(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-28
(45)【発行日】2023-01-12
(54)【発明の名称】遺伝子標的エリアの富化方法及びキット
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6876 20180101AFI20230104BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20230104BHJP
C12Q 1/6813 20180101ALI20230104BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20230104BHJP
C12N 9/16 20060101ALI20230104BHJP
C12N 9/10 20060101ALI20230104BHJP
C12N 9/00 20060101ALI20230104BHJP
【FI】
C12Q1/6876 Z
C12Q1/686 Z
C12Q1/6813 Z
C12Q1/6869 Z
C12N9/16 Z ZNA
C12N9/10
C12N9/00
(21)【出願番号】P 2021538411
(86)(22)【出願日】2019-12-09
(86)【国際出願番号】 CN2019123891
(87)【国際公開番号】W WO2020140693
(87)【国際公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-06-28
(31)【優先権主張番号】201910002408.5
(32)【優先日】2019-01-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201910897689.5
(32)【優先日】2019-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521285148
【氏名又は名称】上海臻迪基因科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI ZENISIGHT LTD.
【住所又は居所原語表記】Room 2613, No. 10, Lane 777, Gaoke East Road, Pudong New District Shanghai 201210, China
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】郭 志偉
(72)【発明者】
【氏名】李 英輝
(72)【発明者】
【氏名】陳 倩
(72)【発明者】
【氏名】胡 栄君
【審査官】白井 美香保
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-521675(JP,A)
【文献】特開2003-038180(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108251502(CN,A)
【文献】特表2017-537657(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12Q 1/00-3/00
CAPLUS/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺伝子標的エリアの富化方法であって、
(1)特異的プローブにより標的エリアを含む断片化DNAを増幅することにより、捕捉伸長生成物を提供する工程であって、前記特異的プローブは前記断片化DNAの標的エリアと相補的な配列を含み、前記の特異的プローブの3’末端のヌクレオチドは、前記特異的プローブの3’末端に連接反応が発生することを阻止するために、修飾される工程と、
(2)工程(1)で得られた捕捉伸長生成物の3’末端をリンカーDNAに連接させ、ライゲーション生成物を得る工程とを含み、
前記工程(1)の増幅系は3’-5’エキソヌクレアーゼ活性を有する高忠実な
DNAポリメラーゼ及びdNTPを含み、
前記特異的プローブの3’末端にC3 Spacerが修飾され、
前記C3 Spacerは、前記特異的プローブ前記断片化DNAの標的エリアと結合した後に、前記高忠実な
DNAポリメラーゼにより、前記特異的プローブの3’末端から切除され、
前記リンカーDNAは、5’端がリン酸化修飾され、3’端のヒドロキシがC3 Spacerに置き換えられる、ことを特徴とする、遺伝子標的エリアの富化方法。
【請求項2】
前記工程(1)において、前記断片化DNAは二本鎖DNA、一本鎖DNA及びcDNAを含み、前記断片化DNAの長さは25~200 bpである、ことを特徴とする、請求項1に記載の遺伝子標的エリアの富化方法。
【請求項3】
前記dNTPにさらに標識分子がカップリングされてあり、前記標識分子はビオチンであることを特徴とする、請求項1に記載の遺伝子標的エリアの富化方法。
【請求項4】
前記工程(2)の連接システムは一本鎖リガーゼを含み、
前記一本鎖リガーゼはT4 RNAリガーゼ又は熱安定性RNAリガーゼであり、
前記工程(2)には、連接反応後、シリカゲルカラムによる精製又は加熱処理で連接生成物に残留した熱安定RNAリガーゼの酵素活性を除去する工程を含む、ことを特徴とする、請求項1に記載の遺伝子標的エリアの富化方法。
【請求項5】
前記リンカーDNAは配列決定システムにより識別可能な配列、サンプルラベル配列、及び分子ラベル配列のうちの一種又は複数種の組み合わせを含む、ことを特徴とする、請求項1に記載の遺伝子標的エリアの富化方法。
【請求項6】
前記工程(1)において、磁気ビーズで捕捉伸長生成物を精製する工程を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の遺伝子標的エリアの富化方法。
【請求項7】
前記遺伝子標的エリアの富化方法が遺伝子検出に用いられる、ことを特徴とする請求項1に記載の遺伝子標的エリアの富化方法。
【請求項8】
断片化DNA標的エリアを富化するためのキットであって、請求項1~
6のいずれか一項に記載の遺伝子標的エリアの富化方法に適用される特異的プローブ及びリンカーDNAを含むことを特徴とするキット。
【請求項9】
RNAリガーゼ、標識分子をカプリングしてあるdNTP、3’-5’エキソヌクレアーゼ活性を有する高忠実な
DNAポリメラーゼ、ヌクレアーゼから選択された一種或いは多種をさらに含む、ことを特徴とする請求項
8に記載のキット。
【請求項10】
さらに検出プライマー1、検出プライマー2及びプローブ3を含み、三者のうちの少なくとも一つは遺伝子特異的配列を含むことを特徴とする請求項
9に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバイオテクノロジー分野に関し、特に遺伝子標的エリアの富化方法及びキットに関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子配列決定技術(遺伝子シークエンシング、gene sequencing)は世紀七十年代に登場して以来半分世紀に近く、1985年にPCR技術の出現は分子生物学の分野全体の発展を推進する。次世代配列決定技術(next-generation sequencing、NGS)は正確且つ鋭敏で、フラックスが高いという利点を有し、配列決定技術コストの連続的な低下に伴い、その応用範囲がだんだん拡大するが、その応用はニーズが多様でかつ手間がかかるライブラリー構築という工程の制約を受けている。臨床サンプル例えば血漿サンプルの構築過程において、DNAの存在形態は一般的に短片段であり、損傷された、一本鎖又は一部の二本鎖であり、これらの存在形態における特に断片が200 bpより小さいDNAに対して、従来のPCR技術は良好な捕捉及び富化を行うことができない。
