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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-28
(45)【発行日】2023-01-12
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 12/77 20110101AFI20230104BHJP
   H01R 13/502 20060101ALI20230104BHJP
   H01R 13/42 20060101ALI20230104BHJP
   H01R 13/639 20060101ALI20230104BHJP
   H01R 13/58 20060101ALI20230104BHJP
【FI】
H01R12/77
H01R13/502 Z
H01R13/42 A
H01R13/639 Z
H01R13/58
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021160787
(22)【出願日】2021-09-30
(62)【分割の表示】P 2020184166の分割
【原出願日】2018-10-26
(65)【公開番号】P2022008674
(43)【公開日】2022-01-13
【審査請求日】2021-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 大樹
(72)【発明者】
【氏名】大森 康雄
【審査官】濱田 莉菜子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-102847(JP,A)
【文献】特開2017-103081(JP,A)
【文献】国際公開第2017/195617(WO,A1)
【文献】実開平03-019269(JP,U)
【文献】特開2007-273418(JP,A)
【文献】実開平04-021077(JP,U)
【文献】米国特許第4269466(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/00-12/91
H01R 24/00-24/86
H01R 13/56-13/72
H01R 13/40-13/533
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロアハウジングおよびアッパハウジングと、
前記ロアハウジングと前記アッパハウジングとの間に配置されるフラットケーブルと、
前記フラットケーブルの端部に取り付けられる複数の端子と、を備え、
前記ロアハウジングは、前記フラットケーブルが敷かれる水平面状の平坦な設置面と、前記設置面に突設される突出部分と、ランスと、を有し、
前記フラットケーブルは、導体部を有し、前記突出部分によって前記設置面上での動きが規制されており、
前記端子は、前記フラットケーブルの前記導体部に半田付けされる導体接続部と、前記ランスに係止される本体部と、を有し、
前記ロアハウジングは、基壁部を有し、
前記基壁部の上面の前部には、隔壁で仕切られたキャビティが幅方向に並んで設けられ、
前記端子は、前記キャビティに挿入され
前記設置面は、前記基壁部の上面の後部において、前記基壁部の上面の前部に連続して設けられ
前記ランスは、前記基壁部の上面の前部における前記設置面と同一高さで面一に連なる部分に突設されている、コネクタ。
【請求項2】
前記突出部分は、前記設置面において前記幅方向に延びる下側突条部を有し、
前記フラットケーブルは、前記下側突条部と前記アッパハウジングとの間に保持される部分を有している、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記アッパハウジングは、前記下側突条部との間に前記フラットケーブルを屈曲保持する上側突条部を有している、請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記突出部分は、突部を有し、
前記フラットケーブルは、前記突部が挿通される孔を有している、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記孔を利用して前記フラットケーブルを固定することで、前記フラットケーブルと前記端子との位置ずれを抑制する、請求項4に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記アッパハウジングは、相手ハウジングを嵌合状態に保持するロックアームを有している、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記ロアハウジングは、ロック受け部を有し、
前記アッパハウジングは、前記ロック受け部を係止し、前記ロアハウジングと前記アッパハウジングを合体状態に保持するロック部を有している、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の接点を有するFPC(フレキシブルプリント基板)と、FPCが装着されるブロックとを有するプラグコネクタが開示されている。プラグコネクタは、ソケットコネクタに嵌合される。FPCの各接点は、ソケットコネクタに保持された複数のコンタクトに接続される。
