(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-27
(45)【発行日】2023-01-11
(54)【発明の名称】放射性要素の除染装置
(51)【国際特許分類】
G21F 9/28 20060101AFI20221228BHJP
【FI】
G21F9/28 501A
G21F9/28 511C
G21F9/28 511Z
G21F9/28 551
(21)【出願番号】P 2020572849
(86)(22)【出願日】2018-11-27
(86)【国際出願番号】 RU2018000769
(87)【国際公開番号】W WO2020085939
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-11-02
(32)【優先日】2018-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(73)【特許権者】
【識別番号】518312460
【氏名又は名称】ジョイント ストック カンパニー“ロスエネルゴアトム”
(73)【特許権者】
【識別番号】517423567
【氏名又は名称】ジョイント ストック カンパニー“サイエンス アンド イノヴェーションズ”
(73)【特許権者】
【識別番号】520514768
【氏名又は名称】サイエンス アンド イノヴェーションズ - ニュークリア インダストリー サイエンティフィック デベロップメント,プライベート エンタープライズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】弁理士法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】シェフチェンコ ボリス ニコラエヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ネウポコエフ ミハイル アレクシーヴィチ
【審査官】松平 佳巳
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-031191(JP,A)
【文献】特開2007-155544(JP,A)
【文献】特開平08-021898(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷積降マニピュレーターと、蓋付きの作業チャンバーとを有し、当該作業チャンバー内部に回転テーブルと、廃棄物収集容器と、排気換気装置とを備える放射性要素の除染装置であって、
前記作業チャンバーの外部に、遠隔制御装置が配され、
前記作業チャンバーの内部に、無塵研磨剤ブラスト装置と、ウォータージェット切断装置と、少なくとも1つの放射線監視装置とが配され、
前記作業チャンバーの壁に、漏れが生じないように密閉して取り付けられたホースを介して当該作業チャンバーに接続された研磨剤スラリー収集装置と、
液体廃棄物と固体廃棄物を分離し液体廃棄物を排出する液体・固体廃棄物分離装置と、を有し、
前記作業チャンバーに
は吸音性を有するコーティングが装備されており、
前記遠隔制御装置は、無塵研磨剤ブラスト装置と、ウォータージェット切断装置と、研磨剤スラリー収集装置と、排気換気装置と、作業チャンバーの蓋の駆動装置と、放射線監視装置と、液体・固体廃棄物分離装置とに接続されている
ことを特徴とする放射性要素の除染装置。
【請求項2】
前記作業チャンバーがその側壁に配置された光開口部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の放射性要素の除染装置。
【請求項3】
前記ウォータージェット切断装置の使用済み研磨剤廃液の排出のため、前記作業チャンバーの床が0.6°傾斜して造られることを特徴とする請求項1に記載の放射性要素の除染装置。
【請求項4】
前記作業チャンバーは、さらに密閉されたスイングドアを備えていることを特徴とする請求項1に記載の放射性要素の除染装置。
【請求項5】
前記作業チャンバーが吸気換気装置を備えていることを特徴とする請求項1に記載の放射性要素の除染装置。
【請求項6】
前記研磨剤スラリー収集装置は、
制御パネルと、
真空集塵機と、
真空集塵機に接続された使用済み微細廃棄物片収集容器と、
可動式サイクロン分離機と、
可動式サイクロン分離機に接続された使用済み大型廃棄物片収集容器と
を含み、
前記可動式サイクロン分離機には、気密性監視センサーが設置され、前記使用済み大型廃棄物片収集容器には、充填レベル監視センサーが設置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の放射性要素の除染装置。
