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特許7202354酸素燃焼(oxy-combustion)によって生成されたCO2を使用する尿素製造方法及び製造プラント
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  • 特許-酸素燃焼(oxy-combustion)によって生成されたCO2を使用する尿素製造方法及び製造プラント 図1
  • 特許-酸素燃焼(oxy-combustion)によって生成されたCO2を使用する尿素製造方法及び製造プラント 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-27
(45)【発行日】2023-01-11
(54)【発明の名称】酸素燃焼(oxy-combustion)によって生成されたCO2を使用する尿素製造方法及び製造プラント
(51)【国際特許分類】
   C07C 273/04 20060101AFI20221228BHJP
   C07C 275/00 20060101ALI20221228BHJP
   F23L 7/00 20060101ALI20221228BHJP
【FI】
C07C273/04
C07C275/00
F23L7/00 A
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2020504239
(86)(22)【出願日】2018-08-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-15
(86)【国際出願番号】 IB2018055861
(87)【国際公開番号】W WO2019026044
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-06-23
(31)【優先権主張番号】102017000090748
(32)【優先日】2017-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】516208282
【氏名又は名称】サイペム エスピーアー
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】ザンビアンコ,アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】モントローネ,ドナート
(72)【発明者】
【氏名】ポリッツィ,ロッセーラ
(72)【発明者】
【氏名】サーラ,マッシミリアーノ
(72)【発明者】
【氏名】ウザイ,ジョイア
【審査官】高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0098149(US,A1)
【文献】特表2017-504778(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0027001(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0183650(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0217041(US,A1)
【文献】特開平09-003032(JP,A)
【文献】特表2010-527949(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 273/00
C07C 275/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニアと二酸化炭素の反応により尿素を合成するステップを含む尿素製造方法であって、
尿素反応合成のための二酸化炭素の少なくとも一部は酸素燃焼プロセスで生成され、
酸素燃焼プロセスが無炎酸素燃焼プロセスであることを特徴とする尿素製造方法。
【請求項2】
酸素燃焼プロセスが、無炎加圧酸素燃焼プロセスである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
酸素燃焼プロセスが、800~1800℃の範囲の燃焼温度で実施される、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
酸素燃焼プロセスが0~40bar gの範囲の圧力で実施される、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
