(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-28
(45)【発行日】2023-01-12
(54)【発明の名称】アルキレンオキシド誘導体、潤滑剤、消泡剤、化粧品用基材およびそれを含む化粧料
(51)【国際特許分類】
C07C 43/11 20060101AFI20230104BHJP
C08G 65/28 20060101ALI20230104BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20230104BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20230104BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20230104BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230104BHJP
C10M 107/34 20060101ALI20230104BHJP
C10M 173/02 20060101ALI20230104BHJP
B01D 19/04 20060101ALI20230104BHJP
C07C 41/03 20060101ALN20230104BHJP
C10N 40/08 20060101ALN20230104BHJP
C10N 40/22 20060101ALN20230104BHJP
C10N 40/24 20060101ALN20230104BHJP
【FI】
C07C43/11 CSP
C08G65/28
A61K8/86
A61K8/06
A61Q1/00
A61Q19/00
C10M107/34
C10M173/02
B01D19/04 B
C07C41/03
C10N40:08
C10N40:22
C10N40:24 Z
(21)【出願番号】P 2019007869
(22)【出願日】2019-01-21
【審査請求日】2021-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097490
【氏名又は名称】細田 益稔
(74)【代理人】
【識別番号】100097504
【氏名又は名称】青木 純雄
(72)【発明者】
【氏名】原 優介
(72)【発明者】
【氏名】市川 晶子
(72)【発明者】
【氏名】砂田 和輝
(72)【発明者】
【氏名】関口 孝治
【審査官】三須 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-349438(JP,A)
【文献】特開2008-247859(JP,A)
【文献】特開2010-132647(JP,A)
【文献】特開2013-241581(JP,A)
【文献】国際公開第2018/030283(WO,A1)
【文献】特表2002-543228(JP,A)
【文献】特許第6799788(JP,B1)
【文献】斎藤好廣,プルロニック系界面活性剤,日本油化学会誌,2000年,49(10),,1071-1080
【文献】酒井俊郎,ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシドブロック共重合体を用いた金属ナノ粒子の新規合成法,J.Jpn.Soc.Colour Matter ,2008年,81(8),,286-293
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/86
C10M 107/34
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表され、かつゲル浸透クロマトグラフィー測定により求められるクロマトグラムから算出される重量平均分子量(Mw)とz平均分子量(Mz)の比率Mz/Mwが式(2)の関係を満足することを特徴とする、
温度変化安定性が改善されたアルキレンオキシド誘導体。
Z-[O-[(PO)a-(EO)b]-H]n ・・・・(1)
(式(1)中、
Zは、炭素数1~24かつ1~6個の水酸基を有する化合物から全ての前記水酸基を除いた残基を示し、
nは1~6の数を示し、
POはオキシプロピレン基を示し、
EOはオキシエチレン基を示し、
aおよびbはそれぞれ前記オキシプロピレン基POおよび前記オキシエチレン基EOの付加モル数を示し、aは1~200の数、bは1~200の数であり、
(PO)a-(EO)bは、前記オキシプロピレン基POおよび前記オキシエチレン基EOがブロック付加していることを示し、
a+b≧10かつa/b=1/5~5/1である。)
20≦Mz/Mw≦
50 ・・・・(2)
【請求項2】
前記クロマトグラムから算出されるテーリング係数(TF)が式(3)および(4)の関係を満たすことを特徴とする、請求項1記載のアルキレンオキシド誘導体。
TF=W
0.05L/2a ・・・(3)
1.5≦TF≦5.0 ・・・(4)
