(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-28
(45)【発行日】2023-01-12
(54)【発明の名称】電動昇降装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
B66F 19/00 20060101AFI20230104BHJP
B66D 3/18 20060101ALI20230104BHJP
【FI】
B66F19/00 G
B66D3/18 E
(21)【出願番号】P 2018125935
(22)【出願日】2018-07-02
【審査請求日】2021-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】591156799
【氏名又は名称】ユニパルス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 功太郎
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0282178(US,A1)
【文献】特開昭49-082048(JP,A)
【文献】特開2018-070361(JP,A)
【文献】特開昭57-121589(JP,A)
【文献】特開2001-002372(JP,A)
【文献】特開2017-193440(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 19/00
B66D 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降させる物品を係止する係止部材と、
前記係止部材に接続されて前記係止部材の昇降を行う昇降作動部と、
前記昇降作動部と繋がっている駆動源のモータ部と、
前記係止部材に印加される重量を検出して重量信号を出力する重量検出部と、
前記重量検出部からの前記重量信号に基づいて、前記モータ部の制御を行う制御部と、
前記制御部と繋がって前記係止部材の昇降に係る指令を行う操作指令部と、
前記モータ部の回転位置を検出して位置信号を出力する位置検出部と、
を備える電動昇降装置であって、
前記制御部は、
前記モータ部の電流値を検出する電流検出部を有し、
前記制御部は、前記操作指令部からバランス指令を受信した後、前記重量検出部からの前記重量信号を基に前記係止部材若しくは前記係止部材に係止された前記物品をバランスするように制御すると共に、前記重量検出部からの前記重量の大きさに応じて、前記係止部材に直接的若しくは間接的に加えた鉛直方向の成分を有する外力によって動く前記係止部材の速度を制御
し、
前記制御部が実行する前記速度の制御では、
前記重量検出部からの前記重量が所定値より小さいと判断した場合には、前記外力が前記重量検出部に加わったことを検出したときに、前記モータ部に対して前記位置信号と前記電流値を用いて弱め界磁制御を実行し、
前記重量検出部からの前記重量が前記所定値以上と判断した場合には、前記弱め界磁制御を実行せず、
前記弱め界磁制御は、前記モータ部のモータ回転数が一定レベルになった際に、前記モータ回転数を前記一定レベルより増加させる制御である、
ことを特徴とする電動昇降装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記係止部材に直接的若しくは間接的に加えた鉛直下向き方向の成分を有する外力が前記重量検出部に加わったことを検出したときに、前記弱め界磁制御を実行する、ことを特徴とする請求項1に記載の電動昇降装置。
【請求項3】
前記昇降作動部が、
半円弧部とこれに繋がる直線部からなる長円形の環が交互に連接され、片端が前記係止部材に連結するリンクチェーンと、
前記モータ部の駆動により回転して、前記リンクチェーンを巻回して前記リンクチェーンの繰り出しと引込みを巻回する回転部材と、
を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の電動昇降装置。
【請求項4】
前記昇降作動部が、
対をなして相互に噛み合い、片端が前記係止部材に連結して鉛直上方向に剛直化する噛合チェーンと、
前記モータ部の駆動により回転して、前記噛合チェーンと噛み合って前記噛合チェーンの繰り出し及び引込みを行う歯車と、
を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の電動昇降装置。
【請求項5】
昇降させる物品を係止する係止部材と、
前記係止部材に接続されて前記係止部材の昇降を行う昇降作動部と、
前記昇降作動部と繋がっている駆動源のモータ部と、
前記係止部材に印加される重量を検出して重量信号を出力する重量検出部と、
前記重量検出部からの前記重量信号に基づいて、前記モータ部の制御を行う制御部と、
前記制御部と繋がって前記係止部材の昇降に係る指令を行う操作指令部と、
前記モータ部の回転位置を検出して位置信号を出力する位置検出部と、
を備える電動昇降装置の制御方法であって、
前記制御部は、
前記モータ部の電流値を検出する電流検出部を有し、
前記操作指令部からバランス指令を受信したことを判断するステップ(S104)と、
前記バランス指令を受信した時の前記重量検出部からの前記重量を記憶するステップ(S105)と、
前記重量に基づいて前記係止部材若しくは前記係止部材に係止された前記物品をバランスするように制御するステップ(S106)と、
前記重量が所定値より小さいことを判断するステップ(S107)と、
前記重量が前記所定値より小さいと判断した時、前記係止部材若しくは前記係止部材に係止された前記物品に鉛直方向の成分を有する外力が加わったことを判断するステップ(S108)と、
前記外力が加わったと判断した時、前記モータ部に対して弱め界磁制御を実行するステップ(S109)と、を含
み、
前記弱め界磁制御は、前記モータ部のモータ回転数が一定レベルになった際に、前記モータ回転数を前記一定レベルより増加させる制御である、