【0003】
微小DNA断片の富化に対して、先行技術は依然として、従来のPCRライブラリー構築法またはリンカーを加えてから増幅する方法、例えばハイブリッド捕捉法を主に使用している。しかし、前者の場合、二重端プライマー(ペアエンドプライマー)が必要なため、増幅に適したフラグメントの長さは大幅に制限され、増幅のバイアスにより、生成物の不均一性が高くなり、並びに指数関数的増幅のエラーが蓄積されることによるその次の配列決定の結果が不正確の問題がある。後者の場合、富化するフラグメントの長さに対する要求は PCR ほど厳しくないが、最初にライゲーション反応を行う必要があり、ライゲーション効率は通常 20% ~50% に過ぎないので、捕捉効率が低い、つながりがにくいため、希少な分子が失われやすいなどのおそれがある。NGSの構築問題を解決するために、最近開発された技術はさらに分子反転プローブ、多重PCR等を含む。分子反転プローブは交雑捕捉技術に比べ、特異性が高いが、そのポケット状プローブの設計が複雑であり、微小DNA断片の富化に適用されない。多重PCR技術は大規模なサンプルに適し、その応用が最も広く、しかしながらプライマー設計の要求が極めて高くかつ増幅子の均一性が低くしたり、増幅生成物の均一性が高いが開始サンプルの濃度に対する要求が高く、同様に開始濃度の低い微小DNA断片の富化に適用できない。これらの従来技術はライブラリーを構築する場合に一般的に二重端プライマー(ペアエンドプライマー)を必要とし、リンカー二量体の汚染を除去するために必然的に精製工程を導入し、これにより小断片の二本鎖DNA、損傷された二本鎖DNA及び一本鎖DNA分子の情報が失われる。しかしながら、いくつかの転写が活発なゲノム領域はちょうどこれらの存在形態のDNAである。前記のように、従来の技術は断片化され、特に200 bp以下の微小DNAを富化する需要が満たすことができない。断片化DNA標的エリアを効率的に富化する方法を見つけ、連接効率が富化効果に対する制限を突破し、非目的ライゲーション生成物の生成を抑制し、希少分子を最大限に捕捉し生成物の均一性を保持することは、本発明が解決しようとする主な技術的課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来技術の欠点に鑑み、本発明の目的は従来の技術における問題を解決するための、遺伝子標的エリアの富化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的及び他の関連目的を達成するために、本発明は遺伝子標的エリアの富化方法であって:
【0006】
(1)特異的プローブにより標的エリアを含む断片化DNAを増幅することにより、捕捉伸長生成物(capture-extension products)を提供する工程において、前記特異的プローブは前記断片化DNAの標的エリアと相補的な配列を含み、前記特異的プローブの3’末端に連接反応が発生することを阻止するために、前記特異的プローブの3’末端ヌクレオチドが修飾される工程、
(2)前記の工程(1)で提供された捕捉伸長生成物の3’端をリンカーDNAに連接することにより、ライゲーション生成物を提供する工程、
を含む、遺伝子標的エリアの富化方法。
【0007】
本発明の別の態様は、断片化DNA標的エリアを富化するためのキットであって、前記遺伝子標的エリアの富化方法に適用され、特異的プローブ及びリンカーDNAを含むキット。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】は本発明の実施例における標的エリア富化プロセスのフローチャートである。
【
図2】は本発明の実施例における構築されたライブラリー分子の概略図である。
【
図3】は本発明の実施例における校正品の構築概略図である。
【
図4】は本発明の実施例における単一特異的検出システムのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明者らは大量の探索的研究を経て、遺伝子標的エリアの富化方法を提供し、前記遺伝子標的エリアの富化方法は操作しやすく、結果が確実であり、特に短片の核酸に対して良好な富化効果を有する。これを基礎として本発明を完成した。
本発明の第一態様は、遺伝子標的エリアの富化方法であって、
【0010】
(1)特異的プローブにより標的エリアを含む断片化DNAを増幅することにより、捕捉伸長生成物を提供し、前記特異的プローブは前記断片化DNAの標的エリアと相補的な配列を含み、前記の特異的プローブの3’末端のヌクレオチドは、前記特異的プローブの3’末端に連接反応が発生することを阻止するために、修飾される工程、と
【0011】
(2)工程(1)で得られた捕捉伸長生成物の3’末端をリンカーDNAに連接させ、ライゲーション生成物を得る工程とを含む、遺伝子標的エリアの富化方法。
【0012】
本発明の提供する遺伝子標的エリアの富化方法において、特異的プローブにより標的エリアを含む断片化DNAを増幅することにより、延伸生成物を捕捉する。反応の時に、前記特異的プローブは捕捉標的エリアの相補的な配列に基づき延伸し、捕捉伸長生成物(Capture-Extension Product、CEP)が得られる。
【0013】
前記遺伝子標的エリアの富化方法に、特異的プローブにより標的エリアを含む断片化DNAを増幅する反応において、標的エリアを含む断片化DNAは一つであってもよく、複数であってもよい。一般的には、特異的プローブと標的エリアを含む断片化DNAは一対一に対応し、すなわち反応系中の特異的プローブの数は一種であってもよく、複数種であってもよい。この工程の前記延伸はサンプルの予備増幅工程全体を指し、単輪又は多輪変性、アニーリング、延伸工程の循環を含む。好ましい実施例において、この工程は多輪循環、例えば2~100、2~10、10~20、20~30、30~40、40~60、60~80、80~100サイクル、を実施し、標的エリアを含む分子数を効果的に増加させる。
【0014】
前記遺伝子標的エリアの富化方法において、前記断片化DNAは二本鎖DNA、一本鎖DNA及びcDNA等であり、前記cDNAは一般的にRNAを逆転写して得られる。二本鎖DNAに対して、特異的プローブは前記断片化DNAのうちの一つの鎖の標的エリアと相補的な配列を含むことができる。したがって本発明の富化方法は断片化RNAにも適用され、当業者であればRNAをcDNAに逆転写すれば本発明の提供する富化方法により後続の操作を行うことができる。前記断片化DNAの長さは25~200 bps、25~40 bps、40~60 bps、60~80 bps、80~100 bps、100~120 bps、120~140 bps、140~160 bps、160~180 bps、又は180~200 bpsであってもよい。
【0015】
