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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-28
(45)【発行日】2023-01-12
(54)【発明の名称】リアクトル
(51)【国際特許分類】
   H01F 37/00 20060101AFI20230104BHJP
   H01F 27/255 20060101ALI20230104BHJP
   H01F 27/32 20060101ALI20230104BHJP
【FI】
H01F37/00 S
H01F37/00 J
H01F37/00 M
H01F37/00 A
H01F27/255
H01F27/32 140
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019100611
(22)【出願日】2019-05-29
(65)【公開番号】P2020194923
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2021-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100111567
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 寛
(72)【発明者】
【氏名】三崎 貴史
(72)【発明者】
【氏名】山本 伸一郎
【審査官】後藤 嘉宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-028142(JP,A)
【文献】特開2016-119398(JP,A)
【文献】特開2013-038324(JP,A)
【文献】特開2017-224801(JP,A)
【文献】特開2018-182184(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 37/00
H01F 27/255
H01F 27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻回部を有するコイルと、
磁性コアと、
前記巻回部の両端に配置される保持部材と、
前記コイルと前記保持部材とを一体化するモールド樹脂部と、
前記コイル、前記磁性コア及び前記保持部材を含む組合体を収納するケースと、
前記ケース内に充填され、前記組合体の少なくとも一部を封止するポッティング樹脂部と、を備え、
前記磁性コアは、
前記巻回部の内側に配置される内側コア部と、
前記巻回部の外側に配置される外側コア部と、を有し、
前記ポッティング樹脂部の熱伝導率は前記モールド樹脂部の熱伝導率よりも高く、
前記モールド樹脂部は、第一領域と第二領域とを備え、
前記第一領域は、前記巻回部の内周面の少なくとも一部を覆い、
前記第二領域は、前記保持部材の前記外側コア部に対向する面の外周縁に沿って形成され
前記第一領域と前記第二領域とは、互いに一体に構成され、
前記巻回部と前記内側コア部との間に、前記第一領域と前記ポッティング樹脂部とが併存している、
リアクトル。
【請求項2】
前記第一領域は、前記巻回部の内周面の全周を覆い、
前記巻回部の軸方向に直交する断面において、前記巻回部と前記内側コア部との間に前記ポッティング樹脂部と前記第一領域とが積層状態で存在する請求項1に記載のリアクトル。
【請求項3】
前記巻回部の軸方向に直交する断面において、
前記第一領域は、前記巻回部と前記内側コア部との間の周方向の一部に存在し、
前記ポッティング樹脂部は、前記巻回部と前記内側コア部との間の周方向の残部に存在する請求項1に記載のリアクトル。
【請求項4】
前記巻回部の外周面は、前記モールド樹脂部に覆われずに露出されている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項5】
前記内側コア及び前記外側コア部の少なくとも一方は、軟磁性粉末を含む圧粉成形体、又は、軟磁性粉末が樹脂中に分散された複合材料で構成されている請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のリアクトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リアクトルに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、巻回部を有するコイルと、巻回部の内外に配置されて閉磁路を形成する磁性コアと、巻回部の端面と外側コア部との間に介在される端面介在部材とを備えるリアクトルを開示する。上記磁性コアは、巻回部の内部に配置される内側コア部と、巻回部の外部に配置される外側コア部とを有する。また、特許文献1に記載のリアクトルは、巻回部の内周面と内側コア部の外周面との間に充填される内側樹脂部を備える。内側樹脂部は射出成形により樹脂をモールドして形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-28142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リアクトルの放熱性の更なる向上が望まれている。
車載用コンバータに利用されるリアクトルにおいて、より大電流で使用することが要求されている。リアクトルに大電流を流すと、コイルだけでなく磁性コアの発熱量も増大する。特に、磁性コアのうち内側コア部は、コイルの巻回部の内側に配置されるため、内側コア部の熱は放熱され難い。そのため、内側コア部は、熱が蓄積し易く高温になり易い。よって、内側コア部の放熱性を改善することが望まれる。
【0005】
特許文献1に記載される従来のリアクトルは、巻回部と内側コア部との間に内側樹脂部(以下、「モールド樹脂部」という)が充填されている。そのため、内側コア部からの熱は、モールド樹脂部を介して巻回部に伝えられることになる。つまり、内側コア部の放熱経路は、内側コア部→モールド樹脂部→巻回部となる。一般に、モールド樹脂部は、比較的熱伝導率が低い(熱抵抗が大きい)ので、内側コア部で発生した熱を巻回部に効率よく伝え難い。
