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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-27
(45)【発行日】2023-01-11
(54)【発明の名称】燃料タンク用弁装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 37/00 20060101AFI20221228BHJP
   B60K 15/035 20060101ALI20221228BHJP
   F16K 31/18 20060101ALI20221228BHJP
   F16K 31/22 20060101ALI20221228BHJP
【FI】
F02M37/00 311K
B60K15/035 A
F02M37/00 301E
F02M37/00 301R
F16K31/18 C
F16K31/22
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021149862
(22)【出願日】2021-09-15
(62)【分割の表示】P 2018141151の分割
【原出願日】2018-07-27
(65)【公開番号】P2022001763
(43)【公開日】2022-01-06
【審査請求日】2021-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000135209
【氏名又は名称】株式会社ニフコ
(74)【代理人】
【識別番号】100098202
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信彦
(72)【発明者】
【氏名】赫 明亮
(72)【発明者】
【氏名】隋 暁輝
(72)【発明者】
【氏名】鷲尾 洋介
【審査官】楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-126414(JP,A)
【文献】特開平09-264220(JP,A)
【文献】特開2003-293876(JP,A)
【文献】特開2009-274710(JP,A)
【文献】特開2010-253975(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 37/00
B60K 15/035
F16K 31/18~31/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンク内外を連通する第一弁口及び第二弁口と、
前記第一弁口下に形成される第一弁室と、
前記第二弁口下に形成されると共に、隔壁によって前記第一弁室と区分された第二弁室と、
前記第一弁室内に上下動可能に配されるフロートとを少なくとも備え、
前記第一弁室は、流体の通過部を持った前記フロートの支持部の下方に開放端を位置させる構成となっていると共に、
前記支持部にはオリフィスが形成されており、
前記第一弁室に形成された割欠き部によって前記支持部よりも下方で且つ前記開放端よりも上方に、前記オリフィスに連絡するオリフィス用通気路の入り口を形成させており、
しかも、前記第一弁室の側部であって前記支持部の上方に、上部オリフィスが形成されていると共に、
前記第二弁室の側部に通気窓穴を形成させてなり、
さらに、前記支持部を、前記第一弁室の中心側に突き出すように形成されると共に内部を前記オリフィス用通気路とした支柱部の上端に一体化されて前記第一弁室内に浮島状に支持される円板状体に前記オリフィスを形成し、この円板状体の側方に前記通過部を形成させた構成としてなる、燃料タンク用弁装置。
【請求項2】
前記第一弁室の前記開放端に前記燃料タンク内の燃料の液面レベルが達したときに燃料タンクの内圧を上昇させて給油ガン側のセンサに満タンを検知させると共に、この満タン検知後の追加給油を前記オリフィス用通気路の前記入り口に前記液面レベルが達するまで許容させるようにしてなる、請求項1に記載の燃料タンク用弁装置。
【請求項3】
前記支持部に二以上の前記オリフィスが形成されると共に、各前記オリフィスにそれぞれ対応した前記オリフィス用通気路を形成させてなる、請求項2に記載の燃料タンク用弁装置。
【請求項4】
