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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-27
(45)【発行日】2023-01-11
(54)【発明の名称】積荷を搬送するための車両
(51)【国際特許分類】
   B61D 47/00 20060101AFI20221228BHJP
   B60P 7/06 20060101ALI20221228BHJP
   B61B 13/00 20060101ALI20221228BHJP
【FI】
B61D47/00 A
B60P7/06 Z
B61B13/00 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022506957
(86)(22)【出願日】2020-07-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-17
(86)【国際出願番号】 EP2020070407
(87)【国際公開番号】W WO2021032383
(87)【国際公開日】2021-02-25
【審査請求日】2022-03-29
(31)【優先権主張番号】102019122052.1
(32)【優先日】2019-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503306168
【氏名又は名称】フラウンホーファー・ゲゼルシャフト・ツール・フェルデルング・デア・アンゲヴァンテン・フォルシュング・エー・ファウ
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ベーリング・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ロートゲーリ・マティアス
(72)【発明者】
【氏名】エメリヒ・ヤン・ゼーレン
(72)【発明者】
【氏名】ヘニング・ディルク
(72)【発明者】
【氏名】クロコフスキー・パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ハマーマイスター・クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】テン・ホムペル・ミヒャエル
【審査官】姫島 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-032953(JP,A)
【文献】特開2002-002493(JP,A)
【文献】特開2015-199401(JP,A)
【文献】特開2012-192925(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0106362(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 47/00
B60P 7/06
B61B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャーシ(4)上に配置されている荷台(3)によって積荷(1)を搬送するための車両であって、荷台(3)は、荷台(3)の縁で積荷(1)を固定する保持要素(8)を有し、車両制御システムが設けられている当該車両において、
保持要素(8)は、荷台(3)の周縁部の一部領域にのみ延在し、垂直軸(7)周りに回転可能であるように構成されており、車両制御装置は、保持要素(8)が少なくとも、積荷(1)が荷台(3)の表面(3a)と積荷(1)の接触面(1a)との間の静止摩擦力を越えて移動していく荷台(3)の側に位置するように、シャーシ(4)の現在の又は予想される加速度又は減速度に基づいて、保持要素(8)をそれぞれ現在の進行方向に対して垂直軸(7)周りで位置調整させるように設定されていることを特徴とする当該車両。
【請求項2】
荷台(3)は、シャーシ(4)に対して相対的に垂直軸(7)周りに回転可能であることを特徴とする、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
シャーシ(4)が全方向シャーシであることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両。
【請求項4】
車両制御システムは、車両制御システムにとって既知である走行コースから、それぞれ予想される加速度又は減速度を求めることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の車両。
【請求項5】
車両制御装置は、車両(2)に配置された加速度センサに接続されており、車両制御装置は加速度センサによって検出された現在の加速度又は減速度にそれぞれ基づいて、保持要素(8)の向きを制御することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の車両。
