくは約1100gを上回るまたは1100gもしくは約1100gである、1200gを上回るもしくは約1200gを上回るまたは1200gもしくは約1200gである、1400gを上回るもしくは約1400gを上回るまたは1400gもしくは約1400gである、1600gを上回るもしくは約1600gを上回るまたは1600gもしくは約1600gである、1800gを上回るもしくは約1800gを上回るまたは1800gもしくは約1800gである、2000gを上回るもしくは約2000gを上回るまたは2000gもしくは約2000gである、2200gを上回るもしくは約2200gを上回るまたは2200gもしくは約2200gであるか、あるいはそれらを上回る。対照的に、柔軟性のあるバッグを用いた、大規模での、例えば体積が50mLを上回るかまたは100mLを上回る細胞をプロセシングするための利用可能な方法は、大きくて200g、500g、または1000gの相対遠心力での遠心を可能にするのみであり得る。したがって、提供される方法は、そのような方法と比較して、より大きな有効性をもたらし得る。
【0152】
「相対遠心力」またはRCFという用語は、一般的に、回転軸と比較して空間内の特定の点における、地球の重力に対する、ある物体または物質(細胞、サンプル、もしくはペレット、および/または回転しているチャンバーもしくは他の容器内の点など)に伝えられる有効な力であると理解される。その値は、重力、回転速度、および回転半径(RCFが測定されている物体、物質、または粒子の、回転軸からの距離)を考慮に入れた周知の式を用いて決定され得る。
【0153】
所定の場合におけるRCFが表現または決定される物体、粒子、または位置(またはその平均値)が指定され得る。例えば、本明細書中の一部の文脈におけるRCF値または近似値または値域は、そのような方法において用いられる遠心チャンバー内の特定の部分または位置に対して与えられ、例えば、細胞がプロセシングされるチャンバーのキャビティの側壁の内部表面、例えば、キャビティの円筒状の側壁の表面に沿った任意の点またはその平均半径方向距離において与えられる。同様に、RCF値は、細胞がプロセシングされる別の容器(例えばバッグ)内の、回転軸に対する半径方向距離または平均半径方向距離に対して与えられ得る。他の態様では、RCFは、回転中の、全体としてのサンプルもしくは組成物の位置に対して与えられるか、あるいは1つもしくは複数の特定の細胞またはその平均もしくは層において与えられる。例えば、当該値は、細胞がスピンしている液体と細胞自体との間の界面における細胞表面においてなど、回転中のチャンバーまたは他の容器内の細胞の表面層におけるRCFであり得る。
【0154】
一般的に、RCFは、式1.119×10-5 (rpm)2r(または1.12×10-5×(rpm)2*r)〔式中、r=半径(すなわち、回転軸から所定の粒子、物体、または物質までの距離(cm))、rpm=1分間あたりの回転運動〕によって算出される。例えば、一部の態様では、細胞がプロセシングされる内部プロセシングキャビティの側壁の内部表面におけるRCFは、この式を用いて算出され得、式中、rは、側壁の内部表面上の一点と回転軸との距離である。あるいは、細胞または細胞の表面層(例えば、回転中の細胞層と液体との間の界面)におけるRCFは、前記式を用いて算出され得、式中、rは、細胞、表面層、および/もしくは界面、またはその平均値の間の距離である。例えば、一部の態様では、側壁のRCFに関する半径(r)値は、チャンバーの側壁の長さに沿った、最大および最小の考え得る半径または全ての考え得る半径の平均に基づき得る。一部の態様では、Sepax(登録商標)システム(例えば、A-200/F)と共に使用するための、Biosafe AGによって販売されている例示的な遠心チャンバーの半径は、2.6cmもしくは約2.6cm、または2.7cmもしくは約2.7cmである。そのような例示的なチャンバーにおいて、そのようなチャンバーにおける回転中の細胞層と液体との間の界面におけるRCFを決定するための半径は、回転中の当該層の細胞によって占有される、キャビティの内部側壁とチャンバーとの間の正確なまたはおおよその半径方向距離を加えることによって算出され得る。そのような値は、例えば、チャンバーの回転中の、例えば、プロセシングされている細胞のうちの1つの直径および/またはそのような細胞の間での平均直径に基づいて、公知の方法を用いて算出または見積もりされ得る。そのような値は、細胞の実物大に基づき得るが、典型的には、回転または力自体が各細胞によって占有される相対体積に与える影響を考慮し、一般的に言えば、そのような体積は当該回転または力によって低下する。一部の例では、細胞の核のサイズ(またはその平均値)を用いて近似値が決定される。
【0155】
したがって、特定のチャンバーまたは装置における特定のスピン中のRCFまたは平均RCFは、所定の点または領域について、周知の方法を用いて、1分間あたりの回転運動(rpm)、および当該点と回転軸との間の距離に基づいて算出され得る。1分間あたりの回転運動(rpm)は、公知の方法を用いて、例えば特定の装置、システム、またはチャンバーに適したタコメータを用いて、様々な装置およびチャンバーについて決定され得る。例えば、一部の態様では、透明であるかまたは別様にタコメータとチャンバーの間の光の通過を可能にする、環境からチャンバーまたはキャビティ(例えば、Sepax(登録商標))へのウィンドウを有する遠心機、システム、または装置の場合には、携帯型のフォトタコメータまたはレーザータコメータが、例えば反射テープと組み合わせて用いられ得る。不透明なシステムに対しては、振動板式タコメータなど、他のタコメータが用いられ得る。
【0156】
当業者によって理解されるように、細胞プロセシングおよび遠心において用いられる、チャンバー、プレート、チューブ、およびバッグなどの様々な容器、ならびにそれらの材料の文脈において用いられる場合、剛性とは、概して、物体を用いる経過中に存在すると通常予想される、ある程度の力、温度、または他の条件の下などの環境に置かれた場合に、その形状および/または容積を実質的に保つ物体、その一部、または材料を説明する。例えば、硬質プラスチックから作製されるものなど、剛性の遠心チャンバーおよびチューブは、手で、または液体もしくは気体を引き込んで、バッグを拡張させることによって圧力が加えられた場合にその形状が変化する、軟質プラスチックおよびゴム、例えばフルオロエチレンプロピレンおよび同様の材料から作製されるバッグなど、細胞プロセシングおよび細胞培養バッグなどの柔軟性のある容器とは区別できる。したがって、一部の態様では、剛性の材料は、硬質プラスチック、金属、炭素繊維、合成物、セラミック、およびガラスを含み、かつ/または周囲温度または通常の条件下における通常の圧力、例えば手圧、または液体による容器の充填によって、その形状および容積が簡易に変化する、柔軟性のあるバッグを作製する際に用いられる軟質ゴム、シリコーン、およびプラスチックなどの柔軟性のある材料とは区別される。
【0157】
例えば、一部の態様では、中心のキャビティを取り囲む剛性の側壁またはその一部など、剛性の遠心チャンバーおよび/またはその一部もしくは材料は、特定の条件下で、その形状および/もしくは容積を保ち得、かつ/または液体もしくは気体をもはや含有しないように破裂するもしくは壊れることはない。一部の態様では、そのような条件には、人の手によって加えられ得る圧力など、手圧が含まれる。一部の態様では、そのような条件には、指定された遠心力、例えばキャビティの側壁の内部表面における力(RCF)、例えば有効力であって、200gを上回るもしくは約200gを上回る、300gを上回るもしくは約300gを上回る、または500gを上回るもしくは約500gを上回る、例えば、1000gを上回るもしくは約1000gを上回る、1500gを上回るもしくは約1500gを上回る、2000gを上回るもしくは約2000gを上回る、2500gを上回るもしくは約2500gを上回る、3000gを上回るもしくは約3000gを上回る、または3200gを上回るもしくは約3200gを上回るか;あるいは、少なくとも1000gもしくは少なくとも約1000g、少なくとも1500gもしくは少なくとも約1500g、少なくとも2000gもしくは少なくとも約2000g、または少なくとも2500gもしくは少なくとも約2500g、少なくとも3000gもしくは少なくとも約3000g、または少なくとも3200gもしくは少なくとも約3200g、例えば、2100gもしくは約2100gまたは2200gもしくは約2200gの力が含まれる。一部の態様では、環境には、最低で-80℃もしくは約-80℃までの温度かつ/あるいは最高で生理的温度、または細胞が生存したままであり続ける温度、および/または22℃~39℃などの18℃~42℃の温度、例えば少なくとも25℃±2℃もしくは37℃±2℃など、それよりも高い温度など、特定の条件が含まれる。
【0158】
当技術分野において理解されるように、物質を剛性または実質的に剛性のものとして記載することは、例えば過度のまたは予想外の力の下で、物質または材料の形状または容積の任意の変化がいつか生じる可能性を除外しない。例えば、本明細書に記載されている形質導入方法に関連して通常用いられるものからかなり外れたものなど、過度の力または極限の環境条件の下。
【0159】
チャンバーは、概して、チャンバーのキャビティまたは他の部分と他の空間との間を物質が通過するのを可能にする、入口、出口、および/または出入口など、少なくとも1つの開口部を含む。例えば、そのような開口部は、概してチャンバーの壁の少なくとも1つに含まれる。チャンバーは、概して少なくとも1つの入口および少なくとも1つの出口を含み、それは一部の態様では同じ開口部(出入口)であってもよく、それを通じて液体および/または気体がキャビティ内に取り入れられ得かつキャビティから圧出され得る。開口部は、概して、チャネル(例えば、配管ラインまたは配管ラインのシステム)を介して、一部の態様では例えば1つまたは複数のコネクタを介して、別の環境と関連付けられる。
【0160】
一部の態様では、チャンバーは、付加的な構成要素(例えば、配管ライン、コネクタ、および容器)をさらに含むシステム(例えば、閉鎖または部分的に閉鎖されたシステム)の一部として含まれ、かつ/または当該システムに組み込まれている。一部の態様では、チャンバーは、付加的な構成要素のうちの1つまたは複数に直接的および/または間接的にあらかじめ接続されている。そのようなチャンバーは、あらかじめ組み立てられたキット(例えば、提供される方法に関連する単回の無菌での使用のためにパッケージされたキット)の一部として提供され得る。一部の態様では、例えば、プロセシング方法の特定の態様のためにユーザーが構成要素を接続および配置するカスタム構成を可能にするように、様々な構成要素が別々にパッケージされている。
【0161】
構成要素は、典型的には少なくとも1本の配管ライン、および概して配管ラインのセットまたはシステム、および少なくとも1つのコネクタを含む。例示的なコネクタには、バルブ、ポート、スパイク、溶接、シール、およびホースクランプが含まれる。コネクタおよび/または他の構成要素は、例えば全プロセスが閉鎖無菌システム内で行われるのを可能にするように、無菌であり得、それは、クリーンルーム、無菌キャビネット、および/または層流システムの必要性を排除し得るまたは低下させ得る。
【0162】
一部の態様では、少なくとも1本の配管ラインは、一連の配管ラインを含む。配管は、ポリカーボネートなどのプラスチックから作製され得、かつ様々なサイズおよび/または容積のものであり得、概して、適当な速度での所望の液体/気体の流れ、ならびにチャンバーおよび/または他の構成要素との接続を可能にするように設計され得る。一連の配管ラインは、概して、チャンバーおよび/またはシステムの1つもしくは複数の構成要素(例えば、他の容器)の間での液体および気体の流れを可能にし、それは一部の局面ではコネクタによって容易となる。一部の態様では、システムは、様々な構成要素のそれぞれを少なくとも1つの他の構成要素に接続する配管ラインを含み、各容器(例えばバッグ)とチャンバーの間を液体が流れることが可能となり、それは、バルブおよび/またはクランプなどの様々なコネクタの構成によって可能となり得または停止され得る。
【0163】
一部の局面では、コネクタは、別の構成で配置されるかまたは別の構成向けのものであってもよく、それぞれ、(様々な構成要素を通じた、例えば、様々な容器の間の、および様々な構成要素を接続する特定の配管ラインを通じた)流体および気体の流れを遮断する、可能にする、および/または方向付けるものであってもよく、例えば、回転式およびゲート式のバルブであってもよい。他の態様では、特定のコネクタおよび/または他の構成要素は、シール、キャップ、および/または開口ポートもしくはチャネルなど、液体または気体の通過を可能にする、方向付ける、または遮断する、単一の構成を有する。システムにおける様々な構成要素には、バルブ、ポート、シール、およびクランプが含まれ得る。バルブには、回転式バルブ、例えば、停止コック、回転バルブ、およびゲート式バルブが含まれ得る。バルブは、マニホールドアレイに、または単一のマルチポート回転式バルブとして、配置され得る。ポートには、ルアーポートまたはスパイクポートが含まれ得る。シールには、Oリング、ガスケット、接着性シール、およびカップリングが含まれ得る。クランプには、ピンチクランプが含まれ得る。
【0164】
システムの他の構成要素には、液体および/または気体を保持または保管し得る容器が含まれる。容器には、バッグ、バイアル、箱、シリンジ、球、タンク、ボトル、ビーカー、バケツ、フラスコ、および配管ラインが含まれ得る。そのような構成要素は、副産物および中間産物および廃液を含む、方法において用いられる組成物および方法によって産生される組成物を保持し得る。そのような組成物には、バッファー、成長培地、形質導入培地、水、希釈液、洗浄液、および/または生理食塩水を含めた液体が含まれ得、かつ形質導入などのプロセシング段階において使用するための細胞、ウイルス、および/または他の作用物質も含まれ得る。容器には、廃液容器、および本明細書における方法の1つまたは複数のプロセシング段階によって選択および/または形質導入された細胞を含有する産物など、1つまたは複数のアウトプット産物を保持する容器も含まれ得る。
【0165】
システムの一部の態様では、複数の容器が、システムの配管ラインの1つまたは複数の位置に無菌的に接続され得る。容器は、提供される態様における細胞プロセシング方法の間、同時および/または逐次的に接続され得る。一部の態様では、容器は、コネクタから外すまたは取り外すことが可能であり、そのため、容器は、システムから取り外され得、かつ/または該システムとの使用のための同じ位置で別の容器に置き換えられ得る。一部の態様では、システムの全てのコネクタ位置が容器に接続されているわけではなく、そのため、システムは空のコネクタを含有し得る。一部のそのような態様では、配管ラインと空のコネクタ(例えば、ポート)との間の連通を閉鎖するために、手動または自動のいずれかでの、1つまたは複数の停止コック、バルブ、またはクランプの操作によって、閉鎖システムが維持される。一部の態様では、閉鎖システムは、空のコネクタ(例えば、ポート)をシールするまたは外すことによって維持される。
【0166】
システムの一部の態様、例えば、
図5、
図7、または
図11に図示されている例示的なシステムでは、容器は、インプットバッグ位置、希釈液バッグ1位置、希釈液バッグ2位置、廃液バッグ位置、および/またはアウトプットバッグ位置に相当する位置にて、例えばコネクタを通じて、配管ラインに機能的に接続され得る。当該図に関して、これらの位置の指定は、単なる例示のためのものであり、ある位置に接続され得る容器の特定のタイプまたは容器の内容物を限定することは企図されていない。また、提供される方法の態様では、図に示されているものなど、システムの全ての位置が、提供される方法のプロセシング段階を実施する際に利用される必要があるわけではない。一部のそのような態様では、空のコネクタ(例えば、ポート)を使用可能にする配管ラインは、停止コックまたはバルブの操作によって解放または閉鎖され得る。一部の態様では、空のコネクタは、シールされるかまたは外され得る。
【0167】
一部の態様では、システム(例えば、閉鎖システム)は無菌システムである。一部の態様では、システムの構成要素の全ての接続(例えば、コネクタを介した配管ラインと容器との間の接続)は、無菌条件下で作製される。一部の態様では、接続は、層流の下で作製される。一部の態様では、接続は、配管と容器との間の無菌的接続(例えば無菌的溶接)を作り出す無菌的接続装置を用いて作製される。一部の態様では、無菌的接続装置は、無菌性を維持するのに十分に高い熱条件下(例えば、少なくとも200℃の温度、例えば、少なくとも260℃または300℃)での接続をもたらす。
【0168】
一部の態様では、システムは、使い捨て、例えば、単回使用のキットであり得る。一部の態様では、単回使用のキットは、例えば、連続的または半連続的様式で行われるプロセスにおいて、1つまたは複数のプロセスの複数サイクルにおいて、例えば、少なくとも2、3、4、5回、またはそれを上回る回数において利用され得る。一部の態様では、単回使用のキットなどのシステムは、単一患者由来の細胞のプロセシングに採用される。
【0169】
例示的な遠心チャンバーには、A-200/FおよびA-200遠心チャンバーを含む、Sepax(登録商標)およびSepax(登録商標)2システムと共に使用するためのもの、ならびにそのようなシステムと共に使用するための様々なキットを含む、Biosafe SAによって生産および販売されるものが含まれる。例示的なチャンバー、システム、ならびにプロセシング用器具およびキャビネットは、例えば米国特許第6,123,655号、米国特許第6,733,433号、および公開された米国特許出願公報第US 2008/0171951号、および公開された国際特許出願公報第WO 00/38762号に記載されており、そのそれぞれの内容は参照によりそれらの全体として本明細書に組み入れられる。特定のプロセス(例えば、希釈、洗浄、形質導入、製剤化)に応じて、プロセスに適当である特定のキットを選定することは、当業者のレベルの範囲内にある。そのようなシステムと共に使用するための例示的なキットには、BioSafe SAがCS-430.1、CS-490.1、CS-600.1、またはCS-900.2という製品名で販売している単回使用のキットが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0170】
一部の態様では、システムは、一連の容器(例えば、バッグ)、配管、停止コック、クランプ、コネクタ、および遠心チャンバーを含む。一部の態様では、容器(例えば、バッグ)には、同じまたは別個の容器(例えば、同じまたは別個のバッグ)に、形質導入される細胞とウイルスベクター粒子とを含有する、1つまたは複数の容器(例えば、バッグ)が含まれる。一部の態様では、システムは、媒体(例えば、希釈液および/または洗浄溶液)を含有する1つまたは複数の容器(例えば、バッグ)をさらに含み、当該媒体は、方法の間に、構成要素および/または組成物を希釈、再懸濁、および/または洗浄するために、チャンバーおよび/または他の構成要素の中に引き入れられる。容器は、システム内の1つまたは複数の位置、例えば、インプットライン、希釈液ライン、洗浄ライン、廃液ライン、および/またはアウトプットラインに相当する位置にて接続され得る。
【0171】
プロセスのうちの1つもしくは複数または全ての部分を行うための、提供される方法の態様において使用するための例示的なシステムが、
図5、
図7、および
図11に図示されている。
図5に示されている1つの例示的な態様では、遠心チャンバー(1)は、少なくとも概ね円筒状でありかつ回転軸の周りを回転可能である。チャンバーは、端壁(13)および剛性の側壁(14)、およびピストンである可動部材(2)を含む。端壁(13)の内部表面、剛性の側壁(14)、およびピストン(2)は、チャンバーの内部キャビティ(7)の境界を集合的に画定する。キャビティ(7)は、容積可変のものでありかつチャンバーと同軸であり、そしてプロセシング段階の間、チャンバー内に含まれる液体および/または気体を含有するように設計される。ピストン(2)は、チャンバー(1)内を軸方向に移動可能であり、内部キャビティ(7)の容積を変動させる。チャンバーは、システムの少なくとも一部の構成において、キャビティ内へのおよびキャビティからの液体および気体の流れを可能にする出入口開口部(6)をさらに含む。開口部(6)は、一連の配管ライン(3)、およびコネクタ(停止コックバルブ(4)を含む)と機能的に連結され、それは、システムの様々な構成要素間での流体および/または気体の移動を制御し得る。一連の配管ライン(3)は、図示された構成において、インプットバッグ、希釈液バッグ1および2、廃液バッグ、ならびにアウトプットバッグと標識されたバッグを含む、様々な付加的な容器とさらに連結される。クランプ(5)は、一連の配管ライン(3)の表示された部分を通じた流体の移動を可能にしおよび遮断するように開閉され得、システムの様々な構成要素間での流れが可能となる。一部の態様では、各容器は、ルアーポートまたはスパイクポートなどのポートを介して、配管ラインに機能的に接続される。例として、
図5に関して、容器が示されている各点で、一部の局面では、容器はポートを介して間接的に接続される。
【0172】
図5は、それぞれの位置またはラインにおける容器の接続を示しているが、代替的な態様では、一部の局面では、容器は、システムのそれぞれの位置またはラインにおいて接続されていない。提供されるシステムの一部の態様では、それぞれの位置またはラインにおいて、接続のためにポートを利用することができ、容器は、全ての位置もしくはライン、または全てに満たない位置もしくはラインに接続される。一部の態様では、システムの全てのコネクタ位置が容器に接続されているわけではなく、そのため、システムは、それぞれの位置またはラインにおいて空のコネクタを含有し得る。
【0173】
一部の態様では、
図5に示されているシステムなどのシステムは、無菌フィルターまたは微生物フィルターを含み得る。例示的なそのようなシステムが
図7に示されており、それはフィルター(15)を図示している。一部の態様では、フィルターは、細菌またはウイルスなどの微生物の通過を遮断する細孔サイズを有する濾過膜を含む。一部の態様では、細孔サイズは、0.1μm~0.45μm、例えば0.1μm~0.22μm、例えば約0.20または0.20μmである。一部の態様では、膜は、ニトロセルロース(硝酸セルロース)、酢酸セルロース、再生セルロース、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、またはポリエーテルスルホン(PES)から構成される。一部の態様では、フィルターは、フィルターの膜を閉鎖システムの外側の環境への曝露から閉鎖またはシールするキャップ(16)を含む。一部の態様では、キャップは閉鎖されているかまたは通気されていない。一部の態様では、キャップは外すことが可能である。一部の態様では、キャップは、ルアーロック継手によってフィルターに嵌合されている。下記でより詳細に記載されているように、一部の態様では、システムのチャンバーへのおよびチャンバーからの気体(例えば空気)の通過を実施するためにフィルターが用いられ得る。一部のそのような態様では、空気の通過は、無菌条件下または微生物不含条件下で維持される。
【0174】
一態様では、インプットバッグは、形質導入など、提供される方法によるプロセシングのための細胞を含む。一態様では、希釈液バッグ1は、細胞の形質導入に用いられるベクターを含有するウイルスベクター粒子を含む。したがって、一部の態様では、インプットバッグからの流体の取り入れを実施し、かつ希釈液バッグ1からの流体の取り入れを実施することによって、ウイルスベクター粒子と細胞とを含有するインプット組成物が生成される。一部の態様では、希釈液バッグ2は洗浄溶液を含有する。アウトプットバッグは、概して、1つまたは複数のプロセシング段階の後の細胞を取り入れるように設計されており、当該取り入れは、例えば、ウイルスベクター粒子とのインキュベーションの後にチャンバーのキャビティからアウトプットバッグへとアウトプット組成物を移すことによって行われる。したがって、一部の態様では、アウトプットバッグは、ウイルスベクター粒子を形質導入されたおよび/またはその中でウイルスベクター粒子による形質導入が開始されている、移された細胞を含有する。一部の態様では、プロセシングは、ウイルスベクターによる細胞の形質導入を含む。
【0175】
一部の態様では、配管ラインのマニホールドに接続された複数のポート(18)を介して1つまたは複数の容器をシステムに機能的に接続するために、マルチウェイマニホールド(17)を用いることができる。マルチウェイマニホールドは、チャンバーと、接続された1つまたは複数の容器との間の流れを可能にするために、チャンバーの出入口に供給する一連の配管ラインを含有し得る。一部のそのような態様では、マニホールドは、複数の容器(例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8個、またはそれを上回る数の容器)を、システム上の同じ位置またはラインにおいて接続する。一部の態様では、マルチウェイマニホールド(17)の全てのポートが容器(例えば、バッグ)に接続される。一部の態様では、マルチウェイマニホールド(17)の全てに満たないポートが容器(例えば、バッグ)に接続され、そのため、総数に満たないポート位置にて容器が接続され、例えば、8、7、6、5、4、3、または2個未満の容器(例えば、バッグ)が接続される。一部の態様では、マニホールドと関連付けられた配管ラインは、必要に応じて、ラインを通じた容器内への移動を制御するように開閉され得る、クランプまたは停止コックを含有し得る。マルチウェイマニホールド(17)は、システム上の利用可能な位置またはラインのいずれか、例えば、インプットライン、希釈液ライン、洗浄ライン、廃液ライン、および/またはアウトプットラインに指定された位置またはラインに接続され得る。
【0176】
一部の態様では、1つまたは複数の容器を連結するための例示的なマルチウェイマニホールド(17)が、1つまたは複数の容器(例えば、1つまたは複数のバッグ、例えば1つまたは複数のアウトプットバッグ)を接続するための
図11に示されている。示されているように、一部の態様では、マルチウェイマニホールド(17)は1つのアウトプット位置またはラインに接続され得、当該位置またはラインは、それぞれが容器(例えば、バッグ)への機能的な接続のためのコネクタ(例えば、ポート(18))で終わる一連のマニホールド配管ラインを含む。ポートのうちの1つまたは複数(例えば、ポートの全てまたは全てに満たないポート)が容器に接続され得る。
図11に例示されている一態様では、最大3個の容器が、ポートを介してマニホールドの各配管ラインに接続され得る。他の態様では、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個の容器(例えば、アウトプットバッグ)が、アウトプットラインにおいて接続され得る。一部の態様では、マニホールド配管ラインなどの配管ラインと関連付けられた1つまたは複数のクランプ(5)を開閉して、複数のアウトプットバッグのうちの1つまたは複数への液体の移動を可能にし得るまたは制御し得る。一部の態様では、単一のクランプが、全てのアウトプットバッグ内への液体の移動を同時に制御し得る。一部の態様では、複数のバッグのそれぞれへの液体の移動は、1個のそれぞれの容器のみと関連付けられた、配管ラインに機能的に接続されたクランプによって、別個に調節され、それによりそれぞれの容器内への液体の移動は、他の全ての容器内への液体の移動とは分離してなされ得る。一部の態様では、各容器(例えば、各バッグ、例えば各アウトプットバッグ)内への液体の移動は、逐次的であるようになされ得る。
【0177】
一部の態様では、システムは、他の器具に含まれかつ/または他の器具と関連付けられ、当該他の器具には、システム内で実施される様々なプロセシング段階の局面を操作、自動化、制御、および/またはモニターする器具が含まれる。一部の態様におけるこの器具は、キャビネット内に含有される。
【0178】
一部の態様では、当該器具には、制御回路を含有するハウジングを含むキャビネット、遠心機、カバー、モーター、ポンプ、センサー、ディスプレイ、およびユーザーインターフェースが含まれる。例示的な装置は、米国特許第6,123,655号、米国特許第6,733,433号、および第US 2008/0171951号に記載されている。
【0179】
一部の局面における制御回路は、他の器具およびシステムの様々な構成要素をモニターし、かつそれらへのおよびそれらからの情報および指示を通信する。一部の態様では、キャビネットは、ディスプレイおよび入力装置(例えば、キーボード、マウス、またはタッチスクリーン)を含むユーザーインターフェース装置を含有する。ユーザーインターフェースは、制御回路からの情報を呈示し、ユーザーが形質導入プロトコールを実施させるなど、プロセスまたは段階を停止および始動するのを可能にする。インターフェースは、また、ユーザーが、形質導入プロトコールなどのプロセシング段階の間に制御回路によって用いられる変量に対する設定を入力するのを促し得る。そのような変量には、様々な容器および/もしくはチャンバーのキャビティに添加されるおよび/もしくはそこから除去される様々な溶液の体積、遠心沈降、遠心、撹拌、混合、および/もしくは他のプロセシング段階の時間/持続時間、回転力、ピストン移動、ならびに/またはプログラム選択が含まれ得る。
【0180】
器具は概して遠心機をさらに含み、当該遠心機の中に遠心チャンバーが配置されてチャンバーの回転がもたらされる。一部の態様では、遠心チャンバーは遠心機器の回転駆動ユニットと連動し、それによりチャンバーは回転軸の周囲を回転することができる。一部の態様では、カバーは、遠心チャンバーの上端で閉じ、かつチャンバーを定位置に保つ。一部の態様では、カバーは、ヒンジで回転し得る2つの半円形ディスクを含む。例示的な遠心機およびカバーは、米国特許第6,123,655号または米国特許第6,733,433号に記載されている。当該遠心機は、遠心チャンバーを定位置にロックし、かつチャンバーの側面または端部との接触によって遠心チャンバーを回転させる。
【0181】
一部の態様では、遠心機におけるセンサーまたはセンサーのアレイは、遠心チャンバーの回転速度、可動部材の位置、または内部キャビティ内に含有される体積を測定し得る。遠心機の外側のセンサーは、遠心チャンバーへおよび遠心チャンバーから流れる液体および気体の色および流速を検出し得る。センサーは、空の配管または遠心チャンバーも検出し得る。センサーには、米国特許第6,123,655号、米国特許第6,733,433号、および第US 2008/0171951号に記載されているものなど、光学センサーが含まれる。一部の態様では、1つまたは複数のセンサーからの情報は、制御回路によって受信され得る。送信された情報に基づいて、制御回路は、一部の態様では、遠心チャンバーの回転速度、可動部材の位置、キャビティ内に含有される体積、1つまたは複数のバルブ、ポート、シール、またはクランプの向き、および遠心機、チャンバー、またはシステムの他のプロセス、のうちの1つまたは複数に変化をもたらし得る。
【0182】
一部の態様では、キャビネットは、モーターまたはモーターのアレイを含む。モーターは、モーターを操作または調整し得る制御回路と情報を通信することができる。
【0183】
一部の態様では、モーターまたはモーターのアレイは、遠心機内の遠心チャンバーを回転させ得る。制御回路は、遠心機内で遠心チャンバーを回転させるモーターを始動させるか、停止させるか、またはその速度を調整することができる。
【0184】
一部の態様では、モーターまたはモーターのアレイは、遠心チャンバー内の可動部材を移動させることができる。可動部材の移動は、内部キャビティの容積を変動させ、内部キャビティへのまたは内部キャビティからの液体または気体の取り入れまたは圧出を引き起こす。
【0185】
一部の態様では、モーターまたはモーターのアレイは、本明細書に記載されているバルブ、ポート、シール、およびクランプを操作し得る。制御回路は、モーターに、容器もしくは遠心チャンバーを開かせるかもしくは閉じさせる、または一連の配管を通じて容器から遠心チャンバーへもしくは遠心チャンバーから容器へと流体を方向付けさせることができる。
【0186】
一部の態様では、1つまたは複数のモーターは、電気的モーター、空気圧モーター、または油圧モーターである。一部の態様では、キャビネットは、一部の局面を操作するための電気的モーター、および他の局面を操作するための空気圧モーターを含む。一部の態様では、キャビネットは、遠心のための電気的モーター、および可動部材の移動を制御するための空気圧モーターを含む。
【0187】
III.例えば形質導入による、細胞へのウイルス核酸の導入
一部の態様では、方法のプロセシング段階は、細胞内で発現される組換え産物をコードするウイルスベクターなど、細胞へのウイルス粒子の導入のためのものを含む。ウイルスベクター粒子は、概して、そのような産物をコードする導入遺伝子などの組換え核酸を含有するゲノムを含む。一部の態様では、ウイルスベクター粒子はキメラ抗原受容体(CAR)などの組換え受容体をコードし、それによって細胞の形質導入は、組換え受容体(例えば、CAR)を発現する細胞を生成し得る。細胞へのウイルスベクター由来の核酸の導入は、多数の公知の方法のいずれかを用い得る。導入は、典型的には形質導入による。細胞にウイルスベクターを導入するための代替的な方法には、トランスポゾンおよび/またはエレクトロポレーションが含まれる。そのようなプロセシング段階は、提供される方法の態様に従って、遠心チャンバー内で実施され得る。一部の態様では、遠心チャンバーは閉鎖システムに組み込まれており、そのようなプロセシング段階は閉鎖システム内で実施される。
【0188】
導入は、概して形質導入によって行われる。ウイルス導入(例えば形質導入)のための方法は、概して、細胞が形質導入される、またはインプット組成物中の細胞の少なくとも一部において形質導入が開始される条件下で、形質導入対象の細胞とベクターを含有するウイルスベクター粒子とを含むインプット組成物を遠心チャンバー内でインキュベーションすることによる、形質導入の少なくとも開始を伴い、該方法は、形質導入された細胞を含むアウトプット組成物を産生する。
【0189】
一部の態様では、形質導入のための細胞および/または形質導入された細胞は、養子免疫療法において使用するための、T細胞などの免疫細胞を含有する。一部の態様では、細胞とウイルスベクター粒子とのインキュベーションの前に、生物学的サンプル中に存在する細胞の特定の部分集合を選択する段階などの単離する段階を含む方法によって、形質導入のための細胞を得る。形質導入のための細胞の単離および選択に関連する方法、ならびに結果として生じる細胞が、下に記載されている。一部の態様では、形質導入のためのプロセスの開始の前に、下記の培養および刺激などによって、T細胞を活性化する。一部の態様では、単離(例えば選択)および活性化に関連する段階の全てまたは一部のうちの1つまたは複数も、下記の提供される態様に従って、遠心チャンバーのキャビティ内で行われ得る。
【0190】
一部の態様では、形質導入方法の局面において用いられるウイルスベクター粒子は、細胞(例えば免疫細胞、例えばT細胞)の形質導入に適した任意のものである。一部の態様では、ウイルスベクター粒子は、レンチウイルスベクター粒子またはガンマレトロウイルスベクター粒子などのレトロウイルスベクター粒子である。一部のそのような態様では、ウイルスベクター粒子は、組換え核酸、すなわち組換えウイルスベクターを含むゲノムを含有する。例示的なそのようなウイルスベクター粒子が、下に記載されている。
【0191】
インプット組成物(形質導入段階の間、ウイルスベクター粒子と細胞とを含有する組成物)は、プロタミン(例えば、硫酸プロタミン)、臭化ヘキサジメトリン(POLYBRENE(登録商標)、Abbott Laboratories Corp)、およびCH-296(RETRONECTIN(登録商標)、Clontech)を含めたポリカチオンなど、形質導入効率を促進するものなど、1種または複数種の付加的な作用物質をさらに含み得る。一部の態様では、ポリカチオンは、5μg/mL~50μg/mLなど、1μg/mL~100μg/mLの最終濃度でインプット組成物中に存在し得る。当該組成物は、造血幹細胞培地、例えば血清不含培地など、プロセシングされる細胞タイプの培養のために設計された培地を含む細胞培養培地を含めた、培地も含み得る。
【0192】
提供される方法では、細胞の形質導入のためのプロセシング段階の全てまたは一部が、遠心チャンバー内で、例えば遠心下または回転下で行われ得る。一部のそのような態様では、細胞とウイルスベクター粒子とを含有するインプット組成物は、遠心チャンバーの内部キャビティに供給されまたは取り入れられる。一部の態様では、インプット組成物は、遠心チャンバーの回転を含む条件下でインキュベーションされる。一部の態様では、回転は、柔軟性のあるプラスチック製バッグまたはプラスチック製マルチウェルプレートを用いて達成され得るよりも大きな相対遠心力で実施され得る。
【0193】