(前記クロマトグラム上で屈折率強度がL/20となる2点のうち、溶出時間が早いほうを点Rとし、溶出時間が遅いほうを点Sとし、点Rと点Sを結んだ直線Hと、前記クロマトグラム上の屈折率強度が最大となる前記極大点KからベースラインBへ引いた垂線との交点をTとしたとき、点Sと交点Tの距離をaとし、点Rと点Sの距離をW
0.05Lとする。)
【請求項3】
請求項1または2記載のアルキレンオキシド誘導体からなることを特徴とする、潤滑剤。
【請求項4】
請求項1または2記載のアルキレンオキシド誘導体からなることを特徴とする、消泡剤。
【請求項5】
請求項1または2記載のアルキレンオキシド誘導体からなることを特徴とする、化粧料用基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なアルキレンオキシド誘導体、潤滑剤、消泡剤、化粧品用基材およびそれを含む化粧用組成物など、種々の用途に有効に使用できる新規アルキレンオキシド誘導体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、アルキレンオキシド誘導体はオキシエチレン(EO)やオキシプロピレン(PO)などを開環付加重合させることで製造される。EOやPOなどの付加モル数や付加形態を制御することにより親水性/親油性のバランスおよび分子量を制御することができるため、油剤、ポリマー原料、分散剤、界面活性剤など、多数の用途で使用されている。EO, POのランダム付加物はEO付加モル数とPO付加モル数により水分散性・水溶性を調整できるため、水系の消泡剤、潤滑剤、化粧品基材などに用いられている。
【0003】
水系の消泡剤は、紙パルプ製造業、塗料製造業、セメント製造業、繊維加工業、発酵工業、廃水等、多岐にわたる場面で用いられている。そのため、例えばセメント用途では夏から冬の外気、発酵用途では40℃付近、繊維加工用途では50℃以上と、幅広い温度で使用できる消泡剤が求められている。消泡剤としては、シリコーン油や高級アルコールを主成分とした水中油型エマルションが知られている。しかし、エマルション消泡剤は、長期使用において、消泡剤の沈降および偏在が起こりやすく、時間経過に伴い消泡性が徐々に消失してしまうという問題や、沈殿物を形成して設備や製品を汚染するという問題があった。一方、水分散性が良い消泡剤として、ポリアルキレングリコール系消泡剤が用いられている。そのため、安定性を改良したエマルション消泡剤が開発されている。
【0004】
例えば特許文献1には第二級の高級アルコールにエチレンオキシオドを付加して得られるノニオン性界面活性剤を含む水中油型エマルション消泡剤が優れた消泡効果を示すとともに安定性に優れることが報告されている。
【0005】
また、潤滑剤分野において、作動油等の分野においては、不燃性で高温での安定性が高く、分離や腐敗の心配が無いため、冷却効率に優れる水系潤滑油としてアルキレンオキシドが広く使用されている。例えば特許文献2には、ジオールのアルキレンオキサイド付加物が、水溶性と潤滑性に優れた潤滑油用基油として報告されている。しかし、アルキレンオキシドのような界面活性剤を使用した場合、泡の発生が著しくなり潤滑不良や作業性の低下といった問題を生ずることがある。
【0006】
そのため例えば特許文献3では、ポリエチレングリコールにオキシプロピレンを付加させてなるリバースブロック型のポリエーテルを含有する金属加工油組成物が、消泡性能をもつ潤滑剤として開示されている。
【0007】
また、化粧品用基材、例えば化粧品用乳化剤として、クリーム、乳液、ファンデーションといった乳化型の化粧料において、乳化物の安定性を高くするために非イオン性界面活性剤が一般に広く使用されている。このうち特にポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルブロック共重合体は加水分解しにくく、乳化性能に優れる乳化剤として知られている。
【0008】
特許文献4には、長鎖アルコールにプロピレンオキシドおよびエチレンオキシドがブロック付加したポリオキシエチレンポリプロピレンアルキルエーテルが、比較的融点が低く取り扱いやすく、長期にわたって安定なエマルションを形成することが記載されている。また特許文献5には、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体を乳化剤として用いたO/W乳化組成物が乳化安定性、使用感に優れることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2001-62204
【文献】特開2012-131982
【文献】特開平08-231977
【文献】特開平11-349438
【文献】特開2010-132647
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1記載の消泡剤では、消泡効果に温度依存性があり、用途や工程、季節ごとに使用する消泡剤を変更しなくてはならない場合があった。さらに30日を越える長期保管においては、分離や粘度の上昇などが生じるという問題があった。
【0011】
また、特許文献3記載の潤滑剤では、使用時に加工熱により潤滑剤が加熱され50℃以上の高温となった際に、潤滑剤に泡立ちが生じ、潤滑性と消泡性を両立することが難しかった。さらに長期安定性にも問題があった。