前記オリフィスを、前記フロートの中心軸上に位置される前記支持部の中心を挟んだ対称位置にそれぞれ形成させてなる、請求項3に記載の燃料タンク用弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車や二輪自動車などの燃料タンクに取り付けられてかかる燃料タンクの通気流路の一部をなすと共に、開弁状態において燃料タンク内外を連通させるように機能される燃料タンク用弁装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
下端に主流入部を備えた下部室内に、キャニスターに連通した上部室との連通部を、前記主流入部への燃料の流入により上昇して閉鎖するフロート体を納めてなる過給油防止バルブとして、特許文献1に示されるものがある。
【0003】
この特許文献1のバルブによれば、燃料タンク内の燃料の液面レベルが前記主流入部に達したときに、燃料タンクの内圧を上昇させることができ、それと共に前記下部室内に流入される燃料によって前記フロート体を上昇させて前記連通部を閉鎖することができる。そして、これによってフィーラーパイプ内の燃料レベルを上昇させて給油ガンのセンサに一回目の満タンの検知をさせ、給油のオートストップを実行させることができる。
【0004】
この特許文献1の図7図10に示されるバルブにあっては、前記主流入部の上方に側部オリフィスが形成されており、前記一回目の満タンの検知により給油が停止された後は、この側部オリフィスからの通気により、フィーラーパイプ内の燃料レベルを下降させて、燃料の液面レベルが側部オリフィスのレベルに達するまでの追加給油を許容させるようになっている。
【0005】
しかるに、この特許文献1のバルブでは、前記フロート体が上昇する際に前記側部オリフィスから前記下部室内に入り込む燃料タンク内の気体(ベーパー)が下部室内に入り込んだ燃料内に激しい泡立ちを生じさせるため、第一に、この気体が前記フロート体の規則的な上昇に少なからず影響を与えてしまう。また、第二に、前記フロート体が上昇して前記連通部を閉鎖する前に前記フロート体の側方を前記気体が通過して前記下部室内の燃料を前記連通部から外部に噴き出させしまう事態を生じさせ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第3911185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、この種の弁装置において、これを構成するフロートの規則的な上昇を確保して、前記一回目の満タンの検知が確実になされるようにすると共に、弁装置を通じて燃料タンク外に燃料を噴き出させてしまうような事態を可及的に防止し得る構造を弁装置に効果的に付与できるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を達成するために、この発明にあっては、燃料タンク用弁装置を、燃料タンク内外を連通する第一弁口及び第二弁口と、
前記第一弁口下に形成される第一弁室と、
前記第二弁口下に形成されると共に、隔壁によって前記第一弁室と区分された第二弁室と、
前記第一弁室内に上下動可能に配されるフロートとを少なくとも備え、
前記第一弁室は、流体の通過部を持った前記フロートの支持部の下方に開放端を位置させる構成となっていると共に、
前記支持部にはオリフィスが形成されており、
前記第一弁室に形成された割欠き部によって前記支持部よりも下方で且つ前記開放端よりも上方に、前記オリフィスに連絡するオリフィス用通気路の入り口を形成させており、
しかも、前記第一弁室の側部であって前記支持部の上方に、上部オリフィスが形成されていると共に、
前記第二弁室の側部に通気窓穴を形成させてなり、
さらに、前記支持部を、前記第一弁室の中心側に突き出すように形成されると共に内部を前記オリフィス用通気路とした支柱部の上端に一体化されて前記第一弁室内に浮島状に支持される円板状体に前記オリフィスを形成し、この円板状体の側方に前記通過部を形成させた構成としてなる、ものとした。
【0009】
前記の一回目の満タン検知がなされるときには、前記オリフィスから第一弁室内に燃料タンク内の気体が入り込み、第一弁室内に入り込んだ燃料内に激しい泡立ちを生じさせるが、オリフィスはフロートの下方に位置する支持部に形成されていることから、オリフィスから入り込む気体がフロートの規則的な上昇に影響を与える事態を可及的に減じることができる。また、フロートが上昇して第一弁口を閉鎖する前にフロートの側方を前記気体が通過して第一弁室内の燃料を第一弁口から外部に噴き出させしまうような事態も可及的に減じることができる。これにより、この発明にあっては、第一弁室の開放端に燃料の液面レベルが達すると同時にフロートを上昇させて第一弁口を塞ぎ、前記の一回目の満タン検知を確実に実現させることができる。
