(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-27
(45)【発行日】2023-01-11
(54)【発明の名称】電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20221228BHJP
H01M 10/0587 20100101ALI20221228BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20221228BHJP
【FI】
H01M10/04 W
H01M10/0587
H01M50/489
(21)【出願番号】P 2020177173
(22)【出願日】2020-10-22
【審査請求日】2021-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 修治
(72)【発明者】
【氏名】塚越 貴史
(72)【発明者】
【氏名】池下 一哉
(72)【発明者】
【氏名】平松 和樹
【審査官】前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-091076(JP,A)
【文献】特開2014-216252(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/00-10/39
H01M50/40-50/497
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻回電極体を含み、
前記巻回電極体は、扁平状の外形を有し、
前記巻回電極体は、第1セパレータと正極板と第2セパレータと負極板とを含み、
前記第1セパレータと前記正極板と前記第2セパレータと前記負極板とは、この順に積層され、さらに渦巻状に巻回されており、
前記巻回電極体の巻回軸と直交する断面において、
前記第1セパレータは、前記巻回電極体の最内周に、第1巻き始め端部を有し、
前記第2セパレータは、前記巻回電極体の前記最内周に、第2巻き始め端部を有し、
前記第1巻き始め端部は、前記巻回軸を挟んで、前記第2巻き始め端部と向かい合っており、
前記第1巻き始め端部は、前記第2巻き始め端部から離れて
おり、
前記第1セパレータおよび前記第2セパレータの各々は、
20μm以下の厚さと、
18mm以上の剛性指数と
を有し、
前記剛性指数は、30cmの長さを有するセパレータが、折り目がつかないように折り返され、かつ両端を合わせて台に置かれた時の、前記台の表面からの高さを示す、
電池。
【請求項2】
前記第1巻き始め端部から前記第2巻き始め端部までの距離は、10mmから44mmである、
請求項
1に記載の電池。
【請求項3】
前記巻回軸と直交する前記断面において、
前記巻回電極体が長手方向に4等分されることにより、第1領域と第2領域と第3領域と第4領域とに区分され、
前記長手方向において、前記第1領域と前記第2領域と前記第3領域と前記第4領域とは、この順に並んでおり、
前記第1セパレータは、前記第2領域内で巻き始まり、かつ前記第3領域内で巻き終わっており、
前記第2セパレータは、前記第3領域内で巻き始まり、かつ前記第3領域内で巻き終わっており、
前記正極板は、前記第2領域内で巻き始まり、かつ前記第2領域内で巻き終わっており、
前記負極板は、前記第3領域内で巻き始まり、かつ前記第2領域内で巻き終わっている、
請求項1
または請求項2に記載の電池。
【請求項4】
前記巻回軸と直交する前記断面において、
前記巻回電極体の輪郭線上の最も離れた2点間の距離は59mm以下である、
請求項
3記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は電池に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2011-090917号公報(特許文献1)は巻回電極体を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電極板およびセパレータが巻芯に巻き取られることにより、筒状の巻回電極体が形成される。巻回電極体から巻芯が引き抜かれた後、巻回電極体は扁平状に成形される。電池の仕様に応じて、巻回電極体は各種のサイズ、寸法を有し得る。例えば、巻径が小さい巻回電極体も求められている。巻径が小さい巻回電極体が扁平状に成形されることにより、高さ寸法が小さい巻回電極体が形成され得る。巻径は、巻芯の径によって調整され得る。巻芯の径が小さくなることにより、巻径が小さくなる。