【0006】
そこで、本開示は、放熱性に優れるリアクトルを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のリアクトルは、
巻回部を有するコイルと、
磁性コアと、
前記巻回部の両端に配置される保持部材と、
前記コイルと前記保持部材とを一体化するモールド樹脂部と、
前記コイル、前記磁性コア及び前記保持部材を含む組合体を収納するケースと、
前記ケース内に充填され、前記組合体の少なくとも一部を封止するポッティング樹脂部と、を備え、
前記磁性コアは、
前記巻回部の内側に配置される内側コア部と、
前記巻回部の外側に配置される外側コア部と、を有し、
前記ポッティング樹脂部の熱伝導率は前記モールド樹脂部の熱伝導率よりも高く、
前記モールド樹脂部は、互いに一体に構成された第一領域と第二領域とを備え、
前記第一領域は、前記巻回部の内周面の少なくとも一部を覆い、
前記第二領域は、前記保持部材が前記巻回部の端面から離れないように前記保持部材に引っ掛けられ、
前記巻回部と前記内側コア部との間に、前記第一領域と前記ポッティング樹脂部とが併存している。
【発明の効果】
【0008】
本開示のリアクトルは、放熱性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態1に係るリアクトルの概略斜視図である。
図2図2は、図1に示す(II)-(II)線で切断した概略横断面図である。
図3図3は、図1に示す(III)-(III)線で切断した概略縦断面図である。
図4図4は、組合体の概略分解図である。
図5図5は、コイル部品の概略分解図である。
図6図6は、コイル部品と内側コア部との組物を巻回部の端面側から見た概略図である。
図7図7は、組合体の概略正面図である。
図8図8は、実施形態2に係るリアクトルの概略横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0011】
(1)本開示の実施形態に係るリアクトルは、
巻回部を有するコイルと、
磁性コアと、
前記巻回部の両端に配置される保持部材と、
前記コイルと前記保持部材とを一体化するモールド樹脂部と、
前記コイル、前記磁性コア及び前記保持部材を含む組合体を収納するケースと、
前記ケース内に充填され、前記組合体の少なくとも一部を封止するポッティング樹脂部と、を備え、
前記磁性コアは、
前記巻回部の内側に配置される内側コア部と、
前記巻回部の外側に配置される外側コア部と、を有し、
前記ポッティング樹脂部の熱伝導率は前記モールド樹脂部の熱伝導率よりも高く、
前記モールド樹脂部は、互いに一体に構成された第一領域と第二領域とを備え、
前記第一領域は、前記巻回部の内周面の少なくとも一部を覆い、
前記第二領域は、前記保持部材が前記巻回部の端面から離れないように前記保持部材に引っ掛けられ、
前記巻回部と前記内側コア部との間に、前記第一領域と前記ポッティング樹脂部とが併存している。
【0012】
本開示のリアクトルは、巻回部と内側コア部との間にモールド樹脂部の第一領域とポッティング樹脂部とが併存する。ポッティング樹脂部はモールド樹脂部(第一領域)に比べて熱伝導率が高い。そのため、本開示のリアクトルは、巻回部と内側コア部との間にモールド樹脂部のみが介在する場合に比較して、内側コア部の熱を巻回部に効率よく伝えることができる。つまり、内側コア部の放熱性を改善することができる。よって、本開示のリアクトルは放熱性に優れる。
【0013】
本開示のリアクトルは、コイルと保持部材とがモールド樹脂部によって一体化されている。そのため、コイルと保持部材とを一体物として取り扱うことができるので、コイルに磁性コア(内側コア部及び外側コア部)を組み付ける作業が行い易い。また、コイルと保持部材とが一体化されていることで、ケース内に組合体を収納するとき、組合体を安定して配置できる。よって、本開示のリアクトルは組立性に優れる。
【0014】
また、モールド樹脂部は、巻回部の内周面の少なくとも一部を覆う第一領域と、保持部材が巻回部の端面から離れないように保持部材に引っ掛けられる第二領域とを備える。第一領域と第二領域とが互いに一体に構成されることにより、モールド樹脂部によって巻回部と保持部材とが機械的に結合されている。よって、コイルから保持部材が外れ難い。
【0015】
(2)上記リアクトルの一形態として、
前記第一領域は、前記巻回部の内周面の全周を覆い、
前記巻回部の軸方向に直交する断面において、前記巻回部と前記内側コア部との間に前記ポッティング樹脂部と前記第一領域とが積層状態で存在することが挙げられる。
【0016】
上記形態は、巻回部と内側コア部との間にポッティング樹脂部と第一領域とが積層状態で介在する。つまり、ポッティング樹脂部とモールド樹脂部との2層構造になっている。この場合、内側コア部の放熱経路は、内側コア部→ポッティング樹脂部→モールド樹脂部(第一領域)→巻回部となる。そのため、上記形態は、巻回部と内側コア部との間にモールド樹脂部のみが介在する場合に比較して、内側コア部の熱を巻回部に効率よく伝えることができる。よって、上記形態は放熱性に優れる。
【0017】
また、上記形態は、第一領域が巻回部の内周面の全周を覆うように設けられている。そのため、第一領域と巻回部の内周面との接触面積が増えるので、第一領域と巻回部との接合強度が高くなる。よって、上記形態は、モールド樹脂部によって巻回部と保持部材とをより強固に結合することが可能である。
【0018】
(3)上記リアクトルの一形態として、
前記巻回部の軸方向に直交する断面において、
前記第一領域は、前記巻回部と前記内側コア部との間の周方向の一部に存在し、
前記ポッティング樹脂部は、前記巻回部と前記内側コア部との間の周方向の残部に存在することが挙げられる。
【0019】