【請求項7】
前記排気換気装置は、気密に取り付けられたフランジバルブ、及び真空センサーを備えていることを特徴とする、請求項1に記載の放射性要素の除染装置。
【請求項8】
前記液体・固体廃棄物分離装置は、
オーバーフローパイプと上限センサーおよび下限センサーを備え、アダプターを介して廃棄物収集容器が液密に接続された沈殿タンクと、
液体廃棄物を排出するための傾動装置と、
ハイドロサイクロン装置と、
少なくとも1つのポンプと、
それらを接続する配管システムと
を備えることを特徴とする請求項1に記載の放射性要素の除染装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性廃棄物の放射性汚染を排除するための装置、特に、放射性廃棄物の表面を除染するための装置に関する。また、本発明は、金属の表面を洗浄する用途にも使用できる。
【背景技術】
【0002】
原子炉部品の放射性汚染された表面を洗浄する場合、放射性粒子やエアロゾルが周囲の空間に広がるのを回避し、結果として生じる放射性廃棄物の量を制限する必要がある。
【0003】
放射性汚染された表面の汚染除去のための公知の装置(特許文献1)では、防塵チャンバーを含み、その内部には、乾燥剤で、除染されるべき表面領域を機械的にブラストするためのジェットヘッドを備えた可動マニピュレーター、及びその結果として生じる粉塵と混合物を抽出する装置を備えている。
【0004】
しかし、上記公知の装置は、放射性廃棄物の効果的な除染を提供しない。結果として生じる粉塵はフードによって完全に吸収されず、開放された表面上に部分的に沈着する。
【0005】
また、作業チャンバー、荷積み・荷降しマニピュレーター、円形状ターンテーブル、シーリングカバー、廃棄物を収集するための容器、及び排気システムを備え、固体の放射性および有毒廃棄物を処理するための装置(特許文献2)も公知である。放射性廃棄物の除染のための各装置は、作業チャンバー内に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】ロシア国特許出願公開第92016556号明細書
【文献】ロシア国特許第2124771号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の装置は放射性廃棄物のセメント化(cement solidification)を目的としている。
【0008】
本発明の目的は、設備の機能を拡張し、有害な要因を減らすことである。
【0009】
本発明によって達成される技術的結果は、廃棄物の量を低減すること、ならびに有害な要因および線量負荷を最小化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の技術的成果は、荷積降マニピュレーターと、蓋付きの作業チャンバーとを有し、当該作業チャンバー内部に回転テーブルと、廃棄物収集容器と、排気換気装置とを備える放射性要素の除染装置であって、前記作業チャンバーの外部に、遠隔制御装置が配され、前記作業チャンバーの内部に、無塵研磨剤ブラスト装置と、ウォータージェット切断装置と、少なくとも1つの放射線監視装置とが配され、前記作業チャンバーの壁に漏れが生じないように密閉して取り付けられたホースを介して当該作業チャンバーに接続された研磨剤スラリー収集装置と、液体廃棄物と固体廃棄物を分離し液体廃棄物を排出する液体・固体廃棄物分離装置と、を有し、前記作業チャンバーには耐薬品性、耐放射線性、耐衝撃性および吸音性を有するコーティングが装備されており、前記遠隔制御装置は、無塵研磨剤ブラスト装置と、ウォータージェット切断装置と、研磨剤スラリー収集装置と、排気換気装置と、作業チャンバーの蓋の駆動装置と、放射線監視装置と、液体・固体廃棄物分離装置とに接続されていることにより達成される。
【0011】
好ましくは、前記作業チャンバーの側壁に光開口部を設けるようにしてもよい。また、前記作業チャンバーの床を0.6°の傾斜にして、使用済みの研磨剤混合液体の排出を確実にするようにしてもよい。
【0012】
また、前記作業チャンバーは、さらに密閉されたスイングドアを備えていてもよいし、吸気換気装置を備えていてもよい。
【0013】
また、前記研磨剤スラリー収集装置は、制御パネルと、真空集塵機と、真空集塵機に接続された使用済み微細廃棄物片収集容器と、可動式サイクロン分離機と、可動式サイクロン分離機に接続された使用済み大型廃棄物片収集容器とを含み、前記可動式サイクロン分離機には、気密性監視センサーが設置され、前記使用済み大型廃棄物片収集容器には、充填レベル監視センサーが設置されているとしてもよい。
