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特許7202376クロモリンナトリウムおよびイブプロフェンの粉末製剤
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-27
(45)【発行日】2023-01-11
(54)【発明の名称】クロモリンナトリウムおよびイブプロフェンの粉末製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/352 20060101AFI20221228BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20221228BHJP
   A61K 31/192 20060101ALI20221228BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20221228BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20221228BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20221228BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20221228BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20221228BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20221228BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20221228BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221228BHJP
【FI】
A61K31/352
A61K9/14
A61K31/192
A61K47/12
A61K47/26
A61P9/10
A61P11/06
A61P25/00
A61P25/16
A61P25/28
A61P43/00 121
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020524710
(86)(22)【出願日】2017-12-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-09-24
(86)【国際出願番号】 US2017065727
(87)【国際公開番号】W WO2019017995
(87)【国際公開日】2019-01-24
【審査請求日】2020-12-11
(31)【優先権主張番号】62/534,848
(32)【優先日】2017-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520020188
【氏名又は名称】エーゼットセラピーズ, インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】592017633
【氏名又は名称】ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】エルマレ デイビッド アール.
(72)【発明者】
【氏名】ゴンザレス ファン ビー.
【審査官】新留 素子
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-535249(JP,A)
【文献】国際公開第2017/087962(WO,A1)
【文献】特表2004-503581(JP,A)
【文献】国際公開第2016/196401(WO,A1)
【文献】特表2006-522634(JP,A)
【文献】EXPERT OPINION ON EMERGING DRUGS,2016年,Vol.21, No.4,pp.377-391
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロモリンナトリウムおよびイブプロフェンを含む粉末状組成物であって、前記クロモリンナトリウムが粒子の形態であり、前記イブプロフェンが粒子の形態であり、前記クロモリンナトリウムおよびイブプロフェンが1:1~2の重量比で存在し、
前記クロモリンナトリウム粒子の粒径分布D 90 が、5μm以下であり、
前記イブプロフェン粒子の粒径分布D 10 は22.401~22.586μm、D 50 は57.611~57.693μm、D 90 は108.724~108.743μmである、粉末状組成物。
【請求項2】
前記粉末状組成物が、送達された量の36重量%から56重量%のクロモリンナトリウムを、80L/秒の流量で3秒間、次世代医薬品インパクタ(NGI)カスケードインパクタ装置のマイクロオリフィスコレクタ(MOC)を通じてステージ3に、沈着させる装置を用いて、送達させることができる、請求項1に記載の粉末状組成物。
【請求項3】
前記装置が、ドライパウダー吸入器(DPI)である、請求項2に記載の粉末状組成物。
【請求項4】
1つ以上の薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、請求項1~のいずれか1項に記載の粉末状組成物。
【請求項5】
前記賦形剤が、乳糖一水和物またはステアリン酸マグネシウムである、請求項に記載の粉末状組成物。
【請求項6】
前記賦形剤がステアリン酸マグネシウムであり、前記粉末状組成物におけるステアリン酸マグネシウムの量が、2%(w/w)である、請求項に記載の粉末状組成物。
【請求項7】
前記粉末状組成物が、17mgから24mgのクロモリンナトリウムを含む、請求項1~のいずれか1項に記載の粉末状組成物。