前記遺伝子標的エリアの富化方法において、前記工程(1)の増幅系に特異的プローブ、DNAポリメラーゼ及びdNTPを含むことができる。特異的プローブにより標的エリアを含む断片化DNAを増幅する反応は一般的にDNAポリメラーゼが存在する条件下で行うことができ、3’末端封止修飾のプローブは高忠実度ポリメラーゼの作用でテンプレートを結合した後、封鎖基が切除され、プローブが活性化され、それにより標的配列を効果的に延伸することができる。前記DNAポリメラーゼは3’-5’エキソヌクレアーゼ活性を有することができ、それによりテンプレートを結合した後のプローブ3’端の置換基を切除することができ、それによりプローブはテンプレートに沿って延伸することができ、好ましくは高忠実なDNAポリメラーゼであり、生成物の増幅効率及び純度をさらに向上させることに用いられる。前記DNAポリメラーゼは一般的なDNAポリメラーゼ(すなわち、3’-5’エキソヌクレアーゼ活性を有しない)であってもよい。前記工程(1)の増幅系はさらに活性物質を含み、前記活性物質は標的エリアを結合した後に前記特異的プローブの3’末端修飾基を切除するために用いられ、さらに捕捉伸長系においてDNAポリメラーゼ(例えば、一般的なDNAポリメラーゼ)と組み合わせ、増幅系の効率を向上させるために用いられ、前記活性物質は好ましくはヌクレアーゼである。特異的プローブにより標的エリアを含む断片化DNAを増幅する反応は一般的にdNTPが存在する条件下で行うことができ、前記dNTPは一般的に標識分子をカップリングしてあるdNTPであってもよく、前記カップリングされた標識分子はビオチン等を含むがこれらに限定されず、前記dTNPはdCTP、dATP等を含むがこれらに限定されない。前記dNTPは標識分子をカップリングしてもよく、前記標識分子はビオチン等であってもよく、前記標識分子は一般的に延伸生成物の精製に用いることができる。
【0016】
前記遺伝子標的エリアの富化方法において、前記特異的プローブは前記断片化DNAの標的エリアと相補的な配列を含み、それにより断片化DNAの標的エリアに対する特異的増幅を実現することができ、当業者は適切な断片化DNAの標的エリアを選択し、かつ断片化DNAの標的エリアに基づき、適切な相補的な配列を設計することができる。前記特異的プローブの3’末端が他の基と連接反応することを阻止するために、前記特異的プローブは3’末端ヌクレオチドが修飾された特異的プローブであってもよく、それにより遊離プローブの自己連接を回避するか又は他の非目的分子との連接を回避できる、例えば、非目的分子はリンカーDNA等である。当業者であれば適切な修飾基を選択して特異的プローブ3’末端の修飾を実現することができ、例えば、修飾用基は特異的プローブ3’末端ヌクレオチド上の天然基(例えば、ヒドロキシ等)を置換することができ、それにより前記特異的プローブ3’端に連接反応が発生することを阻止し、使用された修飾基は一般的に閉鎖基であってもよい。プローブは相補配列を介してテンプレート上の標的エリアと結合した後、3’端の修飾基は酵素により切除され、それによりプローブが活性化され、これにより、目標配列を効果的に延伸することができる。特異的プローブの3’末端修飾基は水素原子、C3 Spacer基、C6 Spacer基、リン酸基(PO4)、アミノ基(NH2)などを含むがこれらに限定されない。異なる置換基の選択はプローブの捕捉効果に明らかな差異がある。本発明の好ましい実施例において、プローブ3’端のヒドロキシをC3 Spacerに置換して得られたものは効果が最適であり、他の置換基と比較して明らかな利点を有する。前記特異的プローブはさらに汎用配列を含み、前記汎用配列は一般的に配列決定システムにより識別され、それにより後続に提供されたライゲーション生成物を配列決定システムにより配列決定することができ、例えば、Ion Torrent配列決定システムに対して、前記汎用配列は対応するP 1配列であってもよい。本発明の一つの好ましい実施形態において、前記特異的プローブ3’端の尾部領域の塩基はミスマッチを含むことができ、ミスマッチされたのはプローブ3’端の最後の塩基であってもよく、3’端に近い塩基であってもよい;ミスマッチされたのは一つの塩基であってもよく、複数であってもよい。該ミスマッチはプローブの特異性及び結合効率に影響を与えないだけでなく、高忠実なDNAポリメラーゼの切断効率及び忠実度を向上させることにさらに役立つ。
【0017】
前記遺伝子標的エリア富化方法において、前記工程(1)において、さらに捕捉伸長生成物を精製することを含むことができる。当業者は適切な方法を選択して延伸生成物を捕捉して精製することができ、例えば、捕捉延伸生成物の精製方法は、磁気ビーズ精製等を含む。本発明の具体的な実施例において、標識分子により捕捉伸長生成物を精製することができ、精製過程はアビジン又はストレプトアビジンでコーティングされた磁気ビーズの固相精製方法などを用いることができる。
【0018】
本発明の提供する遺伝子標的エリアの富化方法において、さらに、工程(1)で提供された捕捉延伸生成物の3’端をリンカーDNAに連接することにより、ライゲーション生成物を提供することを含む。
【0019】
前記遺伝子標的エリアの富化方法において、捕捉伸長生成物の3’端とリンカーDNAを連接する連接系に一本鎖連接酵素を含むことができ、前記一本鎖連接酵素はリンカーDNAの5’端を前記捕捉伸長生成物の3’端に連接し、前記一本鎖連接酵素は好ましくはT 4 RNAリガーゼ又は熱安定性RNAリガーゼ等である。
【0020】
前記遺伝子標的エリアの富化方法において、前記リンカーDNAは5’末端ヌクレオチドが修飾され、かつ工程(2)の反応温度で一本鎖構造であってもよく、それにより一本鎖リガーゼの触媒下で、捕捉伸長生成物の3’末端水酸基とリンカーDNA 5’末端の修飾基により共有結合を生成し、ライゲーション生成物が得られる。本発明の一つの具体的な実施形態において、リンカーDNAの5’末端ヌクレオチド(例えば、具体的には5’末端ヌクレオチドの5位ヒドロキシ基)はリン酸基で置換され、それによりリン酸化修飾を形成し、一本鎖リガーゼの触媒下で、捕捉伸長生成物の3’末端水酸基とリンカーDNAの5’末端とは共有結合を生成し、ライゲーション生成物を得る。本発明の他の具体的な実施形態において、リンカーDNAの5’末端ヌクレオチド(例えば、具体的には5’末端ヌクレオチドの5位ヒドロキシ基)がアデノシン基で置換され、それによりアデニル化修飾を形成し、5’App DNA/RNA熱安定化リガーゼの触媒下で、リンカーDNAの5’末端が捕捉伸長生成物の3’端と連接反応を行うことができる。本発明の他の具体的な実施形態において、リンカーDNAの5’末端ヌクレオチド(例えば、具体的には5’末端ヌクレオチドの5位ヒドロキシ基)がリン酸基で置換され、それによりリン酸化修飾を形成し、熱安定性RNAリガーゼの触媒下で、リンカーDNAの5’末端が捕捉伸長生成物の3’端と連接反応を行うことができる。前記リンカーDNAは5’端領域に粘着性末端を有する部分二本鎖構造であってもよく、その5’端領域の粘着性末端は一本鎖性質を有し、それにより上記のような方法で5’端を修飾することができ、適切な一本鎖連結酵素の触媒下で、捕捉伸長生成物に連接することができる。前記リンカーDNAはさらに汎用配列、サンプルラベル配列、分子ラベル配列等のうちの一種又は複数種の組み合わせを含むことができ、これらの配列は一般的に配列決定システムにより識別され、それにより製造されたライゲーション生成物を配列決定することができる。例えば、Ion Torrent配列決定システムに対して、前記汎用配列はA配列であってもよく、前記サンプルタグ配列はbarcodeで、それに対応する分子タグ配列等であってもよい。Barcodeを導入して後続のバイオ情報分析において異なるソースのサンプルを区別することに役立ち、それにより一回の反応において同時に複数のサンプルの配列決定を行うことによりスループットを向上させることを実現する。分子タグを導入することは後続のバイオ情報分析において異なる分子を識別することに役立ち、それにより後続の増幅で生成された変異をさらに識別することに役立つ。これらの配列決定システムにより識別可能な配列の応用により、本発明の構築を完了した後のライブラリーは高スループット配列決定プラットフォームにより配列決定を行うことができ、それにより様々な後続研究及び臨床応用に必要な情報を提供する。
【0021】
