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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-27
(45)【発行日】2023-01-11
(54)【発明の名称】耐加水分解性ポリエステルフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20221228BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20221228BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20221228BHJP
   C08K 9/04 20060101ALI20221228BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20221228BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20221228BHJP
   H01G 9/20 20060101ALI20221228BHJP
   C09C 1/36 20060101ALI20221228BHJP
   C09C 3/08 20060101ALI20221228BHJP
   C09C 3/12 20060101ALI20221228BHJP
【FI】
C08J5/18 CFD
C08L67/00
C08K3/22
C08K9/04
B32B27/36
B32B27/18 Z
H01G9/20 119
H01G9/20 111Z
H01G9/20 115Z
C09C1/36
C09C3/08
C09C3/12
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020512926
(86)(22)【出願日】2018-05-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-09
(86)【国際出願番号】 GB2018051225
(87)【国際公開番号】W WO2018206929
(87)【国際公開日】2018-11-15
【審査請求日】2021-04-30
(31)【優先権主張番号】1707356.0
(32)【優先日】2017-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】519399763
【氏名又は名称】デュポン テイジン フィルムス ユーエス リミテッド パートナーシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100154988
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 真知
(72)【発明者】
【氏名】ロヴァット アラン
(72)【発明者】
【氏名】ホワイトヘッド アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】パーナム エミリー
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-068756(JP,A)
【文献】国際公開第2014/041827(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/052420(WO,A1)
【文献】特開平08-176460(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00572128(EP,A1)
【文献】特開平09-316387(JP,A)
【文献】特開平06-107916(JP,A)
【文献】特開平04-007336(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00- 5/02、 5/12- 5/22
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
B32B 1/00- 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配向ポリエステルフィルムの耐加水分解性を向上させるための、有機コーティングによってコーティングされた二酸化チタン粒子の使用であって、前記有機コーティングが、シランを含まない、またはシランに由来しない、及び前記有機コーティングが、有機リン化合物である、使用。
【請求項2】
前記フィルムが、前記フィルムの総質量に対して、約1質量%~約40質量%、好ましくは約1質量%~約20質量%、好ましくは約10質量%~約20質量%の、前記有機コーティングによってコーティングされた前記二酸化チタン粒子を含む、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記ポリエステルフィルムが、第2の層(B)をさらに含む多層フィルム中の層(A)であり、任意選択で前記第2の層(B)が、ポリエステルフィルム層である、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記ポリエステルフィルムの固有粘度が、少なくとも約0.60、好ましくは少なくとも約0.64である、および/または、前記第2の層(B)のポリエステルが、層(A)のポリエステルと同一のポリエステルである、またはそれを含む、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
ポリエステル層(A)が、前記層の総質量に対して、約1質量%~約40質量%、好ましくは約1質量%~約20質量%、好ましくは約10質量%~約20質量%の、前記有機コーティングによってコーティングされた前記二酸化チタン粒子を含む、請求項3または4に記載の使用。
【請求項6】
前記第2の層(B)が、前記有機コーティングによってコーティングされた前記二酸化チタン粒子を、好ましくは前記層の総質量に対して約1質量%~約10質量%、好ましくは約1質量%~約5質量%の量で含み、任意選択で層(A)中の前記有機コーティングによってコーティングされた前記二酸化チタン粒子の量が、層(B)中の有機コーティングによってコーティングされた二酸化チタン粒子の量より多い、請求項3から5までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
前記第2の層(B)が、前記多層フィルムの製造に由来する再生廃フィルムを含む、請求項3から6までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
層(A)の厚さが、層(B)の厚さより薄く、好ましくは前記層(A)の厚さが、前記層(B)の厚さの約10%~約40%、好ましくは約20%~約30%である、および/または、フィルムの全体の厚さが、約12μm~約500μm、好ましくは約20~約100μmである、請求項3から7までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
二軸配向ポリエステルフィルムである、請求項1から8までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
前記ポリエステルが、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートから選択され、好ましくはポリエチレンテレフタレートから選択される、請求項1から9までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
(i)前記二酸化チタンが、ルチル形結晶の形態であり、
(ii)前記二酸化チタン粒子が、前記有機コーティングによって均一にかつ離散的にコーティングされており、かつ/または
iii)前記二酸化チタン粒子が、アルキルホスホン酸またはアルキルホスホン酸エステルでコーティングされ、前記アルキルホスホン酸が、6~22個の炭素原子を含み、
任意選択で、前記アルキルホスホン酸またはそのエステルが、式P(R)(=O)(OR1)(OR2)[式中、Rが、6~22個の炭素原子を含むアルキル基またはシクロアルキル基であり、R1およびR2がそれぞれ、水素、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基である]を有し、かつ/または、前記アルキルホスホン酸のアルキル基またはRが、6~14個の炭素原子を含み、直鎖状アルキル基であり、例えばR1およびR2が、独立に、水素および最大10個の炭素原子を含むヒドロカルビル基から選択され、好ましくはR1およびR2が水素であり、かつ/または、前記アルキルホスホン酸またはそのエステルが、n-オクチルホスホン酸およびそのエステル、n-デシルホスホン酸およびそのエステル、2-エチルヘキシルホスホン酸およびそのエステル、ならびにカンフィルホスホン酸およびそのエステルから選択される、請求項1から10までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