ことを特徴とする電動昇降装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造分野の製造組立て設備、運輸分野の移送設備などに用いて、物品等を鉛直上下方向にモータによって昇降移動させる電動昇降装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から工業製品の組立てを行う工場では、大きな重量を有する工具、作業用機器製品、半完成品などの物品を上下動作させる荷役機械を使用している。その中でも、作業者が大きな重量の物品を比較的軽い操作力で任意の高さに上下動できるように助力を発生させるバランス型の昇降装置は、圧力エアを用いたものと、電動モータを用いたものとが知られている。
【0003】
エアシリンダを用いたものは、例えばアーム式で、圧力エアが必要であることからエアコンプレッサ等が別途必要であり、またエア供給が切れた際の安全装置が必要であるという難点があった。また異なる重量の物品を吊下げると、その重量差によって助力の度合いが変わってしまうため、これを修正するために、都度手動でエア圧を調整する必要があって作業効率が低下する。そこで物品重量をコンピュータに登録して登録呼出しで行うようにしようとすると電空レギュレータを用いるため配管なども含め構成が複雑になるという難点があった。
【0004】
これに対して電動モータを用いた昇降装置には、物品をロープやチェーンで吊下げる吊下げ式が知られていて、ロープやチェーンを巻胴に巻回して鉛直上下方向にモータによるアシストで重量バランスさせ僅かな操作力で昇降移動させるバランス型の電動昇降装置が開示されている(特許文献1)。
【0005】
また電動モータを用いた昇降装置の変形例として、可搬台車の上に並列リンクにより鉛直方向に移動自在な天板を設けて、噛合チェーンの伸縮によって天板を昇降させ、噛合チェーンに繋がったモータによるアシストで重量バランスさせるものも開示されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-193440号公報
【文献】特開2018-070361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このようなバランス型の電動昇降装置において、特に物品を係止部材に係止させないでバランス状態として作業者が係止部材を自在に操作して作業を行う時、操作性において改善の余地があった。例えば作業者が係止部材を急速に鉛直下方向に移動させようとすると、その速度に制限が生じて、作業者が所望するより速い速度で係止部材を移動できなくなる。というのは、モータが一定レベル以上高速になった場合にモータのステーターコイルに逆起電力が発生して、モータへの印加電圧が限界に達し回転速度が上げられなくなるからである。
【0008】
このような問題に鑑みて、本発明は、バランス型の電動昇降装置の、操作性向上を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電動昇降装置は、上記の目的を達成するために、
昇降させる物品を係止する係止部材と、
係止部材に接続されて前記係止部材の昇降を行う昇降作動部と、
昇降作動部と繋がっている駆動源のモータ部と、
係止部材に印加される重量を検出して重量信号を出力する重量検出部と、
重量検出部からの前記重量信号に基づいて、前記モータ部の制御を行う制御部と、
制御部と繋がって前記係止部材の昇降に係る指令を行う操作指令部と、
モータ部の回転位置を検出して位置信号を出力する位置検出部と、
を備える電動昇降装置であって、
制御部は、モータ部の電流値を検出する電流検出部を有し、
当該制御部は、操作指令部からバランス指令を受信した後、重量検出部からの重量信号を基に係止部材若しくは係止部材に係止された物品をバランスするように制御すると共に、重量検出部からの重量の大きさに応じて、係止部材に直接的若しくは間接的に加えた鉛直方向の成分を有する外力によって動く係止部材の速度を制御し、
制御部が実行する当該速度の制御では、
重量検出部からの重量が所定値より小さいと判断した場合には、当該外力が重量検出部に加わったことを検出したときに、モータ部に対して位置信号と電流値を用いて弱め界磁制御を実行し、
重量検出部からの重量が所定値以上と判断した場合には、弱め界磁制御を実行せず、
当該弱め界磁制御は、モータ部のモータ回転数が一定レベルになった際に、当該モータ回転数を当該一定レベルより増加させる制御である、ように構成されている。
【0010】
また、本発明の電動昇降装置は、上記の目的を達成するために、
制御部は、係止部材に直接的若しくは間接的に加えた鉛直下向き方向の成分を有する外力が重量検出部に加わったことを検出したときに、当該弱め界磁制御を実行する、ように構成されている。
【0011】
また、本発明の電動昇降装置は、上記の目的を達成するために、
昇降作動部が、
半円弧部とこれに繋がる直線部からなる長円形の環が交互に連接され、片端が係止部材に連結するリンクチェーンと、
モータ部の駆動により回転して、リンクチェーンを巻回してリンクチェーンの繰り出しと引込みを巻回する回転部材と、を備えている。
【0012】
また、本発明の電動昇降装置は、上記の目的を達成するために、
昇降作動部が、
対をなして相互に噛み合い、片端が係止部材に連結して鉛直上方向に剛直化する噛合チェーンと、
モータ部の駆動により回転して、噛合チェーンと噛み合って噛合チェーンの繰り出し及び引込みを行う歯車と、を備えている。
【0013】
本発明の電動昇降装置の制御方法は、上記の目的を達成するために、
昇降させる物品を係止する係止部材と、
係止部材に接続されて前記係止部材の昇降を行う昇降作動部と、
昇降作動部と繋がっている駆動源のモータ部と、
係止部材に印加される重量を検出して重量信号を出力する重量検出部と、
重量検出部からの前記重量信号に基づいて、前記モータ部の制御を行う制御部と、
制御部と繋がって前記係止部材の昇降に係る指令を行う操作指令部と、