酸素燃焼プロセスに、酸素生成ステップで生成された酸素が供給される、請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
尿素合成反応のためのアンモニアの少なくとも一部が水素と窒素の直接反応によるアンモニアの合成工程で生成され、窒素が酸素と共に空気分離ステップで生成され、そして、空気分離ステップで生成した酸素の一部が酸素燃焼プロセスに供給される、請求項1~5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
酸素燃焼プロセスに、少なくとも80%volの酸素を含む酸素流が供給される、請求項1~6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
蒸気及び/又は電気エネルギーを生成する酸素燃焼プロセスにおいて生成された排気から熱エネルギーが再生されるエネルギー再生ステップを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
排気の一部を酸素燃焼プロセス及び/又はエネルギー再生ステップに再循環させるステップを含む、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
酸素燃焼プロセスで生成された、COを含有する排気の少なくとも一部からCO流を回収するステップ(すなわち分離ステップ)を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
COを回収するステップが、排気から汚染物質を除去するために排気を処理するステップ、排気を凝縮し凝縮水を除去してCO流を得るステップ、及びCO流を浄化・圧縮するステップを含む、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
酸素燃焼プロセスにより生成される排気中に、不動態化剤として作用するために、尿素合成反応に供給されるCO流中に維持される過剰な酸素が存在する、請求項1~11のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項13】
アンモニアと二酸化炭素の反応により尿素を製造するための尿素ユニット(2)、及び、アンモニアと二酸化炭素から尿素合成反応を供給するために、二酸化炭素を生成して尿素ユニット(2)に送る酸素燃焼ユニット(3)を備える尿素製造プラント(1)であって、
酸素燃焼ユニット(3)が無炎燃焼器を備え、炭素供給物の無炎酸素燃焼プロセスを実
施するように構成された無炎酸素燃焼ユニットであることを特徴とする尿素製造プラント。
【請求項14】
酸素燃焼ユニット(3)が無炎加圧酸素燃焼ユニットであり、前記燃焼器が加圧される、請求項13に記載のプラント。
【請求項15】
前記燃焼器が、800~1800℃の範囲の燃焼温度で作動する、請求項13又は14に記載のプラント。
【請求項16】
前記燃焼器が、0~40bar gの範囲の圧力で作動する、請求項13~15のいずれか一項に記載のプラント。
【請求項17】
酸素燃焼ユニット(3)が、酸素を酸素燃焼ユニット(3)に供給するための酸素供給ライン(5)を介して、酸素生成ユニット(7)に接続されている、請求項13~16のいずれか一項に記載のプラント。
【請求項18】
アンモニアが水素と窒素の直接反応により製造されるアンモニアユニット(8)を備え、酸素生成ユニット(7)がアンモニアユニット(8)の空気分離ユニットによって規定される、請求項17に記載のプラント。
【請求項19】
酸素燃焼ユニット(3)に、少なくとも80%volの酸素を含む酸素流が供給される、請求項13~18のいずれか一項に記載のプラント。
【請求項20】
エネルギー再生ユニット(13)を備え、
エネルギー再生ユニット(13)が、酸素燃焼ユニット(3)で生成された排気をエネルギー再生ユニット(13)に送配する排気ライン(11)によって酸素燃焼ユニット(3)に接続されており、
エネルギー再生ユニット(13)が、前記排気から熱エネルギーを再生し、蒸気及び/又は電気エネルギーを生成するように構成された、請求項13~19のいずれか一項に記載のプラント。
【請求項21】
エネルギー再生ユニット(13)を酸素燃焼ユニット(3)及び/又はエネルギー再生ユニット(13)自体に接続し、排気の一部を酸素燃焼ユニット(3)及び/又はエネルギー再生ユニット(13)に再循環させる排気再循環ライン(16)を備える、請求項20に記載のプラント。
【請求項22】
酸素燃焼ユニット(3)で生成された排気であって、COを含有する排気の少なくとも一部からCOを回収する(すなわち分離する)ように構成されたCO回収セクション(20)を備えた、請求項13~21のいずれか一項に記載のプラント。