【請求項8】
前記粉末状組成物が、17.1mgのクロモリンナトリウムを含む、請求項1~のいずれか1項に記載の粉末状組成物。
【請求項9】
前記粉末状組成物が、10mgから14mgのイブプロフェンを含む、請求項1~のいずれか1項に記載の粉末状組成物。
【請求項10】
アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、脳卒中、喘息から選択される病気または状態を治療するための、請求項1~のいずれか1項に記載の粉末状組成物。
【請求項11】
前記病気または状態が、アルツハイマー病である、請求項10に記載の粉末状組成物。
【請求項12】
前記病気または状態が、筋萎縮性側索硬化症である、請求項10に記載の粉末状組成物。
【請求項13】
前記病気または状態が、パーキンソン病である、請求項10に記載の粉末状組成物。
【請求項14】
前記病気または状態が、脳卒中である、請求項10に記載の粉末状組成物。
【請求項15】
前記病気または状態が、喘息である、請求項10に記載の粉末状組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
アルツハイマー病(AD)の進行を防ぐ治療における解消されていない医療ニーズは、高いままである。米国食品医薬品局(FDA)は、ドネペジル、リバスチグミンおよびガランタミンなどのアセチルコリンエステラーゼ(AChE)阻害薬の、軽度から中程度のAD患者の症状緩和への適応を承認した(Cummings JL、「Alzheimer’s disease」、N Engl J Med(2004)351、56-67;Knowles J、「Donepezil in Alzheimer’s disease an evidence-based review of its impact on clinical and economic outcomes」、Core Evidence(2006)1、195-219)。これらの薬剤は、シナプス伝達中に利用できるアセチルコリンの量を増やし、よってコリン作動性神経の機能低下を補う。しかし、AD用に承認された薬剤はいずれも、疾患の根本的な病態生理に作用する疾患修飾治療薬ではないので、その効果の持続期間は短期間である(Knowles、2006)。対照的に、疾患修飾治療薬の開発の成功は、AD進行の過程において、長期的に有益な結果をもたらすだろう。
【0002】
ADの治療には、複数の発症トリガーに対処する必要がある。AD患者の脳には2つの主要な神経病態、すなわち、i)主にAβペプチドで構成され、アミロイド斑としても知られる、細胞外タンパク質斑、およびii)神経細胞内部に見られるタウタンパク質で構成され、タウ濃縮体としても知られる、細胞内の原線維濃縮体がある。Aβの神経毒性オリゴマー凝集体の出現および拡散は、神経細胞の損傷につながる重要なトリガーであると広く考えられており、それは次に、細胞内のタウ濃縮体の蓄積へとつながり、最終的にADの病因である神経細胞の死へとつながる。
【0003】
ベータアミロイドペプチド(37~43アミノ酸長)が、天然のアミロイド前駆体タンパク質(APP)の連続的な切断により形成される(Karran et al、「The amyloid cascade hypothesis for Alzheimer’s disease appraisal for the development of therapeutics」、Nature Reviews(2011)10、698-712)。40または42アミノ酸長の、異常型Aβペプチドアイソフォーム(Aβ40および42)が、オリゴマー凝集体内へミスフォールディングされ、このオリゴマー凝集体が、脳内でアミロイド斑として蓄積する原線維へと成長する。ADの病因にとってさらに重要なことに、Aβオリゴマーの別の運命は、神経細胞のシナプスに捕捉され、そこでシナプス伝達を妨げることであり、それは、最終的に神経細胞の変性および死をもたらす(Haass et al、「Soluble protein oligomers in neurodegeneration:lessons from the Alzheimer’s amyloid β-peptide」、Nature Reviews Mol Cell Biol(2007)8:101-112;Hashimoto et al、「Apolipoprotein E、especially apolipoprotein E4、increases the oligomerization of amyloid beta Peptide」、J.Neurosci(2012)32、15181-15192)。
【0004】
Aβオリゴマーを介した神経中毒のカスケードは、別のADトリガー、すなわち脳内の慢性局所炎症性反応によって悪化する(Krstic et al、「Deciphering the mechanism underlying late-onset Alzheimer disease」、Nature Reviews Neurology(2013)、Jan、9(1):25-34)。アルツハイマー病は、アミロイド斑と関わるミクログリア細胞が大量に存在することを特徴とする、慢性神経炎症性要素を有する(Heneka et al、「Acute treatment with the PPARγ agonist pioglitazone and ibuprofen reduces glial inflammation and Abeta1-42 levels in APPV717I transgenic mice」、Brain(2005)128、1442-1453;Imbimbo et al、「Are NSAIDs useful to treat Alzheimer’s disease or mild cognitive impairment、「FrontAging Neurosci(2010)2(article 19)、1-14)。