コーティングされた二酸化チタンが、電量Karl Fischer滴定によって測定した場合、290℃で1.0%以下、好ましくは0.5%以下の損失を示すような含水量を有する、請求項1から1までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項13】
有機コーティングされた二酸化チタンが、疎水性ではない、好ましくは親水性であり、かつ/または、前記有機コーティングが、前記二酸化チタンの約0.1~約200質量%、好ましくは約0.1~約100質量%、約0.5~約100質量%、約2.0~約20質量%の量で存在する、請求項1から1までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項14】
二酸化チタン粒子対有機コーティングの体積比が、体積によって1:1から1:25、好ましくは1:2から1:8である、請求項1から1までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項15】
前記二酸化チタン粒子が、無機コーティング、特にシリカおよび/またはアルミナコーティング、特にアルミナコーティングを有し、前記有機コーティングが、前記無機コーティングされた二酸化チタン粒子上にコーティングされており、かつ/または、
有機コーティングによってコーティングされた前記コーティングされた二酸化チタン粒子が、約0.01μm~約5.0μm、好ましくは約0.10~0.40μmの粒径を有する、請求項1から1までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項16】
前記フィルムが、有機加水分解安定剤を含まず、かつ/または、前記フィルムが、有機UV吸収剤を含まない、請求項1から1までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項17】
前記フィルムが白色である、請求項1から1までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項18】
ポリエステルフィルムの耐加水分解性が、121℃および相対湿度100%で少なくとも80時間、促進老化後、破断伸びが少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%であるようなものである、請求項1から17までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項19】
前記有機コーティングが、ポリシロキサンではなく、かつ、ポリシロキサンを含まない、請求項1から18までのいずれか1項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された耐加水分解性を示すポリエステルフィルムと、その製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルフィルムの有利な機械的性質、寸法安定性および光学特性は、周知である。しかし、ポリエステルフィルムは、加水分解の影響を受けやすく、ポリマーの固有粘度の低減がもたらされ、結果としてフィルムの前述の所望の特性のうちの1つまたは複数、特に機械的性質が劣化する。不良な加水分解安定性は、フィルムのひび割れによっても顕在化し得る。不良な耐加水分解性は、フィルムを高湿度条件および/または高温に曝露した場合に、特に、例えば光起電力(PV)電池などの屋外用途で、長期間にわたって曝露された場合、特に問題である。
【0003】
ポリエステルフィルムの耐加水分解性を改善するために、有機加水分解安定剤をフィルム中に取り入れることが知られている。例えば、ポリエステル組成物中の後端キャッピング剤としてのカルボジイミドの添加が、米国特許第5885709号および欧州特許第0838500号で提案されたが、とりわけ、このような添加剤は、有害なガス状副産物を発生する傾向がある。米国特許第2003/0219614号は、加水分解安定剤としてのポリマーカルボジイミドの使用が、ガス発生の傾向を減少することを報告している。米国特許第2002/0065346号は、任意選択により有機亜リン酸塩と組み合わせた、フェノール化合物、オキサゾリンおよび/または単量体もしくはポリマーカルボジイミドから選択される加水分解安定剤を教示している。GB1048068は、加水分解安定剤としての有機カルボン酸の銅塩の使用を教示している。米国特許第3657191号および米国特許第3869427号は、炭酸エチレンまたは単官能性グリシジルエーテルとの反応によるポリエステルの末端基の修飾を教示している。エポキシ末端基含有化合物の使用によって安定化された耐加水分解性ポリエステルも欧州特許第0292251号に開示されている。欧州特許第1209200号では、開示内容は、PETより非常に速く結晶化するポリブチレンテレフタレート(PBT)および射出成形材料の製造におけるその使用を対象とするが、グリシジル基とカルボキシル基との間の反応を促進させる触媒の存在下での、グリシジルエステルとグリシジルエーテルとの組み合わせが、ポリエステルの耐加水分解性を改善することが報告されている。米国特許第6498212号は、エポキシエチレン-エチルアクリレートコポリマー、エポキシスチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマーおよびアミノポリエチレンコポリマーから選択されるポリマー後端キャッピング剤の使用によって加水分解安定性が改善されたポリエステルを開示している。ポリエステル組成物中の加水分解安定剤としての、エポキシ化脂肪酸アルキルエステル(エポキシ化ステアリン酸2-エチルヘキシルエステルなど)および/またはエポキシ化脂肪酸グリセリド(エポキシ化大豆または亜麻仁油など)の使用が、CA2514589、米国特許第4540729号、米国特許第5589126号、米国特許第7229697号、米国特許第7241507号、米国特許第2005/0137299号、米国特許第2007/0238816号および米国特許第2007/0237972号に開示されている。ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの加水分解安定性の他の改善方法としては、欧州特許第0738749号に開示されるような、固有粘度、ジエチレングリコール含有量および結晶化度などのパラメータの同時制御が挙げられる。酸化防止剤の存在と組み合わせた、固有粘度および結晶化度の制御は、電動機およびコンデンサ中の断熱材料として使用されるポリエステルフィルムの面内剥離特性に対する損害なく、高温(180℃)老化特性を改善するものとして、欧州特許第0620245号で報告されている。米国特許第4115350号および米国特許第4130541号は、ポリエステルと、モノカルボン酸、アミドおよびチオ酸のエポキシ化アルキルエステルとの反応生成物が、繊維および繊維から作製されるコード中のポリエステルの熱安定性を改善することを教示している。米国特許第3372143号は、ポリエステルとエポキシ化アルコキシまたはアリールオキシエーテルとの反応生成物が、それから作製される繊維の可染性を改善することを教示している。国際公開第2011/030098号および国際公開第2012/120260号は、5~50個の炭素原子を有する分枝状モノカルボン酸のグリシジルエステルから選択される加水分解安定剤のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム中の使用であって、加水分解安定剤が、ポリエステルの末端基の少なくとも一部を有するその反応生成物の形態でフィルム中に存在する、使用を教示している。
【0004】
有機加水分解安定剤をポリエステルフィルム中に取り込むことに関与する課題の一つは、添加剤の濃度を高くすると耐加水分解性を改善することができるが、融点および/または固有粘度の低下ならびに機械的性質の劣化という犠牲ももたらし得、したがってフィルムが脆性になり得、フィルムの形成が困難になり得る。したがって、機械的性質の低下に伴う特定の結果は、フィルム化ポリエステルの処理可能性が不良になり、製造および後続する処理の間にフィルムの破壊が生じることである。
【0005】