【請求項23】
CO回収セクション(20)が、排気処理ユニット(21)、凝縮ユニット(22)及び浄化・圧縮ユニット(15)を備え、これらが、排気ライン(11)のそれぞれの部分(11a、11b、11c)によって直列にエネルギー再生ユニット(13)と互いに接続されている、請求項22に記載のプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
この出願は2017年8月4日に出願されたイタリア国特許出願第102017000090748号の優先権を主張する。当該出願の開示は参照によって組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
本発明は、炭素供給物の酸素燃焼によって生成されたCO2を使用する尿素製造方法及び製造プラントに関する。
【0003】
環境保護の要求は、ますます感じられており、とりわけCO2排出の注意深い監視が必要である。
【0004】
したがって、様々な産業分野では、高いエネルギー効率及び汚染物質とCO2の排出の削減を特徴とする解決法(例えば後者のリサイクルを介する)の採用が求められている。
【背景技術】
【0005】
通常、アンモニアプラントと尿素プラントを備える工業用尿素製造複合施設では、尿素合成に必要なCO2が、既知の技術を用いたプロセスガス洗浄を介してアンモニアプラントで回収され、尿素プラントに送られる。アンモニアプラントから回収可能なCO2の量は、プラント自体の容量(製造されたアンモニアに関して)と供給組成物の関数である。特に、高メタン含有ガス(いわゆる「軽」燃料)の供給の場合、生成されるCO2の量は、利用可能なアンモニアに関して、尿素プラントの容量を制限することが証明できる。これらの場合、利用可能なCO2の量を増やすために採用される解決法は、基本的に2つである:
【0006】
1.アンモニアプラントのプロセスガス製造セクション(化石燃料から水素を製造するよう指定されたセクション)の拡大;
【0007】
2.通常、アミン又は別の溶媒で洗浄し、その後の回収の後に続く、改質オーブンの排気管及び/又は他の排気筒(ガスタービン、補助ボイラーなど)からのCO2の捕捉。分離はCO2の物理化学的吸収によって行われ、CO2は使用するために尿素合成反応に適した圧力で圧縮する必要がある。
【0008】
しかしながら、これらの解決法はそれ自体がさらに問題を引き起こす可能性がある。
【0009】
特に、改質又はガス化に基づいたアンモニアプラントの場合、CO2の生成を増加させるためのアンモニアプラントのプロセスガス製造セクションの拡大は、対応するエネルギー消費の増加を必然的に伴う。それどころか、排気筒からのCO2回収の場合、新しい設備一式の設置にかかる費用と、回収と溶媒の再統合にかかる運転費用を考慮する必要がある。
【0010】
一方、炭化水素の改質又はガス化に基づいたアンモニアプラント(例えば、H2及びN2がプラントの外部の他の供給源から入手できる場合)では、CO2が不足しているため、製造されたアンモニアを尿素に変換することはできず、CO2を他の供給源から利用可能にする必要がある。
【0011】
CO2生成の既知の技術は、酸素燃焼プロセスに基づいている。
【0012】
端的には、酸素燃焼は、空気の代わりに酸素を一次酸化剤として使用して燃料を燃焼させる一種の燃焼である。
【0013】
一般的に、空気の窒素が存在しないため、酸素燃焼の排出された排気中のCO2濃度は増加する。実際、酸素燃焼は主に水蒸気と濃縮二酸化炭素を生成し、CO2の分離及び/又はそのリサイクルを簡素化する。排出された排気は、従来の燃焼プロセスで得られるものに比べて窒素含有量が著しく低く(したがって、むしろ従来の空気燃焼プロセスで通常生成され、特に危険な汚染物質を構成する窒素酸化物の含有量についても明らかに低い)、含まれているものはほとんどCO2と水蒸気である。したがって、水を凝縮するために排出ガスを冷却することにより、CO2は最小限のエネルギー消費で回収される。さらに、燃焼プロセスに窒素が存在しないため、不活性物質の加熱が回避され、システムのエネルギー効率が向上する。
【0014】
産業用アンモニア及び尿素製造方法/プラントにおけるCO2回収のための酸素燃焼の適用例は、特許文献1に記載されている。
【0015】