上記形態は、巻回部と内側コア部との間の周方向の一部に第一領域が介在する。そのため、巻回部と内側コア部との間にポッティング樹脂部と第一領域とが積層状態で介在する場合に比較して、第一領域が厚くなる。第一領域の厚みが厚くなる分、第一領域の剛性が高くなる。よって、上記形態は、モールド樹脂部によって巻回部と保持部材とをより強固に結合することが可能である。
【0020】
また、上記形態は、巻回部と内側コア部との間の周方向の残部にポッティング樹脂部が介在することで、内側コア部の放熱性を確保することが可能である。
【0021】
(4)上記リアクトルの一形態として、
前記巻回部の外周面は、前記モールド樹脂部に覆われずに露出されていることが挙げられる。
【0022】
巻回部の外周面がモールド樹脂部に覆われていないことで、巻回部から放熱し易くなる。よって、上記形態は、コイルの放熱性が向上する。
【0023】
(5)上記リアクトルの一形態として、
前記内側コア及び前記外側コア部の少なくとも一方は、軟磁性粉末を含む圧粉成形体、又は、軟磁性粉末が樹脂中に分散された複合材料で構成されていることが挙げられる。
【0024】
内側コア部及び外側コア部は、軟磁性材料を含む成形体で構成することが挙げられる。上記圧粉成形体は、軟磁性粉末を圧縮成形したものである。上記複合材料は、軟磁性粉末を樹脂中に分散させて成形したものである。圧粉成形体は、複合材料に比較してコア片に占める軟磁性粉末の割合が高く、同じ軟磁性粉末を用いたとしても、磁気特性(比透磁率や飽和磁束密度)が高くなる。複合材料は、樹脂中の軟磁性粉末の含有量を調整することによって、磁気特性を制御し易い。
【0025】
内側コア部及び外側コア部の構成材料は同じであってもよいし、異なってもよい。内側コア部及び外側コア部の構成材料を異ならせる場合、例えば、内側コア部を複合材料で構成し、外側コア部を圧粉成形体で構成することが挙げられる。内側コア部を圧粉成形体で構成し、外側コア部を複合材料で構成することも可能である。内側コア部及び外側コア部の構成材料は、リアクトルのインダクタンスが所定の値となるように適宜選択すればよい。
【0026】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係るリアクトルの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。図面における各部の寸法比も実際と異なる場合がある。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0027】
[実施形態1]
<概要>
図1図7を参照して、実施形態1係るリアクトル1Aを説明する。リアクトル1Aは、図1に示すように、コイル2と、磁性コア3と、保持部材41、42と、ケース5と、ポッティング樹脂部6とを備える。また、リアクトル1Aは、モールド樹脂部8を備える(図2図3も参照)。コイル2は、図1に示すように、並列に配置される2つの巻回部21を有する。磁性コア3は、図2図3に示すように、巻回部21の内側に配置される内側コア部31と、巻回部21の外側に配置される外側コア部33とを有する。保持部材41、42は、両巻回部21の両端に配置される。モールド樹脂部8は、図4に示すように、コイル2と保持部材41、42とを一体化する。ケース5は、図1に示すように、コイル2、磁性コア3及び保持部材41、42を含む組合体10を収納する。ケース5は、図2図3に示すように、底板部51と側壁部52とで組合体10の収納空間が形成され、底板部51と対向する側に開口部55が形成された有底筒状の容器である。ポッティング樹脂部6は、ケース5内に充填され、組合体10の少なくとも一部を封止する。
【0028】
実施形態1に係るリアクトル1Aの特徴の一例には、次の構成が挙げられる。
(1)ポッティング樹脂部6の熱伝導率はモールド樹脂部8の熱伝導率よりも高い。
(2)図4に示すように、モールド樹脂部8は、互いに一体に構成された第一領域81と第二領域82とを備える。第一領域81は、巻回部21の内周面の少なくとも一部を覆う。第二領域82は、保持部材41、42が巻回部21の各端面から離れないように保持部材41、42に引っ掛けられる。
(3)図2図3に示すように、巻回部21と内側コア部31との間に、モールド樹脂部8(第一領域81)とポッティング樹脂部6とが併存している。
【0029】
この例では、図1に示すように、組合体10が、コイル2の両巻回部21の並列方向及び軸方向が底板部51(図2)と平行となるようにケース5に収納されている。図4では、コイル2と保持部材41、42とがモールド樹脂部8に一体化されたコイル部品20を示している。以下の説明では、底板部51側を下とし、底板部51側とは反対側(開口部55側)を上とする。この上下方向(図2図3の紙面上下方向)を高さ方向とする。巻回部21の並列方向に沿った方向(図2の紙面左右方向)を幅方向とする。巻回部21の軸方向に沿った方向(図3の紙面左右方向)を長さ方向とする。なお、図6において、図面を分かり易くするため、内側コア部31、及びモールド樹脂部8の第一領域81(凸部44に隠れている部分を除く)にハッチングを付している(図8も同じ)。また、図7においては、モールド樹脂部8の第一領域81(凸部44に隠れている部分を除く)にハッチングを付している。
【0030】
以下、リアクトル1Aの構成について詳しく説明する。
【0031】
(コイル)
コイル2は、図1及び図5に示すように、一対の巻回部21を有する。各巻回部21は巻線を螺旋状に巻回してなる。両巻回部21を形成するそれぞれの巻線の一方の端部同士は接続片23を介して接続されている。両巻回部21は、互いの軸方向が平行するように横並びに(並列)に配置されている。接続片23は、例えば溶接や半田付け、ロウ付けなどの接合方法によって、各巻回部21を構成する巻線の一方の端部に接合されている。巻線の他方の端部はそれぞれ、各巻回部21から適宜な方向(この例では上方)に引き出され、端子金具(図示せず)が適宜取り付けられる。端子金具には、電源などの外部装置(図示せず)に電気的に接続される。この例では、各巻回部21が別々の巻線を巻回して形成されているが、両巻回部21が1本の連続する巻線で形成されていてもよい。コイル2は、公知のものを利用できる。