有機加水分解安定剤で観察される別の問題は、フィルムが変色するようになり得、不具合を示すことである。これは、エポキシ化脂肪酸グリセリドおよび多官能性グリシジル化合物をベースとした加水分解安定剤で特に問題である。このようなフィルムの品質における低下は、それ自体問題となり、処理可能性にも影響がある。このような添加剤は、ポリエステルフィルムにおいてプロフィール欠陥および許容できないレベルのダイライン、すなわち、不良な、厚さの均一性および/またはフィルムウェブにわたる光透過率を誘発し得、フィルムウェブの破損によりフィルムライン上での押出物の処理が不可能になり得る。このような問題は、フィルム製造中にフィルムが経る延伸プロセスに干渉する架橋およびゲル形成に少なくとも部分的に寄与すると考えられている。ポリエステルの加水分解安定剤として多官能性グリシジル化合物を使用する上でのさらなる問題は、ポリエステルの高確率の鎖延長が溶融粘度を向上させることであり、これは次いで所与の温度での押出量を減少させ、これは経済的に望ましくない。粘度は、理論的には、溶融温度を上げることによって低減され得るが、これは、ポリマーおよび加水分解安定剤の分解率を上げることにつながり、ゲルの形成を引き起こすと思われる。
【0006】
ゲルの形成は、射出成形したPBT製品などの他のポリエステル製品の製造では、さほど問題ではないが、その理由の一つとしては、ポリエステルフィルムと比べて該製品の厚さがずっと厚いからである。
エポキシ化脂肪酸、特にエポキシ化脂肪酸グリセリドをベースとした有機加水分解安定剤の別の問題は、このような添加剤が、フィルムの製造および処理の間、毒性の強い可燃性で悪臭のある物質であるアクロレインの発生によって分解する傾向があることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、特に有機加水分解安定剤の使用を回避し、特に毒性の副産物を発生させずにフィルムを製造し、使用でき、特にフィルム破壊を増加せずにフィルムの製造の容易さおよび効率および経済性を維持または改善させながら、特にフィルムの機械的性質および/または光学特性に損害を与えずに、特にダイラインレベルおよびプロフィール欠陥が低減される、代替の耐加水分解性ポリエステルフィルムを提供することである。
本発明のさらなる目的は、有機加水分解安定剤を含まない、または有機加水分解安定剤なしで製造された、改善された耐加水分解性のポリエステルフィルム、すなわち、有機加水分解安定剤を含まない、もしくは有機加水分解安定剤なしで製造された他または従来の耐加水分解性ポリエステルフィルムと比べて耐加水分解性が向上し、特にフィルム破壊を増加させずにフィルムの製造の容易さおよび効率および経済性を維持または改善させながら、特にフィルムの機械的性質および/または光学特性に損害を与えずに、特にダイラインレベルおよびプロフィール欠陥が低減されるものを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、二酸化チタン粒子を含む配向ポリエステルフィルムであって、前記粒子が有機コーティングによってコーティングされている、配向ポリエステルフィルムが提供される。
本発明者らは、意外にも、前記有機コーティングによってコーティングされた二酸化チタン粒子が、ポリエステルフィルムに驚くほど良好な耐加水分解性を付与し、典型的にポリエステルフィルム中に使用されている従来の二酸化チタン粒子よりも優れていることを発見した。その上、前記有機コーティングによってコーティングされた二酸化チタン粒子は、典型的にポリエステルフィルムに添加される従来の有機加水分解安定剤の不在下で、十分な耐加水分解性をポリエステルフィルムに与えることができる。
【0009】
本明細書に記載の配向ポリエステルフィルムは、自立フィルムまたはシートであり、支持ベースの不在下で独立して存在できるフィルムまたはシートを意味する。フィルムは、好ましくは一軸または二軸配向しており、好ましくは二軸配向している。
フィルムを構成するポリエステルは、典型的には、合成直鎖状ポリエステルである。好適なポリエステルは、1種または複数のジカルボン酸またはその低級アルキル(最大6個の炭素原子)ジエステルと1種または複数のジオールを縮合することによって得られる。ジカルボン酸成分は、少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸を含有し、それらは好ましくは、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-、2,5-、2,6-または2,7-ナフタレンジカルボン酸であり、好ましくはテレフタル酸(TA)または2,6-ナフタレンジカルボン酸、好ましくはテレフタル酸である。ポリエステルは、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、1,10-デカンジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、例えば、(コハク酸、グルタル酸、セバシン酸、アジピン酸、アゼライン酸、スベリン酸またはピメリン酸、好ましくはセバシン酸、アジピン酸およびアゼライン酸、より好ましくはアゼライン酸など)一般式Cn2n(COOH)2(式中、nは2~8である)のものなどのその他のジカルボン酸に由来する1つまたは複数の残基も含み得る。ジオールは、好ましくは、脂肪族および脂環式グリコール、例えばエチレングリコール(EG)、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオールおよび1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHDM)から選択され、好ましくはエチレングリコール(EG)から選択される。フィルム形成性ポリエステル樹脂は、フィルムの主要成分であり、所与の層の総質量の少なくとも50質量%、好ましくは少なくとも65質量%、典型的には少なくとも80質量%、より典型的には少なくとも85質量%、一実施形態では、典型的には、所与の層の総質量の少なくとも95質量%を構成する。
【0010】
ポリエステルは、好ましくは結晶性ポリエステルである。好ましくは、ポリエステルは、ジカルボン酸、好ましくは芳香族ジカルボン酸、好ましくはテレフタル酸または2,6-ナフタレンジカルボン酸、好ましくはテレフタル酸のみを含有する。好ましくは、ポリエステルは、グリコール、好ましくは脂肪族グリコール、好ましくはエチレングリコールのみを含有する。好ましくは、ポリエステルは、1種の芳香族ジカルボン酸および1種の脂肪族グリコールを含有する。ポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリエチレン2,6-ナフタレート(PEN)、特にPETは、ベース層の好ましいポリエステルである。ポリエステルは、上記のその他のジカルボン酸および/またはジオールに由来する1つまたは複数の残基を比較的少量で含有してもよく、このような少量が存在する場合、前記その他のジカルボン酸の総量は、所与の層のポリエステルの全ジカルボン酸分画の好ましくは10mol%未満、好ましくは5mol%未満、好ましくは1mol%未満であり、かつ/または前記その他のジオールの総量は、所与の層のポリエステルの全ジオール分画の好ましくは15mol%未満、好ましくは10mol%未満、好ましくは5mol%未満である。ポリエステルは、所与の層の主要成分であり、層の総質量の少なくとも50質量%、好ましくは所与の層の総質量の少なくとも65質量%、好ましくは少なくとも80質量%、より好ましくは少なくとも85質量%、一実施形態では、典型的には、所与の層の総質量の少なくとも95質量%を構成する。
【0011】
フィルムの所与の層が由来するポリエステルの固有粘度は、好ましくは少なくとも約0.60、好ましくは少なくとも約0.65、好ましくは少なくとも約0.70である。好ましくは、ポリエステルの固有粘度は、約0.80以下、典型的には0.75以下である。好ましくは、ポリエステルの固有粘度は、少なくとも0.61、好ましくは少なくとも約0.62、好ましくは少なくとも約0.63である。高すぎる粘度は、フィルムの製造を困難にし、かつ/または特殊でより頑丈なフィルム形成用装置を必要とし得るが、比較的高い固有粘度を有するポリエステルの使用は、改善された加水分解安定性をもたらす。例えば、粘度を過剰に高めることは、産出量を減らす(すなわち、単位時間当たりに押し出されたポリエステルの量を減らし、より経済的でないプロセスにつながる)または安定性フィルムの製造を実現するために、押出温度を上げて溶解物の粘度を低減する(ひいては、ポリマーの熱分解および関連する特性の損失を招き得る)のが妥当であることを意味し得る。
【0012】
ポリエステルの形成は、一般的には最大約295℃の温度での縮合またはエステル交換による公知の方法で好都合に達成される。好ましい実施形態において、当該技術分野において周知の従来技術を使用した、例えば窒素流動床またはロータリー真空乾燥機を使用した真空流動床などの流動床を使用した固体重合を用いて結晶性ポリエステルの固有粘度を所望の値まで高めることができる。ポリマーおよびフィルムの製造の以下の説明において、用語「ポリエステル」は「コポリエステル」を含むことが理解されよう。