アミロイドオリゴマーを貪食する、これらのシクロオキシゲナーゼ(COX1/COX2)発現ミクログリアは、活性化して炎症誘発性サイトカインを分泌する。(Hoozemans et al、「Soothing the inflamed brain effect of non-steroidal anti-inflammatory drugs on Alzheimer’s disease pathology」、CNS & Neurological Disorders-Drug Targets(2011)10、57-67;Griffin TS、「What causes Alzheimer’s?」 The Scientist(2011)25、36-40;Krstic 2013)。この神経炎症性反応はさらに、血液脳関門(BBB)を通じた局所血管漏出を促進する。Zlokovicは、(Zlokovic B、「Neurovascular pathways to neurodegeneration in Alzheimer’s disease and other disorders」、Nature Reviews Neurosci.(2011)12、723-738)、ガンマセクレターゼ活性の変調により、異常型Aβペプチド40および42のさらなる産生が促進されることと(Yan et al、「Antiinflammatory drug therapy alters β-amyloid processing and deposition in an animal model of Alzheimer’s disease」、J.Neurosci.(2003)23、7504-7509;Karran 2011)、成人の脳の海馬神経新生に害を与えること(Gaparini et al、「Non-steroidal anti-inflammatory drugs(NSAIDs)in Alzheimer’s disease:old and new mechanisms of action」、J.Neurochem(2004)91、521-536)とを関連付けた。したがって、神経炎症は、アミロイドオリゴマーを介した神経中毒と組み合わされ、AD患者の脳全体に広がる進行性神経機能障害および神経細胞の死をもたらすサイクルを作り出す。
【0005】
複数の疫学研究からの説得力のある証拠により、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)の長期間投与によって、疾患発症が遅延する、症状の重症度が下がる、認知力の低下が減速するなど、高齢者のADリスクが劇的に低下することが明らかになった(Veld et al、「Nonsteroidal anti-inflammatory drugs and the risk of Alzheimer’s disease」、N.Engl.J.Med(2001)345、1515-1521;Etminan et al、「Effect of non-steroidal anti-inflammatory drugs on risk of Alzheimer’s disease:systematic review and meta-analysis of observational studies」、Brit.Med.Journal(2003)327、1-5;Imbimbo、2010)。NSAIDがAD進行の原因となるプロセスをどのように阻害するかについて、3つの機構、すなわち、i)COX活性を阻害して、脳内のミクログリアの活性化およびサイトカインの産生を低減または防止すること(Mackenzie、et al、「Nonsteroidal antiinflammatory drug use and Alzheimer-type pathology in aging」、Neurology(1998)50、986-990;Alafuzoff et al、「Lower counts of astroglia and activated microglia in patients with Alzheimer’s disease with regular use of non-steroidal anti-inflammatory drugs」、J.Alz.Dis(2000)2、37-46;Yan、2003;Gasparini、2004;Imbimbo、2010)、ii)アミロイド沈着を低減すること(Weggen et al、「A subset of NSAIDs lower amyloidogenic Abeta42 independently of cyclooxygenase activity」、Nature(2001)414、212-216;Yan、2003;Imbimbo、2010)、またはiii)シナプスでのCOX介在プロスタグランジンE2反応を阻害すること(Kotilinek et al、「Cyclooxygenase-2 inhibition improves amyloids-mediated suppression of memory and synaptic plasticity」、Brain(2008)131、651-664)が提案されている。
【0006】