モータ部の回転位置を検出して位置信号を出力する位置検出部と、
を備える電動昇降装置の制御方法であって、
制御部は、モータ部の電流値を検出する電流検出部を有し、
操作指令部からバランス指令を受信したことを判断するステップ(S104)と、
バランス指令を受信した時の重量検出部からの重量を記憶するステップ(S105)と、
重量に基づいて係止部材若しくは係止部材に係止された物品をバランスするように制御するステップ(S106)と、
重量が所定値より小さいことを判断するステップ(S107)と、
重量が所定値より小さいと判断した時、係止部材若しくは係止部材に係止された物品に鉛直方向の成分を有する外力が加わったことを判断するステップ(S108)と、
外力が加わったと判断した時、前記モータ部に対して弱め界磁制御を実行するステップ(S109)と、を含み、
当該弱め界磁制御は、モータ部のモータ回転数が一定レベルになった際に、当該モータ回転数を当該一定レベルより増加させる制御である、ようにすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の電動昇降装置によれば、操作性に優れた電動昇降装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る電動昇降装置の斜視構成図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る電動昇降装置の一部を透明化した斜視構成図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る電動昇降装置の動作フローチャート図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る電動昇降装置の動作説明模式図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係る電動昇降装置の動作説明模式図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態に係る電動昇降装置の動作説明模式図である。
【
図7】本発明の第1の実施形態に係る電動昇降装置の動作説明模式図である。
【
図8】本発明の第1の実施形態に係る電動昇降装置の動作説明模式図である。
【
図9】本発明の第1の実施形態に係る電動昇降装置の動作説明模式図である。
【
図10】本発明の第1の実施形態に係る電動昇降装置の動作説明模式図である。
【
図11】本発明の第1の実施形態に係る電動昇降装置の動作説明模式図である。
【
図12】本発明の第2の実施形態に係る電動昇降装置の斜視構成図である。
【
図13】本発明の第2の実施形態に係る電動昇降装置の正面図である。
【
図14】本発明の第2の実施形態に係る電動昇降装置の動作説明模式図である。
【
図15】本発明の第2の実施形態に係る電動昇降装置の動作説明模式図である。
【
図16】本発明の第2の実施形態に係る電動昇降装置の動作説明模式図である。
【
図17】本発明の第2の実施形態に係る電動昇降装置の動作説明模式図である。
【
図18】本発明の第2の実施形態に係る電動昇降装置の動作説明模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係る電動昇降装置について、図面を基に詳細な説明を行う。
【0017】
図1は本発明の第1の実施形態に係る電動昇降装置1の外観構成を示した斜視図である。電動昇降装置1は、本体部11と、リンクチェーン6と、操作指令部22aと、係止部材8aと、リンクチェーン収納部12と、で構成されている。本体部11はカバーで覆われている。操作指令部22aは本体部11からリンクチェーン6に沿って下方に伸びた位置にある。係止部材8aはリンクチェーン6の片端に繋がって物品30aを吊下げ係止する。リンクチェーン収納部12はリンクチェーン6の他端側(無負荷側)を始めとして、巻上げられたリンクチェーン6の一部を収納する。
【0018】
図2は本発明の第1の実施形態に係る電動昇降装置1の本体部11の一部の内部構造を示したものであって、
図1における本体部11の一部を省略して表したものである。
【0019】
モータ部2は、モータと、モータの負荷側に取り付けられた減速機と、で構成されている。モータは例えば交流サーボモータである。そして減速機はモータの回転速度を所定の速度に減速している。減速機は例えば波動歯車減速機である。波動歯車減速機は、ウエーブジェネレータと、フレクスプラインと、サーキュラスプラインとからなる。ウエーブジェネレータは外周が楕円状のものである。フレクスプラインは、外周に多数の外歯が形成されウエーブジェネレータに外嵌されてウエーブジェネレータの回転により円周方向へ撓まされる位置が変化するようにした弾性変形可能なものである。サーキュラスプラインは、フレクスプラインの外周側にあってフレクスプラインの外歯と嵌合する内歯を備えている。そして動力は、フレクスプラインを回転出力として繋げた回転出力軸3に取り出されて伝達するようになっている。
【0020】
減速機に例えば波動歯車減速機のようなバックラッシが微小なものを使用することで、モータの正逆回転切り換えを頻繁に行って助力動作を行う時に、切り換え時の制御不能な領域をなくし、スムーズな操作感を実現できる。回転出力軸3は減速機にて減速された回転軸であり、昇降作動部7aに連結され、昇降作動部7aを連続的に正逆に回転させるものである。
【0021】
本体部11の天面にはこの電動昇降装置1を吊下げるための吊下げ用フック9が固定されている。この吊下げ用フック9は水平方向の位置で電動昇降装置1の重心位置に近いところに設けられる。
【0022】
リンクチェーン6は、半円弧部とこれに繋がる直線部からなる長円形の環が交差して交互に連接されたものである。リンクチェーン6の一端は係止部材8aに繋がっていて、他端(無負荷側)はリンクチェーン収納部12に収納されている。
【0023】