本発明の好ましい実施例において、前記リンカーDNAの3’末端のヒドロキシは他の基に置換され、それにより前記リンカーDNA 3’端の連接反応を阻止し、自己連接するか他の非目的分子、例えば工程(1)からの遊離プローブを連接することを回避する。
【0022】
前記遺伝子標的エリアの富化方法において、前記工程(2)において、さらにライゲーション生成物を精製することを含むことができる。当業者は適切な方法を選択してライゲーション生成物を精製することができ、例えば、ライゲーション生成物の精製方法はシリカゲルカラム精製、加熱処理等を含むがそれらに限定されない。
【0023】
本発明の提供する遺伝子標的エリアの富化方法は、遺伝子検出に用いることができる。増幅されたライゲーション生成物により遺伝子検出をさらに行う方法は当業者にとって既知であるべきである。本発明の一つの具体的な実施例において、前記標的エリアの富化方法は高スループット配列決定に応用することができる。本発明の別の具体的な実施例において、本発明の標的エリアの富化方法は遺伝子配列検出に応用することができ、例えば、前記標的エリアは、配列が変異する部位(より具体的には一塩基突然変異部位領域)、塩基欠失部位領域、塩基挿入部位領域及び融合変異部位領域等を含む。本発明の他の具体的な実施例において、本発明の標的エリアの富化方法は遺伝子修飾状態の検出に適用することができ、例えば、前記標的エリアはメチル化部位が存在する可能性のある領域を含み、さらに例えば、前記DNA断片は重亜硫酸塩による処理を経た。
【0024】
本発明の提供する遺伝子標的エリアの富化方法は、さらに、(3)工程(2)で提供されたライゲーション生成物を増幅する工程を含む。一般的にはDNAポリメラーゼ及びPCR増幅プライマーによりライゲーション生成物をPCR増幅することができ、ライゲーション生成物を増幅することにより、標的エリアを含むDNAの生成物をさらに富化することができる。当業者であれば適切な方法及びシステムを選択して工程(2)で提供されたライゲーション生成物を増幅することができ、例えば、PCR増幅プライマーは前記特異的プローブの汎用配列及び/又は前記リンカーDNAの汎用配列と協働し、具体的には、前記PCR増幅プライマーは前記特異的プローブの汎用配列及び前記リンカーDNAの汎用配列の少なくとも一部と相補的な配列を有する。
【0025】
本発明が提供する遺伝子標的エリア富化方法は、(4)増幅された後のライゲーション生成物を配列決定することにより、標的エリアの配列決定結果を提供する工程をさらに含む。ライゲーション生成物にPCR増幅を行った後、増幅生成物中の汎用配列を識別することにより増幅生成物を配列決定し、標的エリアの配列決定結果を取得することができる。当業者は適切な方法及びシステムを選択して増幅された後のライゲーション生成物を配列決定し、例えば、Ion TorrentプラットフォームのP 1配列及びA配列に基づき配列決定を行い、標的エリアの配列決定結果を取得することができる。説明すべきものとして、本発明の富化方法は工程(2)で得られたライゲーション生成物が任意の配列決定用の汎用配列を含むことができ、例えばIon Torrent配列決定プラットフォームであってもよく、Illumina配列決定プラットフォームであってもよく、もちろん他の配列決定プラットフォームの汎用配列であってもよい。
【0026】
本発明の提供する遺伝子標的エリアの富化方法は、(5)検出プライマー1、検出プライマー2及びプローブ3で工程(2)に提供されたライゲーション生成物を検出し、二世代の配列決定ではなくPCR検出の手段で標的エリアの検出結果を迅速に提供する工程をさらに含む。前記検出プライマー1、検出プライマー2及びプローブ3において、少なくとも一つは遺伝子特異的配列を含み、すなわち、異なる遺伝子標的エリアに対して、三種類のプライマー/プローブに関する特異的配列の組み合わせは単一特異性、二重特異性又は三重特異性であってもよい。本発明の一つの実施例において、前記検出プライマー1は遺伝子特異的配列を含み、検出プライマー2及びプローブ3は汎用配列を含み、又は検出プライマー1及び検出プライマー2は遺伝子特異的配列を含む、又は検出プライマー1及びプローブ3は遺伝子特異的配列を含み、又は検出プライマー1、検出プライマー2及びプローブ3はいずれも遺伝子特異的配列を含む。いくつかの実施例において、プローブ3は標識分子を含むことができ、例えば蛍光分子であってもよく、かつプローブ3の配列は検出プライマー1又は2と相補的ではない。
【0027】
本発明の第二態様は断片化DNA標的エリアを富化するためのキットを提供し、本発明の第一態様の提供する遺伝子標的エリア富化方法に適用される特異的プローブ及びリンカーDNAを含む。前記特異的プローブ及びリンカーDNAの構造は本発明の第一態様において既に詳細に説明され、ここでは説明を省略する。
【0028】
本発明の提供するキットにおいて、RNAリガーゼ、標識分子がカップリングされてあるdNTP、DNAポリメラーゼ、ヌクレアーゼなどから選択された一種或いは多種を含むことができる。そのうち、RNAリガーゼは熱安定性RNAリガーゼ、T4 RNAリガーゼ、又は5′App DNA/RNA熱安定リガーゼ等であってもよい。dTNPはdCTPであってもよく、dATPであってもよい。前記DNAポリメラーゼは3’ー5’エキソヌクレアーゼ活性を有するDNAポリメラーゼであってもよく、好ましくは、前記DNAポリメラーゼは高忠実なポリメラーゼを選択する。
【0029】
本発明の提供するキットにおいて、さらにPCR増幅のためのフォワードプライマー及びリバースプライマーを含むことができ、それらは一般的に特異的プローブの汎用配列及び前記リンカーDNAの汎用配列と協働し、具体的には前記特異的プローブの汎用配列及び前記リンカーDNAの汎用配列の少なくとも一部と相補的な配列を有することができる。
【0030】
本発明の提供するキットにおいて、さらにPCR検出のための検出プライマー1、検出プライマー2及びプローブ3を含み、三者のうち、少なくとも一つは遺伝子特異的配列を含み、具体的には単一特異性、二重特異性又は三重特異性のプライマー/プローブの組み合わせであってよい。好ましくは、検出プライマー1のみが遺伝子特異的配列を含み、検出フローは
図4を参照する。
【0031】
本発明の一つの好ましい実施例において、本発明の方法又はキットでライブラリーを構築した後、ライブラリー分子(例えば、工程(2)で提供されたライゲーション生成物、その構造は
図2に示す)は構造上に以下の配列を順に含むことができる:5’端配列決定用汎用配列、遺伝子特異的プローブ配列、富化された標的エリア配列、リンカー配列、barcode、分子タグ配列、3’端配列決定用汎用配列、
図2に示すとおりである。そのうち、富化された標的エリアは富化前のサンプルDNAの配列情報を含み、該部分の配列の特徴は以下のとおりである:5’端がゲノムでの位置は固定であり、特異的プローブにより決定される;3’端の位置は固定されず、構築ライブラリーの初期のDNA断片化状態により決定される。したがって、富化されたデータ分析において、該配列の3’端がゲノム上の位置も分子タグの役割を果たすことができる。分子タグは異なる分子を区別するために用いられ、検出の感度及び正確性を向上させる。
【0032】