したがって、NSAIDは神経炎症性反応を抑制し、いくつかの機構によってADの進行に影響を与えることが予測される。Aβオリゴマー化を阻害する薬剤と一緒に投与する場合、神経変性および神経細胞死につながる複数のトリガーを減衰させるために、併用療法の枠組みが提案される。ADの進行を非常に早い段階で抑制すれば、海馬の神経可塑性および神経発生により(Kohman et al、「Neurogenesis inflammation and behavior」Brain、Behavior and Immunity(2013)27、22-32)、認知機能の低下は、逆行させることができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、クロモリンナトリウムおよびイブプロフェンを含む組成物であって、クロモリンナトリウムが微粒子化され、クロモリンナトリウムおよびイブプロフェンが1:1~2の重量比で存在する組成物を含む。一実施形態では、イブプロフェンは、ふるい、例えば300μmのふるいに通される。
【0008】
本発明は、クロモリンナトリウムおよびイブプロフェンの組成物の製造方法であって、クロモリンナトリウムを微粒子化することと、クロモリンナトリウムおよびイブプロフェンを別々にふるいにかけることと、ふるいにかけたクロモリンナトリウムおよびイブプロフェンを混合することと、混合したクロモリンナトリウムおよびイブプロフェンを混合共粉砕することとを含む方法をさらに含む。一実施形態では、ふるいは、約250μm~500μmのふるいである。別の実施形態では、微粒子化工程は、約45psiの供給ガス圧力および約45psiの粉砕圧力で実施される。
【0009】
本発明とみなされる対象物は、本明細書の結論部分で特に指摘され、明確に請求されている。しかし、動作の機構および方法の両方に関して、本発明は、添付の図面と一緒に読む場合に、以下の詳細な説明を参照することで、その目的、特性、および利点と共に、最も理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】クロモリンナトリウムおよびイブプロフェンを含むサンプルのHPLCクロマトグラムを示し、クロモリンナトリウムは3.99にピークを有し、イブプロフェンは10.83にピークを有する。
図2】クロモリンナトリウムとイブプロフェンを含むサンプルのHPLCクロマトグラムを示し、クロモリンナトリウムは2.42にピークを有し、イブプロフェンは3.98にピークを有する。
図3】クロモリンナトリウムの0.05~50μg/mLの範囲にわたる較正プロットを示す。
図4】イブプロフェンの0.05~50μg/mLの範囲にわたる較正プロットを示す。
図5】粗イブプロフェンの粒径分布プロットを示す。
図6】粗イブプロフェンの粉末x線回折パターンを示す。
図7】粗イブプロフェンのGVSプロットを示す。
図8A】10μmスケールでのシングルパス後のバッチ1のSEM画像を示す。
図8B】10μmスケールでのダブルパス後のバッチ2のSEM画像を示す。
図9A】2μmスケールでのシングルパス後のバッチ1のSEM画像を示す。
図8B】2μmスケールでのダブルパス後のバッチ2のSEM画像を示す。
図10A】バッチ1の粉末x線回折パターンを示す。
図10B】バッチ2の粉末x線回折パターンを示す。
図11A】粗イブプロフェンのGVSパターンを示す。
図11B】バッチ1のGVSパターンを示す。
図11C】バッチ2のGVSパターンを示す。
図12】粗イブプロフェン、バッチ1、およびバッチ2のラマンスペクトルのオーバーレイを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、吸入による投与形態のための組成物を含む。基本的に、本発明は、吸入による投与のために、両方とも粉末形態である少なくとも2つの医薬活性成分を組み合わせる。組成物は、一方が吸入され、他方が経口摂取される場合など、各APIの別々の服用とは対照的に、患者が容易に服用できる製剤で使用することができる。吸入による2つのAPIの同時投与の利点は、薬剤投与に対する患者の服薬率の向上である。
【0012】
特に本発明は、患者が自分の薬の服用を忘れる可能性がある、知的能力を害する疾患、例えばアルツハイマー病などの患者に適用できる。本発明は、疾患が身体活動に影響を与える場合、例えば、丸薬を掴むこと、または嚥下する行為さえ困難である場合にも適用できる。投与形態を正確に管理できないと、薬の効果が低下する可能性がある。薬剤の投与が困難で、一貫性がなく、および/または過少投与であるため、これらの問題が、疾患を悪化させ得る。これらの問題に対処し、患者の服薬率を上げ、投与を容易にするために、本発明は、アルツハイマー病および他の神経疾患を治療するための、吸入による投与に適した組み合わせ剤形を提供する。その汎用性のため、組成物および製剤は、これらに限定されないが、脳卒中、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、および喘息を含む他の疾患の治療にも使用できる。
【0013】
本発明の1つの用途は、クロモリンナトリウムおよびイブプロフェンの組成物であり、それぞれが組み合わせ剤形として吸入に適した粉末形態である。この場合各成分は、吸入による投与を容易にし、簡単で正確な服用を可能にするために、粉末形態である。本発明は、クロモリンナトリウムおよびイブプロフェンの両方が粉末形態である場合、イブプロフェンがクロモリンの空気力学的流れを改善するという発見に、一部基づいている。この改善の1つの利点によって、より高濃度のクロモリンが、患者の肺内により深く到達することが可能になり、それにより、より少ない薬剤で治療効果を達成する。別の利点は、十分な治療効果を達成するために、吸入による完全な服用量が、必ずしも必要でないことである。身体能力の低下した患者(アルツハイマー病などの疾患に起因する場合がある)は、完全な吸入(完全な「パフ」)が常に可能とはかぎらない。本発明では、不十分な吸入(不完全な「パフ」)でも、目的の疾患を治療するのに十分な薬剤を送達する。本組成物の利点は、同様の問題を伴う他の疾患に適用でき、改善された剤形が適用できる、適応症のリストを拡大できる。
【0014】