【0012】
また、特許文献4、5記載のような乳化剤を用いた乳化組成物は、温度変化の激しい場合に不安定になることがあり、安定性の面で十分満足できるものではなかった。過酷な温度変化がある中での安定性を確保するためには、高分子等を配合し、系の粘度を高める、もしくは、エマルションの粒子表面に高分子等を吸着させ、エマルション同士を立体反発させるといった手法も知られているが、その場合、高分子由来のべたつきといった感触の悪化が生じるといった問題点があった。
【0013】
本発明の課題は、高分子量体を含有したアルキレンオキシド誘導体であって、潤滑剤、消泡剤、化粧品用基材およびそれを含む化粧用組成物など種々の用途に適したアルキレンオキシド誘導体を提供することである。
【0014】
また、本発明の課題は、高分子量体を含有したアルキレンオキシド誘導体により、温度によらず十分な消泡性能が得られ、かつ長期安定性のある消泡剤を提供することである。
【0015】
また、本発明の課題は、高分子量体を含有したアルキレンオキシド誘導体により、十分な潤滑性、消泡性と安定性を併せ持つ潤滑剤を提供することである。
【0016】
また、本発明の課題は、高分子量体を含有したアルキレンオキシド誘導体により、過酷な温度変化がある中で、長期乳化安定性を確保した乳化型化粧料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、上記事項に鑑みて鋭意検討した結果、ゲル浸透クロマトグラフィー測定で求められる分子量パターンが左右非対称であり、分子量分布が高分子量側に偏った、種々の用途に適した新規アルキルオキシド誘導体が、上記課題を解決できることを見出した。
【0018】
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)
式(1)で表され、かつゲル浸透クロマトグラフィー測定により求められるクロマトグラムから算出される重量平均分子量(Mw)とz平均分子量(Mz)の比率Mz/Mwが式(2)の関係を満足することを特徴とする、温度変化安定性が改善されたアルキレンオキシド誘導体。
Z-[O-[(PO)a-(EO)b]-H]n ・・・・(1)
(式(1)中、
Zは、炭素数1~24かつ1~6個の水酸基を有する化合物から全ての前記水酸基を除いた残基を示し、
nは1~6の数を示し、
POはオキシプロピレン基を示し、
EOはオキシエチレン基を示し、
aおよびbはそれぞれ前記オキシプロピレン基POおよび前記オキシエチレン基EOの付加モル数を示し、aは1~200の数、bは1~200の数であり、
(PO)a-(EO)bは、前記オキシプロピレン基POおよび前記オキシエチレン基EOがブロック付加していることを示し、
a+b≧10かつa/b=1/5~5/1である。)
20≦Mz/Mw≦50 ・・・・(2)
【0019】
(2) 前記クロマトグラムから算出されるテーリング係数(TF)が式(3)および(4)の関係を満たすことを特徴とする、(1)のアルキレンオキシド誘導体。
TF=W0.05L/2a ・・・(3)
1.5≦TF≦5.0 ・・・(4)
(前記クロマトグラム上で屈折率強度がL/20となる2点のうち、溶出時間が早いほうを点Rとし、溶出時間が遅いほうを点Sとし、点Rと点Sを結んだ直線Hと、前記クロマトグラム上の屈折率強度が最大となる前記極大点KからベースラインBへ引いた垂線との交点をTとしたとき、点Sと交点Tの距離をaとし、点Rと点Sの距離をW0.05Lとする。)
【0020】
(3)
(1)または(2)のアルキレンオキシド誘導体からなることを特徴とする、潤滑剤。
【0021】
(4)
(1)または(2)のアルキレンオキシド誘導体からなることを特徴とする、消泡剤。
【0022】
(5)
(1)または(2)のアルキレンオキシド誘導体からなることを特徴とする、化粧料用基材。
【発明の効果】
【0023】
本発明により、分子量分布が高分子量側に偏った、温度変化安定性が改善され、種々の用途に適した新規アルキルオキシド誘導体を提供することができる。
【0024】
また、本発明のアルキレンオキシド誘導体からなる消泡剤によれば、温度によらず十分な消泡性能を得ることができる。
【0025】
また、本発明のアルキレンオキシド誘導体からなる潤滑剤によれば、
十分な潤滑性、消泡性と安定性を併せ持つ潤滑剤を提供することができる
【0026】
また、本発明のアルキレンオキシド誘導体からなる乳化型化粧料によれば、温度変化がある中で、長期乳化安定性を確保し、かつ乳化物を塗布した際に、べたつきがなく、のびがあり、コクのある乳化型化粧料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は本発明にて定義されるMz/Mwを説明するためのモデルクロマトグラム図である。
【
図2】
図2は本発明にて定義されるTFを説明するためのモデルクロマトグラム図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書において記号「~」を用いて規定された数値範囲は「~」の両端(上限および下限)の数値を含むものとする。例えば「2~5」は、2以上、5以下を表す。