より大きな形質導入効率は、一部の態様では、一部には、大規模に細胞をプロセシングするための他の方法と比較してより大きな相対遠心力(RCF)で形質導入を行い得る方法の能力により達成される。例えば、柔軟性のあるバッグを用いた、大規模に、例えば体積50または100mLを上回る細胞をプロセシングするための特定の利用可能な方法は、最大でも200、500、または1000gの相対遠心力での遠心を可能にし得るのみである。より大きな加速または相対力での、例えば、1000gもしくは約1000gまたは少なくとも1000gもしくは少なくとも約1000g、1500gもしくは約1500gまたは少なくとも1500gもしくは少なくとも約1500g、2000gもしくは約2000gまたは少なくとも2000gもしくは少なくとも約2000g、2100gもしくは約2100gまたは少なくとも2100gもしくは少なくとも約2100g、2200gもしくは約2200gまたは少なくとも2200gもしくは少なくとも約2200g、2500gもしくは約2500gまたは少なくとも2500gもしくは少なくとも約2500g、3000gもしくは約3000gまたは少なくとも3000gもしくは少なくとも約3000g、3200gもしくは約3200gまたは少なくとも3200gもしくは少なくとも約3200g、あるいは3600gもしくは約3600gまたは少なくとも3600gもしくは少なくとも約3600gでの遠心を可能にすることによって、提供される方法は、形質導入中の組成物中のウイルスおよび細胞の共遠心沈降を改善し得または可能にし得、ウイルスと細胞の相互作用の割合を改善し、それによって形質導入が改善される。
【0194】
当該方法は、概して、大規模に形質導入を実行し得る。したがって、形質導入中にインキュベーションされるインプット組成物および/またはアウトプット組成物は、少なくとも特定の体積および/または数の細胞を含有し得る。一部の態様では、インプット組成物の液体体積、またはインキュベーション中の少なくとも一時点の間の液体体積は、少なくとも約10mLもしくは約10mLを上回る、少なくとも約20mLもしくは約20mLを上回る、少なくとも約30mLもしくは約30mLを上回る、少なくとも約40mLもしくは約40mLを上回る、少なくとも約50mLもしくは約50mLを上回る、少なくとも約100mLもしくは約100mLを上回る、少なくとも約150mLもしくは約150mLを上回る、少なくとも約200mLもしくは約200mLを上回る、少なくとも約250mLもしくは約250mLを上回る、少なくとも約300mLもしくは約300mLを上回る、少なくとも約350mLもしくは約350mLを上回る、少なくとも約400mLもしくは約400mLを上回る、少なくとも約450mLもしくは約450mLを上回る、または少なくとも約500mLもしくは約500mLを上回る。一部の態様では、インプット組成物、形質導入された組成物、および/または方法によって形質導入された総細胞は、少なくとも1×105個もしくは少なくとも約1×105個、少なくとも1×106個もしくは少なくとも約1×106個、少なくとも1×107個もしくは少なくとも約1×107個、少なくとも1×108個もしくは少なくとも約1×108個、少なくとも1×109個もしくは少なくとも約1×109個、または少なくとも1×1010個もしくは少なくとも約1×1010個の細胞を含む。一部の態様では、インキュベーションの少なくとも一部に関して、その中で細胞が形質導入される容器、例えば遠心チャンバーまたはそのキャビティは、少なくとも1×105個もしくは少なくとも約1×105個、少なくとも1×106個もしくは少なくとも約1×106個、少なくとも1×107個もしくは少なくとも約1×107個、少なくとも1×108個もしくは少なくとも約1×108個、少なくとも1×109個もしくは少なくとも約1×109個、または少なくとも1×1010個もしくは少なくとも約1×1010個の細胞を含む。そのような数および体積は、細胞の分離および/または洗浄の段階など、システム内で、例えばチャンバーのキャビティ内で行われる他のプロセシング段階にも適用され得る。
【0195】
一部の態様では、形質導入のためのプロセス(例えば、インプット組成物の調製)を含めた、遠心チャンバーのキャビティ内での様々なプロセシング段階、または後続の節で記載されている他のプロセスを記載する際に、任意の体積への言及は目標体積である。一部の態様では、様々な段階(例えば、洗浄、希釈、または製剤化)において利用される正確な体積は、一部の局面では、配管ラインにおけるデッドボリューム、ラインのプライミング、センサーの感度、ユーザー制御、および体積を維持またはモニターすることに関連する他の因子が原因で、所望の目標体積から変動し得る。当該方法は、一部の局面では、システムと関連付けられた回路の一部として例えばセンサーを含むことによって、体積の精確な制御を可能にし得る。一部の態様では、体積は、所望の目標体積の多くても10%、例えば、多くても9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、または1%まで変動する。一部の態様では、体積は、目標体積の2mLもしくは3mL以内にあり、かつ/または目標体積の多くても2mLもしくは3mLまで変動する。
【0196】
一部の態様では、細胞とウイルスベクター粒子とを混ぜ合わせてインプット組成物を生成することによって、プロセシング段階を行う。当該方法の局面において、細胞とウイルスベクター粒子との組成物は、結果として生じる混ぜ合わされたインプット組成物が、遠心チャンバーのキャビティの内部表面積に対する総液体体積の比率が低い様式で調製される。一部の態様では、総液体体積は、遠心チャンバーの回転後にキャビティの内部表面に単層として存在する細胞の塊を覆うまたはちょうど超えるのに十分であり、一方で細胞を覆う液体の厚さは最小限に抑えられる。一部の態様では、液体の厚さを低下させることによって、ウイルスベクター粒子と細胞とを接触させるために必要な遠心沈降時間が短縮され得るが、これは、ウイルスベクター粒子の移動距離がそれほど大きくなく、かつ/またはウイルスベクター粒子が粘性のある媒体からの抵抗にそれほど供されないためである。
【0197】
一部の態様では、形質導入効率の改善などの利点は、特に大規模産生のための他の方法と比較して、少なくとも一部は、形質導入のプロセスの間(例えば回転中)の、細胞の体積、細胞数、または細胞ペレットサイズあたり相対的により低い体積の液体を用い得る能力によるものである。
【0198】
一部の態様では、回転中に容器(例えばキャビティ)内に存在するインプット組成物(細胞とウイルスベクター粒子とを含有する)の液体体積は、回転中のキャビティの内部表面積またはキャビティの最大内部表面積1平方インチあたり多くても約0.5、1、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、または7ミリリットル(mL)である。
【0199】
特定の態様では、当該方法のサイクルにおいて実施される全てのプロセスの液体体積の平均値など、その中で形質導入が開始される容器(例えばキャビティ)内に存在するインプット組成物の平均液体体積は、インキュベーション中のキャビティの内部表面積またはキャビティの最大内部表面積1平方インチあたり多くても約0.5、1、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、または7ミリリットル(mL)である。一部の態様では、当該方法のサイクルにおいて実施される全てのプロセスの液体体積の最大値など、その中で形質導入が開始される容器(例えばキャビティ)内に存在するインプット組成物(細胞とウイルスベクター粒子とを含有する)の最大液体体積は、遠心チャンバーのキャビティの内部表面積1平方インチあたり多くても約0.5、1、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、または7ミリリットル(mL)である。一部の態様では、回転中に容器(例えばキャビティ)内に存在する液体体積(例えば、インプット組成物の液体体積)は、回転中のキャビティの内部表面積またはキャビティの最大内部表面積に対する当該体積が、多くても50%、例えば、多くても40%、多くても30%、多くても20%、または多くても10%である。一部の態様では、容積の残りは、気体(例えば空気)であり得る。
【0200】
一部の態様では、インキュベーション中(例えば回転中)の遠心チャンバー内のインプット組成物(細胞とウイルスベクター粒子とを含有する)の総液体体積は、少なくとも5mLまたは少なくとも10mLであるが、多くても220mL、例えば多くても200mLである。一部の態様では、インキュベーション中(例えば回転中)のインプット組成物の液体体積は、多くても100mL、90mL、80mL、70mL、60mL、50mL、40mL、30mL、または20mLである。提供される方法の局面において、インプット組成物は、下記のものなど、細胞およびウイルスベクター粒子の所望の濃度、量、および/または比率を達成するような総体積で調製される。
【0201】
一部の態様では、当該方法は、例えばキャビティの容積および/または添加される細胞の数を変えることによって、ユーザーが、キャビティの表面に対する細胞の比率を制御することを可能にする。一部の態様では、これは、遠心バッグ内で行われるものなど、他の方法、特に遠心力の下での大規模な形質導入に利用可能なものと比較して、キャビティの表面での細胞の層(例えば、細胞ペレット)の減少を可能にする。一部の態様では、形質導入中の遠心チャンバーのキャビティ内の細胞の層の厚さを制御し得る能力は、他の点では同等の条件下での形質導入効率の増加、および/または、ウイルス形質導入効率の増加に伴うコピー数の増加の欠如につながり得る。
【0202】
一部の態様では、提供される方法における細胞は、遠心力の下での形質導入のためのインキュベーション中、単一もしくはほぼ単一の単層で、または単一の単層よりも多くても1.5倍もしくは約1.5倍または多くても2倍もしくは約2倍で、または単層よりも実質的に厚いことはなく、キャビティ内に存在する。遠心中のこの低減は、ウイルスと細胞との間の相互作用を容易にし得かつ改善し得、特に相対ウイルスまたは感染単位(IU)が高い場合(例えば、細胞の外層または上層が優先的に形質導入される場合)に生じ得るウイルスコピー数(VCN)の増加を回避し得る。
【0203】
一部の態様では、インプット組成物は、遠心チャンバー内のインプット組成物のインキュベーションの少なくとも一部の間(例えば回転中)に、キャビティの内部表面積1cm2あたり少なくとも100万個の細胞を含有する。一部の態様では、インプット組成物は、遠心チャンバー内のインプット組成物のインキュベーションの少なくとも一部の間(例えば回転中)に、キャビティの内部表面積1cm2あたり、少なくとも200万個、300万個、400万個、500万個、600万個、700万個、800万個、900万個、1000万個、または2000万個の細胞を含有する。一部の態様では、インキュベーションの少なくとも一部の間(例えば回転中)のキャビティの内部表面積は、少なくとも1×109μm2もしくは少なくとも約1×109μm2であるか、または少なくとも1×1010μm2もしくは少なくとも約1×1010μm2である。
【0204】
一部の態様では、遠心チャンバー内のインプット組成物のインキュベーションの少なくとも一部の間(例えば回転中)のインプット組成物中の細胞の総数は、少なくとも、10×106個、20×106個、30×106個、40×106個、50×106個、60×106個、70×106個、80×106個、100×106個、200×106個、300×106個、または400×106個である。
【0205】
一部の態様では、遠心システムの閉鎖されたキャビティにおけるプロセシング段階を用いて、形質導入の前に、活性化された細胞などの細胞をプロセシングすることもできる。一部の態様では、プロセシングは、所望の濃度または数への細胞の希釈または濃縮を含み得る。一部の態様では、プロセシング段階は、それによって所望のとおりに細胞の濃度を増加させる体積低下を含み得る。一部の態様では、プロセシングは、形質導入に許容されるまたは所望される媒体への媒体の交換を含む。
【0206】
一部の態様では、インプット組成物は、インプット組成物中の細胞の総数あたり(IU/細胞)または形質導入対象の細胞の総数あたり、特定の比率のウイルスベクター粒子のコピーまたはその感染単位(IU)を含む。例えば、一部の態様では、インプット組成物は、細胞1個あたり、1IUもしくは約1IUまたは少なくとも1IUもしくは少なくとも約1IU、2IUもしくは約2IUまたは少なくとも2IUもしくは少なくとも約2IU、3IUもしくは約3IUまたは少なくとも3IUもしくは少なくとも約3IU、4IUもしくは約4IUまたは少なくとも4IUもしくは少なくとも約4IU、5IUもしくは約5IUまたは少なくとも5IUもしくは少なくとも約5IU、10IUもしくは約10IUまたは少なくとも10IUもしくは少なくとも約10IU、15IUもしくは約15IUまたは少なくとも15IUもしくは少なくとも約15IU、20IUもしくは約20IUまたは少なくとも20IUもしくは少なくとも約20IU、30IUもしくは約30IUまたは少なくとも30IUもしくは少なくとも約30IU、40IUもしくは約40IUまたは少なくとも40IUもしくは少なくとも約40IU、50IUもしくは約50IUまたは少なくとも50IUもしくは少なくとも約50IU、あるいは60IUもしくは約60IUまたは少なくとも60IUもしくは少なくとも約60IUのウイルスベクター粒子を含む。
【0207】
特定の態様では、本方法における、より高いIUを用い得る能力は、他の方法と比較した利点を提供する。他の点は同一の条件下において、より高いIU/細胞の比率を用いると概してより高い形質導入効率につながり、または、そのことは、効率における対応する向上がプラトーに達し得る特定のより高いレベルのIU/細胞まで同様である。それにもかかわらず、特定の利用可能な方法に関しては、IU/細胞の増加、したがって形質導入効率の向上は、ベクターコピー数(VCN)の増加にもつながり、このことは安全性リスクを提示し得かつ規制基準を満たさない可能性がある。
【0208】
一部の態様では、提供される方法に関しては、アウトプット組成物中の形質導入された細胞(例えば、ウイルスベクターを含有する細胞、またはウイルスベクターによってコードされる分子を発現する細胞)における平均VCNは、インプット組成物におけるIU/細胞の増加と共に増加しない。一部の態様では、提供される方法において、形質導入された細胞における平均VCNは、インプット組成物におけるIU/細胞の比率の増加と共に減少する。
【0209】
一部の態様では、ウイルスベクター粒子の力価は、1×106IU/mLまたは約1×106IU/mL~1×108IU/mLまたは約1×108IU/mL、例えば、5×106IU/mLまたは約5×106IU/mL~5×107IU/mLまたは約5×107IU/mL、例えば、少なくとも6×106IU/mL、7×106IU/mL、8×106IU/mL、9×106IU/mL、1×107IU/mL、2×107IU/mL、3×107IU/mL、4×107IU/mL、または5×107IU/mLである。
【0210】
一部の態様では、インプット組成物は、遠心チャンバー内のインプット組成物のインキュベーションの少なくとも一部の間(例えば回転中)に、インキュベーションの少なくとも一部の間(例えば回転中)に存在するインプット組成物の総液体体積あたりの、インプット組成物中の細胞の総数または形質導入対象の細胞の総数あたりの、ウイルスベクター粒子のコピー数または感染単位(IU)の比率(すなわちIU/細胞/mL)について特定の値を有する濃度の、ウイルスベクター粒子を含有する。一部の態様では、インプット組成物は、インキュベーションの少なくとも一部の間(例えば回転中)に、インプット組成物の液体体積1mLあたりの細胞1個あたり、少なくとも0.01IU、0.05IU、0.1IU、0.5IU、または0.1IUのウイルスベクター粒子を含む。
【0211】
一部の態様では、インプット組成物(細胞およびウイルスベクター粒子)を創出する段階は、遠心チャンバー内で実施され得る。一部の態様では、インプット組成物を創出する段階は、遠心チャンバー外で実施される。したがって、「インプット組成物」という用語は、組成物全体が一度に各容器(例えば、チューブ、バッグ、もしくはキャビティ)に取り入れられることを暗示することを企図しておらず、または異なる容器もしくはラインからの組成物の一部の引き込みを除外することを企図していない。インプット組成物は、チャンバーのキャビティ内に2つの異なる組成物を引き込んで該2つを混合する(それによってインプット組成物が創出される)ことによって形成されるものを含み得る。
【0212】
インプット組成物は、同じ容器または複数の別の容器から、インキュベーション(例えば回転)が行われる容器に取り入れられ得るかまたはそうでなければ移され得る。例えば、インプット組成物は、細胞を含有する組成物およびウイルスベクター粒子を含有する別の組成物を引き込むことによって、チャンバー内に取り入れられ得、それらは逐次的にまたは同時になされ得る。あるいは、ウイルスベクター粒子と細胞を含有するインプット組成物が、形質導入が行われるキャビティまたは他の容器に取り入れられる。
【0213】
一部の態様では、形質導入が遠心チャンバーの内部キャビティ内で行われる場合、これは、キャビティの特定の部分のみに液体インプット組成物を含ませることによって達成される。これは、例えばキャビティの一部に空気もしくは気体を引き込むことによって、かつ/または内部空間などのキャビティ内の空間に1つもしくは複数の固形物体を含むことによって達成され得る。一部の態様では、これは、キャビティに気体が存在しない場合および/またはキャビティの空間に1つもしくは複数の固形物体が存在しない場合に比べて、インキュベーション中(例えば回転中)に遠心チャンバーのキャビティ内に存在するインプット組成物の、キャビティの内部表面積1平方インチあたりの総液体体積を最小限に抑えるかまたは低下させることができる。このように、細胞の体積に比べて体積が大きい液体によるウイルスの拡散によって形質導入の有効性が限定され得る他の方法と比べると、提供される方法は有利であり得る。したがって、一部の態様では、インプット組成物は、インキュベーションの少なくとも一部の間、内部キャビティの容積の全てまたは実質的に全てを占有する一方で、一部の態様では、インキュベーションの少なくとも一部の間、インプット組成物は、該インキュベーションの間の内部キャビティの容積の一部のみを占有する。
【0214】
一部のそのような態様では、インキュベーションのこの少なくとも一部の間のキャビティの容積は、例えば該インキュベーションの前または間にキャビティ内の1つまたは複数の開口部(例えば入口)によってキャビティ内に取り入れられた気体をさらに含み得る。当該方法の一部の態様では、空気は、滅菌された空気または無菌空気である。一部の態様では、空気は、微生物混入または他の潜在的病原体を含んでいないかまたは実質的に含んでいない。
【0215】
一部の態様では、気体(例えば空気)を供給する段階または取り入れる段階は、一部の局面において閉鎖システムの無菌性を損なうことなどなく、遠心チャンバーの内部キャビティ内への空気の通過を可能にする任意の様式で実施され得る。一部の態様では、無菌条件下で気体(例えば空気)が容器に添加され得、かつ当該容器がチャンバー内への移入のためにシステム上の位置に無菌的に接続され得る。一部の態様では、容器(例えばバッグ)への気体(例えば空気)の添加は、層流条件下で、例えば、生物学的安全キャビネットまたはフード内で、実施される。一部のそのような態様では、気体(例えば空気)は、細胞の組成物を含有する液体体積および/またはウイルスベクター粒子の組成物を含有する液体体積など、液体体積と一緒に容器に添加される。それゆえ、一部の態様では、チャンバーの内部キャビティ内に気体(例えば空気)を供給する段階または取り入れる段階は、インプット組成物を作り上げる細胞またはウイルスベクター粒子の一方または両方の供給または取り入れと一緒にまたは同時に行われる。
【0216】
一部の態様では、チャンバー内に気体(例えば空気)を供給する段階または取り入れる段階は、システムと関連付けられた任意のルアーロックに取り付けられ得かつ遠心チャンバーの内部キャビティに機能的に接続されている、シリンジを用いることによって達成される。一部の態様では、空気は、層流下などの無菌条件下でシリンジ内に移される。一部の態様では、シリンジは無菌シリンジであり、例えば、一部の局面では、周辺の非無菌環境に曝露されない可動プランジャーを含有するシリンジである。一部の態様では、シリンジは、その端部に、チャンバーの内部キャビティ内への気体(例えば空気)の無菌的移入をもたらすフィルターを含有する。
【0217】
一部の態様では、チャンバーの内部キャビティに気体(例えば空気)を供給する段階または取り入れる段階は、無菌配管ラインを介して、チャンバーの内部キャビティに機能的に接続されたフィルターを用いることにより、達成される。一部のそのような態様では、フィルターは、例示的なシステムに関して記載されている無菌フィルターまたは微生物フィルターであり、例えば一部の局面では、
図7に例示されているフィルターである。一部の態様では、ルアーロック接続などを介してフィルターに装置を接続し、空気を移す。一部のそのような態様では、当該装置は、シリンジ、ポンプ、または他の注入装置である。一部の態様では、気体は空気であり、フィルターを通じた空気の取り入れは、周辺環境からの直接的な取り入れである。一部の態様では、フィルターは、取り外すまたは外すことが可能であり、所望のとおりにフィルターへの空気の移入を制御する、非通気型キャップなどのキャップを含有する。
【0218】
したがって、一部の態様では、当該方法は、液体インプット組成物およびある体積の気体(例えば空気)をチャンバーの内部キャビティに供給する段階または取り入れる段階を含む。供給されるまたは取り入れられる気体(例えば空気)の体積は、インプット組成物を作り上げる、細胞を含有する組成物およびウイルスベクター粒子を含有する組成物の体積と関係がある。一部の態様では、気体の体積は、内部キャビティの総容積とインプット組成物の液体体積との間の差である。一部の態様では、気体および液体の総体積は多くても200mLであり、そのため、内部キャビティに供給されまたは取り入れられる気体の体積は、200mLとインプット組成物(細胞およびウイルスベクター粒子)の液体体積との間の差である。
【0219】
提供される方法の例示的な局面では、形質導入の方法は、閉鎖された遠心チャンバーシステムの、少なくとも1×109μm2もしくは少なくとも約1×109μm2または少なくとも1×1010μm2もしくは少なくとも約1×1010μm2の表面積を有する内部キャビティに、多くても100mLである体積中に少なくとも50×106個もしくは少なくとも約50×106個の細胞を含有する組成物を提供する段階を含む。一部の態様では、細胞組成物は、多くても50mL、40mL、30mL、20mL、10mL、または5mLである体積中に少なくとも100×106個もしくは少なくとも約100×106個の細胞または少なくとも200×106個もしくは少なくとも約200×106個の細胞を含有する。一部の態様では、内部キャビティに細胞を提供する前に、細胞の組成物を、多くても100mL、例えば、多くても50mL、40mL、30mL、20mL、10mL、または5mLの体積に希釈または濃縮する。細胞組成物に加えて、当該方法は、一部の局面では、細胞を含有する組成物からの液体体積を含めた総液体体積が、多くても200mLなど、遠心チャンバーの内部キャビティの最大体積未満であるように、ある体積中に少なくとも1IU/細胞である量のウイルスベクター粒子を含有する組成物を供給する段階も含み、それによってインプット組成物が生成される。一部の態様では、ウイルスベクター粒子を含有する組成物は、少なくとも1.6IU/細胞、1.8IU/細胞、2.0IU/細胞、2.4IU/細胞、2.8IU/細胞、3.2IU/細胞、または3.6IU/細胞である量で供給される。一部の態様では、インプット組成物の総液体体積は、100mL未満、90mL未満、80mL未満、60mL未満、40mL未満、20mL未満である。任意で、当該方法は、例えば遠心チャンバーの内部キャビティ内で占有される総体積が最大で200または約200mLであるように、最大で内部キャビティの総体積まで、気体(例えば空気)を供給する段階も含み得る。
【0220】
一部の態様では、細胞を含有する組成物、およびウイルスベクター粒子を含有する組成物、および任意で空気は、キャビティに組成物を供給する前に混ぜ合わされ得るまたは混合され得る。一部の態様では、細胞を含有する組成物、およびウイルスベクター粒子を含有する組成物、および任意で空気は、別個に供給されて、キャビティ内で混ぜ合わされおよび混合される。一部の態様では、細胞を含有する組成物、ウイルスベクター粒子を含有する組成物、および任意で空気は、任意の順序で内部キャビティに供給され得る。そのような一部の態様のいずれかにおいて、細胞とウイルスベクター粒子とを含有する組成物は、当該組成物が遠心チャンバーの内側もしくは外側で混ぜ合わされるもしくは混合されるかどうかにかかわらず、かつ/または細胞およびウイルスベクター粒子が一緒にもしくは別個に(例えば、同時にもしくは逐次的に)遠心チャンバーに供給されるかどうかにかかわらず、一度、混ぜ合わされたまたは一緒に混合されたインプット組成物である。
【0221】
一部の態様では、ある体積の気体(例えば空気)の取り入れは、形質導入方法におけるインキュベーション(例えば回転)の前に行われる。一部の態様では、ある体積の気体(例えば空気)の取り入れは、形質導入方法におけるインキュベーション(例えば回転)中に行われる。
【0222】
一部の態様では、インプット組成物を作り上げる細胞またはウイルスベクター粒子の液体体積、および任意で空気の体積は、あらかじめ定められた体積であり得る。当該体積は、システムと関連付けられた回路にプログラムされかつ/またはそれによって制御される体積であり得る。
【0223】
一部の態様では、インプット組成物、および任意で気体(例えば空気)の取り入れは、所望のまたはあらかじめ定められた体積がチャンバーの内部キャビティ内に取り入れられるまで、手動で、半自動で、および/または自動で制御される。一部の態様では、システムと関連付けられたセンサーは、遠心チャンバーへおよび遠心チャンバーから流れる液体および/または気体を、その色、流速、および/または密度などによって検出することができ、かつ、関連付けられた回路と通信して、そのような所望のまたはあらかじめ定められた体積の取り入れが達成されるまで、必要に応じて取り入れを停止または継続させることができる。一部の局面では、気体(例えば、空気)は検出せずにシステム内の液体のみを検出するようにプログラムされたかまたはそのように検出することができるセンサーを、取り入れを停止することなくシステム内への気体(例えば空気)の通過を可能にすることができるようにし得る。一部のそのような態様では、気体(例えば空気)の取り入れが望まれる間に、配管の不透明な部分がセンサー付近のラインに置かれ得る。一部の態様では、気体(例えば空気)の取り入れは、手動で制御され得る。
【0224】
提供される方法の局面において、遠心チャンバーの内部キャビティは高速回転に供される。一部の態様では、回転は、液体インプット組成物および任意で空気の取り入れの前に、同時に、後に、または間欠的に実施される。一部の態様では、回転は、液体インプット組成物および任意で空気の取り入れ後に実施される。一部の態様では、回転は、内部キャビティの側壁の内部表面および/または細胞の表面層における、800gもしくは約800gまたは少なくとも800gもしくは少なくとも約800g、1000gもしくは約1000gまたは少なくとも1000gもしくは少なくとも約1000g、1100gもしくは約1100gまたは少なくとも1100gもしくは少なくとも約1100g、1500gもしくは約1500gまたは少なくとも1500gもしくは少なくとも約1500g、1600gもしくは約1600gまたは少なくとも1600gもしくは少なくとも約1600g、1800gもしくは約1800gまたは少なくとも1800gもしくは少なくとも約1800g、2000gもしくは約2000gまたは少なくとも2000gもしくは少なくとも約2000g、2200gもしくは約2200gまたは少なくとも2200gもしくは少なくとも約2200g、2500gもしくは約2500gまたは少なくとも2500gもしくは少なくとも約2500g、3000gもしくは約3000gまたは少なくとも3000gもしくは少なくとも約3000g、3500gもしくは約3500gまたは少なくとも3500gもしくは少なくとも約3500g、あるいは4000gもしくは約4000gまたは少なくとも4000gもしくは少なくとも約4000gの相対遠心力での遠心チャンバーの遠心によるものである。一部の態様では、回転は、約1100gまたは1100gを上回る力、例えば、約1200gもしくは1200gを上回る、約1400gもしくは1400gを上回る、約1600gもしくは1600gを上回る、約1800gもしくは1800gを上回る、約2000gもしくは2000gを上回る、約2400gもしくは2400gを上回る、約2800gもしくは2800gを上回る、約3000gもしくは3000gを上回る、または約3200gもしくは3200gを上回る力での遠心によるものである。
【0225】
一部の態様では、形質導入の方法は、約5分間または5分間を上回る、例えば、約10分間もしくは10分間を上回る、約15分間もしくは15分間を上回る、約20分間もしくは20分間を上回る、約30分間もしくは30分間を上回る、約45分間もしくは45分間を上回る、約60分間もしくは60分間を上回る、約90分間もしくは90分間を上回る、または約120分間もしくは120分間を上回る間の、遠心チャンバー内でのインプット組成物および任意で空気の回転または遠心を含む。一部の態様では、インプット組成物および任意で空気は、5分間より長く、60分間、45分間、30分間、または15分間よりは長くない間、遠心チャンバー内で回転するかまたは遠心される。
【0226】
一部の態様では、形質導入の方法は、10もしくは約10分間~60もしくは約60分間、15もしくは約15分間~60もしくは約60分間、15もしくは約15分間~45もしくは約45分間、30もしくは約30分間~60もしくは約60分間、または45もしくは約45分間~60もしくは約60分間(それぞれ境界値を含む)の間、内部キャビティの側壁の内部表面および/または細胞の表面層における、少なくとも1000gもしくは1000gを上回るもしくは約1000g、少なくとも1100gもしくは1100gを上回るもしくは約1100g、少なくとも1200gもしくは1200gを上回るもしくは約1200g、少なくとも1400gもしくは1400gを上回るもしくは約1400g、少なくとも1500gもしくは1500gを上回るもしくは約1500g、少なくとも1600gもしくは1600gを上回るもしくは約1600g、少なくとも1800gもしくは1800gを上回るもしくは約1800g、少なくとも2000gもしくは2000gを上回るもしくは約2000g、少なくとも2200gもしくは2200gを上回るもしくは約2200g、少なくとも2400gもしくは2400gを上回るもしくは約2400g、少なくとも2800gもしくは2800gを上回るもしくは約2800g、少なくとも3200gもしくは3200gを上回るもしくは約3200g、または少なくとも3600gもしくは3600gを上回るもしくは約3600gの相対遠心力での、遠心チャンバー内でのインプット組成物および任意で空気の回転または遠心を含む。
【0227】
一部の態様では、当該方法は、記載されている上記の態様のいずれかにおける遠心チャンバー内での回転または遠心を含む条件下で細胞をウイルスベクター粒子と共にインキュベーションした結果として得られた組成物であるアウトプット組成物の、遠心チャンバーの内部キャビティからの圧出を実施する段階を含む。当該方法の局面において、アウトプット組成物は、ウイルスベクターを形質導入された細胞、またはウイルスベクターによる形質導入が開始された細胞を含む。一部の態様では、アウトプット組成物の圧出は、遠心チャンバーを有する閉鎖システムの一部として機能的に連結されているアウトプットバッグへの圧出である。一部の態様では、アウトプット組成物の圧出は、回転または遠心の後である。一部の態様では、アウトプット組成物の圧出は、半連続的または連続的プロセスなどにおいて、回転または遠心と同時または部分的に同時である。
【0228】
一部の態様では、チャンバーのキャビティ内の気体(例えば空気)は、チャンバーから放出される。一部の態様では、当該気体(例えば空気)は、遠心チャンバーを有する閉鎖システムの一部として機能的に連結されている容器に放出される。一部の態様では、当該容器は、何も含んでいない、すなわち空の容器である。一部の態様では、チャンバーのキャビティ内の気体などの空気は、無菌配管ラインを介してチャンバーの内部キャビティに機能的に接続されているフィルターを通じて放出される。一部の態様では、空気は、手動の、半自動の、または自動のプロセスを用いて放出される。一部の態様では、空気は、インキュベーションされた細胞(例えば、ウイルスベクターによる形質導入が開始された細胞またはウイルスベクターを形質導入された細胞)とウイルスベクター粒子とを含有するアウトプット組成物を圧出する段階の前に、同時に、間欠的に、または後に、チャンバーから放出される。
【0229】
一部の態様では、形質導入および/または他のインキュベーションは、連続的もしくは半連続的プロセスまたはその一部として実施される。一部の態様では、連続的プロセスは、インキュベーションの少なくとも一部の間(例えば遠心中)の、細胞およびウイルスベクター粒子の連続的取り入れ、例えばインプット組成物(単一の既存の組成物としてであるか、またはその部分を同じ容器(例えばキャビティ)内に連続的に引き込み、それによって当該部分を混合することによるかのいずれか)の連続的取り入れ、ならびに/あるいは容器からの液体の連続的圧出もまたは排出、および任意で気体(例えば、空気)の放出を伴う。一部の態様では、連続的取り入れおよび連続的圧出は、少なくとも一部は同時に行われる。一部の態様では、連続的取り入れは、インキュベーションの一部の間、例えば遠心の一部の間に行われ、連続的圧出は、インキュベーションの異なる一部の間に行われる。当該2つは、交互に起こり得る。したがって、インキュベーションを行いながらの連続的な取り入れおよび圧出は、プロセシングされる(例えば形質導入される)サンプルのより大きな全体体積を可能にする。
【0230】
一部の態様では、インキュベーションは連続的プロセスの一部であり、当該方法は、インキュベーションの少なくとも一部の間に、チャンバーの回転中にキャビティ内へのインプット組成物の連続的取り入れを実施する段階、ならびにチャンバーの回転中およびインキュベーションの一部の間に、少なくとも1つの開口部を通じてキャビティからの液体の連続的圧出、および任意で、キャビティからの気体(例えば、空気)の放出を実施する段階を含む。
【0231】
一部の態様では、半連続的インキュベーションは、キャビティ内への組成物の取り入れ、インキュベーション、キャビティからアウトプット容器などへの液体の圧出、ならびに任意で、キャビティからの気体(例えば、空気)の放出、ならびに次に、プロセシングのためのより多くの細胞および他の試薬、例えばウイルスベクター粒子を含有する後続(例えば、第二、第三など)の組成物の取り入れを実施する段階、ならびにプロセスを繰り返す段階の間を行ったり来たりすることによって行われる。例えば、一部の態様では、インキュベーションは半連続的プロセスの一部であり、当該方法は、インキュベーションの前に、少なくとも1つの開口部を通じてキャビティ内へのインプット組成物の取り入れを実施する段階、およびインキュベーションの後に、キャビティからの流体の圧出を実施する段階;内部キャビティ内への細胞とウイルスベクター粒子とを含む別のインプット組成物の取り入れを実施する段階;ならびに該別のインプット組成物中の細胞がベクターを形質導入される条件下にて、内部キャビティ内で該別のインプット組成物をインキュベーションする段階を含む。プロセスは、数回のさらなるラウンドの間、反復形式で継続され得る。この点において、半連続的または連続的方法は、さらにより多くの体積および/または数の細胞の産生を可能にし得る。
【0232】
一部の態様では、形質導入インキュベーションの一部は遠心チャンバー内で実施され、それは、回転または遠心を含む条件下で実施される。
【0233】
一部の態様では、当該方法は、細胞とウイルスベクター粒子とのインキュベーションのさらなる一部が、回転または遠心なしで行われるインキュベーションを含み、それは概して、チャンバーの回転または遠心を含むインキュベーションの少なくとも一部の後に行われる。一部のそのような態様では、さらなるインキュベーションは、1つまたは複数の細胞の宿主ゲノムへのウイルスベクターの組み込みをもたらす条件下で実施される。インキュベーションが、宿主ゲノムへのウイルスベクター粒子の組み込みをもたらしたかどうかを評価または判定すること、およびそれゆえ、さらなるインキュベーションのための条件を経験的に決定することは、当業者のレベルの範囲内にある。一部の態様では、宿主ゲノムへのウイルスベクターの組み込みは、インキュベーション後に、ウイルスベクター粒子のゲノムに含有される核酸によってコードされる、異種タンパク質などの組換えタンパク質の発現のレベルを測定することによって評価され得る。組換え分子の発現レベルを評価するためのいくつかの周知の方法が用いられ得、例えば、細胞表面タンパク質に関して、例えば、親和性に基づく方法(例えば、免疫親和性に基づく方法)による検出、例えばフローサイトメトリーによる検出が用いられ得る。一部の例では、発現は、形質導入マーカーおよび/またはレポーター構築物の検出によって測定される。一部の態様では、トランケートされた表面タンパク質をコードする核酸がベクター内に含まれ、かつ発現および/またはその増強のマーカーとして用いられる。
【0234】
