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特許7202362組み換えMVA及び抗体の静脈内投与を用いた、がん治療のための併用療法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-27
(45)【発行日】2023-01-11
(54)【発明の名称】組み換えMVA及び抗体の静脈内投与を用いた、がん治療のための併用療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 48/00 20060101AFI20221228BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20221228BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20221228BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221228BHJP
   C12N 15/863 20060101ALN20221228BHJP
【FI】
A61K48/00 ZNA
A61K35/76
A61K39/395 E
A61K39/395 T
A61P35/00
C12N15/863 Z
【請求項の数】 29
(21)【出願番号】P 2020511314
(86)(22)【出願日】2018-08-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-05
(86)【国際出願番号】 EP2018072789
(87)【国際公開番号】W WO2019038388
(87)【国際公開日】2019-02-28
【審査請求日】2021-07-26
(31)【優先権主張番号】17187824.2
(32)【優先日】2017-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509296443
【氏名又は名称】バヴァリアン・ノルディック・アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】ホーホライン・フーベルトゥス
(72)【発明者】
【氏名】ラウターバッハ・ヘニング
(72)【発明者】
【氏名】メディナ・エチェヴェルツ・ホセ
(72)【発明者】
【氏名】ハビャン・マティアス
【審査官】菊池 美香
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-524075(JP,A)
【文献】特表2017-515837(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0202272(US,A1)
【文献】癌と化学療法、2003、Vol. 30, pp.1780-1783
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 48/00
A61K 35/76
A61K 39/395
A61P 35/00
C12N 15/863
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
がん患者において腫瘍サイズを縮小させ、及び/または生存率を向上させるのに用いるための医薬組み合わせ物であって、
(a)前記患者への静脈内投与における使用のための組み換え改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)であって、
(i)第1の異種の腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸、および
(ii)CD40Lをコードする第2の核酸
を含む前記MVAと、
(b)Fcドメインを含むとともに、腫瘍細胞の細胞膜上に発現する抗原に特異的である抗体と、
を含み、
(a)及び(b)を前記がん患者に投与すると、単独で(a)を非静脈内投与するかまたは単独で(b)を投与する場合と比べて、前記がん患者の腫瘍サイズが縮小し、及び/または生存率が上昇し、
前記第1の核酸がHER2抗原をコードし、前記抗体が抗HER2抗体である、
前記医薬組み合わせ物
【請求項2】
前記組み換えMVAが、第の異種TAAをコードする第の核酸をさらに含む、請求項1に記載の医薬組み合わせ物
【請求項3】
前記第2の異種TAAが、5-α-レダクターゼ、α-フェトプロテイン(「AFP」)、AM-1、APC、April、Bメラノーマ抗原遺伝子(「BAGE」)、β-カテニン、Bcl12、bcr-abl、Brachyury、CA-125、カスパーゼ-8(「CASP-8」、「FLICE」としても知られている)、カテプシン、CD19、CD20、CD21/補体受容体2(「CR2」)、CD22/BL-CAM、CD23/FcεRII、CD33、CD35/補体受容体1(「CR1」)、CD44/PGP-1、CD45/白血球共通抗原(「LCA」)、CD46/メンブレンコファクタープロテイン(「MCP」)、CD52/CAMPATH-1、CD55/崩壊促進因子(「DAF」)、CD59/プロテクチン、CDC27、CDK4、癌胎児性抗原(「CEA」)、c-myc、シクロオキシゲナーゼ-2(「cox-2」)、大腸癌欠失遺伝子(「DCC」)、DcR3、E6/E7、CGFR、EMBP、Dna78、ファルネシルトランスフェラーゼ、線維芽細胞増殖因子-8a(「FGF8a」)、線維芽細胞増殖因子-8b(「FGF8b」)、FLK-1/KDR、葉酸受容体、G250、Gメラノーマ抗原遺伝子ファミリー(「GAGEファミリー」)、ガストリン17、ガストリン放出ホルモン、ガングリオシド2(「GD2」)/ガングリオシド3(「GD3」)/ガングリオシド-モノシアル酸-2(「GM2」)、ゴナドトロピン放出ホルモン(「GnRH」)、UDP-GlcNAc:RMan(α1-6)R[GlcNAc-Man(α1-6)]β1,6-N--アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼV(「GnT V」)、GP1、gp100/Pme117、gp-100-in4、gp15、gp75/チロシン関連タンパク質-1(「gp75/TRP-1」)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(「hCG」)、ヘパラナーゼヒト乳癌ウイルス(「HMTV」)、70キロダルトンの熱ショックタンパク質(「HSP70」)、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(「hTERT」)、インスリン様増殖因子受容体-1(「IGFR-1」)、インターロイキン-13受容体(「IL-13R」)、誘導型一酸化窒素合成酵素(「iNOS」)、Ki67、KIAA0205、K-ras、H-ras、N-ras、KSA、LKLR-FUT、メラノーマ抗原コード遺伝子1(「MAGE-1」)、メラノーマ抗原コード遺伝子2(「MAGE-2」)、メラノーマ抗原コード遺伝子3(「MAGE-3」)、メラノーマ抗原コード遺伝子4(「MAGE-4」)、マンマグロビン、MAP17、Melan-A/T細胞によって認識されるメラノーマ抗原-1(「MART-1」)、メソセリン、MIC A/B、MT-MMP、ムチン、精巣特異的抗原NY-ESO-1、オステオネクチン、p15、P170/MDR1、p53、p97/メラノトランスフェリン、PAI-1、血小板由来増殖因子(「PDGF」)、μPA、PRAME、プロバシン、プロゲニポイエチン、前立腺特異的抗原(「PSA」)、前立腺特異的膜抗原(「PSMA」)、RAGE-1、Rb、RCAS1、SART-1、SSXファミリー、STAT3、STn、TAG-72、トランスフォーミング増殖因子-α(「TGF-α」)、トランスフォーミング増殖因子-β(「TGF-β」)、チモシン-β-15、腫瘍壊死因子-α(「TNF-α」)、TP1、TRP-2、チロシナーゼ、血管内皮増殖因子(「VEGF」)、ZAG、p16INK4グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(「GST」)およびTWISTからなる群から選択されている、請求項に記載の医薬組み合わせ物
【請求項4】
前記抗体が、前記第1及び/または第2の異種TAAに結合するのを防ぐために、前記第1及び/または第2の異種TAAが、1つ以上の変異を含む、請求項~3のいずれか1項に記載の医薬組み合わせ物
【請求項5】
(a)HER2抗体が、前記HER2抗原に結合するのを防ぐために、(b)前記HER2抗原の細胞外での二量化を防ぐために、(c)前記HER2抗原のチロシンキナーゼ活性を防ぐために、及び/または(d)前記HER2抗原のリン酸化を防ぐために、前記HER2抗原が、少なくとも1つの変異を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の医薬組み合わせ物
【請求項6】
前記HER2抗原が、トラスツズマブ結合ドメイン中に、E580、D582、P594、F595、K615およびQ624からなる群から選択した少なくとも1つの変異を含む、請求項に記載の医薬組み合わせ物
【請求項7】
前記HER2抗原が、ペルツズマブ結合ドメイン中に、H267、Y274、F279、V308、S310、L317、H318、K333およびP337からなる群から選択した少なくとも1つの変異を含む、請求項に記載の医薬組み合わせ物
【請求項8】
前記HER2抗原が、以下:
(a)D277RまたはE280Kである、HER2の細胞外二量体化を防ぐ変異;
(b)K753Mである、HER2のチロシンキナーゼ活性を防ぐ変異;および
(c)Y1023Aであるかまたは1139~1248位の残基の欠失である、HER2リン酸化を妨げる変異、
からなる群から選択される少なくとも1つの変異を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の医薬組み合わせ物
【請求項9】
配列番号1または配列番号13に示されるアミノ酸配列を有するHER2抗原を前記第1の核酸がコードする、請求項1に記載の医薬組み合わせ物
【請求項10】
前記第1の核酸が、配列番号2または配列番号14に示される配列を含むHER2抗原をコードする、請求項1~2のいずれかに記載の医薬組み合わせ物
【請求項11】
前記第2の異種TAAが、TWISTである、請求項2~10のいずれかに記載の医薬組み合わせ物。
【請求項12】
前記第2の異種TAAが、Brachyuryである、請求項2~10のいずれかに記載の医薬組み合わせ物
【請求項13】
前記Brachyury抗原が、核局在化シグナル(NLS)ドメインに対する1つ以上の変異を含む、請求項12に記載の医薬組み合わせ物
【請求項14】
配列番号3に示されるアミノ酸配列を含むBrachyury抗原を前記第2の核酸がコードする、請求項13に記載の医薬組み合わせ物
【請求項15】
前記抗体が、ペルツズマブ、トラスツズマブ、Herzuma、ABP980及びアドトラスツズマブエムタンシンから選択されている、請求項1~14のいずれか1項に記載の医薬組み合わせ物
【請求項16】
前記MVAが、MVA-BNである、請求項1~15のいずれか1項に記載の医薬組み合わせ物
【請求項17】
(a)を(b)と同時に、または(b)の後に投与する、請求項1~16のいずれか1項に記載の医薬組み合わせ物
【請求項18】
(a)及び(b)を前記がん患者にプライミング投与してから、(a)及び(b)のブースト投与を1回以上、前記がん患者に行う、請求項1~17のいずれか1項に記載の医薬組み合わせ物
【請求項19】
前記がん患者が、乳癌、肺癌、頭頸部癌、甲状腺、メラノーマ、胃癌、膀胱癌、腎臓癌、肝臓癌、メラノーマ、膵臓癌、前立腺癌、卵巣癌もしくは大腸癌からなる群から選択したがんを罹患しており、及び/または前記がんと診断されている、請求項1~18のいずれか1項に記載の医薬組み合わせ物
【請求項20】
前記がん患者が、HER2陽性である乳癌を罹患しており、及び/またはHER2陽性である乳癌と診断されている、請求項19に記載の医薬組み合わせ物
【請求項21】
がん患者において腫瘍サイズを縮小させ、及び/または生存率を向上させるための、医薬組成物であって、
以下の(i)および(ii):
(i)第1の異種の腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸、および
(ii)CD40Lをコードする第2の核酸
を含む、前記患者への静脈内投与における使用のための組み換え改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)を含み:
Fcドメインを含み、かつ腫瘍細胞の細胞膜上に発現する抗原に特異的である抗体と組み合わせて使用される、医薬組成物において、
前記組み換えMVAおよび前記抗体を前記がん患者に投与すると、単独で前記組み換えMVAを非静脈内投与するかまたは単独で前記抗体を投与する場合と比べて、前記がん患者の腫瘍サイズが縮小し、及び/または生存率が上昇し、
前記第1の核酸がHER2抗原をコードし、前記抗体が抗HER2抗体である、
前記医薬組成物。
【請求項22】
前記組み換えMVAが、第2の異種TAAをコードする第3の核酸をさらに含む、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記抗体が、前記第1及び/または第2の異種TAAに結合するのを防ぐために、前記第1及び/または第2の異種TAAが、1つ以上の変異を含む、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記第2の異種TAAが、TWISTである、請求項22または23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記抗体が、ペルツズマブ、トラスツズマブ、Herzuma、ABP980及びアドトラスツズマブエムタンシンから選択される、請求項21~24のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記組み換えMVAを前記抗体と同時に、または前記抗体の後に投与する、請求項21~25のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記組み換えMVA及び前記抗体を前記がん患者にプライミング投与してから、前記組み換えMVA及び前記抗体のブースト投与を1回以上、前記がん患者に行う、請求項21~26のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記がん患者が、乳癌、肺癌、頭頸部癌、甲状腺、メラノーマ、胃癌、膀胱癌、腎臓癌、肝臓癌、メラノーマ、膵臓癌、前立腺癌、卵巣癌もしくは大腸癌からなる群から選択したがんを罹患しており、及び/または前記がんと診断されている、請求項21~27のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項29】
前記がん患者が、HER2陽性である乳癌を罹患しており、及び/またはHER2陽性である乳癌と診断されている、請求項28に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がん治療のための併用療法に関するものであり、その併用薬には、静脈内投与する組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)ウイルスであって、異種の腫瘍関連抗原(TAA)をコードする核酸を含むMVAウイルス、及び抗体が含まれる。
【背景技術】
【0002】
組み換えポックスウイルスは、感染性生物、及びより最近には腫瘍に対する免疫療法ワクチンとして用いられてきた。Mastrangelo et al.J Clin Invest.2000;105(8):1031-1034。
【0003】
感染症及びがんに対する免疫療法ワクチンとして有用であることが分かっているポックスウイルス株の1つは、改変ワクシニアアンカラ(MVA)ウイルスである。MVAは、ワクシニアウイルスのアンカラ株(CVA)をニワトリ胚線維芽細胞で516回連続継代することによって作製された(論評については、Mayr,A.,et al.Infection 3,6-14(1975)を参照)。これらの長期継代の結果、得られたMVAウイルスのゲノムは、そのゲノム配列の約31キロベース分が欠失しているので、宿主細胞での複製が鳥類細胞に高度に制限されたものとして説明された(Meyer,H.et al.,J.Gen.Virol.72,1031-1038(1991))。得られたMVAがかなり非病原性であることが様々な動物モデルで示された(Mayr,A. & Danner,K.,Dev.Biol.Stand.41:225-34(1978))。より安全な製品(ワクチンまたは医薬など)の開発用に、安全性プロファイルの向上したMVA株が説明されてきている。国際公開第2002042480号を参照されたい(例えば、米国特許第6,761,893号及び同第6,913,752も参照されたい)(これらのいずれも、参照により、本明細書に援用される)。このようなバリアントは、ヒト以外の細胞及び細胞株、特にニワトリ胚線維芽細胞(CEF)では増殖的に複製できるが、ヒト細胞株(特には、HeLa細胞株、HaCat細胞株及び143B細胞株を含む)では複製能力がない。また、このような株は、インビボにおいて、例えば、免疫が重度に低下しており、複製型ウイルスに対する感受性が高いトランスジェニックマウスモデルAGR129のような特定のマウス株において、増殖的に複製できない。米国特許第6,761,893号を参照されたい。このようなMVAバリアント及びその誘導体(組み換え体を含む)は、「MVA-BN」といい、説明されてきている。国際公開第2002042480号を参照されたい(例えば、米国特許第6,761,893号及び同第6,913,752号も参照されたい)。
【0004】
腫瘍関連抗原(TAA)をコードするポックスウイルスベクターの使用によって、腫瘍サイズの縮小、及びがん患者の全生存率の向上に成功することが示されている。例えば、WO2014/062778を参照されたい。がん患者に、HER2、CEA、MUC1及び/またはBrachyuryのようなTAAをコードするポックスウイルスベクターを投与すると、がんと闘うために、患者が強固かつ特異的なT細胞応答を起こすことが示されている(同上)。Guardino et al.(2009)、Heery et al.,(2015)も参照されたい。
【0005】
HER2は、ポックスウイルスベクターの一部としてコードさせると有効であることが示されているようなTAAの1つである(同上)。HER2は、乳癌、大腸癌、肺癌、卵巣癌、子宮頸癌、膀胱癌、胃癌及び尿路上皮癌のような異なるタイプのがんである一部の患者の特定のタイプの腫瘍細胞において過剰発現する腫瘍関連抗原である。この抗原を発現する腫瘍細胞に対する免疫応答を惹起するために、HER2タンパク質の改変体を発現する組み換え改変ワクシニアウイルスアンカラ(「MVA」)ベクター(すなわちMVA-BN-HER2)でのワクチン接種など、様々なHER2ポリペプチドでの免疫が用いられてきている。例えば、Renard et al.,J.Immunol.171:1588-1595(2003)、Mittendorf et al.,Cancer 106:2309-2317(2006)、Mandl et al.,Cancer Immunol.Immunother.61(1):19-29(2012)を参照されたい。
【0006】
MVA-BN-HER2を用いた過去の研究によって、MVA-BN-HER2が、抗体及び細胞成分の両方を有するTH1偏向の免疫応答を誘導することが示された。例えば、Mandl et al.,2012を参照されたい。何人かの研究者は、感染症との関連において、様々な病原体から保護するとともに、それらの病原体を除去する際には、バランスのとれた免疫応答(液性媒介性成分及び細胞媒介性成分の両方を含む)が重要であることを示している。例えば、Hutchings et al.,J.Immunol.175:599-606(2005)を参照されたい。
【0007】
MVAのようなポックスウイルスは、TAAと併せたときのその有効性に加えて、CD40リガンド(CD40L)のようなCD40アゴニストと組み合わせると、有効性が増大することが示されている。WO2014/037124を参照されたい。CD40/CD40Lは、腫瘍壊死因子受容体/腫瘍壊死因子(「TNFR/TNF」)スーパーファミリーのメンバーである。CD40は、B細胞、マクロファージ及びDCを含む多くの種類の細胞で構成的に発現するが、そのリガンドCD40Lは、活性化CD4+T細胞で優勢に発現する[Lee et al.,“CD40,but not CD154,expression on B-cells is necessary for optimal primary B-cell responses,”J.Immunol.171(11):5707-5717(2002)、D.Y.Ma and E.A.Clark,“The role of CD40 and CD154/CD40L in dendritic cells,”Semin.Immunol.21(5):265-272(2009)]。感染または免疫後の早い段階での、DC及びCD4+T細胞間の同族相互作用によって、DCがCD8+T細胞応答をプライミングすることが「許可」される[J.P.Ridge et al.,“A conditioned dendritic cell can be a temporal bridge between a CD4+ T-helper and a T-killer cell,”Nature 393(6684):474-478(1998)]。DCへの許可によって、共刺激分子のアップレギュレーション、生存率の向上及びDCのクロスプレゼンテーション能の向上が生じる。このプロセスは主に、CD40/CD40Lの相互作用に媒介される[S.R.Bennet et al.,“Help for cytotoxic T-cell resoinses is mediated by CD40 signalling,”Nature 393(6684):478-480(1998)、S.P.Schoenberger et al.,“T-cell help for cytotoxic T-cell help is mediated by CD40-CD40L interactions,”Nature 393(6684):480-483(1998)]が、CD40/CD40L非依存的な機序も存在する(CD70、LT.beta.R)。興味深いことに、DC上に発現するCD40Lと、CD8+T細胞上に発現するCD40との直接的な相互作用も提言されており、ヘルパー非依存的なCTL応答の惹起について、考え得る説明が示されている[S.Johnson et al.,“Selected Toll-like receptor ligands and viruses promote helper-independent cytotoxic T-cell priming by upregulating CD40L on dendritic cells,”Immunity 30(2):218-227(2009)]。
【0008】
アゴニスト抗CD40抗体は、ワクチンアジュバントとして有用であり得ることがいくつかの研究で示されている。加えて、CD40Lをコードする組み換えAdV[K.Kato et al.,“Gene transfer of CD40-ligand induces autologous immune recognition of chronic lymphocytic leukemia B-cells,”J.Clin.Invest.101(5):1133-1141(1998)]及びVV[Bereta et al.,“Immune properties of recombinant vaccinia virus encoding CD154(CD40L)are determined by expression of virally encoded CD40L and the presence of CD40L protein in viral particles,”Cancer Gen.Ther.11(12):808-818(2004)]であって、インビトロ及びインビボにおいて、アジュバント非添加ウイルスと比べて優れた免疫原性を示すAdV及びVVが作製されてきた。
【0009】
CD40Lは、MVAの一部としてコードされると、疾患関連抗原に対する全体的なT細胞応答を誘導及び増強できることが示された(WO2014/037124)。WO2014/037124では、CD40Lをコードする組み換えMVA及び異種抗原が、インビボにおいて、DCの活性化を増強し、異種抗原に特異的なT細胞応答を増大させ、CD8 T細胞の質及び量を増大させることができることが示された(同上)。
【0010】
この10年で、がん治療のために抗体を使用することでも、かなり成果が見られた。例えば、Scott et al.,Nature Reviews Cancer 12,278-287(2012)を参照されたい。FDAの承認を受けたとともに、様々な方法で腫瘍細胞を殺傷する抗体療法がいくつか存在する。例えば、抗体療法は、細胞表面上の腫瘍抗原に抗体が結合するなどの、抗体の直接的作用を通じて、腫瘍細胞を殺傷できる(同上)。Brodowicz et al.,(2001)も参照されたい。これにより、腫瘍細胞のアポトーシス及び死滅、ならびに腫瘍受容体活性の阻害をもたらすことができる。受容体活性の阻止としては、腫瘍受容体の二量化の阻止、キナーゼ活性化の阻止、細胞外受容体の切断のブロック、受容体のインターナリゼーション及び下流シグナル伝達の誘導を挙げることができる。抗体療法による、腫瘍受容体活性の阻害によって、腫瘍の増殖を阻止できる(同上)。
【0011】
加えて、抗体療法は、腫瘍細胞を攻撃するためのがん患者自身の免疫系(免疫媒介性殺腫瘍細胞作用という)を向上させることによって、腫瘍細胞を殺傷できる(同上)。免疫媒介性殺腫瘍細胞作用としては、食作用、補体活性化、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、抗体による、腫瘍への遺伝子改変T細胞のターゲティング、及びCTLA-4のようなT細胞抑制性受容体の阻害を挙げることができる(同上)。
【0012】
ADCCは、抗体療法が腫瘍細胞を攻撃及び破壊する作用のうち、特に重要である作用の1つである。ADCCは、腫瘍細胞膜上の標的結合抗体と、患者の免疫系由来のエフェクター細胞との相互作用を通じて誘発される。Wang et al.,NK Cell mediated Antibody Dependent Cellular Cytotoxicity in Cancer Immunotherapy Front Immunol vol.6(2015)。多くの抗体療法の抗腫瘍有効性は、ナチュラルキラー(NK)細胞依存性であることが示されている(同上)。ヒトNK細胞は、抗体のFc部分に結合するタンパク質を発現できる。NK細胞は、結合して活性化すると、細胞傷害性顆粒のエクソサイトーシス、TNFファミリーデス受容体シグナル伝達、及びIFNγのような炎症誘発性サイトカインの放出を含むいくつかの経路を通じて、殺腫瘍作用を媒介する(同上)。
【0013】
がん患者が利用できる有効なポックスウイルスがん治療、化学療法、放射線療法及び抗体療法はあるが、腫瘍細胞が、これらの治療を回避及び/または減弱させるために利用する機序が数多く存在する。例えば、多くの腫瘍細胞は、患者の特異的な免疫系を回避するために、免疫系の特異的なCD8 T細胞による検出を抑制及び/または回避する目的で、免疫チェックポイント分子及び/または特異的な主要組織適合遺伝子複合体(MHC)の発現の低下を利用する。Scott et al.(2012)。加えて、腫瘍細胞は、腫瘍細胞表面上での腫瘍抗原の発現を修正または低減することによって、患者の自然免疫応答を回避して、それによって、抗体の結合、及びNK細胞による殺腫瘍作用の両方を低減できることが示されている(同上)。
【0014】
最近になって、腫瘍細胞が、がん患者の免疫系との平衡相に入ることによって、免疫系及びがん治療を回避できることが発見された。Bhatia et al.,Cancer Microenvrionment vol.4:209-217(2011)を参照されたい。平衡相の少なくとも1つの局面では、腫瘍細胞は体内において、従来の形態学的認識または細胞遺伝学的認識の閾値未満に留まることができる(同上)。例えば、腫瘍細胞上での腫瘍抗原受容体の発現は変動し、多くの場合、免疫系が腫瘍細胞を認識できる閾値を下回る程度まで減少する(同上)。
【0015】
がん及び腫瘍細胞が、がん治療及び患者の免疫系を能動的に回避する能力を踏まえると、免疫系を能動的に回避するこれらの腫瘍細胞を効果的に標的として殺傷するがん治療の開発に対する大きなニーズが存在する。加えて、平衡相を利用して、治療及び免疫系を回避する腫瘍及び腫瘍細胞を攻撃及び殺傷できるがん治療に対するニーズも存在する。少なくとも一態様では、本発明の各種実施形態は、免疫系を能動的に回避する腫瘍細胞の治療に伴う課題の克服に成功している。
【発明の概要】
【0016】
本発明の各種実施形態では、組み換えMVAは、腫瘍表面抗原に対する抗体と組み合わせて、患者に静脈内投与すると、がん患者の治療を増強し、より具体的には、腫瘍体積の縮小を増大させ、及び/またはがん患者の生存率を向上させることが明らかになった。
【0017】
したがって、一実施形態では、本発明は、がん患者において腫瘍サイズを縮小させ、及び/または生存率を向上させるのに用いる医薬組み合わせ物であって、その医薬組み合わせ物が、a)第1の異種の腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸を含む組み換え改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)であって、静脈内投与すると、がん患者において、異種の腫瘍関連抗原をコードする核酸を含む組み換えMVAの非静脈内投与によって誘導されるナチュラルキラー(NK)細胞応答及びT細胞応答と比べて、NK細胞応答の増強及びT細胞応答の増強の両方を誘導する組み換えMVA、ならびにb)Fcドメインを含むとともに、腫瘍細胞の細胞膜上に発現する抗原に特異的である抗体を含み、a)及びb)をがん患者に投与すると、a)またはb)のいずれかを単独で非静脈内投与した場合と比べて、そのがん患者の腫瘍サイズが縮小し、及び/または生存率が上昇する医薬組み合わせ物を含む。追加的な実施形態では、その組み換えMVAは、第2の異種TAAをコードする第2の核酸をさらに含む。
【0018】
1つ以上の好ましい実施形態では、その医薬組み合わせ物は、CD40Lをさらに含む。最も好ましい実施形態では、そのCD40Lは、上記の組み換えMVAによってコードされる。
【0019】
各種実施形態では、その抗体は、がん患者の治療用に承認されている。1つ以上の特定の実施形態では、その抗体は、抗CD20(例えば、リツキシマブ、オファツムマブ、トシツモマブ)、抗CD52(例えばアレムツズマブであるCampath)、抗EGFR(例えば、セツキシマブであるErbitux、パニツムマブ)、抗CD2(例えばシプリズマブ)、抗CD37(例えばBI836826)、抗CD123(例えばJNJ-56022473)、抗CD30(例えばXmAb2513)、抗CD38(例えばダラツムマブであるDarzalex)、抗PDL1(例えば、アベルマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ)、CTLA-4(例えばイピリムマブ)、抗GD2(例えば、3F8、ch14.18、KW-2871、ジヌツキシマブ)、抗CEA、抗MUC1、抗FLT3、抗CD19、抗CD40、抗SLAMF7、抗CCR4、抗B7-H3、抗ICAM1、抗CSF1R、抗CA125(例えばオレゴボマブ)、抗FRα(例えば、MOv18-IgG1、ミルベツキシマブソラブタンシン(IMGN853)、MORAb-202)、抗メソセリン(例えばMORAb-009)及び抗HER2からなる群から選択されている。より好ましい実施形態では、その抗体は、抗HER2抗体である。最も好ましい実施形態では、その抗体は、ペルツズマブ、トラスツズマブ、Herzuma、ABP980及びアドトラスツズマブエムタンシンから選択した抗HER2抗体である。
【0020】
各種の追加的な実施形態では、その第1及び/または第2のTAAが、その併用療法の抗体と結合及び/または相互作用するのを防ぐために、その第1及び/または第2のTAAは、1つ以上の変異を含む。1つ以上の好ましい実施形態では、第1のTAAは、HER2抗原である。より好ましい実施形態では、第1のTAAが、抗HER2抗体に結合するのを防ぐために、そのHER2抗原は、1つ以上の変異を含む。追加的な好ましい実施形態では、その第2のTAAは、Brachyury抗原である。より好ましい実施形態では、そのBrachyury抗原は、核局在化シグナル(NLS)ドメインに対する変異を1つ以上含む。
【0021】
1つ以上の好ましい実施形態では、本発明の組み換えMVAは、MVA-BNまたはその誘導体である。
【0022】
各種実施形態では、本発明は、がん患者において腫瘍サイズを縮小させ、及び/または生存率を向上させる1つ以上の方法に対するものである。一実施形態では、a)第1の異種の腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸を含む組み換えMVAであって、静脈内投与すると、がん患者において、異種の腫瘍関連抗原をコードする核酸を含む組み換えMVAウイルスの非静脈内投与によって誘導されるナチュラルキラー(NK)細胞応答及びT細胞応答と比べて、NK細胞応答の増強及びT細胞応答の増強の両方を誘導する組み換えMVAをがん患者に静脈内投与すること、ならびにb)そのがん患者に抗体を投与することであって、その抗体が、Fcドメインを含むとともに、腫瘍細胞の細胞膜上に発現する抗原に特異的であることを含む方法であって、a)及びb)をがん患者に行うと、a)またはb)のいずれかを単独で非静脈内投与で行う場合と比べて、がん患者の腫瘍サイズが縮小し、及び/またはがん患者の生存率が上昇する方法が存在する。
【0023】
1つ以上の好ましい実施形態では、その方法は、CD40Lをがん患者に静脈内投与することを含む。より好ましい実施形態では、そのCD40Lは、上記の組み換えMVAによってコードされる。
【0024】
別の実施形態では、本発明の組み換えMVAは、抗体と同時に、または抗体の投与後に投与する。より好ましい実施形態では、本発明の組み換えMVAは、抗体の後に投与する。
【0025】
さらに別の実施形態では、本発明は、がん患者における抗体療法の増強方法であって、本発明の医薬組み合わせ物をがん患者に投与することを含み、その医薬組み合わせ物の投与によって、その抗体療法によって誘導される抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)が、その抗体療法を単独で行った場合と比べて増強される方法を含む。
【0026】
さらに別の実施形態では、がん患者において、自然免疫応答の増強及び適応免疫応答の増強の両方を誘導する方法であって、本開示の医薬組み合わせ物を投与することを含み、その医薬組み合わせ物の投与によって、その医薬組み合わせ物またはその併用薬の要素単独を非静脈内投与した場合と比べて、そのがん患者の自然免疫応答及び適応免疫応答の両方が増強される方法が存在する。
【0027】
さらに追加的な各種実施形態では、本発明は、1つ以上の合成ペプチド、及びその合成ペプチドをコードする核酸に対するものである。より具体的な実施形態では、合成HER2ペプチド及び核酸が存在する。より好ましい実施形態では、その合成HER2ペプチドは、そのHER2ペプチドが、HER2抗体、好ましくは、ペルツズマブ、トラスツズマブ、Herzuma、ABP980及びアドトラスツズマブエムタンシンから選択した抗体と結合するのを防ぐ変異を1つ以上含む。追加的な好ましい実施形態では、その合成HER2ペプチドは、HER2抗原の細胞外での二量化、チロシンキナーゼ活性及び/またはリン酸化を防ぐ変異を1つ以上含む。