【0005】
本開示の目的は、小さい巻径に好適な巻回電極体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、本開示の技術的構成および作用効果が説明される。ただし、本開示の作用メカニズムは、推定を含んでいる。作用メカニズムの正否は、特許請求の範囲を限定しない。
【0007】
〔1〕 電池は巻回電極体を含む。巻回電極体は扁平状の外形を有する。巻回電極体は、第1セパレータと正極板と第2セパレータと負極板とを含む。第1セパレータと正極板と第2セパレータと負極板とは、この順に積層され、さらに渦巻状に巻回されている。巻回電極体の巻回軸と直交する断面において、第1セパレータは、巻回電極体の最内周に、第1巻き始め端部を有する。第2セパレータは、巻回電極体の最内周に、第2巻き始め端部を有する。第1巻き始め端部は、巻回軸を挟んで、第2巻き始め端部と向かい合っている。第1巻き始め端部は、第2巻き始め端部から離れている。
【0008】
図1は、巻回電極体の製造過程を示す第1概略図である。
巻回電極体には2枚のセパレータが使用される。すなわち、第1セパレータ131と第2セパレータ132とが使用される。以下、本明細書においては、第1セパレータ131および第2セパレータ132が「セパレータ」と総称される場合がある。
【0009】
巻芯170は棒状の部材である。巻芯170は、紙面と垂直方向(x軸方向)に延びている。巻芯170は、中心部に隙間を有する。セパレータが巻芯170の隙間に挟まれることにより、セパレータが固定される。セパレータの固定後、巻芯170が回転することにより、セパレータが巻き取られる。巻芯170の回転中、所定のタイミングで正極板(不図示)と負極板(不図示)とが、それぞれ第1セパレータ131と第2セパレータ132との間に挿入され、巻芯170に巻き取られる。
【0010】
一般に、第1セパレータ131と第2セパレータ132とは、同一方向から巻芯170に挿入される。この場合、巻回電極体の最内周において、第1セパレータ131の先端が第2セパレータ132の先端と重なることになる。
【0011】
図2は、巻回電極体の製造過程を示す第2概略図である。
本開示の巻き取り方法においては、第1セパレータ131の挿入方向が、第2セパレータ132の挿入方向と反対である。本開示の巻き取り方法によれば、巻回電極体の最内周において、第1セパレータ131の先端が第2セパレータ132の先端と重ならない構造が可能となる。
【0012】
図3は、巻回電極体の製造過程を示す第3概略図である。
巻き取り後、巻回電極体150から巻芯170が引き抜かれる。さらにプレス加工により巻回電極体150が扁平状に成形される。巻回電極体150の最内周において、第1セパレータ131の先端と、第2セパレータ132の先端とが向かい合っている。そのためプレス加工時に、第1セパレータ131の先端と、第2セパレータ132の先端とが接触する可能性がある。その結果、第1セパレータ131および第2セパレータ132の少なくとも一方の先端に、折れ重なった部分が生じる可能性がある。最内周においてセパレータが折れ重なることにより、例えば、巻回電極体150の厚さ寸法(
図3中のz軸方向の寸法)が過大になる可能性がある。
【0013】
巻回電極体150の巻径が小さくなる程、第1セパレータ131の先端が第2セパレータ132の先端と近接する。そのためプレス加工時に、第1セパレータ131の先端が第2セパレータ132の先端と接触しやすくなる傾向がある。
【0014】
本開示においては、第1セパレータ131の先端が第2セパレータ132の先端と接触しないように、プレス加工が実施される。その結果、成形後の巻回電極体150の最内周においては、第1セパレータ131の先端(第1巻き始め端部)が、第2セパレータ132の先端(第2巻き始め端部)から離れた状態になる。これにより、最内周におけるセパレータの折れ重なりが回避され、小さい巻径の巻回電極体150が安定して製造され得る。