また、FPCは、複数の孔を有している。ブロックは、各孔と対応する位置に、複数の突出部を有している。各突出部は、各孔に挿入され、熱による保持手段でFPCを固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5665585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、FPCのようなフラットケーブルにおいてはその導体部分に端子が接続され、この端子が相手コネクタ(上記の場合はソケットコネクタ)の相手端子に接続される構成にすることも可能である。この場合に、端子は、ランス等の係止手段によってコネクタのハウジング(上記の場合はブロック)に係止される。
【0005】
しかし、フラットケーブルがハウジングから抜け出る方向の引っ張り力を受けた場合に、フラットケーブルの導体部分と端子との接続部位に応力が生じることとなり、接続部位の耐久性(寿命)が低下する要因となる。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、フラットケーブルと端子との接続部位に過大な応力を生じるのを抑制することが可能なコネクタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のコネクタは、ロアハウジングおよびアッパハウジングと、前記ロアハウジングと前記アッパハウジングとの間に配置されるフラットケーブルと、前記フラットケーブルの端部に取り付けられる複数の端子と、を備え、前記ロアハウジングは、前記フラットケーブルが敷かれる設置面と、前記設置面から突設される突部と、前記設置面よりも前方の位置から突設されるランスと、を有し、前記ランスは、撓み変形しない形状であり、前記フラットケーブルは、導体部と、前記突部が挿通される孔と、を有し、前記端子は、前記孔よりも前方の位置において前記フラットケーブルの前記導体部に半田付けされる導体接続部と、前記導体接続部よりも前方の位置において前記ランスに係止される本体部と、を有している、コネクタである。
【0008】
突部がフラットケーブルの孔を貫通する構成とすることにより、フラットケーブルがハウジングから抜け出る方向の引っ張り力を受けた場合に突部にフラットケーブルを引っ掛け、フラットケーブルの変位を防止することができる。よって、フラットケーブルの導体部と端子との接続部位に過大な応力が加わるのを回避することができ、接続部位の耐久性の向上および長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施例1に係るコネクタの平面図である。
図2図1のX-X線断面図である。
図3図2の状態からフラットケーブルを後退方向に引っ張った場合の要部拡大図である。
図4図2の状態からフラットケーブルを前進方向に押圧した場合の要部拡大図である。
図5】端子を接続したフラットケーブルが展開状態にある場合の斜視図である。
図6図5の反対側からフラットケーブルを見た斜視図である。
図7図5に示す状態から余長部を折り返して形成した状態の斜視図である。
図8】本発明の実施例2に係るコネクタの図2相当図である。
図9】端子金具を接続したフラットケーブルに余長部が形成された状態の斜視図である。
図10】(A)は、フラットケーブルに引っ張り力または押圧力が作用していない場合の余長部の断面図であり、(B)は、フラットケーブルに引っ張り力が作用している場合の余長部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の好ましい実施形態を以下に示す。
(1)前記フラットケーブルは、シート本体部と、前記シート本体部の前端から前方に櫛歯状に突出する複数の分岐部と、を有し、前記シート本体部は、前記孔を有し、複数の前記分岐部は、前記端子が半田接合される前記導体部を有し、前記ロアハウジングと前記アッパハウジングとの間に配置される。
(2)複数の前記分岐部の一面には、前記分岐部よりも高剛性の補強部材が被覆され、複数の前記分岐部の他の一面には、前記端子が半田接合される。これによれば、フラットケーブルの剛性が高くなり、各端子が設置されるフラットケーブルの変動を抑えることができる。
(3)前記アッパハウジングは、前記突部が挿入される逃がし孔を有し、前記突部は、前記突部の後面に開口し、前記アッパハウジングに対する前記ロアハウジングの相対的な後退によって前記アッパハウジングの前記逃がし孔の後端部を進入させる嵌合凹部を有している。これによれば、ロアハウジングとアッパハウジングとの間のガタが抑えられる。
【0011】
<実施例1>
以下、実施例1を図1図7を参考に説明する。本実施例1に係るコネクタは、ハウジング10と、ハウジング10に保持されるフラットケーブル60と、フラットケーブル60に接続されて、ハウジング10に収容される端子90と、を備えている。なお、以下の説明において、上下方向については、図2図5および図7の上下方向を基準とし、前後方向は、図1図4の左側を前側とする。
【0012】