1つの用途では、クロモリンナトリウムおよびイブプロフェンの組成物の同時投与は、特定の神経疾患の治療に使用できる。神経疾患には、AD、ALS、パーキンソン病、および脳卒中の影響が含まれるが、これらに限定されない。
【0015】
本発明は、イブプロフェンの特性を評価して、イブプロフェンが製剤に及ぼし得る影響を理解するために、1つのサンプル中の2つのAPIを分析的に識別する方法に依拠した。サンプル中の2つのAPIを識別する分析方法によって、イブプロフェン微粒子化の、吸入に対する影響を調査することも可能になった。これらの方法により、クロモリンナトリウムおよびイブプロフェンを、1回の投与量として組み合せることが実現可能であると判定できた。さらなる方法により、組み合わせ剤形中の、組み合わせたAPIの適合性を判定することができた。それぞれを順番に説明する。
【0016】
適切な組み合わせ投与量を判定するために、同じサンプル内でクロモリンナトリウムとイブプロフェンとを識別する分析方法を開発した。この方法は、各APIを識別および定量化し、放出薬物量および空気力学的粒径を試験することにより、各化合物の性能を測定するアッセイを含んだ。
【0017】
この方法は、クロモリンおよびイブプロフェンを含むサンプルを、第1移動相および第2移動相を有する2つのクロマトグラフィーカラムに順に通すこと、ならびにクロモリンおよびイブプロフェンを検出することを含む。ここで第1移動相は、pHが約5.5の緩衝液を含む酢酸ナトリウムおよびメタノールを含み、第2移動相は、過塩素酸およびアセトニトリルを含む。カラムおよび移動相の順序は交換できる。例えば、移動相に関する第1および第2という用語は、順序ではなく、異なる移動相を示すために使用される。クロマトグラフィーカラムは、Agilent Poroshell 120 SB-C18 100×3mm、2.7μを含むが、これに限定されない。移動相は、体積で約70:30~3:97、好ましくは約75:25~5:95、より好ましくは約80:20~10:90の溶出グラジエントで存在する。限定されないが、UV法を含む既知の検出法をこの方法で使用することができ、好ましくは、UV法による検出を実施する。
【0018】
分析方法の1つの実施形態では、HPLC分析方法は2つのカラム、すなわち(1)Phenomenex Hyperclone BDS C18 130A 250×4.6mm、5μ、および(2)Zorbax SB C18 150×4.6mm、3.5μを使用した。移動相は、クロモリンナトリウム用に酢酸ナトリウムまたはリン酸カリウムおよびメタノール混合物、イブプロフェン用に過塩素酸およびアセトニトリル混合物を含んだ。例えば、1つの例では、クロモリンナトリウム用に、23nM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)およびメタノールを使用し、イブプロフェン用に、0.2%過塩素酸およびアセトニトリルを使用した。クロモリン用の移動相は、約4~約7.5、好ましくは約4.5~7、より好ましくは約5.5~6.8のpHを有してもよい。
【0019】
分析方法では、85:15~10:90(v/v)のグラジエントシステムを使用して、両方のAPIの溶出を評価した。検出波長(両方とも各APIの検出に使用)は、以下の通り、クロモリンナトリウムが254nm、イブプロフェンが214nmであった。
【0020】
注入量を100μLから10μLに変更し、実行時間を20分から5分に変更し、グラジエントを85:15~10:90(v/v)から80:20~10:90に変更した。
【0021】
分析方法は、実施例1および実施例2に例証する。図1および図2に示すように、クロモリンナトリウムおよびイブプロフェンは良好に分離した。クロモリンナトリウムは3.99分で検出され、イブプロフェンは10.83分で検出された。明確な信号を達成した後、方法を最適化し、その結果、保持時間はクロモリンで2.418分、イブプロフェンで3.978分に短縮された。
【0022】
製剤用組成物に使用されるイブプロフェンは、その形態が吸入に適している限り、粗い形態または微粒子化された形態またはその他任意の形態であってもよい。別の前提条件は、吸入によるクロモリンナトリウムの送達を促進するために、イブプロフェンがクロモリンナトリウムと良好に組み合わされることである。特に、この組み合わせは、クロモリンナトリウムを肺の深部、例えばDPI 4moc(肺胞への二次気管支で構成される肺の領域に相当する、MOCへのステージ4)に送達しなければならない。
【0023】
イブプロフェンを特性決定して、治療有効量を投与するのに必要なパラメーターを、吸入送達システムを使用して決定した。方法は、粒径測定(PSD)、粉末x線結晶化回折(PXRD)、および重量蒸気吸着(GVS)を含んだ。これらの方法により、粗イブプロフェンは結晶性であり、非吸湿性であると判定された。結果を実施例3に要約する。イブプロフェンの吸脱着等温線は、水分にさらされたときに0.2%未満の重量増加を示し、イブプロフェンが非吸湿性であることを示唆している。
【0024】
本発明は、微粒子化イブプロフェンを有する組成物であって、イブプロフェンが約10μm以下のサイズパラメーターを有する組成物も含むが、粒径は5μm以下も含んでもよい。微粒子化は、粗イブプロフェンに対して、エアジェットミルまたは類似の装置、例えばグラインダーまたはミルを使用して実施できる。イブプロフェンを微粒子化する他の方法は、粉砕、強打、切断、または圧潰を含む。例えば、2つのバッチは、約45psiの供給ガス圧力および約45psiの粉砕圧力を使用するエアジェットミルで微粒子化した。1つのバッチは、同じ条件下で2度、微粒子化した。任意により、イブプロフェンは、複数回微粒子化してもよい。微粒子化後、微粒子化イブプロフェンの粒径分布を湿式分散によって実施した。微粒子化イブプロフェンは、有機溶媒での可溶性が非常に高く、水に分散せず(凝集体を形成した)、水性媒体を含有する種々の界面活性剤に、界面活性剤濃度が低くても可溶であった。実施例3は、イブプロフェンの微粒子化の方法および結果を示す。