【請求項6】
保持要素(8)は、少なくとも荷台(3)の表面(3a)のレベルまで下げられるように構成されていることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の車両。
【請求項7】
保持要素(8)は、旋回可能であるように荷台(3)又はシャーシ(4)にヒンジ連結されていることを特徴とする請求項6に記載の車両。
【請求項8】
保持要素(8)は、垂直に移動可能であるように荷台(3)又はシャーシ(4)に配置されていることを特徴とする請求項6に記載の車両。
【請求項9】
保持要素(8)の断面が、C字型又はウェブ型に構成されていることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の車両。
【請求項10】
保持要素(8)は、複数の部分で構成されていることを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積荷を搬送するための車両であって、シャーシ上に配置される荷台を有し、荷台には、荷台の縁において積荷の落下を防ぐ保持要素、及び車両制御システムが設けられている車両に関する。
【0002】
搬送システム、特に高速搬送システム(ドライバーレス搬送車両やレールガイド式システム)では、加速、制動、カーブ走行時に積荷が落ちないよう、積荷を固定する必要がある。その際、積荷を固定するために次のような矛盾した要件が求められる。
【0003】
すなわち、すべての側において信頼性の高い積荷の固定を確保する必要がある一方、他方では、積荷の固定はできるだけ単純かつ安価に行われねばならず、さらに、積荷の固定は単純な負荷移動コンセプトにできるだけ沿ったものでなくてはならず、また、積荷に容易にアクセスできるようにする必要がある。
【0004】
このような問題を解決するために知られている車両には、摩擦係数が低い荷台及び係合的な積荷固定部が備えられており、この積荷固定部は、荷台の周囲を取り囲むように荷台の縁に配置された薄板から成る保持要素として形成されている。さらに、荷台の載置面の摩擦係数を高くして積荷が意図せずにずれることを防止することにより、積荷を固定する車両も知られている。
【0005】
基本的には、例えば側方に取り付けた、開くことができるフラップなど、可動式の側方の確動式積荷固定要素で、作動及び非作動にできるものも使用可能である。しかし、このような積荷固定要素は手間がかかるため安価ではない。
【0006】
特許文献1には、積まれた貨物に適応して走行することによりずれや落下を防止する自律型搬送車両が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】独国特許出願公開第102008030546号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、できるだけ少ない労力で信頼性の高い積荷の固定及び積荷への良好なアクセスを可能とする車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題を解決するために本発明では、先述のタイプの車両において、保持要素が荷台の周縁の一部領域にのみ延在し、かつ垂直軸の周りに回転可能であるように構成されており、このとき、少なくとも荷台の表面と積荷の接触面との間の静止摩擦力を越えて積荷が移動していく荷台の側に保持要素が来るように、車両制御システムは、シャーシの現在の又は予想される加速又は減速に基づいて保持要素を現在の走行方向に応じて垂直軸周りに正しく位置させるよう設定されている。保持要素はまた、一体型に構成された荷台に組み込まれた構成部分とすることもできる。その場合荷台は例えば皿状に構成され、成形された保持要素は荷台の周縁部の一部領域にのみ延在する。
【0010】
このようにして保持要素により係合的に積荷が固定され、保持要素は、例えば荷台の一つの側にのみ配置されるなど、荷台の周縁部の一部領域のみに延在している。このとき、保持要素は、加速や減速によって積荷が移動していく側に常に位置するよう、車両制御システムにより垂直軸周りに回転させられて配置される。それにより車両制御システムは保持要素の向きを積極的に制御し、例えば、強い正の加速度が予想される場合には保持要素は走行方向において後ろに、強い制動が予想される場合には前に、素早いカーブ走行の場合には遠心力の方向において横方向外側に来る。このとき、保持要素は垂直軸の周りにさまざまに回転させることができる。
【0011】
第1の好ましい実施形態によれば、荷台は、垂直軸周りにシャーシに対して相対的に回転可能である。このとき保持要素は荷台に固定されており、保持要素を備えた荷台は、車両制御システムにより、保持要素が正しい位置に来るように位置決めされる。
【0012】
