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特許7202562鉄道車両の車内案内システム及び車内案内方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-28
(45)【発行日】2023-01-12
(54)【発明の名称】鉄道車両の車内案内システム及び車内案内方法
(51)【国際特許分類】
   B61D 33/00 20060101AFI20230104BHJP
   B61D 19/02 20060101ALI20230104BHJP
   B61D 29/00 20060101ALI20230104BHJP
   B61D 37/00 20060101ALI20230104BHJP
【FI】
B61D33/00 Z
B61D19/02 Q
B61D29/00
B61D37/00 G
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018184424
(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2020050309
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】712004783
【氏名又は名称】株式会社総合車両製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】390008350
【氏名又は名称】東邦シートフレーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 宏次
(72)【発明者】
【氏名】鎌鹿 智教
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 良平
【審査官】藤井 浩介
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-046833(JP,A)
【文献】特許第5171532(JP,B2)
【文献】特開2011-240737(JP,A)
【文献】特開2016-185761(JP,A)
【文献】特開2003-346261(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0064303(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 33/00
B61D 19/02
B61D 29/00
B61D 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の車内案内システムであって、
前記鉄道車両の長手方向に沿って設けられた座席の側端部と、前記鉄道車両の側扉への通路空間との間に設置され、少なくとも一部の端縁を含む一部の領域に透明又は半透明の導光領域を有する袖仕切り板と、
該袖仕切り板の前記一部の端縁に沿って並べられて設置され、前記導光領域へ向けて光を照射する複数のLEDと、
該複数のLEDの点灯制御を行う点灯制御部と、を含み、
該点灯制御部は、少なくとも前記側扉の開閉動作と連動させて、該側扉の両側方又は一側方に位置する前記袖仕切り板に設置された前記複数のLEDを点滅或いは点灯させ
前記袖仕切り板は、その全体が前記導光領域になっており、
前記複数のLEDは、前記袖仕切り板の何れかの端縁に沿って設置されていることを特徴とする鉄道車両の車内案内システム。
【請求項2】
前記鉄道車両の内部に複数の非常通報器が設置されており、
前記点灯制御部は、前記非常通報器に対する操作を受けて、少なくとも操作された前記非常通報器の近傍に位置する前記袖仕切り板に設置された、前記複数のLEDを点滅或いは点灯させて警告を行うことを特徴とする請求項1記載の鉄道車両の車内案内システム。
【請求項3】
前記複数のLEDは、互いに発光色が異なる2種類以上のLEDを含み、
前記点灯制御部は、前記複数のLEDを点滅或いは点灯させる要因となる事象に応じて、点滅或いは点灯させるLEDの種類を使い分けることを特徴とする請求項1又は2記載の鉄道車両の車内案内システム。
【請求項4】
前記袖仕切り板は、前記鉄道車両の床面から所定間隔を空けて設置され
前記複数のLEDが、前記袖仕切り板の前記下方の端縁に沿って設置されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の鉄道車両の車内案内システム。
【請求項5】
鉄道車両の車内案内方法であって、