ハウジング10は、合成樹脂製であって、上下に分離合体可能なロアハウジング11とアッパハウジング12とで構成されている。
【0013】
ロアハウジング11は、扁平形状をなし、平面視略矩形の板状の基壁部13と、基壁部13の前端から上方に突出する前壁部14と、基壁部13の幅方向両端から上方に突出する一対の側壁部15(詳細は図示せず)と、を有している。
【0014】
基壁部13は、上面の前部に、隔壁16で仕切られて幅方向に複数並んで配置されるキャビティ17を有している。各キャビティ17には、上方から端子90が収容される。図2に示すように、基壁部13の上面には、端子90を係止可能なランス18が突設されている。ランス18は、断面台形状をなし、実質的に撓み変形不能とされている。
【0015】
基壁部13は、上面の後部に、隔壁16で仕切られない水平面状の平坦な設置面19を有している。フラットケーブル60は、設置面19に敷設され、合体状態のロアハウジング11とアッパハウジング12との間に配置される。
【0016】
基壁部13の設置面19には、複数の略円柱状の突部21が突設されている。各突部21は、基壁部13の上面において、幅方向に間隔をあけて一列に並んで設けられている。各突部21は、後面側に開口する嵌合凹部22を有している。基壁部13の上面には、各突部21の後方に、幅方向に延びる下側突条部23が突設されている。
【0017】
前壁部14は、各キャビティ17に収容された端子90の前端と当接することで、端子90の前方への移動を規制する。前壁部14は、各キャビティ17と対向する位置に、複数の挿通孔24を有している。ハウジング10が図示しない相手ハウジングに嵌合されたときに、相手ハウジングに装着された図示しない相手端子のタブが挿通孔24に挿通され、キャビティ17に収容された端子90にタブが接触し、両端子が電気的に接続される。各側壁部15は、外面側に、一対のロック受け部25を有している。
【0018】
アッパハウジング12は、同じく扁平形状をなし、合体状態で基壁部13と対向する板状の覆い壁部26を有している。図1に示すように、覆い壁部26の上面には、幅方向の略中央部に、相手ハウジングを嵌合状態に保持する撓み可能なロックアーム27が突設されている。
【0019】
覆い壁部26の幅方向両端には一対のロック部29が下向きに突設されている。各ロック部29が各側壁部15のロック受け部25を係止することで、ロアハウジング11とアッパハウジング12が合体状態に保持される。
【0020】
覆い壁部26の下面には、後端部に、幅方向に延びる上側突条部28が突設されている。図2に示すように、ロアハウジング11とアッパハウジング12が合体状態にあるときに、下側突条部23と上側突条部28との間にL字形またはクランク形に屈曲するストレインリリーフ構造が形成される。フラットケーブル60は、下側突条部23と上側突条部28との間のストレインリリーフ構造により屈曲保持されることで、その遊動が規制されるようになっている。
【0021】
覆い壁部26には、各突部21と対応する位置に、複数の逃がし孔31が貫通して設けられている。図1に示すように、各逃がし孔31には、対応する突部21の先端部が挿入される。各逃がし孔31は、前後方向に長い長孔形状をなしている。ロアハウジング11とアッパハウジング12の組み付け過程において、アッパハウジング12に対してロアハウジング11が相対的に後退し、各突部21が各逃がし孔31内を変位する。ロアハウジング11とアッパハウジング12が正規に組み付けられると、図3および図4に示すように、各突部21の嵌合凹部22に各逃がし孔31の後端部が進入して、ロアハウジング11とアッパハウジング12との間のガタが抑えられるようになっている。
【0022】
フラットケーブル60は、フレキシブルプリント基板やフレキシブルフラットケーブル等の変形可能な板状ケーブルであって、絶縁性のシート部材61と、シート部材61で被覆され、幅方向に間隔をあけて並んで配置される図示しない複数の導体部と、シート部材61に一体に積層される絶縁性の補強部材62と、を有している。
【0023】
図5および図7に示すように、シート部材61は、平面視矩形のシート本体部63と、シート本体部63の前端から前方へ櫛歯状に突出する複数の分岐部69と、を有している。各分岐部69には、絶縁樹脂の剥離によって露出する導体部が含まれている。そして、各分岐部69には、露出する導体部に半田付けされるようにして端子90が取り付けられる。
【0024】
端子90は、導電性の金属板を折り曲げ加工等することで前後方向に細長い形状に成形されている。端子90は、前部に、相手端子のタブが挿入接続される筒状の本体部91を有し、後部に、露出する導体部に接続される帯板状の導体接続部92を有している。
【0025】
シート本体部63には、受け部として、複数の孔64が貫通して設けられている。各孔64は、各突部21と対応する位置に、幅方向に間隔をあけて複数設けられ、シート本体部63が展開状態にあるときは、前列、中列および後列と前後方向に間隔をあけて設けられる。各孔64は、円形の開口形状をなし、各突部21の直径よりも僅かに大きい開口径を有している。シート本体部63の各孔64には、対応する突部21が嵌合状態で挿通される。
【0026】