【0015】
〔2〕 第1セパレータおよび第2セパレータの各々は、例えば、20μm以下の厚さと、18mm以上の剛性指数とを有していてもよい。剛性指数は、30cmの長さを有するセパレータが、折り目がつかないように折り返され、かつ両端を合わせて台に置かれた時の、台の表面からの高さを示す。
【0016】
20μm以下の厚さを有するセパレータは、剛性が低い傾向がある。セパレータの剛性が低い時、
図3において、上側のセパレータ(第1セパレータ131)が下方に垂れ下がりやすくなり、第1セパレータ131が第2セパレータ132と接触しやすくなる。薄いセパレータであっても、一定以上の剛性があれば、セパレータの垂れ下がりが抑えられる傾向がある。すなわち、剛性指数が18mm以上であることにより、セパレータの垂れ下がりが抑えられる傾向がある。
【0017】
〔3〕 第1巻き始め端部から第2巻き始め端部までの距離は、例えば10mmから44mmであってもよい。
【0018】
〔4〕 本開示の巻回電極体の構造は、例えば次のように特定されてもよい。
すなわち、巻回軸と直交する断面において、巻回電極体が長手方向に4等分されることにより、第1領域と第2領域と第3領域と第4領域とに区分される。長手方向において、第1領域と第2領域と第3領域と第4領域とは、この順に並んでいる。第1セパレータは、第2領域内で巻き始まり、かつ第3領域内で巻き終わっている。第2セパレータは、第3領域内で巻き始まり、かつ第3領域内で巻き終わっている。正極板は、第2領域内で巻き始まり、かつ第2領域内で巻き終わっている。負極板は、第3領域内で巻き始まり、かつ第2領域内で巻き終わっている。
【0019】
〔5〕 巻回軸と直交する断面において、巻回電極体の輪郭線上の最も離れた2点間の距離は、例えば59mm以下であってもよい。
【0020】
本開示において、当該寸法は「高さ寸法」とも記される。なお本開示において、高さ寸法を規定する直線と直交する方向において、巻回電極体の輪郭線上の最も離れた2点間の距離は「厚さ寸法」とも記される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、巻回電極体の製造過程を示す第1概略図である。
【
図2】
図2は、巻回電極体の製造過程を示す第2概略図である。
【
図3】
図3は、巻回電極体の製造過程を示す第3概略図である。
【
図4】
図4は、本実施形態における電池の構成の一例を示す概略図である。
【
図5】
図5は、本実施形態における巻回電極体を示す概略図である。
【
図6】
図6は、本実施形態における巻回電極体を示す概略断面図である。
【
図7】
図7は、セパレータの厚さと、剛性指数との関係の一例を示すグラフである。
【
図8】
図8は、剛性指数の測定方法を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本開示の実施形態(以下「本実施形態」とも記される。)が説明される。ただし、以下の説明は、特許請求の範囲を限定しない。
【0023】
本明細書における幾何学的な用語(例えば「直交」等)は、厳密な意味に解されるべきではない。例えば「直交」は、厳密な意味での「直交」から多少ずれていてもよい。本明細書における幾何学的な用語は、例えば、設計上、作業上、製造上等の公差、誤差等を含み得る。
【0024】
各図中の寸法関係は、実際の寸法関係と一致しない場合がある。本開示の理解を助けるために、各図中の寸法関係(長さ、幅、厚さ等)が変更されている場合がある。
【0025】
本明細書において、例えば「10mmから44mm」等の数値範囲は、特に断りのない限り、上限値および下限値を含む。例えば「10mmから44mm」は、「10mm以上44mm以下」の数値範囲を示す。また、数値範囲内から任意に選択された数値が、新たな上限値および下限値とされてもよい。例えば、数値範囲内の数値と、本明細書中の別の部分に記載された数値とが任意に組み合わされることにより、新たな数値範囲が設定されてもよい。
【0026】
<電池>
図4は、本実施形態における電池の構成の一例を示す概略図である。