本発明の有益な効果は以下のとおりである。まず、連接段階においてリガーゼの連接効率の不足による原始標的分子(特に小断片及び希少分子)の損失又は検出漏れを避けるために、連接前に全ての断片化DNAサンプルの標的エリアに対して捕捉伸長の手段により予備増幅を行う。予備増幅段階の伸長反応は線形増幅に属し、PCR増幅の嗜好性がなく、PCR増幅に導入されたエラーを累積することもなく、従来のPCR構築技術に比べて、生成物は均一性がよくかつ後続の配列決定結果がより正確である。次に、予備増幅段階では、各目的遺伝子に約30 bpの一本鎖プローブを設計するだけでよく、短い断片部分例えばcfDNA及びより短い断片例えばctDNAに二重端プライマーを設計する困難を避け、構築ライブラリーの成功率を向上させるだけでなく構築ライブラリーの利便性を向上させる。プローブ3’端を密封し、プローブとテンプレート以外の非目的連接を遮断することができ、遊離プローブによる背景ノイズを効果的に低下させ、標識分子がカップリングされてあるdNTP及びその精製システムの補助によって、目的生成物の純度をさらに向上させ、サンプルDNA分子が理論最高転化率に達する。その次、リンカーDNAの5’端を修飾した後、一本鎖リガーゼ触媒下で延伸生成物の3’端に良好に連接することができるが封止修飾の特異的プローブ3’端に連接されず、同時にリンカー3’端を封止し、リンカーの自己連接と誤連接を回避でき、目的のライゲーション生成物の最終生成物における割合を向上させる。最後に、標的エリアを富化する過程において、プローブ及びリンカーに配列決定用の汎用配列、サンプルラベル配列及び分子ラベル配列を設置し、ライブラリーが構築完了した後に直接配列決定及びデータ分析の目的を達成する。又は、本発明の独創的な単一、二重又は三重特異的プライマー/プローブ系を用いて標的エリアを迅速に検出する。前記のように、本発明の富化方法及びキットは、操作しやすく、結果が確実であり、断片の長さが200 bpより小さいDNAを使用することは、原始分子特に希少分子の損失を最大限に減少させ、標的分子を最も効率的に富化することができる。かつ該富化方法及びキットの忠実性が極めて高く、後続のバイオ情報手段により配列決定過程で生成された塩基の誤りを効果的に訂正することができ、理論的に達成可能な最高の配列決定正確率が得られる。
【0033】
以下に特定の具体的な実施例により本発明の実施形態を説明し、当業者は本明細書に開示された内容により本発明の他の利点及び効果を容易に理解することができる。本発明はさらに異なる具体的な実施形態により実施又は応用することができ、本明細書における各項の詳細は異なる観点及び応用に基づいて、本発明の精神から逸脱することなく様々な修飾又は変更を行うことができる。
【0034】
本発明の具体的な実施形態をさらに説明する前に、理解すべきことは、本発明の保護範囲は下記特定の具体的な実施形態に限定されるものではない。理解すべきことは、本発明の実施例で使用される用語は特定の具体的な実施形態を説明するためであり、本発明の保護範囲を限定するものではない。本発明の明細書及び特許請求の範囲において、本明細書に明確に指摘されない限り、単数形“一つ”、“一”及び“この”は複数の形式を含む。
【0035】
実施例が数値範囲を与える場合、理解すべきことは、本発明が他の説明をしない限り、各数値範囲の二つの端点及び二つの端点の間の任意の数値はいずれも選択可能である。他の定義がない限り、本発明に使用される全ての技術及び科学的用語は当業者が一般的に理解する意味と同じである。実施例で使用された具体的な方法、装置、材料以外に、本技術分野の当業者の従来技術に対する把握及び本発明の記載に基づき、本発明の実施例に記載の方法、装置、材料と類似又は同等の従来技術の任意の方法、装置及び材料を使用して本発明を実現することができる。
【0036】
特に説明しない限り、本発明に開示された実験方法、検出方法、製造方法はいずれも本技術分野の一般的な分子生物学、生物化学、染色質構造及び分析、分析化学、細胞培養、組換えDNA技術及び関連分野の一般的な技術を採用する。これらの技術は従来の文献において完備して説明され、具体的には、Sambrook et al., MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL,Second edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989 and Third edition,2001;Ausubel et al.,CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY,John Wiley & Sons,New York,1987 and periodic updates;the series METHODS IN ENZYMOLOGY,Academic Press,San Diego;Wolffe,CHROMATIN STRUCTURE AND FUNCTION,Third edition,Academic Press,San Diego,1998;METHODS IN ENZYMOLOGY,Vol.304,Chromatin (P.M.Wassarman and A.P.Wolffe,eds.),Academic Press,San Diego,1999;and METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY,Vol.119,Chromatin Protocols (P.B.Becker,ed.) Humana Press,Totowa,1999,等。
【0037】
実施例1
実施例1で使用されたオリゴヌクレオチド配列は表1に示すとおりである。
【0038】
【0039】
この実施例におけるプローブは配列決定用の汎用配列、すなわち斜体で標識された塩基を含み、ここにIon Torrent配列決定システムにおけるP1配列を含む。表中の全てのプローブの特異的配列はいずれもEGFR遺伝子21のエクソンのL858R突然変異に対する。ここで、プローブ1(SEQ ID NO.1)3’端に修飾がなく、プローブ2、3及び4(SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8)3’端のヒドロキシはC3 Spacerに置き換えられ、プローブ2p(SEQ ID NO.3)3’端のヒドロキシはリン酸基に置き換えられ、プローブ2c(SEQ ID NO.4)3’端のヒドロキシはC6 Spacerに置き換えられ、プローブ2n(SEQ ID NO.5)3’端のヒドロキシはリン酸基に置き換えられ、プローブ2d(SEQ ID NO.6)3’端のヒドロキシは二重脱酸シトシン(DDC)に置換される。そのうち、プローブ3(SEQ ID NO.7)の最後の塩基はミスマッチ塩基であり、プローブ4(SEQ ID NO.8)のうち3’端に近いGはRNA塩基rGに置換される。
【0040】
リンカーABar-X 1/2/3(SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.11)に配列決定の汎用配列、すなわち斜体で標識された塩基が含まれ、ここでIon Torrent配列決定システムにおけるA配列である。下線部の配列がbarcodeであり、本発明の異なるサンプルにおいて異なるbarcodesに置き換えることができ、この部分の変化は本発明において説明を省略する。“N”部分は分子タグ配列であり、ここでNNNNNNはランダム配列であり、同一サンプル中の異なる延伸生成物分子をマークするために用いられる。リンカーABar-X1及びABar-X2(SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.10)の5’端はリン酸化修飾され、リンカーABar-X3(SEQ ID NO.11)の5’端はアデニル化修飾され、ABar-X2及びABar-X3(SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.11)の3’端のヒドロキシはC3 Spacerに置き換えられる。
【0041】