【0028】
別のより具体的な実施形態では、1つ以上の合成Brachyuryペプチド及び核酸が存在する。より好ましい実施形態では、その合成Brachyuryポリペプチド及び核酸は、核局在化シグナル(NLS)ドメインに1つ以上の変異を含む。
【0029】
本発明の追加の目的及び利点は、部分的には、下記の説明で示すことになり、部分的には、その説明から明らかとなるか、または本発明を実施することで認識し得る。本発明の目的及び利点は、添付の請求項に具体的に示されている要素及び組み合わせによって認識及び実現されることになる。
【0030】
添付の図面は、本明細書に援用されるとともに、本明細書の一部をなすが、本発明の1つ以上の実施形態を例示するとともに、本明細書とともに、本発明の原理を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1A~1Gは、MVA-OVA(rMVA)を静脈内(IV)投与すると、皮下(SC)投与した場合と比べて、NK細胞の全身的な活性化が強化されることを示している。MVAがCD40Lをコードすると(rMVA-CD40L)、NK細胞の活性化がさらに増強される。示されているのは、実施例1の結果であり、NK細胞の頻度及び発現(幾何平均蛍光強度(GMFI)として示した)を評価するために、NKp46CD3細胞における、示されているタンパク質マーカー(A)NKp46CD3細胞、B)CD69、C)NKG2D、D)FasL、E)Bcl-X、F)CD70及びG)IFN-γ)の染色を脾臓において評価した。
図2図2A~2Gは、MVA-OVA(rMVA)をIV投与すると、SC投与した場合と比べて、NK細胞の全身的な活性化が強化されることを示している。MVAが、CD40Lをコードすると(rMVA-CD40L)、NK細胞の活性化は、さらに増強される。示されているのは、実施例1の結果であり、NK細胞の頻度及び発現(幾何平均蛍光強度(GMFI)として示した)を評価するために、NKp46CD3細胞における、示されているタンパク質マーカー(A)NKp46CD3細胞、B)CD69、C)NKG2D、D)FasL、E)、Bcl-X、F)CD70及びG)IFN-γ)の染色を肝臓において評価した。
図3図3A~3Gは、MVA-OVA(rMVA)をIV投与すると、SC投与した場合と比べて、NK細胞の全身的な活性化が強化されることを示している。NK細胞の活性化は、MVAがCD40Lをコードすると(rMVA-CD40L)、さらに増強される。示されているのは、実施例1の結果であり、NK細胞の頻度及び発現(幾何平均蛍光強度(GMFI)として示した)を評価するために、NKp46CD3細胞における、示されているタンパク質マーカー(A)NKp46CD3細胞、B)CD69、C)NKG2D、D)FasL、E)Bcl-X、F)CD70及びG)IFN-γ)の染色を肺において評価した。
図4図4A~4Fは、MVA-HER2-Twist-CD40Lを静脈内(IV)投与すると、皮下(SC)投与した場合と比べて、NK細胞の全身的な活性化が強化されることを示している。示されているのは、実施例1の結果であり、NK細胞の頻度及び発現(幾何平均蛍光強度(GMFI)として示した)を評価するために、NKp46CD3細胞における、示されているタンパク質マーカー(A)NKp46CD3細胞、B)CD69、C)FasL、D)、Bcl-X、E)CD70及びF)IFN-γ)の染色を脾臓において評価した。
図5図5A~5Fは、MVA-HER2-Twist-CD40LをIV投与すると、SC投与した場合と比べて、NK細胞の全身的な活性化が強化されることを示している。示されているのは、実施例1の結果であり、NK細胞の頻度及び発現(幾何平均蛍光強度(GMFI)として示した)を評価するために、NKp46CD3細胞における示されているタンパク質マーカー(A)NKp46CD3細胞、B)CD69、C)FasL、D)、Bcl-X、E)CD70及びF)IFN-γ)の染色を肝臓において評価した。
図6図6A~6Fは、MVA-HER2-Twist-CD40LをIV投与すると、SC投与した場合と比べて、NK細胞の全身的な活性化が強化されることを示している。示されているのは、実施例1の結果であり、NK細胞の頻度及び発現(幾何平均蛍光強度(GMFI)として示した)を評価するために、NKp46CD3細胞における、示されているタンパク質マーカー(A)NKp46CD3細胞、B)CD69、C)FasL、D)、Bcl-X、E)CD70及びF)IFN-γ)の染色を肺において評価した。
図7図7A~7Fは、MVA-OVA-CD40L(rMVA-CD40L)をIV投与すると、IL-12p70及びIFN-γのレベルが上昇することを示している。示されているのは、実施例2の結果である。A)IFN-γの濃度は、rMVA-CD40Lの後、MVA-OVA(rMVA)での免疫と比べて高かった。B)NK細胞活性化サイトカインIL-12p70は、MVA-CD40Lでの免疫後にのみ検出可能であった。IFN-γの血清中レベルが高いことは、rMVA-CD40Lでの免疫後、脾臓において、IFN-γNK細胞(図1G参照)及びCD69グランザイムBNK細胞(C)の頻度が高いことと整合している。NHP(カニクイザル)において、MVA-MARV-GP-huCD40L(rMVA-CD40L)のIV注射後、同様の応答が見られ、すなわち、MVA-MARV-GP(rMVA)と比べて、IFN-γ(D)及びIL-12p40/70(E)の血清中濃度が高く、(Ki67)NK細胞の増殖(F)が増加した。
図8図8A~8Cは、NK細胞の活性化及び増殖の経時変化を示している。示されているのは、実施例3の結果であり、NK細胞の頻度及び発現を評価するために、NKp46CD3細胞における、示されているタンパク質マーカー(A)CD3CD19NKp46、B)NK細胞増殖マーカーKi67及びC)CD69の発現(幾何平均蛍光強度(GMFI)として示した))の染色を脾臓、肝臓、肺及び血液において評価した。
図9図9は、MVA-OVA(rMVA)及びMVA-CD40L(rMVA-CD40L)で全身免疫した場合の、エキソビボでのNK細胞媒介性傷害作用の増強を示している。実施例4に記載されているように、脾臓NK細胞を精製し、標的殺傷アッセイにおいてエフェクターとして使用した。NK細胞と、CFSEで標識したクラスI MHC欠損YAC-1細胞を、示されている比率で、一晩培養した。フローサイトメトリーによって、非生存CFSEYAC-1細胞を定量することによって、特異的殺傷率を評価した。
図10図10A~10Eは、実施例5に示されているように、MVA-OVA(rMVA)、MVA-CD40L(rMVA-CD40L)及びMVA-HER2-Twist-CD40Lで全身免疫した場合の、インビボ及びエキソビボでの抗体依存性細胞傷害(ADCC)の増強を示している。A)25μgの抗CD4、rMVA+5μgのラットIgG2b、1μgの抗CD4またはMVA-OVA(rMVA)+1μgの抗CD4のいずれかで、C57BL/6マウスをIV処置した。肝臓におけるCD4 T細胞(CD3CD4)の枯渇を解析したが、これは、特異的殺傷率(%)として示されている。NK細胞のADCC活性をエキソビボで評価するために、PBS、MVA-OVA(rMVA)またはMVA-OVA-CD40L(rMVA-CD40L)のいずれかで、B)C57BL/6マウスまたはC)Balb/cマウスをIV免疫した。E)PBSまたはMVA-HER2-Twist-CD40Lのいずれかで、Balb/cマウスをIV免疫した。脾臓NK細胞を精製し、抗体依存性殺傷アッセイにおいてエフェクターとして使用した。B)B16.F10細胞をマウス抗ヒト/マウスTrp1 mAb(クローンTA99)で被覆し、C)CT26-HER2細胞をマウス抗ヒトHER2 mAb(クローン7.16.4)で被覆した。抗体で被覆された標的細胞に、精製NK細胞をそれぞれ5:1及び4:1の比率で加えた。D)異なる濃度の抗ヒトHER2とインキュベートしたCT26-HER2細胞は、rMVA-CD40Lで活性化されたNK細胞によって、rMVAで活性化されたNK細胞よりも効率的に殺傷された。E)CT26-HER2細胞を各種濃度のマウス抗ヒトHER2 mAb(クローン7.16.4)で被覆した。抗体で被覆された標的細胞に、精製NK細胞を5:1の比率で加えた。
図11】IV免疫によって、SC免疫した場合と比べて強いCD8 T細胞応答が誘導されることを示している。実施例6に記載されているように、0日目及び15日目に、C57BL/6マウスをMVA-OVAによってSCまたはIV免疫した。H-2K/OVA257-264デキストラマーで染色後、血液におけるOVA特異的なCD8 T細胞応答を評価した。
図12】MVA-CD40Lによって、CD8 T細胞応答をさらに増強できることを示している。実施例7に記載されているように、0日目及び35日目に、C57BL/6マウスをMVA-OVA(rMVA)またはMVA-OVA-CD40L(rMVA-CD40L)でIV免疫した。H-2K/OVA257-264デキストラマーで染色後、血液におけるOVA特異的なCD8 T細胞応答を評価した。
図13図13A~13Bは、プライム/ブースト免疫後、NK細胞の活性化及び増殖が反復することを示している。実施例8に示されているように、C57BL/6マウスを、表1に示されているように、PBS、MVA-OVA(rMVA)またはMVA-OVA-CD40L(rMVA-CD40L)のいずれかでIV免疫した。2回目及び3回目の免疫後、1日目及び4日目に、NK細胞(NKp46CD3)を血液において、フローサイトメトリーによって解析した。A)は、CD69のGMFIを示しており、B)は、Ki67NK細胞の頻度を示している。
図14-1】図14A~14Mは、プライム/ブースト免疫後の全身性のサイトカイン応答を示している。実施例9に示されているように、C57BL/6マウスを、表1に示されているように、PBS、MVA-OVA(rMVA)またはMVA-OVA-CD40L(rMVA-CD40L)のいずれかでIV免疫した。免疫から6時間後の時点に、血清中サイトカインレベルを測定した。示されているのは、A)IL-6、B)CXCL10、C)IFN-α、D)IL-22、E)IFN-γ、F)CXCL1、G)CCL4、H)CCL7)、I)CCL2、J)CCL5、K)TNF-α、L)IL-12p70及びM)IL-18の結果である。
図14-2】図14A~14Mは、プライム/ブースト免疫後の全身性のサイトカイン応答を示している。実施例9に示されているように、C57BL/6マウスを、表1に示されているように、PBS、MVA-OVA(rMVA)またはMVA-OVA-CD40L(rMVA-CD40L)のいずれかでIV免疫した。免疫から6時間後の時点に、血清中サイトカインレベルを測定した。示されているのは、A)IL-6、B)CXCL10、C)IFN-α、D)IL-22、E)IFN-γ、F)CXCL1、G)CCL4、H)CCL7)、I)CCL2、J)CCL5、K)TNF-α、L)IL-12p70及びM)IL-18の結果である。
図15図15A~15Dは、MVA及びMVA-CD40Lでのプライム/ブースト免疫後の強力な抗原特異的なCD8 T細胞応答を示している。実施例10に記載されているように、C57BL/6マウスを、表1に示されているように、PBS、MVA-OVA(rMVA)またはMVA-OVA-CD40L(rMVA-CD40L)のいずれかでIV免疫した。反復免疫後の抗原特異的なCD8 T細胞応答の誘導を評価した。A)CD8 T細胞の頻度を評価し、B)B8特異的なCD8 T細胞応答を評価し、C)導入遺伝子特異的な(OVA)応答を評価し、D)OVA/B8特異的なCD8 T細胞の比率を評価した。
図16図16A~16Bは、MVA及びMVA-CD40Lでのプライム/ブースト免疫後のCD8及びCD4エフェクターT細胞の誘導を示している。実施例11に記載されているように、C57BL/6マウスを、表1に示されているように、PBS、MVA-OVA(rMVA)またはMVA-OVA-CD40L(rMVA-CD40L)のいずれかでIV免疫した。表現型的には、CD44の発現及び表面CD62Lの欠損によって、エフェクターT細胞を特定した。血液におけるA)CD44CD62LCD8 T細胞及びB)CD4 T細胞をモニタリングした。
図17図17A~17Bは、メラノーマモデルにおいて、異種のプライムブーストスキームで、rMVA-CD40LによってIV免疫した場合の抗腫瘍作用が優れていることを示している。実施例12に記載されているように、触知可能なB16.OVA腫瘍を有するC57BL/6マウスを、PBS、MVA-OVA(rMVA)またはMVA-OVA-CD40L(rMVA-CD40L)のいずれかで、SCまたはIVプライミングした(点線)。プライミング後、7日目及び14日目に、マウスに、その後のブーストをFPV-OVAで行った(破線)。腫瘍の成長を一定間隔で測定した。示されているのは、A)腫瘍の平均体積及びB)腫瘍接種後45日目までの、腫瘍を有するマウスの生存率である。
図18】MVA-OVA-CD40L(rMVA-CD40L)で1回IV免疫した後の効率的な腫瘍制御を示している。実施例13に記載されているように、触知可能なB16.OVA腫瘍を有するC57BL/6マウスをIVプライミングするか、またはIVでプライミング及びブーストを行うかした。腫瘍の成長を一定間隔で測定した。示されているのは、腫瘍の平均体積である。
図19図19A~19Cは、CD8 T細胞が、rMVA-CD40L媒介性腫瘍制御において不可欠な役割を果たすことを示している。実施例14に記載されているように、触知可能なB16.OVA腫瘍を有するC57BL/6マウスをPBS、MVA-OVA(rMVA)またはMVA-OVA-CD40L(rMVA-CD40L)のいずれかでIV免疫した。示されている場合、マウスに、200μgの抗CD8抗体を腹腔内(IP)投与した。A)CD8 T細胞応答を測定した。B)OVA特異的なCD8 T細胞応答を測定した。C)全生存率を表している。
図20図20A~20Cは、2つのTAAを同時に標的とすることが、1つのみを標的とするよりも効率的であることを示している。実施例15に記載されているように、触知可能なB16.OVA腫瘍を有するC57BL/6マウスをPBS、MVA-OVA-CD40L、MVA-OVA-TRP2またはMVA-OVA-TRP2-CD40LのいずれかでIV免疫した。腫瘍の成長を一定間隔で測定し、その成長は、A)個々のマウスの平均直径及びB)平均体積として示されている。C)全生存率が示されている。
図21-1】図21A~21Gは、rMVA-CD40Lでの免疫後の腫瘍微小環境(TME)におけるT細胞浸潤の増加を示している。実施例16に記載されているように、触知可能なB16.OVA腫瘍を有するC57BL/6マウスをPBS、MVA-OVA(rMVA)またはMVA-OVA-CD40L(rMVA-CD40L)のいずれかでIV免疫した。7日後、マウスを殺処分した。A)は、脾臓、腫瘍流入リンパ節(TDLN)及び腫瘍組織におけるCD45白血球のうちのCD8T細胞の頻度であり、B)は、免疫後の異なる器官におけるOVA257-264特異的なCD8T細胞の分布であり、C)は、OVA257-264特異的な腫瘍浸潤CD8T細胞上のPD-1及びLag3のGMFIであり、D)は、腫瘍浸潤CD8T細胞の代表的なドットプロットであり、Ki67及びPD-1の発現を示しており、E)は、腫瘍浸潤Ki67CD8T細胞の頻度及びPD-1のGMFIであり、F)は、CD45白血球のうちの腫瘍浸潤調節性T細胞(Treg)の頻度であり、G)は、PD-1high腫瘍浸潤Treg及びPD-1neg腫瘍浸潤Tregの頻度である。
図21-2】図21A~21Gは、rMVA-CD40Lでの免疫後の腫瘍微小環境(TME)におけるT細胞浸潤の増加を示している。実施例16に記載されているように、触知可能なB16.OVA腫瘍を有するC57BL/6マウスをPBS、MVA-OVA(rMVA)またはMVA-OVA-CD40L(rMVA-CD40L)のいずれかでIV免疫した。7日後、マウスを殺処分した。A)は、脾臓、腫瘍流入リンパ節(TDLN)及び腫瘍組織におけるCD45白血球のうちのCD8T細胞の頻度であり、B)は、免疫後の異なる器官におけるOVA257-264特異的なCD8T細胞の分布であり、C)は、OVA257-264特異的な腫瘍浸潤CD8T細胞上のPD-1及びLag3のGMFIであり、D)は、腫瘍浸潤CD8T細胞の代表的なドットプロットであり、Ki67及びPD-1の発現を示しており、E)は、腫瘍浸潤Ki67CD8T細胞の頻度及びPD-1のGMFIであり、F)は、CD45白血球のうちの腫瘍浸潤調節性T細胞(Treg)の頻度であり、G)は、PD-1high腫瘍浸潤Treg及びPD-1neg腫瘍浸潤Tregの頻度である。
図22図22A~22Fは、rMVA-CD40Lでの免疫後、TMEにおける、疲弊の少ない表現型でのTAA特異的なCD8 T細胞の持続性を示している。実施例17に記載されているように、腫瘍が触知可能となったら、OVA特異的な精製TCRトランスジェニックCD8 T細胞(OT-I)をB16.OVA担腫瘍生体にIV移入した。腫瘍の体積が少なくとも60mmに達したら、動物をMVA-BN、MVA-OVA(rMVA)またはMVA-OVA-CD40L(rMVA-CD40L)でIV免疫した。17日後、マウスを殺処分し、A)腫瘍組織における白血球のうちのCD8T細胞の頻度、B)CD8+T細胞中のLag3PD1の頻度、C)CD8+T細胞中のEomesPD1T細胞の頻度、D)免疫後のTMEにおけるOT-IトランスジェニックCD8T細胞の存在、E)OT-ICD8T細胞中のLag3PD1疲弊T細胞の頻度及びF)OT-ICD8T細胞中のEomesPD1疲弊T細胞の頻度について解析した。
図23図23A~23Bは、rMVA-CD40Lでの免疫後、TMEにおける調節性T細胞(Treg)が長期的に減少することを示している。実施例18に記載されているように、腫瘍が触知可能となったら、OVA特異的な精製TCRトランスジェニックCD8 T細胞(OT-I)をB16.OVA担腫瘍生体にIV移入した。腫瘍の体積が少なくとも60mmに達したら、動物をMVA-BN、MVA-OVA(rMVA)またはMVA-OVA-CD40L(rMVA-CD40L)でIV免疫した。17日後、さらなる解析のために、マウスを殺処分した。A)は、腫瘍組織におけるCD4T細胞のうちのFoxp3CD4Tregの頻度であり、B)は、Foxp3CD4Tregに対するCD8CD44エフェクターT細胞(Teff)の比率である。
図24】rMVA及びrMVA-CD40Lでの免疫後、抗CD40免疫グロブリンを注射した場合と比べて、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の血清中レベルが低いことを示している。実施例19におけるように、C57BL/6マウスに、PBS、MVA-OVA(rMVA)、MVA-OVA-CD40L(rMVA-CD40L)または抗CD40(FGK4.5)をIV注射した。毎回の免疫の1日後に、ELISAによって、血清中ALT濃度を解析した。
図25図25A~25Bは、rMVA-CD40LでIV免疫後、大腸癌モデルにおける生存期間が長くなったことを示している。実施例20に記載されているように、触知可能なCT26.HER2腫瘍を有するBalb/cマウスをMVA-AH1A5-p15-Trp2-CD40L(rMVA-CD40L)でIV免疫するか、PBSを投与するかした。腫瘍の成長を一定間隔で測定した。示されているのは、A)腫瘍の平均体積及びB)生存率である。
図26図26A~26Bは、抗Trp1と組み合わせると、rMVA-CD40Lの抗腫瘍作用が増大することを示している。実施例21に記載されているように、8日目に、触知可能なB16.OVA腫瘍を有するC57BL/6マウスをMVA-OVA-CD40L(rMVA-CD40L)でIV免疫した。示されている場合、200μgの抗Trp1(クローンTA99)を週に2回、IP注射した(5日目に開始した)。示されているのは、A)腫瘍の平均体積及びB)全生存率である。
図27図27A~27Dは、MVA-HER2-Brachyury-CD40Lの導入遺伝子の発現を示している。実施例23に記載されているように、HeLa細胞を未処置のままにするか(モック、灰色に塗りつぶされた線)、MVA-BNに感染させるか(黒く塗りつぶされた線)、またはMVA-HER2-Brachyury-CD40Lに感染させるかした(塗りつぶされていない黒色の線)。そして、フローサイトメトリーによって、A)MVA、B)HER2、C)Brachyury及びD)CD40Lのタンパク質発現を求めた(ヒストグラムを参照)。
図28】抗HER2抗体のHerceptin(トラスツズマブとしても知られている)及びPerjeta(ペルツズマブとしても知られている)が、実施例24に記載されている改変HER2配列に結合しないことを示している。CT26細胞をMVA-HER2-Brachyury-CD40Lに、MOI1で感染させた。24時間後、細胞を5μg/mlのHER2抗体Herceptin、Perjetaまたは24D2とインキュベートし、フローサイトメトリーによって解析した。
図29図29A~29Dは、MVA-HER2-brachyury-CD40Lによって、MVA-HER2-brachyuryと比べて、ヒトDCの活性化が用量依存的に増強されることを示している。実施例25に記載されているように、ヒトPBMCからCD14単球を濃縮後、単球由来のDCを生成し、GM-CSF及びIL-4の存在下で、7日間培養した。DCをMVA-HER2-brachyuryまたはMVA-HER2-brachyury-CD40Lで刺激した。A)CD40L、B)CD86及びC)クラスII MHCの発現をフローサイトメトリーによって測定した。D)IL-12p70の濃度を定量した。
図30図30A及び30Bは、MVA-HER2-Twist-CD40LでのIV免疫では、HER2陽性大腸癌モデルにおいて、MVA-CD40LでIV免疫した場合よりも、抗腫瘍作用が増強されることを示している。実施例26に記載されているように、触知可能なMC38.HER2腫瘍を有するC57BL/6マウスをPBS、MVA-CD40LまたはMVA-HER2-Twist-CD40LのいずれかでIV免疫した(点線)。腫瘍の成長を一定間隔で測定した。示されているのは、A)腫瘍の平均体積及びB)全生存率である。
図31図31A及び31Bは、HER2陽性大腸癌モデルにおいて、MVA-HER2-Twist-CD40LでのIV免疫によって、MVA-CD40LでIV免疫した場合よりも、抗腫瘍作用が増強されることを示している。実施例26に記載されているように、触知可能なCT26.HER2腫瘍を有するBalb/cマウスをPBS、MVA-CD40LまたはMVA-HER2-Twist-CD40LのいずれかでIV免疫した(点線)。腫瘍の成長を一定間隔で測定した。示されているのは、A)腫瘍の平均体積及びB)全生存率である。
図32】MVA-HER2-Twist-CD40LでIV免疫すると、腫瘍微小環境において、IFN-γを産生するHER2特異的なCD8T細胞の浸潤が増加することを示している。実施例27に記載されているように、触知可能なCT26.HER2腫瘍を有するBalb/cマウスをPBSまたはMVA-HER2-Twist-CD40LのいずれかでIV免疫した。7日後、脾臓及び腫瘍浸潤CD8T細胞を磁気細胞ソーティングによって単離し、HER2ペプチドをロードした樹状細胞の存在下で、5時間培養した。グラフは、CD8T細胞のうちのCD44IFN-γ細胞の割合(%)を示している。
図33図33A及び33Bは、MVA-HER2-Twist-CD40L及びトラスツズマブ(抗HER2)の抗腫瘍作用の増強を示している。実施例28に記載されているように、17日齢の大きい確立済みのCT26.HER2腫瘍を有するBalb/cマウスをMVA-HER2-Twist-CD40LでIV免疫した(点線)。示されている場合、5μgの抗HER2またはhuIgG1をIP注射した(破線)。示されているのは、A)腫瘍の平均体積及びB)全生存率である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
上記の概要及び下記の詳細な説明はいずれも、例示及び説明に過ぎず、特許請求されているような本発明を制限するものではないことを理解されたい。
【0033】
抗体依存性細胞傷害(ADCC)は、特異的抗体が結合した抗原または受容体を発現している標的細胞を免疫系が能動的に溶解及び殺傷できるようにする細胞媒介性免疫防御機構である。Hashimoto et al.,Journal of Infectious Disease,148:785-794(1983)を参照されたい。ADCCは、抗体と相互作用するナチュラルキラー(NK)細胞を利用して、標的細胞を溶解及び殺傷する(同上)。この点を考慮して、この10年にわたり、腫瘍関連抗原を標的として、ADCC、ひいては殺腫瘍細胞能を増強するように機能する治療用モノクローナル抗体が開発されてきた。例えば、Scott et al.(2012)及びKohrt et alを参照されたい。抗体療法は、ADCCを通じて、殺腫瘍細胞作用を増強する有効性を有することが示されているが、腫瘍細胞は、腫瘍抗原発現の不均一性(例えば、腫瘍細胞表面上での腫瘍抗原発現のダウンレギュレーション)、抗体の安定性、受容体に対する抗体の濃度の低さ、受容体の飽和、例えば調節性T細胞を介した免疫抑制、免疫逃避及びNK細胞機能不全のような様々な機序を通じて、ADCC及び免疫系を回避できることが示されてきた(Scott et al.(2012))。腫瘍細胞の回避のいくつかの局面は、腫瘍細胞が患者の免疫系との「平衡相」に入ることによって特徴付けられ、腫瘍細胞は体内に、従来の形態学的、細胞遺伝学的または免疫細胞認識の閾値未満で留まることができる(Bhatia et al.,2011)。
【0034】
相乗的な抗腫瘍応答を誘導するために、本発明の各種医薬組み合わせ物を開発した。いくつかの態様では、その各種医薬組み合わせ物は、ADCCを通じて、腫瘍が発現する受容体に対する抗体で被覆された腫瘍細胞を殺傷できる、有効性の高い腫瘍特異的なキラーT細胞及びナチュラルキラー(NK)細胞の両方を誘導する。好ましい態様では、本明細書に記載されているように、CD40Lをコードする組み換えMVAを静脈内注射すると、NK細胞の活性化の増強、及び抗体で被覆された腫瘍細胞の殺傷作用の大幅な増大が誘導される。このNK細胞の活性化の増強は、MVAによって誘導されるキラーT細胞応答の増強と組み合わさると、治療用腫瘍ワクチンの接種の際に相乗的に作用することが示されている。
【0035】
追加的な各種態様では、本発明の実施形態は、患者の免疫系を回避するそれらの腫瘍細胞及びがん細胞を標的として殺傷する能力が増強及び/または向上している免疫応答を誘導する。さらなる態様では、本発明の実施形態は、患者の自然免疫応答及び適応免疫応答の両方の有効性を増強及び/または増大させる免疫応答を誘導する。自然免疫応答及び適応免疫応答の両方を増強及び/または増大できるのは、特に有益である。本発明は、患者の適応免疫応答を回避及び/または抑制するそれらの腫瘍細胞、ならびに患者の自然免疫応答を回避及び/または抑制するそれらの腫瘍細胞を標的として殺傷できるからである。
【0036】
一実施形態では、本発明は、a)1つ以上の異種の腫瘍関連抗原(TAA)をコードする核酸を含む組み換えMVAの静脈内(IV)投与、及びb)Fcドメインを含むとともに、腫瘍細胞上に発現する抗原に対して特異的である抗体を含む併用療法である。別の実施形態では、その併用療法は、CD40LのIV投与をさらに含む。好ましい実施形態では、そのCD40Lは、本発明の組み換えMVAによってコードされる。
【0037】
本願で説明及び例示されているように、本発明の医薬組み合わせ物及び/または併用療法は、がん患者の免疫応答の複数の局面を増強する。少なくとも1つの態様では、本発明の医薬組み合わせ物は、自然免疫応答及び適応免疫応答の両方を相乗的に増強して、腫瘍体積を縮小するとともに、がん患者の生存率を向上させる。本発明の医薬組み合わせ物及び/または療法の増強作用のうちの1つ以上が、下に概説されている。
【0038】
組み換えMVAのIV投与によって、NK細胞応答が増強される。一態様では、本発明は、対象に静脈内投与する組み換えMVAを含み、そのIV投与によって、その対象において、その対象に組み換えMVAを非IV投与することによって誘導されるNK細胞応答と比べて、自然免疫応答の増強、より具体的には、NK細胞応答の増強が誘導される。図1~9及び13に示されているように、組み換えMVAのIV投与によって、単回IV投与した場合、及び同種のプライムブーストとして静脈内投与した場合の両方で、非IV投与した場合と比べて、いくつかの区画において、強固な全身性のNK細胞応答が誘導された。
【0039】
図1~6に示されているように、非IV投与した場合と比べて、NK細胞応答の質が増強された。解析したすべての器官(脾臓、肝臓及び肺)で、活性化マーカーCD69が増加している。NK細胞の生存性を高める抗アポトーシスBclファミリーメンバーのBcl-X、共刺激性CD70及びエフェクターサイトカインIFN-γが、脾臓及び肺の両方で増加した。肝臓及び肺において、IV後、SC注射した場合と比べて、活性化ナチュラルキラーグループ2D(NKG2D)受容体の発現が特に増強された。NKG2Dは、腫瘍細胞上のリガンドに結合して、腫瘍細胞の排除を促す(Garcia-Cuesta et al.,2015、Spear et al.,2013において論評)。
【0040】
CD40Lをコードする組み換えMVAのIV投与によって、NK細胞応答がさらに増強される。本発明の別の態様では、組み換えMVAに加えて、CD40L抗原をIV投与することによって、組み換えMVAを単独でIV投与する場合と比べて、NK細胞応答がさらに増強されることが明らかになった。図1~9及び13に示されているように、CD40L抗原をコードする組み換えMVAは、単回投与した場合と、同種のプライムブーストとして投与した場合の両方において、CD40Lを伴わない組み換えMVAと比べて、強力なNK細胞応答を誘導した。さらに、組み換えMVAを単独でIV投与した場合と比べて、NK細胞応答の質が増強された。解析したすべての器官(図1~6、脾臓、肝臓、肺)において、NK細胞によるエフェクターサイトカインIFN-γの発現の増加が観察されたとともに、解析したすべての器官において、NK細胞によるCD69の発現も観察された(図5C)。さらに、図7には、マウス及びNHPの両方において、rMVA-CD40LでのIV免疫の6時間後に、組み換えMVAの場合と比べて、IFN-γと、さらに重要なことに、NK活性化サイトカインIL-12p70の血清中レベルが上昇したことが示されている。加えて、NK細胞の増殖(Ki67の発現によって示されている)の増強が、マウスで全身的に観察された(図7B)のみならず、NHPの末梢血でも観察された(図6F)。これらの結果から、いくつかの動物研究モデルにおいて、rMVA-CD40LのIV免疫によって、rMVAの場合と比べてNK細胞の質が向上することが示されている。
【0041】
組み換えMVAウイルスはこれまでも静脈内投与されてきたが(例えば、WO2002/42480、WO2014/037124を参照されたい)、組み換えMVAによる投与及び治療が、CD8 T細胞応答のような適応免疫応答の増強と関連することが以前に分かった。例えば、WO2002/42480では、マウス1匹当たり10pfuのMVA-BNをIV投与するか、またはマウス1匹当たり10pfuもしくは10pfuのMVA-BNを皮下投与するかのいずれかによって、MVAを用いた免疫を行った後に、CTL応答を測定した。WO2014/037124では、マウスに、組み換えMVA、及びCD40Lをコードする組み換えMVAを静脈内接種した。WO2014/037124を参照されたい。CTL応答が増強され、宿主において、組み換えMVA-CD40Lの免疫原性の向上が、CD4T細胞に依存しないが、CD40に依存することが明らかになった。
【0042】
少なくとも1つの態様では、本発明によって見られるNK細胞応答の増強は予想外である。当該技術分野においては、皮下免疫後、MVAによって誘導されるNK細胞の活性化が、リンパ節に常在するCD169陽性嚢下洞(SCS)マクロファージに依存することが示されたと理解されていたからである(Garcia et al.Blood 2012)。
【0043】
組み換えMVAのIV投与によって、腫瘍細胞のADCCが増強される。さらなる態様では、本発明は、1つ以上の異種抗原をコードする核酸を含む組み換えMVAを含み、対象にIV投与すると、その対象において、組み換えMVAをその対象に非IV投与した場合に得られるADCC応答と比べて、ADCC応答が増強される。さらに具体的な態様では、組み換えMVAのIV投与に起因する、ADCC応答の増強は、NK細胞が、抗体で被覆された腫瘍細胞を標的として殺傷する能力の向上によって特徴付けられる。図10A~10Dに示されているように、rMVAのIV投与によって活性化したNK細胞により、マウス抗ヒトHER2 mAbまたはマウス抗ヒト/マウスTrp1 mAbを提示している腫瘍細胞の細胞溶解が増大した。腫瘍細胞の細胞溶解は、CD40Lと併せた組み換えMVAによって活性化したNK細胞により、CD40Lを伴わないrMVAの場合と比べてさらに増大した。
【0044】
図10D及び10Eに示されているように、対象におけるADCC応答の増強はさらに、NK細胞応答の有効性を増大させて、腫瘍抗原に結合した抗体(抗体-腫瘍抗原)濃度が低めである腫瘍細胞をNK細胞が標的として殺傷できるようにするものとして特徴付けられる。抗体で被覆された腫瘍抗原の濃度が低い腫瘍細胞を標的として殺傷できることは、特に有益である。腫瘍細胞が免疫系を回避することが示された機序の1つは、腫瘍抗原の発現のダウンレギュレーションによるものであり(Scott et al.(2012)を参照されたい)、このダウンレギュレーションによって、腫瘍細胞上の抗体-腫瘍抗原の濃度が低下するからである。
【0045】
組み換えMVAのIV投与によって、MHCレベルの低い腫瘍細胞をNK細胞が殺傷する作用が増強される。さらなる態様では、図9に示されているように、NK細胞の活性化及びNK細胞応答が増強されると、MHCレベルの低い腫瘍細胞の殺傷作用が増強される。この態様は、特に有益である。MHCの低い腫瘍細胞をNK細胞が殺傷する作用が、ADCCに非依存的に生じることによって、その腫瘍細胞を攻撃する追加の経路が加わるからである。加えて、多くの腫瘍及び/またはがんは、患者の免疫応答を回避しようとして、MHCの発現レベルを低下させるので、この態様は有益である。
【0046】
組み換えMVAのIV投与によって、NK細胞の活性化及び増殖が促進される。本発明の別の態様では、組み換えMVAを複数回ブースト投与し、NK細胞の活性化及び増殖を増大させる(図10Aにおいて、CD69の発現増強によって示されている)。図13Bには、Ki67の発現によって、ブーストIV免疫の24時間後に、非IV免疫の場合と比べて、血中NK細胞の増殖能が増大したことが示されている。この作用は、組み換えMVAによるプライム免疫を組み換えMVAによってブーストした場合、組み換えMVA-CD40LをrMVA-CD40Lでブーストした場合、またはrMVAによるプライム免疫をrMVA-CD40Lでブーストした場合に観察された。
【0047】
本発明の少なくとも1つの態様では、組み換えMVAの反復IV投与及び組み換えMVA-CD40Lに起因する、NK細胞応答の増強は、予想外であった。ブーストIV免疫の24時間後に、IFN-αの増加が見られない状態で、NK細胞の活性化及び増殖の増大が観察されることは予想外であった。さらに言えば、二次感染及びがんにおけるNK細胞の活性化及びプライミングは、主にIFN-αによって駆動されることが分かった。例えば、Stackaruk et al.,Expert Rev Vaccines.2013 Aug;12(8):875-84及びMuller et al.,Front Immunol(2017)を参照されたい。予想外なことに、rMVA hom、rMVA-CD40L homまたはrMVA-CD40L hetによるIVブースト免疫の6時間後には、IFN-αの血清中レベルの上昇は観察されなかった(図14C)。これらを勘案すると、1つ以上の異種抗原をコードする核酸を含むrMVAによる同種または異種の反復IV免疫によって、予想外にも、IFN-αに依存せずに、NK細胞が活性化及び増殖した。