一部の態様では、さらなるインキュベーションは、遠心チャンバー内で、しかしながら回転なしで行われる。一部の態様では、さらなるインキュベーションは、遠心チャンバーの外で行われる。一部の態様では、さらなるインキュベーションは、室温を上回る温度、例えば、25℃を上回るまたは約25℃を上回る温度、例えば、32℃を概ね上回るもしくは約32℃を概ね上回る、35℃を概ね上回るもしくは約35℃を概ね上回る、または37℃を概ね上回るもしくは約37℃を概ね上回る温度で実施される。一部の態様では、さらなるインキュベーションは、37℃±2℃または約37℃±2℃、例えば37℃または約37℃の温度で実施される。一部の態様では、さらなるインキュベーションの期間は、1もしくは約1時間~48もしくは約48時間、4もしくは約4時間~36もしくは約36時間、8もしくは約8時間~30もしくは約30時間、または12もしくは約12時間~24もしくは約24時間(境界値を含む)である。
【0235】
一部の態様では、さらなるインキュベーションは、閉鎖システム内で行われる。一部の態様では、チャンバーから容器(例えば、バッグ)などへのアウトプット組成物の圧出の後、アウトプット組成物を含有する容器を、さらなる一部の時間インキュベーションする。一部の態様では、容器(例えば、バッグ)を、1もしくは約1時間~48もしくは約48時間、4もしくは約4時間~36もしくは約36時間、8もしくは約8時間~30もしくは約30時間、または12もしくは約12時間~24もしくは約24時間(境界値を含む)、37℃±2℃または約37℃±2℃の温度でインキュベーションする。
【0236】
一部の態様では、当該方法は、インプット組成物および/もしくは(形質導入された)アウトプット組成物またはその部分集合における特定の数または割合(%)の細胞に形質導入をもたらす。例えば、一部の態様では、インプット組成物中および/または(例えば形質導入された)アウトプット組成物中の総細胞の(または、T細胞など、特定の標的細胞タイプの)少なくとも2.5%、5%、6%、8%、10%、20%、25%、30%、40%、50%、または75%は、ウイルスベクターを形質導入されかつ/またはそれによってコードされる組換え遺伝子産物を発現する。一部の態様では、形質導入の方法は、組成物中のT細胞などの総細胞のうちの少なくとも2.5%、5%、6%、8%、10%、20%、25%、30%、40%、50%、または75%がウイルスベクターを形質導入されておりかつ/またはそれによってコードされる組換え遺伝子産物を発現する、アウトプット組成物をもたらす。
【0237】
一部の態様では、当該方法は、特定の条件下で、そのような少なくとも特定の形質導入効率を達成し得る。例えば、一部の態様では、インプット組成物が、細胞1個あたり1感染単位(IU)または約1IU~10IUまたは約10IU、例えば、細胞1個あたり、1感染単位(IU)もしくは約1IU、または2IUもしくは約2IU、5IUもしくは約5IU、または10IUもしくは約10IUの比率でウイルスおよび細胞を含む場合、当該方法は、当該方法によって生成される形質導入された組成物中の細胞のうちの少なくとも10%、25%、30%、40%、50%、または75%が組換えウイルスベクターを含む、例えば組換えウイルスベクターを形質導入されている、形質導入された組成物を産生し得る。細胞の形質導入は、当該細胞における、ベクター内に含まれた組換え核酸(例えば、導入遺伝子)またはその産物の存在を検出することによって検出され得る。一部の態様では、産物は細胞の表面で検出され、細胞が上手く形質導入されていることを示す。一部の態様では、形質導入の検出は、形質導入マーカー(例えば、形質導入された細胞を作製する目的のために含まれた別の導入遺伝子もしくは産物)および/または他の選択マーカーの検出を伴う。
【0238】
一部の態様では、形質導入方法により生じるアウトプット組成物は、細胞あたり特定の平均コピー数(ベクターコピー数(VCN))の形質導入されたベクターを含む。VCNは、単一細胞におけるコピーの数という観点で表現され得る。あるいは、それは、アウトプットもしくは形質導入された組成物(組成物中に形質導入されていない細胞をいくらか含み、それは任意のコピー数のベクターを含まないであろう)など、細胞集団全体または組成物にわたる平均数として表現され得る。あるいは、VCNは、形質導入された細胞のみにおける平均コピー数という観点で表現され得る。一部の態様では、方法によって産生された組成物またはアウトプット組成物中の形質導入された細胞全てにおける平均VCNは、多くても、10もしくは約10、5もしくは約5、4もしくは約4、2.5もしくは約2.5、1.5もしくは約1.5、または1もしくは約1である。一部の態様では、組成物またはアウトプット組成物中の、組換えウイルスベクターを含有するかまたは組換え遺伝子産物を発現する形質導入された細胞における平均VCNは、多くても、4もしくは約4、3もしくは約3、2もしくは約3、2.5もしくは約2.5、1.5もしくは約1.5、または1もしくは約1である。
【0239】
上記の方法のいずれかによって産生される組成物も提供される。一部の態様では、組成物は、少なくとも1×107個の細胞または5×107個、例えば、少なくとも1×108個、2×108個、4×108個、6×108個、8×108個、または1×109個の細胞を含有し、その中で少なくとも複数の細胞が組換えウイルスベクターを形質導入されている。一部の態様では、細胞はT細胞である。
【0240】
一部の態様では、本明細書において提供される方法の実施によって、一部の局面では、養子免疫療法において使用するためのT細胞の治療上有効な投薬量を達成し得る数などの大きい数で、複数の形質導入された細胞を含有するアウトプット組成物を産生することが可能である。一部の態様では、これは、大規模に細胞を形質導入し得る能力だけが理由ではなく、一部の局面では、連続的または半連続的様式でプロセスを繰り返すことによっても達成され得る。
【0241】
対照的に、形質導入が、プレート内でなど、より小さい規模で実施される、当技術分野における既存の方法は、治療上有効な投薬量を得るために必要な細胞の数を達成するために、形質導入後に細胞の大規模な増殖を要する。1種または複数種の刺激剤を用いたT細胞などの細胞の増殖は、細胞を活性化し得、かつ/または疲弊したT細胞表現型を有するエフェクター細胞の生成をもたらすなどによって、細胞の表現型を変更し得る。例えば、T細胞の活性化または刺激は、遺伝子操作された細胞を対象に投与した場合に、インビボにおける持続性の低下をもたらし得かつ/またはそれにつながり得る、T細胞の分化または活性化状態の変化をもたらし得る。生じ得る分化状態の変化の中には、一部のケースでは、ナイーブ表現型の喪失、メモリーT細胞表現型の喪失、および/または疲弊したT細胞表現型を有するエフェクター細胞の生成が含まれる。T細胞の疲弊は、T細胞機能の進行性喪失および/または該細胞の枯渇につながり得る(Yi et al. (2010) Immunology, 129:474-481)。T細胞疲弊および/またはT細胞持続性の欠如は、養子細胞療法の有効性および治療成果への障害であり;臨床試験により、抗原受容体(例えば、CAR)発現細胞へのより多いかつ/またはより長い程度の曝露と治療成果との間の相関が明らかになっている。
【0242】
一部の態様では、本明細書において提供される方法において、形質導入後に、当技術分野における他の公知の方法で必要とされるのと同じ度合まで細胞を刺激および/または活性化する必要はない。一部の態様では、形質導入後に、組成物中の細胞は、刺激剤(例えば、IL-2などのサイトカイン)の存在下での増殖に供されず、かつ/または約30℃もしくは30℃を上回るまたは約37℃もしくは37℃を上回る温度での24時間を上回る間のインキュベーションには供されない。一部の態様では、組成物中のT細胞および/またはアウトプット組成物中の形質導入されたT細胞のうちの少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%は、CD69またはTGF-β-IIの高い表面発現を含む。一部の態様では、組成物中のT細胞または形質導入されたT細胞のうちの少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、もしくは90%は、CD62Lの表面発現を含まず、かつ/またはCD25、ICAM、GM-CSF、IL-8、および/もしくはIL-2の高発現を含む。
【0243】
一部の態様では、上記の方法によって、または製剤化された組成物を生成するためなどのさらなるプロセシング段階を含む方法によって産生されたアウトプット組成物の、細胞内で発現される組換え産物をコードするウイルスベクターを形質導入された細胞など、遺伝子操作された細胞は、インビボで対象に投与された場合に持続性の増加を呈する。一部の態様では、投与時の対象における、提供される細胞(例えば、受容体(例えばCAR)を発現する細胞)の持続性は、治療上有効な用量である細胞の数を達成するために、形質導入の前および/または後にT細胞を活性化および/または刺激して増殖させる、より小規模の形質導入を伴う方法によって遺伝子操作された細胞の投与を伴うものなど、別の形質導入方法によって達成される持続性に比べて大きい。例えば、一部の局面では、提供される細胞(例えば、提供される方法によって産生される細胞)の持続性は、その中の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%が、CD69またはTGF-βIIの発現がより低いレベルである、遺伝子操作された組換え受容体(例えば、CAR)を発現する細胞の集団の投与によって達成される持続性に比べて大きい。一部の態様では、提供される細胞(例えば、提供される方法によって産生される細胞)の持続性は、その中の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%が、CD62Lの表面発現を呈しかつ/またはCD25、ICAM、GM-CSF、IL-8、および/もしくはIL-2の低い表面発現を含む、遺伝子操作された組換え受容体(例えば、CAR)を発現する細胞の集団の投与によって達成される持続性に比べて大きい。
【0244】
一部の態様では、持続性は、少なくとも、1.5倍もしくは約1.5倍、2倍もしくは約2倍、3倍もしくは約3倍、4倍もしくは約4倍、5倍もしくは約5倍、6倍もしくは約6倍、7倍もしくは約7倍、8倍もしくは約8倍、9倍もしくは約9倍、10倍もしくは約10倍、20倍もしくは約20倍、30倍もしくは約30倍、50倍もしくは約50倍、60倍もしくは約60倍、70倍もしくは約70倍、80倍もしくは約80倍、90倍もしくは約90倍、100倍もしくは約100倍、またはそれを上回って向上する。
【0245】
一部の態様では、投与された細胞の持続性の程度または度合は、対象への投与後に検出または定量され得る。例えば、一部の局面では、定量的PCR(qPCR)を用いて、対象の血液または血清または器官または組織(例えば、疾患部位)において組換え受容体を発現している細胞(例えば、CAR発現細胞)の分量を評価する。一部の局面では、持続性は、DNA1μgあたりの、受容体(例えばCAR)をコードするDNAもしくはプラスミドのコピー数として定量されるか、あるいは、サンプル(例えば血液もしくは血清)1μlあたり、またはサンプル1μl中の末梢血単核細胞(PBMC)もしくは白血球もしくはT細胞の総数あたりの、受容体(例えばCAR)を発現している細胞の数として定量される。一部の態様では、概して受容体に特異的な抗体を用いて、受容体を発現している細胞を検出する、フローサイトメトリーアッセイも実施され得る。また、細胞ベースのアッセイを用いて機能的細胞の数または割合(%)を検出することができ、例えば、疾患もしくは病状の細胞に対する結合能、中和能、および/もしくは応答(例えば細胞傷害性応答)誘導能を有する細胞、または受容体に認識される抗原を発現できる細胞の、数または割合(%)を検出することができる。そのような態様のいずれかにおいて、対象における投与された細胞と内因性細胞とを区別するために、組換え受容体(例えば、CAR発現細胞)と相互作用する別のマーカーの発現の程度またはレベルを用いることができる。
【0246】
一部の態様では、T細胞の活性化および/または刺激を最小限に抑えることによって、提供される態様は、一部の局面では持続性の増加により、養子免疫療法の方法において使用するためのより強力である遺伝子操作されたT細胞をもたらし得る。一部の態様では、提供される細胞(例えば、提供される方法のいずれかによって産生される細胞)の効力の増加および/または持続性の増加は、より低い投薬量で細胞を投与する方法を可能にする。そのような方法は、養子免疫療法の方法により生じ得る毒性を最小限に抑え得る。
【0247】
他の細胞プロセシング事象
一部の態様では、提供される方法のプロセシング方法は、形質導入段階に加えておよび/またはそれに替えて、細胞の単離、分離、選択、培養(例えばそれらの増殖および/または活性化を誘導するための、例えば細胞の刺激)、洗浄、懸濁、希釈、濃縮、および/または製剤化などのための、他のプロセシング段階および方法を含む。一部の態様では、1つもしくは複数の他のプロセシング段階の少なくとも一部、および/または複数の段階の少なくとも一部は、形質導入の方法において用いられるのと同じまたは異なる遠心チャンバーなど、遠心チャンバーのキャビティ内で全体としてまたは一部として行われる。一部の態様では、そのような1つまたは複数の他のプロセシング段階の全てまたは一部は、無菌閉鎖システム内など、遠心チャンバーを含有する閉鎖システム内で行われる。
【0248】
一部の態様では、当該方法は、(a)チャンバーのキャビティ内で、細胞を含有する生物学的サンプル(例えば、全血サンプル、バフィーコートサンプル、末梢血単核細胞(PBMC)サンプル、分画されていないT細胞サンプル、リンパ球サンプル、白血球サンプル、アフェレーシス産物、または白血球アフェレーシス産物)を洗浄する段階;(b)例えば、細胞と、免疫親和性に基づく分離のための選択試薬または免疫親和性試薬とのインキュベーションによって、チャンバーのキャビティ内で、サンプルから所望の細胞の部分集合または集団(例えば、CD4+またはCD8+ T細胞)を単離する(例えば選択する)段階;(c)上記の方法などに従って、単離された細胞(例えば選択された細胞)とウイルスベクター粒子とをインキュベーションする段階;および(d)薬学的に許容されるバッファー、凍結保存剤、または他の適切な媒体などの中に、形質導入された細胞を製剤化する段階;のうちの1つまたは複数を含む。一部の態様では、当該方法は、(e)細胞を刺激条件に曝露することによってチャンバーのキャビティ内で細胞を刺激する段階であって、それによって細胞の増殖を誘導する、段階をさらに含み得る。一部の態様では、細胞を刺激する段階は、細胞とウイルスベクター粒子とのインキュベーションの前、間、および/または後に実施される。一部の態様では、上記の段階のいずれかの前または後に、例えば、細胞の希釈、濃縮、および/またはバッファー交換のための、1つまたは複数のさらなる洗浄段階または懸濁段階も行われ得る。
【0249】
したがって、一部の態様では、当該方法は、細胞を非無菌条件に曝露することなく、かつ無菌ルームまたはキャビネットを使用する必要なく、例えば養子細胞療法における、臨床用途のための細胞の調製における1つの、複数の、または全ての段階を行う。そのようなプロセスの一部の態様では、細胞は、全てが閉鎖システム内で、単離され、分離または選択され、刺激され、形質導入され、洗浄され、かつ製剤化される。一部の態様では、当該方法は自動化された方式で行われる。一部の態様では、段階のうちの1つまたは複数は、遠心チャンバーシステムから離れて行われる。
【0250】
サンプル
一部の態様では、プロセシング段階は、生物学的サンプル(例えば、特定の疾患もしくは病状を有する、または細胞療法を必要としている、または細胞療法が施されるであろう者などの対象から得られたまたはそれに由来するサンプル)からの細胞またはその組成物の単離を含む。一部の局面では、対象はヒトであり、例えば、特定の治療的介入(例えば、養子細胞療法であり、そのために細胞の単離、プロセシング、および/または遺伝子操作が行われる)を必要としている患者である対象である。したがって、一部の態様における細胞は、初代細胞、例えば初代ヒト細胞である。サンプルには、組織、流体、および他のサンプル(対象から直接得られたもの)、ならびに分離、遠心、遺伝子操作(例えば、ウイルスベクターによる形質導入)、洗浄、および/またはインキュベーションなど、1つまたは複数のプロセシング段階から生じるサンプルが含まれる。生物学的サンプルは、生物学的供給源から直接得られたサンプルまたはプロセシングされているサンプルであり得る。生物学的サンプルには、非限定的に、血液、血漿、血清、脳脊髄液、滑液、尿、および汗などの体液、組織、ならびに器官のサンプルが含まれる、それらに由来するプロセシングされたサンプルが含まれる。
【0251】
一部の局面では、サンプルは、血液もしくは血液に由来するサンプルであるか、またはアフェレーシス産物もしくは白血球アフェレーシス産物であるかもしくはそれに由来する。例示的なサンプルには、全血、末梢血単核細胞(PBMC)、白血球、骨髄、胸腺、組織生検、腫瘍、白血病、リンパ腫、リンパ節、腸管関連リンパ組織、粘膜関連リンパ組織、脾臓、他のリンパ組織、肝臓、肺、胃、腸、結腸、腎臓、膵臓、乳房、骨、前立腺、頸部、精巣、卵巣、扁桃腺、もしくは他の器官、および/またはそれらに由来する細胞が含まれる。細胞療法(例えば養子細胞療法)との関連において、サンプルには、自己および同種供給源由来のサンプルが含まれる。
【0252】
一部の態様では、細胞または集団の単離は、1つもしくは複数の調製段階および/または親和性に基づくものではない細胞分離段階を含む。一部の例では、例えば、不要な構成要素を除去する、所望の構成要素を濃縮する、特定の試薬に対して感度を示す細胞を溶解するまたは除去するための1種または複数種の試薬の存在下で、細胞を洗浄し、遠心し、かつ/またはインキュベーションする。一部の例では、密度、接着特性、サイズ、特定の構成要素に対する感度および/または抵抗性など、1つまたは複数の特性に基づいて、細胞を分離する。一部の例では、対象の循環血由来の細胞は、例えばアフェレーシスまたは白血球アフェレーシスによって得られる。サンプルは、T細胞、単球、顆粒球、B細胞を含めたリンパ球、他の有核白血球、赤血球、および/または血小板を含有し得る。
【0253】
一部の態様では、提供される方法は、全体としてまたは一部として、遠心チャンバー内などの閉鎖システム内でサンプルの1つまたは複数をプロセシングする段階を含む。一部の態様では、プロセシング段階は、例えば血漿画分を除去するために、対象由来のサンプル、例えば血液細胞含有サンプルを洗浄する段階、および/または後続のプロセシング段階のために適当なバッファーもしくは媒体中に細胞を置き換える段階、および/または赤血球の溶解およびパーコールもしくはフィコール勾配による遠心による、末梢血からの白血球の調製などにおいて、密度に基づく細胞分離方法を実施する段階を伴い得る。例示的なそのようなプロセシング段階は、Sepax(登録商標)またはSepax 2(登録商標)細胞プロセシングシステムと共に使用するためのものを含めた、Biosafe SAによって生産されかつ販売される遠心チャンバーなど、細胞プロセシングシステムと関連付けられた1つまたは複数のシステムと連動した遠心チャンバーを用いて実施され得る。
【0254】
親和性に基づく選択
プロセシング段階(例えば、遠心チャンバー内で行われる)は、密度に基づくまたは他の物理的特性に基づく分離方法および親和性に基づく選択を含めた様々な選択段階のうちの1つなどを用いた、混合された集団および/または組成物からの細胞の単離を含み得る。一部の態様では、当該方法は、選択の全てまたは一部が、例えば遠心回転下にて、遠心チャンバーの内部キャビティ内で行われる選択を含む。一部の態様では、細胞と、免疫親和性に基づく選択試薬などの選択試薬とのインキュベーションは、遠心チャンバー内で実施される。そのような方法は、他の利用可能な選択方法と比較して、特定の利点を付与し得る。
【0255】
例えば、免疫親和性に基づく選択は、分離される細胞と、細胞上のマーカーに特異的に結合する分子(例えば抗体)または固体表面上(例えば粒子上)の他の結合パートナーとの間の好ましいエネルギー相互作用に依存し得る。粒子(例えば、ビーズ)を用いた親和性に基づく分離のための特定の利用可能な方法では、粒子および細胞を、エネルギー的に好ましい相互作用を促進するのに役立つ一定の細胞密度-対-粒子(例えば、ビーズ)比で、振とうまたは混合しながら、チューブまたはバッグなどの容器内でインキュベーションする。そのような手法は、例えばそれらが、所望の細胞数を維持しながら、最適なまたは所望の細胞-対-粒子比を維持するために大きな体積の使用を要し得るという点において、大規模な産生との使用には理想的でない可能性がある。したがって、そのような手法は、バッチの様態または形式でのプロセシングを要し得、それは、時間、段階の数、および取り扱いの増加を要し得、コストおよびユーザーエラーのリスクが増加する。
【0256】
一部の態様では、遠心チャンバーのキャビティ内でそのような選択段階またはその一部(例えば、抗体でコーティングされた粒子(例えば磁気ビーズ)とのインキュベーション)を実行することによって、ユーザーは、様々な溶液の体積、プロセシング中の溶液の添加、およびそのタイミングなど、特定のパラメーターを制御し得、それは他の利用可能な方法と比較した利点を提供し得る。例えば、インキュベーション中のキャビティ内の液体体積を減少させ得る能力は、キャビティ内の細胞の総数に影響を及ぼすことなく、選択において用いられる粒子(例えば、ビーズ試薬)の濃度、ゆえに溶液の化学的潜在能を増加させ得る。これが、ひいては、プロセシングされる細胞と、選択に用いられる粒子との間の対相互作用を増強し得る。一部の態様では、例えば、チャンバーが本明細書に記載されているシステム、回路、および制御と関連付けられた場合、チャンバー内でインキュベーション段階を行うことは、ユーザーが、インキュベーション中の所望の時に溶液の撹拌を実施するのを可能にし、それは相互作用をも改善し得る。
【0257】
一部の態様では、選択段階の少なくとも一部は遠心チャンバー内で実施され、それは、細胞と選択試薬とのインキュベーションを含む。そのようなプロセスの一部の局面では、ある体積の細胞は、メーカーの指示に従って同じ数の細胞および/または体積の細胞の選択のためにチューブまたは容器内で同様の選択を実施する場合に通常採用されるよりも、はるかに少ない量の所望の親和性に基づく選択試薬と混合される。一部の態様では、メーカーの指示に従った、同じ数の細胞および/または同じ体積の細胞に対する、チューブまたは容器に基づくインキュベーションにおいて、細胞の選択に採用される同じ選択試薬の量の多くても5%、多くても10%、多くても15%、多くても20%、多くても25%、多くても50%、多くても60%、多くても70%、または多くても80%である、1種または複数種の選択試薬の量が採用される。
【0258】
例えばチャンバーキャビティ内で実施され得る選択方法の一部としての、1種または複数種の選択試薬とのインキュベーションは、細胞内または細胞上での1つまたは複数の特異的分子(例えば、表面マーカー(例えば、表面タンパク質)、細胞内マーカー、または核酸)の発現または存在に基づく、1種または複数種の異なる細胞タイプの選択のための1種または複数種の選択試薬を用いる段階を含む。一部の態様では、そのようなマーカーに基づく分離のための1種または複数種の選択試薬を用いた任意の公知の方法が用いられ得る。一部の態様では、1種または複数種の選択試薬は、親和性または免疫親和性に基づく分離である分離をもたらす。例えば、一部の局面における選択は、例えばそのようなマーカーに特異的に結合する抗体または結合パートナーとのインキュベーションによる、1種または複数種のマーカー、典型的には細胞表面マーカーの細胞の発現または発現レベルに基づく、細胞および細胞集団の分離のための1種または複数種の選択試薬とのインキュベーションを含み、一般的にはその後に、洗浄段階、および抗体または結合パートナーに結合していないそうした細胞からの、抗体または結合パートナーに結合している細胞の分離が続く。
【0259】
一部の態様では、細胞の選択、例えば免疫親和性に基づく選択に関して、抗体など、濃縮および/または枯渇させることが望まれる細胞上にはあるが組成物中の他の細胞上にはない表面マーカーに特異的に結合し、任意で、ポリマーまたは表面などの足場(例えば、ビーズ、例えば、CD4およびCD8に特異的なモノクローナル抗体に連結された磁気ビーズなどの磁気ビーズ)に連結されている分子などの選択試薬と共に選択バッファーも含有する組成で、細胞を遠心チャンバーのキャビティ内でインキュベーションする。一部の態様では、記載されているとおり、振とうまたは回転しながらチューブ内で選択が実施される場合の、同じ数の細胞または同じ体積の細胞の選択について同じまたは同様の効率を達成するために典型的に用いられるまたは必要であると考えられる選択試薬の量と比較して、実質的にそれ未満である(例えば、多くても5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、または80%の量である)量で、選択試薬をチャンバーのキャビティ内の細胞に添加する。一部の態様では、細胞および選択試薬への選択バッファーの添加によりインキュベーションを実施して、10mL~200mLの試薬、例えば、少なくとも10mLもしくは少なくとも約10mLまたは約10もしくは10mL、少なくとも20mLもしくは少なくとも約20mLまたは約20もしくは20mL、少なくとも30mLもしくは少なくとも約30mLまたは約30もしくは30mL、少なくとも40mLもしくは少なくとも約40mLまたは約40もしくは40mL、少なくとも50mLもしくは少なくとも約50mLまたは約50もしくは50mL、少なくとも60mLもしくは少なくとも約60mLまたは約60もしくは60mL、少なくとも70mLもしくは少なくとも約70mLまたは約70もしくは70mL、少なくとも80mLもしくは少なくとも約80mLまたは約80もしくは80mL、少なくとも90mLもしくは少なくとも約90mLまたは約90もしくは90mL、少なくとも100mLもしくは少なくとも約100mLまたは約100もしくは100mL、少なくとも150mLもしくは少なくとも約150mLまたは約150もしくは150mL、または少なくとも200mLもしくは少なくとも約200mLまたは約200もしくは200mLの試薬のインキュベーションにより標的体積を達成する。一部の態様では、選択バッファーおよび選択試薬を、細胞への添加前にあらかじめ混合する。一部の態様では、選択バッファーおよび選択試薬を、別個に細胞に添加する。一部の態様では、選択インキュベーションを、エネルギー的に好ましい相互作用を促進するのに役立ち得る周期的な穏やかな混合条件を用いて行い、それによってより少ない全体的な選択試薬の使用が可能となり、一方で高い選択効率が達成される。
【0260】
一部の態様では、選択試薬とのインキュベーションの総持続時間は、5分間または約5分間~6時間または約6時間、例えば、30分間~3時間、例えば、少なくとも、30分間または約30分間、60分間または約60分間、120分間または約120分間、あるいは180分間または約180分間である。
【0261】
一部の態様では、インキュベーションは、概して、混合条件下、例えば、概ね比較的低い力または速度、例えば、細胞をペレットにするために用いられるものよりも低い速度、例えば、600または約600rpm~1700または約1700rpm(例えば、600rpmもしくは約600rpmもしくは少なくとも600rpm、1000rpmもしくは約1000rpmもしくは少なくとも1000rpm、または1500rpmもしくは約1500rpmもしくは少なくとも1500rpm、または1700rpmもしくは約1700rpmもしくは少なくとも1700rpm)、例えば、チャンバーまたは他の容器のサンプルまたは壁における、80gまたは約80g~100gまたは約100g(例えば、80gもしくは約80gもしくは少なくとも80g、85gもしくは約85gもしくは少なくとも85g、90gもしくは約90gもしくは少なくとも90g、95gもしくは約95gもしくは少なくとも95g、または100gもしくは約100gもしくは少なくとも100g)のRCFでのスピンの存在下で行われる。一部の態様では、そのような低い速度でのスピンと、それに続く静止時期との期間(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10秒間のスピンおよび/または静止、例えば、約1または2秒間のスピンと、それに続く約5、6、7、または8秒間の静止)を順々に繰り返してスピンが行われる。
【0262】
一部の態様では、そのようなプロセスは、チャンバーが組み込まれている完全に閉鎖されたシステム内で行われる。一部の態様では、自動化されたプログラムを用いて単一の閉鎖システム内で洗浄および結合段階を完了させるように、このプロセスは(一部の局面では、アフェレーシスサンプルなど、細胞を含有するサンプルを洗浄する先の洗浄段階など、1つまたは複数の付加的な段階も)自動化された方式で行われ、その結果、細胞、試薬、および他の構成要素は、適当な時にチャンバー内に取り込まれかつそこから押し出され、かつ遠心が実施される。
【0263】
一部の態様では、細胞ならびに1種および/または複数種の選択試薬のインキュベーションおよび/または混合の後、インキュベーションされた細胞を、特定の1種または複数種の試薬の存在または非存在に基づいて細胞を選択する分離に供する。一部の態様では、さらなる選択は、遠心チャンバーの外で実施される。一部の態様では、分離は、その中に遠心チャンバーが存在し、かつその中で細胞と選択試薬とのインキュベーションが実施されたのと同じ閉鎖システム内で実施される。一部の態様では、選択試薬とのインキュベーションの後、選択試薬が結合している細胞を含めたインキュベーションされた細胞は、免疫親和性に基づく細胞の分離のためのシステム内に、遠心チャンバーから移されるなど、遠心チャンバーから圧出される。一部の態様では、免疫親和性に基づく分離のためのシステムは、磁気分離カラムであるまたはそれを含有する。一部の態様では、分離の前に、洗浄など、1つまたは複数の他のプロセシング段階がチャンバー内で実施され得る。
【0264】
そのような分離段階は、試薬(例えば、抗体もしくは結合パートナー)に結合している細胞がさらなる使用のために保持される陽性選択、および/または試薬(例えば、抗体もしくは結合パートナー)に結合していない細胞が保持される陰性選択に基づき得る。一部の例では、両画分がさらなる使用のために保持される。一部の局面では、不均一集団において、ある細胞タイプを特異的に同定する抗体が利用可能でない場合、陰性選択が特に有用であり得、その場合、所望の集団以外の細胞によって発現されるマーカーに基づいて最良に分離が行われる。
【0265】
分離は、特定のマーカーを発現している特定の細胞集団または細胞の100%の濃縮または除去をもたらす必要はない。例えば、マーカーを発現しているものなど、特定のタイプの細胞に対する陽性選択または濃縮は、そのような細胞の数または割合(%)を増加させることを指すが、マーカーを発現していない細胞の完全な非存在をもたらす必要はない。同じように、マーカーを発現しているものなど、特定のタイプの細胞の陰性選択、除去、または枯渇は、そのような細胞の数または割合(%)を減少させることを指すが、全てのそのような細胞の完全な除去をもたらす必要はない。
【0266】
一部の例では、1つの段階からの陽性または陰性選択された画分を、後続の陽性または陰性選択など、別の分離段階に供する場合、多数回ラウンドの分離段階が行われる。一部の例では、単一の分離段階は、細胞と、それぞれが陰性選択のために標的とされるマーカーに特異的である複数の抗体または結合パートナーとをインキュベーションするなどによって、多数のマーカーを同時に発現している細胞を枯渇させ得る。同じように、細胞と、様々な細胞タイプ上に発現される複数の抗体または結合パートナーとをインキュベーションすることによって、多数の細胞タイプが同時に陽性選択され得る。そのような例のいずれかにおいて、さらなる選択または選択段階の少なくとも一部は、遠心チャンバー内で実施され、それは、上記の、細胞と選択試薬とのインキュベーションを含む。
【0267】
例えば、一部の局面では、T細胞の特定の部分集団、例えば、1つまたは複数の表面マーカーに陽性であるかまたはそれらを高レベルに発現している細胞(例えば、CD28+、CD62L+、CCR7+、CD27+、CD127+、CD4+、CD8+、CD45RA+、および/またはCD45RO+ T細胞)は、陽性または陰性選択技法によって単離される。一部の態様では、そのような細胞は、そのようなマーカーに特異的に結合する1つまたは複数の抗体または結合パートナーとのインキュベーションによって選択される。一部の態様では、抗体または結合パートナーを、選択を実施するための固体支持体またはマトリックス(例えば、磁気ビーズまたは常磁性ビーズ)に(例えば、直接的または間接的に)コンジュゲートさせ得る。例えば、CD3+、CD28+ T細胞は、CD3/CD28をコンジュゲートした磁気ビーズ(例えば、DYNABEADS(登録商標)M-450 CD3/CD28 T Cell Expander、および/またはExpACT(登録商標)ビーズ)を用いて陽性選択され得る。
【0268】
一部の態様では、プロセシング段階は、親和性に基づく選択を実施し得るシステムまたは機器などを用いた、インキュベーションされた細胞の陰性および/または陽性選択をさらに含む。一部の態様では、単離は、陽性選択による特定の細胞集団の濃縮、または陰性選択による特定の細胞集団の枯渇によって行われる。一部の態様では、陽性または陰性選択は、細胞と、それぞれ陽性または陰性選択された細胞上に発現される(マーカー+)または相対的により高いレベルで発現される(マーカー高)1つまたは複数の表面マーカーに特異的に結合する1つまたは複数の抗体または他の結合剤とをインキュベーションすることによって実現される。
【0269】
一部の態様では、T細胞は、B細胞、単球、または他の白血球など、非T細胞上に発現されるマーカー、例えばCD14の陰性選択によって、PBMCサンプルから分離される。一部の局面では、CD4+またはCD8+選択段階を用いて、CD4+ヘルパーT細胞およびCD8+細胞傷害性T細胞を分離する。そのようなCD4+およびCD8+集団は、1種または複数種のナイーブ、メモリー、および/またはエフェクターT細胞部分集団上に発現されるまたは相対的により高い程度に発現されるマーカーに対する陽性または陰性選択によって、部分集団にさらに選別され得る。
【0270】
一部の態様では、CD8+細胞は、それぞれの部分集団と関連する表面抗原に基づく陽性または陰性選択などによって、ナイーブ、セントラルメモリー、エフェクターメモリー、および/またはセントラルメモリー幹細胞についてさらに濃縮または枯渇される。一部の態様では、セントラルメモリーT(TCM)細胞の濃縮を行って有効性を向上させる、例えば、長期の生存、増殖、および/または投与後の生着を改善させ、それは一部の局面では、そのような部分集団で特に強い。Terakura et al. (2012) Blood.1:72-82;Wang et al. (2012) J Immunother. 35(9):689-701を参照されたい。一部の態様では、TCM濃縮されたCD8+ T細胞およびCD4+ T細胞を組み合わせることにより、有効性がさらに増強される。
【0271】
複数の態様では、メモリーT細胞は、CD8+末梢血リンパ球のCD62L+およびCD62L-部分集合の両方に存在する。PBMCは、抗CD8および抗CD62L抗体などを用いて、CD62L-CD8+および/またはCD62L+CD8+画分について濃縮または枯渇され得る。
【0272】
一部の態様では、セントラルメモリーT(TCM)細胞の濃縮は、CD45RO、CD62L、CCR7、CD28、CD3、および/またはCD127の陽性のまたは高い表面発現に基づき;一部の局面では、CD45RAおよび/またはグランザイムBを発現しているまたは高度に発現している細胞に対する陰性選択に基づく。一部の局面では、TCM細胞について濃縮されたCD8+集団の単離は、CD4、CD14、CD45RAを発現している細胞の枯渇、およびCD62Lを発現している細胞の陽性選択または濃縮によって行われる。一局面において、セントラルメモリーT(TCM)細胞の濃縮の実施は、CD4発現に基づいて選択された細胞の陰性画分を用いて開始され、当該画分が、CD14およびCD45RAの発現に基づく陰性選択、ならびにCD62Lに基づく陽性選択に供される。そのような選択は、一部の局面では同時に行われ、他の局面では逐次的に、いずれかの順序で行われる。一部の局面では、CD8+細胞集団または部分集団を調製する際に用いられるのと同じCD4発現に基づく選択段階を用いて、CD4+細胞集団または部分集団も生成し、そのため、CD4に基づく分離による陽性および陰性画分の両方が、方法の後続の段階において保持されかつ用いられ、任意でその後に、1つまたは複数のさらなる陽性または陰性選択段階が続く。
【0273】
特定の例において、PBMCのサンプルまたは他の白血球サンプルを、CD4+細胞の選択に供し、そこでは陰性および陽性画分の両方が保持される。次いで陰性画分を、CD14およびCD45RAまたはCD19の発現に基づく陰性選択、ならびにCD62LまたはCCR7など、セントラルメモリーT細胞に特徴的なマーカーに基づく陽性選択に供し、そこでは陽性および陰性選択はいずれかの順序で行われる。
【0274】
CD4+ Tヘルパー細胞は、細胞表面抗原を有する細胞集団を同定することによって、ナイーブ、セントラルメモリー、およびエフェクター細胞に選別され得る。CD4+リンパ球は、標準的方法によって得られ得る。一部の態様では、ナイーブCD4+ Tリンパ球は、CD45RO-、CD45RA+、CD62L+、またはCD4+ T細胞である。一部の態様では、セントラルメモリーCD4+細胞は、CD62L+およびCD45RO+である。一部の態様では、エフェクターCD4+細胞は、CD62L-およびCD45RO-である。
【0275】