【0014】
前記排気換気装置は、気密に取り付けられたフランジバルブ、及び真空センサーを備えているとしてもよい。
【0015】
前記液体・固体廃棄物分離装置は、オーバーフローパイプと上限センサーおよび下限センサーを備え、アダプターを介して廃棄物収集容器が液密に接続された沈殿タンクと、液体廃棄物を排出するための傾動装置と、ハイドロサイクロン装置と、少なくとも1つのポンプと、それらを接続する配管システムとを備えるとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る放射性要素の除染装置の本質は、
図1-3の図面を参照して説明される。
【0018】
図1は、研磨剤スラリー収集装置の概略図、
図2は、個体・液体廃棄物分離装置の概略図、
図3は、除染装置の上面図、
図4は右側面図、
図5には背面図が示されている。
【0019】
放射性要素の除染装置は、荷積降マニピュレーター1、蓋3付きの作業チャンバー2、作業チャンバー内に配され放射性要素を載置するための回転テーブル4、廃棄物を収集するための容器(廃棄物収集容器)5、および排気換気装置6を含む。
【0020】
作業チャンバー2の上部にある蓋3は、2つの電気駆動装置により巻き戻されて開放され、荷積降マニピュレーター1を使用して放射性要素を設置する際に使われる。
【0021】
作業チャンバー2の外側に遠隔制御装置(リモートコントロールユニット)7が設置されている。
【0022】
放射性要素表面の除染には、作業チャンバー2の内部に設置された無塵研磨剤ブラスト装置8およびウォータージェット切断装置9が使用される。
【0023】
使用済み研磨剤およびスラリーの個体状放射性廃棄物の最大90%が堆積する床の作業チャンバー2での洗浄、ならびに固体放射性廃棄物で満たされた廃棄物収集容器5を交換する際に流出した局所部分の洗浄のために、研磨剤スラリー収集装置10が設計されている。研磨剤スラリー収集装置10は、作業チャンバー2の壁に、漏れが生じないよう密閉(leak-tight)な状態で取り付けられたホースを介して作業チャンバー2に接続されている。
【0024】
作業チャンバー2に備えられた排気換気装置6は、特別な換気システムに空気を排出する。
【0025】
また、作業チャンバー2は、その内部に配置された少なくとも1つの放射線監視装置11を備えている。
【0026】
また、放射性要素の除染装置は、液体廃棄物と固体廃棄物を分離する個体・液体廃棄物分離装置12を備える。
【0027】
作業チャンバー2は、金属フレームを備えた金属ボックスの形態で作られ、その側壁に配置された光開口部13を備えている。
【0028】
光開口部13は、保護コーティングされたガラス板で作られている。床および側壁の1200mmの高さまで、吸音コーティングが施されている。このコーティングは、また、耐衝撃性、耐放射線性、耐薬品性も備えている。
【0029】
技術的なユーティルティ(パイプ、ホース、電気配線など)を挿入するため、作業チャンバー2の壁に技術的な開口部が設けられると共に、作業チャンバー2の床が0.6°の傾斜で作られ、液体廃棄物の排水口から使用済みの水と研磨剤の混合廃棄物を確実に排出する。
【0030】
さらに、作業チャンバー2には、密閉されたスイングドア(leak-tight sealed swing door)15及び吸気換気装置16が装備されている。
【0031】
遠隔制御装置7は、無塵研磨剤ブラスト装置8、ウォータージェット切断装置9、研磨剤スラリー収集装置10、排気換気装置6、作業チャンバー2の蓋3の駆動装置、放射線監視装置11、および個体・液体廃棄物分離装置12に接続されている。
【0032】
遠隔制御装置7は、無塵研磨剤ブラスト装置8、ウォータージェット切断装置9、研磨剤スラリー収集装置10、作業チャンバー2の蓋3の駆動装置、排気換気装置6、個体・液体廃棄物分離装置12、放射線監視装置11、スイングドア15及び吸気換気装置16を含む各デバイスの電力回路のスイッチオンと切り替え、動作モードの選択、および制御を提供する。
【0033】
遠隔制御装置7の操作アルゴリズムによれば、蓋3が動かされ、スイングドア15が開かれて、吸気換気装置16および排気換気装置6の動作が中断されたときに、技術的にツールのスイッチオンを遮断するようになっている。
【0034】