電池100は、任意の電池であり得る。電池100は、例えばリチウムイオン電池等であってもよい。電池100は、任意の用途で使用され得る。電池100は、例えば、電動車両において、主電源または動力アシスト用電源として使用されてもよい。複数個の電池100(単電池)が連結されることにより、電池モジュールまたは組電池が形成されてもよい。
【0027】
電池100は外装体190を含む。外装体190は金属製の容器である。外装体190は角形(扁平直方体)である。ただし外装体190は任意の形態を有し得る。外装体190は、例えばアルミラミネートフィルム製のパウチ等であってもよい。
【0028】
外装体190は、巻回電極体150および電解質(不図示)を収納している。巻回電極体150は、正極集電部材181によって正極端子191に接続されている。巻回電極体150は、負極集電部材182によって負極端子192に接続されている。電解質は、例えば、液体電解質(電解液、イオン液体)であってもよいし、ゲル電解質であってもよい。
【0029】
《巻回電極体》
図5は、本実施形態における巻回電極体を示す概略図である。
巻回電極体150は、扁平状の外形を有する。巻回電極体150は、第1セパレータ131と正極板110と第2セパレータ132と負極板120とを含む。第1セパレータ131と正極板110と第2セパレータ132と負極板120とは、いずれも帯状のシートである。第1セパレータ131と正極板110と第2セパレータ132と負極板120とは、この順に積層されている。第1セパレータ131と正極板110と第2セパレータ132と負極板120とからなる積層体は、巻回軸10の周りに渦巻状に巻回されている。
【0030】
正極板110は、例えば、金属箔の表面に正極活物質が配置されることにより形成され得る。正極板110は、例えば50μmから100μmの厚さを有していてもよい。負極板120は、例えば、金属箔の表面に負極活物質が配置されることにより形成され得る。負極板120は、例えば50μmから100μmの厚さを有していてもよい。なお本明細書においては、正極板および負極板が「電極板」と総称される場合がある。セパレータの材質等については後述される。
【0031】
図6は、本実施形態における巻回電極体を示す概略断面図である。
図6には、巻回軸10と直交する断面が示されている。巻回軸10は紙面と垂直方向(x軸方向)に延びている。第1セパレータ131は、巻回電極体150の最内周に第1巻き始め端部S1を有する。第2セパレータ132は、巻回電極体150の最内周に第2巻き始め端部S2を有する。第1巻き始め端部S1は、巻回軸10を挟んで、第2巻き始め端部S2と向かい合っている。第1巻き始め端部S1は第2巻き始め端部S2から離れている。本実施形態においては、第1巻き始め端部S1および第2巻き始め端部S2において、セパレータの折れ重なりが発生し難いことが期待される。
【0032】
なお
図6においては、作図の便宜上、y軸方向における、第1巻き始め端部S1の位置が、第2巻き始め端部S2の位置と異なっている。実際上、y軸方向における、第1巻き始め端部S1の位置は、第2巻き始め端部S2の位置と実質的に同一になり得る。また
図6においては、作図および説明の便宜上、電極板およびセパレータの一部が省略されている。
図6中の巻回数は一例である。巻回電極体150は、任意の巻回数を有し得る。
【0033】
《離間距離》
本実施形態において、第1巻き始め端部S1から第2巻き始め端部S2までの距離は、「離間距離d」とも記される。離間距離dが大きい程、最内周におけるセパレータの折れ重なりが発生し難いと考えられる。本実施形態において、離間距離dは0mm超である。離間距離dは、例えば5mm以上であってもよい。離間距離dは、例えば10mm以上であってもよい。離間距離dが過大になると、例えば、巻回電極体150の成形性、厚さ寸法t等に影響が出る可能性がある。離間距離dは、例えば44mm以下であってもよい。
【0034】
離間距離dは、次の手順により測定され得る。すなわち、巻回電極体150が樹脂に包埋される。樹脂は、例えばエポキシ樹脂等であってもよい。樹脂に包埋された巻回電極体150が切断されることにより、断面試料が準備される。断面試料は、巻回軸10と直交する断面(