一例において、陰性選択によってCD4+細胞を濃縮するために、モノクローナル抗体カクテルは、典型的にはCD14、CD20、CD11b、CD16、HLA-DR、およびCD8に対する抗体を含む。一部の態様では、抗体または結合パートナーを、磁気ビーズまたは常磁性ビーズなどの固体支持体またはマトリックスに結合させて、陽性および/または陰性選択のための細胞の調製を可能にする。例えば、一部の態様では、細胞および細胞集団を、免疫磁性(または、親和性磁性)分離技法を用いて分離または単離する(S. A. Brooks and U. Schumacher(著作権)Humana Press Inc., Totowa, NJによって編集された、Methods in Molecular Medicine, vol. 58: Metastasis Research Protocols, Vol. 2: Cell Behavior In Vitro and In Vivo, p 17-25に概説されている)。
【0276】
一部の局面では、インキュベーションされた細胞または分離対象となる細胞の組成物を、常磁性ビーズ(例えば、DynalbeadsまたはMACS(登録商標)ビーズなど)の磁気応答性の粒子または微粒子など、小さな磁化可能なまたは磁気応答性の材料を含有する選択試薬と共にインキュベーションする。磁気応答性材料(例えば粒子)を、概して、分離することが望まれる(例えば陰性選択または陽性選択されることが望まれる)1個の細胞、複数個の細胞、または細胞の集団上に存在する分子(例えば表面マーカー)に特異的に結合する結合パートナー(例えば抗体)に直接的または間接的に付着させる。
【0277】
一部の態様では、磁気粒子またはビーズは、抗体または他の結合パートナーなどの特異的結合メンバーに結合している磁気応答性材料を含む。磁気分離法において使用するための多くの周知の磁気応答性材料、例えば参照により本明細書によって組み入れられるMoldayの米国特許第4,452,773号および欧州特許明細書第EP 452342 B号に記載されているものが公知である。Owenの米国特許第4,795,698号およびLibertiらの米国特許第5,200,084号に記載されているものなど、コロイドサイズの粒子も用いられ得る。
【0278】
インキュベーションは、概して、抗体もしくは結合パートナー、またはそのような抗体もしくは結合パートナーに特異的に結合する、磁気粒子もしくはビーズに付着している二次抗体もしくは他の試薬などの分子が、サンプル中の細胞上に存在する場合の細胞表面分子に特異的に結合する条件下で行われる。
【0279】
特定の態様では、磁気応答性粒子を、一次抗体もしくは他の結合パートナー、二次抗体、レクチン、酵素、またはストレプトアビジンでコーティングする。特定の態様では、磁気粒子を、1種または複数種のマーカーに特異的な一次抗体のコーティングを介して、細胞に付着させる。特定の態様では、ビーズではなく細胞が一次抗体または結合パートナーで標識され、次いで細胞タイプ特異的な二次抗体または他の結合パートナー(例えば、ストレプトアビジン)でコーティングされた磁気粒子が添加される。特定の態様では、ストレプトアビジンでコーティングされた磁気粒子が、ビオチン化された一次または二次抗体と合わせて用いられる。
【0280】
一部の局面では、分離は、サンプルを磁場に置き、磁気応答性または磁化可能な粒子をと付着したそうした細胞が磁石に引き付けられかつ非標識細胞から分離される手順で達成される。陽性選択に関しては、磁石に引き付けられる細胞が保持され;陰性選択に関しては、引き付けられない細胞(非標識細胞)が保持される。一部の局面では、陽性および陰性選択の組み合わせが同じ選択段階中に実施され、その場合、陽性画分および陰性画分が保持されて、さらにプロセシングされるか、またはさらなる分離段階に供される。
【0281】
一部の態様では、親和性に基づく選択は、磁気活性化細胞選別(MACS)(Miltenyi Biotech, Auburn, CA)によるものである。磁気活性化細胞選別(MACS)、例えばCliniMACSシステムは、磁化粒子に付着した細胞の高純度選択が可能である。特定の態様では、MACSは、外部磁場の適用後に、非標的種および標的種が逐次的に溶出される様態で機能する。つまり、磁化粒子に付着した細胞は定位置に保たれ、一方で、付着していない種は溶出される。次に、この第一の溶出段階が完了した後、磁場に捕捉されて溶出を阻止された種を、それらが溶出および回収され得る様式で遊離させる。特定の態様では、非標的細胞を標識して、不均一細胞集団から枯渇させる。
【0282】
一部の態様では、プロセシング段階は、1種または複数種の選択試薬と共にインキュベーションされた細胞の、遠心チャンバーからの圧出を含む。一部の態様では、細胞は、1つまたは複数の洗浄段階の後におよび/または洗浄段階から連続して圧出され得、それは、一部の局面では遠心チャンバー内で実施され得る。
【0283】
一部の態様では、磁気応答性粒子を、後にインキュベーション、培養、および/または遺伝子操作される細胞に付着させたままにし;一部の局面では、当該粒子を、患者に投与するための細胞に付着させたままにする。一部の態様では、磁化可能なまたは磁気応答性の粒子を、細胞から取り外す。細胞から磁化可能な粒子を取り外すための方法は公知であり、例えば、競合する非標識抗体、切断可能なリンカーにコンジュゲートされた磁化可能な粒子、または抗体などの使用を含む。一部の態様では、磁化可能な粒子は生分解性である。
【0284】
凍結および凍結保存
一部の態様では、選択された細胞などの細胞を、例えば血漿および血小板を除去する洗浄段階の後、凍結溶液中に懸濁する。多様な公知の凍結溶液およびパラメーターのいずれかが、一部の局面において用いられ得る。一例は、20% DMSOおよび8%ヒト血清アルブミン(HSA)を含有するPBS、または他の適切な細胞凍結媒体の使用を伴う。次に、これを、DMSOおよびHSAの最終濃度がそれぞれ10%および4%であるように、媒体で1:1希釈する。
【0285】
一部の態様では、選択された細胞などの細胞を、Sepax(登録商標)またはSepax 2(登録商標)細胞プロセシングシステムと共に使用するためのものを含めた、Biosafe SAによって生産されかつ販売される遠心チャンバーなど、細胞プロセシングシステムと関連付けられた1つまたは複数のシステムと連動した遠心チャンバーを用いて、凍結保存媒体に移し得る。一部の態様では、凍結保存媒体への移入には1つまたは複数のプロセシング段階が付随し、当該段階には、(例えば、選択培地を除去するために)サンプル(例えば選択された細胞サンプル)を洗浄する段階、および/または後続の凍結のための適当な凍結保存バッファーもしくは媒体中に細胞を置き換える段階が含まれ得る。
【0286】
一部の態様では、細胞は、プロセシングのための方法の前、間、または後のいずれかにて凍結、例えば凍結保存される。一部の態様では、凍結および後続の融解段階は、細胞集団中の顆粒球およびある程度まで単球を除去する。次に、細胞は、概して1分間あたり1°の割合で-80℃まで凍結されて、液体窒素保管タンクの気相中に保管される。
【0287】
培養および刺激
一部の態様では、プロセシング段階(例えば、チャンバーおよび/または閉鎖システム内で行われるもの)は、細胞のインキュベーションおよび/または培養などによる、細胞の培養、刺激、および/または活性化を含む。例えば、一部の態様では、選択された細胞集団など、単離された細胞を刺激するための方法が提供される。一部の態様では、プロセシング段階は、選択された細胞などの細胞を含有する組成物のインキュベーションを含み、インキュベーションの少なくとも一部は、例えば刺激条件下にて、遠心チャンバーおよび/または他の容器内で行われるものである。インキュベーションは、遺伝子操作(例えば、上記の形質導入方法の態様により行われる遺伝子操作)の前に行われるものであってもよいし、遺伝子操作との関連で行われるものであってもよい。一部の態様では、刺激は、例えば形質導入の前に、細胞の活性化および/または増殖をもたらす。
【0288】
一部の態様では、プロセシング段階は、選択された細胞などの細胞のインキュベーションを含み、インキュベーション段階は、細胞の培養、培養、刺激、活性化、および/または増殖を含み得る。一部の態様では、組成物または細胞を、刺激条件または刺激剤の存在下でインキュベーションする。そのような条件には、集団における細胞の増殖、増殖、活性化、および/もしくは生存を誘導するように、抗原曝露を模倣するように、かつ/または組換え抗原受容体の導入のためなどの遺伝子操作のための細胞をプライミングするように設計されたものが含まれる。
【0289】
一部の態様では、刺激および/または活性化のための条件には、特定の媒体、温度、酸素含有量、二酸化炭素含有量、時間、作用物質、例えば栄養素、アミノ酸、抗生物質、イオン、ならびに/またはサイトカイン、ケモカイン、抗原、結合パートナー、融合タンパク質、組換え可溶性受容体、および細胞を活性化するように設計された他の任意の作用物質などの刺激因子のうちの1つまたは複数が含まれ得る。
【0290】
一部の態様では、刺激条件または刺激剤には、TCR複合体の細胞内シグナル伝達ドメインを活性化することができる1種または複数種の作用物質、例えばリガンドが含まれる。一部の局面では、TCR構成要素に特異的なものなど、一次シグナルを送達するのに、例えばITAM誘導性シグナルの活性化を惹起するのに適した作用物質、ならびに/あるいは例えばビーズなどの固体支持体に結合している、T細胞共刺激受容体に特異的なもの、例えば抗CD3、抗CD28、もしくは抗41-BBなど、共刺激シグナルを促進する作用物質、ならびに/あるいは1種もしくは複数種のサイトカインなど、作用物質は、T細胞におけるTCR/CD3細胞内シグナル伝達カスケードをオンにするまたは惹起する。刺激剤の中には、抗CD3/抗CD28ビーズ(例えば、DYNABEADS(登録商標)M-450 CD3/CD28 T Cell Expander、および/またはExpACT(登録商標)ビーズ)がある。任意で、増殖法は、培養培地に抗CD3抗体および/または抗CD28抗体を添加する段階をさらに含み得る。一部の態様では、刺激剤には、IL-2および/またはIL-15、例えば濃度が少なくとも約10ユニット/mLのIL-2が含まれる。一部の態様では、インキュベーションは、Riddellらへの米国特許第6,040,177号、Klebanoff et al.(2012) J Immunother. 35(9):651-660、Terakura et al. (2012) Blood.1:72-82、および/またはWang et al. (2012) J Immunother. 35(9):689-701に記載されているものなどの技法に従って行われる。
【0291】
一部の態様では、非分裂末梢血単核細胞(PBMC)などのフィーダー細胞を(例えば、結果として生じる細胞の集団が、増殖対象となる初期集団における各Tリンパ球に対して少なくとも約5、10、20、もしくは40個、またはそれを上回る数のPBMCフィーダー細胞を含有するように)組成物に添加し;かつ培養物を(例えば、T細胞の数を増大させるのに十分な時間)インキュベーションすることによって、T細胞を増殖させる。一部の局面では、非分裂フィーダー細胞は、γ線照射されたPBMCフィーダー細胞を含み得る。一部の態様では、PBMCに約3000~3600ラドの値域のγ線を照射して、細胞分裂を阻止する。一部の局面では、T細胞の集団の添加前に、フィーダー細胞を培養培地に添加する。
【0292】
一部の態様では、刺激条件は、概して、ヒトTリンパ球の成長に適した温度、例えば、少なくとも約25℃、概ね少なくとも約30℃、および概ね37℃または約37℃を含む。任意で、インキュベーションは、非分裂EBV形質導入リンパ芽球様細胞(LCL)をフィーダー細胞として添加する段階をさらに含み得る。LCLは、約6000~10,000ラドの値域のγ線を照射され得る。一部の局面におけるLCLフィーダー細胞は、LCLフィーダー細胞対初期Tリンパ球の比率を少なくとも約10:1とするなど、任意の適切な量で供給される。
【0293】
複数の態様において、抗原特異的CD4+および/またはCD8+ T細胞などの抗原特異的T細胞は、ナイーブまたは抗原特異的Tリンパ球を抗原で刺激することによって得られる。例えば、感染した対象からT細胞を単離し、かつ該細胞を同じ抗原でインビトロにて刺激することによって、サイトメガロウイルス抗原に対して、抗原特異的T細胞株またはクローンが生成され得る。
【0294】
一部の態様では、上記のいずれかなど、1種または複数種の刺激条件または刺激剤を用いたインキュベーションの少なくとも一部は、遠心チャンバー内で実施される。一部の態様では、遠心チャンバー内で実施されるインキュベーションの少なくとも一部は、1種または複数種の試薬と混合して、刺激および/または活性化を誘導する段階を含む。一部の態様では、選択された細胞などの細胞を、遠心チャンバー内で刺激条件または刺激剤と混合する。そのようなプロセスの一部の局面では、ある体積の細胞を、細胞培養プレートまたは他のシステム内で同様の刺激を実施する場合に通常採用されるよりはるかに少ない量の、1種または複数種の刺激条件または作用物質と混合する。
【0295】
一部の態様では、周期的な振とうまたは回転と共に遠心チャンバー内(例えばチューブまたはバッグ内)で混合することなく選択が実施される場合の、同じ数または同じ体積の細胞の選択について同じまたは同等の効率を達成するために典型的に用いられるまたは必要と考えられる刺激剤の量と比較して、実質的にそれより少ない量(例えば、多くても5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、または80%の量)の刺激剤をチャンバーのキャビティ内の細胞に添加する。一部の態様では、細胞および刺激剤へのインキュベーションバッファーの添加によりインキュベーションを実施して、例えば、少なくとも10mLもしくは少なくとも約10mLまたは約10もしくは10mL、少なくとも20mLもしくは少なくとも約20mLまたは約20もしくは20mL、少なくとも30mLもしくは少なくとも約30mLまたは約30もしくは30mL、少なくとも40もmLもしくは少なくとも約40mLまたは約40もしくは40mL、少なくとも50mLもしくは少なくとも約50mLまたは約50もしくは50mL、少なくとも60mLもしくは少なくとも約60mLまたは約60もしくは60mL、少なくとも70mLもしくは少なくとも約70mLまたは約70もしくは70mL、少なくとも80mLもしくは少なくとも約80mLまたは約80もしくは80mL、少なくとも90mLもしくは少なくとも約90mLまたは約90もしくは90mL、少なくとも100mLもしくは少なくとも約100mLまたは約100もしくは100mL、少なくとも150mLもしくは少なくとも約150mLまたは約150もしくは150mL、または少なくとも200mLもしくは少なくとも約200mLまたは約200もしくは200mLなど、10mL~200mLの試薬のインキュベーションにより標的体積を達成する。一部の態様では、インキュベーションバッファーおよび刺激剤を、細胞への添加前にあらかじめ混合する。一部の態様では、インキュベーションバッファーおよび刺激剤を別々に細胞に添加する。一部の態様では、刺激インキュベーションを、エネルギー的に好ましい相互作用を促進するのに役立ち得る穏やかな周期的混合条件を用いて行い、それによって、細胞の刺激および活性化を達成しつつも刺激剤の全体的な使用量を少なくすることが可能となる。
【0296】
一部の態様では、刺激剤とのインキュベーションの総持続時間は、1もしくは約1時間~72もしくは約72時間、1もしくは約1時間~48もしくは約48時間、4もしくは約4時間~36もしくは約36時間、8もしくは約8時間~30もしくは約30時間、または12もしくは約12時間~24もしくは約24時間であり、例えば、少なくとも、6時間もしくは約6時間、12時間もしくは約12時間、18時間もしくは約18時間、24時間もしくは約24時間、36時間もしくは約36時間、または72時間もしくは約72時間である。一部のケースでは、遠心チャンバー内でのインキュベーションの総持続時間は、5分間または約5分間~6時間または約6時間、例えば、30分間~3時間、例えば、少なくとも、30分間もしくは約30分間、60分間もしくは約60分間、120分間もしくは約120分間、または180分間もしくは約180分間である。一部のケースでは、インキュベーションのさらなる一部は、遠心チャンバーの外で実施され得る。
【0297】
一部の態様では、インキュベーションは、概して、混合条件下、例えば、概ね比較的低い力または速度でのスピン、例えば、細胞をペレットにするために用いられるものよりも低い速度でのスピン、例えば、600または約600rpm~1700または約1700rpm(例えば、600rpmもしくは約600rpmもしくは少なくとも600rpm、1000rpmもしくは約1000rpmもしくは少なくとも1000rpm、または1500rpmもしくは約1500rpmもしくは少なくとも1500rpm、または1700rpmもしくは約1700rpmもしくは少なくとも1700rpm)でのスピン、例えば、チャンバーまたは他の容器のサンプルまたは壁における、80gまたは約80g~100gまたは約100g(例えば、80gもしくは約80gもしくは少なくとも80g、85gもしくは約85gもしくは少なくとも85g、90gもしくは約90gもしくは少なくとも90g、95gもしくは約95gもしくは少なくとも95g、または100gもしくは約100gもしくは少なくとも100g)のRCFでのスピンの存在下で行われる。一部の態様では、そのような低い速度でのスピンと、それに続く静止時期との期間(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10秒間のスピンおよび/または静止、例えば、約1または2秒間でのスピンと、それに続く約5、6、7、または8秒間の静止)を順々に繰り返してスピンが行われる。
【0298】
一部の態様では、細胞は、細胞内シグナル伝達および/または細胞増殖を誘導し得る1種または複数種の細胞刺激剤と共に遠心チャンバー内でインキュベーションされ、当該細胞刺激剤は、細胞結合剤、例えば抗原結合試薬、例えば抗体である。一部の態様では、細胞は、提供される方法におけるプロセスの局面に従って、遠心チャンバー内で抗CD3/抗CD28ビーズと共にインキュベーションされる(抗CD3/抗CD28ビーズと混合されることを含む)。
【0299】
一部の態様では、プロセシング段階は、1種または複数種の刺激条件または刺激剤と共にインキュベーションされた(例えば、それらと混合された)細胞の、遠心チャンバーからの圧出を含む。一部の態様では、洗浄など、1つまたは複数の他の付加的なプロセシング段階はチャンバー内で実施され得、それは、刺激インキュベーションの前、後、および/またはそれと連続的であり得る。一部の態様では、選択または融解された細胞などに対する刺激の前に洗浄する段階を実施し、媒体を除去して細胞の刺激および培養に適した媒体に置き換える。
【0300】
一部の態様では、1種または複数種の刺激条件または刺激剤と共にインキュベーションされていた(例えば、それらと混合されていた)遠心チャンバーから圧出された細胞を、チャンバーの外でさらにインキュベーションする。一部の態様では、さらなるインキュベーションは、室温を上回る温度、例えば、25℃を上回るまたは約25℃を上回る温度、例えば、32℃を概ね上回るもしくは約32℃を概ね上回る、35℃を概ね上回るもしくは約35℃を概ね上回る、または37℃を概ね上回るもしくは約37℃を概ね上回る温度で実施される。一部の態様では、さらなるインキュベーションは、37℃±2℃または約37℃±2℃の温度、例えば37℃または約37℃で実施される。一部の態様では、さらなるインキュベーションの期間は、12時間または約12時間~96時間または約96時間であり、例えば、少なくとも12時間もしくは少なくとも約12時間、少なくとも24時間もしくは少なくとも約24時間、少なくとも36時間もしくは少なくとも約36時間、少なくとも48時間もしくは少なくとも約48時間、少なくとも72時間もしくは少なくとも約72時間、または少なくとも96時間もしくは少なくとも約96時間である。
【0301】
一部の態様では、さらなるインキュベーションは、閉鎖システム内で行われる。一部の態様では、1種または複数種の刺激条件または刺激剤と共にインキュベーションされた(例えば、それらと混合された)細胞を遠心チャンバーから容器(例えば、バッグ)などへと圧出した後、該細胞を含有する容器を、さらなる一部の時間インキュベーションする。一部の態様では、容器(例えば、バッグ)を、1もしくは約1時間~48もしくは約48時間、4もしくは約4時間~36もしくは約36時間、8もしくは約8時間~30もしくは約30時間、または12もしくは約12時間~24もしくは約24時間(境界値を含む)、37℃±2℃または約37℃±2℃の温度でインキュベーションする。
【0302】
製剤化
一部の態様では、(例えば、遠心チャンバーおよび/または閉鎖システム内で行われる)プロセシング段階は、提供される形質導入プロセシング段階および/または上記の1つもしくは複数の他のプロセシング段階により生じる遺伝子操作された細胞の製剤化など、細胞の製剤化を含み得る。一部の態様では、細胞の製剤化に関連する提供される方法は、遠心チャンバー内またはそれと関連付けられたものなどの閉鎖システム内で、上記のプロセシング段階を用いて形質導入されかつ/または増殖した細胞など、形質導入された細胞をプロセシングする段階を含む。
【0303】
一部の態様では、一部の局面では薬学的に許容されるキャリアまたは賦形剤を含み得る、薬学的に許容されるバッファー中にて、細胞を製剤化する。一部の態様では、プロセシングは、対象への投与のために薬学的に許容されるまたは望まれる媒体または製剤化バッファーへの媒体の交換を含む。一部の態様では、プロセシング段階は、形質導入されかつ/または増殖した細胞を洗浄して、1種または複数種の任意の薬学的に許容されるキャリアまたは賦形剤を含み得る、薬学的に許容されるバッファー中に細胞を置き換える段階を伴い得る。薬学的に許容されるキャリアまたは賦形剤を含めた、例示的なそのような薬学的な形態は、対象に細胞および組成物を投与するのに許容される形態と併用した、下記のいずれかであり得る。一部の態様における薬学的組成物は、治療上または予防上有効な量など、疾患または病状を治療または予防するのに有効な量の細胞を含有する。
【0304】
一部の態様では、製剤化バッファーは凍結保存料を含有する。一部の態様では、5%~20%または5%~10%のDMSO溶液など、1.0%~30%のDMSO溶液を含有する凍結保存溶液を用いて細胞を製剤化する。一部の態様では、凍結保存溶液は、例えば20% DMSOおよび8%ヒト血清アルブミン(HSA)を含有するPBS、または他の適切な細胞凍結媒体であるか、またはそれらを含有する。一部の態様では、凍結保存溶液は、例えば少なくとも7.5%または少なくとも約7.5%のDMSOであるかまたはそれを含有する。一部の態様では、プロセシング段階は、形質導入されかつ/または増殖した細胞を洗浄して、凍結保存溶液中に細胞を置き換える段階を伴い得る。
【0305】
一部の態様では、プロセシングは、所望の濃度または数(例えば、所定の用量またはその一部での投与のための当該数の細胞を含む単位剤形組成物)への細胞の希釈または濃縮を含み得る。一部の態様では、プロセシング段階は、それによって所望のとおりに細胞の濃度を増加させる体積低下を含み得る。一部の態様では、プロセシング段階は、それによって所望のとおりに細胞の濃度を減少させる体積付加を含み得る。
【0306】
一部の態様では、プロセシングは、形質導入されかつ/または増殖した細胞にある体積の製剤化バッファーを添加する段階を含む。一部の態様では、製剤化バッファーの体積は、少なくとも50mLもしくは少なくとも約50mLまたは約50もしくは50mL、少なくとも100もしくは少なくとも約100mLまたは約100もしくは100mL、少なくとも200もしくは少なくとも約200mLまたは約200もしくは200mL、少なくとも300もしくは少なくとも約300mLまたは約300もしくは300mL、少なくとも400もしくは少なくとも約400mLまたは約400もしくは400mL、少なくとも500もしくは少なくとも約500mLまたは約500もしくは500mL、少なくとも600もしくは少なくとも約600mLまたは約600もしくは600mL、少なくとも700もしくは少なくとも約700mLまたは約700もしくは700mL、少なくとも800もしくは少なくとも約800mLまたは約800もしくは800mL、少なくとも900もしくは少なくとも約900mLまたは約900もしくは900mL、または少なくとも1000もしくは少なくとも約1000mLまたは約1000もしくは1000mLなど、10mLまたは約10mL~1000mLまたは約1000mLである。
【0307】
例示的なそのようなプロセシング段階は、Sepax(登録商標)またはSepax 2(登録商標)細胞プロセシングシステムとの使用のためのものを含めた、Biosafe SAによって生産されかつ販売される遠心チャンバーなど、細胞プロセシングシステムと関連付けられた1つまたは複数のシステムまたはキットと連動した遠心チャンバーを用いて実施され得る。
【0308】
一部の態様では、当該方法は、記載されている上記の態様のいずれかにおける、薬学的に許容されるバッファーなどの製剤化バッファー中に製剤化された細胞の、得られた組成物である製剤化された組成物の、遠心チャンバーの内部キャビティからの圧出を実施する段階を含む。一部の態様では、製剤化された組成物の圧出は、遠心チャンバーを有する閉鎖システムの一部として機能的に連結されている容器(例えば、バッグ)への圧出である。一部の態様では、容器(例えば、バッグ)は、
図5または
図7に図示されている例示的なシステムにおいて例示されるアウトプットラインまたはアウトプット位置にてシステムに接続される。
【0309】
一部の態様では、(例えば、細胞プロセシングシステムと関連付けられた)閉鎖システム(例えば、遠心チャンバー)は、製剤化された組成物の圧出のために1つまたは複数の容器が接続され得るポートと(配管ラインの各端部において)関連付けられた多方向配管マニホールドを含有する、マルチポートアウトプットキットを含む。一部の局面では、所望の数のまたは複数のアウトプット容器(例えば、バッグ)は、マルチポートアウトプットのポートのうちの少なくとも3、4、5、6、7、8個、またはそれを上回る数など、1つまたは複数、概ね2つまたはそれを上回る数に無菌的に接続され得る。例えば、一部の態様では、1つまたは複数の容器(例えば、バッグ)は、当該ポートに、または全てのポートよりは少ない数のポートに取り付けられ得る。したがって、一部の態様では、システムは、複数のアウトプットバッグ内へのアウトプット組成物の圧出を実施し得る。
【0310】
一部の局面では、細胞は、単回単位投薬量投与または多数回投薬量投与のためなどの投薬量投与のための量で、複数のアウトプットバッグのうちの1つまたは複数に圧出され得る。例えば、一部の態様では、アウトプットバッグは、所定の用量またはその一部での投与のための細胞の数をそれぞれ含有してもよい。したがって、各バッグは、一部の局面では、投与のための単回単位用量を含有してもよいし、または複数のアウトプットバッグのうちの1つを上回る数(例えば、アウトプットバッグのうちの2つもしくは3つ)が投与のための用量を一緒に構成するような、所望の用量の一部を含有してもよい。
【0311】
したがって、容器(例えば、バッグ)は、概して、投与される細胞、例えばその1つまたは複数の単位用量を含有する。単位用量は、対象に投与される細胞の量もしくは数、または投与される細胞の数の2倍(またはそれを上回る数)であり得る。それは、対象に投与されるであろう細胞の最低用量または考え得る最低用量であり得る。
【0312】
一部の態様では、各容器(例えば、バッグ)はそれぞれ単位用量の細胞を含む。したがって、一部の態様では、各容器は、同じまたはおおよそもしくは実質的に同じ数の細胞を含む。一部の態様では、単位用量は、治療されるべきかつ/または細胞が由来する対象1kgあたり、約1×108個未満、約5×107個未満、約1×106個未満、または約5×105個未満の細胞を含む。一部の態様では、各単位用量は、少なくともまたは約少なくとも1×106、2×106、5×106、1×107、5×107、または1×108個の遺伝子操作された細胞、総細胞、T細胞、またはPBMCを含有する。一部の態様では、各バッグ内の製剤化された細胞組成物の体積は、少なくとも、20mLもしくは約20mL、30mLもしくは約30mL、40mLもしくは約40mL、50mLもしくは約50mL、60mLもしくは約60mL、70mLもしくは約70mL、80mLもしくは約80mL、90mLもしくは約90mL、または100mLもしくは約100mLなど、10mL~100mLである。
【0313】
一部の態様では、複数のアウトプットバッグのうちの1つまたは複数が、形質導入効率を評価するためなど、検査するために用いられ得る。例えば、一部の局面における形質導入効率は、提供される方法の態様を用いた形質導入後の、ウイルスベクター粒子のゲノムに含有される核酸によってコードされる異種タンパク質などの組換えタンパク質の発現のレベルを測定することによって評価され得る。したがって、一部の態様では、組換え分子の発現レベルは、いくつかの周知の方法のいずれかによって評価され得、例えば、細胞表面タンパク質に関して、例えば、親和性に基づく方法(例えば、免疫親和性に基づく方法)による検出、例えばフローサイトメトリーによる検出によって評価され得る。一部の局面では、複数の容器(例えばバッグ)のうちの1つまたは複数に含有される細胞を、形質導入マーカーおよび/またはレポーター構築物の検出によって、組換え分子の発現レベルについて検査する。他の態様では、マーカーとしてベクター内に含まれるトランケートされた表面タンパク質をコードする核酸を用いて、発現を評価する。
【0314】
一部の態様では、そこに細胞が圧出される複数の容器の全てまたは実質的に全ては、同じ数の細胞、かつ同じまたは実質的に同じ濃度を含有する。一部の態様では、複数の容器のうちの1つに細胞を圧出する段階の前に、配管ラインをプライミングする。
【0315】
IV.細胞および組成物
当該方法(例えば、プロセシング段階、例えばウイルス核酸の導入、例えば形質導入)において用いられる細胞の中には、細胞、細胞集団、および組成物がある。
【0316】
細胞は、概して哺乳類細胞であり、典型的にはヒト細胞である。一部の態様では、細胞は、血液、骨髄、リンパ、またはリンパ系器官に由来する。一部の局面では、細胞は、リンパ球、典型的にはT細胞および/またはNK細胞を含めた、先天性または適応性免疫の細胞、例えば骨髄性細胞またはリンパ系細胞など、免疫系の細胞である。他の例示的な細胞には、誘導多能性幹細胞(iPSC)を含めた、万能性(multipotent)および多能性(pluripotent)幹細胞などの幹細胞が含まれる。細胞は、典型的には、対象から直接単離されたものおよび/または対象から単離および凍結されたものなど、初代細胞である。一部の態様では、細胞には、機能、活性化状態、成熟度、分化の潜在能、増殖、再循環、局在、および/または持続能、抗原特異性、抗原受容体のタイプ、特定の器官もしくは区画における存在、マーカーもしくはサイトカイン分泌プロファイル、および/または分化の程度によって規定されるものなど、全T細胞集団、CD4+細胞、CD8+細胞、およびその部分集団などの、T細胞または他の細胞タイプの1つまたは複数の部分集合が含まれる。治療されるべき対象に関して、細胞は、同種および/または自己であり得る。一部の態様では、当該方法は、細胞を対象から単離する、それらを調製する、プロセシングする、培養する、および/または遺伝子操作する段階、ならびに凍結保存の前または後にそれらを同じ対象に再導入する段階を含み、一部の局面においてそれは、提供されるプロセシング段階のうちの1つまたは複数を用いた閉鎖システム内で達成され得る。
【0317】
T細胞ならびに/またはCD4+および/もしくはCD8+ T細胞のサブタイプおよび部分集団の中には、幹細胞メモリーT(TSCM)、セントラルメモリーT(TCM)、エフェクターメモリーT(TEM)、または最終分化したエフェクターメモリーT細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、未成熟T細胞、成熟T細胞、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、粘膜関連インバリアントT(MAIT)細胞、天然に存在しかつ適応性の調節性T(Treg)細胞、TH1細胞、TH2細胞、TH3細胞、TH17細胞、TH9細胞、TH22細胞、濾胞性ヘルパーT細胞などのヘルパーT細胞、α/β T細胞、ならびにδ/γ T細胞など、ナイーブT(TN)細胞、エフェクターT細胞(TEFF)、メモリーT細胞、およびそれらのサブタイプがある。
【0318】
一部の態様では、細胞はナチュラルキラー(NK)細胞である。一部の態様では、細胞は、単球または顆粒球、例えば骨髄性細胞、マクロファージ、好中球、樹状細胞、肥満細胞、好酸球、および/または好塩基球である。
【0319】
V.ウイルスベクター粒子、ウイルスベクター、およびコードされる組換え産物
形質導入方法は、概して、ウイルスベクター(例えば、細胞内で発現される組換え産物をコードするベクター)による形質導入を伴う。本明細書において用いられる「ベクター」という用語は、それが連結されている別の核酸を増やすことができる核酸分子を指す。この用語には、自己複製する核酸構造としてのベクター、ならびにそれが導入されている宿主細胞のゲノムに組み入れられたベクターが含まれる。特定のベクターは、それらが作動可能なように連結されている核酸の発現を誘導し得る。そのようなベクターは、本明細書において「発現ベクター」と呼ばれる。ベクターには、別の核酸を持ちかつそれを増やすために宿主ゲノム内に挿入し得るゲノムを有するウイルスベクター、例えばレトロウイルスベクター、例えば、レンチウイルスまたはガンマレトロウイルスベクターが含まれる。
【0320】
一部の態様では、ウイルスベクターは、ウイルスベクターゲノムを封入しかつ/またはパッケージするビリオンを含むウイルスベクター粒子であるビヒクルで細胞に導入される。一部のそのような態様では、ウイルスベクターのゲノムは、典型的には、組換え分子をコードする核酸に加えて、ゲノムをウイルス粒子内にパッケージさせる配列を含む。
【0321】
一部の態様では、ウイルスベクターは、組換えタンパク質または異種タンパク質などの組換え分子および/または異種分子をコードする核酸など、組換え核酸を含有する。一部の態様では、例えば提供される方法の局面において、ウイルスベクターによる形質導入はアウトプット組成物を産生し、当該アウトプット組成物中の細胞は、形質導入されておりかつそのような核酸の組換え産物または遺伝子操作された産物を発現する。一部の態様では、核酸は異種核酸であり、すなわち別の生物または細胞から得られたものなど、細胞内または細胞から得られたサンプル中に通常は存在せず、例えばそれは、形質導入される細胞および/またはそのような細胞が由来する生物において通常は見出されない。一部の態様では、当該核酸は天然に存在するものではなく、例えば、天然には見出されない核酸であり、それには、多数の異なる細胞タイプに由来する様々なドメインをコードする核酸のキメラ的組み合わせを含む核酸が含まれる。
【0322】
一部の態様では、組換え核酸は、例えばシミアンウイルス40(SV40)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)に由来するベクターなど、組換えウイルスまたはウイルスベクター粒子を用いて細胞内に導入される。一部の態様では、組換え核酸は、ガンマレトロウイルスベクターなど、組換えレンチウイルスベクターまたはレトロウイルスベクターを用いて、T細胞などの細胞内に導入される(例えば、Koste et al. (2014) Gene Therapy 2014 Apr 3. doi:10.1038/gt.2014.25;Carlens et al. (2000) Exp Hematol 28(10):1137-46;Alonso-Camino et al. (2013) Mol Ther Nucl Acids 2, e93;Park et al., Trends Biotechnol. 2011 November 29(11):550-557を参照されたい)。
【0323】
一部の態様では、レトロウイルスベクター、例えばモロニ―マウス白血病ウイルス(MoMLV)、骨髄増殖性肉腫ウイルス(MPSV)、マウス胚性幹細胞ウイルス(MESV)、マウス幹細胞ウイルス(MSCV)、脾フォーカス形成ウイルス(SFFV)、またはアデノ随伴ウイルス(AAV)に由来するレトロウイルスベクターは、長い末端反復配列(LTR)を有する。多くのレトロウイルスベクターは、マウスレトロウイルスに由来する。一部の態様では、レトロウイルスには、任意の鳥類または哺乳類細胞供給源に由来するものが含まれる。レトロウイルスは、典型的には両指向性であり、このことは、当該ウイルスが、ヒトを含めたいくつかの種の宿主細胞に感染し得ることを意味する。一態様では、発現される遺伝子は、レトロウイルスのgag、pol、および/またはenv配列に取って代わる。いくつかの例証的なレトロウイルスシステムが記載されている(例えば、米国特許第5,219,740号;第6,207,453号;第5,219,740号;Miller and Rosman (1989) BioTechniques 7:980-990;Miller, A. D. (1990) Human Gene Therapy 1:5-14;Scarpa et al. (1991) Virology 180:849-852;Burns et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:8033-8037;およびBoris-Lawrie and Temin (1993) Cur. Opin. Genet. Develop. 3:102-109)。