第2の好ましい実施形態では、シャーシは全方向シャーシである。この実施形態ではシャーシ自身が車両制御システムによりそれぞれの回転位置に制御され、保持要素自身がシャーシに対して相対的に回転しなくても保持要素は正しい位置に来る。
【0013】
代替的に、保持要素が荷台に対して相対的に回転可能なように配置することも基本的に可能である。また、前述の実施形態を組み合わせることも可能である。
【0014】
さらなる有利な実施形態では、車両制御システムは、車両制御システムにとって既知である走行コースからそれぞれ予想される加速度又は減速度を求める。好ましくはドライバーレスである車両では、走行コースが車両制御システムに入力されるか、又は、目的地のみが車両制御システムに入力され、そこから車両制御システム自身により走行コースが求められる。この走行コース及びそこから既知となる加速度又は減速度に基づいて、車両制御システムにより保持要素を継続的に相応に調整することが可能である。
【0015】
追加的に又は代替的に、車両制御システムは、車両に配置された加速度センサーに接続されており、加速度センサーにより検出された現在の加速度又は減速度にそれぞれ基づいて保持要素の向きを制御する。
【0016】
さらなる有利な実施形態では、保持要素は少なくとも荷台の表面のレベルまで下げられるよう構成されており、それにより、積荷を取り出すため又は積荷を荷台に載せるために荷台への良好なアクセスが可能となる。
【0017】
その際、保持要素は、荷台、場合によってはシャーシ(全方向型である場合)において、旋回可能にヒンジ連結することも、又は、代替的に垂直方向に移動可能であるようにすることもできる。
【0018】
保持要素は、荷台に適応させる際に基本的に任意の形態とすることができ、好ましくは断面がC字状又はウェブ状に形成されている。
【0019】
保持要素はまた、複数の部分で構成することもできる。
【0020】
以下、図を用いて本発明の例をより詳しく説明する。これらの図はそれぞれ斜視図で表現されている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1の実施形態による車両を図式的に表した図である。
図2】第2の実施形態による車両を図式的に表した図である。
図3】第3の実施形態による車両を図式的に表した図である。
図4図3の車両の分解図である。
図5図1の車両において、保持要素が積荷固定位置にある状態の図である。
図6図5の車両において、保持装置を旋回させて下げた状態の図である。
図7図5の車両において、変更された保持要素が積荷固定位置にある状態の図である。
図8図7の車両において、保持要素を下方に垂直に移動させた状態の図である。
図9図3の車両が加速中である図である。
図10】通常走行中の図9の車両である。
図11】カーブ走行中の図10の車両である。
図12】カーブ走行終了後の、図11の車両である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
積荷1を搬送するための好ましくはドライバーレスである車両は、図において一般的に符号2で表されている。車両2は、搬送すべき積荷1が配置される平らな荷台3を有している。荷台3は、例えば金属又はプラスチック製であり、その表面3aは平坦であって摩擦を高める追加的なコーティングなどは施されておらず、積荷1は簡単に、好ましくは側方からスライドさせて載せたり取り出したりできる。車両2はさらに、一般的に符号4で表されるシャーシを有しており、シャーシの下面にはキャスター5もしくは車輪があることが示されている。
【0023】
図示された実施例においては、荷台3はシャーシ4上に直に配置されているのではなく、シャーシ4の上面と荷台3の下面との間には中間体6が配置されている。この中間体6は、荷台3が、図示されない旋回駆動部を介して垂直軸7周りにシャーシ4に対して相対的に回転可能であるように構成されるよう設計されている。そのために、中間体6がシャーシ4に対して相対的に回転可能であるように構成するか、又は、荷台3が中間体6に対して相対的に回転可能であるように構成することができる。
【0024】
荷台3上の積荷1の落下を防止するために保持要素8が設けられており、これは、荷台3の周縁部の一部領域にのみ延在している。
【0025】
図1の実施例においては、保持要素8は断面がウェブ状に構成されており、荷台3の一つの側にのみ延在している。
【0026】
代替的に、やはり符号8で示されている保持要素は、図2に示すように断面がC字状になるよう構成することもでき、すなわち、図1の保持要素8と比較すると、角の領域において円弧状に延長されており、それにより隣接する荷台3の側縁に部分的に延在している。
【0027】
図3および図4による実施形態においても保持要素8は断面がC字状であるよう構成されているが、側面に2つの切欠部9が設けられている。これらの切欠部9のおかげで保持要素8がある側からも荷台3にアクセスできる。
【0028】