【0048】
異種抗原をコードする組み換えMVAのIV投与によって、がん患者の適応免疫応答が増強される。本発明の別の態様では、1つ以上の異種抗原をコードする核酸を含む組み換えMVAが存在し、対象にIV投与すると、1つ以上の異種抗原に対する、対象の適応免疫応答が増強される。好ましい態様では、その組み換えMVAはさらに、CD40Lをコードする。図11~12に示されているように、異種抗原を発現する組み換えMVAをIV投与すると、皮下(SC)投与した場合と比べて、強力なCTL応答が得られる。また、図に示されているように、組み換えMVAの一部として、CD40Lが含まれているときには、その組み換えMVA抗原をIV投与すると、CD40Lを含まない組み換えMVAをIV投与した場合と比べて、強力なCTL応答が得られる。
【0049】
さらに、図14~16に示されているように、異種抗原及びCD40Lをコードする組み換えMVAを静脈内投与したところ、IVブースト免疫後に、T細胞応答の質が向上した。図15には、MVA抗原の増加、B8(図15B)及び異種抗原、OVA(図15C)特異的なCD8 T細胞の増加が、ブーストIV免疫によって増強されたことが示されている。この作用は、図14で観察される、サイトカイン及びケモカインの発現パターンと連動しており、図14では、IVブースト後、血清において、T細胞活性化サイトカインのCXCL10、IFN-γ、CXCL1、CCL4、CCL7、CCL2、CCL5、TNF-α、IL-12p70及びIL-18が定量されている。これと一致して、図16A及び16Bには、ブーストIV免疫後に、メモリーT細胞が増加すること(ワクチンの重要な特色である)が示されている。MVA抗原特異的なCD8 T細胞に対する、異種抗原特異的なCD8 T細胞の比率は、免疫を行うごとに上昇した(図15D)。
【0050】
本発明以前に、組み換えMVAによってコードされるCD40Lが、CD4 Tヘルパー細胞の代わりとなり得ることが分かった(Lauterbach et al.,2013)。さらに、組み換えMVAによってコードされるCD40Lは、CD4 T細胞に作用を及ぼさないことが明らかになった。予想外なことに、プライム免疫の25日後に、メモリーCD4T細胞の増加を我々は確認した(図16B)(プライム免疫の25日後は、rMVA-CD40L(rMVA-CD40L hom及びrMVA-CD40L het)によるブーストIV免疫(21日目、表1参照)の4日後と一致する)。この知見は、MVA-CD40L hom及びMVA-CD40L het群において、ブーストIV免疫の6時間後に定量したIL-22の産生の増加(Tヘルパー細胞応答を示す重要なサイトカイン)によって裏付けられている(図14D)。この予想外の観察結果は、rMVA-CD40Lによるメモリー応答の維持に関連している。さらに、CD4 T細胞は、腫瘍部位において腫瘍特異的なCD8 T細胞を補助し、活性化誘導細胞の死滅を回避し、それ自体も細胞傷害性となることができる(Kennedy and Celis,2008、Knutson and Disis,2005で論評されている)。これらの結果は予想外である。アデノウイルス及び単純ヘルペスウイルスのような他のウイルスベクターは、ブースト免疫時に、ワクチンによってコードされる抗原に対する免疫応答の誘導を妨げるベクター特異的免疫を誘導するからである(Lauterbach et al.,2005、Pine et al.,2011)。
【0051】
抗体の投与と同時に、または抗体の投与後に、組み換えMVAをIV投与すると、殺腫瘍細胞作用の有効性が増大する。さらなる態様では、本開示は、本発明の医薬組み合わせ物を対象に投与するための1つ以上のレジメンを提供する。少なくとも1つの態様では、本発明のレジメンは、医薬組み合わせ物及び/または療法の有効性を増大させて、ADCC媒介性の殺腫瘍細胞作用を増強する。一実施形態では、本発明の医薬組み合わせ物の投与レジメンは、a)本明細書に記載されているような抗体を投与すること、及びb)抗体の投与と同時に、または抗体の投与後に、本発明の組み換えMVAを対象に静脈内投与することを含む。
【0052】
本発明の有益な一態様では、抗体と同時に、または抗体の後に、組み換えMVAを投与することによって、組み換えMVAの投与に起因して、NK細胞応答が増強されるのと同時に、または増強される前に、投与した抗体が腫瘍細胞と結合できるようにする。したがって、例示的な第1の工程では、抗体を投与し、その結果、抗体が腫瘍細胞または疾患感染細胞に結合する。例示的な第2の工程では、組み換えMVAを静脈内投与し、それによって、本明細書に記載されているように、対象のNK細胞応答を増強及び増大させる。そして、増強されたNK細胞応答によって、抗体が結合している腫瘍細胞を攻撃的に標的として殺傷する。
【0053】
別の態様では、本発明の医薬組み合わせ物は、同種及び/または異種のプライムブーストレジメンの一部として投与する。図11~16に示されているように、同種及び/または異種のプライムブーストレジメンは、増強されたNK細胞応答を延長及び再活性化するとともに、対象の特異的なCD8 T細胞応答及びCD4 T細胞応答を増大させる。
【0054】
組み換えMVAのIV投与によって、抗腫瘍作用が増強される。本発明の別の態様では、1つ以上の異種抗原をコードする核酸を含む組み換えMVAが存在し、対象にIV投与すると、非IV投与した場合と比べて、その対象の生存率が上昇し、総腫瘍体積が縮小する。好ましい態様では、その組み換えMVAはさらに、CD40Lをコードする。図17及び18に示されているように、その組み換えMVAをIV投与すると、SC投与した場合と比べて、全生存率が上昇し、腫瘍体積の縮小幅が大きくなるか、または腫瘍の成長に対する制御が延長される。これも図示されているように、組み換えMVAの一部として含まれるCD40Lによって、CD40Lを含まない組み換えMVAをIV投与した場合と比べて、全生存率が改善し、腫瘍が縮小する。図19に示されているように、組み換えMVAの一部として含まれるCD40Lによって、担腫瘍生体の末梢血において、CD40Lを含まない組み換えMVAをIV投与した場合と比べて、CD8 T細胞及び抗原(OVA)特異的なT細胞の総集積量が増加した。加えて、CD8 T細胞は、rMVA-CD40Lの抗腫瘍作用の重大なメディエーターである。抗体の媒介による、CD8細胞の枯渇によって、全生存期間が延長しなくなるからである。
【0055】
2つの異種抗原をコードするMVAをIV投与すると、抗腫瘍有効性が増大する。本発明の別の態様では、図291に示されているように、2つの異種抗原(OVA及びTRP2)をコードするMVAを用いたIV免疫によって、腫瘍の成長に対する制御の延長が誘導され、全生存率が上昇する。2つの異種抗原をコードする組み換えMVAの一部として含まれるCD40Lによって、CD40L及び1つのみの異種抗原を含む組み換えMVAをIV投与した場合と比べて、抗腫瘍応答が増強される。がんは、腫瘍抗原のダウンレギュレーションとして、多様な免疫逃避機序を利用するので(Jensen et al.,2012)、ワクチンにおいて2つ以上の腫瘍抗原をコードすると、抗腫瘍免疫応答に対する逃避機序の発現が制限される。
【0056】
MVAのIV投与によって、腫瘍の免疫抑制作用が低下する。図29及び32に示されているように、異種抗原及び任意にCD40Lをコードする組み換えMVAを静脈内投与すると、腫瘍におけるCD8T細胞の浸潤が誘導され、免疫系を回避するために腫瘍が典型的に利用する複数の免疫抑制作用が低下した。CD40Lによる攻撃を伴うかまたは伴わない組み換えMVAによって、腫瘍内で内因性CD8細胞が増加したのに加えて、CD40Lを含む組み換えMVAのIV投与によって、脾臓及び腫瘍において、CD40Lを含まないMVAの場合と比べて、抗原(OVA)特異的T細胞が増加した。さらに、内因性T細胞(図22C~E、23B)または移入した抗原(OVA)特異的T細胞(図21D)において調べたところ、腫瘍浸潤Tリンパ球の免疫抑制表面分子PD-1及びLag3の発現が減少し、腫瘍浸潤Tリンパ球が腫瘍微小環境において増殖していた。rMVA及びrMVA-CD40Lでの免疫後の腫瘍浸潤T細胞上でのPD-1の発現減少は、予想外であった。両方のベクターによって誘導されるI型及びII型インターフェロン(図14C及びE)は、PD-1及びPD-L1の発現の既知の誘導因子であるからである(Dong et al.,2017によって論評)。予想外なことに、異種抗原及び任意にCD40Lをコードする組み換えMVAを投与したところ、腫瘍微小環境における免疫抑制調節性T細胞(Treg)の数は減少し(22F、23A)、その結果、腫瘍微小環境において、Tregに対するエフェクターT細胞の比率が上昇した(図23B)。PD-1及びLag3のような免疫減衰分子の発現の減少、ならびに腫瘍組織におけるTregの数の減少は、rMVA及びrMVA-CD40Lによる免疫後に見られる、抗腫瘍作用の増強と相関する。
【0057】
本発明の医薬組み合わせ物は、がん患者において、腫瘍量を減少させ、生存率を向上させる。各種実施形態では、本発明の医薬の併用は、a)異種TAA及び任意にCD40Lをコードする組み換えMVAのIV投与、ならびにb)抗体の投与を含む。図26及び33に示されているように、本発明の医薬組み合わせ物によって、腫瘍体積が縮小し、全生存率が上昇する。
【0058】
少なくとも1つの態様では、本発明の医薬組み合わせ物の抗腫瘍作用の増強(例えば、腫瘍体積の縮小及び/または生存率の向上)は、本明細書に記載されている自然T細胞応答及び適応T細胞応答の個別の増強が相乗的に組み合わさることによって行われる。例示的な一実施形態では、これらの個別の増強には、上に列挙した増強のうちの1つ以上、例えば、自然(例えばNK細胞)応答の増強、ADCC媒介性の殺腫瘍細胞作用の増強、クラスI MHCのレベルが低い腫瘍細胞をNK細胞が殺傷する作用の増強、及び適応T細胞応答の増強が含まれる。さらに、本発明の1つ以上の投与レジメンはさらに、患者の免疫系を向上させ、ある期間にわたって、患者の免疫系が腫瘍細胞を殺傷できるようにする。
【0059】
MVA-HER2-Brachyury及び抗HER2抗体のIV投与。本発明の有益な一実施形態では、本発明の医薬の併用は、a)HER2及びBrachyury抗原、ならびに任意にCD40Lをコードする組み換えMVAの静脈内投与と、b)抗HER2抗体の投与を含む。この実施形態は、本明細書に記載されている免疫応答の増強を誘導し、加えて、HER2及びBrachyuryを発現する腫瘍細胞に、殺腫瘍細胞作用を集中させる。追加的な有益な態様では、HER2抗原は、本発明の併用療法の有効性をさらに増大させる改変を1つ以上含む。図29に示されているように、rMVA-HER2-Brachyury及びrMVA-HER2-Brachyury-CD40Lでは、樹状細胞(DC)の活性化が見られた。DCの活性化は、rMVA-HER2-Brachyuryよりも、rMVA-HER2-Brachyury-CD40Lによって増強された。図33に示されているように、本発明に記載されている医薬組み合わせ物の投与によって、腫瘍の縮小及び対象の全生存率が有意に増大した。
【0060】
具体的な一実施形態では、本発明は、HER2結合抗体で治療するHER2陽性乳癌またはHER2陽性胃癌のように、HER2を発現する悪性腫瘍を有するがん患者の治療に対するものであるとともに、そのがん患者を治療するように適応されている。HER2をコードする組み換えMVAは、HER2を発現する腫瘍細胞に対する有効性の高いキラーT細胞を誘導する一方で、本発明の組み換えMVAによってコードされるBrachyury導入遺伝子は、転移性である可能性のあるBrachyury腫瘍細胞に対する有効性の高いキラーT細胞を誘導する。
【0061】
定義
本明細書で使用する場合、文脈によって明らかに別段に示されている場合を除き、「a」、「an」及び「the」という単数形には、複数の言及物が含まれる。したがって、例えば、「a」が付された「核酸」に言及している場合、1つ以上の核酸が含まれ、「the」が付された「方法」に言及している場合には、当業者に知られている等価な工程及び方法であって、本明細書に記載されている方法を修正したり、本明細書に記載されている方法の代用としたりし得る工程及び方法への言及が含まれる。
【0062】
別段に示されていない限り、一連の要素の前に付された「少なくとも」という用語は、それらの一連の要素のすべてを指すと理解するものとする。当業者は、常法に過ぎない実験を用いて、本明細書に記載されている本発明の具体的な実施形態に対する多くの均等物を認識したり、または確認できたりする。このような均等物は、本発明に含まれるように意図されている。
【0063】
本明細書及び後述の請求項の全体を通じて、文脈によって別段に求められない限り、「含む(comprise)」という語、ならびに「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」のような変形表現には、示されている整数もしくは工程、または整数群もしくは工程群が含まれることを示しているが、いずれかの他の整数もしくは工程、または整数群もしくは工程群は除外されないものと理解する。本明細書で使用する場合、「含む(comprising)」という用語は、「含む(containing)」または「含む(including)」という用語と置換でき、あるいは、場合によっては、本明細書で使用する場合、「有する」という用語と置換できる。上記の用語(含む(comprising)、含む(containing)、含む(including)、有する)のいずれも、優先性には劣るが、本発明の態様または実施形態との関連で使用されている場合には常に、「~からなる」という用語と置換できる。本明細書で使用する場合、「~からなる」によって、請求する要素において示されていないあらゆる要素、工程または成分が除外される。本明細書で使用する場合、「~から本質的になる」によっては、本発明の請求の基本的かつ新規な特徴に重大な影響を及ぼさない材料または工程は除外されない。
【0064】
本明細書で使用する場合、示されている複数の要素の間にある「及び/または」という接続詞は、個々の選択肢及び選択肢を組み合わせたものの両方を含むものとして理解する。例えば、2つの要素が「及び/または」によって接続されている場合、第1の選択肢は、第2の要素を伴わずに、第1の要素を適用可能であることを指す。第2の選択肢は、第1の要素を伴わずに、第2の要素を適用可能であることを指す。第3の選択肢は、第1の要素と第2の要素を併せて適用可能であることを指す。これらの選択肢のいずれか1つは、上記の意味の範囲内であり、すなわち、本明細書で使用する場合の「及び/または」という用語の要件を満たす。2つ以上の選択肢を同時に適用することも、上記の意味の範囲内であり、すなわち、「及び/または」という用語の要件を満たすものと理解する。
【0065】
本明細書に記載されている「変異」とは、本明細書で定義されているように、欠失、付加、挿入及び/または置換など、核酸またはアミノ酸に対するいずれかの改変を指す。
【0066】
「宿主細胞」とは、本明細書で使用する場合、外来の分子、ウイルスまたは微生物が導入されている細胞である。非限定的な例の1つでは、本明細書に記載されているように、好適な細胞培養物の細胞、例えばCEF細胞をポックスウイルスに、または別の代替的な実施形態では、外来もしくは異種の遺伝子を含むプラスミドベクターに感染させることができる。すなわち、好適な宿主細胞及び細胞培養物は、ポックスウイルス、及び/または外来もしくは異種の遺伝子に対する宿主として機能する。
【0067】
本明細書に記載されている核酸配列に関する「配列相同性(%)または配列同一性(%)」は、参照配列(すなわち、由来元の核酸配列)と候補配列をアラインメントして、必要に応じて、最大配列同一性(%)を得られるようにギャップを導入した後に、参照配列内のヌクレオチドと同一である、候補配列内のヌクレオチドの割合(%)として定義する(いずれの保存的置換も、配列同一性の一部としてみなさない)。ヌクレオチド配列の同一性または相同性(%)を求めるためのアラインメントは、当該技術分野の技術の範囲内である様々な方法で、例えば、BLAST、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)というソフトウェアのような公的に入手可能なコンピューターソフトウェアを用いて行うことができる。当業者は、比較する配列の全長にわたって最大のアラインメントを得るために必要ないずれかのアルゴリズムを含め、アラインメントを測定するための適切なパラメーターを定めることができる。
【0068】
例えば、核酸配列の適切なアラインメントは、Smith and Waterman,(1981),Advances in Applied Mathematics 2:482-489の局所相同性アルゴリズムによって行われる。このアルゴリズムは、Dayhoff,Atlas of Protein Sequences and Structure,M.O.Dayhoff ed.,5 suppl.3:353-358,National Biomedical Research Foundation,Washington,D.C.,USA,によって開発され、Gribskov(1986),Nucl.Acids Res.14(6):6745-6763によって正規化されたスコアリングマトリックスを用いることによって、アミノ酸配列に適用できる。配列の同一性(%)を求めるためのこのアルゴリズムの例示的なインプリメンテーションは、Genetics Computer Group(Madison,Wis.)によって、ユーティリティアプリケーション「BestFit」中に供給されている。この方法のデフォルトパラメーターは、Wisconsin Sequence Analysis Package Program Manual,Version 8(1995)(Genetics Computer Group,Madison,Wis.から入手可能)に記載されている。本発明の関連で同一性(%)を定めるための好ましい方法は、University of Edinburghによって著作権が保護されており、John F.Collins及びShane S.Sturrokによって開発され、IntelliGenetics,Inc.(Mountain View,Calif)によって頒布されているプログラムのMPSRCHパッケージを使用することである。この一連のパッケージから、Smith-Watermanのアルゴリズムを使用でき、その際には、デフォルトパラメーターをスコア表に使用する(例えば、ギャップオープンペナルティー12、ギャップエクステンションペナルティー1、及びギャップ6)。生成されたデータから、「マッチ」値は、「配列同一性」を反映している。配列間の同一性または類似性(%)を算出するための他の好適なプログラムは概ね、当該技術分野において知られており、例えば、別のアラインメントプログラムは、デフォルトパラメーターで用いるBLASTである。例えば、genetic code=standard、filter=none、strand=both、cutoff=60、expect=10、Matrix=BLOSUM62、Descriptions=50sequences、sort by=HIGH SCORE、Databases=non-redundant、GenBank+EMBL+DDBJ+PDB+GenBank CDS translations+Swiss protein+Spupdate+PIRというデフォルトパラメーターを用いて、BLASTN及びBLASTPを使用できる。これらのプログラムの詳細は、blast.ncbi.nlm.nih.gov/というインターネットアドレスで見ることができる。
【0069】
「プライムブーストワクチン接種」または「プライムブーストレジメン」という用語は、特異的抗原を標的とするワクチンを最初にプライミング注射してから、間隔を置いて、同じワクチンを1回以上ブースティング注射することを用いるワクチン接種策またはレジメンを指す。プライムブーストワクチン接種は、同種であっても異種であってもよい。同種のプライムブーストワクチン接種は、プライミング注射及び1回以上のブースティング注射の両方で、同じ抗原及びベクターを含むワクチンを使用する。異種のプライムブーストワクチン接種は、プライミング注射及び1回以上のブースティング注射で、同じ抗原を含むワクチンを使用するが、プライミング注射及び1回以上のブースティング注射で、異なるベクターを使用する。例えば、同種のプライムブーストワクチン接種は、プライミング注射には、1つ以上の抗原を発現する核酸を含む組み換えポックスウイルスを使用し、1回以上のブースティング注射には、1つ以上の抗原を発現する同じ組み換えポックスウイルスを使用してよい。これに対して、異種のプライムブーストワクチン接種は、プライミング注射には、1つ以上の抗原を発現する核酸を含む組み換えポックスウイルスを使用し、1回以上のブースティング注射に、1つ以上の抗原を発現する異なる組み換えポックスウイルスを使用してよい。
【0070】
「組み換え」という用語は、天然では見られないか、または天然では見られない構成で別のポリヌクレオチドに連結されている半合成または合成由来のポリヌクレオチド、ウイルスまたはベクターを意味する。
【0071】
本明細書で使用する場合、腫瘍体積を縮小することまたは腫瘍体積の縮小は、腫瘍体積及び/または腫瘍サイズの縮小として特徴付けることができるが、当該技術分野において理解されている臨床試験エンドポイントの観点で特徴付けることもできる。腫瘍体積及び/または腫瘍サイズの縮小と関連するいくつかの例示的な臨床試験エンドポイントとしては、奏効率(RR)、客観的奏効率(ORR)などを挙げることができるが、これらに限らない。
【0072】
本明細書で使用する場合、生存率の向上は、がん患者の生存率の向上として特徴付けることができるが、当該技術分野において理解されている臨床試験エンドポイントの観点で特徴付けることもできる。生存率の向上と関連するいくつかの例示的な臨床試験エンドポイントとしては、全生存率(ORR)、無増悪生存率(PFS)などが挙げられるが、これらに限らない。
【0073】
本明細書で使用する場合、「導入遺伝子」または「異種」遺伝子は、野生型ポックスウイルスゲノム(例えば、ワクチニア、ニワトリポックスまたはMVA)に存在しない核酸配列またはアミノ酸配列であると理解する。「導入遺伝子」または「異種遺伝子」は、ワクシニアウイルスのようなポックスウイルスに存在する場合には、その組み換えポックスウイルスを宿主細胞に投与後、その遺伝子が、対応する異種遺伝子産物として、すなわち、「異種抗原」及び/または「異種タンパク質」として発現されるような形で、ポックスウイルスゲノムに導入されることになることを当業者は認識する。発現は通常、ポックスウイルス感染細胞で発現可能にする調節エレメントに、異種遺伝子を機能的に連結することによって実現させる。好ましくは、その調節エレメントは、天然または合成ポックスウイルスプロモーターを含む。
【0074】
「ベクター」とは、異種ポリヌクレオチドを含むことができる組み換えDNAまたはRNAプラスミドまたはウイルスを指す。異種ポリヌクレオチドは、予防または治療のための該当する配列を含んでよいとともに、任意に、発現カセットの形態であってよい。本明細書で使用する場合、ベクターは、最終的な標的細胞または対象において複製できる必要はない。ベクターという用語には、クローニングベクター及びウイルスベクターが含まれる。
【0075】
医薬組み合わせ物及び方法
各種実施形態では、本発明は、がん患者において腫瘍体積を収縮させ、及び/または生存率を向上させることによって、がん患者を治療するための医薬組み合わせ物を含む。その医薬組み合わせ物は、第1の異種の腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸を含む組み換えMVAであって、静脈内投与すると、異種の腫瘍関連抗原をコードする核酸を含む組み換えMVAウイルスの非静脈内投与によって誘導されるNK細胞応答及びT細胞応答と比べて、ナチュラルキラー(NK)細胞応答の増強及びT細胞応答の増強の両方を誘導する組み換えMVAを含む。
【0076】
NK細胞応答の増強
一態様では、本開示による、NK細胞応答の増強は、1)NK細胞頻度の上昇、2)NK細胞の活性化の増大及び/または3)NK細胞の増殖の増加の1つ以上によって特徴付けられる。したがって、NK細胞応答が、本開示に従って増強されるかは、NK細胞頻度の上昇、NK細胞の活性化の増大及び/またはNK細胞の増殖の増加を示す1つ以上のサイトカインの発現を測定することによって判断できる。NK細胞の頻度及び/または活性の測定に有用である例示的なマーカーには、NKp46、IFN-γ、CD69、CD70、NKG2D、FasL、グランザイムB、CD56及び/またはBcl-Xのうちの1つ以上が含まれる。NK細胞の活性化の測定に有用である例示的なマーカーには、IFN-γ、CD69、CD70、NKG2D、FasL、グランザイムB及び/またはBcl-Xのうちの1つ以上が含まれる。NK細胞の増殖の測定に有用である例示的なマーカーには、Ki67が含まれる。これらの分子及びその測定は、当該技術分野において認識されている実証済みのアッセイであり、既知の技法に従って行うことができる。例えば、Borrego et al.,Immunology 1999、Fogeln et al.,2013を参照されたい。加えて、それらの分子を測定するアッセイは、本開示の実施例1~3及び9に見ることができる。少なくとも一態様では、1)NK細胞頻度の上昇は、治療前/ベースラインと比べて、CD3NKp46細胞が少なくとも2倍増加することとして定義でき、2)NK細胞の活性化の増大は、治療前/ベースラインの発現と比べて、IFN-γ、CD69、CD70、NKG2D、FasL、グランザイムB及び/またはBcl-Xの発現が少なくとも2倍増加することとして定義でき、及び/または3)NK細胞の増殖の増加は、治療前/ベースラインの発現と比べて、Ki67の発現が少なくとも1.5倍増加することとして定義する。
【0077】
より好ましい態様では、「NK細胞応答の増強」は、本開示で使用する場合、NK細胞媒介性殺腫瘍細胞作用の増大によって特徴付けられる。NK細胞媒介性殺腫瘍細胞作用は、実施例5に示されているように、細胞培養培地への乳酸脱水素酵素(LDH)の放出を測定することによって解析できる。したがって、本発明の関連では、医薬組み合わせ物によって「NK細胞応答が増強される」か否かは、NK細胞媒介性殺腫瘍細胞作用の増大の存在によって特徴付けることができる。NK細胞媒介性殺腫瘍細胞作用は、実施例5に見られるように、乳酸脱水素酵素の放出を測定することによって解析できる。LDH及びその測定と関連するアッセイは、当該技術分野において検証及び理解されている。少なくとも一態様では、NK細胞媒介性殺腫瘍細胞作用の増大は、殺腫瘍細胞作用が少なくとも2倍増大することとして定義できる。
【0078】
ADCC応答の増強
少なくとも1つの態様では、本発明によって誘導されるNK細胞応答の増強によって、ADCC応答が増強される。本発明による「ADCC応答の増強」は、自然免疫エフェクター細胞が、抗体によって被覆された腫瘍細胞を標的として殺傷する能力の向上によって特徴付けられる。本開示の関連では、自然免疫エフェクターとしては、NK細胞、マクロファージ、好中球、好塩基球、好酸球、肥満細胞、樹状細胞などを挙げることができるが、これらに限らない。より好ましい態様では、自然免疫エフェクターは、NK細胞である。エフェクター細胞が腫瘍細胞を殺傷する能力の測定に有用であるアッセイとしては、エキソビボエフェクター:標的殺傷アッセイが挙げられ、そのアッセイでは、「エフェクター」は、単離エフェクター細胞であり、「標的」は、抗体存在下の腫瘍細胞である。Yamashita et al.,2016及びBroussas et al.(2013)を参照されたい。エキソビボエフェクター:標的殺傷アッセイは、当該技術分野において検証及び理解されている。加えて、エフェクター細胞が腫瘍細胞を殺傷する能力を測定するためのアッセイは、実施例5に見ることもできる。したがって、一態様では、本願の関連では、NK細胞応答の増強を含め、自然免疫応答の増強によって、ADCCが増強されるか否かは、1)被覆された標的細胞(抗体で被覆された腫瘍細胞)に対する比率が様々であるエフェクター細胞を用いること、ならびに2)一定の比率のエフェクター細胞、及び1つ以上の濃度の抗体を用いることの1つ以上を通じて、殺腫瘍細胞作用のレベルを測定することによって特徴付けることができ、例えば、低濃度の腫瘍抗原結合抗体を、高濃度における殺腫瘍細胞作用のレベルと比較する。
【0079】
好ましい態様では、本開示による「ADCC応答の増強」は、NK細胞が、抗体によって被覆された腫瘍細胞を標的として殺傷する能力の向上によって特徴付けられる。NK細胞が腫瘍細胞を殺傷する能力の測定に有用であるアッセイとしては、エキソビボエフェクター:標的殺傷アッセイが挙げられ、そのアッセイでは、「エフェクター」は、単離NK細胞であり、「標的」は、抗体存在下の腫瘍細胞である。加えて、NK細胞が腫瘍細胞を殺傷する能力を測定するためのアッセイは、実施例5に見ることができる。したがって、一態様では、本願の関連では、NK細胞応答によって、ADCCが増強されるか否かは、1)被覆された標的細胞(抗体で被覆された腫瘍細胞)に対する比率が様々であるNK細胞を用いて、及び/または2)一定の比率のNK細胞、及び1つ以上の濃度の抗体を用いて、殺腫瘍細胞作用のレベルを測定することによって特徴付けることができ、例えば、低濃度の腫瘍抗原結合抗体を、高濃度における殺腫瘍細胞作用のレベルと比較する。
【0080】
NK細胞媒介性傷害作用の強化
追加的な態様では、NK細胞応答の増強によって、NK細胞のような自然免疫エフェクターが、MHC発現レベルの低い腫瘍細胞を攻撃して殺傷する能力が向上する。一態様では、MHCレベルの低い腫瘍細胞の殺傷は、NK細胞媒介性傷害作用が強化された自然免疫エフェクター、例えばNK細胞(NK細胞が、より効率的に腫瘍細胞を殺傷することを意味する)によって特徴付けることができる。NK細胞媒介性傷害作用が強化されたNK細胞は、NK細胞ごとの殺腫瘍細胞数の増加によって測定できる。これは、エフェクター:標的殺傷アッセイの利用を通じて求めることができる。このようなアッセイは、当該技術分野において検証済み及び既知であり、本願では、少なくとも実施例4及び図9に示されている。
【0081】
自然免疫エフェクター細胞の増強
追加的な態様では、本願の組み換えポックスウイルスをIV投与すると、NK細胞応答が増強されるのみならず、自然免疫応答のすべての局面も増強される。自然免疫応答の増強は、自然エフェクター細胞の1)頻度の上昇、2)活性化の増大、及び/または3)増殖の増加として特徴付けることができる。自然エフェクター細胞としては、NK細胞、自然リンパ球細胞(ILC)、マクロファージ、好中球、好塩基球、好酸球、肥満細胞、単球及び/または樹状細胞を挙げることができる。各種態様では、自然免疫応答が、本願に従って増強されるか否かは、自然応答の上記のエフェクター細胞と関連するサイトカイン及び/または活性化マーカーの発現の1つ以上を測定することによって判断できる。これらのサイトカイン及び活性化マーカー、ならびにそれらの測定は、当該技術分野において検証及び理解されており、既知の技法に従って行うことができる。例えば、Borrego et al.,Immunology 1999、Fogeln et al.,2013を参照されたい。
【0082】
T細胞応答の増強
本願によれば、「T細胞応答の増強」は、1)CD8 T細胞の頻度の上昇、2)CD8 T細胞の活性化の増大及び/または3)CD8 T細胞の増殖の増加の1つ以上によって特徴付けられる。したがって、T細胞応答が、本願に従って増強されるか否かは、1)CD8 T細胞の頻度の上昇、2)CD8 T細胞の活性化の増大及び/または3)CD8 T細胞の増殖の増加を示す1つ以上のサイトカインの発現を測定することによって判断できる。CD8 T細胞の頻度、活性化及び増殖の測定に有用である例示的なマーカーとしてはそれぞれ、CD3、CD8、IFN-γ、TNF-α、IL-2、CD69及び/またはCD44、ならびにKi67が挙げられる。抗原特異的T細胞の頻度は、図11、12、15、19及び21に示されているように、ELIspot、またはペンタマーもしくはデキストラマーのようなMHCマルチマーによっても測定できる。このような測定及びアッセイは、当該技術分野において検証及び理解されている。
【0083】
一態様では、CD8 T細胞の頻度の上昇は、治療前/ベースラインと比べて、IFN-γ及び/またはデキストラマーCD8 T細胞が少なくとも2倍増加することによって特徴付けられる。CD8 T細胞の活性化の増大は、治療前/ベースラインの発現と比べて、CD69及び/またはCD44の発現が少なくとも2倍増加することとして特徴付けられる。CD8 T細胞の増殖の増加は、治療前/ベースラインの発現と比べて、Ki67の発現が少なくとも2倍増加することとして特徴付けられる。
【0084】
代替的な態様では、T細胞応答の増強は、CD8 T細胞によるエフェクターサイトカインの発現の増加、及び/または細胞傷害性エフェクター機能の増大によって特徴付けられる。エフェクターサイトカインの発現の増加は、IFN-γ、TNF-α及び/またはIL-2のうちの1つ以上の発現を治療前/ベースラインと比較したものによって測定できる。細胞傷害性エフェクター機能の増大は、CD107a、グランザイムB及び/またはパーフォリンのうちの1つ以上の発現、及び/または標的細胞の抗原特異的な殺傷によって測定できる。
【0085】
本明細書に記載されているアッセイ、サイトカイン、マーカー及び分子、ならびにそれらの測定は、当該技術分野において検証及び理解されており、既知の技法に従って行うことができる。加えて、T細胞応答を測定するためのアッセイは、T細胞応答を解析した実施例6及び7に見ることができる。
【0086】
本発明によって実現する、T細胞応答の増強は、NK細胞応答の増強と組み合わさると、特に有益である。がん患者において、初期の自然免疫応答を回避し、及び/または切り抜けたそれらの腫瘍細胞を、増強されたT細胞が効果的に標的として殺傷するからである。さらに、抗体治療は、クラスI MHCによるTAAの提示を増強でき、その結果、TAA特異的T細胞による溶解に対するTAA発現腫瘍の感受性が向上する(Kono et al.,Clin Cancer Res 2004)。
【0087】
追加的な実施形態では、本発明の医薬組み合わせ物はさらに抗体を含み、その抗体は、腫瘍細胞の細胞膜上、好ましくは、外側の細胞膜上に発現または過剰発現する抗原に特異的である。その抗体は、本開示によって記載されているようないずれかの抗体であり得ることが企図されている。好ましい実施形態では、その抗体は、Fcドメインを含む。
【0088】
追加的な実施形態では、腫瘍体積を縮小し、及び/またはがん患者の生存率を向上させる方法が存在する。その方法は、a)第1の異種の腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸を含む組み換えMVAであって、静脈内投与すると、異種の腫瘍関連抗原をコードする核酸を含む組み換えMVAウイルスの非静脈内投与によって誘導される自然免疫応答及びT細胞応答と比べて、自然免疫応答の増強及びT細胞応答の増強の両方を誘導する組み換えMVAをがん患者に静脈内投与すること、ならびにb)抗体をそのがん患者に投与することであって、その抗体が、Fcドメインを含むとともに、腫瘍細胞の細胞膜上に発現する抗原に特異的であることを含み、a)及びb)をがん患者に投与すると、a)の非静脈内投与またはb)の投与を単独で行った場合と比べて、がん患者の腫瘍サイズが縮小し、及び/またはがん患者の生存率が上昇する。より好ましい実施形態では、自然免疫応答の増強は、本明細書に記載されているような、NK細胞応答の増強を含む。
【0089】