【0010】
そして、この発明にあっては、前記の満タンの検知により給油が停止され、燃料タンク内の圧力が低下した後は、フロートの下降により第一弁口が開放されると共に、オリフィス用通気路、オリフィス、第一弁口を通じた通気によって、オリフィス用通気路の入り口に燃料の液面レベルを達しさせるまでの追加給油が許容される。
【0011】
前記第一弁室の前記開放端に前記燃料タンク内の燃料の液面レベルが達したときに燃料タンクの内圧を上昇させて給油ガン側のセンサに満タンを検知させると共に、この満タン検知後の追加給油を前記オリフィス用通気路の前記入り口に前記液面レベルが達するまで許容させるようにすることが、この発明の態様の一つとされる。
【0012】
また、前記支持部に二以上の前記オリフィスを形成させると共に、各前記オリフィスにそれぞれ対応した前記オリフィス用通気路を形成させるようにすることが、この発明の態様の一つとされる。
【0013】
また、前記オリフィスを、前記フロートの中心軸上に位置される前記支持部の中心を挟んだ対称位置にそれぞれ形成させるようにすることが、この発明の態様の一つとされる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、弁装置を構成するフロートの規則的な上昇を確保して、前記一回目の満タンの検知が確実になされるようにすると共に、弁装置を通じて燃料タンク外に燃料を噴き出させてしまうような事態を可及的に防止し得る構造を弁装置に効果的に付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、この発明の一実施の形態にかかる弁装置の斜視図であり、弁装置を下方から見て示している。
図2図2は、前記弁装置の断面図であり、燃料タンクの上部及び弁装置に接続される管を想像線で表している。
図3図3は、弁装置の底面図である。
図4図4は、図3におけるA-A線位置での断面図である。
図5図5は、図3におけるB-B線位置での断面図である。
図6図6は、前記弁装置を構成する胴体の要部破断斜視図であり、第一フロートの記載を省略している。
図7図7は、前記弁装置を構成する装置上部の斜視図である。
図8図8は、前記弁装置を構成する胴体の斜視図である。
図9図9は、前記弁装置を構成する胴体の斜視図である。
図10図10は、前記弁装置を構成する胴体の側面図である。
図11図11は、図10におけるC-C線位置での断面図である。
図12図12は、前記弁装置を構成する胴体の側面図である。
図13図13は、図12におけるD-D線位置での断面図である。
図14図14は、前記弁装置を構成する下部パーツの斜視図である。
図15図15は、前記弁装置を構成する下部パーツの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1図15に基づいて、この発明の典型的な実施の形態について、説明する。この実施の形態にかかる弁装置Vは、自動車や二輪自動車などの燃料タンクTに取り付けられてかかる燃料タンクTの通気流路の一部をなすと共に、開弁状態において燃料タンクT内外を連通させるように機能されるものである。かかる弁装置Vは、典型的には、燃料タンクTの上部Taに取り付けられて、燃料タンクTの通気流路の一部を構成する。かかる弁装置Vは、図示の例のように、燃料タンクTに設けた取り付け穴Tbを利用して、あるいは、図示は省略するが燃料タンクT内に設けたブラケットなどを利用するなどして、燃料タンクTに備えさせることができる。
【0017】
弁装置Vは、燃料タンク内外を連通する第一弁口1及び第二弁口2と、
前記第一弁口1下に形成される第一弁室3と、
前記第二弁口2下に形成されると共に、隔壁5によって前記第一弁室3と区分された第二弁室4と、
前記第一弁室3内に上下動可能に配される第一フロート6と、
前記第二弁室4内に上下動可能に配される第二フロート7とを少なくとも備えている。
【0018】
前記第一弁室3は、流体の通過部3dを持った第一フロート6の支持部3aの下方に開放端3eを位置させる構成となっている。
【0019】