図6)を含む。光学顕微鏡により、巻回電極体150の最内周において離間距離dが測定される。
【0035】
《各部材の巻き始め位置、および巻き終わり位置》
図6の巻回電極体150は、第1領域151と第2領域152と第3領域153と第4領域154とを含む。第1領域151と第2領域152と第3領域153と第4領域154とは、長手方向(
図6のz軸方向)に、巻回電極体150が4等分されることにより区分される。長手方向において、第1領域151と第2領域152と第3領域153と第4領域154とは、この順に並んでいる。
【0036】
第1領域151と第2領域152と第3領域153と第4領域154とは、連続している。第1領域151および第4領域154の各々は、長手方向の両端に位置する。第1領域151および第4領域154の各々は、湾曲部(R部、コーナー部)を含む。湾曲部においては、電極板およびセパレータが湾曲面を有している。第2領域152と第3領域153との境界に巻回軸10が位置する。第2領域152および第3領域153は、平坦部を含む。平坦部においては、電極板およびセパレータが平坦面を有している。
【0037】
第1セパレータ131は、第2領域152内で巻き始まり、かつ第3領域153内で巻き終わっている。すなわち第1セパレータ131は、第2領域152内に第1巻き始め端部S1を有する。第1セパレータ131は、第3領域153内に第1巻き終わり端部E1を有する。
【0038】
第2セパレータ132は、第3領域153内で巻き始まり、かつ第3領域153内で巻き終わっている。すなわち第2セパレータ132は、第3領域153内に第2巻き始め端部S2を有する。第2セパレータ132は、第3領域153内に第2巻き終わり端部E2を有する。第2巻き終わり端部E2は、例えば粘着テープ140により固定されていてもよい。
【0039】
正極板110は、第2領域152内で巻き始まり、かつ第2領域152内で巻き終わっている。すなわち正極板110は、第2領域152内に第3巻き始め端部S3を有する。正極板110は、第2領域152内に第3巻き終わり端部E3を有する。
【0040】
負極板120は、第3領域153内で巻き始まり、かつ第2領域152内で巻き終わっている。すなわち負極板120は、第3領域153内に第4巻き始め端部S4を有する。負極板120は、第2領域152内に第4巻き終わり端部E4を有する。
【0041】
《高さ寸法》
巻回電極体150は、例えば59mm以下の高さ寸法hを有していてもよい。巻回電極体150は、例えば56mmから59mmの高さ寸法hを有していてもよい。
図6中、高さ寸法hは、巻回電極体150の輪郭線上の最も離れた2点間の距離を示す。
【0042】
高さ寸法hを規定する直線と直交する方向において、巻回電極体150の輪郭線上の最も離れた2点間の距離が「厚さ寸法t」である。巻回電極体150の最内周においてセパレータの折れ重なりが発生すると、厚さ寸法tが過大になる可能性がある。
【0043】
《セパレータ》
第1セパレータ131と第2セパレータ132とは、実質的に同一の「材質、寸法、物性」を有していてもよい。第1セパレータ131と第2セパレータ132とは、互いに異なる「材質、寸法、物性」を有していてもよい。
【0044】
セパレータは、例えば、ポリオレフィン製であってもよい。セパレータは、例えば、ポリエチレン(PE)製であってもよいし、ポリプロピレン(PP)製であってもよい。セパレータは単層構造を有していてもよい。セパレータは、例えば、PE層からなっていてもよい。セパレータは多層構造を有していてもよい。セパレータは、例えば、PP層とPE層とPP層とを含んでいてもよい。PP層とPE層とPP層とはこの順に積層されていてもよい。
【0045】
セパレータは、例えば、20μm以下の厚さを有していてもよいし、18μm以下の厚さを有していてもよいし、16μm以下の厚さを有していてもよい。セパレータは、例えば、16μmから20μmの厚さを有していてもよい。すなわち、第1セパレータ131および第2セパレータ132の各々は、20μm以下の厚さを有していてもよい。
【0046】