別の実施形態では、患者において抗体療法を増強する方法であって、a)抗体をがん患者に投与することであって、その抗体が、Fcドメインを含むとともに、腫瘍細胞の細胞膜上に発現する抗原に特異的であり、その抗体の投与によって、その患者においてADCCを誘導すること、ならびにb)その患者において、第1の異種の腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸を含む組み換えMVAであって、自然免疫応答の増強及びT細胞応答の増強の両方を誘導する組み換えMVAをそのがん患者に静脈内投与することを含み、その自然免疫応答の増強によって、その患者において、a)及びb)を組み合わせたもの、またはa)及びb)を単独で非静脈内投与した場合と比べて、ADCCが増強される方法が存在する。より好ましい実施形態では、自然免疫応答の増強は、本明細書に記載されているような、NK細胞応答の増強を含む。
【0090】
さらに別の実施形態では、がん患者における抗体療法の有効性を増大させる方法であって、本発明の医薬組み合わせ物を投与することを含み、その併用薬をその患者に投与することによって、腫瘍細胞におけるNK細胞媒介性傷害作用に必要な抗体濃度が低下する方法が存在する。少なくとも1つの有益な態様では、NK細胞媒介性傷害作用に必要な抗体濃度の低下によって、結合抗体の標的化による破壊を回避するために、細胞外抗原の発現が減少している腫瘍細胞を、増強されたNK細胞応答によって殺傷可能になる。加えて、必要な抗体濃度の低下によって、抗体量の少ない治療を可能にし得る。
【0091】
本願の関連では、NK細胞媒介性傷害作用に必要な抗体濃度の低下は、殺腫瘍細胞作用に必要な抗体濃度の低下として特徴付けることができる。殺腫瘍細胞作用に必要な抗体濃度の低下は、エキソビボエフェクター:標的殺傷アッセイによって測定でき、そのアッセイでは、「エフェクター」は、単離NK細胞であり、「標的」は、抗体存在下の腫瘍細胞である。加えて、測定するためのアッセイには、例えば、1)被覆された標的細胞(抗体で被覆された腫瘍細胞)に対する比率が様々であるNK細胞を用いること、及び/または2)一定の比率のNK細胞、及び1つ以上の濃度の抗体を用いて、殺腫瘍細胞作用のレベルを測定することが含まれる(例えば、低濃度の腫瘍抗原結合抗体を、高濃度における殺腫瘍細胞作用のレベルと比較する)。このようなアッセイは、当該技術分野において知られており、本書でも、本願の実施例5及び31に記載されている。
【0092】
さらに追加的な実施形態では、本明細書に記載されている医薬組み合わせ物及び方法は、ヒトがん患者を治療するためのものである。好ましい実施形態では、そのがん患者は、乳癌、肺癌、頭頸部癌、甲状腺、メラノーマ、胃癌、膀胱癌、腎臓癌、肝臓癌、メラノーマ、膵臓癌、前立腺癌、卵巣癌、尿路上皮、子宮頸もしくは大腸癌からなる群から選択したがんを罹患しており、及び/またはそのがんと診断されている。
【0093】
さらに追加的な好ましい実施形態では、本発明の医薬組み合わせ物及び方法はそれぞれ、CD40Lを含む。好ましくは、そのCD40Lは、本発明の組み換えMVAによってコードされる。
【0094】
例示的な腫瘍関連抗原
特定の好ましい実施形態では、第1及び/または第2の腫瘍関連抗原(TAA)としては、HER2、PSA、PAP、CEA、MUC-1、サバイビン、TYRP1、TYRP2もしくはBrachyury単独、またはこれらを組み合わせたものが挙げられるが、これらに限らない。このような例示的な組み合わせとしては、HER2及びBrachyury、CEA及びMUC-1、またはPAP及びPSAを挙げてよい。
【0095】
多くのTAAが、当該技術分野において知られている。例示的なTAAとしては、5αレダクターゼ、α-フェトプロテイン、AM-1、APC、April、BAGE、β-カテニン、Bcl12、bcr-abl、Brachyury、CA-125、CASP-8/FLICE、カテプシン、CD19、CD20、CD21、CD23、CD22、CD33、CD35、CD44、CD45、CD46、CD5、CD52、CD55、CD59、CDC27、CDK4、CEA、c-myc、Cox-2、DCC、DcR3、E6/E7、CGFR、EMBP、Dna78、ファルネシルトランスフェラーゼ、FGF8b、FGF8a、FLK-1/KDR、葉酸受容体、G250、GAGEファミリー、ガストリン17、ガストリン放出ホルモン、GD2/GD3/GM2、GnRH、GnTV、GP1、gp100/Pmel17、gp-100-in4、gp15、gp75/TRP-1、hCG、ヘパラナーゼ、HER2/neu、HMTV、Hsp70、hTERT、IGFR1、IL-13R、iNOS、Ki67、KIAA0205、K-ras、H-ras、N-ras、KSA、LKLR-FUT、MAGEファミリー、マンマグロビン、MAP17、melan-A/MART-1、メソセリン、MIC A/B、MT-MMP、ムチン、NY-ESO-1、オステオネクチン、p15、P170/MDR1、p53、p97/メラノトランスフェリン、PAI-1、PDGF、uPA、PRAME、プロバシン、プロジェニポエチン、PSA、PSM、RAGE-1、Rb、RCAS1、SART-1、SSXファミリー、STAT3、STn、TAG-72、TGF-α、TGF-β、チモシン-β-15、TNF-α、TYRP-、TYRP-2、チロシナーゼ、VEGF、ZAG、p16INK4及びグルタチオン-S-トランスフェラーゼが挙げられるが、これらに限らない。
【0096】
好ましいPSA抗原は、米国特許第7,247,615号(参照により、本明細書に援用される)に見られるように、155位に、イソロイシンのロイシンへのアミノ酸変化を含む。
【0097】
本発明のより好ましい実施形態では、第1及び/または第2の異種TAAは、HER2及びBrachyuryから選択する。さらに好ましい実施形態では、第1及び/または第2の異種TAAは、本明細書に記載されているような合成HER2及びBrachyuryタンパク質から選択する。
【0098】
追加的な好ましい実施形態では、第1及び/または第2の異種TAAは、1つ以上の変異を含む。少なくとも1つの実施形態では、その1つ以上の変異は、本開示の抗体が、第1及び/または第2の異種TAAに結合するのを防ぐ変異を含む。追加的な実施形態では、その1つ以上の変異は、第1及び/または第2のTAAが、そのTAAの1つ以上の通常の細胞機能を発揮するのを防ぐ変異を含む。その1つ以上の変異の例示的な実施形態は、本発明の合成HER2及び合成Brachyuryタンパク質によって説明されている。
【0099】
合成HER2タンパク質
本発明者は、本発明の開発により、本明細書に記載されているような、HER2抗原及び/またはHER2抗原をコードする核酸の1つ以上の改変によって、本発明の併用療法の有効性が増大することを割り出した。
【0100】
したがって、各種実施形態では、本発明は、HER2v1及びHER2v2から選択したHER2抗原をコードする核酸を含む。HER2v1は配列番号1を含み、HER2v2は配列番号13を含む。
【0101】
少なくとも1つの具体的な態様では、配列番号1及び/または13によってコードされる核酸は、特に有益である。配列番号1及び/または13は、本発明の併用療法の一部として投与したときに、HER2抗原に対する抗体と相乗的に機能するように構成されているからである。
【0102】
本発明の例示的な一実施形態では、本発明のHER2抗体は、HER2発現がん、または、より具体的な実施形態では、HER2発現乳癌の治療用に承認されている抗体を含む。HER2を標的とする2つのヒト化モノクローナル抗体が、HER2発現乳癌の治療用に開発及び承認されている。いずれの抗体も、HER2の細胞外ドメインの異なる部位に結合する。トラスツズマブ(Herceptinとして商標化されており、バイオ子ミラーとしてHerzuma及びABP980を有する)の結合によって、シグナル伝達がブロックされ、HER2の切断が阻止される。これに対して、ペルツズマブ(Perjeta)は、HER2と他のEGF受容体との二量化を立体的にブロックし、リガンドが活性化するシグナル伝達をブロックする。トラスツズマブ及びペルツズマブの両方とも、HER2が駆動するシグナル伝達経路を二重ブロックし、加えて、乳癌に対するADCCを媒介する能力を有する。したがって、本発明の各種の具体的な実施形態では、本発明の抗体は、トラスツズマブ、Herzuma、ABP980及び/またはペルツズマブを含む。
【0103】
合成HER2v1
1つ以上の実施形態では、本発明の合成HER2タンパク質は、HER2v1(配列番号1)である。本明細書で前述したように、本発明の併用療法の有効性を増強するために、本発明の組み換えMVAによってコードされる導入遺伝子に変異を施して、その導入遺伝子と、投与する抗体とのいずれかの相互作用及び/または結合の可能性を最小限にする。したがって、トラスツズマブ及びペルツズマブのようなHER2抗体の併用投与を伴う療法の有効性を増強するために、HER2抗原に1つ以上の変異を施した。より具体的には、HER2における該当する抗体結合部位を変異させた。すなわち、1つ以上の実施形態では、本発明の合成HER2タンパク質は、579~625位(トラスツズマブ結合ドメイン)、267~337位(ペルツズマブ結合ドメイン)、274~288位(HER2二量化ドメイン)、721~987位(キナーゼドメイン)及び1139~1248位(リン酸化ドメイン)というアミノ酸ドメインに、1つ以上の変異を含む。本発明の1つ以上の例示的な実施形態では、本発明のHER2抗原は、E580A、F595A、K615A、L317A、H318A、D277R、E280K、K753M、Y1023Aという変異の1つ以上を含む。HER2v1抗原に対する変異(HER2(NP_004439.2)に基づく)は、以下に示されている。
【0104】
【表1】
【0105】
HER2v1のアミノ酸配列:上に示した合成HERは、HER2(NP_004439.2)に基づいている。変異したアミノ酸には、下線及び取り消し線が引かれている。579~625位のアミノ酸は、Herceptinの結合部位である。267~337位のアミノ酸は、Perjetaの結合部位である。274~288位のアミノ酸は、二量化ドメインの残基である。721~987位のアミノ酸は、キナーゼドメインの残基である。1139~1248位のアミノ酸は、リン酸化ドメインの残基である。[配列番号1]
合成HER2v2
1つ以上の実施形態では、本発明の合成HER2タンパク質は、HER2v2(配列番号13)である。本明細書で前述したように、本発明の併用療法の有効性を増強するために、組み換えMVAによってコードされる導入遺伝子に変異を施して、その導入遺伝子と、投与する抗体とのいずれかの相互作用及び/または結合の可能性を最小限にする。したがって、トラスツズマブ及びペルツズマブのようなHER2抗体の併用投与を伴う療法の有効性を増強するために、HER2抗原に1つ以上の変異を施した。より具体的には、HER2における該当する抗体結合部位を変異させた。したがって、1つ以上の実施形態では、本発明の合成HER2タンパク質は、579~625位(トラスツズマブ結合ドメイン)、267~337位(ペルツズマブ結合ドメイン)、274~288位(HER2二量化ドメイン)、721~987位(キナーゼドメイン)及び1139~1248位(リン酸化ドメイン)というアミノ酸ドメインに1つ以上の変異を含む。本発明の1つ以上の例示的な実施形態では、HER2抗原は、E580A、F595A、K615A、L317A、H318A、D277R、E280K、K753M、Y1023Aという変異の1つ以上を含む。
【0106】
少なくとも一態様では、上記の変異によって、本発明の併用療法が増強される。それらの変異は、MVA-HER2抗原と、HER2抗体トラスツズマブ及びペルツズマブとのいずれかの相互作用及び/または望ましくない結合を最小限にするように機能するからである。トラスツズマブとHER2との相互作用には、HER2の膜近傍領域の3つのループ(579~583位(ループ1)、592~595位(ループ2)及び615~625(ループ3)のアミノ酸によって形成される)が関与する[6]。例えば、H.S.Cho,“Structure of the extracellular region of HER2 alone and in complex with the Herceptin Fab,”Nature,2003を参照されたい。これらのループには、E580、D582、P594、F595、K615、Q624Sを含め、HER2とトラスツズマブの結合に重要な残基がいくつか存在する。Satyanarayanajois,“Design,Synthesis,and Docking Studies of Peptidomimetics based on HER2-Herceptin Binding Site with Potential Antiproliferative Activity Against Breast Cancer Cell lines,”Chem Biol Drug Des,2009。
【0107】
したがって、一実施形態では、本発明のHER2抗原は、HER2抗原のトラスツズマブへの結合を妨げる残基への変異を1つ以上含む。いくつかの例示的な残基としては、E580、D582、P594、F595、K615及びQ624が挙げられるが、これらに限らない。したがって、より特定的な実施形態では、本発明のHER2抗原は、E580、D582、P594、F595、K615、Q624及びこれらを組み合わせたものからなる群から選択した残基に対する変異を1つ以上含む。さらに具体的な実施形態では、本発明のHER2抗原は、E580、F595及びK615から選択した残基に対する変異を1つ以上含む。さらに別の具体的な実施形態では、HER2抗原に対するその1つ以上の変異は、E580、F595及びK615に対するAla置換(例えば、E580A、F595A及びK615A)を含む。
【0108】
別の例示的な実施形態では、本発明のHER2抗原は、ペルツズマブ結合ドメインに対する変異を1つ以上含む。ペルツズマブは、HER2の二量化ドメイン(ドメインII)におけるループ(重要な残基H267、Y274、S310、L317、H318及びK333を含む)の近くに結合する。結合界面の変異は、PerjetaのHER2への結合を著しく低下させる。M.C.Franklin,“Insights into ErbB signaling from the structure of the ErbB2-pertuzumab complex,”Cancer Cell,2004。F279、V308及びP337を含め、この結合ドメインにおけるさらなるアミノ酸残基が、ペルツズマブとHER2の相互作用に寄与する可能性がある。
【0109】
したがって、一実施形態では、本発明のHER2抗原は、HER2抗原のペルツズマブへの結合を妨げる残基への変異を1つ以上含む。より具体的な実施形態では、本発明のHER2抗原は、H267、F279、V308、S310、L317、H318、K333及びP337、ならびにこれらを組み合わせたものからなる群から選択した残基に対する変異を1つ以上含む。さらに別の具体的な実施形態では、HER2抗原に対する1つ以上の変異は、H267、F279、V308、S310、L317、H318、K333及びP337に対するAla置換(例えば、H267A、F279A、V308A、S310A、L317A、H318A、K333A及びP337A)を含む。
【0110】
本発明の少なくとも1つの態様では、HER2の二量化を最小限にすれば、MVAによってコードされるHER2と、MVAでトランスダクションされた細胞によって発現されるEGFR、HER3またはHER4のようなその他のHERファミリーメンバーとの相互作用及び結合が最小限となると仮定した。HERの二量化を最小限にすれば、特に有益となる。HER2は、二量化によって開始される細胞内シグナル伝達を通じて、その発がん能を発揮するからである。したがって、一実施形態では、本発明のHER2抗原は、HER2の二量化を妨げる残基への変異を1つ以上含む。いくつかの例示的な残基としては、L317、H318、D277及びE280が挙げられるが、これらに限らない。したがって、より具体的な実施形態では、本発明のHER2抗原は、L317、H318、D277、E280及びこれらを組み合わせたものからなる群から選択した残基に対する変異を1つ以上含む。より具体的な実施形態では、本発明のHER2抗原は、D277、E280から選択した残基への変異を1つ以上含む。さらに別の具体的な実施形態では、HER2抗原に対するその1つ以上の変異は、D277に対するArg置換(D277R)及びE280に対するLys置換(E280K)を含む。
【0111】
追加的な態様では、チロシンキナーゼ活性を最小限にすれば、細胞の増殖及び血管新生を誘導し得る細胞シグナルの下流での活性化が最小限となると仮定した。したがって、一実施形態では、本発明のHER2抗原は、HER2のチロシンキナーゼ活性を妨げる残基への変異を1つ以上含む。例示的な残基としては、K753が挙げられるが、これに限らない。したがって、より具体的な実施形態では、本発明のHER2抗原は、K753残基に対する変異を含む。より具体的な実施形態では、本発明のHER2抗原は、残基K753に対するMet置換(K753M)を含む。
【0112】
さらに追加的な態様では、潜在的なリン酸化部位を除去すれば、細胞の増殖及び血管新生を誘導し得る細胞シグナルの下流での活性化が最小限になると仮定した。したがって、一実施形態では、本発明のHER2抗原は、HER2における潜在的なリン酸化部位を妨げる残基への変異を1つ以上含む。いくつかの例示的な残基としては、1139~1248位のアミノ酸及びY1023が挙げられるが、これらに限らない。したがって、より具体的な実施形態では、本発明のHER2抗原は、1139~1248位のアミノ酸、Y1023及びこれらを組み合わせたものから選択した残基に対する変異を1つ以上含む。より具体的な実施形態では、本発明のHER2抗原は、1139~1248位のアミノ酸の欠失、及び/またはY1023のAlaへの置換(Y1023A)を含む。
【0113】
好ましい一実施形態では、本発明のHER2抗原は、HER2に見られるペルツズマブ結合ドメイン、トラスツズマブ結合ドメイン、二量化ドメイン、キナーゼドメイン及び/またはリン酸化ドメインに対する変異を1つ以上含む。前述のドメインにおける、HER2抗原に対する例示的な変異(NP_004439.2に基づく)は、合成HER2v2として下に例示されている。
【0114】
【表2】
【0115】
HER2_v2.(配列番号13)のアミノ酸配列:上に示されている合成HER_バージョン2は、HER2(NP_004439.2)に基づいている。変異したアミノ酸には、下線及び取り消し線が引かれている。579~625位のアミノ酸は、トラスツズマブの結合部位である。267~337位のアミノ酸は、ペルツズマブの結合部位である。274~288位のアミノ酸は、二量化ドメインの残基である。721~987位のアミノ酸は、キナーゼドメインの残基である。1139~1248位のアミノ酸は、リン酸化ドメインにおける残基である。
【0116】
本発明における定義した利点によれば、各種実施形態では、本発明は、合成HER2抗原であって、そのHER2抗原がHER2抗体に結合するのを防ぐために、HER2の1つ以上のアミノ酸が変異されている合成HER2抗原を含む。より好ましい実施形態では、本発明の合成HER2抗原は、ペルツズマブ、トラスツズマブ及びアドトラスツズマブエムタンシンから選択した抗体の結合を防ぐために、変異されている。
【0117】
別の実施形態では、本発明の合成HER2抗原は、(HER2抗原をrMVAによって発現させたら、)そのHER2抗原の細胞外での二量化、チロシンキナーゼ活性及び/またはリン酸化を防ぐために、1つ以上の変異を含む。さらなる具体的な実施形態では、本発明の合成HER2抗原は、HER2の膜近傍領域の3つのループの少なくとも1つに対する変異を1つ以上含む。
【0118】
各種のさらなる実施形態では、本発明は、配列番号1を含むHER2抗原をコードする核酸を含む。追加的な実施形態では、本発明は、配列番号1との同一性が少なくとも90%、95%、97%、98%または99%であるHER2抗原をコードする核酸を含む。
【0119】
一実施形態では、本発明は、配列番号2を含む核酸であって、配列番号1のHER2抗原をコードする核酸を含む。追加的な実施形態では、本発明は、HER2抗原をコードする核酸であって、配列番号2との同一性が少なくとも90%、95%、97%、98%または99%である核酸を含む。
【0120】
各種の追加的な実施形態では、本発明は、配列番号13を含むHER2抗原をコードする核酸を含む。追加的な実施形態では、本発明は、配列番号13との同一性が少なくとも90%、95%、97%、98%または99%であるHER2抗原をコードする核酸を含む。
【0121】
一実施形態では、本発明は、配列番号14を含む核酸であって、配列番号13のHER2抗原をコードする核酸を含む。追加的な実施形態では、本発明は、HER2抗原をコードする核酸であって、配列番号14との同一性が少なくとも90%、95%、97%、98%または99%である核酸を含む。
【0122】
合成Brachyuryタンパク質
すでに例示したように、MVAによってコードされる第2の疾患/腫瘍関連抗原を追加したところ、本発明の併用療法の抗腫瘍応答/活性が増強された。これに従い、本発明の各種実施形態では、本発明の組み換えMVAはさらに、Brachyury抗原をコードする。
【0123】
本発明者は、本明細書に記載されているように、Brachyury抗原及び/またはBrachyury抗原をコードする核酸の1つ以上の改変によって、併用療法の有効性が増大することを割り出した。より具体的には、宿主細胞によるBrachyury抗原のいずれの核局在化も最小限にし、及び/または回避するために、1つ以上の変異を核局在化シグナル(NLS)ドメインに施した。
【0124】
したがって、各種実施形態では、本発明の合成Brachyuryポリペプチドは、Brachyuryの核局在化を防ぐための変異を1つ以上含む。「核局在化」は、核への局在化及び/または輸送として定義できる。1つ以上の変異によって、Brachyury抗原の核局在化が阻止されるかを判断するためのアッセイの実施は、当該技術分野の通常の技術の範囲内である。このようなアッセイとしては、免疫蛍光解析及び免疫蛍光顕微鏡法を挙げることができる。
【0125】
より具体的な実施形態では、本発明の合成Brachyuryポリペプチドは、NLSドメインに1つ以上の変異を含む。より具体的かつ好ましい実施形態では、本発明の合成Brachyuryポリペプチドでは、下に示されているように、Brachyury抗原(GenBank参照番号NP_003172.1)の286~293位のアミノ酸が欠失されている。
【0126】
【表3】
【0127】
例示的な改変Brachyuryのアミノ酸配列:Brachyuryの潜在的なNLSにおける、保存されているコアモチーフ残基RSSPYPSPを欠失させた(取り消し線によって示されている)[配列番号3]。
【0128】
より具体的な実施形態では、本発明は、配列番号3、配列番号5及び配列番号7からなる群から選択したBrachyury抗原をコードする核酸を含む。好ましい態様では、本発明の各種実施形態は、配列番号3をコードする核酸を含む。
【0129】
少なくとも1つの具体的な態様では、配列番号3によってコードされる核酸は、特に有益である。配列番号3は、MVAによってコードされるBrachyury抗原が核に局在化及び/または輸送されるのを防ぎ、及び/または最小限にするように構成されているからである(局在化及び/または輸送されると、望ましくない転写活性の可能性が生じ得る)。
【0130】
本発明の併用療法の、定義した利点によれば、各種態様では、本発明の実施形態は、配列番号3を含むBrachyury抗原をコードする核酸を含む。追加的な態様では、本発明の実施形態は、配列番号3との同一性が少なくとも90%、95%、97%、98%または99%であるBrachyury抗原をコードする核酸を含む。
【0131】
さらなる態様では、本発明の実施形態は、配列番号4を含む核酸であって、配列番号3のBrachyury抗原をコードする核酸を含む。追加的な態様では、本発明の実施形態は、Brachyury抗原をコードする核酸であって、配列番号4との同一性が少なくとも90%、95%、97%、98%または99%である核酸を含む。
【0132】
CD40L
本開示によって例示されているように、本発明の医薬組み合わせ物及び関連方法の一部としてCD40Lを含めると、本発明によって実現される、腫瘍体積の縮小、無増悪生存期間の延長及び生存率の向上がさらに進む。したがって、各種実施形態では、本発明の医薬の併用はさらに、がん患者にCD40Lを投与することを含む。
【0133】
CD40は、B細胞、マクロファージ及び樹状細胞を含む多くの種類の細胞上に構成的に発現するが、そのリガンドCD40Lは、活性化Tヘルパー細胞上に優勢に発現する。感染または免疫後の早い段階での、樹状細胞及びTヘルパー細胞間の同族相互作用によって、樹状細胞がCTL応答をプライミングすることが「許可される」。樹状細胞への許可によって、共刺激分子のアップレギュレーション、生存率の向上及びクロスプレゼンテーション能の向上が生じる。このプロセスは主に、CD40とCD40Lの相互作用に媒介される。しかしながら、膜結合型から可溶型まで(単量体型から三量体型まで)、APCの活性化、増殖及び分化を誘導または抑制する多様な刺激を誘導する、CD40Lの様々な構成が説明されている。
【0134】
実施例19の結果によって示されているように、本発明のMVAによってコードされるCD40Lは、がん患者にとって、安全性が格段に向上した代替手段である。MVAによってコードされるCD40Lは、可溶性のCD40アゴニストと比べて、毒性が低減されているからである。
【0135】
1つ以上の好ましい実施形態では、CD40Lは、本発明のMVAによってコードされる。さらに好ましい実施形態では、CD40Lは、配列番号11をコードする核酸を含む。さらに好ましい実施形態では、CD40Lは、配列番号12との同一性が少なくとも90%、95%、97%、98%または99%である核酸を含む。最も好ましい実施形態では、CD40Lは、配列番号12を含む。
【0136】
例示的な抗体
各種実施形態では、本発明の医薬組み合わせ物及び関連方法は、腫瘍細胞の細胞膜上に発現する抗原に特異的な抗体を含む。当該技術分野においては、多くのがんにおいて、1つ以上の抗原が、腫瘍細胞膜上に発現または過剰発現することが認識されている。例えば、Durig et a.2002、Mocellin et al.,2013、Arteaga 2017、Fin 2017、Ginaldi et al,1998を参照されたい。抗原が腫瘍細胞上に発現または過剰発現しているか判断するためのアッセイは、特定の抗原に対する抗体を作製する方法とともに、当該技術分野において容易に認識される(同上)。
【0137】
より具体的な実施形態では、本発明の医薬組み合わせ物及び関連方法は、抗体を含み、その抗体は、a)腫瘍の細胞膜上に発現する抗原に特異的であり、b)Fcドメインを含む。少なくとも1つの態様では、その抗体の特徴(例えばa)及びb))によって、その抗体は、NK細胞、マクロファージ、好塩基球、好中球、好酸球、単球、肥満細胞及び/または樹状細胞のようなエフェクター細胞に結合して、そのエフェクター細胞と相互作用できるようになるとともに、その抗体は、腫瘍細胞上に発現する腫瘍抗原に結合できるようになる。好ましい実施形態では、その抗体は、Fcドメインを含む。追加的な好ましい実施形態では、その抗体は、NK細胞と結合して相互作用できる。
【0138】
本開示によって企図されている腫瘍細胞上に発現する抗原に対するいくつかの例示的な抗体としては、抗CD20(例えば、リツキシマブ、オファツムマブ、トシツモマブ)、抗CD52(例えばアレムツズマブであるCampath)、抗EGFR(例えば、セツキシマブであるErbitux、パニツムマブ)、抗CD2(例えばシプリズマブ)、抗CD37(例えばBI836826)、抗CD123(例えばJNJ-56022473)、抗CD30(例えばXmAb2513)、抗CD38(例えばダラツムマブであるDarzalex)、抗PDL1(例えば、アベルマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ)、抗GD2(例えば、3F8、ch14.18、KW-2871、ジヌツキシマブ)、抗CEA、抗MUC1、抗FLT3、抗CD19、抗CD40、抗SLAMF7、抗CCR4、抗B7-H3、抗ICAM1、抗CSF1R、抗CA125(例えばオレゴボマブ)、抗FRα(例えば、MOv18-IgG1、ミルベツキシマブソラブタンシン(IMGN853)、MORAb-202)、抗メソセリン(例えばMORAb-009)及び抗HER2(例えば、トラスツズマブ、Herzuma、ABP980及び/またはペルツズマブ)が挙げられるが、これらに限らない。
【0139】
より好ましい実施形態では、本発明の一部として含まれる抗体としては、患者に投与すると、腫瘍細胞上の対応する抗原に結合して、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を誘導する抗体が挙げられる。さらに好ましい実施形態では、その抗体としては、がんの治療用に承認されているか、または承認前である抗体が挙げられる。
【0140】
さらに好ましい実施形態では、本発明の抗体は、抗HER2抗体である。最も好ましい実施形態では、抗体は、ペルツズマブ、トラスツズマブ、Herzuma、ABP980及びアドトラスツズマブエムタンシンから選択する。
【0141】
追加的な実施形態では、本発明の抗体は、1つ以上の抗体及び/または抗体断片の融合体を含む。例示的な融合抗体及び/または抗体断片としては、二重特異性キラー細胞エンゲージャー(BiKE)及び三重特異性キラー細胞エンゲージャー(TriKE)が挙げられるが、これらに限らない。Tay et al.,(2016)によって示されているように、BiKE及びTriKEは、NK細胞の抗腫瘍作用を効果的に駆動し、NK細胞媒介性ADCCを可能にすることが知られている。Tay et al.(2016)を参照されたい。161533TriKE及び/または1633BiKEを本発明において抗体として使用できることが企図されている。加えて、本発明の抗体は、二重特異性T細胞エンゲージャー、すなわちBiTEとして実施できることが企図されている。例えば、Huehls et al.Immunol Cell Biol.2015 March,93:290-296を参照されたい。
【0142】
組み換えポックスウイルス
本発明の1つ以上の態様では、本開示のヌクレオチド配列及びタンパク質配列を組み換えポックスウイルスに含めることができる。
【0143】
本開示の各種実施形態では、その組み換えポックスウイルスは好ましくは、ワクシニアウイルス、改変ワクシニアアンカラ(MVA)ウイルス、MVA-BNまたはMVA-BNの誘導体のような(ただし、これらに限らない)オルトポックスウイルスである。
【0144】
ワクシニアウイルス株の例は、天壇株、コペンハーゲン株、パリ株、ブダペスト株、大連株、Gam株、MRIVP株、Per株、タシケント株、TBK株、Tom株、ベルン株、パトワダナガー株、BIEM株、B-15株、リスター株、EM-63株、New York City Board of Health株、エルストリー株、イケダ株及びWR株である。好ましいワクシニアウイルス(VV)株は、Wyeth(DRYVAX)株(米国特許第7,410,644号)である。
【0145】
組み換えMVA
本発明の好ましい実施形態では、本明細書に開示されている1つ以上のタンパク質及びヌクレオチドが、組み換えMVAに含まれている。本開示によって説明及び例示されているように、本開示の組み換えMVAの静脈内投与によって、各種態様で、がん患者において免疫応答の増強が誘導される。したがって、1つ以上の好ましい実施形態では、本発明は、本明細書に記載されているHER2、Brachyury及び/またはCD40Lをコードする1つ以上の核酸を含む組み換えMVAを含む。より好ましい実施形態では、本発明の組み換えMVAは、本明細書に記載されている合成HER2及び合成Brachyury抗原をコードする1つ以上の核酸を含む。別のより好ましい実施形態では、本発明の組み換えMVAは、本明細書に記載されている合成HER2及び合成Brachyury抗原、ならびにCD40Lをコードする1つ以上の核酸を含む。さらに別のより好ましい実施形態では、本発明の組み換えMVAは、配列番号1または配列番号13(Her2)、及び配列番号3(Brachyury)をコードする1つ以上の核酸を含む。さらに別の好ましい実施形態では、本発明の組み換えMVAは、配列番号1または配列番号13、配列番号3及びCD40Lをコードする1つ以上の核酸を含む。より好ましい実施形態では、本発明の組み換えMVAは、配列番号1、配列番号3、配列番号11及び/または配列番号13をコードする1つ以上の核酸を含む。最も好ましい実施形態では、本発明の組み換えMVAは、配列番号13、配列番号3及び配列番号11をコードする1つ以上の核酸を含む。
【0146】
追加的な実施形態では、本発明の組み換えMVAは、配列番号2、配列番号4及び/または配列番号14からなる群から選択した1つ以上の核酸を含む。別のより好ましい実施形態では、本発明の組み換えMVAは、配列番号2、配列番号4及びCD40Lからなる群から選択した1つ以上の核酸を含む。さらに別の好ましい実施形態では、本発明の組み換えMVAは、配列番号2、配列番号4及び配列番号12からなる群から選択した1つ以上の核酸を含む。より好ましい実施形態では、本発明の組み換えMVAは、配列番号2、配列番号4及び配列番号12を含む。最も好ましい実施形態では、本発明の組み換えMVAは、配列番号14、配列番号4及び配列番号12を含む。
【0147】
本発明の実施の際に有用であるとともに、ブダペスト条約の要件に従って寄託されたMVAウイルス株の例は、European Collection of Animal Cell Cultures(ECACC),Vaccine Research and Production Laboratory,Public Health Laboratory Service,Centre for Applied Microbiology and Research,Porton Down,Salisbury,Wiltshire SP4 0JG,United Kingdomに、寄託番号ECACC94012707で、1994年1月27日に寄託されたMVA572株、及びECACC00120707で、2000年12月7日に寄託されたMVA575株であり、2000年8月30日に、European Collection of Cell Cultures(ECACC)に、V00083008の番号で寄託されたMVA-BN及びその誘導体が、追加の例示的な株である。
【0148】
MVA-BNの「誘導体」とは、本明細書に記載されているような、MVA-BNと本質的に同じ複製特性を示すが、そのゲノムの1つ以上の部分が異なるウイルスを指す。MVA-BN及びその誘導体は、複製能力がなく、すなわち、インビボ及びインビトロにおいて、増殖的に複製できないことを意味する。より具体的には、MVA-BNまたはその誘導体は、ニワトリ胚線維芽細胞(CEF)では増殖的に複製できるが、ヒトケラチノサイト細胞株HaCat(Boukamp et al(1988),J.Cell Biol.106:761-771)、ヒト骨肉腫細胞株143B(ECACC受託番号91112502)、ヒト胚腎臓細胞株293(ECACC受託番号85120602)及びヒト子宮頸癌細胞株HeLa(ATCC受託番号CCL-2)では増殖的に複製できないものとして説明されている。加えて、MVA-BNまたはその誘導体は、Hela細胞及びHaCaT細胞株におけるウイルス増殖倍率が、MVA-575の少なくとも2分の1、より好ましくは3分の1である。MVA-BN及びその誘導体のこれらの特性に関する試験及びアッセイは、WO02/42480(米国特許出願公開第2003/0206926号)及びWO03/048184(米国特許出願公開第2006/0159699号)に記載されている。
【0149】