【0324】
ウイルスベクターは、概して、細胞によって発現される組換え産物をコードする導入遺伝子などの組換え核酸を含む。組換え産物には、機能的非TCR抗原受容体、例えばキメラ抗原受容体(CAR)などの抗原受容体、およびトランスジェニックT細胞受容体(TCR)などの他の抗原結合受容体を含めた、組換え受容体が含まれる。受容体の中には、他のキメラ受容体もある。
【0325】
CARを含めた例示的な抗原受容体、およびそのような受容体を遺伝子操作しかつそれを細胞内に導入するための方法には、例えば国際特許出願公報第WO200014257号、第WO2013126726号、第WO2012/129514号、第WO2014031687号、第WO2013/166321号、第WO2013/071154号、第WO2013/123061号、米国特許出願公報第US2002131960号、第US2013287748号、第US20130149337号、米国特許第6,451,995号、第7,446,190号、第8,252,592号、第8,339,645号、第8,398,282号、第7,446,179号、第6,410,319号、第7,070,995号、第7,265,209号、第7,354,762号、第7,446,191号、第8,324,353号、および第8,479,118号、ならびに欧州特許出願第EP2537416号に記載されているもの、ならびに/またはSadelain et al., Cancer Discov. 2013 April; 3(4):388-398;Davila et al. (2013) PLoS ONE 8(4):e61338;Turtle et al., Curr. Opin. Immunol., 2012 October; 24(5):633-39;Wu et al., Cancer, 2012 March 18(2):160-75に記載されているものが含まれる。一部の局面では、抗原受容体には、米国特許第7,446,190号に記載されているCAR、および国際特許出願公報第WO/2014055668 A1号に記載されているものが含まれる。CARの例には、第WO2014031687号、第US 8,339,645号、第US 7,446,179号、第US 2013/0149337号、米国特許第7,446,190号、米国特許第8,389,282号、Kochenderfer et al., 2013, Nature Reviews Clinical Oncology, 10, 267-276 (2013);Wang et al. (2012) J. Immunother. 35(9):689-701;およびBrentjens et al., Sci Transl Med. 2013 5(177)など、前述の刊行物のいずれかに開示されているCARが含まれる。第WO2014031687号、第US 8,339,645号、第US 7,446,179号、第US 2013/0149337号、米国特許第7,446,190号、および米国特許第8,389,282号も参照されたい。CARなどのキメラ受容体は、一般的に、抗体分子の一部、一般的に抗体の可変重(VH)鎖領域および/または可変軽(VL)鎖領域、例えばscFv抗体フラグメントなど、細胞外抗原結合ドメインを含む。
【0326】
一部の態様では、組換え受容体、例えばCARの抗体部分は、ヒンジ領域、例えばIgG4ヒンジ領域、ならびに/またはCH1/CLおよび/もしくはFc領域など、免疫グロブリン定常領域の少なくとも一部をさらに含む。一部の態様では、定常領域および一部は、IgG4またはIgG1など、ヒトIgGのものである。一部の局面では、定常領域の一部は、抗原認識構成要素、例えばscFvと膜貫通ドメインとの間のスペーサー領域として働く。スペーサーは、スペーサーの非存在下と比較して、抗原結合後の細胞の応答性の増加を提供する長さのものであり得る。例示的なスペーサー、例えばヒンジ領域には、国際特許出願公報第WO2014031687号に記載されているものが含まれる。一部の例では、スペーサーの長さは、12個もしくは約12個または長くて12個のアミノ酸である。例示的なスペーサーには、少なくとも、約10~約229個のアミノ酸、約10~約200個のアミノ酸、約10~約175個のアミノ酸、約10~約150個のアミノ酸、約10~約125個のアミノ酸、約10~約100個のアミノ酸、約10~約75個のアミノ酸、約10~約50個のアミノ酸、約10~約40個のアミノ酸、約10~約30個のアミノ酸、約10~約20個のアミノ酸、または約10~約15個のアミノ酸を有し、かつ列挙された値域のいずれかの境界値の間の任意の整数を含むものが含まれる。一部の態様では、約12個以下、約119個以下、または約229個以下のアミノ酸を有する。例示的なスペーサーには、IgG4ヒンジ単独、CH2およびCH3ドメインに連結されたIgG4ヒンジ、またはCH3ドメインに連結されたIgG4ヒンジが含まれる。
【0327】
この抗原認識ドメインは、概して、CARの場合にはTCR複合体などの抗原受容体複合体を通じた活性化、および/または別の細胞表面受容体を介したシグナルを模倣するシグナル伝達構成要素など、1つまたは複数の細胞内シグナル伝達構成要素に連結されている。したがって、一部の態様では、抗原結合構成要素(例えば、抗体)は、1つまたは複数の膜貫通ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインに連結されている。一部の態様では、膜貫通ドメインは、細胞外ドメインに融合されている。一態様では、受容体、例えばCARにおけるドメインの1つと天然に関連している膜貫通ドメインが用いられる。一部のケースでは、同じまたは異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインへのそのようなドメインの結合を回避して、受容体複合体の他のメンバーとの相互作用を最小限に抑えるように、膜貫通ドメインを選択するまたはアミノ酸置換によって改変する。
【0328】
一部の態様における膜貫通ドメインは、天然または合成供給源のいずれかに由来する。供給源が天然である場合、一部の局面におけるドメインは、任意の膜結合または膜貫通タンパク質に由来する。膜貫通領域は、T細胞受容体のα、β、またはζ鎖、CD28、CD3ε、CD45、CD4、CD5、CDS、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154に由来するものを含む(すなわち、その少なくとも膜貫通領域を含む)。あるいは、一部の態様における膜貫通ドメインは合成である。一部の局面では、合成膜貫通ドメインは、ロイシンおよびバリンなど、主に疎水性残基を含む。一部の局面では、合成膜貫通ドメインの各端には、フェニルアラニン、トリプトファン、およびバリンの三つ組が見出される。一部の態様では、連結は、リンカー、スペーサー、および/または膜貫通ドメインによるものである。
【0329】
細胞内シグナル伝達ドメインの中には、天然抗原受容体を通じたシグナル、共刺激受容体と組み合わせたそのような受容体を通じたシグナル、および/または共刺激受容体単独を通じたシグナルを模倣するまたは近似するものがある。一部の態様では、短いオリゴまたはポリペプチドのリンカー、例えば、グリシンおよびセリン、例えばグリシン-セリン二つ組を含有するものなど、長さが2~10個のアミノ酸のリンカーは、CARの膜貫通ドメインと細胞質シグナル伝達ドメインとの間に存在しかつ連結を形成する。
【0330】
受容体、例えばCARは、概して少なくとも1つまたは複数の細胞内シグナル伝達構成要素を含む。一部の態様では、受容体は、T細胞の活性化および細胞傷害性を仲介するTCR CD3鎖、例えばCD3ζ鎖など、TCR複合体の細胞内構成要素を含む。したがって、一部の局面では、抗原結合部分は、1つまたは複数の細胞シグナル伝達モジュールに連結されている。一部の態様では、細胞シグナル伝達モジュールは、CD3膜貫通ドメイン、CD3細胞内シグナル伝達ドメイン、および/または他のCD膜貫通ドメインを含む。一部の態様では、受容体、例えばCARは、FC受容体γ、CD8、CD4、CD25、またはCD16など、1つまたは複数の付加的な分子の一部をさらに含む。例えば、一部の局面では、CARまたは他のキメラ受容体は、CD3-ゼータ(CD3-ζ)またはFc受容体γとCD8、CD4、CD25、またはCD16との間のキメラ分子を含む。
【0331】
一部の態様では、CARまたは他のキメラ受容体のライゲーションがあると、受容体の細胞質ドメインまたは細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫細胞、例えばCARを発現するように遺伝子操作されたT細胞の通常のエフェクター機能または応答の少なくとも1つを活性化する。例えば、一部の背景において、CARは、サイトカインまたは他の因子の分泌など、細胞溶解活性またはTヘルパー活性などのT細胞の機能を誘導する。一部の態様では、抗原受容体構成要素または共刺激分子の細胞内シグナル伝達ドメインのトランケートされた部分は、例えばそれがエフェクター機能シグナルを変換する場合、無傷の免疫刺激鎖の代わりに用いられる。一部の態様では、1つまたは複数の細胞内シグナル伝達ドメインは、T細胞受容体(TCR)の細胞質配列、および一部の局面では、天然の背景で、抗原受容体の関与後にシグナル変換を開始するようにそのような受容体と協調して作用する共受容体のものも含む。
【0332】
天然TCRの背景において、十分な活性化は、一般的に、TCRを通じたシグナル伝達だけでなく、共刺激シグナルも要する。したがって、一部の態様では、十分な活性化を促進するために、二次または共刺激シグナルを生成するための構成要素もCARに含まれる。他の態様では、CARは、共刺激シグナルを生成するための構成要素を含まない。一部の局面では、付加的なCARが、同じ細胞内で発現されかつ二次または共刺激シグナルを生成するための構成要素を提供する。
【0333】
T細胞活性化は、一部の局面では、2つのクラスの細胞質シグナル伝達配列:TCRを通じて抗原依存的な一次活性化を惹起するもの(一次細胞質シグナル伝達配列)、および抗原非依存的様式で作用して、二次または共刺激シグナルを提供するもの(二次細胞質シグナル伝達配列)、によって仲介されるものとして記載されている。一部の局面では、CARは、そのようなシグナル伝達構成要素の一方または両方を含む。
【0334】
一部の局面では、CARは、TCR複合体の一次活性化を調節する一次細胞質シグナル伝達配列を含む。刺激様式で作用する一次細胞質シグナル伝達配列は、免疫受容体チロシンに基づく活性化モチーフまたはITAMとして知られるシグナル伝達モチーフを含有し得る。一次細胞質シグナル伝達配列を含有するITAMの例には、TCRζ、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CDS、CD22、CD79a、CD79b、およびCD66dに由来するものが含まれる。一部の態様では、CARにおける細胞質シグナル伝達分子は、細胞質シグナル伝達ドメイン、その一部、またはCD3ζに由来する配列を含有する。
【0335】
一部の態様では、CARは、CD28、4-1BB、OX40、DAP10、およびICOSなど、共刺激受容体のシグナル伝達ドメインおよび/または膜貫通部分を含む。一部の局面では、同じCARは、活性化構成要素および共刺激構成要素の両方を含む。
【0336】
一部の態様では、活性化ドメインは一方のCARに含まれるのに対し、共刺激構成要素は、別の抗原を認識する別のCARによって提供される。一部の態様では、CARは、両方とも同じ細胞上に発現される、活性化または刺激性CAR、共刺激性CARを含む(第WO2014/055668号を参照されたい)。一部の局面では、細胞は、1つもしくは複数の刺激性もしくは活性化CAR、および/または共刺激性CARを含む。一部の態様では、細胞は、疾患または病状と関連しかつ/またはそれに特異的なもの以外の抗原を認識するCARなど、阻害性CAR(iCAR、Fedorov et al., Sci. Transl. Medicine, 5(215)(2013年12月)を参照されたい)をさらに含み、それにより、疾患標的CARを通じて送達される活性化シグナルは、阻害性CARのそのリガンドへの結合によって減衰してまたは阻害されて、例えばオフターゲット効果を低下させる。
【0337】
特定の態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3(例えば、CD3-ζ)細胞内ドメインに連結されたCD28膜貫通およびシグナル伝達ドメインを含む。一部の態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζ細胞内ドメインに連結された、キメラCD28およびCD137(4-1BB、TNFRSF9)共刺激ドメインを含む。
【0338】
一部の態様では、CARは、細胞質部分に、1つまたは複数(例えば2つ以上)の共刺激ドメインおよび活性化ドメイン(例えば一次活性化ドメイン)を包含する。例示的なCARは、CD3-ζ、CD28、および4-1BBの細胞内構成要素を含む。
【0339】
一部の態様では、CARまたは他の抗原受容体は、トランケートされたEGFR(tEGFR)など、トランケートされたバージョンの細胞表面受容体などの受容体を発現する、細胞の形質導入または遺伝子操作を確認するために用いられ得る細胞表面マーカーなどのマーカーをさらに含む。一部の局面では、マーカーは、CD34、NGFR、または上皮成長因子受容体(例えば、tEGFR)の全てまたは一部(例えば、トランケートされた形態)を含む。一部の態様では、マーカーをコードする核酸が、切断可能なリンカー配列、例えばT2Aなど、リンカー配列をコードするポリヌクレオチドに機能的に連結される。第WO2014031687号を参照されたい。
【0340】
一部の態様では、マーカーは、T細胞に天然には見いだされないまたはT細胞の表面に天然には見いだされない分子、例えば細胞表面タンパク質、またはその一部である。
【0341】
一部の態様では、分子は、非自己分子、例えば非自己タンパク質、すなわち細胞が養子移入される宿主の免疫系によって「自己」として認識されないものである。
【0342】
一部の態様では、マーカーは、治療機能を果たさず、かつ/または遺伝子操作のための、例えば上手く遺伝子操作された細胞を選択するためのマーカーとして用いられること以外の効果をもたらさない。他の態様では、マーカーは、治療分子または所望の効果を別様に発揮する分子であってもよく、例えば、インビボで細胞と遭遇するリガンドであってもよく、例えば、養子移入およびリガンドとの遭遇の際に細胞の応答を増強および/または低減する共刺激分子または免疫チェックポイント分子であってもよい。
【0343】
一部のケースでは、CARは、第一、第二、および/または第三世代CARと呼ばれる。一部の局面では、第一世代CARとは、抗原結合があると、単にCD3鎖誘導性シグナルを提供するものであり;一部の局面では、第二世代CARとは、CD28またはCD137などの共刺激受容体由来の細胞内シグナル伝達ドメインを含むものなど、そのようなシグナルおよび共刺激シグナルを提供するものであり;一部の局面では、第三世代CARとは、異なる共刺激受容体の複数の共刺激ドメインを含むものである。
【0344】
一部の態様では、キメラ抗原受容体は、抗体または抗体フラグメントを含有する細胞外部分を含む。一部の局面では、キメラ抗原受容体は、抗体またはフラグメントを含有する細胞外部分と、細胞内シグナル伝達ドメインとを含む。一部の態様では、抗体またはフラグメントはscFvを含み、かつ細胞内ドメインはITAMを含有する。一部の局面では、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3-ゼータ(CD3ζ)鎖のゼータ鎖のシグナル伝達ドメインを含む。一部の態様では、キメラ抗原受容体は、細胞外ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを連結する膜貫通ドメインを含む。一部の局面では、膜貫通ドメインは、CD28の膜貫通部分を含有する。一部の態様では、キメラ抗原受容体は、T細胞共刺激分子の細胞内ドメインを含有する。一部の局面では、T細胞共刺激分子は、CD28または41BBである。
【0345】
「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを指すために互換可能に用いられ、最小限の長さに限定されるわけではない。提供される受容体および他のポリペプチド、例えばリンカーまたはペプチドを含めたポリペプチドは、天然および/または非天然のアミノ酸残基を含めたアミノ酸残基を含み得る。該用語は、ポリペプチドの発現後修飾、例えばグリコシル化、シアル化、アセチル化、およびリン酸化も含む。一部の局面では、ポリペプチドは、タンパク質が所望の活性を維持する限り、生来のまたは天然の配列に対する改変を含有し得る。これらの改変は、部位指向性突然変異誘発によるような意図的であり得る、またはタンパク質を産生する宿主の変異もしくはPCR増幅が原因のエラーによるものなど偶発的であり得る。
【0346】
対象に投与される細胞によって発現されるCARなどの組換え受容体は、一般的に、治療されている疾患もしくは病状またはその細胞と関連して発現されかつ/またはそれに特異的である分子を認識するまたは特異的に結合する。分子、例えば抗原への特異的な結合があると、受容体は、一般的に、細胞にITAM変換シグナルなどの免疫刺激シグナルを送達し、それによって疾患または病状を標的とした免疫応答が促進される。例えば、一部の態様では、細胞は、疾患もしくは病状のまたは疾患もしくは病状と関連する細胞または組織によって発現される抗原に特異的に結合するCARを発現する。
【0347】
一部の背景において、刺激因子(例えば、リンホカインまたはサイトカイン)の過剰発現は、対象に有毒であり得る。したがって、一部の背景において、ウイルスベクターは、養子免疫療法における投与などがあると、インビボでの陰性選択に対して細胞を感受性にさせる遺伝子セグメントを細胞内に導入する。例えば、一部の局面では、そのような遺伝子セグメントによる細胞の形質導入の後、細胞は、それらが投与される対象のインビボ条件の変化の結果として排除される。陰性選択可能な表現型は、投与される作用物質、例えば化合物に対する感度を付与する遺伝子の挿入により生じ得る。陰性選択可能な遺伝子には、ガンシクロビル感度を付与する単純ヘルペスウイルスI型チミジンキナーゼ(HSV-I TK)遺伝子(Wigler et al., Cell II :223, 1977);細胞ヒポキサンチン・ホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)遺伝子、細胞アデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(APRT)遺伝子、細菌シトシンデアミナーゼ(Mullen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 89:33 (1992))が含まれる。
【0348】
細胞における形質導入および発現のためのウイルスベクターに含まれ得る付加的な核酸の中には、Lupton S. D. et al., Mol. and Cell Biol., 11:6 (1991)およびRiddell et al., Human Gene Therapy 3:319-338 (1992)によって記載されているように、導入された細胞の生存率および/もしくは機能を促進するなどによって、療法の有効性を改善し;インビボ生存もしくは局在を評価するなどのための、細胞の選択および/もしくは評価のための遺伝子マーカーを提供し;かつ/または、例えば細胞をインビボでの陰性選択に感受性にすることによって安全性を改善する、産物をコードするものがあり;ドミナント陽性選択可能なマーカーと陰性選択可能なマーカーとを融合させることから生じる二機能性の選択可能な融合遺伝子の使用を記載しているLuptonらによる第PCT/US91/08442号および第PCT/US94/05601号の刊行物も参照されたい。例えば、Riddellらの米国特許第6,040,177号の第14~17欄を参照されたい。
【0349】
VI.治療方法および組成物
一部の局面では、方法の産物は、養子細胞療法において対象に細胞および組成物を投与するなどのために、治療の方法、例えば治療方法において用いられる。そのような方法、ならびに方法によってプロセシングされかつ産生された細胞の使用、ならびにそれにおいて使用するための薬学的組成物および製剤も提供される。提供される方法は、概して、細胞または組成物、例えばアウトプット組成物および/または製剤化された組成物を対象に投与する段階を伴う。
【0350】
一部の態様では、細胞は、CARなどの組換え受容体、またはトランスジェニックTCRなどの他の抗原受容体、例えば本明細書において提供される形質導入方法において導入されたものを発現する。そのような細胞は、概して、受容体によって特異的に認識される疾患または病状を有する対象に投与される。一態様では、細胞は、疾患もしくは病状と関連する、またはその細胞もしくは組織によって発現されるリガンドに特異的に結合する抗原受容体、例えばCARまたはTCRなど、組換え受容体またはキメラ受容体を発現する。例えば、一部の態様では、受容体は抗原受容体であり、かつリガンドは、疾患または病状に特異的なかつ/またはそれと関連する抗原である。投与は、概して、疾患もしくは病状の1つもしくは複数の症状の改善をもたらし、かつ/あるいは疾患もしくは病状またはその症状を治療するまたは予防する。疾患、病状、および障害の中には、固形腫瘍、血液悪性腫瘍、および黒色腫を含みかつ限局性および転移性の腫瘍を含めた腫瘍、ウイルスまたは他の病原体、例えばHIV、HCV、HBV、CMVによる感染症および寄生虫性疾患などの感染性疾患、ならびに自己免疫性および炎症性の疾患がある。一部の態様では、疾患または病状は、腫瘍、癌、悪性腫瘍、新生物、または他の増殖性疾患もしくは障害である。そのような疾患には、白血病、リンパ腫、例えば慢性リンパ球性白血病(CLL)、ALL、非ホジキンリンパ腫、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、難治性濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、緩慢性B細胞リンパ腫、B細胞悪性腫瘍、結腸、肺、肝臓、乳房、前立腺、卵巣、皮膚、黒色腫、骨の癌、および脳腫瘍、卵巣癌、上皮癌、腎細胞癌腫、膵臓腺癌、ホジキンリンパ腫、子宮頸癌腫、結腸直腸癌、膠芽細胞腫、神経芽細胞腫、ユーイング肉腫、髄芽細胞腫、骨肉腫、滑膜肉腫、ならびに/または中皮腫が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0351】
一部の態様では、疾患または病状は、ウイルス、レトロウイルス、細菌、および原虫の感染症、免疫不全症、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン-バールウイルス(EBV)、アデノウイルス、BKポリオーマウイルスなどであるがそれらに限定されない、感染性疾患または病状である。一部の態様では、疾患または病状は、関節炎、例えばリウマチ性関節炎(RA)、I型糖尿病、全身性エリテマトーデス(SLE)、炎症性腸疾患、乾癬、強皮症、自己免疫性甲状腺疾患、グレーブス病、クローン病、多発性硬化症、喘息、および/または移植と関連する疾患もしくは病状など、自己免疫性または炎症性の疾患または病状である。
【0352】
一部の態様では、細胞または組成物によって標的とされる疾患または障害と関連する抗原は、オーファンチロシンキナーゼ受容体ROR1、tEGFR、Her2、L1-CAM、CD19、CD20、CD22、メソテリン、CEA、およびB型肝炎表面抗原、抗葉酸受容体、CD23、CD24、CD30、CD33、CD38、CD44、EGFR、EGP-2、EGP-4、0EPHa2、ErbB2、3、もしくは4、FBP、胎児アセチルコリンe受容体、GD2、GD3、HMW-MAA、IL-22R-α、IL-13R-α2、kdr、κ軽鎖、ルイスY、L1-細胞接着分子、MAGE-A1、メソテリン、MUC1、MUC16、PSCA、NKG2Dリガンド、NY-ESO-1、MART-1、gp100、腫瘍胎児抗原、ROR1、TAG72、VEGF-R2、癌胎児性抗原(CEA)、前立腺特異抗原、PSMA、Her2/neu、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、エフリンB2、CD123、CS-1、c-Met、GD-2、およびMAGE A3、CE7、ウィルムス腫瘍1(WT-1)、サイクリンA1(CCNA1)などのサイクリン、ならびに/またはビオチン化分子、ならびに/またはHIV、HCV、HBV、もしくは他の病原体によって発現される分子からなる群より選択される。
【0353】
一部の態様では、細胞または組成物を、治療上有効なまたは予防上有効な量など、疾患または病状を治療するまたは予防するのに有効である量で投与する。したがって、一部の態様では、投与の方法は、有効量における細胞および組成物の投与を含む。一部の態様における治療有効性または予防有効性は、治療された対象の周期的な評価によってモニターされる。病状に応じた、数日間またはより長い間にわたる繰り返しの投与に関して、治療は、疾患症状の所望の抑制が生じるまで繰り返される。しかしながら、他の投薬レジメンが有用であり得かつ決定され得る。
【0354】
本明細書において使用するとき、「治療」(および「治療する」または「治療すること」などのその文法的バリエーション)は、疾患もしくは病状もしくは障害、あるいはそれに伴う症状、有害な効果もしくは転帰、または表現型の完全なまたは部分的な向上または低下を指す。治療の望ましい効果には、疾患の発生または再発の予防、症状の軽減、疾患の任意の直接的または間接的な病理学的帰結の縮減、転移の予防、疾患進行の割合の減少、疾患状態の向上または緩和、および寛解または予後の改善が含まれるが、それらに限定されるわけではない。該用語は、疾患の完全な治癒、または任意の症状の完全な排除、または全ての症状もしくは転帰に対する効果を暗示するわけではない。
【0355】
本明細書において使用するとき、「疾患の発症を遅らせる」とは、疾患(癌など)の発症を延期し、妨げ、減速させ、遅らせ、安定させ、抑制し、かつ/または先送りすることを意味する。この遅延は、治療されている疾患および/または個体の病歴に応じた、変動的な時間の長さであり得る。当業者に明白であるように、十分または相当な遅延は、事実上、個体が疾患を発症しないという点において予防を包含し得る。例えば、転移の発症など、末期癌が遅延され得る。
【0356】
本明細書において用いられる「予防すること」には、疾患にかかりやすくあり得るが、疾患を有するとはまだ診断されていない対象における疾患の発生または再発に対する予防を提供することを含む。一部の態様では、提供される細胞および組成物を用いて、疾患の発症を遅延させる、または疾患の進行を減速させる。
【0357】
本明細書において使用するとき、機能または活性を「抑制する」ことは、関心対象の条件もしくはパラメーターを除いてその他の点で同じ条件と比較した場合に、または代替的には、別の条件と比較して、機能または活性を低下させることである。例えば、腫瘍成長を抑制する細胞は、該細胞の非存在下での腫瘍成長の割合と比較して、腫瘍成長の割合を低下させる。
【0358】
投与の背景における、作用物質、例えば薬学的製剤、細胞、または組成物の「有効量」とは、治療結果または予防結果などの所望の結果を達成するために必要な投薬量/量かつ期間での有効な量を指す。
【0359】
作用物質、例えば薬学的製剤または細胞の「治療上有効な量」とは、疾患、病状、もしくは障害の治療などのための所望の治療結果、および/または治療の薬物動態学的もしくは薬力学的な効果を達成するために必要な投薬量かつ期間での有効な量を指す。治療上有効な量は、対象の疾患状態、年齢、性別、および重量、ならびに投与された細胞の集団などの因子に従って変動し得る。
【0360】
「予防上有効な量」とは、所望の予防的効果を達成するために必要な投薬量かつ期間での有効な量を指す。典型的にではあるが必然的にではなく、予防的用量は、疾患の前または早期のステージで対象において用いられるため、予防上有効な量は、治療上有効な量よりも少ない。
【0361】
養子細胞療法のための細胞の投与方法は公知であり、提供される方法および組成物に関連して用いられ得る。例えば、養子T細胞療法の方法は、例えばGruenbergらへの米国特許出願公報第2003/0170238号;Rosenbergへの米国特許第4,690,915号;Rosenberg (2011) Nat Rev Clin Oncol. 8(10):577-85に記載されている。例えば、Themeli et al. (2013) Nat Biotechnol. 31(10):928-933;Tsukahara et al. (2013) Biochem Biophys Res Commun 438(1):84-9;Davila et al. (2013) PLoS ONE 8(4):e61338を参照されたい。
【0362】
一部の態様では、細胞療法、例えば養子細胞療法、例えば養子T細胞療法は、細胞が、細胞療法を受けるべきである対象からまたはそのような対象に由来するサンプルから単離されかつ/またはそうでなければそれから調製される、自己移入によって行われる。したがって、一部の局面では、細胞は、治療および細胞を必要としている対象、例えば患者に由来し、かつ単離およびプロセシングの後、細胞は同じ対象に投与される。
【0363】
一部の態様では、細胞療法、例えば養子細胞療法、例えば養子T細胞療法は、細胞が、細胞療法を受けるべきであるまたはそれを最終的に受ける対象、例えば第一の対象以外の対象から単離されかつ/またはそうでなければそれから調製される、同種移入によって行われる。そのような態様では、細胞は、次に、同じ種の異なる対象、例えば第二の対象に投与される。一部の態様では、第一および第二の対象は、遺伝学的に同一である。一部の態様では、第一および第二の対象は、遺伝学的に類似している。一部の態様では、第二の対象は、第一の対象と同じHLAクラスまたはスーパータイプを発現する。
【0364】
細胞は、任意の適切な手段によって、例えばボーラス注入によって、注射、例えば静脈内もしくは皮下注射、眼内注射、眼周囲注射、網膜下注射、硝子体内注射、経中隔注射、強膜下注射、脈絡膜内注射、前房内注射、結膜下(subconjectval)注射、結膜下(subconjuntival)注射、テノン嚢下注射、球後注射、球周囲注射、または後部胸膜近傍(posterior juxtascleral)送達によって投与され得る。一部の態様では、それらは、非経口、肺内、および鼻腔内、ならびに局所治療のために望まれる場合には、病巣内投与によって投与される。非経口注入には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、または皮下投与が含まれる。一部の態様では、所定の用量は、細胞の単回ボーラス投与によって、細胞の複数回ボーラス投与によって、または細胞の連続的注入投与によって投与される。
【0365】
疾患の予防または治療に関して、適当な投薬量は、治療される疾患のタイプ、細胞または組換え受容体のタイプ、疾患の重症度および経過、細胞が予防目的または治療目的のために投与されるかどうか、以前の療法、対象の病歴および細胞への応答、ならびに主治医の裁量に依存し得る。組成物および細胞は、一部の態様では、一度でまたは一連の治療にわたって、対象に適切に投与される。
【0366】
一部の態様では、細胞は、併用治療の一部として投与され、例えば、抗体または遺伝子操作された細胞または受容体または作用物質(例えば、細胞傷害剤または治療剤)などの別の治療的介入と同時にまたは任意の順序で逐次的に投与される。一部の態様における細胞は、1種もしくは複数種の付加的な治療剤と共に、または別の治療的介入に関連して共投与され、同時にもしくは任意の順序で逐次的に共投与される。一部の背景において、細胞は、細胞集団が、1種もしくは複数種の付加的な治療剤の効果を増強する、または逆もまた同様であるような、十分に近い時間内に別の療法と共に共投与される。一部の態様では、細胞は、1種または複数種の付加的な治療剤の前に投与される。一部の態様では、細胞は、1種または複数種の付加的な治療剤の後に投与される。一部の態様では、1種または複数種の付加的な作用物質には、例えば持続性を増強する、IL-2などのサイトカインが含まれる。
【0367】
いったん細胞が対象(例えば、ヒト)に投与されると、一部の局面における細胞集団の生物学的活性は、いくつかの公知の方法のいずれかによって測定される。評価するパラメーターには、例えばイメージングによるインビボでの、またはELISAもしくはフローサイトメトリーによるエクスビボでの、抗原への細胞の特異的結合が含まれる。特定の態様では、標的細胞を破壊し得る細胞の能力は、例えばKochenderfer et al., J. Immunotherapy, 32(7):689-702 (2009)、およびHerman et al. J. Immunological Methods, 285(1):25-40 (2004)に記載されている細胞毒性アッセイなど、当技術分野において公知の任意の適切な方法を用いて測定され得る。特定の態様では、細胞の生物学的活性は、CD107a、IFNγ、IL-2、およびTNFなど、特定のサイトカインの発現および/または分泌をアッセイすることによっても測定され得る。一部の局面では、生物学的活性は、腫瘍負荷量(burden)または細胞量(load)の低下など、臨床転帰を評価することによって測定される。一部の局面では、有毒な転帰、細胞の持続性および/もしくは増殖性、ならびに/または宿主免疫応答の存在もしくは非存在が評価される。
【0368】
特定の態様では、細胞は、それらの治療有効性または予防有効性が増加するような任意の数のやり方で改変される。例えば、集団によって発現される遺伝子操作されたCARまたはTCRは、リンカーを通じて直接的または間接的に、標的化部分にコンジュゲートされ得る。標的化部分に化合物、例えばCARまたはTCRをコンジュゲートする実践は、当技術分野において公知である。例えば、Wadwa et al., J. Drug Targeting 3:111 (1995)、および米国特許第5,087,616号を参照されたい。
【0369】
そのような方法において使用するための薬学的組成物または製剤も提供され、それは、一部の態様では、提供されるプロセシング方法と関連して製剤化され、例えば他のプロセシング段階が行われる閉鎖システム内で、例えば自動化されたまたは部分的に自動化された方式で製剤化される。
【0370】
一部の態様では、細胞および組成物は、細胞または細胞集団および薬学的に許容されるキャリアまたは賦形剤を含む組成物など、薬学的組成物または製剤の形態で対象に投与される。
【0371】
「薬学的製剤」という用語は、それに含有される活性成分の生物学的活性を有効にさせるような形態にあり、かつ製剤が投与されるであろう対象にとって許容されないほど有毒である付加的な構成要素を含有しない調製物を指す。
【0372】
一部の態様における薬学的組成物は、化学療法剤、例えばアスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、シスプラチン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、メトトレキサート、パクリタキセル、リツキシマブ、ビンブラスチン、ビンクリスチンなど、他の薬学的に活性な作用物質または薬物を付加的に含む。一部の態様では、作用物質は、塩、例えば薬学的に許容される塩の形態で投与される。適切な薬学的に許容される酸付加塩には、塩酸、臭化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸、および硫酸などの鉱酸、ならびに酒石酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、安息香酸、グリコール酸、グルコン酸、コハク酸、およびアリールスルホン酸などの有機酸、例えばp-トルエンスルホン酸に由来するものが含まれる。
【0373】
「薬学的に許容されるキャリア」とは、対象に非毒性である、活性成分以外の薬学的製剤中の成分を指す。薬学的に許容されるキャリアには、バッファー、賦形剤、安定剤、または保存料が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0374】
一部の局面では、キャリアの選定は、一部には、特定の細胞によっておよび/または投与の方法によって決定される。したがって、多様な適切な製剤が存在する。例えば、薬学的組成物は、保存料を含有し得る。適切な保存料には、例えばメチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸ナトリウム、および塩化ベンザルコニウムが含まれ得る。一部の局面では、2種以上の保存料の混合物が用いられる。保存料またはその混合物は、典型的には、組成物全体の重量での約0.0001%~約2%の量で存在する。キャリアは、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980)によって記載されている。薬学的に許容されるキャリアは、一般的に、採用される投薬量および濃度でレシピエントに非毒性であり、かつホスフェート、シトレート、および他の有機酸などのバッファー;アスコルビン酸およびメチオニンを含めた抗酸化剤;保存料(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル、またはベンジルアルコール;メチルまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾールなど);低分子量(約10個の残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含めた、単糖類、二糖類、および他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース、もしくはソルビトールなどの糖類;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);ならびに/またはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤を含むが、それらに限定されるわけではない。