本発明のポリエステルフィルムの形成は、従来の技術によって達成され得る。押出成形は、一般的に、約250~約300℃の範囲内の温度で実施され、後続して押出物をクエンチし、クエンチした押出物を配向する。好ましくは、ポリエステルは、約270~約300℃、好ましくは約280~約300℃の温度で押し出される。
【0013】
本発明の多層フィルムは、当該技術分野において周知の共押出、積層およびコーティング技術を含めた、当該技術分野における従来の技術、最も好ましくは共押出を使用して製造してもよい。一般的な用語では、共押出法は、各ポリエステル組成物をマルチオリフィスダイの独立したオリフィスに通して共押出した後、依然として溶融している層を統合する工程、または好ましくは単一チャンネル共押出によって、各ポリエステル溶融流を、先ずチャンネル内で合流させ、その後、混ぜていない層流の条件下でダイオリフィスから一緒に押し出すことによって積層フィルムを生成する工程を含む。
【0014】
クエンチした押出物の配向は、配向したフィルムを生成するための当該技術分野において公知の任意の方法、例えば管状またはフラットフィルム法によって達成され得る。二軸配向は、機械的および物理的性質の満足な組み合わせを実現するように、フィルムの平面中に2本の互いに垂直な方向を引くことによって達成される。管状法では、同時二軸配向は、熱可塑性ポリエステル管を押し出し、後続してクエンチし、再加熱し、次いで内部ガス圧によって膨張させて横軸配向を誘導し、縦軸配向を誘導する速度で引っ込めることによって達成され得る。好ましいフラットフィルム法では、フィルム形成性ポリエステルを、スロットダイに通して押し出し、チルド鋳造ドラム上で急速にクエンチし、ポリエステルを確実に非晶質状態までクエンチする。次いでポリエステルのガラス転移温度より高い温度で少なくとも一方向にてクエンチした押出物を延伸することによって配向を達成する。平らなクエンチした押出物を先ず一方向、通常、縦方向(すなわち、フィルム延伸機に通して前方向)に、次いで横方向に延伸することによって連続配向が達成され得る。押出物の前方延伸は、回転ロールセット上でまたは二組のニップロール間で横延伸して好都合に達成され、次いで幅出し機で達成される。延伸は、一般的に、配向フィルムの寸法が、元の寸法のまたは各延伸方向の2~5、より好ましくは2.5~4.5倍になるように達成される。典型的には、延伸は、ポリエステルのTgより高い温度、好ましくはTgより約15℃高い温度で達成される。一方向のみの配向が必要とされる場合、より高い延伸倍率(例えば、最大約8倍)を用いてもよい。バランスのとれた性質が望まれる場合には好ましいが、機械中で均等にかつ横方向に延伸する必要はない。
【0015】
延伸フィルムは、ポリエステルのガラス転移温度より高温だが、その融点より低温での寸法支持下でヒートセットし、ポリエステルの所望の結晶化を誘発させることによって寸法安定化できる、また、寸法安定化することが好ましい。ヒートセットの間、「トーイン」として知られる手順によって少量の横方向(TD)の寸法緩和を実施してもよい。トーインは、2~4%桁の寸法縮小を要し得るが、低い線張力が必要とされ、フィルム制御および巻きが問題になってくるため、プロセスまたは縦方向(MD)における類似の寸法緩和の実現は困難である。実際のヒートセットの温度および時間は、フィルムの組成およびその所望の最終熱収縮に応じて変動するが、フィルムの引き裂き抵抗などの靭性を実質的に劣化させないように選択すべきである。これらの制約の範囲内で、約180~245℃のヒートセット温度が一般的に望ましい。一実施形態において、ヒートセット温度は、加水分解安定性において有利な改善をもたらす約200~約225℃の範囲内である。ヒートセット後、典型的には、ポリエステルの所望の結晶化度を誘発するために、フィルムを急速にクエンチする。
【0016】
フィルムは、インライン緩和段階によってさらに安定化することができる。あるいは、緩和処置は、オフラインで実行できる。この追加の工程では、フィルムを、ヒートセット段階の温度より低温で加熱して、MDおよびTD張力をかなり低減する。フィルムが受ける張力は低張力であり、フィルム幅1m当たり、典型的には5kg未満、好ましくは3.5kg未満、より好ましくは1~約2.5kgの範囲、典型的には1.5~2kgの範囲である。フィルム速度を制御する緩和プロセスの場合、フィルム速度の低下(したがって、歪みの緩和)は、典型的には0~2.5%、好ましくは0.5~2.0%の範囲である。熱安定化工程の間、フィルムの横寸法は増加しない。熱安定化工程に用いる温度は、最終フィルムの特性の所望の組み合わせに応じて変動し得、高温は、良好な、すなわち、より低い残留収縮特性をもたらす。135~250℃、好ましくは150~230℃、より好ましくは170~200℃の温度が一般的に望ましい。加熱の継続時間は、使用した温度によって決まるが、典型的には10~40秒の範囲であり、20~30秒の継続時間が好ましい。熱安定化プロセスは、平らかつ縦の構成ならびに別々のプロセス工程としての「オフライン」またはフィルム製造方法の延長としての「インライン」のいずれかを含む、さまざまな方法によって実施することができる。こうして加工されたフィルムは、このような後ヒートセット緩和なしで製造したものより小さな熱収縮を示す。
【0017】
本発明のポリエステルフィルムは、好ましくは、フィルムの総質量の約1質量%~約40質量%、好ましくは約1質量%~約20質量%、好ましくは約5質量%~約20質量%、または約10質量%~約20質量%の、有機コーティングによってコーティングされた前記二酸化チタン粒子を含む。
好ましい一実施形態において、ポリエステルフィルムは、第1のポリエステル層(A)および第2のポリエステル層(B)を含む多層フィルムである。第1の層(A)および第2の層(B)の各ポリエステルは、独立に、上記のポリエステルから選択される。好ましくは、前記第2の層(B)のポリエステルは、前記第1の層(A)のポリエステルと同じポリエステルである、または同じポリエステルを含む。本明細書に記載のPV電池中での好ましい使用において、第1のポリエステル層(A)は、好ましくは、PV電池中の最外層である層である。
【0018】
この多層フィルムの実施形態において、好ましくは少なくとも第1のポリエステル層(A)は、有機コーティングによってコーティングされた前記二酸化チタン粒子を含み、好ましくは前記第2のポリエステル層(B)も、有機コーティングによってコーティングされた前記二酸化チタン粒子を含む。ポリエステル層(A)は、好ましくは、層の総質量の約1質量%~約40質量%、好ましくは約1質量%~約20質量%、好ましくは約10質量%~約20質量%の有機コーティングによってコーティングされた前記二酸化チタン粒子を含む。好ましくは、前記第2の層(B)は、有機コーティングによってコーティングされた前記二酸化チタン粒子を、好ましくは層の総質量の約1質量%~約10質量%、好ましくは約1質量%~約5質量%の量で含む。好ましくは、層(A)中の有機コーティングによってコーティングされた前記二酸化チタン粒子の量は、層(B)中の有機コーティングによってコーティングされた二酸化チタン粒子の量より多い。
この多層フィルムの実施形態において、好ましくは、前記第2の層(B)は、前記多層フィルムの製造に由来する再生廃フィルムを含む。
この多層フィルムの実施形態において、好ましくは、層(A)の厚さは、層(B)の厚さより薄く、好ましくは層(A)の厚さは、層(B)の厚さの約10%~約40%、好ましくは約20%~約30%である。
【0019】
本発明のポリエステルフィルムが、単一のポリエステル層(特に単一の二酸化チタン含有層)を含む場合、フィルムは、好ましくは、フィルムの総質量の約1質量%~約40質量%、好ましくは約1質量%~約20質量%、好ましくは約5質量%~約20質量%、好ましくは約10質量%~約20質量%の有機コーティングによってコーティングされた前記二酸化チタン粒子を含む。
本明細書に記載のポリエステルフィルムは、全体のフィルムの厚さが、好ましくは、約12μm~約500μm、好ましくは約12~約350μm、好ましくは約12~約250μm、好ましくは約20~約100μmである。
【0020】
本明細書に記載のポリエステルフィルム中、二酸化チタンは、好ましくは、ルチル形結晶の形態である。
有機コーティングは、好ましくは、前記二酸化チタン粒子上に均一にコーティングされる。有機コーティングは、好ましくは、前記二酸化チタン粒子上に離散的にコーティングされる。したがって、二酸化チタン粒子をコーティングする有機材料は、好適にはフィルム形成性有機材料である。
好ましくは、有機コーティングは、シランを含まない、またはシランに由来しない。
有機コーティングは、ポリシロキサンではなく、好ましくはポリシロキサンを含まない。
第1の好ましい実施形態(本明細書では実施形態Aと呼ぶ)において、有機コーティングは、有機リン化合物である。
好ましくは、二酸化チタン粒子は、アルキルリン酸またはアルキルリン酸エステルでコーティングされ、このアルキルリン酸は、6~22個の炭素原子を含有する。