一方、前記第二弁室4は、前記第一弁室3の前記開放端3eよりやや上方に流体の通過部4bを持った第二フロート7の支持部4aを備えている。
【0020】
第一弁室3と第二弁室4とは前記隔壁5によって気密状態に区分されている。第一弁室3は第一弁口1をもって外部に連通し、第二弁室4は第二弁口2をもって外部に連通する。第一弁室3は、開放端3eと後述の上部オリフィス9をもって燃料タンクT内における燃料の液面レベルよりも上方の空間に連通し、第二弁室4は、支持部4aの通過部4bと後述の通気窓穴8をもって燃料タンクT内における燃料の液面レベルよりも上方の空間に連通している。
【0021】
かかる弁装置Vによれば、燃料タンクT内の燃料レベル(液位)が第一弁室3の開放端3eに達したときは(図4における符号L1で示すレベル)、燃料タンクTの内圧の上昇とこれに伴う第一弁室3内への燃料の流入を生じさせることができる。これにより、第一フロート6を上昇させて第一弁口1を閉鎖して、燃料タンクTの内圧の上昇によって図示しないフィーラーパイプ内の燃料レベルを上昇させて図示しない給油ガン(給油ノズル)のセンサに満タンを検知させて給油を停止させることができる(一回目の満タン検知)。
【0022】
また、前記一回目の満タンの検知により給油が停止された後は、第二弁室4と第二弁口2とを通じた通気により、燃料タンクTの内圧を低下させることができる。
【0023】
図示の例では、第二弁室4の側部であって支持部4aの上方に、通気窓穴8が形成されており、前記給油停止後は主として前記通気窓穴8と第二弁口2とを通じて通気がなされるようになっている。
【0024】
また、図示の例では、第一弁室3の側部であって支持部3aの上方に、上部オリフィス9が形成されており、前記給油停止後は上部オリフィス9と、後述のフランジ形成体10aと胴体10bとの間の隙間とを通じた通気により第一弁室3の内圧は低下し第一弁室3内の燃料レベルが下がり第一フロート6は下降して第一弁口1は開弁されるようになっている。
【0025】
これにより、フィーラーパイプ内の燃料レベルが下がり、追加給油が可能になる。この実施の形態にあっては、第一弁室3が、後述のオリフィス22とオリフィス用通気路24を有しており、このオリフィス用通気路24の入り口24aが、前記第一弁室3の前記開放端3eに形成された割欠き部23によって前記支持部3aよりも下方で且つ前記第一弁室3の開放端3eよりも上方に位置されることから、燃料タンクT内の燃料の液面レベルがオリフィス用通気路24の入り口24aに達するまで追加給油が許容される。追加給油により、燃料タンクT内の燃料の液面レベルがオリフィス用通気路24の入り口24aに達すると(図4における符号L2で示すレベル)、燃料タンクTの内圧の上昇と第一弁室3内への燃料の流入とが再び生じ給油ガンのセンサに再び満タンを検知させて給油を停止させることができる(二回目の満タン検知)。
【0026】
また、車両に大きな傾きなどが生じたときは、第一フロート6及び第二フロート7によって第一弁口1及び第二弁口2を閉鎖して燃料タンクT外に燃料が漏れ出さないようにすることができる。
【0027】
すなわち、前記第一フロート6は、満タン検知弁の弁体として機能するものとなっており、前記第二フロート7は、ロールオーバーバルブの弁体として機能するものとなっている。
【0028】
また、弁装置Vは、前記第一弁室3及び前記第二弁室4を、前記第一弁口1及び前記第二弁口2を備えた装置上部10に対し、
前記第一フロート6の前記支持部3a、前記開放端3e、及び前記第二フロート7の前記支持部4aを備えた下部パーツ11を嵌合させて形成させてなる。
【0029】
これにより、かかる弁装置Vにあっては、前記装置上部10の構成を変えることなく、下部パーツ11を取り替えることにより、前記のように検知される満タンとなる燃料タンクT内の燃料の液面レベルのレベルを変更することができる。すなわち、第一弁室3の開放端3eのレベルを高くする下部パーツ11を装置上部10に組み合わせるようにすれば、前記のように検知される満タンとなる燃料タンクT内の燃料の液面レベルのレベルは高くなり、第一弁室3の開放端3eのレベルを低くする下部パーツ11を装置上部10に組み合わせるようにすれば、前記のように検知される満タンとなる燃料タンクT内の燃料の液面レベルのレベルは低くなる。
【0030】
装置上部10は、フランジ形成体10aと、胴体10bとを組み合わせてなる。