特に、特許文献1は、アンモニア合成セクションと標準の酸素燃焼システムの統合を記載している。当該アンモニア合成セクションは、水素と窒素から出発して粗アンモニアが製造されるアンモニア合成ユニット;及び、未処理アンモニアが凝縮され、未反応の窒素及び水素から分離されて、精製されたアンモニアの流れを作る分離ユニットを備える。空気分離ユニット由来の酸素の存在下で燃料の燃焼が行われる酸素燃焼反応器は、アンモニアプラントを用いて、特に熱接続ラインによって熱的に統合される温水又は蒸気を生成するために使用される。該熱接続ラインは、酸素燃焼反応器をアンモニア合成ユニット、及び/又は、アンモニア分離ユニットを備えた空気分離ユニットに接続する。
【0016】
特許文献1に記載された統合プラントは、アンモニア(プラント外部の他の供給源から利用可能な水素と、空気分離セクションから得られた窒素を使用)及び酸素燃焼プロセスで捕捉されたCO2を生成する。特定の利用においては、専用の尿素プラントにおける生成物自体(アンモニアとCO2)の尿素への変換も想定される。
【0017】
特許文献1の解決法では、標準の酸素燃焼セクションから排出される排気(送り込まれた供給物に窒素と硫黄が含まれている場合は高いNOx及びSOx含有量を有する)の浄化と、その後の尿素合成(存在する場合)の両方に、アンモニアの製造プラントが必要である。
【0018】
しかしながら、特許文献1に記載された種類のプラント及び方法は、基本的に類似する他のものと同様に、少なくとも一部の用途では完全に十分なものではないことが証明できる。
【0019】
例えば、利用可能なアンモニアに関してCO2が制限的であることが証明された尿素製造プラントの上記前提では、特許文献1の解決法は次の理由で適用できない:
【0020】
- さらに、アンモニア合成セクションと、酸素燃焼ユニットと熱的に統合された分離セクションが必要である。したがって、同時にアンモニアを製造することなく物質収支を閉じることを要求されたCO2のみの生成はできない;
【0021】
- プラントの別のユニットからH2を利用可能にする必要がある。
【0022】
さらに、一般的な酸素燃焼では、あらゆる性質の多様な供給物を供給することができず、燃料流量の変動に関連するバーナーの典型的な問題にさらされる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【文献】米国特許出願公開第2015/0183650号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明の目的の1つは、先行技術の際立った欠点を克服することを可能にする尿素製造方法及び尿素製造プラントを提供することである。
【0025】
特に、本発明の目的の1つは、既知の尿素製造方法/プラントの効率を改善し、供給の種類と流量に関してそれらの柔軟性を高めることである。
【発明を解決するための手段】
【0026】
したがって、本発明は、付属の請求項1及び13にそれぞれ基本的に定義された尿素製造方法及び尿素製造プラントに関する。
【0027】
本発明の追加の好ましい特徴は、従属請求項に規定される。
【0028】
本発明によれば、尿素合成に必要な二酸化炭素の一部又は全部は、特定のモードで実施される炭素供給物の酸素燃焼プロセスで生成される。具体的には、酸素燃焼プロセスは無炎酸素燃焼プロセスであり、好ましくは加圧される。
【0029】
このようにして、酸素燃焼プロセス及びそれが実施される関連する酸素燃焼ユニットは、従来技術と比較して、特に特許文献1が提案する解決法と比較して、はるかに効果的かつ有益な方法で尿素製造方法/製造プラントに統合され、様々な物理的状態と様々な組成を有し、浄化を必要とする高濃度のNOxとSOxの排気ガスを有さない、同一の燃焼器内の可変流量の炭素供給物の供給を管理することができる。
【0030】
酸素燃焼は、既存又は新規の尿素プラント内に統合することができる、好ましくは加圧された特定の反応器内で実施される。
【発明の効果】
【0031】
これにより、本発明は以下の主な利点を得る:
【0032】
- 排気中のその濃度が高く、汚染物質や不活性物質の含有量が少ないため、CO2の捕捉が著しく簡素化される;
【0033】
- 供給可能な炭素供給物の幅広い柔軟性により、隣接するプラントからの(さもなければ廃棄及び/又は管理が困難となる)廃棄物の使用が可能になる;
【0034】
- 余剰の電気エネルギー及び/又は蒸気は、1つが稼働している複合施設内に輸送及び/又は統合されて、その効率を高めることができる;
【0035】
- 加圧された無炎酸素燃焼を実施することにより、加圧されたCO2を捕捉し、尿素プラントで必要な圧力にするための圧縮コストを削減できる;
【0036】
- 無炎かつ加圧された酸素燃焼を実施することにより、特にアンモニアを用いた洗浄が不要な排気処理セクションを著しく削減できる;
【0037】