研磨剤スラリー収集装置10は、制御パネル17、真空集塵機18、使用済みの微細廃棄物片を収集するための容器(使用済み微細廃棄物片収集容器)19、可動式サイクロン分離機20、使用済大型廃棄物片を収集するための容器(使用済み大型廃棄物片収集容器)21を含む。容器21の存在は、配管用のアダプター(adapter)に取り付けられた光センサーからの信号によって示される。
【0035】
使用済大型廃棄物片を収集するための容器21は、充填レベル監視センサー22を備え、可動式サイクロン分離機20には、気密性監視センサー(leak monitoring sensor)23が設置されている。
【0036】
排気換気装置6は、気密に取り付けられたフランジバルブ及び真空センサー(図示されていない)を備えている。
【0037】
個体・液体廃棄物分離装置12は、好ましくは、オーバーフローパイプ、及び下限センサー25、上限センサー26を備えた沈殿タンク24を含む。
【0038】
沈殿タンク24は、配管用のアダプターを介して廃棄物収集容器27に、漏れが生じない状態で接続されている。廃棄物収集容器27の接続の有無は、当該アダプターに設置された光センサーによって検出されるようになっている。
【0039】
個体・液体廃棄物分離装置12は、液体廃棄物を排出するための傾動装置(tilter)28、ハイドロサイクロン装置29、少なくとも1つのポンプ30、そしてそれらを接続するパイプラインシステム31を含む。
【0040】
沈殿タンク24は、研磨剤(固体放射性廃棄物)の大型の破片を液相(液体放射性廃棄物)から分離するように設計されている。
【0041】
ポンプ30は、沈殿タンク24に研磨剤を供給するように設計されている。沈殿タンク24への研磨剤の充填レベルは、下限センサー25及び2つの上限センサー26を使用して制御される。
【0042】
傾動装置28は、廃棄物収集容器27から残留液相を排出するように設計されている。
【0043】
放射性要素の除染装置は、放射性ダスト及び除染液の放出に関連して、無塵研磨剤ブラスト及びウォータージェット処理の操作を実行する。
【0044】
放射性要素の除染装置は次のように機能する。
【0045】
放射性要素の表面の除染、廃棄される機器およびパイプラインの表面の流体力学的除染、さまざまな表面や構造を有する固体放射性廃棄物やさまざまな材料のウォータージェット切断のために、無塵研磨剤ブラスト装置8およびウォータージェット切断装置9が使用される。
【0046】
作業を開始するに備え、作業チャンバー2の蓋3を開放して、荷積降マニピュレーター1により処理対象となるワークピースを作業チャンバー2内に載置する。蓋3の動作は、遠隔制御装置7によって制御される。
【0047】
放射性要素の表面処理は、回転テーブル4上で行われる。無塵研磨剤ブラスト装置8の操作は、圧縮空気を供給することによって行われる。同時に、遠隔制御装置7を使用して、研磨剤スラリー収集装置10および排気換気装置6がオンにされる。
【0048】
ウォータージェット切断装置9の動作は、加圧下で水を供給することによって実行される。
【0049】
使用済みの水性研磨剤は、水と共に沈殿タンク24に移動され、研磨剤の粗い破片が廃棄物収集容器27に沈殿する。
【0050】
沈殿タンク24内の内容量が上限作業レベルに達すると、上限センサー26が作動し、ポンプ30がオンになり、液体(浄化された部分)が第2の洗浄段階のためにハイドロサイクロン装置29に供給される。
【0051】
ハイドロサイクロン装置29では、研磨剤の微細な破片が堆積し、液体放射性廃棄物が専用の下水道システムに排出される。その排水パイプには、研磨剤含有量を監視するためのサンプリングノズルがある。
【0052】
沈殿タンク24内の廃液が低いレベルに達すると、下限センサー25が動作し、ポンプ30がオフにされる。
【0053】
廃棄物収集容器27は、傾動装置28に移動される。
【0054】
廃棄物収集容器27は、専用の荷役装置(load handling device)により、傾動装置28のバスケット内に設置される。傾動装置28でバスケットを傾けることによって、液相部分が漏斗に排出される。
【0055】
バスケットの傾き角(回転角)が135°に達すると、センサー(図には示されていない)がトリガーされ、傾動をオフにする信号を出す。液相部分を排出した後、バスケットを元の状態に戻し、廃棄物収集容器27に標準の蓋が取り付けられる。廃棄物収集容器27は、一時保管場所に移動される。
【0056】
放射性要素の表面の除染プロセスが完了した後、必要な測定が、放射線監視装置11によって実行される。得られた結果に基づいて、再処理または固体放射性廃棄物倉庫への移送が行われる。