フランジ形成体10aは、上端を閉塞させ下端を開放させた円筒状体10cのこの上端と下端との間に、外鍔10dを形成させた態様となっている。前記上端と外鍔10dとの間には、管一端をフランジ形成体10a内の空間に連通させて側方に延出される接続管部10eが形成されている。
【0031】
胴体10bは、フランジ形成体10aの内径と実質的に等しい外径を備えた円筒状体10gの上端に横向き隔壁10hを形成させると共に、この横向き隔壁10hと下端との間に亘って、胴体10bの内部を二分する前記隔壁5となる縦向き隔壁5aを備えた形態となっている。
【0032】
横向き隔壁10hの中央を挟んだ一方側に第一弁口1が形成され、横向き隔壁10hの中央を挟んだ他方側に第二弁口2が形成されている。
【0033】
図示の例では、第一弁口1は横向き隔壁10hを上下に貫通する円形の穴となっている。
【0034】
一方、図示の例では、第二弁口2は,横向き隔壁10hの下面から下方に突き出す膨出部12の下端に形成されている。第二弁口2の上方にはチェックバルブとなる弁体14の収納室13が形成されている。チェックバルブを構成する弁体14は、軸状の内側弁体14aと筒状の外側弁体14bとから構成されている。外側弁体14bは、収納室13の上下方向中程の位置に形成された上向きの周回段差面13aに、図中符号15で示されるバネの付勢により上方から押しつけられるようになっている。一方、内側弁体14aは、外側弁体14bの下端開口縁14cに図中符号16で示されるバネの付勢により下方から押しつけられるようになっている。
【0035】
図示の例では、燃料タンクT内が所定の高圧となると、外側弁体14bが上方に移動して前記周回段差面13aのシールを解き、燃料タンクT内の気体が第二弁口2を通じて燃料タンクT外に排気されるようになっている。また、燃料タンクT内が所定の低圧となると、内側弁体14aが下方に移動して前記外側弁体14bの下端開口縁14cのシールを解き、燃料タンクT内に外気が第二弁口2を通じて燃料タンクT内に送り込まれるようになっている。
【0036】
胴体10bの外径は、フランジ形成体10aの円筒状体10cの内径と実質的に等しくなっている。胴体10bの外側には前記フランジ形成体10aの下端側を納める隙間を形成する外側壁10iが形成されており、この外側壁10iの窓穴10jに図中符号で示される前記円筒状体10cの外側に形成された係合突起10fを係合させることで、フランジ形成体10aと胴体10bとが組み合わされるようになっている(図7)。この組み合わせ状態において、フランジ形成体10aの内部空間と胴体10bの内部空間とは、第一弁口1と第二弁口2とを介してのみ連通される。図2中、符号17は、前記フランジ形成体10aの内面と前記胴体10bの外面との間のシールリングである。
【0037】
図示の例では、燃料タンクTに形成された取り付け穴Tbに前記フランジ形成体10aの外鍔10dより下側に位置される部分を納めると共に、この外鍔10dを燃料タンクTの外面部に溶着させることで、燃料タンクTに弁装置Vが取り付けられるようになっている。前記接続管部10eは前記通気流路を構成する管Pに差し込まれ、これにより、燃料タンクT内外は弁装置Vを介して連絡される(図2)。
【0038】
前記縦向き隔壁5aは、胴体10bを左右に二分する仮想の垂直面S(図3参照)を挟んだ一方側に形成されると共に、この一方側に位置される胴体10bの側面との間に、水平断面の輪郭形状を楕円形とする第一弁室3となる空間を形成する形態となっている。すなわち、前記縦向き隔壁5aは、前記仮想の垂直面Sを挟んだ他方側を湾曲外側とする湾曲を持った形態となっている(図7図9図11)。
【0039】
前記胴体10bにおける縦向き隔壁5aの湾曲外側に、前記第二弁室4となる空間が形成される。第二弁室4となる空間は、水平断面の輪郭形状を三日月形とする(図7図9図11)。
【0040】
この実施の形態にあっては、第一弁室3となる空間を構成する縦向き隔壁5a及び胴体10bの一部の下端は、第二弁室4となる空間を構成する胴体10bの下端よりも下方に突き出している(図7図9)。
【0041】
一方、下部パーツ11は、第一フロート6の支持部3aの上方を円筒状とすると共に、この支持部3aの下方に、スカート部11dと、第二フロート7の支持部4aとを備えた構成となっている。
【0042】