- 燃焼排気中の過剰酸素を利用することにより、尿素プラントが必要とする可能性のある不動態化空気の量を減らすことができる(特定のケースでは、供給に応じて、さらに取り除くことができる);
【0038】
- 炭化水素の改質又はガス化とは異なる技術でアンモニアが製造される場合(例えば純粋なH2及びN2から始まる場合)にも、尿素プラントをアンモニアプラントに関連させることができる。
【0039】
簡潔に言えば、本発明は、利用可能なアンモニアに関して必要なCO2の量を保証し、既存の尿素製造プラントの能力を増大させることを可能にする。
【0040】
さらに、尿素製造方法とは無関係に、おそらく他の供給源からの利用可能なアンモニアを含む新しい尿素プラントにおいて、酸素燃焼プロセス/プラントを介して生成したCO2を使用することが可能である。
【0041】
(図面の簡単な説明)
本発明のさらなる特徴及び利点は、付属の図面を参照して、以下の非限定的な実施形態の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1図1は、本発明による統合された酸素燃焼ユニットを備えた尿素の製造プラントを概略的かつ簡略化した形態で示すブロック図である。
図2図2は、図1のプラントのバリエーションの概略図であり、アンモニア製造用のアンモニアユニットも備えている。
【発明を実施するための形態】
【0043】
(発明を実施するための最良の形態)
図1では、全体として尿素製造プラントが1として示されており、アンモニアと二酸化炭素の反応により尿素を製造するための尿素ユニット2、及び、アンモニアと二酸化炭素から尿素合成反応を供給するために、二酸化炭素(CO2)を生成して尿素ユニット2に送る酸素燃焼ユニット3を備える。
【0044】
尿素ユニット2(酸素燃焼ユニット3の統合により「改良された」既存のユニットであってもよい)自体は基本的に既知であり、したがって簡略化するために説明も図示も詳細には行なわない。
【0045】
尿素ユニット2は、その中で実施される尿素製造方法と同様に、様々な種類のものとすることができる。
【0046】
例えば、必然的ではないが、尿素ユニット2は、従来のいわゆる「Snamprogetti(商標)Urea Technology」なる尿素方法を実施するように構成することができる。しかし、本発明は他の尿素製造のプラント/方法にも適用されることが理解される。
【0047】
一般的に、尿素ユニット2は主に以下のものを含む:アンモニアと二酸化炭素からの尿素反応合成が行われる尿素合成セクション;未反応のアンモニアと二酸化炭素と水の除去と、回収された成分の再循環によって、合成セクションで製造された尿素溶液が徐々に濃縮されるいくつかの回収セクション(例えば、高圧回収セクション、中圧回収セクション及び低圧回収セクション);プロセス凝縮物(基本的に水)の処理セクションに接続された真空濃縮セクション;例えば、造粒ユニット又は造粒塔を備える仕上げ/固化セクション。
【0048】
尿素ユニット2は、酸素燃焼ユニット3で生成されたCO2(尿素反応合成の試薬として使用される)を受け取る。
【0049】
酸素燃焼ユニット3には、燃料供給ライン4から炭素供給物(燃料)が供給され、酸素供給ライン5から酸素流(酸化剤)が供給される。
【0050】
酸素燃焼ユニット3によって供給される供給物は、あらゆる種類と物理的状態であってもよい(例えば、低発熱量のガス、液体又は固体の製油所残留物、廃棄物、バイオマス、石炭など)。必要に応じて、例えば石炭火力の場合、燃料供給ライン4に沿って配置された前処理ユニット6において、酸素燃焼ユニット3に供給する前に、供給物を前処理することができる。
【0051】
酸素燃焼ユニット3に供給する酸素は、酸素供給ライン5を介して酸素燃焼ユニット3に接続された酸素生成ユニット7において生成される。
【0052】
酸素生成ユニット7は、例えば、基本的に既知の空気分離ユニットであり、空気を窒素と酸素に分離するように構成されている。
【0053】
空気の分離は任意の既知の技術により、例えば、分圧蒸留又は極低温分留、膜分離、適切な材料(モレキュラシーブ、ゼオライト等)への吸着により、特にいわゆる圧力スイング吸収技術(Pressure Swing Adsorption,PSA)又は真空スイング吸収(Vacuum Swing Adsorption,VSA)又はハイブリッド溶液(Vacuum Pressure Swing Adsorption,VPSA)により実施できる。
【0054】
酸素生成ユニット7は、他の種類のもの、例えば水溶液の電気分解により作動する種類のものであってもよいことが理解される。
【0055】