EF-1及びER-1(SEQ ID NO.12、SEQ ID NO.13)はEGFR標的配列をPCR検出するための前後プライマーであり、EM-1(SEQ ID NO.14)はMGBプローブである。AF及びAR(SEQ ID NO.15、SEQ ID NO.16)はそれぞれライブラリーを増幅するための前後プライマーであり、ライブラリーにおける汎用配列、すなわち上記プローブにおけるP1配列及びリンカーにおけるA配列とマッチングする。
主要な試薬と材料
【0042】
プラズマ遊離DNA抽出キットはQiagenから購入される。細胞DNA抽出キットと一本鎖DNAを精製するキットはRNA Clean Kitであり、Tiangen Biotechから購入される。熱安定RNAリガーゼは米国Epicentre社から購入され、高忠実なDNAポリメラーゼ反応系、Biotin-dCTP及び精製に用いられるMyOne StrptavidinC1試薬はInvitrogenから購入する。DNAポリメラーゼ、高忠実DNAポリメラーゼ及びPCR反応キットはTOYOBOから購入される。RNAseH
2熱安定性ヌクレアーゼはIDTから購入される。Q5高忠実なDNAポリメラーゼ、T4 RNAリガーゼと5′App DNA/RNA熱安定化リガーゼはNEBから購入される。Agencourt AMPure磁気ビーズはBeckmanから購入される。関連プロセスにおいて定量的に検出された校正品は分子クローニングの従来の方法に従って構築され、具体的な構築構成は
図3に示すとおりである。
工程1、サンプルの準備
【0043】
抽出キットを用いて健常者血漿サンプル中のcfDNAとNCI-H 1975細胞株(該細胞株がEGFR遺伝子21のエクソンL858R変異である)におけるDNAを抽出し、Qubit蛍光定量計によりDNAサンプルを定量し、NCI-H 1975細胞株のDNAを160 bp程度の断片に切断し、10%、1%、0.1%、0.01%の割合で健常者のcfDNAサンプルに混入し、同時に健常者cfDNAをブランク対照(QC)とする。
工程2、捕捉伸長
表2、表3、表4に応じてそれぞれ捕捉伸長反応系を調製する。
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
捕捉伸長されたPCRプログラムは表5に示すとおりである:
表 5
【0048】
捕捉伸長プログラムを完了した後にRNA Clean Kit試薬キットで延伸生成物をシリカゲルカラムで精製し、60ulの溶出緩衝液で溶出する。(本発明において後続で指すシリカゲルカラムの精製は、いずれもこの工程と同じである。)表4の延伸生成物に対して、シリカゲルカラムで精製した後にストレプトアビジンで被覆された磁気ビーズで再び精製し、かつ最終的に60 ulの溶出緩衝液に溶解する。
【0049】
工程3、延伸効率検出
表6に応じて延伸生成物のPCR検出系を調製する。
【0050】
表 6
延伸効率を検出するPCRプログラムは表7に示すとおりである。
【0051】
表 7
工程4、一本鎖連接
工程3の結果に基づいて、工程2で得られた一部の延伸生成物を選択してそれぞれ表8、表9、表10に応じて連接反応系を調製する。
【0052】
【0053】
【0054】
表 10
ライゲーション生成物を得た後の処理は表11に示すとおりである。
【0055】
【0056】
工程5、連接効率検出
表12に応じてPCR検出体系を調製して工程4の連接効率を検出する。
【0057】
表12
ライゲーション効率を検測するPCRプロセスは表13に示すとおりである。
【0058】
【0059】
工程 6. ライブラリー増幅
表14に記載の反応系及び手順で工程4で得られたライゲーション生成物に対してPCR増幅を行う。
【0060】
【0061】
反応が終了した後、80μLのAgencourt AMPure磁気ビーズを取って増幅されたライブラリーを精製し,精製生成物を30 ulの溶出緩衝液に溶解して溶出し、ここまで、配列決定しようとするライブラリーの構築が完了する。
工程 7. 配列決定及びデータ分析
【0062】
調製されたライブラリーをIon Protonシーケンサーで配列決定を行い、関連操作は油中水PCR、ライブラリー富化、チップ試料添加及び配列決定を含み、具体的な操作フローはIon PITM HiーQTM OT 2 200 Kit明細書及びIon PITM HiーQTM Sequencing 200 Kit明細書を参照する。
実験結果及び分析
結果における捕捉伸長倍率、捕捉効率及び連接効率の計算方式は以下のとおりである。
捕捉伸長倍率=捕捉後のEGFR遺伝子出力コピー数/捕捉前のEGFR遺伝子入力コピー数
捕捉効率=(捕捉伸長倍率-1)/捕捉伸長サイクル数×100%
連接効率=(連接生成物出力コピー数/延伸生成物入力コピー数)×100%
本実施例における全てのプロセスデータ(例えば捕捉効率、連接効率)の分析はいずれもQCサンプルに由来する。
結果1、異なるタイプのポリメラーゼは異なるプローブの捕捉伸長結果への影響。
【0063】
表15.異なるタイプのポリメラーゼの捕捉伸長試験結果(QCサンプル)
【0064】
表15に係る捕捉伸長反応系は表2及び表3を参照し、ここで、高忠実なポリメラーゼは2X高忠実なDNAポリメラーゼPCR Master Mix(DNAポリメラーゼが3’ー5’エキソヌクレアーゼ活性を有する)であり、一般的なポリメラーゼは2X DNAポリメラーゼPCR Master Mix(DNAポリメラーゼが3’ー5’エキソヌクレアーゼ活性を有さない)であり、使用されたcfDNAサンプルはQCサンプルであり、延伸効率の検出方法は工程3を参照する。
【0065】
試験結果から以下のことが分かる:1)3’端の封止修飾されたプローブは高忠実なポリメラーゼの作用でテンプレートを結合した後、閉鎖基が切除され、プローブが活性化され、それにより目標配列を効果的に延伸することができる。2)熱安定性ヌクレアーゼは一般的なポリメラーゼと併用され、RNA基に修飾されたプローブに対しても活性化効果を果たすことができ、本発明の富化方法の適用性を強化する。3)異なる置換基の選択はプローブの捕捉効果に明らかな差異があり、プローブ3’端のヒドロキシをC3 Spacerに置換することにより得られた効果が最適であり、他の置換基と比較して明らかな利点を有する。したがって、本実施例の結果2からのデータは主に3’端のヒドロキシをC3 Spacerのプローブに置換して得られた結果データである。
結果2、異なる延伸サイクル数は一部のプローブの延伸結果への影響。
【0066】
表16. 異なる延伸サイクル数の試験結果(QCサンプル)
表16に係る捕捉伸長反応系は表2を参照し、使用されたcfDNAサンプルがQCサンプルであり,延伸効率の検出方法は工程3を参照する。
試験結果から、サイクルの数の増加は捕捉伸長効率を効率的に向上できることが分かる。
結果3、dNTPが標識分子をカップリングするか否かは捕捉伸長結果への影響。
【0067】
表 17.捕捉伸長系にBiotin-dCTPを配合した試験結果(QCサンプル)
表17に係る捕捉伸長反応系は表2及び表4を参照し、使用されたcfDNAサンプルがQCサンプルであり、延伸効率の検出方法は工程3を参照する。
結果から分かるように,BiotinをカップリングしたdCTPを捕捉伸長系に配合し、延伸生成物を効果的に標識し、捕捉効率を向上させることができる。
結果4、dNTPが標識分子をカップリングするか否かは連接結果への影響。
【0068】
表18.捕捉伸長系にBiotin-dCTPを配合した後のライゲーション反応の試験結果(QCサンプル)
【0069】