アルキルリン酸またはそのエステルは、好ましくは、式P(R)(=O)(OR1)(OR2)[式中、Rは、6~22個の炭素原子を含むアルキル基またはシクロアルキル基であり、R1およびR2はそれぞれ、水素、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基である]で表される。
【0021】
1およびR2が両方とも水素のとき、化合物はアルキルリン酸である。R1およびR2のうち少なくとも片方がヒドロカルビル基のとき、式は、アルキルリン酸エステルを表す。
好ましくは、Rは6~14個の炭素原子を含む。
好ましくは、Rは直鎖状アルキル基である。しかし、分枝鎖アルキルリン酸およびそのエステルも好適である。
エステルの場合、R1およびR2は、好ましくは、独立に、最大10個の炭素原子、より好ましくは最大8個の炭素原子を含む(すなわち、エステルは、最大10個、好ましくは最大8個の炭素原子を含むアルコールのエステルである)、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基から選択される。R1およびR2は、好ましくはヒドロカルビル基である。R1およびR2がアリールまたはアラルキルの場合、アリール基は、好ましくはフェニルである。
1およびR2は、異なっていてもよいが、典型的には同一である。好ましくは、R1およびR2は、水素である。
特に好適なエステルとしては、エチルエステル、ブチルエステル、オクチルエステル、シクロヘキシルエステルおよびフェニルエステルが挙げられる。
特に好ましいリン化合物としては、n-オクチルホスホン酸およびそのエステル、n-デシルホスホン酸およびそのエステル、2-エチルヘキシルホスホン酸およびそのエステル、ならびにカンフィルホスホン酸およびそのエステルが挙げられる。
【0022】
実施形態Aによるコーティングされた粒子は、欧州特許第0707051号で教示された方法を用いて調製することができ、この製造方法は、参照により本明細書に組み込まれる。
さらに好ましい実施形態(本明細書では実施形態Bと呼ぶ)において、有機コーティングは、ポリマー有機コーティングである。
ポリマー有機コーティングのポリマー骨格は、好ましくはケイ素原子を含まない。
ポリマー有機コーティングは、好ましくは、炭素、水素および酸素原子を含み、窒素および/またはリンおよび/または硫黄原子をさらに含んでもよいモノマーに由来する。したがって、ポリマー有機コーティングは、好ましくは、ケイ素原子を含まないモノマーに由来することを理解されたい。
ポリマー有機コーティングによってコーティングされた、被覆二酸化チタン粒子は、好ましくは、ポリマー多塩基酸またはその塩を含む分散剤の存在下で、前記二酸化チタン粒子の等電点より高いpH値(好ましくは7超のpH、好ましくは9~11のpH)で水中に二酸化チタン粒子を分散させて、変更された等電点を有する粒子を生成し;分散体のpHを9未満だが、粒子の変更された等電点より高い値に調整し;生成した分散体の存在下で1種または複数のエチレン性不飽和モノマーを重合して、したがって二酸化チタン粒子を重合したモノマーでコーティングすることによって得られる。好ましくは、粒子は、欧州特許第0572128号の開示内容に従って製造され、この開示内容は、本明細書に組み込まれ、特に被覆粒子の製造方法の開示内容が、本明細書に組み込まれる。
【0023】
理論に束縛されるものではないが、被覆二酸化チタン粒子は、分散剤から形成される凝集性内部コーティングと、1種または複数のエチレン性不飽和モノマーから形成される外部コーティングと、を含み、かつ/または分散剤は、エチレン性不飽和モノマーの重合中にポリマーコーティング中に取り入れられると考えられる。
ポリマー多塩基酸は、好ましくは、ポリスルホン酸、ポリホスホン酸およびポリカルボン酸から選択され、好ましくはポリカルボン酸またはその塩から選択される。ポリマー多塩基酸が塩の形態のとき、酸は、部分的にまたは完全に中和されていてもよい。好適な塩は、アルカリ金属塩またはアンモニウム塩である。
【0024】
好適なポリスルホン酸は、好ましくは、リグノスルホネート、石油スルホネートおよびポリ(4-スチレンスルホン酸ナトリウム)を含むポリ(スチレンスルホネート)から選択される。
好適なポリカルボン酸は、好ましくは、ポリマレイン酸、ポリアクリル酸、置換アクリル酸ポリマー、アクリルコポリマー(2-アクリルアミドおよび2-メチルプロパンスルホン酸を含む、アクリル酸とスルホン酸誘導体とのコポリマーを含む)から選択される。アクリル酸または置換アクリル酸と重合可能なその他のコモノマーは、カルボキシル基を含有し得る。
【0025】
好ましくは、分散剤は、約1,000から約10,000の分子量(Mw)を示す。好ましくは、分散剤は、実質的に直鎖状の分子である。分子量の決定は、2本のGPC Ultrastyragelカラム、103および104Å(5μm混合、300mm×19mm、Waters Millipore Corporation(Milford,MA,USA))および移動相THFを備えたヒューレットパッカード製の1050シリーズHPLCシステム上で実施してもよい。分子量は、ポリスチレン標準物質の保持時間と比較することによって計算する。
好ましくは、分散剤の量は、二酸化チタン粒子の、すなわち、分散剤および重合性コーティングモノマーで処理する前のコアの非被覆二酸化チタン粒子の約0.05~約5.0質量%、好ましくは約0.1~約1.0質量%である。
好ましくは、ポリマー有機コーティングは、1種または複数のエチレン性不飽和モノマーに由来するポリマーを含む。言い換えれば、ポリマー有機コーティングは、1種または複数のエチレン性不飽和モノマーの重合によって誘導されるポリマーを含む。
エチレン性不飽和モノマーは、好ましくは、水性溶媒中で重合可能であり、好ましくは、生成したポリマーは、水中で不溶性であり、架橋剤によって架橋されてもよい。
エチレン性不飽和モノマーは、好ましくは、重合性不飽和基を含む脂肪族および芳香族化合物から選択され、ここで、重合性不飽和基は、不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸エステルから選択される。
【0026】
エチレン性不飽和モノマーは、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸またはその無水物、フマル酸およびクロトン酸、ならびに前記酸性モノマーのエステル(アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチルおよびメタクリル酸エチルを含む)から選択される酸性モノマーである。また、エチレン性不飽和モノマーは、スチレン、ビニルトルエン、αメチルスチレン、エチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリロニトリル、およびフッ素化モノマー(フッ素化アルケン、フッ素化エーテル、フッ素化アクリル酸およびメタクリル酸ならびにこれらのエステル、ならびにフッ素化複素環式化合物を含む)から選択してもよい。好ましくは、エチレン性不飽和モノマーは、不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸エステルから選択され、好ましくはアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、酢酸ビニルおよびビニルイソブチルエーテルから選択される。
ポリマー有機コーティングは、好ましくは1種または複数の架橋剤の存在によって架橋されていてもよく、好ましくは、架橋剤は、二官能性および多官能性のエチレン性不飽和モノマーから選択され、好ましくはジメタクリル酸エチレングリコール、ジアクリル酸エチレングリコール、メタクリル酸アリル、アクリル酸アリル、ジアクリル酸1,3-ブタンジオール、ジビニルベンゼンおよびジメタクリル酸1,3-ブタンジオールから選択され、好ましくは前記架橋剤の量は、エチレン性不飽和モノマーの総質量に基づいて、約1質量%~約20質量%、好ましくは約1質量%~約10質量%である。
【0027】
好ましくは、有機コーティングは、実施形態Aの上記の有機コーティングから選択される。
有機コーティングは、好ましくは、二酸化チタンの約0.1~約200質量%、好ましくは約0.1~約100質量%、約0.5~約100質量%、約2.0~約20質量%の量で存在する。好ましくは、二酸化チタン粒子対有機コーティングとの体積比は、体積により1:1から1:25、好ましくは1:2から1:8である。
二酸化チタンは、好ましくは、290℃で1.0%以下、好ましくは0.5%以下の損失を示すような含水量を有する。
有機コーティングされた二酸化チタンは、好ましくは、疎水性である。好ましくは、有機コーティングされた二酸化チタンのコーティングは親水性である。