係止部材8aは物品30aを係止して吊下げるためのものであって、本実施形態ではリンクチェーン6に連結されたフック形状のものを使用している。係止部材8aはフックに限らず、対象とする物品30aの形状によって適宜選択される。
【0024】
昇降作動部7aは、回転部材と、リンクチェーン6と、を含んで構成される。回転部材は、駆動源のモータ部2からの動力の伝達によって回転する。リンクチェーン6は、係止部材8aに接続されている。本実施形態では昇降作動部7aの回転部材は円筒の形状であって、回転出力軸3と繋がっていて、リンクチェーン6の繰り出しと引込みを行う。リンクチェーン6が巻回される位置は、おおよそ吊下げ用フック9の鉛直下付近であって、本体部11の重心位置に近いところに設けられる。リンクチェーン6は回転部材に設けられたポケット溝に嵌入されておおよそ180度ほど巻回される。本実施形態では係止部材8aに繋がった昇降作動部7aにリンクチェーン6を用いたが、これに限らずワイヤーロープ等であっても良い。その際昇降作動部7aの回転部材はドラム形状でワイヤーロープはその一端がドラムの胴部に固定されて巻回される。
【0025】
モータ部2の反負荷側にはモータの回転角位置を検出する位置検出部4が連結されている。位置検出部4は例えばアブソリュートエンコーダであって、光学式にてモータの回転角位置を検出して位置信号を出力する。この位置検出部4は、係止部材8aの繰り出し位置すなわち昇降位置を検出することができる。本実施形態では、位置検出部4はモータ部2の反負荷側に配置したがこれに限らず、減速機の出力である回転出力軸3や昇降作動部7aに設けられても良く、また両方に設けられても良い。さらに光学式に限らず磁気式や静電容量式等であっても良い。
【0026】
重量検出部5は、昇降作動部7aに巻きつけられているリンクチェーン6から伝達される力を反力として検出できるように昇降作動部7aを吊下げた構造であり、起歪体と起歪体に貼られた歪みゲージとを備えている。歪みゲージは重量に応じて起歪体に生ずる歪みを電気信号に変換するホイートストーンブリッジ回路に組み込まれ、これによって重量検出部5は重量信号を出力する。
【0027】
なお重量検出部5はこれに限らず、係止部材8aに加わる重量を検出できれば良く、減速機と昇降作動部7aとの間に設けた回転出力軸3の捻れからトルクを検出するような回転型トルクセンサの構造であっても良い。また重量検出部5は、モータ部2のケーシングと本体部11の固定部材の間に設けてモータ部2が受ける反力を検出する鼓型の構造のものであっても良い。
【0028】
そして不図示の制御部10が昇降作動部7aの近傍で本体部11内に配置されている。制御部10は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、その他の記憶装置及び入出力装置を備えている。制御部10は、位置検出部4からの位置信号及び重量検出部5からの重量信号を基に、モータ部2を制御する。制御部10をはじめとする電装部は、電動昇降装置1を粉粒や水滴のかかる場所での使用も可能にするためにカバーにて覆われた本体部11内に配置されている。制御部10は、モータ部2を駆動するドライバを含み、さらにモータ部2のモータの電流値を検出する電流検出部も含んでいる。
【0029】
制御部10は、さらに弱め界磁指令部を有する。弱め界磁制御指令部は、位置検出部4からの位置信号を基にこれを微分して回転速度を演算し、これに基づいてモータのステータに流れる電流を制御する。弱め界磁制御は、永久磁石モータの永久磁石の磁束を減少させるようにモータのステータにより磁界を発生させる制御であり、ロータの回転に伴う逆起電力を減少させる。したがってモータ回転数がある一定レベルの高速になった場合に、それ以上の回転数にすることを抑制する逆起電力を減少させ、モータの回転数をさらに増加させることができる。
【0030】
操作指令部22aは、係止部材8aの鉛直上方向でリンクチェーン6の端部近傍に配置されている。操作指令部22aは例えば箱型の形状であって、照光式の操作釦等が設けられている。これらの操作釦は制御部10にスパイラルコード13で電気的に繋がっていて係止部材8aの昇降に係る指令を制御部10へ行うことができる。操作指令部22aの操作釦は、例えばバランス釦22bと、保持釦22cと、上昇釦22dと、下降釦22eと、からなる。バランス釦22bは、係止部材8aに吊下げた物品30aをバランス状態にする。保持釦22cは、現在の係止部材8aの位置を保持する。上昇釦22dは、電動操作で係止部材8aを上昇させる。下降釦22eは、電動操作で係止部材8aを下降させる。これら操作指令部22aの各操作釦は、発光によって押されたことを作業者に報知する。操作指令部22aは、制御部10との接続を有線に限らず赤外線等を用いた無線式で行い、電池にて駆動され、リンクチェーン6から取り外し可能なものであっても良い。
【0031】
以上の構成にて、作業者が係止部材8aを引き下げて床等に置かれた物品30aの係止部に係止させ、上昇釦22dを押し続けると、モータ部2が駆動され昇降作動部7aが作動して物品30aは上昇して床から離れる。この時、物品30aの重量によって係止部材8aが鉛直下向きに引っ張られるため、リンクチェーン6、昇降作動部7a、回転出力軸3、モータ部2を介して重量検出部5も鉛直下向きに引っ張られ、重量検出部5の起歪部が変形する。この時作業者がバランス釦22bを押すと、制御部10は昇降作動部7aに加わる重量を起歪部に添着された歪みゲージにて検出した重量信号を基に演算して、物品30aがバランスするようにモータ部2に対して助力する制御を行う。すなわち制御部10は、モータ部2によって昇降作動部7aに発生させる係止部材8aへの鉛直上向きの力と、係止部材8aに加わる鉛直下向きの力を釣り合わせる。ゆえに制御部10は、係止部材8aと物品30aとを任意の位置にてバランス状態になるようにモータ部2の制御を行っている。
【0032】