有利には、図2に示すように、尿素製造プラント1が、アンモニアが製造されるアンモニアユニット8を備えるか又はそれに隣接し、そしてアンモニアユニット8が、極低温空気分離ユニットを使用する自己熱改質技術(AutoThermal Reforming, ATR)に基づいている場合、酸素生成ユニット7は、投資と運用コストが明らかに削減される前記既存の極低温空気分離ユニットが特徴である空気分離ユニットである。したがって、酸素生成ユニット7(すなわち空気分離ユニット)は、酸素燃焼ユニット3に加えて、アンモニアユニット8にも、窒素及び酸素をアンモニアユニット8に供給する窒素ライン9及び酸素ライン10を介して接続されている。
【0056】
酸素燃焼ユニット3に必要な酸素の量と純度は、いずれの場合でも、90~95%vol以下の酸素を供給する既に述べた吸着又は膜分離の技術として投資の面でより都合の良い極低温分留の代替技術を用いても、空気分離を可能にするものである。
【0057】
一般的に、酸素燃焼ユニット3には、少なくとも約80%vol、好ましくは少なくとも90%volの酸素を含む酸素流が供給される。
【0058】
酸素燃焼ユニット3は、具体的には、無炎酸素燃焼ユニット、特に無炎加圧酸素燃焼ユニットであり、無炎酸素燃焼、特に、酸素の存在下で燃料の無炎加圧酸素燃焼を実施するように構成される。
【0059】
酸素燃焼ユニット3、具体的には酸素燃焼ユニット3の燃焼器(燃焼室)において実施される無炎酸素燃焼プロセス(好ましくは加圧)では、炎が発生することなく燃焼が発生する動作条件の酸素を用いて炭素供給物(燃料)が燃焼する。
【0060】
本発明によれば、酸素燃焼ユニット3の燃焼器は無炎燃焼器であり、好ましくは加圧され、等温である。
【0061】
好ましくは、燃焼器の動作圧力は0~40bar gの範囲である。
【0062】
好ましくは、燃焼温度は約800~約1800℃、好ましくは約1000~約1500℃の範囲である。
【0063】
一例として、無炎酸素燃焼プロセス(好ましくは加圧)は、以下の文献の1つ以上に記載されている種類のモード及び燃焼器を用いて実施される:WO 2009071230、WO 2009071238、WO 2009071239、WO 2014016235、WO 2014016237、WO 2015097001。
【0064】
酸素燃焼プロセスは、特にCO2を含む排気を生成し、排気ライン11によって酸素燃焼ユニット3から排出する。また溶融廃棄物を固化し、不活性化してから、排出ライン12を介して酸素燃焼ユニット3から除去する。
【0065】
酸素燃焼ユニット3は、排気ライン11によってエネルギー再生ユニット13に接続されている。
【0066】
酸素燃焼プロセスによって生成された1000~1500℃の範囲の温度の排気は、排気ライン11を介してエネルギー再生ユニット13に送られる。そこでは、熱エネルギーが蒸気及び/又は電気エネルギーに変換され、プラント1のエネルギー消費を支える。
【0067】
したがって、エネルギー再生ユニット13は、酸素燃焼ユニット3で生成された前記排気から熱を再生し、蒸気及び/又は電気エネルギーを生成するように構成される。
【0068】
例えば、エネルギー再生ユニット13は、水ライン14から水が供給され、蒸気を生成するボイラーを備える。該蒸気は、プラント1において他のプロセス流体を加熱するための、及び/又は、発電機と結合したタービンによって電気エネルギーを生成するための、加熱流体として使用される。
【0069】
特に、エネルギー再生ユニット13で生成された蒸気及び/又は電気エネルギーは、例えば、尿素ユニット2にCO2を供給する浄化・圧縮ユニット15(後述する)又は酸素生成ユニット7において使用される。
【0070】
予想される過剰な蒸気及び/又は電気エネルギーは、プラント1の既存のネットワークと統合されるため、そのプラント自体の全体的な効率を向上させるか、輸送される(プラント1の外部のユーザーに供給される)。
【0071】
蒸気は、既存のプラントと容易に統合できるように、エネルギー再生ユニット13で任意の所望の圧力レベルで(例えば、蒸気タービンの様々な段階から蒸気を抽出することにより)生成することができる。
【0072】
すなわち、酸素燃焼ユニット3が既存の尿素製造プラント1に組み入れられ、結果として尿素製造能力が増大した場合、エネルギー再生ユニット13で生成された蒸気及び/又はエネルギーの一部を尿素ユニット2に送り、まさに製造能力の増加によって、より大きな消費を支えることができる。
【0073】
電気エネルギーを生成する別の方法としては、例えば、従来の蒸気サイクルの代わりに超臨界CO2サイクルを使用することもあり得る。