シート本体部63は、前列の各孔64Fと中列の各孔64Mとの間および中列の各孔64Mと後列の各孔64Rとの間に、それぞれ、幅方向に沿った回曲状の曲げ部65を有している。シート本体部63は、図5に示す展開状態から各曲げ部65を介して上下に重なるようにして順次折り返される。
【0027】
シート本体部63の各孔64のうち、展開状態で前後方向に並ぶ各孔(前列、中列および後列の各孔64F、64M、64R)は、シート本体部63が各曲げ部65を介して折り返されることで、共通の突部21に嵌まり、その突部21と同軸の軸線上に連通して配置される。図2に示すように、フラットケーブル60には、各孔64F,64M、64Rを介して、突部21を包囲しつつ上下方向(突部21の突出方向)に3重に重なるように折り返された形態(折り重ねられた形態)の余長部66が形成される。
【0028】
補強部材62は、合成樹脂製であって、シート部材61よりも高剛性に形成されている。図6に示すように、補強部材62は、シート部材61の一面において、各分岐部69の前端から展開形状で前側の曲げ部65に至るまでの領域と、展開形状で後側の曲げ部65から後列の各孔64Rの後方に至るまでの領域とに分かれて被覆形成される。言い換えれば、補強部材62は、シート部材61の一面において、各曲げ部65の間に被覆形成されない領域を有している。補強部材62は、前列および後列の各孔64F、64Rの周囲を包囲して区画し、フラットケーブル60の一面側に各孔64を開口させる。
【0029】
次に、本実施例1のコネクタの製造方法および作用効果を説明する。
端子90付きのフラットケーブル60の製造に際し、孔開け加工に先立ち、展開状態にあるシート部材61の一面の所定位置に補強部材62を重ねて接着材等の接合手段で接合する。次いで、プレス等の孔開けパーツによって複数の孔64を一度に形成する。その後、シート部材61の他の一面における各分岐部69に各端子90を半田ペーストとともに配置し、リフロー半田を行ってシート部材61に各端子90を接合する。この製造方法によれば、フラットケーブル60の剛性が高くなり、リフロー時に各端子90が設置されるフラットケーブル60の変動を抑えることができる。また、各孔64を利用してフラットケーブル60を固定することで、各端子90との位置ずれを抑えることができる。
【0030】
続いて、フラットケーブル60の一面側を下向きにした状態で、ロアハウジング11の各キャビティ17に各端子90を挿入するとともに、ロアハウジング11の設置面19にフラットケーブル60の前部側を載せる。端子90は、本体部91の後端にランス18が対向して当接可能となることで、キャビティ17に抜け止め係止される。
【0031】
次いで、フラットケーブル60の後部を摘みつつ、前列の孔64Fを突部21に嵌め、先の曲げ部65を境に前方へ折り返して、中列の孔64Mを突部21に嵌める。さらに、次の曲げ部65を境に後方へ折り返して、後列の孔64Rを突部21に嵌める。フラットケーブル60における後列の孔64Rより後方の部分はそのままロアハウジング11の後方へ引き出される。これにより、突部21の周囲に余長部66が折り返して形成される。なお、上記と異なり、余長部66を各曲げ部65を介して予め折り返しておき、各孔64F、64M、64Rを上下方向に連通させた状態として突部21に一度に嵌めるようにしてもよい。
【0032】
余長部66は、フラットケーブル60がロアハウジング11の設置面19に沿って直線状に配置(沿面配置)される場合に対して余長となる部分であり、孔64の内面と突部21との間の隙間を超える十分な長さをもって形成される。
【0033】
その後、ロアハウジング11にアッパハウジング12が取り付けられ、ロアハウジング11とアッパハウジング12が合体状態に保持される。各突部21の先端部は、アッパハウジング12の各逃がし孔31に挿入される。以上によりコネクタの組み付けが完了する。
【0034】
ところで、ハウジング10から引き出されたフラットケーブル60に後方への引っ張り力が作用すると、後列の孔64Rの後端と突部21との間の隙間が広がる一方、後列の孔64Rの前端と突部21との間の隙間が詰まり、図3に示すように、最後は後列の孔64Rの前端と突部21が当接することで引っ張り力が受け止められる。中列の孔64Mと前列の孔64Fは突部21との間は前後に隙間を有する状態が維持され、ここに引っ張り力が作用することはない。ましてや、フラットケーブル60の導体部と端子90との接続部位50(図2を参照)に引っ張り力が作用することもない。
【0035】
また、ハウジング10から引き出されたフラットケーブル60に前方への押圧力が作用すると、後列の孔64Rの前端と突部21との間の隙間が広がる一方、後列の孔64Rの後端と突部21との間の隙間が詰まり、図4に示すように、最後は後列の孔64Rの後端と突部21が当接することで押圧力が受け止められる。中列の孔64Mと前列の孔64Fは突部21との間は前後に隙間を有する状態が維持され、ここに押圧力が作用することはない。ましてや、フラットケーブル60の導体部と端子90との接続部位50に押圧力が作用することもない。
【0036】