前記鉄道車両の長手方向に沿って設けられた座席の側端部と、前記鉄道車両の側扉への通路空間との間に、少なくとも一部の端縁を含む一部の領域に透明又は半透明の導光領域を有する袖仕切り板を設置すると共に、前記導光領域へ向けて光を照射する複数のLEDを、前記袖仕切り板の前記一部の端縁に沿って並べて設置し、
少なくとも前記側扉の開閉動作と連動させて、該側扉の両側方又は一側方に位置する前記袖仕切り板に設置された前記複数のLEDを点滅或いは点灯させ
全体が前記導光領域になっている前記袖仕切り板を用いると共に、該袖仕切り板の何れかの端縁に沿って前記複数のLEDを設置することを特徴とする鉄道車両の車内案内方法。
【請求項6】
前記鉄道車両の内部に複数の非常通報器が設置されており、
前記非常通報器が操作された場合に、少なくとも操作された前記非常通報器の近傍に位置する前記袖仕切り板に設置された、前記複数のLEDを点滅或いは点灯させて警告を行うことを特徴とする請求項記載の鉄道車両の車内案内方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の車内案内システム及び鉄道車両の車内案内方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、鉄道車両の側扉の開閉時に、音声によるアナウンスと併せて、側扉が開閉する乗降口の近傍に設けられた表示灯を点滅又は点灯させることで、乗客に対して案内及び注意を促すことが行われている。一例として、そのような表示灯は、乗降口の側部に設置される握り棒(例えば特許文献1参照)、乗降口の上部を構成する鴨居部(例えば特許文献2参照)、乗降口の側部を構成するフレーム等に組み込まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5171532号公報
【文献】意匠登録第1260752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述したような表示灯を、特に既存の鉄道車両に導入することを検討すると、握り棒や鴨居部等に大掛かりな改造作業や交換作業が必要となり、作業コストや作業時間が増大することが懸念される。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、乗客へ案内や注意を促すための表示灯を、鉄道車両の内部へ容易に設置することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0006】
(1)鉄道車両の車内案内システムであって、前記鉄道車両の長手方向に沿って設けられた座席の側端部と、前記鉄道車両の側扉への通路空間との間に設置され、少なくとも一部の端縁を含む一部の領域に透明又は半透明の導光領域を有する袖仕切り板と、該袖仕切り板の前記一部の端縁に沿って並べられて設置され、前記導光領域へ向けて光を照射する複数のLEDと、該複数のLEDの点灯制御を行う点灯制御部と、を含み、該点灯制御部は、少なくとも前記側扉の開閉動作と連動させて、該側扉の両側方又は一側方に位置する前記袖仕切り板に設置された前記複数のLEDを点滅或いは点灯させ、前記袖仕切り板は、その全体が前記導光領域になっており、前記複数のLEDは、前記袖仕切り板の何れかの端縁に沿って設置されている鉄道車両の車内案内システム(請求項1)。
【0007】
本項に記載の鉄道車両の車内案内システムは、袖仕切り板、複数のLED、及び、点灯制御部を含み、袖仕切り板は、鉄道車両の長手方向に沿って設けられた座席の側端部と、鉄道車両の側扉への通路空間との間に設置される。すなわち、袖仕切り板は、鉄道車両の構造に応じて、各側扉の両側方或いは一側方に設置される。又、袖仕切り板は、少なくとも一部の端縁を含む一部の領域、換言すれば、一部の端縁から内部へと延びる領域に、透明又は半透明の導光領域を有している。そして、複数のLEDは、そのような袖仕切り板の導光領域に含まれる一部の端縁に沿って並べられ、光の照射方向が導光領域(袖仕切り板の内部)へ向くように設置される。
【0008】
又、点灯制御部は、袖仕切り板の各々に設置された複数のLEDの点灯制御を行うものであり、具体的には、少なくとも側扉の開閉動作と連動させて点灯制御を行う。すなわち、これから開閉動作を行う又は開閉動作中の側扉の、両側方又は一側方に位置する袖仕切り板に設置された複数のLEDを、例えば側扉の動作毎に異なる点滅パターン等で点滅(又は点灯)させる。複数のLEDが点滅或いは点灯されると、複数のLEDから照射された光が、袖仕切り板の導光領域内で反射しながら拡散すると共に、透明又は半透明の導光領域から外部へ出射される。これにより、複数のLEDが設置された袖仕切り板の各々の導光領域は、側扉が開閉することを乗客へ通知して注意を促すための表示灯として機能することになる。