上の段落に記載されているように、ヒト細胞株において、インビトロで「増殖的に複製できない」または「増殖的複製能がない」という用語は、例えばWO02/42480に説明されており、その特許には、上述のような所望の特性を有するMVAを得る方法も教示されている。この用語は、WO02/42480または米国特許第6,761,893号に記載されているアッセイを用いると、ウイルス増殖倍率が、インビトロにおいて、感染の4日後に、1未満であるウイルスに適用される。
【0150】
「増殖的に複製できない」という用語は、ウイルス増殖倍率が、上の段落に記載されているように、ヒト細胞株において、インビトロで、感染の4日後に、1未満であるウイルスを指す。ウイルス増殖倍率を求めるには、WO02/42480または米国特許第6,761,893号に記載されているアッセイが適用可能である。
【0151】
上の段落に記載されているような、ヒト細胞株におけるインビトロでのウイルスの増幅または複製は通常、最初に細胞を感染させる目的で元々使用した量(投入量)に対する、感染細胞から産生されるウイルス(産生量)の比率(「増殖倍率」という)として表される。増殖倍率「1」は、感染細胞から産生されるウイルスの量が、細胞を感染させる目的で最初に使用した量と同じである増幅状態を定めるものであり、感染細胞が、ウイルスの感染及び複製に対する許容性を有することを意味する。これに対して、増殖倍率が1未満、すなわち、投入レベルよりも産生量が少ないことは、増殖的複製が見られず、すなわち、ウイルスが減弱していることを示す。
【0152】
別の実施形態では、本発明の合成ヌクレオチド及びタンパク質を含む組み換えポックスウイルスは、ニワトリポックスウイルス(ただし、これに限らない)のようなアビポックスウイルスで実施できる。
【0153】
「アビポックスウイルス」という用語は、ニワトリポックスウイルス、カナリアポックスウイルス、ユキヒメドリポックスウイルス、キュウカンチョウポックスウイルス、ハトポックスウイルス、オウムポックスウイルス、ウズラポックスウイルス、クジャクポックスウイルス、ペンギンポックスウイルス、スズメポックスウイルス、ムクドリポックスウイルス及びシチメンチョウポックスウイルスのようないずれかのアビポックスウイルスを指す。好ましいアビポックスウイルスは、カナリアポックスウイルス及びニワトリポックスウイルスである。
【0154】
カナリアポックスウイルスの例は、Rentschler株である。ALVACというプラーク純化カナリアポックス株(米国特許第5,766,598号)が、ブダペスト条約の条件下で、American Type Culture Collection(ATCC)に寄託された(受託番号VR-2547)。別のカナリアポックス株は、Institute Merieux,Inc.から入手可能なLF2 CEP 524 24 10 75という市販のカナリアポックスワクチン株である。
【0155】
ニワトリポックスウイルスの例は、FP-1株、FP-5株、TROVAC株(米国特許第5,766,598号)、POXVAC-TC株(米国特許第7,410,644号)、TBC-FPV株(Therion Biologics-FPV)であり、FP-1は、1日齢のニワトリでワクチンとして使用するために改変されたDuvette株である。その株は、ODCEP25/CEP67/2309 October 1980という市販のニワトリポックスウイルスワクチン株であり、Institute Merieux,Incから入手可能である。FP-5は、American Scientific Laboratories(Schering Corp.の部門)Madison,Wis.,United States(獣医師免許番号165、シリアル番号30321)から入手可能な、ニワトリ胚由来の市販のニワトリポックスウイルスワクチン株である。
【0156】
発現カセット/制御配列
各種態様では、本明細書に記載されている1つ以上の核酸は、その1つ以上の核酸が、発現制御配列に機能的に連結されている1つ以上の発現カセットで実現させる。「機能的に連結された」とは、記載されている成分が、意図されている形で機能できる(例えば、プロモーターによって、発現させる核酸を転写可能になる)関係にあることを意味する。コード配列に機能的に連結された発現制御配列は、その発現制御配列と適合する条件下で、コード配列の発現が行われるようにつながっている。発現制御配列としては、適切なプロモーター、エンハンサー、転写ターミネーター、タンパク質をコードするオープンリーディングフレームの最初にある開始コドン、イントロンのスプライシングシグナル及びフレーム内終止コドンが挙げられるが、これらに限らない。好適なプロモーターとしては、SV40初期プロモーター、RSVプロモーター、レトロウイルスLTR、アデノウイルス主要後期プロモーター、ヒトCMV前初期Iプロモーター及び各種のポックスウイルスプロモーター(30Kプロモーター、I3プロモーター、PrSプロモーター、PrS5Eプロモーター、Pr7.5K、PrHybプロモーター、Pr13.5ロングプロモーター、40Kプロモーター、MVA-40Kプロモーター、FPV 40Kプロモーター、30kプロモーター、PrSynIImプロモーター、PrLE1プロモーター及びPR1238プロモーターといったワクシニアウイルスまたはMVA由来及びFPV由来プロモーターが挙げられるがこれらに限らない)が挙げられるが、これらに限らない。追加のプロモーターはさらに、WO2010/060632、WO2010/102822、WO2013/189611、WO2014/063832及びWO2017/021776に記載されており、これらの特許は、参照により、すべてが本明細書に援用される。
【0157】
追加の発現制御配列としては、リーダー配列、終止コドン、ポリアデニル化シグナル、ならびに所望の宿主系において、所望の組み換えタンパク質(例えば、HER2、Brachyury及び/またはCD40L)をコードする核酸配列の適切な転写及びそれに続く翻訳に必要ないずれかの他の配列が挙げられるが、これらに限らない。本発明のポックスウイルスベクターは、所望の宿主系において、核酸配列を含む発現ベクターの移転及びそれに続く複製に必要な追加の要素も含んでよい。当業者はさらに、従来の方法を使用すれば、このようなベクターが容易に構築されるとともに(Ausubel et al.,(1987)in“Current Protocols in Molecular Biology,”John Wiley and Sons,New York, N.Y.)、市販されていることを認識するであろう。
【0158】
特定の実施形態では、本開示の1つ以上の組み換えMVAは、IL-2、IL-6、IL-12、IL-15、IL-7、IL-21、RANTES、GM-CSF、TNF-αもしくはIFN-γのような1つ以上のサイトカイン、GM-CSFもしくはG-CSFのような1つ以上の増殖因子、ICAM-1、LFA-3、CD72、B7-1、B7-2もしくはその他のB7関連分子のような1つ以上の共刺激分子、CD70、OX-40Lもしくは4-1BBLのような1つ以上の分子、またはこれらの分子を含み合わせたものを生物学的アジュバントとして使用できる(例えば、Salgaller et al.,1998,J.Surg.Oncol.68(2):122-38、Lotze et al.,2000,Cancer J.Sci.Am.6(Suppl 1):S61-6、Cao et al.,1998,Stem Cells 16(Suppl 1):251-60、Kuiper et al.,2000,Adv.Exp.Med.Biol.465:381-90)。これらの分子は、宿主に全身(または局所)投与できる。いくつかの例では、IL-2、RANTES、GM-CSF、TNF-α、IFN-γ、G-CSF、LFA-3、CD72、B7-1、B7-2、B7-1、B7-2、CD70、OX-40L、4-1BBL及びICAM-1を投与する。
【0159】
本発明の医薬組み合わせ物を投与するための方法及び投与レジメン
さらなる態様では、本開示は、本発明の医薬組み合わせ物を投与するための1つ以上のレジメン及び/または方法を提供する。少なくとも1つの態様では、本発明のレジメンは、本発明の医薬組み合わせ物及び/または療法の有効性を増大させて、腫瘍体積を縮小させ、がん患者の生存率を向上させる。
【0160】
したがって、一実施形態では、がん患者において腫瘍サイズを縮小させ、及び/または生存率を向上させる医薬組み合わせ物及び/または方法であって、そのがん患者に、本開示の医薬組み合わせ物を投与することを含み、本発明の組み換えMVAを抗体の投与と同時に、または抗体の投与後に投与する医薬組み合わせ物及び/または方法が存在する。
【0161】
ある1つの具体的な例示的実施形態では、がん患者において腫瘍サイズを縮小させ、及び/または生存率を向上させる医薬組み合わせ物及び/または方法であって、a)そのがん患者に抗体を投与することであって、その抗体が、Fcドメインを含むとともに、腫瘍細胞の細胞膜上に発現する抗原に特異的であること、ならびにb)第1の異種の腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸を含む組み換え改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)であって、静脈内投与すると、ナチュラルキラー(NK)細胞応答の増強及び細胞傷害性T細胞応答の増強の両方を誘導する組み換えMVAをそのがん患者に静脈内投与することを含み、b)をa)と同時に、またはa)の後に行う医薬組み合わせ物及び/または方法が存在する。
【0162】
いくつかの具体的な実施形態では、本発明の組み換えMVAは、抗体と同時に投与できる。別の具体的な実施形態では、本発明の組み換えMVAは、抗体の投与後、または抗体の投与に続いて投与する。各種実施形態では、本発明の組み換えMVAは、抗体から1~6日後以内に投与する。より好ましい実施形態では、本発明の組み換えMVAは、抗体の投与から0~5日、0~4日、0~3日または0~2日後以内に投与する。最も好ましい実施形態では、本発明の組み換えMVAは、抗体を投与してから0~3日後に投与する。
【0163】
各種の追加的な実施形態では、本発明の組み換えMVAは、抗体から1~6日後以内に投与する。より好ましい実施形態では、本発明の組み換えMVAは、抗体の投与から1~5日、1~4日、1~3日または1~2日後以内に投与する。最も好ましい実施形態では、本発明の組み換えMVAは、抗体を投与してから1~3日後に投与する。
【0164】
本発明の有益な一態様では、抗体と同時に、または抗体の後に、組み換えMVAを投与することによって、組み換えMVAの投与に起因して、NK細胞応答が増強されるのと同時に、または増強される前に、投与した抗体が腫瘍細胞に結合可能になる。したがって、例示的な第1の工程では、抗体を投与し、その結果、1つ以上の腫瘍細胞の表面上の抗原に、抗体が結合する。例示的な第2の工程では、組み換えMVAを静脈内投与し、それによって、本明細書に記載されているように、対象の自然免疫応答(例えばNK細胞応答)及びT細胞応答の両方を増強及び/または増大させる。自然免疫応答の増強によって、抗体が結合している腫瘍細胞を攻撃的に標的として殺傷する。
【0165】
別の有益な態様では、本発明のレジメンは、対象の自然免疫応答及び適応免疫応答の両方によって、腫瘍を効果的に攻撃するように設計されている。例示的な一態様では、本発明の医薬組み合わせ物は、抗体の投与と同時に、または抗体の投与後に組み換えMVAを静脈内投与するように設計されており、その組み換えMVAは、抗体が結合しているそれらの腫瘍細胞を攻撃して殺傷するNK応答及び自然免疫応答の増強を誘導する。自然免疫応答が、抗体で被覆された腫瘍細胞を殺傷している期間中、本発明の組み換えMVAは、患者において、特異的T細胞応答(CD8 T細胞及びCD4 T細胞の両方を含む)も誘導している。開示されているレジメンは、自然免疫応答、例えば、NK細胞が天然において低下している場合に、特異的CD8/CD4 T細胞応答の増強によって、腫瘍細胞が殺傷されるように設計されている。設計されたそのレジメンは特に有益である。特異的CD8/CD4 T細胞応答の増強によって、患者の自然免疫応答及び/または非特異的な免疫応答を回避した可能性のある腫瘍細胞を殺傷できるからである。
【0166】
別の態様では、本発明の医薬組み合わせ物は、同種及び/または異種のプライムブーストレジメンの一部として投与する。図8~13に例示されているように、同種及び/または異種のプライムブーストレジメンは、NK細胞応答の増強を延長して再活性化するとともに、対象の特異的CD8 T細胞応答及びCD4 T細胞応答を増大させる。したがって、1つ以上の実施形態において、がん患者において腫瘍サイズを縮小させ、及び/または生存率を向上させる医薬組み合わせ物及び/または方法であって、そのがん患者に、本開示の医薬組み合わせ物を投与することを含み、その医薬組み合わせ物を同種または異種のプライムブーストレジメンの一部として投与する医薬組み合わせ物及び/または方法が存在する。プライムブーストレジメンのより好ましい態様では、抗体の投与と同時に、または抗体の投与後に、本発明の組み換えMVAを静脈内投与する。
【0167】
導入遺伝子を含む組み換えMVAウイルスの作製
本発明で提供する組み換えMVAウイルスは、当該技術分野において知られている常法によって作製できる。組み換えポックスウイルスを得るか、または外来コード配列をポックスウイルスゲノムに挿入する方法は、当業者に周知である。例えば、DNAのクローニング、DNA及びRNAの単離、ウェスタンブロット解析、RT-PCR、ならびにPCR増幅技法のような標準的な分子生物学的技法の方法は、Molecular Cloning,A laboratory Manual(2nd Ed.)[J.Samb rook et al.,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)]に記載されており、ウイルスの取り扱い及び操作を行う技法は、Virology Methods Manual[B.W.J.Mahy et al.(eds.),Academic Press(1996)]に記載されている。同様に、MVAの取り扱い、操作及び遺伝子操作を行う技法及びノウハウは、Molecular Virology:A Practical Approach[A.J.Davison & R.M.Elliott(Eds.),The Practical Approach Series,IRL Press at Oxford University Press,Oxford,UK(1993)(例えば、Chapter 9:Expression of genes by Vaccinia virus vectorsを参照)]及びCurrent Protocols in Molecular Biology[John Wiley & Son,Inc.(1998)(例えば、Chapter 16,Section IV:Expression of proteins in mammalian cells using vaccinia viral vectorを参照)]に記載されている。
【0168】
本明細書に開示されている各種の組み換えMVAウイルスの作製には、異なる方法を適用可能であり得る。ウイルスに挿入するDNA配列は、ポックスウイルスのDNAの一部と相同であるDNAが挿入されているE.coliプラスミドコンストラクトに入れることができる。別個に、挿入するDNA配列は、プロモーターにライゲーションできる。そのプロモーターと遺伝子の連結体は、プラスミドコンストラクトにおいて、非必須遺伝子座を含むポックスウイルスDNA領域に隣接するDNA配列と相同なDNAによって両側が挟まれるように配置できる。得られたプラスミドコンストラクトは、細菌のE.coli内で増殖させることによって増幅して、単離することができる。挿入するDNA遺伝子配列を含む単離プラスミドは、例えばニワトリ胚線維芽細胞(CEFs)の細胞培養物にトランスフェクションでき、同時に、その培養物をMVAウイルスに感染させる。プラスミド及びウイルスゲノムにおける相同なMVAウイルスDNA間での組み換えによって、外来のDNA配列の存在によって改変されたポックスウイルスを作製できる。
【0169】
好ましい実施形態によれば、好適な細胞培養物の細胞、例えばCEF細胞をMVAウイルスに感染させることができる。続いて、その感染細胞に、好ましくはポックスウイルス発現調節エレメントの転写調節下で、1つまたは複数の外来または異種の遺伝子(本開示に示されている核酸のうちの1つ以上など)を含む第1のプラスミドベクターをトランスフェクションできる。上で説明したように、そのプラスミドベクターは、MVAウイルスゲノムの所定部分への外来配列の挿入を誘導できる配列も含む。任意に、そのプラスミドベクターは、ポックスウイルスプロモーターに機能的に連結されたマーカー及び/または選択遺伝子を含むカセットも含む。好適なマーカーまたは選択遺伝子は、例えば、緑色蛍光タンパク質、β-ガラクトシダーゼ、ネオマイシン-ホスホリボシルトランスフェラーゼまたはその他のマーカーをコードする遺伝子である。選択またはマーカーカセットの使用によって、作製された組み換えポックスウイルスの同定及び単離が簡素化される。しかしながら、組み換えポックスウイルスは、PCR技法によっても同定できる。続いて、さらなる細胞を、上記のようにして得られた組み換えポックスウイルスに感染させて、その細胞に、1つまたは複数の第2の外来または異種の遺伝子を含む第2のベクターをトランスフェクションできる。念のため、この遺伝子は、ポックスウイルスゲノムの異なる挿入部位に導入するものとし、第2のベクターは、ポックスウイルスのゲノムへの1つまたは複数の第2の外来遺伝子の導入を誘導するポックスウイルス相同配列も異なる。相同組み換えが行われた後、2つ以上の外来または異種の遺伝子を含む組み換えウイルスを単離することができる。追加の外来遺伝子を組み換えウイルスに導入するために、前の感染工程で単離した組み換えウイルスを用いるとともに、トランスフェクション用の1つまたは複数のさらなる外来遺伝子を含むさらなるベクターを用いることによって、感染及びトランスフェクションの工程を繰り返すことができる。
【0170】
あるいは、上記のような感染及びトランスフェクションの工程は、置き換え可能であり、すなわち、最初に、外来遺伝子を含むプラスミドベクターによって、好適な細胞にトランスフェクションを行ってから、その細胞をポックスウイルスに感染させることができる。さらなる代替策では、各外来遺伝子を異なるウイルスに導入して、細胞を、得られたすべての組み換えウイルスに共感染させて、すべての外来遺伝子を含む組み換え体に関してスクリーニングすることも可能である。第3の代替策は、DNAゲノムと外来配列をインビトロでライゲーションして、ヘルパーウイルスを用いて、組み換えワクシニアウイルスのDNAゲノムを再構成することである。第4の代替策は、E.coliまたは別の細菌種において、細菌人工染色体(BAC)としてクローニングしたMVAウイルスゲノムと、MVAウイルスゲノムにおける所望の導入部位と隣接する配列と相同なDNA配列と隣接する直線状の外来配列との間で相同組み換えを行うことである。
【0171】
本開示の1つ以上の核酸は、MVAウイルスまたはMVAウイルスベクターのいずれかの好適な部分に挿入し得る。MVAウイルスの好適な部分は、MVAゲノムの非必須部分である。MVAゲノムの非必須部分は、MVAゲノムの遺伝子間領域または既知の欠失部位1~6であってよい。この代わりに、またはこれに加えて、組み換えMVAの非必須部分は、MVAゲノムのコード領域のうち、ウイルスの増殖には必須ではないコード領域であることができる。しかしながら、挿入部位は、MVAゲノムにおけるこれらの好ましい挿入部位に制限されない。ニワトリ胚線維芽細胞(CEF細胞)のような少なくとも1つの細胞培養系において増幅及び増殖できる組み換え体を得ることが可能である限りは、本発明の核酸(例えば、HER2、Brachyury及びCD40L)、ならびに本明細書に記載されているようないずれかの付随のプロモーターをウイルスゲノムのいずれかの位置に挿入し得ることは、本発明の範囲内であるからである。
【0172】
好ましくは、本発明の核酸は、MVAウイルスの1つ以上の遺伝子間領域(IGR)に挿入し得る。「遺伝子間領域」という用語は好ましくは、MVAウイルスゲノムの2つの隣接するオープンリーディングフレーム(ORF)の間、好ましくは、MVAウイルスゲノムの2つの必須ORFの間に位置するウイルスゲノム部分を指す。MVAにおいては、特定の実施形態では、IGRは、IGR07/08、IGR44/45、IGR64/65、IGR88/89、IGR136/137及びIGR148/149から選択する。
【0173】
MVAウイルスでは、ヌクレオチド配列は、上記に加えてまたは上記の代わりに、MVAゲノムの既知の欠失部位、すなわち欠失部位I、II、III、IV、VまたはVIのうちの1つ以上に挿入し得る。「既知の欠失部位」という用語は、例えばMeisinger-Henschel et al.(2007),Journal of General Virology 88:3249-3259に記載されているように、CEF細胞での連続継代を通じて欠失されたMVAゲノム部分であって、本発明のMVAの由来元である親ウイルス、特には、親漿尿膜ワクシニアウイルスアンカラ(CVA)のゲノムを基準に、516継代目に特徴付けられた部分を指す。
【0174】
ワクチン
特定の実施形態では、本開示の組み換えMVAは、ワクチンの一部として調合できる。ワクチンの調製の際に、そのMVAウイルスは、生理学的に許容可能な形態に変換できる。特定の実施形態では、このような調製法は、例えばStickl,H.et al.,Dtsch.med.Wschr.99,2386-2392(1974)に記載されているように、天然痘に対するワクチン接種で用いるポックスウイルスワクチンを調製した際の経験に基づいている。
【0175】
例示的な調製法は、以下のとおりである。5×10TCID50/mlの力価で、10mMのトリス、140mMのNaCl(pH7.4)中で調合した精製ウイルスを-80℃で保存する。ワクチン注射剤の調製の際に、例えば、1×10~1×10個の粒子のウイルスをアンプル、好ましくはガラスアンプル内で、2%ペプトン及び1%ヒトアルブミンの存在下で、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で凍結乾燥できる。あるいは、ワクチン注射剤は、調合物中でウイルスを段階凍結乾燥することによって調製できる。特定の実施形態では、その調合物は、インビボ投与に適するマンニトール、デキストラン、糖、グリシン、ラクトース、ポリビニルピロリドンのような追加の添加剤、または抗酸化剤、不活性ガスもしくは安定剤のような(ただしこれらに限らない)他の添加剤、あるいは組み換えタンパク質(例えばヒト血清アルブミン)を含む。続いて、そのアンプルを密閉し、好適な温度、例えば4℃~室温で、数カ月間保存できる。しかしながら、必要がない限りは、アンプルは、好ましくは-20℃未満、好ましくは約-80℃の温度で保存する。
【0176】
ワクチン接種または療法を伴う各種実施形態では、その凍結乾燥体を0.1~0.5mlの水性溶液、好ましくは、生理食塩水、または10mMのトリス、140mMのNaCl(pH7.7)のようなトリス緩衝液に溶解する。本開示の組み換えMVA、ワクチンまたは医薬組成物を10~1010TCID50/ml、10~5×10TCID50/ml、10~10TCID50/mlまたは10~10TCID50/mlの濃度範囲で、溶液に調合できることが企図されている。ヒトに対する好ましい用量は、10~1010TCID50を含み、10TCID50、10TCID50、10TCID50、5×10TCID50、10TCID50、5×10TCID50または1010TCID50の用量を含む。用量及び投与数の最適化は、当業者の技術及び知識の範囲内である。
【0177】
1つ以上の好ましい実施形態では、本明細書に定められているように、本発明の組み換えMVAは、がん患者に静脈内投与する。
【0178】
追加的な実施形態では、本発明の抗体は、全身投与または局所投与、すなわち、腹腔内投与、非経口投与、皮下投与、静脈内投与、筋肉内投与、鼻腔内投与、皮内または熟練施術者に知られているいずれかの他の投与経路による投与を行うことができる。
【0179】
キット、組成物及び使用方法
各種実施形態では、本発明は、a)本明細書に記載されている核酸を含む組み換えMVA、及びb)本明細書に記載されている1つ以上の抗体を含むキット、医薬組み合わせ物、医薬組成物及び/または免疫原性組成物を含む。
【0180】
そのキット及び/または組成物は、本開示の組み換えポックスウイルスの入った1つまたは複数の容器またはバイアル、本開示の抗体の入った1つ以上の容器またはバイアルとともに、その組み換えMVA及び抗体の投与に関する説明を含み得ることが企図されている。より特定的な実施形態では、そのキットは、その組み換えMVA及び抗体を最初にプライミング投与してから、その後に、組み換えMVA及び抗体を1回以上ブースト投与することに関する説明を含み得ることが企図されている。
【0181】
本発明で提供するキット及び/または組成物は概ね、製薬学的許容可能であり及び/または承認された1つ以上の担体、添加剤、抗生物質、保存剤、アジュバント、希釈剤及び/または安定剤を含んでよい。このような補助物質は、水、生理食塩水、グリセロール、エタノール、湿潤剤、乳化剤、pH緩衝物質などであることができる。好適な担体は典型的には、タンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマーアミノ酸、アミノ酸コポリマー、脂質集合体などのように、ゆっくり代謝される大きな分子である。
【0182】
特定の例示的な実施形態
実施形態1は、がん患者において腫瘍サイズを縮小させ、及び/または生存率を向上させる方法であって、a)第1の異種の腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸を含む組み換え改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)であって、静脈内投与すると、第1の異種のがん関連抗原をコードする第1の核酸を含む組み換えMVAの非静脈内投与によって誘導されるナチュラルキラー(NK)細胞応答及びT細胞応答と比べて、NK細胞応答の増強及び細胞傷害性T細胞応答の増強の両方を誘導するMVAをそのがん患者に静脈内投与すること、ならびにb)そのがん患者に抗体を投与することであって、その抗体が、Fcドメインを含むとともに、腫瘍細胞の細胞膜上に発現または過剰発現する抗原に特異的であることを含み、そのa)及びb)をそのがん患者に行うと、単独でa)を非静脈内投与で行うか、またはb)を行う場合と比べて、そのがん患者の腫瘍サイズが縮小し、及び/またはそのがん患者の生存率が上昇する方法である。
【0183】
実施形態2は、がん患者において腫瘍サイズを縮小させ、及び/または生存率を向上させる方法であって、a)そのがん患者に抗体を投与することであって、その抗体が、Fcドメインを含むとともに、腫瘍細胞の細胞膜上に発現する抗原に特異的であること、ならびにb)第1の異種の腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸を含む組み換え改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)であって、静脈内投与すると、第1の異種のがん関連抗原をコードする第1の核酸を含む組み換えMVAの非静脈内投与によって誘導されるナチュラルキラー(NK)細胞応答及びT細胞応答と比べて、NK細胞応答の増強及び細胞傷害性T細胞応答の増強の両方を誘導するMVAをそのがん患者に静脈内投与することを含み、そのa)及びb)をがん患者に行うと、単独でa)を非静脈内投与で行うか、またはb)を行う場合と比べて、そのがん患者の腫瘍サイズが縮小し、及び/またはそのがん患者の生存率が上昇する方法である。
【0184】
実施形態3は、がん患者において腫瘍サイズを縮小させ、及び/または生存率を向上させる方法であって、a)そのがん患者に抗体を投与することであって、その抗体が、Fcドメインを含むとともに、腫瘍細胞の細胞膜の外面上に発現する抗原に特異的であり、投与すると、そのがん患者においてADCCを誘導すること、ならびにb)第1の異種の腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸を含む組み換え改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)であって、静脈内投与すると、第1の異種のがん関連抗原をコードする第1の核酸を含む組み換えMVAの非静脈内投与によって誘導されるナチュラルキラー(NK)細胞応答及びT細胞応答と比べて、NK細胞応答の増強及びT細胞応答の増強の両方を誘導するMVAをそのがん患者に静脈内投与することを含み、そのa)及びb)をそのがん患者に行うと、単独でa)を非静脈内投与で行うか、またはb)を行う場合と比べて、がん患者の腫瘍サイズが縮小し、及び/またはがん患者の生存率が上昇する方法である。
【0185】
実施形態4は、その抗体が、腫瘍細胞の細胞膜上に過剰発現する抗原に特異的である、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法である。
【0186】
実施形態5は、CD40Lをそのがん患者に静脈内投与することをさらに含む、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法である。
【0187】
実施形態6は、そのCD40Lが、そのMVAによってコードされる、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法である。
【0188】
実施形態7は、NK細胞応答の増強を誘導することが、a)ADCC応答の増強を誘導すること、及びb)NK細胞が、MHC発現の低い腫瘍細胞を標的として殺傷するのを誘導することのうちの少なくとも1つを含む、実施形態1~6のいずれか1つに記載の方法である。
【0189】
実施形態8は、NK細胞応答の増強を誘導することが、ADCC応答の増強を誘導することを含む、実施形態1~6のいずれか1つに記載の方法である。
【0190】
実施形態9は、その組み換えMVAを抗体と同時に、または抗体の後に投与する、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法である。
【0191】
実施形態10は、その組み換えMVAを抗体の後に投与する、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法である。
【0192】
実施形態11は、そのMVAが、第2の異種TAAをコードする第2の核酸をさらに含む、実施形態1~10のいずれか1つに記載の方法である。
【0193】
実施形態12は、その第1及び/または第2のTAAが、5-α-レダクターゼ、α-フェトプロテイン(「AFP」)、AM-1、APC、April、Bメラノーマ抗原遺伝子(「BAGE」)、β-カテニン、Bcl12、bcr-abl、Brachyury、CA-125、カスパーゼ-8(「CASP-8」、「FLICE」としても知られている)、カテプシン、CD19、CD20、CD21/補体受容体2(「CR2」)、CD22/BL-CAM、CD23/FcεRII、CD33、CD35/補体受容体1(「CR1」)、CD44/PGP-1、CD45/白血球共通抗原(「LCA」)、CD46/メンブレンコファクタープロテイン(「MCP」)、CD52/CAMPATH-1、CD55/崩壊促進因子(「DAF」)、CD59/プロテクチン、CDC27、CDK4、癌胎児性抗原(「CEA」)、c-myc、シクロオキシゲナーゼ-2(「cox-2」)、大腸癌欠失遺伝子(「DCC」)、DcR3、E6/E7、CGFR、EMBP、Dna78、ファルネシルトランスフェラーゼ、線維芽細胞増殖因子-8a(「FGF8a」)、線維芽細胞増殖因子-8b(「FGF8b」)、FLK-1/KDR、葉酸受容体、G250、Gメラノーマ抗原遺伝子ファミリー(「GAGEファミリー」)、ガストリン17、ガストリン放出ホルモン、ガングリオシド2(「GD2」)/ガングリオシド3(「GD3」)/ガングリオシド-モノシアル酸-2(「GM2」)、ゴナドトロピン放出ホルモン(「GnRH」)、UDP-GlcNAc:RMan(α1-6)R[GlcNAc-Man(α1-6)]β1,6-N--アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼV(「GnT V」)、GP1、gp100/Pme117、gp-100-in4、gp15、gp75/チロシン関連タンパク質-1(「gp75/TRP-1」)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(「hCG」)、ヘパラナーゼ、HER2、ヒト乳癌ウイルス(「HMTV」)、70キロダルトンの熱ショックタンパク質(「HSP70」)、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(「hTERT」)、インスリン様増殖因子受容体-1(「IGFR-1」)、インターロイキン-13受容体(「IL-13R」)、誘導型一酸化窒素合成酵素(「iNOS」)、Ki67、KIAA0205、K-ras、H-ras、N-ras、KSA、LKLR-FUT、メラノーマ抗原コード遺伝子1(「MAGE-1」)、メラノーマ抗原コード遺伝子2(「MAGE-2」)、メラノーマ抗原コード遺伝子3(「MAGE-3」)、メラノーマ抗原コード遺伝子4(「MAGE-4」)、マンマグロビン、MAP17、Melan-A/T細胞によって認識されるメラノーマ抗原-1(「MART-1」)、メソセリン、MIC A/B、MT-MMP、ムチン、精巣特異的抗原NY-ESO-1、オステオネクチン、p15、P170/MDR1、p53、p97/メラノトランスフェリン、PAI-1、血小板由来増殖因子(「PDGF」)、μPA、PRAME、プロバシン、プロゲニポイエチン、前立腺特異的抗原(「PSA」)、前立腺特異的膜抗原(「PSMA」)、RAGE-1、Rb、RCAS1、SART-1、SSXファミリー、STAT3、STn、TAG-72、トランスフォーミング増殖因子-α(「TGF-α」)、トランスフォーミング増殖因子-β(「TGF-β」)、チモシン-β-15、腫瘍壊死因子-α(「TNF-α」)、TP1、TRP-2、チロシナーゼ、血管内皮増殖因子(「VEGF」)、ZAG、p16INK4及びグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(「GST」)からなる群から選択される、実施形態1~11のいずれか1つに記載の方法である。
【0194】
実施形態13は、その抗体が、がん患者の治療用に承認されている抗体である、実施形態1~12のいずれか1つに記載の方法である。
【0195】
実施形態14は、その抗体が、抗CD20(例えば、リツキシマブ、オファツムマブ、トシツモマブ)、抗CD52(例えばアレムツズマブであるCampath)、抗EGFR(例えば、セツキシマブであるErbitux、パニツムマブ)、抗CD2(例えばシプリズマブ)、抗CD37(例えばBI836826)、抗CD123(例えばJNJ-56022473)、抗CD30(例えばXmAb2513)、抗CD38(例えばダラツムマブであるDarzalex)、抗PDL1(例えば、アベルマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ)、CTLA-4(例えばイピリムマブ)、抗GD2(例えば、3F8、ch14.18、KW-2871、ジヌツキシマブ)、抗CEA、抗MUC1、抗FLT3、抗CD19、抗CD40、抗SLAMF7、抗CCR4、抗B7-H3、抗ICAM1、抗CSF1R、抗CA125(例えばオレゴボマブ)、抗FRα(例えばMOv18-IgG1、ミルベツキシマブソラブタンシン(IMGN853)、MORAb-202)、抗メソセリン(例えばMORAb-009)及び抗HER2からなる群から選択される、実施形態1~13のいずれか1つに記載の方法である。
【0196】
実施形態15は、その抗体が、HER2抗原に特異的である、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法である。
【0197】