例えば、出力および容量の向上を目的として、薄いセパレータの使用が求められることもある。セパレータが薄くなる程、剛性が低くなる傾向がある。セパレータの剛性が低くなると、巻回電極体150から巻芯170が引き抜かれた時、セパレータが垂れ下がりやすい傾向がある。セパレータが垂れ下がると、プレス加工時にセパレータの折れ重なりが発生しやすくなる傾向がある。
【0047】
図7は、セパレータの厚さと、剛性指数との関係の一例を示すグラフである。
図7中、セパレータが薄くなる程、剛性指数が小さくなる傾向がみられる。剛性指数は、セパレータの剛性の指標である。剛性指数が大きい程、セパレータの剛性が高いと評価される。セパレータは、例えば9mmから25mmの剛性指数を有していてもよい。セパレータは、例えば17.2mmから19.2mmの剛性指数を有していてもよい。セパレータの剛性指数が18mm以上である時、セパレータが垂れ下がり難い傾向がある。第1セパレータ131および第2セパレータ132の各々は、18mm以上の剛性指数を有していてもよい。第1セパレータ131および第2セパレータ132の各々は、例えば18mmから21mmの剛性指数を有していてもよい。第1セパレータ131および第2セパレータ132の各々は、例えば18mmから19.2mmの剛性指数を有していてもよい。剛性指数は次の手順により測定される。
【0048】
図8は、剛性指数の測定方法を示す概略断面図である。
セパレータが切断されることにより、試料片1が準備される。試料片1は3個以上準備される。試料片1は矩形状の平面形状を有する。試料片1は30cmの長さ寸法を有する。長さ寸法を規定する直線と直交する方向の寸法は、例えば100mmから130mmであってもよい。所定の台2が準備される。台2は平坦な表面を有する。試料片1が台2の表面に置かれる。試料片1に折り目がつかないように、試料片1が180度折り返される。試料片1の長さ方向の両端が合わされる。試料片1が折り返された部分において、台2の表面からの高さが測定される。該高さが剛性指数である。3個以上の試料片1において、剛性指数がそれぞれ測定される。3個以上の剛性指数の算術平均が、対象セパレータの剛性指数とみなされる。剛性指数(単位 mm)は、小数第1位まで有効である。小数第2位以下は四捨五入される。
【0049】
《巻き取り試験》
下記表1に示されるNo.1からNo.7の巻回電極体150が製造される。本試験においては、下記表1に示されるように「セパレータの厚さ」、「セパレータの剛性指数」、「離間距離d」が、最内周におけるセパレータの折れ重なりに及ぼす影響が確認される。本試験において、第1セパレータ131は、第2セパレータ132と同一の厚さおよび剛性指数を有する。
【0050】
【0051】
No.1からNo.3において、離間距離dが小さい時、セパレータが薄く、剛性指数が小さくなると、セパレータの折れ重なりが発生しやすい傾向がみられる。
【0052】
No.4からNo.7において、離間距離dが大きい時、セパレータの剛性指数が小さくても、セパレータの折れ重なりが発生し難い傾向がみられる。
【0053】
本実施形態は全ての点で例示である。本実施形態は制限的なものではない。例えば、本実施形態から、任意の構成が抽出され、それらが任意に組み合わされることも、当初から予定されている。
【0054】
特許請求の範囲の記載に基づいて定められる技術的範囲は、特許請求の範囲の記載と均等の意味における全ての変更を包含する。さらに、特許請求の範囲の記載に基づいて定められる技術的範囲は、特許請求の範囲の記載と均等の範囲内における全ての変更も包含する。
【符号の説明】
【0055】
1 試料片、2 台、10 巻回軸、100 電池、110 正極板、120 負極板、131 第1セパレータ、132 第2セパレータ、140 粘着テープ、150 巻回電極体、151 第1領域、152 第2領域、153 第3領域、154 第4領域、170 巻芯、181 正極集電部材、182 負極集電部材、190 外装体、191 正極端子、192 負極端子、S1 第1巻き始め端部、S2 第2巻き始め端部、E1 第1巻き終わり端部、E2 第2巻き終わり端部、E3 第3巻き終わり端部、E4 第4巻き終わり端部、d 離間距離、h 高さ寸法、t 厚さ寸法。