【0074】
エネルギー再生ユニット13から排出される排気の一部は、送風機17を備えた排気再循環ライン16によって、酸素燃焼ユニット3に、場合によってはエネルギー再生ユニット13に再循環される。
【0075】
特に、排気再循環ライン16は、それ自体を第1のアーム16aで酸素供給ライン5に挿入し、任意に、第2の分岐16bによってエネルギー再生ユニット13に接続される。
【0076】
エネルギー再生ユニット13から排出される排気の残りの部分はCO2回収セクション20で処理される。CO2回収セクション20は、尿素ユニット2で行われる尿素反応合成を供給するのに適したCO2純度の規格で排気からCO2を回収(分離)するように構成されている。
【0077】
次に、エネルギー再生ユニット13は、排気ライン11の部分11aによってCO2回収セクション20に接続される。
【0078】
例えば、CO2回収セクション20は、排気処理ユニット21、凝縮ユニット22及び浄化・圧縮ユニット15を備える。これらは、排気ライン11のそれぞれの部分11a、11b、11cによって直列にエネルギー再生ユニット13と互いに接続されている。
【0079】
酸素燃焼ユニットによって供給される炭素供給物に存在する可能性のある硫黄、塩素などの汚染物質を排気から除去するために、排気処理が基本的に必要である。
【0080】
排気ガス処理の種類は、酸素燃焼ユニットによって供給される炭素供給物の組成、すなわち存在する汚染物質に依存する。
【0081】
例えば、硫黄の多い炭素供給物が供給される場合、排気処理ユニット21は、最終ユーザー及び/又はその後の処理によって要求される規格まで硫黄を除去するように構成されなければならない。様々な可能性の中でも、例えば、石灰ベースの処理を実施できる。供給された供給物に塩素が存在する場合、苛性ソーダに基づく処理などを行うことができる。
【0082】
明らかに、排気処理ユニット21は、様々な異なる処理を実施するように構成することができる。それにもかかわらず、処理はいずれの場合も比較的単純であり、従来の燃焼と一般的な酸素燃焼の両方において、下流に比べて必要なエネルギー消費が少ない。
【0083】
一実施形態では、酸素燃焼プロセスによって生成された排気中に過剰の酸素が存在する。これにより、CO2と混合される可能性のある不動態化空気の量を減らすことができ、尿素ユニット2の金属表面の不動態化が可能になり、プラント1の全体的な効率がさらに向上するため、排気中の過剰な酸素は、尿素ユニット2に供給されるCO2流で役に立つように維持される。
【0084】
次に、排気処理ユニット21で処理された排気は、凝縮ユニット22に送られ、そこでは凝縮水回収ライン23を介して除去される水を除去するために凝縮を受ける。次に、浄化・圧縮ユニット15に送られ、そこではCO2が排気から分離される。排気から分離されたCO2流は、CO2供給ライン24により尿素ユニット2に供給される。一方、不活性物質で満たされた排気は、排気排出ライン25により、例えば排気筒に排出される。
【0085】
一実施形態では、酸素燃焼ユニット3由来のガス流、及び、排気ライン11の部分11aを介したエネルギー再生ユニット13由来のガス流は、尿素ユニット2によって要求される純度の規格を既に有している。この場合、有益には、CO2回収セクション20は、凝縮ユニット22(排気処理ユニット21が不要であるため)と、圧縮ユニットのみに縮小されたユニット15(浄化の必要なし)のみを備える。
【0086】
浄化・圧縮ユニット15から排出されるCO2は、尿素ユニット2に送られ、尿素ユニット2の最も適切な部分に導入され、好ましくは既に必要な圧力で、場合によってはプラント1において、既に利用可能なCO2流と混合される。
【0087】
一実施形態では、酸素燃焼ユニット3及びそれに続くCO2回収セクション20は、尿素ユニット2が必要とするすべての二酸化炭素を供給する。
【0088】
この場合、浄化・圧縮ユニット15から排出されるCO2流は、尿素ユニット2の合成セクションによって、約140~200バールの圧力及び約90~150℃の温度で直接供給される。
【0089】
別の実施形態では、浄化・圧縮ユニット15由来のCO2流は、代わりに、尿素ユニット2のCO2コンプレッサーの出口(排出)(約160bar g以上の圧力で)、同じコンプレッサーの入口(取入口)(0~2bar gの圧力で)又は中間ステップの1つ(2~160bar gの中間圧力で)に送られる。
【0090】
最後に、付属の特許請求の範囲の範囲外ではない、本明細書に記載の方法及びプラントにさらなる修正及び変更を加えることができることが理解される。
図1
図2