【0009】
すなわち、本項に記載の鉄道車両の車内案内システムは、乗客に対して案内及び注意を促すための表示灯が、導光領域を有する袖仕切り板の一部の端縁に沿って複数のLEDが配置された、単純な構成で実現される。このため、鉄道車両の内部への設置が容易であり、既存の鉄道車両に対して適用される場合であっても、改造作業や交換作業の費用及び時間が抑制されることとなる。更に、メンテナンス時の点検作業や、故障時の交換作業も容易に行われるものである。又、表示灯の発光源が袖仕切り板の端縁に近接して配置されるにも関わらず、発光源として発熱が小さいLEDを用いているため、熱による袖仕切り板の変形が防止されるものである。加えて、表示灯を構成する袖仕切り板は、鉄道車両内部の比較的目立つ位置に設置されるため、乗客へ効果的に案内及び注意が促されるものとなる。
【0010】
更に、本項に記載の鉄道車両の車内案内システムは、各袖仕切り板の全体にわたって、透明又は半透明の導光領域が設けられていることで、複数のLEDから照射された光が、袖仕切り板の内部全体に拡散することになる。これにより、袖仕切り板の全体が発光してより目立つようになるため、袖仕切り板の周囲の乗客に対して、より一層効果的に案内及び注意が促されるものである。
【0011】
(2)上記(1)項において、前記鉄道車両の内部に複数の非常通報器が設置されており、前記点灯制御部は、前記非常通報器に対する操作を受けて、少なくとも操作された前記非常通報器の近傍に位置する前記袖仕切り板に設置された、前記複数のLEDを点滅或いは点灯させて警告を行う鉄道車両の車内案内システム(請求項2)。
本項に記載の鉄道車両の車内案内システムは、車内に複数の非常通報器が設置された鉄道車両に対応するものであり、これらの非常通報器が乗客等により操作された場合に発報を行うものである。すなわち、点灯制御部は、非常通報器に対する操作を受けて、少なくとも操作された非常通報器の近傍に位置する袖仕切り板に設置された、複数のLEDを点滅或いは点灯させることで、非常通報器が操作されるような事態が発生したことを、周囲の乗客に通知して警告するものである。これにより、側扉の開閉時に加え、非常通報器の操作時においても、乗客に対して案内及び注意が促されることとなる。
【0012】
(3)上記(1)(2)項において、前記複数のLEDは、互いに発光色が異なる2種類以上のLEDを含み、前記点灯制御部は、前記複数のLEDを点滅或いは点灯させる要因となる事象に応じて、点滅或いは点灯させるLEDの種類を使い分ける鉄道車両の車内案内システム(請求項3)。
本項に記載の鉄道車両の車内案内システムは、袖仕切り板の各々に設置される複数のLEDに、例えば赤色や黄色といった、互いに発光色が異なる2種類以上のLEDを含むものである。そして、点灯制御部は、複数のLEDを点滅或いは点灯させる要因となる事象に応じて、例えば、側扉の通常の開閉時には黄色のLED、その他の案内や警告時には赤色のLED等のように、点滅或いは点灯させるLEDの種類を使い分けるものである。このとき、点滅或いは点灯させるLEDの種類の使い分けだけでなく、LEDの点滅速度や点滅パターン等の制御と組み合わせて、様々な事象を通知することとしてもよい。これにより、様々な事象に関して、乗客へより効果的に案内及び注意が促されるものである。
【0013】
(4)上記(1)から(3)項において、前記袖仕切り板は、前記鉄道車両の床面から所定間隔を空けて設置され、前記複数のLEDが、前記袖仕切り板の前記下方の端縁に沿って設置される鉄道車両の車内案内システム(請求項4)。
本項に記載の鉄道車両の車内案内システムは、座席の側端部と側扉への通路空間との間に設置される袖仕切り板が、鉄道車両の床面から所定間隔を空けて設置され、袖仕切り板の下端と鉄道車両の床面との間に隙間が確保される。更に、袖仕切り板の各々において、透明又は半透明の導光領域が、袖仕切り板の下方の端縁を含む領域に設けられると共に、複数のLEDが、袖仕切り板の下方の端縁に沿って設置されるものである。このような構成により、複数のLEDは、鉄道車両の床面との間に隙間が確保された袖仕切り板の下端側から、袖仕切り板に対して取り付けられることとなるため、複数のLEDの設置作業、点検作業、交換作業等が、より容易に行われるものとなる。
【0014】