【0032】
巻線は、導体線と、絶縁被覆とを有する被覆線が挙げられる。導体線の構成材料は、銅などが挙げられる。絶縁被覆の構成材料は、ポリアミドイミドなどの樹脂が挙げられる。被覆線としては、断面形状が長方形状の被覆平角線や、断面形状が円形状の被覆丸線などが挙げられる。
【0033】
両巻回部21は、同じ仕様の巻線からなり、形状、大きさ、巻回方向、ターン数が同じである。この例では、巻回部21は、被覆平角線をエッジワイズ巻きした四角筒状(具体的には、矩形筒状)のエッジワイズコイルである(図5参照)。巻回部21の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、円筒状や楕円筒状、長円筒状などであってもよい。また、両巻回部21を形成する巻線の仕様や、両巻回部21の形状などは異ならせてもよい。
【0034】
この例では、図4に示すように、巻回部21の外周面がモールド樹脂部8で覆われておらず、組合体10(コイル部品20)の状態では、巻回部21の外周面が露出されている。そのため、巻回部21から放熱し易く、コイル2の放熱性が向上する。
【0035】
(磁性コア)
磁性コア3は、図2図3に示すように、各巻回部21の内側に配置される一対の内側コア部31と、両巻回部21の外側に配置される一対の外側コア部33とを有する(図4も参照)。内側コア部31は、その軸方向の端部が巻回部21から突出していてもよい。両外側コア部33は、両内側コア部31の各端部同士を接続するように設けられる。この例では、内側コア部31を両端から挟むように外側コア部33がそれぞれ配置される。磁性コア3は、両内側コア部31の各端面と外側コア部33の各内端面33e(図4)とが接続されることによって、環状に構成されている。内側コア部31の各端面と外側コア部33の各内端面33eとが接着されていてもよい。磁性コア3には、コイル2を励磁した際に磁束が流れ、閉磁路が形成される。
【0036】
(内側コア部)
内側コア部31の形状は、巻回部21の内周形状に概ね対応した形状である。この例では、内側コア部31の形状が四角柱状(矩形柱状)であり、内側コア部31を軸方向から見た端面形状が矩形状である(図4も参照)。内側コア部31の角部は面取りされている。両内側コア部31の形状、大きさは同じである。また、この例では、内側コア部31の両端部が巻回部21の端面から突出している。この巻回部21から突出する端部も内側コア部31に含まれる。巻回部21から突出する内側コア部31の両端部は、図3に示すように、後述する保持部材41、42の各貫通孔43に挿入される。
【0037】
この例では、内側コア部31は、1つの柱状のコア片で構成されている。内側コア部31を構成するコア片は、巻回部21の軸方向の全長と略等しい長さを有する。なお、内側コア部31は、複数のコア片と、隣り合うコア片間に介在されるギャップ材とで構成してもよい。
【0038】
(外側コア部)
外側コア部33の形状は、両内側コア部31の各端部同士を繋ぐ形状であれば、特に限定されない。外側コア部33は、両内側コア部31の各端面に対向する内端面33e(図4)を有する。この例では、外側コア部33の形状が略台形柱状である。両外側コア部33の形状、大きさは同じである。外側コア部33は、1つの柱状のコア片で構成されている。
【0039】
〈構成材料〉
内側コア部31及び外側コア部33は、軟磁性材料を含む成形体で構成されている。軟磁性材料としては、鉄や鉄合金(例、Fe-Si合金、Fe-Ni合金など)といった金属、フェライトなどの非金属が挙げられる。軟磁性材料を含む成形体としては、軟磁性材料からなる粉末(軟磁性粉末)を圧縮成形した圧粉成形体や、軟磁性粉末を樹脂中に分散させて成形した複合材料などが挙げられる。複合材料は、未固化の樹脂中に軟磁性粉末を混合した原料を金型に充填し、樹脂を固化させることで得られる。圧粉成形体は、複合材料に比較して、コア片に占める軟磁性粉末の割合が高い。複合材料は、樹脂中の軟磁性粉末の含有量を調整することによって、磁気特性(比透磁率や飽和磁束密度)を制御し易い。
【0040】
軟磁性粉末は、軟磁性粒子の集合体である。軟磁性粒子は、その表面に絶縁被覆を有する被覆粒子であってもよい。絶縁被覆の構成材料は、リン酸塩などが挙げられる。複合材料の樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂や、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリアミド(PA)樹脂(例、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン9Tなど)、液晶ポリマー(LCP)、ポリイミド(PI)樹脂、フッ素樹脂(例、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂)などの熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0041】
内側コア部31及び外側コア部33の少なくとも一方は、圧粉成形体、又は、複合材料で構成されていることが挙げられる。内側コア部31と外側コア部33の構成材料は、同じであってもよいし、異なってもよい。例えば、内側コア部31及び外側コア部33を複合材料で構成し、それぞれの軟磁性粉末の材質や含有量を異ならせることも可能である。また、内側コア部31を複合材料で構成し、外側コア部33を圧粉成形体で構成したり、あるいは、内側コア部31を圧粉成形体で構成し、外側コア部33を複合材料で構成したりすることも可能である。この例では、内側コア部31が複合材料で構成され、外側コア部33が圧粉成形体で構成されている。本例の磁性コア3は、ギャップ材を有していない。
【0042】
(保持部材)
保持部材41、42は、図3及び図5に示すように、巻回部21の両端面に対向するようにそれぞれ配置される。保持部材41、42は、コイル2(巻回部21)及び内側コア部31の位置決め状態を保持する。また、保持部材41、42は、コイル2及び磁性コア3の電気的絶縁を確保する。保持部材41、42の基本的な構成は同じである。この例では、図5に示すように、保持部材41、42の形状が矩形枠状である。