もし作業者が係止部材8aに何も係止させずにバランス釦22bを押すと、制御部10はその時の昇降作動部7aに加わる重量にてバランス制御を行うことになる。したがって作業者は係止部材8aを掴んで、自由に動かすことができる。
【0033】
図3は本発明の実施形態に係る電動昇降装置の動作を示すフローチャート図である。
図4から
図11は本発明の第1の実施形態に係る電動昇降装置の動作模式図である。
図3から
図11を用いて本発明の実施形態に係る電動昇降装置を用いた作業の例と、制御部10の制御方法を説明する。
【0034】
図3において、作業者が電動昇降装置1の電源を投入すると、制御部10が起動し、制御部10はステップS101にて昇降作動部7a及び係止部材8aのその時の位置を保持する保持状態となって、ステップS102へ進む。次いで作業者は、まず
図4に示すように、床31に置かれている物品30aの鉛直上方の位置(a)に本体部11及び係止部材8aを近づける。本体部11は、吊下げ用フック9とサドル35を介してレール34に吊るされている。サドル35には車輪が設けられていて、本体部11はレール34の軌道に沿って水平方向の移動ができるので、作業者は係止部材8aを引っ張るなどして
図4の位置へ本体部11を移動させる。
【0035】
次いで作業者が下降釦22eを押すと、制御部10はステップS102にて下降釦22eが押されたことを判断して(Yes)(
図3参照)、ステップS103へ進む。制御部10はステップS103にて係止部材8aの下降動作をモータ部2へ指令し、モータ部2はこれを実行する。作業者は下降釦22eを押し続けて、
図5に示す係止部材8aが物品30aの被係止部に係止できる位置まで係止部材8aを下降させる。次いで制御部10はステップS104にてバランス釦22bが押されたことを判断するまで保持モードを保ち、上昇釦22d/下降釦22eが作業者によって押されればその都度上昇若しくは下降動作を行う(
図3参照)。
【0036】
作業者は係止部材8aを物品30aに係止させ、上昇釦22dを押し続ける。すると
図6に示すように物品30aは床31から離れて宙吊り状態となる。この動作は制御部10のステップS102とステップS103にて行われる。
【0037】
作業者は物品30aが床31から離れて宙吊り状態となったことを確認すると、この物品30aをバランス状態にして作業を行うために、バランス釦22bを押す。すると、制御部10は、ステップS104にてバランス釦22bが押されたと判断して(Yes)、ステップS105へ進む。制御部10は、ステップS104にてバランス釦22bが押されていないと判断した場合は(No)、ステップS101へ戻って保持状態を保つ。
【0038】
制御部10は、ステップS105にて昇降作動部7aに加わる重量の重量信号を重量検出部5から受信して、これを記憶してステップS106へ進む(
図3参照)。
【0039】
次いで、制御部10は、ステップS106にて昇降作動部7aに加わる重量と昇降作動部7aを駆動する力を釣り合わせるようにバランス制御を開始して、ステップS107へ進む。
図5においては、昇降作動部7aに加わる重量は物品30aが吊るされていることから、昇降作動部7aに加わる重量が所定値よりも大きい。ここで重量が所定値以下であるということは、ここでは係止部材8aに何も係止されていない状態である。よって制御部10は、ステップS107にて昇降作動部7aに加わる重量が所定値よりも大きいため(No)、ステップS110へ進む(
図3参照)。
【0040】
この時、物品30aはバランス状態となっているので、作業者は係止部材8a若しくは物品30aに手を添えて鉛直方向に成分を有する小さな外力で物品30aを上下に移動させることができる。作業者はこの移動に関して、係止部材8aへ直接的に外力を加えても良いし、物品30aに手を添えて係止部材8aへ間接的に外力を加えても良い。そして、作業者はこの物品30aを床31からの高さh1の固定構造物32の上面に置くために、高さh1よりも高い高さh2へ移動させる(
図7)。次いで作業者は、本体部11を車輪のついたサドル35によってレール34の軌道上を水平移動させ、固定構造物32の鉛直上の位置(b)へ到達させる(
図8)。
【0041】
作業者は、物品30aを固定構造物32の上面に降ろすために、下降釦22eを押す。すると、制御部10は、ステップS110にて下降釦22eが押されたことを判断して(Yes)、ステップS111へ進む(
図3参照)。制御部10は、ステップS111にて係止部材8aの下降動作をモータ部2へ指令し、ステップS112へ進む。作業者は下降釦22eを押し続けて、物品30aを固定構造物32に着地させ、係止部材8aを物品30aから外すことができる位置まで係止部材8aを下降させる。その後作業者は係止部材8aを物品30aから外し、バランス釦22bを押す。すると、制御部10は、ステップS112にてバランス釦22bが押されてバランス指令を受信したことを判断し(Yes)、ステップS105へ進む(
図3参照)。この時、昇降作動部7aに加わる重量は物品等が係止部材8aに吊るされていないことから、所定の重量以下となる。
【0042】
制御部10は、ステップS105にて昇降作動部7aに加わる重量を記憶し、ステップS106にてバランス制御を開始し、ステップS107にて昇降作動部7aに加わる重量が所定の値以下であると判断し(Yes)、ステップS108へ進む。
【0043】
作業者は次の物品30bを扱うために、係止部材8aを鉛直上方向に移動させる(
図9)。この時、制御部10は係止部材8aのバランスを保っていることから、係止部材8aに鉛直方向の外力を加えることで、作業者は係止部材8aを小さな力で昇降させることができる。
【0044】
作業者は次の物品30bを扱うために、本体部11を車輪のついたサドル35によってレール34の軌道上を水平移動させ、物品30bの鉛直上の位置(c)へ到達させる(
図10)。そして作業者はバランス状態にある係止部材8aを物品30bに係止させるために鉛直下向きの外力を係止部材8aに印加して、