)鉄道車両の車内案内方法であって、前記鉄道車両の長手方向に沿って設けられた座席の側端部と、前記鉄道車両の側扉への通路空間との間に、少なくとも一部の端縁を含む一部の領域に透明又は半透明の導光領域を有する袖仕切り板を設置すると共に、前記導光領域へ向けて光を照射する複数のLEDを、前記袖仕切り板の前記一部の端縁に沿って並べて設置し、少なくとも前記側扉の開閉動作と連動させて、該側扉の両側方又は一側方に位置する前記袖仕切り板に設置された前記複数のLEDを点滅或いは点灯させ、全体が前記導光領域になっている前記袖仕切り板を用いると共に、該袖仕切り板の何れかの端縁に沿って前記複数のLEDを設置する鉄道車両の車内案内方法(請求項)。
【0015】
)上記()項において、前記鉄道車両の内部に複数の非常通報器が設置されており、前記非常通報器が操作された場合に、少なくとも操作された前記非常通報器の近傍に位置する前記袖仕切り板に設置された、前記複数のLEDを点滅或いは点灯させて警告を行う鉄道車両の車内案内方法(請求項)。
そして、()及び()項に記載の鉄道車両の車内案内方法は、上記(1)及び(2)項の鉄道車両の車内案内システムにより実行されることで、上記(1)及び(2)項の鉄道車両の車内案内システムと同等の作用を奏するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明は上記のような構成であるため、乗客へ案内や注意を促すための表示灯を、鉄道車両の内部へ容易に設置することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態に係る鉄道車両の車内案内システムの構成の一例を示す制御ブロック図である。
図2図1に示した鉄道車両の車内案内システムの、袖仕切り板及び複数のLEDの鉄道車両に対する設置イメージ図である。
図3図2に示した袖仕切り板及び複数のLEDを、鉄道車両の側扉への通路空間から視た状態を示すイメージ図である。
図4】袖仕切り板の形状の一例を示す側面図及び正面図である。
図5】複数のLEDの取付方法の一例を示す断面図である。
図6】本発明の実施の形態に係る鉄道車両の車内案内システムの、図2及び図3の例と異なる位置に複数のLEDが設置された袖仕切り板のイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面に基づいて説明する。ここで、従来技術と同一部分、若しくは相当する部分については、詳しい説明を省略することとし、又、図面の全体を通して、同一部分若しくは相当する部分は、同一の符号で示している。
図1は、本発明の実施の形態に係る鉄道車両の車内案内システム10の構成の一例を模式的に示している。図示のように、鉄道車両の車内案内システム10は、複数の袖仕切り板12と、袖仕切り板12毎に設置される複数のLED24と、本実施例では列車情報制御装置34及びドア制御器42に組み込まれた点灯制御部30とを含んでいる。
【0019】
複数の袖仕切り板12の各々は、図2及び図3に示すように、鉄道車両の長手方向に沿って設けられた座席46の側端部と、側扉50への通路空間52との間に設置され、鉄道車両の内壁54から鉄道車両の幅方向中央に向かって突出している。すなわち、複数の袖仕切り板12は、鉄道車両の側扉50毎に、鉄道車両内部からの正面視で側扉50の両側方又は一側方に設置される。又、袖仕切り板12の各々は、図示の例では、複数の取付部材58によって、鉄道車両の内壁54とスタンションポール56とに固定されており、その下端(下方の端縁14)が鉄道車両の床面60から所定間隔Sを空けるような高さに固定されている。更に、本実施の形態における袖仕切り板12は、その全体にわたって透明又は半透明の導光領域20が設けられており、又、座席46側から通路空間52側へと窪んだ凹部16が、座席46に着座した乗客の上半身の高さ位置に設けられている。
【0020】
より詳しくは、図4を参照して、袖仕切り板12は、例えばポリカーボネート等の透光性が高い材料によって形成されることで、全体が透明又は半透明の導光領域20となっている。又、袖仕切り板12は、図4(a)に示す側面視で、長方形の一方の上隅部(鉄道車両の幅方向中央側の上隅部)が切欠かれた形状を成し、側面視での上方寄りの中央部分に、袖仕切り板12の側面視形状に倣った形状で、上述したような凹部16が設けられている。図4(a)に示す複数の取付穴18は、図2及び図3に示した取付部材58を固定するためのものである。袖仕切り板12は、上記のような形状を有するように、袖仕切り板12を構成する材料に応じた適切な成形方法で成形される。
【0021】