二酸化チタン粒子は、好ましくは、無機コーティング、特にシリカおよび/またはアルミナコーティング、好ましくはアルミナコーティングも有し、有機コーティングは、無機コーティングを二酸化チタンコアの下に適用した後に適用される。
【0028】
コーティングした二酸化チタン粒子は、好ましくは、その体積分布中央粒径(体積%を粒径に関連付けた累積分布曲線上で読み出した、「D(v、0.5)」値と呼ばれることが多い、全粒子の体積の50%に対応する相当球径)が、好ましくは0.01~5.0μm、より好ましくは0.05~1.0μm、より好ましくは0.05~0.40μm、好ましくは0.10~0.25μm、好ましくは0.15~0.25μmの範囲であるような粒径を示す。好ましくは少なくとも90体積%、より好ましくは少なくとも95体積%の粒子は、体積分布中央粒径±0.8μm、特に±0.5μmの範囲内である。粒子の粒径は、電子顕微鏡、コールター・カウンター、沈降分析および静的または動的光散乱によって測定してもよい。レーザー光回折(フラウンホーファー回折)に基づく技術が好ましい。特に好ましい方法は、Malvern製のMastersizer(例えば、3000)を利用する。中央粒径は、選択した粒径の下の粒子体積のパーセンテージを表し、50パーセンタイル値を測定する累積分布曲線をグラフ化することによって決定することができる。
【0029】
フィルムは、ポリエステルフィルムの製造に従来用いられる他の添加剤をさらに含んでもよい。したがって、架橋剤、染料、顔料、空隙形成剤、潤滑剤、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、熱安定剤、難燃剤および阻害剤、粘着防止剤、界面活性剤、スリップ助剤、光沢改質剤、分離促進剤、粘度調節剤、ならびに分散安定剤などの添加剤を必要に応じて取り込ませてもよい。このような成分は、従来の方法でポリマー中に取り込ませることができる。例えば、フィルム形成ポリマーが由来する単量体反応物質と混合する、またはタンブルもしくは乾式混合によって成分をポリマーと混合してもよく、あるいは押出機中で調合した後、冷却し、通常は顆粒もしくはチップに粉砕する。上記のマスターバッチ技法も用いることができる。
しかし、フィルムは、有機加水分解安定剤を含まないことが好ましい。
また、フィルムは、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサジノンまたはトリアジンなどの有機紫外線吸収剤を含まないことも好ましい。
【0030】
ポリエステルフィルムの固有粘度は、好ましくは少なくとも約0.60、好ましくは少なくとも約0.61、好ましくは少なくとも約0.62、好ましくは少なくとも約0.63、好ましくは少なくとも約0.64、好ましくは少なくとも約0.65、典型的には約0.60~約0.70の範囲である。比較的高い固有粘度を有するポリエステルフィルムの使用は、改善された加水分解安定性をもたらす。
フィルムの耐加水分解性は、フィルムの引張強度(脆性)を測定することによって、特に下記のようにフィルムの破断伸び(ETB)を測定することによって評価する。老化していないフィルムが典型的に示すETB値は、100%以上である。一般的に、フィルムは、ETBが10%未満まで低下するときまでの最終使用においてもなお有用である。本発明の好ましいフィルムは、ETBが、121℃および相対湿度100%で少なくとも80時間、好ましくは少なくとも84時間、好ましくは少なくとも90時間の促進老化後、少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%になるような、耐加水分解性を示す。
【0031】
一実施形態において、ポリエステルフィルムのポリエステルは、(A)℃の温度の吸熱高温ピークおよび(B)℃の温度の吸熱低温ピークを示し、両ピークは、示差走査熱量測定(DSC)によって測定され、(A-B)の値は、15℃~50℃の範囲、好ましくは15℃~45℃の範囲、より好ましくは15℃~40℃の範囲、一実施形態では20℃~40℃の範囲であり、この特性は、上記の好ましい温度を使用してヒートセット温度を制御することによって本明細書で開示するように実現することができる。本明細書で開示する範囲内の(A-B)値を示す利点は、加水分解安定性において有利な改善が得られることである。
【0032】
本発明のポリエステルフィルムは、好ましくは、150℃で30分にわたって、特にフィルムの縦(長手方向の次元)に低い収縮率、好ましくは3%未満、好ましくは2%未満、好ましくは1.5%未満、好ましくは1.0%未満を示す。好ましくは、このような低い収縮率の値は、フィルムの両方の次元(縦および横の次元)で示される。
【0033】
好ましい実施形態において、フィルムは不透明であり、このようなフィルムは、特にPV電池中の背面に使用される。不透明なフィルムは、好ましくは、少なくとも0.4、好ましくは少なくとも0.5、好ましくは少なくとも0.6、好ましくは少なくとも0.7、好ましくは少なくとも1.0、好ましくは少なくとも1.5、一実施形態では好ましくは少なくとも2.0、好ましくは少なくとも3.0、好ましくは少なくとも4.0の透過光学濃度(TOD)を示す。不透明度は、典型的には、当該技術分野において従来から続けられているように、1種または複数の好適な乳白剤および/または白色剤によって与えられる。上記のコーティングされた二酸化チタン粒子は、乳白剤および/または白色剤として機能し得る、好ましくは機能する。しかし、任意選択で、フィルムは、1種または複数の追加の乳白剤および/または白色剤をさらに含んでもよい。不透明なフィルムは、必要に応じて着色してもよい。例えば、本発明のフィルムは、白色、灰色または黒色であってもよい。
【0034】
好ましい実施形態において、フィルムは、白色であり、有効な量の白色剤をその中に取り込むことによって達成され得る。上記のコーティングされた二酸化チタン粒子は、白色剤として機能し得る、好ましくは機能する。しかし、任意選択で、フィルムは、1種または複数の追加の白色剤をさらに含んでもよい。追加の好適な白色剤としては、例えば、アルミナ、タルクおよびシリカ(特に沈降または珪藻シリカおよびシリカゲル)などの金属または半金属酸化物、焼成チャイナクレーならびにカルシウムおよびバリウムの炭酸塩および硫酸塩などのアルカリ金属塩から選択される微粒子無機フィラーが挙げられる。その他の好適な追加の白色剤としては、不相溶の樹脂フィラーが挙げられる。このようなフィラーの混合物を使用してもよい。好ましい追加の白色剤は、微粒子無機フィラー、好ましくは硫酸バリウムである。フィルム(またはその層)に取り入れた白色剤の総量は、フィルム(またはその層)中のポリエステルの質量に基づいて、好ましくは約1質量%~約40質量%、典型的には約5質量%~約30質量%、より典型的には約8質量%~約25質量%の範囲である。白色のフィルムは、好ましくは、本明細書に記載の通りに測定した場合、約80~約120単位の範囲の白色度を示す。白色のフィルムは、典型的には、0.4~1.75の範囲、好ましくは少なくとも0.5、好ましくは少なくとも0.6、好ましくは少なくとも0.7のTODを示す。
【0035】
代替の実施形態において、フィルムは、典型的には少なくとも2.0、より典型的には少なくとも3.0、より典型的には少なくとも4.0のTODを示す灰色または黒色であり、これは、当該技術分野において従来から続けられているように、有効な量のカーボンブラックなどの乳白剤またはアルミニウム粉末などの金属フィラーをその中に取り入れることによって実現できる。カーボンブラックは、好ましい乳白剤である。典型的には、このようなフィルムは、ポリエステルの質量に基づいて、約0.3質量%~約10質量%、好ましくは0.5質量%~7質量%、特に1質量%~5質量%、とりわけ2質量%~4質量%の範囲の乳白剤を含む。乳白剤は、多層フィルムの複数の層の中もしくは各層の中、またはその1つの層のみの中に存在してもよい。乳白剤は、適宜、0.01~1.5μm、特に0.02~0.05μmの範囲の粒径(上記の通りに規定および測定)を有する。
【0036】
本発明のポリエステルフィルムは、高レベルのフィルム均一性および品質ならびに優れた耐加水分解性を示す。特に、本発明のフィルムは、低レベルのプロフィール欠陥および/またはダイライン、均一な厚さおよび光の透過性、ならびに優れた処理可能性を有し、フィルムウェブの欠陥または破損がない。
【0037】