図11に示すように係止部材8aを物品30bに係止させる。この時、制御部10はステップS108にて昇降作動部7aに外力が加わったと判断し(Yes)、ステップS109へ進む。制御部10は、ステップS108にて、昇降作動部7aに外力が加わっていないと判断した場合(No)は、ステップS110へ進む。
【0045】
制御部10はステップS109にて、モータ部2に対して弱め界磁制御の実行を指令する。したがって作業差が急速に係止部材8aを引張り降ろしてモータ回転数がある一定レベルの高速になった場合において、さらなる回転数の上昇を抑制する逆起電力を減少させる。制御部10はモータ部2に対して弱め界磁制御を実行することで、モータの回転数をさらに増加させることができ、スムーズな係止部材8aの引っ張り操作が可能となる。
【0046】
制御部10は、ステップS109を終了するとステップS110へ進み、バランス状態を保つ。
【0047】
制御部10は、ステップS112にてバランス釦22bが新たに押されていないと判断すると(No)、ステップS113へ進む。
【0048】
制御部10は、ステップS113にて保持釦22cが押されていないと判断すると(No)、ステップS106へ進んで、バランス状態を保つ。一方、制御部10は、ステップS113にて保持釦22cが押されたと判断すると(Yes)、ステップS101へ進んで保持状態となる。
【0049】
なお作業者は、
図4に示された係止部材8aの位置でバランス釦22bを押して、物品が係止されていないバランス状態として、係止部材8aを鉛直下方向に引っ張り降ろして物品30aに係止させるという方法で作業を行っても良い。
【0050】
図12は本発明の第2の実施形態に係る電動昇降装置40の斜視図である。また
図13は本発明の第2の実施形態に係る電動昇降装置40の正面図である。
【0051】
本発明の第2の実施形態に係る電動昇降装置40は、係止部材8bと、昇降作動部7bと、昇降支持部41と、リンクアーム46と、モータ部2と、重量検出部5と、位置検出部4と、制御部10と、を備えている。係止部材8bは扱う物品を載せ置くものである。昇降作動部7bは係止部材8bを上下方向に昇降可能にするものである。昇降支持部41は昇降作動部7bを支持固定する。リンクアーム46は係止部材8bの昇降を案内矯正する。モータ部2は昇降作動部7bを駆動する。重量検出部5は係止部材8bに印加される重量を検出する。位置検出部4はモータ部2に繋がって係止部材8bの昇降位置を検出する。制御部10はモータ部2を用いて係止部材8bの昇降動作を制御する。そして電動昇降装置40は、これに加えて、車輪43、電源44、ハンドル45及び操作指令部22aを含み、移動台車の構造となっている。
【0052】
車輪43は、自由に方向転換可能な複数の自在輪と、方向転換が不能な固定輪からなる複数の従動輪と、で構成されている。したがって作業者は、ハンドル45を押し引き操作することで電動昇降装置40を操舵することができる。
【0053】
昇降作動部7bが昇降支持部41上に、係止部材8bを昇降可能にするように載置されている。昇降作動部7bは、例えば対をなして相互に噛合可能な噛合チェーン42を有する。噛合チェーン42は、噛み合いが外れた方向に伸長してかつ屈曲自在な状態で昇降作動部7b内の噛合チェーン収容部に収容されている。そして噛合チェーン42は、昇降作動部7bに接続した駆動源を駆動することで、剛直化した状態で鉛直上方向に繰り出されて進み、噛合チェーン42の噛み合った方の一端が接続されている支持板48を介して係止部材8bを上昇させる。噛合チェーン42の噛み合った方の一端部は、係止部材8bを構成する支持板48にボルト等によって接続固定される。一方、噛合チェーン42の他端部は噛み合いが外れた箇所からそれぞれ反対方向に昇降作動部7bの噛合チェーン収容部内に設けた案内部に沿って動き、自由端として収容されている。噛合チェーン42は昇降作動部7bのケース内の歯車と噛み合うことで繰り出し及び引き込みすることが可能である。そしてこの歯車の回転軸は継ぎ手を介して駆動源であるモータ部2に接続されている。
【0054】
モータ部2は例えば減速機を取り付けた交流サーボモータであって、減速機によって重量物である物品を昇降させるのに必要なトルクに増幅させている。本発明の実施形態では減速機は波動歯車減速機を使用している。波動歯車減速機は、ウエーブジェネレータと、フレクスプラインと、サーキュラスプラインとからなる。ウエーブジェネレータは外周が楕円状のものである。フレクスプラインは、外周に多数の外歯が形成されウエーブジェネレータに外嵌されてウエーブジェネレータの回転により円周方向へ撓まされる位置が変化するようにした弾性変形可能なものである。サーキュラスプラインは、フレクスプラインの外周側にあってフレクスプラインの外歯と嵌合する内歯を備えている。そして動力は、フレクスプラインを回転出力として繋げたスプロケット回転軸に取り出されて伝達する。電動昇降装置40においては回転動力系のガタつきは可能な限り低減させることが望ましく、減速機のバックラッシは昇降作動部7bの昇降状態に影響するので、本発明の実施形態ではバックラッシが極めて微小な波動歯車減速機を用いている。
【0055】
モータの回転位置を検出する位置検出部4が、モータ部2の反負荷側に取り付けられている。この位置検出部4は、本実施形態ではモータ部2の反負荷側に配置したエンコーダである。位置検出部4は変形例として、昇降作動部7bのケース内の歯車や歯車の回転軸に設けて噛合チェーン42の繰り出し位置を検出しても良い。また位置検出部4を減速機の部分に設けても良い。また本実施形態では位置検出部4は光学的な反射によるエンコーダであるがこれに限らず、光学式で透過式のものであっても良いし、磁力を使用したものであっても良い。さらに位置検出部4は昇降支持部41に設置した反射型の光センサ等で構成し、支持板48の高さを測定して係止部材8bの鉛直方向の位置を検出しても良い。
【0056】