実施形態16は、その抗体が、ペルツズマブ、トラスツズマブ、Herzuma、ABP980及びアドトラスツズマブエムタンシンから選択される、実施形態1~15のいずれか1つに記載の方法である。
【0198】
実施形態17は、その抗体がその第1及び/または第2のTAAに結合するのを防ぐために、その第1及び/または第2のTAAが改変されている、実施形態1~16のいずれか1つに記載の方法である。
【0199】
実施形態18は、その第1のTAAがHER2である、実施形態1~17のいずれか1つに記載の方法である。
【0200】
実施形態19は、そのHER2抗体がそのHER2抗原に結合するのを防ぐために、そのHER2の1つ以上のアミノ酸が変異している、実施形態18に記載の方法である。
【0201】
実施形態20は、そのHER2ポリペプチド及び/または抗原の細胞外での二量化、チロシンキナーゼ活性及び/またはリン酸化を防ぐために、そのHER2の1つ以上のアミノ酸が変異している、実施形態18~19のいずれか1つに記載の方法である。
【0202】
実施形態21は、HER2の膜近傍領域における3つのループの少なくとも1つに、1つ以上の変異が施されている、実施形態18~20のいずれか1つに記載の方法である。
【0203】
実施形態22は、HER2の膜近傍領域のその3つのループが、579~583位のアミノ酸(ループ1)、592~595位のアミノ酸(ループ2)及び615~625位のアミノ酸(ループ3)から選択される、18~21のいずれか1つに記載の方法である。
【0204】
実施形態23は、そのHER2抗原が、H267、Y274、S310、L317、H318、K333、E580、D582、P594、F595、K615及びQ624のアミノ酸のうちの少なくとも1つに、少なくとも1つの変異を含む、実施形態18~22のいずれか1つに記載の方法である。
【0205】
実施形態24は、そのHER2抗原が、E580A、F595A、K615A、S310A、H318A、L317A、D277R、E280K、K573M及びY1023Aからなる群から選択した少なくとも1つの変異を含む、実施形態18~23のいずれか1つに記載の方法である。
【0206】
実施形態25は、そのHER2抗原が、1139~1248位のアミノ酸に対する変異を少なくとも1つ含む、実施形態18~24のいずれか1つに記載の方法である。
【0207】
実施形態26は、そのHER2抗原が、1139~1248位のアミノ酸に、少なくとも1つの欠失を含む、実施形態18~25のいずれか1つに記載の方法である。
【0208】
実施形態27は、そのHER2抗原が、1139~1248位のアミノ酸の欠失を含む、実施形態18~26のいずれか1つに記載の方法である。
【0209】
実施形態28は、配列番号1との同一性が少なくとも90%、95%、97%、98%または99%であるHER2抗原をその第1の核酸がコードする、実施形態18~27のいずれか1つに記載の方法である。
【0210】
実施形態29は、その第1の核酸が、配列番号1を含むHER2抗原をコードする、実施形態18~28のいずれか1つに記載の方法である。
【0211】
実施形態30は、その第1の核酸が、HER2抗原をコードし、その第1の核酸の配列番号2との同一性が少なくとも90%、95%、97%、98%または99%である、実施形態18~29のいずれか1つに記載の方法である。
【0212】
実施形態31は、その第1の核酸が、配列番号2を含む、実施形態18~30のいずれか1つに記載の方法である。
【0213】
実施形態32は、そのMVAが、その第1のTAAとは異なる第2の異種TAAをコードする第2の核酸を含む、実施形態1~31のいずれか1つに記載の方法である。
【0214】
実施形態33は、その第2のTAAがBrachyuryである、実施形態32に記載の方法である。
【0215】
実施形態34は、そのBrachyury抗原が、そのBrachyury抗原の核局在化を防ぐ1つ以上の変異を含む、実施形態33に記載の方法である。
【0216】
実施形態35は、そのBrachyury抗原が、核局在化シグナル(NLS)ドメインに対する変異を1つ以上含む、実施形態33~34のいずれか1つに記載の方法である。
【0217】
実施形態36は、そのBrachyury抗原のNLSドメインが欠失している、実施形態33~35のいずれか1つに記載の方法である。
【0218】
実施形態37は、配列番号3との同一性が少なくとも90%、95%、97%、98%または99%であるBrachyury抗原をその第2の核酸が含む、実施形態33~36のいずれか1つに記載の方法である。
【0219】
実施形態38は、その第2の核酸が配列番号3を含む、実施形態33~37のいずれか1つに記載の方法である。
【0220】
実施形態39は、その第2の核酸がBrachyury抗原をコードし、その第2の核酸の配列番号4との同一性が少なくとも90%、95%、97%、98%または99%である、実施形態33~38のいずれか1つに記載の方法である。
【0221】
実施形態40は、その第2の核酸が配列番号4を含む、実施形態33~39のいずれか1つに記載の方法である。
【0222】
実施形態41は、その抗体が、抗CD20(リツキシマブ、オファツムマブ、トシツモマブ)、抗CD52(アレムツズマブであるCampath)、抗EGFR(セツキシマブであるErbitux、パニツムマブ)、抗CD38(ダラツムマブであるDarzalex)、抗PDL1(アベルマブ)、抗CTLA4(イピリムマブ)、抗GD2(3F8、ch14.18、KW-2871、ジヌツキシマブ)、抗CEA、抗MUC1、抗FLT3L、抗CD19、抗CD40、抗SLAMF7、抗CCR4、抗B7-H3、抗ICAM1、抗CSF1R及び抗HER2からなる群から選択される、実施形態1~40のいずれか1つに記載の方法である。
【0223】
実施形態42は、その抗体が、HER2抗原に特異的である、実施形態1~41のいずれか1つに記載の方法である。
【0224】
実施形態43は、その抗HER2抗体が、ペルツズマブ、トラスツズマブ及びアドトラスツズマブエムタンシンから選択される、実施形態42に記載の方法である。
【0225】
実施形態44は、その抗体及びそのMVAを同種のプライムブーストレジメンとして投与する、実施形態1~43のいずれか1つに記載の方法である。
【0226】
実施形態45は、そのMVAが、MVA-BNまたはMVA-BNの誘導体である、実施形態1~44のいずれか1つに記載の方法である。
【0227】
実施形態46は、そのがん患者が、乳癌、肺癌、頭頸部癌、甲状腺、メラノーマ、胃癌、膀胱癌、腎臓癌、肝臓癌、メラノーマ、膵臓癌、前立腺癌、卵巣癌もしくは大腸癌からなる群から選択したがんを罹患しており、及び/またはそのがんと診断されている、実施形態1~45のいずれか1つに記載の方法である。
【0228】
実施形態47は、がん患者において腫瘍サイズを縮小させ、及び/または生存率を向上させるのに用いる医薬組み合わせ物であって、a)第1の異種の腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸を含む組み換え改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)であって、静脈内投与すると、異種TAAをコードする核酸を含む組み換えMVAウイルスの非静脈内投与によって誘導されるナチュラルキラー(NK)細胞応答及びT細胞応答と比べて、NK細胞応答の増強及びT細胞応答の増強の両方を誘導するMVA、ならびにb)Fcドメインを含むとともに、腫瘍細胞の細胞膜上に発現する抗原に特異的である抗体を含み、そのa)及びb)をがん患者に投与すると、単独でa)を非IV投与するか、またはb)を投与する場合と比べて、そのがん患者の腫瘍サイズが縮小し、及び/または生存率が上昇する医薬組み合わせ物である。
【0229】
実施形態48は、がん患者において腫瘍サイズを縮小させ、及び/または生存率を向上させるのに用いる医薬組み合わせ物であって、a)第1の異種の腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸を含む組み換え改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)であって、静脈内投与すると、異種TAAをコードする核酸を含む組み換えMVAの非静脈内投与によって誘導されるナチュラルキラー(NK)細胞応答及びT細胞応答と比べて、NK細胞応答の増強及びT細胞応答の増強の両方を誘導するMVA、ならびにb)Fcドメインを含むとともに、腫瘍細胞の細胞膜上に発現する抗原に特異的である抗体であって、その抗体を投与すると、その抗体が、そのヒトがん患者における腫瘍細胞上の抗原に結合して、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を誘導する抗体を含み、そのa)及びb)をがん患者に投与すると、単独でa)を非IV投与するか、またはb)を投与する場合と比べて、そのがん患者の腫瘍サイズが縮小し、及び/または生存率が上昇する医薬組み合わせ物である。
【0230】
実施形態49は、そのCD40Lが、その組み換えMVAによってコードされる、実施形態47~48のいずれか1つに記載の医薬組み合わせ物である。
【0231】
実施形態50は、その組み換えMVAが、第2の異種TAAをコードする第2の核酸をさらに含む、実施形態47~49のいずれか1つに記載の医薬組み合わせ物である。
【0232】
実施形態51は、その第1及び/または第2のTAAが、5-α-レダクターゼ、α-フェトプロテイン(「AFP」)、AM-1、APC、April、Bメラノーマ抗原遺伝子(「BAGE」)、β-カテニン、Bcl12、bcr-abl、Brachyury、CA-125、カスパーゼ-8(「CASP-8」、「FLICE」としても知られている)、カテプシン、CD19、CD20、CD21/補体受容体2(「CR2」)、CD22/BL-CAM、CD23/FcεRII、CD33、CD35/補体受容体1(「CR1」)、CD44/PGP-1、CD45/白血球共通抗原(「LCA」)、CD46/メンブレンコファクタープロテイン(「MCP」)、CD52/CAMPATH-1、CD55/崩壊促進因子(「DAF」)、CD59/プロテクチン、CDC27、CDK4、癌胎児性抗原(「CEA」)、c-myc、シクロオキシゲナーゼ-2(「cox-2」)、大腸癌欠失遺伝子(「DCC」)、DcR3、E6/E7、CGFR、EMBP、Dna78、ファルネシルトランスフェラーゼ、線維芽細胞増殖因子-8a(「FGF8a」)、線維芽細胞増殖因子-8b(「FGF8b」)、FLK-1/KDR、葉酸受容体、G250、Gメラノーマ抗原遺伝子ファミリー(「GAGEファミリー」)、ガストリン17、ガストリン放出ホルモン、ガングリオシド2(「GD2」)/ガングリオシド3(「GD3」)/ガングリオシド-モノシアル酸-2(「GM2」)、ゴナドトロピン放出ホルモン(「GnRH」)、UDP-GlcNAc:RMan(α1-6)R[GlcNAc-Man(α1-6)]β1,6-N--アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼV(「GnT V」)、GP1、gp100/Pme117、gp-100-in4、gp15、gp75/チロシン関連タンパク質-1(「gp75/TRP-1」)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(「hCG」)、ヘパラナーゼ、HER2、ヒト乳癌ウイルス(「HMTV」)、70キロダルトンの熱ショックタンパク質(「HSP70」)、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(「hTERT」)、インスリン様増殖因子受容体-1(「IGFR-1」)、インターロイキン-13受容体(「IL-13R」)、誘導型一酸化窒素合成酵素(「iNOS」)、Ki67、KIAA0205、K-ras、H-ras、N-ras、KSA、LKLR-FUT、メラノーマ抗原コード遺伝子1(「MAGE-1」)、メラノーマ抗原コード遺伝子2(「MAGE-2」)、メラノーマ抗原コード遺伝子3(「MAGE-3」)、メラノーマ抗原コード遺伝子4(「MAGE-4」)、マンマグロビン、MAP17、Melan-A/T細胞によって認識されるメラノーマ抗原-1(「MART-1」)、メソセリン、MIC A/B、MT-MMP、ムチン、精巣特異的抗原NY-ESO-1、オステオネクチン、p15、P170/MDR1、p53、p97/メラノトランスフェリン、PAI-1、血小板由来増殖因子(「PDGF」)、μPA、PRAME、プロバシン、プロゲニポイエチン、前立腺特異的抗原(「PSA」)、前立腺特異的膜抗原(「PSMA」)、RAGE-1、Rb、RCAS1、SART-1、SSXファミリー、STAT3、STn、TAG-72、トランスフォーミング増殖因子-α(「TGF-α」)、トランスフォーミング増殖因子-β(「TGF-β」)、チモシン-β-15、腫瘍壊死因子-α(「TNF-α」)、TP1、TRP-2、チロシナーゼ、血管内皮増殖因子(「VEGF」)、ZAG、p16INK4及びグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(「GST」)からなる群から選択されている、実施形態47~50のいずれか1つに記載の医薬組み合わせ物である。
【0233】
実施形態52は、その第1のTAAがHER2である、実施形態47~51のいずれか1つに記載の医薬組み合わせ物である。
【0234】
実施形態53は、そのHER2抗原が、E580A、F595A、K615A、S310A、H318A、L317A、D277R、E280K、K573M及びY1023Aからなる群から選択した少なくとも1つの変異を含む、実施形態52に記載の医薬組み合わせ物である。
【0235】
実施形態54は、配列番号1との同一性が少なくとも90%、95%、97%、98%または99%であるHER2抗原をその第1の核酸が含む、実施形態52~53のいずれか1つに記載の医薬組み合わせ物である。
【0236】
実施形態55は、その第1の核酸が、配列番号1を含む、実施形態52~54のいずれか1つに記載の医薬組み合わせ物である。
【0237】
実施形態56は、その第1の核酸が、HER2抗原をコードし、その第1の核酸の配列番号2との同一性が少なくとも90%、95%、97%、98%または99%である、実施形態52~55のいずれか1つに記載の医薬組み合わせ物である。
【0238】
実施形態57は、その第1の核酸が、配列番号2を含む、実施形態52~56のいずれか1つに記載の医薬組み合わせ物である。
【0239】
実施形態58は、そのMVAが、その第1のTAAとは異なる第2の異種TAAをコードする第2の核酸を含む、実施形態47~57のいずれか1つに記載の医薬組み合わせ物である。
【0240】
実施形態59は、その第2のTAAがBrachyuryである、実施形態58に記載の医薬組み合わせ物である。
【0241】
実施形態60は、配列番号3との同一性が少なくとも90%、95%、97%、98%または99%であるBrachyury抗原をその第2の核酸が含む、実施形態59に記載の医薬組み合わせ物である。
【0242】
実施形態61は、その第2の核酸が、配列番号3を含む抗原をコードする、実施形態59~60のいずれか1つに記載の医薬組み合わせ物である。
【0243】
実施形態62は、その第2の核酸がBrachyury抗原をコードし、その第2の核酸の配列番号4との同一性が少なくとも90%、95%、97%、98%または99%である、実施形態59~61のいずれか1つに記載の医薬組み合わせ物である。
【0244】
実施形態63は、その第2の核酸が配列番号4を含む、実施形態59~62のいずれか1つに記載の医薬組み合わせ物である。
【0245】
実施形態64は、その抗体が、抗CD20(例えば、リツキシマブ、オファツムマブ、トシツモマブ)、抗CD52(例えばアレムツズマブであるCampath)、抗EGFR(例えば、セツキシマブであるErbitux、パニツムマブ)、抗CD2(例えばシプリズマブ)、抗CD37(例えばBI836826)、抗CD123(例えばJNJ-56022473)、抗CD30(例えばXmAb2513)、抗CD38(例えばダラツムマブであるDarzalex)、抗PDL1(例えば、アベルマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ)、CTLA-4(例えばイピリムマブ)、抗GD2(例えば、3F8、ch14.18、KW-2871、ジヌツキシマブ)、抗CEA、抗MUC1、抗FLT3、抗CD19、抗CD40、抗SLAMF7、抗CCR4、抗B7-H3、抗ICAM1、抗CSF1R、抗CA125(例えばオレゴボマブ)、抗FRα(例えばMOv18-IgG1、ミルベツキシマブソラブタンシン(IMGN853)、MORAb-202)、抗メソセリン(例えばMORAb-009)及び抗HER2からなる群から選択されている、実施形態47~63のいずれか1つに記載の医薬組み合わせ物である。
【0246】
実施形態65は、その抗体が、HER2抗原に特異的である、実施形態47~64のいずれか1つに記載の医薬組み合わせ物である。
【0247】
実施形態66は、その抗体が、ペルツズマブ、トラスツズマブ、Herzuma、ABP980及びアドトラスツズマブエムタンシンから選択されている、実施形態65に記載の医薬組み合わせ物である。
【0248】
実施形態67は、そのMVAが、MVA-BNまたはMVA-BNの誘導体である、実施形態47~66のいずれか1つに記載の医薬組み合わせ物である。
【0249】
実施形態68は、がん患者においてナチュラルキラー(NK)応答の増強を誘導する方法であって、実施形態47~66のいずれか1つに記載の医薬組み合わせ物を投与することを含み、その医薬組み合わせ物を投与することによって、単独でa)の医薬組み合わせ物を非静脈内投与するか、または単独でb)を投与する場合と比べて、そのがん患者のNK細胞応答が増強される方法である。
【0250】
実施形態69は、がん患者において自然免疫応答の増強及び適応免疫応答の増強の両方を誘導する方法であって、実施形態47~67のいずれか1つに記載の医薬組み合わせ物を投与することを含み、その医薬組み合わせ物を投与することによって、単独でa)の医薬組み合わせ物を非静脈内投与するか、またはb)を投与する場合と比べて、そのがん患者のNK細胞応答が増強される方法である。
【0251】
実施形態70は、その適応免疫応答の増強が、T細胞応答の増強を含む、実施形態69に記載の方法である。
【0252】
実施形態71は、そのT細胞応答の増強が、CD8 T細胞応答の増強及びCD4 T細胞応答の増強を含む、実施形態70に記載の方法である。
【0253】
実施形態72は、がん患者における抗体療法の増強方法であって、実施形態47~67のいずれか1つに記載の医薬組み合わせ物を投与することを含み、その医薬組み合わせ物を投与すると、その抗体療法を単独で行った場合と比べて、その抗体療法抗体によって誘導される依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)が増強される方法である。
【0254】
実施形態73は、がん患者において、MHCレベルが低下している腫瘍細胞を殺傷する作用の増強方法であって、実施形態47~67のいずれか1つに記載の医薬組み合わせ物を投与することを含み、その医薬組み合わせ物を投与することによって、b)を単独で投与する場合と比べて、MHCレベルが低下している腫瘍細胞を殺傷する作用が増強される方法である。
【0255】
実施形態74は、ヒトがん患者の治療方法であって、実施形態47~67のいずれか1つに記載の医薬組み合わせ物をそのがん患者に投与することを含む方法である。
【0256】
実施形態75は、その組み換えMVAを抗体と同時にまたは抗体の後に投与する、実施形態68~74のいずれか1つに記載の方法である。
【0257】
実施形態76は、その組み換えMVAを抗体の後に投与する、実施形態68~74のいずれか1つに記載の方法である。
【0258】
実施形態77は、その組み換えMVAを抗体の0~8日後、0~7日後、0~6日後、0~5日後、0~4日後、0~3日後、0~2日後または0~1日後に投与する、実施形態68~75のいずれか1つに記載の方法である。
【0259】
実施形態78は、その組み換えMVAを抗体の1~8日後、1~7日後、1~6日後、1~5日後、1~4日後、1~3日後、1~2日後または1日後に投与する、実施形態68~75のいずれか1つに記載の方法である。
【0260】
実施形態79は、その組み換えMVAを抗体の0~3日後、0~2日後、0~1日後に投与する、実施形態68~77のいずれか1つに記載の方法である。
【0261】
実施形態80は、その組み換えMVAを抗体の0~3日後に投与する、実施形態79に記載の方法である。
【0262】
実施形態81は、その抗体及びそのMVAを同種または異種のプライムブーストレジメンの一部として投与する、実施形態68~80のいずれか1つに記載の方法である。
【0263】
実施形態82は、その抗体及びそのMVAを同種のプライムブーストレジメンの一部として投与する、実施形態68~80のいずれか1つに記載の方法である。
【0264】
実施形態83は、そのがん患者が、乳癌、肺癌、頭頸部癌、甲状腺、メラノーマ、胃癌、膀胱癌、腎臓癌、肝臓癌、メラノーマ、膵臓癌、前立腺癌、卵巣癌もしくは大腸癌からなる群から選択されるがんを罹患しており、及び/またはそのがんと診断されている、実施形態1~45及び68~82のいずれか1つに記載の方法である。
【0265】
実施形態84は、がん患者の腫瘍体積を縮小させ、及び/または生存率を向上させるのに用いる医薬組み合わせ物であって、実施形態47~67のいずれか1つに記載の医薬組み合わせ物を含み、その医薬組み合わせ物を投与することによって、単独でa)の医薬組み合わせ物を非静脈内投与するか、またはb)を投与する場合と比べて、患者の腫瘍体積が縮小し、及び/または生存率が上昇する医薬組み合わせ物である。
【0266】
実施形態85は、がん患者の腫瘍体積を縮小させ、及び/または生存率を向上させる方法において、実施形態47~67のいずれか1つに記載の医薬組み合わせ物を使用することである。
【0267】
実施形態86は、がん患者の腫瘍体積を縮小させ、及び/または生存率を向上させるための医薬または薬剤の調製に、実施形態47~67のいずれか1つに記載の医薬組み合わせ物を使用することである。
【0268】
実施形態87は、がん患者において腫瘍サイズを縮小させ、及び/または生存率を向上させる方法であって、a)第1の異種の腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸を含む組み換え改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)であって、静脈内投与すると、第1の異種のがん関連抗原をコードする第1の核酸を含む組み換えMVAの非静脈内投与によって誘導される自然免疫応答及びT細胞応答と比べて、自然免疫応答の増強及びT細胞応答の増強の両方を誘導するMVAをそのがん患者に静脈内投与すること、ならびにb)そのがん患者に抗体を投与することであって、その抗体が、Fcドメインを含むとともに、腫瘍細胞の細胞膜上に発現する抗原に特異的であることを含み、そのa)及びb)をがん患者に行うと、単独でa)を非静脈内投与で行うか、またはb)を行う場合と比べて、がん患者の腫瘍サイズが縮小し、及び/またはそのがん患者の生存率が上昇する方法である。
【0269】
実施形態88は、その自然免疫応答の増強が、NK細胞応答の増強、マクロファージ応答の増強、単球応答の増強、好中球応答の増強、好塩基球応答の増強、好酸球応答の増強、肥満細胞応答の増強及び樹状細胞応答の増強のうちの少なくとも1つを含む、実施形態87に記載の方法である。
【0270】
実施形態89は、その組み換えMVAがさらにCD40Lをコードする、実施形態87~88のいずれか1つに記載の方法である。
【0271】
実施形態90は、NK細胞応答の増強を誘導することが、a)ADCC応答の増強を誘導すること、及びb)NK細胞が、MHC発現の低い腫瘍細胞を標的として殺傷するように誘導することのうちの少なくとも1つを含む、実施形態88~89のいずれか1つに記載の方法である。
【0272】
実施形態91は、その組み換えMVAを抗体と同時に、または抗体の後に投与する、実施形態87~90のいずれか1つに記載の方法である。
【0273】
実施形態92は、その組み換えMVAを抗体の後に投与する、実施形態87~91のいずれか1つに記載の方法である。
【0274】
実施形態93は、そのMVAが、実施形態51~63のいずれか1つに記載の第1及び/または第2の異種TAAをコードする第1及び/または第2の核酸を含む、実施形態87~92のいずれか1つに記載の方法である。
【0275】
実施形態94は、その抗体が、実施形態64~66のいずれか1つに記載の抗体を含む、実施形態87~93のいずれか1つに記載の方法である。
【0276】
実施形態95は、がん患者において腫瘍サイズを縮小させ、及び/または生存率を向上させるための医薬組み合わせ物であって、a)第1の異種の腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸を含む組み換え改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)であって、静脈内投与すると、異種TAAをコードする核酸を含む組み換えMVAウイルスの非静脈内投与によって誘導される自然免疫応答及びT細胞応答と比べて、自然免疫応答の増強及びT細胞応答の増強の両方を誘導するMVA、ならびにb)Fcドメインを含むとともに、腫瘍細胞の細胞膜上に発現する抗原に特異的である抗体を含み、そのa)及びb)をがん患者に投与すると、単独でa)を非IV投与するか、またはb)を投与する場合と比べて、そのがん患者の腫瘍サイズが縮小し、及び/または生存率が上昇する医薬組み合わせ物である。
【0277】
実施形態96は、その組み換えMVAがさらにCD40Lをコードする、実施形態95に記載の医薬組み合わせ物である。
【0278】
実施形態97は、その自然免疫応答の増強が、NK細胞応答の増強、マクロファージ応答の増強、好中球応答の増強、好塩基球応答、好酸球応答の増強、肥満細胞応答の増強及び樹状細胞応答の増強のうちの少なくとも1つを含む、実施形態95~96のいずれか1つに記載の医薬組み合わせ物である。
【0279】
実施形態98は、NK細胞応答の増強を誘導することが、a)ADCC応答の増強を誘導すること、及びb)NK細胞が、MHC発現の低い腫瘍細胞を標的として殺傷するように誘導することのうちの少なくとも1つを含む、実施形態95~97のいずれか1つに記載の医薬組み合わせ物である。
【0280】
実施形態99は、そのMVAが、実施形態51~63のいずれか1つに記載の第1及び/または第2の異種TAAをコードする第1及び/または第2の核酸を含む、実施形態95~98のいずれか1つに記載の医薬組み合わせ物である。
【0281】
実施形態100は、その抗体が、実施形態64~66のいずれか1つに記載の抗体を含む、実施形態95~99のいずれか1つに記載の医薬組み合わせ物である。
【0282】
実施形態101は、がん患者において腫瘍サイズを縮小させ、及び/または生存率を向上させるための医薬組み合わせ物であって、a)第1の異種の腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸を含む組み換えポックスウイルスであって、静脈内投与すると、異種TAAをコードする核酸を含む組み換えポックスウイルスの非静脈内投与によって誘導されるナチュラルキラー(NK)細胞応答及びT細胞応答と比べて、NK細胞応答の増強及びT細胞応答の増強の両方を誘導する組み換えポックスウイルスと、b)Fcドメインを含むとともに、腫瘍細胞の細胞膜上に発現する抗原に特異的である抗体を含み、そのa)及びb)をがん患者に投与すると、単独でa)を非IV投与するか、またはb)を投与する場合と比べて、そのがん患者の腫瘍サイズが縮小し、及び/または生存率が上昇する医薬組み合わせ物である。
【0283】
実施形態102は、その組み換えポックスウイルスがさらにCD40Lをコードする、実施形態101に記載の医薬組み合わせ物である。
【0284】
実施形態103は、そのMVAが、実施形態51~63のいずれか1つに記載の第1及び/または第2の異種TAAをコードする第1及び/または第2の核酸を含む、実施形態101~102のいずれか1つに記載の医薬組み合わせ物である。
【0285】
実施形態104は、その抗体が、実施形態64~66のいずれか1つに記載の抗体を含む、実施形態101~103のいずれか1つに記載の医薬組み合わせ物である。
【0286】
実施形態105は、がん患者において腫瘍サイズを縮小させ、及び/または生存率を向上させる方法であって、a)第1の異種の腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸を含む組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)であって、静脈内投与すると、異種の腫瘍関連抗原をコードする核酸を含む組み換えMVAウイルスの非静脈内投与によって誘導されるナチュラルキラー(NK)細胞応答及びT細胞応答と比べて、NK細胞応答の増強及びT細胞応答の増強の両方を誘導するMVAをそのがん患者に静脈内投与すること、ならびにb)そのがん患者に抗体を投与することであって、その抗体が、腫瘍細胞の細胞膜上に発現する抗原に特異的であることを含み、そのa)及びb)をがん患者に行うと、単独でa)を非静脈内投与で行うか、またはb)を行う場合と比べて、そのがん患者の腫瘍サイズが縮小し、及び/またはそのがん患者の生存率が上昇する方法である。
【0287】
実施形態106は、がん患者において腫瘍サイズを縮小させ、及び/または生存率を向上させるための医薬組み合わせ物であって、a)Fcドメインを含むとともに、腫瘍細胞の細胞膜上に発現する抗原に特異的である抗体であって、その患者に投与すると、その患者においてADCCを誘導する抗体、ならびにb)第1の異種の腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸を含む組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)ウイルスであって、その患者に静脈内投与すると、異種の腫瘍関連抗原をコードする核酸を含む組み換えMVAウイルスの非静脈内投与によって誘導されるナチュラルキラー(NK)細胞応答及びT細胞応答と比べて、そのMVAが、その患者においてADCCを増強するとともに、NK細胞媒介性傷害作用を増強するNK細胞応答の増強を誘導し、そのMVAが、T細胞応答の増強を誘導するMVAを含み、そのa)及びb)をがん患者に投与すると、単独でa)を非IV投与するか、またはb)を投与する場合と比べて、そのがん患者の腫瘍サイズが縮小し、及び/または生存率が上昇する医薬組み合わせ物である。
【0288】
実施形態107は、その組み換えMVAが、CD40Lをコードする核酸をさらに含む、実施形態106に記載の医薬組み合わせ物である。
【0289】
実施形態108は、そのMVAが、実施形態51~63のいずれか1つに記載の第1及び/または第2の異種TAAをコードする第1及び/または第2の核酸を含む、実施形態106~107のいずれか1つに記載の医薬組み合わせ物である。
【0290】
実施形態109は、がん患者において腫瘍体積を縮小させ、及び/または生存率を向上させる方法であって、実施形態106~108のいずれか1つに記載の医薬組み合わせ物を投与することを含む方法である。
【0291】
実施形態110は、がん患者の腫瘍体積を縮小させ、及び/または生存率を向上させるのに用いる医薬組み合わせ物であって、実施形態106~108のいずれか1つに記載の医薬組み合わせ物を含み、その医薬組み合わせ物を投与すると、単独でa)を投与するか、またはb)を非静脈内投与する場合と比べて、その患者の腫瘍体積が縮小し、及び/または生存率が上昇する医薬組み合わせ物である。
【0292】
実施形態111は、がん患者の腫瘍体積を縮小させ、及び/または生存率を向上させる方法において、実施形態106~108のいずれか1つに記載の医薬組み合わせ物を使用することである。
【0293】
実施形態112は、がん患者の腫瘍体積を縮小させ、及び/または生存率を向上させるための医薬または薬剤の調製に、実施形態106~108のいずれか1つに記載の医薬組み合わせ物を使用することである。
【0294】
実施形態113は、がん患者において、抗体療法の有効性を増大させる方法であって、実施形態47~67及び106~108のいずれか1つに記載の医薬組み合わせ物を投与することを含み、その医薬組み合わせ物をその患者に投与すると、腫瘍細胞におけるNK細胞媒介性傷害作用に必要な抗体濃度が低下する方法である。
【0295】
実施形態114は、その組み換えMVAが、CD40Lをコードする核酸を含み、そのCD40Lが、配列番号11を含む、実施形態47~67及び106~108のいずれか1つに記載の医薬組み合わせ物である。
【0296】
実施形態115は、CD40Lをコードするその核酸が、配列番号12との同一性が少なくとも95%、98%、99%または100%である配列を有する核酸である、実施形態114に記載の医薬組み合わせ物である。
【0297】
実施形態116は、その組み換えMVAが、CD40Lをコードする核酸を含み、そのCD40Lが、配列番号11を含む、実施形態1~46のいずれか1つに記載の方法である。
【0298】
実施形態117は、CD40Lをコードする核酸が、配列番号12との同一性が少なくとも95%、98%、99%または100%である配列を有する核酸である、実施形態116に記載の方法である。
【0299】
実施形態118は、その乳癌が、HER2を過剰発現する乳癌である、実施形態83に記載の方法である。
【0300】
実施形態119は、その組み換えMVAによってHER2ポリペプチド及び/または抗原が発現されたときに、そのHER2ポリペプチド及び/または抗原の細胞外での二量化、チロシンキナーゼ活性及び/またはリン酸化を防ぐために、HER2の1つ以上のアミノ酸が変異している、実施形態18~19のいずれか1つに記載の方法である。
【0301】
実施形態120は、そのHER2抗体が、その組み換えMVAによって発現されたHER2抗原に結合するのを防ぐための1つ以上の変異をそのHER抗原が含む、実施形態18~19のいずれか1つに記載の方法である。
【0302】
実施形態121は、その抗体がその第1及び/または第2のTAAに結合するのを防ぐために、その第1及び/または第2のTAAが、1つ以上の変異を含む、実施形態50~63のいずれか1つの使用のための医薬組み合わせ物である。
【0303】
実施形態122は、HER2の膜近傍領域における3つのループの少なくとも1つに、1つ以上の変異が施されている、実施形態18~20のいずれか1つに記載の方法である。
【0304】
実施形態123は、HER2の膜近傍領域のその3つのループが、579~583位のアミノ酸(ループ1)、592~595位のアミノ酸(ループ2)及び615~625位のアミノ酸(ループ3)から選択される、18~21のいずれか1つに記載の方法である。
【0305】
実施形態124は、そのHER2抗原が、E580A、F595A、K615A、H267A、F279A、V308A、S310A、L317A、H318A、K333A、P337Aのアミノ酸のうちの少なくとも1つに、少なくとも1つの変異を含む、実施形態18~22のいずれか1つに記載の方法である。
【0306】
実施形態125は、そのHER2抗原が、E580A、F595A、K615A、H267A、F279A、V308A、S310A、L317A、H318A、K333A、P337A、D277R、E280K、K753M及びY1023Aからなる群から選択される少なくとも1つの変異を含む、実施形態18~23のいずれか1つに記載の方法である。
【0307】