本発明のフィルムは、光起電力(PV)電池における使用に特に適している。上述したように、光起電力電池は、典型的には、前面(フロントシート)、前側カプセル材料、電極層および光起電活性層(光活性材料は、通常、電極支持基板上で支持されている)、後側カプセル材料、ならびに背面(バックシート)を含む多層アセンブリである。典型的なPV電池は、電荷の収集および管理のためにさまざまな部品をさらに含む。ポリエステルフィルムは、PV電池中の種々の層、例えば前面、背面および電極支持層の製造において提案されてきた。多くの場合に多数の光起電力電池からなる光起電力モジュールは、通常、使用する活性光起電材料に応じて分類される。これらは、結晶シリコン、ヒ化ガリウム(GaAs)、非晶質シリコン(a-Si)、テルル化カドミウム(CdTe)、(ジ)セレン化銅インジウムガリウム(CIGS)、色素増感または有機電池を含む。ヒ化ガリウム、非晶質シリコン、テルル化カドミウム、(ジ)セレン化銅インジウムガリウム、色素増感または導体有機材料を含む光起電力電池は、多くの場合、可撓性であっても可撓性でなくてもよい薄膜光起電力電池(TFPV電池)と呼ばれる。色素増感PV電池は、活性光吸収層が、入射光を吸収することによって励起する色素を含むもので、特に対象とされる。その他の薄膜シリコンPV電池は、プロト結晶、ナノ結晶(nc-Siまたはnc-Si:H)およびブラックシリコンPV電池を含む。薄膜光起電力電池は、さまざまな蒸着法およびさまざまな基板を使用して、1つまたは複数の光起電材料の薄層を基板上に蒸着させることによって作製され、薄層の厚さの範囲は、1または2ナノメートルから数十マイクロメートルまで変動する。カプセル材料は、光活性層および電極層を保護するバリア材料であり、ガスおよび溶媒の浸透に対して高抵抗を与える。封入バリア材料は、典型的には、自立フィルムまたはシートの形態で利用され、当該技術分野において従来から続けられているように、典型的には真空下で積層技術を用いて、光活性層および電極層を含む複合材料に適用される。次いでカプセル化複合材料を前面と背面との間に挟み入れる。PV電池中で使用されるカプセル材料は、エチレン酢酸ビニル(EVA)共重合体樹脂を含み、典型的には、酢酸ビニル成分は、約10~約35質量%、好ましくは約15~約35質量%、好ましくは約20~約35質量%、好ましくは約25~約35質量%、好ましくは約28~約33質量%の範囲である。好適なEVA封入材料には、市販のElvax(登録商標)樹脂(DuPont、グレードPV1410からPV1650Zを含む)が挙げられる。その他のカプセル材料としては、イオノマー系材料、すなわち、主に非極性反復単位で構成され、少量(典型的には約15質量%以下)の塩含有単位を有するポリマーが挙げられる。典型的なイオノマーとしては、熱可塑性カルボキシレートイオノマーが挙げられ、非極性コモノマーは、エチレンおよびスチレン(好ましくはエチレン)から選択され、少量の塩含有単位、例えばメタクリル酸および/またはアクリル酸の金属塩(例えば、アルカリ金属または亜鉛塩)を含有する。例示的なイオノマーカプセル材料は、エチレンとアルカリ金属または亜鉛で部分的または完全に中和されたメタクリル酸および/またはアクリル酸とのコポリマー、例えばSurlyn(登録商標)(DuPont;例えばグレード1702)である。その他のカプセル材料としては、DuPontからも市販されているポリビニルブチラール樹脂(例えば、PV5200シリーズ)およびシリコーン樹脂(例えば、光学的に透明なシリコーンカプセル材のDow CorningのPV-6100シリーズ)が挙げられる。その他のカプセル材料としては、エチレンのホモポリマーおよびコポリマー、例えばメタクリル酸および/またはアクリル酸などのアクリレートおよび/またはメタクリレートとのコポリマーなどのポリオレフィンが挙げられる。
【0038】
本発明のフィルムは、PV電池の背面としてまたは背面に存在する層(特に最外層)として特に好適である。PV電池の背面は、良好な耐加水分解性を示すべきである。背面は、好ましくは、良好な熱寸法安定性を示すべきである。不良な寸法安定性は、特に装置の製造中に経る高温(また、通常は低圧でもある)中に、隣接するカプセル材料の亀裂をもたらし得る。背面は、好ましくは、良好な紫外線安定性も示すべきである。紫外線安定性の欠如は、日光への曝露時におけるフィルムの黄変、かすみおよび亀裂と、それによるPV電池の有効耐用寿命の短縮において顕在化する。
本発明のフィルムは、例えば高温の高湿度条件下および屋外用途において長期間、加水分解安定性が重要である任意の環境における使用にも適している。本明細書で使用する場合、用語「高温の高湿度条件下において長期間」は、フィルムが、使用中に、例えばPV電池として経験する、好ましくは本明細書に記載のプレッシャークッカー試験を用いた促進老化試験によって測定した場合の環境条件を指す(少なくとも80時間、好ましくは少なくとも84時間、好ましくは少なくとも90時間にわたる121℃および相対湿度100%)。
本発明のフィルムは、エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレー装置(特に有機発光ディスプレー(OLED)装置)、電気泳動ディスプレー(電子新聞)、半導体装置(有機電界効果トランジスタ、薄膜トランジスタおよび一般の集積回路など)などの電子機器または光電子デバイスの製造においてさらに使用され得る。
【0039】
PV電池およびその他の電子機器の中の層として本明細書で開示するポリエステルフィルムは、リール・ツー・リール法の該機器の製造を可能にし、それによって費用が抑えられる。
本発明のさらなる態様によれば、配向ポリエステルフィルムの耐加水分解性を高めるために、本明細書に記載の通り、有機コーティングによってコーティングされた二酸化チタン粒子の使用であって、前記有機コーティングは、シランを含まない、またはシランに由来しない、使用が提供される。
【0040】
本発明のさらなる態様によれば、
(i)溶融ポリエステルの層を押し出す工程と、
(ii)押出物をクエンチする工程と、
(iii)クエンチした押出物を一方向または互いに垂直の二方向に延伸する工程と、
(iv)フィルムをヒートセットする工程と
を含む、配向ポリエステルフィルムの製造方法であって、
ポリエステルがフィルム内に形成される前に、本明細書に記載の有機コーティングによってコーティングされた二酸化チタン粒子を、二酸化チタン粒子が前記有機コーティングによってコーティングされていないポリエステルフィルムと比較してポリエステルフィルムの耐加水分解性を高めるのに有効な量で、ポリエステル中に取り入れ、前記有機コーティングが、シランを含まない、またはシランに由来しないことを特徴とする、方法が提供される。
好ましくは、耐加水分解性の向上は、121℃および相対湿度100%で少なくとも80時間、好ましくは少なくとも84時間、好ましくは少なくとも90時間、促進老化させた後、配向ポリエステルフィルムのETBが、少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%になる程度である。
【0041】
本発明のさらなる態様によれば、光起電力電池中の層としての本明細書に記載の配向ポリエステルフィルムの使用であって、前記光起電力電池が、好ましくは、前面、電極層、光起電活性層、および背面を含み、特に前記背面が、前記配向ポリエステルフィルムを含む、使用が提供される。したがって、本発明のさらなる態様によれば、PV電池中の背面としての、またはその中に存在する層としての本明細書に規定のフィルムの使用が提供される。
本発明のさらなる態様によれば、前面、電極層、光起電活性層、および背面を含む光起電力電池であって、前面および/または背面が、本明細書に規定の配向ポリエステルフィルムを含み、特に背面が、本明細書に規定の配向ポリエステルフィルムである、またはそれを含む、光起電力電池が提供される。前記光起電力電池において、電極層および光起電活性層は、適宜、カプセル材でコーティングされる。
【0042】
本明細書に記載の配向ポリエステルは、好ましくは、該光起電力電池中の最外層である。好ましくは、該光起電力電池中の配向ポリエステルフィルムは、不透明または白色のフィルムである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】例1~3の各フィルムの促進老化の前後に破断伸びを測定することによって耐加水分解性を評価した結果を示す図である。
図2】例4~7の各フィルムの促進老化の前後に破断伸びを測定することによって試験した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
特性測定
以下の分析を用いて、本明細書に記載のフィルムを特徴づける:
(i)Macbeth濃度計TR927(Dent and Woods Ltd.(Basingstoke,UK)製)を伝送モードで使用して、伝送光学濃度(TOD)を測定する。
(ii)白色度は、Colorgard System 2000、Model/45(Pacific Scientific製)およびASTM D 313の原理を用いて測定する。
【0045】
(iii)Viscotek(商標)Y-501C相対粘度計上でのASTM D5225-98(2003)による溶液粘度測定法によって(例えば、Hitchcock, Hammons & Yau in American Laboratory (August 1994)「The dual-capillary method for modern-day viscometry」を参照)、25℃でポリエステルのo-クロロフェノール溶液0.5質量%を使用して、固有粘度を計算するためのBillmeyer一点法を用いて、ポリエステルおよびポリエステルフィルムの固有粘度(dL/gの単位)を測定する。