下部パーツ11における第一フロート6の支持部3aの上方となる上側部分11aは、その内径を装置上部10の胴体10bの外径と実質的に等しくしている。図示の例では、下部パーツ11の上側部分11aに形成させた窓穴11bに図中符号10kで示される前記胴体10bの外側に形成された係合突起を係合させることで、装置上部10と下部パーツ11とが組み合わされるようになっている(図1参照)。
【0043】
下部パーツ11における第一フロート6の支持部3aの下方となる下側部分11cは、下部パーツ11を左右に二分する仮想の垂直面S(図3参照)に沿った一方側においては、水平断面の輪郭形状を実質的に半円状とするスカート部11dとなっている。
【0044】
また、下部パーツ11における下側部分11cは、下部パーツ11を左右に二分する仮想の垂直面Sに沿った他方側においては、水平断面の輪郭形状を実質的に四角形とする第二フロート7の角筒状収納部11eとなっている。
【0045】
スカート部11dの下端が、前記開放端3eとして機能する。また、角筒状収納部11eの下端を覆う横板部が第二フロート7の支持部4aとして機能する。
【0046】
図示の例では、下部パーツ11の上側部分11aと下側部分11cとの間を区分する横向きの隔壁11fに、前記仮想の垂直面Sを挟んだ一方側においては楕円形貫通穴11gが形成され、前記仮想の垂直面Sを挟んだ他方側においては前記角筒状収納部11eに連通する実質的に四角形の四角形貫通穴11aが形成されている(図15)。
【0047】
楕円形貫通穴11gは、前記第一弁室3となる空間を形成する形態となっている。楕円形貫通穴11gの実質的に半分は下部パーツ11の側面11iで形成されている。楕円形貫通穴11gの残りの半分となる箇所は、前記横向きの隔壁11fの上面側において、立ち上がり部11jで縁取られている(図14図15)。また、楕円形貫通穴11gの穴縁部には、前記立ち上がり部11jのやや下方となる箇所に、上向きの段差面11kが楕円形貫通穴11gの中心を巡る周回方向に亘って形成されている。
【0048】
この実施の形態にあっては、装置上部10に下部パーツ11を前記のように組み合わせたときに、装置上部10の胴体10bにおける第一弁室3となる空間を構成する縦向き隔壁5a及び胴体10bの一部の下端(以下、この下端を被嵌合部18という。)が、下部パーツ11の楕円形貫通穴11gを囲う下部パーツ11の側面11i及び立ち上がり部11j(以下、これらを嵌合部19という。)内にはまり込み、前記第一弁室3と前記第二弁室4とが、両者の間を気密にシールした状態で形成されるようになっている。
【0049】
すなわち、この実施の形態にあっては、前記第一弁室3を形成する前記装置上部10の被嵌合部18を水平断面の輪郭形状を楕円形とするように構成すると共に、
前記装置上部10と前記下部パーツ11との嵌合時に、前記被嵌合部18に嵌合される前記下部パーツ11の嵌合部19の水平断面の輪郭形状を、前記被嵌合部18の前記輪郭形状に実質的に整合した楕円形とさせている。
【0050】
嵌合部19及び被嵌合部18の水平断面の輪郭形状が直線的な部分を持つ場合、両者の寸法精度を高く確保しないと両者の嵌合時に両者間に一定の嵌合力を作用させ難い部分が生じ易い。これに対し、この実施の形態にあっては、嵌合部19及び被嵌合部18の水平断面の輪郭形状を楕円形とすることで、両者の嵌合時に、前記楕円形の中心を巡る各位置において、両者をできるだけ一定の嵌合力をもって密着させることができる。これにより、この実施の形態にあっては、装置上部10と下部パーツ11とを単純に組み合わせるだけで、シールリングや溶着などを必要とすることなく、装置上部10と下部パーツ11とによって第一弁室3と第二弁室4とを両者間に可及的に通気を生じさせない状態で適切に形成させることができる。それと共に、このようにすることで、水平断面の輪郭形状を実質的に円形とする弁装置V内に形成される前記第一弁室3の断面積を最大化させることができる。
【0051】
すなわち、この実施の形態にあっては、前記被嵌合部18と前記嵌合部19とは、気密状態に嵌合されるようになっている。なお、本明細書において気密とは、第一弁室3と第二弁室4との間に弁装置Vの機能を損なうレベルの通気を生じさせないことを意味し、完全な気密を意味してはいない。
【0052】
また、この実施の形態にあっては、前記被嵌合部18と前記嵌合部19とは、これらの一方の内側にこれらの他方を位置させるようにして、嵌め合わされている。