【0375】
一部の局面における緩衝剤が組成物に含まれる。適切な緩衝剤には、例えばクエン酸、クエン酸ナトリウム、リン酸、リン酸カリウム、ならびに様々な他の酸および塩が含まれる。一部の局面では、2種以上の緩衝剤の混合物が用いられる。緩衝剤またはその混合物は、典型的には、組成物全体の重量での約0.001%~約4%の量で存在する。投与可能な薬学的組成物を調製するための方法は公知である。例示的な方法は、例えばRemington: The Science and Practice of Pharmacy, Lippincott Williams & Wilkins; 21st ed. (2005年5月1日)により詳細に記載されている。
【0376】
製剤は水溶液を含み得る。製剤または組成物は、それぞれの活性が互いに有害に影響を及ぼさない場合、細胞を用いて治療されている特定の兆候、疾患、または病状に有用な1種を上回る種類の活性成分、好ましくは細胞に補足的な活性を有するものも含有し得る。そのような活性成分は、意図される目的にとって有効である量で組み合わせで適切に存在する。したがって、一部の態様では、薬学的組成物は、化学療法剤、例えばアスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、シスプラチン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、メトトレキサート、パクリタキセル、リツキシマブ、ビンブラスチン、および/またはビンクリスチンなど、他の薬学的に活性な作用物質または薬物をさらに含む。
【0377】
一部の態様における薬学的組成物は、治療上有効なまたは予防上有効な量など、疾患または病状を治療するまたは予防するのに有効な量の細胞を含有する。一部の態様における治療有効性または予防有効性は、治療された対象の周期的な評価によってモニターされる。所望の投薬量は、細胞の単回ボーラス投与によって、細胞の複数回ボーラス投与によって、または細胞の連続的注入投与によって送達され得る。
【0378】
細胞および組成物は、標準的な投与技法、製剤化、および/または装置を用いて投与され得る。細胞の投与は、自己または異種であり得る。例えば、免疫応答性の細胞または前駆体は、1つの対象から得られ得、かつ同じ対象または異なる適合する対象に投与され得る。末梢血由来の免疫応答性細胞またはそれらの子孫(例えば、インビボ、エクスビボ、またはインビトロ由来)は、カテーテル投与、全身注射、局所注射、静脈内注射、または非経口投与を含めた、局所注射により投与され得る。治療用組成物(例えば、遺伝子改変された免疫応答性細胞を含有する薬学的組成物)を投与する場合、それは、一般的に注射可能な単位剤形(溶液、懸濁液、乳濁液)で製剤化される。
【0379】
製剤には、経口、静脈内、腹腔内、皮下、経肺、経皮、筋肉内、鼻腔内、口腔、舌下、または坐薬投与のためのものが含まれる。一部の態様では、細胞集団は非経口的に投与される。本明細書において用いられる「非経口」という用語には、静脈内、筋肉内、皮下、直腸、膣内、および腹腔内投与が含まれる。一部の態様では、細胞は、静脈内、腹腔内、または皮下注射による末梢全身性送達(peripheral systemic delivery)を用いて対象に投与される。
【0380】
一部の態様における組成物は、無菌液体調製物、例えば等張性の水溶液、懸濁液、乳濁液、分散液、または粘性組成物として提供され、一部の局面においてそれは、選択されるpHに緩衝され得る。液体調製物は、通常、ゲル、他の粘性組成物、および固体組成物よりも調製しやすい。加えて、液体組成物は、とりわけ注射によって投与するのにいくらかより好都合である。他方で、粘性組成物は、適当な粘性域内で製剤化されて、特異的組織とのより長い接触期間を提供し得る。液体または粘性組成物はキャリアを含み得、それは、例えば水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール)、およびそれらの適切な混合物を含有する溶媒または分散媒体であり得る。
【0381】
注射可能な無菌溶液は、滅菌水、生理学的な生理食塩水、グルコース、デキストロースなどの適切なキャリア、希釈液、または賦形剤と混和してなど、細胞を溶媒中に組み入れることによって調製され得る。組成物は、投与の経路および望まれる調製に応じて、湿潤剤、分散剤、または乳化剤(例えば、メチルセルロース)、pH緩衝剤、ゲル化用もしくは粘性増強用添加物、保存料、香味剤、および/または着色料など、補助物質を含有し得る。標準的教科書を一部の局面において調べて、適切な調製物を調製し得る。
【0382】
抗微生物保存料、抗酸化剤、キレート剤、およびバッファーを含めた、組成物の安定性および無菌性を増強する様々な添加物が添加され得る。微生物の作用の阻止は、様々な抗細菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、およびソルビン酸によって確保され得る。注射可能な薬学的形態の長期にわたる吸収は、吸収を遅延させる作用物質、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの使用によってもたらされ得る。
【0383】
インビボ投与に用いられる製剤は、一般的に無菌的である。無菌性は、例えば無菌濾過膜を通じた濾過によって容易に実現され得る。
【0384】
プロセシング段階の中には、そのような組成物を製剤化する段階が含まれ得る。
【0385】
本明細書において使用するとき、「a」、「an」、および「the」という単数形は、文脈において別様にはっきりと述べられていない限り、複数形の指示対象を含む。例えば、「a」または「an」は、「少なくとも1つ」または「1つもしくは複数」を意味する。本明細書に記載されている局面およびバリエーションは、局面およびバリエーション「からなる」および/または「から本質的になる」ことを含むと理解される。
【0386】
本開示を通して、主張される対象物の様々な局面は、値域形式で提示される。値域形式での記載は、単に利便性および簡潔性のためのものであり、主張される対象物の範囲に対する確固たる限定として解釈されるべきではないことが理解されるべきである。したがって、値域の記載は、全ての考え得る部分的値域、ならびにその値域内の個々の数値を具体的に開示していると見なされるべきである。例えば、値の値域が提供される場合、その値域の上限と下限との間の各介在値、およびその記述される値域における他の任意の記述される値または介在値は、主張される対象物の内に包含されると理解される。これらのより小さな値域の上限および下限は、該より小さな値域内に独立して含まれ得、かつ記述される値域において具体的に除外される任意の限度次第で、主張される対象物の内にも包含される。記述される値域が限度の一方または両方を含む場合、それらの含まれる限度のいずれかまたは両方を除外する値域も、主張される対象物に含まれる。このことは、値域の幅にかかわらず適用される。
【0387】
本明細書において用いられる「約」という用語は、この技術分野における当業者に容易に知られる、それぞれの値に対する通常の誤差域を指す。本明細書における「約」の値またはパラメーターへの言及は、その値またはパラメーターそれ自体に向けられている態様を含む(かつ記載する)。例えば、「約X」に言及する記載は、「X」の記載を含む。
【0388】
本明細書において使用するとき、組成物とは、細胞を含めた、2種以上の産物、物質、または化合物の任意の混合物を指す。それは、溶液、懸濁液、液体、粉末、ペースト、水性、非水性、またはその任意の組み合わせであり得る。
【0389】
本明細書において使用するとき、細胞または細胞の集団が、特定のマーカーに「陽性」であるという記述は、特定のマーカー、典型的には表面マーカーの、細胞の上または中での検出可能な存在を指す。表面マーカーに言及する場合、該用語は、フローサイトメトリーによって、例えば該マーカーに特異的に結合する抗体で染色しかつ該抗体を検出することによって検出される表面発現の存在を指し、該染色は、その他の点で同一の条件下でアイソタイプが一致した対照を用いて同じ手順を行って検出される染色を実質的に上回るレベルで、および/または該マーカーに陽性であることが公知の細胞に対するものと実質的に同程度のレベルで、および/または該マーカーに陰性であることが公知の細胞に対するものよりも実質的に高いレベルで、フローサイトメトリーによって検出可能である。
【0390】
本明細書において使用するとき、細胞または細胞の集団が、特定のマーカーに「陰性」であるという記述は、特定のマーカー、典型的には表面マーカーの、細胞の上または中での実質的に検出可能な存在がないこと指す。表面マーカーに言及する場合、該用語は、フローサイトメトリーによって、例えば該マーカーに特異的に結合する抗体で染色しかつ該抗体を検出することによって検出される表面発現の非存在を指し、該染色は、その他の点で同一の条件下でアイソタイプが一致した対照を用いて同じ手順を行って検出される染色を実質的に上回るレベルで、および/または該マーカーに陽性であることが公知の細胞に対するものよりも実質的に低いレベルで、および/または該マーカーに陰性であることが公知の細胞に対するものと比較して実質的に同程度のレベルで、フローサイトメトリーによって検出されない。
【0391】
VII.例示的な態様
本明細書に提供される態様の中には、以下のものがある。
1.細胞と、組換えウイルスベクターを含有するウイルス粒子とを含むインプット組成物を遠心チャンバーの内部キャビティ内でインキュベーションする段階を含む形質導入方法であって;
該遠心チャンバーが、回転軸の周りを回転可能であり、かつ端壁、該端壁から延びる実質的に剛性の側壁、および少なくとも1つの開口部を含み、該側壁の少なくとも一部が該内部キャビティを取り囲み、かつ該少なくとも1つの開口部が、該内部キャビティ内への液体の取り入れおよび該キャビティからの液体の圧出を可能にすることができ;
該遠心チャンバーが、該インキュベーションの少なくとも一部の間、該回転軸の周りを回転中であり;かつ
該方法が、該ウイルスベクターを形質導入された複数の該細胞を含むアウトプット組成物を生成する;
前記形質導入方法。
2.細胞と、組換えウイルスベクターを含有するウイルス粒子とを含むインプット組成物を遠心チャンバーの内部キャビティ内でインキュベーションする段階を含む形質導入方法であって;
該遠心チャンバーが、回転軸の周りを回転可能であり、かつ端壁、該端壁から延びる実質的に剛性の側壁、および少なくとも1つの開口部を含み、該側壁の少なくとも一部が該内部キャビティを取り囲み、かつ該少なくとも1つの開口部が、該内部キャビティ内への液体の取り入れおよび該キャビティからの液体の圧出を可能にすることができ;
該遠心チャンバーが、該インキュベーションの少なくとも一部の間、該回転軸の周りを回転中であり;
該遠心チャンバーの回転中に該キャビティ内に存在する該インプット組成物の総液体体積が、該キャビティの内部表面積1平方インチあたり多くても約5mLであり;かつ
該方法が、該ウイルスベクターを形質導入された複数の該細胞を含むアウトプット組成物を生成する;
前記形質導入方法。
3.前記回転が、
前記キャビティの前記側壁の内部表面および/または前記細胞の表面層における、200gを上回るもしくは約200gを上回る、300gを上回るもしくは約300gを上回る、または500gを上回るもしくは約500gを上回る、相対遠心力(RCF)での回転
を含む、態様1または2の方法。
4.前記回転が、
前記キャビティの前記側壁の内部表面および/または前記細胞の表面層における、
600gもしくは約600g、800gもしくは約800g、1000gもしくは約1000g、1100gもしくは約1100g、1600gもしくは約1600g、2000gもしくは約2000g、2100gもしくは約2100g、2200gもしくは約2200g、2500gもしくは約2500g、または3000gもしくは約3000gの相対遠心力での回転;あるいは
少なくとも、600gもしくは約600g、800gもしくは約800g、1000gもしくは約1000g、1100gもしくは約1100g、1600gもしくは約1600g、2000gもしくは約2000g、2100gもしくは約2100g、2200gもしくは約2200g、2500gもしくは約2500g、または3000gもしくは約3000gの相対遠心力での回転;
を含む、態様1~3のいずれかの方法。
5.前記回転が、
前記キャビティの前記側壁の内部表面および/または前記細胞の表面層における、それぞれ境界値を含めて、500もしくは約500g~2500もしくは約2500g、500もしくは約500g~2000もしくは約2000g、500もしくは約500g~1600もしくは約1600g、500もしくは約500g~1000もしくは約1000g、600もしくは約600g~1600もしくは約1600g、600もしくは約600g~1000もしくは約1000g、1000もしくは約1000g~2000もしくは約2000g、または1000もしくは約1000g~1600もしくは約1600gである、相対遠心力での回転
を含む、態様1~4のいずれかの方法。
6.前記チャンバーが回転中である、前記インキュベーションの前記少なくとも一部が、
約5分間もしくは5分間を上回る、約10分間もしくは10分間を上回る、約15分間もしくは15分間を上回る、約20分間もしくは20分間を上回る、約30分間もしくは30分間を上回る、約45分間もしくは45分間を上回る、約60分間もしくは60分間を上回る、約90分間もしくは90分間を上回る、または約120分間もしくは120分間を上回る;あるいは
それぞれ境界値を含めて、5もしくは約5分間~60もしくは約60分間、10もしくは約10分間~60もしくは約60分間、15もしくは約15分間~60もしくは約60分間、15もしくは約15分間~45もしくは約45分間、30もしくは約30分間~60もしくは約60分間、または45もしくは約45分間~60もしくは約60分間である;
期間である、態様1~5のいずれかの方法。
7.前記遠心チャンバーが可動部材をさらに含み、かつ前記内部キャビティが、前記端壁、前記実質的に剛性の側壁、および該可動部材によって画定される容積可変のキャビティであり、該可動部材が、該キャビティの内部容積を変動させるように該チャンバー内を移動することができる、態様1~6のいずれかの形質導入方法。
8.前記側壁が曲線状である、態様1~7のいずれかの方法。
9.前記側壁が概ね円筒状である、態様8の方法。
10.前記可動部材がピストンであり;かつ/または
前記可動部材が、前記キャビティの内部容積を変動させるように前記チャンバー内を軸方向に移動することができる;
態様7~9のいずれかの方法。
11.前記少なくとも1つの開口部が、それぞれ前記取り入れおよび圧出を可能にすることができる入口および出口を含むか;または
前記少なくとも1つの開口部が、該取り入れおよび圧出を可能にすることができる単一の出入口を含む;
態様1~10のいずれかの方法。
12.前記少なくとも1つの開口部が、前記チャンバーと同軸でありかつ前記端壁内に位置する、態様1~11のいずれかの方法。
13.前記キャビティの内部表面積が、少なくとも1×109μm2もしくは少なくとも約1×109μm2であり;
前記キャビティの内部表面積が、少なくとも1×1010μm2もしくは少なくとも約1×1010μm2であり;
前記端壁から延びる方向での前記剛性の壁の長さが、少なくとも約5cmであり;
前記端壁から延びる方向での前記剛性の壁の長さが、少なくとも約8cmであり;かつ/または
前記キャビティが、少なくとも1つの横断面において少なくとも約2cmの半径を含む;
態様1~12のいずれかの方法。
14.前記インキュベーション中に前記キャビティ内に存在する前記インプット組成物の平均液体体積が、該インキュベーション中の該キャビティの内部表面積1平方インチあたり多くても約5ミリリットル(mL)であるか;
前記インキュベーション中の任意の一時点における前記キャビティ内に存在する前記インプット組成物の最大液体体積が、該キャビティの最大内部表面積1平方インチあたり多くても約5mLであるか;
前記インキュベーション中に前記キャビティ内に存在する前記インプット組成物の平均液体体積が、該インキュベーション中の該キャビティの内部表面積1平方インチあたり多くても約2.5ミリリットル(mL)であるか;または
前記インキュベーション中の任意の一時点における前記キャビティ内に存在する前記インプット組成物の最大液体体積が、該キャビティの最大内部表面積1平方インチあたり多くても約2.5mLである;
態様1~13のいずれかの方法。
15.前記回転中に前記キャビティ内に存在する前記インプット組成物の、該キャビティの内部表面積1平方インチあたりの液体体積(mL/sq.in.)が、0.5もしくは約0.5mL/sq.in.~5もしくは約5mL/sq.in.、0.5もしくは約0.5mL/sq.in.~2.5もしくは約2.5mL/sq.in.、0.5もしくは約0.5mL/sq.in.~1もしくは約1mL/sq.in.、1もしくは約1mL/sq.in.~5もしくは約5mL/sq.in.、1もしくは約1mL/sq.in.~2.5もしくは約2.5mL/sq.in.、または2.5もしくは約2.5mL/sq.in.~5もしくは約5mL/sq.in.である、態様1~14のいずれかの方法。
16.前記インプット組成物中の前記細胞の数が、前記側壁の内部表面および/または該細胞の表面層における1000gもしくは約1000gまたは2000gもしくは約2000gの力での前記遠心チャンバーの回転中に前記キャビティの表面上で単層を形成するのに十分な該細胞の数またはそれに近い数であり;かつ/あるいは
前記インプット組成物中の前記細胞の数が、前記側壁の内部表面および/または該細胞の表面層における1000gもしくは約1000gまたは2000gもしくは約2000gの力での前記遠心チャンバーの回転中に前記キャビティの表面上で単層を形成するのに十分な該細胞の数の多くても1.5倍または2倍である;
態様1~15のいずれかの方法。
17.前記キャビティ内の前記インプット組成物が、少なくとも1×106個もしくは少なくとも約1×106個の前記細胞を含むか;または
前記キャビティ内の前記インプット組成物が、少なくとも5×106個もしくは少なくとも約5×106個の前記細胞を含むか;または
前記キャビティ内の前記インプット組成物が、少なくとも1×107個もしくは少なくとも約1×107個の前記細胞を含むか;または
前記キャビティ内の前記インプット組成物が、少なくとも1×108個もしくは少なくとも約1×108個の前記細胞を含む;
態様1~16のいずれかの方法。
18.前記キャビティ内の前記インプット組成物が、少なくとも1×107個もしくは少なくとも約1×107個、少なくとも2×107個もしくは少なくとも約2×107個、少なくとも3×107個もしくは少なくとも約3×107個、少なくとも4×107個もしくは少なくとも約4×107個、少なくとも5×107個もしくは少なくとも約5×107個、少なくとも6×107個もしくは少なくとも約6×107個、少なくとも7×107個もしくは少なくとも約7×107個、少なくとも8×107個もしくは少なくとも約8×107個、少なくとも9×107個もしくは少なくとも約9×107個、少なくとも1×108個もしくは少なくとも約1×108個、少なくとも2×108個もしくは少なくとも約2×108個、少なくとも3×108個もしくは少なくとも約3×108個、または少なくとも4×108個もしくは少なくとも約4×108個の前記細胞を含む、態様1~17のいずれかの方法。
19.前記インプット組成物が、前記細胞1個あたり、少なくとも1感染単位(IU)もしくは約1IU、少なくとも2IUもしくは少なくとも約2IU、少なくとも3IUもしくは少なくとも約3IU、少なくとも4IUもしくは少なくとも約4IU、少なくとも5IUもしくは少なくとも約5IU、少なくとも10IUもしくは少なくとも約10IU、少なくとも20IUもしくは少なくとも約20IU、少なくとも30IUもしくは少なくとも約30IU、少なくとも40IUもしくは少なくとも約40IU、少なくとも50IUもしくは少なくとも約50IU、または少なくとも60IUもしくは少なくとも約60IUのウイルス粒子を含むか;あるいは
前記インプット組成物が、前記細胞1個あたり、1感染単位(IU)もしくは約1IU、2IUもしくは約2IU、3IUもしくは約3IU、4IUもしくは約4IU、5IUもしくは約5IU、10IUもしくは約10IU、20IUもしくは約20IU、30IUもしくは約30IU、40IUもしくは約40IU、50IUもしくは約50IU、または60IUもしくは約60IUのウイルス粒子を含む;
態様1~18のいずれかの方法。
20.前記インキュベーション中の任意の一時点における前記キャビティ内に存在する前記インプット組成物の最大総液体体積が、該キャビティ内の前記細胞の総体積の多くても2倍、多くても10倍、もしくは多くても100倍であるか、または前記インキュベーションの経過にわたる前記インプット組成物の平均体積が、前記キャビティ内の細胞の総体積の多くても2、10、もしくは100倍である、態様1~19のいずれかの方法。
21.前記キャビティ内に存在する前記インプット組成物の、前記インキュベーション中の任意の一時点における最大体積または該インキュベーションの経過にわたる平均体積が、前記側壁の内部表面および/または前記細胞の表面層における1000gもしくは約1000gまたは2000gもしくは約2000gの力での前記チャンバーの回転中に該キャビティの内部表面上に形成される該細胞の単層の体積の、多くても、2倍もしくは約2倍、10倍もしくは約10倍、25倍もしくは約25倍、50倍もしくは約50倍、100倍もしくは約100倍、500倍もしくは約500倍、または1000倍もしくは約1000倍である、態様1~20のいずれかの方法。
22.前記インプット組成物の液体体積が、多くても20mL、多くても40mL、多くても50mL、多くても70mL、多くても100mL、多くても120mL、多くても150mL、または多くても200mLである、態様1~21のいずれかの方法。
23.前記インプット組成物が、前記インキュベーションの少なくとも一部の間に、前記内部キャビティの容積の全てまたは実質的に全てを占有する、態様1~22のいずれかの方法。
24.前記チャンバー内での前記インキュベーションの少なくとも一部の間または該チャンバーの前記回転中に、前記インプット組成物の液体体積が、該チャンバーの前記内部キャビティの容積の一部のみを占有し、該少なくとも一部の間または該回転中の該キャビティの容積が気体をさらに含み、該気体が、該インキュベーションの前または間に前記少なくとも1つの開口部を介して該キャビティ内に取り入れられる、態様1~23のいずれかの方法。
25.前記遠心チャンバーが可動部材を含み、該遠心チャンバー内への気体の取り入れによって、該チャンバーの前記内部キャビティの容積を増加させるように該可動部材の移動がもたらされ、それによって、該遠心チャンバーの回転中に該キャビティ内に存在する前記インプット組成物の、該キャビティの内部表面積1平方インチあたりの総液体体積が、該チャンバー内に気体が存在しない場合に比べて減少する、態様24の方法。
26.形質導入方法であって、
a)少なくとも1×109μm2もしくは少なくとも約1×109μm2、または少なくとも1×1010μm2もしくは少なくとも約1×1010μm2の内部表面積を有する遠心チャンバーの内部キャビティに、
i)細胞と、組換えウイルスベクターを含むウイルス粒子とを含む、インプット組成物であって、
該インプット組成物中の細胞の数が少なくとも1×107個であり、かつ
該細胞1個あたり少なくとも1感染単位(IU)もしくは約1IUで該ウイルス粒子が該インプット組成物中に存在し、かつ
該インプット組成物が、該遠心チャンバーの該内部キャビティの最大容積より小さい液体体積を含む、前記インプット組成物;および
ii)最大で、該遠心チャンバーの該内部キャビティの最大容積の残りまでの体積の気体;
を供給する段階、ならびに
b)該インプット組成物をインキュベーションする段階であって、該インキュベーションの少なくとも一部が、該遠心チャンバーを回転させながら、該遠心チャンバーの該内部キャビティ内で実施される、段階
を含み、
該方法が、該ウイルスベクターを形質導入された複数の該細胞を含むアウトプット組成物を生成する、前記形質導入方法。
27.前記細胞の数が、少なくとも、50×106個もしくは約50×106個、100×106個もしくは約100×106個、または200×106個もしくは約200×106個であり;かつ/あるいは
前記ウイルス粒子が、少なくとも、1.6IU/細胞、1.8IU/細胞、2.0IU/細胞、2.4IU/細胞、2.8IU/細胞、3.2IU/細胞、または3.6IU/細胞、4.0IU/細胞、5.0IU/細胞、6.0IU/細胞、7.0IU/細胞、8.0IU/細胞、9.0IU/細胞、または10.0IU/細胞で存在する;
態様26の方法。
28.前記インプット組成物の液体体積が、200mL以下、100mL以下、50mL以下、もしくは20mL以下であり;かつ/または
回転中の前記キャビティの内部表面積もしくは該キャビティの最大内部表面積に対する前記インプット組成物の液体体積が、多くても50%、多くても40%、多くても30%、多くても20%、もしくは多くても10%である;
態様26または27の方法。
29.前記気体の体積が、最大200mL、最大180mL、最大140mL、または最大100mLである、態様26~28のいずれかの方法。
30.前記回転が、
前記キャビティの前記側壁の内部表面または前記細胞の表面層における、少なくとも、600gもしくは約600g、800gもしくは約800g、1000gもしくは約1000g、1100gもしくは約1100g、1500gもしくは約1500g、1600gもしくは約1600g、2000gもしくは約2000g、2400gもしくは約2400g、2600gもしくは約2600g、2800gもしくは約2800g、3000gもしくは約3000g、3200gもしくは約3200g、または3600gもしくは約3600gの相対遠心力での回転
である、態様26~29のいずれかの方法。
31.形質導入方法であって、
細胞と、組換えウイルスベクターを含むウイルス粒子とを含むインプット組成物をインキュベーションする段階を含み、
該インキュベーションする段階の少なくとも一部が回転条件下で行われ、それによって、該ウイルスベクターを形質導入された複数の該細胞を含むアウトプット組成物が生成され、
該インプット組成物が、約20mLもしくは20mLを上回る、約50mLもしくは50mLを上回る、少なくとも100mL、または少なくとも150mLである体積を含み、かつ/あるいは該インプット組成物が、少なくとも1×108個の細胞を含み;かつ
該回転条件が、該細胞の表面層における、約800gを上回る、約1000gを上回る、または約1500gを上回る相対遠心力を含む、
前記形質導入方法。
32.前記アウトプット組成物中の前記細胞のうちの少なくとも25%もしくは少なくとも50%が、前記ウイルスベクターを形質導入されており;かつ/または
前記アウトプット組成物中の前記細胞のうちの少なくとも25%もしくは少なくとも50%が、前記ウイルスベクター内に含まれた異種核酸の産物を発現する;
態様31の方法。
33.前記インキュベーションが遠心チャンバーのキャビティ内で行われ、かつ前記インプット組成物中の前記細胞の数が、前記回転中に該キャビティの内部表面上に単層または二層を形成するのに十分な該細胞の数またはそれに近い数である、態様31または32の方法。
34.前記遠心チャンバーが、端壁、該端壁から延びる実質的に剛性の側壁、および少なくとも1つの開口部を含み、該側壁の少なくとも一部が前記内部キャビティを取り囲み、かつ該少なくとも1つの開口部が、該内部キャビティ内への流体の取り入れおよび該キャビティからの流体の圧出を可能にすることができる、態様33の方法。
35.前記遠心チャンバーが可動部材をさらに含み、かつ前記内部キャビティが、前記端壁、前記実質的に剛性の側壁、および該可動部材によって画定される容積可変のキャビティであり、該可動部材が、該キャビティの内部容積を変動させるように該チャンバー内を移動することができる、態様34の方法。
36.前記キャビティ内の前記インプット組成物が、前記インキュベーションの少なくとも一部の間、少なくとも20mLまたは少なくとも50mLの液体体積、および該キャビティの内部表面積1cm2あたり100万個または約100万個の細胞を含む、態様1~30または33~35のいずれかの方法。
37.前記遠心チャンバーの外でかつ/または回転なしでインキュベーションのさらなる一部が行われ、該さらなる一部が、該チャンバー内でかつ/または回転ありで行われる前記少なくとも一部の後で行われる、態様1~36のいずれかの方法。
38.前記遠心チャンバーの前記キャビティ内で行われる前記インキュベーションの前記少なくとも一部および/または前記インキュベーションの前記さらなる一部が、37℃±2℃または約37℃±2℃で実施される、態様1~37のいずれかの方法。
39.前記インキュベーションが、該インキュベーション中に少なくとも複数の前記細胞を容器に移す段階をさらに含み、かつ該インキュベーションの前記さらなる一部が該容器内で実施される、態様37または38の方法。
40.前記移す段階が閉鎖システム内で実施され、前記遠心チャンバーおよび前記容器が該閉鎖システムに組み込まれている、態様39の方法。
41.前記インキュベーションが、境界値を含めて、1もしくは約1時間~96もしくは約96時間、4もしくは約4時間~72もしくは約72時間、8もしくは約8時間~48もしくは約48時間、12もしくは約12時間~36もしくは約36時間、6もしくは約6時間~24もしくは約24時間、36もしくは約36時間~96もしくは約96時間行われるか;または
前記インキュベーションの前記さらなる一部が、境界値を含めて、1もしくは約1時間~96もしくは約96時間、4もしくは約4時間~72もしくは約72時間、8もしくは約8時間~48もしくは約48時間、12もしくは約12時間~36もしくは約36時間、6もしくは約6時間~24もしくは約24時間、36もしくは約36時間~96もしくは約96時間行われる;
態様37~40のいずれかの方法。
42.前記インキュベーションが、最長48時間、最長36時間、もしくは最長24時間行われるか;または
前記インキュベーションの前記さらなる一部が、最長48時間、最長36時間、もしくは最長24時間行われる;
態様37~41のいずれかの方法。
43.前記インキュベーションが、刺激剤の存在下で実施され;かつ/または
前記インキュベーションの前記さらなる一部が、刺激剤の存在下で実施される;
態様37~41のいずれかの方法。
44.前記インキュベーションが、最長24時間行われ;
前記組成物中の細胞が、24時間を上回る時間、30℃を上回る温度には供されず;かつ/または
該インキュベーションが、刺激剤の存在下では実施されない;
態様37~41のいずれかの方法。
45.前記刺激剤が、T細胞、CD4+ T細胞、および/またはCD8+ T細胞の増殖を誘導することができる作用物質である、態様43または44の方法。
46.前記刺激剤が、IL-2、IL-15、およびIL-7の中から選択されるサイトカインである、態様43~45のいずれかの方法。
47.形質導入された細胞を含有する前記アウトプット組成物が、少なくとも1×107個もしくは少なくとも約1×107個の細胞または少なくとも5×107個もしくは少なくとも約5×107個の細胞を含む、態様1~46のいずれかの方法。
48.形質導入された細胞を含有する前記アウトプット組成物が、少なくとも、1×108個もしくは約1×108個、2×108個もしくは約2×108個、4×108個もしくは約4×108個、6×108個もしくは約6×108個、8×108個もしくは約8×108個、または1×109個もしくは約1×109個の細胞を含む、態様47の方法。
49.前記細胞がT細胞である、態様47または48の方法。
50.前記T細胞が、分画されていないT細胞、単離されたCD4+ T細胞、および/または単離されたCD8+ T細胞である、態様49の方法。
51.前記アウトプット組成物中の少なくとも複数の前記細胞のうちの1つもしくは複数の細胞の宿主ゲノムへの、および/あるいは該アウトプット組成物中の該細胞のうちの少なくとも20%もしくは少なくとも約20%、または少なくとも30%もしくは少なくとも約30%、または少なくとも40%もしくは少なくとも約40%の細胞の宿主ゲノムへの、前記ウイルスベクターの組み込みをもたらす、態様1~50のいずれかの方法。
52.前記インプット組成物中の前記細胞のうちの少なくとも2.5%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも8%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、もしくは少なくとも75%が、前記方法によって前記ウイルスベクターを形質導入され;かつ/または
前記アウトプット組成物中の前記細胞のうちの少なくとも2.5%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも8%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、もしくは少なくとも75%が、前記ウイルスベクターを形質導入され;かつ/または
前記アウトプット組成物中の前記細胞のうちの少なくとも2.5%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも8%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、もしくは少なくとも75%が、前記ウイルスベクター内に含まれた異種核酸の産物を発現する;
態様1~51のいずれかの方法。
53.1細胞あたり約1IUまたは約2IUの比率でウイルスを含むインプット組成物に対して、前記方法が、該方法によって生成されるアウトプット組成物中の細胞のうちの少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、または少なくとも75%が前記組換えウイルスベクターを含みかつ/または該ベクター内に含まれた組換え核酸の産物を発現する、前記アウトプット組成物を産生することができる、態様1~52のいずれかの方法。
54.前記アウトプット組成物中の、前記組換えウイルスベクターを含有する前記細胞もしくは該ウイルスベクターが組み込まれている該細胞の全てにおける、該組換えウイルスベクターの平均コピー数が、多くても約10、多くても約5、多くても約2.5、もしくは多くても約1.5であるか;または
前記アウトプット組成物中の前記細胞における、前記ベクターの平均コピー数が、多くても約2、多くても約1.5、もしくは多くても約1である;
態様1~53のいずれかの方法。
55.前記遠心チャンバーが閉鎖システムに組み込まれており、該閉鎖システムが、該チャンバーと、少なくとも1つのコネクタを介して前記少なくとも1つの開口部に機能的に連結された少なくとも1本の配管ラインとを含み、該システムの少なくとも1つの構成において、前記キャビティと該少なくとも1本の配管ラインとの間を液体および気体が移動することができる、態様1~30および33~54のいずれかの方法。
56.前記少なくとも1本の配管ラインが、一連の配管ラインを含み;
前記少なくとも1つのコネクタが、複数のコネクタを含み;かつ
前記閉鎖システムが、該一連の配管ラインに機能的に連結された少なくとも1つの容器をさらに含み、この接続関係によって、該一連の配管ラインを介して該少なくとも1つの容器と前記少なくとも1つの開口部との間を液体および/または気体が通過することができる;
態様55の方法。
57.前記少なくとも1つのコネクタが、バルブ、ルアーポート、およびスパイクからなる群より選択されるコネクタを含む、態様55または56の方法。
58.前記少なくとも1つのコネクタが回転式バルブを含む、態様55~57のいずれかの方法。
59.前記回転式バルブが、停止コックまたはマルチ回転式ポートである、態様58の方法。
60.前記少なくとも1つのコネクタが無菌コネクタを含む、態様55~59のいずれかの方法。
61.前記少なくとも1つの容器が、バッグ、バイアル、およびシリンジからなる群より選択される容器を含む、態様56~60のいずれかの方法。
62.前記少なくとも1つの容器が、希釈液容器、廃液容器、産物回収容器、および/またはインプット産物容器を含む、態様56~61のいずれかの方法。
63.前記少なくとも1つの容器が、それぞれが前記一連の配管ラインおよび前記少なくとも1つの開口部を介して前記キャビティに接続された、前記ウイルスベクター粒子と前記細胞とを含む少なくとも1つのインプット容器、廃液容器、産物容器、および少なくとも1つの希釈液容器を含む、態様56~62のいずれかの方法。
64.前記方法が、前記インキュベーションの前および/または間に、前記キャビティ内への前記インプット組成物の取り入れを実施する段階をさらに含み、該取り入れが、前記少なくとも1つのインプット容器から前記少なくとも1つの開口部を通じて前記キャビティ内へと液体が流入することを含む、態様63の方法。