【0029】
(アルキレンオキシド誘導体)
本発明のアルキルオキシラン誘導体は式(1)で示される化合物である。
Z-[O-[(PO)a-(EO)b]-H]n ・・・・(1)
【0030】
Zは、炭素数1~24、好ましくは炭素数1~12、より好ましくは炭素数1~6であり、かつ1~6個の水酸基を有する化合物から全ての水酸基を除いた残基であり、nは化合物(Z(OH)n)の水酸基の数で1~6である。1~6個の水酸基を有する化合物(Z(OH)n)としては、n=1であれば、メタノール、エタノール、ブタノール、n=2であればエチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、n=3であればグリセリン、トリメチロールプロパン、n=4であればエリスリトール、ペンタエリスリトール、ソルビタン、ジグリセリン、アルキルグリコシド、n=5であればキシリトール、n=6であればジペンタエリスリトール、ソルビトール、イノシトールなどが挙げられる。また、1~6個の水酸基を有する化合物として、これらの混合物を用いても良い。消泡剤においては、nは好ましくは2~6であり、n=3~6がより好ましく、n=3が更に好ましい。潤滑剤、乳化型化粧料においては、nは好ましくは1~4であり、n=1~3がより好ましく、n=1が更に好ましい。
【0031】
式(1)において、Zは、R1であってよく、またこの場合にn=1であり、R1は、炭素数1~24の炭化水素基である。
【0032】
R1で示される炭素数1~24の炭化水素基は、炭素と水素からなる官能基であり、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、またはアラルキル基から選ばれる1種であり、好ましくはアルキル基またはアルケニル基であり、炭素数1~12のアルキル基またはアルケニル基がより好ましく、炭素数1~6のアルキル基が最も好ましい。炭素数1~6のアルキル基としては直鎖でも分岐でも良いが、直鎖のものがより好ましい。炭素数1~6の直鎖アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基などを挙げることができる。R1で示される炭素数1~24の炭化水素基は1種のみでも、2種以上でもよい。
【0033】
POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基、a,bはそれぞれPO,EOの付加モル数をしめし、aは1~200の数、bは1~200の数、a+b≧10である。(PO)b-(EO)cは、POとEOがブロック付加してなるポリオキシアルキレン基を示し、POとEOのモル比(a/b)は1/5~5/1である。
【0034】
a+bが10未満であると、消泡剤における温度の汎用性や、潤滑剤における潤滑性や、乳化型化粧料の乳化性が不十分になる可能性がある。こうした観点から、a+bを10以上とすることが好ましく、13以上とすることがより好ましい。また、a+bが大きくなるにつれて粘度が上昇する。分散・配合のしやすさの観点から、a+bは120以下であることが好ましく、100以下であることがより好ましい。
また、PO、EOの全付加モル数n×(a+b)は、50以上とすることが好ましく、60以上とすることがより好ましく、70以上とすることが更に好ましい。また、100以下とすることがより好ましく、80以下とすることが更に好ましい。
【0035】
a/bが1/5未満であると、消泡剤における温度の汎用性や、潤滑剤における潤滑性が悪くなる可能性や、乳化型化粧料がべたつき、感触が悪くなる可能性があり、5/1を超えると、水分散性や水溶解性が悪くなる可能性がある。このため、a/bを1/5~5/1とするが、1/2.5~
4/1とすることが更により好ましく、1/1.25~ 1/1とすることが更に好ましい。
【0036】
(アルキルオキシラン誘導体のGPC特性)
本発明のアルキルオキシラン誘導体は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)において、示差屈折率計を用いて得られたクロマトグラムによって得られる分子量に規定される。このクロマトグラムとは、屈折率強度と溶出時間との関係を表すグラフである。
【0037】
本発明のアルキルオキシラン誘導体では、クロマトグラムから得られる重量平均分子量(Mw)とz平均分子量(Mz)の比率Mz/Mwが20≦Mz/Mw≦50である。
【0038】
ここでMw、MzはGPCからそれぞれ下記式によって求められる。
【数1】
【0039】
ただし、Nはポリマー分子の数、Mは分子量、Cは試料濃度である。Mwは、分子量を重みとして用いた加重平均、Mzは、分子量の2乗を重みとして用いた加重平均である。Mwは高分子量の存在に影響を受け、MzはMwよりもさらに大きく高分子量の存在に影響を受ける。そのため本発明のアルキレンオキシド誘導体は
図1に示したクロマトグラムのようなMw、Mzが得られる。
【0040】