表18に係るライゲーション反応系は表8を参照し、そのうち、延伸生成物は表2又は表4の体系に基づいて製造して得られた延伸生成物であり、そのうち、各体系はいずれも高忠実なポリメラーゼを使用し、前記高忠実なポリメラーゼは2X高忠実なDNAポリメラーゼPCR Master Mix(DNAポリメラーゼが3’ー5’エキソヌクレアーゼ活性を有する)であり、使用されたcfDNAサンプルはQCサンプルであり、連接効率の検出方法は工程5を参照する。
【0070】
結果から分かるように、3’端のヒドロキシをC3 Spacerに置き換えたプローブを使用し、biotinをカップリングしたdCTPとbiotinに対する精製システムを配合して使用し、最適な連接効果を得ることができる。修飾されていないプローブ又はdNTPがbiotinを結合してない反応系はほとんど連接できない。
結果5、5’端で異なり修飾されたプローブと異なるリガーゼが連接効率への影響。
【0071】
表19.連接体系において5’端が異なり修飾されたプローブ及び異なるリガーゼの試験結果(QCサンプル)
【0072】
表19に係る連接反応系は表8、表9及び表10を参照し、そのうち、延伸生成物は表4の体系に基づいて製造された延伸生成物であり、使用されたcfDNAサンプルはQCサンプルであり、連接効率の検出方法は工程5を参照する。
結果から分かるように、5’端がリン酸化修飾されたプローブを使用して熱安定RNAリガーゼを配合して連接効果を顕著に向上させることができる。
結果6、異なる3’端で修飾されたリンカーDNAの連接効率への影響。
【0073】
表20.連接体系における異なる3’端の修飾されたリンカーDNAの連接試験結果(QCサンプル)
【0074】
表20に係る連接反応系は表8を参照し、そのうち、延伸生成物は表4の体系に基づいて製造された延伸生成物である。使用されたcfDNAサンプルがQCサンプルであり、連接効率を検出する方法は工程5を参照する。
結果により、3’端の閉鎖修飾されたリンカーDNAを使用して自己連接及び誤連接を低減し、連接効率を顕著に向上させることが分かる。
結果7、連接後の異なる処理は生成物の検出率への影響。
【0075】
表21.連接後の異なる処理による生成物の検出率結果(QCサンプル)
【0076】
表20に係る連接反応系は表8を参照する。そのうち、延伸生成物は表4の体系に基づいて製造された延伸生成物であり、使用されたcfDNAサンプルはQCサンプルであり、連接後処理の具体的なパラメータは表11を参照し、連接効率の検出方法は工程5を参照する。
【0077】
結果により、連接反応後、シリカゲルカラムによる精製又は加熱処理はいずれも連接生成物に残留した熱安定RNAリガーゼの酵素活性を効果的に除去するか又は低減することができ、それにより連接生成物のバックグラウンドノイズを低減し、生成物の検出率を向上させる。
結果8、異なる反応条件におけるサンプルのデータ。
【0078】
配列決定分析の条件設定は表22に示し、配列決定方法は具体的には工程7を参照し、表22における条件番号に対応する配列決定分析結果は表23に示すとおりである。cfDNAにおける変異DNAの異なる配合率条件での検出結果は表24に示すとおりである。
【0079】
【0080】
表22に係るPCR増幅により取得された連接生成物は表3、表4の体系に基づいて製造して得られた延伸生成物をさらに表8~表10の連接反応体系に基づいて製造して得られた連接生成物であり、連接後処理の具体的なパラメータは表11を参照する。表23の配列決定分析結果の実験において、使用されたcfDNAサンプルはQCサンプルである。表24に係るcfDNAにおける変異DNAの異なる配合率条件実験において、同一の条件番号の技術的解決手段について,使用されたcfDNAサンプルにおけるNCI-H 1975細胞株のDNAの配合量のみが異なり,他の実験工程はいずれも表22と同じである。
【0081】
【0082】
表24.cfDNAにおける変異DNAの異なる配合率(ドープ率)条件での検出結果
【0083】
表23及び表24から分かるように、番号2、4、5、10の反応条件で、配列決定のアライメント率が高く、検出感度が高く、変異配合率が0.01%まで低いcfDNAサンプルから変異を検出できる。結果から分かるように、プローブ3’のヒドロキシの閉鎖修飾は非常に重要であり、プローブが自己連接するか又はリンカーに連接することを防止でき、バックグラウンドを大幅に低下させ、テンプレートを結合した後のプローブは修飾基を切除した後に効果的に延伸することができる。標識分子をカップリングしたdNTP及びその精製システムは、構築生成物の純度を大幅に向上させることができ、本発明の技術手段に対して効果的な補充を提供する。また、熱安定性RNAリガーゼの選択、リンカーDNA 3’端の封止、及び連接後の処理は、いずれも構築生成物の純度及び検出感度を向上させる作用を果たすことができ、それぞれ/共に本発明の技術手段を構成する。
実施例2
実施例2で用いたオリゴヌクレオチド配列は表25に示すとおりである。
【0084】
【0085】
この実施例におけるプローブは汎用配列、すなわち斜体で標識された塩基を含み、ここでIon Torrent配列決定システムにおけるP1配列である。本実施例で使用されたDNAサンプルは重亜硫酸塩(bisulphite)で処理されたDNAサンプルである。そのうち、Probe5(SEQ ID NO 17)は遺伝子SEPT 9の一つのメチル化領域に対して、Probe6(SEQ ID NO 18)は遺伝子NDRG 4の一つのメチル化領域に対して、Probe7(SEQ ID NO 19)は遺伝子BMP3の一つのメチル化領域に対応する。
【0086】
リンカーABar-X 2(SEQ ID NO 10)には汎用配列、すなわち斜体で標識された塩基が含まれ、ここでIon Torrent配列決定システムにおけるA配列であり、下線部分の配列はbarcodeであり、異なるサンプルにおいて異なるbarcodesに置き換えることができる。“N”部分は分子タグ配列である。そのうち、NNNNNNはランダム配列であり、同一のサンプル中の異なる延伸生成物分子をマークするために用いられる。リンカーABar-X2の5’端はリン酸化修飾である。
【0087】
AF(SEQ ID NO 15)及びAR(SEQ ID NO 16)はそれぞれライブラリーを増幅するためのPCR前、後プライマーであり、ライブラリーにおける汎用配列、すなわち上記P1配列及びA配列とマッチングする。
主要な試薬と材料
【0088】
重亜硫酸塩転換キットはPromegaから購入され、Agencourt AMPure磁気ビーズはベックマンから購入される。その他の主試薬は、実施例1と同様である。
工程1、サンプル準備
【0089】
健康なヒトのプラズマサンプルと腸癌組織標本の5例を抽出し、Qubit蛍光定量器によりDNAサンプルを定量する。腸癌組織標本DNAを160 bp程度の断片に切断し、10%及び5%の比例で健康なヒトプラズマサンプルに配合し、それぞれ5%の配合率及び10%の配合率のサンプルを構築し、同時に健常者のプラズマサンプルをブランク対照とする。Promegaの重亜硫酸塩転換キットを用いて健常者プラズマサンプルを転換する。転換後のDNA定量後に1000 コピー/μLの濃度に調製した。
工程2、捕捉伸長
表26に応じて捕捉伸長反応系を調製する。
【0090】
表26
PCR 捕捉伸長プログラムは表27を参照する。
【0091】
【0092】
捕捉伸長が完了した後に生成物をシリカゲルカラムで精製し,60 ulの溶出緩衝液で溶出する。表4の捕捉伸長生成物をシリカゲルカラムで精製した後、ストレプトアビジンで被覆された磁気ビーズをさらに精製し、かつ最終的に60 ulの溶出緩衝液に溶解する。
工程3、一本鎖連接
表28に応じて調製された連接反応系及び条件で連接反応を行う。