リンクアーム46は、鉛直方向にそれぞれ伸縮する複数のアームで構成され、昇降作動部7bによる係止部材8bの昇降姿勢を矯正保持している。そしてリンクアーム46は、鉛直上方向に複数段積み上げて、組み合わせた構造である。
【0057】
昇降支持部41は金属フレームや板金等で構成され、リンクアーム46及び昇降作動部7bを支持固定している。
【0058】
係止部材8bは支持板48と天板47を有しており、支持板48の上には天板47が配置され、支持板48は天板47を支持している。さらに重量検出部5が、支持板48の上面部付近に、支持板48と天板47との間に挟み込まれて配置されている。重量検出部5は例えば歪みゲージを有したロードセルである。重量検出部5は起歪部を有して起歪部に歪みゲージが添着されていて、起歪部に加わる歪みを検出できるようになっている。そして重量検出部5は、歪みゲージを含んでホイートストーンブリッジ回路を構成して歪み量に応じたアナログ信号を出力し、これを増幅して演算を行って天板47に加わる重量を求め、重量信号として出力する。そしてこの重量信号は、配線ケーブル(不図示)等によって制御部10へ送信されている。なお配線ケーブルは伸縮するスパイラルコードであっても良いし、アーム部22に沿うようにして配線及び固定されていても良いし、有線に限らず無線で制御部10へ送信するものであっても良い。なお本実施形態では、重量検出部5は係止部材8bに4つ設けてあるがこれに限るものではない。
【0059】
また重量検出部5は、昇降作動部7b内の歯車の軸に起歪部を設けてそこに歪みゲージを添着してトルク値を求め重量を演算して求めるような構成にしても良い。重量検出部5はこの他、減速機と一体で設けて減速機の出力軸を起歪部として歪みゲージを設けたものであっても良い。この場合重量検出は、歪みゲージ式に限らず、磁歪式や静電容量式等によるものであっても良い。
【0060】
制御部10は昇降支持部41にブラケット等で固定されていて、重量検出部5は制御部10にケーブル等で接続されている。制御部10はモータ部2を駆動する回路を有してモータ部2とケーブルで電気的に接続されている。制御部10は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、その他の記憶装置及び入出力装置を備えている。制御部10は、位置検出部4からの位置信号及び重量検出部5からの重量信号を基に、モータ部2を制御する。制御部10は、モータ部2を駆動するドライバを含み、さらにモータ部2のモータの電流値を検出する電流検出部も含んでいる。
【0061】
電源44は昇降支持部41にブラケット等で固定されていて、 例えば電池とインバータ等で構成され、制御部10とモータ部2と等へ電源供給を行うものである。
【0062】
操作指令部22aは例えばハンドル45にあって、制御部10とケーブル等で繋がって、操作の指令を行うものである。なお操作指令部22aはハンドル45から着脱可能であって良いし、制御部10と無線で繋がって通信するものであっても良い。また操作指令部22aに配置された釦類は第2の実施形態では第1の実施形態と同様のものであるが、これに限るものではない。
【0063】
この構成で作業者が物品30bを係止部材8bに載せ置くと。制御部10は、係止部材8bに設けられた重量検出部5から重量信号を受信し、これに基づき、係止部材8bが受ける重量をキャンセルしてバランスするように指令するための指令信号を演算する。そして制御部10は、この指令信号によってモータ部2の駆動を行い、係止部材8bに置かれた物品30bを任意の位置にて留まらせ、バランス状態を保つ。そして作業者は係止部材8b若しくは物品30bに手を添えて鉛直方向の成分を有する小さな外力を加えるという操作で、物品30bを上下方向に昇降移動させることができる。その後作業者がこの外力を止めると、係止部材8bはその位置でバランス状態となって保持される。すなわち制御部10は、係止部材8bに加わる鉛直下向きの力と、昇降作動部7bが発生させる係止部材8bへの力とを釣り合わせ、係止部材8bを任意の位置にてバランスさせる。
【0064】
図14から
図18は本発明の第2の実施形態に係る電動昇降装置40の動作説明模式図である。
図3の動作フローチャートと
図14から
図18を用いて本発明の第2の実施形態に係る電動昇降装置40を用いた作業の例と、制御部10の制御方法を説明する。ここでは、
図14に示すように床31に配置された高さh4の固定構造物33a上の物品30cを、
図18に示すように床31に配置された高さh6の固定構造物33b上に移動させる作業を例として説明する。
【0065】
図3において、作業者が電動昇降装置40の電源を投入すると、制御部10が起動し、制御部10は係止部材8bのその時の位置を保持する保持状態となって(ステップS101)、ステップS102へ進む。作業者は上昇釦22d若しくは下降釦22eを押して係止部材8bが物品30cを係止できる高さ、すなわち固定構造物33aの高さh4より低い高さh3へ移動させる。そして作業者は係止部材8bが物品30cの鉛直下になるように電動昇降装置40を移動させる(
図14)。
【0066】
次いで作業者は上昇釦22dを押して物品30cを係止部材8bに当接させてさらに物品30cを固定構造物33aから離れる高さh5まで上昇させる(
図15)。物品30cが固定構造物33aから浮いた状態で作業者がバランス釦22bを押すと、制御部10はステップS104にてバランス釦22bが押されたことを判断して(ステップS104のYes)、ステップS105へ進む。制御部10は、ステップS104にてバランス釦22bが押されていないと判断した場合は(No)、ステップS101へ戻って保持状態を保つ。
【0067】
制御部10は、ステップS105にて昇降作動部7bに加わる重量を重量検出部5から受信して、これを記憶してステップS106へ進む(
図3参照)。
【0068】
制御部10は、ステップS106にて昇降作動部7bに加わる重量と昇降作動部7bを駆動する力を釣り合わせて、バランス制御を開始して、ステップS107へ進む。