【0053】
また、この実施の形態にあっては、前記装置上部10及び前記下部パーツ11を合成樹脂から構成すると共に、前記被嵌合部18及び前記嵌合部19の双方又はいずれか一方を薄肉に構成させている。図示の例では、被嵌合部18とこれより上方の胴体10bの内面間に第一弁室3内において段差20が形成されるように、この被嵌合部18を薄肉に構成させている(図9参照)。これにより、前記嵌合時に被嵌合部18側を弾性変形し易くすると共に、嵌合箇所が他の箇所に比しできるだけ厚肉とならないようにしている。
【0054】
下部パーツ11の横向き隔壁10hに形成された楕円形貫通穴11g内に、第一フロート6の支持部3aが形成されている。
【0055】
図示の例では、第一フロート6の支持部3aは、前記楕円形貫通穴11gの中央に配される円板状体3bを含んで構成されている。かかる円板状体3bは、第一フロート6の底部の直下に位置するように、下部パーツ11内に形成された支柱部21によって支持されている。
【0056】
支柱部21は、下部パーツ11のスカート部11dの内側から楕円形貫通穴11gの中心側に向けて突き出している。支柱部21はスカート部11dの上下方向に沿って形成されている。また、支柱部21の内部は中空となっている。また、支柱部21の下端21aは開放され、支柱部21の上端21bは閉塞されている。図示の例では、支柱部21は、スカート部11dにおける前記楕円形貫通穴11gの短軸に向き合う箇所からそれぞれ前記楕円形貫通穴11gの中心に向けて突き出すように、形成されている(図3参照)。図示の例では、支柱部21は、スカート部11dを水平断面にした状態において、上下方向に亘るいずれの位置においても、実質的に同じ輪郭形状を持つように形成されており、下部パーツ11の側面11iと、これに向き合う楕円形貫通穴11gの中心側に位置される壁面21cと、この壁面21cと前記側面11iとの間に細長く、かつ、楕円形貫通穴11gの中心側に近づくに連れて漸減する扁平四角形状の空間を形成する二つの壁面21dとによって構成されている。
【0057】
円板状体3bは一対の支柱部21の前記楕円形貫通穴11gの中心側に位置される上端21bに円板状体3bの下面を一体化させることで、一対の支柱部21によって前記楕円形貫通穴11gの中央に浮島状に支持されている。楕円形貫通穴11gと円板状体3bとの間に形成される隙間が第一フロート6の支持部3aの流体の通過部3dとして機能する。
【0058】
円板状体3bには、支柱部21の内部に連通するオリフィス22が形成されている。一方、支柱部21の下端21aは、スカート部11dの内側ではスカート部11dの開放端3eと一致するが(前記壁面21c、21dの下端)、スカート部11dの外側では、スカート部11dを構成する外殻(下部パーツ11の側面11i)の一部を下方から割欠く割欠き部23によってスカート部11dの開放端3eよりもやや上方に位置されるようになっている。割欠き部23の上縁(スカート部11dの外側の支柱部21の下端21a/後述のオリフィス22用通気路24の入り口24a)は実質的に水平ををなし、割欠き部23の左縁及び右縁は実質的に鉛直をなし、割欠き部23は下方において開放されている。
【0059】
前記の一回目の満タン検知がなされるときには、前記オリフィス22から第一弁室3内に燃料タンクT内の気体が入り込み、第一弁室3内に入り込んだ燃料内に激しい泡立ちを生じさせるが、オリフィス22は第一フロート6の下方に位置する支持部3aに形成されていることから、オリフィス22から入り込む気体が第一フロート6の規則的な上昇に影響を与える事態を可及的に減じることができる。また、第一フロート6が上昇して第一弁口1を閉鎖する前に第一フロート6の側方を前記気体が通過して第一弁室3内の燃料を第一弁口1から外部に噴き出させしまうような事態も可及的に減じることができる。これにより、この実施の形態にあっては、第一弁室3の開放端3eに燃料の液面レベルが達すると同時に第一フロート6を上昇させて第一弁口1を塞ぎ、前記の一回目の満タン検知を確実に実現させることができる。
【0060】
そして、この実施の形態にあっては、前記の満タンの検知により給油が停止され、第二弁室4と第二弁口2とを通じた通気により燃料タンクT内の圧力が低下された後は、第一フロート6が下降し第一弁口1が開放されると共に、支柱部21の下端、オリフィス22、第一弁口1を通じた通気も確保され、これにより、前記割欠き部23の上縁に燃料の液面レベルを達しさせるまでの追加給油が許容されるようになっている。