【0025】
微粒子化イブプロフェンは、粗イブプロフェンによる0.2%未満の吸着よりも多い、最大3重量%の水分を吸着した。吸着の増加は、微粒子化による表面積の増加、および表面非晶性物質の生成によるものであった。図11A図11B、および図11Cを参照。製品の性能および安定性のために、希釈剤および安定剤が必要な場合がある。クロモリンの安定剤は、ステアリン酸マグネシウムであり、乳糖などの希釈剤は、任意で製剤の組成物に使用できる。
【0026】
組成物製剤に使用されるクロモリンは、主に吸入用に製造できる。一般的に、クロモリンは微粒子化される。クロモリンの微粒子化により、小さな粒径の超微粒子(d<10μm)が製造される。微粒子化クロモリンの仕様は、通常、d(90%)≦5μmである。
【0027】
本発明は、吸入による送達用の、クロモリンナトリウムおよびイブプロフェンの組成物をさらに含む。この組成物は、微粒子化クロモリンナトリウムおよびイブプロフェンを含み、イブプロフェンは微粒子化してもしなくてもよい、つまりイブプロフェンは粗くても微粒子化してもよい。この組成物によって、クロモリンのみの組成物より、またはクロモリンがイブプロフェンと順番に(同時にではなく)送達される場合より、クロモリンの送達が改善される。例えば、吸入されたクロモリンのみの製剤が、肺深部に送達できるクロモリンの治療有効量は、投与量の約23%~約29%である。対照的に本発明の組成物は、投与量の約34%~約53%、好ましくは35%から約44%の範囲のクロモリンの治療有効量を送達することが見出された。
【0028】
本発明の1つの組成物は、クロモリン17.1mgおよびイブプロフェン10mgを含む。これは、臨床研究で利用されている、現行の治験薬濃度と一致している。本明細書で使用する場合、特に明記しない限り、用語「クロモリン」は、クロモリン、クロモリンナトリウム、および薬学的に許容されるクロモリンの塩の他の形態を含む。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
【表3】
【0032】
1つの製剤では、クロモリンナトリウムおよびイブプロフェンの両方をふるいに通す。
ふるいのサイズは、約600μm~約200μm、好ましくは約500μm~約250μm、より好ましくは約300μm~400μmであってもよい。典型的には、クロモリンナトリウムとイブプロフェンとの重量比は、約1:1~約1:2.5、好ましくは約1:1.1~約1:2、より好ましくは約1.1:1.7である。任意で、製剤は、薬学的に許容される賦形剤、例えばステアリン酸マグネシウムおよび乳糖一水和物などを含む。
【0033】
クロモリンナトリウムおよびイブプロフェンの組成物の安定性を、実施例5に例証する。微粒子化イブプロフェンまたは粗イブプロフェンのいずれかを使用する製剤は、クロモリンのみの製品の仕様と比較した場合、吸入物質の性能を十分にもたらした。この製剤は、クロモリンナトリウム、乳糖、およびステアリン酸マグネシウムの製剤と比較して、吸入中のクロモリンナトリウムの空気力学的性能を向上させた。組み合わせ製品のバッチは、クロモリンのみで製造された6つの臨床バッチと同等の放出薬物量を有した。クロモリンおよび賦形剤のみを使用して製造された6つのバッチ製剤は、ステージ3~MOCのNGI試験結果の総括を根拠に、平均して製品の34.97%が肺深部に到達したが、一方、粗イブプロフェンまたは微粒子化イブプロフェンのいずれかを使用するクロモリンと組み合わせると、結果を平均して、吸入されたクロモリンの46%が肺深部に到達した。したがって、本発明の組成物は、結果を平均して、吸入されたクロモリンの36%~56%、好ましくは約41%~約51%、より好ましくは約43%から約48%が肺深部へ到達する、クロモリンおよびイブプロフェン組成物を含む。本明細書で使用される場合、特に定義されない限り、用語「肺領域」は、ステージ3~MOCを指す。加速条件下で実施された安定性の調査では、APIが互いに影響することは示されなかった。
【0034】
【表4】
【0035】
【表5】
【0036】
乾燥粉末吸入器用の薬学的に許容される賦形剤には、乳糖一水和物およびステアリン酸マグネシウムが含まれるが、これらに限定されない。
【0037】
本発明は、記載された組成物の製造方法あって、イブプロフェンを微粒子化することと、クロモリンナトリウムおよびイブプロフェンを別々にふるいにかけることと、ふるいにかけたクロモリンナトリウムおよびイブプロフェンを混合することと、混合したクロモリンナトリウムおよびイブプロフェンを混合共粉砕することとを含む方法を含む。
【0038】
イブプロフェンの微粒子化工程は、製薬業界で一般的に使用される標準的な設備を使用して実施できる。供給圧力および粉砕圧力は、約30psi~約60psi、好ましくは約35psi~約50psi、より好ましくは約45psiである。混合工程は、約5分~約20分、好ましくは約10分~約15分、より好ましくは約10分間、両方の成分を混合することを含む。混合速度は、約35rpm~約60rpm、好ましくは約40rpm~約50rpm、より好ましくは約49rpmである。混合共粉砕工程は、シングルパスで混合できる。共粉砕工程のための供給圧力および粉砕圧力は、約30psi~約60psi、好ましくは約35psi~約50psi、より好ましくは約45psiである。実施例4および5は、製剤の製造方法を示す。
【0039】
本明細書では本発明のある特性を図示し、説明したが、当業者には、多くの修正、置換、変更、および同等物が思い浮かぶであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の精神の範囲内にあるような、全ての修正および変更を網羅することを意図していることを理解されたい。