Mz/Mwが20より小さくなると、消泡剤における温度の汎用性や、潤滑剤における潤滑性や、乳化型化粧料の乳化安定性が不十分になる可能性がある。この観点から、Mz/Mwが20以上であることが更に好ましく、40以上であることが更に好ましい。Mz/Mwが50より大きくなると、分子量分布における高分子量側の偏りが大きくなり粘度の上昇などが見られ、各製剤へ分散・配合しにくくなる。この観点から、Mz/Mwが50以下であることが更に好ましい。
【0041】
好適な実施形態においては、ゲル浸透クロマトグラフィーにおいて、示差屈折率計を用いて得られた屈折率強度と溶出時間で表されるクロマトグラムが左右非対称であり、以下に示すようにして求められるクロマトグラムのテーリング係数(TF)が1.50≦TF≦5.0を満たす。
【0042】
図2のクロマトグラムのモデル図を参照しつつ、TFの算出方法について更に説明する。横軸は溶出時間を、縦軸は示差屈折率計を用いて得られた屈折率強度を示す。ゲル浸透クロマトグラフに試料溶液を注入して展開すると、最も分子量の高い分子から溶出が始まり、屈折率強度の増加に伴い、溶出曲線が上昇していく。その後、屈折率強度が最大となる極大点Kを過ぎると、溶出曲線は下降していく。
【0043】
また、本発明のアルキレンオキシド誘導体のゲル浸透クロマトグラフィーにおいて、クロマトグラムの屈折率強度の極大点が複数ある場合は、それらのうち屈折率強度が最も大きい点を極大点Kとする。さらに同じ屈折率強度の極大点が複数ある場合は、溶出時間の遅いほうを屈折率強度の極大点Kとする。この際、ゲル浸透クロマトグラフィーに使用した展開溶媒などに起因するピークや、使用したカラムや装置に起因するベースラインの揺らぎによる疑似ピークは除く。
【0044】
(1) クロマトグラム上の屈折率強度の極大点KからベースラインBへ垂線を引き、その長さをLとする。(2) 屈折率強度がL/20となるクロマトグラム上の2点のうち、溶出時間が早いほうを点Rとし、溶出時間が遅いほうを点Sとする。(3) 点Rと点Sを結んだ直線Hと、屈折率強度の極大点KからベースラインBへ引いた垂線との交点をTとする。(4) 点Sと交点Tの距離をa、点Rと点Sの距離をW0.05Lとする。
TF=W0.05L/2a ・・・(3)
1.5≦TF≦5.0 ・・・(4)
【0045】
好適な実施形態においては、TFが1.5≦TF≦5.0を満たす。TFを1.5以上とすることによって、消泡剤における温度の汎用性や、潤滑剤における潤滑性や、毛髪用化粧料の安定性が向上する傾向がある。この観点からは、TFを2.0以上とすることが更に好ましく、3.0以上とすることが最も好ましい
【0046】
また、TFが大きくなるほど、分子量分布における高分子両側の偏りが大きくなり、それに由来する粘度の上昇などが見られる。TFが5.0より大きくなると、分子量分布における高分子量側の偏りが大きくなり粘度の上昇などが見られ、各製剤へ分散・配合しにくくなる。この観点から、TFは4.5以下であることが更に好ましく、4.0以下であることが最も好ましい。
【0047】
本発明において、Mz/MwおよびTFを求めるためのゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)は、システムとしてSHODEX(登録商標) GPC101GPC専用システム、示差屈折率計としてSHODEX
RI-71s、ガードカラムとしてSHODEX KF-G、カラムとしてHODEX KF804Lを3本連続装着し、カラム温度40℃、展開溶剤としてテトラヒドロフランを1ml/分の流速で流し、得られた反応物の0.1重量%テトラヒドロフラン溶液0.1mlを注入し、BORWIN GPC計算プログラムを用いて、屈折率強度と溶出時間で表されるクロマトグラムを得る。
【0048】
本発明のアルキレンオキシド誘導体を製造する際には、好ましくは、開始剤として、複合金属シアン化物触媒(以下、DMC触媒と略記する)の存在下で、炭素数3のアルキレンオキシド、すなわちオキシプロピレンを開環付加させる。反応容器内に、分子中に少なくとも1個の水酸基を有する開始剤とDMC触媒を加え、不活性ガス雰囲気の攪拌下、オキシプロピレンを連続もしくは断続的に添加し付加重合する。オキシプロピレンは加圧して添加しても良く、大気圧下で添加しても良い。
【0049】
この時、オキシプロピレンの平均供給速度に制限はないがオキシプロピレンの仕込み量によって変化させることが望ましい。具体的にはオキシプロピレンの全供給量の5~20wt%を供給する間の速度(単位時間あたりの供給量)をV1、オキシプロピレンの全供給量の20~50wt%を供給する間の速度をV2、オキシプロピレンの全供給量の50~100wt%を供給する間の速度をV3としたとき、V1/V2=1.1~2.0、V2/V3=1.1~1.5となるようにオキシプロピレンの平均供給速度を制御することが好ましい。
【0050】
また、反応温度は、50℃~150℃が好ましく、70℃~110℃がより好ましい。反応温度が150℃より高いと、触媒が失活するおそれがある。反応温度が50℃より低いと、反応速度が遅く生産性に劣る。
【0051】