【0043】
保持部材41、42は、図3に示すように、巻回部21の端面と外側コア部33の内端面33eとの間にそれぞれ配置され、巻回部21と外側コア部33との間の電気的絶縁を確保する。各保持部材41、42は、一対の貫通孔43を有する。各貫通孔43には、各内側コア部31の端部が挿入される。貫通孔43の形状は、内側コア部31の端部の外周形状に概ね対応した形状である。貫通孔43に内側コア部31の端部が挿入されることで、内側コア部31が保持される。貫通孔43は、内側コア部31の端部が挿入された状態で、内側コア部31の外周面と貫通孔43の内周面との間に部分的に隙間43c(図6図7)が形成されるように設けられている。この隙間43cは、巻回部21の内周面と内側コア部31の外周面との間の隙間に連通する。この例では、図5及び図6に示すように、貫通孔43の四隅の部分が外側に凹んでおり、貫通孔43の四隅の中央部分が凸部44になっている。この凸部44に内側コア部31の外周面が接することによって、貫通孔43内に内側コア部31が保持される。
【0044】
保持部材41、42は、図5に示すように、巻回部21の端面側に貫通孔43の周縁部から巻回部21の内側に向かって突出する保持片45を有する。この例では、保持片45が貫通孔43の凸部44の位置に設けられており、巻回部21の内周面に配置される(図4も参照)。保持片45は、巻回部21と内側コア部31との間に挿入される。保持片45によって巻回部21と内側コア部31とが間隔をあけて保持され、巻回部21と内側コア部31との間の電気的絶縁を確保する。
【0045】
〈構成材料〉
保持部材41、42は、電気絶縁材料で構成されている。電気絶縁材料としては、代表的には樹脂が挙げられる。具体的には、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂や、PPS樹脂、PA樹脂、LCP、PI樹脂、フッ素樹脂(例、PTFE樹脂)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂などの熱可塑性樹脂が挙げられる。この例では、保持部材41、42がPPS樹脂で構成されている。
【0046】
(モールド樹脂部)
モールド樹脂部8は、図4に示すように、コイル2と保持部材41、42とを一体化する。モールド樹脂部8によってコイル2と保持部材41、42とが一体化されることによりコイル部品20が構成される。モールド樹脂部8は、第一領域81と第二領域82とを備える。第一領域81と第二領域82とは、互いに一体に構成されている。第一領域81は、巻回部21の内周面の少なくとも一部を覆う。第二領域82は、保持部材41、42が巻回部21の端面から離れないように保持部材41、42に引っ掛けられる。この例では、第一領域81が巻回部21の内周面の全周(但し、保持片45に面する部分を除く)を覆うように設けられている(図2も参照)。また、この例では、第二領域82が、巻回部21の内周面から保持部材41、42の貫通孔43を通って、保持部材41、42の外側コア部33に対向する面(対向面47)側に回り込むように設けられている。つまり、保持部材41、42が巻回部21の端面と第二領域82との間に挟まれている。第二領域82が保持部材41、42の対向面47側に回り込むことによって、第二領域82が保持部材41、42に引っ掛かるように構成されている。第二領域82が保持部材41、42に引っ掛けられることで、モールド樹脂部8によって巻回部21と保持部材41、42とが機械的に結合されている。
【0047】
第二領域82が保持部材41、42に引っ掛けられるとは、第二領域82が第一領域81から巻回部21の軸方向と交差する方向に突出し、保持部材41、42が巻回部21の端面から離れる方向への移動を規制するものである。
【0048】
本例の第二領域82は、保持部材41、42の対向面47の外周縁に沿って枠状に形成されており、その内側が凹部85になっている。この凹部85内に外側コア部33の内端面33e側が収納される。
【0049】
本例の第一領域81は、図3に示すように、巻回部21の内周面の全長にわたって連続して設けられている。つまり、一方の保持部材41の対向面47に設けられた第二領域82と、他方の保持部材42の対向面47に設けられた第二領域82とは、第一領域81を介して繋がっている。そのため、モールド樹脂部8によって巻回部21と保持部材41、42とをより強固に結合することができる。また、上述したように、第一領域81は巻回部21の内周面の全周を覆うように設けられている。そのため、第一領域81と巻回部21の内周面との接触面積が増えるので、第一領域81と巻回部21との接合強度が高くなる。この点でも、モールド樹脂部8によって巻回部21と保持部材41、42とをより強固に結合することが可能である。また、本例の第一領域81の厚さは、図6に示すように、保持部材41、42の貫通孔43に設けられた凸部44の突出高さよりも薄い。つまり、巻回部21の軸方向から見たとき、凸部44の両側には第一領域81との間に段差が形成される。そのため、貫通孔43に内側コア部31を挿入した状態で、貫通孔43の四隅の部分に隙間43cが形成される。なお、本例では、保持部材41、42に凸部44及び保持片45を設けている(図5参照)が、後述するように、保持部材41、42が凸部44及び保持片45を備えない構成とすることも可能である。また、第一領域81の厚さは、凸部44の突出高さと同じ、又は凸部44を覆う厚さとすることも可能である。第一領域81の厚さとは、貫通孔43の(即ち巻回部21)の内周面からその面に直交する方向(内側コア部31側へ向かう方向)の距離をいう。第一領域81が凸部44を覆う場合、第一領域81の厚さが凸部44の突出高さよりも厚い。
【0050】
第一領域81は、コイル2と保持部材41、42とを一体に保持できれば、巻回部21の両端部の近傍にのみ設けられていてもよい。つまり、第一領域81は、巻回部21の軸方向の中央部まで及んでいなくてもよい。