一方、図2及び図3を参照して、本実施例における複数のLED24は、設置ケース26を介して、各袖仕切り板12の下方の端縁14に沿って設置されている。具体的には、図5に示すように、複数のLED24は、光を袖仕切り板12の内部へ向けて照射する向き(図中上向き)で、袖仕切り板12の下方の端縁14に沿って、図5における紙面と直交する方向に並べられる。この状態で、複数のLED24は、袖仕切り板12の下端側からチャンネル状の設置ケース26に覆われ、設置ケース26が締結部材28により袖仕切り板12に固定されることで、袖仕切り板12の下方の端縁14と設置ケース26の内側底面26aとの間に挟み込まれるようにして設置される。このような複数のLED24には、例えばシート状に直列に連結されたものが用いられ、又、赤色や黄色等の互いに発光色が異なる複数種類のLEDを含んでいてもよい。
【0022】
他方、点灯制御部30は、図1を再度参照して、上記のように複数の袖仕切り板12の各々に設置された、複数のLED24の点灯制御を行うものである。本実施例において、点灯制御部30は、列車情報制御装置34に組み込まれた点灯制御部30Aと、ドア制御器42の各々に組み込まれた点灯制御部30Bとによって構成されている。
【0023】
ここで、袖仕切り板12と複数のLED24と点灯制御部30とを除く、図1に示した他の構成要素について簡単に説明する。まず、非常通報器32は、鉄道車両の車内の複数箇所に設置され、例えば異常発生時に乗客により操作されることで、異常が発生したことを乗務員に知らせるものである。非常通報器32が操作されると、その情報が列車情報制御装置34へと伝達される。
本実施例において点灯制御部30Aが組み込まれた列車情報制御装置34は、鉄道車両の運転台のモニタ装置であり、様々な車載機器を一括して管理するものである。列車情報制御装置34からの出力情報は、後述するように、ドア制御器42の各々による側扉50(図2参照)の開閉制御に使用される。
【0024】
車掌スイッチユニット36は、鉄道車両の乗務員室内に設置され、乗務員により操作される各種のスイッチをユニット化したものであり、図示の例では切替装置38とドアスイッチ40とを含んでいる。切替装置38は、例えば「自動」「切」「半自動」「ワンマン」といった設定種別の中から、側扉50の開閉に係る鉄道車両の現在の運行方法を設定するためのものである。この切替装置36の設定に応じて、鉄道車両の駅での停車時に、例えば、鉄道車両の幅方向一方の全ての側扉50を一斉に開閉するのか、各側扉50の近傍に設けられている開閉スイッチ(図示省略)により開閉するのかといった、側扉50の開閉制御方法が変化する。ドアスイッチ40は、乗務員により鉄道車両の側扉50を開閉するためのものである。切替装置38及びドアスイッチ40からの出力情報は、後述するように、ドア制御器42の各々による側扉50の開閉制御に使用される。又、車掌スイッチユニット36から列車情報制御装置34への出力情報として、切替装置38及びドアスイッチ40からドア制御器42の各々へ出力されている情報と同等の情報が出力され、この出力情報が、列車情報制御装置34から各ドア制御器42に対する出力情報に利用される。
【0025】
本実施例において点灯制御部30Bが組み込まれたドア制御器42の各々は、列車情報制御装置34からの出力情報と、切替装置38からの出力情報と、ドアスイッチ40からの出力情報とに基づいて、鉄道車両の側扉50の開閉動作を制御するものである。一例として、ドア制御器42の各々は、列車情報制御装置34からの出力情報と、切替装置38及びドアスイッチ40からの出力情報とを入力として、論理積を演算し、この演算結果に応じて、側扉50の開閉動作を制御する。なお、図1では側扉50の図示を省略している。更に、ドア制御器42は、開閉制御対象の側扉50の両側方(又は一側方)に設置された袖仕切り板12の、複数のLED24と接続されている。
【0026】
そして、上記のような構成において、点灯制御部30は、側扉50の開閉動作と連動させて、複数のLED24を点滅或いは点灯させる。具体的には、ドア制御器42に組み込まれている点灯制御部30Bが、組み込み先のドア制御器42によって開閉される側扉50の開閉動作と連動させて、その側扉50の両側方(又は一側方)に設置された袖仕切り板12の複数のLED24を、点滅或いは点灯させる。更に、点灯制御部30は、非常通報器32に対する操作を受けて、複数のLED24を点滅或いは点灯させる。具体的には、列車情報制御装置34に組み込まれている点灯制御部30Aが、操作された非常通報器32を把握し、例えば、操作された非常通報器32の近傍に位置する袖仕切り板12の、複数のLED24と接続されたドア制御器42に対して、非常通報器32が操作されたことを通知する。続いて、この通知を受けたドア制御器42に組み込まれている点灯制御部30Bが、接続先の袖仕切り板12の複数のLED24を点滅或いは点灯させる。
【0027】