実施形態126は、がん患者の腫瘍体積を縮小させ、及び/または生存率を向上させることによる療法で用いる医薬組み合わせ物(好ましくは、そのがん患者は、乳癌、肺癌、頭頸部癌、甲状腺、メラノーマ、胃癌、膀胱癌、腎臓癌、肝臓癌、メラノーマ、膵臓癌、前立腺癌、卵巣癌もしくは大腸癌からなる群から選択したがんを罹患しており、及び/またはそのがんと診断されている)であって、実施形態47~67のいずれか1つに記載の医薬組み合わせ物を含み、その医薬組み合わせ物を投与すると、単独でa)の医薬組み合わせ物を非静脈内投与するか、またはb)を投与する場合と比べて、その患者の腫瘍体積が縮小し、及び/または生存率が上昇する医薬組み合わせ物である。
【0308】
実施形態127は、がん患者の腫瘍体積を縮小させ、及び/または生存率を向上させるための医薬または薬剤の調製に、実施形態47~67のいずれか1つに記載の医薬組み合わせ物を使用することであって、好ましくは、そのがん患者が、乳癌、肺癌、頭頸部癌、甲状腺、メラノーマ、胃癌、膀胱癌、腎臓癌、肝臓癌、メラノーマ、膵臓癌、前立腺癌、卵巣癌もしくは大腸癌からなる群から選択したがんを罹患しており、及び/またはそのがんと診断されている使用である。
【0309】
実施形態128は、配列番号13との同一性が少なくとも90%、95%、97%、98%または99%であるHER2抗原をその第1の核酸がコードする、実施形態18~27のいずれか1つに記載の方法である。
【0310】
実施形態129は、その第1の核酸が、配列番号13を含むHER2抗原をコードする、実施形態18~28のいずれか1つに記載の方法である。
【0311】
実施形態130は、その第1の核酸がHER2抗原をコードし、その第1の核酸の配列番号14との同一性が少なくとも90%、95%、97%、98%または99%である、実施形態18~29のいずれか1つに記載の方法である。
【0312】
実施形態131は、その第1の核酸が配列番号14を含む、実施形態18~30のいずれか1つに記載の方法である。
【0313】
実施形態132は、配列番号13の全長との同一性が少なくとも90%、95%、97%、98%または99%であるHER2抗原をその第1の核酸がコードする、実施形態18~27のいずれか1つに記載の方法である。
【0314】
実施形態133は、その第1の核酸がHER2抗原をコードし、その第1の核酸の、配列番号14の全長との同一性が少なくとも90%、95%、97%、98%または99%である、実施形態18~29のいずれか1つに記載の方法である。
【0315】
実施形態134は、配列番号1の全長との同一性が少なくとも90%、95%、97%、98%または99%であるHER2抗原をその第1の核酸がコードする、実施形態18~27のいずれか1つに記載の方法である。
【0316】
実施形態135は、その第1の核酸がHER2抗原をコードし、その第1の核酸の、配列番号2の全長との同一性が少なくとも90%、95%、97%、98%または99%である、実施形態18~29のいずれか1つに記載の方法である。
【0317】
実施形態136は、配列番号3の全長との同一性が少なくとも90%、95%、97%、98%または99%であるHER2抗原をその第1の核酸がコードする、実施形態34~36のいずれか1つに記載の方法である。
【0318】
実施形態137は、その第1の核酸がHER2抗原をコードし、その第1の核酸の、配列番号4の全長との同一性が少なくとも90%、95%、97%、98%または99%である、実施形態18~29のいずれか1つに記載の方法である。
【実施例
【0319】
下記の実施例は、本発明を例示するものであるが、いかなる形でも、請求項の範囲を限定するものとして解釈すべきではない。
【0320】
実施例1:組み換えMVAの静脈内投与によって、NK細胞の活性化が強化される。
【0321】
5×10TCID50のMVA-OVA(rMVAとして示されている)またはMVA-OVA-CD40L(rMVA-CD40Lとして示されている)で、C57BL/6マウスを皮下(SC)または静脈内(IV)免疫した。PBSをSC注射した。1日後、フローサイトメトリーを用いて、脾臓(図1A~1Gに示されている)、肝臓(図2A~2Gに示されている)及び肺(図3A~3Gに示されている)において、A)NKp46CD3細胞、B)CD69、C)NKG2D、D)FasL、E)Bcl-X、F)CD70及びG)IFN-γに対して染色することによって、NK細胞の頻度及びタンパク質の発現(幾何平均蛍光強度(GMFI)として示した)を評価した。
【0322】
加えて、HER2、TWIST及びCD40L抗原をコードする5×10TCID50の組み換えMVA(MVA-HER2-TWIST-CD40Lとして示されている)で、C57BL/6マウスを皮下(SC)または静脈内(IV)免疫した。PBSをSC注射した。1日後、フローサイトメトリーを用いて、脾臓(図4A~4Fに示されている)、肝臓(図5A~5Fに示されている)及び肺(図6A~6Fに示されている)において、A)NKp46CD3細胞、B)CD69、C)FasL、D)、Bcl-X、E)CD70及びF)IFN-γに対して染色することによって、NK細胞の頻度及びタンパク質の発現(幾何平均蛍光強度(GMFI)として示した)を評価した。
【0323】
図に示されているように、脾臓のNK細胞の頻度は、rMVA、rMVA-CD40L及びMVA-HER2-TWIST-CD40Lの注射後、適用経路にかかわらず、低下したかまたは維持された。A)では、rMVAのIV適用によって、肝臓及び肺において、SC適用の場合と比べて、NK細胞の頻度が上昇した。B)では、CD69は、NK細胞の刺激受容体であり(Borrego et al.,Immunology 1999)、rMVA、rMVA-CD40L及びMVA-HER2-TWIST-CD40LのIV注射後には、強力にアップレギュレートするが、SC注射後にはアップレギュレートしない。CD69の最も高い発現は、rMVA-CD40LのIV適用によって誘導された。図1~3C)では、活性化C型レクチン様受容体NKG2Dは、rMVA及びrMVA-CD40Lでの免疫後、PBSで処置した場合と比べて、NK細胞上でアップレギュレートする。図1~3(D)及び図4~6(C)では、アポトーシス誘導因子FasL(CD95L)は、rMVA及びrMVA-CD40Lでの免疫後、PBSで処置した場合と比べて、NK細胞上でアップレギュレートする。図1~3(D)及び図4~6(C)の脾臓及び肺では、rMVA-CD40L及びMVA-HER2-TWIST-CD40LのIV注射後に、FasLの発現が最も高かった。図1~3(E)及び4~6(D)では、rMVA-CD40L及びMVA-HER2-TWIST-CD40LでIV免疫したところ、SC免疫と比べて、抗アポトーシスBclファミリーメンバーのBcl-xの発現も高かった。図1~3(F)及び4~6(E)では、rMVA、rMVA-CD40L及びMVA-HER2-TWIST-CD40LのIV注射によって、特に脾臓NK細胞上で、腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリーのメンバーである共刺激分子CD70のアップレギュレーションが誘導される。図1~3(G)及び4~6(F)では、重要なことに、rMVA-CD40LまたはMVA-HER2-TWIST-CD40LでのIV免疫後、脾臓、肺及び肝臓において、エフェクターサイトカインIFN-γが最も強力に発現する。これらのデータから、rMVA-CD40LまたはMVA-HER2-TWIST-CD40LのいずれかでのIV免疫によって、全身性のNK細胞が強力に活性化されるが、SC免疫によっては活性化されないことが示されている。
【0324】
実施例2:組み換えMVA-CD40Lの静脈内投与によって、NK細胞の全身的な活性化が強化される。
【0325】
5×10TCID50のMVA-OVA(rMVA)、MVA-OVA-CD40L(rMVA-CD40L)またはPBSでC57BL/6マウスをIV免疫した。図7A~7Fに示されているように、注射の6時間後、ビーズアッセイ(Luminex)(A及びB)、ならびにフローサイトメトリー(C)によって、血清中サイトカインレベル((A)IFN-γ、(B)IL-12p70及び(C)CD69グランザイムB)を定量した。NK細胞活性化サイトカインIL-12p70は、rMVA-CD40Lでの免疫後にのみ検出可能であった。rMVA-CD40L後、rMVAで免疫した場合と比べて、IFN-γの濃度が高かった。IFN-γの血清中レベルの上昇は、rMVA-CD40Lでの免疫の48時間後に、NK細胞のIFN-γのGMFIが高いこと(図1Gとの比較)及び脾臓CD69グランザイムBNK細胞の頻度が高いことと整合している。
【0326】
NHP(カニクイザル)において、MVA-MARV-GP-huCD40LのIV注射後、同様の応答が見られ、すなわち、MVA-MARV-GPと比べて、IFN-γ(D)及びIL-12p40/70(E)の血清中濃度が高く、(Ki67)NK細胞の増殖(F)が増加していた。これらのデータによって、CD40LをコードするMVAワクチンが、マウス及びNHPにおいて、同等の免疫学的特性を有することが示されている。
【0327】
実施例3:静脈内投与によって、経時的に、NK細胞の活性化及び増殖が強化される。
【0328】
5×10TCID50のMVA-OVA(rMVA)、MVA-OVA-CD40L(rMVA-CD40L)またはPBSで、C57BL/6マウスをIV免疫した。(A)CD3CD19NKp46、(B)Ki67及び(C)CD69について、脾臓、肝臓及び肺において、免疫後、1日目及び4日目に、NK細胞の活性化及び増殖を測定した。その結果は、図8に示されている。
【0329】
図8A)に示されているように、脾臓NK細胞の頻度(CD3CD19NKp46として定義されている)は、実施例1で見られたように、rMVA及びrMVA-CD40Lでの免疫後、1日目までに、一時的に低下したが、4日目までに、PBSの場合と比べて上昇した。肝臓及び肺では、いずれのベクターも、1日目までにすでに、NK細胞頻度の上昇を誘導した。予想外にも、4日目に、肝臓におけるNK細胞頻度は、PBSの場合と比べて、rMVA後、2.4倍高く、rMVA-CD40Lでの免疫後には、4倍高かった。同様に、肺及び血液におけるNK細胞頻度は、8Aに示されているように、免疫後、4日目に大きく上昇した。8Bにおいて、増殖マーカーKi67の発現によって示されているように、全身的なNK細胞の増加と整合して、rMVA及びrMVA-CD40Lでの免疫後、4日目の全NK細胞の80%超が、増殖段階にあった。解析したすべての器官及び血液におけるCD69の発現ピーク(幾何平均蛍光強度(GMFI)として示した)は、1日目であった。免疫後、4日目までに、CD69の発現は、基底レベルに戻った(図8C)。
【0330】
実施例4:組み換えMVAの静脈内投与によって、NK細胞媒介性傷害作用が強化される。
【0331】
5×10TCID50のMVA-OVA(rMVA)、MVA-OVA-CD40L(rMVA-CD40L)またはPBSで、C57BL/6マウスをIV免疫した。24時間後、マウスを殺処分し、脾臓NK細胞を磁気細胞ソーティングによって精製し、エフェクター:標的殺傷アッセイにおいて、エフェクターとして使用した。簡潔に述べると、NK細胞と、CFSEで標識したクラスI MHC欠損YAC-1細胞を、図9に示されている比率で培養した。フローサイトメトリーによって非生存CFSEYAC-1細胞を定量することによって、特異的殺傷率を評価した。その結果、IV免疫後、rMVA及びrMVA-CD40Lによって活性化されたNK細胞は、クラスI MHC欠損標的細胞の強力なキラーである。
【0332】
実施例5:組み換えMVAの静脈内投与によって、ADCCが増強される。
【0333】
図10Aに示されているように、25μgの抗CD4(クローンGK1.5)、MVA-OVA(rMVA)+5μgのラットIgG2bもしくは1μgの抗CD4、またはMVA-OVA(rMVA)+1μgの抗CD4のいずれかで、C57BL/6マウスをIV処置した。24時間後、マウスを殺処分し、肝臓におけるCD4 T細胞(CD3CD4)の枯渇をフローサイトメトリーによって解析した。25μgの抗CD4を特異的殺傷率100%とした。rMVA+IgG2b(特異的殺傷率0%とした)と比べて、1μgの抗CD4は、全肝臓CD4 T細胞の61%を枯渇させた。rMVA+1μgの抗CD4という組み合わせでは、93%のCD4 T細胞が枯渇され、これは、25μgの抗CD4とほぼ同程度の効率性である。したがって、rMVAと枯渇抗体を組み合わせることによって、インビボにおいて、相乗的な標的細胞殺傷作用が得られる。
【0334】
図10B及び10Cに示されているように、NK細胞のADCC活性をエキソビボで評価するために、PBS、MVA-OVA(rMVA)またはMVA-OVA-CD40L(rMVA-CD40L)のいずれかで、C57BL/6マウス(B)またはBalb/cマウス(C)をIV免疫した。24時間後、マウスを殺処分し、脾臓NK細胞を磁気細胞ソーティングによって精製し、抗体依存性エフェクター:標的殺傷アッセイにおいて、エフェクターとして使用した。(B)標的のB16.F10細胞をマウス抗ヒト/マウスTrp1 mAb(クローンTA99)で被覆し、(C)標的のCT26-HER2細胞をマウス抗ヒトHER2 mAb(クローン7.16.4)で被覆した。抗体で被覆した標的細胞に、精製NK細胞をそれぞれ5:1及び4:1の比率で加えた。細胞培養培地への乳酸脱水素酵素(LDH)の放出を測定することによって、細胞死を判断した。いずれのアッセイにおいても、NK細胞をインビボでrMVAまたはrMVA-CD40Lによって活性化したところ、PBSの場合と比べて、標的細胞の溶解が強かった。rMVA-CD40Lによって活性化した場合に、溶解活性が最も高かった。異なる濃度の抗ヒトHER2(0.1~10μg/mlの抗HER2)とインキュベートしたCT26-HER2細胞も、rMVA-CD40Lで活性化したNK細胞による方が、rMVAで活性化したNK細胞と比べて効率的に殺傷された(Dに示されている)。
【0335】
図10Eに示されているように、MVA-HER2-Twist-CD40Lを用いて、エキソビボでのNK細胞のADCC活性を解析した。PBSまたはMVA-HER2-Twist-CD40Lのいずれかで、Balb/cマウスをIV免疫した。CT26-HER2細胞を5μg/ml、0.5μg/ml及び0.05μg/mlのマウス抗ヒトHER2 mAb(クローン7.16.4)で被覆した。抗体で被覆された標的細胞に、精製NK細胞を5:1の比率で加えた。細胞培養培地への乳酸脱水素酵素(LDH)の放出を測定することによって、細胞死を判断した。標的細胞の溶解は、NK細胞をインビボでMVA-HER2-Twist-CD40Lによって活性化した場合に、PBSの場合よりも強かった。
【0336】
したがって、関連するヒト腫瘍抗原を発現する腫瘍細胞のADCC媒介性殺傷作用は、rMVA、特にrMVA-CD40L及びMVA-HER2-Twist-CD40L媒介性のNK細胞の活性化によって増強できる。さらに、rMVA、特にrMVA-CD40L及びMVA-HER2-Twist-CD40Lによる、ADCC活性の増強は、広範な用量範囲の抗体で観察される。
【0337】
実施例6:組み換えMVAの静脈内投与によって、強力なCD8 T細胞応答が誘導される。
【0338】
0日目及び16日目に、5×10TCID50のMVA-OVAで、C57BL/6マウスをIVまたはSC免疫した。7日目及び22日目に、H-2K/OVA257-264デキストラマーで染色後、フローサイトメトリーによって、血液におけるOVA特異的なCD8 T細胞応答を評価した。図11に示されているように、7日目においては、OVA特異的なCD8 T細胞の頻度は、SC注射の場合と比べて9倍高かった。22日目においては、OVA-特異的T細胞は、SC注射後よりも4倍高かった。
【0339】
実施例7:組み換えMVA-CD40Lの静脈内投与によって、CD8 T細胞応答がさらに増強される。
【0340】
図12に示されているように、0日目及び35日目に、5×10TCID50のMVA-OVAまたはMVA-OVA-CD40Lで、C57BL/6マウスを静脈内免疫した。H-2Kb/OVA257-264デキストラマーで染色後、フローサイトメトリーによって、血液におけるOVA特異的なCD8 T細胞応答を評価した。MVA-OVA-CD40L後、MVA-OVAでの免疫と比べて、一次応答のピーク(7日目)及び二次応答のピーク(39日目)に、OVA特異的なCD8 T細胞の頻度がそれぞれ4倍及び2倍増強された(Lauterbach et al.2013)。
【0341】
実施例8:プライムブースト免疫によって、NK細胞の活性化及び増殖の反復が見られる。
【0342】
【表4】
【0343】
表1に示されているように、C57BL/6マウスをIV免疫した(組み換えMVAの用量は、5×10TCID50であった)。2回目及び3回目の免疫から1日後及び4日後に、NK細胞(CD3NKp46)を血液において、フローサイトメトリーによって解析した。図13A及び13Bに示されているのは、CD69のGMFI(A)及びKi67NK細胞の頻度(B)である。図13A及び13Bには、抗ベクター免疫の存在にもかかわらず、毎回の免疫によって、NK細胞が活性化されることが示されている。この予想外の知見によって、抗体療法とブースト免疫を組み合わせると、NK細胞が活性化されるとみられることが裏付けられている。したがって、がん患者を組み換えMVAで複数回処置して、抗ベクター応答が起きると、NK細胞の活性化が低下しない。対照的に、処置するごとに、新たにNK細胞が活性化される。
【0344】
実施例9:プライムブースト免疫によって、CD4 Tヘルパー細胞の誘導の強化が見られる。
【0345】
表1に示されているように、C57BL/6マウスを免疫した(組み換えMVAの用量は、5×10TCID50であった)。免疫の6時間後に、マルチプレックスビーズアッセイ(Luminex)によって、血清中サイトカインレベルを定量した。示されているのは、指定のサイトカイン(14A)IL-6、14B)CXCL10、14C)IFN-α、14D)IL-22、14E)IFN-γ、14F)CXCL1、14G)CCL4、14H)CCL7、14I)CCL2、14J)CCL5、14K)TNF-α、14L)IL-12p70及び14M)IL-18)の発現の結果である。
【0346】
図14A~14Mに示されているように、rMVA-CD40L homで処置したマウスでは、rMVAでプライミングして、rMVA-CD40Lでブーストしたマウス(rMVA-CD40L het)と同様のサイトカインプロファイルが見られた。rMVA homで処置したマウスでは、1回目及び2回目の免疫後、rMVA-CD40Lでプライミングしたマウスと比べて、IL-6、IL12p70、IL-22、IFN-α、TNF-α、CCL2、CCL5及びCXCL1のレベルが低かった。プライミング後には見られなかったが、2回目及び3回目の免疫後に高度に産生されたサイトカインは、IL-22であった。IL-22は主に、エフェクターTヘルパー細胞及び自然リンパ球細胞のサブ集団によって産生される。したがって、rMVA-CD40L hetまたはrMVA-CD40L homで処置したマウスにおける方が、IL-22の発現が高いことによって、rMVA-CD40Lでの免疫によるCD4 Tヘルパー応答の誘導が強力であることが示されている。総合すると、rMVA及びrMVA-CD40LでのIV免疫によって、高度な全身性のサイトカイン応答が誘導され、その応答は、rMVA-CD40Lでプライミングしたマウスにおいて最も高い。
【0347】
実施例10:プライムブースト免疫によって、抗原特異的なCD8 T細胞応答の強化が見られる。
【0348】
表1に示されているように、C57BL/6マウスをIV免疫した(組み換えMVAの用量は、5×10TCID50であった)。NK細胞と同様に、反復免疫後の抗原特異的なCD8 T細胞応答の誘導を評価した。図15に示されているように、rMVA及びrMVA-CD40Lでの2回目及び3回目の免疫後、CD8 T細胞頻度は大きく上昇した。留意すべきことに、2回目の免疫後、全PBLの約80%が、CD8 T細胞であった(A)。ベクター特異的な(B8)CD8 T細胞応答は、2回目の免疫後にピークに達した(B)一方で、導入遺伝子特異的な(OVA)応答は、3回目の免疫でさらにブーストできた(C)。この結果、OVA/B8特異的なCD8 T細胞の比率が上昇し(D)、免疫が、導入遺伝子に向けられることが示されている。重要なことに、これらの結果から、IV免疫によって、抗ベクター免疫の存在下で、抗原特異的なT細胞応答をブーストできることが示されている。したがって、がん患者において、複数回の処置によって、腫瘍-抗原特異的なCD8 T細胞応答を強化し得る。
【0349】
実施例11:プライムブースト免疫によって、メモリーCD8 T細胞応答及びCD4 T細胞応答の強化が見られる。
【0350】
表1に示されているように、C57BL/6マウスをIV免疫した。結果は、図16に示されている。表現型的に、CD44の発現及び表面CD62Lの欠損によって、エフェクター及びエフェクターメモリーT細胞を特定できる。血液におけるCD44CD62LCD8T細胞(A)及びCD44CD62LCD4T細胞(B)のモニタリングによって、反復IV免疫を行うと、エフェクター及びエフェクターメモリーT細胞の増加が誘導されることが示された。興味深いことに、rMVA-CD40L homまたはrMVA-CD40L hetのいずれかを投与したマウスでは、循環エフェクターCD4 T細胞が、rMVAでプライミングしたマウスよりも、約2.5倍多かった(B、25日目)。これによって、rMVA-CD40Lでの全身プライミングによって、rMVAよりも強いCD4 T細胞応答が誘導されることが示されている
実施例12:組み換えMVAの静脈内投与によって、メラノーマの治療の際に、強力な抗腫瘍作用が得られる。
【0351】
PBS、MVA-OVA(rMVA)またはMVA-OVA-CD40L(rMVA-CD40L)によって、触知可能なB16.OVA腫瘍を有するC57BL/6マウスをIVまたはSCのいずれかでプライミングした(点線)(組み換えMVAの用量は、5×10TCID50であった)。プライム免疫後、7日目及び14日目に、そのマウスに、その後のブーストを5×10TCID50のFPV-OVAで行った(破線)。腫瘍の成長を一定間隔で測定した。図17に示されているのは、腫瘍の平均体積(A)、及び腫瘍接種後、45日目までの、腫瘍を有するマウスの生存率(B)である。すなわち、B16.OVA腫瘍を有するマウスをrMVA-CD40LによってIVでプライミングすると、SCでのrMVA-CD40L、またはSCもしくはIVでのrMVAの両方と比べて、抗腫瘍作用が強化される。
【0352】
実施例13:組み換えMVAを1回静脈内投与すると、抗腫瘍作用が強化される。
【0353】
表2に示されているように、触知可能なB16.OVA腫瘍を有するC57BL/6マウスに、ワクチンをIV接種した。腫瘍の成長を一定間隔で測定した。図18に示されているのは、腫瘍の平均体積である。その結果から、rMVA-CD40Lで治療的免疫を1回行うことは、同種または異種のプライム/ブースト免疫と同程度の強度を有することが示されている。重要なことに、これらのデータによって、rMVA-CD40Lの強力な抗腫瘍活性が強調されている。
【0354】
【表5】
【0355】
実施例14:rMVA-CD40Lの媒介による腫瘍制御には、CD8 T細胞が重要である。
【0356】
PBS、MVA-OVA(rMVA)またはMVA-OVA-CD40L(rMVA-CD40L)の静脈内投与によって、触知可能なB16.OVA腫瘍を有するC57BL/6マウスを免疫した(組み換えMVAの用量は、5×10TCID50であった)。示されている場合、マウスに200μgの抗CD8抗体を腹腔内注射した。図19に示されているように、rMVA-CD40Lでの免疫によって、rMVAと比べて、全体的なCD8 T細胞応答の強化(A)、及びネオ抗原(OVA)特異的なCD8 T細胞応答の強化(B)が誘導された。C)は、全生存率を示している。これらのデータから、rMVA-CD40Lが、腫瘍環境において優れたCD8 T細胞応答を誘導すること、及び治療的免疫後に見られる抗腫瘍作用には、CD8 T細胞応答の誘導が重要であることが示されている。
【0357】
実施例15:少なくとも2つのTAAをコードする組み換えMVAのIV投与は、さらに有効である。
【0358】
PBS、MVA-OVA-TRP2、MVA-OVA-TRP2-CD40LまたはMVA-OVA-CD40Lのいずれかで、触知可能なB16.OVA腫瘍を有するC57BL/6マウスをIV免疫した。図20に示されているように、腫瘍の成長を一定間隔で測定し、その成長は、個々のマウスの平均直径(A)及び平均体積(B)として示されている。生存率は、(C)に示されている。これらのデータから、2つのTAAをコードするrMVA-CD40Lで治療的免疫を1回行うことは、1つのTAAのみをコードするrMVA-CD40Lでの免疫よりも効率的であることが示されている。
【0359】
実施例16:組み換えMVA-CD40Lの静脈内投与によって、腫瘍微小環境において、T細胞浸潤が増加する。
【0360】
PBS、rMVA(MVA-OVA)またはrMVA-CD40L(MVA-OVA-CD40L)によって、触知可能なB16.OVA腫瘍を有するC57BL/6マウスを静脈内免疫した(組み換えMVAの用量は、5×10TCID50であった)。7日後、マウスを殺処分した。図21A及び21Bに示されているように、脾臓、腫瘍流入リンパ節(TDLN)及び腫瘍組織における白血球のうち、CD8T細胞及びOVA257-264特異的なCD8+T細胞の頻度及び分布を解析した。図21Cでは、OVA257-264特異的な腫瘍浸潤CD8T細胞上のPD-1及びLag3の幾何平均蛍光強度(GMFI)を解析し、図21Dには、腫瘍浸潤CD8T細胞のKi67及びPD-1の発現の代表的なドットプロットが示されている。図21Eには、腫瘍浸潤Ki67CD8T細胞の頻度及びPD-1のGMFIが示されており、図21Fには、白血球のうちの腫瘍浸潤調節性T細胞(Treg)の頻度が例示されている。図21Gには、PD-1high腫瘍浸潤Treg及びPD-1neg腫瘍浸潤Tregの頻度が示されている。勘案すると、これらのデータから、rMVA-CD40Lでの免疫によって、PBS及びrMVAでの免疫と比べて、腫瘍微小環境(TME)へのTAA特異的なCD8 T細胞の浸潤がさらに顕著になること、及びこれらのCD8 T細胞が、「免疫疲弊」と関連するマーカーを発現する量が減少することが示されている。さらに、rMVA-CD40Lでの免疫によって、PBSの場合と比べて、TMEにおいて、抑制性の高いTregが減少する。
【0361】
実施例17:組み換えMVA-CD40Lの静脈内投与によって、腫瘍微小環境のT細胞浸潤の継続時間が長くなる。
【0362】
腫瘍が触知可能となったら、B16.OVA担腫瘍生体に、OVA特異的なTCRトランスジェニックCD8 T細胞(OT-I)を静脈内移入した。腫瘍の体積が少なくとも60mmに達したら、MVA-BN、MVA-OVA(rMVA)またはMVA-OVA-CD40L(rMVA-CD40L)で動物を免疫した(組み換えMVAの用量は、5×10TCID50であった)。17日後、マウスを殺処分し、A)腫瘍組織における白血球のうちのCD8T細胞の頻度、B)CD8T細胞中のLag3PD1の頻度、C)CD8T細胞中のEomesPD1T細胞の頻度、D)免疫後のTMEにおけるOT-IトランスジェニックCD8T細胞の存在、E)OT-ICD8T細胞中のLag3PD1疲弊T細胞の頻度及びF)OT-ICD8T細胞中のEomesPD1疲弊T細胞の頻度について解析した。その結果は、図22に示されている。これらのデータから、rMVA-CD40Lでの免疫により、TMEに動員されるTAA特異的なCD8 T細胞では、TMEへの長期暴露後でも、コントロールでの処置(TAAがコードされないMVA-BN)またはrMVAで免疫した場合よりも、免疫疲弊の徴候が小さいことが示されている。
【0363】
実施例18:組み換えMVA-CD40Lの静脈内投与によって、腫瘍微小環境におけるTregのレベルが低下した。
【0364】
腫瘍が触知可能となったら、B16.OVA担腫瘍生体に、OVA特異的な精製TCRトランスジェニックCD8 T細胞(OT-I)を静脈内移入した。腫瘍の体積が少なくとも60mmに達したら、MVA-BN、MVA-OVA(rMVA)またはMVA-OVA-CD40L(rMVA-CD40L)で動物を免疫した(組み換えMVAの用量は、5×10TCID50であった)。17日後、マウスを殺処分し、A)腫瘍組織におけるCD4T細胞のうちのFoxp3CD4Tregの頻度及びB)Foxp3CD4Tregに対するCD8CD44エフェクターT細胞の比率について解析した。その結果は、図23に示されている。勘案すると、これらのデータから、TMEへの長期暴露後でも、rMVA-CD40Lで1回免疫すると、コントロールでの処置(TAAがコードされないMVA-BN)またはrMVAでの免疫の場合と比べて、Teff/Treg比が上昇することが示されている。
【0365】
実施例19:MVA-OVA-CD40Lは、アゴニストのCD40mAbと比べて、ヒトにとって安全である。
【0366】
【表6】
【0367】
表3に示されているように、PBS、MVA-OVA(rMVA)、MVA-OVA-CD40L(rMVA-CD40L)または抗CD40(FGK4.5)のいずれかをC57BL/6マウスにIV注射した(組み換えMVAの用量は、5×10TCID50であり、抗CD40の用量は、100μgであった)。毎回の免疫の1日後に、ELISAによって、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の血清中濃度を定量した。図24に示されているように、ALTレベルは、抗CD40の1回目の注射後に最も高かった。rMVA-CD40Lでの1回目の免疫後のALT濃度は、抗CD40での処置後の2分の1であった。重要なことに、rMVA及びrMVA-CD40Lでの反復免疫後の血清中ALTレベルは、上昇しなかった。抗CD40抗体の反復注射によっても、ALTレベルは上昇しなかったが、この群では、4匹のマウスのうち、3匹が死亡した(FD=死亡が認められた)。また、図21に示されているように、rMVA及びrMVA-CD40Lでの免疫後、抗CD40免疫グロブリンを注射した場合と比べて、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の血清中レベルの低下が見られた。したがって、アゴニストの抗CD40で肝臓毒性が説明されたのとは対照的に(Medina-Echeverz et al.,2015)、rMVA及びrMVA-CD40Lの反復IV注射後には、肝臓毒性は観察されなかった。
【0368】
実施例20:rMVA-CD40LをIV投与した際の全生存率の向上及び腫瘍の縮小 MVA-AH1A5-p15-TRP2-CD40L(rMVA-CD40L)で、触知可能なCT26.HER2腫瘍を有するBalb/cマウスをIV免疫するか、またはPBSを投与するかした。腫瘍の成長を一定間隔で測定した。図25に示されているのは、腫瘍の平均体積(A)及び生存率(B)である。これらのデータから、大腸癌モデルにおいて、rMVA-CD40Lで治療的免疫を1回行うことは、生存期間を効率的に延長することが示されている。
【0369】
実施例21:rMVA-CD40L+抗Trp1をIV投与した際の全生存率の向上及び腫瘍の縮小
8日目に、5×10TCID50のMVA-OVA-CD40L(mBNbc115)で、触知可能なB16.OVA腫瘍(少なくとも体積60mm)を有するC57BL/6マウスを静脈内免疫した。マウスに200μgの抗Trp1(クローンTA99)を週に2回、腹腔内注射した(5日目に開始した)。結果は、腫瘍の平均体積については図26Aに、全生存率については図26Bに示されている。図に示されているように、rMVA-CD40L及び抗Trp1 mAbの組み合わせによって、抗Trp1 mAb単独及びrMVA-CD40L単独の場合と比べて、腫瘍体積の全体的な縮小及び全生存率の向上が見られた。したがって、腫瘍特異的抗体及びrMVA-CD40Lを組み合わせたものを静脈内投与すると、単独でrMVA-CD40Lを非IV投与するかまたは抗体を投与する場合と比べて、抗腫瘍活性が有意に向上した。
【0370】
実施例22:組み換えMVAウイルスMVA-mBN445、MVA-mBN451、MVA-mBNbc197、MVA-mBNbc195、MVA-mBNbc388、MVA-mBN bc389及びMVA-mBN484の構築
本発明の併用療法の要素(例えば、MVA-mBN445、MVA-mBN451及びMVA-mBN484)を具体化する組み換えMVAウイルスの作製は、示されている導入遺伝子を、そのプロモーターとともに、ベクターMVA-BNに挿入することによって行った。導入遺伝子は、その導入遺伝子及び選択カセット、ならびにMVA-BN内の標的遺伝子座と相同な配列を含む組み換えプラスミドを用いて挿入した。ウイルスゲノムと組み換えプラスミドの間の相同組み換えは、MVA-BNに感染したCEF細胞に組み換えプラスミドをトランスフェクションすることによって行った。続いて、第2の工程の際に、CRE-リコンビナーゼ(選択カセットに隣接するloxP部位を特異的に標的として、それによって、その介在配列を切り出す)を発現するプラスミドの助けを借りて、その選択カセットを除去した。
【0371】
MVA-BN mBNbc197及びMVA-BN mBNbc195の構築の際には、mBNbc197(MVA-OVA-TRP2)では2個の導入遺伝子、mBNbc195(MVA-OVA-TRP2-CD40L)では3個の導入遺伝子に対して、組み換えプラスミドを使用した。プラスミドには、MVAにも存在するインサート配列を含めた。MVAウイルスゲノムでの相同組み換えが行われるように、OVA、ならびにTRP2及び/またはCD40L抗原をコードするヌクレオチド配列は、MVAインサート配列の間に位置していた。したがって、コンストラクトごとに、OVA、ならびにTRP2及び/またはCD40Lのコード配列を、それぞれプロモーターの下流に含むプラスミドを構築した。
【0372】
mBN451の構築の際には、組み換えプラスミドに、HER2v1(配列番号1)及びBrachyury(配列番号3)という2つの導入遺伝子を含め、ウイルスゲノムでの相同組み換えが行われるように、それらの遺伝子の前にはそれぞれ、プロモーター配列と、MVA-BN内の標的挿入部位と同一である配列を配置した。HER2のコード配列(すなわちヌクレオチド配列)は、配列番号2であり、Brachyuryのコード配列は、配列番号4である。
【0373】
mBN445の構築の際には、組み換えプラスミドに、HER2v1(配列番号1)、Brachyury(配列番号3)及びCD40L(配列番号11)という3つの導入遺伝子を含め、ウイルスゲノムでの相同組み換えが行われるように、それらの遺伝子の前にはそれぞれ、プロモーター配列と、MVA-BN内の標的挿入部位と同一である配列を配置した。HER2のコード配列(すなわちヌクレオチド配列)は、配列番号2であり、Brachyuryのコード配列は、配列番号4であり、CD40Lのコード配列は、配列番号12である。
【0374】
mBNbc388の構築の際には、組み換えプラスミドに、HER2v1(配列番号1)、Twist(配列番号15)及びCD40L(配列番号17)という3つの導入遺伝子を含め、それらの遺伝子の前にはそれぞれ、ウイルスゲノムでの相同組み換えが行われるように、プロモーター配列と、MVA-BN内の標的挿入部位と同一である配列を配置した。HER2v1のコード配列(すなわちヌクレオチド配列)は、配列番号2であり、Twistのコード配列は、配列番号16であり、CD40Lのコード配列は、配列番号18である。
【0375】
mBNbc389の構築の際には、組み換えプラスミドに、HER2v1(配列番号1)及びTwist(配列番号15)という2つの導入遺伝子を含め、ウイルスゲノムでの相同組み換えが行われるように、それらの遺伝子の前にはそれぞれ、プロモーター配列と、MVA-BN内の標的挿入部位と同一である配列を配置した。HER2のコード配列(すなわちヌクレオチド配列)は、配列番号2であり、Twistのコード配列は、配列番号16である。
【0376】