【0093】
表28
工程4、ライブラリー増幅
表29の反応系及び条件でライゲーション生成物に対してPCR増幅を行う。
【0094】
【0095】
反応が終了した後、80μLのAgencourt AMPure磁気ビーズを取ってPCR生成物を精製し、さらに精製生成物を30 uL溶出緩衝液に溶解して溶出する。ここまで,配列決定しようとするライブラリー構築が完了する。
工程5、配列決定及びデータ分析
【0096】
調製されたライブラリーをIon Protonで配列決定し、操作ステップは油中水PCR、ライブラリー富化、チップ試料添加及び配列決定を含み、具体的な操作フローはIon PITM HiーQTM OT 2 200 Kit明細書及びIon PITM HiーQTM Sequencing 200 Kit明細書に詳しい。
配列決定結果の分析は表30と表31に示すとおりである。
【0097】
【0098】
表31.異なる腸癌組織標本のDNA配合率における各遺伝子メチル化部位(サイト)の割合
【0099】
表30、表31から分かるように、5%、10%の腸癌組織DNAを配合したDNAサンプルはブランクサンプルに比べて、メチル化程度が明らかに異なり、10%配合率のサンプルのメチル化程度が最も高く、ブランクサンプルのメチル化程度が最も低く、予想に合致する。結果から分かるように、本発明の富化方法を使用し、重亜硫酸塩で処理されたDNA断片化サンプルの標的エリアに対してもよく富化することができ、かつ遺伝子メチル化程度及びメチル化程度に相関性が高い疾患の分析に適用される。
実施例3
実施例3及び4で用いられたオリゴヌクレオチド配列は表32に示すとおりである:
【0100】
表32
主な試薬及び材料:
実施例1と同じであり、qPCRに使用された校正品は分子クローニングの従来の方法に従って構築される。
工程1、サンプル準備
【0101】
非小細胞肺癌細胞株NCI-H 1975はEFGR L858R部位の変異及びQ787部位のSNPを同時に含む。XXキットを使用して非小細胞肺癌細胞株NCI-H 1975と正常ヒト白血球のゲノムDNAを抽出し、超音波でゲノムDNAを100-300 bpの分子量範囲に切断する。Qubit蛍光定量器により定量した後、1%、0.1%、0.03%、0.01%、0%の割合に応じてNCI-H 1975のゲノムDNAを正常ヒト白血球のゲノムDNAに配合し、かつ本発明の実施例1における工程2~工程6によりサンプルを捕捉して延伸し、連接して、ライブラリー構築準備する。
工程2、異なる特異的プライマー/プローブの組み合わせのqPCR検出
EGFR遺伝子L858R部位の三重特異性、二重特異性、単一特異的検出体系はそれぞれ表33-35に示すとおりである。
【0102】
【0103】
表34. L858R部位の二重特異性検出システム:
【0104】
表35. L858R部位の単一特異性検出システム:
EGFR遺伝子Q787Q部位の三重特異性、二重特異性、単一特異性検出システムはそれぞれ表36-38に示す通りである。
【0105】
表36. Q787Q部位の三重特異性検出システム:
【0106】
表37. Q787Q部位の二重特異性検出システム:
【0107】
表38. Q787Q部位の単一特異性検出システム:
qPCR 検出手順を表 39 に示す。
【0108】
【0109】
結果1. 異なる特異的プライマー/プローブの組み合わせによる L858R 部位の検出結果を、それぞれ表 40~42 に示す。これらのうち、三重特異性、二重特異性、および単一特異性検出システムは、それぞれ表 33-35 の反応系に対応する。
【0110】
表 40. L858R 部位の三重特異性検出結果(ΔCT=ABS(mean Qi-Q5))
【0111】
【0112】
【0113】
結果 2. 異なる特異的プライマー/プローブの組み合わせによる Q787Q 部位の検出結果を表 43-45 に示す。これらのうち、三重特異性、二重特異性、および単一特異性検出系は、それぞれ表 36-38 の反応系に対応する。
【0114】
【0115】
【0116】
表45. Q787Q部位の単一特異性検出結果
結論:
【0117】
配合率の異なる参考製品、二重特異性システムと単一特異性システムの 2 つのプライマー/プローブ のシステムは、三重特異性システムと比較して、ΔCT 値が大きく、実効分解能が高い。ΔCT=3 をカットオフとして使用すると、L858R 部位について、単一特異性システム、二重特異性システム、および三重特異性システムの検出限界はそれぞれ 0.01%、0.01% および 0.03% であり、Q787 部位については、検出限界はそれぞれ 0.01%、0.03% および 0.01% である。配合率が0.03%と低い場合でも、単一特異性システム、二重特異性システムともに依然として確実な検出率を有することが分かる。
実施例 4.
この実施例で使用したオリゴヌクレオチド配列を表 32 に示す。
主な試薬・材料:実施例3と同じ。
工程 1. サンプルの準備
【0118】
プラズマ遊離核酸抽出キットを使用して、男女それぞれのプラズマ遊離 DNA を抽出し、Qubit 蛍光光度計で定量した後、男性 cfDNA を女性 cfDNA に 1%、0.1%、0.03%、0.01%、0% の割合で配合する。ブランクコントロールとして女性のcfDNAを使用し、本発明の実施例1の工程2~6に基づき、サンプルに対して、捕捉伸長、ライゲーション、およびライブラリー拡張の準備を行う。
工程 2. 異なる特異的プライマー/プローブの組み合わせによる qPCR 検出
男性特異的 SRY 遺伝子の三重特異性、二重特異性、および単一特異性検出システムは、それぞれ表 46-48 に示されている。
【0119】
表 46. 男性特異的 SRY 遺伝子の三重特異的検出システム:
【0120】
表47. 男性特異的 SRY 遺伝子の二重特異的検出システム:
【0121】
表48. 男性特異的 SRY 遺伝子の単一特異的検出システム:
qPCR 検出手順を表 49 に示す。
【0122】
【0123】
結果: 異なる特異的プライマー/プローブの組み合わせによる男性特異的 SRY 遺伝子の検出結果は、それぞれ表 50-52 に示されている。これらのうち、三重特異的検出システム、二重特異的検出システム、および単一特異的検出システムは、それぞれ表 46-48 の反応系に対応する。
【0124】
表 50. 男性特異的 SRY 遺伝子の三重特異性検出結果(ΔCT=ABS(mean Qi-Q5))
【0125】
表51. 男性特異的 SRY 遺伝子の二重特異性検出結果
【0126】
表52. 男性特異的 SRY 遺伝子の単一特異性検出結果
【0127】
結論: SRY は Y 染色体上のみにある遺伝子として、3つの方法の検出感度はともに高い。ΔCT=3 がカットオフとして使用される場合、単一、二重、および三重の特異性システムは、いずれも0.01% の検出感度に達することができる。ただし、具体的なCT値から判断すると、単一特異的システムの検出率がより高い。
要約すると、本発明は、従来技術の様々な欠点を効果的に克服し、高い産業的価値を有する。
【0128】
前記の実施例は、本発明の原理及び効果を例示的に示すものであり、本発明を限定するものではない。この技術に精通している者は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、前記の実施例を修正または変更することができる。したがって、本発明によって開示された精神および技術的思想から逸脱することなく、技術分野における通常の知識を有する者によって行われたすべての同等の修正または変更は、依然として本発明の特許請求の範囲によってカバーされるべきである。
【配列表】