本発明における開始剤としては、式(1)において、Zが炭素数1~24で、水酸基の数xが1~6の化合物もしくはそれら化合物にオキシプロピレン付加したものを使用することができる。 開始剤としては、例えば、ブタノール、ブチルプロピレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシプロピレングリセリルエーテルなどが挙げられる。ZがR1である場合には、開始剤としては、式(5)において、R1で示される炭素数1~24の炭化水素基を有する1価アルコール(R1OH)を使用することができる。
【0052】
開始剤およびオキシプロピレンに含まれる微量の水分量については特に制限はないが、開始剤に含まれる水分量については、0.5wt%以下、オキシプロピレンについては0.01wt%以下であることが望ましい。
【0053】
DMC触媒の使用量は、特に制限されるものではないが、生成するアルキレンオキシド誘導体に対して、0.0001~0.1wt%が好ましく、0.001~0.05wt%がより好ましい。DMC触媒の反応系への投入は初めに一括して導入してもよいし、順次分割して導入してもよい。重合反応終了後、複合金属錯体触媒の除去を行う。触媒の除去はろ別や遠心分離、合成吸着剤による処理など公知の方法により行うことが出来る。
【0054】
本発明におけるDMC触媒は公知のものを用いることができるが、たとえば、式(6)で表わすことができる。
Md[M’y(CN)z]e(H2O)f・(R)g ・・・(6)
【0055】
式(6)中、MおよびM’は金属、Rは有機配位子、d、e、yおよびzは金属の原子価と配位数により変わる正の整数であり、fおよびgは、金属の配位数により変わる正の整数である。
【0056】
金属Mとしては、Zn(II)、Fe(II)、Fe(III)、Co(II)、Ni(II)、Al(III)、Sr(II)、Mn(II)、Cr(III)、Cu(II)、Sn(II)、Pb(II)、Mo(IV)、Mo(VI)、W(IV)、W(VI)などがあげられ、なかでもZn(II)が好ましく用いられる。
【0057】
金属M’としては、Fe(II)、Fe(III)、Co(II)、Co(III)、Cr(II)、Cr(III)、Mn(II)、Mn(III)、Ni(II)、V(IV)、V(V)などがあげられ、なかでもFe(II)、Fe(III)、Co(II)、Co(III)が好ましく用いられる。
【0058】
有機配位子Rとしてはアルコール、エーテル、ケトン、エステルなどが使用でき、アルコールがより好ましい。好ましい有機配位子は水溶性のものであり、具体例としては、tert-ブチルアルコール、n-ブチルアルコール、iso-ブチルアルコール、N,N-ジメチルアセトアミド、エチレングリコールジメチルエーテル(グライム) 、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)などが挙げられる。特に好ましくはtert-ブチルアルコールが配位したZn3[Co(CN)6]2である。
【0059】
(消泡剤) 本発明のアルキレンオキシド誘導体は、消泡剤に使用できる。 本発明の消泡剤は式(1)で示されるアルキレンオキシド誘導体単体、もしくは水系で使用する際の水分散性を良好にするためアルキレンオキシド誘導体が水性成分の溶解された製剤として用いることができる。水性成分としては、水、エチルアルコールやプロピルアルコールなどとの低級アルコール、水および低級アルコールの混合物があげられる。水の配合割合については、特に限定はないが、アルキレンオキシド誘導体の濃度は0.1~99wt%であることが好ましい。アルキレンオキシド誘導体の濃度が0.1wt%未満であると消泡力が低下することがある。一方、アルキレンオキシド誘導体の濃度が99wt%以上だとハンドリング性に劣ることがある。
【0060】
本発明の消泡剤は、必要に応じて、有機溶剤、鉱物油、動植物油等の公知の消泡剤や、安定剤、増粘剤、防腐剤等のその他成分をさらに含んでもよい。
【0061】
本発明の消泡剤の使用用途としては、特に限定はないが、たとえば、アミノ酸発酵、カルボン酸発酵、酵素発酵、抗生物質発酵等の発酵工業用途、紙パルプ製造工業、建築工業、染料工業、染色工業、ゴム工業、合成樹脂工業、インキ工業、塗料工業、繊維工業等に使用することができる。
【0062】
本発明の消泡剤を使用する際、消泡することが必要な水性媒体に対する配合割合については特に限定はないが、たとえば、水性媒体100wt%に対して通常0.0001~10wt%、好ましくは0.0001~5wt%、より好ましくは0.001~5wt%である。
【0063】
(潤滑剤) 本発明のアルキレンオキシド誘導体は、潤滑剤に使用できる。 本発明の消泡剤は式(1)で示されるアルキレンオキシド誘導体単体、もしくは水系で使用する際の水分散性を良好にするためアルキレンオキシド誘導体が水性成分の溶解された製剤として用いることができる。水性成分としては、水、エチルアルコールやプロピルアルコールなどとの低級アルコール、水および低級アルコールの混合物があげられる。
【0064】