図15においては、昇降作動部7bに加わる重量は物品30cが係止部材8bに置かれていることから、重量が所定値よりも大きい。重量が所定値以下であるということは、ここでは係止部材8bの上に何も置かれていない状態である。よって制御部10は、ステップS107にて昇降作動部7bに加わる重量が所定値よりも大きいため(No)、ステップS110へ進む(
図3参照)。
【0069】
この時、物品30cはバランス状態となっているので、作業者は係止部材8bに手を添えて小さな力で上下に移動させることができる。作業者はこの移動に関しては、係止部材8bへ直接的に外力を加えても良いし、物品30cに手を添えて係止部材8bへ間接的に外力を加えても良い。そして、作業者はこの物品30cを床31からの高さh6の固定構造物32の上面に置くために、高さh6よりも高い位置h7へ移動させる(
図16)。そして作業者は、ハンドル45を操舵して電動昇降装置40を移動させ、固定構造物33bの鉛直上の位置へ到達させる(
図17)。
【0070】
作業者は、物品30cを固定構造物33bの上面に降ろすために、下降釦22eを押す。すると、制御部10は、ステップS110にて下降釦22eが押されたことを判断して(Yes)、ステップS111へ進む(
図3参照)。制御部10は、ステップS111にて係止部材8bの下降動作をモータ部2へ指令し、ステップS112へ進む。作業者は下降釦22eを押し続けて、物品30cを固定構造物33bに着地させ、係止部材8cが物品30cと離れる位置まで係止部材8bを下降させる(
図18)。作業者は係止部材8bが物品30cと離れたことを確認し、バランス釦22bを押す。すると、制御部10は、ステップS112にてバランス釦22bが押されたことを判断し(Yes)、ステップS105へ進む(
図3参照)。この時、昇降作動部7bに加わる重量は物品30cが係止部材8bに載せ置かれていないことから、重量が所定値以下となる。
【0071】
したがって制御部10は、ステップS105にて昇降作動部7bに加わる重量を記憶し、ステップS106にてバランス制御を開始し、ステップS107にて昇降作動部7bに加わる重量が所定値以下であると判断し(Yes)、ステップS108へ進む。
【0072】
作業者は次の作業を行うために、電動昇降装置40を固定構造物33bの間から抜き去り、
図14に示すような高さh4の固定構造物33a上の物品30cを扱えるように高さh3まで係止部材8bを押し下げる。すなわち作業者はバランス状態にある係止部材8bを物品30cに係止させるために鉛直下向きの外力を係止部材8bに印加する。
【0073】
制御部10は、ステップS108にて、昇降作動部7aに外力が加わったと判断し(Yes)、ステップS109へ進む。制御部10は、ステップS108にて、昇降作動部7aに外力が加わっていないと判断した場合(No)は、ステップS110へ進む。
【0074】
制御部10は、ステップS109にてモータ部2に対して弱め界磁制御の実行を指令する。したがって作業差が急速に係止部材8bを降ろしてモータ回転数がある一定レベルの高速になった場合において、さらなる回転数の上昇を抑制する逆起電力を減少させる。制御部10はモータ部2に対して弱め界磁制御を実行するので、モータの回転数をさらに増加させることができ、スムーズな係止部材8bの昇降操作が可能となる。
【0075】
制御部10は、ステップS109を終了するとステップS110へ進み、バランス状態を保つ。
【0076】
制御部10は、ステップS112にてバランス釦22bが新たに押されていないと判断すると(No)、ステップS113へ進む。
【0077】
制御部10は、ステップS113にて保持釦22cが押されていないと判断すると(No)、ステップS106へ進んで、バランス状態を保つ。一方、制御部10は、ステップS113にて保持釦22cが押されたと判断すると(Yes)、ステップS101へ進んで保持状態となる。
【0078】
なお本発明の第1の実施形態と第2の実施形態とは共に、昇降作動部に加わる重量が、係止部材に物品が係止されていない状態を所定値としてこれ以下の時、制御部10はモータ部2に対して弱め界磁制御を行っているがこれに限るものではない。ステップS107の判断基準の重量の所定値は、予め電動昇降装置の管理者などによって定めることができる。
【0079】
本発明の電動昇降装置によれば、制御部は、バランス制御を行っている時に、鉛直下方向の外力が重量検出部に加わったことを検出すると、重量検出部からの重量に応じて、モータ部に対して位置信号とモータの電流値を用いて弱め界磁制御を実行する。したがって本発明によれば各重量に最適な速度での操作が可能となって操作性に優れた電動昇降装置を提供することができる。
【0080】
以上、本発明を好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。なお請求項に記載された符号は説明及び図面に対して請求項の理解を容易にするためのもので、請求項に係る発明の保護の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の活用例として、構造物に吊下げられたり、移動できる車両等に搭載されたりして使用される電動昇降装置への適用が可能である。
【符号の説明】
【0082】
1 :電動昇降装置
2 :モータ部
3 :回転出力軸
4 :位置検出部
5 :重量検出部
6 :リンクチェーン
7a、7b :昇降作動部
8a、8b :係止部材
9 :吊下げ用フック
10:制御部
11 :本体部
12 :リンクチェーン収納部
13 :スパイラルコード
22a :操作指令部
22b :バランス釦
22c :保持釦
22d :上昇釦
22e :下降釦
30a、30b、30c :物品
31 :床
32 :固定構造物
33a、33b :固定構造物
34 :レール
35 :サドル
40 :電動昇降装置
41 :昇降支持部
42 :噛合チェーン
43 :車輪
44 :電源
45 :ハンドル
46 :リンクアーム
47 :天板
48 :支持板