mBN484の構築の際には、組み換えプラスミドに、HER2v.2(配列番号13)、Brachyury(配列番号3)及びCD40L(配列番号11)という3つの導入遺伝子を含め、ウイルスゲノムでの相同組み換えが行われるように、それらの遺伝子の前にはそれぞれ、プロモーター配列と、MVA-BN内の標的挿入部位と同一である配列を配置した。HER2v.2のコード配列(すなわちヌクレオチド配列)は、配列番号14であり、Twistのコード配列は、配列番号4であり、CD40Lのコード配列は、配列番号12である。
【0377】
上記のmBN MVA(例えば、mBN445、mBN451及びmBN484)の作製の際には、CEF細胞培養物にそれぞれ、MVA-BNを接種し、それぞれ、対応する組み換えプラスミドをトランスフェクションした。そして、選択圧を誘導する薬剤を含む培地中で、これらの細胞培養液由来の試料をCEF培養物に接種し、プラーク純化によって、蛍光発現ウイルスクローンを単離した。これらのウイルスクローンから、蛍光タンパク質を含む選択カセットを喪失させることは、第2の工程において、各コンストラクト内の選択カセットに隣接する2つのloxP部位を伴うCRE媒介性組み換えによって媒介させた。第2の組み換え工程後、MVA-BNの標的遺伝子座に挿入されたプロモーターとともに、導入遺伝子配列のみ(例えば、HER2、Brachyury及び/またはCD40L)が保持されていた。プラーク純化したウイルスであって、選択カセットを欠損したウイルスのストックが調製された。
【0378】
続いて、記載されているコンストラクトを接種した細胞において、特定した導入遺伝子の発現が示された(例えば、図27を参照)。
【0379】
細菌人工染色体(BAC)におけるクローン化型のMVA-BNを用いることによって、MVA-mBNbc197、mBNbc195、mBNbc388及びmBNbc389を作製した。mBNbc197(MVA-Ova-Trp2)、mBNbc195(MVA-Ova-Trp2-CD40L)、mBNbc388及びmBNbc389に対して、異なる導入遺伝子を含む組み換えプラスミドを使用した。プラスミドには、MVAにも存在する配列を含めたので、組み込み部位を特異的に標的にできるようになる。OVA、Her2v1、TwistTrp2及び/またはCD40L抗原をコードするヌクレオチド配列は、MVAウイルスゲノムでの組み換えを可能にするMVA配列間に置いた。すなわち、コンストラクトごとに、それぞれプロモーターの下流に、OVA、Her2v1、Twist、Trp2及び/またはCD40Lのコード配列を含むプラスミドを構築した。簡潔に述べると、BAC DNAをBHK-21細胞にトランスフェクションして、それらの細胞を、ヘルパーウイルスとしてのショープ線維腫ウイルスに重感染させることによって、感染性ウイルスをBACから再構成した。CEF細胞培養物上で3回、追加継代後、ヘルパーウイルスを含まないMVA-mBNbc197、MVA-mBNbc195、MVA-mBNbc388及びMVA-mBNbc389を得た。MVAの例示的な作製法は、Baur et al.,“Immediate-early expression of a recombinant antigen by modified vaccinia virus Ankara breaks the immunodominance of strong vector-specific B8R antigen in acute and memory CD8 T-cell responses,”/.Virol.84(17):8743-52(2010)にも見られる。
【0380】
実施例23:MVA-HER2-Brachyury-CD40Lの異種発現
HeLa細胞を未処置のままにするか(モック)、またはMVA-BNもしくはMVA-HER2-Brachyury-CD40L(MVA-mBN445)に感染させるかした。一晩培養後、細胞を抗HER2-APC(クローン24D2)、抗Brachyury(ウサギポリクローナル)+抗ウサギIgG-PE及び抗CD40L-APC(クローンTRAP1)で染色した。図27A~27Dに示されているように、フローサイトメトリー解析によって、3つのすべての導入遺伝子の発現が明らかになった。
【0381】
実施例24:合成HER2タンパク質は、トラスツズマブ及びペルツズマブの結合を防ぐ。
【0382】
マウス大腸癌CT26細胞をMVA-HER2-Brachyury-CD40L(MVA-mBN484)に、MOI1で感染させた。24時間後、細胞を5μg/mlのHER2抗体トラスツズマブ、ペルツズマブまたは24D2とインキュベートした。図に、クローン24D2のHER2染色に対して正規化したHER2発現レベルが示されている。データは、平均±SEMとして表されており、2つの独立した実験を代表するものである。結果は、図28に示されている。
【0383】
実施例25:MVA-HER2-Brachyury-CD40LによるヒトDCの活性化の増強
プロトコール(Miltenyi,MO-DC Generation Tool Box)に従って、ヒトPBMCからCD14単球を濃縮後、単球由来の樹状細胞(DC)を生成し、GM-CSF及びIL-4の存在下で、7日間培養した。DCをMVA-HER2-BrachyuryまたはMVA-HER2-Brachyury-CD40Lで刺激した。図29に示されているように、A)CD40L、B)CD86及びC)クラスII MHCの発現をフローサイトメトリーによって解析した。一晩培養後、D)に示されているように、上清中のIL-12p70の濃度をLuminexによって定量した。
【0384】
この実験によって、rMVA-HER2-Brachyury-CD40LがヒトDCを刺激して、DCの活性化を誘導し、すなわち、DCが抗原を提示する能力を増強することが示されている。刺激されたヒトDCによるTh1分極化及びNK細胞活性化サイトカインIL-12p70の産生によって、MVA-HER2-Brachyury-CD40Lが、炎症誘発性表現型に対して、ヒトDCを活性化することが示されている。
【0385】
実施例26:mBNbc388及びmBNbc389を静脈内投与した際の全生存率の向上及び腫瘍の縮小
HER2を発現するマウス大腸癌MC38細胞(MC38.HER2)をC57BL/6マウスにs.c.注射した。HER2を発現するマウス大腸癌CT26細胞(CT26.HER2)をBalb/cマウスにs.c.注射した。いずれのマウス群においても、腫瘍が50mmを上回ったら、PBS、MVA-CD40LまたはMVA-HER2-Twist-CD40Lのいずれかで、MC38.HER2腫瘍を有するマウス(図30A及び30B)、ならびにCT26.HER2腫瘍を有するマウス(図31A及び図31B)をIV免疫した(点線)。腫瘍の成長を一定間隔で測定した。A)では、腫瘍の平均体積を測定し、B)では、腫瘍を有するマウスの、腫瘍接種後60日目までの全生存率を測定した。
【0386】
Brachyuryのマウスホモログは、正常なマウス組織において高度には発現せず、マウス腫瘍組織でも優勢には発現しないので、マウスモデル系においては、能動免疫療法の標的としてのBrachyuryの有効性を効果的には調べることができない。WO2014/043535(参照により、本明細書に援用される)を参照されたい。ヒトBrachyuryのマウスホモログであるTwistがマウスモデルでは用いられており、ヒトにおけるBrachyuryの機能の予測モデルである。このことは、WO2014/043535で実証された。Brachyuryと同様に、EMT調節因子Twistのマウスホモログは、発生の際に、E-カドヘリン媒介性の細胞間接着をダウンレギュレートするとともに、間葉系マーカーをアップレギュレートすることによって、EMTを促し、マウス腫瘍組織において優勢に発現する。例えば、WO2014/043535の図5及び実施例8を参照されたい。したがって、マウスにおけるTwist特異的ながんワクチンの研究では、ヒトにおけるBrachyury特異的ながんワクチンの有効性に関する強力な予測値が得られる可能性が非常に高い(同上)。
【0387】
実施例27:MVA-HER2-Twist-CD40L(mBNbc388)の静脈内投与によって、HER2特異的なCD8+T細胞の腫瘍への浸潤が増強される。
【0388】
CT26.HER2腫瘍を有するBalb/cマウスに、PBSまたは5x10TCID50のMVA-HER2-Twist-CD40Lを静脈内投与した。7日後、マウスを殺処分し、磁気細胞ソーティングによって、脾臓及び腫瘍浸潤CD8T細胞を単離し、HER2ペプチドをロードした樹状細胞の存在下で、5時間培養した。グラフには、CD8T細胞のうちのCD44IFNγ細胞の割合(%)が示されている。結果は、平均±SEMとして示されている。図32に示されている結果から、本発明の各種実施形態が、腫瘍特異的であることが示されている。
【0389】
実施例28:トラスツズマブと組み合わせて、mBNbc388及びmBNbc389を静脈内投与した際の全生存率の向上及び腫瘍の縮小
平均体積が100mmを上回るCT26.HER2腫瘍を有するBalb/cマウスに、ヒトIgG1またはトラスツズマブのいずれかを5μg、腫瘍接種後、15日目に腹腔内投与した。図31に示されているように、ヒトIgG1またはトラスツズマブの1回目の注射の2日後、マウスに、PBSまたは5x10TCID50のMVA-HER2-Twist-CD40Lを静脈内投与した。この実施例では、ヒトIgG1を、トラスツズマブに対する実験コントロールとして使用した。トラスツズマブがHER2に結合するのに対して、IgG1は、HER2に結合しないからである。腫瘍の成長及び全生存期間を一定間隔で測定した。(A)は、腫瘍の平均体積であり、(B)は、経時的なマウス生存率である。
【0390】
図33(A)及び(B)に示されているように、MVA-HER2-Twist-CD40Lをトラスツズマブと組み合わせることは、抗体の用量を低減した場合でも、実施例21と比べて、大きめの腫瘍の縮小、及びこれらの大きい腫瘍を有するマウスの全生存率の向上に特に有効であった。
【0391】
実施例29:同所乳癌モデルにおいて、MVA-HER2-Twist-CD40LをIV投与した際の全生存率及び腫瘍の縮小
5×10TCID50のMVA-HER2-Twist(mBNbc389)及び/またはMVA-HER2-Twist-CD40L(mBNbc388)によって、同所4T1.HER2腫瘍を有するBalb/cマウスをIVでプライミングする。腫瘍の成長を一定間隔で測定し、全生存率を記録することになる。
【0392】
実施例30:MVA-HER2-Twist-CD40L+抗HER2のIV投与による強力なNK細胞媒介性傷害作用
5×10TCID50のMVA-HER2-Twist、MVA-HER2-Twistとともに、抗Her2またはPBSで、C57BL/6マウスをIV免疫する。24時間後、マウスを殺処分し、脾臓NK細胞を磁気細胞ソーティングによって精製し、エフェクター:標的殺傷アッセイにおいて、エフェクターとして使用することになる。簡潔に述べると、CFSEで標識したクラスI MCH欠損YAC-1細胞とともに、実施例4で示した比率で、NK細胞を培養する。フローサイトメトリーによって、非生存CFSE+YAC-1細胞を定量することによって、特異的殺傷率を評価する。
【0393】
実施例31:MVA-HER2-Twist-CD40L+抗HER2のIV投与によって、ADCCが増強される。
【0394】
25μgの抗CD4、MVA-HER2-TWIST-CD40L+5μgのラットIgG2bもしくは1μgの抗CD4、またはMVA-HER2-TWIST-CD40L+1μgの抗CD4のいずれかで、C57BL/6マウスをIV処置した。24時間後、マウスを殺処分し、肝臓におけるCD4 T細胞(CD3CD4)の枯渇をフローサイトメトリーによって解析する。25μgの抗CD4を特異的殺傷率100%とした。
【0395】
NK細胞のADCC活性をエキソビボで評価するために、PBS、MVA-HER2-TWISTまたはMVA-HER2-TWIST-CD40Lのいずれかで、C57BL/6マウス(B)またはBalb/cマウス(C)をIV免疫する。24時間後、マウスを殺処分し、脾臓NK細胞を磁気細胞ソーティングによって精製し、抗体依存性エフェクター:標的殺傷アッセイにおいて、エフェクターとして使用する。(B)標的のMC38-HER2細胞をマウス抗ヒト/マウスHER2mAbで被覆する。標的のCT26-HER2細胞をマウス抗ヒトHER2mAbで被覆する。抗体で被覆された標的細胞に、それぞれ5:1及び4:1の比率で、精製NK細胞を加える。細胞培養培地への乳酸脱水素酵素(LDH)の放出を測定することによって、細胞死を判断する。
【0396】
実施例32:rMVA-CD40+抗HER2(漸減濃度のHER2抗体)をIV投与した際の全生存率の向上及び腫瘍の縮小
8日目に、5×10TCID50のMVA-HER2-Twist-CD40Lで、触知可能なCT26-HER2腫瘍を有するBalb/cマウスをIV免疫する。マウスに漸減用量の抗HER2(200ug、100ug、25ug)を週に2回、腹腔内注射した(5日目に開始した)。200μgの抗HER2抗体のみを注射したマウス、及びMVA-HER2-TWIST-CD40Lのみを注射したマウスと比較して、腫瘍の平均体積及び全生存率を解析する。
【0397】
実施例33:rMVA-CD40L+抗CD52抗体をIV投与した際の全生存率の向上及び腫瘍の縮小
腫瘍接種後、CT26.CD52腫瘍を有するBalb/cマウスに、ヒトIgG1または抗CD52(アレムツズマブ)のいずれかを5μg、腹腔内投与する。ヒトIgG1またはアレムツズマブの1回目の注射後、マウスに、PBSまたは5×10TCID50のMVA-CD52-CD40Lを静脈内投与する。腫瘍の成長及び全生存率を一定間隔で測定する。(A)は、腫瘍の平均体積であり、(B)は、経時的なマウス生存率である。
【0398】
実施例34:rMVA-CD40L+抗EGFR抗体をIV投与した場合の全生存率の向上及び腫瘍の縮小
腫瘍接種後、CT26.EGFR腫瘍を有するBalb/cマウスに、ヒトIgG1または抗EGFR(セツキシマブ)のいずれかを5μg、腹腔内投与する。ヒトIgG1またはセツキシマブの1回目の注射後、マウスに、PBSまたは5×10TCID50のMVA-EGFR-CD40Lを静脈内投与する。腫瘍の成長及び全生存率を一定間隔で測定する。(A)は、腫瘍の平均体積であり、(B)は、経時的なマウス生存率である。
【0399】
本明細書に記載されている方法または組成物の正確な詳細は、記載されている本発明の趣旨から逸脱せずに、変更または修正し得ることは明らかであろう。我々は、下記の請求項の範囲及び趣旨の範囲内であるこのような修正形態及び変更形態のすべてを特許請求する。
【0400】
配列表
付随の配列表に列挙されている核酸配列及びアミノ酸配列は、ヌクレオチド塩基の標準的な略記及びアミノ酸の1文字の略号または3文字の略号のいずれかを用いて、米国特許法施行規則1.822に定義されているようにして示されている。各核酸配列の一本鎖のみが示されているが、示されている鎖に言及することによって、相補鎖が含まれるものとして理解する。
【0401】
配列番号1
合成Her2v1のアミノ酸配列(1,145アミノ酸):
【0402】
【表7】
【0403】
配列番号2
合成Her2v1のヌクレオチド配列(3441ヌクレオチド):
【0404】
【表8】
【0405】
配列番号3
合成Brachyuryのアミノ酸配列(427アミノ酸ヌクレオチド):
【0406】
【表9】
【0407】
配列番号4
合成Brachyuryのヌクレオチド配列(1,287ヌクレオチド):
【0408】
【表10】
【0409】
配列番号5(435アミノ酸)
GenBankアクセッション番号O15178.1のBrachyuryタンパク質アイソフォーム1
【0410】
【表11】
【0411】
配列番号6(1308ヌクレオチド)
Brachyuryタンパク質アイソフォーム1(GenBankアクセッション番号O15178.1)のコード配列
【0412】
【表12】
【0413】
配列番号7(435アミノ酸)
Brachyuryタンパク質アイソフォーム1(L254V)
【0414】
【表13】
【0415】
配列番号8(1308ヌクレオチド)
L254Vを有するBrachyuryタンパク質アイソフォーム1をコードするコード配列
【0416】
【表14】
【0417】
配列番号9(449アミノ酸)
Brachyury-I3融合タンパク質
【0418】
【表15】
【0419】
配列番号10(1350ヌクレオチド)
配列番号9のI3 Brachyury融合タンパク質をコードするコード配列
【0420】
【表16】
【0421】
配列番号11
NCBI RefSeq NP_000065.1のhCD40L(261アミノ酸)
【0422】
【表17】
【0423】
配列番号12
NCBI RefSeq NP_000065.1のhCD40Lのヌクレオチド配列(789ヌクレオチド):
【0424】
【表18】
【0425】
配列番号13
合成Her2v2のアミノ酸配列(1,145アミノ酸):
【0426】
【表19】
【0427】
配列番号14
合成Her2v2のヌクレオチド配列(3441ヌクレオチド):
【0428】
【表20】
【0429】
配列番号15
合成Twistのアミノ酸配列(205アミノ酸):
【0430】
【表21】
【0431】
配列番号16
合成Twistのヌクレオチド配列(618ヌクレオチド):
【0432】
【表22】
【0433】
配列番号17
合成マウスCD40Lのアミノ酸配列(260アミノ酸):
【0434】
【表23】
【0435】
配列番号18
合成マウスCD40Lのヌクレオチド配列(786ヌクレオチド):
【0436】
【表24】
【0437】
本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下も包含し得る。
1.がん患者において腫瘍サイズを縮小させ、及び/または生存率を向上させるのに用いる医薬組み合わせ物であって、
a)第1の異種の腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸を含む組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)ウイルスであって、静脈内投与すると、異種TAAをコードする核酸を含む組み換えMVAウイルスの非静脈内投与によって誘導されるナチュラルキラー(NK)細胞応答及びT細胞応答と比べて、NK細胞応答の増強及びT細胞応答の増強の両方を誘導する前記MVAウイルスと、
b)Fcドメインを含むとともに、腫瘍細胞の細胞膜上に発現する抗原に特異的である抗体と、
を含み、
a)及びb)を前記がん患者に投与すると、単独でa)を非IV投与するか、またはb)を投与する場合と比べて、前記がん患者の腫瘍サイズが縮小し、及び/または生存率が上昇する前記医薬組み合わせ物
2.CD40Lをさらに含む、上記1に記載の用途用の医薬組み合わせ物
3.前記CD40Lが、前記組み換えMVAウイルスによってコードされる、上記1~2のいずれか1項に記載の用途用の医薬組み合わせ物
4.前記組み換えMVAが、第2の異種TAAをコードする第2の核酸をさらに含む、上記1~3のいずれか1項に記載の用途用の医薬組み合わせ物
5.前記第1及び/または第2のTAAが、5-α-レダクターゼ、α-フェトプロテイン(「AFP」)、AM-1、APC、April、Bメラノーマ抗原遺伝子(「BAGE」)、β-カテニン、Bcl12、bcr-abl、Brachyury、CA-125、カスパーゼ-8(「CASP-8」、「FLICE」としても知られている)、カテプシン、CD19、CD20、CD21/補体受容体2(「CR2」)、CD22/BL-CAM、CD23/FcεRII、CD33、CD35/補体受容体1(「CR1」)、CD44/PGP-1、CD45/白血球共通抗原(「LCA」)、CD46/メンブレンコファクタープロテイン(「MCP」)、CD52/CAMPATH-1、CD55/崩壊促進因子(「DAF」)、CD59/プロテクチン、CDC27、CDK4、癌胎児性抗原(「CEA」)、c-myc、シクロオキシゲナーゼ-2(「cox-2」)、大腸癌欠失遺伝子(「DCC」)、DcR3、E6/E7、CGFR、EMBP、Dna78、ファルネシルトランスフェラーゼ、線維芽細胞増殖因子-8a(「FGF8a」)、線維芽細胞増殖因子-8b(「FGF8b」)、FLK-1/KDR、葉酸受容体、G250、Gメラノーマ抗原遺伝子ファミリー(「GAGEファミリー」)、ガストリン17、ガストリン放出ホルモン、ガングリオシド2(「GD2」)/ガングリオシド3(「GD3」)/ガングリオシド-モノシアル酸-2(「GM2」)、ゴナドトロピン放出ホルモン(「GnRH」)、UDP-GlcNAc:RMan(α1-6)R[GlcNAc-Man(α1-6)]β1,6-N--アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼV(「GnT V」)、GP1、gp100/Pme117、gp-100-in4、gp15、gp75/チロシン関連タンパク質-1(「gp75/TRP-1」)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(「hCG」)、ヘパラナーゼ、HER2、ヒト乳癌ウイルス(「HMTV」)、70キロダルトンの熱ショックタンパク質(「HSP70」)、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(「hTERT」)、インスリン様増殖因子受容体-1(「IGFR-1」)、インターロイキン-13受容体(「IL-13R」)、誘導型一酸化窒素合成酵素(「iNOS」)、Ki67、KIAA0205、K-ras、H-ras、N-ras、KSA、LKLR-FUT、メラノーマ抗原コード遺伝子1(「MAGE-1」)、メラノーマ抗原コード遺伝子2(「MAGE-2」)、メラノーマ抗原コード遺伝子3(「MAGE-3」)、メラノーマ抗原コード遺伝子4(「MAGE-4」)、マンマグロビン、MAP17、Melan-A/T細胞によって認識されるメラノーマ抗原-1(「MART-1」)、メソセリン、MIC A/B、MT-MMP、ムチン、精巣特異的抗原NY-ESO-1、オステオネクチン、p15、P170/MDR1、p53、p97/メラノトランスフェリン、PAI-1、血小板由来増殖因子(「PDGF」)、μPA、PRAME、プロバシン、プロゲニポイエチン、前立腺特異的抗原(「PSA」)、前立腺特異的膜抗原(「PSMA」)、RAGE-1、Rb、RCAS1、SART-1、SSXファミリー、STAT3、STn、TAG-72、トランスフォーミング増殖因子-α(「TGF-α」)、トランスフォーミング増殖因子-β(「TGF-β」)、チモシン-β-15、腫瘍壊死因子-α(「TNF-α」)、TP1、TRP-2、チロシナーゼ、血管内皮増殖因子(「VEGF」)、ZAG、p16INK4及びグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(「GST」)からなる群から選択されている、上記1~4のいずれか1項に記載の用途用の医薬組み合わせ物
6.前記抗体が、前記第1及び/または第2のTAAに結合するのを防ぐために、前記第1及び/または第2のTAAが、1つ以上の変異を含む、上記1~5のいずれか1項に記載の用途用の医薬組み合わせ物
7.前記第1のTAAが、HER2である、上記1~6のいずれか1項に記載の用途用の医薬組み合わせ物
8.a)前記HER2抗体が、前記HER2抗原に結合するのを防ぐために、b)前記HER2抗原の細胞外での二量化を防ぐために、c)前記HER2抗原のチロシンキナーゼ活性を防ぐために、及び/またはd)前記HER2抗原のリン酸化を防ぐために、前記HER2抗原が、少なくとも1つの変異を含む、上記1~7のいずれかに記載の用途用の医薬組み合わせ物
9.前記HER2抗原が、E580A、F595A、K615A、H318A、L317A、D277R、E280K、K753M及びY1023Aからなる群から選択した少なくとも1つの変異を含む、上記1~8のいずれかに記載の用途用の医薬組み合わせ物
10.前記HER2抗原が、E580A、F595A、K615A、H267A、F279A、V308A、S310A、H318A、L317A、K333A、P337A、D277R、E280K、K753M及びY1023Aからなる群から選択した少なくとも1つの変異を含む、上記1~8のいずれかに記載の用途用の医薬組み合わせ物
11.配列番号1との同一性が少なくとも90%、95%、97%、98%または99%であるHER2抗原を前記第1の核酸がコードする、上記1~8のいずれかに記載の用途用の医薬組み合わせ物
12.配列番号13との同一性が少なくとも90%、95%、97%、98%または99%であるHER2抗原を前記第1の核酸がコードする、上記1~8のいずれかに記載の用途用の医薬組み合わせ物
13.前記第1の核酸が、配列番号1をコードする、上記1~8のいずれかに記載の用途用の医薬組み合わせ物
14.前記第1の核酸が、配列番号13をコードする、上記1~8のいずれかに記載の用途用の医薬組み合わせ物
15.配列番号2との同一性が少なくとも90%、95%、97%、98%または99%である核酸を前記第1の核酸が含む、上記1~8のいずれかに記載の用途用の医薬組み合わせ物
16.配列番号14との同一性が少なくとも90%、95%、97%、98%または99%である核酸を前記第1の核酸が含む、上記1~8のいずれかに記載の用途用の医薬組み合わせ物
17.前記第1の核酸が、配列番号2及び配列番号3から選択した核酸を含む、上記1~8のいずれかに記載の用途用の医薬組み合わせ物
18.前記第1の核酸が、配列番号2を含む、上記1~8のいずれかに記載の用途用の医薬組み合わせ物
19.前記第1の核酸が、配列番号14を含む、上記1~8のいずれかに記載の用途用の医薬組み合わせ物
20.前記第2のTAAが、Brachyuryである、上記1~19のいずれかに記載の用途用の医薬組み合わせ物
21.核局在化を防ぐために、前記Brachyury抗原が、1つ以上の変異を含む、上記20に記載の用途用の医薬組み合わせ物
22.配列番号3との同一性が少なくとも90%、95%、97%、98%または99%であるBrachyury抗原を前記第2の核酸がコードする、上記21のいずれかに記載の用途用の医薬組み合わせ物
23.配列番号3を含むBrachyury抗原を前記第2の核酸がコードする、上記21~22のいずれかに記載の用途用の医薬組み合わせ物
24.配列番号4との同一性が少なくとも90%、95%、97%、98%または99%である核酸を前記第2の核酸が含む、上記21~22のいずれかに記載の用途用の医薬組み合わせ物
25.前記第2の核酸が、配列番号4を含む、上記21~24のいずれか1項に記載の用途用の医薬組み合わせ物
26.前記抗体が、抗CD20(例えば、リツキシマブ、オファツムマブ、トシツモマブ)、抗CD52(例えばアレムツズマブであるCampath)、抗EGFR(例えば、セツキシマブであるErbitux、パニツムマブ)、抗CD2(例えばシプリズマブ)、抗CD37(例えばBI836826)、抗CD123(例えばJNJ-56022473)、抗CD30(例えばXmAb2513)、抗CD38(例えばダラツムマブであるDarzalex)、抗PDL1(例えば、アベルマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ)、抗GD2(例えば、3F8、ch14.18、KW-2871、ジヌツキシマブ)、抗CEA、抗MUC1、抗FLT3、抗CD19、抗CD40、抗SLAMF7、抗CCR4、抗B7-H3、抗ICAM1、抗CSF1R、抗CA125(例えばオレゴボマブ)、抗FRα(例えばMOv18-IgG1、ミルベツキシマブソラブタンシン(IMGN853)、MORAb-202)、抗メソセリン(例えばMORAb-009)及び抗HER2からなる群から選択されている、上記1~25のいずれか1項に記載の用途用の医薬組み合わせ物
27.前記抗体が、前記HER2抗原に特異的である、上記1~26のいずれか1項に記載の用途用の医薬組み合わせ物
28.前記抗体が、ペルツズマブ、トラスツズマブ、Herzuma、ABP980及びアドトラスツズマブエムタンシンから選択されている、上記1~27に記載の用途用の医薬組み合わせ物
29.前記MVAが、MVA-BNまたはMVA-BNの誘導体である、上記1~28のいずれか1項に記載の用途用の医薬組み合わせ物
30.a)をb)と同時に、またはb)の後に投与する、上記1~29のいずれか1項に記載の用途用の医薬組み合わせ物
31.a)及びb)を前記がん患者にプライミング投与してから、a)及びb)のブースト投与を1回以上、前記がん患者に行う、上記1~30のいずれか1項に記載の用途用の医薬組み合わせ物
32.前記がん患者が、乳癌、肺癌、頭頸部癌、甲状腺、メラノーマ、胃癌、膀胱癌、腎臓癌、肝臓癌、メラノーマ、膵臓癌、前立腺癌、卵巣癌もしくは大腸癌からなる群から選択したがんを罹患しており、及び/または前記がんと診断されている、上記1~31のいずれか1項に記載の用途用の医薬組み合わせ物
33.前記乳癌が、Her-2を過剰発現する乳癌である、上記32に記載の用途用の医薬組み合わせ物
34.合成HER2ポリペプチドであって、前記HER2抗原が、HER2抗体に結合するのを防ぐために、前記HER2の1つ以上のアミノ酸が変異している、前記合成HER2ポリペプチド。
35.合成HER2ポリペプチドであって、前記HER2抗原の細胞外での二量化、チロシンキナーゼ活性及び/またはリン酸化を防ぐために、前記HER2の1つ以上のアミノ酸が変異している、前記合成HER2ポリペプチド。
36.HER2の膜近傍領域における3つのループの少なくとも1つに、1つ以上の変異が施されている、上記34~35のいずれか1項に記載の合成HER2ポリペプチド。
37.HER2の前記膜近傍領域の前記3つのループが、579~583位のアミノ酸(ループ1)、592~595位のアミノ酸(ループ2)及び615~625位のアミノ酸(ループ3)から選択されている、上記34~36のいずれか1項に記載の合成HER2ポリペプチド。
38.前記HER2ポリペプチドが、H267、Y274、S310、L317、H318、K333、E580、D582、P594、F595、K615及びQ624のアミノ酸のうちの少なくとも1つに、少なくとも1つの変異を含む、上記34~37のいずれか1項に記載の合成HER2ポリペプチド。
39.前記HER2ポリペプチドが、E580A、F595A、K615A、H267A、F279A、V308A、S310A、H318A、L317A、K333A、P337A、D277R、E280K、K753M及びY1023Aからなる群から選択した少なくとも1つの変異を含む、上記34~38のいずれか1項に記載の合成HER2ポリペプチド。
40.前記HER2ポリペプチドが、1139~1248位のアミノ酸に対する変異を少なくとも1つ含む、上記34~39のいずれか1項に記載の合成HER2ポリペプチド。41.前記HER2ポリペプチドが、1139~1248位のアミノ酸に欠失を少なくとも1つ含む、上記34~40のいずれか1項に記載の合成HER2ポリペプチド。
42.前記HER2ポリペプチドが、1139~1248位のアミノ酸の欠失を含む、上記34~41のいずれか1項に記載の合成HER2ポリペプチド。
43.配列番号1との同一性が少なくとも90%、95%、97%、98%または99%である合成HER2ポリペプチド。
44.配列番号1または配列番号13を含む合成HER2ポリペプチド。
45.配列番号1または配列番号13との同一性が少なくとも90%、95%、97%、98%または99%であるアミノ酸配列を含むHER2ポリペプチドをコードする合成核酸配列。
46.配列番号1または配列番号13を含むHER2ポリペプチドをコードする合成核酸配列。
47.配列番号2または配列番号14との同一性が少なくとも90%、95%、97%、98%または99%である合成核酸配列。
48.配列番号2または配列番号13を含む合成核酸配列。
49.合成Brachyuryポリペプチドであって、核局在化を防ぐために、1つ以上のアミノ酸が変異している前記合成Brachyuryポリペプチド。
50.前記Brachyuryが、その核局在化シグナル(NLS)ドメインに対する変異を1つ以上含む、上記49に記載の合成Brachyuryポリペプチド。
51.前記Brachyury抗原のNLSドメインが欠失している、上記49~50のいずれか1項に記載の合成Brachyuryポリペプチド。
52.前記Brachyury抗原のNLSドメインが欠失している、上記49~51に記載の合成Brachyuryポリペプチド。
53.配列番号3との同一性が少なくとも90%、95%、97%、98%または99%であるアミノ酸配列を含む改変Brachyuryポリペプチドをコードする合成核酸配列。
54.配列番号3を含む改変Brachyuryポリペプチドをコードする合成核酸配列。
55.配列番号4との同一性が少なくとも90%、95%、97%、98%または99%である合成核酸配列。
56.配列番号4を含む合成核酸配列。
57.上記34~56のいずれか1項に記載の合成核酸を含む組み換えポックスウイルス。
58.前記ポックスウイルスが、オルトポックスウイルス及びアビポックスウイルスから選択されている、上記57に記載の組み換えポックスウイルス。
59.前記オルトポックスウイルスが、ワクシニアウイルス、改変ワクシニアアンカラウイルス(MVA)、MVA-BN及びMVA-BNの誘導体から選択されている、上記58に記載の組み換えポックスウイルス。
60.前記アビポックスウイルスが、ニワトリポックスウイルスである、上記59に記載の組み換えポックスウイルス。
参照文献
下に列挙されているものに加えて、本開示の一部として含まれる参照文献は、その全体が、参照により本明細書に援用される。
【0438】
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【配列表フリーテキスト】
【0439】
配列番号1
合成Her2v1のアミノ酸配列(1,145アミノ酸):
配列番号2
合成Her2v1のヌクレオチド配列(3441ヌクレオチド):
配列番号3
合成Brachyuryのアミノ酸配列(427アミノ酸ヌクレオチド):
配列番号4
合成Brachyuryのヌクレオチド配列(1,287ヌクレオチド):
配列番号5(435アミノ酸)
GenBankアクセッション番号O15178.1のBrachyuryタンパク質アイソフォーム1
配列番号6(1308ヌクレオチド)
Brachyuryタンパク質アイソフォーム1(GenBankアクセッション番号O15178.1)のコード配列
配列番号7(435アミノ酸)
Brachyuryタンパク質アイソフォーム1(L254V)
配列番号8(1308ヌクレオチド)
L254Vを有するBrachyuryタンパク質アイソフォーム1をコードするコード配列
配列番号9(449アミノ酸)
Brachyury-I3融合タンパク質
配列番号10(1350ヌクレオチド)
配列番号9のI3 Brachyury融合タンパク質をコードするコード配列
配列番号11
NCBI RefSeq NP_000065.1のhCD40L(261アミノ酸)
配列番号12
NCBI RefSeq NP_000065.1のhCD40Lのヌクレオチド配列(789ヌクレオチド):
配列番号13
合成Her2v2のアミノ酸配列(1,145アミノ酸):
配列番号14
合成Her2v2のヌクレオチド配列(3441ヌクレオチド):
配列番号15
合成Twistのアミノ酸配列(205アミノ酸):
配列番号16
合成Twistのヌクレオチド配列(618ヌクレオチド):
配列番号17
合成マウスCD40Lのアミノ酸配列(260アミノ酸):
配列番号18
合成マウスCD40Lのヌクレオチド配列(786ヌクレオチド):
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14-1】
図14-2】
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21-1】
図21-2】
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
【配列表】
0007202362000001.app