以上のとおり、本実施例1によれば、フラットケーブル60が組み付け状態で設置面19に沿面配置される場合に対して余長を付与する余長部66を有しているため、孔64の内面と突部21との隙間に起因するフラットケーブル60の変位(位置ずれ)を余長部66で吸収することができる。その結果、フラットケーブル60の導体部と端子90との接続部位50に応力が加わるのを回避することができ、接続部位50の耐久性の向上および長寿命化を図ることができる。
【0037】
また、フラットケーブル60に引っ張り力または押圧力が作用したときに、突部21が孔64Rの内面に当接することがあるものの、本実施例1の場合、孔64Rの周囲が補強部材62で区画されているため、孔64Rの形状が突部21との干渉に起因して変形するのを防止することができる。
【0038】
また、本実施例1の場合、余長部66が前列、中列および後列の各孔64F、64M、64Rを共通の突部21に嵌め、その突部21を包囲する形態で上下方向に3重に重なって設けられるため、フラットケーブル60を突部21で位置決めした状態で円滑に組み付けることができる。さらに、この余長部66が折り返された形態になっているため、フラットケーブル60が上下方向に大型化するのを回避することができる。また、余長部66が突部21から外れにくくなるため、フラットケーブル60の位置決めの信頼性を高めることができる。
【0039】
<実施例2>
図8図10は、本発明の実施例2を示す。本実施例2においては、余長部66Aの形状および配置が実施例1とは異なる。ハウジング10の構成は、実施例1と同様であり、実施例1と重複する説明を省略する。
【0040】
図8に示すように、フラットケーブル60Aは、ハウジング10に組み付けられた状態で、端子90と突部21との間に、前後方向に折り山を繰り返してなる連続V字状、図示する場合は略M字状の余長部66Aを有している。実施例1と異なり、フラットケーブル60Aは上下方向に重なる部分を有しておらず、図9に示すように、各孔64Aは幅方向に間隔をあけて一列に設けられ、展開形状で前後方向に並列に配置されていない。
【0041】
また、図8に示すように、フラットケーブル60Aは、組み付け状態で、端子90と余長部66Aとの間および余長部66Aと突部21との間に、ロアハウジング11の設置面19に沿って直線状に配置(沿面配置)される沿設部68を有している。
【0042】
補強部材62Aは、シート部材61Aの一面において、分岐部69の前端から孔64Aの後方に至るまでの領域に被覆形成される。このため、補強部材62Aは、余長部66Aを含み、余長部66Aは、シート部材61Aと補強部材62Aとが積層された構造になっている。また、補強部材62Aは、孔64Aの周囲を区画する。余長部66Aは、フラットケーブル60Aがハウジング10に組み付けられるのに先立ち、プレス加工によって所定形状に形成される。
【0043】
ここで、フラットケーブル60Aがハウジング10に組み付けられて後方へ引っ張られると、孔64Aの内面と突部21との隙間の範囲でフラットケーブル60Aが後退し、孔64Aの前端と突部21が当接することでその後退変位が停止される。この間、余長部66Aは、図10の(A)から(B)にかけて示すように、フラットケーブル60Aの後退分、後方へ伸長するように変形して、フラットケーブル60Aの後退変位を吸収する。したがって、フラットケーブル60Aの導体部と端子90との接続部位50に応力が加わるのを回避することができ、実施例1と同様、接続部位50の耐久性の向上および長寿命化を図ることができる。
【0044】
本実施例2の場合、フラットケーブル60Aをハウジング10に組み付けるのに先立ち、余長部66Aをプレス加工等によって予め形成しておくことができるため、組み付けの作業負担を軽減することができる。
【0045】
また、端子90と余長部66Aとの間および余長部66Aと突部21との間にはロアハウジング11の設置面19に沿った沿設部68が設けられているため、ハウジング10への組み付け時に端子90が傾いたりせず、組み付けの作業性をより向上させることができる。
【0046】
<他の実施例>
以下、他の実施例を簡単に説明する。
(1)余長部は、フラットケーブルがハウジングに組み付けられた状態で、端子と突部との間に、折り返された形態(折り畳まれた形態)で設けられていてもよい。
(2)余長部は、折られず、例えば、湾曲する形態であってもよい。
(3)実施例1において、余長部は、突部を包囲する形態で4重以上に重なって設けられていてもよい。
(4)実施例1において、曲げ部は、折れ線状に鋭角に屈曲する形態であってもよい。
(5)実施例2において、余長部は、V字状または逆U字状に設けられていてもよい。
(6)フラットケーブルから補強部材を省略してもよい。
(7)受け部は、突部が挿通されて係止される形態であればよく、例えば、フラットケーブルの側縁を切り欠くように形成された凹部であってもよい。
【符号の説明】
【0047】
10…ハウジング
19…設置面
21…突部
50…接続部位
60、60A…フラットケーブル
61、61A…シート部材
62、62A…補強部材
64、64A…孔(受け部)
66、66A…余長部
90…端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10