η=0.25ηred+0.75(lnηrel)/c
[式中、
η=固有粘度(dL/g)
ηrel=相対粘度
c=濃度(g/dL)
ηred=還元粘度(dL/g)であって、(ηrel-1)/cと等しい(ηsp/c(式中、ηspは比粘度である)としても表される)]。
(iv)耐加水分解性は、フィルムを121℃および相対湿度100%における処理に最長100時間の間供することによって評価することができる(「プレッシャークッカー試験(PHT)」)。固定された継続時間の間、前述の温度および湿度に設定したSMEG AVS 23Lプレッシャークッカー中に試料を入れる。分析前に、試料を24時間、部屋の温度および湿度で乾燥させる。次いでポリマーの老化に関連する特性を、種々の時間間隔で測定してもよい。特に、破断伸び(ETB)を下記のように測定する。
(v)破断伸びは、試験方法ASTM D882に従って測定する。直定規および目盛り付きサンプルカッター(10mm+/-0.5mm)を使用して、フィルムの5つの細片(長さ100mm)を縦方向に沿って切断する。ゴム製顎面を備えた空気圧式アクショングリップを用いたInstron model3111材料試験機を使用して、各試料を試験する。温度(23℃)および相対湿度(50%)は制御される。クロスヘッド速度(分離速度)は、25mm・min-1である。歪み率は50%である。これは、分離速度をグリップ間の初期距離(試料の長さ)で割ることによって計算する。装置は、各試料の破断伸びを記録する。破断伸び(εB(%))は、以下の通りに定義される。
εB(%)=(破断時の伸展/L0)×100
[式中、L0は、グリップ間の試料の元の長さである]。
(vi)ポリエステルフィルムの耐候性を、ISO4892-2に従って試験する。
(vii)フィルムの縦および横方向に対して特定の方向に切り、目測のために印を付けた、寸法が200mm×10mmのフィルム試料の熱収縮を評価する。試料のより長い寸法(すなわち、200mmの寸法)は、収縮を試験するフィルムの方向に対応する。すなわち、縦方向における収縮の評価では、試験試料の200mmの寸法が、フィルムの縦方向に沿って配向される。試験片を所定の温度の150℃に加熱し(その温度に加熱したオーブン中に入れることによって)、30分の間隔の間、保持した後、室温まで冷却し、その寸法を手動で再測定した。熱収縮を計算し、元の長さのパーセンテージで表した。
(viii)示差走査熱量(DSC)のスキャンをPerkin Elmer DSC7機器を使用して得る。5mgに秤量したポリエステルフィルム試料を、標準Perkin ElmerアルミニウムDSCるつぼ中に封入した。フィルムおよびるつぼを平らにプレスして、フィルムが部分的に拘束されるようにし、加熱中の配向の緩和の影響を最小限に抑えた。試験片を機器のサンプルホルダーに置き、毎分80℃で30~300℃に加熱し、関連するトレースを記録した。乾燥した不活性パージガス(窒素)を使用した。DSC機器の温度および熱流軸を、実験条件、すなわち加熱速度およびガス流量のために完全に較正した。ピーク温度、すなわち吸熱高温ピーク(A)および吸熱低温ピーク(B)の値を、各吸熱溶融プロセスの開始から各吸熱溶融プロセスの終わりまでを引いた基線の上の最大移動量として読み出した。ピーク温度の測定値は、Perkin Elmerソフトウェア中の標準分析法を用いて得た。測定値の精度および正確度は±2℃であった。
(ix)Karl Fischer滴定、好ましくは電量Karl Fischer滴定によって、二酸化チタンの含水量を測定する。典型的には、滴定セルの蒸留のオーブン中で試料を加熱し、放出された水を、乾燥キャリヤーガス流によって滴定セルへ移し、ここでKarl Fischer滴定によって決定される。好適には、Metrohm768 KFオーブンに接続したMetrohm768 KF電量計を使用して、電量Karl Fischer滴定を実施する。
本発明を、以下の実施例を参照することによってさらに説明する。実施例は、上記の本発明の範囲を限定することを意図しない。
【実施例
【0046】
(例1)
アルミナ層および上記の有機コーティング(Tioxide(登録商標)TR28;平均粒径0.21μm)によってコーティングされた二酸化チタンをポリエチレンテレフタレート(PET;0.61のIV)中に取り入れることによってマスターバッチを作製した。マスターバッチのTiO2含有量は、組成物の総質量に基づいて40質量%であった。
【0047】
層(A)がTiO2マスターバッチおよびポリエチレンテレフタレートに由来し、層(A)の総質量に対して約14質量%の濃度のTiO2をもたらす、二層の共押出フィルムを製造した。従来のフィルム製造ライン上で二軸押出機のホッパー(真空により湿気が除去される)中で、マスターバッチをPETと合わせた。層(B)はポリエチレンテレフタレートおよび40%の再生物であった。
【0048】
二層のフィルムを押し出し、標準溶融共押出システムを用いて注型成形した。共押出システムは、ポリマー溶融物の別個の供給品を、標準共押出ブロックまたはこれらの流れが合わさる接合部に供給した、2つの独立に動作する押出機を使用して組み立てられた。共押出ブロックから溶融流を従来の平らなフィルム押出ダイに移し、溶融カーテンを一般の共押出ダイから285℃で注型成形させ、次いで回転チルドドラム缶の温度でクエンチした。キャストフィルムを約17.8m/minのプロセス速度で集め、これは約2135mmの幅だった。86.5℃の温度で、キャスト押出物を押し出し方向に、元の寸法の約3倍に引き伸ばした。次いで冷却した延伸フィルムを102℃の温度のテンターオーブンに通し、フィルムを乾燥させ、元の寸法の約3.97倍に横方向で延伸した。横延伸温度は125℃であった。二軸延伸フィルムを、215~220℃の範囲の温度でヒートセットした。
結果として得られた白色のフィルムの最終的な厚さは50μmであり、層(A)は約10μmであり、層(B)は約40μmであった。
【0049】
(例2)(比較例)
例2は、二酸化チタンが、例外として、本明細書に記載の有機コーティングを含まないアルミナ被覆ルチル形TiO2(Tayca Corporation製のTitanix(登録商標)JR301;平均粒径0.30μm)である以外は、例1に対応していた。
【0050】
(例3)(比較例)
本明細書に記載の有機コーティングを含まない、さらなるグレードのアルミナ被覆TiO2を使用して例1を繰り返した。
次いで、本明細書に規定したように、促進老化の前後に破断伸びを測定することによって各フィルムの耐加水分解性を評価し、その結果を図1に示す(図中、x軸は時間(時間)であり、y軸はETB(%)である)。例1のフィルムは、二酸化チタンが本明細書に記載の有機コーティングによってコーティングされていない同様のフィルムと比較して、驚くほど優れた耐加水分解性を示した。
【0051】
(例4、5、6および7)
以下の通りに、種々のグレードの被覆TiO2を有する、およびTiO2を含まない、一連の50μm単層PETフィルムを作製した。
例4: TiO2なし(対照)
例5: Tioxide(登録商標)TR28(本発明)
例6: Ti-Pure(登録商標)R104(DuPont;シラン化アルミナ被覆ルチル形TiO2;比較例)
例7:Ti-Pure(登録商標)R960(DuPont;有機コーティングを含まないアルミナおよびシリカ被覆ルチル形TiO2;比較例)
PET中60%のTiO2で各TiO2グレードを含むマスターバッチを作製した。従来のフィルム製造ライン上で二軸押出機のホッパー(真空により湿気が除去される)中で、マスターバッチをPET系ポリマーと合わせて、最終フィルム中に約10.5質量%のTiO2をもたらすことによって、例5、6および7のフィルムを作製した。
【0052】
10%のマスターバッチを介してSiO2を添加して、最終フィルム中に2.3質量%のSiO2を生成した。液体加水分解安定剤(Cardura(登録商標)E10P;バーサチック酸のグリシジルエステル;Hexion Speciality Chemicals)を、ポリマーおよびその無機添加剤1kg当たり約8mlで押出機中に計測した。加水分解安定剤含有フィルムへのTiO2の添加は、フィルムの加水分解安定性を低下させることが予測される。
次いで、本明細書に規定するように、促進老化の前後に破断伸びを測定することによってフィルムを試験し、その結果を図2に示す(図中、x軸は時間(時間)であり、y軸はETB(%)である)。例5のフィルムは、二酸化チタンが本明細書に規定の有機コーティングによってコーティングされていなかった例6および7のフィルムと比較して、驚くほど優れた耐加水分解性を示した。
図1
図2