又、点灯制御部30は、側扉50の開動作時、側扉50の閉動作時、側扉50の再開閉動作時、及び、非常通報器32の操作時といった、複数のLED24を点滅又は点灯させる要因に応じて、複数のLED24の点灯のさせ方を変化させる。例えば、点灯制御部30は、要因に応じて、点滅パターンや点滅速度を変えてもよく、複数のLED24に互いに発光色が異なる複数種類のLEDが含まれている場合には、点滅或いは点灯させるLEDを変えてもよい。
上記のような点灯制御は、列車情報制御装置34及びドア制御器42のソフトウェア改修等で実現される。又、ドア制御器42から複数のLED24への配線は、例えば、座席46(図2及び図3参照)の下等を通して配線され、新設の鉄道車両の場合は内壁54(図2及び図3参照)の内側を通して配線してもよい。
【0028】
ここで、本発明の実施の形態に係る鉄道車両の車内案内システム10は、図1図5に示したような構成に限定されるものではない。例えば、点灯制御部30は、複数のLED24の点灯制御を行うように接続されていれば、列車情報制御装置34やドア制御器42以外の制御系機器に組み込まれていてもよく、他の機器から独立した構成であってもよい。又、点灯制御部30は、非常通報器32が操作された際に、操作された非常通報器32の近傍に設置された袖仕切り板12の複数のLED24だけでなく、車内全体の袖仕切り板12の複数のLED24を点滅又は点灯させてもよい。更に、点灯制御部30は、側扉50の開閉時や非常通報器32の操作時に加えて、注意や警告を促す必要のある様々な状況において、複数のLED24を点滅又は点灯させてもよい。
【0029】
一方、袖仕切り板12は、図2図4に示した形状と異なる形状であってもよく、袖仕切り板12の一部の端縁が含まれていれば、導光領域20が袖仕切り板12の一部の領域のみであってもよい。更に、袖仕切り板12は、導光領域20が透光性の高い材料によって形成されていれば、ポリカーボネート以外の材料で形成されていてもよく、複数の材料が組み合わされて形成されていてもよい。他方、複数のLED24は、赤色や黄色のみではなく緑色や青色といった様々な発光色のLEDを含んでいてもよく、このような複数種類のLEDは、種類毎に分けて複数列に配置されていてもよく、異なる種類で交互に直線状に配置されていてもよい。又、複数のLED24は、図5に示した設置ケース26と異なる方法で袖仕切り板12の端縁に設置されてもよく、袖仕切り板12の下方の端縁14以外の端縁に沿って設置されていてもよい。例えば図6には、袖仕切り板12の、鉄道車両の内壁54側の端縁に沿って、複数のLED24を設置した例を示している。
【0030】
さて、上記構成をなす本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。すなわち、本発明の実施の形態に係る鉄道車両の車内案内システム10は、図1に示すように、袖仕切り板12、複数のLED24、及び、点灯制御部30(30A及び30B)を含み、袖仕切り板12は、図2で確認できるように、鉄道車両の長手方向に沿って設けられた座席46の側端部と、鉄道車両の側扉50への通路空間52との間に設置される。すなわち、袖仕切り板12は、鉄道車両の構造に応じて、各側扉50の両側方或いは一側方に設置される。又、袖仕切り板12は、少なくとも一部の端縁を含む一部の領域、換言すれば、一部の端縁から内部へと延びる領域に、透明又は半透明の導光領域20を有している。そして、複数のLED24は、図2図3図5及び図6に示すように、袖仕切り板12の導光領域20に含まれる一部の端縁に沿って並べられ、光の照射方向が導光領域20(袖仕切り板12の内部)へ向くように設置される。
【0031】
又、図1に示すように、点灯制御部30は、袖仕切り板12の各々に設置された複数のLED24の点灯制御を行うものであり、具体的には、少なくとも側扉50の開閉動作と連動させて点灯制御を行う。すなわち、これから開閉動作を行う又は開閉動作中の側扉50の、両側方又は一側方に位置する袖仕切り板12に設置された複数のLED24を、例えば側扉50の動作毎に異なる点滅パターン等で点滅(又は点灯)させる。複数のLED24が点滅或いは点灯されると、複数のLED24から照射された光が、袖仕切り板12の導光領域20内で反射しながら拡散すると共に、透明又は半透明の導光領域20から外部へ出射される。これにより、複数のLED24が設置された袖仕切り板12の各々の導光領域20は、側扉50が開閉することを乗客へ通知して注意を促すための表示灯として機能することになる。
【0032】