【実施例
【0040】
実施例1:同じサンプル中のクロモリンナトリウムおよびイブプロフェンの検出
【0041】
この方法では、2つのカラム、すなわち(1)Phenomenex Hyperclone BDS C18 130A 250×4.6mm、5μ、および(2)Zorbax SB C18 150×4.6mm、3.5μを使用した。移動相は以下の通り、すなわちクロモリンナトリウム:23nM酢酸ナトリウム緩衝液 pH5.5:メタノール:イブプロフェン:0.2%過塩素酸:アセトニトリル、であった。移動相は、85:15~10:90までのグラジエントシステムを使用して、両方のAPIの溶出を評価した。各APIの検出に使用される波長は、クロモリンナトリウムでは254nm、イブプロフェンでは214nmであった。表1に方法パラメーターを要約し、図1に結果を示す。
【0042】
【表6】
【0043】
実施例2:サンプル中のクロモリンナトリウムおよびイブプロフェンの検出
【0044】
実施例1に記載の方法を、表4に記載の方法パラメーターを使用して繰り返した。結果を図2に示す。
【0045】
【表7】
【0046】
表4に記載の方法を使用して、50μg/mLの標準液を使用して分析を繰り返した。表5に結果を要約する。
【0047】
【表8】
【0048】
表3のデータに基づき、0.05~50g/mLの範囲にわたる、クロモリンナトリウムおよびイブプロフェンの直線性を計算した。図3および図4は、それぞれクロモリンナトリウムおよびイブプロフェンの較正プロットのデータを示す。
【0049】
実施例3:イブプロフェンの物理的特性評価
【0050】
粗イブプロフェンは、PSD、PXRD、およびGVSを使用して特性決定した。試験により、粗イブプロフェンは、結晶性で非吸湿性であることが立証された。表6は、分散剤の効果を示す。
【0051】
【表9】
【0052】
平均粒径の判定を図5に示す。パラメーターおよび結果は、以下の通り、濃度0.0406体積%、スパン1.493、均一性0.459、比表面積0.239m/g、表面加重平均D[2,3]25.136μm、および体積加重平均D[4,3]62.020μm、であった。
【0053】
図6は粗イブプロフェンのPXRDを示し、図7は粗イブプロフェンのGVSを示す。イブプロフェンの吸脱着等温線は、水分にさらされたときに0.2%未満の重量増加を示し、イブプロフェンが非吸湿性であることを示唆した。
【0054】
その後、粗イブプロフェンの2つのバッチを、45psiの供給ガス圧力および45psiの粉砕圧力で、エアジェットミルを使用して微粒子化した。バッチ1はシングルパスで、バッチ2は2回のパスで微粒子化した。
【0055】
微粒子化後、湿式分散により粒径分布(PSD)分析を実施した。微粒子化イブプロフェンは、PSD分析装置の掩蔽率を下げて観察すると、水性または有機分散媒体のいずれにも、微粒子化イブプロフェンとして良好に分散しないこと、有機溶媒での可溶性が高いこと、水に分散せずに凝集体を形成すること、および低濃度でも水性媒体を含む種々の界面活性剤に可溶であることが認められた。湿式分散によるPSD分析の限界のため、SEM結像を実施してPSDを推測した。図8Aおよび図8Bは、それぞれバッチ1およびバッチ2の、10μmスケールでの微粒子化イブプロフェンのSEM画像を示す。図9Aおよび図9Bは、それぞれバッチ1およびバッチ2の、2μmスケールでの微粒子化イブプロフェンのSEM画像を示す。図10Aおよび図10Bは、それぞれバッチ1およびバッチ2の、微粒子化イブプロフェンのPXRDを示す。表7は、DTA(示差温度分析)およびTG(熱重量分析)の両方で試験する、同時熱分析装置(STA)によって測定される、微粒子化イブプロフェンの含水量のデータを含む。図11A図11B、および図11Cは、粗イブプロフェン(図11A)、バッチ1(図11B)、およびバッチ2(図11C)の、GVSで測定された吸湿性を示す。
【0056】
【表10】
【0057】
微粒子化イブプロフェンは、粗イブプロフェンによる0.2%未満の吸着よりも多い、最大3%の水分を表面で吸着した。この吸着の増加は、微粒子化による表面積の増加、および表面非晶性物質の生成によるものであった。図12は、粗イブプロフェンおよび微粒子化イブプロフェンの、ラマンスペクトルオーバーレイを示す。最下部のスペクトルは粗イブプロフェンであり、その上にバッチ1が続き、最上部のスペクトルはバッチ2である。
【0058】
実施例4:クロモリンナトリウムおよびイブプロフェンの製剤
【0059】
クロモリンナトリウムおよび粗または微粒子化イブプロフェンの一連の混合の組み合わせを、混合均一性、放出薬物量、および空気力学的粒子について評価した(NGI)。混合物内の幾何学的な位置から、10個のサンプルを取り出した。バッチ3は、重量比1.7:1のクロモリンナトリウムおよび粗イブプロフェンからなり、300μmのふるいに通した。ターブラミキサーの混合パラメーターは、以下の通り、混合速度が49rpm、混合時間が10分であった。表8は、クロモリンナトリウムの均一性およびイブプロフェンの許容される%RSDを示した、バッチ3結果を示す。
【0060】
【表11】
【0061】
その後、バッチ3の混合物をサイズ3号のHPMC透明カプセルに、1カプセルあたり、充填重量30mgまで充填した。カプセルを一晩放置して全ての静電荷を放散させた後、5つのカプセルについて放出薬物量試験を実施した。試験パラメーターは、以下の通り、装置:低抵抗、流量:80L/分で3秒間、であった。表9に、バッチ3の放出薬物量試験の結果を示す。
【0062】
【表12】
【0063】
バッチ4は、バッチ3およびステアリン酸マグネシウム(2%w/w)を含む。表10に、バッチ4の混合均一性試験の結果を示す。試験パラメーターは、バッチ3のパラメーターと同じである。