【0051】
〈構成材料〉
モールド樹脂部8の構成材料(以下、「モールド材料」という場合がある)は、上述した保持部材41、42の構成材料と同様のものを用いることができる。この例では、モールド樹脂部8がPPS樹脂で構成されている。
【0052】
(ケース)
ケース5は、図1図3に示すように、コイル2、磁性コア3及び保持部材41、42を含む組合体10を収納する。ケース5によって、組合体10の機械的保護及び外部環境からの保護(防食性の向上)を図ることができる。本例のケース5は、金属で構成されている。金属製のケース5は、樹脂よりも熱伝導率が高く、組合体10の熱をケース5を介して外部に放熱し易い。よって、金属製のケース5は、組合体10の放熱性の向上に寄与する。
【0053】
ケース5は、底板部51と、側壁部52と、開口部55とを有する。底板部51は、組合体10が載置される平板部材である。側壁部52は、組合体10の周囲を囲む角筒状体である。この例では、底板部51と側壁部52とが一体に形成されている。ケース5(側壁部52)は、組合体10(巻回部21)の高さと同等以上の高さを有する。この例では、底板部51は矩形板状である。また、側壁部52は矩形筒状である(図1参照)。底板部51内底面及び側壁部52の内周面は実質的に平面で構成されている。
【0054】
〈構成材料〉
ケース5は非磁性の金属で構成されている。非磁性金属としては、例えばアルミニウムやその合金、マグネシウムやその合金、銅やその合金、銀やその合金、オーステナイト系ステンレス鋼などが挙げられる。これらの金属は熱伝導率が比較的高い。そのため、ケース5を放熱経路に利用でき、組合体10の熱を外部に効率よく放熱できる。よって、組合体10の放熱性が向上する。ケース5を構成する材料としては、金属以外にも樹脂などを用いることができる。
【0055】
金属製のケース5はダイキャストで製造できる。本例のケース5はアルミニウム製のダイキャスト品により構成されている。
【0056】
(ポッティング樹脂部)
ポッティング樹脂部6は、ケース5内に充填されて、組合体10の少なくとも一部を封止する。ポッティング樹脂部6によって、組合体10の機械的保護及び外部環境からの保護(防食性の向上)を図ることができる。この例では、ポッティング樹脂部6がケース5の開口端まで充填されていて、組合体10の全体がポッティング樹脂部6に封止されている。組合体10の一部のみがポッティング樹脂部6に封止されていてもよい。例えば、巻回部21の内周面の上面の高さまでポッティング樹脂部6で封止されていたり、巻回部21の高さの半分程度までポッティング樹脂部6で封止されていることが挙げられる。また、ポッティング樹脂部6は、コイル2(巻回部21)とケース5(側壁部52)との間に介在される。これにより、コイル2の熱をポッティング樹脂部6を介してケース5に伝えることができ、組合体10の放熱性を向上できる。
【0057】
更に、ポッティング樹脂部6は、図2図3に示すように、巻回部21と内側コア部31との間にも充填されている。つまり、巻回部21と内側コア部31との間に、モールド樹脂部8の第一領域81とポッティング樹脂部6とが併存している。この例では、上述したように、第一領域81が巻回部21の内周面の全周を覆うように設けられている。そのため、巻回部21と内側コア部31との間に、ポッティング樹脂部6と第一領域81とが積層状態で介在する。この場合、内側コア部31の放熱経路は、内側コア部31→ポッティング樹脂部6→モールド樹脂部8(第一領域81)→巻回部21となる。したがって、巻回部21と内側コア部31との間にモールド樹脂部8(第一領域81)のみが介在する場合に比較して、内側コア部31の熱を巻回部21に効率よく伝えることができる。これは、ポッティング樹脂部6の熱伝導率はモールド樹脂部8の熱伝導率よりも高いからである。
【0058】
〈構成材料〉
一般に、ポッティング樹脂部6の構成材料(以下、「ポッティング材料」という場合がある)に要求される特性としては、電気的絶縁性、耐候性、耐熱性などが挙げられるが、最も重要な特性の1つは熱伝導特性である。そのため、ポッティング材料は、熱伝導率を高めるためのフィラーを含有するなど、成分が調整されている。一方、モールド樹脂部8の構成材料(モールド材料)に要求される最も重要な特性の1つは強度特性である。そのため、モールド材料は、基本的にポッティング材料よりも熱伝導率が低い。モールド樹脂部8(モールド材料)の熱伝導率は、例えば0.2W/m・K~0.4W/m・K程度である。これに対し、ポッティング樹脂部6(ポッティング材料)の熱伝導率は、例えば1W/m・K以上、更に1.5W/m・K以上である。ポッティング樹脂部6の熱伝導率は高いほど好ましい。コイル2の熱をケース5に伝達させ易いからである。
【0059】
ポッティング材料は、例えば、基材となる樹脂に、上述したフィラーが分散されたものである。基材となる樹脂は、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂や、PPS樹脂などの熱可塑性樹脂が挙げられる。この例では、基材となる樹脂がシリコーン樹脂(より具体的には、シリコーンゲル)である。フィラーとしては、例えば、アルミナ、シリカ、酸化マグネシウムなどの酸化物、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素などの窒化物、炭化珪素などの炭化物といったセラミックスやカーボンナノチューブなどの非磁性粉末を利用できる。
【0060】
巻回部21と内側コア部31との間にポッティング樹脂部6が充填される理由は、次のとおりである。
図7に示すように、コイル部品20における保持部材41の対向面47(図4)に外側コア部33を配置する。モールド樹脂部8における第二領域82の凹部85に外側コア部33の内端面33e(図4)側が嵌め込まれた状態で、外側コア部33の外周面と凹部85の内周面との間に部分的に隙間が形成されている。外側コア部33と凹部85との間の隙間は、上述した内側コア部31と貫通孔43との間の隙間43cと連通する。これらの隙間が連通することにより、ケース5内に組合体10を収納した状態でポッティング材料を充填した際(図1参照)、巻回部21と内側コア部31との間にもポッティング材料が導入される。