65.少なくとも1つの容器が、前記インキュベーション中の少なくとも一時点の前および/もしくは間に気体を含む容器をさらに含み、かつ/または前記閉鎖システムが、前記遠心チャンバーの前記内部キャビティに気体を取り入れ得る微生物フィルターをさらに含み、かつ/または該閉鎖システムが、気体の取り入れを実施するためのシリンジポートを含有する、態様56~64のいずれかの方法。
66.前記方法が、前記インキュベーションの前および/または間に、無菌条件下での前記キャビティ内への気体の取り入れを提供するかまたは実施する段階を含み、該取り入れが、(a)気体を含む容器からの気体の流入、(b)微生物フィルターを介した、該閉鎖システムの外部にある環境からの気体の流入、または(c)前記シリンジポートにおいて該システムに接続されたシリンジからの気体の流入によって実施される、態様65の方法。
67.前記遠心チャンバーの前記内部キャビティ内への気体の取り入れを実施する段階が、該遠心チャンバーの該内部キャビティへの前記インプット組成物の取り入れを実施する段階と同時にまたは一緒に行われる、態様66の方法。
68.前記インプット組成物および気体が、前記遠心チャンバーの前記内部キャビティ内への前記インプット組成物および気体の前記取り入れの前に、該チャンバーの外で無菌条件下にて単一容器内で混ぜ合わされる、態様66または67の方法。
69.前記気体の取り入れを実施する段階が、前記キャビティ内への前記インプット組成物の取り入れを実施する段階とは別個に、同時にまたは逐次的のいずれかで行われる、態様68の方法。
70.前記気体の取り入れが、該気体を含む無菌密閉容器から、外部環境から微生物フィルターを通じて、または該気体を含むシリンジから、気体が流入することを可能にするまたは引き起こすことによって実施される、態様66~69のいずれかの方法。
71.前記気体が空気である、態様24~70のいずれかの方法。
72.前記インキュベーションが連続的プロセスの一部であり、前記方法が、
該インキュベーションの少なくとも一部の間、前記チャンバーの回転中に前記キャビティ内への前記インプット組成物の連続的取り入れを実施する段階;および
該インキュベーションの一部の間、該チャンバーの回転中に前記少なくとも1つの開口部を通じての該キャビティからの液体の連続的圧出を実施する段階;
をさらに含む、態様1~71のいずれかの方法。
73.前記インキュベーションの一部の間、前記チャンバーの回転中に前記キャビティ内への気体の連続的取り入れを実施する段階;および/または
前記インキュベーションの一部の間、前記キャビティからの気体の連続的圧出を実施する段階
をさらに含む、態様72の方法。
74.前記方法が、前記キャビティからの前記液体の圧出および前記気体の圧出を含み、それぞれが、異なる容器内へと同時にまたは逐次的に圧出される、態様73の方法。
75.前記連続的取り入れおよび前記連続的圧出の少なくとも一部が同時に行われる、態様72~74のいずれかの方法。
76.前記インキュベーションが半連続的プロセスの一部であり、前記方法が、
該インキュベーションの前に、前記少なくとも1つの開口部を通じて前記キャビティ内への前記インプット組成物および任意で気体の取り入れを実施する段階;
該インキュベーションの後に、該キャビティからの液体および/または任意で気体の圧出を実施する段階;
該内部キャビティ内への、細胞と、組換えウイルスベクターを含有する前記ウイルス粒子とを含む別のインプット組成物、および任意で気体の取り入れを実施する段階;ならびに
該内部キャビティ内で該別のインプット組成物をインキュベーションする段階;
をさらに含み、
該方法が、該ウイルスベクターを形質導入された該別のインプット組成物の複数の細胞を含む別のアウトプット組成物を生成する、
態様1~75のいずれかの方法。
77.前記キャビティ内への前記インプット組成物の供給または取り入れが、
前記細胞と、前記組換えウイルスベクターを含有する前記ウイルス粒子とを含む単一組成物の取り入れ;または
前記細胞を含む組成物と、前記組換えウイルスベクターを含有する前記ウイルス粒子を含む別個の組成物との取り入れであって、これらの組成物が混合されて該インプット組成物の取り入れがもたらされる、取り入れ;
を含む、態様64~76のいずれかの方法。
78.前記インキュベーションの前および/または間に前記遠心チャンバーの回転を実施する段階;
該インキュベーションの後に前記キャビティから前記廃液容器内への液体の圧出を実施する段階;
前記少なくとも1つの開口部を介して前記少なくとも1つの希釈液容器から該キャビティ内への液体の圧出を実施し、かつ該キャビティの内容物の混合を実施する段階;ならびに
該キャビティから前記産物容器内への液体の圧出を実施する段階であって、それによって、前記ウイルスベクターを形質導入された細胞が該産物容器内へと移される、段階
をさらに含む、態様64~77のいずれかの方法。
79.(a)前記インキュベーションの前に、遠心チャンバーの内部キャビティ内で、前記細胞を含む生物学的サンプルを洗浄する段階;ならびに/または
(b)生物学的サンプルから前記細胞を単離する段階であって、該単離する段階の少なくとも一部が、前記インキュベーションの前に遠心チャンバーの内部キャビティ内で実施される、段階;ならびに/または
(c)前記インキュベーションの前および/もしくは間に細胞を刺激する段階であって、該刺激する段階が、該細胞を刺激条件に曝露することを含み、それによって前記インプット組成物の細胞の増殖が誘導され、該刺激する段階の少なくとも一部が遠心チャンバーの内部キャビティ内で実施される、段階;
をさらに含む、態様1~78のいずれかの方法。
80.前記単離する段階が、免疫親和性に基づく選択を行う段階を含む、態様79の方法。
81.前記刺激条件が、TCR複合体の1つまたは複数の構成要素の1つまたは複数の細胞内シグナル伝達ドメインを活性化することができる作用物質の存在を含む、態様79または80の方法。
82.前記作用物質が、TCR複合体のメンバーに特異的に結合する第一の作用物質、およびT細胞共刺激分子に特異的に結合する第二の作用物質を含む、態様81の方法。
83.前記第一の作用物質が、CD3に特異的に結合し;かつ/または
前記共刺激分子が、CD28、CD137(4-1-BB)、OX40、もしくはICOSからなる群より選択される;
態様82の方法。
84.前記第一および第二の作用物質が、抗体を含みかつ/または固体支持体の表面に存在する、態様83の方法。
85.前記(a)および/または(b)における生物学的サンプルが、全血サンプル、バフィーコートサンプル、末梢血単核細胞(PBMC)サンプル、分画されていないT細胞サンプル、リンパ球サンプル、白血球サンプル、アフェレーシス産物、または白血球アフェレーシス産物であるか、またはそれを含む、態様79~84のいずれかの方法。
86.前記方法によって形質導入された細胞を、遠心チャンバーの内部キャビティ内で、薬学的に許容されるバッファー中で製剤化する段階をさらに含み、それによって、製剤化された組成物が産生される、態様1~85のいずれかの方法。
87.1つまたは複数の容器への前記製剤化された組成物の圧出を実施する段階をさらに含む、態様86の方法。
88.前記製剤化された組成物の圧出を実施する段階が、前記1つまたは複数の容器のうちの1つまたはそれぞれへの、単回単位用量で存在する多数の細胞の圧出を実施する段階を含む、態様87の方法。
89.前記遠心チャンバーのキャビティのそれぞれが、他の段階のうちの1つもしくは複数において、ならびに/または、細胞とウイルス粒子とを含有するインプット組成物のインキュベーションおよび/もしくは回転のプロセスにおいて採用される遠心のキャビティと同じであるかまたは異なる、態様79~88のいずれかの方法。
90.前記遠心チャンバーのそれぞれが閉鎖システムに組み込まれており、該閉鎖システムが、該チャンバーと、少なくとも1つのコネクタを介して前記少なくとも1つの開口部に機能的に連結された少なくとも1本の配管ラインとを含み、該システムの少なくとも1つの構成において、前記キャビティと該少なくとも1本の配管ラインとの間を液体および気体が移動することができる、態様79~89のいずれかの方法。
91.前記インプット組成物中の前記細胞が初代細胞である、態様1~90のいずれかの方法。
92.前記インプット組成物中の前記細胞が浮遊細胞を含み;
前記インプット組成物中の前記細胞が白血球を含み;かつ/または
前記インプット組成物中の前記細胞がT細胞もしくはNK細胞を含む、
態様1~91のいずれかの方法。
93.前記インプット組成物中の前記細胞が、分画されていないT細胞、単離されたCD8+ T細胞、または単離されたCD4+ T細胞である、態様1~92のいずれかの方法。
94.前記インプット組成物中の前記細胞がヒト細胞である、態様1~93のいずれかの方法。
95.前記遠心チャンバーが、前記インキュベーション中にセンサーおよび制御回路と関連付けられ、該センサーが、前記可動部材の位置をモニターすることができ、該制御回路が、該センサーへのおよび該センサーからの情報を受信および送信することができ、かつ該可動部材の移動を引き起こすことができ、該制御回路が、該インキュベーション中に該チャンバーの回転を引き起こすことができる遠心機とさらに関連付けられる、態様7~94のいずれかの方法。
96.前記チャンバーが前記可動部材を含み、かつ前記遠心チャンバーが、前記インキュベーション中に遠心機内に位置しかつセンサーおよび制御回路と関連付けられ、該センサーが、該可動部材の位置をモニターすることができ、該制御回路が、該センサーからの情報を受信および送信することができ、かつ該可動部材の移動、前記1本または複数本の配管ラインを介した前記キャビティへのおよび該キャビティからの液体および/または気体の取り入れおよび圧出、ならびに該遠心機による該チャンバーの回転を引き起こすことができる、態様7~95のいずれかの方法。
97.前記チャンバー、前記制御回路、前記遠心機、および前記センサーが、前記インキュベーション中にキャビネット内に収納されている、態様95または96の方法。
98.前記組換えウイルスベクターが組換え受容体をコードし、それによって該組換え受容体が前記アウトプット組成物の細胞によって発現される、態様1~97のいずれかの方法。
99.前記組換え受容体が組換え抗原受容体である、態様98の方法。
100.前記組換え抗原受容体が機能的非T細胞受容体である、態様99の方法。
101.前記機能的非T細胞受容体がキメラ抗原受容体(CAR)である、態様100の方法。
102.前記組換え抗原受容体がトランスジェニックT細胞受容体(TCR)である、態様99の方法。
103.前記組換え受容体が、リガンドに特異的に結合する細胞外部分と、活性化ドメインおよび共刺激ドメインを含有する細胞内シグナル伝達部分とを含む、キメラ受容体である、態様99の方法。
104.前記細胞が、ヒト対象から得られた初代ヒトT細胞を含み;かつ
前記インキュベーションの前および/もしくは前記形質導入の完了前に、ならびに/または前記方法が製剤化を含む場合には該製剤化の前に、該初代ヒトT細胞が、1時間を上回る、6時間を上回る、24時間を上回る、または48時間を上回る時間、30℃を上回る温度で該対象の外部に存在していないか;あるいは
前記インキュベーションの前および/もしくは前記形質導入の完了前に、ならびに/または前記方法が製剤化を含む場合には該製剤化の前に、該初代ヒトT細胞が、CD3に特異的な抗体および/またはCD28に特異的な抗体および/またはサイトカインの存在下で、1時間を上回る、6時間を上回る、24時間を上回る、または48時間を上回る時間インキュベーションされていない;
態様1~103のいずれかの方法。
105.(a)混合条件下にて遠心チャンバーの内部キャビティ内で選択試薬と初代細胞とをインキュベーションする段階であって、それによって複数の該初代細胞が該選択試薬に結合する、段階;および
(b)該選択試薬への結合性に基づいて、該複数の初代細胞を該初代細胞のうちの別の1つまたは複数から分離する段階であって、それによって該選択試薬への結合性に基づいて該初代細胞を濃縮する、段階;
を含む選択のための方法であって、
該遠心チャンバーが回転軸の周りを回転可能であり、かつ該内部キャビティが、少なくとも50、少なくとも100、または少なくとも200mLの最大容積を有する、
前記選択のための方法。
106.刺激剤と初代細胞とを、該刺激剤が、複数の該初代細胞によって発現される分子に結合しかつ該複数の細胞が活性化または刺激される条件下で、インキュベーションする段階を含む細胞を刺激するための方法であって、
該インキュベーションの少なくとも一部が、混合条件下で遠心チャンバーの内部キャビティ内で行われ、
該遠心チャンバーが回転軸の周りを回転可能であり、かつ
該内部キャビティが、少なくとも50、少なくとも100、または少なくとも200mLの最大容積を有する、
前記細胞を刺激するための方法。
107.前記チャンバーが、端壁、該端壁から延びる実質的に剛性の側壁、および少なくとも1つの開口部をさらに含み、該側壁の少なくとも一部が前記内部キャビティを取り囲み、かつ該少なくとも1つの開口部が、該内部キャビティ内への液体の取り入れおよび該キャビティからの液体の圧出を可能にすることができる、態様105または106の方法。
108.態様1~107のいずれかの方法によって産生された形質導入された細胞を含む、組成物。
109.前記細胞が、初代細胞であり;かつ/またはヒト細胞であり;かつ/または白血球を含み;かつ/またはT細胞を含み;かつ/またはNK細胞を含む、態様108の組成物。
110.少なくとも、5×107個もしくは約5×107個、1×108個もしくは約1×108個、2×108個もしくは約2×108個、4×108個もしくは約4×108個、6×108個もしくは約6×108個、8×108個もしくは約8×108個、または1×109個もしくは約1×109個の細胞を含む、態様108または109にの組成物。
111.養子T細胞療法において使用するための治療上有効な数の細胞を含む、態様106~110のいずれかの組成物。
112.前記細胞がT細胞であり;かつ
形質導入の後、前記組成物中の前記細胞が刺激剤の存在下での細胞増殖に供されず、かつ/または該細胞が30℃を上回る温度で24時間を上回る時間インキュベーションされず、または該組成物がサイトカインを含有せず、または該組成物が、CD3もしくはTCR複合体に特異的に結合する刺激剤を含有しない、
態様106~111のいずれかの組成物。
113.少なくとも1×107個または少なくとも5×107個のT細胞を含む組成物であって、
該細胞の少なくとも複数が、組換えウイルスベクターを形質導入されているか、または組換え抗原受容体もしくは遺伝子操作された抗原受容体を発現し;
形質導入後に、該組成物中の該細胞が、刺激剤の存在下での細胞増殖に供されておらず;かつ/または
形質導入後に、該細胞が、30℃を上回る温度で24時間を上回る時間インキュベーションされていない;
前記組成物。
114.少なくとも1×107個または少なくとも5×107個の初代ヒトT細胞を含む組成物であって、該細胞の少なくとも複数が、組換えウイルスベクターを形質導入されているか、または組換え抗原受容体もしくは遺伝子操作された抗原受容体を発現し、該組成物中の該T細胞のうちの少なくとも、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%が、CD69および/またはTGF-β-IIの高発現を含む、前記組成物。
115.前記組成物中の前記T細胞のうちの前記少なくとも、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%が、CD62Lの表面発現を含まず、かつ/またはCD25、ICAM、GM-CSF、IL-8、および/もしくはIL-2の高発現を含む、態様114の組成物。
116.少なくとも、1×108個、2×108個、4×108個、6×108個、8×108個、または1×109個の細胞を含む、態様113~115のいずれかの組成物。
117.前記T細胞が、分画されていないT細胞、単離されたCD8+ T細胞、または単離されたCD4+ T細胞である、態様109~116のいずれかの組成物。
118.前記組成物中の前記細胞のうちの少なくとも、2.5%、5%、6%、8%、10%、20%、25%、30%、40%、50%、または75%が、前記ウイルスベクターを形質導入されている、態様108~117のいずれかの組成物。
119.前記ウイルスベクターが組換え受容体をコードし;かつ
前記組成物中の形質導入された細胞が、該組換え受容体を発現する;
態様108~118のいずれかの組成物。
120.前記組換え受容体が組換え抗原受容体である、態様119の組成物。
121.前記組換え抗原受容体が機能的非T細胞受容体である、態様120の組成物。
122.前記機能的非T細胞受容体がキメラ抗原受容体(CAR)である、態様121の組成物。
123.前記組換え受容体が、リガンドに特異的に結合する細胞外部分と、活性化ドメインおよび共刺激ドメインを含有する細胞内シグナル伝達部分とを含む、キメラ受容体である、態様119~122のいずれかの組成物。
124.前記組換え抗原受容体がトランスジェニックT細胞受容体(TCR)である、態様120の組成物。
125.前記組成物中の全細胞における、前記組換えウイルスベクターの平均コピー数が、多くても約10、多くても8、多くても6、多くても4、もしくは多くても約2であるか;または
前記組成物中の前記組換えウイルスベクターを形質導入された細胞における、該ベクターの平均コピー数が、多くても約10、多くても8、多くても6、多くても4、もしくは多くても約2である
態様110~124のいずれかの組成物。
126.薬学的に許容される賦形剤を含む、態様110~125のいずれかの組成物。
127.1つまたは複数の容器を含む製品であって、該1つまたは複数の容器が、集合的に、態様113~126のいずれかの組成物を含有する、前記製品。
128.前記1つまたは複数の容器が、2つ以上または3つ以上のバッグを含み、かつ組成物が、薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、態様127の製品。
129.疾患または病状を有する対象に、態様110~126のいずれかの組成物を投与する段階を含む、治療方法。
130.前記対象において、前記組成物中の形質導入されたT細胞が、形質導入後に刺激剤の存在下での細胞増殖に供されておりかつ/または30℃を上回る温度で24時間を上回る時間インキュベーションされている組成物中の形質導入されたT細胞よりも、高いまたは長い増殖性および/または持続性を呈する、態様129の方法。
131.前記組換え受容体、キメラ抗原受容体、またはトランスジェニックTCRが、前記疾患または病状と関連する抗原に特異的に結合する、態様129または130の方法。
132.前記疾患または病状が、癌、および自己免疫性の疾患もしくは障害、または感染性疾患である、態様129~131のいずれかの方法。
133.少なくとも1×107個の細胞;および
1細胞あたり少なくとも1感染単位(IU)または少なくとも約1IUの、組換えウイルスベクターを含むウイルス粒子;
を含む組成物。
134.前記細胞が、少なくとも、50×106個もしくは約50×106個、100×106個もしくは約100×106個、または200×106個もしくは約200×106個の細胞を含み;かつ/あるいは
前記ウイルス粒子が、少なくとも、1.6IU/細胞、1.8IU/細胞、2.0IU/細胞、2.4IU/細胞、2.8IU/細胞、3.2IU/細胞、3.6IU/細胞、4.0IU/細胞、5.0IU/細胞、6.0IU/細胞、7.0IU/細胞、8.0IU/細胞、9.0IU/細胞、または10.0IU/細胞の量で前記組成物中に存在する;
態様133の組成物。
135.前記組成物の液体体積が、220mL以下、200mL以下、100mL以下、50mL以下、または20mL以下である、態様133または134の組成物。
136.前記細胞が初代細胞である、態様133~135のいずれかの組成物。
137.前記細胞がヒト細胞である、態様133~136のいずれかの組成物。
138.前記細胞が浮遊細胞を含み;
該細胞が白血球を含み;かつ/または
該細胞がT細胞もしくはNK細胞を含む;
態様133~137のいずれかの組成物。
139.前記細胞がT細胞であり、かつ該T細胞が、分画されていないT細胞、単離されたCD8+ T細胞、または単離されたCD4+ T細胞である、態様138の組成物。
140.前記ウイルスベクターが組換え受容体をコードする、態様133~139のいずれかの組成物。
141.前記組換え受容体が組換え抗原受容体である、態様140の組成物。
142.前記組換え抗原受容体が機能的非T細胞受容体である、態様141の組成物。
143.前記機能的非T細胞受容体がキメラ抗原受容体(CAR)である、態様142の組成物。
144.前記組換え受容体が、リガンドに特異的に結合する細胞外部分と、活性化ドメインおよび共刺激ドメインを含有する細胞内シグナル伝達部分とを含むキメラ受容体である、態様140~143のいずれかの組成物。
145.前記組換え抗原受容体がトランスジェニックT細胞受容体(TCR)である、態様141の組成物。
146.回転軸の周りを回転可能な遠心チャンバーであって、態様110~126のいずれかの組成物を含む内部キャビティを含む、前記遠心チャンバー。
147.回転軸の周りを回転可能な遠心チャンバーであって、(a)組換えウイルスベクターを形質導入された少なくとも5×107個の初代T細胞を含有する組成物;ならびに/または(b)少なくとも5×107個の初代T細胞と、組換えウイルスベクターを含有するウイルス粒子とを含有する組成物;を含む内部キャビティを含む、前記遠心チャンバー。
148.前記チャンバーが、端壁、該端壁から延びる実質的に剛性の側壁、および少なくとも1つの開口部をさらに含み、該側壁の少なくとも一部が前記内部キャビティを取り囲み、かつ該少なくとも1つの開口部が、該内部キャビティ内への液体の取り入れおよび該キャビティからの液体の圧出を可能にすることができる、態様146または147の遠心チャンバー。
149.前記キャビティ内の前記組成物が、少なくとも1×108個、2×108個、4×108個、6×108個、8×108個、または1×109個の細胞を含む、態様147または148の遠心チャンバー。
150.前記T細胞が、分画されていないT細胞、単離されたCD8+ T細胞、または単離されたCD4+ T細胞である、態様147または148の遠心チャンバー。
151.前記組成物中の前記細胞のうちの少なくとも、2.5%、5%、6%、8%、10%、20%、25%、30%、40%、50%、または75%が、ウイルスベクターを形質導入されている、態様147~150のいずれかの遠心チャンバー。
152.前記ウイルスベクターが組換え受容体をコードし;かつ
前記組成物中の細胞が該組換え受容体を発現する;
態様147~151のいずれかの遠心チャンバー。
153.前記組換え受容体が組換え抗原受容体である、態様151の遠心チャンバー。
154.前記組換え抗原受容体が機能的非T細胞受容体である、態様153の遠心チャンバー。
155.前記機能的非T細胞受容体がキメラ抗原受容体(CAR)である、態様154の遠心チャンバー。
156.前記組換え受容体が、リガンドに特異的に結合する細胞外部分と、活性化ドメインおよび共刺激ドメインを含有する細胞内シグナル伝達部分とを含むキメラ受容体である、態様151~155のいずれかの遠心チャンバー。
157.前記組換え抗原受容体がトランスジェニックT細胞受容体(TCR)である、態様153の遠心チャンバー。
158.前記組成物中の全細胞における、前記組換えウイルスベクターの平均コピー数が、多くても約10、多くても8、多くても6、多くても4、もしくは多くても約2であるか;または
前記組成物中の前記組換えウイルスベクターを形質導入された細胞における、該ベクターの平均コピー数が、多くても約10、多くても8、多くても6、多くても4、もしくは多くても約2である、態様147~157のいずれかの遠心チャンバー。
159.回転軸の周りを回転可能な遠心チャンバーであって、態様133~145のいずれかの組成物を含む内部キャビティを含む、前記遠心チャンバー。
160.前記チャンバーの前記内部キャビティの最大容積までの体積の気体をさらに含む、態様159の遠心チャンバー。
161.前記気体が空気である、態様160の遠心チャンバー。
162.前記チャンバーが、回転軸の周りを回転可能であり、かつ端壁、該端壁から延びる実質的に剛性の側壁、および少なくとも1つの開口部を含み、該側壁の少なくとも一部が前記内部キャビティを取り囲み、かつ該少なくとも1つの開口部が、該内部キャビティ内への液体の取り入れおよび該キャビティからの液体の圧出を可能にすることができる、態様146~161のいずれかの遠心チャンバー。
163.前記側壁が曲線状である、態様146~162のいずれかの遠心チャンバー。
164.前記側壁が概ね円筒状である、態様163の遠心チャンバー。
165.前記少なくとも1つの開口部が、それぞれ前記取り入れおよび前記圧出を可能にすることができる入口および出口を含むか;または
前記少なくとも1つの開口部が、該取り入れおよび該圧出を可能にすることができる単一の出入口を含む;
態様162~164のいずれかの遠心チャンバー。
166.前記少なくとも1つの開口部が、前記チャンバーと同軸でありかつ前記端壁内に位置する、態様162~165のいずれかの遠心チャンバー。
167.前記遠心チャンバーが可動部材をさらに含み、かつ前記内部キャビティが、前記端壁、前記実質的に剛性の側壁、および該可動部材によって画定される容積可変のキャビティであり、該可動部材が、該キャビティの内部容積を変動させるように該チャンバー内を移動することができる、態様162~166のいずれかの遠心チャンバー。
168.前記可動部材がピストンであり;かつ/または
前記可動部材が、前記キャビティの内部容積を変動させるように前記チャンバー内を軸方向に移動することができる
態様167の遠心チャンバー。
169.前記キャビティの内部表面積が、少なくとも1×109μm2もしくは少なくとも約1×109μm2であり;
前記キャビティの内部表面積が、少なくとも1×1010μm2もしくは少なくとも約1×1010μm2であり;
前記端壁から延びる方向での前記剛性の壁の長さが、少なくとも約5cmであり;
前記端壁から延びる方向での前記剛性の壁の長さが、少なくとも約8cmであり;かつ/または
前記キャビティが、少なくとも1つの横断面において少なくとも約2cmの半径を含む;
態様162~168のいずれかの遠心チャンバー。
170.前記キャビティ内に存在する前記組成物の、該キャビティの内部表面積1平方インチあたりの液体体積(mL/sq.in.)が、0.5もしくは約0.5mL/sq.in.~5もしくは約5mL/sq.in.、0.5もしくは約0.5mL/sq.in.~2.5もしくは約2.5mL/sq.in.、0.5もしくは約0.5mL/sq.in.~1もしくは約1mL/sq.in.、1もしくは約1mL/sq.in.~5もしくは約5mL/sq.in.、1もしくは約1mL/sq.in.~2.5もしくは約2.5mL/sq.in.、または2.5もしくは約2.5mL/sq.in.~5もしくは約5mL/sq.in.である、態様159~169のいずれかの遠心チャンバー。
171.前記キャビティ内に存在する前記組成物の液体体積が、少なくとも、0.5mL/sq.in.、1mL/sq.in.、2.5mL/sq.in.、または5mL/sq.in.である、態様159~169のいずれかの遠心チャンバー。
172.態様147~158および162~171のいずれかの遠心チャンバーを含む、閉鎖システム。
173.1つまたは複数の容器に機能的に接続されたマルチウェイマニホールドをさらに含む、態様172の閉鎖システム。
174.態様159~171のいずれかの遠心チャンバーを含む、閉鎖システム。
175.無菌フィルターをさらに含む、態様174の閉鎖システム。
176.前記遠心チャンバーが最大8000gの速度で回転することができ、該遠心チャンバーが、該チャンバーを実質的に凹ませることも、曲げることも、壊すことも、別様に損傷をもたらすこともなしに、500gまで、600gまで、1000gまで、1100gまで、1200gまで、1400gまで、1500gまで、1600gまで、2000gまで、2500gまで、3000gまで、もしくは3200gまでの力に耐えることができ、かつ/または一方でそのような力の下で概ね円筒状の形状を実質的に保つ、態様172~175のいずれかの閉鎖システム。
177.前記アウトプット組成物中の前記T細胞のうちの少なくとも30%もしくは少なくとも約30%、少なくとも40%もしくは少なくとも約40%、少なくとも50%もしくは少なくとも約50%、少なくとも60%もしくは少なくとも約60%、少なくとも70%もしくは少なくとも約70%、少なくとも80%もしくは少なくとも約80%、または少なくとも80%もしくは少なくとも約80%が、CD69および/またはTGF-β-IIの高発現を含む、態様49の方法。
178.前記組成物中の前記T細胞のうちの少なくとも、30、40、50、60、70、80、または80%が、CD62Lの表面発現を含まず、かつ/またはCD25、ICAM、GM-CSF、IL-8、および/もしくはIL-2の高発現を含む、態様177の方法。
179.初代ヒト細胞を洗浄する段階;および
該細胞を撹拌条件下で選択試薬と共にインキュベーションする段階であって、該ヒト細胞の少なくとも複数が該選択試薬によって特異的に結合される、段階
を含む方法であって、
該洗浄する段階および該インキュベーションする段階が、閉鎖無菌システム内で行われ、かつ少なくとも一部が、該閉鎖無菌システムに組み込まれている遠心チャンバーの内部キャビティ内で行われる、前記方法。
180.前記方法の段階が、該方法を開始するようにというユーザーからの入力に基づいて、自動化された方式で行われ、該方法の段階の完了がもたらされる、態様179の方法。
181.混合条件下でのインキュベーションは、その少なくとも一部の間にチャンバーの回転をもたらす段階を含む、態様105、179、または180の方法。
182.その少なくとも一部の間に回転をもたらす段階は、インキュベーション中の複数の時期に回転をもたらすことを含み、該複数の時期は、チャンバーが回転しない1つまたは複数の静止時期によって分離される、態様181の方法。
183.回転をもたらす段階の複数の時期のうちの1つもしくは複数または全ては、1もは2秒間など、1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10秒間である、または約1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10秒間である期間であり、かつ/あるいは1つもしくは複数の静止時期のうちの1つもしくは複数または全ては、4、5、6、もしくは7秒間など、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10、もしくは15秒間である、または約3、4、5、6、7、8、9、もしくは10、もしくは15秒間である期間である、態様182の方法。
184.混合条件下でのインキュベーションは、少なくとも10分間もしくは少なくとも約10分間、少なくとも15分間もしくは少なくとも約15分間、少なくとも20分間もしくは少なくとも約20分間、少なくとも30分間もしくは少なくとも約30分間、または少なくとも45分間もしくは少なくとも約45分間、例えば30分間または約30分間行われる、態様105または179~183のいずれかの方法。
【実施例】
【0392】
以下の実施例は、単に例示目的のために含まれるものであり、本発明の範囲を限定することを意図したものものではない。
【0393】
実施例1:遠心チャンバー内での初代ヒトT細胞のウイルス形質導入
本実施例は、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする組換えウイルスベクターによる、単離された初代ヒトT細胞の形質導入を実証するものであり、形質導入は、本明細書において提供される態様に従って、実質的に剛性の円筒状の遠心チャンバー内で遠心力の下で開始した。T細胞は、ヒトアフェレーシス産物サンプルから陽性選択により単離した。
【0394】
得られた細胞を、抗CD3/CD28試薬を用いて活性化させた。形質導入の開始のために、活性化の後、細胞を様々な条件下で、抗CD19 CARをコードするウイルスベクターゲノムを含有するウイルス粒子と共にインキュベーションした。
【0395】
一方の組の条件(「Sepax」)下では、Sepax(登録商標)2プロセシングユニット(Biosafe SA)における遠心下にて、遠心チャンバー(Biosafe SA、A200)のキャビティ内で細胞をインキュベーションすることによって、形質導入を開始させた。単離された50×106個の細胞を含有する50mLの液体組成物と、ウイルスベクター粒子を含有する50mLの液体ストックとを、300mL移送パック内で混合した。Sepax(登録商標)システムを用いてチャンバーのピストンを移動させて、遠心チャンバーのキャビティ内に組成物を引き込んだ。100mLの空気も引き込まれ、それによってキャビティの体積は200mに増加し、キャビティの内部表面積に対するキャビティ内の液体の体積の比率が減少した。チャンバーを、Sepax(登録商標)2ユニットにおいて速度約4600rpmまで高めることによって、スピンした。この速度は、チャンバーのプロセシングキャビティの内部側壁における相対g力(相対遠心力(RCF))では約600に相当する。この速度でのスピンの持続時間は60分間であった。
【0396】
もう一方の組の条件(「VueLife」)に関しては、25×106個の細胞および同じウイルスベクター粒子ストックを体積比1:1で含有する組成物を、CI-50遠心アダプター内にて遠心バッグ中50mLでインキュベーションし、細胞に対するおおよその相対遠心力(RCF)約1000gで60分間スピンした。細胞に対する相対遠心力1000gでの遠心を可能にするために、遠心チャンバーに比べると容積の小さいバッグを用いた。対照には、「形質導入無し」サンプル(同じ細胞濃度で、遠心なしで、ウイルスなしで、24ウェルプレート内にて同じ時間インキュベーションされた)および「スピンなし」対照(「0×g」)サンプル(同じ細胞/ウイルス濃度で、遠心なしで、同じプレート内にて同じ時間インキュベーションされた)を含めた。各組の条件下で、ポリカチオンを含めた。スピン(または、相当する「スピンなし」インキュベーション)の後、組成物を37℃で24時間インキュベーションして、形質導入を完了させた。
【0397】
細胞を増殖させて、単離後6日目に、各条件での形質導入効率を、コードされたCARの表面発現(CARに特異的な抗体を用いたフローサイトメトリーによって検出される)を有するCD3
+ T細胞の割合(%)として算出した。結果は
図1Aに示されている。示されているように、回転下にて遠心チャンバーのキャビティ内で細胞をインキュベーションすることによって、遠心バッグ(VueLife(登録商標))内および対照と比較して、より大きな形質導入効率が形質導入の開始後に観察された。
図1Bは、6日間にわたる細胞増殖を示している(集団倍加の数によって表示される)。
【0398】
実施例2:表面積に対する液体体積の異なる比率における、遠心チャンバー内での初代ヒトT細胞の形質導入
遠心チャンバー内での形質導入の開始後の形質導入効率を、同じ細胞数およびウイルス感染単位、ならびにチャンバーのキャビティの内部表面積に対する液体体積の異なる比率を用いて、様々な条件下で評価した。細胞の調製および刺激は、概ね実施例1に記載されたとおりに行った。全ての形質導入開始条件は、IU:細胞比=2:1および総細胞数=100×106個を用いた。
【0399】
第一のサンプル(「5.1mL/sq.in.」、この条件では内部キャビティ表面1平方インチあたり5.1mLの液体が用いられたことを指す)に関しては、100×106個の細胞と、ウイルスベクター粒子を含有する100mLの液体組成物とを、100mLの液体体積中で混合した。第二のサンプル(「2.5mL/sq.in.」、この条件ではキャビティ表面1平方インチあたり2.5mLの液体が用いられたことを指す)に関しては、同じ数の細胞を有する50mLの液体組成物と、ウイルスベクター粒子を含有する50mLの液体組成物とを混合した。各場合において、遠心中の最終濃度10μg/mLのポリカチオンが含まれた。それぞれの液体組成物(および第二のサンプルに関しては、100mLの空気)を、チャンバーの液体保持キャビティ内に引き込んでインキュベーションした。各場合において、チャンバーを、内部キャビティ側壁におけるRCFでは約600gに相当する、約4600rpmでSepax(登録商標)2プロセシングユニットにおいて(加増することによって)60分間スピンした。次に、形質導入を完了させるために、サンプルを37度でさらに24時間インキュベーションした。
【0400】
細胞を増殖させ、単離後6日目に、上記のように検出されるCARの表面発現を有するCD3
+ T細胞の割合(%)を決定することによって、形質導入効率を算出した。結果は
図2に示されている。示されているように、同じ細胞数およびウイルス感染単位を用いた、遠心チャンバー内での形質導入の開始に関して、キャビティの内部表面積に対するキャビティ内の組成物の液体体積の比率がより低い場合に、より大きな形質導入効率が観察された。
【0401】
実施例3:遠心チャンバー内での初代ヒトT細胞の形質導入
別の調査は、キャビティ表面積に対する液体体積の様々な比率を用いた、提供される方法の態様に従った遠心チャンバー内での形質導入を含む、様々な条件下での形質導入効率を比較した。上記のように、アフェレーシス産物からヒトT細胞を単離して刺激した。
【0402】
刺激後、80×106個の細胞を、CARをコードするウイルスベクターによる形質導入のためのものを含む様々な条件下でインキュベーションした。全てのサンプルにポリカチオンが含まれた。
【0403】