本発明の潤滑剤は水溶性であり、潤滑性と消泡性が優れているため、含水系の切削油、摺動面潤滑油、圧延油、引き抜き油、プレス油、鍛造油、アルミディスクおよびシリコンウエハの研磨、切断などの加工に用いる金属加工油、並びに水-グリコール系作動油等の水系潤滑油に用いられる基油等として使用することができる。
【0065】
また、本発明の潤滑剤は、必要に応じて、清浄分散剤、酸化防止剤、油性剤、乳化剤、極圧剤、金属不活性化剤、防錆剤、粘度指数向上剤及び流動点降下剤等、潤滑剤に一般的に用いられている他の成分を添加してもよい。
【0066】
(化粧品用基材)
本発明のアルキレンオキシド誘導体は、原料として化粧料に配合することで化粧料に使用できる。
特に乳化型化粧料に乳化剤として配合した際は、温度変化がある中での、長期乳化安定性を確保した乳化型化粧料を作製することができる。
【0067】
本発明のアルキレンオキシド誘導体は、化粧料において乳化剤として使用され、その濃度は0.1~10wt%以上であることが好ましい。アルキレンオキシド誘導体の濃度が0.1wt%より低いとき、十分に効果を発揮することができなくなる。
【0068】
また、本発明の化粧料には、必要に応じて、液体油脂類、高級脂肪酸、高級アルコール、シリコン、エステル類、界面活性剤、保湿剤、防腐剤、パール化剤、pH調整剤、紫外線吸収剤、ハイドロトープ剤、香料等、化粧品に一般的に用いられている他の成分を添加してもよい。
【実施例】
【0069】
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明を詳細に説明する。
(複合金属シアン化物錯体触媒の合成)
塩化亜鉛2.1gを含む2.0mlの水溶液中に、カリウムヘキサシアノコバルテートK3Co(CN)6を0.84g含む15mlの水溶液を、40℃にて攪拌しながら15分間かけて滴下した。滴下終了後、水16ml、tert-ブチルアルコール16gを加え、70℃に昇温し、1時間攪拌した。室温まで冷却後、濾過操作(1回目濾過)を行い、固体を得た。この固体に、水14ml、tert-ブチルアルコール8.0gを加え、30分間攪拌したのち濾過操作(2回目濾過)を行い、固体を得た。
【0070】
さらに再度、この固体にtert-ブチルアルコール18.6g、メタノール1.2gを加え、30分間攪拌したのち濾過操作(3回目濾過)を行い、得られた固体を40℃、減圧下で3時間乾燥し、複合金属シアン化物錯体触媒0.7gを得た。
【0071】
(合成例1:実施例化合物1の合成)
温度計、圧力計、安全弁、窒素ガス吹き込み管、撹拌機、真空排気管、冷却コイル、蒸気ジャケットを装備した5Lオートクレーブに、ブチルプロピレングリコール100gと複合金属シアン化物錯体触媒0.04gを仕込み、窒素置換後、110℃へと昇温し、0.3MPa以下の条件で、窒素ガス吹き込み管より、オキシプロピレン132gを滴下し、反応槽内の圧力と温度の経時的変化を測定したところ、3時間後、反応槽内の圧力が急激に減少した。その後、反応槽内を110℃に保ちながら、0.5MPa以下の条件で、窒素ガス吹き込み管より、徐々にオキシプロピレン1494gを滴下した。添加終了後、110℃で3時間反応させ、引き続いて110℃でオキシエチレン1258gを滴下した。添加終了後、110℃で1時間反応させ、75~85℃で1時間減圧処理後、ろ過を行った。得られた化合物1について、ゲル浸透クロマトグラフィーによる測定を行った。
ただし、ブチルプロピレングリコールは日本乳化剤製、オキシプロピレンは住友化学製、オキシエチレンは日本触媒製のものを用いた。
【0072】
(合成例2~7:実施例化合物2~6、比較例化合物1の合成)
出発原料、オキシプロピレンとオキシエチレンの付加モル数、アルキレンオキシドの種類以外は、合成例1と同様の方法で化合物を合成した。得られた実施例化合物2~6、比較例化合物1について、ゲル浸透クロマトグラフィーによる測定を行った。
【0073】
(合成例8:比較例化合物2の合成)
温度計、圧力計、安全弁、窒素ガス吹き込み管、撹拌機、真空排気管、冷却コイル、蒸気ジャケットを装備した5Lオートクレーブに、ブチルプロピレングリコール100gと触媒としての水酸化カリウム6.0gを仕込み、窒素置換後、110℃へと昇温し、0.5MPa以下の条件で、窒素ガス吹き込み管より、徐々にオキシプロピレン1626gを滴下した。110℃で3時間反応させた後、110℃でオキシエチレン1258gを滴下した。添加終了後、110℃で1時間反応させ、75~85℃で1時間減圧処理後、反応物を5Lナスフラスコに移し、速やかに1N塩酸で中和し、窒素ガス雰囲気下で脱水後、ろ過を行った。
【0074】
合成例1~8のクロマトグラムから求められるMz/Mw およびTFの値、さらに化合物の特性を表1に示す。ただし、水酸基価はJIS K-1557-1に準拠して測定したものであり、分子量は水酸基価より算出したものである。
【0075】
【0076】
(消泡剤性能)
合成例1~8のアルキレンオキシド誘導体を含む消泡剤の安定性と消泡性を評価するために、合成例1~8を用いて消泡剤を調製した。