【0061】
その他、組合体10と底板部51との間に接着層(図示せず)を備えてもよい。接着層により、組合体10をケース5に強固に固定できる。接着層は、電気絶縁樹脂で構成することが挙げられる。接着層を構成する電気絶縁樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂や、PPS樹脂、LCPなどの熱可塑性樹脂が挙げられる。接着層は、市販の接着シートを利用したり、市販の接着剤を塗布して形成してもよい。
【0062】
<製造方法>
上述したリアクトル1Aの製造方法の一例を説明する。リアクトル1Aは、以下の第1~第2の工程を備える製造方法により製造できる。
第1の工程.組合体10とケース5とを用意する工程
第2の工程.ケース5内に組合体10を収納した状態でポッティング樹脂部6を形成する工程
【0063】
(第1の工程)
第1の工程では、組合体10を用意する(図4図5参照)。組合体10は、図4に示すように、コイル部品20と磁性コア3とを組み付けて作製する。コイル部品20は、モールド樹脂部8によってコイル2と保持部材41、42とを予め一体化しておく。コイル部品20は、図5に示すようにコイル2と保持部材41、42とを組み付けて巻回部21の両端に保持部材41、42に配置した状態で、モールド樹脂部8を成形することにより作製できる。モールド樹脂部8の成形は、例えば射出成形を利用することができる。具体的には、コイル2と保持部材41、42組物を金型に入れ、巻回部21の内側に中子を挿入する。金型と中子とは別体であってもよいし、中子を備えるスライド金型であってもよい。この状態で、金型にモールド材料を注入してモールド樹脂部8(第一領域81及び第二領域82)を成形する。この例では、巻回部21の内周面の全周を第一領域81で覆うように成形する。組合体10は、図4に示すように、コイル部品20における保持部材41、42の貫通孔43に内側コア部31を挿入して、巻回部21の内側に内側コア部31を配置する。その後、内側コア部31を両端から挟むように外側コア部33を配置する。このとき、内側コア部31の端面と外側コア部33の内端面33eとを接着してもよいし、保持部材41、42の対向面47と外側コア部33の内端面33eとを接着してもよい。
【0064】
用意するケース5は、例えば非磁性の金属で構成されている。この例では、ケース5がアルミニウム製のダイキャスト品である。
【0065】
(第2の工程)
第2の工程では、ケース5内に組合体10を収納した状態でポッティング樹脂部6を形成する。具体的には、図1に示すように、ケース5内に組合体10を収納した状態でポッティング材料を充填し、ポッティング樹脂部6を形成する。例えば、ケース5の開口部55から組合体10と側壁部52との間の隙間にノズルを挿入し、ノズルを通してポッティング材料を注入することが挙げられる。ケース5内にポッティング材料を充填した際、ポッティング材料の一部は、上述したように、外側コア部33と凹部85との間の隙間と、内側コア部31と貫通孔43との間の隙間43cとを通って、巻回部21と内側コア部31との間に充填される(図7参照)。本例の場合、図2図3に示すように、巻回部21と内側コア部31との間にポッティング樹脂部6と第一領域81とが積層状態で介在することになる。
【0066】
ポッティング材料の充填は、真空状態で行うことが好ましい。例えば、組合体10を収納したケース5を真空槽に入れ、真空状態でケース5内にポッティング材料を注入する。真空状態でポッティング材料を注入することで、ポッティング樹脂部6に気泡が発生することを抑制できる。
【0067】
ケース5内にポッティング材料を充填した後、ポッティング材料を固化させることで、ポッティング樹脂部6(図1)を形成する。ポッティング材料の固化は、使用する材料に応じて適宜な条件で行えばよい。
【0068】
本例では、保持部材41、42が凸部44及び保持片45を備える構成としているが、凸部44及び保持片45は必須の構成ではない。本例の場合、凸部44及び保持片45によって、貫通孔43内に内側コア部31を保持すると共に、巻回部21と内側コア部31との間隔を保持している。そして、凸部44及び保持片45により巻回部21内に内側コア部31を支持することによって、巻回部21と内側コア部31との間(具体的には第一領域81と内側コア部31との間)にポッティング樹脂部6を充填する隙間を形成している。しかし、外側コア部33に内側コア部31を接着するなどして、外側コア部33と内側コア部31とを一体化しておくことで、巻回部21と内側コア部31との間に上記隙間を形成することが可能である。
【0069】
例えば、上記第1の工程において、組合体10を構成する際、一方の外側コア部33と一方の内側コア部31とを接着して一体化した第一コア部品とする。第一コア部品の内側コア部31を、コイル部品20の一方側から保持部材41、42の貫通孔43に挿入して、巻回部21の内側に配置する。他方の外側コア部33ともう一方の内側コア部31とを接着して一体化した第二コア部品とする。第二コア部品の内側コア部31を、コイル部品20の他方側から保持部材41、42の貫通孔43に挿入して、巻回部21の内側に配置する。この場合、内側コア部31が外側コア部33に固定されていることから、保持部材41、42に凸部44及び保持片45がなくても、巻回部21と内側コア部31との間に上記隙間を設けた状態で内側コア部31を位置決めできる。凸部44の有無に関係なく、巻回部21と内側コア部31との間に上記隙間を設けることができるので、第一領域81の厚さは凸部44の突出高さに制約されない。そのため、第一領域81の厚さを、凸部44を覆う厚さとする(凸部44の突出高さよりも厚くする)ことも可能である。
【0070】
{主要な効果}