すなわち、本発明の実施の形態に係る鉄道車両の車内案内システム10は、乗客に対して案内及び注意を促すための表示灯を、導光領域20を有する袖仕切り板12の一部の端縁に沿って複数のLED24が配置された、単純な構成で実現することができる。このため、鉄道車両の内部へ容易に設置することができ、既存の鉄道車両に対して適用される場合であっても、改造作業や交換作業の費用及び時間を抑制することが可能となる。特に、透明又は半透明の袖仕切り板が設置された既存の鉄道車両に対しては、適用が更に容易である。更に、メンテナンス時の点検作業や、故障時の交換作業も容易に行うことができる。又、表示灯の発光源が袖仕切り板12の端縁に近接して配置されるにも関わらず、発光源として発熱が小さいLED24を用いているため、熱による袖仕切り板12の変形を防止することができる。
【0033】
加えて、表示灯を構成する袖仕切り板12は、鉄道車両内部の比較的目立つ位置に設置されるため、乗客へ効果的に案内及び注意を促すことが可能となる。特に、鉄道車両が駅に停車したときに、鉄道車両の幅方向一方の全ての側扉50が開くような運行方法ではなく、鉄道車両の幅方向一方の一部の側扉50のみが開くような運行方法においては、停車時に開動作を行う側扉50の側方に設置された袖仕切り板12の複数のLED24を、鉄道車両が駅に停車した時点で点滅或いは点灯させることで、車内の乗客に対して乗降可能な側扉50を効果的に通知することができる。
【0034】
更に、本発明の実施の形態に係る鉄道車両の車内案内システム10は、図1に示すように、車内に複数の非常通報器32が設置された鉄道車両に対応するものであり、これらの非常通報器32が乗客等により操作された場合に発報を行うものである。すなわち、点灯制御部30は、非常通報器32に対する操作を受けて、少なくとも操作された非常通報器32の近傍に位置する袖仕切り板12に設置された、複数のLED24を点滅或いは点灯させることで、非常通報器32が操作されるような事態が発生したことを、周囲の乗客に通知して警告するものである。これにより、側扉50の開閉時に加え、非常通報器32の操作時においても、乗客に対して案内及び注意を促すことが可能となる。
【0035】
又、本発明の実施の形態に係る鉄道車両の車内案内システム10は、袖仕切り板12の各々に設置される複数のLED24に、例えば赤色や黄色といった、互いに発光色が異なる2種類以上のLEDを含んでいるものである。そして、点灯制御部30は、複数のLED24を点滅或いは点灯させる要因となる事象に応じて、例えば、側扉50の通常の開閉時には黄色のLED、その他の案内や警告時には赤色のLED等のように、点滅或いは点灯させるLEDの種類を使い分けるものである。このとき、点滅或いは点灯させるLEDの種類の使い分けだけでなく、LEDの点滅速度や点滅パターン等の制御と組み合わせて、様々な事象を通知することとしてもよい。これにより、様々な事象に関して、乗客へより効果的に案内及び注意を促すことができる。
【0036】
加えて、本発明の実施の形態に係る鉄道車両の車内案内システム10は、図2及び図3に示すように、座席46の側端部と側扉50への通路空間52との間に設置される袖仕切り板12が、鉄道車両の床面60から所定間隔Sを空けて設置され、袖仕切り板12の下端と鉄道車両の床面60との間に隙間が確保される。更に、袖仕切り板12の各々において、透明又は半透明の導光領域20が、袖仕切り板12の下方の端縁14を含む領域に設けられると共に、複数のLED24が、袖仕切り板12の下方の端縁14に沿って設置されるものである。このような構成により、複数のLED24を、鉄道車両の床面60との間に隙間が確保された袖仕切り板12の下端側から、袖仕切り板12に対して取り付けることができるため、複数のLED24の設置作業、点検作業、交換作業等を、より容易に実行することが可能となる。
【0037】
しかも、本発明の実施の形態に係る鉄道車両の車内案内システム10は、図2図4に示すように、各袖仕切り板12の全体にわたって、透明又は半透明の導光領域20が設けられていることで、複数のLED24から照射された光を、袖仕切り板12の内部全体に拡散させることができる。これにより、袖仕切り板12の全体が発光してより目立たせることができるため、袖仕切り板12の周囲の乗客に対して、より一層効果的に案内及び注意を促すことが可能となる。
なお、本発明の実施の形態に係る鉄道車両の車内案内方法は、上記のような本発明の実施の形態に係る鉄道車両の車内案内システム10により実行されることで、鉄道車両の車内案内システム10と同等の作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0038】
10:鉄道車両の車内案内システム、12:袖仕切り板、14:下方の端縁、20:導光領域、24:複数のLED、30:点灯制御部、32:非常通報器、46:座席、50:側扉、52:通路空間、60:床面、S:所定間隔
図1
図2
図3
図4
図5
図6