【0061】
すなわち、この実施の形態にあっては、前記支持部にはオリフィス22が形成されていると共に、前記第一弁室3の前記開放端3e側に形成された割欠き部23によって前記支持部3aよりも下方で且つ前記開放端3eよりも上方に、前記オリフィス22に連絡するオリフィス用通気路24の入り口24aを形成させている。図示の例では、前記支柱部21の内部が前記オリフィス用通気路24ととして機能し、支柱部21の下端21aの一部がオリフィス用通気路24の入り口24aとして機能するようになっている。
【0062】
そして、前記第一弁室3の開放端3eに前記燃料タンクT内の燃料の液面レベルが達したときに燃料タンクTの内圧を上昇させて給油ガン側のセンサに満タンを検知させると共に、この満タン検知後の追加給油を前記オリフィス用通気路24の入り口24aに前記液面レベルが達するまで許容させるようにしている。
【0063】
また、この実施の形態にあっては、前記支持部3aに二以上の前記オリフィス22が形成されると共に、各前記オリフィス22にそれぞれ対応した前記オリフィス用通気路24を形成させている。
【0064】
より具体的には、この実施の形態にあっては、前記オリフィス22を、前記第一フロート6の中心軸上に位置される前記支持部3aの中心3c、図示の例では、前記円板状体3bの中心3cを挟んだ対称位置であって、前記第一フロート6の底部の直下となる箇所に、それぞれ形成させている(図3参照)。
【0065】
第一フロート6は、円柱状をなす主体部6aと、この主体部6aの上部に組み合わされた可動部材6bとを備えた構成となっている。第一フロート6は、その下端を第一弁室3の支持部3aに接しさせる下降位置と、前記可動部材6bによって前記第一弁口1を塞ぐ上昇位置との間での移動可能に第一弁室3内に納められている。図中符号25で示すのは、前記支持部と第一フロート6との間に介在して第一フロート6に一定の上向きの力を付与するバネである。第一フロート6とバネ25は、装置上部10に下部パーツ11を組み合わせる前に両者間に納められる。装置上部10内には、第一フロート6を第一弁口1の直下に位置づける上下方向に沿ったリブ26が複数形成されている。隣り合うリブ26間がそれぞれ、前記通気流路の一部となる。第一弁室3内に燃料が流入すると、第一フロート6は上昇位置まで移動し、可動部材6bの上面によって第一弁口1を閉鎖する。給油が停止されて第一弁室3内から燃料が流出すると、第一フロート6は下降位置まで移動し、第一弁口1は開放される。このとき、第一弁口1に可動部材6bが張り付くような力が作用されていても、主体部6aの自重により可動部材6bに傾きを生じさせながら第一弁口1から引き剥がすことができるようになっている。
【0066】
第二フロート7は、円柱状をなすと共に、その上部に円錐状の突出部7aを備えた構成となっている。第二フロート7は、その下端を第二弁室4の支持部4aに接する位置と、前記突出部7aを前記第二弁口2に入り込ませてこの第二弁口2を塞ぐ位置との間での移動可能に第二弁室4内に納められている。第二弁室4の支持部4aには、流体の通過部4bとして機能する複数の貫通穴が形成されている。図中符号27で示すのは、前記支持部と第二フロート7との間に介在して第二フロート7に一定の上向きの力を付与するバネである。第二フロート7とバネ27は、装置上部10に下部パーツ11を組み合わせる前に両者間に納められる。装置上部10内には、第二フロート7を第二弁口2の直下に位置づける上下方向に沿ったリブ28が複数形成されている。隣り合うリブ28間がそれぞれ、前記通気流路の一部となる。車両に大きな傾きなどが生じたときは、第二フロート7は第二弁口2を塞ぐ位置まで移動し、前記突出部7aによって第二弁口2を閉鎖する。
【0067】
なお、当然のことながら、本発明は以上に説明した実施態様に限定されるものではなく、本発明の目的を達成し得るすべての実施態様を含むものである。
【符号の説明】
【0068】
T 燃料タンク
1 第一弁口(弁口)
3 第一弁室(弁室)
3a 支持部
3a 開放端
6 第一フロート(フロート)
22 オリフィス
23 割欠き部
24 オリフィス用通気路
24a 入り口
図1
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