実施形態1のリアクトル1Aは以下の効果を奏する。
巻回部21と内側コア部31との間にポッティング樹脂部6とモールド樹脂部8の第一領域81とが積層状態で介在する。そのため、リアクトル1Aは、内側コア部31の熱を巻回部21に効率よく伝えることができる。よって、リアクトル1Aは放熱性に優れる。
【0071】
コイル2と保持部材41、42とがモールド樹脂部8によって一体化されている。そのため、コイル2と保持部材41、42とを一体物として取り扱うことができるので、コイル2に磁性コア3(内側コア部31及び外側コア部32)を組み付ける作業が行い易い。また、コイル2と保持部材41、42とが一体化されていることで、ケース5内に組合体10を収納するとき、組合体10を安定して配置できる。よって、リアクトル1Aは組立性に優れる。
【0072】
また、モールド樹脂部8の第一領域81が巻回部21の内周面の全周を覆うように設けられている。そのため、第一領域81と巻回部21との接合強度が高くなる。よって、リアクトル1Aは、モールド樹脂部8によって巻回部21と保持部材41、42とをより強固に結合することが可能である。
【0073】
{用途}
リアクトル1Aは、電圧の昇圧動作や降圧動作を行う回路の部品に利用できる。リアクトル1Aは、例えば、種々のコンバータや電力変換装置の構成部品などに利用できる。コンバータの一例としては、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車等の車両に搭載される車載用コンバータ(代表的にはDC-DCコンバータ)や、空調機のコンバータなどが挙げられる。
【0074】
<変形例>
上述したリアクトル1Aでは、図4に示すように、モールド樹脂部8の第二領域82が保持部材41、42の対向面47側に回り込むように設けられている場合を例示した。第二領域82は保持部材41、42に引っ掛けられる構成であれば、第二領域82の形成箇所などは特に限定されない。例えば、保持部材41、42の貫通孔43の内周面に穴を設けておき、この穴に第二領域82が入り込むように設けられていることが挙げられる。あるいは、保持部材41、42の対向面47側において、保持部材41、42の貫通孔43の周縁部に凹部を設けておき、この凹部に第二領域82が入り込むように設けられていることが挙げられる。いずれの場合であっても、第二領域82が、保持部材41、42が巻回部21の端面から離れないように保持部材41、42に引っ掛けられるように構成することが可能である。
【0075】
[実施形態2]
図8を参照して、実施形態2に係るリアクトル1Bを説明する。実施形態2では、第一領域81が巻回部21と内側コア部31との間の周方向の一部に存在し、ポッティング樹脂部6が巻回部21と内側コア部31との間の周方向の残部に存在する形態を説明する。以下の説明は、上述した実施形態1との相違点を中心に行い、同様の事項についてはその説明を省略する。
【0076】
リアクトル1Bは、図8に示すように、モールド樹脂部8の第一領域81が巻回部21の内周面の一部を覆うように設けられている。この例では、第一領域81が、巻回部21の内周面のうち上半分の領域を覆うように設けられている。そのため、第一領域81は、巻回部21と内側コア部31との間の上半分に存在する。また、巻回部21と内側コア部31との間の残部、即ち下半分にポッティング樹脂部6が存在する。リアクトル1Bは、巻回部21と内側コア部31との間の残部(この例では下半分)にポッティング樹脂部6が介在することで、内側コア部31の放熱性を確保できる。リアクトル1Bにおいて、第二領域82は、実施形態1のリアクトル1Aと同様に、保持部材41、42の対向面47の外周縁に沿って枠状に形成されている(図3図4参照)。
【0077】
本例の第一領域81の厚さは、図6に示す保持部材41、42の貫通孔43に設けられた凸部44の突出高さと同等である。つまり、巻回部21の内周面と内側コア部31の外周面との間隔と略等しい。また、第二領域82は、第一領域81から保持部材41の貫通孔43の上側部分を通って対向面47側に回り込み、対向面47の外周縁に沿って枠状に形成される。なお、上述したように、第一領域81の厚さは、凸部44の突出高さと同等でなくてもよく、凸部44を覆う厚さであってもよい。
【0078】
リアクトル1Bは、巻回部21と内側コア部31との間の周方向の一部(この例では上半分)に第一領域81が介在する。そのため、リアクトル1Bは、実施形態1のリアクトル1Aのように、巻回部21と内側コア部31との間にポッティング樹脂部6と第一領域81とが積層状態で介在する場合に比較して、第一領域81が厚くなる。第一領域81の厚みが厚くなる分、第一領域81の剛性が高くなる。よって、リアクトル1Bは、モールド樹脂部8によって巻回部21と保持部材41、42とをより強固に結合することが可能である。
【0079】
また、リアクトル1Bは、図8に示すように、ポッティング樹脂部6が巻回部21の高さの半分程度までケース5に充填されている。ポッティング樹脂部6が巻回部21の高さの半分程度まで充填されていれば、巻回部21と内側コア部31との間の下半分にポッティング樹脂部6を存在させることができる。ポッティング樹脂部6が巻回部21の高さの半分程度までしか充填されていないので、その分、ポッティング材料の使用量を削減できる。一般に、ポッティング材料はモールド材料に比べて材料コストが高い。よって、リアクトル1Bは、ポッティング材料の使用量が減少する分、製造コストを削減できる。
【符号の説明】
【0080】
1A、1B リアクトル
10 組合体
2 コイル
20 コイル部品
21 巻回部
23 接続片
3 磁性コア
31 内側コア部
33 外側コア部
33e 内端面
41、42 保持部材
43 貫通孔
43c 隙間
44 凸部
45 保持片
47 対向面
5 ケース
51 底板部
52 側壁部
55 開口部
6 ポッティング樹脂部
8 モールド樹脂部
81 第一領域
82 第二領域
85 凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8