遠心チャンバー内で形質導入が開始される条件に関しては、80×106個の細胞を、1細胞あたり2IUの比率で、ベクターを含有するウイルスと共にチャンバーのキャビティ内でインキュベーションした。Sepax(登録商標)2プロセシングシステムを用いて、キャビティの内部側壁におけるRCF約600gでチャンバーを遠心しながら、インキュベーションを60分間行った。一方の組の条件(「Sepax(0.1IU/細胞/mL)」、内部キャビティ表面1平方インチあたり0.5mLの液体体積を有する)下では、遠心に関して、細胞およびウイルスを総液体体積20mLでチャンバーのキャビティ内に引き込み;180mLの空気もキャビティ内に引き込んだ。もう一方の組の条件(「Sepax(0.01IU/細胞/mL)」、内部キャビティ表面1平方インチあたり5.1mLの液体体積を有する)下では、同じ細胞数およびウイルス感染単位を、液体体積200mLで引き込んだ。
【0404】
「プレート内で1000g」という別の条件下では、24ウェルプレート内にてウイルス(2IU/細胞)の存在下で、細胞におけるRCF約1000gで60分間遠心しながら、細胞の形質導入を開始させた。「形質導入無し」陰性対照(24ウェルプレート内にて、ウイルスまたは遠心なしでのインキュベーション)および「スピンなし」対照(同じ24ウェルプレート内にて、遠心なしでの、1細胞あたり2感染単位(IU)の比率におけるウイルスとのインキュベーション)も用いた。細胞を37℃で24時間インキュベーションして、形質導入を完了させた。
【0405】
実施例1および2に記載されたように、細胞を増殖させて、表面にCARを発現しているCD3
+ 細胞の割合(%)として、各サンプルに対する形質導入効率を算出した。結果は
図3に示されている。示されているように、対照条件と比較して、遠心チャンバー内および24ウェルプレート内における回転下での形質導入の開始後に、形質導入が観察された。遠心チャンバー内での形質導入開始に関しては、チャンバーキャビティの内部表面積に対する液体体積の比率がより低い場合に、より大きな形質導入効率が観察された。
【0406】
実施例4:遠心チャンバー内での形質導入後のベクターコピー数(VCN)の評価
実施例3に記載された調査における特定の条件下で開始された形質導入の後、組み込まれたウイルスベクターのコピー数(VCN)を評価した。細胞あたりのVCNを、リアルタイム定量的PCR(RT-qPCR)によって、SGF由来のレトロウイルスベクターについて決定した。形質導入後の組成物中の全細胞における平均VCN(「VCN/細胞」)、および別個に、形質導入された細胞(導入遺伝子を発現している細胞)のみにおける平均VCN(「VCN/CAR
+」)を、ウイルスゲノムに特異的なqPCRによって決定した。結果は
図4に提示されている。
図4に示されたグラフにおいて、「Sepax 20」という標識は、形質導入開始の間にチャンバーキャビティ内で液体体積20mLが用いられたことを指す;そのように標識された結果は、実施例3における「Sepax(0.1IU/細胞/mL)」と標識された同じ調査および条件(その場合、形質導入効率は25%であると決定された)からのものである。同様に、「Sepax 200」という標識は、形質導入開始の間にチャンバーキャビティ内で液体体積200mLが用いられたことを指す;そのように標識された結果は、実施例3における「Sepax(0.01IU/細胞/mL)」と標識された同じ調査および条件(その場合、形質導入効率は7%であると決定された)からのものである。示されているように、回転下で、円筒状の実質的に剛性の遠心チャンバー内で細胞の形質導入を開始することによって形質導入を開始した場合、形質導入効率の増加は、ベクターコピー数の増加と関連していなかった。本調査において、形質導入効率の増加をもたらす条件は、細胞あたりの平均ベクターコピー数の減少ももたらした。
【0407】
実施例5:Sepax(登録商標)2プロセシングシステムを用いた形質導入
例示的プロセスにおいて、単回使用のシステムおよびSepax(登録商標)2プロセシングシステム(Biosafe SA)に組み込まれている遠心チャンバー内にて、自動化された方式で、T細胞にウイルスベクター粒子を形質導入する。当該チャンバーは、Biosafe SAによって販売されている再生医療用の単回使用のプロセシングキットである使い捨ての無菌閉鎖システムに組み込まれている。当該キットは、
図5および/または
図7に示されている全体的な構成を有し、チャンバーを一連の容器に接続する一連の配管ラインを含むように構成される。チャンバー(1)は、出入口開口部(6)を含む端壁(13)、剛性の側壁(14)、およびピストン(2)を含み、それらは集合的にチャンバーの内部キャビティ(7)を画定する。当該システムは、アウトプットバッグ、廃液バッグ、インプットバッグ、および2つの希釈液バッグ(希釈液バッグ1および希釈液バッグ2)と標識された様々な容器、ならびに停止コックおよびバルブを含む様々なコネクタを含むように構成される。クランプ(5)は、配管ラインを介した、当該システムの種々の部分間の流れを遮断するために含まれる。一部の態様では、当該システムは、雌型ルアーロックキャップ(16)を有する雄型ルアーロック無菌フィルター(15)を含み、当該キャップが解放され/取り外されると、当該フィルターを通して無菌様式で気体(例えば空気)が取り込まれ得る。当該システムは、遠心機および構成要素収納用キャビネットを含むSepax(登録商標)2プロセシングユニットと関連付けして置かれる。
【0408】
例示的なプロセスにおいて、インプットバッグは、形質導入対象の細胞を含有する組成物を収容する。希釈液バッグ1は、ウイルスベクター粒子、ポリカチオン、および媒体を収容する。一部の態様では、バッグ内にはベクター粒子と共に空気が含まれる。例えば、代替的な態様では、空気および/または付加的な媒体を有する容器が、ウイルス組成物の代わりにかつ/またはそれに加えて、この位置で接続され得る。
【0409】
ユーザーは、ユーザーインターフェースを介して、新たなプログラムを実施する予定であることをプロセシングユニットに示し、初期体積(20~900mL)、最終体積(20~220mL)、中間体積(10~100mL)、希釈体積(50~220mL)、g力(100~1600または200~3200g)(チャンバーのプロセシングキャビティの内部側壁におけるRCF)、および遠心沈降時間(120~3600秒間)を含む様々なパラメーターをシステムに入力する。ユーザーは、プロセスを開始するようにということをシステムに示し、細胞が由来する対象についての識別情報を入力し、入力の完了をシステムに示し、それにより、システムは閉鎖システムキットの検査を行うように促される。
【0410】
閉鎖状態の各停止コックバルブ全てに関して、配管ラインと、希釈液バッグ1、廃液バッグ、インプットバッグ、および(細胞含有産物の回収用の)アウトプットバッグとの間の流体の移動をそれぞれ遮断しているクランプが開かれ、自動化されたプログラムが、ユーザーによるシステムとの通信によって開始される。
【0411】
それに応じて、システムは、自動化された方式で、バルブを開閉し、ピストンを移動させてキャビティの容積を変動させることによって、閉鎖システムの様々な構成要素間で液体および/または気体を移動させる。システムは、停止コックの状態を変え、それによって出入口開口部を介したインプットバッグとチャンバーの内部キャビティとの間の流れを可能にし、また、遠心チャンバー内でピストンを下げ、それによってキャビティの容積が増加し、チャンバーの端壁にある出入口を介してインプットバッグからプロセシングキャビティへと、ある体積(ユーザー規定の初期体積)の細胞およびウイルスベクター粒子の組成物が取り込まれる。
【0412】
システムは、遠心機にチャンバーを500gで120秒間スピンさせ、インプットバッグをリンスするためにキャビティからインプットバッグ内へと体積20mLをパージさせ、該体積をキャビティ内へと吸い戻させる。システムは、遠心機にチャンバーを500gで180秒間スピンさせ、遠心沈降させる。システムは、キャビティと廃液バッグとの間の流体および/または気体の流れを可能にするように停止コックの状態を変え、キャビティから廃液バッグ内への圧出を実施し、それによってユーザー規定の中間体積がキャビティ内に残る。
【0413】
システムは、停止コックを回転させて、配管と廃液バッグとの間の流体の移動を遮断する。システムは、チャンバーのキャビティへの、ウイルスベクター粒子含有液体組成物、および適用可能な場合には、希釈液バッグ1からの(集合的に、ユーザー規定の希釈液体積での)空気の取り入れを引き起こす。これらの段階は、キャビティ内への、形質導入対象の細胞とウイルスベクター粒子とを含有するインプット組成物、ならびに一部のケースでは空気の取り入れを集合的にもたらす。一部の態様では、キャビティの総容積は200mLであり、これには、例えば、液体体積200mL、または200mL未満の液体体積および残りのキャビティ容積(空気を含む)が含まれる。
【0414】
チャンバーの遠心は、ユーザー規定の遠心沈降時間の間、ユーザー規定のg力で行われ、ウイルスベクター粒子によるインプット組成物中の細胞の形質導入が開始される。別の態様では、遠心の前に、ある体積の空気および/または媒体が希釈液バッグ1および2の位置にある別のバッグからキャビティ内に引き込まれる。別の態様では、遠心の前に、例えばユーザーが、フィルター(15)と配管ラインとキャビティ(7)の間の流体の移動を遮断するクランプ(5)を開き、かつ雌型キャップ(16)を開放することによって、ルアーロックフィルター(15)を通じて空気が取り込まれ、チャンバー内に残っている空気が、環境からフィルターを通じて入ることが可能となる。一部の態様では、空気の移動は、例えばシステムに入力されたユーザー規定の付加的な空気インプット体積、および規定された空気体積で空気が取り入れられ得ることをユーザーがシステムに示すことに基づいて、システムによって自動化される。一部の態様では、空気は、存在する場合には、遠心後に、同様のプロセスによって、配管ラインおよびキャップなしのフィルター(15)を通じて解放される。
【0415】
システムによって促された場合、ユーザーは、希釈液バッグ1と配管ラインの間の流体の移動を遮断するクランプを閉鎖し、希釈液バッグ2と配管ラインの間の流体の移動を遮断するクランプを開く。システムは、適当な停止コックバルブの開栓、およびユーザー規定の最終体積に等しい、チャンバー内の総液体体積をもたらすために必要な量に等しい体積の流体を希釈液バッグ2からキャビティ内に取り込むピストンの移動によって、プロセシングキャビティへの希釈液バッグ2からの流体の移動を引き起こす。システムは、次いでキャビティ内の流体を60秒間混合させ、次いで内部キャビティ内の流体をアウトプットバッグへと移させ、それによってアウトプットバッグは、ウイルス粒子が結合しかつ/またはウイルスベクターに感染した細胞を有するアウトプット組成物を収容する。次に、これらの細胞を、概して、形質導入の完了のために、例えば37℃で例えば24時間インキュベーションする。
【0416】
実施例6:種々の遠心力における細胞の増殖および生存率の評価
特定の提供される態様に従ったチャンバー内での細胞の形質導入を開始するために用いられる遠心中の細胞に対する遠心力の効果を評価した。種々の遠心力に曝露した際の細胞増殖および細胞生存率を評価した。
【0417】
T細胞を、本質的には実施例1に記載されているように単離して刺激した。4日目に、それぞれが該細胞を個々に含有する様々なものを、Sepax(登録商標)2プロセシングユニット(Biosafe SA)における遠心チャンバーのキャビティ内に引き込み、様々な遠心力での遠心に供した。具体的には、Sepax(登録商標)2プロセシングシステムを用いて、単回使用のキットに組み込まれているチャンバー(A-200F)内にて、キャビティの側壁の内部表面におけるRCFそれぞれ約600g、1000g、および1600gを達成する、それぞれ約4600rpm、約6000rpm、および約7400rpmで、サンプルを60分間スピンした。対照として、細胞のサンプルを遠心機キャビティ内に別個に引き込み、しかしスピンしなかった(0g条件)。各場合において、スピン(または、スピンなしでのインキュベーション)の後、10日目まで、細胞を37℃、5% CO
2でインキュベーションした。プロセスを通じた様々な時点において、細胞増殖(0日目の細胞数と比較した集団倍加)および生存率をモニターした。具体的には、0、3、4、5、6、7、および10日目に、これらの測定を行った。結果は
図6に示されている。
【0418】
それぞれ
図6Aおよび
図6Bに示されているように、様々な速度での遠心は、10日間にわたる細胞増殖(「集団倍加」)または生存率に対して実質的な効果を有しないことが観察された。結果は、T細胞が、増殖または生存率の検出可能な実質的な変化なく、本明細書において提供される態様における形質導入開始に用いられる条件下での、細胞表面:液体界面における細胞に対するおおよそ同じ平均力に相当する、チャンバーのキャビティの側壁において測定される、少なくとも最大で1600gまたは約1600gの相対遠心力での遠心に耐性があり得ることを実証している。
【0419】
実施例7:概ね円筒状の遠心チャンバー内での形質導入開始を用いた形質導入プロセシング段階
本実施例は、実施例8~10に記載されている調査において用いられた形質導入プロセシング段階の全般的パラメーターを記載している。キメラ抗原受容体(CAR)をコードする組換えウイルスベクターによる細胞の形質導入を、提供される態様に従った遠心チャンバー内で開始した。
【0420】
CD4+/CD8+ T細胞を、ヒトアフェレーシス産物サンプルから陽性選択により単離した。単離した細胞を凍結保存し、37℃で融解した。融解した細胞を、形質導入の開始前に、IL-2(100IU/mL)の存在下でCD3/CD28ビーズを用いて37℃で72時間活性化した。一部のケースでは、アフェレーシス調製、単離、および/または活性化段階の様々な局面も、例えば実施例11に記載されているように、Sepax(登録商標)2システムと関連付けられた、提供される態様に従った遠心チャンバーのキャビティ内で行った。
【0421】
形質導入のための調製において、Biosafe SAによって販売されている再生医療用の無菌の単回使用使い捨てキットに組み込まれている遠心プロセシングチャンバー(1)(A-200F)を、本質的に
図7に図示されているように、Sepax(登録商標)2プロセシングユニットと関連付けして配置し、それによって当該チャンバーは当該ユニットによって遠心力および軸方向変位(内部キャビティの寸法の制御を可能にする)を提供されることができた(米国特許第6,733,433号)。
【0422】
形質導入を開始するために、以下の段階を実施した。
【0423】
遠心チャンバー内で活性化された細胞と無菌的に混合するためのウイルスベクター粒子を含有する組成物を生成するために、完全培地(5%ヒト血清、およびIL-2、ならびに10μg/mLという形質導入開始の間の最終濃度に十分な量のポリカチオンを補充した血清不含造血細胞培地を含有する)、表示された数または感染単位(IU)の相対数(例えば、1.8IU/細胞または3.6IU/細胞)におけるウイルスベクター、および適用可能な場合には空気を遠心バッグに無菌で移した。遠心バッグは最終的に、下記のように取り入れのために希釈液バッグの位置にてキットと無菌的に接続された。
【0424】
活性化された細胞を含有する培養バッグを、
図5および
図7に示されている「インプットバッグ」の位置にて、配管ラインを介して単回使用の使い捨てキットに無菌的に接続した。自動化された「希釈」プロトコールを、Sepax(登録商標)2プロセシングユニットで実施した。それによって、ピストンの移動を通じて、所望の数の細胞(記載されている個々の調査において表示される、例えば50×10
6個、100×10
6個、または200×10
6個の細胞)が、培養バッグから、チャンバーキャビティを経由して、
図5および
図7に示されている「アウトプットバッグ」の位置における産物バッグに移された。
【0425】
次に、チャンバー内への取り入れおよび形質導入のための、細胞およびウイルス(および、適用可能な場合には空気)の両方を有するインプット組成物を生成するために、所望の数の活性化された細胞を含有する産物バッグを、
図5および
図7に示されているインプットバッグの位置にて無菌的に接続した。ウイルス粒子、媒体、および任意で空気を含有する遠心バッグを、当該図に示されている希釈液バッグ1の位置にて無菌的に接続した。自動化された洗浄サイクルを、Sepax(登録商標)2で実施し、細胞を含有する組成物のチャンバーのキャビティ内への取り込み、細胞のペレット化、キャビティの内部壁におけるおおよそのRCF500gでのSepax(登録商標)2での組成物のスピン、および所望の体積(例えば10mL)を達成するために必要な適当な体積の液体の除去が促された。次に、ウイルス粒子、媒体、ポリカチオンおよび適用可能な場合には空気を含む、希釈液バッグ1の位置にある遠心バッグの内容物が、細胞を有するチャンバーのキャビティ内に取り込まれた。したがって、このプロセスにより、細胞組成物の体積低下がもたらされ、かつ体積低下した細胞、ウイルス含有組成物、および適用可能な場合には空気が混合された。次に、得られた200mL体積(細胞、ウイルス、および任意で空気を含有する)は、
図5および
図7に示されているキットの「アウトプットバッグ」位置にある遠心バッグ内に移された。
【0426】
形質導入を開始するために、次に、200mLの、ウイルス、細胞、および適用可能な場合には空気を含有する遠心バッグを取り外し、キットのインプットバッグ位置にて無菌的に接続した。完全培地を含有するバッグを、「希釈液バッグ」位置にてキットに無菌的に接続した。細胞培養バッグを、「アウトプットバッグ」位置にてシステムに無菌的に接続した。ユーザーは、形質導入の開始のために、自動化されたプロトコールがシステムで実施されるべきであることを、インターフェースを介して示した。具体的には、プログラムは、ピストンを移動させることにより、細胞、ウイルス、および表示される場合には空気を含有する体積200mLを、配管ラインを介してチャンバーのキャビティ内へと移させた。プログラムは、表示された力でのチャンバーのキャビティ内の内容物(総体積200mL)の遠心を継続して、ウイルスベクター粒子による細胞の形質導入を開始した。一部の態様では、公知の方法を用い、携帯型レーザータコメータを用いて、Sepax(登録商標)ユニットの様々な設定点における1分間あたりの回転運動(rpm)を検証した。具体的に表示される場合を除いて、示された速度で1時間(3600秒間)スピンを行った(付加的な加増および加減時間を伴う)。スピンの後かつシステムによって促された場合、ユーザーは、キャビティとインプットバッグとの間の流体の移動を可能にするクランプを閉鎖し、キャビティとアウトプットバッグ位置にある産物バッグとの間の流体の移動を遮断するクランプを開いた。ユーザーからの入力があると、プログラムは、チャンバーからアウトプットバッグへの液体の移動を実施し続けた。
【0427】
適用可能な場合には、空気の排出のために、システムによって促された場合、ユーザーは、チャンバーキャビティとフィルターとの間の流体の移動を遮断するクランプを開き、プログラムは、フィルターを介した空気の圧出を引き起こした。
【0428】
次に、媒体を有する希釈液バッグとチャンバーとの間の流体の移動を遮断するクランプを開くと共に、Sepax(登録商標)2システムにて以下の希釈プログラムを実施した:当該プログラムは、(停止コックの開栓およびピストンの移動によって)当該希釈液バッグからチャンバーへと適量(ユーザー規定の最終体積200mLを達成するために必要な量であり、遠心中に空気がある場合はその存在を考慮する)の液体を移動させ、60秒間混合し、次いで流体をプロセシングキャビティからアウトプットバッグへと移させる。
【0429】
アウトプットバッグ位置にある培養バッグは、そのために、結合したウイルス粒子を含有しかつ/またはウイルスゲノムを導入された細胞を有するアウトプット組成物を含有した。次に、形質導入の完了のために、細胞をバッグ内で37℃、5% CO2で約24時間インキュベーションした。個々の実施例において形質導入効率およびコピー数についての様々な測定値によって示されるように、形質導入の開始および完了の間、ウイルスベクター粒子が細胞に接種され、それらのゲノムが細胞ゲノムに組み込まれた。
【0430】
実施例8:一定の体積およびウイルス粒子数ならびに種々の細胞濃度を用いた、遠心チャンバー内での形質導入開始
一定の液体体積中に様々な細胞数および様々な感染単位(IU)のウイルス粒子を有する組成物を、実施例7に記載されている形質導入プロセスに供した。各場合において、形質導入開始の前に、実施例11に記載されているように細胞の回収、洗浄、単離、凍結保存、および活性化を行った。
【0431】
実施例8A.
形質導入開始と、形質導入を完了させるためのさらなる培養とを、実施例7に記載されているように、ただし詳細は以下のとおりに行った。
【0432】
2つの異なる調査における2つの異なる条件下で、総液体体積70mLでの形質導入開始プロセスを実施した(スピン中のキャビティの残りの体積は130mLであり、これには空気が含有された)。当該異なる条件を、それぞれ200×106個および100×106個の細胞に対して実施した。抗CD19 CARをコードするベクターを含有する同じ総単位数のウイルスベクター粒子を用いたところ、2つの条件についてそれぞれ1.8IU/細胞および3.6IU/細胞がもたらされた。形質導入プログラムの間、3600秒間のスピンは、プロセシングキャビティの側壁におけるRCFでは約1600gに相当する、約7400rpmでのスピンであった。
【0433】
約24時間のインキュベーションの後、灌流しながらバイオリアクターシステムで細胞を増殖させた。6日目に、各組成物についての形質導入効率を、実施例1に記載されたように検出される、コードされたCARの表面発現を有するCD3
+ T細胞の割合(%)として算出し、対照(「形質導入無し」)としての形質導入されていない細胞の集団と比較した。結果は
図8Aに示されている。示されているように、回転下でのインキュベーション中の総体積および総感染単位数が同じ場合、インキュベーション中にキャビティ内でより少ない数である100×10
6個の細胞を用いた条件について、より大きな形質導入効率が観察された。
【0434】
実施例8B.
別の調査では、形質導入開始と、形質導入を完了させるためのさらなる培養とを、実施例7に記載されているように、ただし詳細は以下のとおりに行った。
【0435】
3つの異なる条件下で、総液体体積70mLでの形質導入開始プロセスを実施した(スピン中のキャビティの残りの体積は130mLであり、これには空気が含有された)。当該異なる条件を、それぞれ200×106個、100×106個、および50×106個の細胞に対して実施した。抗CD19 CARをコードするベクターを含有する同じ総単位数のウイルスベクター粒子を用いた。この単位数は、200×106個の細胞を用いた条件に対して1.8IU/細胞をもたらすために必要な単位数であった。形質導入プログラムの間、3600秒間のスピンは、プロセシングキャビティの側壁におけるRCFでは約1600gに相当する、約7400rpmでSepax(登録商標)2システムにて実施した。
【0436】
約24時間のインキュベーションの後、灌流しながらバイオリアクターシステムで細胞を増殖させた。6日目に、各組成物についての形質導入効率を、実施例1に記載されたように検出される、コードされたCARの表面発現を有するCD3
+ T細胞の割合(%)として算出し、対照(「形質導入無し」)としての形質導入されていない細胞の集団と比較した。結果は
図8Bに示されている。示されているように、回転下でのインキュベーション中の総体積および総感染単位数が同じ場合、インキュベーション中にキャビティ内でより少ない数である100×10
6個の細胞を用いた条件について、より大きな形質導入効率が観察された。
【0437】
6日目に、形質導入された細胞におけるベクターコピー数(VCN)も実施例4に記載されているように評価し、形質導入された細胞(ゲノムにSGF+ウイルスベクター核酸を含有する細胞)における平均VCNを決定した。形質導入されていない細胞対照(「PD 形質導入無し」)および陽性対照細胞(「2コピー陽性対照」)も評価した。結果は
図8Cに提示されている。
【0438】
実施例9:様々な体積および単位のウイルスベクター粒子を用いた、遠心チャンバー内での形質導入開始
増加するウイルス粒子感染単位数(IU)および液体体積(一定数(100×106個)の細胞を有する)を有する組成物を、実施例7に記載されている形質導入プロセスに供した。詳細は以下のとおりとした。各場合において、形質導入開始の前に、実施例11に記載されているように細胞の回収、洗浄、単離、凍結保存、および活性化を行った。
【0439】
実施例7に記載されているプロセスにおいて、希釈プロトコールを介して細胞と混合するための、ウイルス粒子、媒体、および希釈液バッグ位置から取り込まれた空気を含有する組成物は、異なる条件(10mLの細胞含有組成物を用い、個々の条件に対して、それぞれ70、100、および130mLの液体体積をもたらす)についてそれぞれ60、90、および120mLの液体体積を含み、スピンのためにチャンバー内に引き込まれた総体積200mLの残りは空気から構成された。これらの液体体積のそれぞれは、液体体積1mLあたり6×106IUのウイルスベクター粒子を含み、各条件について増加するIUおよびIU/細胞をもたらした。3600秒間のスピンは、Sepax(登録商標)ユニットにて、キャビティの内部壁におけるRCFでは約1600gに相当する、速度約7400rpmで行われた。形質導入されていない(「モック」)対照も用いた。
【0440】
約24時間のインキュベーションの後、灌流しながらバイオリアクターシステムで細胞を増殖させた。6日目に、各組成物についての形質導入効率を、実施例1に記載されたように検出される、コードされたCARの表面発現を有するCD3
+ T細胞の割合(%)として算出した。結果は
図9Aに示されている。示されているように、本調査において、同じ数の細胞に関して、体積の増加に伴って増加するウイルスの量は、形質導入効率の増加をもたらした。
【0441】
形質導入された細胞(導入遺伝子を発現している細胞)あたりの平均ベクターコピー数(VCN)も、実施例4に記載されているリアルタイム定量的PCR(RT-qPCR)によって、各条件について6日目に決定した。結果は
図9Bに提示されている。
【0442】
実施例10:遠心チャンバーを用いた形質導入効率に対する、遠心時間の効果
遠心下のインキュベーションについて様々な持続時間を用いて、100×106個の細胞を、実施例7に記載されている形質導入に供した。具体的には、チャンバーのプロセシングキャビティ内での遠心に用いられる総液体体積は70mLであった(200mLの総体積の残りは130mLであり、これは空気から構成された)。この体積中に、3.6IU/細胞の比率で、抗CD19 CARをコードするベクターを含有するウイルスベクター粒子を含めた。各場合において、形質導入開始の前に、実施例11に記載されているように細胞の回収、洗浄、単離、凍結保存、および活性化を行った。
【0443】
形質導入の開始のためのスピンは、プロセシングチャンバーの内側壁における相対遠心力では約1600gに相当する、約7400rpmで実施した。この速度でのスピンの持続時間は、一方の条件に関して10分間であり、他方に関して60分間であった。
【0444】
約24時間のインキュベーションの後、灌流しながらバイオリアクターシステムで細胞を増殖させた。6日目に、各組成物についての形質導入効率を、実施例1に記載されたように検出される、コードされたCARの表面発現を有するCD3
+ T細胞の割合(%)として算出した。形質導入されていない対照も評価した(「形質導入無し」)。結果は
図10に示されている。示されているように、本調査において、10分間と比較して、60分間の遠心下における遠心チャンバーのプロセシングキャビティ内での100×10
6個の細胞の形質導入の開始の後に、より大きな形質導入効率が観察された。
【0445】
実施例11:遺伝子操作された細胞の調製
本実施例は、本明細書において提供される特定の態様に従って、生物学的サンプルから、ウイルスベクターによってコードされる核酸を形質導入された遺伝子操作されたT細胞を調製するために行われた例示的なプロセスを記載する。個々の実施例に記載されているように、本明細書における様々な実施例に記載されている調査において行われる形質導入段階の前に、本プロセスの段階の一部、例えば回収、洗浄、凍結保存、選択、および活性化の段階を、本実施例に記載されているように行った。
【0446】
剛性の概ね円筒状の側壁と、チャンバー内を移動してキャビティ(単回使用のキット内に含有されるSepax(登録商標)遠心チャンバーのプロセシングキャビティ)の容積を変動させ得るピストンとを有する遠心チャンバーのプロセシングキャビティ内で、プロセスの様々な段階を行った。具体的には、チャンバー内で行われた段階は、細胞洗浄、希釈/バッファー交換、親和性に基づく選択のための段階(例えば、免疫特異的結合剤とのインキュベーション)、形質導入開始、製剤化、および活性化/増殖のための段階(例えば、刺激剤とのインキュベーション)を含んだ。
【0447】
1.サンプル回収および白血球アフェレーシス
白血球アフェレーシス回収システムを用いて、対象由来の全血サンプルから、単核細胞に富むヒト白血球アフェレーシスサンプルを得た。当該白血球アフェレーシスサンプルを、2~8℃で最大約48時間、密封保管した。
【0448】
2.白血球アフェレーシスの洗浄
白血球アフェレーシスサンプルを、移送パックに無菌的に移した。白血球アフェレーシスサンプルの細胞を、親和性に基づく選択において使用するために、PBS、EDTA、およびヒト血清アルブミンを含有するバッファーで洗浄および再懸濁した。洗浄は、Biosafe SAによって販売されている再生医療用の無菌の単回使用使い捨てキット(本質的に
図7に図示されており、遠心チャンバー(1)を含む)内で行った。細胞を含有する移送パックおよびバッファーを含有するバッグを、Sepax(登録商標)2プロセシングユニットと関連付けして置かれたキットに無菌的に接続した。洗浄および再懸濁は、標準的な細胞洗浄プロトコールを用いて当該ユニットにて行なわれ、細胞は、親和性に基づく選択(3を参照されたい)のための試薬との後続のインキュベーションのために、プロトコールの最後に遠心チャンバーのプロセシングキャビティ(7)内に保持された。
【0449】
3.親和性に基づく選択
免疫親和性に基づくT細胞の陽性選択に関して、同じ自動化されたプログラムを継続して、洗浄された細胞を、CD4およびCD8に特異的なモノクローナル抗体に連結された磁気ビーズと共に選択バッファー中でインキュベーションした。インキュベーションは、上記の洗浄(2を参照されたい)の後に細胞が保持された同じ遠心チャンバー(1)内で、室温で行った。具体的には、ビーズを、移送パック中にて選択バッファー中で混合し、次いでそれを、洗浄段階に用いられる単回使用のキットの希釈液バッグ位置にて無菌的に接続した。プログラムをSepax(登録商標)2ユニットで実施し、それは、半連続的プロセスにより、ビーズ混合物および選択バッファーを、洗浄された細胞を有するチャンバー内に取り込ませ、チャンバーの内容物(総液体体積100mL)を30分間混合させた。混合は、低速(約1700rpm)での短い持続時間(約1秒間)の遠心と、それに続く短い静止時期(約6秒間)とをそれぞれ含む期間を順々に繰り返しながら行った。
【0450】
プログラムの最後に、Sepax(登録商標)2ユニットは、細胞のペレット化、および廃液バッグ位置にあるバッグ内への過剰なバッファー/ビーズの排出、ペレットになった細胞の洗浄、ならびに選択バッファーによる再懸濁を引き起こした。洗浄は、Sepax(登録商標)にて、キャビティの内部壁におけるRCF約200gで180秒間行った。プログラムは、洗浄された細胞を、
図7に示されている例示的なキットにおけるアウトプットバッグ位置に置かれた移送パック中に回収させ、その内容物は、配管ラインを介して、閉鎖システム内の磁気分離用カラムに移され得た。したがって、細胞洗浄および親和性に基づく選択試薬とのインキュベーションは、遠心チャンバーのキャビティからおよびキャビティへと液体および細胞を通過させることによって、完全に同じ閉鎖無菌システム内で行われた。液体体積を制御および調整し得る能力、ならびにチャンバー内で回転下で細胞を混合し得る能力は、チューブ内で振とうまたは回転しながらインキュベーションする場合に比べて、プロセシングされた細胞あたり実質的により少ない選択試薬の使用を可能にした。
【0451】
次に、細胞を、標準的な方法を用いた磁場の存在下にて、移送パックから、配管ラインおよび分離カラムの閉鎖無菌システムを通じて通過させて、CD4特異的試薬および/またはCD8特異的試薬に結合している細胞を分離した。次に、これらの磁気標識された細胞を、さらなるプロセシングのために移送パック中に回収した。
【0452】
4.凍結保存
標識された選択された細胞を有する移送パックを、Sepax(登録商標)2システムと共に使用するための、Biosafe ASによって販売されている再生医療用の単回使用使い捨てキットに、無菌的に接続した。当該キットは、本質的には
図7に示されているとおりであったが、ただし、
図7に示されている例示的なシステムにおけるアウトプットバッグが取り付けられている位置には、1つではなく2つのポートが存在し、各ポートには回収バッグが無菌的に接続されており;
図7におけるインプットバッグが接続されている位置には、1つではなく2つのポートが存在し;
図7における希釈液バッグ1および2の位置には、2つではなく単一のポートが存在した。Sepax(登録商標)2ユニットで標準的な洗浄サイクルを行って、洗浄された細胞の体積を低下させた。凍結保存媒体を有するバッグをキットに無菌的に接続し、希釈プロトコールを2回実施して、凍結保存媒体を細胞組成物に移し、得られた組成物を2つのアウトプット凍結保存バッグに放出させた。凍結保存バッグ内の細胞を凍結保存し、さらなる使用まで液体窒素中で保管した。
【0453】
5.融解および活性化
凍結保存された細胞を融解した。融解された細胞を、個々の調査に対して表示された期間、概ね37℃で、抗CD3/CD28試薬を用いて活性化させた。試薬とのインキュベーションの前に、細胞を、標準的な細胞洗浄プログラムを用いかつ本質的に
図7に示されているキットにおいて、Sepax(登録商標)2システムを用いて、完全培地で洗浄および再懸濁した。同じキットにおいて、室温での30分間の選択のためのビーズインキュベーションに関して記載されているように低速遠心と静止との期間を順々に行って混合することによって、チャンバーのキャビティ内で細胞を抗CD3/CD28試薬と混合した。インキュベーションの後、インキュベーションされた材料を、Sepax(登録商標)2ユニットによりアウトプット細胞培養バッグに移し、次いでそれを、活性化期間の残りの間、37℃でインキュベーションした。
【0454】
6.形質導入
形質導入を、実施例7に記載されているように、ただし具体的な詳細は特定の実施例において与えられているとおりに、Sepax(登録商標)プロセシングユニットと関連付けして置かれたキットに組み込まれている遠心チャンバー内で行った。
【0455】
7.増殖
一部のケースでは、形質導入の後に、細胞を概ね37℃でさらにインキュベーションして、増殖させた。
【0456】
8.洗浄、製剤化
一部のケースでは、増殖しかつ/または形質導入された細胞を、検査、保管、および/または投与のために、さらなる洗浄、希釈、および/または製剤化を行った。一部の例では、増殖しかつ/または形質導入された細胞を、例えば凍結保存に関して記載されているように、Sepax(登録商標)2システムと共に使用するための単回使用のキットに組み込まれているチャンバー内で洗浄した。一部のケースでは、洗浄された細胞を含有するバッグを、
図7に示されているものなどのキット、または
図7に示されているアウトプットバッグ位置に容器(例えばバッグ)の接続に利用可能な複数のポートを有するそのようなキットに、無菌的に接続した。
【0457】
そのようなマルチポートアウトプットキットの一例が
図11に示されている。
図11は、複数のポート(17)を示しており、当該ポートのうちの1つまたは複数が容器(例えば、アウトプット組成物回収用バッグ)に接続され得る。当該接続は、例えば、所定の方法によって産生される細胞の所望の数の単位剤形に応じた、所望の数の容器の、無菌的溶接による接続であってもよい。
図11に示されているキットを作り出すために、複数のポート(
図11に示されている例では、8つのポート)を有する多方向配管マニホールドを、Biosafe ASによって販売されている再生医療用の単回使用キットのアウトプットラインに無菌的に溶接した。これらのポートのうちの1つまたは複数、概して2つ以上のポートに、所望の数の複数のアウトプットバッグを無菌的に接続した。一部の例では、そのようなバッグを、全てよりも少ないポートに取り付けた。配管ラインにクランプ(5)を配置し、望まれるまで、個々のバッグ内への流体の移動を阻止した。所望の液体(例えば、製剤、アッセイ、および/または凍結保存用の媒体)を収容するバッグをキットに無菌的に接続し、適当な数のバッグにつながる各クランプをユーザーが開閉し、Sepax(登録商標)2ユニットで希釈プロトコールを複数回実施し、それによって、所望の数のバッグに分割された、所望の製剤の状態のアウトプット組成物が生成された。一部の態様では、対象(例えば、白血球アフェレーシス産物が由来する対象)に投与するための製剤の状態で、単回単位用量の細胞が各バッグに回収された。
【0458】
本発明は、例えば本発明の様々な局面を例証するために提供されている特定の開示される態様に範囲が限定されることを意図されるものではない。記載されている組成物および方法に対する様々な改変は、本明細書における記載および教示から明らかとなるであろう。そのようなバリエーションは、本開示の真の範囲および精神から逸脱することなく実践され得、かつ本開示の範囲内に入ることを意図される。