合成例1~8のアルキレンオキシド誘導体1重量部に対して、8重量部のステアリルアルコール、9重量部のアラキジルアルコール、8重量部のベヘニルアルコールを添加した。70℃で均一に混合したのち、攪拌しながら70℃の水73重量部を添加した。攪拌しながら25℃まで冷却し、消泡剤を得た。
【0077】
得られた消泡剤について-5℃~60℃の6時間サイクル試験槽に、3ヶ月静置し、3ヶ月後の状態を観察し、下記の基準により目視で測定を行った。
○:
安定な状態
△:
やや不均一な状態
×:
分離している状態
結果を表2に示した。
【0078】
さらに、得られた消泡剤の消泡性を評価するために、消泡試験を行った。サポニンを水道水で希釈することで、サポニン0.04%水溶液を調製し、アルキレンオキシド誘導体を125ppmとなるよう加えた。1000mlメスシリンダーに調製した試を200mL投入し、水溶液を20℃に保ちながら100ml/minで10分間エアーバブリングした。メスシリンダーの底辺から泡の最高点までの体積を試料の体積とし、エアーバブリング後の試料の体積増加率を算出した。体積増加率は下記の式により計算され、体積増加率の値が小さいほど消泡性に優れる。
体積増加率(%)=
(エアーバブリング後の試料の体積-エアーバブリング前の試料の体積)(ml)/エアーバブリング前の試料の体積(ml)×100
◎:
体積増加率が110%未満であり、消泡性に優れる
〇:
体積増加率が110%以上、200%未満であり、消泡性に優れる
△:
体積増加率が200%以上、300%未満であり、消泡性に劣る
×:
体積増加率が300%以上であり、消泡性に劣る
同様の実験を40℃、60℃でも行った。結果を表2に示した。
【0079】
(潤滑剤性能)
合成例1~8のアルキレンオキシド誘導体の潤滑性を評価するために、合成例1~8のアルキレンオキシド誘導体を用いて潤滑剤を調製した。潤滑剤はアルキレンオキシド誘導体30重量部にカプリル酸を5重量部、セバシン酸を2部、トリエタノールアミンを25部、ベンゾトリアゾールを0.1重量部、さらに水37.9重量部を混合し、溶解し、潤滑剤を得た。
【0080】
得られた潤滑剤について-5℃~60℃の6時間サイクル試験槽に、3ヶ月静置し、3ヶ月後の状態を観察し、下記の基準により目視で測定を行った。
○:
安定な状態
△:
やや不均一な状態
×:
分離している状態
結果を表3に示した。
【0081】
さらに、得られた潤滑剤の潤滑性を評価するために、摩擦係数を測定した。
潤滑性の試験はSRV Lubricant and material test system(optimal社製)を用いて行った。試験はボール/ディスクで行い、試験片はそれぞれSUJ-2を用いた。試験条件は温度50℃、荷重40N、振幅1mm、振動数50Hzで、潤滑剤3%水溶液を用いて摩擦係数(μ)を測定した。潤滑性について、下記基準に従って評価した。結果を表3に示した。
◎:
摩擦係数(μ)が0.11以下である
○:
摩擦係数(μ)が0.11より大きく、0.12以下である
△:
摩擦係数(μ)が0.12より大きく、0.14以下である
×:
摩擦係数(μ)が0.14より大きい
【0082】
潤滑剤として使用した際の消泡性を評価した。
5%水溶液に希釈した潤滑剤50mlを100mlシリンダーに採り、10秒間振った後、泡が消えるまでの時間を測定した。消泡性について、下記基準に従って評価した。結果を表3に示した。
◎:
15秒以内に消泡し、消泡性に優れる
○:
15秒より長く30秒以内に消泡し、消泡性に優れる
△:
30秒より長く60秒以内に消泡し、消泡性に劣る
×:
消泡に60秒より長い時間を要し、消泡性に劣る
【0083】
(乳化性能)
合成例1~8のアルキレンオキシド誘導体の乳化性能を評価するために乳化物を調整した。
合成例1~8のアルキレンオキシド誘導体を用い、表4の組成で乳液を調製した。調整方法は下記の通りである。
(1)
油相部を80℃に加温し均一に溶解する。
(2)
水相部を25℃にて均一に溶解したのち、80℃に加温する。
(3)
80℃にて油相部を攪拌しながら水相部を添加する。
【0084】
作製した乳化組成物を乳化直後及び、-5℃~60℃の6時間サイクル試験槽に、3ヶ月静置し、3ヶ月後の状態を観察し、乳化状態を下記の基準により目視で測定を行った。
◎:
エマルションが細かく安定な状態
○:
安定な状態
△:
やや不均一な状態
×:
多少分離している状態
××:
クリーミングまたは分離している状態
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
表2から明らかなように、合成例1~6を用いた消泡剤は、安定性に優れ、またいずれも20,40,60℃における消泡性に優れていた。
【0090】
表3から明らかなように、合成例1~6を用いた潤滑剤は、いずれも安定性、潤滑性および消泡性に優れていた。
【0091】
表5から明らかなように、実施例で用いた化合物1~6は、いずれもいずれも過酷な温度変化がある中で、長期乳化安定を保っていた。
【0092】
これに対して、表2、3、5から明らかなように、本発明のアルキレンオキシド誘導体に該当しない比較例化合物1,2は消泡性、潤滑性、過酷な温度変化がある中での長期乳化安定性、すべてを満たすものはなかった。