【0064】
【表13】
【0065】
その後、バッチ4の混合物をサイズ3号のHPMC透明カプセルに、1カプセルあたり、充填重量30mgまで充填した。カプセルを一晩放置して全ての静電荷を放散させた後、5つのカプセルについて放出薬物量試験を実施した。試験パラメーターは、以下の通り、装置:低抵抗、流量:80L/分で3秒間、であった。表11に、バッチ4の放出薬物量試験の結果を示す。
【0066】
【表14】
【0067】
粗イブプロフェンの濃度を上げて、放出薬物量性能への影響を測定した。ステアリン酸マグネシウムを添加して、3つのバッチ、すなわちバッチ5(クロモリンナトリウム:イブプロフェン重量比、1.7:1.1)、バッチ6(クロモリンナトリウム:イブプロフェン重量比、1.7:1.5)、およびバッチ7(クロモリンナトリウム:イブプロフェン重量比、1.7:2.0)を作成した。表12は、バッチ4、5、6および7の混合均一性を示す。混合物は、均質であった。
【0068】
【表15】
【0069】
前出と同じパラメーターを使用した放出薬物量試験の結果を、表13に要約する。
【0070】
【表16】
【0071】
結果は、イブプロフェン充填重量の増加により、放出薬物量が増加したことを示す。クロモリンナトリウムは、イブプロフェン濃度に関係なく、一定の放出薬物量を維持した。
【0072】
バッチ5の製剤からステアリン酸マグネシウムを除去して、バッチ8を得た。表14に、均質な粉末混合物であるバッチ8の、混合均一性試験を示す。表15は、バッチ5およびバッチ8の放出薬物量試験のデータを含む。
【0073】
【表17】
【0074】
【表18】
【0075】
実施例5:クロモリンナトリウムおよびイブプロフェンの製剤
【0076】
微粒子化イブプロフェンとステアリン酸マグネシウムとの混合物を使用した製剤、およびステアリン酸マグネシウムを含まない製剤の2つを製造した。バッチ9は2重量%のステアリン酸マグネシウムを含み、バッチ10はステアリン酸マグネシウムを含まない。混合工程は、(1)イブプロフェンを45psiの供給圧力および45psiの粉砕圧力で、1回のパスで微粒子化する工程、(2)微粒子化イブプロフェンおよびクロモリンナトリウムを、別々に300μmのふるいに通す工程、(3)2つの材料をターブラミキサーで49rpmで10分間混合する工程、および(4)45psiの供給圧力および45psiの粉砕圧力で粉砕(シングルパス)することにより、混合物を混合共粉砕する工程を含む。表14に、ステアリン酸マグネシウムを含まない2つのバッチのアッセイ結果を要約する。
【0077】
【表19】
【0078】
表15に、ステアリン酸マグネシウムを含む2つのバッチのアッセイ結果を要約する。
【0079】
【表20】
【0080】
結果は、放出薬物量に関して、ステアリン酸マグネシウムを含む製剤と含まない製剤との間に差がないこと示す。両方のバッチのNGIおよび安定性を試験した。
【0081】
NGIにより測定した空気力学的粒径分布。バッチ9を共粉砕し、ステアリン酸マグネシウムを添加した。バッチ10を共粉砕し、ステアリン酸マグネシウムは添加しなかった。バッチ5を粗イブプロフェンと混合し、ステアリン酸マグネシウムを添加した。バッチ8を粗イブプロフェンと混合し、ステアリン酸マグネシウムは添加しなかった。表18に、NGI法で使用される条件を要約する。
【0082】
【表21】
【0083】
表19~22に、各バッチのデータを要約する。表23は、バッチ5、8、9および10の比較データを含む。
【0084】
【表22】
【0085】
【表23】
【0086】
【表24】
【0087】
【表25】
【0088】
【表26】
【0089】
局所送達ではなく全身送達用の組成物では、ステージ3~MOCでの沈着が重要である。データは、クロモリンのみの製剤と比較して、混合製剤がステージ3~MOCの沈着に関して優れていることを実証した。バッチ5は、現在臨床で使用されている現行の製剤と同等であったが、バッチ8は、ステージ3~MOCに関して、現行の製品よりも優れていた。混合製剤は、クロモリンの肺深部への到達を増加させ、それによりクロモリンの血漿内への生物学的利用率を上げることを示し、粗い形態および微粒子化された形態の両方での、イブプロフェン放出薬物量試験およびNGI試験結果も、同様に肺に到達できることを示している。
【0090】
安定性調査を実施して、加速劣化条件下での組み合わせAPIの互換性を判定した。微粒子化クロモリンナトリウム(サンプルA)および微粒子化イブプロフェン(サンプルB)の個別の対照サンプルを調査に含め、クロモリン/イブプロフェンの混合物(サンプルC)との比較対照として使用した。この調査は、40℃、相対湿度75%にて実施した。測定は、開始時、1ヵ月、2ヵ月、および3ヵ月の時点で実施した。
【0091】
表24A、24B、および24Cに、それぞれサンプルA、サンプルB、およびサンプルCの調査結果を要約する。
【0092】
【表27】
【0093】
【表28】
【0094】
【表29】
【0095】
クロモリンナトリウムおよびイブプロフェンの組み合わせは、材料の安定性に影響せず、よってAPIは、組み合わせ製剤に適合した。
【0096】
この調査は、クロモリンナトリウムおよびイブプロフェンの組み合わせ組成物のアッセイ用に開発された方法が、干渉なしに2つのAPIを識別することを実証した。微粒子化イブプロフェンまたは粗イブプロフェンのいずれかを使用する製剤は、治療効果を達成するのに十分な吸入物質の性能をもたらした。組み合わせ製剤は、従来の製剤と比較して、クロモリンナトリウムの性能を向上させた。言い換えれば、肺のより深い領域におけるクロモリン濃度は、乳糖のみを含むクロモリンの製剤で見られる濃度よりも高かった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図12