また、保持要素8は、少なくとも荷台3の表面3aのレベルまで下げられるよう構成することができる。図5および図6による実施形態ではそのために、保持要素8が旋回可能であるように荷台3に配置されており、その旋回軸は符号10で表されている。
【0029】
代替的に保持要素8は、中間体6に、又は、シャーシ4が全方向型であればシャーシ4にヒンジ連結することもできる。
【0030】
保持要素8は、図5に図示された、保持要素8が積荷を固定する機能を果している走行位置から、荷台3の表面3aのレベルまで旋回させて図6に示す位置へと下げることができ、それにより、保持要素8がある側からも荷台3及び積荷1にスムースにアクセス可能となる。
【0031】
代替的に、図7および図8の実施形態によると、保持要素8は、垂直方向に移動可能であるように荷台3に配置することができる。この場合、保持要素8は、図7における積荷固定位置もしくは走行位置から垂直に下降させて、図8に示す位置に来るようにすることができる。代替的に保持要素8は垂直方向に移動可能であるように中間体6に、又は、シャーシ4が全方向型であればシャーシ4に配置することもできる。
【0032】
車両1は、ドライバーレスの自走式車両では通常であるように、図示しない車両制御システムを有している。車両制御システムは、保持要素8が少なくとも、荷台3の表面3aと積荷1の接触面1aとの間の静止摩擦力を超えて積荷1が移動していく荷台3の側に来るように、シャーシ4の現在の又は予想される加速度又は減速度に基づいて、保持要素8を現在の走行方向に応じて垂直軸7周りに正しく位置させるよう設定されている。この目的のために、車両制御システムは図示しない旋回駆動装置を制御して、荷台3を、垂直軸7周りにシャーシ4もしくは中間体6に対して相対的に回転させることができる。
【0033】
代替的に、シャーシ4を全方向シャーシにすることも可能である。この場合、車両制御システムは、シャーシ4の車輪もしくはキャスター5を相応に制御してシャーシ4自体が垂直軸7周りに回転して必要な位置に来るようにし、その結果、保持要素8はシャーシ4に対して相対的に回転することなく正しい位置に来る。保持要素8のみが荷台3に対して相対的に垂直軸7周りに回転可能であるように構成することも基本的に可能である。
【0034】
走行経路に応じた保持要素8の正しい位置決めは、様々な方法で実現することができる。車両制御システムは、車両制御システムにとって既知である走行コースから、それぞれ予想される加速度又は減速度を求めることができる。その際は、車両制御システムに目的地のみを入力することもできる。その場合、走行コース及びそこから予想される加速度又は減速度は車両制御システム自身により求められる。
【0035】
代替的に、車両制御システムに走行コース全体を入力もしくは保存することもできる。車両制御システムは、この既知の走行コースから予想されるそれぞれの加速度又は減速度を求め、それぞれ現在必要である回転位置へと保持要素8を制御する。
【0036】
追加的又は代替的に、車両制御システムは、車両1に配置された図示しない加速度センサーに接続することができる。その場合、車両制御システムは、加速度センサーによって検出された現在の加速度又は減速度に基づいて、保持要素8の向きをそれぞれ制御する。
【0037】
図9から図12には、さらに明確にするために様々な走行状態が示されており、ここでは車両1の走行コースが、図示されたサイドポスト11によって表されている。図9における走行位置では、車両2は直進しながら加速している。この加速により、積荷1は荷台3上で後方に移動する傾向がある。したがってこの位置では、保持要素8は車両1の後ろ側に来るように配置されている。
【0038】
図10は、加速も減速もしていない、つまり通常の走行時の走行位置を示している。この位置において保持要素8は荷台3の前側にあるため、急ブレーキや衝突が起こっても積荷1が前に落ちないようになっている。
【0039】
図11は、カーブ走行を示している。カーブ走行中、保持要素8は荷台3においてカーブの外側の側に位置しており、これは、カーブ走行中、積荷1は静止摩擦力を越えてから遠心力によって半径方向外側に移動する傾向があるためである。
【0040】
図12は、カーブ走行が終了し、車両1が再び通常に直進している走行状態を示している。この位置において保持要素8は再び前側に位置している。
【0041】
本発明は図示された実施例に限定されるものではない。基本的な考えに基づいた、さらなる実施形態も可能である。保持要素8は、一体型に構成された荷台3に組み込まれた構成部分とすることもできる。その場合、荷台3は例えば皿状に構成され、このとき成形された保持要素8は荷台3の周縁部の一部領域にのみ延在する。
【符号の説明】
【0042】
1 積荷
1a 接触面
2 車両
3 荷台
3a 表面
4 シャーシ
5 キャスター
6 中間体
7 垂直軸
8 保持要素
9 切欠部
10 旋回軸
11 サイドポスト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12